(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】害虫防除方法及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A01N 25/06 20060101AFI20241008BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20241008BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20241008BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20241008BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20241008BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A01N25/06
A01P7/04
A01N53/08 125
B05B9/04
A01M7/00 S
B65D83/14
(21)【出願番号】P 2020143849
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019154689
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121894(JP,A)
【文献】特開2003-012422(JP,A)
【文献】特開平08-059413(JP,A)
【文献】特開2004-196766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製又は樹脂製の対象物
及び害虫に噴霧して用いる害虫防除用のエアゾール製品であって、
有効成分
と有機溶剤を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなり、
前記エアゾール組成物中の前記原液と前記噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で1:99~30:70であり、
前記耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止され、前記エアゾールバルブに噴射ボタンが取り付けられており、
前記エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する前記噴射ボタンの噴口の面積の比が1~30であり、前記噴射ボタンの噴口の面積は0.19~16mm
2
であり、
噴霧粒子の平均粒子径を切り替える粒子径切替機構を備え、前記粒子径切替機構は前記噴射ボタンの噴口に取り付け及び取り外しが可能とされており、
前記エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する前記粒子径切替機構の噴口の面積の比が1~10であり、前記粒子径切替機構の噴口の面積は0.8~1.8mm
2
であり、
前記
粒子径切替機構の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である
噴霧パターンAと、前記噴射ボタンの噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBとが切り替え可能であり、前記金属製又は樹脂製の対象物に対して前記噴霧パターンAで噴霧され、前記害虫に対して前記噴霧パターンBで噴霧されることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記対象物が、屋内と屋外を仕切る建物部材であることを特徴とする請求項1に記載の
エアゾール製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアゾール製品を用いることを特徴とする害虫防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除方法及びエアゾール製品に関し、さらに詳しくは、害虫の建物内への侵入を防止するのに有効な害虫防除方法、及び当該方法に用いるためのエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅、集合住宅等の住居や、食品、医薬品等の製造工場等において、建物内に害虫が居ることは嫌厭され、建物内に侵入した害虫に対しては殺虫や捕虫等の駆除手段が講じられている。例えば、害虫駆除用エアゾール製品を用いて殺虫成分を含む薬剤を害虫に直接噴霧する方法、殺虫成分を含む毒餌を害虫に摂取させる方法等が知られている。中でもエアゾール製品は、離れた位置からでも害虫を狙いやすく、また処理も容易であるため、広く使用されている。
【0003】
害虫を駆除するためのエアゾール製品は種々提案されており、例えば、殺虫有効成分およびその溶剤と噴射剤とを含有する液体を弁付き容器に封入してなり、前記噴射剤の圧力によって液体を弁からエアゾール状態に放出可能なエアゾール殺虫剤において、前記液体が、粘度(20℃)0.002~0.004Pasであり、かつ比重(20℃)0.76~0.80の液体であるエアゾール殺虫剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、カメムシ類等の臭いを放つ害虫に対しては、害虫被害を防ぐために建物内への侵入を阻止することが望まれるが、そのための方法として、例えば、(4-エトキシフェニル)〔3-(3-フェノキシ-4-フルオロフェニル)プロピル〕(ジメチル)シランとピレスロイド系殺虫剤を含有する液剤もしくはエアゾール剤の家屋用カメムシ防除剤を家屋の窓枠、扉等に処理し、カメムシの家屋内への侵入を阻止するカメムシ防除方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-156235号公報
【文献】特開平8-59413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、害虫の建物内への侵入を阻止するためにエアゾール製品を窓枠、扉等に処理して使用するが、屋外に面する窓枠や扉の材質はアルミニウムや塩化ビニル樹脂等が使用されることが多く、このような金属製や樹脂製の建材に噴霧すると、付着面にエアゾール内容物の液ダレが生じることがあった。エアゾール内容物が窓枠や扉に液ダレした状態で付着すると、害虫がエアゾール内容物(特に、有効成分)が付着していない所を通って屋内へ侵入するおそれがあり、害虫の侵入防止効果が十分に得られず、また外観上汚れるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、害虫防除用のエアゾール製品を金属製又は樹脂製の対象物に噴霧してもエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮する害虫防除方法、並びに当該方法に用いるためのエアゾール製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、金属製又は樹脂製の対象物に対しエアゾール内容物が特定範囲の粒子径で付着するように噴霧することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)を特徴とする。
(1)有効成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるエアゾール製品を用いて、金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧することを特徴とする害虫防除方法。
(2)前記対象物が、屋内と屋外を仕切る建物部材であることを特徴とする前記(1)に記載の害虫防除方法。
(3)金属製又は樹脂製の対象物に噴霧して用いる害虫防除用のエアゾール製品であって、有効成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなり、前記エアゾール製品の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲であることを特徴とするエアゾール製品。
(4)前記噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることができる粒子径切替機構を備え、前記エアゾール製品の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である噴霧パターンAと、前記エアゾール製品の噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBとを切り替え可能であることを特徴とする前記(3)に記載のエアゾール製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の害虫防除方法によれば、金属製又は樹脂製の対象物に対して害虫防除用エアゾール製品の内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができるので、対象物に近づく害虫を効果的に防除することができるとともに、対象物の外観上の汚れもない。よって、当該エアゾール製品を建物の窓枠や扉等に処理しておくことで、害虫の建物内への侵入を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】害虫侵入防止試験の試験方法を説明するための図であり、(a)は試験区を上方から見た平面図であり、(b)は(a)の矢印A方向から見た試験区内の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明の害虫防除方法は、有効成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるエアゾール製品を用いて、金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧することを含む。本発明の方法では、害虫の建物内への侵入を阻止するために金属製又は樹脂製の対象物に有効成分を付着させる際に、該有効成分の効果を効果的に発現させることができる方法を提供するものである。
【0013】
処理する対象物は、屋内と屋外を仕切る建物部材であることが好ましく、具体的には、窓枠、玄関扉等が挙げられる。窓枠や玄関扉等の建物部材に本発明の害虫防除方法を用いて害虫防除用のエアゾール製品を処理することで、対象物が金属製又は樹脂製であっても対象面にエアゾール組成物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、よって屋外から建物内への害虫の侵入を阻止することができる。
【0014】
対象物は、上記したように金属又は樹脂により構成される。金属表面及び樹脂表面は、木材等に比べて薬液の浸透力が弱く、エアゾール製品を噴霧したときに噴霧粒子同士が結合して液滴になりやすい。金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧することで、対象物の表面に結合のし難い大きさで噴霧粒子を付着させることができ、対象物に均一に有効成分を付着できると推測される。また窓枠の材質が木のような薬液の浸透力の強い材質の場合、薬液が材質中に染み込んでしまい、表面に薬液が残りにくい。結果、害虫の表皮に付着する薬液が減少し、有効成分の効果を効果的に発現することが難しくなる。
【0015】
対象物を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅及びこれらの合金等が挙げられ、樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの複合材料でもよい。また、対象物の表面が金属又は樹脂で構成されていればよく、対象物は、木材や紙などの金属及び樹脂以外の材質の表面を金属又は樹脂で覆った積層体であってもよい。
【0016】
(エアゾール製品)
本発明の害虫防除方法に用いるエアゾール製品は、有効成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるものである。
【0017】
(原液)
エアゾール組成物を構成する原液は、少なくとも有効成分である薬剤を含有する。有効成分は対象害虫を忌避、ノックダウン、殺虫等をさせることができる成分であり、有効成分の種類は、特に限定されず、公知の化合物を使用できる。
【0018】
有効成分としては、例えば、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフルトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
なお、有効成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択すればよい。対象害虫としては、例えば、蚊、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、ゴキブリ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、アブ、ブユ、チョウバエ、シロアリ、ユスリカ、ヨコバイ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ、カミキリムシ、カツオブシムシ、チャタテムシ、イガ、コイガ等が挙げられる。
ゴキブリ、カメムシ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、シロアリ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ等の匍匐害虫に対しては、シフルトリン、シフェノトリン、フェンプロパトリン、フタルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、ペルメトリン、フェノトリン等が好適である。特に匍匐害虫の屋内への侵入防止に使う場合は、シフルトリン、フェンプロパトリン、ペルメトリンが好ましい。また、蚊、ハエ、ガ、ハチ、アブ、ブユ、ユスリカ、ヨコバイ、チョウバエ、イガ、コイガ等の飛翔害虫に対しては、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フタルスリン、プラレトリン、モンフルオロトリン等が好適である。
【0020】
有効成分の含有量は、原液中0.1~5質量/容量%であることが好ましい。有効成分が原液中に0.1質量/容量%以上であることで、十分な薬剤の効果を得ることができ、5質量/容量%以下であると生産適性が向上される。有効成分の含有量は、下限は0.8質量/容量%以上であることがより好ましく、2質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は4質量/容量%以下がより好ましく、3質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0021】
原液には、有効成分を溶解させるため、原液の粘度を調整するため、生産適性を向上させるため、害虫に対する有効成分の浸透性を上げるため等の目的のために溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、水や有機溶剤を挙げることができる。
【0022】
水としては、水道水、精製水、イオン交換水等が挙げられる。
【0023】
有機溶剤としては、例えば、上記したグリコールエーテル類や、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素が挙げられ、JIS 1号灯油等の灯油が好ましい。具体的にはノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンMA等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、スーパーゾルFP25等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
特に溶剤の中でも炭化水素系溶剤、エステル系溶剤が対象物に処理する際に好適に付着する点から好ましく、特に炭化水素系溶剤が特に好ましい。
【0024】
溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
溶媒の含有量は、原液中80~99.9質量/容量%であることが好ましい。溶媒が原液中に80質量/容量%以上であることで、生産適性を向上させることができ、99.9質量/容量%以下であると、十分な薬剤の効果を担保できるため好ましい。溶媒の含有量は、下限は90質量/容量%以上であることがより好ましく、95質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は99質量/容量%以下がより好ましく、97質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0026】
原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、芳香剤、消臭剤、除菌・殺菌剤、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、無機物、界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
芳香剤としては、例えば、上記した精油成分や、アニス油、ベルガモット油、ラベンダー油、ローズ油、ローズマリー油、グレープフルーツ油等の天然香料、カンフェン、p-シメン、シトロネロール、ネロール、ベンジルアルコール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クマリン、シネオール、リナロール、リモネン、l-メントール等の合成香料等が挙げられる。
【0028】
消臭剤としては、例えば、緑茶エキス、柿タンニン、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、銀等の臭気成分を吸着する成分や、上記した芳香成分のような臭気成分をマスキングする成分等が挙げられる。
【0029】
除菌・殺菌剤としては、例えば、エタノール、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンツイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリリジンやキトサン、テトラヒドロリナロール、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0030】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸一水素ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸一水素カリウム(K2HPO4)等が挙げられる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAという)、グリセリルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、N-エトキシレートPABAエチルエーテル、N-ジメチル-PABAブチルエーテル、N-ジメチル-PABAアミルエーテル、オクチルジメチルPABA等の安息香酸系紫外線吸収剤、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニリック酸系紫外線吸収剤、アミルサリシレート、メシチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0033】
無機物としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩等が挙げられる。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリポリオキシエチレンアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール、デカグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノオレエート、ジオレイン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンステアリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ジグリセリルモノオレエートおよびヘキサグリセリンポリリシノレート、ラウロイルグルタミン酸オクチルドデシルエーテル、ステアリルアルコール、ラノリン脂肪酸、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0035】
原液は、各成分を混合し、溶解又は分散させて得られる。
【0036】
エアゾール組成物中の原液の含有量は、噴射剤との組み合わせや噴霧される噴霧粒子の平均粒子径等を考慮して適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に1~30容量%とすることができる。エアゾール組成物中に原液が1容量%以上であると、十分な薬剤の効果を得ることができ、30容量%以下であると、原液を噴霧粒子として噴霧することができる。原液の含有量は、エアゾール組成物中、下限は2容量%以上であることがより好ましく、5容量%以上がさらに好ましい。なお、原液の含有量が少ないほうが噴射剤の配合量が多くなるので噴霧した際の冷却効果が高くなり、この冷却効果により害虫をより防除しやすくなる。また、噴霧されたエアゾール組成物が乾きやすくなるため、上限は20容量%以下であることがより好ましく、15容量%以下がさらに好ましい。
【0037】
なお、本発明の効果を得るために、エアゾール組成物中、有効成分を0.001~2質量/容量%の範囲で含有させることが好ましい。前記範囲であると、適正な噴霧量で噴霧した際に、処理対象面に害虫忌避に有効な量の有効成分を付着させることができる。エアゾール組成物中の有効成分の含有量は、0.005~1質量/容量%がより好ましく、0.01~0.5質量/容量%がさらに好ましい。
【0038】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴霧するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0039】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、原液との組み合わせや噴霧粒子の粒子径の調整等のエアゾール製品の仕様に応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に70~99容量%とすることができる。エアゾール組成物中に噴射剤が70容量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴霧することができるため薬剤がより拡散しやすくなり、液ダレを防ぐことができる。また、噴霧した際の冷却効果が高くなり、この冷却効果により害虫をより防除しやすくなる。また、噴射剤が99容量%以下であると、十分な薬剤の効果を得ることができる。噴射剤の含有量は、冷却効果をさらに得られやすく、また、噴霧されたエアゾール組成物が乾きやすいという点で、エアゾール組成物中、下限は80容量%以上であることがより好ましく、85容量%以上がさらに好ましく、また、上限は98容量%以下がより好ましく、95容量%以下がさらに好ましい。
なお、噴射剤の内ジメチルエーテルは含有多寡になり過ぎるとワックスなどの樹脂やゴム等への腐食性が高くなる傾向があるので部材への影響が出やすい。よって、ジメチルエーテルの含有量は、噴射剤中、70容量%以下とすることが好ましく、55容量%以下がより好ましい。
【0040】
エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、1:99~30:70であることが好ましく、5:95~15:85がより好ましい。このような体積比とすることで、有効成分の効果を十分に得るとともに、噴霧粒子の粒子径の調整ができる。
【0041】
本発明のエアゾール製品は、上記した原液と噴射剤がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止され、該エアゾールバルブに噴射部材が取り付けられることにより構成される。
【0042】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者により操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0043】
エアゾールバルブのステムにおけるステム孔の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。ステム孔の大きさは、噴霧量を所望の範囲とするという観点から、その断面の面積が0.05~4mm2であることが好ましく、0.1~2mm2がより好ましい。
ステム孔は1個でもよいし、複数個有していてもよい。ステム孔の面積は、ステム孔が複数ある場合はその合計面積である。
【0044】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴霧される噴口とが形成されている。
【0045】
噴射ボタンは、後述する粒子径切替機構(例えば、噴射ノズル)を取り付け可能な構成、例えば、噴射ノズルを嵌め込むための凹部、ネジ部等を備えていてもよい。
【0046】
また、噴射ボタンの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴口の形状が多角形である場合、噴口の大きさは円形の場合と同等であればよい。
【0047】
(粒子径切替機構)
本発明のエアゾール製品は、噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることのできる粒子径切替機構を備えることが好ましい。粒子径切替機構としては、噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることができれば特に限定されないが、例えば、噴射部材の噴口に噴射ノズルを取り付ける、噴霧パターンの切替機構を備えた噴射部材を用いる等が挙げられる。なかでも、取り外し可能な噴射ノズルを備えると、噴射ノズルがある時とない時とで2つのパターンの粒子径で噴霧でき、また、製造コストも高額になりにくいため好ましい。
【0048】
本発明では、粒子径切替機構により、例えば、噴射部材の噴口に噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積、内径を変化させて所望の平均粒子径を有する噴霧粒子を噴霧できる。
【0049】
噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積を、好ましくは0.07~5.0mm2、より好ましくは0.12~3.2mm2、さらに好ましくは0.19~1.8mm2とすることにより、噴霧面に対して液ダレをすることなく、良好に噴霧できる。
また、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、その内径(噴口孔径)を、好ましくは0.3~2.5mm、より好ましくは0.4~2.0mm、さらに好ましくは0.5~1.5mmとすることにより、噴霧面に対して液ダレをすることなく、良好に噴霧できる。
【0050】
さらに、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積を、好ましくは0.19~16mm2、より好ましくは0.78~9.7mm2、さらに好ましくは1.7~7.1mm2とすることで、害虫に直接噴霧して、害虫を冷却することにより所望の殺虫効果を得ることができる。
また、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、その内径(噴口孔径)を、好ましくは0.5~4.5mm、より好ましくは1.0~3.5mm、さらに好ましくは1.5~3.0mmとすることにより、害虫に直接噴霧して、害虫を冷却することにより所望の殺虫効果を得ることができる。
【0051】
なお、ステム孔の面積に対する噴射ボタンの噴口の面積の比(噴口面積/ステム孔面積)は、1~30がより好ましい。噴口面積/ステム孔面積が前記範囲であると、エアゾール組成物の目詰まりを抑制しつつ、良好な噴霧パターンを形成することができる。
【0052】
上記した噴射ノズルは噴霧パターンを細かくすることのできる部材である。噴射ノズルとしては、例えば、長軸方向に長い流路を備え、先端に粒子径を調整する噴口を有するものを使用することができる。
【0053】
噴射ノズルの流路(チューブ)の長さとしては、取り扱いの容易性の観点から、50~200mmであることが好ましく、100~150mmがより好ましい。噴射ノズルの流路径(チューブの内径)としては、エアゾール組成物の噴出を妨げないために、直径φ0.3~3mmであることが好ましく、直径φ0.5~2mmがより好ましい。
噴射ノズルの噴口の直径としては、噴霧量及び粒子径を所望の範囲とするという観点から、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積は、0.07~5.0mm2とすることが好ましく、より好ましくは0.12~3.2mm2、さらに好ましくは0.19~1.8mm2であり、その内径(噴口孔径)は、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、0.3~2.5mmとすることが好ましく、より好ましくは0.4~2.0mm、さらに好ましくは0.5~1.5mmである。噴射ノズルの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴射ノズルの噴口が多角形の場合、噴口の面積は円形の場合と同等であればよい。噴射ノズルの噴口は1個でもよいし、複数個有していてもよい。なお、噴射ノズルの噴口の面積は、噴口が複数ある場合はその合計面積である。
【0054】
ステム孔の面積に対する噴射ノズルの噴口の面積の比(噴口面積/ステム孔面積)は、1~10がより好ましい。噴口面積/ステム孔面積が前記範囲であると、エアゾール組成物の粒子径を好適に調整し、液ダレが気にならない良好な噴霧パターンを形成することができる。
【0055】
(噴霧量)
本発明のエアゾール製品の噴霧量は、10秒あたり5~100gであることが好ましく、10秒あたり10~70gであることがより好ましい。噴霧量が前記範囲であると、有効成分を有効量で付着させることができ、有効成分の効果を十分に得ることができる。
【0056】
(噴射粒子径)
また、本発明のエアゾール製品は、エアゾール製品の噴口(エアゾール組成物の吐出位置)から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲であることが好ましい。エアゾール製品の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4μm以上であると、有効成分による本発明の効果を十分に得ることができ、50μm以下であると、金属製又は樹脂製の対象物に噴霧した場合であっても液ダレをすることがない。噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限は4.5μm以上であることがより好ましく、また上限は47μm以下であることがより好ましい。
なお、前記した噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、粒子径切替機構を用いたときのものであっても、粒子径切替機構を用いず噴射ボタンの噴口から直接噴霧されたときのものであってもよい。
【0057】
さらに、本発明のエアゾール製品は、前記粒子径切替機構を備えたときに、エアゾール製品の噴口(エアゾール組成物の吐出位置)から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である噴霧パターンAと、同じく吐出位置から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBとが切り替え可能とされていることが好ましい。
噴霧パターンAで噴霧された際には、処理対象物が金属製又は樹脂製の場合にエアゾール内容物を処理面に対して液ダレすることなく付着させることができ、噴霧パターンBで噴霧された際には噴霧粒子の平均粒子径が大きくなるので、直接害虫に噴霧した際に害虫に付着する有効成分の量が増え、さらに冷却効果も十分に得ることができ、優れた防除効果を発揮することができる。噴射パターンAの噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限が4.5μm以上であることがより好ましく、また上限は47μm以下がより好ましい。噴射パターンBの噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限が35μm以上であることがより好ましく、また上限は105μm以下がより好ましい。
【0058】
なお、粒子径切替機構により、窓枠等の金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧した時に液ダレ防止効果のある粒子径に調整した場合には、害虫に直接噴霧すると、害虫を冷却させる効果は弱まり、所望の殺虫効果を得にくくなる。一方、粒子径切替機構により、害虫に直接噴霧して冷却殺虫効果を得るために粒子径を調節した場合には、窓枠等の金属製又は樹脂製の対象物に噴霧すると、液ダレしやすくなる。よって、直接噴霧する標的に応じて、噴射パターンAと噴射パターンBとを使い分けることが好ましい。
【0059】
(害虫防除方法)
本発明の害虫防除方法では、上記した本発明のエアゾール製品を金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧する。例えば、エアゾール製品の噴射ボタンの噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲であるエアゾール製品を用いると、対象物から25cm程度離れた位置から噴霧すれば、対象物の表面に平均粒子径が4~50μmの範囲の噴霧粒子を付着させることができるので本発明の効果が得られる。また、噴射ボタンの噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が50μmよりも大きいエアゾール製品を用いる場合は、粒子径切替機構を使って噴霧される粒子径を調整して、対象物の表面に平均粒子径が4~50μmの範囲の噴霧粒子が付着するようにすればよい。
【0060】
本発明において、対象物にエアゾール製品を噴霧する際に、エアゾール組成物の噴霧量が10~600g/m2となるように噴霧することが好ましい。対象物の処理面にエアゾール組成物が10~600g/m2の範囲で噴霧されることで、十分に本発明の効果を得ることができる。エアゾール組成物の噴霧量は、15~500g/m2がより好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0062】
<試験例1>
1.原液の調製
100mLのメスフラスコに、シフルトリン1.0g、フタルスリン1.5g、ミリスチン酸イソプロピル10gを測り取り、イソパラフィン(比重0.755(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液を調製した。25℃における原液の比重は0.762であった。
【0063】
2.エアゾール製品の作製
表1に従い、実施例1~5、比較例1~4のエアゾール製品を作製した。
【0064】
(実施例1)
エアゾール用耐圧缶(満注容量579mL)に、原液を24mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔面積0.4mm2、円形のステム孔)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガスLPG2.0(25℃での圧力0.2MPa)228mLとジメチルエーテル(DME)228mLを加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口径φ2.5mm、噴口面積4.9mm2)を取り付け、エアゾール検体を得た。また、噴射パターンを切り替えるための切替用ノズルとして、チューブ内径1.5mm、チューブ長113mm、噴口径φ1.5mm、噴口面積1.8mm2のノズルを用意した。
【0065】
(実施例2~5、比較例1~4)
原液と噴射剤の含有比、噴射剤の組成、エアゾールバルブ、噴射ボタン及びノズルを表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてエアゾール検体を作製した。
なお、実施例2、4~5及び比較例1~4で用いたバルブステムの孔は円形であり、実施例3で用いたバルブステムの孔は四角形である。表1中のステム孔大きさについて、バルブステム孔の形状が円形である場合を「φ」、形状が四角形である場合を「□」で示している。
【0066】
【0067】
3.エアゾール製品の評価
実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体に切替用ノズルを装着したとき(噴射ボタン+切替用ノズル)と未装着のとき(噴射ボタンのみ)のそれぞれについて、噴霧量を測定し、切替用ノズル装着時については25cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を、切替用ノズル未装着については50cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を測定した。
また、切替用ノズル装着時のエアゾール検体については、窓枠に噴霧したときの液ダレの有無を評価し、切替用ノズル未装着のエアゾール検体については、害虫駆除効果を確認した。
【0068】
(1)噴霧量の測定
エアゾール検体を、25℃で10秒間噴霧し、噴霧前のエアゾール検体の重量から減少した重量を噴霧量とした。結果を表2、3に示す。
【0069】
(2)噴霧粒子の平均粒子径の測定
(2-1)切替用ノズル装着時(切替用ノズル+噴射ボタン)の測定
エアゾール検体の噴口(ノズルの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で25cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表2に示す。
【0070】
(2-2)切替用ノズル未装着時(噴射ボタンのみ)の測定
エアゾール検体の噴口(噴射ボタンの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で50cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表3に示す。
【0071】
(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認
試験は、切替用ノズルを装着した実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体を用いた。
アルミニウム製の窓枠(幅5cm、長さ90cm)に向けて、ノズルの噴口までの距離が25cm離れた位置から、窓枠の0.045m2の範囲に各エアゾール検体それぞれを30mL噴霧し、噴霧粒子を付着させた。続けて、目視により窓枠表面における液ダレの有無を確認した。
液ダレが全く見られなかったものを「○」、液ダレがあったものを「×」と評価した。結果を表2に示す。
【0072】
(4)害虫駆除効果の確認
試験は、切替用ノズル未装着時の実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体を用いた。
ミナミアオカメムシ(成虫)2頭をKPカップに入れた。ミナミアオカメムシに向けて、噴射ボタンの噴口までの距離が50cm離れた位置から3秒間検体を噴霧した。直後に、ノックダウン(転倒して動けなくなる)の有無を確認した。
ミナミアオカメムシがノックダウンしたものをノックダウン効果あり「○」、ノックダウンしなかったものをノックダウン効果なし「×」と評価した。結果を表3に示す。
【0073】
(5)害虫侵入予防効果の確認
さらに、切替用ノズルを装着した実施例3のエアゾール検体を用いて、害虫の侵入予防効果の確認試験を行った。
4月中旬に、クサギカメムシの侵入が頻繁に見られる兵庫県北部の一般家庭において、ベランダのアルミニウム製の窓枠(幅5cm、縦180cm×横180cm)に向けて、エアゾール組成物の噴霧量が窓枠全体に対して約70gとなるようエアゾール検体を噴霧した。なお、窓枠からノズルの噴口までの距離が25cm離れた位置から噴霧した。
処理一日後にベランダの様子を確認し、クサギカメムシの致死状況を確認したところ、クサギカメムシは屋内へ入ることはできず、ベランダで致死していた。また、処理してから約1か月間、処理した窓枠周辺で生きたクサギカメムシを見ることはなかった。
【0074】
【0075】
【0076】
表2の結果より、アルミニウム製の窓枠に対して噴霧粒子の平均粒子径が4~50μmの範囲となるように噴霧した実施例1~5は、窓枠に対して液ダレすることなくエアゾール組成物を付着させることができた。また、害虫侵入予防効果の確認試験の結果より、噴霧粒子の平均粒子径が4~50μmの範囲となるように噴霧したときは、害虫に対する優れた侵入防止効果が得られることがわかった。
そして、表3より、害虫に対して噴霧粒子の平均粒子径が30~120μmの範囲となるように噴霧し付着させたときには、優れた防除効果も有するものであることが分かった。なお、切替用ノズル未装着の実施例1~5、比較例1~4においては、25cm離れた位置から窓枠に噴霧した時には、液ダレが生じる結果となった。
【0077】
<試験例2>
1.原液の調製
表4に示した処方に基づき、100mLのメスフラスコに、シフルトリン及びミリスチン酸イソプロピルを測り取り、イソパラフィン(比重0.755(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液を調製した。
【0078】
【0079】
2.エアゾール製品の作製
表5に従い、実施例6~7、比較例5のエアゾール製品を作製した。
【0080】
(実施例6~7、比較例5)
試験例1と同様にして、原液と噴射剤の含有比、噴射剤の組成、エアゾールバルブ、噴射ボタン及びノズルを表5に記載の仕様に従って、エアゾール検体を作製した。
なお、実施例6で用いたバルブステムの孔は円形であり、実施例7及び比較例5で用いたバルブステムの孔は四角形である。
【0081】
【0082】
3.エアゾール製品の評価
切替用ノズルを装着した実施例6~7のエアゾール検体(噴射ボタン+切替用ノズル)と、比較例5のエアゾール検体(噴射ボタンのみ)のそれぞれについて、25cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を計測し、害虫侵入防止試験と窓枠に噴霧したときの液ダレの有無を評価した。
【0083】
(1)噴霧粒子の平均粒子径の測定
エアゾール検体の噴口(ノズル又は噴射ボタンの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で25cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表6に示す。
【0084】
(2)害虫侵入防止試験
図1(a)及び(b)に示すような試験区を作製した。なお、
図1において、矢印B側から見たとき、奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向といい、側壁をそれぞれ、「後壁」、「左壁」等という。
図1(a)に示したように、縦15cm×横15cm×高さ15cmの上方開口のボックス(第1ボックス1a、第2ボックス1b)を2個準備し、側壁同士が接するように並置した。第1ボックス1aと第2ボックス1bが接する隣接壁2と底壁と後壁との入隅部における隣接壁2に穴をあけ、第1ボックス1aと第2ボックス1bとを連通可能とした。
図1(b)に示したような長尺の底板と該底板の長手方向に立ち上がる側板とを有するABS樹脂製のレール部材4に対し、エアゾール検体の噴口までの距離が25cm離れた位置から、エアゾール検体を満遍なく約3g噴霧した。これを第1ボックス1aに、その一端が第1ボックス1aの左壁に当接し、他端が隣接壁2に設けた穴を貫通して第2ボックス1b内に突出するようにして、設置した。
その後、第1ボックス1a内にミナミアオカメムシ(成虫)7を5頭放ち、第2ボックス1b内に水を含ませた脱脂綿5を載せたトレイ6を設置し、透明な板材3でボックス1a,1bの上部開口部を覆い、一晩放置した。翌日、第2ボックス1bに侵入したミナミアオカメムシの生虫数をカウントした。
侵入したミナミアオカメムシの生虫数より、下記式に基づいて侵入防止率(%)を計算した。侵入防止率が100%の場合を侵入なし「○」、それ以外を侵入あり「×」として評価した。結果を表6に示す。
侵入防止率(%)=(第1ボックス内に放ったカメムシの数-第2ボックス内に侵入したカメムシの生虫数)/第1ボックス内に放ったカメムシの数×100
【0085】
(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認
アルミニウム製の窓枠(幅5cm、長さ90cm)に向けて、エアゾール検体の噴口までの距離が25cm離れた位置から、窓枠の0.045m2の範囲に各エアゾール検体それぞれを30mL噴霧し、噴霧粒子を付着させた。続けて、目視により窓枠表面における液ダレの有無を確認した。
液ダレが全く見られなかったものを「○」、液ダレがあったものを「×」と評価した。結果を表6に示す。
【0086】
【0087】
表6の結果より、実施例6、7は害虫の侵入防止効果が確認でき、窓枠に対する液ダレも無かった。これに対し、エアゾール検体の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4μmに満たない比較例5は、害虫の侵入を防止できなかった。このことから、平均粒子径(D50)が4μm未満の噴霧粒子は、害虫が噴霧の対象物を通る際に噴霧粒子が害虫の体表に付着する効果が低く、害虫の侵入防止効果が低下するものと推察される。また、噴霧粒子の平均粒子径が小さいほど環境の影響を受けやすいため、屋外で使用する場合は、風などの影響で対象物への付着量が減少する可能性があると推察される。
【0088】
<試験例3>
試験例2で作製した実施例6のエアゾール検体を用いて、レール部材の異なる材質に対する害虫侵入防止試験及び液ダレの有無の確認を行った。
【0089】
(1)害虫侵入防止試験
試験例2の(2)害虫侵入防止試験に記載の方法に従い、レール部材4として、アルミニウム製部材、ABS樹脂製部材、ヒノキ製部材を用いて、害虫侵入防止試験を行った。結果を表7に示す。
【0090】
(2)窓枠噴霧時の液ダレの確認
試験例2の(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認に記載の方法に従い、窓枠としてアルミニウム製部材、ABS樹脂製部材、ヒノキ製部材を用いて液ダレの有無の確認試験を行った。結果を表7に示す。
【0091】
【0092】
表7の結果より、噴霧対象の材質がアルミニウム(金属)、ABS樹脂(樹脂)及びヒノキ(木)のいずれであっても、本実施形態である実施例6のエアゾール検体を噴霧した際には液ダレはなかった。一方、害虫の侵入防止については、木製のレール部材を使用した害虫侵入防止試験では侵入防止が十分ではなく、本発明の方法により金属製又は樹脂製の対象物に対して使用した際に優れた害虫防除効果を発揮できることがわかった。木材は薬液の浸透力が強く、薬液が材質中に染み込んでしまい、表面に薬液が残りにくく、よって、害虫表皮に付着する薬液が減少し、有効成分の効果を効果的に発現することが難しくなると考えられる。
【符号の説明】
【0093】
1a 第1ボックス
1b 第2ボックス
2 隣接壁
3 透明な板材
4 レール部材
5 脱脂綿
6 トレイ
7 ミナミアオカメムシ