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特許7568459直流パルス電源装置、及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】直流パルス電源装置、及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241008BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M3/155 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020155188
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049135
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-036474(JP,U)
【文献】特開平06-237577(JP,A)
【文献】特開2014-107662(JP,A)
【文献】特許第6603927(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流パルス電源装置であって、
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との導通状態を切り替えることにより、直流電圧を直流パルスに変換するパルス変換部と、
前記直流パルスの電圧値を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部を校正するための校正用信号を生成する校正用信号発生部と、
前記校正用信号に基づいて、前記電圧検出部の校正のための校正データを生成する校正データ生成部と、
前記校正データ生成部で生成された校正データに基づいて、前記電圧検出部の検出電圧を校正する電圧校正部と、を備え、
前記校正用信号は、前記電圧検出部の入力端子又は前記直流パルス電源装置の出力端子に交流の入力信号x(t)を入力したときに、前記入力信号(x(t))と前記電圧検出部の出力端子から出力される出力信号(y(t))とに基づいて算出される前記電圧検出部の伝達関数(G(s)=y(t)/x(t))を予め定めた周波数範囲内の複数の周波数において取得して生成されるものであり、
前記校正データは、前記伝達関数の逆関数(1/G(s))であり、
前記電圧校正部は、前記逆関数(1/G(s))を前記電圧検出部の出力信号に乗算することによって前記電圧検出部の出力信号を校正する、
直流パルス電源装置。
【請求項2】
前記電圧検出部は、
前記入力端子と基準端子との間に直列に接続される複数の抵抗素子と、
前記入力端子と前記基準端子との間に直列に接続される複数の容量素子と、を有し、
前記複数の抵抗素子及び前記複数の容量素子の接続ノードを前記出力端子とする、
請求項1に記載の直流パルス電源装置。
【請求項3】
分圧回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との間に直列に接続される第1抵抗素子と第2抵抗素子とを備えるダンピング抵抗と、を更に備え、
前記分圧回路は、前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子の接続ノードの電圧を計測するよう構成された、請求項1又は2に記載の直流パルス電源装置。
【請求項4】
前記電圧検出部と前記直流パルス電源装置の出力端子との間に設けられて、前記ダンピング抵抗に流れる電流を検出する電流検出部を更に備える、請求項3に記載の直流パルス電源装置。
【請求項5】
処理容器内に配置される第1電極と、
前記処理容器内で前記第1電極と対向するように配置され、その表面に被加工物を載置可能とされる第2電極と、
高周波電力を前記第1電極に出力する高周波電源装置と、
直流パルスを前記第1電極に出力する直流パルス電源装置と
を備え、
前記直流パルス電源装置は、
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との導通状態を切り替えることにより、直流電圧を直流パルスに変換するパルス変換部と、
前記直流パルスの電圧値を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部を校正するための校正用信号を生成する校正用信号発生部と、
前記校正用信号に基づいて、前記電圧検出部の校正のための校正データを生成する校正データ生成部と、
前記校正データ生成部で生成された校正データに基づいて、前記電圧検出部の検出電圧を校正する電圧校正部と、を備え、
前記校正用信号は、前記電圧検出部の入力端子又は前記直流パルス電源装置の出力端子に交流の入力信号x(t)を入力したときに、前記入力信号(x(t))と前記電圧検出部の出力端子から出力される出力信号(y(t))とに基づいて算出される前記電圧検出部の伝達関数(G(s)=y(t)/x(t))を予め定めた周波数範囲内の複数の周波数において取得して生成されるものであり、
前記校正データは、前記伝達関数の逆関数(1/G(s))であり、
前記電圧校正部は、前記逆関数(1/G(s))を前記電圧検出部の出力信号に乗算することによって前記電圧検出部の出力信号を校正する、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流パルス電源装置、及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイの製造などにおけるエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理において利用されるプラズマ処理装置は、プラズマを発生されるための高周波電源装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。また、高周波電源装置に加え、直流パルスを発生させる直流パルス電源装置を備えたプラズマ処理装置も提案されている。
【0003】
直流パルス電源装置は、直流電圧に対し所定のタイミングでON/OFF制御を行うことにより、一方向にのみ振幅が変化するパルス電圧を生成する回路である。このような直流パルス電源装置は、高周波電力の印加によりプラズマ処理装置の電極間に生起される、いわゆるセルフバイアス電圧の不均一を補正するために設けられている。例えば、プラズマ処理装置の電極間において生起されるセルフバイアス電圧が、電極の中心付近では高く、周辺付近では低くなるという現象が生じることがある。このような現象は、装置の経年劣化などが生じた場合において特に生じやすい。
【0004】
直流パルス電源装置から直流パルスを印加することにより、セルフバイアス電圧の不均一を補正し、電極間においてセルフバイアス電圧を均一に生起させることができる。これにより、プラズマ処理装置において、高いイオン加速エネルギが電極間に均一に生じ、処理対象物に対し、高速でイオンを均一に照射することが可能になる。
【0005】
直流パルス電源装置では、発生させた直流パルスの電圧値を検出するための電圧検出回路が設けられる。この電圧検出回路には、入力電圧を分圧する分圧回路が設けられる。分圧回路は、直列接続された複数の抵抗素子及び/又はコンデンサにより構成され、その分圧比に応じた電圧を出力する。出力電圧の値に基づき、生成された直流パルスの電圧値が演算される。高電圧を検出する場合には、主回路への影響を低減するため、分圧回路においては高いインピーダンスを有する抵抗素子又はコンデンサが使用される。
【0006】
直流パルス電源装置における電圧検出回路は、パルスの周波数(基本周波数)の数倍まで安定した周波数特性を有することが求められる。一般に、抵抗素子は高抵抗になるほど低周波数領域でもインピーダンスが下がる傾向にある。また、コンデンサは、低容量となるほどインピーダンスが高くなり、周波数特性は良好となるが、配線、基板、又は筐体の間などに発生する寄生容量の影響を受けてしまう。このような理由から、直流パルス電源装置における電圧検出回路において、直流パルスの電圧を検出する場合に、安定した周波数特性を得ることが難しく、このため、高精度に直流パルスの電圧の値を計測することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-90770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高精度に直流パルスの電圧値を計測することができる直流パルス電源装置、及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る直流パルス電源装置は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との導通状態を切り替えることにより、直流電圧を直流パルスに変換するパルス変換部と、分圧回路を含み、前記直流パルス電圧の電圧値を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部への入力信号に対する前記電圧検出部の出力信号に基づいて取得された前記電圧検出部の伝達関数の逆関数を校正データとして生成する校正データ生成部と、前記校正データに基づいて、前記電圧検出部の出力を校正する電圧校正部とを備える。
【0010】
また、本発明に係るプラズマ処理装置は、処理容器内に配置される第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と対向するように配置され、その表面に被加工物を載置可能とされる第2電極と、高周波電力を前記第1電極に出力する高周波電源装置と、直流パルスを前記第1電極に出力する直流パルス電源装置とを備える。前記直流パルス電源装置は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との導通状態を切り替えることにより、直流電圧を直流パルスに変換するパルス変換部と、分圧回路を含み、前記直流パルス電圧の電圧値を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部への入力信号に対する前記電圧検出部の出力信号に基づいて取得された前記電圧検出部の伝達関数の逆関数を校正データとして生成する校正データ生成部と、前記校正データに基づいて、前記電圧検出部の出力をする電圧校正部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度に直流パルスの電圧値を計測することができる直流パルス電源装置、及びプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る直流パルス電源装置200を用いたプラズマ処理装置100の構成を説明するブロック図である。
図2】直流パルス電源装置200の構成を更に詳細に説明する回路図である。
図3】電圧検出部209の構成を説明する回路図である。
図4】校正用信号発生部213、校正データ生成部214、及び電圧校正部215の動作を説明する動作図である。
図5】電圧検出部209の回路定数の設定例、伝達関数G(s)の例、及び逆関数G-1(s)の例を示す。
図6】電圧検出部209への入力信号、出力信号、及び校正後の出力信号の一例を示すグラフである。
図7】電圧検出部209の回路定数の設定例、伝達関数G(s)の例、及び逆関数G-1(s)の別の例を示す。
図8】電圧検出部209への入力信号、出力信号、及び校正後の出力信号の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0014】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0015】
図1は、実施の形態に係る直流パルス電源装置200を用いたプラズマ処理装置100の構成を説明するブロック図である。プラズマ処理装置100は、処理容器内に配置され、後述する高周波電力及び直流パルスを印加されるカソード電極101(第1電極)と、このカソード電極101と対向するように配置され、その表面に加工対象物(例えば半導体ウェハ)を載置可能とされる対向電極102(第2電極)とを備えている。なお、加工対象物は、対向電極102に設置された静電チャック(図示せず)により対向電極102に対し固定され得る。
【0016】
対向電極102は、処理容器とともに電気的に接地されている。処理容器においては、例えば対向電極102の表面に加工対象物が設置される。処理容器は、図示しない処理ガス供給装置と接続されると共に、図示しない排気装置に接続される。
【0017】
高周波電源装置400から高周波電力がカソード電極101に印加されると共に、負方向にのみ振幅が変化する(負極性の)直流パルスが直流パルス電源装置200からカソード電極101に印加される。高周波電源装置400は、単一の周波数を出力する高周波電源装置であってもよいし、複数、例えば2種類の周波数を重畳して出力する高周波電源装置であってもよい。一例として、高周波数(例えば13.56MHz~60MHz程度)と低周波数(例えば400kHz~2MHz程度)を重畳させて発生させる高周波電源装置であってもよい。
【0018】
直流パルス電源装置200から印加される直流パルスは、周知のように、高周波電源装置400により処理容器内に放電プラズマを励起する場合において、セルフバイアス電圧の不均一を補正し、電極間においてセルフバイアス電圧を均一に生起させるために印加されるものである。直流パルス電源装置200から供給される直流パルスの電圧値は、セルフバイアス電圧が-1000V程度である場合、例えば-1500V程度に設定される。すなわち、直流パルスの電圧値は、セルフバイアス電圧よりも絶対値が大きい電圧に設定される。直流パルス電源装置200とプラズマ処理装置100との間には、高周波電源装置400からの高周波を遮断するためのローパスフィルタ300が接続されている。また、高周波電源装置400とプラズマ処理装置100との間には、プラズマ処理装置100の負荷インピーダンスを高周波電源装置400のインピーダンスに整合させるための整合器500が接続されている。高周波電源装置400及び直流パルス電源装置200を制御するための制御部として、上位制御装置600が設けられている。
【0019】
図2を参照して、直流パルス電源装置200の構成を更に詳細に説明する。この直流パルス電源装置200は、直流電源201と、DC/DC変換部202と、DC/DC制御部203と、電圧検出部204と、パルス変換部205と、ダンピング抵抗206と、電圧検出部209と、電流検出部210と、パルス制御部211と、損失算出部212と、校正用信号発生部213と、校正データ生成部214と、電圧校正部215と、異常検出部216とを備えている。
【0020】
直流電源201は、直流パルスを生成するための直流電圧を生成する電源回路である。DC/DC変換部202は、直流電圧を更に異なる電圧値の直流電圧に変換する回路である。DC/DC変換部202は、DC/DC制御部203からの制御に従って動作する。DC/DC制御部203は、外部から設定された電圧設定値Vsetに従い、DC/DC変換部202を制御する。電圧検出部204は、DC/DC変換部202が出力した直流電圧の電圧値を検出し、その検出結果をDC/DC制御部203に出力する。DC/DC制御部203は、この検出結果に従い、DC/DC変換部202の出力電圧を制御する。
【0021】
パルス変換部205は、第1スイッチング素子(ハイサイドスイッチング素子)としてのトランジスタQ1と、第2スイッチング素子(ローサイドスイッチング素子)としてのトランジスタQ2を備える。トランジスタQ1及びQ2は、パルス変換部205の入力端子と基準端子(接地端子)との間にダンピング抵抗206を介して直列に接続される。トランジスタQ1及びQ2のゲート端子は、パルス制御部211からゲート信号SW1、SW2が供給され、トランジスタQ1及びQ2は交互に導通状態に切り替えられる。これにより、ダンピング抵抗206を介して直流パルスが供給される。なお、パルス制御部211は、高周波電源装置400から受信された同期信号Ssyに従い、高周波電源装置400と同期して動作可能とされている。なお、このパルス変換部205は、一例としてトランジスタQ1のドレインが電気的に接地されたハイサイド接地型のパルス変換部とされている。これに代えて、トランジスタQ2のドレインを電気的に接地したローサイド設置型のパルス変換部とすることも可能である。
【0022】
ダンピング抵抗206は、第1の抵抗素子207と、第2の抵抗素子208とを直列に接続して構成される。電圧検出部209は、第1の抵抗素子207と第2の抵抗素子208との間の接続ノードの電圧を検出するよう構成されている。電圧検出部209の構成の詳細は後述する。電流検出部210は、電圧検出部209の後段に設けられて、ダンピング抵抗206(第1の抵抗素子207又は第2の抵抗素子208)に流れる電流を検出する。なお、電圧検出部209と電流検出部210の設置位置を逆にしてもよい。
【0023】
校正用信号発生部213は、電圧検出部209からの信号に従い、電圧検出部209を校正するための校正用信号を生成する。校正用信号は、一例としては、電圧検出部209の伝達関数G(s)である。校正用信号発生部213は、一例として、入力信号x(t)を発生させて電圧検出部209に入力し、その出力信号y(t)を取得することにより、電圧検出部209の伝達関数G(s)=y(t)/x(t)を得ることができる。なお、入力信号x(t)は、例えば100Hz~1MHz程度の交流信号である。校正データ生成部214は、校正用信号に従い、電圧検出部209の校正のための校正データを生成する。校正用信号が電圧検出部209の伝達関数G(s)である場合、校正データは、その伝達関数の逆関数1/G(s)であり得る。電圧校正部215は、校正データ生成部214で得られた校正データに従い、電圧検出部209の検出電圧を校正する。電圧校正部215の出力信号(校正後の検出信号)は、損失算出部212及び異常検出部216に出力される。
【0024】
損失算出部212は、ゲート信号SW1、SW2、及び電圧校正部215の出力信号、及び電流検出部210の出力信号に従い、直流パルス電源装置200の損失を算出すると共に、その損失が閾値THlossを超えている場合、異常信号Sab1をDC/DC制御部203及び上位制御装置600に向けて出力する。DC/DC制御部203は、異常信号Sab1を受信した場合、DC/DC変換部202を制御して、直流電圧の供給を停止する。また、上位制御装置600は、異常信号Sab1を受信すると、高周波電源装置400を制御して、高周波信号の出力を停止する。
【0025】
異常検出部216は、電圧校正部215の出力が電圧上限値THvを超えている場合、異常信号Sab2をDC/DC制御部203、及び上位制御装置600に向けて出力する。DC/DC制御部203は、異常信号Sab2を受信すると、DC/DC変換部202を制御して、直流電圧の供給を停止する。また、上位制御装置600は、異常信号Sab2を受信すると、高周波電源装置400を制御して、高周波信号の出力を停止する。
【0026】
図3を参照して、電圧検出部209の構成を更に詳しく説明する。電圧検出部209では、第1の抵抗素子2091(抵抗値R3)と第2の抵抗素子2092(抵抗値R4)がノードO1とノードO4との間においてノードO2を介して直列接続されている。ノードO1は、電圧検出部209の入力端子である。また、第1のコンデンサ2093(容量値C3)と第2のコンデンサ2094(容量値C4)が、同様にノードO1とノードO4の間にノードO3を介して直列接続されている。ノードO2とO3は電圧検出部209の出力端子とされている。
【0027】
次に、図4を参照して、校正用信号発生部213、校正データ生成部214、及び電圧校正部215の動作を説明する。校正動作を行う場合、電流検出部210の出力端子と、校正用信号発生部213の出力端子とが同軸ケーブルで接続される。そして、校正用信号発生部213は、電流検出部210を介して入力信号x(t)を電圧検出部209に入力させ、出力信号y(t)を受信する。校正用信号発生部213は、この入力信号x(t)とy(t)とに基づき、電圧検出部209の伝達関数G(s)=y(t)/x(t)を取得する。
【0028】
校正データ生成部214は、得られた伝達関数G(s)から、伝達関数G(s)の逆関数G-1(s)=1/G(s)を取得する。電圧校正部215は、この逆関数G-1(s)を電圧検出部209の出力信号に乗算することで、電圧検出部209の出力信号を校正する。
【0029】
なお、図3の電圧検出部209(分圧回路)は、R3×C3=R4×C4が成立する場合、理論的には電圧検出部209の伝達関数G(s)は定数(=R4/(R3+R4)))となり、周波数依存性を有さないことになる。しかし、周囲の配線、素子、基板、筐体等に発生する寄生容量の影響を回避することが難しい。また、設計時・出荷時には周波数依存性を有していなくても、素子の経年劣化により徐々に周波数依存性が生じることが起こり得る。従って、電圧検出部209から周波数依存性を除くことは困難である。
【0030】
一方、この実施の形態の手法によれば、ソフトウエア上の演算により周波数依存性が除かれた電圧検出部209の出力を得ることができる。経年劣化の影響を受けることも無いため、高精度で信頼性が高い直流パルスの電圧値の検出が可能になる。また、電圧検出部209の伝達関数を取得することから、電圧検出部209の周囲の配線等の構造に起因する寄生容量成分を含んだ形での伝達関数の保障が可能になる。
【0031】
図5は、電圧検出部209の第1の抵抗素子2091、第2の抵抗素子2092、第1のコンデンサ2093、及び第2のコンデンサ2094において、R3=10MΩ、R4=10kΩ、C3=0.5pF、C4=1000pFに設定した場合((a))における伝達関数G(s)の例((b))、及びその逆関数G-1(s)の例((c))を示している。また、図6は、図5(a)の電圧検出部209への入力信号の波形((a))、電圧検出部209からの出力信号の波形((b))、及び校正後の出力信号の波形((c))の一例を示す。図5(a)のような回路定数を設定する場合、第1の抵抗素子2091と第2の抵抗素子2092の分圧回路の分圧比は10kΩ/10MΩ=1/1000で、減衰率は-60dBである。一方、第1のコンデンサ2093と第2のコンデンサ2094の分圧回路の分圧比は、0.5pF/1000pF=1/2000であり、減衰率‐66dBであり、-6dBの差がある。また、変曲点(カットオフ周波数)は、1/(2πR1・C1)=16kHZ、1/(2πR2・C2)=32kHzである。
【0032】
電圧検出部209が図5(b)に示すような伝達関数G(s)を有している場合においては、図6(a)のような矩形波が電圧検出部209に入力されても、出力信号は図6(b)のような鈍った信号となる。しかし、伝達関数G(s)の逆関数G-1(s)を演算し、これを電圧検出部209の出力信号に乗算して校正することにより、校正後の信号は、図6(c)のような鈍りが除去された矩形波となり得る。すなわち、周波数依存性の無い電圧の検出が可能になる。
【0033】
図7は、電圧検出部209の第1の抵抗素子2091、第2の抵抗素子2092、第1のコンデンサ2093、及び第2のコンデンサ2094において、R3=10MΩ、R4=10kΩ、C3=2pF、C4=1000pFに設定した場合((a))における伝達関数G(s)の例((b))、及びその逆関数G-1(s)の例((c))を示している。また、図8は、図7(a)の電圧検出部209への入力信号の波形((a))、電圧検出部209からの出力信号の波形((b))、及び校正後の出力信号の波形((c))の一例を示す。図7(a)のような回路定数を設定する場合、第1の抵抗素子2091と第2の抵抗素子2092の分圧回路の分圧比は10kΩ/10MΩ=1/1000で、減衰率は-60dBである。一方、第1のコンデンサ2093と第2のコンデンサ2094の分圧回路の分圧比は、2pF/1000pF=1/500であり、減衰率は-54dBであり、6dBの差がある。また、変曲点(カットオフ周波数)は、1/(2πR1・C1)=16kHZ、1/(2πR2・C2)=8kHzである。
【0034】
電圧検出部209が図7(b)に示すような伝達関数G(s)を有している場合においては、図8(a)のような矩形波が電圧検出部209に入力されても、出力信号は図8(b)のような鈍った信号となる。しかし、伝達関数G(s)の逆関数G-1(s)を演算し、これを電圧検出部209の出力信号に乗算して校正することにより、校正後の信号は、図8(c)のような鈍りが除去された矩形波となり得る。すなわち、周波数依存性の無い電圧の検出が可能になる。
【0035】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
100…プラズマ処理装置、 101…カソード電極、 102…対向電極、 200…直流パルス電源装置、 201…直流電源、 202…DC/DC変換部、 203…DC/DC制御部、 204…電圧検出部、 205…パルス変換部、 206…ダンピング抵抗、 207…第1の抵抗素子、 208…第2の抵抗素子、 209…電圧検出部、 210…電流検出部、 211…パルス制御部、 212…損失算出部、 213…校正用信号発生部、 214…校正データ生成部、 215…電圧校正部、 216…異常検出部、 300…ローパスフィルタ、 400…高周波電源装置、 500…整合器、 600…上位制御装置、 2091…第1の抵抗素子、 2092…第2の抵抗素子、 2093…第1のコンデンサ、 2094…第2のコンデンサ、 Q1…トランジスタ、 Q2…トランジスタ。
図1
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図7
図8