(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】端子、及び、コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20241008BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20241008BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R12/71
(21)【出願番号】P 2020171292
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 泰嗣
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282671(JP,A)
【文献】特開2005-222771(JP,A)
【文献】特開2008-059812(JP,A)
【文献】特開2019-102255(JP,A)
【文献】実開平06-060064(JP,U)
【文献】実開昭56-104104(JP,U)
【文献】実開昭54-050532(JP,U)
【文献】実開昭54-133390(JP,U)
【文献】特開2016-177955(JP,A)
【文献】特開2011-077022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/58
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されるコネクタのハウジングに保持されて前記回路基板に設けられるスルーホールに圧入されることになる端子であって、
前記スルーホールに圧入されることになる圧入部と、
前記ハウジングに保持されることになる保持部と、
前記圧入部と前記保持部とを繋ぐ連結部と、を備え、
前記保持部は、
前記ハウジングへ当該端子を保持させる際に押圧される保持用押圧面を有し、
前記連結部は、
前記保持用押圧面から延びる基端箇所と、前記スルーホールに前記圧入部を挿入する際の挿入方向に交差する方向における幅が前記基端箇所よりも広い幅広箇所と、前記挿入方向に延びるように前記幅広箇所に設けられる凹状箇所と、を有し、
前記連結部の前記凹状箇所は、
前記幅広箇所の一の表面にて前記幅広箇所の厚さ方向に窪み且つ前記一の表面の背面から前記厚さ方向に突出する凹凸形状を有する、
端子。
【請求項2】
請求項1
に記載の端子と、前記端子を保持するハウジングと、を備え、回路基板に設けられるスルーホールに前記端子を圧入するように実装されることになる、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装されるコネクタに用いられる端子、及び、そのようなコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コネクタを構成するハウジングの壁部に棒状の端子などの導電体を固定したコネクタが提案されている。例えば、従来のコネクタの一つでは、回路基板のスルーホールとの接続に用いられるプレスフィット端子が、ハウジングの壁部に設けられた貫通孔に圧入されている。このコネクタは、回路基板のスルーホールとプレスフィット端子とを位置合わせした状態で、ハウジングを専用の治具で回路基板に向けて押し付けることにより、ハウジングに固定されているプレスフィット端子をスルーホールに挿し込むようになっている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-004642号公報
【文献】特開平7-192799号公報
【文献】特開2015-210938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなプレスフィット端子(以下、単に「端子」ともいう。)は、一般に、スルーホールに挿入される圧入部を一端に有する棒状の本体部と、その本体部から突出する一対の突起部(いわゆる端子の肩)と、を有している。これら突起部は、端子をハウジングの貫通孔に圧入する際に外力を及ぼす箇所として用いられる。更に、これら突起部は、回路基板へコネクタを実装する際にハウジングを介して治具からの外力が及ぼされる箇所としても用いられる。
【0005】
ところで、コネクタの小型化等の観点から、従来に比べて細い端子や薄い端子が求められる場合がある。しかし、従来の端子を不用意に細型化または薄型化すると、端子を回路基板のスルーホールに圧入する際に端子に及ぼされる外力により、端子の本体部に座屈などの変形が生じる可能性がある。端子と回路基板との電気的接続の信頼性を高める観点において、このような変形を出来る限り抑制することが望ましい。
【0006】
本発明の目的の一つは、使用時に及ぼされる外力に対する強度に優れた端子、及び、そのような端子を用いるコネクタの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子およびコネクタは、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
回路基板に実装されるコネクタのハウジングに保持されて前記回路基板に設けられるスルーホールに圧入されることになる端子であって、
前記スルーホールに圧入されることになる圧入部と、
前記ハウジングに保持されることになる保持部と、
前記圧入部と前記保持部とを繋ぐ連結部と、を備え、
前記保持部は、
前記ハウジングへ当該端子を保持させる際に押圧される保持用押圧面を有し、
前記連結部は、
前記保持用押圧面から延びる基端箇所と、前記スルーホールに前記圧入部を挿入する際の挿入方向に交差する方向における幅が前記基端箇所よりも広い幅広箇所と、前記挿入方向に延びるように前記幅広箇所に設けられる凹状箇所と、を有し、
前記連結部の前記凹状箇所は、
前記幅広箇所の一の表面にて前記幅広箇所の厚さ方向に窪み且つ前記一の表面の背面から前記厚さ方向に突出する凹凸形状を有する、
端子であること。
[2]
上記[1]に記載の端子と、前記端子を保持するハウジングと、を備え、回路基板に設けられるスルーホールに前記端子を圧入するように実装されることになる、コネクタであること。
【0008】
上記[1]の構成の端子によれば、端子の保持部と圧入部との間にある連結部に、スルーホールに圧入部を挿入する際の挿入方向に交差する方向(即ち、幅方向)における幅が広い幅広箇所が設けられる。更に、幅広箇所には、挿入方向に延びる凹状箇所(例えば、溝)が設けられる。これにより、ハウジングに保持された端子を回路基板のスルーホールに圧入する際、保持部と圧入部とに挟まれて特に大きな外力を及ぼされることになる連結部の強度が高まり、上述した座屈などが生じることが抑制される。加えて、保持部の保持用押圧面に連結部が繋がる箇所(即ち、連結部の基端箇所)は幅広箇所よりも幅が狭いため、端子をハウジングに保持させる際に保持用押圧面を治具などで押圧する作業を、幅広箇所が妨げ難い。したがって、本構成の端子は、基板実装用のコネクタに用いられる端子としての本来の性能を損なうことなく、従来の端子に比べて使用時に及ぼされる外力に対する強度に優れる。
【0010】
更に、上記[1]の構成の端子によれば、連結部の凹状箇所は、幅広箇所の一の表面で厚さ方向に窪み且つ一の表面の背面から厚さ方向に突出する形状を有する凹凸形状(いわゆるエンボス状の形状)を有している。このような構造の連結部を有する端子は、外力に対する強度に優れることに加え、プレス成形などによって生産し易いため生産性にも優れる。
【0011】
上記[2]の構成のコネクタによれば、端子の保持部と圧入部との間にある連結部に、スルーホールに圧入部を挿入する際の幅方向における幅が広い幅広箇所が設けられる。更に、幅広箇所には、挿入方向に延びる凹状箇所が設けられる。これにより、ハウジングに保持された端子を回路基板のスルーホールに圧入する際、保持部と圧入部とに挟まれて特に大きな外力が及ぼされることになる連結部の強度が高まり、上述した座屈などが生じることが抑制される。加えて、保持部の保持用押圧面に連結部が繋がる箇所(即ち、連結部の基端箇所)は幅広箇所よりも幅が狭いため、端子をハウジングに保持させる際に保持用押圧面を治具などで押圧する作業を、幅広箇所が妨げ難い。したがって、本構成のコネクタは、従来の端子に比べて強度に優れる端子を備えることで、回路基板に実装された際の電気的接続の信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用時に及ぼされる外力に対する強度に優れた端子、及び、そのような端子を用いるコネクタを提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、回路基板に実装された本発明の実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコネクタと、回路基板とを示す側面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1のA-A断面の一部を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)のB部の拡大図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の実施形態に係る端子を示す正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のC部の拡大図であり、
図4(c)は、
図4(a)のD-D断面図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、種々の変形例の凹凸部を示す、
図4(c)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。コネクタ1は、
図1に示すように、回路基板4に実装される基板実装型のコネクタであり、複数のプレスフィット端子2と、複数のプレスフィット端子2を保持するハウジング3と、を備える。回路基板4に実装されたコネクタ1は、ハウジング3の後述するフード部32(
図1参照)に相手側コネクタの相手側ハウジング(図示省略)が嵌合された状態で、使用される。
【0016】
以下、説明の便宜上、
図1~
図5に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「上」、及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。上下方向は、コネクタ1と相手側コネクタとの嵌合方向、並びに、プレスフィット端子2の回路基板4のスルーホール41(
図2及び
図3(a)参照)への圧入方向(挿入方向)、と一致している。以下、コネクタ1を構成する各部品について順に説明する。
【0017】
先ず、プレスフィット端子2について説明する。プレスフィット端子2は、金属板に対してプレス加工を施すことで、
図4(a)に示すように、上下方向に延びる角棒状に形成されている。プレスフィット端子2の全体は、プレスフィット端子2の中心軸線に対して幅方向に対称な形状を有している。プレスフィット端子2の厚さ(前後方向の長さ)は、後述する凹凸部21(
図4(a)及び
図4(c)参照)を除いて、全域に亘って一定となっている。
【0018】
具体的には、プレスフィット端子2は、
図4(a)に示すように、上下方向に延びるタブ部11と、タブ部11の下側に連続して上下方向に延びる保持部12と、保持部12の下側に連続して上下方向に延びる連結部13と、連結部13の下側に連続して上下方向に延びる圧入部14と、から構成される。
【0019】
タブ部11は、断面が略正方形の角棒状の部分であり、相手側ハウジングに収容されている相手側端子(メス端子、図示省略)に挿入されるオス端子として機能する。タブ部11を相手側端子に挿入し易くするため、タブ部11の上端部(基端部)は、先細り形状となっている。
【0020】
保持部12は、ハウジング3の後述する圧入孔33(
図3等参照)に圧入されて保持される部分である。保持部12は、
図4(b)に示すように、タブ部11の下側に連続し且つタブ部11より幅が広い略矩形平板状の第1保持部15と、第1保持部15の下側に連続し且つ第1保持部15より幅が広い略矩形平板状の第2保持部16と、で構成されている。第2保持部16の幅は、プレスフィット端子2の他のどの部分の幅よりも広い。
【0021】
第2保持部16の上端面における第1保持部15より幅方向両外側に位置する一対の部分は、回路基板4のスルーホール41へのプレスフィット端子2(圧入部14)の挿入時に押圧される(外力が及ぼされる)挿入用押圧面16aとして機能する。第2保持部16の下端面における後述する基部19a(
図4(a)参照)より幅方向両外側に位置する一対の部分は、ハウジング3(圧入孔33)へのプレスフィット端子2(保持部12)の挿入時に押圧される(外力が及ぼされる)保持用押圧面16bとして機能する。
【0022】
第1保持部15の幅方向両端面には、
図4(b)に示すように、幅方向外側に突出する圧入突起17が設けられている。圧入突起17は、保持部12(第1保持部15)をハウジング3の圧入孔33に挿入する際に圧入孔33に圧入される部位(圧入孔33の孔内面から押圧力を受ける部位)として機能する。
【0023】
連結部13は、保持部12と圧入部14とを所定間隔を空けて繋ぐ機能を果たす。連結部13は、上下方向に延びる幅広部18と、幅広部18の上側及び下側に連続して上下方向に延びる一対の基部19a,19bと、で構成されている。上側の基部19aは、第2保持部16の下側に連続している。下側の基部19bの下側は、圧入部14に連続している。基部19a,19bの幅は、タブ部11の幅と略等しく、且つ、第2保持部16の幅より狭い。幅広部18の幅は、基部19a,19bの幅より広く、且つ、第2保持部16の幅より狭い。
【0024】
幅広部18には、上下方向に延びる凹凸部21が設けられている。凹凸部21は、本例では、
図4(c)に示すように、幅広部18の幅方向中央部に設けられており、幅広部18の厚さ方向(前後方向)の一側端面にて厚さ方向に窪み且つ上下方向に延びる凹部21aと、幅広部18の厚さ方向の他側端面から厚さ方向に突出し且つ上下方向に延びる凸部21bと、を有する形状(いわゆるエンボス状の形状)を有している。
【0025】
本例では、幅広部18及び凹凸部21は、保持部12の挿入用押圧面16aと、圧入部14と、の間の上下方向の中央位置CP(
図4(a)参照)よりも上側(基端側)の位置から中央位置CPよりも下側(先端側)の位置まで延びている。即ち、幅広部18及び凹凸部21は、少なくとも中央位置CPを含んで延びるように構成されている。連結部13において、このように幅広部18及び凹凸部21を設けたことによる作用(即ち、連結部13の強化作用)については後述する。なお、
図4(a)では、説明の便宜上、中央位置CPとして、圧入部14の後述する接点部22の頂部と、挿入用押圧面16aと、の間の中点にあたる位置が図示されている。これは、後述される強化作用に関連しており、スルーホール41へ圧入部14を圧入する最終過程で、接点部22の頂部とスルーホール41の孔内面とが押圧接触する(即ち、接点部22の頂部を通じて圧入部14が外力を受ける)ためである。一方、圧入の初期過程では、接点部22の頂部よりも先端側にある圧入部14の側縁(即ち、接点部22のテーパ部)が、徐々にスルーホール41の開口縁や孔内面に接触し、外力を受けることになる。そのため、圧入の初期段階では、中央位置CPは、接点部22のテーパ部と、挿入用押圧面16aと、の間の中点にあたる位置であり、厳密には
図4(a)に示される位置とは僅かに相違する。しかし、このような中央位置CPの僅かな相違は、後述される強化作用には、実質的な影響を及ぼさない。そこで、以下、中央位置CPが
図4(a)に示す位置に存在するものとして、説明を続ける。
【0026】
圧入部14は、連結部13における下側の基部19bの下側に連続して上下方向に延び且つ幅方向両側に膨出する接点部22を有する。接点部22には、接点部22に対応した位置にて、前後方向に貫通し且つ上下方向に延びる空洞部23が形成されている。空洞部23の形成により、接点部22は、幅方向に弾性的に拡縮可能となっている。接点部22は、幅方向には膨出しているが、前後方向には膨出していない。圧入部14における接点部22は、回路基板4のスルーホール41に挿し込まれて圧入される部位として機能する。圧入部14を回路基板4のスルーホール41に挿入し易くするため、圧入部14における接点部22の下端部(先端部)は、先細り形状を有するテーパ部となっている。
【0027】
次いで、ハウジング3について説明する。樹脂成型品であるハウジング3は、本例では、
図1、
図2及び
図3(a)に示すように、幅方向及び前後方向に延びる略矩形平板状の端子保持部31と、端子保持部31の上端面から上方に突出して上方に開口する略矩形筒状のフード部32と、から構成されている。
【0028】
端子保持部31における、上方からみてフード部32の内部空間の一部に対応する領域には、
図3(a)に示すように、上下方向に貫通する複数の圧入孔33が、幅方向及び前後方向にマトリクス状に並ぶように形成されている。よって、複数の圧入孔33は、フード部32の内部空間と連通している。
【0029】
具体的には、圧入孔33は、
図3(b)に示すように、プレスフィット端子2の第1保持部15に対応する孔形状を有する第1圧入孔34と、第1圧入孔34の下側に連続し且つプレスフィット端子2の第2保持部16に対応する孔形状を有する第2圧入孔35と、で構成されている。第2圧入孔35の底面(上端面)における第1圧入孔34より幅方向両外側に位置する一対の部分は、プレスフィット端子2の挿入用押圧面16aと対面接触する当接面36として機能する。
【0030】
ハウジング3には、
図1、
図2及び
図3(a)に示すように、端子保持部31の下端面の4つの角部から下方にそれぞれ突出する4本の脚部37が設けられている。各脚部37の突出端面(下端面)からは、脚部37より細いピン部38が更に下方に延びている。4本のピン部38は、回路基板4に設けられた4つの位置決め孔42(
図2及び
図3(a)参照)に挿入されることになる。
【0031】
脚部37の突出端面におけるピン部38の外側に位置する環状の部分は、回路基板4のスルーホール41へのプレスフィット端子2(圧入部14)の挿入時にて、回路基板4の上端面と対面接触する当接面39として機能する。以上、コネクタ1を構成する各部品について説明した。
【0032】
次いで、プレスフィット端子2をハウジング3の対応する圧入孔33に圧入する際の手順について説明する。プレスフィット端子2をハウジング3の対応する圧入孔33に圧入するには、まず、プレスフィット端子2のタブ部11が圧入孔33の下方に位置するように、ハウジング3の端子保持部31の下方にプレスフィット端子2を配置する。次いで、プレスフィット端子2のタブ部11を圧入孔33に下方から貫通させた後、プレスフィット端子2の保持部12の保持用押圧面16bを専用の治具(図示省略)で上方に押し付けながら、プレスフィット端子2の保持部12を圧入孔33に下方から挿入していく。当該押し付けの進行に伴い、保持部12(第1保持部15)の圧入突起17が圧入孔33に圧入されていく。
【0033】
ここで、プレスフィット端子2の連結部13における保持用押圧面16bに繋がる箇所(即ち、基部19a)の幅が連結部13の幅広部18の幅よりも狭い。このため、保持用押圧面16bを専用の治具で押圧する作業を、連結部13の幅広部18が妨げ難い。
【0034】
専用の治具による保持用押圧面16bの押し付けは、プレスフィット端子2の保持部12の挿入用押圧面16aが圧入孔33の当接面36(
図3(b)参照)に当接するまで行われる。挿入用押圧面16aが当接面36に当接すると、保持部12の略全体が圧入孔33に収容された状態となり、プレスフィット端子2の圧入孔33への圧入が完了する(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
【0035】
このように、圧入孔33の当接面36に保持部12の挿入用押圧面16aを押し当てることで、上下方向(挿入方向)におけるプレスフィット端子2のハウジング3(端子保持部31)に対する位置決めを行うことができる。プレスフィット端子2の圧入孔33への圧入が完了した状態では、
図3(a)に示すように、プレスフィット端子2のタブ部11が、ハウジング3のフード部32の内部空間内に位置している。
【0036】
このようなプレスフィット端子2の圧入孔33への圧入作業は、1本のみのプレスフィット端子2の保持部12の保持用押圧面16bを押し付け可能な形状を有する治具を用いて、複数のプレスフィット端子2に対して1本ずつ順に行われてもよいし、複数のプレスフィット端子2の保持部12の保持用押圧面16bを同時に押し付け可能な形状を有する治具を用いて、複数のプレスフィット端子2に対して同時に行われてもよい。
【0037】
次いで、複数のプレスフィット端子2の圧入部14(より具体的には、接点部22)を回路基板4のスルーホール41に圧入する際の手順について説明する。複数のプレスフィット端子2を回路基板4のスルーホール41に圧入するには、まず、複数のプレスフィット端子2の圧入部14が回路基板4の複数のスルーホール41の上方にそれぞれ位置するように、回路基板4の上方にハウジング3を配置する(
図2参照)。
【0038】
次いで、ハウジング3の4つのピン部38を回路基板4の4つの位置決め孔42に挿入し、且つ、複数のプレスフィット端子2の圧入部14の下端部を回路基板4の複数のスルーホール41に上方から挿入させた後、ハウジング3の端子保持部31の上端面などの所定の複数箇所を専用の治具(図示省略)で同時に下方に押し付ける。これにより、この押し付け力を受けたハウジング3における複数の圧入孔33の当接面36が、複数のプレスフィット端子2の挿入用押圧面16a(即ち、プレスフィット端子2)を同時に下方に押し付ける。この結果、複数のプレスフィット端子2の接点部22が、回路基板4の複数のスルーホール41に上方から同時に挿入(圧入)されていく。
【0039】
接点部22がスルーホール41に挿入される際、接点部22は、スルーホール41の孔内面からの押圧を受けて幅方向内側に弾性変形した状態で下方に進む。このとき、挿入の初期過程では、接点部22のテーパ部がスルーホール41の開口縁や孔内面に接触し、挿入の途中段階から最終段階では、接点部22の頂部がスルーホール41の孔内面に接触することになる。そして、ハウジング3の4本の脚部37の当接面39が回路基板4の上端面に当接した時点で、プレスフィット端子2(接点部22)のスルーホール41への圧入が完了する(
図3(a)参照)。これにより、コネクタ1の回路基板4への実装が完了し、複数のプレスフィット端子2と、回路基板4に搭載されている複数の電子部品等と、が電気的に接続された状態になる。
【0040】
接点部22がスルーホール41に挿入(圧入)されていく過程においては、プレスフィット端子2における、保持部12の挿入用押圧面16aと、圧入部14(接点部22)の頂部と、の間に位置する部分に、大きな外力(圧縮応力)が及ぶ。このため、プレスフィット端子2における保持部12と圧入部14との間に位置する連結部13には、特に大きな外力が及びやすく、この結果、連結部13に座屈などの変形が生じ易い。この点、本実施形態では、連結部13に幅広部18が設けられ、更に、幅広部18には、上下方向(挿入方向)に延びる凹凸部21が設けられている。これにより、上下方向の圧縮荷重に対する連結部13の強度が高まるので、上述した座屈などが生じることが抑制される。
【0041】
更には、幅広部18に凹凸部21が設けられているので、幅広部18に凹凸部21が設けられない場合と比べて、上下方向の圧縮荷重に対する連結部13の強度を同等に維持しながら、幅広部18の幅を狭くすることができる。この結果、本例では、幅広部18の幅が第2保持部16の幅より狭いにも関わらず、上下方向の圧縮荷重に対する連結部13の強度が十分に確保されている。このため、幅広部18の幅が第2保持部16の幅より広いことに起因して隣接するプレスフィット端子2間のピッチ(間隔)が増大する、という問題が発生しない。
【0042】
更には、上述したように、連結部13における幅広部18及び凹凸部21は、上下方向(挿入方向)における挿入用押圧面16aと、接点部22の頂部と、の間の上下方向の中央位置CP(
図4(a)参照)よりも上側(基端側)の位置から中央位置CPよりも下側(先端側)の位置まで延びている。発明者による考察によれば、プレスフィット端子2を回路基板4のスルーホール41に圧入する際、中央位置CPに生じる応力が特に大きくなる。本実施形態では、中央位置CPを強化するように幅広部18および凹凸部21が設けられているので、上下方向の圧縮荷重に対する連結部13の強度が更に高まる。
【0043】
上述のように、コネクタ1の回路基板4への実装が完了した後、ハウジング3のフード部32に相手側コネクタの相手側ハウジングが嵌合される。これにより、フード部32の内部空間内に位置している複数のプレスフィット端子2のタブ部11と相手側ハウジングに収容された複数の相手側端子とが接続される。この結果、相手側ハウジングに収容された複数の相手側端子と、回路基板4に搭載されている複数の電子部品等と、が複数のプレスフィット端子2を介して電気的に接続された状態が得られる。
【0044】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るプレスフィット端子2によれば、プレスフィット端子2の保持部12と圧入部14との間にある連結部13に、スルーホール41に圧入部14を挿入する際の挿入方向に交差する幅方向における幅が広い幅広部18が設けられる。更に、幅広部18には、挿入方向に延びる凹凸部21が設けられる。これにより、ハウジング3に保持されたプレスフィット端子2を回路基板4のスルーホール41に圧入する際、保持部12と圧入部14とに挟まれて特に大きな外力が及ぶ連結部13の強度が高まり、連結部13座屈などが生じることが抑制される。加えて、プレスフィット端子2の連結部13が保持部12の保持用押圧面16bに繋がる箇所(即ち、基部19a)は幅広部18よりも幅が狭いため、プレスフィット端子2をハウジング3に取り付ける際、保持用押圧面16bを治具などで押圧する作業を幅広部18が妨げることがない。したがって、本実施形態に係るプレスフィット端子2は、回路基板4に実装されるコネクタ1に用いられるプレスフィット端子2としての本来の性能を損なうことなく、従来の端子に比べて強度に優れる。
【0045】
更に、本実施形態に係るプレスフィット端子2によれば、挿入方向における保持部12の挿入用押圧面16aと圧入部14(接点部22の頂部)との間の中央位置CPを少なくとも含むように、幅広部18および凹凸部21が設けられる。発明者による考察によれば、プレスフィット端子2を回路基板4のスルーホール41に圧入する際、この中央位置CPに生じる応力が特に大きくなる。本実施形態に係るプレスフィット端子2は、この中央位置CPを強化するように幅広部18および凹凸部21を設けることで、更に強度に優れる。
【0046】
更に、本実施形態に係るプレスフィット端子2によれば、連結部13の凹凸部21は、幅広部18の一の側面で厚さ方向に窪み且つ一の側面の背面から厚さ方向に突出する形状を有する形状(いわゆるエンボス状の形状)を有している。このような形状の連結部13を有するプレスフィット端子2は、強度に優れることに加え、プレス成形などによって大量生産し易く生産性に優れる。
【0047】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
上記実施形態では、プレスフィット端子2の連結部13は、上下方向に延びる幅広部18と、幅広部18の上側及び下側に連続して上下方向に延びる一対の基部19a,19bと、で構成されている(
図4(a)参照)。これに対し、プレスフィット端子2の連結部13において、下側の基部19bが省略されていてもよい。即ち、連結部13における幅広部18の下側が、圧入部14に連続していてもよい。
【0049】
更に、上記実施形態では、凹凸部21は、幅広部18の幅方向中央部に設けられている(
図4(c)参照)。これに対し、
図5(a)~
図5(d)に示すように、凹凸部21が、幅広部18の幅方向全域に亘って設けられてもよい。
【0050】
具体的には、
図5(a)に示す例では、断面視にて、凹凸部21は、略V字状の形状を有しており、1箇所の凹部21aと、1箇所の凸部21bとを有している。
図5(b)に示す例では、断面視にて、凹凸部21は、略U字状の形状を有しており、1箇所の凹部21aと、1箇所の凸部21bとを有している。
図5(c)に示す例では、断面視にて、凹凸部21は、略S字状の形状を有しており、2箇所の凹部21aと、2箇所の凸部21bとを有している。
図5(d)に示す例では、断面視にて、凹凸部21は、波状(正弦波状)の形状を有しており、3箇所の凹部21aと、3箇所の凸部21bとを有している。
【0051】
ここで、上述した本発明に係るプレスフィット端子2及びコネクタ1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
回路基板(4)に実装されるコネクタ(1)のハウジング(3)に保持されて前記回路基板(4)に設けられるスルーホール(41)に圧入されることになる端子(2)であって、
前記スルーホール(41)に圧入されることになる圧入部(14)と、
前記ハウジング(3)に保持されることになる保持部(12)と、
前記圧入部(14)と前記保持部(12)とを繋ぐ連結部(13)と、を備え、
前記保持部(12)は、
前記ハウジング(3)へ当該端子(2)を保持させる際に押圧される保持用押圧面(16b)を有し、
前記連結部(13)は、
前記保持用押圧面(16b)から延びる基端箇所(19a)と、前記スルーホール(41)に前記圧入部(14)を挿入する際の挿入方向に交差する方向における幅が前記基端箇所(19a)よりも広い幅広箇所(18)と、前記挿入方向に延びるように前記幅広箇所(18)に設けられる凹状箇所(21)と、を有する、
端子(2)。
[2]
上記[1]に記載の端子(2)において、
前記保持部(12)は、
前記スルーホール(41)へ前記圧入部(14)を挿入する際に押圧される挿入用押圧面(16a)を有し、
前記連結部(13)は、
前記挿入方向における前記挿入用押圧面(16a)と前記圧入部(14)との間の中央位置(CP)よりも基端側の箇所から前記中央位置(CP)よりも先端側の箇所まで延びるように、前記幅広箇所(18)及び前記凹状箇所(21)を有する、
端子(2)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子(2)において、
前記連結部(13)の前記凹状箇所(21)は、
前記幅広箇所(18)の一の表面にて前記幅広箇所(18)の厚さ方向に窪み且つ前記一の表面の背面から前記厚さ方向に突出する凹凸形状を有する、
端子(2)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の端子(2)と、前記端子(2)を保持するハウジング(3)と、を備え、回路基板(4)に設けられるスルーホール(41)に前記端子(2)を圧入するように実装されることになる、コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0052】
1 コネクタ
2 プレスフィット端子(端子)
3 ハウジング
4 回路基板
12 保持部
13 連結部
14 圧入部
16a 挿入用押圧面
16b 保持用押圧面
18 幅広部(幅広箇所)
19a 基部(基端箇所)
21 凹凸部(凹状箇所)
41 スルーホール
CP 中央位置