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特許7568478燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法、並びに、この組成分析装置を備える原動機制御装置及びこの組成分析方法を含む原動機制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法、並びに、この組成分析装置を備える原動機制御装置及びこの組成分析方法を含む原動機制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/40 20060101AFI20241008BHJP
   G01N 33/22 20060101ALI20241008BHJP
   G01N 25/36 20060101ALN20241008BHJP
   G01N 9/36 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
F02C9/40 A
G01N33/22 E
G01N25/36
G01N9/36 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020181893
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072451
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 俊文
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬太
(72)【発明者】
【氏名】林 明典
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-060866(JP,A)
【文献】特開2012-225668(JP,A)
【文献】特開2003-065069(JP,A)
【文献】特表2020-514714(JP,A)
【文献】特開平10-239308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/40
G01N 9/36
G01N 25/36
G01N 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析装置であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測する発熱量計測装置と、
前記燃料ガスの密度を計測する密度計測装置と、
前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量及び前記密度計測装置によって計測された前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算する組成演算部を含む制御装置と
を備え、
前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を前記制御装置に予め規定しておき、
前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量をLHV とし、
前記密度計測装置によって計測された前記密度をρ とし、
前記不活性ガスの密度をρ とし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数を、定数α及びβを用いてLHV =αρ +βとすると、
前記組成演算部は、下記式
【数1】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する燃料ガスの組成分析装置。
【請求項2】
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析装置であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測する発熱量計測装置と、
前記燃料ガスの密度を計測する密度計測装置と、
前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量及び前記密度計測装置によって計測された前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算する組成演算部を含む制御装置と
を備え、
前記可燃性ガスの密度ρ に対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHV との関係を表す関数を前記制御装置に予め規定しておき、
前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量をLHVとし、
前記密度計測装置によって計測された前記密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数をLHV=f(ρ)とすると、
前記組成演算部は、前記関数の変数ρにρを代入したf(ρ)を用いた下記式
【数2】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する燃料ガスの組成分析装置。
【請求項3】
前記関数を、定数α及びβを用いてf(ρ)=αρ+βとすると、
前記組成演算部は、前記関数の変数ρにρを代入した(αρ+β)を用いた下記式
【数3】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する、請求項に記載の燃料ガスの組成分析装置。
【請求項4】
前記燃料ガスを燃焼させる燃焼器を備えた原動機を制御する原動機制御装置であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の組成分析装置と、
前記燃焼器が備える互いに異なる第1ノズル及び第2ノズルそれぞれに供給される前記燃料ガスの比率である燃料比率を調節するための燃料比率制御部と
を備え、
前記制御装置は燃料制御部をさらに備え、
前記燃料制御部は、前記組成分析装置によって得られた前記燃料ガスの組成に基づいて、前記燃料比率を補正するための燃料制御指令を算出し前記燃料比率制御部に出力する原動機制御装置。
【請求項5】
前記燃料比率制御部は、前記制御装置の内部に設けられるとともに前記燃料制御指令を受けて前記燃料比率をプログラムにより制御するように構成されている、請求項に記載の原動機制御装置。
【請求項6】
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析方法であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測するステップと、
前記燃料ガスの密度を計測するステップと、
計測された前記発熱量及び前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算するステップと
を含み、
前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を予め規定しておき、
計測された前記発熱量をLHV とし、
計測された前記密度をρ とし、
前記不活性ガスの密度をρ とし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数を、定数α及びβを用いてLHV =αρ +βとすると、
下記式
【数4】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する燃料ガスの組成分析方法。
【請求項7】
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析方法であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測するステップと、
前記燃料ガスの密度を計測するステップと、
計測された前記発熱量及び前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算するステップと
を含み、
前記可燃性ガスの密度ρ に対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHV との関係を表す関数を予め規定しておき、
計測された前記発熱量をLHVとし、
計測された前記密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数をLHV=f(ρ)とすると、
前記関数の変数ρにρを代入したf(ρ)を用いた下記式
【数5】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する燃料ガスの組成分析方法。
【請求項8】
前記関数を、定数α及びβを用いてf(ρ)=αρ+βとすると、
前記関数の変数ρにρを代入した(αρ+β)を用いた下記式
【数6】
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する、請求項に記載の燃料ガスの組成分析方法。
【請求項9】
前記燃料ガスを燃焼させる燃焼器を備えた原動機を制御する原動機制御方法であって、
請求項のいずれか一項に記載の組成分析方法を備え、
前記組成分析方法によって得られた前記燃料ガスの組成に基づいて、前記燃焼器が備える互いに異なる第1ノズル及び第2ノズルそれぞれに供給される前記燃料ガスの比率である燃料比率を補正するための燃料制御指令を算出し出力する原動機制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法、並びに、この組成分析装置を備える原動機制御装置及びこの組成分析方法を含む原動機制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに供給される燃料ガス中に窒素のような不活性ガスが含まれている場合、燃料ガス中の不活性ガスの濃度は燃料ガスの燃焼性に影響を与える。特許文献1には、不活性ガスの濃度が時系列的に変化する燃料ガスを用いた場合でも、ガスタービンにおいて燃料ガスを安定燃焼させることが可能な燃料流量制御装置が記載されている。この燃料流量制御装置では、燃料ガス中の不活性ガスの濃度を測定し、測定された不活性ガスの濃度に基づいて、燃料ガスの供給流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-127197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料ガス中の不活性ガスの濃度測定には一般的にガスクロマトグラフィが使用されるが、ガスクロマトグラフィは検出時間が長いので、時々刻々と燃料ガス中の不活性ガスの濃度が変化する場合には、特許文献1に記載の燃料流量制御装置では燃料流量の制御が難しくなるといった課題がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、迅速に燃料ガスの組成を分析できる燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法、並びに、この組成分析装置を備える原動機制御装置及びこの組成分析方法を含む原動機制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る燃料ガスの組成分析装置は、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析装置であって、前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測する発熱量計測装置と、前記燃料ガスの密度を計測する密度計測装置と、前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量及び前記密度計測装置によって計測された前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算する組成演算部を含む制御装置とを備え、前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を前記制御装置に予め規定しておき、前記発熱量計測装置によって計測された前記発熱量をLHV とし、前記密度計測装置によって計測された前記密度をρ とし、前記不活性ガスの密度をρ とし、前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、前記関数を、定数α及びβを用いてLHV =αρ +βとすると、前記組成演算部は、下記式
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0007】
また、本開示に係る燃料ガスの組成分析方法は、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析方法であって、前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測するステップと、前記燃料ガスの密度を計測するステップと、計測された前記発熱量及び前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算するステップとを含み、前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を予め規定しておき、計測された前記発熱量をLHV とし、計測された前記密度をρ とし、前記不活性ガスの密度をρ とし、前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、前記関数を、定数α及びβを用いてLHV =αρ +βとすると、下記式
に基づいて前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法によれば、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置及びこの組成分析装置を備える原動機制御装置の構成図である。
図2】本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置が設けられたガスタービンの燃焼器の構成を示す模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置が備える制御装置の構成模式図である。
図4】本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置が燃料ガスの密度及び発熱量を用いて前記燃料ガスの組成を演算する原理を説明するためのグラフである。
図5】本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置が燃料ガスの密度及び発熱量を用いて前記燃料ガスの組成を演算する別の原理を説明するためのグラフである。
図6】本開示の一実施形態に係る原動機制御装置によって、燃料ガス中の不活性ガスの濃度及び燃料ガスの発熱量から燃料比率を算出するための制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による燃料ガスの組成分析装置及び組成分析方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置及び原動機制御装置の構成>
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置20は、原動機であるガスタービン1に供給される燃料ガスの組成を分析するためのものである。燃料ガスには、燃料成分すなわち炭化水素燃料のような可燃性ガスと、窒素のような不活性ガスとが含まれており、組成分析装置20が分析する燃料ガスの組成とは具体的には、燃料ガス中の不活性ガスの濃度又は可燃性ガスの濃度若しくはその両方を意味する。以下で説明する実施形態では、燃料ガスの組成の分析として燃料ガス中の不活性ガスの濃度を求める形態で説明するが、実質的には、燃料ガス中の可燃性ガスの濃度を求めることや、不活性ガス及び可燃性ガスそれぞれの濃度を求めることと同義である。
【0012】
ガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料ガスを用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン3とを備えている。タービン3には、タービン3によって駆動される発電機5が連結されている。燃焼器4には、図示しない燃料供給源に一端が接続された燃料供給ライン6の他端が接続されている。
【0013】
図2に示されるように、燃焼器4は外筒11を備え、外筒11の内部には、外筒11の軸線を中心とする径方向に所定間隔をあけて内筒12が設けられている。内筒12の先端部に尾筒13が連結されている。外筒11と内筒12との間には、圧縮機2(図1参照)により圧縮された圧縮空気が流通するリング形状の流路18が形成されている。内筒12の内部には、第1バーナであるパイロット燃焼バーナ14と、パイロット燃焼バーナ14を取り囲むように設けられた第2バーナである複数のメイン燃焼バーナ15とが配置されている。パイロット燃焼バーナ14は第1のノズルであるパイロットノズル16を備え、各メイン燃焼バーナ15は第2ノズルであるメインノズル17を備えている。
【0014】
図1に示されるように、組成分析装置20は、燃料供給ライン6に設けられ燃料ガスの密度及び燃料ガスの単位量(単位容積又は単位質量等)当たりの発熱量をそれぞれ計測する密度計測装置21及び発熱量計測装置22と、密度計測装置21及び発熱量計測装置22のそれぞれに電気的に接続された制御装置23とを備えており、制御装置23は、密度ρ及び発熱量LHVの計測値をそれぞれ、密度計測装置21及び発熱量計測装置22から電気信号として入力するようになっている。密度計測装置21及び発熱量計測装置22の構成は特に限定するものではなく、密度及び発熱量を計測できるものであればどのような構成のものを使用してもよい。また、密度計測装置21及び発熱量計測装置22はそれぞれ別体の装置であってもよいし、密度及び発熱量の両方を計測できる1つの装置であってもよい。後者の構成の一例として、例えば、防爆型熱量計を使用することができる。
【0015】
ガスタービン1には、組成分析装置20によって分析された燃料ガスの組成に基づいてガスタービン1の運転を制御する原動機制御装置30を設けることができる。原動機制御装置30は組成分析装置20を備えている。以下で説明する実施形態では、ガスタービン1の運転の制御として、パイロットノズル16(図2参照)及びメインノズル17(図2参照)のそれぞれに供給される燃料ガスの比率である燃料比率を調節することを例に説明するが、必ずしもこの形態に限定するものではない。例えば、ガスタービン1の運転の制御として、不活性ガスによる燃焼不良を解消するため、複数の燃焼バーナを切り替え制御することにより、燃空比が高くなるように調整することもできる。この実施形態では、燃料供給ライン6において密度計測装置21及び発熱量計測装置22よりも下流側に、燃料比率を調節するための燃料比率制御部31(例えば、パイロットノズル16及びメインノズル17のそれぞれに供給される燃料ガスの流量を制御する制御弁)が原動機制御装置30の構成要件の1つとして設けられている。尚、この実施形態では、燃料比率制御部31は例えば、制御弁として制御装置23の外部に設けられるが、燃料ガスの比率の調整はプログラム制御とすることも可能であるため、この場合には例えば、燃料比率をプログラムにより制御するように構成された燃料比率制御部31を制御装置23の内部に設けることもできる。この場合、燃料比率制御部31は制御装置23内に設けられるので、原動機制御装置30の構成機器の数を減らすことができる。
【0016】
図3に示されるように、組成分析装置20の構成要件としての制御装置23は、密度計測装置21によって計測された密度及び発熱量計測装置22によって計測された発熱量を用いて燃料ガスの組成を演算する組成演算部24を備えている。また、組成分析装置20を備えた原動機制御装置30がガスタービン1に設けられる場合、制御装置23は、燃料比率を補正するための燃料制御指令を算出し燃料比率制御部31へ出力する燃料制御部25を備えている。
【0017】
また、制御装置23の外部には、燃料ガス中の不活性ガスの濃度に応じた燃料比率とするために、燃料制御部25から出力される燃料制御指令を受け、パイロットノズル16及びメインノズル17への燃料ガスの供給を制御する上述した燃料比率制御部31が設けられる。ここで、制御装置23と燃料比率制御部31とは電気的に接続され、燃料制御指令が電気信号として燃料比率制御部31へ出力されるようになっている。
【0018】
この実施形態では、制御装置23の外部に燃料比率制御部31が設けられる場合を例に説明しているが、燃料比率制御部31が制御装置23の内部に設けられる場合、燃料比率制御部31は燃料制御部25とは別体として制御装置23の内部に設けられてもよく、燃料制御部25内に独立した形で設けられてもよい。また、燃料比率制御部31は、電子部品としてだけでなくプログラムとして制御装置23に一体化して設けることもでき、燃料制御部25と一体化して設けることもできる。尚、燃料比率制御部31をプログラムとして制御装置23、又は、燃料制御部25と一体化して設ける場合には、制御装置23の構成要素の数を減らすことができ制御装置23の全体構成の複雑化を防止できる。一方、電子部品として燃料比率制御部31を独立して設ける場合には、一つのプログラムとして一体化して設ける場合に比べて、同時に複数の制御部が故障することを防止できるとともに、故障した場合や制御内容の更新時に各部品を独立して修理し、又は、更新作業を行うことができるため、作業性を向上させることができる。
【0019】
<本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置の動作>
次に、本開示の一実施形態に係る燃料ガスの組成分析装置の動作(燃料ガスの組成分析方法)について説明する。図1に示されるように、燃焼器4へ供給される燃料ガスが燃料供給ライン6を流通する際に、密度計測装置21及び発熱量計測装置22のそれぞれによって、燃料ガスの密度ρ及び燃料ガスの単位量当たりの発熱量LHVがそれぞれ計測される。計測された密度ρ及び発熱量LHVに関するデータは、図3に示されるように、制御装置23の組成演算部24に伝送される。以下に、計測された密度ρ及び発熱量LHVを用いて組成演算部24が燃料ガスの組成(燃料ガス中の不活性ガスの濃度C)を演算する動作を詳細に説明する。
【0020】
組成演算部24が燃料ガスの組成を演算するためには、密度ρ及び発熱量LHVの他に、燃料ガスに含まれる可燃性ガスの密度ρ及びこの可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVと、燃料ガスに含まれる不活性ガスの密度ρとが必要である。可燃性ガスは、主成分であるメタンの他に、エタンやプロパン等が含まれ、その組成の違いにより密度ρが異なる。また、可燃性ガスの組成が変われば発熱量LHVも当然に変化する。そこで、可燃性ガスについて密度ρと発熱量LHVとの関係を実験や計算等によって予め決定しておき、組成演算部24に記憶させておく。また、不活性ガスの密度ρについても不活性ガスの成分により変化するが、その成分は通常は既知であるため、その成分に基づく密度ρを組成演算部24に記憶させておく。尚、ガスの密度はガスの温度や圧力によって変化するが、ガスタービン1の運転中に大きな変化がなく一定であると仮定できる場合には、温度や圧力の影響は無視できる。一方、ガスタービン1の運転中における温度や圧力の変化が無視できない場合には、可燃性ガスについての密度ρと発熱量LHVとの関係に温度及び圧力による影響も含めるようにし、不活性ガスの密度ρについては温度及び圧力に関する関数とすればよい。以下では、ガスの温度や圧力に大きな変化がない条件で説明する。
【0021】
燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cの単位をモル分率とすると、燃料ガスの密度の計測値ρと、燃料ガスに含まれる可燃性ガスの密度ρと、燃料ガスに含まれる不活性ガスの密度ρとの関係は、以下の式(1)で表される。
ρC+ρ(1-C)=ρ ・・・(1)
【0022】
また、不活性ガスは燃焼しないことから発熱量はゼロであるため、燃料ガスの発熱量の計測値LHVと、可燃性ガスの発熱量LHVとの関係は、以下の式(2)で表される。
0・C+LHV(1-C)=LHV ・・・(2)
式(2)から下記式(3)が得られる。
C=1-LHV/LHV ・・・(3)
【0023】
式(3)を式(1)へ代入すると、以下の式(4)が得られる。
【数1】
【0024】
ここで、組成演算部24に記憶された可燃性ガスについての密度ρと発熱量LHVとの関係を、以下の式(5)のように直線回帰した関数とする。
LHV=αρ+β ・・・(5)
式(5)において、α及びβはいずれも定数である。
【0025】
式(4)及び式(5)からLHV/LHVを求め、式(3)に代入して整理すると、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cを求める下記式(6)が得られる。
【数2】
【0026】
組成演算部24は、密度計測装置21及び発熱量計測装置22のそれぞれによって計測された密度ρ及び発熱量LHVと、組成演算部24に記憶された不活性ガスの密度ρと、式(5)で表される関数とから、式(6)に基づいて、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cを算出する、すなわち、燃料ガスの組成を演算する。
【0027】
このように、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量LHV及び燃料ガスの密度ρを計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができる。
【0028】
図4に示されるように、密度をx軸とし発熱量をy軸としたxy平面上において、式(5)で表される関数は、実線で描かれた直線Lである。不活性ガスは燃焼しないことから発熱量はゼロであるため、不活性ガスのρはx軸上の点Aにある。一方、燃焼ガスに含まれる可燃性ガスの密度ρ及び発熱量LHVは、直線L上の点Bで表される。点Aと点Bとを結ぶ一点鎖線で描かれた直線lと、x軸上にある燃料ガスの密度の計測値を表す点Dを通りy軸に平行な一点鎖線で描かれた直線lとの交点をEとすると、交点Eのy座標が発熱量LHVを表す。このxy平面上において、単位をモル分率とする燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cは、点A,B間の長さに対する点B,E間の長さの比に相当する。
【0029】
燃料ガス中の不活性ガスの濃度が数%程度以下といったように低い場合には、式(6)よりも簡単な式で近似的に濃度Cを算出することができる。燃料ガス中の不活性ガスの濃度が低い場合には、図5に示されるように、密度計測装置21によって計測された密度ρに対応する直線L上の点をFとすると、点Bと点Fとが非常に近くなる。このため、点Fに対応する発熱量をLHV’とすると、この発熱量LHV’は、点Bに対応する発熱量LHVに近似的に等しくなる。
【0030】
ここで、
LHV’=αρ+β ・・・(7)
だから、式(3)においてLHVの代わりに、上記式(7)のLHV’を用いると、式(3)は下記式(8)となる。
【数3】
【0031】
尚、このような場合には、可燃性ガスについての密度ρと発熱量LHVとの関係は、式(5)のように直線回帰した関数に限定するものではなく、任意の関数LHV=f(ρ)とすることができる。そうすると、式(7)は、
LHV’=f(ρ) ・・・(7’)
となるので、式(8)は下記式(9)となる。
【数4】
【0032】
このように、燃料ガス中の不活性ガスの濃度が低い場合には、比較的簡単な上記式(8)又は(9)により、濃度Cを近似的に算出することができるので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を簡易的に分析することができる。
【0033】
<本開示の一実施形態に係る原動機制御装置の動作>
次に、本開示の一実施形態に係る原動機制御装置の動作(原動機制御方法)について説明する。図3に示されるように、燃料制御部25は、組成演算部24から燃料ガス中の不活性ガスの濃度C及び燃料ガスの単位量当たりの発熱量LHVのデータを受け取り、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cに応じた、パイロットノズル16(図2参照)及びメインノズル17(図2参照)のそれぞれに供給される燃料ガスの比率である燃料比率を算出する。
【0034】
濃度C及び発熱量LHVから燃料制御部25が燃料比率を算出するための制御フローの一例を図6に示す。通常の動作でガスタービン1の出力に応じた基準の燃料比率Fが決定されるが、燃料制御部25は、濃度C及び発熱量LHVのそれぞれに基づく燃料比率のゲインG及びGを決定し、基準の燃料比率Fに加算することで、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cに応じた燃料比率Fを算出する。
【0035】
図3に示されるように、燃料制御部25は、算出した燃料比率となるように燃料比率制御部31を制御するための燃料制御指令を算出し、燃料比率制御部31へ出力する。これにより、燃料比率制御部31が制御されて、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cに応じた燃料比率でパイロットノズル16及びメインノズル17のそれぞれに供給されるので、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cが変化しても燃料ガスを安定燃焼させることができる。
【0036】
尚、本開示の一実施形態においては、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cを算出するために、密度計測装置21及び発熱量計測装置22のそれぞれによる密度ρ及び発熱量LHVの計測値を制御装置23の組成演算部24にて連続的に取得し、これに応じて、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cを適宜データ化するようにしているが、制御装置23において、所定周期を予め設定した上で、所定周期ごとの一連の処理を行い、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cをデータ化するように予めプログラムしてもよい。
【0037】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
[1]一の態様に係る燃料ガスの組成分析装置は、
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析装置(20)であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測する発熱量計測装置(22)と、
前記燃料ガスの密度を計測する密度計測装置(21)と、
前記発熱量計測装置(22)によって計測された前記発熱量及び前記密度計測装置(21)によって計測された前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算する組成演算部(24)を含む制御装置(23)と
を備える。
【0039】
本開示の燃料ガスの組成分析装置によれば、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができる。
【0040】
[2]別の態様に係る燃料ガスの組成分析装置は、[1]の燃料ガスの組成分析装置であって、
前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を前記制御装置(23)に予め規定しておき、
前記組成演算部(24)は、前記発熱量計測装置(22)によって計測された前記発熱量と、前記密度計測装置(21)によって計測された前記密度と、前記関数とを用いて前記燃料ガスの組成を演算する。
【0041】
このような構成によれば、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができ、さらに、可燃性ガスの密度に対する可燃性ガスの単位量当たりの発熱量との関係を表す関数を予め規定しておくことで、燃料ガス中の不活性ガスの濃度が時々刻々と変化する場合であっても、迅速に把握することが可能となる。
【0042】
[3]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析装置は、[2]の燃料ガスの組成分析装置であって、
前記発熱量計測装置(22)によって計測された前記発熱量をLHVとし、
前記密度計測装置(21)によって計測された前記密度をρとし、
前記不活性ガスの密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数を、定数α及びβを用いてLHV=αρ+βとすると、
前記組成演算部(24)は、下記式
【数5】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0043】
このような構成によれば、計測された燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を用いて、上記式から不活性ガスの濃度Cを燃料ガスの組成として分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を正確に分析することができる。
【0044】
[4]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析装置は、[2]の燃料ガスの組成分析装置であって、
前記発熱量計測装置(22)によって計測された前記発熱量をLHVとし、
前記密度計測装置(21)によって計測された前記密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数をLHV=f(ρ)とすると、
前記組成演算部(24)は、前記関数の変数ρにρを代入したf(ρ)を用いた下記式
【数6】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0045】
このような構成によれば、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cが数%以下のように低い場合には、比較的簡単な上記式により濃度Cを近似的に算出することができるので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を簡易的に分析することができる。
【0046】
[5]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析装置は、[4]の燃料ガスの組成分析装置であって、
前記関数を、定数α及びβを用いてf(ρ)=αρ+βとすると、
前記組成演算部(24)は、前記関数の変数ρにρを代入した(αρ+β)を用いた下記式
【数7】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0047】
このような構成によれば、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cが数%以下のように低い場合には、上記[4]の構成の式よりもさらに簡単な式により濃度Cを近似的に算出することができるので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成をさらに簡易的に分析することができる。
【0048】
[6]一の態様に係る原動機制御装置は、
前記燃料ガスを燃焼させる燃焼器(4)を備えた原動機(ガスタービン1)を制御する原動機制御装置(30)であって、
[1]~[5]のいずれかの組成分析装置(20)と、
前記燃焼器(4)が備える互いに異なる第1ノズル(パイロットノズル16)及び第2ノズル(メインノズル17)それぞれに供給される前記燃料ガスの比率である燃料比率を調節するための燃料比率制御部(31)と
を備え、
前記制御装置(23)は燃料制御部(25)をさらに備え、
前記燃料制御部(25)は、前記組成分析装置(20)によって得られた前記燃料ガスの組成に基づいて、前記燃料ガスの比率である燃料比率を補正するための燃料制御指令を算出し前記燃料比率制御部(31)に出力する。
【0049】
本開示の原動機制御装置によれば、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成の迅速な分析結果に基づいて、燃焼器が備える互いに異なる第1ノズル及び第2ノズルそれぞれに供給される燃料ガスの比率である燃料比率を制御することにより、燃焼器における適切な燃焼特性を維持することができる。
【0050】
[7]一の態様に係る原動機制御装置は、[6]の原動機制御装置であって、
前記燃料比率制御部(31)は、前記制御装置(23)の内部に設けられるとともに前記燃料制御指令を受けて前記燃料比率をプログラムにより制御するように構成されている。
【0051】
このような構成によれば、燃料比率制御部は制御装置内に設けられるので、原動機制御装置の構成機器の数を減らすことができる。
【0052】
[8]一の態様に係る燃料ガスの組成分析方法は、
不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成分析方法であって、
前記燃料ガスの単位量当たりの発熱量を計測するステップと、
前記燃料ガスの密度を計測するステップと、
計測された前記発熱量及び前記密度を用いて前記燃料ガスの組成を演算するステップと
を含む。
【0053】
本開示の燃料ガスの組成分析方法によれば、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができる。
【0054】
[9]別の態様に係る燃料ガスの組成分析方法は、[8]の燃料ガスの組成分析方法であって、
前記可燃性ガスの密度ρに対する前記可燃性ガスの単位量当たりの発熱量LHVとの関係を表す関数を予め規定しておき、
計測された前記発熱量及び前記密度と、前記関数とを用いて前記燃料ガスの組成を演算する。
【0055】
このような方法によれば、迅速な計測が可能な燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を計測し、それらの計測値を用いて燃料ガスの組成を分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を迅速に分析することができる。
【0056】
[10]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析方法は、[9]の燃料ガスの組成分析方法であって、
計測された前記発熱量をLHVとし、
計測された前記密度をρとし、
前記不活性ガスの密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数を、定数α及びβを用いてLHV=αρ+βとすると、
下記式
【数8】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0057】
このような方法によれば、計測された燃料ガスの単位量当たりの発熱量及び燃料ガスの密度を用いて上記式から、不活性ガスの濃度Cを燃料ガスの組成として分析するので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を正確に分析することができる。
【0058】
[11]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析方法は、[9]の燃料ガスの組成分析方法であって、
計測された前記発熱量をLHVとし、
計測された前記密度をρとし、
前記燃料ガス中の前記不活性ガスの濃度をCとし、
前記関数をLHV=f(ρ)とすると、
前記関数の変数ρにρを代入したf(ρ)を用いた下記式
【数9】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0059】
このような方法によれば、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cが数%以下のように低い場合には、比較的簡単な上記式により、濃度Cを近似的に算出することができるので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成を簡易的に分析することができる。
【0060】
[12]さらに別の態様に係る燃料ガスの組成分析方法は、[11]の燃料ガスの組成分析方法であって、
前記関数を、定数α及びβを用いてf(ρ)=αρ+βとすると、
前記関数の変数ρにρを代入した(αρ+β)を用いた下記式
【数10】
に基づいて前記燃料中の前記不活性ガスの濃度Cを前記燃料ガスの組成として演算する。
【0061】
このような方法によれば、燃料ガス中の不活性ガスの濃度Cが数%以下のように低い場合には、上記[11]の方法の式よりもさらに簡単な式により、濃度Cを近似的に算出することができるので、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成をさらに簡易的に分析することができる。
【0062】
[13]一の態様に係る原動機制御方法は、
前記燃料ガスを燃焼させる燃焼器(4)を備えた原動機(ガスタービン1)を制御する原動機制御方法であって、
[8]~[12]のいずれかの組成分析方法を備え、
前記組成分析方法によって得られた前記燃料ガスの組成に基づいて、前記燃焼器(4)が備える互いに異なる第1ノズル(パイロットノズル16)及び第2ノズル(メインノズル17)それぞれに供給される前記燃料ガスの比率である燃料比率を補正するための燃料制御指令を算出し出力する。
【0063】
本開示の原動機制御方法によれば、不活性ガス及び可燃性ガスを含む燃料ガスの組成の迅速な分析結果に基づいて、燃焼器が備える互いに異なる第1ノズル及び第2ノズルそれぞれに供給される燃料ガスの比率である燃料比率を制御することにより、燃焼器における適切な燃焼特性を維持することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ガスタービン(原動機)
4 燃焼器
16 パイロットノズル(第1ノズル)
17 メインノズル(第2ノズル)
20 組成分析装置
21 密度計測装置
22 発熱量計測装置
23 制御装置
24 組成演算部
25 燃料制御部
30 原動機制御装置
31 燃料比率制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6