(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ドライバ状態推定装置、ドライバ状態推定プログラム、及び、運行日報生成方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241008BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020184479
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-200606(JP,A)
【文献】特開2019-174885(JP,A)
【文献】特開2019-159642(JP,A)
【文献】特開2002-042288(JP,A)
【文献】特開2000-326757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G07C 1/00-15/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部と、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部と、
前記脇見判定部が脇見と判定したときに、前記危険運転判定部が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部と、
前記危険脇見判定部が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録部と、を備え、
前記危険脇見判定部は、前記脇見判定部が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定部が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
ドライバ状態推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライバ状態推定装置において、
前記脇見判定部が設けられた脇見判定装置と、
前記危険運転判定部及び前記危険脇見判定部が設けられた車両挙動判定装置と、を備え、
前記脇見判定装置が、前記脇見判定部が脇見を判定した旨を前記車両挙動判定装置に送信する、
ドライバ状態推定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライバ状態推定装置において、
前記危険脇見判定部は、前記車両の速度が閾値以上のときに前記判定を行う、
ドライバ状態推定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のドライバ状態推定装置において、
前記危険運転判定部は、前記車両の速度が法定速度以上であること、前記車両が車線逸脱したこと、前記車両が幅方向にふらついていること、前記車両が急旋回したこと、前記車両が急減速したこと、のうち、少なくとも一つを前記危険運転と判定する条件とする、
ドライバ状態推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のドライバ状態推定装置において、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定した旨を、そのときの前記車両の位置、又は、そのときに撮像した前記車両内又は前記車両外の画像、に紐づけて記録する、
ドライバ状態推定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部、
前記脇見判定部が脇見と判定しときに、前記危険運転判定部が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部、
前記危険脇見判定部が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録部、として機能させ、
前記危険脇見判定部は、前記脇見判定部が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定部が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
ドライバ状態推定プログラム。
【請求項7】
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
コンピュータが、ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定工程と、
前記コンピュータが、前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定工程と、
前記コンピュータが、前記脇見判定工程において脇見と判定したときに、前記危険運転判定工程において前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定工程と、
前記コンピュータが、前記危険脇見判定工程が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録工程と、
前記コンピュータが、前記危険脇見判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、備え、
前記危険脇見判定工程は、前記脇見判定工程が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定
工程が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録工程は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
運行日報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ状態推定装置、ドライバ状態推定プログラム、運行日報生成方法、及び、運行日報に関し、特に車両を運転する運転者の状態を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転中の脇見行為は、死傷事故の大きな要因の一つである。このため、ドライバの顔の向き、視線の向きを検知し、検知した顔の向き、視線の向きに基づいて脇見を判定する運転評価報告書作成装置が提案されている(特許文献1)。しかしながら、上述した従来の装置では、顔や視線の動きだけで脇見を判定するため、例えば、安全運転確認のために顔や視線を正面からそらしただけで脇見と判定され、実際に危険な状況でないにも関わらず、脇見と判定されてしまう、という問題があった。
【0003】
また、顔や視線の向きからドライバの脇見を判定し、かつ、自車両周囲の状況が変化したと判定された場合、警報を発生する脇見見落とし注意システムも提案されている(特許文献2)。しかしながら、自車両周囲の状況の変化では、脇見が原因となって危険な状況となっているか分からないため、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-106041号公報
【文献】特開2017-151606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、実際に危険な状況となる脇見を判定することができるドライバ状態推定装置、ドライバ状態推定プログラムを提供することにある。また、実際に危険な状況となる脇見が行われたことを記録できる運行日報生成方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るドライバ状態推定装置、ドライバ状態推定プログラム、及び、運行日報生成方法は、下記[1]~[7]を特徴としている。
[1]
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部と、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部と、
前記脇見判定部が脇見と判定したときに、前記危険運転判定部が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部と、
前記危険脇見判定部が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録部と、を備え、
前記危険脇見判定部は、前記脇見判定部が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定部が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
ドライバ状態推定装置であること。
[2]
[1]に記載のドライバ状態推定装置において、
前記脇見判定部が設けられた脇見判定装置と、
前記危険運転判定部及び前記危険脇見判定部が設けられた車両挙動判定装置と、を備え、
前記脇見判定装置が、前記脇見判定部が脇見を判定した旨を前記車両挙動判定装置に送信する、
ドライバ状態推定装置であること。
[3]
[1]又は[2]に記載のドライバ状態推定装置において、
前記危険脇見判定部は、前記車両の速度が閾値以上のときに前記判定を行う、
ドライバ状態推定装置であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のドライバ状態推定装置において、
前記危険運転判定部は、前記車両の速度が法定速度以上であること、前記車両が車線逸脱したこと、前記車両が幅方向にふらついていること、前記車両が急旋回したこと、前記車両が急減速したこと、のうち、少なくとも一つを前記危険運転と判定する条件とする、
ドライバ状態推定装置であること。
[5]
[1]に記載のドライバ状態推定装置において、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定した旨を、そのときの前記車両の位置、又は、そのときに撮像した前記車両内又は前記車両外の画像、に紐づけて記録する、
ドライバ状態推定装置であること。
[6]
コンピュータに、
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部、
前記脇見判定部が脇見と判定しときに、前記危険運転判定部が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部、
前記危険脇見判定部が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録部、として機能させ、
前記危険脇見判定部は、前記脇見判定部が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定部が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録部は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
ドライバ状態推定プログラムであること。
[7]
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
コンピュータが、ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定工程と、
前記コンピュータが、前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定工程と、
前記コンピュータが、前記脇見判定工程において脇見と判定したときに、前記危険運転判定工程において前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定工程と、
前記コンピュータが、前記危険脇見判定工程が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録工程と、
前記コンピュータが、前記危険脇見判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、備え、
前記危険脇見判定工程は、前記脇見判定工程が前記脇見と判定し且つ前記危険運転判定工程が前記危険運転を判定しなかった場合に、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定し、
前記記録工程は、危険な前記脇見を行ったと判定された旨と、車両挙動に影響のない前記脇見を行ったと判定された旨とを区別可能に記録する、
運行日報生成方法であること。
【0007】
上記[1]及び[6]の構成のドライバ状態推定装置及びドライバ状態推定プログラムによれば、ドライバの視認状態に基づいて脇見判定部が脇見と判定しときに、車両の挙動に基づいて危険運転判定部が危険運転を判定した場合、危険な脇見を行ったと判定する。これにより、実際に危険な状況となる脇見を判定することができる。
更に、上記[1]及び[6]の構成のドライバ状態推定装置及びドライバ状態推定プログラムによれば、記録部が、危険脇見判定部が危険な脇見を行ったと判定した旨を記録する。これにより、事業者などがドライバの運転を指導、評価することができる。
【0008】
上記[2]の構成のドライバ状態推定装置によれば、脇見判定装置が、脇見判定部が脇見を判定した旨を車両挙動判定装置に送信する。これにより、既存の脇見判定装置を流用して危険な脇見を判定することができる。
【0009】
上記[3]の構成のドライバ状態推定装置によれば、危険脇見判定部は、車両の速度が閾値以上のときに判定を行う。これにより、事業者敷地内等で低速で走行していて危険がない状況では危険な脇見を判定されることはなく、実際に危険な状況となる脇見を精度よく判定することができる。
【0010】
上記[4]の構成のドライバ状態推定装置によれば、車両の速度が法定速度以上であること、車両が車線逸脱したこと、車両が幅方向にふらついていること、車両が急旋回したこと、車両が急減速したこと、のうちの少なくとも一つを危険運転と判定する条件とする。これにより、実際に危険な状況となる脇見を精度よく判定することができる。
【0012】
上記[5]の構成のドライバ状態推定装置によれば、記録部は、危険な脇見を行ったと判定した旨を、そのときの車両の位置、又は、そのときに撮像した車両内又は車両外の画像、に紐づけて記録する。これにより、事業者などが、より適切に、ドライバの運転を指導、評価することができる。
【0013】
上記[7]の構成の運行日報生成方法によれば、安価に、実際に危険な状況となる脇見が行われたことを記録できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際に危険な状況となる脇見を判定することができるドライバ状態推定装置及びドライバ状態推定プログラムを提供することができる。また、本発明によれば、実際に危険な状況となる脇見が行われたことを記録できる運行日報生成方法を提供することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態におけるドライバ状態推定装置としての車載機の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すデジタルタコグラフの処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示すドライバモニタリングシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1に示すデジタルタコグラフの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示すデジタルタコグラフの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
<実施形態の車載機の説明>
本発明の実施形態におけるドライバ状態推定装置としての車載機10の構成例を
図1に示す。
図1に示した車載機10は、例えばタクシー、トラック、バスのような業務用車両など様々な車両に搭載した状態で使用され、ドライバの状態を自動検出(推定)するために利用される。
【0019】
図1に示した車載機10は、ドライバの状態を監視する脇見判定装置としてのドライバモニタリングシステム20と、各種運行データを記録する車両挙動判定装置としてのデジタルタコグラフ30(以下、「デジタコ30」と略記)と、を備えている。なお、脇見運転には、携帯電話の操作など他の物に気を取られることに起因して、前方から視線を外して運転することに加えて、居眠りに起因して前方から視線を外して運転することも含まれる。
【0020】
なお、
図1に示したドライバモニタリングシステム20、デジタコ30の内部の主要な構成要素の実体は、マイクロコンピュータを主体とする電気回路のハードウェアと、このマイクロコンピュータが実行するプログラムおよびデータとで構成されるソフトウェアからなる。また、必要に応じて、画像処理専用のプロセッサや、数値演算用のプロセッサなどがドライバモニタリングシステム20、デジタコ30に内蔵される場合もある。また、ドライバモニタリングシステム20と、デジタコ30と、は通信可能に設けられている。
【0021】
<構成の説明>
図1に示したドライバモニタリングシステム20の入力には、車載カメラ41が接続されている。車載カメラ41は、例えば自動車のダッシュボードなどに固定され、ドライバを撮影できる方向に向けられている。なお、複数台の車載カメラ41を必要に応じて用いることができる。車載カメラ41の撮影内容を表す映像信号SG1がドライバモニタリングシステム20に入力される。
【0022】
ドライバモニタリングシステム20は、画像認識エンジン201と、脇見判定部202と、を備えている。
【0023】
画像認識エンジン201は、入力される映像信号SG1を各フレームの画像に対して、リアルタイムで認識処理を実行し、様々な特徴量を検出する。本実施形態では、画像認識エンジン201は、画像中のドライバの顔の向き及び視線の向き、眼の開閉状態(視認状態)を自動的に認識することができる。
【0024】
脇見判定部202は、画像認識エンジン201により認識されたドライバの顔の向き及び視線の向き、眼の開閉状態(視認状態)に基づいて脇見(正面から視線を外した状態)を判定する。脇見判定部202は、脇見を判定すると、脇見を示す脇見判定信号SG2をデジタコ30に対して出力する。
【0025】
図1に示したデジタコ30の入力には、車載カメラ41、42が接続されている。車載カメラ42は、例えば自動車の前方の窓付近に固定され、自動車の進行方向前方の路面や風景などの状況を撮影できる方向に向けられている。なお、複数台の車載カメラ42を必要に応じて用いることができる。車載カメラ41、42の撮影内容を表す映像信号SG1、SG3がデジタコ30に入力される。
【0026】
図1に示したデジタコ30の入力には、自車両に搭載されている車速センサ(図示せず)が出力する車速パルス信号SG4が印加される。この車速パルス信号SG4は、例えば車両のトランスミッションの出力軸が所定量回動する毎に発生するパルスを含んでいる。したがって、自車両の走行速度(km/h)や移動距離を車速パルス信号SG4に基づいて算出できる。
【0027】
また、実際の車両において、車速パルス信号SG4、映像信号SG1、SG3以外の様々な信号を外部からデジタコ30に入力することが可能であるが、ドライバの脇見を検出する用途だけであれば、他の信号を入力する必要はない。
【0028】
図1に示したように、デジタコ30の内部には、車速検出機能301、加速度センサ302、画像認識エンジン303、ドライブレコーダ機能304、危険運転判定部305、危険脇見判定部306、音声出力部307、GPS通信部308、運行データ記録部309(記録部)、および広域無線通信アダプタ310が備わっている。また、広域無線通信アダプタ310にアンテナ311が接続されている。
【0029】
車速検出機能301は、外部から入力される車速パルス信号SG4に基づいて自車両の最新の走行速度(km/h)を常時算出する。この算出結果の走行速度を表す速度信号SG6が車速検出機能301から出力され危険運転判定部305に入力される。
【0030】
加速度センサ302は、デジタコ30に固定されており、自車両の進行方向(前後方向)の加速度の大きさと、横方向(左右方向)の加速度の大きさとをそれぞれ検出する機能を有している。進行方向の加速度の大きさを表す加速度信号SG7と、横方向の加速度を表す加速度信号SG8とのそれぞれが加速度センサ302から出力され危険運転判定部305に入力される。
【0031】
画像認識エンジン303は、入力される映像信号SG3を各フレームの画像に対して、リアルタイムで認識処理を実行し、様々な特徴量を検出する。本実施形態では、画像認識エンジン303は、画像中に路面に標示されている各白線(レーンの境界の区切り位置)の位置、自車両の位置、前方車両の位置などを自動的に認識することができる。
【0032】
ドライブレコーダ機能304は、一般的なドライブレコーダと同様の機能を実現する。すなわち、入力される映像信号SG1、SG3の情報を取得して記録する。大量の情報を記録できるように、例えば不揮発性メモリにより構成されるメモリカードのような記憶装置がドライブレコーダ機能304に備わっている。
【0033】
危険運転判定部305には、車速検出機能301から出力される速度信号SG6、加速度センサ302から出力される加速度信号SG7、SG8、画像認識エンジン303が認識した白線の位置、自車両の横方向の位置が入力される。危険運転判定部305は、これら自車両の挙動を表す信号SG4~SG8、白線の位置、自車両の横方向の位置や、自車両周辺の状況である前方車両の位置に基づいて危険運転を判定する。
【0034】
危険脇見判定部306は、脇見判定部202が脇見と判定して脇見判定信号SG2を出力したときに、危険運転判定部305が危険運転を判定した場合、危険な脇見を行ったと判定する。危険脇見判定部306は、危険な脇見を行ったと判定すると、ドライブレコーダ機能304及び後述する運行データ記録部309に記録信号SG9を出力すると共に、音声出力部307に報知信号SG10を出力する。ドライブレコーダ機能304は、記録信号SG9に従って、車載カメラ41、42により撮影された映像信号SG1、SG3の情報をトリガ記録する。音声出力部307は、報知信号SG10に従って、危険な脇見の発生を回避するために役立つ音声出力を実行する。
【0035】
GPS通信部308は、周知のように複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信して、現在位置を求め、現在位置を表す位置信号SG11を運行データ記録部309に出力する。
【0036】
運行データ記録部309は、定期的に車両の挙動を示す信号SG4~SG8、SG11を収集する。また、運行データ記録部309は、記録信号SG9に従って、危険な脇見と判定した旨を示すフラグに、そのとき収集した位置信号SG11、ドライブレコーダ機能304により記録された映像信号SG1、SG3を紐づける。
【0037】
広域無線通信アダプタ310は、アンテナ311を用いて、遠隔地のコンピュータとの間でデータ通信をするための無線通信機能を提供する。運行データ記録部309は、必要に応じて収集した信号SG4~SG8、SG11や危険な脇見と判定した旨を示すフラグに、紐づけられた位置信号SG11、映像信号SG1、SG3を遠隔地のサーバや車両を管理している機関の事務所PCなどに対して送信することができる。
【0038】
<動作の説明>
次に、上述した構成の車載機10の動作について
図2~
図5のフローチャートを参照して説明する。ドライバモニタリングシステム20、デジタコ30を構成するコンピュータは、
図2~
図5に示すようなドライバ状態推定プログラムに従って、動作する。デジタコ30は、イグニッションオンに応じて処理を開始する。まず、デジタコ30は、
図2に示すように、速度信号SG6に基づいて車速が閾値(例えば40km/m)以上であるか否かを判定する(S101)。デジタコ30は、車速が閾値以上になると(S101でY)、通常走行を開始したと判断して、開始信号をドライバモニタリングシステム20に対して出力する(S102)。
【0039】
次に、デジタコ30は、画像認識エンジン303が認識した白線位置、自車両の位置に基づいてドライバの通常の走行位置(横方向)を求めるキャリブレーションを行う(S103)。その後、デジタコ30は、ドライバモニタリングシステム20から脇見判定信号SG2が入力されるのを待つ(S104)。
【0040】
ドライバモニタリングシステム20は、開始信号が入力されると
図3に示す処理を開始する。まず、ドライバモニタリングシステム20は、例えば6分の間に、画像認識エンジン201により認識された顔の向き及び視線の向きに基づいて、ドライバの通常の顔の向き及び視線の向き(キャリブレーション値)を求めるキャリブレーションを行う(S21)。その後、ドライバモニタリングシステム20の脇見判定部202は、画像認識エンジン201により認識された顔の向き、視線の向き(yaw角、もしくは、pitch角)と、キャリブレーション値と、の差(絶対値)が第1所定時間(例えば3秒間)以上継続して大きくなったか否かを判定する(S22)。
【0041】
キャリブレーション値との差(絶対値)が大きくないと判定すると(S22でN)、ドライバモニタリングシステム20は、脇見判定部202として機能し、画像認識エンジン201により認識された開閉状態に基づいて、第2所定時間(例えば2秒)以上、閉眼状態が継続しているか否かを判定する(S23)。第2所定時間以上、閉眼状態が継続していないと判定すると(S23でN)、ドライバモニタリングシステム20は、S22に戻る。
【0042】
一方、キャリブレーション値との差(絶対値)が大きい、又は、第2所定時間以上、閉眼状態が継続していると判定すると(S22でY、又は、S23でY)、ドライバモニタリングシステム20は、脇見を判定して、デジタコ30に脇見判定信号SG2を出力する(S24)。ドライバモニタリングシステム20は、脇見判定信号SG2を出力すると、S22に戻る。
【0043】
デジタコ30は、
図2に示すように、脇見判定信号SG2が入力されると(S104でY)、
図3及び
図4に示す処理を開始する。同図に示すように、デジタコ30は、危険運転判定部305として機能し、(A)前方車両との車間距離が減少している、(B)車速が法定速度を超過している、(C)車線逸脱している、の少なくとも1つ以上の危険運転をしているかを判定する(S105~S107)。
【0044】
詳しく説明すると、デジタコ30は、画像認識エンジン303が認識した前方車両の位置から車間距離を求め、車間距離が減少しているか否かを判定する(S105)。また、デジタコ30は、速度信号SG6に基づいて法定速度を超過しているか否かを判定する(S106)。また、デジタコ30は、画像認識エンジン303が認識した白線の位置、自車両の位置と、S103で求めたドライバの通常の走行位置と、に基づいて車線を逸脱したか否かを判定する(S107)。
【0045】
デジタコ30は、(A)~(C)の少なくとも1つ以上の危険運転を行っていると判定すると(S105~S107でY)、危険脇見判定部306として機能し、危険な脇見と判定し、その旨を示すフラグA~Cを立てる(S108~S110)。また、(A)~(C)の危険運転はドライバに報知すべき危険で急を要する脇見であるため、デジタコ30は、音声出力部307から警報音を発生させる(S111~S113)。その後、デジタコ30は、ドライブレコーダ機能304として機能し、車載カメラ41、42から出力される映像信号SG1、SG3を一定期間記録する(S114~S116)。
【0046】
次に、デジタコ30は、運行データ記録部309として機能し、一定期間記録した映像信号SG1、SG3と、このときの位置信号SG11と、危険な脇見を表すフラグA~Cと、を紐づけて運行データとして、記録した後(S117~S119)、
図2のS104に戻る。
【0047】
これに対して、デジタコ30は、(A)~(C)の危険運転を行っていないと判定すると(S105~S107でN)、次に、
図5に示す処理を開始する。同図に示すように、デジタコ30は、(D)ふらつきが発生している、(E)急旋回した、(F)急減速した、の少なくとも1つ以上の危険運転をしているか否かを判定する(S120~S122)。
【0048】
詳しく説明すると、デジタコ30は、横方向の加速度を示す加速度信号SG8に基づいて、ふらつきが発生したか否かを判定する(S120)。また、デジタコ30は、加速度信号SG7、SG8に基づいて、車両の旋回角度を算出し、急旋回を行ったか否かを判定する(S121)。また、デジタコ30は、進行方向の加速度を示す加速度信号SG7や速度信号SG6に基づいて急減速を行ったか否かを判定する(S122)。
【0049】
デジタコ30は、(D)~(F)の少なくとも1つ以上の危険運転を行っていると判定すると(S120~S122でY)、危険脇見判定部306として機能し、危険な脇見と判定し、その旨を示すフラグD~Fを立てる(S123~S125)。その後、デジタコ30は、ドライブレコーダ機能304として機能し、車載カメラ41、42から出力される映像信号SG1、SG3を一定期間記録する(S126~S128)。
【0050】
次に、デジタコ30は、運行データ記録部309として機能し、一定期間記録した映像信号SG1、SG3と、このときの位置信号SG11と、危険な脇見を表すフラグD~Fと、を紐づけて運行データとして、記録する(S129~S131)した後、
図2のS104に戻る。
【0051】
これに対して、デジタコ30は、(D)~(F)の危険運転を行っていないと判定すると(S120~S122でN)、車両挙動に影響のない脇見をした旨を示すフラグGを立てた後(S126)、
図2のS104に戻る。
【0052】
また、デジタコ30は、定期的に信号SG4~SG8を運行データとして記録する。これら記録された運行データが運行日誌となる。そして、デジタコ30は、必要に応じて遠隔地のサーバや事業者PCにこれら記録した運行データを送信する。事業者PCでは、運行データから車両が走行した経路と、経路上において危険な脇見をした位置と、を表示することができる。
【0053】
上述した実施形態によれば、危険脇見判定部306が、ドライバの視認状態に基づいて脇見判定部202が脇見と判定しときに、車両の挙動に基づいて危険運転判定部305が危険運転を判定した場合、危険な脇見を行ったと判定する。これにより、実際に危険な状況となる脇見を判定することができる。また、デジタコ30は、危険運転の種類によってフラグA~Fを変えているので、事業者などがどのような危険運転を行ったか把握することができ、適切に、ドライバの運転を指導、評価することができる。
【0054】
上述した実施形態によれば、ドライバモニタリングシステム20が、脇見判定部202が脇見を判定した旨をデジタコ30に送信する。これにより、既存のドライバモニタリングシステム20を流用して危険な脇見を判定することができる。
【0055】
上述した実施形態によれば、危険脇見判定部306は、車両の速度が閾値以上のときに判定を行う。これにより、事業者敷地内等で低速で走行していて危険がない状況では危険な脇見を判定されることはなく、実際に危険な状況となる脇見を精度よく判定することができる。
【0056】
上述した実施形態によれば、車両の速度が法定速度以上であること、車両が車線逸脱したこと、車両が幅方向にふらついていること、車両が急旋回したこと、車両が急減速したこと、を危険運転と判定する条件とする。これにより、実際に危険な状況となる脇見を精度よく判定することができる。
【0057】
上述した実施形態によれば、運行データ記録部309が、危険脇見判定部306が危険な脇見を行ったと判定した旨を記録する。これにより、事業者などがドライバの運転を指導、評価することができる。
【0058】
上述した実施形態によれば、運行データ記録部309は、危険な脇見を行ったと判定した旨のフラグA~Fを、そのときの位置信号SG11、又は、そのときに撮像した映像信号SG1、SG3、に紐づけて記録する。これにより、事業者などが、より適切に、ドライバの運転を指導、評価することができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0060】
例えば上述した実施形態によれば、自車両周囲の状況である前方車両との車間距離が減少したことを危険運転と判定する条件としていたが、これに限ったものではない。前方車両との車間距離を、危険運転と判定する条件としなくてもよい。
【0061】
例えば上述した実施形態によれば、自車両の挙動である(B)車両の速度が法定速度以上であること、(C)車両が車線逸脱したこと、(D)車両が幅方向にふらついていること、(E)車両が急旋回したこと、(F)車両が急減速したこと、を危険運転と判定する条件としていたが、これに限ったものではない。これら(B)~(F)の少なくとも一つを危険運転と判定する条件とすればよい。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、デジタコ30は、加速度センサ302から出力される加速度信号SG7、SG8に基づいて、車両の旋回角度を算出し、急旋回を行ったか否かを判定していたが、これに限ったものではない。加速度センサ302に代えて、車両の角速度を検出するジャイロセンサを設けてもよい。ジャイロセンサは、
図1に示すように、危険運転判定部305に接続され、検出した車両の角速度を表す角速度信号を危険運転判定部305に出力する。デジタコ30の危険運転判定部30は、角速度信号に基づいて、車両の旋回角度を算出し、急旋回を行ったか否かを判定してもよい。
【0063】
また、加速度センサ302に代えて、舵角センサを設けてもよい。舵角センサは、デジタコ30の入力に接続されている。舵角センサは、自車両のステアリングシャフトに取り付けられており、ステアリングシャフトの舵角を検出する機能を有している。ステアリングシャフトの舵角を表す舵角信号が舵角センサから出力され、デジタコ30に印加される。デジタコ30の危険運転判定部305は、舵角信号に基づいて、車両の旋回角度を算出し、急旋回を行ったか否かを判定してもよい。
【0064】
ここで、上述した本発明に係るドライバ状態推定装置、ドライバ状態推定プログラム、運行日報生成方法、及び、運行日報の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[9]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部(202)と、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部(305)と、
前記脇見判定部(202)が脇見と判定したときに、前記危険運転判定部(305)が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部(306)と、を備えた、
ドライバ状態推定装置(10)。
[2]
[1]に記載のドライバ状態推定装置(10)において、
前記脇見判定部(202)が設けられた脇見判定装置(20)と、
前記危険運転判定部(305)及び前記危険脇見判定部(306)が設けられた車両挙動判定装置(30)と、を備え、
前記脇見判定装置が、前記脇見判定部(202)が脇見を判定した旨を前記車両挙動判定装置(30)に送信する、
ドライバ状態推定装置(10)。
[3]
[1]又は[2]に記載のドライバ状態推定装置(10)において、
前記危険脇見判定部(306)は、前記車両の速度が閾値以上のときに前記判定を行う、
ドライバ状態推定装置(10)。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のドライバ状態推定装置(10)において、
前記危険運転判定部(305)は、前記車両の速度が法定速度以上であること、前記車両が車線逸脱したこと、前記車両が幅方向にふらついていること、前記車両が急旋回したこと、前記車両が急減速したこと、のうち、少なくとも一つを前記危険運転と判定する条件とする、
ドライバ状態推定装置(10)。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のドライバ状態推定装置(10)において、
前記危険脇見判定部(306)が危険な前記脇見を行ったと判定した旨を記録する記録部(309)をさらに備えた、
ドライバ状態推定装置(10)。
[6]
[5]に記載のドライバ状態推定装置(10)において、
前記記録部(309)は、危険な前記脇見を行ったと判定した旨を、そのときの前記車両の位置、又は、そのときに撮像した前記車両内又は前記車両外の画像、に紐づけて記録する、
ドライバ状態推定装置(10)。
[7]
コンピュータに、
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定部(202)、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定部(305)、
前記脇見判定部(202)が脇見と判定しときに、前記危険運転判定部(305)が前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定部(306)、として機能させるための
ドライバ状態推定プログラム。
[8]
車両の運行日報を生成する運行日報生成方法であって、
ドライバの視認状態に基づいて脇見を判定する脇見判定工程と、
前記ドライバが運転する車両の挙動に基づいて危険運転を判定する危険運転判定工程と、
前記脇見判定工程において脇見と判定したときに、前記危険運転判定工程において前記危険運転を判定した場合、危険な前記脇見を行ったと判定する危険脇見判定工程と、
前記危険脇見判定工程の判定結果に基づいて前記運行日報を生成する生成工程と、備えた、
運行日報生成方法。
[9]
[8]に記載の運行日報生成方法で生成された、
運行日報。
【符号の説明】
【0065】
10 車載機(ドライバ状態推定装置)
20 ドライバモニタリングシステム(脇見判定装置)
30 デジタルタコグラフ(車両挙動判定装置)
202 脇見判定部
305 危険運転判定部
306 危険脇見判定部
309 運行データ記録部(記録部)