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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】無線機及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3822 20150101AFI20241008BHJP
   G01S 7/36 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H04B1/3822
G01S7/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020185881
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075223
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太郎
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/205724(WO,A1)
【文献】特開2018-023049(JP,A)
【文献】特開2019-041354(JP,A)
【文献】特開2016-178625(JP,A)
【文献】特表2021-517236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0003661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38
G01S 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機であって、
レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間と、前記レーダ波と同じ周波数帯の通信波を用いて無線通信を行う通信期間とを交互に設定し、前記通信期間の設定情報を他の無線機に通知する設定部と、
前記対象物の検知に用いられるレーダ波と、前記無線通信に用いられる通信波とを送信する送信部と、
前記検知期間において、前記送信部を介して、前記レーダ波を送信して、前記対象物の検知を行う検知部と、
前記対象物の位置情報を生成する生成部と、
前記通信期間において、前記送信部を介して、前記通信波を送信して、前記他の無線機と前記無線通信を行う通信処理部と、
を備え、
前記通信処理部は、前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、前記対象物の位置情報を前記他の無線機に報知し、
前記無線機及び前記他の無線機は、車両に搭載されて、
前記検知部は、前記レーダ波を用いて、前記車両内の乗員を検知し、
前記生成部は、前記乗員の位置情報を生成し、
前記通信処理部は、前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、前記乗員の位置情報を前記他の無線機に報知する無線機。
【請求項2】
前記通信処理部は、前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、同期情報を前記他の無線機に報知する請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記設定部は、前記検知期間毎に生成される前記対象物の位置情報が所定期間変更されない場合、前記通信期間を長くする請求項1又は2に記載の無線機。
【請求項4】
前記設定部は、前記検知期間毎に生成される前記乗員の位置情報が所定期間変更されない場合、前記通信期間を長くする請求項1又は2に記載の無線機。
【請求項5】
第1の無線機と、
前記第1の無線機と無線通信ネットワークを構成する第2の無線機と、
を備え、
前記第1の無線機は、
レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間と、前記レーダ波と同じ周波数帯の通信波を用いて無線通信を行う通信期間とを交互に設定し、
前記通信期間の設定情報を前記第2の無線機に通知し、
前記検知期間において、前記レーダ波を送信して、前記対象物の検知を行い、
前記通信期間において、前記通信波を送信して、前記第2の無線機と前記無線通信を行い、
前記第1の無線機は、
前記対象物の位置情報を生成し、
前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、前記対象物の位置情報を前記第2の無線機に報知し、
前記第2の無線機は、前記対象物の位置情報を用いて、通信可能な無線機を判定する無線通信システム。
【請求項6】
前記第1の無線機は、前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、同期情報を前記第2の無線機に報知する請求項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記第1の無線機は、前記検知期間毎に生成される前記対象物の位置情報が所定期間変更されない場合、前記通信期間を長くする請求項又はに記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記第1の無線機及び前記第2の無線機は、車両に搭載されて、
前記第1の無線機は、前記レーダ波を用いて前記車両内の乗員を検知し、
前記第1の無線機は、前記乗員の位置情報を生成し、
前記第1の無線機は、前記通信期間において、前記無線通信の開始時に、前記乗員の位置情報を前記第2の無線機に報知し、
前記第2の無線機は、前記乗員の位置情報を用いて、通信可能な無線機を判定する請求項又はに記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記第1の無線機は、前記検知期間毎に生成される前記乗員の位置情報が所定期間変更されない場合、前記通信期間を長くする請求項に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の検知に用いられるレーダ波と同じ周波数帯の通信波を用いて無線通信を行う無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された無線通信システムでは、レーダ波を検出した場合、レーダ波への干渉を抑えるために、無線通信が停止され、レーダ波を検出しなくなると、無線通信が再開される。
【0004】
レーダ波の検出には、レーダ検出回路が用いられる。レーダ検出回路は、受信電波の受信レベル又は受信電波の型式に基づいて、レーダ波を検出する。レーダ検出回路がレーダ波を検出すると、パケットの送信が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-237846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の無線通信システムでは、レーダ波の検出時に、パケットが送信されている場合、パケットの送信に用いられている通信波が、レーダ波と相互干渉を起こす可能性がある。
【0007】
この場合、無線通信システムにおいて、受信側の無線機が、正常なパケット受信を行うことができなくなり、送信側の無線機にパケットの再送などを要求する必要がある。このため、無線通信システム内で通信遅延が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、無線通信に用いられる通信波と、対象物の検知に用いられるレーダ波とが同じ周波数帯を使用する場合に、当該通信波と当該レーダ波との相互干渉を抑制しつつ、通信遅延を回避し得る無線機及び無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る無線機は、レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間と、レーダ波と同じ周波数帯の通信波を用いて無線通信を行う通信期間とを交互に設定し、通信期間の設定情報を他の無線機に通知する設定部と、対象物の検知に用いられるレーダ波と、無線通信に用いられる通信波とを送信する送信部と、検知期間において、送信部を介して、レーダ波を送信して、対象物の検知を行う検知部と、対象物の位置情報を生成する生成部と、通信期間において、送信部を介して、通信波を送信して、他の無線機と無線通信を行う通信処理部と、を備え、通信処理部は、通信期間において、無線通信の開始時に、対象物の位置情報を他の無線機に報知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線通信に用いられる通信波と、対象物の検知に用いられるレーダ波とが同じ周波数帯を使用する場合に、当該通信波と当該レーダ波との相互干渉を抑制しつつ、通信遅延を回避し得る無線機及び無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る第1の無線機の機能ブロック構成図である。
図3図3は、本実施形態に係る検知部の機能ブロック構成図である。
図4図4は、本実施形態に係る通信処理部の機能ブロック構成図である。
図5図5は、本実施形態に係る通信期間及び検知期間の設定例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る検知期間の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る第2の無線機の機能ブロック構成図である。
図8図8は、本実施形態に係る乗車情報の一例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係る通信判定テーブルの一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係る第1の無線機による、検知期間と通信期間との切替処理のフローチャートを示す図である。
図11図11は、本実施形態の変形例に係る第1の無線機による、通信期間の最適化処理のフローチャートを示す図である。
図12図12は、本実施形態の第1の無線機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る第1の無線機及び無線通信システムについて詳細に説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
[車載システムの全体概略構成]
図1は、無線通信システム10の全体概略構成図である。本実施形態では、無線通信システム10は、車両1に搭載されて、車両1内に形成された無線通信ネットワークを制御する。当該無線通信ネットワークに使用される無線通信方式は、Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance(CSMA/CA)方式である。なお、無線通信方式は、CSMA/CA方式に限定されない。
【0014】
図1に示すように、車両1は、運転席3、助手席5、及び後部座席7を備える。後部座席7は、後部座席右側部7a、後部座席中央部7b、及び後部座席左側部7cを含む。図1では、乗員P1が運転席3に座っている。
【0015】
ここで説明の便宜のため、車両1の幅方向を車幅方向と規定し、車両1の長手方向を車長方向と規定する。車長方向において、運転席3及び助手席5が設置された側を前側とし、かつ、後部座席7が設置された側を後側とする。車幅方向において、運転席3が設置された側を右側とし、かつ、助手席5が設置された側を左側とする。
【0016】
無線通信システム10は、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hを備える。第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hは、互いに通信可能に設定されて、無線通信ネットワークを構成する。第1の無線機20は、「無線機」とも呼称される。第2の無線機30a~30は、「他の無線機」とも呼称される。
【0017】
第1の無線機20は、車両1内の上部中央に設置される。なお、第1の無線機20の設置位置は、車両1内の上部中央に限定されず、第2の無線機30a~30hと無線通信を行うことができ、かつ、車両1内の乗車状況を識別することができる位置であればよい。
【0018】
第1の無線機20は、周波数30GHz~300GHzの電波(ミリ波)を用いて、第2の無線機30a~30hと無線通信を行う。第1の無線機20は、例えば、無線通信規格IEEE802.11adなどで規定された免許不要な60GHz帯の電波を使用する。なお、無線通信に用いられる電波は、「通信波」と呼称される。
【0019】
第1の無線機20は、通信波を用いた無線通信に加えて、周波数30GHz~300GHzの電波(ミリ波)を用いて、対象物の検知を行う。第1の無線機20は、例えば、60GHz帯の電波を使用する場合、7GHz帯域幅という超広帯域を使用することができ、より高精度な距離分解能で対象物を検知することができる。なお、対象物の検知に用いられる電波は、「レーダ波」と呼称される。このように、対象物の検知に用いられるレーダ波は、無線通信に用いられる通信波と同じ周波数帯を使用する。
【0020】
本実施形態では、第1の無線機20は、車両1内の乗車状況を識別するため、レーダ波を用いて、車両1内において、乗車位置A~Eの各々に存在する乗員を検知する。乗車位置Aは、運転席3が設置された場所に対応する。乗車位置Bは、助手席5が設置された場所に対応する。乗車位置Cは、後部座席右側部7aに対応する。乗車位置Dは、後部座席中央部7bに対応する。乗車位置Eは、後部座席左側部7cに対応する。
【0021】
第1の無線機20は、検知された対象物の位置情報を生成する。具体的には、第1の無線機20は、乗車位置A~Eのうち、検知された乗員が存在する乗車位置を、乗車情報として生成する。なお、乗車情報は、「乗員の位置情報」とも呼称される。
【0022】
第1の無線機20は、通信波を用いて第2の無線機30a~30hと無線通信を行う通信期間と、レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間とを交互に設定する。具体的には、第1の無線機20は、通信波を用いて第2の無線機30a~30hと無線通信を行う通信期間と、レーダ波を用いて車両1内の乗員の検知を行う検知期間とを交互に設定する。
【0023】
第1の無線機20は、通信期間の設定情報を、第2の無線機30a~30hに予め通知する。なお、第1の無線機20は、通信期間の設定情報に加えて、検知期間の設定情報を、第2の無線機30a~30hに予め通知してもよい。
【0024】
第1の無線機20は、通信期間において、無線通信の開始時に、同期情報及び対象物の位置情報を、第2の無線機30a~30hに報知する。具体的には、第1の無線機20は、通信期間において、無線通信の開始時に、同期情報及び乗車情報を、第2の無線機30a~30hに報知する。
【0025】
第2の無線機30a~30hの各々は、第1の無線機20と同じく、周波数30GHz~300GHzの電波(通信波)を用いて、第1の無線機20又は他の第2の無線機と無線通信を行う。第2の無線機30a~30hの各々は、例えば、無線通信規格IEEE802.11adなどで規定された免許不要な60GHz帯の電波を使用する。
【0026】
第2の無線機30a~30hの各々は、同期情報を用いて、通信波用の送信タイミングを調整する。第2の無線機30a~30hの各々は、対象物の位置情報を用いて、第1の無線機20及び他の第2の無線機のうち、通信可能な無線機を判定する。
【0027】
具体的には、第2の無線機30a~30hの各々は、乗車情報を用いて、第1の無線機20及び他の第2の無線機のうち、通信可能な無線機を判定する。第2の無線機30a~30hの各々は、通信可能な無線機を判定すると、第1の無線機20によって設定された通信期間において、通信可能な無線機と無線通信を行う。なお、通信可能な無線機は、「宛先無線機」とも呼称される。
【0028】
本実施形態では、第2の無線機30aは、運転席3の車長方向前側かつ車幅方向右側に設置される。第2の無線機30cは、助手席5の車長方向前側かつ車幅方向左側に設置される。第2の無線機30bは、車幅方向における、第2の無線機30a,30c間の中央に設置される。
【0029】
第2の無線機30dは、運転席3の車長方向後側かつ車幅方向右側に設置される。第2の無線機30eは、助手席5の車長方向後側かつ車幅方向左側に配置される。第2の無線機30fは、後部座席7の車長方向前側かつ車幅方向右側に設置される。第2の無線機30gは、後部座席7の車長方向前側かつ車幅方向左側に設置される。第2の無線機30hは、後部座席7の車長方向後側かつ車幅方向中央に設置される。
【0030】
なお、第1の無線機20は、第2の無線機30a~30hと無線通信を行うことができる位置に設置されているため、第2の無線機30a~30hの各々は、第1の無線機20を介して、他の第2の無線機と無線通信を行ってもよい。この場合、第1の無線機20は、第2の無線機同士の通信を中継する。
【0031】
[車載システムの機能ブロック構成]
次に、無線通信システム10の機能ブロック構成について説明する。具体的には、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hの機能ブロック構成について説明する。以下、本実施形態における特徴に関連する部分についてのみ説明する。従って、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hは、本実施形態における特徴に直接関係しない他の機能ブロックを備えることは勿論である。
【0032】
最初に、第1の無線機20の機能ブロック構成を説明する。図2は、第1の無線機20の機能ブロック構成図である。第1の無線機20は、送信部41、受信部43、制御部45、記憶部47、入出力部49、検知部51、生成部53、通信処理部55、及び設定部57を備える。
【0033】
送信部41は、アンテナを介して、検知期間において、対象物の検知に用いられるレーダ波を送信する。送信部41は、アンテナを介して、通信期間において、無線通信に用いられる通信波を送信する。送信部41は、通信期間において、同期情報及び乗車情報を報知する。送信部41は、通信期間において、データ通信用の信号を送信する。
【0034】
受信部43は、アンテナを介して、検知期間において、レーダ波の反射波を受信する。受信部43は、アンテナを介して、通信期間において、無線通信に用いられる通信波を受信する。受信部43は、通信期間において、データ通信用の信号を受信する。
【0035】
なお、図2では、アンテナの数は1つであるが、これに限定されない。アンテナの数は、複数であってもよい。
【0036】
制御部45は、第1の無線機20における処理全体を制御する。具体的には、制御部45は、検知部51、生成部53、通信処理部55、及び設定部57の各々の動作を制御する。
【0037】
記憶部47は、時間情報、通信期間の設定情報、検知期間の設定情報、同期情報、及び乗車情報を記憶する。時間情報は、リアルタイムに刻まれる内部タイマの時間を含む。
【0038】
通信期間の設定情報は、例えば、通信期間の開始タイミング及び終了タイミングと、通信波を送信するのに用いられる通信波用の送信タイミングとを含む。検知期間の設定情報は、例えば、検知期間の開始タイミング及び終了タイミングと、レーダ波を送信するのに用いられるレーダ波用の送信タイミングとを含む。
【0039】
同期情報は、第1の無線機20と第2の無線機30a~30hとの間において、通信波用の送信タイミングを合わせるために使用される。乗車情報は、図1に示した乗車位置A~Eのうち、検知部51によって検知された乗員が存在する乗車位置を含む。
【0040】
入出力部49は、外部装置に対して情報の送受信を行う。外部装置は、例えば、車載センサ、車載カメラ、電子制御ユニット(ECU)などである。
【0041】
検知部51は、検知期間において、レーダ波を生成し、送信部41を介して、生成されたレーダ波を送信する。検知部51は、受信部43を介して、送信したレーダ波の反射波を受信し、受信した反射波を用いて対象物を検知する。
【0042】
検知部51は、パルスレーダ方式を用いて、車両1内の乗員を検知する。図3は、検知部51の機能ブロック構成図である。図3に示すように、検知部51は、レーダ波発生回路51a、信号処理回路51b、及び解析回路51cを含む。レーダ波発生回路51aは、レーダ波としてパルス波を発生し、設定部57によって設定されたレーダ波用の送信タイミングで、車両1内の乗車位置A~Eのうちの1つの乗車位置の方向に、送信部41を介して、発生したパルス波を放射する。
【0043】
信号処理回路51bは、受信部43を介して、放射したパルス波の反射波を受信し、パルス波と反射波との時間差を取得する。解析回路51cは、取得した時間差が有効であるか否かを判定する。解析回路51cは、時間差が有効である場合、有効信号を生成部53に送信する。
【0044】
なお、検知部51は、パルスレーダ方式の他に、Frequency Modulation(FM)-Continuous Wave(CW)方式などを用いて、車両1内の乗員を検知してもよい。FM-CW方式を用いる場合、レーダ波発生回路51aは、レーダ波として連続波を発生し、発生した連続波を周波数変調する。レーダ波発生回路51aは、設定部57によって設定されたレーダ波用の送信タイミングで、車両1内の乗車位置A~Eのうちの1つの乗車位置の方向に、送信部41を介して、周波数変調された連続波を放射する。
【0045】
信号処理回路51bは、受信部43を介して、放射した連続波の反射波を受信し、連続波と反射波との周波数差(ビート周波数)を取得する。解析回路51cは、取得した周波数差が有効であるか否かを判定する。解析回路51cは、周波数差が有効である場合、有効信号を生成部53に送信する。
【0046】
検知部51は、アンテナの数が1つの場合、検知期間において、アンテナを回転させて、車両1内の乗車位置A~Eの各々の方向に、レーダ波を放射する。この場合、解析回路51cは、有効信号を送信する際、レーダ波を放射した方向の識別情報を、有効信号に含める。検知部51は、アンテナの数が複数の場合、検知期間において、複数のアンテナを用いて、車両1内の乗車位置A~Eの各々の方向に、レーダ波を放射する。この場合、解析回路51cは、有効信号を送信する際、レーダ波を放射したアンテナの識別情報を、有効信号に含める。
【0047】
生成部53は、検知部51から有効信号を受信すると、有効信号に含まれる識別情報を用いて、乗員が存在する乗車位置を識別する。アンテナの数が1つの場合、生成部53は、例えば、予め記憶したレーダ波を放射した方向と乗車位置との紐付けを参照して、乗員が存在する乗車位置を識別する。アンテナの数が複数の場合、生成部53は、例えば、予め記憶したアンテナと乗車位置との紐付けを参照して、乗員が存在する乗車位置を識別する。
【0048】
生成部53は、識別した乗車位置を含む乗車情報を生成する。生成部53は、生成した乗車情報を記憶部47に記憶させる。
【0049】
通信処理部55は、通信期間において、通信波を生成し、送信部41を介して、生成された通信波を送信して、第2の無線機30a~30hと無線通信を行う。通信処理部55は、通信期間において、送信部41を介して、記憶部47に記憶された同期情報及び乗車情報を報知する。通信処理部55は、通信期間において、送信部41を介して、データ通信用の信号を用いて、入出力部49によって受信された情報を送信する。通信処理部55は、通信期間において、受信部43を介して、データ通信用の信号を受信する。通信処理部55は、データ通信用の信号から取得した情報を、入出力部49を介して外部装置に送信する。
【0050】
図4は、通信処理部55の機能ブロック構成図である。図4に示すように、通信処理部55は、信号生成回路55a、ベースバンド(BB)回路55b、及び高周波(RF)回路55cを含む。信号生成回路55aは、記憶部47に記憶された同期情報及び乗車情報に基づいて、データ信号を生成する。BB回路55bは、所定の変調方式を用いて、データ信号を変調し、BB信号を生成する。RF回路55cは、BB信号を、高周波領域(ミリ波領域)のRF信号に変換して、報知信号を生成する。RF回路55cは、設定部57によって設定された通信波用の送信タイミングで、送信部41を介して、報知信号を用いて、同期情報及び乗車情報を報知する。なお、通信処理部55は、異なる報知信号を用いて、同期情報及び乗車情報を個別に報知してもよい。
【0051】
同様に、信号生成回路55aは、入出力部49を介して外部装置から取得した情報に基づいて、データ信号を生成する。BB回路55bは、所定の変調方式を用いて、データ信号を変調し、BB信号を生成する。RF回路55cは、BB信号を、高周波領域(ミリ波領域)のRF信号に変換して、データ通信用の信号を生成する。RF回路55cは、設定部57によって設定された通信波用の送信タイミングで、送信部41を介して、データ通信用の信号を用いて、入出力部49によって受信された情報を送信する。
【0052】
RF回路55cは、受信部43を介して、RF信号として、データ通信用の信号を受信すると、受信したRF信号をBB信号に変換する。BB回路55bは、所定の変調方式を用いて、BB信号を復調し、データ信号を生成する。信号生成回路55aは、データ信号から取得した情報を、入出力部49を介して外部装置に送信する。
【0053】
設定部57は、レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間と、通信波を用いて無線通信を行う通信期間とを交互に設定する。すなわち、設定部57は、検知部51がレーダ波を送信する時間と、通信処理部55が通信波を送信する時間とが重ならないように、検知期間及び通信期間を設定する。設定部57は、基本的に、検知部51の動作に基づいて検知期間を設定した後、検知期間の間隔に通信期間を設定する。
【0054】
具体的には、設定部57は、通信波を送信する時間と、レーダ波を送信する時間とが重ならないように、時間軸上において、レーダ波用の送信タイミング及び通信波用の送信タイミングを設定する。ここで、検知期間は、時間軸上において、レーダ波用の送信タイミングが連続して設定された期間に対応する。通信期間は、時間軸上において、通信波用の送信タイミングが連続して設定された期間に対応する。
【0055】
設定部57は、通信期間の開始タイミング及び終了タイミングと、通信波用の送信タイミングとを含む通信期間の設定情報を生成し、生成した通信期間の設定情報を記憶部47に記憶させる。設定部57は、検知期間の開始タイミング及び終了タイミングと、レーダ波用の送信タイミングとを含む検知期間の設定情報を生成し、生成した検知期間の設定情報を記憶部47に記憶させる。設定部57は、通信期間の設定情報を、第2の無線機30a~30hに予め通知する。
【0056】
図5は、通信期間及び検知期間の設定例を示す図である。図5に示すように、通信期間は、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30が、通信波を送信して、互いに無線通信を行う期間である。通信期間は、報知期間及びデータ通信期間を含む。この場合、設定部57は、報知期間の開始タイミング及び終了タイミングと、データ通信期間の開始タイミング及び終了タイミングと、通信波用の送信タイミングとを含む通信期間の設定情報を生成する。
【0057】
報知期間は、第1の無線機20が、無線通信の開始時に、同期情報及び乗車情報を報知するのに要する時間である。データ通信期間は、第1の無線機20が同期情報及び乗車情報を報知した後に、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30のうちの1つの無線機が、データ通信用の信号の送信単位である通信フレームを1つ以上送信するのに要する時間である。このように、通信期間は、最低でも、同期情報及び乗車情報を報知するのに要する時間と、1つの通信フレームの送信に要する時間とを含む。
【0058】
検知期間は、第1の無線機20が、レーダ波を送信して、対象物の検知を行う期間である。図6は、検知期間の一例を示す図である。図6に示すように、検知期間は、最低でも、第1の無線機20がレーダ波を送信する送信開始タイミングt1から、第1の無線機20が当該レーダ波の反射波を受信すると推定される受信完了タイミングt2までの時間を含む。
【0059】
アンテナの数が1つの場合、アンテナを回転させて、車両1内の乗車位置A~Eの各々の方向にレーダ波を照射して、対象物の検知を行う。このため、設定部57は、例えば、第1の無線機20が、1つ目のレーダ波を送信する送信開始タイミングから、5つ目のレーダ波の反射波を受信すると推定される受信完了タイミングまでの時間を、検知期間に設定する。
【0060】
アンテナの数が複数の場合、複数のアンテナを用いて、車両1内の乗車位置A~Eの各々の方向に、レーダ波を放射して、対象物の検知を行う。このため、設定部57は、例えば、第1の無線機20が、1つ目のアンテナからレーダ波を送信する送信開始タイミングから、5つ目のアンテナから送信されたレーダ波の反射波を受信すると推定される受信完了タイミングまでの時間を、検知期間に設定する。
【0061】
設定部57は、通信期間と検知期間との間に、第1の切替期間又は第2の切替期間を設定する。第1の切替期間は、通信期間から検知期間に移行するのに要する時間である。具体的には、制御部45は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照し、内部タイマの時間が、通信期間の終了タイミングに達したと判断すると、第1の切替期間において、通信処理部55を停止状態に移行させ、検知部51を活動状態に移行させる。検知部51は、記憶部47に記憶された時間情報及び検知期間の設定情報を参照し、内部タイマの時間が、検知期間の開始タイミングに達したと判断すると、対象物の検知を行う。なお、制御部45は、第1の切替期間において、通信処理部55を停止状態に移行せずに、通信処理部55を待機状態に移行させてもよい。
【0062】
第2の切替期間は、検知期間から通信期間に移行するのに要する時間である。具体的には、制御部45は、記憶部47に記憶された時間情報及び検知期間の設定情報を参照し、内部タイマの時間が、検知期間の終了タイミングに達したと判断すると、第2の切替期間において、検知部51を停止状態に移行させ、通信処理部55を活動状態に移行させる。通信処理部55は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間の開始タイミングに達したと判断すると、無線通信を行う。なお、制御部45は、第2の切替期間において、検知部51を停止状態に移行させずに、検知部51を待機状態に移行させてもよい。
【0063】
なお、活動状態は、検知部51又は通信処理部55が処理を実行する状態である。停止状態は、検知部51又は通信処理部55が処理を停止する状態である。待機状態は、検知部51又は通信処理部55が処理を待機する状態である。制御部45が、通信処理部55を停止状態又は待機状態に移行させる際に、通信処理部55は、未送信の通信フレームを記憶部47に一時的に記憶させる。通信処理部55は、活動状態になると、記憶部47に一時的に記憶させた通信フレームの送信を再開する。
【0064】
次に、第2の無線機30a~30hの機能ブロック構成を説明する。図7は、第2の無線機30a~30hの機能ブロック構成図である。なお、第2の無線機30a~30hは同じ構成を有するため、第2の無線機30b~30hの説明は省略する。図7に示すように、第2の無線機30aは、送信部61、受信部63、制御部65、記憶部67、入出力部69、通信処理部71、及び判定部73を備える。
【0065】
送信部61は、アンテナを介して、第1の無線機20によって設定された通信期間において、無線通信に用いられる通信波を送信する。送信部41は、当該通信期間において、データ通信用の信号を送信する。
【0066】
受信部63は、アンテナを介して、第1の無線機20によって設定された通信期間において、無線通信に用いられる通信波を受信する。受信部63は、当該通信期間において、同期情報及び乗車情報を受信する。受信部63は、当該通信期間において、データ通信用の信号を受信する。
【0067】
なお、図7では、アンテナの数は1つであるが、これに限定されない。アンテナの数は、複数であってもよい。
【0068】
制御部65は、第2の無線機30aにおける処理全体を制御する。具体的には、制御部65は、通信処理部71及び判定部73の各々の動作を制御する。制御部65は、受信部63によって受信された同期情報を用いて、予め通知された通信期間の設定情報に含まれる通信波用の送信タイミングを調整する。制御部65は、受信部63によって受信された乗車情報を記憶部67に記憶させる。受信部63が、報知信号を用いて、同期情報及び乗車情報を受信する場合、制御部65は、受信した報知信号から、同期情報及び乗車情報を取得する。
【0069】
記憶部67は、時間情報、乗車情報、及び通信期間の設定情報を記憶する。時間情報は、リアルタイムに刻まれる内部タイマの時間を含む。乗車情報は、乗車位置A~Eのうち、第1の無線機20によって検知された乗員が存在する乗車位置を含む。通信期間の設定情報は、通信期間の開始タイミング及び終了タイミングと、通信波用の送信タイミングとを含み、第1の無線機20によって予め通知される。記憶部67は、更に、後述する通信判定テーブルを予め記憶している(図9参照)。
【0070】
入出力部69は、外部装置に対して情報の送受信を行う。外部装置は、例えば、車載センサ、車載カメラ、電子制御ユニット(ECU)などである。
【0071】
通信処理部71は、第1の無線機20によって設定された通信期間において、通信波を生成し、送信部41を介して、生成された通信波を送信して、第1の無線機20及び第2の無線機30b~30hと無線通信を行う。通信処理部71は、当該通信期間において、送信部61を介して、データ通信用の信号を用いて、入出力部49によって受信された情報を送信する。通信処理部71は、通信期間において、受信部43を介して、データ通信用の信号を受信する。通信処理部55は、データ通信用の信号から取得した情報を、入出力部49を介して外部装置に送信する。
【0072】
通信処理部71は、第1の無線機20の通信処理部55と同様に、信号生成回路、BB回路、及びRF回路を含む。
【0073】
制御部65は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内の報知期間の開始タイミングに達したと判断すると、通信処理部71を活動状態に移行させる。通信期間内の報知期間において、制御部65は、受信部63によって受信された同期情報を用いて、通信波用の送信タイミングを調整する。通信処理部71は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の開始タイミングに達したと判断すると、無線通信を行う。
【0074】
制御部65は、記憶部67に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の終了タイミングに達したと判断すると、通信処理部71を停止状態に移行させる。なお、制御部65は、通信処理部71を停止状態に移行させずに、通信処理部71を待機状態に移行させてもよい。
【0075】
判定部73は、記憶部67に記憶された乗車情報を参照して、乗車位置A~Eのうち、乗員が存在する乗車位置を認識する。判定部73は、記憶部67に記憶された通信判定テーブルを参照して、識別した乗車位置に基づいて、第1の無線機20及び第2の無線機30b~30hのうち、通信可能な宛先無線機を判定する。
【0076】
判定部73は、判定した宛先無線機を記憶部67に記憶させる。通信処理部71は、通信期間において、記憶部67に記憶させた宛先無線機を識別して、当該宛先無線機と無線通信を行う。なお、通信処理部71は、データ通信用の信号の送信対象である他の第2の無線機が宛先無線機に対応していない場合、第1の無線機20を介して、データ通信用の信号を、当該他の第2の無線機に送信してもよい。
【0077】
図8は、乗車情報の一例を示す図である。図8に示す例では、車両1内には、乗員P1~P3が存在している。乗員P1は運転席3に座っている。乗員P2は後部座席右側部7aに座っている。乗員P3は後部座席左側部7cに座っている。
【0078】
第1の無線機20の検知部51は、検知期間において、レーダ波を用いて、乗車位置A,C、Eの各々に乗員が存在することを検知する。第1の無線機20の生成部53は、乗員が存在する乗車位置A、C、Eを識別すると、識別した乗車位置A、C、Eを含む乗車情報を生成して、生成した乗車情報を記憶部47に記憶させる。
【0079】
第1の無線機20の通信処理部55は、通信期間において、報知信号を用いて、記憶部47に記憶させた乗車情報を報知する。第2の無線機30a~30hの各々の制御部65は、受信部63によって受信された乗車情報を、記憶部67に記憶させる。第2の無線機30a~30hの各々の判定部73は、記憶部67に記憶された乗車情報及び通信判定テーブルを参照して、通信可能な宛先無線機を判定する。
【0080】
図9は、通信判定テーブルの一例を示す図である。具体的には、図9は、第2の無線機30fによって予め保持されている通信判定テーブルを示している。図9に示すように、第2の無線機30fは、乗車位置Aに乗員が存在する場合、第1の無線機20及び第2の無線機30d、30g、30hと通信可能である。第2の無線機30fは、乗車位置Bに乗員が存在する場合、第1の無線機20及び第2の無線機30a、30d、30g、30hと通信可能である。
【0081】
第2の無線機30fは、乗車位置Cに乗員が存在する場合、第1の無線機20及び第2の無線機30a、30dと通信可能である。第2の無線機30fは、乗車位置Dに乗員が存在する場合、第1の無線機20及び第2の無線機30a、30dと通信可能である。第2の無線機30fは、乗車位置Eに乗員が存在する場合、第1の無線機20及び第2の無線機30a、30d、30hと通信可能である。
【0082】
従って、第1の無線機20が、通信期間内の報知期間において、乗車位置A、C、Eを含む乗車情報を報知する場合、第2の無線機30fの判定部73は、宛先無線機として、第1の無線機20及び第2の無線機30dを判定する。第2の無線機30fの通信処理部71は、当該通信期間内のデータ通信期間において、第1の無線機20及び第2の無線機30dと無線通信を行う。
【0083】
[無線通信システムの動作]
次に、無線通信システム10の動作について説明する。具体的には、検知期間と通信期間との切替処理について説明する。
【0084】
[検知期間と通信期間との切替処理]
図10は、第1の無線機20による、検知期間と通信期間との切替処理のフローチャートを示す図である。図10では、第1の無線機20の制御部45は、最初に、通信処理部55を停止状態に移行させ、かつ、検知部51を活動状態に移行させて、検知期間における対象物の検知を検知部51に実行させる。なお、制御部45は、最初に、検知部51を停止状態に移行させ、かつ、通信処理部55を活動状態に移行させて、通信期間における無線通信を通信処理部55に実行させてもよい。
【0085】
制御部45は、図10に示した切替処理を行う前に、検知期間、第1の切替期間、通信期間、及び第2の切替期間を、設定部57に設定させる。ここで、上述したように、検知期間は、時間軸上において、レーダ波用の送信タイミングが連続して設定された期間に対応する。通信期間は、時間軸上において、通信波用の送信タイミングが連続して設定された期間に対応する。設定部57は、通信期間の設定情報及び検知期間の設定情報を生成し、生成した通信期間の設定情報及び検知期間の設定情報を、記憶部47に記憶させる。
【0086】
図10に示すように、検知部51は、記憶部47に記憶された時間情報及び検知期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、検知期間の開始タイミングに達したと判断すると、レーダ波を用いて、対象物の検知を行う(S11)。
【0087】
検知期間において、検知部51が対象物を検知すると、生成部53は、対象物の位置情報を生成する。具体的には、検知部51が車両1内の乗員を検知すると、生成部53は、乗車情報として、乗員の位置情報を生成する。
【0088】
制御部45は、記憶部47に記憶された時間情報及び検知期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、検知期間の終了タイミングに達したか否かを判断する(S13)。制御部45は、内部タイマの時間が検知期間の終了タイミングに達しないと判断する場合、検知部51にS11の処理を続けさせる。
【0089】
制御部45は、内部タイマの時間が検知期間の終了タイミングに達したと判断する場合、検知部51を停止情報に移行させ、通信処理部55を活動状態に移行させる(S15)。通信処理部55は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内の報知期間の開始タイミングに達したと判断すると、通信波を用いて、無線通信を行う(S17)。
【0090】
通信期間内の報知期間において、第1の無線機20の通信処理部55は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、送信部41を介して、同期情報及び対象物の位置情報を報知する。具体的には、第1の無線機20の通信処理部55は、送信部41を介して、同期情報及び乗車情報を報知する。
【0091】
第2の無線機30a~30hの各々の制御部65は、記憶部67に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内の報知期間の開始タイミングに達したと判断すると、通信処理部71を活動状態に移行させる。通信期間内の報知期間において、第2の無線機30a~30hの各々の制御部65は、受信部63によって受信された同期情報を用いて、通信期間の設定情報に含まれる通信波用の送信タイミングを調整する。
【0092】
通信期間内の報知期間において、第2の無線機30a~30hの各々の判定部73は、受信部63によって受信された対象物の位置情報を参照して、対象物が存在する位置を認識し、通信可能な宛先無線機を判定する。具体的には、第2の無線機30a~30hの各々の判定部73は、受信部63によって受信された乗車情報を参照して、乗員が存在する乗車位置を認識し、通信可能な宛先無線機を判定する。
【0093】
第1の無線機20の通信処理部55は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の開始タイミングに達するか否かを判断する。第1の無線機20の通信処理部55は、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の開始タイミングに達したと判断すると、送信部41を介して、データ通信用の信号を第2の無線機30a~30hの各々に送信する。
【0094】
第2の無線機30a~30hの各々の通信処理部71は、記憶部67に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の開始タイミングに達するか否かを判断する。第2の無線機30a~30hの各々の通信処理部71は、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の開始タイミングに達したと判断すると、送信部61を介して、データ通信用の信号を宛先無線機に送信する。
【0095】
通信期間内のデータ通信期間において、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30は、CSMA/CA方式を用いて、無線通信を行う。
【0096】
第1の無線機20の制御部45は、記憶部47に記憶された時間情報及び通信期間の設定情報を参照して、内部タイマの時間が、通信期間内のデータ通信期間の終了タイミングに達したか否かを判断する(S19)。制御部45は、内部タイマの時間が通信期間内のデータ通信期間の終了タイミングに達しないと判断する場合、通信処理部55にS17の処理を続けさせる。
【0097】
制御部45は、内部タイマの時間が通信期間内のデータ通信期間の終了タイミングに達したと判断する場合、切替処理を終了するか否かを判断する(S21)。制御部45は、切替処理を終了すると判断する場合、一連の処理が終了する。制御部45は、切替処理を終了しないと判断する場合、通信処理部55を停止情報に移行させ、検知部51を活動状態に移行させて、S11の処理に戻る(S23)。
【0098】
なお、第2の無線機30a~30hの各々の制御部65は、内部タイマの時間が通信期間内のデータ通信期間の終了タイミングに達したと判断すると、通信処理部55を停止情報に移行させる。
【0099】
[作用・効果]
本実施形態によれば、第1の無線機20は、レーダ波を用いて対象物の検知を行う検知期間と、レーダ波と同じ周波数帯の通信波を用いて無線通信を行う通信期間とを交互に設定し、通信期間の設定情報を第2の無線機30a~30hに通知する。このため、対象物の検知に用いられるレーダ波が送信されている間に、無線通信に用いられる通信波が送信されるのを確実に防止することができる。
【0100】
本実施形態によれば、第1の無線機20は、対象物の位置情報を生成し、通信期間において、無線通信の開始時に、対象物の位置情報を第2の無線機30a~30hに報知する。このため、第2の無線機30a~30hの各々は、無線通信を行う際の障害となる対象物の位置を識別して、最適な通信経路を選択することができる。
【0101】
従って、本実施形態によれば、無線通信に用いられる通信波と、対象物の検知に用いられるレーダ波との相互干渉を抑制しつつ、通信遅延を回避し得る第1の無線機20及び無線通信システム10を提供することができる。
【0102】
本実施形態によれば、第1の無線機20は、通信期間において、無線通信の開始時に、同期情報を第2の無線機30a~30hに報知する。このため、第1の無線機20の内部タイマと、第2の無線機30a~30hの内部タイマとの間において、時間のずれが生じる場合でも、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hは、同期情報を用いて、通信波用の送信タイミングを合わせることができる。
【0103】
本実施形態によれば、第1の無線機20は、レーダ波を用いて車両1内の乗員を検知し、検知された乗員の位置情報を生成して、通信期間において、無線通信の開始時に、乗員の位置情報を第2の無線機30a~30hに報知する。このため、第2の無線機30a~30hは、車両1内において、無線通信を行う際の障害物となる乗員の位置を識別して、最適な通信経路を選択することができる。
【0104】
[変形例]
上述した実施形態では、第1の無線機20によって設定された通信期間は、固定されているが、これに限定されない。対象物の位置が長時間変動しない場合、検知部51は、短い間隔で、対象物を検知する必要がない。このため、本変形例では、第1の無線機20は、対象物の位置情報に変更があるか否かに基づいて、通信期間の最適化処理を行う。具体的には、第1の無線機20は、検知期間毎に生成される対象物の位置情報が所定期間変更されない場合、通信期間を長く設定する。これにより、検知期間の間隔が延長される。
【0105】
特に、車両1内の乗車状況が長時間変動しない場合、検知部51は、短い間隔で、車両1内の乗員を検知する必要がない。例えば、運転席3のみに乗員が存在する場合、検知部51は、短い間隔で、車両1内の乗員を検知する必要がない。このため、本変形例では、第1の無線機20は、乗車情報に変更があるか否かに基づいて、通信期間の最適化処理を行う。具体的には、第1の無線機20は、検知期間毎に生成される乗車情報が所定期間変更されない場合、通信期間を長く設定する。これにより、検知期間の間隔が延長される。
【0106】
図11は、第1の無線機20による、通信期間の最適化処理のフローチャートを示す図である。通信期間の最適化処理では、検知期間毎に生成される乗車情報が、N回以上連続して変更されない場合、第1の無線機20の設定部57は、通信期間内のデータ通信期間をX倍長くする。
【0107】
なお、Nの値及びXの値は、任意に設定可能であり、記憶部47に予め記憶されている。例えば、N=10及びX=2の場合、検知期間毎に生成される乗車情報が、10回以上連続して変更されない場合、設定部57は、データ通信期間を2倍長くする。なお、通信期間の最適化処理を行う前に、延長パラメータTの値は1に初期設定され、かつ、回数パラメータnの値は0に初期設定されている。
【0108】
設定部57は、検知期間毎に生成される乗車情報を生成部53から受信し、乗車情報に変更があるか否かを判定する(S31)。設定部57は、S31にて、乗車情報に変更があると判定する場合、延長パラメータTの値がXであるか否かを判定する(S33)。
【0109】
設定部57は、S33にて、延長パラメータTの値がXであると判定する場合、延長パラメータTの値を1に変更する(S35)。これにより、乗車情報に変更がある場合、設定部57は、データ通信期間を通常の長さに戻して、通信期間の設定情報を変更する。通信処理部55は、適切なタイミングで、変更した通信期間の設定情報を報知する。
【0110】
設定部57は、延長パラメータTの値を1に変更すると、回数パラメータnの値を0にリセットする(S37)。設定部57は、S33にて、延長パラメータTの値がXではないと判定する場合、回数パラメータnの値を0にリセットする(S37)。
【0111】
設定部57は、回数パラメータnの値を0にリセットすると、最適化処理を終了するか否かを判定する(S39)。設定部57は、S39にて、最適化処理を終了すると判定する場合、一連の処理が終了する。設定部57は、S39にて、最適化処理を終了しないと判定する場合、S31の処理に戻り、後続の検知期間において生成された乗車情報に変更があるか否かを判定する。
【0112】
設定部57は、S31にて、乗車情報に変更がないと判定する場合、回数パラメータnの値に1を加えて、回数パラメータnの値をカウントアップする(S41)。設定部57は、回数パラメータnの値をカウントアップすると、回数パラメータnの値がN以上であるか否かを判定する(S43)。設定部57は、S43にて、回数パラメータnの値がN以上であると判定する場合、延長パラメータTの値が1であるか否かを判定する(S45)。
【0113】
設定部57は、S45にて、延長パラメータTの値が1であると判定する場合、延長パラメータTの値をXに変更する(S47)。これにより、検知期間毎に生成される乗車情報が、N回連続して変更されない場合、設定部57は、データ通信期間をX倍長くして、通信期間の設定情報を変更する。通信処理部55は、適切なタイミングで、変更した通信期間の設定情報を報知する。
【0114】
設定部57は、延長パラメータTの値をXに変更すると、回数パラメータnの値を0にリセットし(S37)、最適化処理を終了するか否かを判定する(S39)。
【0115】
設定部57は、S43にて、回数パラメータnの値がN未満であると判定する場合、又はS45にて、延長パラメータTの値が1ではないと判定する場合、最適化処理を終了するか否かを判定する(S39)。
【0116】
本変形例では、第1の無線機20は、対象物の位置情報又は乗車情報が所定期間変更されない場合、通信期間を長くする。このため、対象物の位置が長時間変動しない場合、又は車両1内の乗員が長時間移動しない場合、無線通信を行う期間を長く設定することができ、通信遅延を更に回避し得る。
【0117】
[その他の実施形態]
上述した実施形態では、無線通信と対象物の検知とには、周波数30GHz~300GHzのミリ波を用いて、無線通信及び対象物の検知を行っているが、これ限定されない。同じ周波数帯の電波を用いて、無線通信及び対象物の検知を行うことができれば、ミリ波の代わりに、周波数3GHz~30GHzのマイクロ波が使用されてもよい。
【0118】
上述した実施形態では、無線通信システム10は車両1内で使用されているが、これに限定されない。同じ空間内で、同じ周波数帯の電波を用いて、無線通信及び対象物の検知を行うことができれば、無線通信システム10は、車両1以外の他の場面で使用されてもよい。
【0119】
上述した実施形態では、第1の無線機20は、ミリ波を用いて、同期情報及び乗車情報を報知しているが、これに限定されない。第1の無線機20は、ビーコン、又はマイクロ波などのミリ波以外の周波数帯の電波を用いて、同期情報及び乗車情報を報知してもよい。
【0120】
上述した実施形態では、第1の無線機20において、検知期間では、検知部51のレーダ波発生回路51aがレーダ波を生成し、かつ、通信期間では、通信処理部55のRF回路55cが通信波を生成したが、これに限定されない。第1の無線機20において、レーダ波発生回路51a及びRF回路55cの代わりに、共用の送受信回路を利用してもよい。この場合、検知期間では、共用の送受信回路がレーダ波を生成し、かつ、通信期間では、共用の送受信回路が通信波を生成する。
【0121】
上述した実施形態において、第1の無線機20及び第2の無線機30a~30hが、遮蔽物が存在する、通信距離が長いなどの理由で、直接互いに無線通信を行うことができない場合、一般的な中継伝送を利用して、無線通信を行ってもよい。
【0122】
上述した実施形態の説明に用いたブロック構成図(図2~4及び図7)は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置又は回路を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置又は回路を直接的または間接的に接続し、これら複数の装置又は回路を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、1つの装置または複数の装置に、ソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0123】
図12は、第1の無線機20のハードウェア構成の一例を示す図である。図12に示すように、第1の無線機20は、プロセッサー1001、メモリ1003、及びストレージ1005、通信インタフェース1007、センサ1009、及び通信装置1011を備える。
【0124】
第1の無線機20において、対象物の検知における送信部41、受信部43、及び検知部51の機能は、レーダ波を放射するセンサ1009によって実現される。第1の無線機20において、無線通信における送信部41、受信部43、及び通信処理部55の機能は、通信波を放射する通信装置1011によって実現される。入出力部49の機能は、通信インタフェース1007によって実現される。
【0125】
制御部45の機能は、プロセッサー1001によって実現される。記憶部47の機能は、ストレージ1005によって実現される。生成部53及び設定部57の機能は、プロセッサー1001が所定のソフトウェア(プログラム)に沿って演算を行い、メモリ1003及びストレージ1005におけるデータの読み出し及び書き込みを制御することによって実現される。
【0126】
プロセッサー1001が、所定のソフトウェア(プログラム)に沿って演算を行い、センサ1009の動作と、メモリ1003及びストレージ1005におけるデータの読み出し及び書き込みとを制御することによって、対象物の検知が実現される。
【0127】
プロセッサー1001が、所定のソフトウェア(プログラム)に沿って演算を行い、通信装置1011の動作と、メモリ1003及びストレージ1005におけるデータの読み出し及び書き込みとを制御することによって、無線通信が実現される。
【0128】
なお、制御部45、記憶部47、検知部51、生成部53、通信処理部55、及び設定部57の各機能は、専用回路によって実現されてもよい。また、図12では、センサ1009及び通信装置1011は、第1の無線機20内で一体化されているが、センサ1009は、第1の無線機20と離れた位置に設置されて、無線又は有線で接続されていてもよい。
【0129】
第2の無線機30a~30のハードウェア構成は、センサ1009を除いて、第1の無線機20のハードウェア構成と同じである。
【0130】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 無線通信システム
20 第1の無線機
30a~30h 第2の無線機
41 送信部
45 制御部
47 記憶部
51 検知部
53 生成部
55 通信処理部
57 設定部
73 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12