(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自律走行システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2020196765
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020026686
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西別府 慎也
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200125(JP,A)
【文献】特開2019-103422(JP,A)
【文献】特開2018-116612(JP,A)
【文献】特開2018-164440(JP,A)
【文献】特許第6564725(JP,B2)
【文献】特開2016-168883(JP,A)
【文献】特開2019-040635(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017367(WO,A1)
【文献】特開2008-056022(JP,A)
【文献】米国特許第06112139(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/40 - 1/43
H04Q 9/00 - 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末を備える自律走行システムであって、
前記遠隔操作端末は、
自律走行中の前記作業車両を停止させる停止操作を受け付けるスイッチ部と、
前記スイッチ部に対する前記停止操作に応じて前記作業車両が停止した後に、第1所定時間以上継続して前記スイッチ部を押圧する押圧操作と前記第1所定時間に続く第2所定時間の間に前記スイッチ部に対する押圧操作を解除する解除操作とを含む走行再開操作が行われた場合に、前記作業車両の走行を再開させる制御部と、
を備える自律走行システム。
【請求項2】
前記スイッチ部は、自律走行中の前記作業車両を緊急停止させる緊急停止操作を受け付ける第1スイッチ部と、自律走行中の前記作業車両を一時停止させる一時停止操作を受け付ける第2スイッチ部とを含み、
前記制御部は、前記第2スイッチ部に対する前記一時停止操作に応じて前記作業車両が一時停止した後に、前記第1所定時間以上継続して前記第2スイッチ部を押圧する押圧操作と前記第2所定時間の間に前記第2スイッチ部に対する押圧操作を解除する解除操作とを含む走行再開操作が行われた場合に、前記作業車両の走行を再開させる、
請求項1に記載の自律走行システム。
【請求項3】
前記作業車両は、所定の音を放音する放音部を備え、
前記制御部は、前記第2スイッチ部に対する前記一時停止操作に応じて前記作業車両が一時停止した後に前記第1所定時間以上継続して前記第2スイッチ部が押圧操作された場合に、前記放音部に、前記作業車両の走行が再開されることを示す音を前記第2所定時間だけ放音させる、
請求項2に記載の自律走行システム。
【請求項4】
自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末を備える自律走行システムであって、
前記遠隔操作端末は、
自律走行中の前記作業車両を緊急停止させる緊急停止操作を受け付ける第1スイッチ部と、
自律走行中の前記作業車両を一時停止させる一時停止操作を受け付ける第2スイッチ部と、
前記第1スイッチ部又は前記第2スイッチ部に対する停止操作に応じて前記作業車両が停止した後に、第1所定時間だけ前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部がともに押圧状態となる走行再開操作が行われた場合に、前記作業車両の走行を再開させる制御部と、
を備える自律走行システム。
【請求項5】
前記作業車両は、所定の音を放音する放音部を備え、
前記制御部は、前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部がともに押圧状態になった場合に、前記放音部に、前記作業車両の走行が再開されることを示す音を第2所定時間だけ放音させ、
前記制御部は、前記第2所定時間の間に前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部のそれぞれに対する押圧操作がともに解除された場合に前記作業車両の走行を再開させる、
請求項4に記載の自律走行システム。
【請求項6】
前記自律走行システムは、複数の前記遠隔操作端末を備え、
前記作業車両は、複数の前記遠隔操作端末のうち前記作業車両を停止させた前記遠隔操作端末から走行再開指示を取得した場合にのみ走行を再開する、
請求項1~5のいずれかに記載の自律走行システム。
【請求項7】
前記作業車両は、障害物を検出する障害物検出部を備え、
前記作業車両は、前記障害物検出部の機能が有効である場合に走行を再開させ、前記障害物検出部の機能が無効である場合に走行を再開させない、
請求項1~6のいずれかに記載の自律走行システム。
【請求項8】
前記遠隔操作端末は、複数の発光態様で発光する発光部と、複数の音声態様で放音する音声出力部とを備え、
前記制御部は、前記停止操作に応じて前記作業車両が停止した場合において、前記作業車両の走行再開が不可能な状態である場合には、前記発光部を第1の色で点灯させ、かつ前記音声出力部から第1の音を出力させ、前記作業車両の走行再開が可能な状態である場合には、前記発光部を第2の色で点灯させ、かつ前記音声出力部から第2の音を出力させる、
請求項1~7のいずれかに記載の自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台の作業車両に対して複数台のリモコンを複数人の操作者が操作可能な構成の場合であっても、安全性の高い操作・制御を行うことができる自律走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場などでの農作業を効率よく簡便に行うため、オペレータが搭乗していない無人の作業車両を自律的に走行させる自律走行システムが開発されている。このような自律走行システムは、通常、作業車両から離れた住居などに設置されたサーバ装置によりその作業車両の遠隔操作行うことができるように構成したものである。
【0003】
ところがこのような構成のシステムでは、トラクタなどの作業車両の走行・作業状態を目視することができず、緊急時の対応が困難である。このため、作業車両に取り付けたカメラの撮影画像をモニタとなるタブレットなどの遠隔操作端末の画面で確認しながら、作業車両の自律走行を操作するべく、そのモニタ手段となる表示画面を備える遠隔操作端末を利用した自律走行システムが開発されている。
【0004】
また、このような遠隔操作による作業車両の運転走行では、遠隔操作が不能になった場合でも作業車両を安全に停止させることができるようにするため、例えば、作業車両との通信により走行経路の設定及び作業車両の動作制御を行うタブレットなどの第1遠隔操作端末とは別に、作業車両との通信により作業車両の走行動作制御を行うことができる(特に、緊急停止などの操作を可能とする)携帯用のリモコンなどの第2遠隔操作端末を備えたものも提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に記載の自律走行システムでは、リモコンに緊急停止ボタン、一時停止ボタン、自動走行開始ボタンが設けられており、自動走行開始ボタンにより、緊急停止した作業車両の走行を再開させることが可能になっている。リモコンなどの第2遠隔操作端末を複数台で構成するものも提案されており、同じ圃場で作業中の複数の作業者がそれぞれ第2遠隔操作端末を携行し、監視体制を向上させるとともに圃場での安全性を向上させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の自律走行システムでは、リモコンに走行再開用のボタンが別途設けられているため、リモコン本体の大きさが大きくなる問題が生じる。自律走行可能な作業車両は遠隔操作装置によって操作されるものであり、緊急停止用のリモコンは付随的な役割にすぎないものであることから、リモコンは小型であることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末の小型化を図るとともに、作業車両が停止した場合に遠隔操作端末により作業車両の走行を再開させることが可能な自律走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自律走行システムは、自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末を備える自律走行システムである。前記遠隔操作端末は、自律走行中の前記作業車両を停止させる停止操作を受け付けるスイッチ部と、前記スイッチ部に対する前記停止操作に応じて前記作業車両が停止した後に、第1所定時間以上継続して前記スイッチ部を押圧する押圧操作と前記第1所定時間に続く第2所定時間の間に前記スイッチ部に対する押圧操作を解除する解除操作とを含む走行再開操作が行われた場合に、前記作業車両の走行を再開させる制御部と、を備える。
【0010】
本発明に係る自律走行システムは、自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末を備える自律走行システムである。前記遠隔操作端末は、自律走行中の前記作業車両を緊急停止させる緊急停止操作を受け付ける第1スイッチ部と、自律走行中の前記作業車両を一時停止させる一時停止操作を受け付ける第2スイッチ部と、前記第1スイッチ部又は前記第2スイッチ部に対する停止操作に応じて前記作業車両が停止した後に、第1所定時間だけ前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部がともに押圧状態となる走行再開操作が行われた場合に、前記作業車両の走行を再開させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自律走行可能な作業車両に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末の小型化を図るとともに、作業車両が停止した場合に遠隔操作端末により作業車両の走行を再開させることが可能な自律走行システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットトラクタの全体側面図である。
【
図3】そのロボットトラクタの機能ブロック図である。
【
図4】(a)は第1の実施形態に係るタブレットの平面図、(b)はそのタブレットのディスプレイでの表示画面を示す説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係るリモコンの平面図である。
【
図8】タブレットのディスプレイでの作業選択領域を示す説明図である。
【
図9】トラクタが停止後の再開操作を行わせる際に操作可能とするリモコンの選択操作態様の具体例1を示す遷移図である。
【
図10】トラクタが停止後の再開操作を行わせる際に操作可能となるリモコンの選択操作態様の具体例2を示す遷移図である。
【
図11】(a)及び(b)は、リモコン選択操作の際に表示する操作選択メニューを示す説明図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態のトラクタ再開操作の手順を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第1の実施形態のトラクタ再開操作の動作を示すタイミングチャートである。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係るタブレットの構成ブロック図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係るトラクタ再開操作の手順を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係るトラクタ再開操作の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る遠隔操作装置(以下、これをRCDと呼ぶ)の説明に先立ち、まず初めに本発明の第1の実施形態に係る作業車両の一例であるロボットトラクタ1(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)について説明する。
【0014】
本発明のトラクタ1は、圃場を自律走行する機体2を備えている。機体2は、
図1及び
図2に示すように、農作業に用いられる作業機3が着脱可能に備えられている。また、この機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
【0015】
本実施形態の作業機3は、農作業に用いられるものである。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々のものがあり、これらの中から必要に応じて所望の作業機を選択して機体2に装着することができる。
【0016】
なお、本明細書において「自律走行」とは、
図3に示すように、トラクタ1が備える自律走行制御装置51等により、このトラクタ1が走行用に備える各装置機器が制御され、予め定められた経路に沿ってトラクタ1が走行することを意味する。
【0017】
以下の説明では、自律走行を行うトラクタを「無人トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称し、操作者が直接操作することにより走行して作業を行うトラクタを「有人トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより行われる場合、残りの農作業は有人トラクタにより行われる。
【0018】
本実施形態において、無人トラクタと有人トラクタの違いは、操作者の直接操作の有無であり、トラクタとしての構成は無人と有人とで共通である。即ち、無人トラクタであっても、操作者が搭乗(乗車)して直接操作することができる(言い換えれば、有人トラクタとして使用することができる)。また、有人トラクタであっても、操作者が降車して自律走行及び自律作業を行わせることができる(言い換えれば、無人トラクタとして使用することができる)。
【0019】
トラクタ1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。トラクタ1の機体2は、
図1に示すように、その前部が左右一対の前輪7,7で支持されるとともに、その後部が左右一対の後輪8,8で支持されている。前輪7,7及び後輪8,8が走行部を構成している。
【0020】
機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内にはトラクタ1の駆動源であるエンジン10及び燃料タンク(図示省略)等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成しても良い。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用しても良い。
【0021】
ボンネット9の後方には、操作者が搭乗するキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、操作者が操向操作するためのステアリングハンドル12と、操作者が座る座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、農業用作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
【0022】
図示は省略するが、上記の操作装置としては、例えばモニタ装置、スロットルレバー、主変速レバー、昇降レバー、PTOスイッチ、PTO変速レバー及び複数の油圧変速レバー等が挙げられる。これら操作装置は、座席13の近傍又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
【0023】
モニタ装置は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバーは、エンジン10の回転速度を設定するものである。主変速レバーは、ミッションケース22の変速比を変更操作するものである。昇降レバーは、機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するものである。PTOスイッチは、ミッションケース22の後端側から外向きに突出したPTO軸(動力取出軸)への動力伝達を継断操作するものである。すなわち、PTOスイッチがON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチがOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止する。PTO変速レバーは、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うものである。油圧変速レバーは、油圧外部取出バルブを切換操作するものである。
【0024】
図1に示すように、機体2の下部には、その骨組みを構成するシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、ミッションケース22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
【0025】
図3に示すように、トラクタ1は、機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動、及び停止等)を制御するための制御部として、車両バス回線18を介して相互に通信可能としたエンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17を備える。エンジン制御装置15が、エンジン10に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置41と電気的に接続されており、変速機制御装置16が、エンジン10からの動力を変速させる油圧式変速装置などを含む変速機42と電気的に接続されている。また、作業機制御装置17が、作業機昇降アクチュエータ44と電気的に接続されている。
【0026】
変速機42は、具体的には例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置であり、ミッションケース22に備えられている。変速機42を制御装置4により制御して斜板の角度を適宜に調整することにより、ミッションケース22の変速比を所望の変速比にすることができる。
【0027】
また、エンジン制御装置15には、エンジン10の回転速度を検出する回転速度センサ31、後輪8の回転速度を検出する車速センサ32、ハンドル12の回動角度(操舵角)を検出する操舵角センサ(図略)等のセンサ類も電気的に接続している。これらセンサの検出値が検出信号に変換されてエンジン制御装置15に送信される。
【0028】
上述のような制御装置15~17を備えるトラクタ1は、キャビン11内に搭乗した操作者の各種操作に基づき、制御装置15~17が車両バス回線18を介して相互に通信して、トラクタ1の各部(機体2、作業機3等)を制御することで、圃場内を走行しながら農作業を実行可能に構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、例えば操作者が搭乗しなくても、遠隔操作によっても自律走行させることができるようにするため、遠隔操作装置RCDを備えている。
【0029】
なお、本発明の遠隔操作装置RCDは、単一の第1遠隔操作端末70(以下、「タブレット70」と略す場合がある。)と、単一又は複数(本実施形態の場合には2台)の第2遠隔操作端末100(以下、「リモコン100」と略示す。)とで構成されており、これら遠隔操作装置RCDから出力される所定の制御信号に基づいて自律走行させることが可能となっている。なお、これら2台のリモコン100を明確に識別させるため、第1リモコン100A及び第2リモコン100Bと呼称する場合がある。
【0030】
第1遠隔操作端末70は、タブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。本実施形態では、有人のトラクタを操作するユーザが第1遠隔操作端末70を持って有人トラクタに搭乗し、例えば第1遠隔操作装置を有人トラクタ内の適宜の支持部にセットして操作する。あるいは、有人のトラクタを操作するオペレータとは異なるユーザが、トラクタの外で第1遠隔操作端末70を持って走行経路生成の操作をする。ユーザは、第1遠隔操作端末70のディスプレイ71に表示された情報(例えば、ロボットトラクタ1に取り付けられた各種センサからの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、ディスプレイ71の近傍に配置されたハードウェアキー、及びディスプレイ71に配置されたタッチパネル等を操作して、トラクタ1の制御部に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。ここで、第1遠隔操作端末がトラクタ1の制御部に出力する制御信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、終了信号、緊急停止信号、一時停止信号及び一時停止後の再開信号等が考えられるが、これに限定されない。
【0031】
具体的には、
図3に示すように、このトラクタ1の自律走行を可能とするための自律走行制御装置51等の各種の構成が追加されている。更に、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(の機体)の位置情報を取得するために必要な測位アンテナ6等の各種の構成を備えている。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
【0032】
<トラクタ1の備品構成>
次に、自律走行のためにトラクタ1が備える構成について詳細に説明する。具体的には、トラクタ1は、
図1及び
図3に示すように、測位アンテナ6、モニタ用のカメラ35、障害物センサ36、操舵アクチュエータ43、無線通信用アンテナユニット48、自律走行制御装置51、操舵制御装置52、測位測量装置53、無線通信ルータ(小電力データ通信装置)54、及びリモコン受信機(特定小電力無線装置)55、放音部57等を備える。
【0033】
測位アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。
図1に示すように、測位アンテナ6は、キャビン11における屋根の上面に配置されている。測位アンテナ6で受信された信号は、
図3に示す測位測量装置53に入力され、この測位測量装置53でトラクタ1の位置情報が、例えば緯度・経度情報として算出される。当該測位測量装置53で算出された位置情報は、自律走行制御装置51に取得されて、トラクタ1の制御に利用される。
【0034】
詳細は後述するが、カメラ35は、トラクタ1の所定の位置に(例えば前後左右を360度全周に亘り見渡すことができる所定位置に)設置されており、このトラクタ1の近傍及び周囲に人等の障害物の存在がないかを監視しているとともに、そのカメラ35で撮像された撮像データを、自律走行バス回線56を介して第3無線通信アンテナ48cからタブレット70へ送信している。
【0035】
同様に詳細は後述するが、障害物センサ36は、例えば赤外線センサなどからなるものであって、周辺の人等の障害物の検知のため、カメラ35と同様にトラクタ1の所定位置に(例えば前後左右を360度全周に亘り見渡すことができる所定位置に)設置されており、このトラクタ1の近傍及び周囲に人及び障害物がないかを監視することができるようになっている。また、その障害物センサ36での検知結果データは、自律走行バス回線56を介して第3無線通信アンテナ48cからタブレット70へ送信している。
【0036】
操舵アクチュエータ43は、例えば、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリング軸)の中途部に設けられ、ステアリングハンドル12の回動角度(操舵角)を調整するものである。
【0037】
無線通信用アンテナユニット48は、
図1に示すように、トラクタ1のキャビン11の屋根上面に配置されており、周波数帯域の異なる第1~第3無線通信ネットワークと通信接続する第1~第3無線通信アンテナ48a~48c(
図3参照)を備えている。
【0038】
1)第1無線通信ネットワークは、基準局60による測位情報を通信させるべく、例えば、データ伝送速度の速い920MHz帯の特定小電力無線などで構築される。
【0039】
2)第2無線通信ネットワークは、画像データなどのデータ容量の多いデータを高速で通信でさせるべく、例えば、2.4GHz帯の小電力データ通信システムなどで構築される。
【0040】
3)第3無線通信ネットワークは、第2無線通信ネットワークと比べてデータ伝送量が少ないため、例えば、400MHz帯の特定小電力無線などで構築される。
【0041】
なお、第1無線通信アンテナ48aは測位測量装置53と電気的に接続しており、第2無線通信アンテナ48bは無線通信ルータ54と電気的に接続しており、第3無線通信アンテナ48cはリモコン受信機55と電気的に接続している。
【0042】
第2無線通信アンテナ48bと接続された無線通信ルータ54は、第2無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部の操作者により操作される画像表示可能なタブレット70と通信を行う。また、この無線通信ルータ54は、タブレット70からの制御信号を受信し、自律走行バス回線56を介して自律走行制御装置51に出力する。
【0043】
第3無線通信アンテナ48cと接続されたリモコン受信機55は、第3無線通信ネットワークを通じて、トラクタ1外部の操作者により操作される、後述の複数台(本実施形態では2台)のリモコン100と無線通信を行う。また、このリモコン受信機55は、各リモコン100からの制御信号を受信可能に構成されており、これらのリモコンからの制御信号を受信すると自律走行バス回線56を介して自律走行制御装置51に送信する。なお、このリモコン100は、本実施形態では2台で使用しているが、この台数は増設可能である。
【0044】
詳細は後述するが、自律走行制御装置51及び操舵制御装置52は、車両バス回線18を介して、エンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと相互に通信可能に構成されている。
【0045】
また、自律走行制御装置51は、詳細は後述するが、車両バス回線18(「第1バスライン18」と呼ぶことがある)による操縦用通信系統とは別系統となる自律走行用通信系統における自律走行バス回線56(「第2バスライン56」と呼ぶことがある)を介して、測位測量装置53、無線通信ルータ54、及びリモコン受信機55、及び一時停止後の再開走行に先立ち所定時間だけブザーで周囲に知らせる放音部57(走行再開の警告手段)、のそれぞれと相互通信可能となっている。
【0046】
この自律走行制御装置51は、タブレット70において生成された走行経路の情報に基づいて車両の自律走行を制御する。そして、この自律走行制御装置51は、走行経路上のトラクタ1位置を確認し、傾斜角情報などを考慮して、トラクタ1の操舵角や走行速度を算出し、車両バス回線18を通じて、各制御装置15~17,52と通信する。これにより、トラクタ1は、当該走行経路に沿って自律走行しつつ、作業機3による農作業を行うことができる。このように、トラクタ1が自律走行する圃場領域(走行領域)内の経路を、以下の説明において「走行経路」と称する場合がある。また、圃場領域(走行領域)においてトラクタ1の作業機3による農作業の対象となる領域(作業領域)は、圃場領域の全体から枕地及び余裕代を除いた領域として定められ、操作者等が後述の登録点の登録作業を実行したときにこれら登録点とトラクタ1の車体の全長や作業幅等に基づいて設定される。
【0047】
操舵制御装置52は、第1バスライン18を介して、エンジン制御装置15、変速機制御装置16、及び作業機制御装置17それぞれと通信することで、トラクタ1の車速に応じた操舵を実行できる。
【0048】
測位測量装置53は、無線通信用アンテナユニット48における第1無線通信アンテナ48aと電気的に接続しており、特定小電力無線による第1無線通信ネットワーク(例えば、920MHz帯の無線通信ネットワーク)を通じて、後述する基準局(可搬型基準局)60と通信を行う。
図1に示すように、無線通信用アンテナユニット48は、キャビン11における屋根の上面に配置されている。測位測量装置53は、第1無線通信アンテナ48aを介して、圃場近接位置に基準局60と通信することで、基準局60からの補正情報によりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める。例えばDGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
【0049】
本実施形態では、例えばRTK測位を適用しており、移動局側となるトラクタ1に測位アンテナ6を備えるのに加えて、基準局測位アンテナ61を備えた基準局60が備えられている。基準局60は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局60の設置位置となる基準点の位置情報は予め設定されている。基準局60には、トラクタ1の測位測量装置53及び第1無線通信アンテナ48aによる通信装置との間で構築される第1無線通信ネットワークを介して通信可能な基準局通信装置62が備えられている。
【0050】
RTK測位では、基準点に設置された基準局60と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1の測位アンテナ6との両方で測位衛星63からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局60では、測位衛星63から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局通信装置62からトラクタ1の第1無線通信アンテナ48aに補正情報を送信している。トラクタ1(移動局に相当する)の測位測量装置53は、測位アンテナ6にて測定した衛星測位情報を、基準局60から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報(例えば、緯度情報・経度情報)を求めている。
【0051】
なお、本実施形態ではGNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムを利用しているが、これに限られるものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。GNSS-RTKは、位置のわかっている基準局の情報に基づいて、補正して精度を高めた測位方式で、基準局からの情報の配信方法の違いで複数の方式が存在する。本発明はGNSS-RTK方式には依存しないので、本実施例では詳細は割愛する。
【0052】
また、測位測量装置53は、衛星測位によるトラクタ1(機体2)の位置情報だけでなく、慣性測量による前後左右の傾斜角情報を計測可能になっている。測位測量装置53で計測された傾斜角情報は、自律走行制御装置51により位置情報(緯度・経度情報)と対応付けた状態で取得されて、トラクタ1の制御に利用される。なお、測位測量装置53は、圃場面に対する測位アンテナ6の高さ位置、ひいてはトラクタ1(機体2)の車高を計測することも可能である。
【0053】
放音部57は、トラクタ1に対して走行再開信号が出力されたことをトラクタ1の周辺にいる作業者などへ報知することで、間もなくトラクタ1が自律走行を再開することを知らせ、安全のために圃場内から退避するように警告するものである。本実施形態の放音部57は、一時停止させたリモコン100の操作者が再開操作を行うことで、その再開操作させた方のリモコン100(のみ)から出力する走行再開信号をトラクタ1が受信したのと同期して所定の時間だけ作動するようになっており、本実施形態ではトラクタ1に備えたブザーで構成されている。即ち、少なくともトラクタ1の周囲のリモコン100を監視・操作する作業者のところ(半径およそ500m以内)まで聞こえるような大きなブザー音(警戒音)を放音するようになっている。
【0054】
<自律走行制御装置51>
自律走行制御装置51は、
図3に示すように、後述するリモコン100における緊急停止ボタン110への操作者の操作に基づいて、エンジン制御装置15との通信により、コモンレール装置41における燃料噴射を停止させるとともに、変速機制御装置16との通信により、変速機42を中立状態とした上で、後述のブレーキ装置26による制動動作を作用させる。このとき、自律走行制御装置51は、操舵制御装置52との通信により、ハンドル12を中立位置とするように操舵アクチュエータ43を制御して、左右の前輪7,7の方向を直進方向に向けるものとしてもよい。
【0055】
自律走行制御装置51は、
図3に示すように、測位測量装置53における基準局60との通信状態(「第1通信ネットワーク」における通信状態)、無線通信ルータ54におけるタブレット70との通信状態(「第2通信ネットワーク」における通信状態)、及び、リモコン受信機55によるリモコン100との通信状態(「第3通信ネットワーク」における通信状態)それぞれを、第2バスライン56を介して確認する。
【0056】
また、自律走行制御装置51は、第1~第3通信ネットワークのいずれかでの通信状態が遮断されたことを確認すると、エンジン制御装置15及び変速機制御装置16などと通信することで、トラクタ1の自律走行を緊急停止させる。なお、測位測量装置53、無線通信ルータ54、及びリモコン受信機55は、それぞれ、通信相手からの信号を所定期間以上受信しない場合には、当該通信相手との通信が遮断されたものと判定する。
【0057】
更に、トラクタ1には、ブレーキペダルや駐車ブレーキレバーの操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後輪8,8にブレーキを掛ける左右一対のブレーキ装置26を設けている。すなわち、左右両方のブレーキ装置26は、ブレーキペダル(又は駐車ブレーキレバー)の制動方向への操作によって、左右両方の後輪8,8にブレーキを掛けるように構成されている。また、ハンドル12の回動角度が所定角度以上になれば、変速機制御装置16の指令によって、旋回内側の後輪8に対するブレーキ装置26が自動的に制動動作をするように構成されている(いわゆるオートブレーキ)。
【0058】
前述したように、トラクタ1には、
図3に示すように、前方、側方、及び後方を撮影するカメラ35が取り付けられている。また、同じく前述したように、トラクタ1には、前方、側方、後方に障害物があるか否かを検出する障害物センサ36が取り付けられている。障害物センサ36は、レーザセンサ、超音波センサ等によって構成され、トラクタ1の前方、側方及び後方に存在する障害物を認識し、検出信号を生成する。
【0059】
これらカメラ35及び障害物センサ36は、無線通信ルータ54と無線通信可能な構成とし、無線通信ルータ54及び自律走行バス回線56を介して、障害物検出信号及び画像信号を自律走行制御装置51に送信するように構成されている。そして、無線通信ルータ54が、第2無線通信ネットワークを通じて、カメラ35からの画像信号をタブレット70に送信することで、タブレット70にトラクタ1周辺の画像を表示させることができる。なお、カメラ35及び障害物センサ36は、第2バスライン56を介して自律走行制御装置51と有線接続されるものであっても構わない。
【0060】
基準局60は、
図1に示すように、測位衛星63からの信号を受信する基準局測位アンテナ61と、自律走行するトラクタ(作業車両)1と無線通信する無線通信アンテナ64と、基準局測位アンテナ61及び無線通信アンテナ64それぞれと電気的に接続された基準局通信装置62と、を備える。基準局60は、移動局となるトラクタ(作業車両)1の位置特定における基準点に設置される。基準局60は、複数部材に分解可能に構成されており、分解した各部材は、トラクタ1により運搬可能な大きさに構成される。
【0061】
分解された基準局60の各分解部材を組み立てて基準点に設置された基準局60は、基準局測位アンテナ61で受信した測位衛星63からの信号を基準局通信装置62に送るようになっている。また、基準局通信装置62は、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成するようになっている。そして、基準局60は、基準局通信装置62で生成した補正情報を、(
図3に示すトラクタ1の第1無線通信アンテナ48aと通信可能な)第1無線通信ネットワークと通信接続する、基準局無線通信アンテナ64より送信する。
【0062】
なお、本実施形態において、トラクタ1の一時停止とは、タブレット70やリモコン100によって出力された一時停止信号により停止した場合、障害物センサ36が障害物を判定したことにより停止した場合、トラクタ1の自動走行中にタブレット70やリモコン100とトラクタ1との通信接続が切れた場合等が挙げられる。また、トラクタ1の緊急停止とは、タブレット70やリモコン100によって出力された緊急停止信号により停止した場合等が挙げられる。
【0063】
<タブレット70(第1遠隔操作端末70)>
本実施形態の第1遠隔操作端末70は、タッチパネルを備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成されており、
図4(a)及び
図5に示すように、液晶表示部71(「ディスプレイ71」とよぶ場合がある。)と、表示制御部72と、タッチパネル式の操作部73と、記憶部74と、送受信部75と、これらを制御する制御部76などと、を備えている。
【0064】
また、本実施形態のタブレット70では、後述するリモコン100で設置している報知部130と同様の機能を備えていてもよいが、この実施形態ではタブレット70の表示画面71(以下、「液晶表示部71」又は「ディスプレイ71」とよぶことがある。)の画面でトラクタ1及び周囲の状況が常時モニタ可能であることから、また、特にトラクタ1に関して何らかの異常や障害があれば、タブレット70のディスプレイ71の画面上にポップアップで表示されることから、タブレット70にはリモコン100の報知部130と同じ機能は設けてはいない。
【0065】
液晶表示部71は、入力が制御部76の出力に接続されており、トラクタ1に搭載のカメラ35で撮像した画像を取り込んで液晶表示画面に表示するようになっている。
【0066】
表示制御部72は、入力が制御部76の出力に接続されているとともに、出力が液晶表示部71の入力に接続されており、次に説明する操作部73の操作などにより、液晶表示部71の表示画面を適宜切り替えるなどの制御を行うようになっている。
【0067】
また、特に本実施形態の表示制御部72では、タブレット70若しくは単一又は複数(本実施形態では2台)の第2遠隔操作端末のいずれか一つによって、トラクタ1の走行再開動作を実行させることができる遠隔操作装置を選択することができる。すなわち、トラクタ1が一時停止した場合、複数の遠隔操作装置の中から走行を再開させることができる端末(以下、これを「走行再開可能端末」と呼ぶことがある。)を選択することができる。さらに、この表示制御部72は、ディスプレイ71の画面上の下部の後述する作業選択画面WSA(
図8参照)中において、第1遠隔操作端末と単一又は複数の第2遠隔操作端末の中から、走行再開操作が可能な走行再開可能端末として、選択可能に表示することができるように構成されている。なお、初期状態においては、ディスプレイ71上に第1遠隔操作端末のみが表示されており、第2遠隔操作端末(100)については、トラクタ1との通信が確立した後に表示されるような構成となっている。
【0068】
また、表示制御部72は、
図9及び
図10を参照しながら後述するように、トラクタ1と第2遠隔操作端末(リモコン100)との通信接続が切れたときは、タブレット70のディスプレイ71上において、遠隔操作可能端末となるリモコン100の表示態様を変更することができるように構成されている。
【0069】
また、この表示制御部72は、2台のうち走行再開可能端末として選択された一方のリモコン100とトラクタ1との通信接続が切れたのち、そのトラクタ1との通信接続が復帰したときには、通信接続が切れる直前まで選択されていたリモコン100が走行再開可能端末であったことを記憶するように構成されている。
【0070】
また、このタブレット70の表示制御部72では、2台のリモコン100のうち少なくとも何れかが走行再開可能端末に選択された場合には、リモコン100によるトラクタ1の走行再開制御を可能とする免責事項画面を表示するように構成されている。
【0071】
また、ディスプレイ71は、ユーザがタッチすることで操作可能なタッチパネルを備えており、ディスプレイ71上に表示された項目をタッチすることによってトラクタ1の走行を制御することが可能となる。さらに、ディスプレイ71は、トラクタ1が作業を行っている場合には、作業状態確認画面を表示する。作業状態確認画面では、生成された走行経路とトラクタ1が画面中央に表示されており、画面上部右側には緊急停止アイコンが表示され、画面上部左側には一時停止アイコンが表示される。加えて、画面右側では、詳細な作業情報を確認可能な画面へと遷移する項目が設けられており、当該項目をタッチすることによって、リモコン100の電池残量等を確認可能な「作業情報設定モード」を表示することができる。
【0072】
記憶部74は、例えば、トラクタ1の圃場領域(走行領域)での走行経路に関するデータ、ペアリングによって登録されたリモコン100のデータなどを記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などで構成されており、制御部76と接続されている。
【0073】
このように、タブレット70のディスプレイ71では、作業状態確認画面を表示することができる。そして、作業状態確認画面では、画面右上部に、トラクタ1の自律走行を緊急停止させるためのアイコンとして、緊急停止ボタン画像71A(
図4(a)参照)が表示される。同様に、トラクタ1の自律走行を開始又は停止するためのアイコンとして、一時停止ボタン画像71B(
図4(a)参照)がディスプレイ71の左上部に、緊急停止ボタン画像71Aよりもやや小さめに表示される。このように、ディスプレイ71において、緊急停止ボタン画像71Aが確認しやすいディスプレイ71の右上部に表示されることで、操作者がトラクタ1を緊急停止させたいときに緊急停止ボタン画像71Aの位置を認識しやすくなるので、緊急停止操作の遅延及び誤操作を抑制できる。
【0074】
なお、本実施形態のタブレット70では、通常一般に、右利きが多数であることを考慮し、左手でタブレット70を把持しながら利き手の右手で緊急停止ボタンなどの操作を行うことが慣習的になじみやすいであろうといった事情から、ディスプレイ71の右上部に緊急停止ボタン画像71Aを表示させるように構成した。しかしながら、左利きの操作者も使用することを考慮し、ディスプレイ71の左上に緊急停止ボタン画像71Aを表示・形成させる構成も設定の切替えが可能な構成としてある。
【0075】
さらに、本実施形態のディスプレイ71では、例えば
図4(b)に示すように、「作業情報設定モード」を画面表示し、走行再開可能端末を設定することができる。作業状態確認画面において、作業情報を詳細に確認可能な画面へと遷移する項目をタッチすることによって、作業情報設定モードに設定した画面へと切り替えることができる。また、作業情報設定モードの画面下部には遠隔操作端末の選択及び切替え設定などが行える領域(以下、これを「選択領域WSA」(
図8参照)とよぶ)に、一時停止中のトラクタ1の走行再開操作が可能な遠隔操作装置の選択のために対象となる複数(この実施形態では3種類)のアイコン、即ち“Tablet”で示すタブレット画像T、“First remote(第1リモコン)”で示す第1リモコン画像RA、及び“Second remote(第2リモコン)”で示す第2リモコン画像RBが表示される。
【0076】
また、作業情報設定モード画面において、例えば各画像の周囲を取り囲むように画像全周囲を縁どった四角形状の表示画像が表示されている状態のときには、そのアイコンが操作可能になっている(以下、これを「選択されている」という場合がある。)状態、つまり「再開操作可能端末」であることを示すものである。
【0077】
例えば、
図4(b)の場合には、走行再開操作可能端末を選択することができるアイコンとしては、タブレット画像T及び第1リモコン画像RAが表示されている。一方で、第2リモコン画像RBとの登録は行われているが、トラクタ1との通信接続は行われていない状態となる。従って、タブレット画像T及び第1リモコン画像RAのみが、現在、再開操作が可能な遠隔操作装置として選択可能となる。さらに、特にこの同図(b)の場合には、タブレット70のタブレット画像Tの周囲を囲む画像Fが表示されているので、このタブレット画像Tが再開操作可能端末となる。
【0078】
また、この
図4(b)に示す表示状態の画面のときには、第1リモコン画像RAを指でタッチすることによって、第1リモコン画像RAの周囲を囲むFが表示される。つまり、再開操作可能端末がタブレット70から第1リモコンへと変更されることになる。
【0079】
このような構成の本実施形態のタブレット70は、操作者がタブレット70のタッチパネルに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照してこれを目で確認しながら、各種の操作を行うことができる。また、操作者は、タブレット70を操作して、トラクタ1の自律走行制御装置51に、トラクタ1を制御するための各種制御信号を送信することができる。
【0080】
なお、本実施形態の第1遠隔操作端末70はこのようなタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、有人のトラクタ(図示省略)を無人のトラクタ1に随伴して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置を第1遠隔操作装置とすることもできる。
【0081】
<リモコン100>
リモコン100は、
図6に示すように、第1スイッチ部110(以下、「緊急停止ボタン110」とよぶ)、第2スイッチ部120(以下、「一時停止ボタン120」とよぶ)、及び報知部130などをリモコン本体101に設けている。このうち、報知部130は、複数の発光態様でLEDランプが発光する発光部130aと、複数の音声態様で放音する音声出力部130bとを備える。なお、本実施形態の第2遠隔操作端末100では、2台のリモコンで構成されており、これらを明確に識別させるため、前述したように、第1リモコン100A及び第2リモコン100Bと呼称する場合がある。
【0082】
また、このリモコン100は、作業中の圃場近くのトラクタ1を目視で確認できるとともにトラクタ1の放音部57からのブザーの音を聞き取れるエリア内の場所にてトラクタ1を監視する複数の操作者(本実施形態の場合には二人)がそれぞれ携行しており、通常、各操作者が必要に応じて、適宜無線通信でトラクタ1を遠隔操作できるようになっている。
【0083】
ここで、トラクタ1とリモコン100との関係について説明する。トラクタ1におけるリモコン100に対して、サービスツール45やタブレット70のような外部機器よりリモコン100とのペアリングが要求されると、リモコン受信機55がリモコン100を認証するペアリングモードに移行する。そして、ペアリングモードに移行したリモコン受信機55は、リモコン100からの信号を受信すると、リモコン100のリモコンID(識別情報)を記憶した後、記憶したリモコンIDをリモコン100に送信することで、ペアリングが成立する。
【0084】
トラクタ1における各種機能を設定できるサービスツール45がトラクタ1の車両バス回線18に有線接続され、サービスマンによりサービスツール45が操作されることで、リモコン受信機55によるリモコン100の認証処理(ペアリング)が実行される。トラクタ1におけるリモコン受信機55は、複数(本実施形態では、2個)のリモコン100を認証でき、各停止用リモコン100のリモコンIDと対応するリモコン番号に対応させて記憶する。
【0085】
サービスツール45への操作により、認証対象となるリモコン番号が選択されるとともにペアリング登録が指示されると、自律走行制御装置51を介して、ペアリング登録の対処となるリモコン番号がリモコン受信機55に通知される。リモコン受信機55は、ペアリング登録の指示を受けると、ペアリング登録の対象となるリモコン番号を認識するとともに、リモコン100からの信号を受信可能なペアリングモードに移行する。
【0086】
リモコン100は、緊急停止ボタン110又は一時停止ボタン120への操作を受け付けると、リモコン100毎に割り振られた識別情報であるリモコンIDを記憶部140より読み出し、送受信部75を介して、リモコン受信機55に送信する。以下の説明では、緊急停止ボタン110への操作に基づいてリモコンIDをリモコン受信機55に送信するものとして説明する。リモコン受信機55は、リモコン100のリモコンIDを受信すると、受信したリモコンIDをリモコン番号に対応させて記憶する。また、リモコン受信機55は、トラクタ1毎にリモコン受信機55に割り振られた識別情報である通信機IDを記憶している。リモコン受信機55は、受信したリモコンIDに受信機IDを組み合わせた応答信号を生成して、第3無線通信アンテナ48cを介して、リモコン100に応答信号を送信する。
【0087】
リモコン100は、リモコン受信機55からの応答信号を受信すると、応答信号より確認されたリモコンIDが自機器のリモコンIDと一致することを確認することで、ペアリングが確立したことを認識する。そして、リモコン100は、応答信号より受信機I D を抽出し、記憶部140に受信機IDを記憶することで、ペアリングが確立されたリモコン受信機55及びトラクタ1を特定する。また、リモコン100、緊急停止ボタン110への操作を受け付けると、発光部130aを第3色(黄色)で点灯させて、ペアリングモードであることを報知する。その後、リモコン100は、リモコン受信機55とのペアリングが確立すると、報知部130より発報して、ペアリングの確立を報知する。
【0088】
なお、サービスツール45の場合には有線接続によってペアリング登録が行われるが、タブレット70の場合には、無線接続によってペアリング登録が行われる。
【0089】
本実施形態のリモコン100は、
図7に示すように、前述した緊急停止ボタン110、一時停止ボタン120、報知部130を構成する発光部130a及び音声出力部130bの他に、記憶部140、リモコン送受信部150、制御部160などを備えている。さらに、本実施形態では、緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120による再開操作が行えないときに使用する臨時的な手段として、再開ボタンを備えているが、特にこの再開ボタンは必須というわけではない。
【0090】
緊急停止ボタン110は、例えば作業車両であるトラクタ1が走行中の圃場内に人が立ち入ったような緊急事態が発生した際の安全性の確保のため、走行中のトラクタ1を緊急停止させるためのものであり、操作時に目立ち易いようにするため、リモコン本体101表面に設置したボタンの中で最大の形状に形成されており、リモコン本体101の上部側に“STOP”と表記されて設置されている。この緊急停止ボタン110は、出力が制御部160の入力に接続されており、この緊急停止ボタン110を押圧することで、緊急停止信号が制御部160を介してトラクタ1側の自律走行制御装置51へ送信され、トラクタ1が緊急停止するようになっている。
【0091】
一時停止ボタン120は、例えば作業車両であるトラクタ1での所定の作業を終了したり一時的に中断したりするような場合に(即ち、緊急度の低い通常の作業休憩などの場合に)、走行中のトラクタ1を停止させるものである。本実施形態の一時停止ボタン120は、緊急停止ボタン110よりはやや小さな形状を有しており、リモコン本体101のほぼ中央部側に、太幅な縦棒2本が近接配置された停止記号で表記されている。この一時停止ボタン120は、出力が制御部160の入力に接続されており、この一時停止ボタン120を押圧することで、一時停止信号が制御部160を介してトラクタ1側の自律走行制御装置51へ送信され、トラクタ1が一時停止するようになっている。
【0092】
また、特に本実施形態では、詳細は後述の作用の箇所で後述するが、緊急停止ボタン110とともにこの一時停止ボタン120とを用いた特定操作を行うことで走行を再開させることができるように構成されている。即ち、緊急停止ボタン110と一時停止ボタン120とをほぼ同時に押圧操作するとともに特定時間内に緊急停止ボタン110と一時停止ボタンの押圧解除することによって、停止中のトラクタ1の走行を再開させることができる。また、他の態様としては、トラクタ1が一時停止の状態であり、一時停止ボタン120を特定時間以上押圧操作し、特定時間内に押圧解除することによっても停止中のトラクタ1の走行を再開させることができる。
【0093】
なお、本実施形態では、タブレット70によってタブレット70若しくは単一又は複数のリモコン100のいずれかを走行再開可能端末として選択することができる構成としたが、複数のリモコン100を備えている場合、トラクタ1の走行を一時停止させた一方のリモコンでのみ再開操作を可能とする構成としても良い。トラクタ1の自律走行制御装置51では、ペアリング登録時においてリモコン100を識別可能に記憶している。このため、いずれのリモコン100によって、トラクタ1に対して再開操作の信号が出力されたか判断可能に構成されている。
【0094】
また、本実施形態を含めた本発明では、トラクタ1に備えた障害物センサ36によって異常を検出した場合には、タブレット70及びリモコン100からの走行再開信号を受け付けないように構成されている。このため、障害物センサ36の異常を検出した場合には、タブレット70及びリモコン100より走行再開信号が制御部160へ出力されてもトラクタ1の走行を再開させないように構成されている。なお、障害物センサ36による異常には、障害物センサ36が障害物を検出した場合と障害物センサ36が正常に作動していない場合の両方の場合である。
【0095】
発光部130aと音声出力部130bは、発光態様や音声態様によって自動走行状態であるトラクタ1の車両状況を確認することができるようになっている。発光部130aは、自動走行の状態であるトラクタ1の現在の周辺環境の遠隔確認手段として機能するものである。例えば、以下のような3種類の態様で発光するLED(light emitting diode)で構成されている。
・緑色に発光するときはトラクタ1が自動走行状態であること、
・黄色に発光するときはトラクタ1が一時停止状態であること、
・赤色に発光するときはトラクタ1が緊急停止状態であること、
をそれぞれリモコン100の操作者に知らせるようになっている。なお、リモコン100とトラクタ1との通信接続が途絶されているような場合には、発光部130aは緑色に発光し、音声出力部130bよりブザー音が所定期間出力されるようになっている。トラクタ1とリモコン100との通信が途絶すると、トラクタ1は自動走行モードが解除され、トラクタ1との通信接続が復帰しない場合には、リモコン100の電源が落ちるようになっている。
【0096】
一方、音声出力部130bは、発光部130aと同様に、自動走行の状態であるトラクタ1の車両状況の遠隔確認手段として機能するものである。例えば、以下のような音声態様で確認できるように構成されている。
・トラクタ1が一時停止をした場合には、数秒(例えば、1秒)ブザー音が出力されること、
・トラクタ1が緊急停止をした場合(この場合、トラクタ1とリモコン100との通信が途絶している場合に相当する。)には、所定期間(例えば、10秒)ブザー音が断続的に出力されること、
をそれぞれリモコン100の操作者に知らせるようになっている。なお、本発明では、特にこのような発光態様および音声態様に限定されない。
【0097】
さらに、前述のとおり、トラクタ1が一時停止している場合、リモコン100の発光部130aは黄色点滅する。このような場合、リモコン100の操作者がトラクタ1を目視することができないほどに離れているような状況においては、トラクタ1の状態を確認することができない。このため、トラクタ1が一時停止している場合、リモコン100の操作によってトラクタ1の状態を報知部130によって確認することができるように構成されている。具体的には、リモコン100の一時停止ボタン120の操作により発光部130aと音声出力部130bによって、トラクタ1が走行再開可能であるか確認することができる。例えば、トラクタ1が再開操作不可の状態である場合には、発光部130aは赤色(第1の色)で点灯し、音声出力部130bによりブザー音(第1の音)が出力される。また、トラクタ1が再開操作可能の状態である場合には、発光部130aは緑色(第2の色)で点灯し、音声出力部130bによりブザー音(第2の音)が出力される。なお、前記第1の音及び前記第2の音は、異なる音であってもよいし、同じ音であってもよい。本発明では、前述したように、この一時停止させていた方(最終停止の方)のリモコン100でのみ再開操作ができる。なお、前述した別の実施形態として、一時停止の操作を行ったリモコン100についてのみ走行再開可能とする場合であっても、一時停止の操作を行ったリモコン100以外のリモコン100によって、トラクタ1の現在の状況を確認することはできるようになっている。
【0098】
記憶部140は、トラクタ1とペアリングによって登録される際に、トラクタ1に送信するリモコンIDを記憶するためのものであり、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などで構成されており、制御部160と接続されている。
【0099】
リモコン送受信部150は、緊急停止ボタン110の操作に伴う緊急停止信号、一時停止ボタン120の操作に伴う一時停止信号、緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120の略同時操作によって生成される再開制御信号、及び補助的に設けている再開ボタン(図示省略)の操作に伴う補助再開信号などを、制御部160を介して、トラクタ1側へ出力させるとともに、トラクタ1側から送信されてくる各種信号を受信して制御部160へ出力するものである。
【0100】
再開ボタンは、一時停止したトラクタ1の再開のための操作ボタンであるが、通常は使用されるものではなく、例えば緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120の同時操作によって通常は生成されるはずの再開制御信号が生成されず、これら双方の何れかのボタンが故障や異常を起こしているような場合に、使用或いは作動が可能となるものであり、出力が制御部160の入力に接続されている。なお。本実施形態の再開ボタンは、普段使用するものではないことから、普段目に付きにくい箇所に設けられている。例えば図示外の会社名を示すロゴマークなどの近傍の下部に、小さな右向き三角記号が表記されて目立たないように設置されている。
【0101】
<画面遷移操作>
次に、本発明の実施形態に係る第1遠隔操作端末であるタブレット70での画面遷移操作について、
図5、
図8などを用いて説明する。
【0102】
タブレット70よりトラクタ1に対して自動走行が指示された後、
図5に示す制御部76は、
図8に示す作業情報設定モード画面において、下部側に表示された作業選択領域WSAに、第1遠隔操作端末であるタブレット70、第2遠隔操作端末である第1リモコン100A及び第2リモコン100Bを適宜に選択して表示させることができるように各アイコンとなる模様が形成されている。これらは、以下それぞれ「タブレットアイコンT」、「第1リモートアイコンRA」、「第2リモートアイコンRB」と呼ぶことにする。
【0103】
図8に示す画面において、タブレットアイコンTと第1リモートアイコンRAが実線で表示されている。すなわち、タブレット70と第1リモコン100Aのみがトラクタ1とペアリングによる登録が行われ、通信接続が確立している状態であり、走行再開可能端末として選択可能に表示されている。このような状態を、「活性アイコン」とする。一方で、第2リモコン100Bを示す第2リモートアイコンRBは、トラクタ1との登録が行われているが、通信接続が途絶していることから破線で表示される。このような表示状態を、「不活性アイコン」とする。
【0104】
図8の場合においては、タブレットアイコンTの外側を細幅形状の画像(以下、これをフリンジFとする。)が取り囲むように表示されている。すなわち、タブレット70がトラクタ1の走行再開操作を可能とする端末としてタブレットアイコンTが表示されている。このような状態を「起動アイコン」とする。また、「活性アイコン」として表示されているアイコンをタッチすることによって「起動アイコン」とすることが可能となる。なお、初期状態、すなわち、トラクタ1の自律走行開始前においては、リモコン100とのペアリングによる登録が行われていないことから、起動アイコンおよび活性アイコンは、タブレットアイコンTのみとなる。
【0105】
また、起動アイコンについては、後述する異操作干渉が発生するのを抑止するために、必ず1つの起動アイコンのみが作業選択領域WSAに選択的に表示されるようになっており、同時に2つの起動アイコンを生成させることが不可能となるように構成されている。なお、安全性が確保されるのであれば、2つ以上の遠隔操作装置によって走行を再開させることができることとしてもよい。
【0106】
また、リモコン100がトラクタ1とペアリングによって登録され、タブレット70のディスプレイにおいて、第1リモートアイコンRAと第2リモートアイコンRBが活性アイコンとして表示されたとしても、安全性の観点からタブレットアイコンTを起動アイコンとして表示する。この場合、第1リモートアイコンRA若しくは第2リモートアイコンRBのいずれかを起動アイコンとして選択した場合には、
図11(a)および(b)に示すような安全性の確認を求める免責事項を表示する。
【0107】
ここで、前記異操作干渉の発生について説明する。従来の自律走行システムでは、リモコンなどの第2遠隔操作端末を複数台で構成するものも提案されており、同じ圃場で作業中の複数の作業者がそれぞれ第2遠隔操作端末を携行し、監視体制を向上させるとともに圃場での安全性を向上させるようになっている。
【0108】
前記自律走行システムでは、複数のリモコンによって緊急停止させることができるので、安全性が向上されるが、複数のリモコンで同時に異なる操作がなされる(以下、これを「異操作干渉」とよぶ)虞もある。その場合には、異操作干渉による意図しない自律走行が実行されるおそれがある。また、例えば作業車両が作業中の圃場内に人が立ち入ったようなときに作業車両をいずれかの遠隔操作端末で一時停止させた場合、一時停止を実行した操作者とは異なるリモコンなどの遠隔操作端末の操作者が、安全確認を行わないまま誤って作業車両の走行を再開させるような事態も想定される。これに対して、本実施形態に係る自動走行システムによれば、1台の作業車両を複数台の遠隔操作端末で操作する際に、遠隔操作端末どうしが異なる操作を行う事態(異操作干渉)が発生するのを回避することできる、安全性の高い自律走行システムを実現することができる。
【0109】
<遷移状態の切替操作及び表示:具体例1>
次に、これら3種類のアイコンの切替操作について、
図9及び
図10を参照しながら具体的に説明する。なお、ここでは、具体的な遷移動作を説明するために、各ステージSTを特定するような標記をこれらの図面上で行っており、各ステージでは、それぞれ、現在の作業選択領域WSAでの表示内容を示している。また、具体例1においては、第1リモコン100Aのみがトラクタ1とペアリングによる登録が完了している場合である。
【0110】
先ず、
図9において、初期状態でのトラクタ1の走行再開可能な遠隔操作端末、つまり起動アイコンは、タブレットアイコンTである(第1ステージST1a)。なお、この状態においては、第1リモコン100Aとトラクタ1との通信接続が途絶している状態である。
【0111】
ここで、例えば第1リモコン100Aとトラクタ1との通信接続が復帰した場合には、第1リモートアイコンRAが活性アイコンとして表示される(第2ステージST1b)。
【0112】
さらに、この活性アイコンとなった第1リモートアイコンRAをタッチすると、それまで起動アイコンであったタブレットアイコンTのフリンジF部分の表示(模様)が消え、同時に活性アイコンRAの周囲にフリンジF模様が生成されて表示される(第3ステージST1c)。これにより、第1リモートアイコンRAが起動アイコンに切替わり、機能する。
【0113】
なお、この第3ステージST1cへの表示状態へ遷移する際には、
図11(a)および(b)に示すような安全性の確認を求める免責事項を記載した画面が表示される。まず、
図11(a)の画面が表示され、「はい」と表示されたアイコンY1をタッチすると、
図11(b)の画面に切り替わり、再度安全性の確認を求める免責事項を記載した画面が表示され、「はい」が表示されたアイコンY2をタッチすると、次の第3ステージST1cの表示画面へ遷移する。なお、
図11(a)および(b)で表示された「いいえ」のアイコンN1又は「いいえ」のアイコンN2のいずれかをタッチすると、第3ステージSTcへ遷移せず、元の第2ステージST1bの表示に戻る。
【0114】
さらに、第3ステージST1cのような第1リモートアイコンRAが起動アイコンとなっている際に、第1リモコン100Aとトラクタ1との間での通信状態が途絶した場合には、内側エリア部分の表示のみが消失し、第4ステージST1dのような表示となる。なお、トラクタ1と第1リモコン100A若しくはタブレット70との通信接続が途絶した場合には、安全性の問題からトラクタ1の自動走行が停止されることとなる。
【0115】
そして、通信状態が復帰すると、再び第3ステージST1cと同一表示状態に戻る(第5ステージST1e)。換言すれば、通信状態が途切れても、通信が復帰したときには、通信状態が途切れる直前の状態を自律走行制御装置51が記憶しているので、直前の設定状態に戻る。
【0116】
また、トラクタ1が自動走行を開始すると、トラクタ1からタブレット70に対して経路パスの転送が要求される。これにより、タブレット70から定期的にトラクタ1へ経路パスが転送され、自動走行を継続することができる。なお、自動走行が継続している場合には、起動アイコンが選択された状態を維持することが可能となる(第6ステージST1f)。
【0117】
一方で、エンジンの電源がOFFになった場合においては、初期設定画面に遷移する(第7ステージST1g)。
【0118】
<他の遷移状態の切替操作及び表示:具体例2>
次に、
図10を参照しながら他の遷移態様について説明する。また、具体例2においては、具体例1と異なり第1リモコン100Aのみならず第2リモコン100Bについてもトラクタ1とペアリングによる登録が完了している場合である。
図10では、タブレットアイコンTが起動アイコンとして表示されており、第1リモートアイコンRAと第2リモートアイコンRBは不活性アイコンとして表示されている(第1ステージST2a)。
【0119】
第1ステージST2aにおいて、第1リモコン100Aがトラクタ1との通信接続が復帰した場合には、第1リモートアイコンRAが実線で表示され活性アイコンの状態へ遷移する(第2ステージST2b)。
【0120】
さらに、第2ステージST2bにおいて、第2リモコン100Bがトラクタ1との通信接続が復帰した場合には、第2リモートアイコンRBが実線で表示され活性アイコンの状態へ遷移する(第3ステージST2c)。
【0121】
さらに、これら活性アイコンである第1リモートアイコンRA及び第2リモートアイコンRBのうち、第1リモートアイコンRAをタッチすると、初期状態ではタブレットアイコンTが起動アイコンとして表示されていたが、第1リモートアイコンRAが起動アイコンとして表示されるように遷移する(第4ステージST2d)。なお、この第4ステージST2dへ遷移するためには、具体例1で説明したと同様、
図11(a)及び(b)の表示が切り替わったときに、いずれも「はい」Y1,Y2の方を選択操作しないと、第4ステージST2dへは遷移しない。
【0122】
次に、この第4ステージST2dで、もし第2リモコン100Bとトラクタ1或いはタブレット70との間での通信途絶状態が発生すると、活性アイコンであった第2リモートアイコンRBの表示が消去された不活性アイコンの状態となるので、第2リモコン100Bとの通信状態が途絶された状態であることが確認できる(第4ステージST2d´)。
【0123】
一方、第4ステージST2dにおいて、第1リモコン100Aとトラクタ1との間で通信途絶が発生したときには、起動アイコンであった第1リモートアイコンRAのうち内部の表示が消去された状態となるので、第1リモコン100Aとの通信状態が途絶された状態であることが確認できるようになる(第5ステージST2e)。
【0124】
そして、その後通信状態が復帰すると、再び第4ステージST2dと同一の表示状態に戻る(第6ステージST2f)。
【0125】
なお、第1ステージST2aの状態、つまりタブレット70のみがトラクタ1と通信接続されており、第1リモコン100Aおよび第2リモコン100Bとトラクタ1との通信接続が途絶された場合において、例えば第2リモコン100Bとトラクタ1との通信接続が復帰した場合には、第2リモートアイコンRBが実線で表示され、活性アイコンの状態へと遷移する(第2ステージST2b´)。
【0126】
ここで、さらに、第1リモコン100Aとトラクタ1との通信接続が復帰した場合には、第1リモートアイコンRAも実線表示され、活性アイコンの状態へと遷移する。これによって、第2リモコン100Bのみならず第1リモコン100Aのいずれかによって走行を再開させることができる端末として選択することが可能となる。
【0127】
<操作・作用など>
次に、
図3乃至
図13(特に、
図12のフローチャートと
図13のタイミングチャート)を参照しながら、タブレット70及びリモコン100の操作(作用)について説明する。
【0128】
なお、本実施形態の自律走行システムでは、前述したように、トラクタ1の遠隔操作を行うために1台のタブレット70と2台のリモコン100A,100Bが用いられている。しかしながら、これら2台のリモコンについては、前述した具体例1及び具体例2で説明した通り、リモコン100がトラクタ1と通信接続されている場合、タブレット70によっていずれのリモコン100を走行再開可能端末として選択することができるような構成となっている。そのため、ここでは、
図10に示す、先の具体例2での第6ステージST2fの設定状態が表示されており、第1リモコン100Aによって走行再開可能端末となっているものとする。
【0129】
また、本実施形態において、トラクタ1の自律走行制御装置51では、ペアリング登録時においてリモコン100を識別可能に記憶している。このため、いずれのリモコン100によって、トラクタ1に対して再開操作の信号が出力されたか判断可能に構成されている。これにより、タブレット70側とは別に独自のフェールセーフシステムが機能するようになっており、最後に一時停止操作を行ったリモコン(最終停止操作したリモコン)でのみ再開可能な構成とすることもできる。そのため、タブレット70側でいずれかのリモコンを駆動リモコンとして選択していなくとも、2台のリモコン100Aおよび100Bが同時に異なる操作を行って異操作干渉を起こしてしまい、制御不能となるといった事態を回避できるようになっている。
【0130】
なお、1台のタブレット70及び2台のリモコン100は、それぞれ、通信方式の異なる無線通信ネットワークによりトラクタ1と通信を実行するように構成されている。また、前述したように、タブレット70には、タッチパネル操作可能なディスプレイ71を備えている。一方、各リモコン100には、それぞれ、トラクタ1の自律走行を一時停止させる一時停止ボタン120と、非常時にトラクタ1の自律走行を緊急に停止させる緊急停止ボタン110と、一時停止後若しくは緊急停止後のトラクタ1の現在の走行状態をリモコン操作者に確認させるための手段である報知部130(発光部130a及び音声出力部130b)とを具備している。
【0131】
従って、本実施形態によれば、以下に説明するような手順で、停止させてあるトラクタ1の走行を再開操作させることができる。尚、この場合、タブレット70と、2つのリモコン100との3種類の遠隔操作端末で、トラクタ1に異なる指示を出さないように(異操作干渉を起こさないように)、前述した方法で一つの遠隔操作端末を指定させてある。尚、ここでは、第1リモコン100Aを遠隔操作可能な端末に設定してあるものとする。
【0132】
また、この実施形態では、障害物を検知したときの手順については、本発明から逸脱するので詳細な説明を省略し、簡単な説明に留めておく。即ち、万一障害物があったときには、
図13に示すようなタイミング、即ち、時刻t1で障害物を検知し、直後の時刻t2でタブレット70に異常であることを通知する。また、その同時刻t2で、第1リモコン100Aの発光部130a及び音声出力部130bが作動し、赤色のランプが点灯(又は点滅)及びブザーなどで放音して知らせる。さらに、時刻t4で、異常状態が解消した場合、タブレット70及びリモコン100での報知動作が終了する。そして、第1リモコン100Aでは、発光部130aが緑色に発光し、元の状態(再開可能な状態)に戻る。
【0133】
初め、走行作業中のトラクタ1について、何の障害もなければ、例えば
図12及び
図13において、作業車両であるトラクタ1は、そのまま自律走行を行っている(第1ステップS1)。
【0134】
そして、トラクタ1の走行中には、常時、停止させる必要があるかの判断を行っている(第2ステップS2)。
【0135】
そして、この第2ステップS2において、作業者がトラクタ1を一時停止させたいと判断したときには、第3ステップS3へ移行する。なお、第2ステップS2において、一時停止させないときには、第1ステップS1へ戻る。
【0136】
この第3ステップS3では、例えば予め遠隔操作可能な端末として、第1リモコン100Aを選択して設定してあるので、この第1リモコン100Aでのみ操作可能である。これにより、第1リモコン100Aの一時停止ボタン120を押圧操作することで、直ちに走行中のトラクタ1を停止させることができる。
【0137】
次に、一時停止させていた作業者などが、トラクタ1の走行再開を判断する(第4ステップS4)。ここで、走行再開させたくない時には、再度第4ステップS4へ戻る。
【0138】
一方、一時停止させていたトラクタ1の走行再開を行おうとする場合、第1リモコン100Aの操作者が、走行再開操作を行うことができる。即ち、時刻t5にて、第1リモコン100Aの一時停止ボタン120を押圧させるとともに、これとほとんど時間を置かずに(微小時間Δt2経過後)時刻t6に、緊急停止ボタン110を押圧させる(第5ステップS5)。なお、この場合、停止の操作を行っていなかった方の第2リモコン100Bでは、走行再開を実行させることできない。
【0139】
これにより、作業車両であるトラクタ1が一時停止した後に走行再開操作を開始したことにより、時刻t6には、その走行再開に先立ちトラクタ1の周辺にいる作業者に対して再開動作が間もなく始まることを知らせる(報知する)ための大きなブザー音などでの警戒音をトラクタ1からおよそ3秒間だけ放音する(第6ステップS6)。
【0140】
即ち、このトラクタ1の報音を聞いている第1リモコン100Aの操作者は、その放音中の時間内に、即ち時刻t7に、第1リモコン100Aの緊急停止ボタン110を押圧解除させるとともに、これと同時又はほぼ同時刻(微小時間Δt3経過後)の時刻t8に、一時停止ボタン120の押圧動作も解除させる(第7ステップS7)。
【0141】
なお、ここでの2つのボタン押圧解除操作の際に、例えば約3秒間の警告音の報音時間中に緊急停止ボタン110のみ押圧動作を解除した場合には、警告音の報音終了後にトラクタ1が一時停止状態となる。一方、逆に、緊急停止ボタン110のみを継続して押圧し続けると、警告音の報音終了後もトラクタ1が緊急停止状態となる。
【0142】
これにより、時刻t9には、一時停止中であったトラクタ1は、自律走行を再開することができる(第8ステップS8)。
【0143】
このように、リモコン100は、一時停止ボタン120に対する一時停止操作に応じてトラクタ1が一時停止した後に、第1所定時間だけ緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120がともに押圧状態となる走行再開操作が行われた場合に、トラクタ1の走行を再開させる。また、リモコン100は、緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120がともに押圧状態になった場合に、トラクタ1の放音部57に、トラクタ1の走行が再開されることを示すブザー音(警告音)を第2所定時間(例えば3秒)だけ放音させ、前記第2所定時間の間に緊急停止ボタン110及び一時停止ボタン120のそれぞれに対する押圧操作がともに解除された場合にトラクタ1の走行を再開させる。
【0144】
なお、リモコン100は、緊急停止ボタン110に対する緊急停止操作に応じてトラクタ1が緊急停止した後に前記走行再開操作が行われた場合に、トラクタ1の走行を再開させてもよい。
【0145】
<効果>
従って、本実施形態によれば、またタブレット70及びリモコン100が、互いに通信方式の異なる無線通信ネットワークによりトラクタ1とそれぞれ無線通信を実行するので、複数の無線通信ネットワークがフェールセーフとして機能し、安全性を向上できる。また、タブレット70が行う通信のデータ容量と、リモコン100が行う通信のデータ容量に合わせて、それぞれ適切な通信方式を選択できる。
【0146】
また本実施形態によれば、操作者は、リモコン100を携帯することで、緊急時には2台のうちの何れか一方のリモコン100の緊急停止ボタン110を操作して、自律走行するトラクタ1の緊急停止操作を遅滞なく行える。また、タブレット70と一方のリモコン100を携行する操作者は、他方のリモコン100を他の作業者に保有させる等して、状況に応じてタブレット70とリモコン100を柔軟に使い分けることもできる。
【0147】
また本実施形態によれば、タブレット70のディスプレイ71(
図4(a)参照)において、トラクタ1の自律走行を停止させる緊急停止ボタン画像71Aが右上位置に表示されるとともに、タブレット70の一時停止ボタン画像(開始ボタン画像)71Bが緊急停止ボタン画像71Aよりも離れた左右反対位置にやや小さく表示される。そのため、緊急停止ボタン画像71A及び一時停止ボタン画像71Bをまとめて同じディスプレイ画面上に同時に配置することができる。
【0148】
従って、操作者がトラクタ1を緊急停止させたいときに、例えば画面を切り替える面倒な操作を行わなくても、緊急停止ボタン画像71Aの位置を瞬時に認識できるので、緊急停止操作の遅延及び誤操作を抑制できる。
【0149】
また本実施形態によれば、リモコン100には、トラクタ1の状態を報知する報知部130としての発光部130a及び音声出力部130bを備えているので、自律走行するトラクタ1から離れた状況でもトラクタ1の状態を確実に、かつ、リアルタイムに認識でき、トラクタ1の走行安全性を著しく向上させることができる。
【0150】
また本実施形態によれば、タブレット70の緊急停止ボタン画像71Aの操作は、タッチパネル式のディスプレイ71を押す(触る)ことになるので、仮に操作者にとって押動(タッチ)操作をしたような感触がない場合でも、リモコン100での緊急停止ボタン110(
図6参照)はしっかりと押せる構造である。このため、操作者はリモコン100を用いることで、押動操作を行ったという感触が確実に得られ、確実な操作が行える。但し、この場合、操作者は、トラクタ1を緊急停止させる際に、リモコン100側での緊急停止ボタン110と、タブレット70側での緊急停止ボタン画像71Aのどちらを用いてもよい。
【0151】
なお、このリモコン100は、本実施形態では2台で使用しているが、この台数は増設可能である。そして、自律走行するトラクタ1を監視している操作者以外で、同じ圃場で作業している作業者もリモコン100を携帯することで、発光部130aのLEDランプや音声出力部130bでの音声による報知により、トラクタ1の状態をしっかりと認識できる。しかも、緊急時にはリモコン100の緊急停止ボタン110を操作できるので、自律走行するトラクタ1の監視体制を向上させて、圃場での作業者の安全性を大幅に向上させることができる。
【0152】
さらに、本実施形態によれば、例えば
図4に示すように、ディスプレイ71には、画面切り替えボタン73Aの操作によって、
図8に示す「作業情報設定モード」を設定することができる。この作業情報設定モードに設定した画面に切り替えることで、画面下部には、先述したように、再開可能な端末の選択及び設定のために作業選択領域WSAが形成され、3種類のアイコン、即ち“Tablet”で示すタブレット画像T、“First remote(第1リモコン)”で示す第1リモコン画像RA、及び“Second remote(第2リモコン)”で示す第2リモコン画像RBが表示できるので、指などでのタッチ操作で簡単に端末の変更切替えが行えて便宜である。
【0153】
また、このような表示画面のところで、例えば各画像の周囲を取り囲むように画像周囲に縁どった四角形状の表示画像Fが表示されている状態のときには、そのアイコンが操作可能な起動状態を設定・表示できるので、起動操作も容易かつ迅速に行えるようになる。
【0154】
このような構成の本実施形態のタブレット70によれば、操作者がタブレット70のタッチパネルに表示された情報(例えば、自律走行を行うときに必要な圃場の情報等)を参照して確認しながら各種の操作を行うことができるので、誤操作が発生する虞も抑えられる。
【0155】
上述の本実施形態に係る自動走行システムは、以下のように特定することができる。
【0156】
<付記1>
作業車両と通信可能であり前記作業車両の走行経路の生成および走行制御を実行する第1遠隔操作端末と、前記作業車両と通信可能であり前記作業車両の走行制御を実行する一又は複数の第2遠隔操作端末と、を備えた自律走行システムであって、前記第1遠隔操作端末は、前記第1遠隔操作端末若しくは前記第2遠隔操作端末のいずれかによって前記作業車両の走行を再開させるか選択可能な表示制御部を有し、
前記表示制御部は、前記作業車両との通信が確立した前記第2遠隔操作端末のみを選択可能に表示することを特徴とする自律走行システム。
【0157】
前記付記1に係る自律走行システムは、作業車両と通信可能で、各種の情報を表示可能とする表示画面を備え、前記作業車両の走行経路の生成及び走行制御を実行する第1遠隔操作端末と、前記作業車両と通信可能で、前記作業車両の走行制御を実行する複数の第2遠隔操作端末と、を備えた自律走行システムであって、前記第1遠隔操作端末は、第1遠隔操作端末、若しくは前記複数の第2遠隔操作端末のいずれによって、停止後の前記作業車両の走行再開動作を実行させることができるかについて、前記複数の遠隔操作端末の中からの遠隔操作が可能となる“遠隔操作可能端末”の選択作業を実行可能とする表示制御部を有し、前記表示制御部は、前記表示画面上において、前記走行再開操作が可能な遠隔操作可能端末として、前記作業車両と通信が確立している遠隔操作端末の中から一つを指定・選択して前記画面上に表示するように構成したものである。
【0158】
<付記2>
前記表示制御部は、前記作業車両との前記第2遠隔操作端末との通信接続が切れたときは、前記第2遠隔操作端末の表示態様を変更することを特徴とする付記1に記載の自律走行システム。
【0159】
前記付記2に係る自律走行システムは、前記表示制御部は、前記作業車両と前記第2遠隔操作端末の何れかとの通信接続が切れたときは、これの状態を確認可能とするために、前記第1遠隔操作端末の表示画面上における第2遠隔操作可能端末の表示態様を変更するように構成したものである。
【0160】
<付記3>
前記表示制御部は、選択された前記第2遠隔操作端末と前記作業車両との通信接続が切れた後、前記作業車両との通信接続が復帰したとき、選択された前記第2遠隔操作端末を記憶していることを特徴とする付記1又は2に記載の自律走行システム。
【0161】
前記付記3に係る自律走行システムは、前記表示制御部は、選択された前記第2遠隔操作端末と前記作業車両との通信接続が切れたのち、前記作業車両との通信接続が復帰したとき、前記第2遠隔操作端末のうち、前記通信接続が切れる直前まで選択されていた第2遠隔操作可能端末の選択設定状況を記憶しているものである。
【0162】
<付記4>
前記表示制御部は、前記第2遠隔操作端末が選択された場合、前記第2遠隔操作端末によって前記作業車両の走行を再開可能とすることの報知を行うことを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の自律走行システム。
【0163】
前記付記4に係る自律走行システムは、前記第2遠隔操作端末が選択されていた場合には、前記表示制御部は、前記第2遠隔操作可能端末によって前記作業車両の走行を再開させることの確認のため、前記第2遠隔操作可能端末に作業車両の走行再開制御が可能であることを知らせるように報知を行うものである。
【0164】
本実施形態に係る自動走行システムによれば、第1遠隔操作端末に設けた表示制御部は、表示画面上において複数の遠隔操作端末の中から、作業車両と通信が確立している第2遠隔操作端末のみを、走行再開操作が可能な遠隔操作可能端末として、画面上に表示することができるので、1台の作業車両に対して複数台の遠隔操作端末を複数の操作者が操作するような場合に、遠隔操作端末どうしが異なる操作を行う事態(異操作干渉)が発生するのを回避することができ、安全性の高い自律走行システムが実現できる。
【0165】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について
図14乃至
図16を参照しながら説明する。本実施形態では、トラクタ1(の主要部)及びタブレット70については、第1の実施形態のものと同一構成であるので、同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0166】
即ち、本実施形態の
図14に示すリモコン100´では、一時停止ボタン120´の長押し操作により、制御部160´が走行再開信号を生成するように構成されている。そのため、
図14に示すリモコン100´については、各部の構成要素のうち制御部160´が、
図7に示す第1の実施形態のリモコン100の制御部160とは構成が一部異なる。また、この構成を受けて、トラクタ1の方でも、
図3に示す構成ブロック図の中の自律走行制御装置51が一部異なり、リモコン100´の一時停止ボタン120´の長押し動作によって生成される走行再開信号を入力すると、一時停止していたトラクタ1の走行が再開されるような構成となっている。
【0167】
なお、本実施形態の自律走行システムでも、第1の実施形態と同様、2台のリモコン100A,100Bを備えて使用可能としているが、第1の実施形態で説明したように、異操作干渉を防止するため、これら2台のリモコンのうちいずれか1方でのみ使用可能(起動リモコン)とするように設定されている。なお、本実施形態でも、予めタブレット70側で第1リモコン100Aのみが使用可能となるように設定している。
【0168】
従って、本実施形態によれば、
図15に示すフローチャート及び
図16に示すタイミングチャートにおいて、第1の実施形態の場合と異なるのは、第5´ステップS5´、第7´ステップS7´、及びリモコン100の構成要素のうちの、緊急停止ボタン110´と、一時停止ボタン120´と、記憶部140´と、制御部160´とである。なお、これら緊急停止ボタン110´と、一時停止ボタン120´と、記憶部140´と、制御部160´とについては、再開操作の制御に関する構成のみが異なるだけなので、詳細な説明は省略する。
【0169】
一方、再開操作手順などについては、第5´ステップS5´で一時停止していたトラクタ1の走行再開を行おうとする場合、一時停止させた方(現在操作可能な方)の第1リモコン100Aの操作者が走行再開操作を行うことができる。即ち、時刻t5にて、第1リモコン100Aの一時停止ボタン120を一定時間以上(例えば5秒以上)で長押し状態に押圧させる。
【0170】
これにより、作業車両であるトラクタ1が一時停止した後に走行再開操作を開始したことにより、時刻t6には、その再開に先立ち、トラクタ1の周辺にいる作業者に対して再開動作が間もなく始まることを知らせる(報知する)大きなブザー音などでの警戒音をトラクタ1からおよそ3秒間だけ放音する(第6ステップS6)。例えば第1リモコン100Aの一時停止ボタン120が5秒間継続して長押し状態に押圧操作されると、制御部160´は、トラクタ1に放音指示を出力して、トラクタ1の放音部57から3秒間だけブザー音を放音させる。
【0171】
このトラクタ1の報音を聞いている第1リモコン100Aの操作者は、その放音中(例えば3秒の間)の時刻t7に、即ち、ボタン操作押圧開始時刻t5から少なくとも5秒以上経過した時刻t7に、第1リモコン100Aの一時停止ボタン120´の押圧動作を解除させる(第7´ステップS7´)。
【0172】
これにより、時刻t7には、一時停止中であったトラクタ1は、自律走行を再開することができる(第8´ステップS8´)。なお、この第8´ステップS8´で、一時停止ボタン120を引き続き一定時間以上押圧継続させた場合には、走行開始を通知する警告音の報音終了後の所定時間経過したところで、トラクタ1が走行動作を再開せずに一時停止した状態となる。
【0173】
なお、第2ステップS2~第4ステップS4は先の第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0174】
以上のように、本実施形態のリモコン100´は、自律走行可能なトラクタ1に対して走行に関する指示を行うものである。また、リモコン100´は、一時停止ボタン120´に対する一時停止操作に応じてトラクタ1が一時停止した後に、第1所定時間(例えば5秒)以上継続して一時停止ボタン120´を押圧する押圧操作と前記第1所定時間に続く第2所定時間(例えば3秒)の間に一時停止ボタン120´に対する押圧操作を解除する解除操作とを含む走行再開操作が行われた場合に、トラクタ1に走行再開信号を出力してトラクタ1の走行を再開させる。これにより、停止中のトラクタ1を走行再開させるためのスイッチを別途設ける必要がないため、リモコン100´を小型化することができる。よって、自律走行可能なトラクタ1に対して走行に関する指示を行う遠隔操作端末(リモコン100、100´)の小型化を図るとともに、トラクタ1が停止した場合に遠隔操作端末によりトラクタ1の走行を再開させることが可能な自律走行システムを実現することができる。
【0175】
また、リモコン100´は、一時停止ボタン120´に対する前記一時停止操作に応じてトラクタ1が一時停止した後に前記第1所定時間以上継続して一時停止ボタン120´が押圧操作された場合に、トラクタ1の放音部57に、トラクタ1の走行が再開されることを示すブザー音(警告音)を前記第2所定時間だけ放音させる。これにより、走行再開に先立ちトラクタ1の周辺にいる作業者に対して走行再開動作が間もなく始まることを知らせることができ、またリモコン100´のユーザは、走行再開操作が可能になったことを把握することができる。
【0176】
なお、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態において、リモコン100は、緊急停止ボタン110に対する緊急停止操作に応じてトラクタ1が緊急停止した後に前記走行再開操作が行われた場合に、トラクタ1の走行を再開させてもよい。
【0177】
また、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態において、トラクタ1は、障害物センサ36(障害物検出部)の機能が有効(又は正常)である場合に走行を再開させ、障害物センサ36の機能が無効(又は異常)である場合に走行を再開させない構成としてもよい。このように、障害物センサ36が正常に動作している場合にしかトラクタ1の走行を再開させることができない構成とすることにより、ユーザが意図しない走行再開を防ぐことができる。
【0178】
本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 ロボットトラクタ(作業車両)
18 車両バス回線(第1バスライン)
35 カメラ(障害物検出部)
36 障害部センサ(障害物検出部)
51 自律走行制御装置
54 無線通信ルータ
55 リモコン受信機(特定小電力無線装置)
56 自律走行バス回線(第2バスライン)
57 放音部(走行再開の警告手段)
70 第1遠隔操作端末(タブレット)
71 液晶表示部(ディスプレイ)
71A 緊急停止ボタン画像
71B 一時停止ボタン画像
72 表示制御部
73 操作部(インターフェース)
73A 画面切り替えボタン
74 記憶部
75 送受信部
76 制御部
100、100´ 第2遠隔操作端末(リモコン、遠隔操作端末)
100A、100A´ 第1リモコン
100B、100B´ 第2リモコン
101 リモコン本体
110 緊急停止ボタン(第1スイッチ部、スイッチ部)
120 一時停止ボタン(第2スイッチ部、スイッチ部)
130 報知部
130a 発光部(LEDランプ)
130b 音声出力部
140 記憶部
150 リモコン送受信部
160 制御部
F 周囲を囲む画像(起動アイコンの表示模様)
N1,N2 いいえ
RA 第1リモコン画像(第1リモートアイコン)
RB 第2リモコン画像(第2リモートアイコン)
RCD 遠隔操作装置
T タブレット画像(タブレットアイコン)
WSA 作業選択領域
Y1,Y2 はい