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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】卓上切断機
(51)【国際特許分類】
   B27B 5/36 20060101AFI20241008BHJP
   B23D 45/14 20060101ALI20241008BHJP
   B27B 5/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B27B5/36
B23D45/14 A
B27B5/20 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020203300
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090789
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸則
(72)【発明者】
【氏名】可児 利之
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274390(JP,A)
【文献】特開2018-075810(JP,A)
【文献】特許第6396557(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 5/36
B23D 45/14
B27B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卓上切断機であって、
被切断材が載置されるテーブルと、
前記テーブルに対して上下動される切断機本体と、
前記切断機本体を前記テーブルに対して直接又は間接に左右に傾動可能に支持する傾動部材と、
前記切断機本体の傾斜位置を解除可能に固定する傾動固定部材と、
前記傾動固定部材を解除状態にして前記切断機本体の前記傾斜位置を調整する際に回転操作される操作部材と、
記傾動部材に回転可能に支持され、前記操作部材により回転操作される第1プーリと、前記傾動部材を直接又は間接に傾動可能に支持する前記テーブルに固定された第2プーリと、前記第1プーリと前記第2プーリに掛け渡された歯付きベルトを有し、
前記操作部材の回転操作により前記第1プーリと前記第2プーリに対する前記歯付きベルトの噛み合い位置の変更により前記傾動部材が傾動される構成とされ、
前記操作部材が、前記第1プーリに対して前記回転操作による動力を切り離す方向に付勢されている卓上切断機。
【請求項2】
請求項1記載の卓上切断機であって、
前記傾動部材の上部に前記第1プーリが支持され、前記テーブルに前記第2プーリが前記傾動部材の傾動軸線と同軸で固定された卓上切断機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の卓上切断機であって、
前記第2プーリは、前記第1プーリよりも大きい径を有する卓上切断機。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1つに記載の卓上切断機であって、
前記操作部材と前記第1プーリとの間に、前記操作部材の軸方向の移動操作により噛み合いを分離可能なギヤ列を介在させた卓上切断機。
【請求項5】
請求項4記載の卓上切断機であって、
前記ギヤ列の噛み合いを分離する方向に付勢するスプリングを有する卓上切断機。
【請求項6】
請求項5に記載の卓上切断機であって、
前記操作部材を前記スプリングの付勢力に抗して引っ張って前記ギヤ列を噛み合わせる構成とした卓上切断機。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載の卓上切断機であって、
前記操作部材と前記傾動固定部材が、作業者側に突出している卓上切断機。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の卓上切断機であって、
前記切断機本体を前後にスライド可能に支持するスライド支持部と、
前記スライド支持部に挿通され且つ前記スライド支持部の使用者側の端部を超えた前部を備える操作バーを有し、
前記操作部材が、前記操作バーの前部に配置された卓上切断機。
【請求項9】
請求項8記載の卓上切断機であって、
前記スライド支持部は上下に並列配置された2本のスライドバーを有し、下側の前記スライドバーに挿通された前記操作バーの前部に前記操作部材が配置された卓上切断機。
【請求項10】
請求項1~6の何れか1つに記載の卓上切断機であって、
前記操作部材が、前記傾動部材の使用者側と反対側の後面に配置された卓上切断機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば木材等の被切断材の切断加工に用いられる卓上切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上切断機は、被切断材を載置するテーブルと、円板形の刃具を具備する切断機本体を備える。テーブル上に載置した被切断材に対して円板形の刃具を上方から切り込ませて切断加工が行われる。卓上切断機は、切断機本体を左方又は右方に傾斜させて刃具を被切断材に斜めに切り込ませるいわゆる傾斜切りを行うための機能を備える。切断機本体を任意の傾斜角度で位置決めをするための種々技術が提供されている。
【0003】
特許文献1に開示された傾斜位置決め機構では、切断機本体の傾動部と切断機本体を傾動可能に支持する傾動支持部との間に中間ベースが介装されている。中間ベースの左右傾動方向の位置は固定ねじを緩めて調整可能となっている。固定ねじを締め付けて中間ベースを固定した状態で、位置決めねじの締め込み量を調整して切断機本体の傾斜角度を微調整できる。微調整後、本体固定ねじを締め付ければ切断機本体が位置決めした傾斜角度に固定される。
【0004】
特許文献2に開示された傾斜位置決め機構では、切断機本体の傾動軸と平行な軸回りに回転操作する操作部を有する。操作部の回転操作によりピニオンギヤを回転させて、傾動支持側に設けたラックに対する噛み合い位置を変更することで切断機本体の傾斜角度を微調整できる。微調整後、本体固定ねじを締め付ければ切断機本体が位置決めした傾斜角度に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-44044号公報
【文献】欧州特許出願公開第1935543号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の位置決め機構によれば、傾斜角度の微調整を行わない場合には、固定ねじを緩めて中間ベースの位置をフリーにしておく必要がある。このキャンセル操作が手間が掛かって面倒であった。特許文献2の位置決め機構によれば、ラックが大形化しやすい問題がある。ラックの大形化を避けるため複数の中間ギヤを介在させると構造が複雑化する問題がある。本開示では、切断機本体の傾斜位置決め機構について、操作性を高めるとともに構成の簡略化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると、卓上切断機は、被切断材が載置されるテーブルと、テーブルに対して上下動される切断機本体とを有する。切断機本体は、傾動部材を介してテーブルに対して直接又は間接に左右に傾動可能に支持される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材により解除可能に固定される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材を解除状態にして操作部材の回転操作により動作するベルト伝達機構により調整される。ベルト伝達機構は歯付きベルトを有する。
【0008】
従って、切断機本体の傾斜位置決め機構について、操作部材により操作性が高められるとともに、ベルト伝達機構により構成の簡略化が図られる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、傾動部材の上部に第1プーリが回転可能に支持され、傾動部材を直接又は間接に傾動可能に支持するテーブルに第2プーリが傾動部材の傾動軸線と同軸で固定されている。従って、操作部材の回転操作により第1プーリが回転されることで、第2プーリに対する歯付きベルトの噛み合い位置が変化して傾動部材が左右に傾動する。これにより切断機本体の傾斜位置が微調整される。
【0010】
本開示の他の特徴によると、第2プーリは、第1プーリよりも大きな径を有する。従って、操作部材の回転操作が減速されて傾動部材に伝達される。これにより小さな回転操作力で切断機本体の傾斜位置が精確に微調整される。
【0011】
本開示の他の特徴によると、操作部材と第1プーリとの間に、操作部材の軸方向の移動操作により噛み合いを分離可能なギヤ列が介在されている。従って、非操作時にギヤ列の噛み合いを分離することで、切断機本体の傾斜位置の不用意な微調整操作が防止される。
【0012】
本開示の他の特徴によると、ギヤ列の噛み合いを分離する方向に付勢するスプリングを有する。従って、非操作時にギヤ列の噛み合いが自動的に分離されることで、切断機本体の傾斜位置の不用意な微調整がより確実に防止される。
【0013】
本開示の他の特徴によると、操作部材をスプリングの付勢力に抗して引っ張ってギヤ列が噛み合わされる。従って、作業者は操作部材を引っ張りながら回転操作することで傾斜位置が微調整される。これにより良好な操作性が確保される。
【0014】
本開示の他の特徴によると、操作部材と傾動固定部材が、作業者側に突出している。従って、傾斜位置の固定操作と微調整操作の双方について良好な操作性が確保される。
【0015】
本開示の他の特徴によると、切断機本体を前後にスライド可能に支持するスライド支持部と、スライド支持部に挿通され且つスライド支持部の使用者側の端部を超えた前部を備える操作バーを有する。操作部材が操作バーの前部に配置されている。従って、切断機本体のスライド位置に関わらず、操作部材の良好な操作性が確保される。
【0016】
本開示の他の特徴によると、スライド支持部は上下に並列配置された2本のスライドバーを有する。下側のスライドバーに操作バーが挿通されている。従って、下側のスライドバーの内周側を経て操作部材の操作力が操作バーを介してベルト伝達機構の第1プーリに伝達される。これにより、操作部材の良好な操作性を確保しつつ、構成の簡略化が図られる。また、上側のスライドバーの内周側を経て操作力を伝達する場合に比して歯付きベルトを短くすることができる。この点でも構成の簡略化が図られる。
【0017】
本開示の他の特徴によると、操作部材が、傾動部材の使用者側とは反対側の後面に配置されている。従って、操作部材がベルト伝達機構に接近して配置されることで構成の簡略が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る卓上切断機の全体斜視図である。本図は、左斜め前方から見た状態を示している。本図は、切断機本体が直角切り位置で前方にスライドされた状態を示している。
図2】第1実施形態に係る卓上切断機の全体斜視図である。本図は、右斜め後方から見た状態を示している。本図は、切断機本体が直角切り位置で前方にスライドされた状態を示している。
図3】第1実施形態に係る卓上切断機の右側面図である。
図4】第1実施形態に係る卓上切断機の後面図である。
図5】第1実施形態に係る卓上切断機の右側面図である。本図ではスライド支持部及び傾動支持部が縦断面で示されている。本図は、微調整機構のギヤ列の噛み合いが分離された状態を示している。
図6】第1実施形態に係る卓上切断機の右側面図である。本図ではスライド支持部及び傾動支持部が縦断面で示されている。本図は、微調整機構のギヤ列が噛み合わされた状態を示している。
図7】第1実施形態に係る卓上切断機を右側後方から見た斜視図である。本図では、微調整機構が分解斜視図で示されている。
図8】第1実施形態に係る微調整機構の分解斜視図である。
図9】第1実施形態に係る卓上切断機の前面図である。本図は、切断機本体が右側へ傾動された状態を示している。
図10】第1実施形態に係る卓上切断機の後面図である。本図は、切断機本体が右側へ傾動された状態を示している。
図11】第1実施形態に係る卓上切断機の前面図である。本図は、切断機本体が左側へ傾動された状態を示している。
図12】第1実施形態に係る卓上切断機の後面図である。本図は、切断機本体が左側へ傾動された状態を示している。
図13】第2実施形態に係る卓上切断機の全体斜視図である。本図は、左斜め前方から見た状態を示している。本図は、切断機本体が直角切り位置で前方にスライドされた状態を示している。
図14】第2実施形態に係る卓上切断機の全体斜視図である。本図は、右斜め後方から見た状態を示している。本図は、切断機本体が直角切り位置で前方にスライドされた状態を示している。
図15】第2実施形態に係る卓上切断機の右側面図である。
図16】第2実施形態に係る卓上切断機の後面図である。
図17図16中XVII-XVII線断面矢視図であって、第2実施形態に係る微調整機構の縦断面図である。本図はギヤ列が切り離された状態を示している。
図18】同じく第2実施形態に係る微調整機構の縦断面図である。本図はギヤ列が噛み合わされた状態を示している。
図19】第2実施形態に係る卓上切断機を右斜め後方から見た斜視図である。本図では、第2実施形態に係る微調整機構が分解者図で示されている。
図20】第2実施形態に係る卓上切断機の前面図である。本図は、切断機本体が右側へ傾動された状態を示している。
図21】第2実施形態に係る卓上切断機の後面図である。本図は、切断機本体が右側へ傾動された状態を示している。
図22】第2実施形態に係る卓上切断機の前面図である。本図は、切断機本体が左側へ傾動された状態を示している。
図23】第2実施形態に係る卓上切断機の後面図である。本図は、切断機本体が左側へ傾動された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本開示の実施形態を図1~23に基づいて説明する。図1図12は第1実施形態に係る卓上切断機1を示している。図示するように卓上切断機1にはいわゆるスライドマルノコが例示されている。図1~4に示すように卓上切断機1は、卓上や床面F等に載置されるベース2と、被切断材を載置するためのテーブル3と、切断機本体10を有する。使用者は、卓上切断機1の手前に位置して切断作業を行う。以下の説明において部材及び構成の前後方向は使用者から見て手前を前側とする。また、部材及び構成の上下左右方向は使用者を基準とする。
【0020】
テーブル3は、平面視略円板形状を有し、上面が水平な平坦面に形成されている。テーブル3の上面に被切断材Wが載置される。テーブル3は、ベース2の上方において支軸(図では見えていない)を中心にして水平方向に回転可能に支持されている。テーブル3の後部に設けた傾動支持部20を介して切断機本体10が左右に傾動可能に支持されている。傾動支持部20の詳細については後述する。
【0021】
テーブル3の前部にはテーブル延長部3aが設けられている。テーブル延長部3aは前方へ長く延在されている。テーブル延長部3aの上面は、テーブル3の上面に面一に一致している。テーブル延長部3aの上面に被切断材Wを載置できる。テーブル延長部3aの上面には、切断時にチップソー(tipped saw blade)と称される刃具37を下方へ進入させるための刃口3bが設けられている。
【0022】
テーブル3の左右両側方には、補助テーブル5が設けられている。左右の補助テーブル5は、ベース2の左右両側に一体に設けられている。補助テーブル5の上面は、テーブル3の上面に面一に一致している。テーブル3の上面と補助テーブル5の上面に跨って大形の被切断材Wを載置することができる。
【0023】
テーブル3と左右の補助テーブル5の上方には、左右方向に延びかつ上方に延びる壁形状の位置決めフェンス6が設けられている。位置決めフェンス6は、左右の補助テーブル5に支持されている。位置決めフェンス6の前面である位置決め面6aは、テーブル3の回転中心(支軸の軸線)を通る鉛直面上に位置している。図3に示すようにテーブル3に載置される被切断材Wは、位置決め面6aに当てることで前後方向に位置決めされる。
【0024】
テーブル3には、水平方向の回転位置をロックするための2系統のテーブルロック機構が設けられている。ベース2の前部の略半周の領域には、円弧形の第1ロックプレート7が設けられている。第1ロックプレート7には、テーブル3の水平方向の角度位置を指し示す角度目盛りが表示されている。第1ロックプレート7には、テーブル3の回転方向に沿って複数の位置決め凹部7aが設けられている。位置決め凹部7aに、位置決めピン11の先端部が進入されてテーブル3の角度位置が固定される。位置決め凹部7aは、適宜の角度間隔で複数個所に設けられている。位置決め凹部7aごとの角度間隔で、テーブル3の回転位置がロックされる。位置決めピン11は、圧縮ばねによってロック側にばね付勢されている。第1系統のテーブルロック機構のロック、アンロック操作は、テーブル延長部3aの前部付近に設けた操作レバー12の上下操作によりなされる。
【0025】
テーブル3の回転位置を固定するためのテーブルロック機構には上記の位置決めピン11を位置決め凹部7aに進入して行う第1系統に加えて、テーブル固定部材8の回転操作によりベース2側の第2ロックプレートをねじ力により押圧部材で挟み込んで行う第2系統が装備されている。
【0026】
テーブル延長部3aの前面には、上記操作レバー12に加えてテーブル固定部材8と傾動固定部材9が設けられている。テーブル固定部材8の回転操作により、上記第2系統のテーブルロック機構がロック、アンロック操作される。テーブル固定部材8のねじ軸部がテーブル延長部3aの下面に螺合されている。ねじ軸部のねじ力により第2ロックプレートが押圧部材によって挟み込まれる。これによりテーブル3が任意の角度位置で固定される。
【0027】
テーブル固定部材8の後方に、円環形の傾動固定部材9が同軸に配置されている。傾動固定部材9のロック側への回転操作によって切断機本体10の左右傾斜位置が固定される。傾動固定部材9のアンロック側への回転操作により切断機本体10を左右へ傾動させることができる。傾動固定部材9の回転操作によって、中間ロッド14が軸回りに回転する。中間ロッド14はテーブル延長部3a及びテーブル3の下方に沿って後方へ延在されている。中間ロッド14の後部側は、傾動支持部20に至っている。図4,7に中間ロッド14の後部が示されている。
【0028】
傾動固定部材9を回転させると、中間ロッド14が軸回りに回転する。中間ロッド14の後部にはねじ軸部が設けられている。ねじ軸部には、1つの押圧板16が螺合されている。図では示されていないが、押圧板16の前方であって傾動受け部21の前方において中間ロッド14には1つのロックナットが取り付けられている。このため中間ロッド14が軸回りに回転してねじ軸部が押圧板16に対して締め込まれると、傾動受け部21と傾動部材30がロックナットと押圧板16との間に挟み込まれて傾動部材30の傾斜位置が固定される。これにより、傾動支持部20がロックされて切断機本体10の傾斜位置がロックされる。
【0029】
図1~3,5~7に示すように傾動支持部20は、テーブル3の後部に設けられている。傾動支持部20によって切断機本体10がテーブル3に対して左右傾斜位置を変更可能に支持されている。傾動支持部20は、傾動受け部21と傾動部材30を有する。傾動受け部21はテーブル3の後部に一体に設けられている。傾動受け部21の後面側に、傾動部材30の下部に設けた傾動部31が傾動軸22を介して結合されている。傾動軸22を中心にして傾動部材30が傾動受け部21に対して左右に傾動可能に結合されている。図1~3に示すように傾動受け部21の上面には、角度目盛りが表示された目盛り板21aが取り付けられている。傾動部31の前部には、切断機本体10の傾斜位置を指し示す指針31aが取り付けられている。指針31aが指し示す角度を読み取ることで、切断機本体10の傾斜角度を確認することができる。
【0030】
前記したように傾動固定部材9の回転操作によりなされる押圧板16に対する中間ロッド14のねじ軸部の締め込みにより、傾動受け部21に対する傾動部31の傾斜位置が固定される。これにより、切断機本体10の傾斜位置が固定される。図4,7に示すように中間ロッド14の後部は、傾動部31に設けた円弧形の挿通溝孔31bを経て傾動部31の後面側に突き出されている。中間ロッド14の突き出し部には、1つの押圧板16が軸方向移動不能に支持されている。傾動部材30に対する押圧板16の回転は規制されている。中間ロッド14の押圧板16に対する締め込みにより押圧板16が傾動部31の後面に押圧されて、傾動部31の傾動受け部21に対する傾斜位置が固定される。このため、使用者側の操作しやすい手前側に配置された傾動固定部材9の回転操作により、傾動支持部20の傾斜位置がロック、アンロックされる。
【0031】
図5,6に示すように傾動軸22の後部には、固定ナット22aが締め付けられている。固定ナット22aと傾動部31との間に1つのスラストベアリング22bが介装されている。これにより傾動部材30が傾動受け部21に対して離脱不能且つ回転可能に結合されている。傾動部材30は、傾動支持部20から上方へ延びる長尺の箱形を有している。傾動部材30の後面側の全体が蓋部32により塞がれている。
【0032】
傾動受け部21に対する傾動部31の回転軸線であって、切断機本体10の左右方向へ傾動軸線Jは、傾動軸22の軸線に一致している。傾動軸線Jは、側面視でテーブル3の上面に一致している。また、傾動軸線Jは、平面視でテーブル3の回転中心及び刃口3bに一致している。中間ロッド14は傾動軸22に対して一定距離だけ偏心して配置されている。
【0033】
傾動受け部21と傾動部31との間には、切断機本体10の直角切り位置と左右傾斜位置(例えば左右45°)を、位置決めするための傾斜位置決め機構が内装されている。傾動部31の側部に直角切り位置決め用のストッパねじ20aが設けられている。直角位置決め用のストッパねじ20aが傾動受け部21側のストッパ(図では見えていない)に当接することで傾動部材30が直角切り位置に位置決めされる。傾動部31側に、左右傾斜位置決め用のストッパ部(図では見えていない)が設けられている。傾動受け部21の左右両側に、ストッパねじ20bが設けられている。ストッパねじが20bがストッパ部に当接されて切断機本体10が左右傾斜位置(例えば左右45°)に位置決めされる。傾斜位置決め機構による通常の位置決めは傾動固定部材9をアンロック側に回転操作して、傾動受け部21に対する傾動部31の固定状態を解除してなされる。傾動固定部材9をロック側に回転操作すると、切断機本体10が直角切り位置、あるいは左右の傾斜位置に固定される。
【0034】
切断機本体10が直角切り位置に位置された状態では、刃具が被切断材Wの上面に対して直角に切り込まれる(直角切り)。切断機本体10が左方又は右方に傾斜された状態では、刃具が被切断材Wの上面に対して斜めに切り込まれて、いわゆる傾斜切りがなされる。
【0035】
本実施形態の卓上切断機1は、上記の直角切り位置や左右の一定角度の傾斜位置に切断機本体10を位置決めする傾斜位置決め機構に加えて、切断機本体10の傾斜角度を、例えば直角切り位置や左右一定角度の傾斜位置を中心にして微調整するための微調整機構50を備えている。微調整機構50の詳細は後述する。
【0036】
切断機本体10は、傾動部材30の上部に支持されている。切断機本体10は、傾動部材30の上部に設けたスライド支持部Sを介して前後にスライド可能に支持されている。スライド支持部Sは2本のスライドバー24,25とスライド基台部26を備えている。2本のスライドバー24,25は、傾動部材30の上部に支持されている。2本のスライドバー24,25は、傾動部材30の上部から前方に長く延びている。2本のスライドバー24,25の前端部は前端部材28により相互に一定間隔に結合されている。これにより、2本のスライドバー24,25は、上下に平行に配置されている。前部の前端部材28と後部の傾動部材30との間において、2本のスライドバー24,25にはスライド基台部26が前後にスライド可能に支持されている。スライド基台部26に切断機本体10が支持されている。これにより切断機本体10が、テーブル3の上方において2本のスライドバー24,25を介して前後にスライド可能に支持されている。切断機本体10の前後スライド位置は、スライド基台部26に設けたストッパねじ29を締め込むことで固定できる。
【0037】
図1,3,5~7に示すように切断機本体10は、1つの揺動支軸27を介して上下に揺動可能に支持されている。切断機本体10は、本体ベース35を有する。本体ベース35の後部が揺動支軸27を介してスライド基台部26に支持されている。本体ベース35の前部には半円形の固定カバー36が設けられている。固定カバー36により円板形の刃具37の上側ほぼ半周の範囲が覆われている。刃具37は、本体ベース35に回転可能に設けたスピンドル(図では見えていない)に取り付けられている。刃具37の下側ほぼ半周の範囲は、可動カバー39で覆われている。可動カバー39は、切断機本体10の揺動動作に連動して開閉される。切断機本体10が上動端位置(待機位置)に位置する状態では、可動カバー39は全閉状態となって、刃具37の下側半周の範囲のほぼ全体が可動カバー39で覆われる。切断機本体10が下方へ揺動されると、可動カバー39が開かれて刃具37が露出される。刃具37の露出された部位が被切断材Wに切り込まれる。
【0038】
図2~7に示すように本体ベース35の右側部に電動モータが取り付けられている。電動モータは、DCブラシレスモータで、円筒形のモータハウジング40に収用されている。以下電動モータに符号40を用いる。電動モータ40はそのモータ軸線を刃具37の面方向に沿わせた姿勢で取り付けられている。電動モータ40の出力は、ギヤケース40aに内装したベベルギヤを含む減速ギヤ列の噛み合いを経てスピンドルに出力される。
【0039】
本体ベース35の前部にはループ形のハンドル部41が設けられている。ハンドル部41の上部内周側にスイッチレバー42が設けられている。ハンドル部41を把持した手の指先でスイッチレバー42に上方へ引き操作すると電動モータ40が起動して刃具37が回転する。図1に示すように刃具37の回転方向(図1において時計回り方向)は、固定カバー36の左側部に白抜き矢印36aで表示されている。ハンドル部41の上部には、ロックオフボタン41aが設けられている。ロックオフボタン41aを押すことで、スイッチレバー42のオン操作が可能になる。これにより不用意な電動モータ40の起動が回避される。
【0040】
電動モータ40の後方において、本体ベース35にはバッテリ取り付け部43が設けられている。バッテリ取り付け部43に1つのバッテリパック44が取り付けられる。バッテリ取り付け部43に取り付けられたバッテリパック44の電力が主として電動モータ40の電源として供給される。バッテリパック44は6面体を有するリチウムイオンバッテリで、図1において白抜き矢印で示すようにバッテリ取り付け部43に対して下向きにスライドさせて取り付けられる。バッテリパック44は、上向きにスライドさせてバッテリ取り付け部43から取り外すことができる。バッテリパック44は、取り外して別途用意した充電器で充電することで繰り返し利用できる。バッテリパック44は、他の電動工具の電源としても利用できる汎用性を有する。
【0041】
図1に示すようにバッテリ取り付け部43と固定カバー36の後部とに跨って持ち運び用のキャリングハンドル45が取り付けられている。キャリングハンドル45の把持部45aは、切断機本体10を下動端に移動させるとほぼ水平に位置する。切断機本体10を下動位置に固定して把持部45aを把持することで、当該卓上切断機1を楽に持ち運ぶことができる。
【0042】
本体ベース35の後部には、集塵ガイド46とホース接続口47が設けられている。集塵ガイド46は、切断機本体10を下動端位置に移動させた姿勢(切断姿勢)で、上下方向に起立して前方が開口した平面視略C字形状の壁形状を有している。集塵ガイド46は、被切断材Wを切断することで生じる切断粉が刃具37の後方または左右両側へと飛散することを抑制する。集塵ガイド46の上部は、ホース接続口47に連通されている。ホース接続口47にダストバッグや集塵機の集塵ホース(何れも図示省略)が接続される。集塵ガイド46に受けられた切断粉がダストボックスや集塵機に効率よく集塵される。これにより切断粉の飛散が抑制されて良好な作業環境が維持される。
【0043】
図2,3,5~7に示すように本体ベース35の右側部には、アダプタ収容部48が設けられている。アダプタ収容部48には、近距離無線通信用の通信アダプタ48aが装着されている。通信アダプタ48aはアダプタ収容部48の内部に防塵状態で収容されている。通信アダプタ48aを介して当該卓上切断機1と例えば集塵機等の他の付帯設備との間で無線通信がなされる。例えばスイッチレバー42のオンオフ操作に連動して集塵機の起動停止がなされる。これにより効率のよい集塵がなされるとともに作業効率が向上する。
【0044】
前記したように切断機本体10は、傾動支持部20を介してテーブル3(被切断材W)に対して左右に傾動可能に設けられている。切断機本体10の左右傾斜位置は、テーブル延長部3aの前部に設けた傾動固定部材9により固定される。傾動固定部材9をアンロック側に回転操作すると、切断機本体10を左右に傾動可能となる。切断機本体10の直角切り位置と左右45°の傾斜位置は、傾動受け部21と傾動部材30の傾動部31との間に介装した傾斜位置決め機構により位置決めされる。傾斜位置決め機構により位置決めされた傾斜位置は、以下説明する微調整機構50により微調整することができる。
【0045】
図5~7に示すように微調整機構50は、回転操作される操作部材51と、操作部材の回転操作により動作して傾動部材30を傾動させるベルト伝達機構Bを有する。操作部材51はスライド支持部Sの前部に配置されている。2本のスライドバー24,25の前端部を結合する前端部材28の下部には、挿通孔28aが設けられている。挿通孔28aは下側のスライドバー25の内周孔に貫通されている。挿通孔28aに連結部材51aが回転可能且つ軸方向に一定の範囲で移動可能に支持されている。
【0046】
連結部材51aの前部側は挿通孔28aから前方へ突き出されている。連結部材51aの前側突き出し部に操作部材51が結合されている。連結部材51aの後部側は下側のスライドバー25の内周側に突き出されている。連結部材51aの後ろ側突き出し部に操作バー52の前部が結合されている。連結部材51aを介して操作部材51と操作バー52が回転及び軸方向の変位について結合されている。これにより、操作部材51の回転操作により操作バー52が軸回りに一体で回転される。操作部材51の軸方向の変位により操作バー52が軸方向に一体で変位する。
【0047】
操作バー52は下側のスライドバー25の内周側を経て後方へ延在されている。操作バー52の後部は、傾動部材30の上部に至っている。操作バー52の後部には、円筒形の支持部材52aが軸回りに回転不能且つ軸方向に変位不能に結合されている。操作バー52の後部は支持部材52aを介して傾動部材30に対して軸回りに回転可能且つ軸方向に一定の範囲で変位可能に支持されている。支持部材52aと傾動部材30との間にはスプリング58が介在されている。スプリング58には圧縮コイルバネが用いられている。スプリング58により操作バー52が後方へ変位する方向に付勢されている。このため、スプリング58により操作部材51が後方へ変位する方向に付勢されている。
【0048】
操作バー52の後部側が支持部材52aを介してベルト伝達機構Bに結合されている。支持部材52aの後部は傾動部材30の内部に突き出されている。支持部材52aの後部に第1ギヤ53が支持されている。第1ギヤ53には平歯車が用いられている。第1ギヤ53は、軸回りの回転及び軸方向の変位について支持部材52aに一体化されている。このため、第1ギヤ53は、操作バー52と一体で回転し、軸方向に変位する。このことから、操作部材51の回転操作により第1ギヤ53を回転させることができる。また、操作部材51をスプリング58に抗して前方へ引き操作することで、第1ギヤ53を前方へ変位させることができる。
【0049】
図6に示すように操作部材51の前方への引き操作により第1ギヤ53が前方へ変位されると、第1ギヤ53は第2ギヤ54に噛み合わされる。図5に示すように操作部材51の前方への引き操作を解除すると、スプリング58の付勢力により第1ギヤ53が後方へ変位する。第1ギヤ53は、後方へ変位されると第2ギヤ54に対する噛み合いが外れる。第2ギヤ54にも平歯車が用いられている。第2ギヤ54は支軸54aを介して傾動部材30に回転可能に支持されている。
【0050】
第2ギヤ54の前面には第1プーリ59が一体に設けられている。第1プーリ59は第2ギヤ54と一体で回転する。第1プーリ59には歯付きプーリが用いられている。第1プーリ59の下方には第2プーリ55が配置されている。第1プーリ59と第2プーリ55との間には無端の歯付きベルト56が掛け渡されている。図5~7に示すように第2プーリ55は、1本の固定ねじ55aにより、傾動軸22の後端部に結合されている。傾動軸22の後端部には平坦面22cが設けられている。平端面22cが第2プーリ55の内周孔に係合されることで、第2プーリ55が傾動軸22に対して回転不能に結合されている。これにより、第2プーリ55が、傾動しない側(テーブル3側)である傾動受け部21に回転不能且つ軸方向に移動不能に固定されている。
【0051】
第2プーリ55の中心は、傾動部材30の傾動中心(傾動軸22の傾動軸線J)に一致している。このため、傾動固定部材9をアンロック操作して傾動部材30が左右に傾動可能な状態では、第1プーリ59の回転により歯付きベルト56が変位して第2プーリ55に対する噛み合い位置が変化することで傾動部材30が左方または右方に傾動される。第1プーリ59の回転は、図6に示すように使用者が操作部材51を手前(前方)へ引き操作して第1ギヤ53を第2ギヤ54に噛み合わせた状態で操作部材51の回転操作することでなされる。
【0052】
第2ギヤ54には第1ギヤ53よりも大きな径の平歯車が用いられている。このため、第1ギヤ53と第2ギヤ54の噛み合いを経て、操作部材51の回転操作が減速される。第1ギヤ53と第2ギヤ54の噛み合いが減速ギヤ列として機能することで、操作部材51の必要な回転操作力を小さくすることができる。また、精確な微調整が可能となる。
【0053】
下側の第2プーリ55には、上側の第1プーリ59より大きな径の歯付きプーリが用いられている。このため、ベルト伝達機構Bの動作(歯付きベルト56の変位)により操作部材51の回転操作がさらに減速される。これにより、操作部材51の必要な回転操作力が一層小さくなって使用者は楽に微調整操作を行うことができる。また、操作部材51の回転操作量が減速されることから、傾動部材30の傾斜位置を精確に微調整することができる。
【0054】
歯付きベルト56の外周面(噛み合い歯が存在しない背面)には、1つのアイドラ57が押圧されている。アイドラ57は支軸57aを介して傾動部材30に回転可能に支持されている。アイドラ57によって歯付きベルト56のテンションが適切に保持される。上側の第1プーリ59と下側の第2プーリ55との間に掛け渡された伝達ベルトが歯付きベルト56であることから、バックラッシュや滑りを生ずることなく効率のよい動力伝達がなされる。また、傾動部材30の上部側から下側への動力伝達にベルト伝達機構Bが用いられることで、従来のようにギヤの噛み合いのみで伝達する場合や大形のラックにピニオンギヤを噛み合わせて伝達する場合に比して構成の簡略が図られる。
【0055】
微調整機構50による微調整は、傾斜位置決め機構と同じく傾動固定部材9をアンロック操作した状態でなされる。図9,10に示すように、通常の傾斜位置決め機構により切断機本体10を右方へ例えば45°傾動させた状態で、微調整機構50が操作される。先ず、操作部材51を前方へ引き操作して、第1ギヤ53が第2ギヤ54に噛み合わされる。この噛み合わせ状態のまま操作部材51を左方又は右方へ回転させて傾動部材30を左方又は右方へ傾動させることができる。操作部材51を使用者から見て右回りに回転操作すると、傾動部材30が左方へ傾動する。これにより切断機本体10の右傾斜角度が45°に対して小さくなる方向に微調整される。操作部材51を使用者から見て左回りに回転操作すると、傾動部材30が右方へ傾動する。これにより切断機本体10の右傾斜角度が45°より大きくなる方向に微調整される。
【0056】
微調整後、傾動固定部材9をロック操作することで、切断機本体10の微調整位置が固定される。その後、図5に示すように作部材51の引き操作を解除すると、操作部材51及び操作バー52がスプリング58の付勢力により後方へ戻される。これにより第1ギヤ53が後方へ変位して、第2ギヤ54に対する噛み合いが外れる。第1ギヤ53と第2ギヤ54(ギヤ列)の噛み合いが外れることで、切断作業時等に操作部材51が不要に回転操作された場合であっても微調整後の切断機本体10の傾斜位置が誤ってずれてしまうことを防止できる。また、第1ギヤ53と第2ギヤ54の噛み合いが外れることで、傾動部材30の傾動動作に対する動作抵抗が低減される。
【0057】
図11,12に示すように傾斜位置決め機構により切断機本体10を左方へ例えば45°傾動させた状態で、微調整機構50が操作される。上記と同様操作部材51を前方へ引き操作して、第1ギヤ53が第2ギヤ54に噛み合わされる。この噛み合わせ状態のまま、操作部材51を使用者から見て右回りに回転操作すると傾動部材30が左方へ傾動する。これにより切断機本体10の左傾斜角度が45°より大きくなる方向に微調整される。逆に、操作部材51を使用者から見て左回りに回転操作すると、傾動部材30が右方へ傾動する。これにより切断機本体10の左傾斜角度が45°より小さくなる方向に微調整される。微調整後、傾動固定部材9をロック操作することで、切断機本体10の微調整位置が固定される。また、操作部材51の引き操作を解除することで、操作部材51がベルト伝達機構Bから切り離される。これにより操作部材51の不用意な回転操作によっても微調整後の切断機本体10の傾斜位置が誤ってずれてしまうことを防止できる。
【0058】
以上のように構成した第1実施形態の卓上切断機1によれば、切断機本体10の傾斜位置は傾動固定部材9を解除状態にして操作部材51の回転操作により動作するベルト伝達機構Bにより調整される。傾動部材30の上部に第1プーリ59が回転可能に支持され、第1プーリ59の下方に第2プーリ55が傾動軸線Jに同軸且つ回転不能に固定されている。従って、操作部材51の回転操作により第1プーリ59が回転されることで、第2プーリ55に対する歯付きベルト56の噛み合い位置が変化して傾動部材30が左右に傾動する。これにより切断機本体10の傾斜位置が微調整される。ベルト伝達機構Bを用いたことで微調整機構50の構成のコンパクト化及び簡略化が図られる。また、ベルト伝達機構Bの動力伝達部材として歯付きベルト56を有することから、滑りやバックラッシュが低減されて効率のよい動力伝達がなされる。
【0059】
第1実施形態の卓上切断機によれば、微調整機構50を操作する操作部材51がスライド支持部Sの前面であって、使用者に近い部位に配置されている。これにより微調整機構50の良好な操作性が確保される。
【0060】
また、第2プーリ55は、第1プーリ59よりも大きな径を有する。これにより、操作部材51の回転操作が減速されることから、操作部材51の小さな回転操作力で切断機本体10の傾斜位置が精確に微調整される。
【0061】
さらに第1実施形態によれば、操作部材51と第1プーリ59との間に、第1ギヤ53と第2ギヤ54との噛み合いからなるギヤ列が介在されている。操作部材51の軸方向の移動操作によりギヤ列の噛み合いが分離される。非操作時に第1ギヤ53と第2ギヤ54との噛み合いが分離されることで、切断機本体10の傾斜位置の不用意な微調整操作が防止される。また、微調整機構50の非操作時にギヤ列の噛み合いが分離されることで、ギヤ列の噛み合いによる動作抵抗が発生しない。これにより、通常の傾斜位置決め操作時に傾動部材30の傾動動作に対して動作抵抗となることがなく、この点で傾斜位置決め操作の操作性が確保される。
【0062】
使用者が操作部材51をスプリング58に抗して手前に引っ張ることで第1ギヤ53が第2ギヤ54に噛み合わされる。使用者が操作部材51の引き操作を解除すればスプリング58の付勢力により第1ギヤ53が後方へ変位して第2ギヤ54に対する噛み合いが自動的に解除される。このため、通常の傾斜位置決め操作時に微調整機構50の特別な解除操作を必要としない。この点で従来より操作性が良くなっている。
【0063】
第1実施形態によれば、微調整機構50の操作部材51がスライド支持部Sの前部に配置され、切断機本体10の傾斜位置をロックアンロック操作するための傾動固定部材9がテーブル延長部3aの前面に配置されている。操作部材51と傾動固定部材9が何れも作業者側に突出して配置されていることから、傾斜位置の固定操作と微調整操作の双方について良好な操作性が確保される。
【0064】
操作部材51は、スライド支持部Sの使用者側の端部を超えた前部に配置されている。操作部材51の操作は、スライド支持部Sに挿通された操作バー52を介して後方のベルト伝達機構Bに伝達される。これにより、切断機本体10のスライド位置に関わらず、操作部材51の良好な操作性が確保される。
【0065】
スライド支持部Sは上下に並列配置された2本のスライドバー24,25を有する。下側のスライドバー25の内周側に操作バー52が挿通されている。これにより、操作部材51の良好な操作性を確保しつつ、構成の簡略化が図られる。また、上側のスライドバー24の内周側を経て操作力を伝達する場合に比して歯付きベルト56を短くすることができる。この点でも構成の簡略化が図られる。
【0066】
以上説明した第1実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、第1実施形態では、微調整機構50の操作部材51がスライド支持部Sの前部に配置された構成を例示したが、傾動部材30の後面に操作部材61を配置する構成としてもよい。係る第2実施形態に係る卓上切断機1が図13以降に示されている。第2実施形態に係る卓上切断機1は、切断機本体10の左右傾斜位置の微調整機構60について第1実施形態とは異なっている。変更を要しない部材及び構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。
【0067】
図13~16に示すように第2実施形態の卓上切断機1は、傾動部材30の後面に操作部材61を有する。なお、図では傾動部材30の蓋部32を取り外した状態が示されている。蓋部32の図示は省略されている。図17~19に示すように操作部材61は、支軸63を介して傾動部材30の後面側に軸回りに回転可能且つ軸方向に変位可能に支持されている。操作部材61は支軸63の後部に固定されている。操作部材61は、スプリング64により後方へ変位する方向に付勢されている。スプリング64には圧縮ばねが用いられている。
【0068】
支軸63に第1ギヤ62が結合されている。第1ギヤ62には平歯車が用いられている。第1ギヤ62は、軸回りの回転及び軸方向の変位について支軸63に一体化されている。第1ギヤ62は、操作部材61の軸回りの回転操作により一体で回転し、軸方向の移動操作により一体で軸方向に変位する。操作部材61の下方に、第2ギヤ65が配置されている。第2ギヤ65には、第1ギヤ62が噛み合い可能で、第1ギヤ62よりも大きな径の平歯車が用いられている。第2ギヤ65は支軸66を介して回転可能な状態で傾動部材30の後面に支持されている。
【0069】
図17に示すように操作部材61を前方へ移動操作しない状態(微調整機構60の非操作時)では、操作部材61がスプリング64の付勢力により後方へ変位する。このため、第2ギヤ65に対する第1ギヤ62の噛み合いが外れる。図18に示すように操作部材61をスプリング64に抗して前方へ移動操作すると、第1ギヤ62が第2ギヤ65に噛み合わされる。噛み合わせた状態で操作部材61を回転操作することで第2ギヤ65が回転する。第2ギヤ65の前面には第1プーリ69が同軸かつ一体に設けられている。第1実施形態と同じく、第1プーリ69の下方に第2プーリ67が配置されている。第1プーリ69と第2プーリ67との間に歯付きベルト68が掛け渡されている。
【0070】
第2プーリ67には、第1プーリ69よりも大きな径の歯付きプーリが用いられている。第2プーリ67は、1本の固定ねじ67aにより、傾動軸22の後端部に結合されている。傾動軸22の後端部には平坦面22cが設けられている。平端面22cが第2プーリ67の内周孔に係合されることで、第2プーリ67が傾動軸22に対して回転不能に結合されている。これにより、第2プーリ67が、傾動しない側(テーブル3側)である傾動受け部21に回転不能且つ軸方向に移動不能に固定されている。第2プーリ67の中心は、傾動部材30の傾動中心(傾動軸22の傾動軸線J)に一致している。第2プーリ67に対する歯付きベルト68の噛み合い位置が変化することで、傾動部材30が傾動軸線Jを中心にして左右に傾動される。第2プーリ67に対する歯付きベルト68の噛み合い位置の変化は、第1プーリ66の回転によりなされる。第1プーリ66の回転は操作部材61の回転操作によりなされる。
【0071】
第2実施形態では、第1実施形態の操作部材51に代えて操作部材61を有する。このため、第2実施形態では、2本のスライドバー24,25の前端部を結合する前端部材28には第1実施形態の挿通孔28aが省略されている。このため、第2実施形態では下側のスライドバー25の前端部も前端部材28により塞がれている。第1実施形態と第2実施形態で、前端部材28に同位の符合28を用いているが、第1実施形態では挿通孔28aを有し、第2実施形態では係る挿通孔を有しない点で異なる前端部材28が用いられている。第2実施形態に係る前端部28には、刃具交換時に利用できる六角棒スパナ28bを保持しておくための保持部28cが設けられている。
【0072】
第2実施形態に係る微調整機構50による微調整は、傾斜位置決め機構と同じく傾動固定部材9をアンロック操作した状態でなされる。図20,21に示すように、通常の傾斜位置決め機構により切断機本体10を右方へ例えば45°傾動させた状態で、微調整機構60が操作される。先ず、使用者は傾動部材30の後方に手を伸ばして操作部材61を前方へ押し操作する。これにより、図18に示すように第1ギヤ62が第2ギヤ65に噛み合わされる。この噛み合わせ状態のまま操作部材61を左方又は右方へ回転させて傾動部材30を左方又は右方へ傾動させることができる。これにより切断機本体10の右傾斜角度が45°に対して小さくなる方向若しくは大きくなる方向に微調整される。
【0073】
微調整後、傾動固定部材9をロック操作することで、切断機本体10の微調整位置が固定される。その後、図17に示すように操作部材61の前方への押し操作を解除すると、操作部材61がスプリング64の付勢力により後方へ戻される。これにより第1ギヤ62が後方へ変位して、第2ギヤ65に対する噛み合いが外れる。第1ギヤ62と第2ギヤ65(ギヤ列)の噛み合いが外れることで、切断作業時等に操作部材61が不用意に回転操作された場合であっても微調整後の切断機本体10の傾斜位置が誤ってずれてしまうことを防止できる。また、第1ギヤ62と第2ギヤ65の噛み合いが外れることで、通常の傾斜位置決め時において傾動部材30の傾動動作に対する動作抵抗が低減される。
【0074】
図22,23に示すように傾動支持部に内装した傾斜位置決め機構により切断機本体10を左方へ例えば45°傾動させた状態で、微調整機構60が操作される。上記と同様操作部材61を前方へ押し操作して、第1ギヤ62が第2ギヤ65に噛み合わされる。この噛み合わせ状態のまま、操作部材61を回転操作することで、切断機本体10の左傾斜角度が45°より大きくなる方向若しくは小さくなる方向に微調整される。微調整後、傾動固定部材9をロック操作することで、切断機本体10の微調整位置が固定される。また、操作部材61の押し操作を解除することで、操作部材61がベルト伝達機構Bから切り離される。これにより操作部材51の不用意な回転操作によっても微調整後の切断機本体10の傾斜位置が誤ってずれてしまうことを防止できる。
【0075】
以上説明した第2実施形態の卓上切断機1によれば、操作部材61が、傾動部材30の使用者側とは反対側の後面に配置されている。従って、第1実施形態に比して操作部材61がベルト伝達機構Bにより接近して配置されることで構成の簡略が図られる。
【0076】
第1及び第2実施形態に係る微調整機構50,60は、傾動支持部20に内装した傾斜位置決め機構による直角切り位置や左右45°の傾斜位置の微調整する場合の他、傾斜位置決め機構とは独立して用いることができる。傾動固定部材9をアンロック操作した状態で、切断機本体10を例えば10°、20°等の傾斜角度であって、通常の傾斜位置決め機構では位置決めされない傾斜角度の微調整に用いることができる。
【0077】
第1、第2実施形態にはさらに変更を加えることができる。例えば、下側の第2プーリ55,67については、傾動部材30の全傾動範囲について歯付きベルト56,68が噛み合わされない範囲について噛み合い歯を欠落させることができる。この範囲で第2プーリ55,67の周方向一定領域を欠落させてその軽量化を図ることができる。
【0078】
卓上切断機1として、スライド支持部Sにより切断機本体10を前後にスライド可能なスライドマルノコを例示したが、例示した微調整機構50は係るスライド支持部Sを有しない卓上マルノコにも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
W…被切断材
F…床面
1…卓上切断機(スライドマルノコ)
2…ベース
3…テーブル
3a…テーブル延長部、3b…刃口
5…補助テーブル
6…位置決めフェンス
6a…位置決め面
7…第1ロックプレート
7a…位置決め凹部
8…テーブル固定部材
9…傾動固定部材
10…切断機本体
11…位置決めピン
12…操作レバー
14…中間ロッド
16…押圧板
20…傾動支持部
20a…ストッパねじ(直角位置決め用)、20b…ストッパねじ(傾斜位置決め用)
21…傾動受け部
21a…目盛り板、21b…支軸部
22…傾動軸
22a…固定ナット、22b…スラストベアリング、22c…平坦面
J…傾動軸線
S…スライド支持部
24…スライドバー(上側)
25…スライドバー(下側)
26…スライド基台部
27…揺動支軸
28…前端部材
28a…挿通孔、28b…六角棒スパナ、28c…保持部
29…ストッパねじ
30…傾動部材(第1、第2実施形態)
31…傾動部
31a…指針、31b…挿通溝孔
32…蓋部
35…本体ベース
36…固定カバー
36a…白抜き矢印
37…刃具
39…可動カバー
40…モータハウジング(電動モータ)
40a…ギヤケース(減速ギヤ列)
41…ハンドル部
41a…ロックオフボタン
42…スイッチレバー
43…バッテリ取り付け部
44…バッテリパック
45…キャリングハンドル
45a…把持部
46…集塵ガイド
47…ホース接続口
48…アダプタ収容部
48a…通信アダプタ
50…微調整機構(第1実施形態)
B…ベルト伝達機構
51…操作部材
51a…連結部材
52…操作バー
52a…支持部材
53…第1ギヤ
54…第2ギヤ
55…第2プーリ
56…歯付きベルト
57…アイドラ
57a…支軸
58…スプリング(圧縮コイルバネ)
59…第1プーリ
60…微調整機構(第2実施形態)
61…操作部材
62…第1ギヤ
63…支軸
64…スプリング(圧縮コイルバネ)
65…第2ギヤ
66…支軸
67…第2プーリ
68…歯付きベルト
69…第1プーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23