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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B65D77/20 G
B65D77/20 H
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020203451
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021176776
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019223964
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020080369
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
(72)【発明者】
【氏名】中野 康宏
(72)【発明者】
【氏名】星川 理絵
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112112(JP,A)
【文献】特開2017-065742(JP,A)
【文献】特開2019-112113(JP,A)
【文献】特開昭62-235080(JP,A)
【文献】特開2000-062858(JP,A)
【文献】特開2017-114493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 81/34
B65D 51/16
B65D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部、および前記凹部の周縁から延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合され、前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備え、
前記内部空間の圧力に対する前記フランジ部の反り可能な角度が、前記フランジ部の周方向の第1の区間において、圧力をかける前の状態に対して-110°以上+110°以下であり、
複数の角部を有する形状に形成される前記フランジ部の内縁において、1つの角部だけが、他の角部に対して反転して、前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出して形成され、
前記第1の区間は、前記反転した角部を含む容器。
【請求項2】
前記フランジ部の厚みは、200μm以上900μm以下である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記フランジ部の厚みは、50μm以上600μm以下である、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記フランジ部の幅は、2mm以上25mm以下である、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記フランジ部の全周に対する前記第1の区間の割合は、1%以上50%以下である、請求項1または請求項2に記載の容器。
【請求項6】
前記第1の区間では、前記接合領域に弱シール部が形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記接合領域は前記第1の区間および前記周方向の第2の区間のそれぞれで前記フランジ部の内縁に沿って形成され
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記第1の区間では、前記周方向の第2の区間に比べて前記接合領域が前記フランジ部
の幅方向の内側に位置し、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記第1の区間と前記第2の区間との間で、前記フランジ部の幅方向における前記接合領域の内縁の位置の差は0.5mm以上12mm以下である、請求項8に記載の容器。
【請求項10】
前記容器本体は、引張試験における1%変位時の荷重が5N以上500N以下のシートで形成される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
前記容器本体は、引張試験における1%変位時の荷重が5N以上60N以下のシートで形成される、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記凹部の底面における厚みは、100μm以上2000μm以下である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項13】
前記凹部の底面における厚みは、15μm以上600μm以下である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の容器。
【請求項14】
前記凹部および前記蓋体によって形成される内部空間の容積は3cm以上1500cm以下である、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
前記凹部および前記蓋体によって形成される内部空間の容積は3cm以上100m以下である、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記第1の区間では前記凹部の外側と前記フランジ部との境目を含む領域にリブが形成され、前記周方向の第2の区間では前記リブが形成されず、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の容器。
【請求項17】
前記第1の区間では前記フランジ部の外側にスカートが形成され、前記周方向の第2の区間では前記スカートが形成されず、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の容器。
【請求項18】
前記第1の区間において、前記凹部と前記フランジ部との間の移行部分の断面が、前記周方向の第2の区間における前記移行部分の断面曲率半径よりも大きな曲率半径を有し、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の容器。
【請求項19】
前記内部空間に圧力をかけたときの前記フランジ部の反り角度が、圧力をかける前の状態に対して、前記第1の区間において、前記周方向の第2の区間の角部を除く区間の反り角度よりも小さく、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の容器。
【請求項20】
凹部、および前記凹部の周縁から延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合され、前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備え、
前記内部空間の圧力に対する前記フランジ部の反り可能な角度が、前記フランジ部の周方向の第1の区間において、圧力をかける前の状態に対して-140°以上+140°以下であり、
前記フランジ部の厚みは、50μm以上900μm以下であり、
前記フランジ部の幅は、2mm以上25mm以下であり、
前記フランジ部の全周に対する前記第1の区間の割合は、1%以上50%以下であり、
前記第1の区間では、前記接合領域に弱シール部が形成され、
前記接合領域は前記第1の区間および前記周方向の第2の区間のそれぞれで前記フラン
ジ部の内縁に沿って形成され、
前記凹部の底面における厚みは、15μm以上600μm以下であり、
複数の角部を有する形状に形成される前記フランジ部の内縁において、1つの角部だけが、他の角部に対して反転して、前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出して形成され、
前記第1の区間は、前記反転した角部を含み、
前記第2の区間は、前記第1の区間に比べて前記フランジ部の内縁が前記凹部の平面形状の図心に向かってせり出していない区間である容器。
【請求項21】
前記反転した角部の両側に隣接する2つの角部が、前記反転した角部の反対側の角部よりも大きな曲率半径で形成される、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
指による押圧によってシール部の注出起点部が破壊されて液状物を注出することができる液状物収容容器に関する技術が、例えば特許文献1および特許文献2に記載されている。特許文献1には、凹部およびフランジ部が形成された容器本体と、凹部の開口を覆う蓋体とを有し、フランジ部に周状のシール部が形成され、シール部の一部に容器本体への指による押圧によって剥離して液状物を注出可能な注出起点部が形成される液状物収容容器が記載されている。特許文献2には、さらに容器本体の底面に押圧補助部として凸部が形成される液状物収容容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-65742号公報
【文献】特開2017-65744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1および特許文献2に記載されたような容器では、容易に押しつぶせるように容器本体の剛性を低くすることが望ましい。そのために、軟質の樹脂シートの使用や、樹脂シートの薄肉化などの手法が用いられる。ところが、その結果として、容器本体の凹部を外側から押し潰して凹部の内部空間の圧力が高まったときに、本来は容器本体の底面に平行であるフランジ部に反りが生じる場合がある。フランジ部に反りが生じると、容器本体と蓋材とを引き剥がす向きに力がかかりにくくなるため、内容物が意図された位置から抽出されなかったり、押圧による注出が困難になったりする可能性がある。
【0005】
また、例えば内容物の加熱によって発生した蒸気を所定の通蒸部から排出する通蒸容器でも同様の事情が存在する。例えば材料使用量の削減のために樹脂シートを薄肉化すると、内容物から蒸気が発生して内部空間の圧力が高まったときにフランジ部に反りが生じ、蒸気が意図された位置から排出されなかったり、容器に意図しない変形が生じたりする可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、フランジ部の反りを制御することによって、内部空間の圧力による接合領域の破壊を意図された位置で生じさせることを可能にする容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]凹部、および凹部の周縁から延出するフランジ部を含む容器本体と、フランジ部に形成される接合領域で容器本体に接合され、凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備え、内部空間の圧力に対するフランジ部の反り可能な角度が、フランジ部の周方向の第1の区間において、圧力をかける前の状態に対して-110°以上+110°以下である容器。
[2]フランジ部の厚みは、50μm以上2000μm以下である、[1]に記載の容器。
[3]フランジ部の厚みは、50μm以上600μm以下である、[2]に記載の容器。[4]フランジ部の幅は、2mm以上25mm以下である、[1]に記載の容器。[5]フランジ部の全周に対する第1の区間の割合は、1%以上50%以下である、[1]または[2]に記載の容器。
[6]第1の区間では、接合領域に弱シール部が形成される、[1]から[3]のいずれか1項に記載の容器。
[7]第1の区間では、周方向の第2の区間に比べてフランジ部の内縁が凹部の平面形状の図心に向かってせり出している、[1]から[6]のいずれか1項に記載の容器。
[8]接合領域は第1の区間および周方向の第2の区間のそれぞれでフランジ部の内縁に沿って形成される、[1]から[7]のいずれか1項に記載の容器。
[9]フランジ部の平面形状は、1以上128以下の角部を有し、第1の区間は、角部に位置する、[1]から[8]のいずれか1項に記載の容器。
[10]容器本体は、引張試験における1%変位時の荷重が5N以上500N以下のシートで形成される、[1]から[9]のいずれか1項に記載の容器。
[11]容器本体は、引張試験における1%変位時の荷重が5N以上60N以下のシートで形成される、[10]に記載の容器。
[12]凹部の底面における厚みは、100μm以上2000μm以下である、[1]から[11]のいずれか1項に記載の容器。
[13]凹部の底面における厚みは、15μm以上600μm以下である、[1]から[11]のいずれか1項に記載の容器。
[14]凹部および蓋体によって形成される内部空間の容積は3cm以上1500cm以下である、[1]から[13]のいずれか1項に記載の容器。
[15]凹部および蓋体によって形成される内部空間の容積は3cm以上100m以下である、[14]に記載の容器。
[16]第1の区間では、周方向の第2の区間に比べて接合領域がフランジ部の幅方向の内側に位置する、[1]から[15]のいずれか1項に記載の容器。
[17]第1の区間と第2の区間との間で、フランジ部の幅方向における接合領域の内縁の位置の差は0.5mm以上12mm以下である、[16]に記載の容器。
[18]第1の区間では凹部の外側とフランジ部との境目を含む領域にリブが形成され、周方向の第2の区間ではリブが形成されない、[1]から[17]のいずれか1項に記載の容器。
[19]第1の区間ではフランジ部の外側にスカートが形成され、周方向の第2の区間ではスカートが形成されない、[1]から[18]のいずれか1項に記載の容器。
[20]第1の区間において、凹部とフランジ部との間の移行部分の断面が、周方向の第2の区間における移行部分の断面曲率半径よりも大きな曲率半径を有する、[1]から[19]のいずれか1項に記載の容器。
[21]内部空間に圧力をかけたときのフランジ部の反り角度が、圧力をかける前の状態に対して、第1の区間において、周方向の第2の区間の角部を除く区間の反り角度よりも小さい、[1]から[20]のいずれか1項に記載の容器。
[22]凹部、および凹部の周縁から延出するフランジ部を含む容器本体と、フランジ部に形成される接合領域で容器本体に接合され、凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備え、内部空間の圧力に対するフランジ部の反り可能な角度が、フランジ部の周方向の第1の区間において、圧力をかける前の状態に対して-140°以上+140°以下であり、フランジ部の厚みは、50μm以上2000μm以下であり、フランジ部の幅は、2mm以上25mm以下であり、フランジ部の全周に対する第1の区間の割合は、1%以上50%以下であり、第1の区間では、接合領域に弱シール部が形成され、第1の区間では、周方向の第2の区間に比べてフランジ部の内縁が凹部の平面形状の図心に向かってせり出し、接合領域は第1の区間および周方向の第2の区間のそれぞれでフランジ部の内縁に沿って形成され、凹部の底面における厚みは、15μm以上600μm以下である容器。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、第1の区間でフランジ部が反りにくいことによって、内部空間の圧力によって接合領域が破壊されやすくなる。従って、内部空間の圧力による接合領域の破壊を意図された位置で生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
図2A図1に示す容器のIIA-IIA線に沿った断面図である。
図2B図1に示す容器のIIB-IIB線に沿った断面図である。
図3A図2Aの断面における圧力の作用について説明するための図である。
図3B図2Bの断面における圧力の作用について説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態の変形例に係る容器の平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る容器の平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る容器の平面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る容器の平面図である。
図8図7に示す容器のVIIIA-VIIIA線およびVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。
図9図7に示す容器のフランジの反りやすさについて説明するための図である。
図10A】本発明の第3の実施形態に係る容器の他の例を示す図である。
図10B図10AのB-B線に沿った断面図である。
図11A】本発明の第3の実施形態に係る容器の他の例を示す図である。
図11B図11AのB-B線に沿った断面図である。
図12A】本発明の第3の実施形態に係る容器の他の例を示す図である。
図12B図12AのB-B線に沿った断面図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る容器の平面図である。
図14図13に示す容器のフランジの反りやすさについて説明するための図である。
図15A】本発明の第4の実施形態に係る容器の他の例を示す図である。
図15B図15AのB-B線に沿った断面図である。
図16A】本発明の第4の実施形態に係る容器の他の例を示す図である。
図16B図16AのB-B線に沿った断面図である。
図17A】本発明の第5の実施形態に係る容器の例を示す側面図である。
図17B図17AのB-B線に沿った断面図である。
図18A】本発明の第5の実施形態に係る容器の例を示す側面図である。
図18B図18AのB-B線に沿った断面図である。
図19A】本発明の第5の実施形態に係る容器の例を示す側面図である。
図19B図19AのB-B線に沿った断面図である。
図20】本発明の実施形態で適用可能な他の形状の例を示す図である。
図21】本発明の実施例における反り可能な角度の測定について説明するための図である。
図22A】本発明の実施例における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。
図22B】本発明の実施例における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。
図23A】本発明の実施例における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。
図23B】本発明の実施例における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。
図24A】本発明の第4の実施形態に係る容器のさらに他の例を示す図である。
図24B図24AのB-B線に沿った断面図である。
図24C図24AのC-C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。図示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁から延出するフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、凹部111の周縁に沿ってフランジ部112に形成される接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。本実施形態では、フランジ部112の矩形状の平面形状の1つの角部にあたる区間S1で、それ以外の区間S2に比べて接合領域140がフランジ部112の幅方向内側に位置する。なお、本明細書において、区間S1,S2はフランジ部112の周方向の第1の区間および第2の区間を意味する。
【0012】
容器本体110は、例えば樹脂組成物で形成される単層のシートまたは多層の積層体を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。具体的には、例えば、容器本体110は、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂組成物で形成される基材層と、オレフィン系樹脂で形成される表面層とを含む積層体を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものであってもよい。この場合、積層体の基材層は、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層および表面下層との間では、例えば剛性が異なる。基材層には、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。基材層は、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。基材層は、例えば剛性が異なる複数の層を含んでもよい。
【0013】
一方、容器本体110を形成する積層体の表面層は、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂組成物で形成される。具体的には、例えば、表面層はエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。表面層は、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
【0014】
なお、容器本体110の平面形状は矩形として例示されているが、円形などの他の形状であってもよい。他の実施形態において、容器本体110を形成する積層体は接着層やガスバリア層などの追加の層を含んでもよい。
【0015】
蓋体130は、例えば樹脂組成物で形成される単層または多層のフィルムで形成される。具体的には、例えば、蓋体130は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される外層と、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成されるシール層とを含むフィルム状の積層体で形成されてもよい。他の例では、蓋体をフィルムではなく容器本体110と同様の成形体としてもよい。例えば、蓋体130は、外層およびシール層を含むフィルム状の積層体からなる。外層は、蓋体の表側、すなわち容器本体に面しない側に位置し、蓋体に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。シール層は、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。他の実施形態では、蓋体130を形成する積層体にも追加の層が含まれてもよい。
【0016】
図2Aおよび図2Bは、図1に示す容器のIIA-IIA線およびIIB-IIB線に沿った断面図である。なお、これらの断面図では、容器100の内部空間SPの圧力が上昇したときに作用する、蓋体130を持ち上げる力Fが示されている。上述のように、図2Aに示した区間S1では接合領域140がフランジ部112の幅方向内側、つまり凹部111の周縁の近くに位置する。一方、図2Bに示した区間S2では接合領域140がフランジ部112の幅方向外側、つまり凹部111の周縁から遠くに位置する。
【0017】
さらに、図2Aおよび図2Bでは、フランジ部112の断面を梃子と捉えた場合の力点P1(力Fが作用する接合領域140の内縁)、支点P2(凹部111の内側とフランジ部112との境目の凸角部)および作用点P3(凹部111の外側とフランジ部112との境目の凹角部)が示されている。区間S1と区間S2とでは、支点P2および作用点P3の位置は同じであるが、力点P1の位置が異なる。図2Aに示すように、区間S1では、接合領域140が凹部111の周縁の近くに位置するため、力点P1から支点P2および作用点P3までの距離が短い。一方、図2Bに示すように、区間S2では、接合領域140が凹部111の周縁から遠くに位置するため、力点P1から支点P2および作用点P3までの距離が長い。
【0018】
図3Aおよび図3Bは、図2Aおよび図2Bの断面における圧力の作用について説明するための図である。上述のように、図3Aに示す区間S1では力点P1から支点P2までの距離が短いため、作用点P3で発生するモーメントは小さく、フランジ部112には反りが生じにくい。フランジ部112の変形が生じにくい結果、区間S1では力Fが蓋体130をフランジ部112から引き剥がし、接合領域140を破壊するように作用する。従って、区間S1では内部空間SPの圧力が上昇したときに接合領域140が破壊されることによって容器本体110と蓋体130との間が開放され、内部空間SPが外部空間に連通することによって内容物の注出や蒸気の排出が可能になる。
【0019】
一方、図3Bに示す区間S2では力点P1から支点P2までの距離が長いため、作用点P3で発生するモーメントが大きく、フランジ部112に反り、すなわち蓋体130とともに上方に持ち上げられる変形が生じやすい。区間S2ではフランジ部112が変形して蓋体130とともに上方に持ち上げられる結果、力Fが蓋体130をフランジ部112から引き剥がすようには作用しない。従って、区間S1では内部空間SPの圧力が上昇しても接合領域140が破壊されにくい。
【0020】
本実施形態では、力Fが加えられたフランジ部112の周方向の区間S1でのフランジ部112の反り変形角度を-140°以上+140°以下、好ましくは-110°以上+110°以下とすることによって、内部空間SPの圧力による接合領域140の破壊を意図された位置(区間S1)で生じさせることができる。これによって、容器100では、フランジ部112上の意図された位置における内容物の注出や蒸気の排出が可能になる。このような効果を得るためには、後述する実施例によって示されるように、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が、区間S1では圧力をかける前の状態に対して-140°以上、好ましくは-110°以上になるように容器本体110の寸法や材料強度、および凹部111の周縁から接合領域140までの距離、区間S1の形状を設定することが好ましい。同様に、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が、区間S1では圧力をかける前の状態に対して+140°以下、好ましくは+110°以下になるように容器本体110の寸法や材料強度、および凹部111の周縁から接合領域140までの距離、区間S1の形状を設定することが好ましい。内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、-90°以上であることがより好ましく、-70°以上であることがさらに好ましく、-50°以上であることがさらに好ましく、-30°以上であることが特に好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、90°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることがさらに好ましく、30°以下であることが特に好ましい。反り可能な角度は、実施例に記載の方法で測定してもよいし、目視で確認してもよい。
【0021】
加えて、上記のように接合領域140の位置を変えることによる効果をより確実に得るためには、フランジ部112の幅を2mm以上25mm以下とし、区間S1と区間S2との間での接合領域140のフランジ部112幅方向位置の差を0.5mm以上12mm以下とすることが好ましい。
【0022】
なお、図1に示されたようにフランジ部112が角部を有する平面形状である場合、角部ではフランジ部112が2つの方向から支えられるため、上記のように接合領域140の位置を変えなくても、角部以外の部分に比べてフランジ部112は反りにくい。しかしながら、例えば矩形の場合に4つある角部のどこで内容物の注出や蒸気の排出が生じるかが予測できないのが不都合である場合には、一部の角部について上記のような構成とすることによって、フランジ部112の反りやすさに差をつけ、意図された1つ、2つまたは3つの角部で内容物の注出や蒸気の排出を生じさせることができる。本実施形態におけるフランジ部の平面形状は、例えば1(例えばティアドロップ形)以上128以下の角部を有する形状であってもよい。
【0023】
図4および図5は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る容器の平面図である。図4に示された例でも、図1の例と同様に、容器100の矩形状の平面形状の1つの角部にあたる区間S1で、それ以外の区間S2に比べて接合領域140がフランジ部112の幅方向内側に位置する。図4の例では、区間S1で接合領域140の平面形状がV字形の突出部を形成している。この場合、図1の例に比べて狭い範囲で、集中的な内容物の注出や蒸気の排出が可能になる。一方、図5の例では、容器100が略円形の平面形状を有する。このように、区間S1が矩形状の角部ではない場合も、区間S1とそれ以外の区間S2との間でフランジ部112の幅方向における接合領域140の位置を変えることによって、上述したようなフランジ部112の反りの制御が可能である。
【0024】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る容器の平面図である。本実施形態では、上記の第1の実施形態で図1に示したものと同形状の容器100のフランジ部112の周方向の区間S1において、接合領域140に弱シール部141が形成される。上述のように、フランジ部112が角部を有する平面形状である場合、角部ではフランジ部112が2つの方向から支えられるため、角部以外の部分に比べてフランジ部112は反りにくい。弱シール部141は、例えば孤立した複数の非接合領域を配列することによって接合領域140の接合強度を弱めた部分である。このような弱シール部141をフランジ部112が反りにくい区間(角部)に配置することによって、弱シール部141における接合領域140の破壊をより確実に生じさせることができる。この場合も、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が、フランジ部112の平面形状における角部の区間において圧力をかける前の状態に対して-140°以上であり、-110°以上であることが好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が、フランジ部112の平面形状における角部の区間において圧力をかける前の状態に対して+140°以下であり、+110°以下であることが好ましい。内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、-90°以上であることがより好ましく、-70°以上であることがさらに好ましく、-50°以上であることがさらに好ましく、-30°以上であることが特に好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、90°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることがさらに好ましく、30°以下であることが特に好ましい。反り可能な角度は、実施例に記載の方法で測定してもよいし、目視で確認してもよい。
【0025】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る容器の平面図である。本実施形態では、角丸矩形状に形成される容器本体110のフランジ部112の内縁において、1つの角部112Cだけが、他の角部112Dよりも大きな曲率半径で形成される。これによって、角部112Cを含む区間S1ではフランジ部112の内縁、およびフランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域140が、他の角部112Dを含む区間S2に比べて凹部111の平面形状の図心Cに近くなる。
【0026】
図8は、図7に示す容器のVIIIA-VIIIA線およびVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。図8(A)に示される区間S1では、フランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域140の内縁から凹部111の平面形状の図心Cまでの距離が短いため、容器100の内部空間SPの圧力が上昇したときに、力Fがフランジ部112の面に対して垂直に近い方向に作用する。一方、図8(B)に示される区間S2では、フランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域140の内縁から図心Cまでの距離が長いため、力Fがフランジ部112の面に対して水平に近い方向に作用する。従って、力Fが作用した場合、区間S2よりも区間S1で接合領域140が破壊されやすくなる。このような部分をフランジ部112が反りにくい区間(角部)に配置することによって、接合領域140の破壊をより確実に生じさせることができる。この場合も、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が、圧力をかける前の状態に対して-140°以上であり、-110°以上であることが好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、圧力をかける前の状態に対して+140°以下であり、+110°以下であることが好ましい。内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、-90°以上であることがより好ましく、-70°以上であることがさらに好ましく、-50°以上であることがさらに好ましく、-30°以上であることが特に好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、90°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることがさらに好ましく、30°以下であることが特に好ましい。反り可能な角度は、実施例に記載の方法で測定する。また、内部空間SPに圧力をかけて内容物を抽出する時の区間S1におけるフランジ部112の反り角度が、抽出時の区間S2のうち角部を除く区間の反り角度よりも小さいことが好ましい。この場合、実施例に記載の方法で角度を測定してもよいし、目視で確認してもよい。
【0027】
図9は、図7に示す容器のフランジの反りやすさについて説明するための図である。フランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域140のうち、曲率半径が大きい角部112Cに沿う円弧状の区間を区間X、他の角部112Dに沿う円弧状の区間を区間Y、区間Xと区間Yとの間の相対的に長さが短い直線状の区間を区間Z、区間Y同士の間の相対的に長さが長い直線状の区間を区間Wとする。この場合、区間の長さは区間W>区間Z>区間X>区間Yの順である。フランジ部112の剛性は区間が短いほど高くなるため、フランジ部112の反りにくさは区間Y>区間X>区間Z>区間Wの順である。一方、凹部111の平面形状の図心Cからの距離dは、区間Z=区間W<区間X<区間Yである。上記のように、図心Cからの距離が短い方が、内部空間SPの圧力が上昇したときに接合領域140が破壊されやすい。これらの作用が重なると各区間における接合領域140の破壊されやすさは以下のようになり、区間X,すなわち曲率半径が大きい角部112Cに沿う円弧状区間で最も接合領域140が破壊されやすくなる。
【0028】
区間X:フランジが比較的反りにくく、図心からの距離も比較的短いため、接合領域が破壊されやすい
区間Y:フランジは最も反りにくいが、図心からの距離が長いため、接合領域は破壊されにくい
区間Z:図心からの距離が短いが、フランジが反りやすいため、接合領域は破壊されにくい
区間W:図心からの距離が短いが、フランジが最も反りやすいため、接合領域は破壊されにくい
【0029】
以下、本発明の第3の実施形態に係る容器の他の例について説明する。図10Aおよび図10Bに示された例では、曲率半径が大きい角部112Cに接する部分で、容器本体110の凹部111の底面に側面にかけて傾斜面111Sが形成される。図示された例において、傾斜面111Sは、角部112Cの両側に隣接する2つの角部112Dを結ぶ対角線付近で凹部111の底面が折れ曲がり、角部112Cに向かって立ち上がることによって形成される。図10Bに示されるように、傾斜面111Sは必ずしも角部112Cに達していなくてもよく、凹部111とフランジ部112との間の移行部分は、角部112Cおよび角部112Dで同様に形成される。図10Aおよび図10Bに示された例では、傾斜面111Sが形成されることによって、例えばユーザが傾斜面111Sに親指を当てて凹部111を押し潰せばよいというアフォーダンスが得られ、凹部111の底面に力を加えて押し潰すことが容易になる。
【0030】
図11Aおよび図11Bに示された例では、容器本体110の凹部111の側面に溝部111Gが形成される。図示された例において、溝部111Gは、曲率半径が大きい角部112Cとは反対側の角部に形成される。溝部111Gが形成されることによって、凹部111の側面に力を加えて押し潰すことが容易になる。
【0031】
図12Aおよび図12Bに示された例では、上記で図10Aおよび図10Bを参照して説明したのと同様の傾斜面111Sに加えて、容器本体110の凹部111の側面に水平リブ113が形成される。水平リブ113は、曲率半径が大きい角部112Cに沿って形成される。後述するように、水平リブ113を形成することによってフランジ部112がより反りにくくなる。
【0032】
(第4の実施形態)
図13は、本発明の第4の実施形態に係る容器の平面図である。本実施形態では、角丸矩形状に形成される容器本体110のフランジ部112の内縁において、1つの角部112Eだけが、他の角部112Dに対して反転して、凹部111の平面形状の図心に向かってせり出して形成される。これによって、角部112Eを含む区間S1ではフランジ部112の内縁、およびフランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域が、他の角部112D含む区間S2に比べて凹部111の平面形状の図心Cに近くなる。反転した角部112Eを含む区間S1では、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度が圧力をかける前の状態に対して-110°以上であることが好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、圧力をかける前の状態に対して+110°以下であることが好ましい。内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、-90°以上であることがより好ましく、-70°以上であることがさらに好ましく、-50°以上であることがさらに好ましく、-30°以上であることが特に好ましい。また、内部空間SPの圧力に対するフランジ部112の反り可能な角度は、90°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることがさらに好ましく、30°以下であることが特に好ましい。反り可能な角度は、実施例に記載の方法で測定してもよいし、目視で確認してもよい。
【0033】
図14は、図13に示す容器のフランジの反りやすさについて説明するための図である。フランジ部112の内縁に沿って形成される接合領域140のうち、反転した角部112Eに沿う円弧状の区間を区間X、他の角部114Dに沿う円弧状の区間を区間Y、区間Xと区間Yとの間の相対的に長さが短い直線状の区間を区間Z,区間Y同士の間の相対的に長さが長い直線状の区間を区間Wとする。この場合、区間の長さは区間W>区間Z≒区間X>区間Yである。フランジ部112の剛性は区間が短いほど高くなるため、フランジ部112の反りにくさは区間Y>区間X≒区間Z>区間Wの順である。一方、凹部111の平面形状の図心Cからの距離dは、区間X<区間W=区間Z<区間Yである。上記で図8を参照して説明したように、図心Cからの距離が短い方が、内部空間SPの圧力が上昇したときに接合領域140が破壊されやすい。これらの作用が重なると各区間における接合領域140の破壊されやすさは以下のようになり、区間X,すなわち曲率半径が大きい角部112Cに沿う円弧状区間で最も接合領域140が破壊されやすくなる。
【0034】
区間X:フランジが比較的反りにくく、図心からの距離が最も短いため、接合領域が破壊されやすい
区間Y:フランジは最も反りにくいが、図心からの距離が最も長いため、接合領域は破壊されにくい
区間Z:フランジは比較的反りにくいが、図心からの距離が長いため、接合領域は破壊されにくい
区間W:フランジが最も反りやすく、図心からの距離も長いため、接合領域は破壊されにくい
【0035】
以下、本発明の第4の実施形態に係る容器の他の例について説明する。図15Aおよび図15Bに示された例では、反転した角部112Eに接する部分で、容器本体110の凹部111の底面から側面にかけて傾斜面111Sが形成される。図示された例において、傾斜面111Sは、角部112Eの両側に隣接する2つの角部112Dを結ぶ対角線付近で凹部111の底面が折れ曲がり、角部112Eに向かって立ち上がることによって形成される。図15Bに示されるように、傾斜面111Sは必ずしも角部112Eに達していなくてもよく、凹部111とフランジ部112との間の移行部分は、角部112Eおよび角部112Dで同様に形成される。図15Aおよび図15Bに示された例では、傾斜面111Sが形成されることによって、凹部111の底面に力を加えて押し潰すことが容易になる。
【0036】
図16Aおよび図16Bに示された例では、容器本体110の凹部111の側面に溝部111Gが形成される。図示された例において、溝部111Gは、反転した角部112Eとは反対側の角部に形成される。溝部111Gが形成されることによって、凹部111の側面に力を加えて押し潰すことが容易になる。
【0037】
(第5の実施形態)
図17Aから図19Bは、本発明の第5の実施形態に係る容器の3つの例を示す側面図および断面図である。図17B図18Bおよび図19Bは、それぞれ図17A図18Aおよび図19AのB-B線、B-B線、およびB-B線に沿った断面図である。図17Aおよび図17Bに示す例では、フランジ部112の周方向の区間S1で凹部111の外側とフランジ部112との境目を含む領域に水平リブ113が形成される。これによって、フランジ部112の反りに対する剛性が向上し、水平リブ113が形成されない区間S2よりもフランジ部112が反りにくくなる。
【0038】
同様に、図18Aおよび図18Bに示す例では、フランジ部112の周方向の区間S1で容器本体110の外側に複数の鉛直リブ114が形成および配列される。これによって、フランジ部112の反りに対する剛性が向上し、鉛直リブ114が形成されない区間S2よりもフランジ部112が反りにくくなる。また、図19Aおよび図19Bに示す例では、フランジ部112の周方向の区間S1でフランジ部112の外側にスカート部115が形成される。これによって、フランジ部112の反りに対する剛性が向上し、スカート部115が形成されない区間S2よりもフランジ部112が反りにくくなる。
【0039】
上記で説明したような本実施形態の例では、区間S1にリブやスカートなどの補強構造を設けることによってフランジ部112が反りにくくなるため、例えば接合領域140のフランジ部112幅方向位置や接合強度が区間S1と区間S2とで同じであったとしても、区間S1で接合領域140が破壊されやすくなる。例えば、本実施形態のような部分的な補強構造を、上記の第1から第3の実施形態で説明したような構造と組み合わせることによって、接合領域140の破壊を区間S1で生じさせる効果をより確実にしてもよい。
【0040】
なお、上記の各実施形態において、容器本体110および蓋体130は、容器の材料として利用可能な各種の樹脂材料、または樹脂材料の積層体によって形成される。樹脂材料には、必要に応じて無機材料などの添加物が加えられてもよい。容器100が凹部111の押圧による内容物の注出のための容器である場合、凹部111は押し潰し可能に形成される。本明細書において、凹部111が押し潰し可能であることは、ユーザが手で加えることが可能な通常の範囲の力による押圧で、凹部111を押し潰して内部空間SPの内圧を上昇させることが可能であることを意味する。
【0041】
具体的には、例えば、凹部111を押し潰し可能に形成するために、容器本体110を形成するシートを、例えばポリエチレンの割合が多い、またはゴム成分を添加した軟質の樹脂材料で形成したり、シートの厚みを薄くしたりしてもよい。シートの軟らかさの指標の一例として、引張試験における1%変位時の荷重が5N~60N程度であれば、押し潰しによる変形の初期における抵抗が小さく、凹部111は押し潰し可能であるといえる。また、ユーザが必ずしも片手で扱わなくてもよい場合、例えば電子レンジ等での通蒸用容器とする場合は、引張試験における1%変位時の荷重が40N~500N程度であれば、シートを薄くすることによる材料使用量の削減効果が得られるとともに、加熱後の容器本体110の変形がより少ないため、食器等として使用しやすくなる。なお、MD(Machine Direction)、またはTD(Transverse Direction)のいずれか一方について引張試験における1%変位時の荷重が上記範囲であればよいが、MD、TDの両方について引張試験における1%変位時の荷重が上記範囲であることがより好ましい。上記の引張試験は、JIS K7161-1、JIS K7161-2、およびJIS K7127に準拠する。引張試験における引張速度は50mm/minである。試験片はJIS K7127の試験タイプ5であり、JIS K7100の2級の標準雰囲気で状態調節される。シートの薄さの指標の一例として、上記のような軟質の樹脂材料でシートを形成した場合において、シートから容器本体110を成形した後の凹部111の底面の厚みが15μm~600μmであれば、凹部111は押し潰し可能であるといえる。また、ユーザが必ずしも片手で扱わなくてもよい場合、例えば電子レンジ等での通蒸用容器とする場合は、シートから容器本体110を成形した後の凹部111の底面の厚みが100μm~2000μmであれば、シートを薄くすることによる材料使用量の削減効果が得られるとともに、加熱後の容器本体110の変形がより少ないため、食器等として使用しやすくなる。
【0042】
また、ユーザが片手で扱いやすいという観点からは、凹部111と蓋体130とによって形成される内部空間SPの容積は3cm以上が好ましく、5cm以上がより好ましくは、10cm以上がさらに好ましく、20cm以上が特に好ましい。また、凹部111と蓋体130とによって形成される内部空間SPの容積は100cm以下が好ましく、70cm以下がより好ましく、50cm以下がさらに好ましく、40cm以下が特に好ましい。この範囲より少ないと容積が少なく、押しつぶしがしづらくなる。一方この範囲より大きいと、片手で扱いにくくなる。ユーザが容器100を保持した状態で安定して内容物を注出するためには、接合領域140の全周に対する区間S1の割合は1%以上にすることが好ましく、4%以上にすることがより好ましい。また、接合領域140の全周に対する区間S1の割合は、50%以下にすることが好ましく、35%以下にすることがより好ましい。
【0043】
一方、容器100が内部空間SPに収納された内容物を加熱するための容器である場合、凹部111はより硬質の樹脂材料、またはより厚いシートで形成されてもよい。この場合、シートから容器本体110を成形した後の凹部111の底面の厚みは600μmを超えてもよく、例えば2000μm以下とすることが好ましい。ユーザが必ずしも片手で扱わなくてもよい場合、例えば電子レンジ等での通蒸用容器とする場合は、内部空間SPの容積は例えば100cmを超えてもよく、例えば1500cm以下とすることが好ましい。この場合の内部空間SPの容積は、より好ましくは3cm以上、さらに好ましくは50cm以上、特に好ましくは150cm以上である。また、この場合の内部空間SPの容積は、より好ましくは1000cm以下、さらに好ましくは700cm以下、特に好ましくは600cm以下である。なお、この場合も、蒸気の排出時、または排出後にユーザが安全に容器100を保持するためには、接合領域140の全周に対する区間S1の割合は1%以上にすることが好ましく、4%以上にすることがより好ましい。また、接合領域140の全周に対する区間S1の割合は、50%以下にすることが好ましく、35%以下にすることがより好ましい。
【0044】
また、シートから容器本体110を成形した後のフランジ部112の厚みについては、ユーザが片手で扱うことが意図された容器100の場合、成形性の向上、および内部空間SPの圧力に対して容器本体110の形状を維持する観点からは、フランジ部112の厚みは50μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。また、押し潰しやすさの観点からは、フランジ部112の厚みは600μ以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
一方、内容物を加熱して蒸気を発生させることが意図された容器100の場合、成形性の向上、および内部空間SPの圧力に対して容器本体110の形状を維持する観点からは、フランジ部112の厚みは200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、400μm以上であることがさらに好ましく、500μm以上であることが特に好ましい。一方、材料使用量を削減する観点からは、フランジ部112の厚みは900μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがさらに好ましく、650μm以下であることが特に好ましい。
【0046】
図20は、本発明の実施形態で適用可能な他の形状の例を示す図である。図示されているように、本発明の実施形態では、フランジ部112を反りにくくする部分において、容器本体の凹部111とフランジ部112との間の移行部分112Rが、緩やかな形状、具体的には断面においてより大きな曲率半径を持った形状で形成されてもよい。具体的には、フランジ部112の周方向の第1の区間において、移行部分112Rの断面が、第2の区間における移行部分の断面曲率半径よりも大きな曲率半径を有してもよい。上記で図2Aおよび図2Bを参照して説明したように、凹部111の内側とフランジ部112との境目の凸角部には、内部空間SPの圧力が上昇したときに作用する力Fに対して梃子の支点が形成される。図20に示された例のような移行部分112Rを形成することによって、支点になりうる部分に作用する力が分散し、梃子の作用が弱まる結果、フランジが反りにくくなる。
【0047】
続いて、本発明の実施例について説明する。フランジ部の反りやすさを定量化するために、本実施例では以下のような方法でフランジ部の耐反り荷重を測定した。
【0048】
図21は、本発明の実施例における反り可能な角度の測定について説明するための図である。本実施例では、破袋強度試験機1000(サン科学社製305-BP)を用いて、バケット1001に収納された容器100の内部空間SPに0.2L/minの送風量で空気を流入させる。空気を流入させる前のフランジ部112に対する角度が0°の位置(フランジの延長面上の位置)にカメラを配置する。カメラで容器100を連続撮影することによって破袋直前の容器100の画像を取得し、その時点におけるフランジ部112の変形角度θ、すなわち空気を流入させる前のフランジ部112の下面に一致するバケット1001の上面と、破袋直前の内部空間SPの圧力によって持ち上げられたフランジ部112の下面との間の角度を画像上で測定した。なお、フランジ部112の厚みは300μmである。
【0049】
実験は、上記で図10Aおよび図10Bを参照して説明した形状の容器(実施例1)および図15Aおよび図15Bを参照して説明した形状の容器(実施例2)について実施した。実施例1、実施例2とも、接合領域140を形成するときのシール圧力は160kgf、シール時間は1.2秒で、シール温度200℃の第1シールとシール温度195℃の第2シールを実施した。
【0050】
実施例1では、第1シールで図10Aに示す曲率半径が大きい角部112Cに沿った区間(図7に示す区間S1、および図9に示す区間Xに対応する)を除く接合領域140をシールした。第2シールでは、上記の区間を含む接合領域140の全体をシールしたが、角部112Cに沿った区間についてはシール盤の幅を狭くし、かつ図6の例に示したような孤立した複数の非接合領域が配列された弱シール部141を形成した。
【0051】
実施例2では、第1シールで図15Aに示す反転した角部112Eに沿った区間(図13に示す区間S1、および図14に示す区間Xに対応する)を除く接合領域140をシールした。第2シールでは、上記の区間を含む接合領域140の全体をシールしたが、角部112Eに沿った区間についてはシール盤の幅を狭くし、かつ図6の例に示したような孤立した複数の非接合領域が配列された弱シール部141を形成した。
【0052】
以下で、実施例1および実施例2における測定結果について説明する。
実施例1では、空気の流入による破袋直前のフランジの変形角度θが、図9に示した区間X(曲率半径が大きい角部に沿う円弧状の区間)で18.3°、区間Z(相対的に長さが短い直線状の区間)で36.2°、区間W(相対的に長さが長い直線状の区間)で35.1°であった。また、パンク圧強度は0.025MPaであった(いずれも3回の測定の平均値)。
一方、実施例2では、空気の流入による破袋直前のフランジの変形角度θが、図14に示した区間X(反転した角部に沿う円弧状の区間)で63.4°、区間Z(相対的に長さが短い直線状の区間)で42.7°、区間W(相対的に長さが長い直線状の区間)で67.8°であった。また、パンク圧強度は0.059MPaであった(いずれも3回の測定の平均値)。
【0053】
図22Aおよび図22Bは、上記の実施例1(図10Aおよび図10Bに示した例)における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。また、図23Aおよび図23Bは、実施例2(図15Aおよび図15Bに示した例)における容器本体の凹部の厚みについて説明するための図である。それぞれの図に示されたA,B,Cの3点における凹部の厚みを以下の表1に示す。表1には、それぞれの例で3つ作製された容器における厚みの平均値および標準偏差が示されている。
【0054】
【表1】
【0055】
上記の実施例1および実施例2の容器のように凹部111の底面が平坦な容器では、表1に示されるように底面(点C)を相対的に厚く、側面(点A,B)を相対的に薄く成形することによって、底面に指をあてて内容物を注出する場合の注出性が良好になる。これは、底面が相対的に薄い場合には注出時に容器本体が凹み、例えばゼリーのような半固体状の内容物の場合は崩れて容器内に残留しやすくなるためである。底面が相対的に厚い場合、底面が平坦な形状に維持されたまま蓋体130に向かって力が作用するため、内容物が崩れにくく、従って容器内に内容物を残留させずに抽出することができる。
【0056】
表2に、本発明の実施形態で利用可能なシートの引張試験における1%変位時の荷重の測定結果を示す。上述のように、凹部を押し潰して利用する容器の場合、上述のように引張試験における1%変位時の荷重として5N~60N程度、シートから容器本体を成形した後の凹部の底面の厚みとして15μm~600μmが例示される。表2に示す実施例3では、表面層を凝集剥離処方(特許第5001962号公報などに記載)とし、基材層がポリプロピレンおよびポリエチレンを含む樹脂組成物で形成される厚み300μmのシートを3つ作製し、それぞれのシートのMDおよびTDで測定した引張試験における1%変位時の荷重の平均値がそれぞれ16.2Nおよび17.9Nで上記の範囲内にある場合に、シートから成形した容器で凹部を押し潰しての使用が良好にできることが確認された。
【0057】
一方、電子レンジ等での通蒸用容器とする場合、引張試験における1%変位時の荷重として40N~500N程度、容器本体を成形した後の凹部の底面の厚みとして100μm~2000μmが例示される。表2に示す実施例4では、表面層を凝集剥離処方とし、基材層がポリプロピレン、ポリエチレンおよびフィラーを含む樹脂組成物で形成される厚み400μmのシートを3つ作製し、それぞれのシートのMDおよびTDで測定した引張試験における1%変位時の荷重の平均値がそれぞれ45.7Nおよび45.2Nで上記の範囲内にある場合に、シートから成形した容器に対して内容物の加熱および通蒸を実施し、その後に食器として利用することが良好にできることが確認された。
【0058】
【表2】
【0059】
図24A図24Bおよび図24Cは、上記で説明した本発明の第4の実施形態に係る容器のさらに他の例を示す図である。図24Aに示されるように、反転した角部112Eの両側に隣接する2つの角部112Fが、反転した角部112Eの反対側の角部112Dよりも大きな曲率半径で形成される。また、図24Bに示されるように、反転した角部112Eに接する部分で容器本体110の凹部111の底面から側面にかけて傾斜面111Sが形成される。傾斜面111Sは、角部112Eの両側に隣接する2つの角部112Fを結ぶ対角線付近で凹部111の底面が折れ曲がり、角部112Eに向かって立ち上がることによって形成される。図24Cに示されるように、傾斜面111S以外の部分において、凹部111の底面は丸みを帯びた形状である。例えば、上記で図15Aおよび図15Bに示された例でも、図24Bおよび図24Cに示されたように傾斜面以外の部分において凹部の底面を丸みを帯びた形状にすることが可能である。また、図24A図24Bおよび図24Cに示された例でも、図15Bに示されたように傾斜面以外の部分において凹部の底面を平面部と角部とを含む形状にすることが可能である。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
100…容器、110…容器本体、111…凹部、112…フランジ部、113…水平リブ、114…鉛直リブ、115…スカート部、130…蓋体、140…接合領域、141…弱シール部、C…図心、F…力、P1…力点、P2…支点、P3…作用点、S1…区間、S2…区間、SP…内部空間。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C