IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許7568496ゴム組成物、ゴム-金属複合体、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム-金属複合体、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20241008BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241008BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20241008BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K5/09
B60C1/00 Z
F16L11/08 A
B65G15/34
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020204548
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091618
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 友紀
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-355415(JP,A)
【文献】特開平11-005638(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02310858(GB,A)
【文献】特開平06-329839(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039375(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
ゴム-金属間接着促進剤と、
チウラム系以外の加硫促進剤と、を含み、
前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン-ジエンゴムと、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選択される1種以上と、の組合せであり、
前記ゴム成分は、当該ゴム成分100質量部中、前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムを20質量部以上含み、
前記ゴム-金属間接着促進剤は、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸は、炭素数が2~25であり、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属は、ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ又はジルコニウムであり、
前記ゴム-金属間接着促進剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である、ゴム組成物(但し、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物を除く)
【請求項2】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属が、ビスマスである、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸が、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸が、炭素数2~20の飽和脂肪族モノカルボン酸である、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記飽和脂肪族モノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸又はオクタデカン酸である、請求項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記チウラム系以外の加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチアゾール系加硫促進剤からなる群より選択される1種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物と、金属部材と、を具える、ゴム-金属複合体。
【請求項8】
請求項に記載のゴム-金属複合体を具える、ホース。
【請求項9】
請求項に記載のゴム-金属複合体を具える、コンベヤベルト。
【請求項10】
請求項に記載のゴム-金属複合体を具える、ゴムクローラ。
【請求項11】
請求項に記載のゴム-金属複合体を具える、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ゴム-金属複合体、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ、タイヤ等のゴム製品の性能を高めるために、例えば、真鍮でメッキされたスチールコード等の補強材を、天然ゴムや合成ゴム等を含むゴム組成物で被覆したゴム-金属複合体を使用している。また、上述した補強材と、被覆ゴム(ゴム組成物)との接着力を向上させるため、ゴム組成物中に接着促進剤を含有させることが知られている。該接着促進剤としては、スチールコード等の金属部材と、被覆ゴムとの接着性を向上できる点から、有機酸コバルト塩(例えば、ステアリン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、ナフテン酸コバルト等)等が一般的に使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、欧州の「化学物質の登録、評価、認可および制限」に関する規則(REACH規則)のように、環境規制の動きがあり、上述した接着促進剤として使用されている有機酸コバルト塩についても、REACH規則等の規制の候補に挙がっている。そのため、非コバルト系の接着促進剤の開発が望まれている。
【0004】
これに対して、例えば、下記特許文献1には、コバルトを含有せずとも、ゴム-金属間に高い接着力を奏することができる接着促進剤や、該接着促進剤を含むゴム組成物及びタイヤに関する技術が開示されている。
【0005】
一方、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ、タイヤ等のゴム製品のゴム部分には、耐久性や外観の観点から、耐候性が求められることがある。これに対して、耐候性を向上させるために、ゴム成分として、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を含むゴム組成物を、ゴム製品のゴム部分に使用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/039375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が検討したところ、ゴム成分として、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を含むゴム組成物に対して、有機酸コバルト塩の代わりに、上記特許文献1に記載の接着促進剤を添加すると、得られるゴム組成物は、金属部材に対する接着性が十分ではないことが分かった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を含むゴム組成物であって、有機酸コバルト塩を含有しなくても、金属部材に対する接着性に優れるゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかるゴム組成物を用いた、ゴムと金属部材との間の接着性に優れたゴム-金属複合体、更には、かかるゴム-金属複合体を具え、優れた耐久性を有する、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0010】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、
ゴム-金属間接着促進剤と、
チウラム系以外の加硫促進剤と、を含み、
前記ゴム成分は、当該ゴム成分100質量部中、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを20質量部以上含み、
前記ゴム-金属間接着促進剤は、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び一般式(A):[(RCOO)MO]Zで表される化合物(2)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸は、炭素数が2~25であり、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属は、ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ又はジルコニウムであり、
前記一般式(A)中、(RCOO)は、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸の残基であり、Mは、ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ又はジルコニウムであり、xは、1以上かつ(Mの価数-1)の整数であり、Zは、下記式(z-1)~(z-4)から選択される構造であることを特徴とする(但し、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物を除く)。
【化1】
かかる本発明のゴム組成物は、有機酸コバルト塩を含有しなくても、金属部材に対する接着性に優れる。
【0011】
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記ゴム成分が、エチレン-プロピレン-ジエンゴムと、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選択される1種以上と、の組合せである。この場合、ゴム組成物の耐久性が向上する。
【0012】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム-金属間接着促進剤が、前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)を含み、該脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属が、ビスマスである。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0013】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム-金属間接着促進剤が、前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)を含み、該脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸が、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸である。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0014】
ここで、前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸が、炭素数2~20の飽和脂肪族モノカルボン酸であることが好ましい。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性がより一層向上する。
【0015】
また、前記飽和脂肪族モノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸又はオクタデカン酸であることが更に好ましい。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性がより一層向上する。
【0016】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム-金属間接着促進剤が、前記化合物(2)を含み、前記一般式(A)中、Mが、ビスマスである。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0017】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム-金属間接着促進剤が、前記化合物(2)を含み、前記一般式(A)中、Zが、前記式(z-1)で表される構造である。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0018】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム-金属間接着促進剤が、前記化合物(2)を含み、前記一般式(A)中、(RCOO)が、炭素数2~20の飽和脂肪族モノカルボン酸の残基である。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0019】
ここで、前記飽和脂肪族モノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸又はオクタデカン酸であることが好ましい。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性がより一層向上する。
【0020】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記チウラム系以外の加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチアゾール系加硫促進剤からなる群より選択される1種以上である。この場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0021】
また、本発明のゴム-金属複合体は、上記のゴム組成物と、金属部材と、を具えることを特徴とする。かかる本発明のゴム-金属複合体は、ゴム(ゴム組成物)と金属部材との間の接着性に優れる。
【0022】
また、本発明のホースは、上記のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のホースは、優れた耐久性を有する。
【0023】
また、本発明のコンベヤベルトは、上記のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のコンベヤベルトは、優れた耐久性を有する。
【0024】
また、本発明のゴムクローラは、上記のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のゴムクローラは、優れた耐久性を有する。
【0025】
また、本発明のタイヤは、上記のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、優れた耐久性を有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を含むゴム組成物であって、有機酸コバルト塩を含有しなくても、金属部材に対する接着性に優れるゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、ゴムと金属部材との間の接着性に優れたゴム-金属複合体、更には、優れた耐久性を有する、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明のゴム組成物、ゴム-金属複合体、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0028】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、ゴム-金属間接着促進剤と、チウラム系以外の加硫促進剤と、を含む。ここで、前記ゴム成分は、当該ゴム成分100質量部中、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを20質量部以上含む。また、前記ゴム-金属間接着促進剤は、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び一般式(A):[(RCOO)MO]Zで表される化合物(2)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸は、炭素数が2~25であり、
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属は、ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ又はジルコニウムであり、
前記一般式(A)中、(RCOO)は、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸の残基であり、Mは、ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ又はジルコニウムであり、xは、1以上かつ(Mの価数-1)の整数であり、Zは、下記式(z-1)~(z-4)から選択される構造であることを特徴とする。
【化2】
但し、本発明のゴム組成物からは、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物を除く。
【0029】
本発明のゴム組成物は、耐候性の観点から、ゴム成分100質量部中、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを20質量部以上含む。
また、本発明のゴム組成物においては、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び一般式(A)で表される化合物(2)からなる群より選択される1種以上を含むゴム-金属間接着促進剤が、金属部材との接着性の向上に寄与する。但し、上述のように、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを含むゴム組成物においては、該ゴム-金属間接着促進剤を含むだけでは、ゴム組成物の金属部材に対する接着は、十分とは言えない。
これに対して、本発明のゴム組成物においては、前記ゴム-金属間接着促進剤に加えて、チウラム系以外の加硫促進剤を含むことで、ゴム-金属間接着促進剤とチウラム系以外の加硫促進剤との相乗効果により、ゴム組成物の金属部材に対する接着性を十分に向上させることができる。
従って、本発明のゴム組成物は、有機酸コバルト塩を含有しなくても、金属部材に対する接着性に優れる。
なお、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを含むゴム組成物において、前記ゴム-金属間接着促進剤と、チウラム系以外の加硫促進剤と、を含んでも、チウラム系加硫促進剤を含むと、ゴム組成物の金属部材に対する接着性が悪化するため、本発明のゴム組成物からは、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物を除くものとする。
【0030】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含む。また、該ゴム成分は、当該ゴム成分100質量部中、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を20質量部以上含む。ゴム組成物が、ゴム成分100質量部中、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを20質量部以上含むことで、ゴム組成物の耐候性が向上する。
【0031】
前記エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)は、エチレン単位と、プロピレン単位と、ジエン単位と、を含む。なお、ジエン単位は、特に限定されない。ジエン単位を構成する単量体の例としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、ビニルノルボスネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)等が挙げられる。
前記EPDMとしては、公知のEPDMを適宜選択して用いることができる。例えば、前記EPDMとしては、乳化重合によって製造されたEPDMや、溶液重合によって製造されたEPDMを商業的に入手できる。また、前記EPDMは、分子鎖末端が変性されたものであっても、変性されていなくてもよい。
前記EPDMは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記EPDMの含有量は、ゴム成分100質量部中、20質量部以上であり、30質量部以上が好ましく、100質量部(即ち、ゴム成分の全てがEPDM)であってもよい。EPDMの含有量が、ゴム成分100質量部中、20質量部未満では、ゴム組成物の耐候性を十分に向上させることができない。一方、EPDMの含有量が、ゴム成分100質量部中、30質量部以上の場合、ゴム組成物の耐候性が更に向上する。
【0033】
前記ゴム成分は、EPDMのみであってもよいし、EPDM以外のゴム成分を含んでもよい。EPDM以外のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらの変性ゴム等を用いることもできる。これらEPDM以外のゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明のゴム組成物のゴム成分は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)と、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びブタジエンゴム(BR)からなる群より選択される1種以上と、の組合せであることが好ましい。天然ゴムは、伸長結晶化し易く、破壊特性(引張特性等)に優れる。また、アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、耐油性に優れる。また、ブタジエンゴムは、耐摩耗性に優れる。そのため、ゴム成分が、EPDMに加えて、NR、NBR及びBRからなる群より選択される1種以上を含むことで、ゴム組成物の耐久性が向上する。
ゴム成分100質量部中の、NR、NBR及びBRの合計含有量は、80質量部以下であるが、ゴム組成物の耐久性の観点から、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0035】
(ゴム-金属間接着促進剤)
本発明のゴム組成物は、ゴム-金属間接着促進剤を含む。該ゴム-金属間接着促進剤は、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び一般式(A):[(RCOO)MO]Zで表される化合物(2)からなる群より選択される1種以上を含む。ゴム組成物が、ゴム-金属間接着促進剤として、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び/又は一般式(A)で表される化合物(2)を含むことで、金属部材との接着性を向上させることができる。
【0036】
--脂肪族カルボン酸の金属塩(1)--
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)において、脂肪族カルボン酸は、炭素数が2~25であり、また、金属塩の金属種は、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、アンチモン(Sb)、銀(Ag)、ニオブ(Nb)又はジルコニウム(Zr)である。
【0037】
前記脂肪族カルボン酸として、炭素数が2以上の脂肪族カルボン酸を用いた場合、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)のゴム成分との相溶性が向上し、その結果として、金属部材とゴム組成物との間の接着力が向上する。また、脂肪族カルボン酸として、炭素数が25以下の脂肪族カルボン酸を用いた場合、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の合成が容易である。ここで、脂肪族カルボン酸の炭素数とは、カルボキシル基の炭素原子数を含めた数を言う。
【0038】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の金属は、ビスマスであることが好ましい。ゴム組成物が、脂肪族カルボン酸のビスマス塩を含む場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0039】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。ゴム組成物が、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の金属塩を含む場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
【0040】
前記脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、飽和の脂肪族モノカルボン酸、不飽和の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
前記飽和の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ナフテン酸等が挙げられる。
また、前記不飽和の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、9-ヘキサデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、11-オクタデセン酸、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸、9,12,15-オクタデカトリエン酸、6,9,12-オクタデカトリエン酸、9,11,13-オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、8,11-エイコサジエン酸、5,8,11-エイコサトリエン酸、5,8,11,14-エイコサテトラエン酸、桐油脂肪酸、アマニ脂肪油酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、樹脂酸、ロジン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0041】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、飽和の脂肪族ジカルボン酸、不飽和の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
前記飽和の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
また、前記不飽和の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0042】
前記脂肪族カルボン酸の中でも、ゴム成分の硫黄架橋に影響を及ぼし難く、コンベヤベルト、ホース、ゴムクローラ、タイヤ等に使用するのに適した、ゴム物性への悪影響が少ないゴム硬化物が得られることから、飽和の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。また、飽和の脂肪族モノカルボン酸の中でも、炭素数2~20の飽和の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸及びオクタデカン酸がより好ましく、2-エチルヘキサン酸が特に好ましい。
また、前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)の脂肪族カルボン酸が、炭素数2~20の飽和脂肪族モノカルボン酸である場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。
また、前記飽和脂肪族モノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸又はオクタデカン酸である場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性がより一層向上する。
【0043】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)としては、2-エチルヘキサン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸銅、2-エチルヘキサン酸アンチモン、2-エチルヘキサン酸銀、2-エチルヘキサン酸ニオブ、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸銅、ネオデカン酸アンチモン、ネオデカン酸銀、ネオデカン酸ニオブ、ネオデカン酸ジルコニウム、ヘキサデカン酸ビスマス、ヘキサデカン酸亜鉛、ヘキサデカン酸銅、ヘキサデカン酸アンチモン、ヘキサデカン酸銀、ヘキサデカン酸ニオブ、ヘキサデカン酸ジルコニウム、オクタデカン酸ビスマス、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸銅、オクタデカン酸アンチモン、オクタデカン酸銀、オクタデカン酸ニオブ、オクタデカン酸ジルコニウム等が挙げられ、これらの中でも、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ヘキサデカン酸ビスマス、オクタデカン酸ビスマスが好ましい。前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記脂肪族カルボン酸の金属塩(1)は、例えば、国際公開第2016/039375号に記載のような、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸(a)と、金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウム)の酸化物(b-1)、金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウム)の水酸化物(b-2)及び金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウム)の炭酸塩(b-3)から選ばれる一種以上と、を直接反応させて製造する方法(直接法)や、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸(a)と水酸化ナトリウムを水の存在下で反応させて脂肪族カルボン酸のナトリウム塩を得た後、該脂肪族カルボン酸のナトリウム塩と、金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウムの金属塩)の硫酸塩(c-1)、金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウム)の塩化物(c-2)及び金属(ビスマス、亜鉛、銅、アンチモン、銀、ニオブ、ジルコニウム)の硝酸塩(c-3)から選ばれる一種以上と、を反応させて製造する方法(複分解法)により得ることができる。
【0045】
--化合物(2)--
前記化合物(2)は、一般式(A):[(RCOO)MO]Zで表される。
【0046】
上記一般式(A)中の(RCOO)は、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸の残基である。炭素数が2以上の脂肪族カルボン酸の残基の場合、化合物(2)のゴム成分との相溶性が向上し、その結果として、金属部材とゴム組成物との間の接着力が向上する。また、炭素数が25以下の脂肪族カルボン酸の残基の場合、化合物(2)の合成が容易であることに加えて、化合物(2)のゴム成分中での分散性や化合物(2)の金属部材表面への吸着性が向上して、金属部材とゴム組成物との間の接着力を向上させる効果が大きくなる。ここで、(RCOO)の炭素数とは、カルボキシル基の炭素原子数を含めた数を言う。
【0047】
前記炭素数2~25の脂肪族モノカルボン酸の残基としては、脂肪族モノカルボン酸の残基が好ましい。該脂肪族モノカルボン酸の残基としては、前記の脂肪族モノカルボン酸由来の残基を好ましく例示できる。
【0048】
前記脂肪族カルボン酸の残基の中でも、化合物(2)がゴム成分を架橋せず、金属近傍への化合物(2)の分散又は金属表面への化合物(2)の吸着をより進行させ、金属部材とゴム組成物との接着を促進する効果をより発現できることから、飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基が好ましい。また、飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基の中でも、炭素数2~20の飽和の脂肪族モノカルボン酸の残基が好ましく、2-エチルヘキサン酸の残基、ネオデカン酸の残基、ヘキサデカン酸の残基及びオクタデカン酸の残基がより好ましい。
また、前記一般式(A)中、(RCOO)が、炭素数2~20の飽和脂肪族モノカルボン酸の残基である場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上する。また、前記飽和脂肪族モノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ヘキサデカン酸又はオクタデカン酸である場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性がより一層向上する。
【0049】
上記一般式(A)中のMは、金属種であり、具体的には、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、アンチモン(Sb)、銀(Ag)、ニオブ(Nb)又はジルコニウム(Zr)である。これら金属種の中でも、金属部材とゴム組成物との接着が良好となる観点から、ビスマスが特に好ましい。
【0050】
また、上記一般式(A)中のxは、1以上かつ(Mの価数-1)の整数である。
【0051】
また、上記一般式(A)中のZは、下記式(z-1)~式(z-4):
【化3】
から選ばれる構造である。上記構造の中でも、金属部材とゴム組成物との間の接着力が更に高くなることから、上記式(z-1)で表される構造が好ましい。
【0052】
前記化合物(2)としては、ホウ素2-エチルヘキサン酸ビスマス、ホウ素2-エチルヘキサン酸亜鉛、ホウ素2-エチルヘキサン酸銅、ホウ素2-エチルヘキサン酸アンチモン、ホウ素2-エチルヘキサン酸銀、ホウ素2-エチルヘキサン酸ニオブ、ホウ素2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ホウ素ネオデカン酸ビスマス、ホウ素ネオデカン酸亜鉛、ホウ素ネオデカン酸銅、ホウ素ネオデカン酸アンチモン、ホウ素ネオデカン酸銀、ホウ素ネオデカン酸ニオブ、ホウ素ネオデカン酸ジルコニウム、ホウ素ヘキサデカン酸ビスマス、ホウ素ヘキサデカン酸亜鉛、ホウ素ヘキサデカン酸銅、ホウ素ヘキサデカン酸アンチモン、ホウ素ヘキサデカン酸銀、ホウ素ヘキサデカン酸ニオブ、ホウ素ヘキサデカン酸ジルコニウム、ホウ素オクタデカン酸ビスマス、ホウ素オクタデカン酸亜鉛、ホウ素オクタデカン酸銅、ホウ素オクタデカン酸アンチモン、ホウ素オクタデカン酸銀、ホウ素オクタデカン酸ニオブ、ホウ素オクタデカン酸ジルコニウム等が挙げられ、これらの中でも、ホウ素2-エチルヘキサン酸ビスマス、ホウ素ネオデカン酸ビスマス、ホウ素ヘキサデカン酸ビスマス、ホウ素オクタデカン酸ビスマスが好ましい。前記化合物(2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
上記一般式(A)で表される化合物(2)は、例えば、国際公開第2016/039375号に記載のような、炭素数2~25の脂肪族カルボン酸(a)と、炭素数1~5の低級アルコールのホウ酸エステル(d-1)、炭素数1~5の低級アルコールのメタホウ酸エステル(d-2)、炭素数1~5の低級アルコールのリン酸エステル(d-3)又は炭素数1~5の低級アルコールの亜リン酸エステル(d-4)と、該エステル(d-1)~(d-4)中に存在している炭素数1~5の低級アルコール残基との揮発性エステルを生成可能な酸(e)と、金属源である金属化合物M(f)と、を混合、加熱し、得られる揮発性エステルを除去する方法により製造することができる。
【0054】
前記ゴム-金属間接着促進剤の含有量は、特に限定されないが、金属部材とのより優れた接着性を得る点からは、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることが特に好ましい。また、ゴム組成物の劣化を抑制する観点からは、前記ゴム-金属間接着促進剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
また、前記ゴム-金属間接着促進剤の金属元素としての含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。ゴム-金属間接着促進剤の金属元素として含有量が、0.01質量部以上の場合、ゴム組成物と金属部材との間の接着性が更に向上し、また、5質量部以下の場合、ゴム成分の架橋反応への影響が小さく、ゴム組成物が劣化し難い。
前記ゴム-金属間接着促進剤中の脂肪族カルボン酸の金属塩(1)及び一般式(A)で表される化合物(2)の総含有率は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が更に好ましく、100質量%であってもよい。ゴム-金属間接着促進剤中には、脂肪族カルボン酸の金属塩(1)や、一般式(A)で表される化合物(2)の合成に用いた原料の未反応物(炭素数が2~25の脂肪族カルボン酸(a)等)が残存していてもよい。
【0055】
(チウラム系以外の加硫促進剤)
本発明のゴム組成物は、チウラム系以外の加硫促進剤を含む。ゴム組成物がチウラム系以外の加硫促進剤を含むことで、ゴム組成物の金属部材に対する接着性を向上させることができる。
但し、ゴム組成物がチウラム系以外の加硫促進剤を含んでも、チウラム系加硫促進剤を含むと、ゴム組成物の金属部材に対する接着性が悪化するため、本発明のゴム組成物からは、チウラム系加硫促進剤を含むゴム組成物を除く。
【0056】
前記チウラム系以外の加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤等が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、前記チウラム系以外の加硫促進剤が、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチアゾール系加硫促進剤からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤及び/又はチアゾール系加硫促進剤を含む場合、ゴム組成物の金属部材に対する接着性を更に向上させることができる。
前記スルフェンアミド加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CZ、CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(NS、BBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DPBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ、DCBS)等が挙げられる。
また、前記チアゾール系加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)等が挙げられる。
前記チウラム系以外の加硫促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
前記チウラム系以外の加硫促進剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.2質量部以上がより一層好ましく、0.3質量部以上が特に好ましく、また、10質量部以下が好ましく、5質量部以下が更に好ましく、3質量部以下がより一層好ましく、1質量部以下が特に好ましい。
【0058】
(その他の成分)
本発明に係るゴム組成物には、上述した、ゴム成分、ゴム-金属間接着促進剤、チウラム系以外の加硫促進剤に加えて、ゴム組成物に配合される公知の添加剤を適宜配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、充填剤、加硫剤(架橋剤)、加硫助剤、オイル、加硫遅延剤、老化防止剤、補強剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤等が挙げられる。これらは、それぞれ、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物の補強性の観点から、カーボンブラック及びシリカが好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。
前記カーボンブラックの種類については、特に限定はされない。例えば、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボンを用いることができる。カーボンブラックの種類については、特に限定はされず、例えば、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックを、一種以上用いることができる。
前記シリカの種類については、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を用いることができる。
前記充填剤の含有量は、特に限定されないが、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上が更に好ましく、40質量部以上がより一層好ましく、50質量部以上が特に好ましく、また、200質量部以下が好ましく、175質量部以下が更に好ましく、150質量部以下がより一層好ましく、125質量部以下が特に好ましい。前記充填剤の含有量を前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上とすることで、ゴム組成物の補強性が更に向上し、前記充填剤の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して、200質量部以下の場合には、ゴム組成物の混練における作業性が良好となる。
【0060】
前記加硫剤(架橋剤)としては、硫黄が好ましい。該硫黄としては、特に限定されるものではないが、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄等が挙げられる。加硫剤(架橋剤)の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上が更に好ましく、0.3質量部以上がより一層好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下が更に好ましく、6質量部以下がより一層好ましく、4質量部以下が特に好ましい。
【0061】
前記加硫助剤としては、亜鉛華(酸化亜鉛)が好ましい。加硫助剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上が更に好ましく、3質量部以上がより一層好ましく、4質量部以上が特に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、17.5質量部以下が更に好ましく、15質量部以下がより一層好ましく、12.5質量部以下が特に好ましい。
【0062】
なお、本発明のゴム組成物は、環境に配慮した規制に対応する点から、コバルトが添加されていないこと、具体的には、コバルト化合物の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下であることが好ましく、不可避不純物を除いて、コバルト化合物を含まないことがより好ましい。
【0063】
(ゴム組成物の製法)
本発明のゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、ゴム成分と、ゴム-金属間接着促進剤と、チウラム系以外の加硫促進剤と、その他の任意成分とを、同時にまたは任意の順序で添加して、バンバリーミキサー、ロール又はインターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
【0064】
(ゴム組成物の用途)
本発明に係るゴム組成物の用途は、特に限定されず、例えば、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ、タイヤ、電線、防振材等、任意のゴム物品に用いることができる。
【0065】
<ゴム-金属複合体>
本発明のゴム-金属複合体は、上述した本発明のゴム組成物と、金属部材と、を具えることを特徴とする。かかる本発明のゴム-金属複合体は、ゴム組成物と、金属部材との間の接着性に優れる。
【0066】
本発明のゴム-金属複合体は、上述した本発明のゴム組成物と金属部材とが接していればよく、例えば、金属部材である金属ワイヤーの、一部又は全部をゴム組成物によって被覆していてもよいし、金属ワイヤーからなる層の少なくとも一面側にゴム組成物からなるゴム層が積層されるような実施形態でもよい。
【0067】
前記金属部材については、金属から構成された部品のことであり、例えば、金属ワイヤーや、該金属ワイヤー(金属鋼線)を複数本撚り合わせてなる金属コードや、該金属ワイヤーの単線からなる金属コード、更に、金属のバネ、金属の板、金属のリング等、種々の形態を有することができる。
また、前記金属部材の金属種については、特に限定はされず、スチール、鉄、銅、金等、用途に応じて適宜選択することができる。
【0068】
前記金属部材については、メッキされていてもよいし、メッキされていなくてもよい。メッキの種類は特に限定されず、ブラスメッキ、亜鉛メッキ、クロムメッキ、ニッケルメッキ等、公知のメッキを適宜採用することができる。
前記金属部材が、金属ワイヤーである場合には、ブラスメッキ及び亜鉛メッキからなる群より選択される1種以上のメッキがされていることが好ましい。
【0069】
本発明のゴム-金属複合体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、金属ワイヤーをゴム組成物が被覆している複合体では、金属ワイヤーをゴム組成物で被覆した状態でゴム組成物を加硫することで複合体を得ることができる。また、例えば、金属ワイヤーからなる層の少なくとも一面側にゴム組成物からなるゴム層が積層されている複合体では、例えば、国際公開第2017/056414号に記載の積層体の製造方法によって複合体を得ることができる。
【0070】
<ホース>
本発明のホースは、上述のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のホースは、コバルト塩を含有するゴム組成物を用いた場合と同等以上のゴム-金属間の接着性を有するため、優れた耐久性を有する。
【0071】
なお、本発明のホースは、上記ゴム-金属複合体を用いたこと以外は特に限定されず、公知のホースの構成や製造方法を採用し得る。
一実施形態において、ホースは、径方向内側に位置する内面ゴム層(内管ゴム)と、径方向外側に位置する外面ゴム層と、上記内面ゴム層及び上記外面ゴム層の間に位置する金属補強層(金属部材)と、を具える。そして、一実施形態においては、上述のゴム組成物を、内面ゴム層及び外面ゴム層の少なくともいずれかに用いることができる。なお、上述のゴム組成物は、EPDMを含み、耐候性に優れるため、外面ゴム層に好適に使用することができる。
【0072】
<コンベヤベルト>
本発明のコンベヤベルトは、上述のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のコンベヤベルトは、コバルト塩を含有するゴム組成物を用いた場合と同等以上のゴム-金属間の接着性を有するため、優れた耐久性を有する。
【0073】
なお、本発明のコンベヤベルトは、上記ゴム-金属複合体を用いたこと以外は特に限定されず、公知のコンベヤベルトの構成や製造方法を採用し得る。
一実施形態においては、本発明のゴム-金属複合体を、コンベヤベルトのうち、少なくとも、スチールコード等からなる金属補強材(金属部材)の下側の、駆動プーリー、従動プーリー、保形ローター等と接触する内周側の表層ゴム(下面カバーゴム)に用いることができ、また、金属補強材の上側の、輸送物品と接触する外周側の表層ゴム(上面カバーゴム)に用いることもできる。
前記コンベヤベルトの具体的な製造例としては、上記ゴム組成物からなるゴムシートで金属補強材を挟み込み、このゴムシートを加熱圧着して加硫接着することにより、金属補強材にゴムを接着及び被覆することが挙げられる。
【0074】
<ゴムクローラ>
本発明のゴムクローラは、上述のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のゴムクローラは、コバルト塩を含有するゴム組成物を用いた場合と同等以上のゴム-金属間の接着性を有するため、優れた耐久性を有する。
【0075】
なお、本発明のゴムクローラは、上記ゴム-金属複合体を用いたこと以外は特に限定されず、公知のゴムクローラの構成や製造方法を採用し得る。
一実施形態において、ゴムクローラは、スチールコード(金属部材)と、該スチールコードを被覆する中間ゴム層と、該中間ゴム層の上に配置された芯金(金属部材)と、前記中間ゴム層と芯金とを囲む本体ゴム層とを具え、更に、本体ゴム層の接地面側に複数のラグを有している。ここで、上述のゴム組成物は、ゴムクローラのいずれの部位に用いてもよい。
【0076】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述のゴム-金属複合体を具えることを特徴とする。かかる本発明のタイヤはコバルト塩を含有するゴム組成物を用いた場合と同等以上のゴム-金属間の接着性を有するため、優れた耐久性を有する。
【0077】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム-金属複合体を用いたこと以外は特に限定されず、公知のタイヤの構成や製造方法を採用し得る。
タイヤにおける本発明のゴム-金属複合体の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーカス、ベルト、ビードコア等が挙げられる。
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に、未加硫ゴム組成物及び金属コードからなるカーカス及びベルト(ゴム-金属複合体)、未加硫ゴム組成物からなるトレッド等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例
【0078】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。実施例において、配合量は、特に断らない限り、質量部を意味する。
【0079】
(実施例1~4、比較例1~6)
表1に示す配合(硫黄および加硫促進剤を除く)で、インターナルミキサーを用いて混錬物の温度が160℃になるまで混練りした後、その混合物を40℃以下まで冷却した。次いで、その混合物に硫黄および加硫促進剤を添加して、未加硫のゴム組成物を得た。
【0080】
(1)ゴム-金属間接着性試験用サンプルの作製
得られた未加硫のゴム組成物のうちの2つをそれぞれ縦150mm、横150mm、厚さ2mmのシートに圧延成形し、それぞれに金属ワイヤーを7本隙間なく並べて、150℃、60分の条件で加硫して、加硫ゴムを含むゴム-金属複合体の試験サンプルを得た。
【0081】
(2)ゴム-金属間接着性試験
上記の加硫ゴムを含むゴム-金属複合体の試験サンプルについて、金属ワイヤーのうち、両端の2本を除く5本をまとめて一定の力で、ペンチで引っ張った。同じ試験をもう1つの試験サンプルについても行った。そして、引っ張った後の金属ワイヤー表面の加硫ゴムの被覆率(%)を測定した。結果を表1に示す。被覆率の値が大きい程、ゴム-金属間の接着性が良好であることを示す。表1中、記号「/」の左側が1回目の試験結果、記号「/」の右側が2回目の試験結果を表す。
【0082】
【表1】
【0083】
*1 NR: 天然ゴム、RSS3号
*2 NBR: アクリロニトリル-ブタジエンゴム、JSR社製、商品名「N250S」
*3 EPDM: エチレン-プロピレン-ジエンゴム、JSR社製、商品名「EP33」
*4 カーボンブラック: 旭カーボン社製、商品名「旭#50」
*5 オイル: 日本サン石油社製、商品名「SUNTHENE4240」
*6 ネオデカン酸ビスマス: 脂肪族カルボン酸の金属塩(1)に相当、ビスマス含有量=27質量%
*7 ステアリン酸コバルト: DIC社製、商品名「Co-STEARATE」、コバルト含有量=9.5質量%
*8 硫黄: 鶴見化学工業社製、商品名「SULFAX(登録商標)5」
*9 加硫促進剤TS: チウラム系加硫促進剤、テトラメチルチウラムモノスルフィド、三新化学工業社製、商品名「サンセラーTS」
*10 加硫促進剤M: チアゾール系加硫促進剤、2-メルカプトベンゾチアゾール、川口化学工業社製、商品名「アクセルM」
*11 加硫促進剤CZ: スルフェンアミド加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業社製、商品名「サンセラーCM-G」
*12 亜鉛華: 東邦亜鉛社製、商品名「銀嶺(登録商標)SR」
*13 金属ワイヤー1: 直径0.30mm、長さ100mmのブラスメッキ(Cu:質量63%、Zn:37質量%、メッキ付着量4g/kg)スチールワイヤー
*14 金属ワイヤー2: 直径0.38mm、長さ100mmのブラスメッキ(Cu:質量63%、Zn:37質量%、メッキ付着量4g/kg)スチールワイヤー
【0084】
表1の実施例の結果から、ゴム成分として、EPDMを含むゴム組成物において、ゴム-金属間接着促進剤と、チウラム系以外の加硫促進剤と、を含み、チウラム系加硫促進剤を含まないことで、ゴム組成物の金属部材に対する接着性が向上し、有機酸コバルト塩を含有するゴム組成物(比較例1)と同等のゴム-金属間接着性が得られることが分かる。
一方、比較例2及び3の結果から、EPDMを含むゴム組成物において、ゴム-金属間接着促進剤を含まないと、ゴム組成物の金属部材に対する接着性が大幅に悪化することが分かる。
また、比較例4~6の結果から、EPDMを含むゴム組成物において、ゴム-金属間接着促進剤と、チウラム系以外の加硫促進剤と、を含んでも、チウラム系加硫促進剤を含むと、ゴム組成物の金属部材に対する接着性が悪化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のゴム組成物は、ゴム-金属複合体に利用でき、また、本発明のゴム-金属複合体は、ホース、コンベヤベルト、ゴムクローラ、タイヤ等に利用できる。