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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B41J2/335 101E
B41J2/335 101H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020214924
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100748
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-158959(JP,A)
【文献】特開平03-258558(JP,A)
【文献】特開2006-076188(JP,A)
【文献】特開2007-262466(JP,A)
【文献】特開2007-291419(JP,A)
【文献】特開2009-248415(JP,A)
【文献】特開2008-207439(JP,A)
【文献】米国特許第05745147(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に配置された発熱抵抗層と、
前記発熱抵抗層に電気的に接続され、第1の金属層と、前記第1の金属層上に配置された第2の金属層とを有する配線と、
を備え
前記第2の金属層は、シード層上にめっき層が積層された構造を有し、
前記めっき層を用いたエッチング成形された前記シード層と前記第1の金属層が、前記シード層と前記めっき層の接触面における前記めっき層の外縁と、外縁を一致して配置されている
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第1の金属層は、
前記第の絶縁層上に配置される、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1の金属層は、
前記発熱抵抗層上に配置される、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記基板は、
電気的に絶縁性を有するアルミナセラミックス、または半導体材料を備える、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記半導体材料は、
シリコン、シリコンカーバイト、ガリウムリン、ガリウムヒ素、インジウムリン、及びガリウムナイトライドからなる群から選ばれる少なくとも1つを備える、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第1の金属層は、
チタンまたは窒化チタンを備える、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2の金属層は、
銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金からなる群から選ばれる少なくとも1つを備える、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
絶縁基板上に第1の絶縁層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層上に発熱抵抗層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層上に形成し、前記発熱抵抗層と電気的に接する第1の金属層を形成する工程と、
前記第1の金属層上に第2の金属層を形成する工程と、
を有し、
前記第2の金属層を形成する工程は、
シード層を形成する工程と、
前記シード層上にめっき層を形成する工程と、
を有し、
前記めっき層をエッチングマスクに用いて前記シード層と前記第1の金属層をエッチングにより除去する、
サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記第1の金属層を形成する工程は、
スパッタリング法を用いる、
請求項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記シード層を形成する工程は、
スパッタリング法または無電解めっき法を用いる、
請求項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記めっき層を形成する工程は、
電解めっき法を用いる、
請求項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記電解めっき法は、
基板のフォトレジストが開口する被めっき面を下向きにし、前記被めっき面をめっき液に接触するめっき処理の工程を有する、
請求項11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第1の金属層及び前記第2の金属層を積層して配線を形成する工程を有する、
請求項8~10のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記発熱抵抗層を形成する工程は、
前記第2の金属層を形成する工程の後に行う、
請求項8~13のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第2の金属層を形成する工程は、
前記発熱抵抗層を形成する工程の後に行う、
請求項8~13のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、サーマルプリントヘッドとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱抵抗体に接続される配線を導通することで熱を発生させる構成が知られている。また、この発熱抵抗体に接続される配線は、金属ペーストを用いて、基板上に厚膜印刷し、この塗布したペーストを焼成することにより形成されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-207439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属ペーストを印刷して形成された配線は、微細な配線幅、薄膜な膜厚を考慮した場合、配線幅や膜厚の寸法の誤差が大きい。
【0005】
本実施の形態は、配線の膜厚及び配線幅を精度よく制御し、かつコスト削減することのできるサーマルプリントヘッド及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様によれば、基板と、基板上に配置された第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に配置された発熱抵抗層と、発熱抵抗層に電気的に接続され、第1の金属層と、第1の金属層上に配置された第2の金属層とを有する配線と、を備え、第2の金属層は、シード層上にめっき層が積層された構造を有し、めっき層を用いたエッチング成形されたシード層と第1の金属層が、シード層とめっき層の接触面におけるめっき層の外縁と、外縁を一致して配置されている、サーマルプリントヘッドが提供される。
【0007】
本実施形態の他の態様によれば、絶縁基板上に第1の絶縁層を形成する工程と、第1の絶縁層上に発熱抵抗層を形成する工程と、第1の絶縁層上に形成し、発熱抵抗層と電気的に接する第1の金属層を形成する工程と、第1の金属層上に第2の金属層を形成する工程と、を有し、第2の金属層を形成する工程は、シード層を形成する工程と、シード層上にめっき層を形成する工程と、を有し、めっき層をエッチングマスクに用いてシード層と第1の金属層をエッチングにより除去する、サーマルプリントヘッドの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、配線の膜厚及び配線幅を精度よく制御し、かつコスト削減することのできるサーマルプリントヘッド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの概略的な平面図である。
図2図2は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図である。
図3図3は、図2のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造における主要な工程フロー図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造工程の一工程を示す断面図である。
図5B図5Bは、図5Aに続く一工程を示す断面図である。
図5C図5Cは、図5Bに続く一工程を示す断面図である。
図5D図5Dは、図5Cに続く一工程を示す断面図である。
図5E図5Eは、図5Dに続く一工程を示す断面図である。
図5F図5Fは、図5Eに続く一工程を示す断面図である。
図5G図5Gは、図5Fに続く一工程を示す断面図である。
図5H図5Hは、図5Gに続く一工程を示す断面図である。
図5J図5Jは、図5Hに続く一工程を示す断面図である。
図6図6は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図である。
図7図7は、図6のB2-B2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造における主要な工程フロー図である。
図9A図9Aは、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造工程の一工程を示す断面図である。
図9B図9Bは、図9Aに続く一工程を示す断面図である。
図9C図9Cは、図9Bに続く一工程を示す断面図である。
図9D図9Dは、図9Cに続く一工程を示す断面図である。
図9E図9Eは、図9Dに続く一工程を示す断面図である。
図9F図9Fは、図9Eに続く一工程を示す断面図である。
図9G図9Gは、図9Fに続く一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(サーマルプリントヘッド)
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10について図面を用いて説明する。ここで、図1は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の概略的な平面図である。図2は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図である。図3は、図2のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。なお、図1に示す平面図のデバイス面をX-Y面とし、X-Y面に垂直な方向をZ軸として説明する。すなわち、基板1の短手方向をX軸方向、長手方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向である。図2のB1-B1線に沿う模式的な断面構造を拡大した図3は、X軸方向からみたY-Z面である。
【0013】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、図1、2に示すように、基板1と、基板1上に配置された第1の絶縁層2と、第1の絶縁層2上に配置された共通電極3と、共通電極3と電気的に接続された配線5と、第1の絶縁層2上に配置され、配線5と電気的に接続する発熱抵抗層6と、配線5と電気的に接続され、発熱抵抗層6を通電し熱を発生させるための通電制御をする駆動回路4と、外部からの端子と共通電極3及び駆動回路4を電気的に接続されたコネクタ7と、第2の絶縁層8(図1及び2では省略)を備える。
【0014】
基板1は、図1に示すように、平面視して、長方形状の電気的に絶縁材料であり、例えば、アルミナセラミックス、又は、半導体材料からなる基板である。半導体材料は、例えば、シリコン、シリコンカーバイト、ガリウムリン、ガリウムヒ素、インジウムリン、及びガリウムナイトライドなどが挙げられる。
【0015】
基板1の大きさは、限定されないが、一例を挙げると、長手方向(Y軸方向)の寸法は、例えば、50mm~150mm程度、短手方向(X軸方向)の寸法は、例えば、2.0mm~10.0mm程度、厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、例えば、500μm~1mm程度であり、望ましくは700μm~800μm程度である。以下の説明において、基板1の短手方向をX軸方向、長手方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向という。
【0016】
第1の絶縁層2は、図2に示すように、熱伝導性の低い絶縁材料であり、基板1上に形成される。第1の絶縁層2は、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、シリコン酸窒化膜などを用いてもよい。第1の絶縁層2は、発熱抵抗層6によって発生する熱の一部を一時的に蓄積する。
【0017】
図3に示す第1の絶縁層2のZ軸方向の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm~15μm程度であり、好ましくは5μm~10μm程度である。
【0018】
共通電極3は、図1に示すように、第1の絶縁層2上に配置され、コネクタ7及び配線5と電気的に接続する。共通電極3は、金属粒子を含み、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金などであり、金属のイオン化傾向の観点から、銅、銀、白金、及び金であることが好ましい。共通電極3のZ軸方向の厚さは、特に限定されず、例えば、0.2μm~0.8μm程度である。
【0019】
駆動回路4は、図1に示すように、第1の絶縁層2上に配置され、配線5及びコネクタ7と電気的に接続する。また、駆動回路4は、図2に示すように、櫛歯状に配置された配線5の各配線と電気的に接続する。駆動回路4は、各配線を通電することで発熱抵抗層6に熱を発生させ制御する。
【0020】
配線5は、図1及び2に示すように、第1の絶縁層2上に配置され、共通電極3及び発熱抵抗層6と電気的に接続する。また、配線5は、発熱抵抗層6を介して駆動回路4と電気的に接続する。
【0021】
配線5は、図3に示すように、第1の金属層51上に第2の金属層52が積層された構造で構成される。第1の金属層51と第2の金属層52は、電気的に接続する。以下の説明において、第1の金属層51上に第2の金属層52が積層された構成を配線5という。また、第2の金属層52は、図3に示すように、シード層53上にめっき層54が積層された構造で構成される。シード層53とめっき層54は、電気的に接続する。以下において、シード層53上にめっき層54が積層された構成を第2の金属層52という。説明の例として、2層で説明するが、積層数は限定されるものではなく、2層以上積層してもよい。
【0022】
発熱抵抗層6は、図1及び2に示すように、Y軸方向に延伸し、第1の絶縁層2上に配線5を覆うように配置され、共通電極3と電気的に接続された配線5と、駆動回路4と電気的に接続された配線5との間に電気的に接続する。
【0023】
コネクタ7は、図1に示すように、基板1に配置され、外部からの端子と駆動回路4及び共通電極3と電気的に接続する。
【0024】
第2の絶縁層8は、図3に示すように、配線5及び発熱抵抗層6を覆うように保護膜としてオーバーコート用のガラス層を形成する。
【0025】
次に、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造方法の一例について説明する。第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10を製造するには、半導体プロセスを用いる。
【0026】
図4は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造における主要な工程フロー図である。図5A~5Jは、図4に示す各工程における発熱抵抗層6周辺AのB1-B1線に沿う断面構造である。すなわち、図5A~Jは、X軸方向からみたY-Z面である。
【0027】
まず、図4に示すステップS1は、第1の絶縁層2の成膜工程である。図5Aに示すように、基板1を用意する。第1の実施形態において基板1は、例えば、アルミナセラミックスである。
【0028】
次に、第1の絶縁層2は、図5Bに示すように、基板1上に例えば、酸化シリコンのガラスペーストをスクリーン印刷法などによって塗布し、ガラスペーストを例えば、1200℃程度で焼成することで形成される。ここで、1200℃程度とは、酸化シリコンのガラスペーストを用いた条件下では1100℃~1300℃までの範囲をいう。
【0029】
図4に示すステップS2は、スパッタリング法による配線5の構成の1部である第1の金属層51の成膜工程である。図5Cに示すように、第1の絶縁層2上に第1の金属層51を成膜する。第1の金属層51の形成には、例えば、スパッタリング法を用いる。第1の金属層51のZ軸方向の厚さは、例えば、0.05μm以下である。第1の金属層51の金属は、例えば、チタン、または窒化チタンなどを用いてもよい。
【0030】
図4に示すステップS3は、スパッタリング法による第2の金属層52の構成の1部であるシード層53の成膜工程である。図5Dに示すように、第1の金属層51上にシード層53を成膜する。
【0031】
シード層53の形成には、例えば、スパッタリング法を用いる。シード層53のZ軸方向の厚さは、例えば、0.3μm以下である。なお、シード層53の形成には、例えば、無電解めっき法を用いてもよい。
【0032】
シード層53の金属は、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金などを用いてもよい。本説明では、第2の金属層52の構成であるシード層53及びめっき層54を銅で説明する。
【0033】
図4に示すステップS4は、電解めっき法による第2の金属層52の構成の1部であるめっき層54の成膜工程である。図5Eに示すように、シード層53を形成した基板1の全面にフォトレジスト21を用いて、フォトリソグラフィ法によりめっき前パターニング処理を実施する。第1の金属層51と第2の金属層52から構成される配線5のY軸方向の幅は、例えば、20μm~30μm程度である。また、配線5と配線5とのY軸方向の距離は、例えば、30μm~40μm程度である。
【0034】
次に、図5Fに示すのように、めっき前パターニング処理を実施された基板1の銅のシード層53上に、電解めっきを実施して、銅からなるめっき層54を形成する。また、電解めっきによって成膜されためっき層54のZ軸方向の厚さは、例えば、0.2μm~0.3μm程度である。
【0035】
電解めっき法は、例えば、基板1のフォトレジスト21が開口する被めっき面を下向き(Face Down方式)にしてこの被めっき面をめっき液に接触することでめっき処理を行ってもよい。また、電解めっき法は、電解めっき液に入れて、めっき処理を行ってもよい。
【0036】
図5Gに示すように、基板1のフォトレジスト21を剥離する。
【0037】
次に、図5Hに示すように、基板1の表面上のスパッタリング法により成膜された第1の金属層51及びシード層53は、エッチングにより除去する。
【0038】
第1の金属層51及びシード層53のエッチングは、例えば、反応性イオンエッチングなどのドライエッチング技術を用いてもよい。また、第1の金属層51及びシード層53のエッチングは、酸などのウェットエッチング技術を用いてもよい。この結果、配線5以外の余分な第1の金属層51及びシード層53を除去することができる。
【0039】
図4に示すステップS5は、発熱抵抗層6の形成工程である。発熱抵抗層6は、図2及び図5Jに示すように、発熱抵抗層6のペーストを第1の絶縁層2上に配線5の一部を覆うように所定の位置に帯状に印刷する。発熱抵抗層6は、発熱抵抗層6のペーストを印刷した後、乾燥させ、800℃~850℃程度で焼成して形成する。発熱抵抗層6のZ軸方向の厚さは、例えば、0.05μm~0.2μm程度である。
【0040】
発熱抵抗層6のペーストは、導電物質及びガラスを含有する。発熱抵抗層6の導電物質は、例えば、酸化ルテニウム、窒化タンタル、タンタル、及び銀パナジウムなどを用いてもよい。
【0041】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造工程において、発熱抵抗層6形成の工程以降は、公知であるので、工程の説明を省略する。
【0042】
以上の工程によって、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10が完成される。なお、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造工程のフローにおいて、図4に示すステップS2のスパッタリング法による第1の金属層51を成膜し、ステップS3のスパッタリング法によるシード層53を成膜し、ステップS4の電解めっき法によるめっき層54を成膜後に、発熱抵抗層6を形成することを「配線先作りC1」という。
【0043】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10において、電解めっき法により、めっき層54を成膜することで、第2の金属層52の膜厚を精度よく制御することができる。
【0044】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10において、電解めっき法により、第2の金属層52に銅を用いることで、抵抗値の低い第2の金属層52を形成することができる。
【0045】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10において、スパッタリング法または無電解めっき法及び電解めっき法により、第1の金属層51及び第2の金属層52を成膜することで、工程削減ができるため、コスト低減することができる。
【0046】
第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10において、フォトリソグラフィ法により、配線5のパターニングをすることで、配線5の配線幅及び配線5と配線5の間隔などの寸法を精度よく、微細な加工をすることできる。
【0047】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10について図面を用いて説明する。ここで、図6は、図1に示す発熱抵抗層周辺Aの拡大図A1である。図7は、図6のB2-B2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図である。図6のB2-B2線に沿う模式的な断面構造を拡大した図7は、X軸方向からみたY-Z面である。
【0048】
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、図6に示すように、発熱抵抗層6と配線5の構成が異なる。第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、配線5の上に発熱抵抗層6が形成されていたのに対し、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、発熱抵抗層6の上に配線5が形成されている。
【0049】
次に、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造方法の一例について説明する。
【0050】
図8は、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造における主要な工程フロー図である。
【0051】
図9A~9Gは、図8に示す各工程における発熱抵抗層6周辺A1のB2-B2線に沿う断面構造である。すなわち、図9A~Gは、X軸方向からみたY-Z面である。以下の説明において、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造方法と重複する場合は、説明を省略する。
【0052】
まず、図8に示すステップS11は、第1の絶縁層2の成膜工程である。
【0053】
次に、図8に示すステップS12は、発熱抵抗層6の形成工程である。図6及び図9Aに示すように、発熱抵抗層6は、第1の絶縁層2上に所定の位置に帯状に印刷する。
【0054】
図8に示すステップS13は、スパッタリング法による配線5の構成の1部である第1の金属層51の成膜工程である。図6及び図9Bに示すように、第1の絶縁層2及び発熱抵抗層6上に第1の金属層51を成膜する。
【0055】
図8に示すステップS14は、スパッタリング法による第2の金属層52の構成の1部であるシード層53の成膜工程である。図9Cに示すように、第1の金属層51上にシード層53を成膜する。なお、シード層53の形成には、例えば、無電解めっき法を用いてもよい。
【0056】
図8に示すステップS15は、電解めっき法による第2の金属層52の構成の1部であるめっき層54の成膜工程である。図9Dに示すように、シード層53を形成した基板1の全面にフォトレジスト21を用いて、フォトリソグラフィ法によりめっき前パターニング処理を実施する。
【0057】
次に、図9Eに示すのように、めっき前パターニング処理を実施された基板1の銅のシード層53上に、電解めっきを実施して、銅からなるめっき層54を形成する。
【0058】
図9Fに示すように、基板1のフォトレジスト21を剥離する。
【0059】
次に、図9Gに示すように、基板1の表面上のスパッタリング法により成膜された第1の金属層51及びシード層53は、エッチングにより除去する。
【0060】
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造工程において、めっき層54の成膜工程以降は、公知であるので、工程の説明を省略する。
【0061】
以上の工程によって、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10が完成される。なお、第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の製造工程のフローにおいて、図8に示すステップS12の発熱抵抗層6を形成後に、ステップS13のスパッタリング法による第1の金属層51を成膜し、ステップS14のスパッタリング法によるシード層53を成膜し、ステップS15の電解めっき法によるめっき層54を成膜ることを「発熱抵抗層先作りC2」という。
【0062】
第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の効果は、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10と同様である。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、配線5の膜厚及び配線幅を精度よく制御し、かつコスト削減することのできるサーマルプリントヘッド10及びその製造方法を提供することができる。
【0064】
[その他の実施形態]
上述のように、いくつかの実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 第1の絶縁層
51 第1の金属層
52 第2の金属層
53 シード層
54 めっき層
5 配線
6 発熱抵抗層
8 第2の絶縁層
10 サーマルプリントヘッド
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5J
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G