(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】非骨髄破壊的な骨髄再構成のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20241008BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241008BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241008BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241008BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241008BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20241008BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241008BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241008BHJP
A61P 31/18 20060101ALN20241008BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20241008BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20241008BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20241008BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/17
A61K38/44 ZNA
A61K31/675
A61P35/02
C12N5/10
C12N15/53
C12N15/867 Z
C12N15/113 140Z
A61P31/18
C12N5/0735
C12N5/0789
C12N5/074
C12N15/861 Z
(21)【出願番号】P 2020545238
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 US2018061211
(87)【国際公開番号】W WO2019099619
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520167221
【氏名又は名称】ウィヤード・サイエンス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】セルハット・グムルクツ
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520757(JP,A)
【文献】国際公開第2016/057821(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148577(US,A1)
【文献】特表平08-501221(JP,A)
【文献】特表2012-533299(JP,A)
【文献】日本造血細胞移植学会雑誌, 2015, Vol.4 No.1, p.9-22
【文献】Blood, 1996, Vol.87 No.3, p.1097-1103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において骨髄移植を行う方法で使用するための、シクロホスファミド耐性の修飾された骨髄細胞の集団を含む医薬組成物であって、前記患者は、非骨髄破壊的な少なくとも1用量のシクロホスファミドが投与され、
ここで、シクロホスファミド耐性の修飾された骨髄細胞の集団は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)をコードする異種遺伝子を含み、
シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.16mg/kg/日から2.5mg/kg/日未満である、前記医薬組成物。
【請求項2】
シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団はALDH1を発現する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
シクロホスファミド耐性の修飾された細胞のシクロホスファミド耐性は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)の発現によって付与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
患者はHIVを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
骨髄細胞は
骨髄由来の前駆細胞または骨髄由来の幹細
胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
骨髄由来の幹細胞は
、造血幹細胞(HSC
)である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
骨髄由来の幹細胞は
CD34+細胞である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
修飾された細胞は、患者にとって自家である、患者にとって同種である、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
方法は、未修飾の細胞を、ALDH1の発現をコードする発現ベクターと接触させて、シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団を生産することをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
発現ベクターはウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ウイルスベクターはレンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
発現ベクターは、レトロウイルス、トランスポゾン、エピソーム性の発現ベクター、修飾されたRNA、プラスミド、またはこれらのあらゆる組み合わせである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約1.3mg/kg/日である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団は、患者に、臨床的に関連する貧血、好中球減少、血小板減少、汎血球減少、低血小板、低白血球、またはこれらのあらゆる組み合わせもしくは関連する症状を経験させることはない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
修飾された細胞はHIV感染に対して耐性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
修飾された細胞は、HIV感染に対して耐性の少なくとも1つのHIV共受容体の突然変異、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、またはこれらのあらゆる組み合わせを異種発現する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
修飾された細胞は、shCCR5、shCXCR4、C-ペプチド融合阻害剤、またはこれらのあらゆる組み合わせを異種発現する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
修飾された細胞はHIV共受容体を発現しない、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
修飾された細胞は、CCR5、CXCR4を発現しないか、またはCCR5-Δ32を発現するか、またはこれらの組み合わせである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
骨髄移植を受ける対象において目的の分子を発現させる方法で使用するための、ALDH1および目的の分子を異種発現する骨髄細胞を含む医薬組成物であって、前記方法は、前記細胞を対象に投与すること;および非骨髄破壊的な用量のシクロホスファミドを投与することを含み、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.16mg/kg/日から2.5mg/kg/日未満である、前記医薬組成物。
【請求項21】
骨髄細胞は、CD34+
細胞である、請求項20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる、2017年11月15日に出願された米国仮特許出願第62/586,813号に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、HIV、がん(例えば血液がん)、およびそれに類するものなどの様々な疾患の処置の際を含む非骨髄破壊的な骨髄移植のための方法および組成物を提供する。一部の実施形態では、本明細書において、患者の骨髄にグラフトされ、従来の骨髄移植の際に経験される負の副作用を伴うことなく骨髄の再構成を可能にする、修飾された幹細胞が提供される。この細胞はまた、本質的に治療的であり得る目的のタンパク質を発現させるために使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
骨髄移植(BMT)は、損傷したまたは破壊された骨髄を、患者(自家)または他人(同種)のいずれかから単離された健康な骨髄幹細胞で置き換える手順である。BMTは、白血病だけではなく、重度の再生不良性貧血、リンパ腫、多発性骨髄腫、免疫不全障害、および一部の固形腫瘍がんを含む多くの他の疾患を処置するために使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨髄破壊的なBMTは、最初に、骨髄内の細胞(正常な細胞および異常な細胞の両方)を死滅させるために患者を処置し、その後、健康な骨髄細胞を注入することを伴う。第1の工程では、高用量の化学療法および/または放射線照射が細胞を死滅させるために必要であり、その後、同種細胞または自家細胞が導入される。患者の骨髄を根絶するこのプロセスは、骨髄破壊と呼ばれる。このプロセスは、不健康な細胞だけではなく健康な免疫細胞および幹細胞も死滅させるため、患者は非常に感染しやすく、複数の抗生物質を投与され、無菌の環境に居続ける必要があることが多い。骨髄が再構成されるまで、患者は感染に対してハイリスクであり続け、回復期間は最大6カ月間続く。この期間、患者は、合併症が生じているケースでは、処置を受けている病院またはクリニックの近くに居続けることが推奨される。急性毒性に加えて、骨髄破壊的な化学療法は、白内障、成長遅延、心臓毒性、ならびに内分泌上のおよび生殖上の問題を含む、多くの他の副作用に関連している。若年の患者は、これらの影響を特に受けやすい。したがって、BMTを行うための新規な組成物および方法が必要とされている。この開示は、これらの要求などを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[特許請求の範囲の記載が決定されたら全て記載される]
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】EGFPを発現するレンチウイルスベクター(「コントロールベクター」)により形質導入された骨髄細胞、またはEGFP+ALDH1A1を発現するレンチウイルスベクター(「試験ベクター」、配列番号2、
図4)により形質導入された骨髄細胞を投与され、示された濃度の1日に1回の腹腔内(i.p.)シクロホスファミド(CTX)で処置されたマウスの末梢血における、生きたGFP(緑色蛍光タンパク質)陽性(GFP
+)顆粒球のパーセンテージを示す図である。研究の23日目、35日目、および42日目(これは、CTX投与の16日目、28日目、および35日目にそれぞれ対応する)に、眼窩後方から出血させることによって血液を回収し、末梢血における生きたGFP
+顆粒球のパーセンテージをフローサイトメトリーによって評価した。移植後のCTX処置がない群の各々ではn=3であり、全ての他の群ではn=6であった。
【
図2A】コントロールベクターにより形質導入された骨髄細胞または試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、示された濃度のCTXの1日に1回のレジメンに供されたマウスについての、フローサイトメトリーによって評価された、骨髄におけるGFP
+細胞のパーセンテージを示す図である。移植後のCTX処置がない群の各々ではn=3であり、全ての他の群ではn=6であった。
図2Aは、全(死滅したおよび生きた)GFP
+細胞の%を示す。
【
図2B】コントロールベクターにより形質導入された骨髄細胞または試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、示された濃度のCTXの1日に1回のレジメンに供されたマウスについての、フローサイトメトリーによって評価された、骨髄におけるGFP
+細胞のパーセンテージを示す図である。移植後のCTX処置がない群の各々ではn=3であり、全ての他の群ではn=6であった。
図2Bは、生きたGFP
+顆粒球の%を示す。
【
図3】コントロールベクターにより形質導入された骨髄細胞または試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、示された濃度のCTXの1日に1回のレジメンに供されたマウスについての、白血球(WBC)数を示す図である。各々について、移植後のCTX処置がない群ではn=3であり、全ての他の群ではn=5であった。
【
図4】本開示の一実施形態に従ったレンチウイルスベクターの非限定的な概略図を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に従ったレンチウイルスベクターの非限定的な概略図を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に従ったレンチウイルスベクターの非限定的な概略図を示す図である。
【
図7】用量範囲およびレンチウイルスベクターの効能の研究のための研究設計の非限定的な概略図を示す図である。
【
図8】レンチウイルスベクターの発現およびshRNAノックダウン研究の効能のための研究設計の非限定的な概略図を示す図である。
【
図9】HIVに対する多耐性およびCTXに対する化学療法耐性を有する細胞を本開示の一実施形態に従ったHIV
+患者に移植するための研究設計の非限定的な概略図を示す図である。
【
図10】HIVに対する多耐性およびCTXに対する化学療法耐性を有する細胞を患者に移植した後に、HIV
+患者を1日に1回のCTXで処置する研究設計の非限定的な概略図を示す図である。同一の研究設計を、HIVを予防するためにHIV
-対象に対して行い得ることが検討される。
【
図11】本開示の一実施形態に従ったレンチウイルスベクターの非限定的な概略図を示す図である。
【
図12】本開示の一実施形態に従ったレンチウイルスベクターの非限定的な概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
常に明確に言及されるわけではないが、全ての数値的な指定が用語「約」の後に来ることが理解される。本明細書において使用される場合、用語「約」は、数値が近似値であり、わずかな変化は開示される実施形態の実施に有意に影響しないことを意味する。
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、単数形態「a」、「an」、および「the」には複数形の指示物が含まれることが理解されなくてはならない。したがって、例えば、「細胞」への言及には、複数の細胞が含まれる。
【0009】
定義
本明細書において使用される場合、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0010】
用語「約」は、数値的な指定、例えば、範囲を含む、温度、時間、量、濃度、およびその他のものの前で使用される場合、(+)または(-)20%、10%、5%、または1%変化し得る近似値を示す。
【0011】
同様に本明細書において使用される場合、「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つまたはそれ以上の任意のおよび全ての考えられる組み合わせを、ならびに選択肢(「または」)によって解釈される場合には組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0012】
用語「投与すること」、「投与する」などは、作用剤(例えば細胞)を対象に導入することを指す。典型的には有効量が投与され、この量は、処置する医師などによって決定される。局所経路、皮下経路、腹膜経路、静脈内経路、動脈内経路、吸入経路、膣経路、直腸経路、鼻経路、経口経路、口腔内経路、脳脊髄液内への導入、または身体区画内への点滴などの任意の投与経路を使用することができる。用語および表現「投与すること」および「~の投与」は、組成物(および文法的な同等物)に関連して使用される場合、医療専門家による、もしくは患者による自己投与による、患者への投与であり得る直接投与、および/または薬剤を処方する行為であり得る間接投与の両方を指す。例えば、作用剤(例えば細胞)を自己投与することを患者に指示する、および/または患者に薬剤についての規定を提供する医師が、作用剤を患者に投与している。「断続的な投与」または「定期的に投与すること」は、1日に1回、週に1回、または月に1回の原則で行われる複数の処置を指す。断続的な投与はまた、1日当たり1回、2回、3回、またはそれを超える回数の作用剤の投与を指し得る。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprising)」(ならびに、含む(comprising)の任意の形態、例えば、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised))、「有する(having)」(ならびに、有する(having)の任意の形態、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(ならびに、含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」)、または「含有する(containing)」(ならびに、含有する(containing)の任意の形態、例えば、「含有する(contains)」および「含有する(contain」)は、包括的であるかまたは制限のないものであり、さらなる列挙されていない要素または方法工程を排除しない。「含む(comprise)」または「含む(comprising」)という移行句を使用する任意の工程または組成物はまた、「からなる(consisting of)」または「構成する(consists)」という移行句でそれを記載すると言うこともできる。
【0014】
「有効量」は、有利なまたは所望の結果をもたらすために十分な作用剤または化合物(例えば、細胞または細胞集団)の量である。有効量は、1つまたはそれ以上の投与、適用、または用量中にあり得る。これらのパラメータの決定は、十分に当技術分野の技術の範囲内である。これらの検討、ならびに効果的な製剤および投与手順は、当技術分野において周知であり、標準的なテキストにおいて記載されている。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「接触させること」は、インビトロ系またはインビボ系において2つの要素を一緒にすることを意味する。例えば、ウイルスを細胞とまたは個体もしくは患者もしくは細胞と「接触させること」には、ウイルスをヒトなどの個体または患者に投与すること、および、例えば、目的の細胞を含有する細胞調製物または精製調製物を含有するサンプルに化合物を導入することが含まれる。
【0016】
用語「異種の」は、核酸分子、タンパク質、ベクター、または発現カセットに言及する場合、ユーザーの操作を介して細胞において発現している、および天然ではない、核酸分子、タンパク質、ベクター、または発現カセットを指す。例えば、異種遺伝子は、細胞内に導入されられたベクターもしくは他の媒体によって発現している遺伝子を、またはCRISPRなどの遺伝子編集方法もしくは細胞内の遺伝子を置き換えるための他の組換え技術を介して修飾されているゲノム内にある遺伝子を指す。当業者には、用語「異種の」が、修飾されていない細胞のゲノム内の天然の遺伝子を指さないことが理解される。「異種の」はまた、「外因性の」とも言うことができる。
【0017】
用語「単離された」は、DNAまたはRNAなどの核酸に関して本明細書において使用される場合、高分子の天然由来源内に存在する他のDNAまたはRNAから分離された分子をそれぞれ指す。用語「単離された」はまた、本明細書において使用される場合、細胞材料、ウイルス材料、または組換えDNA技術によって生産される場合の培養培地、または化学的に合成される場合には化学物質前駆体もしくは他の化学物質を実質的に有さない、核酸またはペプチドも指す。さらに、「単離された核酸」は、断片としては天然に存在せず天然の状態では見られない核酸断片を含むものである。「単離された細胞」、例えば、単離された骨髄細胞は、それが天然に見られる環境の他の細胞材料、組織、培地を実質的に有さない細胞である。
【0018】
用語「骨髄破壊的な」は、長く続く(通常は不可逆的な)汎血球減少を生じさせ、骨髄中の細胞を投与から1から3週間以内に死滅させ、および自家の血液学的回復をさせない処置を意味する。Bacigalupoら、Biol Blood Marrow Transplant.2009、15(12):1628~1633頁。シクロホスファミドの骨髄破壊的な用量の例には、限定はしないが、蓄積毒性をもたらす、ある期間にわたる2.5mg/kg/日のCTXまたはそれ以上が含まれる(McKinleyら、Clin J Am Soc Nephrol.2009、4:1754~1760頁)。
【0019】
用語「非骨髄破壊的な」は、血球減少を生じさせない、最少の血球減少を生じさせる、または可逆の血球減少を生じさせる、毒性をほとんど伴わない処置を意味する。非骨髄破壊的なレジメンは、免疫除去である。非骨髄破壊的な用量の例には、限定はしないが、蓄積毒性を生じさせない、ある期間にわたるおよそ1.3mg/kg/日、または2から4カ月間にわたる1.0から1.5mg/kg/日が含まれる(McKinleyら、Clin J Am Soc Nephrol.2009、4:1754~1760頁)。他の非骨髄破壊的な用量は全体にわたって記載されており、非骨髄破壊的な用量の定義に含まれている。「蓄積毒性」をもたらす作用剤または作用剤の用量は、患者において毒性を経時的にもたらす用量を指す。例えば、シクロホスファミドを2.5mg/kg/日の用量で数週間にわたってヒトに投与すると、蓄積毒性をもたらす。
【0020】
「対象」、「個体」、または「患者」は、本明細書において区別せずに使用され、脊椎動物、例えば、霊長類、哺乳動物、または好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、限定はしないが、ウマ、イヌ、ウシ、ヒツジ、マウス、ラット、サル、およびヒトが含まれる。
【0021】
タンパク質配列もしくはアミノ酸配列(またはDNA配列もしくはRNA配列)に関する用語「配列同一性」は、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを得た後の、また、配列同一性の一部として任意の保存的な置換を考慮することがない、候補配列における、特異的なタンパク質配列もしくはアミノ酸配列中のアミノ酸残基(または特異的なDNA配列もしくはRNA配列中のヌクレオチド残基)に同一なアミノ酸残基(またはヌクレオチド残基)のパーセンテージを指す。アラインメントは、当業者に知られている任意の方法によって、例えば、BLASTおよびEMBOSSなどの公開されているプログラムを使用することによって行うことができる。当業者は、比較対象の配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができるが、一部の実施形態において、デフォルトパラメータが使用される。プログラムは、例えばアメリカ国立生物工学情報センターでアクセスすることができる。
【0022】
用語「変異体」は、本明細書において使用される場合、参照核酸または参照タンパク質(すなわち、カルモジュリンまたはその断片)と異なるが、基本的な特性(すなわち、生物学的活性)は保持している、核酸またはタンパク質である。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、別の参照ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。ヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を改変するかもしれないし、しないかもしれない。ヌクレオチドの変化は、参照配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および/またはトランケーションを生じさせ得る。
【0023】
用語「ベクター」は、別の核酸分子を移動させ得るまたは運搬し得る核酸分子を指すために本明細書において用いられる。移動された核酸は、一般に、例えばベクターの核酸分子に連結する。ベクターは、細胞における自律複製を指示する配列を含み得るか、または細胞DNA内への組み込みを可能にするために十分な配列を含み得る。ベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体または酵母人工染色体、およびウイルスベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、特に複製欠損レトロウイルス、およびレンチウイルスが含まれる。一部の実施形態において、ベクターは、配列番号2または配列番号4のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態において、ベクターは、配列番号1、配列番号3、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9のヌクレオチド配列、またはそのあらゆる組み合わせを含む。
【0024】
表現「薬学的に許容可能な」は、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わない、人間および動物の組織と接触させる使用に適した、健全な医学的判断の範囲に含まれる、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために本明細書において用いられる。
【0025】
骨髄移植を行うための方法
本明細書において、それを必要とする患者において骨髄移植を行うための方法が提供される。また、対象の骨髄細胞を、1つの異種核酸分子発現カセットもしくは複数の異種発現カセットを発現する細胞の集団で、またはゲノム編集され対象のゲノムと異なる細胞で置き換えるための方法が提供される。一部の実施形態において、これらの方法は、患者に1つまたはそれ以上の化学療法耐性の修飾された細胞を投与すること、および少なくとも1用量の化学療法剤の投与を含む。ある特定の実施形態において、用量は、化学療法剤の非骨髄破壊的な用量である。一部の実施形態において、細胞の量は、治療有効量である。
【0026】
本明細書において提供される方法の一部の実施形態において、患者はHIVを有している。
【0027】
開示される方法において使用するための化学療法耐性の修飾された細胞は、当業者に知られている任意の適切な細胞であり得る。例えば、細胞は、幹細胞または免疫細胞であり得る。幹細胞の非限定的な例としては、臍帯血細胞、胎性幹細胞、胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞、多能性幹細胞(PSC)、人工PSC(iPSC)、またはこれらに由来する細胞が含まれる。一部の実施形態において、免疫細胞はT細胞である。一部の実施形態において、細胞は、CD34+および/またはCD4+である。一部の実施形態において、細胞は、間葉系幹細胞、間質幹細胞、臍帯血由来の造血幹細胞/造血前駆細胞、臍帯組織由来の幹細胞/前駆細胞、iPSC、HESC、胎児組織由来の幹細胞、CD4+細胞、およびそれに類するものである。一部の実施形態において、幹細胞はCD34+である。
【0028】
化学療法耐性
本方法において使用するための化学療法耐性の細胞は、化学療法耐性を付与するための、当技術分野において知られている任意の方法を使用して生成することができる。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される骨髄移植方法は、1つまたはそれ以上の細胞を修飾して化学療法耐性とすることを含む。例えば、ある特定の実施形態において、化学療法耐性の修飾された細胞を生成すること、有効量の化学療法耐性の修飾された細胞を患者に投与すること、および少なくとも1用量の化学療法剤を投与することを含む、それを必要とする患者において骨髄移植を行うための方法が提供される。ある特定の実施形態において、用量は、化学療法剤の非骨髄破壊的な用量である。一部の実施形態において、化学療法耐性の細胞は、シクロホスファミドに対して耐性である。一部の実施形態において、化学療法耐性の細胞は、非骨髄破壊的な量のシクロホスファミドに対して耐性である。
【0029】
一部の実施形態において、細胞は、外因性の化学療法耐性の遺伝子(すなわち、形質導入された遺伝子)を発現するように修飾することができ、例えば、外因性の化学療法耐性遺伝子は、シクロホスファミド耐性遺伝子、その変異体、またはその部分をコードする核酸配列であり得る。一部の実施形態において、シクロホスファミド耐性遺伝子は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)である。一部の実施形態において、ALDH1は、配列番号1で示される配列またはその変異体を含む核酸分子である。一部の実施形態において、ALDH1は、配列番号2もしくは配列番号4で示される配列またはその変異体を含むレンチウイルスベクターにおいて発現する。ALDH1で修飾されているがシクロホスファミドに対して耐性である細胞は、他の非シクロホスファミド化学療法薬に対して感受性のままであり得る(すなわち、細胞は多剤耐性とならない)。
【0030】
ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、複製欠損レトロウイルスなどのレトロウイルス、およびレンチウイルス)、非ウイルスベクター(例えば、エピソーム性のプラスミド)、またはトランスポゾン系(例えば、Sleeping BeautyもしくはPiggyBac)を含めて、当業者に知られている任意の修飾方法を利用して外因性の化学療法耐性遺伝子を発現させることができる。一部の実施形態において、ベクターは、配列番号2または配列番号4のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態において、化学療法耐性遺伝子は、合成メッセンジャーRNA(mRNA)である。合成mRNAは、目的のタンパク質を作るための遺伝情報を提供するものであり、免疫応答を引き起こすことを避けるために化学的に修飾することができる。Zangiら(2013)Nature Biotech 31:898~907頁。mRNAは宿主細胞ゲノム内に組み込まれないため、合成RNAは、ある期間にわたって作用し、その後、細胞が分割すると消える。一部の実施形態において、合成mRNAは、一本鎖RNAに対する固有の抗ウイルス応答を低減させるために、例えばシュードウリジンおよび/または5-メチル-シチジンで修飾される。一部の実施形態において、合成RNAは、ALDH(例えばALDH1)および/またはそのそれぞれの同等物をコードする。
【0031】
一部の実施形態において、化学療法耐性、例えばシクロホスファミド耐性は、修飾された細胞によって一過性発現される。一部の実施形態において、一過性発現されたシクロホスファミドは、約1週間、約2週間、約3週間、約1カ月間、約2カ月間、約3カ月間、約6カ月間、約1年間、約2年間、または約3年間の期間にわたって、修飾された細胞によって発現される。一過性発現は、耐性を付与する遺伝子またはタンパク質の発現の持続性を指す。一過性とは、耐性が恒久的ではないことを意味する。
【0032】
一部の実施形態において、外因性の化学療法耐性遺伝子、例えばシクロホスファミド耐性遺伝子は、細胞の非ウイルスベースのトランスフェクションなどの様々な周知の技術のいずれか1つを使用して、細胞内に導入される。細胞内への導入は、当技術分野において知られている任意の非ウイルスベースのトランスフェクション方法、例えば、限定はしないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムを介する移入、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショック、マグネトフェクション、リポソームを介する移入、マイクロインジェクション、微粒子銃を介する移入(ナノ粒子)、陽イオン性ポリマーを介する移入(DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれに類するもの)、または細胞融合によって行うことができる。トランスフェクションの他の方法としては、リポフェクタミン(商標)、同仁化学研究所のハイリーマックス(商標)、Fugene(商標)、jetPEI(商標)、Effectene(商標)、およびDreamFect(商標)などのトランスフェクション試薬が含まれる。
【0033】
細胞の単離および/または精製
本方法において使用するための化学療法耐性の修飾された細胞は、化学療法耐性を付与するように修飾されている、患者の細胞(すなわち、自家細胞)、ドナーの細胞(すなわち、同種細胞)、またはこれらのあらゆる組み合わせであり得る。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される方法はさらに、患者またはドナーから細胞を単離および/または精製することを含む。ある特定のこれらの実施形態において、本方法はさらに、細胞を修飾して化学療法耐性とすることを含む。例えば、ある特定の実施形態において、患者または対象から1つまたはそれ以上の細胞を単離および/または精製すること、1つまたはそれ以上の細胞を修飾して本明細書において記載される化学療法耐性とすること、有効量の1つまたはそれ以上の化学療法耐性の修飾された細胞を患者に投与すること、ならびに少なくとも1用量の化学療法剤を投与することを含む、それを必要とする患者において骨髄移植を行うための方法が提供される。
【0034】
細胞は、ある特定のマーカーの発現/発現の欠如、増殖速度、および分化の可能性に例えば基づく、当業者に知られている任意の方法によって単離することができる。一部の実施形態において、細胞は、例えばCD34、CD4、Sca-1 CD38、CD123、CD90、CD45、CD133、抗原提示細胞マーカー(CD8、CD8アルファ、CD11b、CD11c、CD103、CD205、CD24、CD115、CD117、CD135、CD11clow、CD45RA、CD123、ILT-7、MHCクラスII、MHCクラスIIlow、TLR7、および/またはTRL9)を含む、特定のマーカーまたはマーカーの組み合わせの存在に基づいて単離される。一部の実施形態において、細胞は、特定のマーカー、例えば、CD3、CD14、CD19、CD56、および/またはCD66bの不在に基づいて単離される。他の実施形態において、負の選択が、例えばT細胞、B細胞、顆粒球、および/または骨髄単球のマーカーについて行われる。一部の実施形態において、細胞は、単独の、または任意の他のマーカーと組み合わされた、Thy-1の存在に基づいて単離される。一部の実施形態において、HSCは、Lin-Thy1+Sca-1+発現プロファイルに基づいて単離される。一部の実施形態において、マウスHSCは、発現プロファイルCD34-、Sca1+、c-kit+によって単離することができる。一部の実施形態において、ヒトHSCは、CD34の発現に基づいて単離することができる。
【0035】
化学療法剤
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、1用量またはそれ以上の用量の化学療法剤を患者に投与することを含む。一部の実施形態において、用量は、化学療法剤の非骨髄破壊的な用量である。化学療法剤は、当業者に知られている任意の適切な化学療法剤であり得る。化学療法剤の非限定的な例としては、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニムスチン(ACNU)オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テメゾラミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれる。
【0036】
疾患特異的な修飾
本明細書において提供される方法のある特定の実施形態において、化学療法耐性の修飾された細胞は、化学療法耐性に関連しない1つまたはそれ以上のさらなる修飾を含み得る。例えば、ある特定の実施形態において、細胞はさらに、さらなるHIV/疾患特異的な修飾を発現するように修飾される。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書において提供される骨髄移植方法はさらに、1つまたはそれ以上のHIV/疾患特異的な修飾を含む、1つまたはそれ以上のさらなる修飾を組み込むことを含む。例えば、ある特定の実施形態において、患者または対象から1つまたはそれ以上の細胞を単離および/または精製すること、1つまたはそれ以上の細胞を修飾して本明細書において記載される化学療法耐性とすること、1つまたはそれ以上のさらなる修飾を1つまたはそれ以上の細胞に組み込むこと、有効量の1つまたはそれ以上の化学療法耐性の修飾された細胞を患者に投与すること、ならびに少なくとも1用量の化学療法剤を投与することを含む、それを必要とする患者において骨髄移植を行うための方法が提供される。一部の実施形態において、用量は、化学療法剤の非骨髄破壊的な用量である。
【0037】
一部の実施形態において、修飾された細胞はさらに修飾されて、HIV耐性とされる。例えば、修飾された細胞をさらに、HIV感染に対する耐性を付与する少なくとも1つの突然変異HIV共受容体、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤の発現、またはこれらのあらゆる組み合わせを発現するように修飾することができる。一部の実施形態において、細胞は、HIV共受容体の発現を阻害するまたは低減させる分子を発現するように修飾されている。一部の実施形態において、分子は、アンチセンス分子である。一部の実施形態において、細胞は、shCCR5、shCXCR4、GP-41融合阻害剤、C46融合阻害剤、C34融合阻害剤、あらゆる他のC-ペプチド融合阻害剤、またはこれらのあらゆる組み合わせを発現するように修飾されている。一部の実施形態において、CCR5突然変異は、CCR5-デルタ32突然変異である。一部の実施形態において、細胞におけるCCR5遺伝子の両コピーが、CCR5-デルタ32突然変異で置き換えられている。一部の実施形態において、CCR5遺伝子の一方のコピーが、CCR5-デルタ32突然変異で置き換えられている。
【0038】
本開示は、化学療法耐性、例えばシクロホスファミド耐性、およびHIV耐性を有するように修飾されている細胞を提供する。一部の実施形態において、細胞は、シクロホスファミド耐性およびHIV耐性を有するように修飾することができる。HIV耐性は、少なくとも1つのHIV共受容体の発現の低減、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤の発現、またはこれらのあらゆる組み合わせによって付与される。HIV耐性は、CCR5 HIV共受容体の発現の低減、CXCR4共受容体の発現の低減、C-ペプチド融合阻害剤(例えば、C46融合阻害剤もしくはC34融合阻害剤)の発現、またはこれらのあらゆる組み合わせから付与される。
【0039】
細胞はまた、任意の目的の分子を発現するように修飾することができる。目的の分子は、利用者によるまたは具体的な患者の要求による決定に応じて修飾することができる。
【0040】
患者への投与
一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、有効量の化学療法耐性修飾された細胞および非骨髄破壊的な用量の化学療法剤を対象に投与することを含む。修飾された細胞および化学療法剤は、処置対象の疾患または状態に応じて、当業者に明らであろう任意の適切な経路によって投与することができる。典型的な投与経路には、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、頭蓋内経路、鼻腔内経路、皮内経路、経口経路、または腹腔内経路が含まれる。
【0041】
一部の実施形態において、対象の体表面積1m2当たり約1×108から約1×1011個の細胞が、対象に投与される。細胞は、細胞の絶対数基準で個体に投与することができ、例えば、前記個体には、約1000個細胞/注射から最大約100億個細胞/注射を投与することができ、例えば、注射当たり、約、少なくとも約、または最大で、約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、5×103個(など)の細胞、または、終点を含めた、これらの数値のうちの任意の2つの間の任意の範囲を投与することができる。一部の実施形態において、細胞約5×106個/kgから約10×106個/kgが、HSC移植に使用される。
【0042】
他の実施形態において、対象には、約1000個細胞/注射/m2から最大約100億個細胞/注射/m2を投与することができ、例えば、注射当たり、約、少なくとも約、または最大で、約1×108個/m2、1×107個/m2、5×107個/m2、1×106個/m2、5×106個/m2、1×105個/m2、5×105個/m2、1×104個/m2、5×104個/m2、1×103個/m2、5×103個/m2(など)の細胞、または、終点を含めた、これらの数値のうちの任意の2つの間の任意の範囲を投与することができる。
【0043】
他の実施形態において、細胞は、細胞の相対数基準でこのような個体に投与することができ、例えば、前記個体には、個体1キログラム当たり約1000個の細胞から最大約100億個の細胞を投与することができ、例えば、個体1キログラム当たり、約、少なくとも約、または最大で、約1×108個、5×107個、1×107個、5×106個、1×106個、5×105個、1×105個、5×104個、1×104個、5×103個、1×103個(など)の細胞、または、終点を含めた、これらの数値のうちの任意の2つの間の任意の範囲を投与することができる。
【0044】
一部の実施形態において、非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤が患者に投与される。化学療法剤の投与は、修飾された細胞の投与と同時にまたは連続的に行うことができる。一部の実施形態において、非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤が、修飾された細胞を投与した後に投与される。一部の実施形態において、事前調整工程(本明細書において「前処置工程」とも呼ばれる)が、細胞を投与する前に行われ、この工程において、少なくとも1用量の化学療法剤、例えばフルダラビンまたはシクロホスファミドが、修飾された細胞を投与する前に患者に投与される。一部の実施形態において、事前調整工程は、非骨髄破壊的な化学療法薬による事前調整工程である。一部の実施形態において、事前調整工程は、細胞を投与する前に行われない。細胞を投与する前に事前調整工程(例えばフルダラビン)が行われなくても、本開示の細胞が依然として患者の骨髄に効率的にグラフトされると考えられる。
【0045】
一部の実施形態において、ヒト対象または患者のための化学療法剤の非骨髄破壊的な少なくとも1用量は、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.15mg/kg/日から2.5mg/kg/日未満、約0.4mg/kg/日から約1.7mg/kg/日、または約0.8mg/kg/日から約1.5mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.15mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約1.0mg/kg/日、約1.1mg/kg/日、約1.2mg/kg/日、約1.3mg/kg/日、約1.4mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、約1.6mg/kg/日、約1.7mg/kg/日、約1.8mg/kg/日、約1.9mg/kg/日、約2.0mg/kg/日、約2.1mg/kg/日、約2.2mg/kg/日、約2.3mg/kg/日、または約2.4mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約1.3mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.8mg/kg/日から約1.6mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.98mg/kg/日、約1.3mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、または約1.6mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.5から約2mg/kg/日である。
【0046】
一部の実施形態において、化学療法剤の非骨髄破壊的な用量は、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1カ月間、少なくとも約2カ月間、少なくとも約3カ月間、少なくとも約4カ月間、少なくとも約5カ月間、少なくとも約6カ月間、少なくとも約1年間、またはそれを超える期間にわたり、毎日投与される。
【0047】
一部の実施形態において、非骨髄破壊的な用量は、蓄積毒性を生じさせない、ある期間にわたって提供される。例えば、蓄積毒性を生じさせない期間は、約1年間未満、約6カ月間未満、約3カ月間未満、約2カ月間未満、約1カ月間未満、約3週間未満、約2週間未満、約1週間未満、約6日間未満、約5日間未満、約4日間未満、約3日間未満、または約2日間未満の、ある期間である。
【0048】
一部の実施形態において、シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の投与と非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤の投与との間で、少なくとも1回の、ある期間の中断がある。例えば、期間は、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約1カ月間、約2カ月間、約3カ月間、約6カ月間、約1年間、またはそれを超える期間であり得る。一部の実施形態において、期間は、約3日間、約7日間、約10日間、および約14日間である。
【0049】
一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約1年間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約6カ月間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%、約90%、約95%、または100%が、約5カ月間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約4カ月間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約3カ月間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約2カ月間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約1カ月以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約2週間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。一部の実施形態において、患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、約1週間以内に、修飾された細胞で置き換えられる。
【0050】
一部の実施形態において、患者は、本方法の間、骨髄破壊される、および/または免疫不全となることはない。一部の実施形態において、患者は、臨床的に関連する貧血、好中球減少、血小板減少、汎血球減少、低血小板、低白血球、低赤血球、またはこれらのあらゆる組み合わせ、もしくは関連する症状を経験しない。
【0051】
別の実施形態において、本開示の細胞および化学療法剤で処置すると、対象または対象群は、以下の結果の1つまたはそれ以上を示し得る:
(i)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の白血球の増大;
(ii)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の顆粒球の増大;
(iii)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の好中球の増大;
(iv)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)のリンパ球の増大;
(v)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の好酸球の増大;
(vi)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の単球の増大;
(vii)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の好塩基球の増大;
(viii)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の赤血球の増大;
(ix)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)の3つの血中細胞成分(赤血球、白血球、および血小板)の全ての増大;
(x)少なくとも約6カ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、約25年間、約30年間、約35年間、約40年間、約45年間、約50年間、約55年間、約60年間、またはそれを超える期間にわたり再発がない;
(xi)コントロールと比較して、少なくとも約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、約25年間、約30年間、約35年間、約40年間、約45年間、約50年間、約55年間、約60年間、またはそれを超える期間の患者の無再発生存率の増大;
(xii)コントロールと比較して、少なくとも約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、約25年間、約30年間、約35年間、約40年間、約45年間、約50年間、約55年間、約60年間、またはそれを超える期間の、患者の生存率の増大;
(xiii)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)のHIVの細胞内寿命の短縮;
(xiv)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)のHIV保有宿主の減少;および
(xv)コントロールと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(実際の変化%、または変化%の中央値)のウイルスDNAの枯渇。
【0052】
一部の実施形態において、コントロールは、プラセボで処置された対象、ベースラインコントロール、または未修飾の細胞で処置された対象であり得る。
【0053】
一部の実施形態において、修飾された細胞は、HIVの少なくとも1つの症状をコントロールと比較して少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%低減させるために効果的な期間にわたり対象に投与される。コントロールは、プラセボで処置された対象、ベースラインコントロール、または未修飾の細胞で処置された対象であり得る。
【0054】
非限定的な症状としては、発熱、頭痛、活力不足、皮膚発疹、皮膚疼痛、腺肥大、感染(例えば、肺炎、結核、C型肝炎)、寝汗、下痢、吐き気および嘔吐、体重減少、重度の頭痛、関節痛、筋肉痛、ならびに慢性的な咳が含まれる。
【0055】
一部の実施形態において、修飾された細胞は、少なくとも1つの他のHIV療法と共に投与される。適切な他のHIV療法には、当業者に知られている任意のHIV療法が含まれる。他のHIV療法の非限定的な例としては、組み合わせ薬剤(例えば、エファビレンツ/エムトリシタビン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Atripla(登録商標))、エムトリシタビン/リルピビリン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Complera(登録商標))、エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Stribild(登録商標))、およびアバカビル/ドルテグラビル/ラミブジン(Triumeq(登録商標)))、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)(例えば、アバカビル(Ziagen(登録商標))、エファビレンツ/エムトリシタビン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Atripla(登録商標))、ラミブジン/ジドブジン(Combivir(登録商標))、エムトリシタビン/リルピビリン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Complera(登録商標))、エムトリシタビン(Emtriva(登録商標))、ラミブジン(Epivir(登録商標))、アバカビル/ラミブジン(Epzicom(登録商標))、ジドブジン(Retrovir(登録商標))、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン(Trizivir)、エムトリシタビン/テノフォビルジソプロキシルフマレート(Truvada(登録商標))、ジダノシン(Videx(登録商標))、ジダノシン持続放出(Videx EC(登録商標))、テノフォビルジソプロキシルフマレート(Viread(登録商標))、およびスタブジン(Zerit(登録商標)))、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、チプラナビル(Aptivus(登録商標))、インジナビル(Crixivan(登録商標))、アタザナビル/コビシスタット(Evotaz(登録商標))、サキナビル(Invirase(登録商標))、ロピナビル/リトナビル(Kaletra(登録商標))、ホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、ダルナビル/コビシスタット(Prezcobix(登録商標))、ダルナビル(Prezista(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、ネルフィナビル(Viracept(登録商標)))、侵入阻害剤(例えば、エンフビルチド(Fuzeon(登録商標)))、インテグラーゼ阻害剤(例えば、ラルテグラビル(Isentress(登録商標))、ドルテグラビル(Tivicay(登録商標))、およびエルビテグラビル(Vitekta(登録商標)))、ケモカイン共受容体アンタゴニスト(CCR5アンタゴニスト)(例えば、マラビロク(Selzentry(登録商標))またはビクリビロック)、シトクロムP4503A阻害剤、ならびに免疫に基づく治療法(例えば、ヒドロキシクロロキンスルフェート(Plaquenil)が含まれる。一部の実施形態において、修飾された細胞および少なくとも1つの他のHIV療法は、同時に投与される。他の実施形態において、修飾された細胞および少なくとも1つの他のHIV療法は、連続的に投与される。一部の実施形態において、上記の他のHIV療法のうちの少なくとも1つの投与が明確に排除され、例えば、一部の実施形態において、NRTIが明確に排除される。一部の実施形態において、本明細書において開示されている修飾された細胞および非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤(例えば、シクロホスファミド)以外の他のHIV療法は投与されない。
【0056】
細胞、化学療法剤、および場合により他のHIV療法は、HIVを有する患者に1回投与することができるか、または、治療法の間に複数回、例えば、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、5時間ごと、6時間ごと、7時間ごと、8時間ごと、9時間ごと、10時間ごと、11時間ごと、12時間ごと、13時間ごと、14時間ごと、15時間ごと、16時間ごと、17時間ごと、18時間ごと、19時間ごと、20時間ごと、21時間ごと、22時間ごと、もしくは23時間ごとに1回、もしくは1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、もしくは7日ごとに1回、もしくは1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、もしくはそれを超える週ごとに1回、もしくは終点を含めた、これらの数値のうちの任意の2つの間の任意の範囲ごとに1回、投与することができる。
【0057】
一部の実施形態において、HIVを有する患者を処置する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、患者のCD34+幹細胞を骨髄から末梢に動員することを含む。一部の実施形態において、細胞は、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与することによって動員される。G-CSFは、例えば1日間、2日間、3日間、4日間、または5日間のレジメンとして投与することができる。一部の実施形態において、G-CSFは、3~5日間投与される。動員された細胞は、アフェレーシスなどの方法論を使用して捕捉することができる。一部の実施形態において、例えばアフェレーシスによる細胞の単離は、CD34+細胞数が体重1kg当たり10.0から20.0×106となるかまたはそれを超えると行われる。一部の実施形態において、細胞数は、体重1kg当たり5.0から25.0×106であるかまたはそれを超える。Cd34+細胞は、形質導入のために細胞を捕捉するためのマーカーとして使用されるが、本明細書において記載されるものなどの他の細胞マーカーも使用することができる。例えば、特定のマーカーまたはマーカーの組み合わせの存在に基づいて単離される、使用される細胞としては、例えば、CD34、CD4、Sca-1 CD38、CD123、CD90、CD45、CD133、抗原提示細胞マーカー(CD8、CD8アルファ、CD11b、CD11c、CD103、CD205、CD24、CD115、CD117、CD135、CD11clow、CD45RA、CD123、ILT-7、MHCクラスII、MHCクラスIIlow、TLR7、および/またはTRL9)が含まれる。一部の実施形態において、細胞は、特定のマーカー、例えば、CD3、CD14、CD19、CD56、および/またはCD66bの不在に基づいて単離される。他の実施形態において、負の選択が、例えばT細胞、B細胞、顆粒球、および/または骨髄単球のマーカーについて行われる。一部の実施形態において、細胞は、単独のまたは任意の他のマーカーと組み合わされた、Thy-1の存在に基づいて単離される。一部の実施形態において、HSCは、Lin-Thy1+Sca-1+発現プロファイルに基づいて単離される。一部の実施形態において、マウスHSCは、発現プロファイルCD34-、Sca1+、c-kit+によって単離することができる。一部の実施形態において、ヒトHSCは、CD34の発現に基づいて単離することができる。一部の実施形態において、単離された細胞は、CD34+もしくはCD4+、またはこれらのあらゆる組み合わせである。
【0058】
一部の実施形態において、本方法は、細胞回収物を遠心分離することを含む。これは、細胞に富んだペレットを例えば開発するために行われる。細胞は次いで、凍結保存溶液中に再懸濁され、凍結される。一部の実施形態において、凍結保存溶液は、ヘパリン化されたPlasmalyte溶液および10%DMSO(ジメチルスルホキシド)の溶液を含む。一部の実施形態において、細胞は、最初に-4℃で保管され、次いで、サンプルは、-156℃(蒸気相で保管される場合)から-196℃(液相で保管される場合)の標的温度にまで下げて凍結される。
【0059】
一部の実施形態において、本方法は、単離された細胞に形質導入して、シクロホスファミドなどの化学療法剤に対して耐性とすることを含む。本明細書において記載するように、化学療法耐性は、ALDH1の発現によって達成される。ALDH1は、レンチウイルスベクターの使用などの、ベクター(本明細書全体を通して記載される)の使用を通して、選択された細胞に導入することができる。ALDH1は、細胞特異的であり得るプロモーターに機能可能に接続させることができる。一部の実施形態において、プロモーターは、CD34プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、hCD34プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号12の配列を有する。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号8で提供されるようなhCD4プロモーターである。一部の実施形態において、ALDH1の配列は、配列番号10で提供されるタンパク質として発現される。一部の実施形態において、ALDH1は、配列番号1の配列を含む核酸分子によってコードされる。遺伝子コードの縮重の性質に起因して、配列番号1の配列は非限定的な例として提供され、他の核酸分子も、配列番号10を含むタンパク質の発現をコードするために使用される。一部の実施形態において、ALDH1は、ALDH1の機能を変化させない1~10個の保存的な置換を含む。一部の実施形態において、発現したALDH1は、配列番号10に少なくとも95%相同であるかまたは同一である。
【0060】
ベクターにおけるALDH1の発現はまた、エンハンサーエレメントによっても駆動される。例えば、エンハンサーエレメントは、CD3Eエンハンサーであり得る。一部の実施形態において、CD3Eエンハンサーは、配列番号9の配列を含む。
【0061】
一部の実施形態において、CD34+細胞は、磁気ビーズ分離によって単離することができる。レンチウイルスベクターを介するヒトCD34+細胞の形質導入は、例えば、サイトカイン幹細胞因子(SCF)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、トロンボポエチン(TPO)、IL-6、IL-2、IL-3、フィブロネクチン、またはこれらのあらゆる組み合わせを添加した培地における細胞の24時間の予備刺激を含み得る。一部の実施形態において、細胞は次いで、ALDH1を発現するレンチウイルスと接触させられる(感染させられる)。一部の実施形態において、ベクターは、配列番号2、配列番号4、または配列番号5の配列を含む。接触は、無血清X-Vivo 10培地において、サイトカインSCF、FLT3L、およびTPO(それぞれ100ng・ml-1)の存在下で行うことができる。細胞は次いで、場合により凍結されることも、または凍結されないこともある。一部の実施形態において、細胞は、AAVまたはAVベクターと接触させられない。
【0062】
一部の実施形態において、本方法は、形質導入された細胞を対象に注入することを含む。一部の実施形態において、対象はHIVを有している。一部の実施形態において、対象は、HIVを有していないがHIVに罹るリスクが高く、したがって、HIV耐性となることを希望している。
【0063】
一部の実施形態において、修飾された細胞を注入した後、非骨髄破壊的な用量の、シクロホスファミドなどの化学療薬が投与される。一部の実施形態において、投薬量は、50~200mgの用量であり、1日に1回投与される。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.15mg/kg/日から2.5mg/kg/日未満、約0.4mg/kg/日から約1.7mg/kg/日、または約0.8mg/kg/日から約1.5mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.15mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約1.0mg/kg/日、約1.1mg/kg/日、約1.2mg/kg/日、約1.3mg/kg/日、約1.4mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、約1.6mg/kg/日、約1.7mg/kg/日、約1.8mg/kg/日、約1.9mg/kg/日、約2.0mg/kg/日、約2.1mg/kg/日、約2.2mg/kg/日、約2.3mg/kg/日、または約2.4mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約1.3mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.8mg/kg/日から約1.6mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.98mg/kg/日、約1.3mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、または約1.6mg/kg/日である。一部の実施形態において、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.5から約2mg/kg/日である。用量は、本明細書で示されるように投与することができる。いかなる特定の理論にも拘束されないが、グラフトを容易にするための1日に1回の経口シクロホスファミドは、遺伝子修飾された骨髄細胞を増大させる。修飾されたCD34
+細胞が注入される時点で患者がHIV
+であり得ることが考えられ、このケースでは、細胞は、HIVを処置および/もしくは治癒するために機能しており、または、修飾されたCD34
+細胞が注入される時点で患者がHIV
-であり得ることが考えられ、このケースでは、細胞は、将来的なHIV感染を予防するために機能している。HIV
+患者の処置についての非限定的な概略図が
図9および
図10で示されるが、患者がHIV
-でもあり得ることが理解される。
【0064】
一部の実施形態において、対象はまた、修飾された細胞を注入する前にフルダラビンでも処置される。一部の実施形態において、回収後2日目(または移植前-5日目)に、患者は、5日間にわたり(移植前-1日目まで)フルダラビン(15mg/m2)で処置される。一部の実施形態において、フルダラビンに代わって、移植前-1日目に、患者を4mg/kgのブスルファンで処置することができる。一部の実施形態において、患者は、移植前-2日目に、単回用量の1000mg/m2のシクロホスファミドで処置される。しかし、細胞を注入した後、対象は、本明細書で示される非骨髄破壊的な用量のシクロホスファミドで処置される。
【0065】
本明細書において記載するように、ベクターはまた、shCCR5または融合阻害剤、例えば、本明細書において記載されるC44、C46、もしくはその他を発現するものを含む他の発現カセットを含み得る。融合阻害剤は、GPIアンカーおよびHIV融合阻害剤の融合体であり得る。一部の実施形態において、融合阻害剤は、配列番号3の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態において、融合阻害剤は、配列番号11のアミノ酸配列を含むタンパク質である。一部の実施形態において、融合阻害剤は、配列番号14の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態において、融合阻害剤は、配列番号15のアミノ酸配列を含むタンパク質である。一部の実施形態において、融合阻害剤は、GPIアンカーによって膜に固定されている。一部の実施形態において、アンカーは、配列番号16の配列を含む核酸分子によってコードされる。一部の実施形態において、アンカーは、配列番号17の配列を含む。一部の実施形態において、融合体-アンカータンパク質は、IgGヒンジ領域を含む。一部の実施形態において、IgGヒンジ領域は、IgG3である。一部の実施形態において、融合阻害剤タンパク質は、配列番号19の配列を含む。一部の実施形態において、融合阻害剤タンパク質は、配列番号18の配列を含む核酸分子によってコードされる。一部の実施形態において、アンカーは、GP41である。
【0066】
一部の実施形態において、融合阻害剤は、ALDH1プロモーターのものとは異なるプロモーターの制御下に置かれる。一部の実施形態において、プロモーターは、EFSプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、CD4プロモーター、例えば、本明細書において記載されるCD4プロモーターである。
【0067】
一部の実施形態において、本明細書において提供されるように細胞に形質導入されるベクターは、CCR5の発現を低減させるまたは阻害するアンチセンス分子を発現した。一部の実施形態において、ベクターは、shCCR5阻害剤分子をコードする。一部の実施形態において、レンチウイルスベクターは、配列番号6のhCCR5 shRNAのセンス配列、もしくはその相補体、および/または、配列番号7のhCCR5 shRNAのアンチセンス配列、もしくはその相補体をコードする。一部の実施形態において、配列はまた、逆方向でもあり得る。一部の実施形態において、ベクターは、mir30発現カセットを含む。一部の実施形態において、mir30発現カセットは、hCCR5 shRNAをコードする。一部の実施形態において、mir30構築物は、配列番号13の配列を含む。CCR5の発現を阻害するために使用することができるアンチセンス分子は非限定的な例であり、CCR5を標的化する他のアンチセンス分子も使用することができる。
【0068】
したがって、一部の実施形態において、配列番号6、配列番号7、および/または配列番号13の配列を含む核酸分子が提供される。
【0069】
一部の実施形態において、本開示は、配列番号10、配列番号11、配列番号14、配列番号17、配列番号18、および/または配列番号19を含むタンパク質を提供する。
【0070】
一部の実施形態において、配列番号1もしくはその変異体、配列番号3もしくはその変異体、配列番号6もしくはその変異体、配列番号7もしくはその変異体、配列番号13もしくはその変異体、配列番号14もしくはその変異体、配列番号16もしくはその変異体、配列番号18もしくはその変異体、またはこれらのあらゆる組み合わせを含む核酸分子が提供される。一部の実施形態において、核酸分子は、配列番号1またはその変異体、配列番号6またはその変異体、配列番号7またはその変異体、ならびに配列番号3、配列番号14、および配列番号18の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態において、配列番号2、ならびに配列番号11、配列番号15、および配列番号19の1つまたはそれ以上を含むタンパク質をコードする核酸分子が提供される。
【0071】
一部の実施形態において、本開示は、ALDH1もしくはその変異体、shCCR5分子もしくはその変異体、および/または固定された融合阻害剤を含む融合阻害剤をコードする核酸分子を提供する。
【0072】
一部の実施形態において、単一のベクターなどの単一の核酸分子が、本明細書において提供される核酸分子またはタンパク質のそれぞれをコードするまたは発現するために使用される。一部の実施形態において、単一のレンチウイルスは、本明細書で提供される核酸配列を含む。一部の実施形態において、ALDH1もしくはその変異体、shCCR5分子もしくはその変異体、および/または融合阻害剤のそれぞれをコードする単一の発現構築物を含むレンチウイルスが提供される。本明細書において記載される様々なエレメントを含むベクターの非限定的な例は、
図4、
図5、
図6、
図11、および
図12で示されている。ALDH1、shCCR5、および融合阻害剤(固定された融合阻害剤を含む)をコードする核酸分子を機能可能に接続しているプロモーターおよび応答エレメントは、非限定的であり、他のプロモーターおよび応答エレメントも使用することができる。当業者には、説明される異なるプロモーターが互いに交換可能であることが理解される。
【0073】
ウイルスベクターとして、またはレンチウイルスを形成するための基礎として使用することができる核酸配列の非限定的な例には、例えば、配列番号2、配列番号4、および配列番号5を含む核酸配列が含まれる。
【0074】
一部の実施形態において、核酸分子は、ALDH1、shCCR5、および/または融合阻害剤タンパク質をコードする核酸分子に隣接する5’LTRおよび3’LTRを含む。疑問を残さないよう述べると、shCCR5配列および融合阻害剤配列は、ALDH1と共発現させるために使用される目的の他の配列に換えることができる。したがって、一部の実施形態において、核酸分子は、ALDH1をコードする配列と、例えばあらゆる他のタンパク質、アンチセンス、miRNA、または骨髄もしくは本明細書で提供される細胞型において発現させるために望ましい他の核酸分子であり得る、目的の配列とを含む。
【0075】
したがって、一部の実施形態において、ALDH1および目的の分子を発現する細胞を個体に投与すること、ならびに非骨髄破壊的な用量の化学療法薬(例えば、シクロホスファミド)を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0076】
一部の実施形態において、ALDH1、およびi)少なくとも1つのHIV共受容体突然変異体、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、またはこれらのあらゆる組み合わせをコードする異種ヌクレオチド分子の1つを異種発現している細胞の集団を対象に投与することを含む、対象においてHIVを処置する方法が提供される。一部の実施形態において、本方法は、非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤を投与することを含む。一部の実施形態において、細胞は、対象にとって自家である。一部の実施形態において、細胞は、対象にとって同種である。一部の実施形態において、細胞は、shCCR5、shCXCR4、および/またはC-ペプチド融合阻害剤を発現する。一部の実施形態において、細胞は、1、3、6、7、8、9、12、13、14、16、18、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む核酸分子を含む。一部の実施形態において、細胞は、配列番号10、11、6、7、13、15、17、19、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列をコードする核酸分子を含む。一部の実施形態において、細胞は、CD34+および/もしくはCD4+であるか、または本明細書において提供される他のものである。
【0077】
一部の実施形態において、ALDH1および目的の分子を異種発現する細胞を対象に投与すること;ならびに非骨髄破壊的な用量のシクロホスファミドを投与することを含む、対象において目的の分子を発現させる方法が提供される。一部の実施形態において、細胞は、CD34+および/もしくはCD4+、または本明細書において提供される他のものである。一部の実施形態において、目的の分子は、CCR5の発現を低減させる分子;CXCR4の発現を低減させる分子;C-ペプチド融合阻害剤の発現をコードする分子;またはこれらのあらゆる組み合わせである。一部の実施形態において、CCR5の発現を低減させる目的の分子は、shCCR5である。一部の実施形態において、分子は、配列番号6および/または配列番号7を含むまたはコードする核酸分子を含む。一部の実施形態において、C-ペプチド融合阻害剤は、配列番号11の配列、配列番号15の配列、配列番号19の配列、またはこれらのあらゆる組み合わせを含む。
【0078】
様々な配列が本明細書で提供されることが理解される。正確な配列に加えて、開示される配列の変異体である配列もまた提供される。一部の実施形態において、言及された配列に対して少なくとも、約、または正確に70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの相同性または同一性を有する配列が提供される。当業者には、2つのタンパク質または核酸の相同性を決定する方法が容易に理解される。例えば、相同性は、2つの配列をアラインして相同性がその最も高いレベルとなるようにした後に、計算することができる。一部の実施形態において、相同性の計算は、公開されたアルゴリズムによって行うことができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch、J.MoL Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性方法のためのサーチによって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison、Wis.における、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査によって、行うことができる。同一のタイプの相同性を、少なくとも核酸アラインメントに関する材料について参照によって本明細書に組み込まれる、例えばZuker,M.Science 244:48~52頁、1989;Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706~7710頁、1989;Jaegerら、Methods Enzymol.183:281~306頁、1989において開示されているアルゴリズムによって、核酸について得ることができる。例えば、デフォルトの設定を使用したBlastnまたはBlastPを使用して、アメリカ国立生物工学情報センターによって維持されているウェブサイトを使用して2つの配列をアラインすることができる。
【0079】
例えば、本明細書において使用される場合、別の配列に対して特定の相同性パーセントを有すると言及される配列は、上記の計算方法のいずれか1つまたはそれ以上によって計算された場合に言及された相同性を有する配列を指す。例えば、Zukerの計算方法を使用して第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有すると計算される場合、他の計算方法のいずれかによって計算すると第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有さないとしても、本明細書において定義されるところでは、第1の配列は、第2の配列に対して80パーセントの相同性を有する。別の例として、Zukerの計算方法ならびにPearsonおよびLipmanの計算方法の両方を使用して第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有すると計算される場合、SmithおよびWatermanの計算方法、NeedlemanおよびWunschの計算方法、Jaegerの計算方法、または他の計算方法のいずれかによって計算すると第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有さないとしても、本明細書において定義されるところでは、第1の配列は、第2の配列に対して80パーセントの相同性を有する。さらに別の例として、計算方法の各々を使用して、第1の配列が第2の配列に対して80パーセントの相同性を有すると計算される場合、本明細書において定義されるところでは、第1の配列は、第2の配列に対して80パーセントの相同性を有する(しかし、実際には、異なる計算方法では、相同性パーセンテージの異なる計算結果が生じることが多い)。
【0080】
細胞および組成物
ある特定の実施形態において、開示された方法に関連する、上記の化学療法耐性の修飾された細胞、および開示された方法におけるこれらの細胞の使用が、本明細書において提供される。また、化学療法耐性を付与する1つまたはそれ以上の修飾を適切な細胞に組み込むことによって、および場合により、化学療法耐性に関連しない1つまたはそれ以上のさらなる修飾、例えばさらなるHIV/疾患特異的な修飾を組み込むことによって、これらの細胞を生成させる方法も提供される。
【0081】
また、ある特定の実施形態において、本明細書において提供される少なくとも1つの化学療法耐性の修飾された細胞を含む、本明細書において提供される方法において使用するための組成物が含まれる、組成物が、本明細書において提供される。一部の実施形態において、組成物はさらに、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、担体、またはこれらのあらゆる組み合わせを含む。
【0082】
組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、薬学的に許容可能な塩、希釈剤、担体、媒体、および当業者に周知のこのような他の不活性作用剤を含み得る。医薬調製物において一般に利用される媒体および賦形剤には、例えば、タルク、アラビアガム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ココアバター、水性または非水性溶媒、油、パラフィン誘導体、グリコールなどが含まれる。溶液は、水または生理学的に適合する有機溶媒、例えば、エタノール、1,2-プロピレングリコール、ポリグリコール、ジメチルスルホキシド、脂肪族アルコール、トリグリセリド、グリセリンの部分エステル、およびそれに類するものを使用して調製することができる。組成物は、無菌の等張生理食塩水、水、1,3-ブタンジオール、エタノール、1,2-プロピレングリコール、水と混合したポリグリコール、リンゲル液などが含まれる、従来の技術を使用して調製することができる。一態様において、着色剤は、組成物の位置を確認すること、および組成物を意図した処置部位に正確に置くことを容易にするために添加される。
【0083】
組成物は、防腐剤および/または安定剤を含み得る。防腐剤の非限定的な例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、チメロサール、フェニル水銀塩、クロルヘキシジン、フェノール、3-クレゾール、四級アンモニウム化合物(QAC)、クロルブタノール、2-エトキシエタノール、およびイミド尿素が含まれる。
【0084】
張性を調節するために、組成物は、ナトリウム塩などの生理学的な塩を含み得る。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1から20mg/mlの間で存在し得る。存在し得る他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムが含まれる。
【0085】
組成物は、1つまたはそれ以上のバッファーを含み得る。典型的なバッファーとしては:リン酸バッファー;トリスバッファー;ホウ酸バッファー;コハク酸バッファー;ヒスチジンバッファー;またはクエン酸バッファーが含まれる。バッファーは、典型的には、5~20mMの範囲の濃度で含まれる。組成物のpHは、一般に、5から8の間、さらに典型的には6から8の間、例えば6.5から7.5の間、または7.0から7.8の間である。
【0086】
一部の実施形態において、組成物は、凍結保護剤を含み得る。凍結保護剤の非限定的な例としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ショ糖、トレハロース、デキストロース、およびこれらのあらゆる組み合わせが含まれる。
【0087】
一実施形態において、細胞は、培養された細胞の集団の一部である(すなわち、インビトロ)。別の実施形態において、細胞は、対象の細胞の集団の一部である(すなわち、インビボ)。例えば、修飾された細胞および/または非骨髄破壊的な用量の化学療法剤は、HIVまたは目的の疾患を処置または予防する目的で、インビボの細胞に、または対象内の組織もしくは器官を形成するインビボの細胞の集団に送達される。あるいは、修飾された細胞および/または非骨髄破壊的な用量の化学療法剤は、特定のタイプの細胞に対するその影響を研究するための実験を行う目的で、培養された細胞または培養された細胞の集団に送達される。
【0088】
組成物は、インプラント可能な装置に含めることができる。本発明によって検討される適切なインプラント可能な装置としては、血管内のステント(例えば、自己拡張型のステント、バルーン拡張型のステント、およびステントグラフト)、足場、グラフト、およびそれに類するものが含まれる。このようなインプラント可能な装置は、少なくとも片面を、HIVもしくは他の疾患を処置もしくは予防し得る組成物で被覆するか、またはHIVもしくは他の疾患を処置もしくは予防し得る組成物を含浸させることができる。
【0089】
配列が本明細書において参照され、以下の表またはそれと同等のものにおける配列が参照される:
【0090】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0091】
組成物は、任意の適切な様式および経路によって対象に投与することができる。非限定的な例には、内部経路、肺経路、直腸経路、鼻経路、膣経路、舌経路、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、皮内経路、および皮下経路が含まれる。組成物はまた、クリーム、ゲル、またはパッチの一部として、経皮送達に適している。他の投薬形態としては、錠剤;カプセル;ピル;粉末;エアロゾル;坐剤;非経口投与薬;ならびに懸濁液、溶液、およびエマルジョンを含む経口液体が含まれる。持続放出投薬形態もまた使用することができる。非骨髄破壊的な用量の化学療法薬は、経口的に、または本明細書において提供される他の方法で投与することができる。
【0092】
一部の実施形態において、本明細書において提供される実施形態はまた、限定はしないが、以下のものを含む:
【0093】
1.患者において骨髄移植を行うための方法であって、シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団および非骨髄破壊的な少なくとも1用量のシクロホスファミドを患者に投与することを含む前記方法。
【0094】
2.シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)をコードする異種遺伝子を含む、実施形態1の方法。
【0095】
3.シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の集団はALDH1を発現する、実施形態1の方法。
【0096】
4.シクロホスファミド耐性の修飾された細胞のシクロホスファミド耐性は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)の発現によって付与される、実施形態1の方法。
【0097】
5.患者の骨髄の50%超が、6カ月間以内に、シクロホスファミド耐性の修飾された細胞またはそれに由来する細胞で置き換えられる、実施形態1~4のいずれか1つの方法。
【0098】
6.患者はHIVを有する、実施形態1~5のいずれか1つの方法。
【0099】
7.修飾された細胞のシクロホスファミド耐性は一過性である、実施形態1~6のいずれか1つの方法。
【0100】
8.細胞は幹細胞または免疫細胞である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
9.幹細胞は、胎性幹細胞、臍帯血由来の幹細胞、造血幹細胞(HSC)、多能性幹細胞(PSC)、人工PSC(iPSC)、胚性幹細胞(ESC)、または、CD34+細胞、CD90+細胞、CD45+細胞、CD17+細胞、CD45RA-細胞、CD38-などの、これらに由来する細胞、またはこれらのあらゆる組み合わせである、実施形態8の方法。
【0102】
10.免疫細胞はT細胞である、実施形態8の方法。
【0103】
11.修飾された細胞は、患者にとって自家である、患者にとって同種である、またはこれらの組み合わせである、実施形態1~10のいずれか1つの方法。
【0104】
12.未修飾の細胞を、ALDH1の発現をコードする発現ベクターと接触させて、シクロホスファミド耐性の修飾された細胞を生産することをさらに含む、実施形態1~11のいずれか1つの方法。
【0105】
13.発現ベクターはウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、実施形態12の方法。
【0106】
14.ウイルスベクターはレンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである、実施形態13の方法。
【0107】
15.発現ベクターは、レトロウイルス、トランスポゾン、エピソーム性の発現ベクター、修飾されたRNA、プラスミド、またはこれらのあらゆる組み合わせである、実施形態12の方法。
【0108】
16.非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤は、修飾された細胞を投与した後に投与される、実施形態1~15のいずれか1つの方法。
【0109】
17.化学療法剤の非骨髄破壊的な少なくとも1用量は、シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量である、実施形態1~16のいずれか1つの方法。
【0110】
18.シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.16mg/kg/日から2.5mg/kg/日未満である、実施形態17の方法。
【0111】
19.シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.41mg/kg/日から約1.63mg/kg/日である、実施形態17の方法。
【0112】
20.シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約0.81mg/kg/日から約1.46mg/kg/日である、実施形態17の方法。
【0113】
21.シクロホスファミドの非骨髄破壊的な用量は、約1.3mg/kg/日である、実施形態17の方法。
【0114】
22.患者は、100mg/m2/日の用量のシクロホスファミドを1~14日間の連続する日数にわたって投与されない、実施形態17~21のいずれか1つの方法。
【0115】
23.患者は、5~7g/m2の用量のシクロホスファミドを12~24時間にわたって投与されない、実施形態17~22のいずれか1つの方法。
【0116】
24.非骨髄破壊的な化学療法剤は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、または少なくとも6カ月間にわたり毎日投与される、実施形態1~23のいずれか1つに従った方法。
【0117】
25.シクロホスファミド耐性の修飾された細胞の投与と非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤の投与との間のある期間にわたり、非骨髄破壊的な用量の化学療法剤を投与しないことをさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに従った方法。
【0118】
26.期間は、約3日間、約7日、約10日間、および約14日間からなる群から選択される、実施形態25の方法。
【0119】
27.患者の骨髄の約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または100%が、修飾された細胞で置き換えられる、実施形態1~26のいずれか1つの方法。
【0120】
28.患者は、非骨髄破壊的な少なくとも1用量の化学療法剤を投与した結果、骨髄破壊される、および/または免疫不全となることはない、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
29.患者は、臨床的に関連する貧血、好中球減少、血小板減少、汎血球減少、低血小板、低白血球、またはこれらのあらゆる組み合わせもしくは関連する症状を経験しない、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
30.事前調整工程は細胞を投与する前に行われる、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
31.事前調整工程は、非骨髄破壊的な化学療法事前調整工程である、実施形態30の方法。
【0124】
32.修飾された細胞はHIV感染に対して耐性である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
33.修飾された細胞は、HIV感染に対して耐性の少なくとも1つのHIV共受容体の突然変異、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、またはこれらのあらゆる組み合わせを異種発現する、実施形態32の方法。
【0126】
34.修飾された細胞は、shCCR5、shCXCR4、C-ペプチド融合阻害剤、またはこれらのあらゆる組み合わせを異種発現する、実施形態32の方法。
【0127】
35.修飾された細胞はHIV共受容体を発現しない、実施形態32の方法。
【0128】
36.修飾された細胞は、CCR5、CXCR4を発現しないか、またはCCR5-Δ32を発現するか、またはこれらの組み合わせである、実施形態32の方法。
【0129】
37.ALDH1、ならびに
i)少なくとも1つのHIV共受容体突然変異体、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、もしくはこれらのあらゆる組み合わせをコードする異種ヌクレオチド分子;および/またはii)内因性のHIV共受容体の突然変異もしくは欠失の1つ
の発現をコードする異種ヌクレオチド分子を含む細胞。
【0130】
38.細胞は、i.CCR5の発現を低減させる分子をコードする;ii.CXCR4の発現を低減させる分子をコードする;iii.C-ペプチド融合阻害剤の発現をコードする;iv.1、3、6、7、8、9、12、13、14、16、18、もしくはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む;v.配列番号10、11、6、7、13、15、17、19、もしくはこれらのあらゆる組み合わせの配列をコードする;またはこれらのあらゆる組み合わせである異種ヌクレオチド配列を含む、実施形態37の細胞。
【0131】
39.shCCR5、shCXCR4、および/またはC44などのC-ペプチド融合阻害剤を発現する、実施形態37または38の細胞。
【0132】
40.非ウイルス遺伝子移入系を用いて、異種ヌクレオチド配列を発現するように修飾されている、実施形態37の細胞。
【0133】
41.非ウイルス遺伝子移入系はトランスポゾン遺伝子移入系である、実施形態40の細胞。
【0134】
42.トランスポゾン遺伝子移入系は、Sleeping Beauty遺伝子移入系またはPiggyBacトランスポゾン遺伝子移入系である、実施形態37の細胞。
【0135】
43.配列番号4の異種核酸配列を含む、実施形態37~42のいずれか1つの細胞。
【0136】
44.実施形態37~43のいずれか1つの1つまたはそれ以上の細胞を含む組成物。
【0137】
45.ALDH1、および
i)少なくとも1つのHIV共受容体突然変異体、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、またはこれらのあらゆる組み合わせをコードする異種ヌクレオチド分子の1つ
をコードする核酸分子。
【0138】
46.異種ヌクレオチド配列は、i.CCR5の発現を低減させる、ii.CXCR4の発現を低減させる;C-ペプチド融合阻害剤の発現をコードする;またはこれらのあらゆる組み合わせである分子をコードする、実施形態45の核酸分子。
【0139】
47.核酸分子は、shCCR5、shCXCR4、および/またはC-ペプチド融合阻害剤の発現をコードする、実施形態45または46の核酸分子。
【0140】
48.分子は、1、3、6、7、8、9、12、13、14、16、18、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む、実施形態45の核酸分子。
【0141】
49.分子は、配列番号10、11、6、7、13、15、17、19、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列をコードする核酸分子を含む、実施形態45の核酸分子。
【0142】
50.実施形態45~49のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。
【0143】
51.レンチウイルスを生産するために使用することができるベクターである、実施形態50のベクター。
【0144】
52.レンチウイルスベクターである、実施形態50のベクター。
【0145】
53.配列番号1、3、6、7、8、9、12、13、14、16、18、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む、実施形態50のベクター。
【0146】
54.配列番号10、11、6、7、13、15、17、19、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列をコードする核酸分子を含む、実施形態50のベクター。
【0147】
55.ALDH1、および
i)少なくとも1つのHIV共受容体突然変異体、少なくとも1つのHIV共受容体の1つの突然変異もしくは複数の突然変異、少なくとも1つのHIV融合阻害剤、HIV共受容体の発現を低減させる分子、またはこれらのあらゆる組み合わせをコードする異種ヌクレオチド分子の1つ
を異種発現する細胞の集団;ならびに
少なくとも1つの非骨髄破壊的な用量の化学療法剤
を対象に投与することを含む、対象においてHIVを処置する方法。
【0148】
56.細胞は、shCCR5、shCXCR4、および/またはC-ペプチド融合阻害剤を発現する、実施形態55の方法。
【0149】
57.細胞は、1、3、6、7、8、9、12、13、14、16、18、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む核酸分子を含む、実施形態55の方法。
【0150】
58.細胞は、配列番号10、11、6、7、13、15、17、19、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列をコードする核酸分子を含む、実施形態55の方法。
【0151】
59.ALDH1および目的の分子を異種発現する細胞を対象に投与すること;ならびに非骨髄破壊的な用量のシクロホスファミドを投与することを含む、対象において目的の分子を発現させる方法。
【0152】
60.細胞は、CD34+および/もしくはCD4+、または本明細書において提供される他のものである、実施形態59の方法。
【0153】
61.目的の分子は、CCR5の発現を低減させる;CXCR4の発現を低減させる;C-ペプチド融合阻害剤の発現をコードする;またはこれらのあらゆる組み合わせであるものである、実施形態59の方法。
【0154】
62.CCR5の発現を低減させる目的の分子は、shCCR5である、実施形態61の方法。
【0155】
63.分子は、配列番号6および/または配列番号7を含むまたはコードする核酸分子を含む、実施形態62の方法。
【0156】
64.C-ペプチド融合阻害剤は、配列番号11、15、19、またはこれらのあらゆる組み合わせの配列を含む、実施形態61の方法。
【0157】
以下の実施例は例示的なものであるが、本明細書において記載される化合物、組成物、および方法を限定するものではない。当業者に知られている他の適切な修正および適合は、以下の実施形態の範囲内である。
【実施例1】
【0158】
マウスにおける自家骨髄移植におけるグラフトの効率
方法
骨髄の単離。骨髄を、0.5mMのEDTA、2%ウシ胎児血清(FBS)、および抗生物質を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を用いて、8から16週齢の同系ドナーマウスの大腿骨および脛骨から流し出した。細胞を、5mMのEDTAおよびウシ血清アルブミンを含有するバッファー(リン酸緩衝生理食塩水[PBS])で洗浄した。
【0159】
骨髄の形質導入。マウス骨髄細胞に、EGPFのみを発現するレンチウイルスベクター(すなわち、pLV-Puro-EF1A-EGFP(「コントロールベクター」))、またはEGFPおよびヒトALDH1Aを発現するレンチウイルスベクター(すなわち、pLV-Puro-EF1A-EGFP-hALDH1A、
図4、配列番号2(「試験ベクター」))によりMOI 10で形質導入した。形質導入の48時間後、形質導入の効率を判定した。細胞を次いで、放射線照射したマウスに、以下に記載するように移植した。
【0160】
移植。同系のレシピエントマウス(Balb/c)を、-5日目および-4日目に0.5mg/kgのフルダラビンで、-2日目にシクロホスファミドで、ならびに-1日目にブスルファンで前処置した。移植の日(0日目)に、マウスを麻酔し、マウス当たり、100μlのIMDM中の4×106個の骨髄細胞を、尾静脈注射によって移植した。移植物の造血の回復を、GFPのFACS分析によってモニタリングした。
【0161】
シクロホスファミドでの処置。移植の7日後、マウスに、異なる用量のCTX:0mg/kg(「0mg/kgの移植後CTX」)、16mg/kg(「16mg/kgの移植後CTX」)、または30mg/kg(「30mg/kgの移植後CTX」)を、1日に1回、腹腔内(i.p.)注射した。この研究の間、処置は、5週間のCTX、1週間のCTXなし、その後の1週間のCTX処置、すなわち、全部で6週間のCTX処置を含んでいた。
【0162】
末梢血のGFP分析。各マウスの50マイクロリットルの末梢血を、眼窩後から、または尾静脈から回収し、0.5mMのEDTAを含有する1mlのPBSと混合した。細胞を赤血球溶解させ、PBS中で洗浄し、次いで400ulのPBS中でさらに希釈した。生きたGFP+顆粒球のパーセンテージを、フローサイトメーターを使用して分析した。
【0163】
骨髄の末端分析。CTX処置の6週間後、動物を屠殺し、骨髄中のGFP+細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーによって評価した。顆粒球/好中球を、従来の前方散乱対側方散乱の分散を使用して同定し、これにおいて、細胞を、光の反射に従って、サイズおよび内部の複雑性(粒度)によってそれぞれプロットした。移植後のCTX処置がない群の各々ではn=3であり、全ての他の群ではn=6であった。6週間後、血中の白血球数を各マウスについて判定した。結果は、CTXで処置した群のそれぞれにおける外れ値の存在を示し、これらのデータは、統計分析では除かれた。したがって、移植後のCTX処置がない群の各々ではn=3であり、全ての他の群ではn=5であった。
【0164】
結果および考察
移植後の骨髄の再生着を観察する場合、末梢血は移植の成功の指標を提供し得るが、骨髄は異なる寿命を有する様々な免疫細胞を生じさせるため、移植を行う前の免疫細胞の細胞の複雑性を理解することが必要である。例えば、リンパ球の寿命は180日間程度であり得るが、好中球の寿命はほんの5~7日である。さらに、単球は、末梢においてはほんの数日間しか生きることができないが、単球は組織常在性となることもでき、その寿命を数カ月間まで延ばすことができる。したがって、ドナー骨髄の再構成についてリンパ球集団を分析しようとする場合、ドナーの移植前のリンパ球の全てが死滅するまで、すなわちこの手順の6カ月間後まで、正確な反映は得られない。レシピエント細胞の骨髄グラフトの、より「リアルタイムな」読み取りを提供するために、顆粒球集団は、最良の指標を提供する。ドナーの移植前の好中球の全てが7日以内に死滅するため、移植後2週目に、これらの細胞は、骨髄環境およびレシピエント移植の成功の最も直接的な反映であり、これはまた、グラフト率を反映する形質導入された好中球のパーセンテージを同定することによっても測定することができる。
【0165】
上記の方法に従って、研究の23日目、35日目、および42日目(それぞれCTX投与の16日目、28日目、および35日目)に、眼窩後方から出血させることによって血液を回収し、各マウスの末梢血中のGFP+顆粒球のパーセンテージをフローサイトメトリーによって評価した。
【0166】
結果は、全てのマウス群が生きたGFP
+顆粒球を含有していることを示した(
図1)。さらに、研究の42日目に、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞(すなわち、EGFP
+ALDH1A1を発現する細胞)を投与され、16mg/kg/日のCTXで処置されたマウスは、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、30mg/kg/日のCTXで処置されたマウスと比較して、生きたGFP
+顆粒球の類似のパーセンテージを示した(
図1、「試験ベクター、16mg/kgの移植後CTX」と「試験ベクター、30mg/kgの移植後CTX」とを比較されたい)。
【0167】
6週間後、結果は、総GFP
+細胞(生きた細胞および死細胞)の存在を実証した(
図2A)。グラフトは、生きたGFP
+顆粒球/好中球集団のパーセンテージによって示された(
図2B)。驚くべきことに、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞(すなわち、EGFP+ALDH1A1を発現する)を投与され、非骨髄破壊的な16mg/kg/日のCTXで処置されたマウスと、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、骨髄破壊的な30mg/kg/日のCTXで処置されたマウスとの両方が、40%を超える類似のグラフトを実証した(
図2B、「試験ベクター、16mg/kgのp.t.移植後CTX」と「試験ベクター、30mg/kgのp.t.移植後CTX」とを比較されたい)。さらに、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、16mg/kg/日のCTXで処置されたマウスは、コントロールベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、同用量のCTX(すなわち、16mg/kg/日のCTX)で処置されたマウスと比較して、有意に高いグラフトパーセンテージを有していた(
図2B、「試験ベクター、16mg/kgのp.t.移植後CTX」と「コントロールベクター、16mg/kgのp.t.移植後CTX」とを比較されたい)。
【0168】
白血球(WBC)は、身体に侵入する外来因子の攻撃による感染との闘いを助ける。WBC数は、隠れた感染および/または感染に対する感受性を検出するために役立ち得る。末梢血中のWBC数が、6週間のCTX処置後に、各研究群について判定された。
図3において示されるように、コントロールベクターまたは試験ベクターのいずれかにより形質導入された骨髄細胞を投与され、CTX処置をされなかったマウスは、正常な範囲内のWBC数を有していた。各CTX処置群で1つの外れ値があり、これは、統計分析では除去された。高い、正常な、および低いWBCの範囲は、Charles River Research Models(BALB/C Mouse Hematology、North American Colonies、2008年1月~2012年12月)、http://www。criver.com/files/pdfs/rms/balbc/rm_rm_r_balb-c_mouse_clinical_pathology_data.aspxにおいてオスのマウスについて提供されている、当技術分野における既知の範囲に従っている。特に、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、16mg/kg/日のCTXで処置されたマウスは、試験ベクターにより形質導入された骨髄細胞を投与され、30mg/kg/日のCTXで処置されたマウスと比較して、有意に多くの数のWBCを有していた(
図3、「試験ベクター、16mg/kgのp.t.移植後CTX」と「試験ベクター、30mg/kgのp.t.移植後CTX」とを比較されたい)。
【実施例2】
【0169】
インビボでのヒト化マウスの研究♯1
幹細胞の精製。ヒトPBMCを、5mcg/kg/日の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(Amgen、Thousand Oaks、CA)で5日間処置した健康なドナーから回収し、その後、白血球除去療法を5日目および6日目に行った。患者に10μg/kgのフィルグラスチムまたはG-CSFのレジメンを行って、CD34+幹細胞を単離のために骨髄から末梢に動員した。末梢血中のCD34+細胞数が体重1kg当たり10.0から20.0×106個を超えたら、アフェレーシスを行った。CD34+を、正の選択による濃縮を使用して精製し、その後、磁気ビーズ単離を行った。サンプルを、2%FBSを含有するPBS中で洗浄し、遠心分離し、PBS中に再懸濁した。CD34+細胞を次いで、CD34の染色によるFACS分析によって純度について試験し、生存能力をトリパンブルー染色によって評価した。細胞を次いで、マウスにすぐに移植した。ヘルシンキ宣言のプロトコルに準拠した適切な書面によるインフォームドコンセントを、回収の前に、ドナーから得た。
【0170】
NOGマウスへのヒトHSCの移植。成体マウスは、10~12週齢のNOGマウスであった。新生児マウスでは、誕生の1~2日後のマウスを使用した。マウスを、成体マウスでは2~2.5Gyで、新生児では1Gyで、SPF条件下で、細胞移入の1日前に放射線照射した。18g未満の体重のマウスは、この用量の放射線照射で死亡することがある。成体マウスでは、細胞懸濁液0.25mL(1~0.5×104個)を、イソフルランでわずかに麻酔しながら、27Gの針を有する1mLのシリンジまたは29Gの針を有するマイクロインジェクターシリンジを用いて、尾静脈を介してマウスに注射した。
【0171】
幹細胞の形質導入。同一のドナーのCD34
+細胞を、フィブロネクチンで被覆された試験管内の、幹細胞因子(SCF)100ng/ml、トロンボポエチン(TPO)、およびFms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)(CellGenix、Freiberg、Germany)を添加した、および場合によりIL-2、IL-3、IL-6、またはこれらのあらゆる組み合わせを添加した、X-Vivo 10培地(Lonza)において、16時間、37℃および5%CO
2で、1×10
6個細胞/mlで培養した。予備刺激培地を次いで除去し、MOI 2とMOI 50との間の感染多重度(MOI)に相当する、1.35×10
8tu/mlのベクター(「コントロールベクター」=pLV-Puro-EF1A-EGFP、または「試験ベクター」=配列番号4、
図5)、および4mg/mlのプロタミンスルフェート(Sigma、Saint Louis、MO)をさらに含有する、新鮮な培養培地を添加した。この形質導入混合物を、12時間から48時間の間、インキュベーターに戻した。形質導入された細胞を、トリプシン(Lonza、Walkersville、MD)で剥離させ、洗浄し、PBS中に再懸濁し、そしてマウスにすぐに移植した(放射線照射を伴わずに、上記のように)。
【0172】
末梢血のGFP分析、ならびに脾臓、血液、および骨髄の末端分析を、上記のように行った。研究の概略図を
図8に示すが、この描写は例示する目的のものにすぎず、他の研究設計も使用することができる。
【実施例3】
【0173】
インビボでのヒト化マウスの研究♯2
幹細胞の精製。ヒトPBMCを、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(Amgen、Thousand Oaks、CA)5mcg/kg/日で5日間処置した健康なドナーから回収し、その後、白血球除去療法を5日目および6日目に行った。CD34+を、免疫磁気ビーズを使用する正の選択によって精製した。サンプルを、0.5%HSAを含有するPBS中で洗浄し、遠心分離し、PBS中に再懸濁した。CD34+細胞を次いで、CD34の染色によるフローサイトメトリー分析によって純度について試験し、生存能の染色を行った。細胞を次いで、マウスにすぐに移植した。ヘルシンキ宣言のプロトコルに準拠した適切な書面によるインフォームドコンセントを、回収の前に、ドナーから得た。
【0174】
NOGマウスへのヒトHSCの移植。成体マウスでは、10~12週齢のNOGマウスを使用した。新生児マウスでは、誕生の1~2日後のマウスを使用した。マウスを、成体マウスでは2~2.5Gyで、新生児では1Gyで、SPF条件下で、細胞移入の1日前に放射線照射した。18g未満の体重のマウスは、この用量の放射線照射で死亡することがある。成体マウスでは、細胞懸濁液0.25mL(1~0.5×104個)を、27Gを有する1mLのシリンジを用いて、尾静脈を介してマウスに注射した。
【0175】
幹細胞の形質導入。同一のドナーのCD34+細胞を、フィブロネクチンで被覆された試験管内の、幹細胞因子(SCF)100ng/ml、トロンボポエチン(TPO)、およびFms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)(CellGenix、Freiberg、Germany)を添加した、および場合によりIL-3およびIL-6を添加した、X-Vivo 10培地(Lonza)において、16時間、37℃および5%CO2で、1×106個細胞/mlで培養した。予備刺激培地を次いで除去し、MOI 2とMOI 50との間の感染多重度(MOI)に相当する、1.35×108ul/mlのベクター(「コントロールベクター」=pLV-Puro-EF1A-EGFP、または「試験ベクター」)をさらに含有する、新鮮な培養培地を添加した。適切な「試験ベクター」は、以下のいずれか1つまたは組み合わせを含んでいた:
【0176】
【0177】
この形質導入混合物を、12時間から48時間の間、インキュベーターに戻した。形質導入された細胞を採取し、洗浄し、PBS中に再懸濁し、そしてマウスにすぐに移植した(放射線照射を伴わずに、上記のように)。
【0178】
末梢血のGFP分析、ならびに脾臓、血液、および骨髄の末端分析を、上記のように行った。研究の概略図を
図8に示すが、この描写は例示する目的のものにすぎず、他の研究設計も使用することができる。
【実施例4】
【0179】
概念研究のレンチウイルスでの証明
レンチウイルスベクターの発現。ヒトCD34+細胞に、4つの発現カセットを含有するレンチウイルス(LV)ベクターにより形質導入した。ALDHおよびC-ペプチドの発現レベル、shRNA介在性CCR5のノックダウン、および場合により、shRNA介在性CXCR4のノックダウンを、形質導入された細胞において評価した。細胞のC-ペプチドの発現を次いで、CCR5のノックダウンに対して相関させた。
【0180】
簡潔に述べると、動員されたCSF、冷凍保存されたヒトCD34+細胞を、37℃で、バイアルの内容物が完全に液相となるまで解凍した。細胞を、無菌の15mLのコニカルチューブ(Corning、Tewksbury、MA)に移した。滴下で、および穏やかに撹拌しながら、事前に温めた培地X-Vivo 10無血清培地(Lonza、Basel、Switzerland)を、15mLまで添加した。細胞を次いで、200~300×gで5分間遠心分離した。上清を吸引した後、ペレットを10mLの培地中に再懸濁し、少量のアリコートを、計数および生存能の判定のために保持した。細胞を次いで遠心分離し、上清を吸引し、そして1.0×2.0×106個細胞/mの密度まで再懸濁し、そしてT75cm3の組織培養フラスコ(Corning、Tewksbury、MA)に移した。
【0181】
細胞を、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、およびflt3/flk2リガンド(Flt3L)(R&D Systems、Minneapolis、MN)のそれぞれ100ng/mLを培養培地に添加することによって予備刺激し、5%CO2のインキュベーター内で、37℃で24時間培養した。その後、細胞をインキュベーターから除去し、遠心分離した。細胞を、100ng/mLのSCFおよびFlt3Lの両方、10ng/mLのTPO、ならびに60ng/mLのIL-3を添加したX-Vivo 10培地において、1.0×106個細胞/mLの密度で再懸濁した。12ウェルの組織培養処置されていないレトロネクチン(5μg/cm2)被覆プレート(タカラバイオ株式会社、滋賀県、日本)のウェル当たり1.0×106個細胞を次いで播種した。
【0182】
レンチウイルス粒子を37℃で解凍し(CCR5.Cペプチド.LVまたはCCR5.Cペプチド.ALDH.LV)、解凍の際には穏やかに混合した。粒子のそれぞれを、約2から50の、例えば9のMOIで培養物に添加し、プレートを穏やかに旋回させることによって混合した。細胞を次いで、37℃の5%CO2のインキュベーターに戻し、24から48時間にわたり培養した。その後、サンプルを、フローサイトメトリーおよびqRTPCR評価による、細胞数、生存能、および形質導入効率の評価のために保持した。
【0183】
残りの細胞を遠心分離し、上清を穏やかに吸引し、そして1mL/ウェルの新鮮なX Vivo 10培地を各ウェルに添加した。プレートをインキュベーターに戻した。細胞を、形質導入の最大3日後まで増殖させた。
【0184】
フローサイトメトリー染色および分析をすぐに進めた。LV構築物が蛍光マーカーを含有していれば、MacsQuant FACS Analyzerでの取り込みが行われた。蛍光マーカーがベクターに含有されていなければ、標的タンパク質またはHIV-1 LTRの転写活性化のための染色手順が行われた。
【0185】
細胞を使用して、さらなる特徴付けを行うことができる。さらなる特徴付けが不要であれば、形質導入(または形質導入後の増殖)の直後に、細胞を、コントロールレートフリーザーにおいて、50%IMEM(Thermo Fisher Scientific、Carlsbad、CA)、45%ヒト血清アルブミン(HAS)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)、および0.2μmで濾過された5%DMSOからなる溶液中で、5×106個細胞/mLの密度で冷凍保存した。細胞は次いで、すぐに液体窒素に移すか、またはドライアイスの上で輸送することができる。
【0186】
化学的保護。ALDHの発現を示すLVベクター(例えば、配列番号2または配列番号5)により形質導入されたヒトCD34+細胞を、様々な用量のシクロホスファミドで処置して、化学療法剤に対する耐性を実証した。実験はまた、形質導入された細胞および形質導入されていない細胞の混合培養物を、様々な用量のマホスファミドで処置することによっても行うことができる。形質導入された細胞および形質導入されていない細胞の両方の生存を、各用量のシクロホスファミドで処置した後に測定した。
【0187】
簡潔に述べると、凍結乾燥されたマホスファミドを、滅菌水の中で、1mg/mLのワーキングストック溶液に再懸濁した。形質導入された細胞を次いで、通常の培地(RPMI+10%FBS)で一度洗浄し、形質導入された細胞(試験ベクター(例えば、配列番号4)およびコントロールベクター(例えば、配列番号5)の両方)を、MethoCult 3330培地(StemCell Technologies、Vancouver、BC、Canada)中に0.5×106個細胞/mLの密度まで再懸濁した。最終溶液は、FBS、エリスロポエチン(1U/ml)、IL-3(200U/ml)、IL-6(200U/ml)、SCF(100ng/ml)、IL-1β(200ng/ml)、および100ng/mlの顆粒球コロニー刺激因子(StemCell Technologies)を添加したα培地中の、0.8%メチルセルロースからなるものであった。
【0188】
皿の各セット(コントロール皿および試験皿)に、マホスファミドを以下の最終濃度まで添加した:0.15、2.5、5、10、15、20μM。プレートを次いで、37℃、5%CO2で14日間インキュベートした。14日後、倒立光学顕微鏡を使用して、コロニーを各プレートにおいてスコア付けした。マン・ホイットニーのU検定を次いで行って、試験ベクターを発現する細胞およびコントロールベクターを発現する細胞によって形成されるコロニーの数における、何らかの有意な統計差があるかを判定した。
【実施例5】
【0189】
融合阻害研究
ヒト化マウスの脾臓および胸腺から単離されたT細胞を、上記ようにHIV株と共培養した。C44の発現レベルを、フローサイトメトリーによって検出される、Cペプチドを認識する抗Gp41抗体を使用して評価した。C-ペプチドの発現レベル(正のパーセンテージおよび蛍光強度の中央値)を次いで、HIV融合の遮断の程度に対して相関させた。
【0190】
材料および試薬。293T細胞(ATCC);pAdVAntage(Promega Corporation);pCMV4-BlaM-Vpr(Addgene);pNL4-3プロウイルスDNA(NIH AIDS Reagent Program)、または一次EnvをコードするTN6-GFP;DMEM(Mediatech、Cellgro(登録商標));RPMI 1640(Mediatech、Cellgro(登録商標));1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS);ウシ胎児血清(FBS);100U/mlのペニシリンおよび100U/mlのストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、Gibco(登録商標));2MのCaCl2;Alliance HIV-I p24 ELISAキット(PerkinElmer)またはFlaQアッセイ試薬(Haydenら、2003);末梢血リンパ球(PBL);CCF2-AM基質およびローディング溶液(Thermo Fisher Scientific);CO2非依存性培地(Thermo Fisher Scientific、Gibco(登録商標));プロベネシド(Sigma-Aldrich);APC-Cy7にコンジュゲートしたマウス抗ヒトCD3およびPE-Cy7にコンジュゲートしたマウス抗ヒトCD4(BD Biosciences);BD CompBeads(BD Biosciences);16%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences);HBSS(製法を参照されたい);ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)培養培地(製法を参照されたい);ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培養培地(製法を参照されたい);CCF2ローディング溶液(製法を参照されたい);250mMのNaOH中で調製されたプロベネシド(250mM)のストック溶液(製法を参照されたい);成長培地(製法を参照されたい)。
【0191】
ベクター。pLV[Exp]-H1>hCCR5[shRNA]
EF1A>hALDH1A1[NM_000689.4](ns):T2A:{Cペプチド}(例えば、配列番号4)
【0192】
製法。HBSS(280mMのNaCl;10mMのKCl;1.5mMのNa2HPO4;12mMのデキストロース;50mMのN-(2-ヒドロキシエチルピペラジン)-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)(pH7.05);-20℃で保管。
【0193】
フローサイトメトリー染色バッファー(Ca++およびMg++を含まない1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS);0.5%HSA;4℃で保管)。
【0194】
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)培養培地(DMEM;熱不活化された10%ウシ胎児血清;ペニシリン100U/ml;ストレプトマイシン100μg/ml)。
【0195】
RPMI培養培地(RPMI 1640;熱不活化された10%ウシ胎児血清;ペニシリン100U/ml;ストレプトマイシン100μg/ml)。
【0196】
CCF2ローディング溶液:CCF2-AMをジメチルスルホキシド(CCF2キットの溶液A)に再懸濁して、ストック溶液(1mMのCCF2-AM)を得た。アリコートに分け、暗所において-80℃で保管した。1mMのCCF2-AM 1μlと、プルロニック-F127 100mg/mlおよび0.1%酢酸を含有する溶液(CCF2キットの溶液B)9μlとをボルテックスミキシングすることによって混合した。CO2非依存性培地1mlを添加し、再びボルテックスにかけた。250mMのNaOH中で調製されたプロベネシド(250mM)のストック溶液。アリコートに分け、-20℃で保管した。
【0197】
成長培地(2.5mMのプロベネシド;CO2非依存性培地中の10%ウシ胎児血清)。
【0198】
設備。T175cm2の培養フラスコ;96ウェルのV底プレート(Corning Incorporated);5ml、10ml、25mlのピペット;50mlのファルコンチューブ;0.22μmの孔サイズのSteriflip(EMD Millipore);2mlのナルゲンチューブ(Thermo Fisher Scientific);澄明な超遠心機用チューブ(BD);37℃、5%CO2のインキュベーター;SW28ローターを備えた超遠心分離設備;フローサイトメーター。融合アッセイ単独では、バイオレットレーザー励起(405nm)および2つの測定パラメータを備えたフローサイトメーターが必要であった。パシフィックブルーの検出に一般に使用される450/50nmのバンドパスフィルターを有する光電子倍増管(PMT)を、切断されたCCF2基質の検出に使用した。Amcyanの検出に一般に使用される515/20nmのバンドパスフィルターを有する他のPMTを、切断されていないCCF2基質の検出に使用した。さらなるPMTが、CD3抗体およびCD4抗体に関連する蛍光色素の測定に必要であった。APC-Cy7を633nmの赤色レーザーによって励起させ、755ロングパスフィルターを有するPMTで検出した。PE-Cy7を531nmの黄緑色のレーザーで励起させ、755ロングパスフィルターを有するPMTで検出した。
【0199】
ソフトウェア。FlowJoXソフトウェア(Tree Star)または他のFACS分析ソフトウェア。
【0200】
融合阻害アッセイ。1.5×107個の293T細胞を、20mlのDMEM培養培地を有するT175cm2の組織培養フラスコに播種し、37℃の5%CO2の加湿インキュベーターで一晩培養した。TN6-GFPプロウイルスDNA 60μg、pCMV-BlaM-Vpr 20μg、およびpAdVAntageベクター10μgを含有する、H2O 1.75mlを調製した。2×HBSS 2mlを次いでゆっくりと添加し、上下にピペッティングすることによって穏やかに混合した。2MのCaCl2 250μlを滴下で添加した。DNAを、10分間、室温でインキュベートすることによって沈殿させた。293T細胞培養培地を、37℃に事前に温めた新鮮なDMEM培養培地40mlで置き換えた。次に、DNA沈殿物4mlを添加し、16時間、37℃でインキュベートした。培地を次いで、37℃に事前に温めた新鮮なDMEM培養培地40mlで置き換え、24時間、37℃でインキュベートした。
【0201】
トランスフェクトした293T細胞の上清を50mlのファルコンチューブ内に採取し、室温で10分間遠心分離して、細胞の残屑を除去した。澄明化した上清を次いで、Steriflipを通して濾過した。36mlのビリオン含有上清をウルトラクリア遠心分離チューブに移した。チューブを、必要に応じてDMEM培養培地で均衡を保ったSW28ローターのバケットの中に置き、ブレーキを使用せずに4℃で超遠心分離した(72000×g、90分間)。上清を除去し、ウイルスペレットを1mlのDMEM中に再懸濁し、100μlのアリコートに分け、-80℃で保管した。
【0202】
ウイルス調製物のp24Gag含有量を、酵素結合免疫吸着アッセイまたはFlaQアッセイによって定量した(Maitiら、2014)。
【0203】
PBLをRPMI培養培地で洗浄し、PBLを計数し、そしてRPMI培養培地中に2×107個細胞/mlで懸濁させた。細胞懸濁液を、V底96ウェルプレートにおいて、試験対象の条件ごとに100μl(2×106個細胞)のアリコートに分けた。2つのさらなる細胞アリコートを2つのウェルに分配して、コンペンセーションコントロールとした。一方のウェルにCCF2基質をロードし、その一方で、他方はロードしないままとした。これらの2つのコントロールウェルは、抗CD3-APC-Cy7抗体および抗CD4-PE-Cy7抗体で染色されなかった。
【0204】
400ngのp24Gagに等しいBlaM-Vprを含有するHIV-1ビリオンの量を、「非感染コントロール」および2つのコンペンセーションコントロールを除いた全てのウェルに添加し、2時間、37℃でインキュベートした。
【0205】
細胞を次いで、5分間室温で遠心分離することによって回収し、CO2非依存性培地200μlで一度洗浄し、5分間、室温で遠心分離した。ペレットをCCF2-AMローディング溶液100μl中に再懸濁し、1時間、室温で、暗所でインキュベートし、1つのウェルは、CO2非依存性培地のみで再懸濁することによって、確実に染色されないまま維持するようにした。細胞を、365×gで5分間、室温で遠心分離することによって回収した。回収された細胞を次に成長培地200μlで洗浄し、5分間室温で遠心分離し、そしてペレットを成長培地200μlに再懸濁し、細胞を室温で16時間、暗所でインキュベートした。
【0206】
2つの空のウェルに、BDコンペンセーションビーズバイアル(ネガティブコントロールおよび抗マウスIgK)のそれぞれを滴下して添加した。細胞およびビーズを次いで、5分間、4℃で遠心分離することによって回収した。細胞およびビーズを次いで、FACS染色バッファー200μlを添加することによって一度洗浄し、5分間、4℃で遠心分離することによって回収し、ペレットを、1/100希釈の抗CD3-APC-Cy7および1/50希釈の抗CD4-PE-Cy7を含有する免疫染色溶液100μl(フローサイトメトリー染色バッファー中の)に再懸濁した。2つのコンペンセーションコントロールも、コンペンセーションビーズも、染色されなかった。CompBeadsを、1/100希釈の抗CD3-APC-Cy7または1/50希釈の抗CD4-PE-Cy7のいずれかを含有するフローサイトメトリー染色バッファーで染色した。サンプルを、30分間、4℃でインキュベートした。
【0207】
4℃で30分間インキュベーションした後、細胞およびビーズを、5分間、4℃で遠心分離することによって回収した。細胞およびビーズを次いで、フローサイトメトリー染色バッファー200μlで洗浄した。1.2%パラホルムアルデヒドを添加したフローサイトメトリー染色バッファーを使用して、細胞を24時間にわたり4℃で固定した。
【0208】
フローサイトメーター-MACSQuant機器を使用して、サンプルを取り込んだ。サンプルセットには:ロードされていない未染色の細胞、CCF2をロードされた未染色の細胞、CD3-APC-Cy7で染色されたビーズ、CD4-PE-Cy7で染色されたビーズ、CCF2をロードされ免疫染色された非感染コントロール、およびCCF2をロードされ免疫染色された感染サンプルが含まれていた。データを、FlowJoを使用して分析した。
【実施例6】
【0209】
HIVチャレンジ:レンチウイルスベクターにより形質導入されたヒトCD4+T細胞
CCR5shRNA/c-ペプチド/ALDHを含有するLVにより形質導入されたGFPレポーターCD4+T細胞、または空のコントロールベクターを含有するLVにより形質導入されたT細胞を、R5株、X4株、または両実験用HIV株と培養した。HIVの感染性を、レポーターマーカー(T細胞レポーター系を使用する場合)によって、またはp24 ELISAによって分析した。
【実施例7】
【0210】
用量範囲およびレンチウイルスベクターの効能の研究
CCR5shRNA/C-ペプチド/ALDH発現ベクターまたはコントロールの空のベクターを含有するレンチウイルスにより形質導入されたSca1+/c-kit-幹細胞および前駆細胞を、事前に馴化したC57BL/6同系マウスに移植した。
【0211】
簡潔に述べると、7日後、全てのマウスで、シクロホスファミド(CTX)処置の1日に1回のレジメンを開始した。両マウス群を、様々な投薬量のCTX(用量当たり群当たり6頭のマウス):0、10、13、16、19、および40mg/kgで処置した。CTX処置を開始した1週間後、マウスを週に1回の原則で採血した。全血球計算(CBC)パネルを行って、化学療法の何らかの細胞傷害効果があるかをモニタリングし(グラフトの効能:ALDHによるCTX耐性の付与(conference))、その一方で、フローサイトメトリー分析は、これらの細胞における系統特異的なマーカーの発現ならびにC-ペプチドおよびCCR5の発現を測定した(発現効率:shRNAが標的遺伝子をノックダウンする効能)。研究は、少なくとも10週間のCTX処置にわたり、または骨髄の完全なグラフトが行われるまで続けられた。研究の概略図を
図7に示し、より詳細なプロトコルは以下に示す。
【0212】
材料および試薬。EasySep(商標)マウス造血前駆細胞単離キット(StemCell Technologies);Falconの15mLのコニカルチューブ(Corning);5mL(12×75mm)のポリスチレン製丸底チューブ(Corning);StemSpan無血清培地(StemCell Technologies);マウス造血幹細胞増殖キットサイトカインパネル(R&D);レトロネクチン組換えヒトフィブロネクチン断片(Clontec);RPMI-1640(Thermo Fisher Scientific);ペトリ皿(Thermo Fisher Scientific);HBSS(Thermo Fisher Scientific);27G×1/2針(BD);遠心分離機(Thermo Fisher Scientific);Sorvall ST 40R Countess II自動細胞カウンター(Thermo Fisher Scientific);トリパンブルー(Thermo Fisher Scientific);系統カクテル(mCD3、mGr-1、mCD11b、mB220、mTer119)(アイソタイプコントロールを含む)(Biolegend);Ly-6A/E(Sca-1)(Thermo Fisher Scientific);CD117(c-kit)(Thermo Fisher Scientific);生存能染料eFluor 506(Thermo Fisher Scientific);抗マウスCD16/32 FC Block(Biolegend);細胞染色バッファー(Biolegend);Balb/cメスマウス(Charles River)。
【0213】
ベクター。pLV[Exp]-H1>hCCR5[shRNA]-
EF1A>hALDH1A1[NM_000689.4](ns):T2A:{Cペプチド}(例えば、配列番号4)
【0214】
骨髄からの前駆細胞の単離(必要な前駆細胞の数)。以下の表から、形質導入で必要な細胞数を得るために必要な(ドナー)マウスの数を計算した。
【0215】
【0216】
マウス骨髄の単離。BALB/cマウス(メス、20から25g、8~10週齢)を、CO2での窒息によって安楽死させた。その後の実験工程は、層流空気流バイオセーフティーキャビネット(BSC)内で行った。骨髄細胞を大腿骨から回収した。簡潔に述べると、骨髄の内容物を、27G×1/2針を有する1mlのインスリンシリンジを使用して、2mlのHBSSで流した。内容物を無菌の50mlの遠心分離チューブに回収した。上記で回収したBM細胞懸濁液を次いで、RPMI-1640で7.5mlの最終容積まで希釈した。骨髄懸濁液中の全てのクラスターを、激しくピペッティングすることによってばらばらにした。細胞を次いで遠心分離し、洗浄し、再び遠心分離した。各大腿骨からの細胞ペレットを、RPMI-1640 7.5ml中に穏やかに再懸濁して、均質な懸濁液を調製した。NC-200自動細胞カウンターを使用して全細胞の数および生存能のために、細胞懸濁液のアリコートを取り出した。
【0217】
前駆細胞の単離。単離された細胞を新たなチューブに移し、回転させて沈殿させ、0.5~2mLの容積範囲のEasySepバッファー(PBS+2%FBS+1mMのEDTA)中に再懸濁して、1×108個細胞/mLの濃度とした。ラット血清を次いで、50μL/mLでサンプルに添加し、サンプルを5mL(12×75mm)のポリスチレン製丸底チューブに移した。EasySepマウス造血前駆細胞単離カクテルを次いで、サンプル1mL当たり50μLでサンプルに添加した。サンプルを混合し、4℃で15分間インキュベートした。Rapid spheresを30秒間ボルテックスし、次いで、75μL/mLでサンプルに添加した。サンプルを混合し、4℃で10分間インキュベートし、EasySepバッファーを使用して総容積を2.5mLまで増やした。磁気選別を使用して、前駆細胞を単離した。
【0218】
フローサイトメーターによる単離された前駆細胞の評価。細胞を新たな96ウェルプレートに移し、回転させて沈殿させ、FACSバッファー50μL(PBS+2%FBS+1mMのEDTA)中に再懸濁した。FC Block(抗CD16/32)3μLを各サンプルに添加し、4℃で15分間インキュベートした。以下のパネルおよび量を使用した:
【0219】
【0220】
コントロールは以下を含んでいた:CD117のFluorescence Minus One(FMO)コントロール、Ly6A/E、および系統カクテルアイソタイプコントロール。
【0221】
各ウェルを100μLの総容積まで増やし、暗所において4℃で30分間インキュベートした。細胞を次いで、フローサイトメーターバッファー200μLで洗浄し、ある容積で再懸濁した。フローサイトメーターはMACSQuantCytometerで入手した。純度を、Sca1-/c-kit+、Sca1+/c-kit-、Sca1+/c-kit+の%を合計し、生きた系統カクテル陰性の事象のパーセントをかけることによって計算した。
【0222】
レンチウイルスによる形質導入および前駆細胞の増殖。0日目に、12ウェルプレートまたは24ウェルプレートを、0.3mlのレトロネクチン(100ng/ml)で被覆し、少なくとも2時間、室温でインキュベートした。被覆培地を次いでプレートから吸引し、プレートを、1×PBS中の2%BSAで、室温で少なくとも30分間ブロックし、次いで、1×PBSで3回洗浄した。プレートはこれで、すぐに使える状態となった。プレートを乾燥させないことに留意すべきである。
【0223】
新鮮な単離された骨髄前駆細胞を、骨髄前駆細胞培養培地1ml当たりおよそ0.2~0.4×106個細胞の間で播種した。レンチウイルスを細胞に24時間にわたり添加した(MOI=3)。
【0224】
1日目に、細胞を回転させて沈殿させ、レンチウイルスを含有する培地を取り除き、新鮮な骨髄前駆細胞培養培地を添加した。
【0225】
2日目に、レンチウイルスにより形質導入した後、ピューロマイシン(1μg/ml)を骨髄前駆細胞培養培地に添加して、レンチウイルス感染細胞を選択した。細胞を4日間処置した。
【0226】
4日目に、ピューロマイシンを有する新鮮な培地を添加した。
【0227】
6日目に、細胞を回転させて沈殿させ、ピューロマイシンを含まない新鮮な培地を与えた。
【0228】
7日目に、細胞を、細胞数計数のために回収し、GFPフローを行って、形質導入効率を決定した。新鮮な骨髄前駆細胞培養培地を残りの細胞に与えた。
【0229】
骨髄前駆細胞を10日目までさらに3日間培養し、9日目に培地を交換した。
【0230】
10日目に、細胞を計数のために採取し、フローサイトメトリー分析を行って、形質導入効率を決定した。
【0231】
【0232】
骨髄前駆細胞の移植および処置 - 事前調整:
移植の前に、マウスに2用量のフルダラビン(5mg/Kgを2日間)を投与した。0日目(フルダラビンでの処置の2日後)に、36頭のマウスに、コントロールベクターにより形質導入された幹細胞および前駆細胞を、IVを介して移植し、36頭のマウスに、試験ベクターにより形質導入された幹細胞および前駆細胞を移植した。移植後、動物を、罹患率および死亡率について1日に1回チェックした。通常のモニタリングの時点で、動物を、運動性などの正常な行動に対する処置の何らかの影響、眼/毛のつやのなさ、および任意の他の異常な影響があるかについてチェックし、また、飼料および水の消費の視覚的な推定、体重の増加/減少(体重は1週間に2回測定した)もチェックした。死亡および観察された臨床的兆候を、各動物について詳細に、データシートのコメント欄に記録した。
【0233】
CTX処置。骨髄移植の7日後、CTX(シクロホスファミド)処置を、以下の用量:0、10、13、16、19、および40mg/kgを1日に1回、12週間にわたりI.P.投与することによって開始し、この処置は、体重減少>15%とならない限り中断はしなかった。実験群および処置の詳細を以下の表に示す。
【0234】
【0235】
サンプルの回収。最初のCTX投薬の7日後、尾静脈を穿刺することによって血液を回収した。血液100μLを、LVベクターの発現およびshRNAノックダウンの効能に対応する免疫表現型決定パネルのために回収した(以下の表を参照されたい)。サンプルをFACSによって分析した。さらなる血液20μLを回収して、完全なCBC分析を行った。回収物は、研究が終わるまで、各動物から7日ごとに採取した。骨髄を研究の終わりに回収して、完全なグラフトを評価した。
【0236】
【0237】
終了。許容できない毒性および/もしくはひどい体重減少(>20%)が認められる場合には、または昏睡状態に達する前に、状態の継続的な悪化を示す動物を人道的に安楽死させた。重度の苦痛および/または痛みの明らかな兆候を示す動物は、CO2とその後の頚部脱臼とによって人道的に安楽死させた。完全なグラフト(90%を超える)が1つの動物群において見られた場合に、研究を終了した。
【実施例8】
【0238】
ヒトでの研究
幹細胞の動員および回収。回収の3日前に、患者は、CD34+幹細胞を動員させるために、3から5日間のG-CSFレジメンを開始した。末梢血中のCD34+細胞の数が体重1kg当たり10.0から20.0×106個を超えたら、アフェレーシスを行った。この材料は、CD34+幹細胞の単離および形質導入のために、2~8℃の制御された運搬でGMP施設に輸送された。目標で3.0から4.0×106個のCD34+細胞/kgを、2から3×106個細胞/kgの再注入のために回収した。回収後2日目(または移植前-5日目)に、患者を、15mg/m2のフルダラビンで5日間にわたり(移植前-1日目まで)処置した。あるいは、移植前-1日目に、患者を4mg/kgのブスルファンで処置した。次いで、患者を、移植前-2日目に、単回用量の1000mg/m2のシクロホスファミドで処置した。
【0239】
幹細胞の冷凍保存。患者由来の細胞(造血幹細胞を含有する)を、場合により遠心分離して、細胞に富んだペレットを得た。ヘパリン化されたプラズマライト溶液および10%DMSO(ジメチルスルホキシド)からなる溶液を血漿上清に添加し、この中で、ペレット化された細胞を再懸濁した。細胞は、最初に-4℃で保存され、次いで、サンプルは、-156℃(蒸気相で保管される場合)から-196℃(液相で保管される場合)の標的温度にまで下げて凍結された。細胞は場合により、標準的な手順に従って輸送された。
【0240】
CD34+細胞のレンチウイルスによる形質導入。GMP施設に到着すると、CD34+細胞を磁気ビーズ分離によって単離した。レンチウイルスベクターを介するヒトCD34+細胞の形質導入は、サイトカイン幹細胞因子(SCF)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、トロンボポエチン(TPO)、IL-6、IL-2、IL-3、フィブロネクチン、またはこれらのあらゆる組み合わせを添加した培地における細胞の24時間の予備刺激と、その後の、24時間のベクターへの曝露(例えば、配列番号2または配列番号4)とを含み、これらは共に、無血清X-Vivo 10培地中のサイトカインSCF、FLT3L、およびTPO(それぞれ100ng・ml-1)の存在下で行った。細胞を次いで冷凍保存し、臨床現場まで輸送した。
【0241】
修飾されたCD34
+細胞の再注入。修飾されたCD34
+細胞を解凍した後。ニューヨーク血液センターのプロトコルに従った現在の標準的な洗浄プロトコルを使用した。これは、解凍された幹細胞単位を2.5%ヒト血清アルブミンおよび5%デキストラン40で2工程の希釈を行うことと、その後の、10℃で10分間遠心分離することとを含むものであった。上清を次いで除去し、HSAおよびデキストラン溶液を、1.7%未満の最終DMSO濃度まで再び2回添加した。洗浄された溶液をできるだけ早く患者に注入した。細胞を注入した一定時間後、例えば7~45日後、患者は、遺伝子修飾された骨髄細胞のグラフトの増大を容易にするために、低用量(50~200mgまたは本明細書において記載する非骨髄破壊的な用量)の1日に1回の経口シクロホスファミドの摂取を開始した。修飾されたCD34
+細胞が注入される時点で患者がHIV
+であり得ることが考えられ、このケースでは、細胞は、HIVを処置するおよび/もしくは治癒するために機能しており、または、修飾されたCD34
+細胞が注入される時点で患者がHIV
-であり得ることが考えられ、このケースでは、細胞は、将来的なHIV感染を予防するために機能している。HIV
+患者の処置についての概略図が
図9および
図10で示されるが、患者がHIV
-でもあり得ることが理解される。
【0242】
本技術の実施形態の上記の詳細な説明は網羅的であることを意図したものでも、本技術を上記で開示される正確な形態に限定することを意図したものでもない。本技術の具体的な実施形態および本技術についての実施例が、説明する目的で、上記で記載されているが、当業者には認識されるであろうが、様々な同等な修正が本技術の範囲内で可能である。本明細書において記載される様々な実施形態はまた、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることもできる。
【0243】
これまでの記載から、本技術の具体的な実施形態が説明を目的として本明細書において記載されているが、本技術の実施形態の記載を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の構造および機能は示されていないか、または詳細には記載されていないことが理解される。文脈から可能な箇所では、単数形または複数形の用語は、それぞれ複数形または単数形の用語も含み得る。
【0244】
具体的な実施形態が説明を目的として本明細書において記載されているが、様々な修正を、本技術から逸脱することなく行うことができることも理解される。さらに、本技術のある特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で記載されているが、他の実施形態もまた、このような利点を示し得、また、本技術の範囲内に含まれるために、全ての実施形態がこのような利点を必ずしも示さなくてはならないわけではない。したがって、開示、および関連する技術は、明確に示されてはいないまたは本明細書において記載されていない他の実施形態を包含し得る。
【配列表】