(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電波又は音波検出器、送信機、受信機、及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/32 20060101AFI20241008BHJP
G01S 13/42 20060101ALI20241008BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20241008BHJP
G01S 15/32 20060101ALI20241008BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01S13/32
G01S13/42
G01S7/02 216
G01S15/32
G01S7/521 Z
(21)【出願番号】P 2020545498
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 GB2019000041
(87)【国際公開番号】W WO2019166757
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390040604
【氏名又は名称】イギリス国
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
(73)【特許権者】
【識別番号】519253225
【氏名又は名称】ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ジ エア フォース
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ アーロン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー ジョセフ ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルカーディン リチャード
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015522(JP,A)
【文献】特表2016-525209(JP,A)
【文献】特表2013-521508(JP,A)
【文献】特表2011-527422(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0211786(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0032839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086202(US,A1)
【文献】特開2011-247902(JP,A)
【文献】Jingwei Xu; Guisheng Liao; Shengqi Zhu; Lei Huang; Hing Cheung So ,Joint Range and Angle Estimation Using MIMO Radar With Frequency Diverse Array,IEEE Transactions on Signal Processing ,米国,IEEE,2015年04月13日,Volume: 63, Issue: 13,Page(s): 3396 - 3410,DOI: 10.1109/TSP.2015.2422680
【文献】Jingjing Li, Hongbin Li, Shan Ouyang,Identifying unambiguous frequency pattern for target localisation using frequency diverse array,Electronics Letters,英国,The Institution of Engineering and Technology,2017年09月01日,Vol. 53 No. 19,pp. 1331-1333,https://doi.org/10.1049/el.2017.2355
【文献】Chenghao Wang; Jingwei Xu; Guisheng Liao; Xuefei Xu; Yuhong Zhang ,A Range Ambiguity Resolution Approach for High-Resolution and Wide-Swath SAR Imaging Using Frequency Diverse Array,IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN SIGNAL PROCESSING,米国,IEEE,2016年09月02日,VOL. 11, NO. 2 ,Page(s): 336 - 346,DOI: 10.1109/JSTSP.2016.2605064
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心距離及び関心視野内の反射物体の明確な方位角を決定する連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ検出器(CW-FDA検出器)であって、
少なくとも1つの周波数発生器と送信機素子のアレイとを含む連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)と、
連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ受信機及びコンピュータデータプロセッサ(CW-FDA受信機及びプロセッサ)と、を備え、前記CW-FDA受信機は、
前記CW-FDA送信機による、前記視野の少なくとも一部を横切る送信の結果として反射物体から反射された帰還信号を受け取るように構成され、
前記プロセッサは、前記CW-FDA受信機から信号を受け取るように構成され、
前記CW-FDA送信機は、第1の送信スキームに従って動作するように構成され、前記第1の送信スキームにおいて、
前記少なくとも1つの周波数発生器は、少なくとも2つのそれぞれの送信機素子にそれぞれ異なる周波数の信号を供給するように構成され、
前記異なる周波数信号は、実質的に連続する波の周波数であり、前記送信機素子の間隔、及び前記送信機素子に提供される前記周波数は、距離内で反復する建設的干渉のパターンを示す第1の送信パターンを生成するものであり、
前記第1の送信パターンは、各反復内で、反射物体による前記送信パターンの反射の結果として生じる帰還信号の
タイミングがその可能な方位角に制約をもたらすように方位角に分布する建設的干渉の(単複の)領域を有し、
前記CW-FDA送信機は、第2の送信スキームに従って動作して少なくとも第2の送信パターンを生成するように構成され、
前記CW-FDA送信機は、
各送信パターンの結果として生じる各受信信号が、そのそれぞれの送信パターンへの帰属を可能にするような少なくとも1つの特徴を有し、
前記送信パターンが、帰属可能な帰還信号の前記タイミングが視野内反射物体の前記方位角の明確な決定を可能にする、互いと比べて十分な建設的干渉領域の空間的多様性を示す、
前記送信パターンを提供するように構成され、
前記CW-FDA受信機及びプロセッサは、各受信信号を前記1つの特徴に基づいてそのそれぞれの送信パターンに適宜に帰属させ、前記帰属した帰還信号の前記タイミングに少なくとも基づいて反射物体の方位角を明確に決定するように構成され、
前記送信パターンのうちの少なくとも2つは、同じ反復周波数を有し、それぞれの異なる送信スキームによって提供され、前記CW-FDA検出器は、物体の少なくとも明確な方位角を決定するように構成される、
CW-FDA検出器。
【請求項2】
前記送信機は、電波を送信するように構成され、前記受信機は、帰還電波信号を受け取るように構成される、
請求項1に記載のレーダー検出器であるCW-FDA検出器。
【請求項3】
前記送信機は、音波を送信するように構成され、前記受信機は、帰還音波信号を受け取るように構成される、
請求項1に記載の音波検出器であるCW-FDA検出器。
【請求項4】
前記送信スキームのうちの2つは異なる周波数帯で提供される、
請求項1から3のいずれかに記載のCW-FDA検出器。
【請求項5】
前記送信スキームのうちの2つは異なる期間内に提供される、
請求項1から4のいずれかに記載のCW-FDA検出器。
【請求項6】
前記送信スキームのうちの2つそれぞれに対し、少なくとも2つの送信機素子は送信機素子の前記アレイから選択された異なるシーケンスであり、前記2つの送信機素子のそれぞれに対し、送信機素子の前記アレイとは異なるシーケンスが用いられる、請求項1から5のいずれかに記載のCW-FDA検出器。
【請求項7】
少なくとも1つの送信パターンは、少なくとも2つの異なる区別可能な反復送信パターンを示す、
請求項1から6のいずれかに記載のCW-FDA検出器。
【請求項8】
距離内及び2次元視野内の反射物体の明確な方位角、仰角、距離又は位置を決定するためのものであり、
前記CW-FDA送信機は、送信機素子の2Dアレイを含み、
前記少なくとも1つの周波数発生器は、少なくとも3つのそれぞれの送信機素子に信号を供給するように構成され、
前記CW-FDA受信機は、前記視野の前記方位角の幅及び仰角の高さ全体から信号を受け取るように構成され、
前記CW-FDA検出器は、少なくとも第3の送信パターンを生成するように構成され、
前記送信パターンは、各送信パターンに帰属可能な帰還信号の前記タイミングが前記視野及び関心距離内の物体の少なくとも前記角度及び仰角の明確な決定を可能にする十分な多様性を示し、
前記プロセッサは、物体の少なくとも明確な方位角及び仰角を決定するように適合される、
請求項1から7のいずれかに記載のCW-FDA検出器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のCW-FDA検出器を備える
自律車両。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のCW-FDA検出器のための連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)であって、
少なくとも1つの周波数発生器及び送信機素子のアレイを備え、
第1の送信スキームに従って動作するように構成され、前記第1の送信スキームにおいて、
前記少なくとも1つの周波数発生器は、少なくとも2つのそれぞれの送信機素子にそれぞれ異なる周波数の信号を供給するように構成され、
前記異なる周波数信号は、実質的に連続する波の周波数であり、
前記送信機素子の前記間隔、及び前記送信機素子に提供される前記周波数は、距離内で反復する建設的干渉のパターンを示す第1の送信パターンを生成するものであり、
前記パターンは、各反復内で、反射物体による前記送信パターンの反射の結果として生じる帰還信号の前記タイミングがその可能な方位角に制約をもたらすように方位角内に分布する建設的干渉の(単複の)領域を有し、
前記CW-FDA送信機は、第2の送信スキームに従って動作して少なくとも第2の送信パターンを生成するように構成され、
前記CW-FDA送信機は、
各送信パターンの結果として生じる各受信信号が、そのそれぞれの送信パターンへの帰属を可能にする少なくとも1つの特徴を有し、
前記送信パターンが、帰属可能な帰還信号の前記タイミングと、が視野内反射物体の前記方位角の明確な決定を可能にする、互いと比べて十分な建設的干渉領域の空間的多様性を示す、
ような前記送信パターンを提供するように構成される、
CW-FDA送信機。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のCW-FDA検出器のための連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ受信機及びプロセッサ(CW-FDA受信機及びプロセッサ)であって、
前記CW-FDA受信機は、前記CW-FDA送信機による前記視野の少なくとも一部を横切る送信の結果として反射物体から反射された帰還信号を受け取るように構成され、
前記プロセッサは、前記CW-FDA受信機から信号を受け取るように構成され、
前記CW-FDA受信機及びプロセッサは、請求項10に記載の連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)の結果として生じる信号を受け取り、前記信号をその前記少なくとも1つの1つの特徴に基づいてそれぞれの送信パターンに帰属させ、前記帰属した帰還信号の前記タイミングに少なくとも基づいて反射物体の方位角を明確に決定するように構成される、
CW-FDA受信機/プロセッサ。
【請求項12】
連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ検出(CW-FDA検出)を実行して、関心距離及び関心視野内の反射物体の明確な方位角を決定する方法であって、
連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)を第1の送信スキームに従って動作させるステップを含み、
前記第1の送信スキームは、少なくとも1つの周波数発生器を、少なくとも2つのそれぞれの送信機素子にそれぞれ異なる周波数の信号を供給するように動作させるステップを有し、
前記異なる周波数信号は、実質的に連続する波の周波数であり、
前記送信機素子の
間隔、及び前記送信機素子に提供される前記周波数は、距離内で反復する建設的干渉のパターンを示す第1の送信パターンを生成するものであり、
前記パターンは、各反復内で、反射物体による前記送信パターンの反射の結果として生じる帰還信号の
タイミングがその可能な方位角に制約をもたらすように方位角に分布する建設的干渉の(単複の)領域を有し、前記方法は、
連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ受信機及びコンピュータデータプロセッサ(CW-FDA受信機及びプロセッサ)を使用して、前記視野の少なくとも一部を横切る前記CW-FDA送信機による送信の結果として反射物体から反射された帰還信号を受け取るステップをさらに含み、
前記CW-FDA送信機は、第2の送信スキームに従って動作して少なくとも第2の送信パターンを生成するように構成され、
前記CW-FDA送信機は、
各送信パターンの結果として生じる各受信信号が、そのそれぞれの送信パターンへの帰属を可能にするような少なくとも1つの特徴を有し、
前記送信パターンが、帰属可能な帰還信号の前記タイミングが視野内反射物体の前記方位角の明確な決定を可能にする、互いと比べて十分な建設的干渉領域の空間的多様性を示す、
ような前記送信パターンを提供するように構成され、
前記CW-FDA受信機及びプロセッサは、各受信信号を前記少なくとも1つの特徴に基づいてそのそれぞれの送信パターンに適宜に帰属させ、前記帰属した帰還信号の前記タイミングに少なくとも基づいて反射物体の方位角を明確に決定するように構成される、
方法。
【請求項13】
関心距離及び関心視野内の反射物体の明確な方位角を決定する連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ検出(CW-FDA検出)のコンピュータ実装方法であって、
反射物体によって反射され、請求項11に記載される連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ受信機及びプロセッサ(CW-FDA受信機及びプロセッサ)によって受信された、請求項10に記載される連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)の信号を供給し、又は該信号にアクセスするステップと、
前記信号をその特徴に基づいてそれぞれの送信パターンに帰属させるステップと、
前記帰属した帰還信号の前記タイミングに少なくとも基づいて、反射物体の方位角を明確に決定するステップと、
を実行するようにコンピュータを制御するステップを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(低無線周波数からテラヘルツ周波数までを含む)レーダー検出器及び(亜音速から超音波までを含む)音波検出器を含む検出器を用いた物体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的なレーダー法は、電波パルスのビームを特定の方向に操作し、操作型受信機(steerable receiver)(機械的又はデジタル)において逆反射を受け取り、その飛行時間を使用して物体の距離を決定し、操作方向を使用してその方位角を決定し、いずれかの周波数シフトを使用して半径方向(距離)のドップラー(相対速度)を測定するものである。受信機の操作には、操作型ディッシュアンテナ又はデジタル操作型フェーズドアレイアンテナが必要とされる。
【0003】
連続波周波数ダイバースアレイ(Continuous Wave Frequency Diverse Array)(CW-FDA)レーダー装置は、アンテナ素子のアレイを伴うが、各アンテナ素子に(パルスとは対照的に)異なる周波数の連続波信号が付与される比較的新しい技術革新である。通常、CW-FDAアレイは非操作型(un-steered)であり、従って大型レーダーシステムの有用な追加コンポーネントになり得るが、その利用案はこれまでのところ非常に限られている。連続波周波数ダイバースアレイ(CW-FDA)音波装置を形成することもできるが、同様に利用案はこれまで非常に限られている。
【0004】
これまでのところ、FDAレーダーに関する文献には、この素子から送信されたもの以外の周波数からの帰還信号を拒絶又は排除する送信アレイ又は受信機アーキテクチャについての言及しか成されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少なくとも反射物体の(1次元又は2次元の)明確な角度又は距離(理想的にはこれらの両方)を決定する改善された検出器及び改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、関心距離及び関心視野内の反射物体の明確な方位角及び/又は距離を決定する連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ検出器(CW-FDA検出器)であって、
少なくとも1つの周波数発生器と送信機素子のアレイとを含む連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ送信機(CW-FDA送信機)と、
連続波無線又は音波周波数ダイバースアレイ受信機及びコンピュータデータプロセッサ(CW-FDA受信機/プロセッサ)と、
を備え、CW-FDA受信機/プロセッサは、
CW-FDA送信機による、視野の少なくとも一部を横切る送信の結果として反射物体から反射された帰還信号を受け取るように構成された受信機と、
受信機から信号を受け取るように構成されたコンピュータデータプロセッサと、
を含み、CW-FDA送信機は、第1の送信スキームに従って動作するように構成され、第1の送信スキームでは、
少なくとも1つの周波数発生器が、少なくとも2つのそれぞれの送信機素子にそれぞれ異なる周波数の信号を供給するように構成され、
異なる周波数信号が、実質的に十分な程度に連続する波の性質のものであり、
送信機素子の間隔、及び送信機素子に提供される周波数が、距離内で反復する建設的干渉の確定的パターンを示す第1の送信パターンを生成するようなものであり、
各反復内で、パターンが、反射物体による送信パターンの反射の結果として生じる帰還信号のタイミングがその可能な方位角及び/又は距離に制約をもたらすように方位角及び/又は距離内に分布する建設的干渉の(単複の)領域を有し、
CW-FDA送信機は、第2の送信スキームに従って動作して少なくとも第2のこのような送信パターンを生成するように構成され、
CW-FDA送信機は、
各送信パターンの結果として生じる各受信信号が、そのそれぞれの送信パターンへの帰属を可能にするような少なくとも1つの際立った特徴を有し、
送信パターンが、帰属可能な帰還信号のタイミングと、CW-FDA検出器が取得するように構成された他のいずれかの情報との組み合わせが視野内反射物体の方位角及び/又は距離の明確な決定を可能にする、互いと比べて十分な建設的干渉領域の空間的多様性を示す、
ような送信パターンを提供するように構成され、
CW-FDA受信機/プロセッサは、各受信信号をその際立った特徴に基づいてそのそれぞれの送信パターンに適宜に帰属させ、帰属した帰還信号のタイミングに少なくとも基づいて反射物体の方位角及び/又は距離を明確に決定するように構成される、
CW-FDA検出器が提供される。
【0007】
この検出器には、視野内及び関心距離内の物体が関心方位角視野内に存在するかどうかにかかわらず、その明確な角度及び/又は距離(多くの実施形態では両方)の決定を可能にし、従来のパルス検出器システムと比べて送信のピーク電力を下げることができ、従って低コストであり、典型的な実施形態ではコストが掛かる巨大な操作型受信機の要件を避けることもできるという利点がある。
【0008】
用語についての解説
方位角(azimuth)という用語は、一般的には水平に横切る角度である、いずれかの方位となるように選択できる測定角度を意味するために使用される。仰角(elevation)という用語は、方位角に直交する軸を意味する。
【0009】
受信機は、固定形状受信機(例えば、ホーン受信機)であることが好ましく、指向性又は全方向性(2D又は3Dにおける全方向性)とすることができる。これには、ビーム操作の費用及び複雑さを必要とすることなく送信機の視野を横切る検出を可能にするという利点がある。或いは、ビーム操作受信機(例えば、回転ディッシュ又はフェーズアレイアンテナタイプ)を使用することもできる。このことは、物体の区別を支援し、又は特定の設備において既に利用可能なさらに複雑なレーダーシステムを利用する上で有用である。
【0010】
「実質的な連続波」という用語を使用する理由は、送信パターンにおける典型的な建設的干渉領域が、点位置における対象物体への影響を開始して終了するのに必要な期間よりも長い期間にわたって常に周波数が(送信に)連続して残るからである。比較すると、パルス送信では(チャープパルス送信の場合には特定の周波数の)パルスの簡潔性が使用され、距離を明確に決定できるように各パルス後には送信が停止される。
【0011】
対照的に、ここでは複数の反復を送信し、距離決定の場合には、各送信パターンにおいて異なる周波数の反復を使用して、可能な位置を距離の推測ができる程度まで制約することが望ましい。また、方位角決定の場合には、各送信パターンにおいて同じ周波数の反復を使用して、可能な位置を方位角の推測ができる程度まで制約することが望ましい。
【0012】
周波数は、通常はいつ設備が使用されるかに従ってオン又はオフにされ、或いは(例えば、代わりに同じ周波数帯で異なる送信スキームを送信できるようにするために)例えば送信される反復パターンの複数の繰り返しにわたって残存した後でオフにされることもある。
【0013】
従って、「反復(repeating)」という用語は、連続反復を送信する要件よりもむしろ、使用する周波数が残存していた場合に反復することに起因する信号の性質を意味する。各送信パターンの複数の反復を送信することは極めて望ましいが、一方でこれらは連続反復である必要がないことが望ましい。周波数は、少なくとも2回の、好ましくは少なくとも10回の、好ましくは少なくとも100回の反復にわたって残存することが好ましい。
【0014】
「それぞれ異なる周波数の信号を含む少なくとも2つのそれぞれの送信機素子を提供するように構成された」という用語については、必ずしもそうというわけではないが、典型的には周波数が一定であることを意味する。
【0015】
また、非線形周波数FDAアレイの場合には、一般に各反復が次から次へとわずかに変化し、連続反復が同様の特性(例えば、同様の領域の建設的干渉)を有する場合には、これもやはり反復とみなされる。確定的に反復する信号の利点は、実質的に同一の信号を生成できるという利点に加えて、送信される信号を正確に知ることができ、どの反復が送信されるかにかかわらず帰還信号との比較が容易になる点である。
【0016】
「反射的な(reflective)」という用語は、特に高い反射性を有することを意味するよりもむしろ、送信されるタイプの波(レーダー又は音波)に対して反射的であることを意味する。物体の方位角及び/又は距離の決定は、物体が関心視野内、関心距離内及び受信機の視野内に同時に存在する場合にのみ可能である。このような物体の方位角及び/又は距離は、他のこのような物体が存在しない場合にのみ決定できればよい。しかしながら、送信パターン(特に多様性及びその数)は、複数の物体の方位角及び/又は距離を十分に区別して単独で識別できることが好ましい。
【0017】
「CW-FDA検出器は、他のいずれかの情報との組み合わせで~を取得するように構成される」という用語は、CW-FDA検出器が追加機能を有する可能性を意味する。
【0018】
ほんの一例として、物体が左側に存在するか、それとも右側に存在するかを検出するように適合された追加のセンサ又は機能が含まれていると仮定する。この場合、信号は、順方向からのいずれかの側の角度のみを区別できればよく、従って建設的干渉の領域は順方向を中心に対称であり、依然として方位角を決定するのに十分なものとなり得る。任意に、CW-FDA検出器は、方位角及び/又は距離に関する追加情報を取得するように構成されない。或いは、CW-FDA検出器は、方位角及び/又は距離に関する追加情報を取得するように構成される。
【0019】
一般に、反復パターンの各反復内の送信パターンのうちの少なくとも1つ、好ましくはその全てについて、このパターンは、方位角内に分布した建設的干渉の(単複の)領域を有する。これによって方位角の決定が可能になる。
【0020】
一般に、反復パターンの各反復内の送信パターンのうちの少なくとも1つ、好ましくはその全てについて、このパターンは、距離内に分布した建設的干渉の(単複の)領域を有する。これによって距離の決定が可能になる。
【0021】
電波又は音波の選択
明らかに全ての送信及び信号は同じタイプのものであるが、音波エネルギー(ソナー、超音波など)又は電波エネルギー(レーダー)のいずれかを使用することができる。
【0022】
任意に、検出器はレーダー検出器であり、送信機は電波を送信するように構成され、受信機は電波を受信するように構成される。周波数帯は、一般に3kHz~3THzであり、水平線越えレーダーでは3~30MHzであることが好ましく、地上波システムでは30~520kHzであることが好ましく、他の典型的な用途では300MHzよりも高く300GHzよりも低い、典型的には1~100GHzであることが好ましく、これにはコンパクトな送信機及び高解像度を提供するという利点がある。或いは、検出器は音波検出器であり、送信機は音波を送信するように構成され、受信機は音波を受信するように構成される。周波数帯は、一般に100Hz~20MHzであり、低周波数は能動的な地震の検出に適し、超音波周波数は医療及び工学検出又は撮像に適し、中間周波数(例えば、40kHzなどの低超音波周波数帯)は空気を通じた物体の検出に適する。
【0023】
送信パターンの確保は区別可能である
通常、送信パターンの反射に由来する信号は、異なる送信スキームで送信された結果として区別可能である。
【0024】
送信スキームは、異なる周波数帯であることによって、又は異なる期間中に送信されることによって(又は場合によっては区別可能な偏波を有することによって)異なる。一般に、何らかの形態の波形直交性(waveform orthogonality)を使用すべきである。
【0025】
なお、1つの送信スキームでは、(1つが高速の螺旋形状であり、2つ目がアンテナ素子の一部に2つの非常に似通った周波数を適用することによって生じる低速の方位角非依存性振幅変動であるような)固有の特徴を有することによって2又は3以上の区別可能な送信パターンを有することが可能である。これについては
図22に示す。しかしながら、単一の送信スキームからの複数の送信パターンを使用して距離又は方位角を明確かつ正確に確立することは困難であり、従って少なくとも2つの送信スキームが必要である。通常は、送信スキーム当たりに1つの送信パターンしか存在しない。
【0026】
任意に、第1、第2、及び理想的には第3の又は全ての送信スキームのうちの少なくとも2つが異なる周波数帯で送信され、受信機は、これらの周波数帯の帰還信号を分離するように構成される。これにより、各送信スキームの送信をより長く実行し、潜在的に信号対雑音比を高めることができる。
【0027】
これとは別に、又はこれに加えて、第1、第2、及び理想的には第3の又は全ての送信スキームのうちの少なくとも2つが異なる別個の期間に(例えば、交互に)送信される。
【0028】
これにより、どの帰還信号がどのスキームに対応するかを容易に識別できるようになる。
【0029】
周波数は、送信スキームが異なる期間内のものであるかどうか、又は異なる周波数帯におけるものであるかどうかにかかわらず、同じ一連の送信機素子から送信することができる。これによって小型の送信機が可能になる。或いは、これらの周波数は、(一部が共通し、又は全く共通せず、線形的順序(linear sequence)に対応する方向に物理的に重なり合うことができる)異なる一連の送信機素子から送信することもできる。
【0030】
送信パターンタイプの例
螺旋
通常、第1の(又は各)送信スキームでは、シーケンスの各送信機素子に提供される周波数が、第1の掃引周波数で視野を横切って繰り返し掃引する螺旋送信パターンを生成するような、第1の方向におけるシーケンスに沿った送信機素子の位置の可変関数(varying function)である。
【0031】
螺旋送信パターンは、最大180度の視野を横切って順方向に伝播することができ、或いは半螺旋形状の鏡像としての逆方向を含むことができ、又は実際には送信機素子の線形アレイの軸の周囲の全方向に伝播することができる。
【0032】
通常、螺旋送信パターンは、送信パターンのメインローブを構成する建設的干渉の経路である。或いは、特に2つのアンテナ素子しか存在しない場合には、送信がメインローブを欠いていることもあり、そうでなければ各ローブをメインローブであるかのように取り扱うことができる。
【0033】
2つのアンテナ素子の使用では、(半波長に制限されない)様々な量とすることができるアンテナ間隔を利用する幅広い可能な送信パターンが得られ、アンテナ素子間で大きく異なる周波数を1つの送信スキーム内で使用することができる。3又は4以上のアンテナ素子の使用では、2つのみのアンテナ素子によって得られるよりもメインローブ間がさらに分離したメインローブパターンが得られる。3つ以上の送信機素子の使用は、典型的な等間隔の送信機素子の行にわたる実質的に線形的な周波数の増加に特に適しているが、遠視野(far field)において明確に定義された送信パターンを達成するために、周波数の範囲を最低周波数の10%程度に保持することが望ましい。
【0034】
一連のアンテナ素子に沿って周波数の変動に適度な非線形性を適用することによって、螺旋の変動を達成することができる。これにより、(少なくとも十分とすることができる短期間にわたって)特定の方向(例えば、順方向)の狭い角度では螺旋形態が強く明確になり、広い角度ではそれほど又は全く明確にならない。これについては
図23に示す。
【0035】
別の選択肢は、螺旋送信パターンが広い角度で生成された時には常に送信をオフに(すなわち、増幅器をオフに)し、螺旋送信パターンが順方向を通じて掃引する時には常に送信をオンにすることである。(他の送信パターンにも同様に適用可能な)第3の方法は、例えば吸収バッフルを使用して広い角度の送信を遮断することである。
【0036】
円形
別の送信パターンの例は円形パターンである。このパターンは、アンテナ素子の1つ、一部又は全部に、これらが建設的干渉と相殺的干渉とを交互に行うように(各ペアが同じ差分だけ異なる)2つの非常に似通った周波数を提供することによって達成することができる。この方法を螺旋送信パターンも生成する送信スキームに適用した場合、送信スキームが2つの送信パターンを有するようになり、これらが異なる周波数で、好ましくは大幅に異なる周波数で反復する限りこれらのパターンを区別できるようになる。代替例として、送信機がオンである時に全ての関連する方位角にわたって建設的干渉の密な配列を提供するように構成されている場合、送信機(例えば、増幅器)のオンとオフを切り替えて円形同心パターンを提供することもできる。このパターンは、最高周波数の多くの倍数(many multiples)(例えば、5+又は20+)である間隔の2つのアンテナ素子を使用することによって達成することができる。
【0037】
擬似カオス(Pseudo-chaotic)
第3の例として、任意に選択された周波数。波長が公倍数に分けられるように周波数が選択される限り。これにより、疑似カオス的な送信パターンではあるが規則的に反復する確定的送信パターンが生じる。送信パターンが建設的干渉の複数の明確に識別可能な所定のホットスポットを有している場合、帰還信号のタイミングによって、物体の位置を対応する数の可能な位置に制約することができる。この情報を多くの異なる送信パターンに基づく情報と組み合わせた場合、物体の位置を突き止めることができる。しかしながら、疑似カオスパターンの使用には課題も多い。疑似カオス送信パターンを示す送信スキームの例については
図18を参照されたい。
【0038】
その他
他のパターンも可能である。要件は、反復送信パターンを有し、その中に1又は2以上の建設的干渉領域及び1又は2以上の相殺的干渉領域が存在することである。有用な望ましい特性は、所定の方位角について送信パターンの反復部分内の1つの距離に建設的干渉が存在することである。
【0039】
視野幅の制御及び前方視野への制約
検出精度は、一連の送信機素子の順方向のいずれかの側に進むにつれて低下するので、送信機、受信機、又はこれらの両方の方位角視野を(例えば、遮断バッフル(blocking baffles)を使用して)制限することが有用である。送信スキームの送信を順方向に制約する(後部方向を遮断する)には、一般に後方遮断素子(例えば、バックプレーン)が有用である。
【0040】
送信パターンの(単複の)一致ペア(matched pair)又は多くの送信パターンの使用
送信パターンは、以下のような2つの送信パターンを含むことが好ましい。
- 螺旋であり、
- 等しい掃引周波数を有し、
- 逆の掃引方向を有し、
- それぞれの送信スキームによって送信される。
【0041】
これは、螺旋送信パターンを介して実現される「一致ペア」の例である。一致ペアには、コンピュータプロセッサによる方位角の特定をさらに容易にできるという利点がある。任意に、一致ペアでは少なくとも3つの、好ましくは少なくとも5つの送信パターンが構成される。一致ペアである送信パターンは同じ送信スキームで送信すべきではなく、従って一致ペアには2つの送信スキームが必要である。3つの一致ペアに構成された6つの送信スキームの例示については
図21を参照されたい。
【0042】
一致ペアを達成する1つの方法は、1つの送信スキームが、掃引周波数Xの反復螺旋送信パターン(すなわち、半螺旋)を示し、第2の送信スキームが、やはり同じ周波数Xで反復する円形反復送信パターン(すなわち、振幅又は位相又は偏波の時変的方位角非依存変動)を示すことである。各パターンの結果として帰還する信号のタイミングは、可能な物体の位置を一連の円弧に制約し、これらの円弧の交点を識別することによって、この物体が一連の点のうちの1つに存在すると判断することができる。2組の円弧は同じ間隔であるため、この一連の点は、1つの線内に様々な距離で、ただし全てが同じ方位角で存在するようになる。これにより、(信号対雑音及びクラッタなどに従って)物体の方位角を決定することができる。
【0043】
CW-FDA検出器は、(好ましくは少なくとも6つの、任意に少なくとも30個の)第3の送信パターンを生成するように構成されることが好ましい。この場合も、各送信パターンは、その独自の送信スキームによって生成されることが好ましい。さらに異なる送信パターンの使用は、明確な距離及び/又は方位角(典型的な実施形態では両方)の検出を改善するのに役立つ。
【0044】
2D視野
任意に、視野は2D方位角及び仰角視野であり、送信機アレイ及び各送信機素子のシーケンスは2次元であり、
- 送信パターンは、2D視野内で全て互いに異なり、
- 送信パターンは、2D視野に対して、各送信パターンに起因する帰還信号のタイミングと併せて物体の少なくとも角度又は位置を決定するのに十分な情報を提供する十分な多様性を示し、
コンピュータデータプロセッサは、物体の明確な方位角及び仰角を決定するように適合される。
【0045】
2D視野における送信パターン
円形視野の2D同等物は球形であり、疑似カオスの2D同等物は2D疑似カオスであり、これらの形状の送信パターンは生成するのが比較的容易である。螺旋送信パターンの好ましい2D同等物は、方位角において1つの周波数で、仰角において異なる周波数で繰り返し掃引するパターンである。このパターンは、送信機素子の2Dシーケンス(例えば、正方形グリッド)を選択し、一方の次元の線形増加と他方の次元の異なる割合の線形増加との和である周波数の変動を適用することによって達成することができる。2つの掃引周波数の差分(従って2次元における信号周波数の線形増加割合の差分)は、概数倍数(round number multiple)であることが好ましい。掃引周波数の差分は少なくとも3であり、好ましくは少なくとも50であることが好ましい。
【0046】
2Dでは、送信スキームのぴったり一致するペアよりもむしろ、送信スキームの一致する四つ組(quadruplets)を提供することが有利である。例えば、第1及び第2は、第3及び第4と比べて一方の次元において等しい周波数であるが逆方向の掃引経路を有し、第1及び第3は、第2及び第4と比べて他方の次元において等しい周波数であるが逆方向の掃引経路を有する。
【0047】
代替例として、方位角の角度変動(例えば、螺旋)を示す1つの送信スキームを実行し、仰角の角度変動(例えば、ここでも螺旋)を示す別の送信スキームを実行し、これらの結果を組み合わせて物体の位置を推測することによって角度及び方位角を決定することもできる。この方法は、単一の物体については単純であるが、多くの物体/クラッタが存在する場合には、(例えば、方位角-距離の平面に対して45度、かつ仰角-距離の平面に対して45度などとすることができる)中間角度(intermediate angle)に関する変動(例えば、螺旋)を示すさらなる送信スキームが必要になるので、さらに計算処理集約的になる。
【0048】
複数視野
本明細書で説明する技術は、約60~120度の前方視野内での精度が高い。任意に、送信機の線形シーケンスからの後方送信、又は実際には送信機の列に垂直な全ての方向への送信を(遮断しないことによって)許可することもできる。しかしながら、これによって物体が前方に存在するか、それとも後方に存在するかなどを区別するのが困難になり、従って一般に視野が特定の順方向に制限される。
【0049】
とは言うものの、視野を変更して、2つの、複数の、又は多くの視野を使用することができる。説明するプロセスは、各視野に対して繰り返される。送信機(又は受信機)を回転させるのではなく、異なる送信機素子の選択を使用して異なる視野を確立することができる。通常、視野は重なり合って、例えば約360度の線又は帯を形成し、或いは任意に全ての方向をカバーする。このことは、さらに幅広い方向の物体に関する情報を収集するのに役立つ。
【0050】
送信パターンを確保する方法の例は異なる
1.これらのパターンは、方位角に対して反転させることができる(例えば、逆の掃引方向)。これによって物体の角度の検出が容易になる(一致ペアを参照)。
2.これらのパターンは、異なる順方向を有する(従って、例えば螺旋の場合には掃引経路の異なる開始点及び終点を有する)が方位角視野にわたって重なり合うように互いに対して回転することができる。これには、さらに広い結合視野を形成するように複数の重なり合った視野を設定する上で役立つさらなる利点がある。
3.これらのパターンは、異なる反復周波数を有することができる。螺旋の場合、このことは異なる掃引周波数を意味する。これには、物体の距離を決定し、特に距離精度を改善してさらに長い距離での検出を容易にするのに役立つという利点がある。円形送信パターンでは、同等の方法によって交互方位角非依存建設的/相殺的干渉(alternating azimuth-independent constructive/destructive interference)が異なる周波数で発生する。
4.異なる疑似ランダム定期送信パターンを生成するランダムに又は任意に選択された周波数の使用。例えば、それぞれの送信機素子において周波数をランダムに再構成すると、一般に大きく異なる送信パターンが生じる。
5.これらは異なる形態を有することができ、例えば1つを螺旋形として他を円形とし、或いは1つをシングルスレッド螺旋として他をマルチスレッド螺旋とすることができる。
【0051】
マルチスレッド螺旋は、2つのアンテナ素子を使用して、特にこれらを半波長よりも離して配置することによって達成することができる。
【0052】
送信機アレイ形状の変形
好適な送信機アレイの例は、正方形/長方形/菱形グリッドなどのグリッド、又は(円形又は楕円形、或いは任意に丸まった側面及び任意にループ内の間隙を有する三角形、正方形、五角形、六角形、又は「プラス」形状などの)ループを含む。所望の前方視野方向に対応する直線で配置されていない送信機素子を調整するには、その方向の概念的な線の正面又は背後の位置変動に対応するように位相差を加算又は減算することができる。
【0053】
さらに一般的に言えば、いずれかの実施形態では、各送信機素子のシーケンスが概念的な直線から逸脱していることがあり、このような各送信機素子(この線から順方向に対して逸脱している送信機素子)に、この逸脱を補償することなどの相調整が行われる。相調整は、電子相調整によるもの、又はこの送信機素子にこの周波数を提供する導波路の長さを選択又調整することによるものとすることができる。実際に、ある実施形態によれば、各シーケンスが円弧状に配置される。このことは、車両の前面などの別の物体上にCW-FDA検出器を取り付けるために有用であり、円形送信機アレイの使用を可能にするために有用となり得る。
【0054】
この円弧は、(CW-FDA検出器の周波数帯の単一波長の距離よりも順方向の変動が少ない)浅い円弧であることが好ましい。これにより、車両バンパーなどの車両の前面又は側面などの非平面上への配置が可能になり、車両での検出器の使用が容易になる。
【0055】
任意に、アレイは、中心波エネルギー遮断素子(central wave energy blocking element)の周囲に(或いは、例えばその少なくとも1/3又は少なくとも半分などの一部に)分布し、送信スキームの視野の違いは、送信機素子のそれぞれ異なる選択物を選択することによって達成される。これには、より広い視野が可能になる一方で、(各送信スキームの)後部方向への送信に起因する誤検出が避けられるという利点がある。
【0056】
アレイは、次数nの個別の回転対称性を有する(一般に、対称性は、1つの中心遮断素子が存在する場合には、中心遮断素子の位置に対応する軸に関する)ことが好ましく、ここでのnは少なくとも3であり、送信スキームのうちの少なくとも3つが、(同じ個別の回転対称性に従う)互いのそれぞれの回転である送信機素子のそれぞれの選択を有する。これには、120度~360度異なる順方向を有する方向に送信するための選択をさらに容易に行うことができるという利点がある。
【0057】
異なる反復周波数の使用
好ましい送信パターンのタイプは螺旋である(一般に、この意味は、順方向を考慮した時に螺旋であるため半螺旋形であるが、伝播が可能である場合には後方にも前方パターンの鏡像が生成される)。螺旋形状は、掃引周波数、すなわち視野を横切って掃引する際の周波数を有する。
【0058】
2つの送信機素子のみを使用して形成できる2重螺旋及び3重螺旋などの場合には、特定の距離に1つの螺旋のみが存在するように視野を制約することができる。或いは、掃引周波数は、パターンを反復する周波数として解釈することもできる。
【0059】
送信スキームのうちの少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも6つの送信スキーム、さらに好ましくは少なくとも10個の送信スキーム、さらに好ましくは少なくとも20個の送信スキームは、全てが異なる掃引周波数を有することが好ましい。使用される掃引周波数が多ければ多いほど、物体の距離を正確に決定することが容易になり、特に長い距離での検出が可能になる。
【0060】
これらの送信スキーム(又はその一致ペア)は異なる掃引周波数を有し、その掃引周波数を一定距離にわたって分布させ、掃引周波数の密度は、距離の上端と比べて距離の下端の方が高いことが好ましい。これにより、物体の分布に関する情報が各スケールにおいて同様の量だけ提供されるので、線形分布又は指数分布に比べて計算リソースをより最適に使用することができる。
【0061】
とりわけ、送信スキーム(又はその一致ペア)の掃引周波数は、実質的に指数級数に従って分布することができ、この指数は、好ましくは1.01~10の範囲、さらに好ましくは1.1~5の範囲であることが好ましい。指数は素数であり、任意に2.0であることが好ましい。
【0062】
掃引周波数の範囲は、少なくとも10の倍数に及び、さらに好ましくは少なくとも50であることが有用となり得る。これにより、さらに遠い通達距離にわたって(単複の)物体の距離を決定する精度を向上させることができるが、精度及び距離の向上にはさらに高い処理能力が必要である。従って、(小型ドローン、室内移動ロボット(room navigating robots)などの)ポータブル用途又は低出力用途では、この範囲が20未満であることが有利であり、高出力用途(自動運転/自律自動車及び大型ドローン)では20を上回ることが好ましい。
【0063】
シーケンスに沿った周波数の線形又は非線形変化
各シーケンスに少なくとも3つの送信機素子が存在する場合、シーケンスに沿って周波数に線形増加関数が存在することができる。これにより、明確なローブ及びサイドローブパターンを提供することによってプロセッサによる計算処理の複雑さを低減することができるが、掃引経路に(有用であると同時に計算要件の高い)さらなる複雑さを加える非線形関数を実装することもできる。1つの理由は、等間隔の送信機素子に適合しない表面上に送信機を配置するためとすることができる。
【0064】
1つの周波数発生器の共通使用
周波数は、全て単一の周波数発生器から(例えば、周波数逓倍器を介して間接的に)生成することができる。これにより、送信スキームがコヒーレントに生成されることが確実になり、このことは良好な品質結果にとって重要である。或いは、各送信スキームが独自の周波数発生器を有し、任意に各送信機が独自の周波数発生器を有することもでき、典型的な音波周波数範囲内の周波数発生器の実装はそれほど困難ではないので、このオプションは音波送信にとってさらに魅力的である。
【0065】
多くの反復
一般に、各送信スキームは、一般に少なくとも2回の、任意に少なくとも100回の送信パターンの反復を提供するように一定期間にわたって動作して信号対雑音比を高める。
【0066】
ドップラー測定
従来のレーダー法と同様に、帰還信号のドップラーシフトを測定することができる(すなわち搬送波周波数で)。これにより、厳密に距離方向(すなわち、正確に半径方向)に対する物体の相対速度の成分が識別される。このことが有用となり得る理由は、複数の物体が存在してこれらが全て異なるドップラーシフトを有する場合、これによってこれらの物体を識別することができ、1つの物体の角度、距離又は位置を識別する問題が軽減され、各物体についてこれを繰り返すことができるからである。
【0067】
複数のモード
CW-FDA検出器は、少なくとも2つのモードのいずれかで選択的に動作するように構成され、各モードは掃引周波数のそれぞれの距離にわたる掃引周波数を有する送信スキームを提供し、これらの距離は異なる重複距離であることが有利である。高い掃引周波数ほど短距離に適しているが、検出精度は高い。従って、これには、検出器が、距離分解能の高い短距離検出と距離分解能の低い長距離検出とを状況に応じて切り替えることができるという利点がある。
【0068】
任意に、CW-FDA検出器は、短距離内で物体を検出したことに応じて長距離モードから短距離モードに切り替えるように構成される。任意に、CW-FDA検出器は、ユーザ入力に従ってモードを切り替えるように構成される。
【0069】
用途例
パルス式検出器(pulsed detector)に比べて車両のコストを下げるという利点がある自律車両上の検出器などの多くの用途が考えられる。
【0070】
レーダー検出器としての用途例は以下の通りである。
- 自動運転/自律自動車などの自動車上
- 航空機上又は(クアッドコプター又はマルチコプタードローンなどの)空中ドローン上
- ボート又は船舶又は水上ドローン上
- 宇宙船又は衛星上
- 地上レーダー施設上
【0071】
音波検出器として用途例は以下の通りである。
- 室内移動に適したロボット上
- ボート又は船舶又は浮遊ドローン(buoyant drone)上
- 潜水艦又は水中ドローン上
- 医療用又は工学用スキャナ(超音波)内
- 地下検出器内(低周波音波)
【0072】
実施形態例
実施形態例は、異なる周波数帯又は交互期間(alternating time periods)における独立したそれぞれの送信スキームを介して螺旋送信パターンを使用し、広い視野、送信機から分離されたホーン受信機を使用する。
【0073】
一致ペアにおける掃引周波数を有する多くの異なる螺旋送信パターンが存在し、一致ペアは、とりわけ掃引周波数分布の対数変動を有する周波数の距離にわたって分散的に広がる。
【0074】
1GHz、2.4GHz又は5.2GHzの搬送波周波数が使用され、一致ペアの周波数は、1kHz、2kHz、4.5kHz、10kHz、20kHz、45kHz、100kHz、200kHz、450kHz、1000kHz、2000kHz、4500kHz、1MHz、2MHz、4.5MHz、10MHz、20MHz、45MHzである。
【0075】
いずれかの送信スキームにおいて送信機素子に適用される最大周波数範囲は、その最大値の30%未満であり、好ましくは10%未満である。
【0076】
応答から、視野及び関心距離内の物体の位置を(状況に応じて特定の精度まで)決定することができる。物体を明確に特定できる最大距離は、掃引周波数の数及び距離、並びにデータ処理ステップに依存する。最も高い掃引周波数での最大距離分解能は、掃引経路間の距離変動の約半分であり、或いは送信機素子の数によってはさらに低くなる。
【0077】
例えば、電波の場合、上記の例では、最も遅い掃引周波数が~1/1000sのサイクルを有し、これは空中を~300,000,000m/sで進んで~300,000mに等しい公称距離(ただし、最も遅い掃引が距離内で1回の掃引のみを実行することは厳密に必要ではないので、潜在的にこの倍数)を与える。最も速い掃引周波数(45MHz)は、メインローブ掃引経路間の距離分離が~7mであり、少なくとも~3.5m(使用する送信機素子の数によっては潜在的にこれ以上)の最大分解能を与える。当然ながら、距離及び分解能には、送信強度及び時間、並びにクラッタ及び測定精度などのさらなる制限因子が存在する。なお、一般に距離分解能は、より高い周波数では使用するアナログ-デジタル変換器のサンプリングレートによって制限されるが、これは_の問題である。
【0078】
(例えば、200kHzの搬送波周波数を有する音波を使用した)第2の例としては、送信スキームペアの組を準備することができ、従ってこれらのペアは、100Hz、200Hz、450Hz、1kHz、2kHz、4.5kHz、10kHz、20kHzの掃引周波数を有する。この例では、距離が3m又はそのなんらかの倍数に等しく、潜在的距離分解能が1.5cmである。
【0079】
さらなる例については
図15及び
図16に示す。これらは説明例にすぎない。レーダー用途では、送信機を小型化することができるという理由で、手頃な送信機をすぐに利用できる(特に無認可使用が可能な)2.4GHz又は5GHzの無線周波数帯、特に5GHz帯を利用することが有利である。2.4GHz帯を使用してモード4~10の範囲の実施形態をさらに容易に実装することもできるが、これには大型の送信機が必要である。
【0080】
図15には、少なくとも5GHz~35GHzの範囲の搬送波周波数を使用して複数の有用な範囲及び距離分解能が可能であることを示す。X帯域(8~12GHz)、K帯域(18~26.5GHz)、Ka帯域(26.5~40GHz)、Ka帯域(26.5~40GHz)、並びに5GHz帯域(例えば、免許不要スペクトル)における例を示す。40GHz~100GHzの周波数を使用して分解能を向上させることもできる。
【0081】
モード1~4を含む5GHz帯を用いた例は、自律自動車などの多くの用途に有用である。モード8~10は、宇宙船用のレーダーとして特に有用である。キューブサット(cube-sat)内/上に配置された3素子5GHz送信アンテナ、又はキューブサットから伸びる又は広がるように構成されたさらに大型アンテナのいずれかを有するキューブサット用のレーダーが想定される。別の例は、特に低出力モードを使用する、小型空中ドローン上での使用に特に適したモード3~5である。別の例は、地形をナビゲートするように設計されたロボットに特に有用なモード1~3である。別の例は、船舶用レーダーに特に有用なモード4~7である。なお、モード1~3は5GHzよりも高い搬送波周波数を必要とし、従って現在ではさらに多くのコストが掛かると予想されるが、有効距離において潜在的にさらに高い距離分解能を提供する。
【0082】
なお、モード1~10は一例にすぎない。低出力モードは、距離対距離分解能の比率が低いもの(各事例での比率は100)として例示しており、一方で距離対距離分解能の比率が高い(各事例での比率は20~510)高出力モードも例示する。この場合も、これらは一連の実施形態から取り出した例である。高比率の距離対距離分解能、並びに低比率は、
図15又は
図16の例を開始点として使用して容易に実装される。
【0083】
図16を参照すると7つの実施形態例を示しており、最初の2つは特定のレーダーの実施形態であり、後の5つは電波エネルギーよりもむしろ音波エネルギーに依拠する。
【0084】
第1の例では、2.4GHzの免許不要帯域を使用しており、4mの距離分解能が可能であり、(十分な送信機素子、十分な送信スキーム及び十分な信号対雑音比の影響下では)これを(例えば、5cmの距離分解能を達成するために図示のように5倍)上回ることもできる。
【0085】
第2の例では、30MHzの低搬送波周波数を送信に使用して、この例では(達成された出力及び信号対雑音比の影響下で)60kmの距離までの水平線越えレーダーの実行を可能にしている。(例えば、15m~40m又はそれよりも長い)さらに大型の送信機素子アレイを使用すべきである。
【0086】
次の5つの実施形態では、送信機が無線送信機アンテナ素子ではなく、音波送信機(スピーカ、圧電送信機、振動変換器など)のアレイである。
【0087】
例示する第1の音波の実施形態は、空中でのみ弱く減衰する超音波搬送波(例えば、40,000Hz又はそれ以上、或いは図示のように80,000Hz)を使用して、空気を通じて近くの物体の検出を可能にする。図示の用途例は、室内の物体を検出する検出器であるが、屋外ナビゲーションにも等しく適用可能である。電波と比べて遅い音波の速度は、検出のために物体からの反響を収集するのに多くの時間が掛かることを意味するので、この検出器は、低速ロボットの衝突回避に適する。図示の例では、使用する最大掃引周波数が、(
図15及び
図16に示すように)搬送波周波数よりも少なくとも10の比率だけ低いことが好ましい。
【0088】
しかしながら、(例えば、高周波の減衰に起因して)非常に高い周波数の音波と共に機能するのは困難であり、高い距離分解能を達成するには高い掃引周波数が必要であるため、このことは、搬送波周波数よりも約10~20倍遅い最大掃引速度を使用することが適切となり得る一方で、レーダーでは搬送波周波数よりも20~100,000倍遅い掃引速度を使用することがしばしば好都合となり得ることを意味する。
図16の例に示すように、音波CW-FDA装置では最大掃引速度が約10である。
【0089】
なお、公称距離は、使用する最も低い掃引周波数でのメインローブの1回の掃引中に送信が進む距離に等しい装置距離の設定を設計者が選択すると想定したものである。代替方法として、距離を越える物体を識別するような複数の送信スキームからの帰還信号を比較することによって、より長い距離を非常に直接的に達成することもできる。
【0090】
さらに、この表には、送信速度を最大掃引周波数で除算したものに等しいものとしての検出器の公称距離分解能も示す。しかしながら、送信機アレイ内で多くの送信素子が使用される場合には、送信のメインローブをメインローブ経路間の距離(いずれかの所与の時点の距離)に対して非常に狭くすることができる。この方法を使用すれば、容認できる信号対雑音比、及び検出精度に影響し得る他の要因の影響下で、図示の概念的分解能を上回ることが容易になり得る。この表には、分解能を連続するメインローブ間の距離の5分の1とした場合に達成される分解能を示す「拡張分解能(enhanced resolution)」というさらなる行も示す。
【0091】
図16の第2の音波例を参照すると、この例では送信搬送波周波数が5MHzであり、生体組織を通じた送信速度が約1500m/sである。高い距離分解能を達成するには、送信機素子が互いに非常に近いことが必要であるが、この制約下では、5MHzの搬送波周波数及び最大500,000Hzの掃引周波数範囲を使用して0.3cmの公称距離分解能が可能である(また、少なくとも8つなどの多くの送信機素子を含むアレイを使用して0.06cmなどのさらに高い解像度も可能である)。
【0092】
図16の第3の音波例には、鋼又はアルミニウムなどの固体の亀裂又はその他の物体/欠陥を検出するのに適した10MHzの超音波を使用する超音波検出器例を示す。この場合も、圧電変換器であることが好ましい超音波変換器の小型アレイが必要である。
【0093】
図16の第4の音波例には、20kHzの可聴搬送波周波数及び毎秒50~2000の掃引周波数範囲を使用する地下音波検出器を例示する。この検出器は、岩を通じて音波が伝わり、適切な信号対雑音比が受信機に帰還する条件下において、2mの(ただし潜在的にはこれよりも高い、例えば0.4mの)公称距離分解能で最大80mの距離を検出することができる。(制御爆破などの)パルスに依拠する従来の技術と比較すると、本明細書で説明する方法は連続波送信を使用し、これでは弱い可能性もあるが、(加算時に)強い信号対雑音比を提供する十分な信号が受け取られるまで連続して動作することができる。従って、この検出器は、潜在的に安価で低破壊的な(less destructive)物体検出方法を提供し、音波又は地下検出のみならず全ての例に適用される。この方法は、異なる送信速度、従って異なる距離分解能を有するにもかかわらず、水中検出器にも適する。
【0094】
図16の第5の音波例には、低い搬送波周波数(5kHz)及び低い掃引周波数(1~500Hz)を使用して8mの公称分解能(又は例えば2mの拡張分解能)で最大4kmの地下の(伝播及び信号対雑音比を受ける)物体を検出するという理由で、この例では能動的地震センサとしての地下センサを示す。これには、1.2m又は3.2m又はそれ以上の大型送信機アレイが必要である。
【0095】
最大掃引周波数対搬送波周波数の比率
なお、多くの音波送信機の実施形態及び用途では、最大掃引周波数対搬送波周波数の比率が(最大距離分解能をもたらす)約0.1であることが有利であるのに対し、特に2.4~5.8GHzの搬送波周波数を使用するほとんどのレーダーの実施形態では、最大掃引周波数対搬送波周波数の比率が0.10未満、典型的には0.05以下の範囲であることが有利である。
【0096】
距離対距離分解能の比率
処理能力が制限される用途では、距離対距離分解能の比率が20~250であることが好ましい。さらに高い処理能力が利用可能な用途では、距離対距離分解能の比率が200~1000であることが好ましい。
【0097】
複数のモード
検出器は、物体の検出に使用される送信スキームの掃引周波数の範囲が異なる複数のモードのうちの1つで動作するように適合されることが有利である。例えば、キューブサット上の検出器は、関心距離に応じてモード3~10のうちのいずれかに(例えば、低出力で)実用的に切り替えることができる。同様に、自律車両上の検出器は、モード1、2、3で(例えば3つのケース全てにおいて20GHzの搬送波周波数を使用して)交互に動作することができ、大型ドローンは、モード3~8で交互に動作することができ、或いは船舶は、モード4~6の間で切り替えることができる。どのモードで動作するかの選択は、自動とすることも、又は必要に応じてユーザの選択に委ねることもできる。
【0098】
音波エネルギーを使用する用途についても同様である。例えば、
図16に示す室内ナビゲーションセンサは、使用する掃引周波数の範囲を、図示のものから例えば5倍又は10倍上方に、或いは5倍又は10倍下方に変更することができる。これにより、センサは、近くの物体を高い距離分解能精度で、さらなる物体を低い距離分解能精度で検出できるようになる。実際に、装置は、これらの2つ又は3つのモードを繰り返し、結果を単一の出力に組み合わせることができる。医用撮像又は工学超音波検出及び地下検出のための検出器についてもやはり同様である。距離は、撮像する必要がある領域の深度に応じてオペレータの要求通りに距離分解能とトレードすることができる。
【0099】
1つの相違点として、音波検出器では、信号がはるかに速く進むレーダーでの使用に比べて、物体の位置を決定するのに十分な信号を収集するために必要な時間が、複数の距離を使用すべきかどうかの選択に影響を与える要因となる可能性が高いという点が挙げられる。従って、レーダー装置は、異なる距離及び異なる距離分解能で自動的に測定を行い(各選択は、2つ、3つ、又は典型的には多くの送信スキームを必要とする)、各測定の結果を複合出力に組み合わせることが好ましい。一方、音波検出器では、これも有用なオプションではあるが、通常、装置は、そうすべきか否かについてのユーザ選択に基づいて制御されないまま複数の距離で検出を行って結果を1つの出力に組み合わせることはしない。むしろ、音波検出器では、検出すべき所望の距離及び距離分解能についてのユーザ選択を装置が受け入れることの方が適切である。
【0100】
処理方法例
数多くの送信スキームが存在し、同様の数の送信スキームが正の掃引方向及び負の掃引方向を有し、掃引周波数が実質的に対数的に広がり、例えばそれぞれが以前の掃引周波数よりも同様の倍数だけ高い掃引周波数を有し、例えば各正の掃引方向スキームが以前の掃引周波数よりも1.3倍速い掃引周波数を有し、負の掃引方向スキームについても同じ方法であることが有利である。
【0101】
各スキームは、物体がどこに存在する可能性があるかについてのマップを提供する。データは、最も速い掃引一致ペアを使用して短距離内の物体を探索することによって処理される。例えば、最も速い10個の正の掃引スキーム、及び最も速い10個の負の掃引スキーム。高い掃引周波数には高い粒度が適する。物体を識別する1つの方法は、各送信の結果によって示唆される可能性のある物体の位置(伝送信号のメインローブの様々な経路)をプロットし、実質的に全てのスキームが物体の存在可能性を示唆する位置(経路の一部)を発見することである。物体の位置を識別したら、この時点で誤りであることが分かった可能な位置(関連する経路の残り部分)に関する情報を適切な程度まで削除する(すなわち、経路を完全に削除するのではなく、これらの経路の残り部分の強度を低減する)ことが好ましい。
【0102】
このプロセスを短距離領域(或いは長距離領域)について完了したら、さらなる物体の発見に役立つように、物体の位置に関する改善された情報を使用してさらに広い領域を調べ続けることができる。このプロセスを、視野及び距離全体を評価し終えるまで繰り返すことができる。
【0103】
或いは、視野及び距離全体にわたる全ての送信スキームからの帰還データを同時に比較する方がプロセッサ効率が高い。
【0104】
データプロセッサ効率を高めることができる別の改善は、短距離に比べて長距離を長手方向に、好ましくは幅方向にも圧縮した変形に従って関心距離を再マッピングすることである。例えば、デカルト座標では扇形である視野を、角度対距離を軸とする矩形として再構成する。そして、距離を対数的にプロットする。
【0105】
掃引周波数が最も遅いスキームからの出力(可能な物体の位置のトレース)は距離全体にわたってプロットされるのに対し、掃引周波数が最も速いスキームは視野全体にわたって、ただし距離の一部のみにわたってプロットされる。掃引周波数が高ければ高いほど、そのスキームの結果がプロットされる距離は短くなる。この理由は、マップの長距離部分では(視野を横切る距離及び範囲に沿った距離の両方の点で)分解能が低く、高周波数掃引トレースでは正確にプロットすることが困難又は不可能になるからである。より一般的に言えば、これらを距離全体にわたってプロットすることも可能ではあるが、分解能制約に起因して、高周波数トレースの細部では距離の遠端におけるマップの粒度が失われる。
【0106】
再マッピングした視野にわたって各トレースをプロットし終えると、複数の又は多くのスキームからの各位置におけるトレースを、例えばこれらの値をマップ全体にわたって逓倍することによって組み合わせることができる。物体が存在する位置には多くの又は全てのスキームからの跡が残っているので、これらの位置が明らかになる。
【0107】
推奨されるデータ処理方法
シーン内の物体に対する角度を決定するには、最初にメインビームを時計回りに走査する。標的からの帰還は、何らかの参照の何らかの時間tT1後に発生する。この時間は、例えばビームがボアサイトから-90度の位置に存在した時とすることができる。この時間は、メインビームが標的方位(target bearing)tθ1まで回転するのに要した時間、及びエネルギーが標的に伝播して受信機に帰還するのに要した時間tR1から成る。
【0108】
受信機では、時間tT1=tθ1+tR1が測定される。この測定後、今度は反時計回り方向に同じ走査速度で第2の走査を完了し、今回は(標的がボアサイトに存在しない場合)測定される合計時間tT2=tθ2+tR2は異なるが、物体は距離内で大きく動いておらず、合計時間の唯一の変化はビームが物体まで進むのに要した時間の結果であると仮定する。
【0109】
このことは、数学的にはtT1=tT2を意味し、従って測定時間の差分は、角度に対する走査を行うのに要した時間のみの関数であり、これは角度自体に比例する。従って、逆方向の2つの走査を使用して、物体に対する角度を明確に決定することができる。
【0110】
レーダー測定の場合、典型的な関心距離を考慮しても光の速度は典型的なプラットフォームの速度に比べて非常に速いので、tR1及びtR2を同等として扱うべきである。
【0111】
2方向の往復時間が相当量変化するのは、標的が非常に速く動いている場合のみである。
【0112】
さらなる実施形態は、特許請求の範囲に示す。見出しの使用は読みやすくするためであって限定を意図するものではない。
【0113】
本発明のさらなる態様については、請求項13、14、15、16、17、18、19及び20に示す。
【0114】
以下、単に図を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1a】先行技術の周波数ダイバースアレイ(FDA)レーダーからのメインローブ及びサイドローブの伝搬を示す図である(矢印は伝搬方向を示す)。
【
図1b】同じ反復周波数を有して同じ送信スキームで送信される同じ周波数帯の2つの反対螺旋を伴う、(より複雑ではあるが)単一の送信パターンを示す先行技術の方法のFDAレーダーからの送信の伝搬を示す図である。
【
図2】逆の掃引方向を有する2つの送信スキームに従って動作する本発明の実施形態のCW-FDA検出器の実施形態の、物体から生じる帰還信号を例示的に示す図である(縮尺通りではない)。
【
図3】同じ掃引方向ではあるが異なる掃引周波数を有する2つの送信スキームに従って動作する本発明の実施形態のCW-FDA検出器の実施形態の、物体から生じる帰還信号を例示的に示す図である(縮尺通りではない)。
【
図4a】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4b】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4c】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4d】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4e】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4f】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図4g】1又は2以上の特定の時点における1つ、2つ又は3つの送信スキームの各々の送信のメインローブの配置を示す本発明の実施形態の、異なる経路を有する送信スキームを併用してどのように物体の位置を決定するかを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態によるFDA検出器の、距離、角度又は位置を決定するさらに長いプロセス内のステップとして、一致する掃引方向を有する2つの送信スキームを使用して物体の位置をどのように関心視野及び範囲のセクタに制約するかを示す図である(縮尺通りではない)。
【
図7】本発明の好ましい実施形態によるCW-FDA検出器の、少なくとも2つが逆の掃引方向を有する(右下にさらなる送信スキームを示す)異なる掃引経路を有する多くの送信スキームを使用して複数の区別される物体の位置を(距離及び角度の両方において)決定することを示す図である(縮尺通りではない)。
【
図8】本発明の実施形態によるCW-FDA送信機の、2D視野をカバーするように第1の方向に高速角度掃引を、直交方向に低速角度掃引を示す送信空間パターンの図である。
【
図9】様々な構成のCW-FDA送信機の送信空間パターンの4つの図である。
【
図10】本発明の実施形態によるCW-FDA送信機アレイ、及びそこで測定される様々な角度及び距離を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態によるCW-FDA検出器の、アレイの各送信機素子の様々な周波数オフセットを示す図である。
【
図12】5MHzの搬送波周波数、1MHzの周波数、及び低いけれども可変である周波数と共に17個の周波数逓倍器を使用して、異なる周波数帯で送信スキームの第1の同時一致ペアを生成した後に、各一致ペアが以前の一致ペアよりも広い周波数ダイバーシティを有する第2、第3及び第4の同時一致ペアも生成する、本発明の実施形態によるCW-FDA送信機の図である。
【
図13】送信スキームの3つの一致ペア(逆の掃引方向及び等しい掃引周波数を有するビーム経路)を生じさせるために送信機素子1~8に適用される可能な周波数のチャートを示す図である。
【
図14a】本発明のCW-FDA送信機の視野の、各メインローブが1又は2以上の物体に衝突した時点に対応する特定の時点における4つの各送信パターンのメインローブの位置を示す(単純化のために、メインローブが同時に衝突した位置に物体を示す)簡略図である(縮尺通りではない)。
【
図14b】
図14aに示す配置を、送信パターンのうちの3つを示す1つのデカルト座標上に角度をマッピングした角度対範囲のデカルト表現にどのように再マッピングできるかを示す図である。
【
図14c】
図14bに示す配置をどのようにして対数軸上に距離が示されるように再マッピングできるかを示す図である。
【
図15】それぞれが搬送波周波数よりも低い掃引周波数の範囲を有する一連の送信スキームの可能な選択肢の選択、結果として生じる受信信号の比較にさらなる処理能力を利用できる場合にどのようにして掃引周波数の範囲を拡大できるか、並びにハードウェア及び信号対雑音比の制約下で達成できる距離及び距離分解能の多様性を示す、CW-FDA検出器の10個の実施形態例を含む表である。
【
図16】異なる用途に適したいくつかの搬送波周波数、それぞれが搬送波周波数よりも低い掃引周波数の範囲を有する一連の送信スキームのうちの可能な選択肢の選択、並びにハードウェア及び信号対雑音比の制約下で達成できる距離及び距離分解能の多様性を示す、CW-FDA音波の4つの実施形態例を含む表である。
【
図17】適用される連続波周波数が線形的に増加する10個の等間隔を空けた送信機素子に基づく、送信機の波長と比較したメインローブ(太い白色の曲線)の経路のスケール(右下の図に示す)を示す図である。
【
図18】定期的に繰り返される建設的干渉領域の配置を示す疑似カオス送信パターンを示す図である。
【
図19】2つの送信機素子のシーケンスからの可能な送信パターンを示す図である。
【
図20】時間に伴う螺旋送信パターンの放射状の伝搬がパターンの回転の(偽の)外観をどのように有するか、及び建設的干渉のメインローブが視野を横切って方位角的に掃引する効果を時間の経過と共にどのように奏するかを示す、10個の時点における螺旋パターンを示す図である。
【
図21】それぞれが単一の送信パターンを有し、方位角及び距離の両方の決定に役立つように3つの一致ペアとして編成された6つの螺旋送信スキームを示す図である。
【
図22】2つの区別可能な送信パターンを単一の送信スキームにおいてどのように表すことができるか、すなわち左側の掃引螺旋(sweeping spiral)の方が右側の掃引低速螺旋(sweeping slow spiral)よりも速い反復速度を有することによって、受信機又はコンピュータデータプロセッサがこれらを区別できるようにすることを示す図である。
【
図23】送信機素子にわたる周波数の変動の非線形性をどのように実装するかを示す図である。この方法は、例えば送信が短い(適度な数の掃引しか実行されず、従って掃引間で実質的に同じパターンが残る)場合に順方向の高角度のいずれかの側の明確なパターンを低減するために使用することができる。
【
図24】(距離及び方位角でプロットした時に)建設的干渉の領域が斜方格子状に配置された代替パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
以下の詳細な実施形態ではCW-FDAレーダーについて説明するが、レーダー送信素子を音波送信素子に置き換え、レーダー受信機アンテナを音波受信機(音波検出器、一般的にはマイク)に置き換え、レーダー信号伝搬に適した搬送波帯周波数ではなく音波信号の伝搬及び検出に適した搬送波周波数帯を選択することにより、同じ設計をCW-FDA音波検出器として実装することもできる。
【0117】
送信機素子は、(例えば、周波数帯の中心周波数に基づいて)半波長だけ離れて配置されることが好ましいので、所望の検出器サイズは、使用する周波数にも影響を与える。(空中、水中又は地上のいずれであるかにもよるが)音波の移動はレーダー(空中)よりも50,000~1,000,000倍遅くなり得るので、音波領域における最も関心の高い周波数範囲は、レーダー領域における最も関心の高い周波数範囲と比べて同じ割合だけ狭くなる。
【0118】
両モダリティ(レーダー及び音波)では、検出器のサイズ及び所望の検出距離に応じて非常に広い周波数範囲を有効に選択することができる。掃引速度は、各送信アンテナの周波数が位置に関してどれほど異なるかに比例し、このことは音波領域及びレーダー領域の両方に当てはまる。そのため、以下の考察は両方の領域に等しく当てはまり、使用する搬送波周波数とは無関係である。
【0119】
図1aに、FDAレーダー送信機から放射される送信パターンのメインローブ(太い斜め曲線の明帯)及びサイドローブ(両側の細い明帯)を示す。矢印は、左側の送信機(8個の黒丸)からの伝搬方向を示す。この例では、複数の等間隔を空けたアンテナ素子にわたって周波数の線形増加(下向き矢印を参照)が適用される。従来のレーダー送信パターンとは異なり、メインローブが順(0度)方向に留まっていない。むしろ、メインローブは
図1aの下部から上向きに掃引を行い、その後にこれを下部から繰り返す。従って、
図1aはこの挙動時のスナップショットである。
【0120】
図1bに、異なる先行技術のFDA送信パターンを示す。今回は伝搬方向が上向きであり、送信パターンを2つのプロットで表示する。左側には、特定の時点の送信パターンをデカルト座標で示す。右側には、送信パターンを距離対角度で示す。これらの図は同じ情報を示しているので、2つの図には視覚的類似性が存在する。両タイプのプロットを使用することが有用な理由は、読者が送信パターンを理解するのに役立つとともに、サンプリングアーチファクトの識別にも役立つからである。
図1bでは、右側の図には微細な横線の形で、左側の図には微細な曲線の形でサンプリングアーチファクトが見える。これらのアーチファクトは無視すべきである。
【0121】
プロットからは2つのパターン(すなわち、時計回りの螺旋及び反時計回りの螺旋)を視覚的に識別できるかもしれないが、これらのパターンには、受け取られた信号がこれらのいずれに起因するものであるかを受信機が判別できる必要な特徴が欠落しているので、
図1bの送信パターンだけでは本発明を実施するのに十分ではない。
【0122】
むしろ、
図1bの送信パターンは、1つの送信スキーム内に同じ周波数帯、同じ偏波で2つの螺旋が同時に与えられ、2つの螺旋形状が同じパルス幅(範囲)を有し、重要なこととして同じ反復速度を有するので、(より複雑ではあるが)単一の反復送信パターンしか有していないものとして正しく表現されている。また、先行技術では、これらが別の送信パターンとして使用又は区別されていない。
【0123】
図2に、本発明の実施形態を示す。ここでは、送信機素子のシーケンス(右側の一連の黒丸)が使用されており、第1の例では下部のアンテナ素子に向かって周波数が増加し、第2の例では上部のアンテナ素子に向かって周波数が増加する。これらの2つの送信スキームでは、異なる時点又は異なる周波数帯で同じアンテナ素子のシーケンスを使用することも、或いは異なるアンテナ素子のシーケンスを使用することもできる。
【0124】
図2に示すように、標的(白丸)は、周波数がアンテナ素子を上向きに増加するか、それとも下向きに増加するかに応じて、送信のメインローブを異なるタイミングで受け取る。この例では、周波数が反転しただけで速度が等しい同じもの(一致ペア)であるが、多くの代替構成が可能である。
【0125】
各送信スキームは、(少なくともユーザにとっての関心視野を通じて螺旋が掃引している期間中に(他の時点では必要に応じて増幅器をオフにすることができる))実質的な連続波周波数を送信するが、標的からの反射は、送信のメインローブ及びサイドローブ(各画像の下方に示す波列を参照(縮尺通りではない))を示す一連のパルスの外観を有する。スキーム1(上部)及びスキーム2(下部)では、これらの帰還信号の帰還タイミングが異なる。このことを右側の応答対時間のグラフに例示的に示す。2つのピークのタイミング差を比較することによって物体の角度を突き止めることができる(決定された角度を示す下部のボックスを参照)。帰還のタイミングを測定できたとしても、この信号は(例えば)左側の近くの物体に対応する可能性だけでなく右側のさらに離れた物体に対応する可能性もあるので、このような1つのスキームのみから物体の角度を突き止めることは不可能である。理解できるように、これらの2つの送信スキームでは、別の標的(黒丸)から反射された応答も同じタイミング差を示し、従って2つの送信スキームからの反射を併用することによって同じ角度であると決定することができる。
【0126】
図3にも2つのスキームを示す。この例では、第2の(下側の)スキームの方が(異なる掃引方向又は掃引すべき異なる視野ではなく)高い掃引周波数を有する。理解できるように、これによって可能な物体の位置を絞り込んで、物体が視野の距離及び角度の一部内に存在すると決定できるようになる。通常、2つの送信スキームでは、これらが等しい反復(掃引)周波数を有していない限り物体の角度を識別するには不十分である。代わりに、可能な位置を1つだけ残るまで絞り込む1又は2以上のさらなるスキーム(
図4には図示せず、例えば
図16を参照)を実装することができる。複数の物体(図示せず)の位置を区別するには、それぞれが異なる掃引経路を有するさらなるスキームを実装すべきである。
【0127】
別の例(簡潔にするために図示せず)は、スキーム1の送信機素子のシーケンスをスキーム2と(角度θだけ)異なる配向で配置することである。
【0128】
或いは、アンテナ素子を後方又は前方に動かすのと同じ効果を(一次近似で)奏する、従ってアンテナ素子のシーケンスを回転させる効果を奏する位相差を適用するものの、同じ送信機素子のシーケンスを使用することもできる。ここでは、細部はわずかに異なるが、第1のスキームと第2のスキームとの間の帰還信号のタイミングの差分を示すことによって物体の角度を決定することができる。
【0129】
図4a~
図4gに、複数の送信スキームを例示的な形で示す(縮尺通りではない)。
図4aには、
図4b~
図4g全体にも存在する第1の送信スキームを示す。
【0130】
図4bには、第2の送信スキーム(グレーの螺旋)を示す。このスキームでは、メインローブ(グレーの円弧)が、放射の伝搬方向(
図4aの矢印を参照)は放射状であるが視野を横切って掃引する送信パターンを有する曲線状に広がる。スキームの送信の開始に対する特定の時点におけるスキーム1のメインローブの位置を黒色の円弧で示し、スキーム2のメインローブの位置をグレーの円弧で示す。この時点では、反射物体の位置において円弧が交差していない。代わりに、これらの円弧は、スキーム2がさらなる短い時間Δtだけ進んだ時にのみ交差する。
【0131】
スキーム1では、メインローブがT=0において物体に反射し、その後に繰り返し反射する。スキーム2では、メインローブがT=Δtにおいて物体に反射し、その後に繰り返し反射する。これらの反射が受信機(図示せず)によって検出され、そのタイミングが比較される。このことは、標的が特定の明確な角度に存在するが、標的が存在し得る角度に沿った距離内に複数の可能な位置(黒丸)が存在することを示す。
【0132】
従って、
図4cでは、第3の送信スキームを使用して物体の位置を絞り込む。送信スキームのメインローブは、スキーム1及び2とは異なる経路を有する。具体的に言えば、このスキームは、(例えば、アレイに沿った周波数がさらに類似しているため)より低速で掃引するメインローブを有する。
【0133】
スキーム2では、T=0においてメインローブが物体に反射する。このタイミングが受信機によって決定され、これらのそれぞれの時点にスキームの全てのメインローブが占めていた位置は1つしか存在しないので、距離及び角度の両方において物体の位置が決定される。
【0134】
図4d及び
図4eに代替方法を示す。
図4dでは、今回は第1のスキームと同じ掃引方向を有するが掃引周波数が異なる第2のスキームを導入する。これにより、可能な位置が3つの位置に絞られる。
図4eに、やはり第1及び第2のスキームと同じ掃引方向を有するが掃引周波数が異なる第3のスキームの実装を示す。各スキームは、物体から反射されたパルスのタイミングから(注:送信はパルス送信ではなく連続波送信であるが、帰還反射信号はパルスを識別できる構造を有する)、FDA検出器が可能な物体の位置を図示の線に限定することを可能にする。3つの全てのスキームからの線は1つの位置でしか交差しないので、この位置を物体の位置として決定することができる。
【0135】
図4f及び
図4gに第3の代替方法を示す。
図4fでは、この例では視野を変更することによって第2のスキームを実装する。これによって掃引経路は変化するが、掃引周波数又は掃引方向は変化しない。メインローブは、スキーム1ではT=0において、スキーム2ではT=Δtにおいて物体に反射する。これにより、反射のタイミングから、可能な物体の位置が
図4fに示す3つ(黒丸)に絞り込まれる。
図4gでは、第3のスキームを実装する。この場合も掃引周波数及び掃引方向はスキーム1及びスキーム2と同じであるが送信機の順方向が異なり、従って掃引経路が異なる。ここでは、メインローブがT=Δtにおいて物体に反射して、3つのスキームによる反射のタイミングから物体の位置を決定することが可能である。
【0136】
なお、順方向のみが変化する
図4f及び
図4gの配置では、これらのスキームにおけるメインローブの掃引経路間の差分がはるかに小さいので、異なる掃引(すなわち、反復)周波数を使用する場合と比べて精度が低下する。従って、掃引周波数及び掃引方向が一定に保たれている場合、最良の結果のためには4つ以上のスキームを使用すべきである。1つの例は、例えばそれぞれが約360度の視野にわたって分布する異なる順方向及び視野を有する多くのスキームを使用することである。
【0137】
また、全てのスキームにわたって掃引周波数及び方向が一致する場合には、偽陰性及び偽陽性の可能性が高くなる。ただし、用途によっては信頼度の低下を許容することができる。
【0138】
なお、実際問題としては反射パルスが受信機に戻る時間を考慮しなければならないが、これには調整が必要である一方で実装が容易であり、方法全体が変更されることも、関連するプロセッサ計算が大幅に増加することもない。便宜上、図には異なる位置からの異なる帰還時間を考慮して可能な位置を示すのではなく、反射時におけるメインローブの円弧のみを示す。これを示した場合、円弧はわずかに異なる円弧になるが、円弧を識別した後に交差を識別する原理(又は同じ結果を達成する他のコンピュータ処理ステップ)。
【0139】
図5a、
図5b及び
図5cに、多くの可能な配置の説明例として有効に利用できるアンテナ素子の3つの配置を示す。
【0140】
図5aには、視野にわたって検出を実行するように一群のアンテナ素子を選択した後に(又は好ましくは異なる周波数帯では同時に)異なる送信機素子を使用して異なる方向を見ることができるように、遮断素子(blocking element)(図示せず)の周囲に送信機素子が分布した正方形配置を示す。視野は、重複することが好ましい。典型的には遮断素子の周囲に回転対称を有する他の形状を実装することもできる。例えば、六角形又は楕円形である。
【0141】
図5bには、送信機素子の円形アレイを示す。この例では、これらを明確にシーケンスに分割するのではなく、これらの中から各観測方向に1つの任意のシーケンスを選択して送信に使用する。2つの図には、それぞれが異なるスキームに従って動作する異なる期間を示す(又は異なる周波数帯での3つの同時送信とすることもできる)。この配置は、各スキーム間の強固な重複に有利に働くので、この重複が、物体を反射するレーダーの角度の識別を支援することができる。1つの選択肢は、360度の視野全体を円の周囲で段階的に操作し続けることであるが、正確な順序には意味がなく、任意に選択することができる。
【0142】
図5cには、特定の用途においてアンテナアレイをどのように適用できるかを示す。この例では、湾曲した前面を有する自動車の前面である。アンテナ素子は車両の形状に従って適用され、直線上に存在しないアンテナ素子を調整するために、アンテナ素子に様々な周波数を提供する際に位相差が適用される。位相差を実装する単純な方法は、別様に使用されるよりも長いワイヤ又は同軸ケーブルを介して特定のアンテナ素子を接続することである。他の方法は、制御可能な位相遅延装置を使用し、又は適用する周波数をわずかに変動させるものである。
【0143】
位相差を適用する例としては、信号発生器が、3つのミキサを介してアンテナ素子のシーケンスの各々にコヒーレントに制御された周波数を供給する。なお、実際には、各アンテナ周波数を互いから生成するのではなくメイン周波数から生成する方が適している。1つの周波数ミキサが2つの入力を乗算する結果、2つの正弦曲線が組み合わさると、これによって異なる周波数の3分の1が生成される。通常、ミキサは、1つの信号の周波数を他の信号に対して加算又は減算する。従って、例えば1MHzのメイン周波数を使用してこれを2kHz(又はシーケンスに沿った他のアンテナ素子では、4kHz、6kHzなど)と混合することにより、シーケンス内の各アンテナ素子は、シーケンスに沿って1MHz、1.002MHz、1.004Mhzなどを受け取るようになる。
【0144】
各アンテナ素子の位置の違いを考慮するために異なるケーブル経路を使用する。経路長を選択する際には、電子装置内の遅延、及び自由空間と比較した多くのタイプの導波管における信号速度の低下を考慮する必要がある。
【0145】
図6には、ここでもアンテナ素子のシーケンスに適用される周波数が異なる2つの送信スキームを示しており、下部の例(スキーム3)では上部の例(スキーム1)よりも掃引速度が大幅に速い。2つの送信パターンのみを使用して範囲及び距離の両方を識別することは不可能である。
【0146】
通常、視野内には複数の物体が存在し、これらを区別する必要があるので、通常は2つ又は3つよりも多くの異なるスキームを使用して物体の距離を区別する。数多くの物体を容易に区別し、又は物体をクラッタと区別するには、多くのスキームを使用することが望ましい。
【0147】
図7を参照して分かるように、2つの方法(第1に同じ反復周波数で異なる掃引方向、第2に異なる反復周波数)を併用することが好ましい。この例では、多くのスキームを使用することができ、上部及び真ん中のスキーム(スキーム1及び2)は(例えば、アンテナ素子にわたる周波数変動の変化が逆であることに起因して)逆の掃引方向を有するのに対し、真ん中及び下部のスキーム(スキーム2及び3)は異なる掃引速度を有する。帰還信号のタイミングに関する情報を組み合わせることにより、3つの全てのスキームに基づいて物体の角度及び距離を突き止めることができる。さらなる(好ましくは多くの)スキームを使用すれば、多くの物体を確実に区別することができる(さらなるスキーム(図示せず)からのデータを含む右下の追加出力ボックスを参照)。
【0148】
図8に、各アンテナ素子に適用される周波数がX方向及びY方向の両方で変化する、アンテナ素子の2DのX-Yアレイ(図示せず)から放射される送信パターンのメインローブを示す。周波数は、メインローブにX方向及びY方向を走査させる当業で周知の技術を使用して容易に選択することができる。典型的な方法は、素子を半波長間隔の(すなわち、中心帯周波数の半分)格子状に配置し、1方向において周波数を線形増加させ、直交方向において異なる(例えば、より大きな、好ましくは数倍大きな)線形増加を適用するものである。
【0149】
図9には、
図10に示す格子状の素子の周波数に異なる線形オフセットを設定することによって生じる2D螺旋送信パターンの様々な配置を示す。
図11には、これらの例のうちの1つをさらに詳細に示しており、各矢印の長さは、その素子の周波数が左上の素子と比べてどれほど大きいかを表す。
【0150】
図12及び
図13を参照すると、
図13には、8つの送信機素子を含む送信機アレイ(
図12)の6つの送信スキームの組の例を示す。6つのスキームに必要な周波数は、周波数逓倍器を介していくつかのさらなる低周波信号(0.008MHz、0.032MHz、0.004MHz、及び0.002MHz)と組み合わせた場合、全て搬送波周波数(1MHz)から生成することができる。
図12では、周波数逓倍器(×印を含む円)の各々が高周波に低周波を加算して出力周波数を生成する。
【0151】
その後、
図13に示すように、スイッチ(図示せず)を介して送信機素子(図示せず)アレイにこれらの周波数の適切な選択を様々な順序で受け渡すことができる。
【0152】
図12には、8つの周波数逓倍器を通じて5MHzの搬送波信号をどのように順次に結合して、増幅器(グレーの三角形)を介して送信機素子(一番上の黒い輪郭)に受け渡す8つの信号を生成するかを示す。5MHz信号は、この信号を1MHz信号との間で分割して4MHzの搬送波信号を生成する周波数逓倍器も通過する。その後、4MHzの搬送波信号は、この信号を低周波信号と順次に結合して8つの連続的に低下する周波数を生成するように構成された8つの周波数逓倍器を通過する。高周波入力に対して低周波を加算するか、それとも減算するかは、周波数逓倍器の向きによって決まる。
【0153】
16個の周波数逓倍器の各々を介して2つの搬送波周波数に対して加算又は減算される量は、周波数逓倍器に供給される低周波信号に依存する。この低周波信号は可変周波数「x」であり、所定の周波数の組から選択される。
【0154】
周波数が全て送信機素子アレイ(上部)に供給されると、5MHz~5+8xMHzの8つの周波数が送信機アレイに供給され、4MHz~4-8xMHzの8つの周波数も送信機アレイに供給されるようになる。従って、送信機アレイは2つの送信スキームを同時に送信し、具体的に言えば、この例では2つの同時送信スキームが一致ペア(等しいけれども逆の掃引周波数)である。しかしながら、これらのスキームは異なる送信周波数帯で送信されるので、受信機はこれらを区別することができる。一定期間後には可変周波数が変化するので、送信機アレイは異なる2つの送信スキームを送信するようになる。
【0155】
受信機(図示せず)は、信号を収集して2つの帯域通過フィルタに受け渡す。一方の帯域通過フィルタは、
図12の右側の周波数逓倍器からの送信に対応する周波数のみを通過させる。他方の帯域通過フィルタは、
図12の左側の周波数逓倍器からの送信に対応する周波数のみを通過させる。従って、各送信スキームからの帰還信号を個別に収集してデジタル化し、その後に信号を比較して物体を検出することができる。なお、最初に信号がデジタル化された場合には、デジタル周波数フィルタによって帯域通過フィルタを実装することができる。この方が単純ではあるが、潜在的に高価である。
【0156】
図14a~
図14cに、3つの送信スキームの(これらの各送信スキーム中の)特定の時点におけるメインローブを例示的な形で示す。単純にするために、(円弧として示す)各メインローブを3回掃引するが、実際には少なくとも10回、好ましくは数十回、好ましくは数千回、場合によっては数百万回掃引することが典型的である。
図14a~
図14cには、第1の送信スキームを太い黒線で示し、第2のスキームを細い黒線で示し、第3のスキームを破線で示す。送信スキーム2は、送信スキーム1及び3と比べて逆の掃引方向を有する。送信スキーム1、2及び3は、全て異なる掃引周波数を有する。なお、(半径方向外向きの)伝搬速度は全ての送信スキームで同じである。
【0157】
図14aには、視野内で外向きに伝搬するプロセスのメインローブを示す。実際には、これらはさらに広い角度に広がって伝播することができるが、単純化のために視野のみを示す。視野は、帰還信号が有効に物体の検出をもたらす角度範囲、コンピュータプロセスが物体を検出するように設定された角度範囲、及び/又は受信機が反応する角度範囲とすることができる。
図14b及び
図14cとは異なり、
図14aには、他と同様に反復螺旋を示す第4のパターンを含むさらなる送信スキームも示す。太線の2つの送信スキーム(1つは実線、もう1つは点線)は、等しい逆向きの螺旋パターンであるが、異なるタイミングで、具体的にはこれらのスキームが物体に影響を与える時点(黒点)で示されるものである。このことは、反復周波数が等しい2つの送信スキームを使用して物体の角度(方位角)をさらに容易に決定できることを示す。
【0158】
視野内に示される各円弧は、受信機においてエネルギーパルスが受け取られたタイミングに基づく可能な物体の位置の範囲であると理解することができる。可能な位置の正確な円弧の形状は受信機の位置に依存し、この位置は送信機アレイと同じ位置である必要はない。
【0159】
図14bには、この配置の範囲が垂直にマッピングされ、角度が水平デカルト軸として表されるように再マッピングされるようにマッピングし直したものを示す。この結果、近くの位置は、再マッピング前よりも比例的に多くの空間を占め、遠くの位置は、再マッピング前よりも比例的に少ない空間を占めるようになる。物体が存在するに違いないと判定された経路は、もはや単純な円弧ではなく蛇行曲線である。
【0160】
これらの(円弧/曲線を含む)マップを、選択されたマップ分解能に従って比較する。長方形に再マッピングすることによって無駄な空間が減るだけでなく、この分解能が遠くの物体の精度を犠牲にして近くの物体のより正確な検出を優先させることが明らかである。
【0161】
図14cを参照すると、マップの2度目の再マッピングが行われている。今回は、距離軸が再マッピングされており、従ってもはや距離軸は線形ではなく対数的になっている。これにより、遠くの物体を犠牲にして近くの物体の正確な再マッピングが支援される。
【0162】
図14cには、3つの送信スキームからの3つの結果を比較した結果を示す。これにより、3つの物体の距離及び角度における位置が識別される。
【0163】
この時点で、送信スキーム1の結果をマッピングすることは、マップの近隣領域以外では潜在的に有用でないことが分かる。この理由は、隣接するメインローブ検出線間の距離が、結果をマッピングする分解能よりもマップの遠端に向かって短くなり得るためである。
【0164】
通常、
図14a~
図14cは、恐らくは検出範囲内に1又は2つの物体しか存在しない宇宙船上のレーダーを除き、実際の状況よりも大幅に単純である。現実の状況では、通常は多くの物体が存在するだけでなく、これらの物体が形状を有することができる。一例として、都市環境では非常に複雑な帰還がもたらされる。この複雑さに対処するには、多くの送信スキームを送信しなければならない。各送信スキームからは、通常は非常に多くの円弧/曲線の組から成るマップが生じ、円弧/曲線の各組の強度は、これらの円弧/曲線のうちの少なくとも1つの上のどこかに1又は2以上の物体が高確率で存在することを示す。しかしながら、このような異なる掃引経路を有する多くのマップを比較して組み合わせることにより、反射物質/物体がどこに存在するかについてのマップを構築することができる。
【0165】
上述したように、
図15及び
図16には、様々な実施形態例及び可能な用途をリストする。与える数字は、他の好適な実施形態を設計する開始点として使用できる例である。
【0166】
図17に、周波数が1~0.91である10個の素子を有する送信機からの螺旋メインローブパターンを示す。示す単位は周波数の任意の単位であり(
図18~
図24と同様に例えばGHzとすることができ、この場合は周波数が1GHz~0.91GHzである)、この場合、シミュレーションのための格子間隔(0.5の波長距離)は15cmであり、従って小領域は約240×15cm、すなわち約36mの範囲であることを示す。周波数単位は、数十GHz又は他のいずれかの値とすることもできる。右下の波長は、詳細図として理解することができる。
図18~
図24と同様に、(x-y座標では曲線であり、範囲-方位角座標では直線である)ぼんやりとした同じ範囲の線を示す。
【0167】
図18には、疑似ランダム送信パターンを示す。任意の単位(例えば、GHz)の周波数(1.01、1.04、1.02、1,03、1.08、1,01、1,01、1.07、1.03及び1.02)は、これらが一定期間後に共に反復して疑似ランダム送信パターンの繰り返しを生じるように選択される。疑似ランダムパターンは、方位角内(関心視野内)の各地点に様々な建設的干渉の領域を有するので、物体から反射して戻ってくる信号のタイミングは、この可能な物体の位置に関する何らかの情報を検出器に提供し、全てが同じ反復周波数を有するそれぞれの送信スキームにおいてこれを異なる疑似ランダム送信パターンで何度も繰り返した場合、十分な送信が行われた何らかの時点で物体の方位角を推測できるようになる。その後、異なる反復周波数を有する十分な送信スキームでこれを繰り返した場合、何らかの時点で物体の範囲を推測できるようになる。とは言うものの、方位角と距離との間に1対1の関係を有する螺旋などの送信パターンを各反復内で使用する際には、異なる送信パターンが少なくて済む。
【0168】
図19に、どのようにして非常に異なる送信パターンを容易に生成できるかを示す、2つの送信機素子を使用した別の方法を示す。
【0169】
図20には、一連の10個の時点にわたって進化する螺旋送信パターンを示す。理解できるように、螺旋は回転しているように見えるが、実際には放射状に伝搬している。しかしながら、物体が螺旋形状の影響を受ける時間が物体の方位角の関数であるという効果がある。従って、帰還信号のタイミングは、可能な物体の位置を螺旋の経路に制約するのに役立つ情報を含む。
【0170】
図21に、一致ペアで配置された異なる周波数で反復する6つの螺旋送信パターンを示す。
図22及び
図24には、異なる周波数を有する広く分離したアンテナ素子からの送信を示す。
図23には、非線形性によってパターンが変化する前の短い期間にわたって使用できる、非線形構成の周波数を有する送信機が特定の時点において送信機素子の線形アレイに与える効果を示す。
【0171】
技術注記
本文書全体を通じ、簡潔さのみを目的として単純化を行っている。
【0172】
技術的には、帰還信号のタイミングが特定の時点において物体の位置を螺旋の正確な位置に制約することはない。この原因は、反射信号が(必ずというわけではないが、通常は基本的に送信機の位置に存在する)受信機に帰還するのに要する時間にある。この影響は、特定の時点における帰還信号の検出によって物体の位置は可能な位置の組に制約されるが、可能な位置の組は建設的干渉パターンの形状と比べてわずかに異なる形状である(螺旋送信パターンの場合には、制約される位置はわずかに異なる螺旋になる)ことを意味する。単純計算では、信号が特定の時間に受け取られる結果として、送信パターンのデータに基づいて可能な位置を識別することができる。
【0173】
また、「タイミング」という用語を使用する場合、一般に受信信号は反復信号(多くの反復)であり、従って関心タイミングは、(正確な測定を必要とする)反復パターンの反復周波数に等しい時間尺度のものである。
【0174】
また、
図1a、
図2、
図3、
図6及び
図7にはページを横切る伝搬方向を示しており、残りの図にはページの上方への伝搬方向を示している。また、
図17の右下部分及び(各アンテナ素子からの寄与の実成分の合計を示す)
図20の10個の図を除き、他のシミュレーションには、各アンテナ素子からの寄与の複素数値の合計の絶対値を示している。
【0175】
詳細な説明
平面アレイは、一方又は両方の次元で線形増加が示されるように、このアレイに沿った(又は、二次元では両方の軸に沿った)周波数オフセットと併用することができる。説明する信号構造は、他の周波数経過(frequency progressions)又は波形タイプを含むことができるほど十分に柔軟である。4Dパターンスナップショット視覚化技術は、複雑なパターンと一定周波数(CF)の平面アレイパターンとの直接的な比較を可能にして、平面CW-FDAの値を知る上での手掛かりとなる。
【0176】
平面CW-FDAの素子は理想的な等方性放射体であり、ノイズ干渉がないと考えられる。この分析のために、アレイの基準素子が(0,0,0)に位置し、アレイによって送信される最大周波数の波長にλ
minが対応するように、素子間間隔
【数1】
を有するX軸、及び素子間間隔
【数2】
を有するY軸にアレイを広げる。本文書では、CW-FDAが、X軸及びY軸上で(Δf
x=Δf,Δf
u=(N+1)Δf)のステップサイズで線形的に増加する周波数の組をそれぞれ送信し、|Δf|は、システムが狭帯域であるとみなされるように制限される。こうすると、この組は、n=0...N-1及びm=0...M-1の場合にf
nm=f
c+nΔf
x+mΔf
yとして簡潔に表され、ここでのfcは搬送波であり、N及びMは、それぞれX軸及びY軸に沿ったアレイ内の素子数である。この構成の図形表現については
図10及び
図11を参照されたい。
【0177】
レーダーは連続波(CW)モードで動作しており、パターンのグラフィックは固定時間tのスナップショットであると想定し、ここでは
【数3】
であり、2Rは双方向距離であり、cはRF伝搬速度である。このことは、時間依存パターンの記述及び描画に使用される方法を構成するのに役立つ。しかしながら、CW-FDA空間パターンは時間が周期的である。以下の受信機アーキテクチャの考察では、いずれかの軸上における線形周波数経過は不要であるが、信号を分離して適切なビームフォーミング重みを適用するために符号化などのさらなる方法が必要になるので、完全なスペクトルダイバーシティを実装する(すなわち、送信時の著しい反復周波数を回避する)ことが好ましい。以下では、後述するパラメータを使用して送信信号及び受信信号を発展させ、シミュレートする。これにより、アレイ内の素子数、格子限界、信号を計算して測定した空間内地点の格子間隔、及び標的位置などの定量化可能パラメータの値がもたらされる。
【0178】
使用するシミュレーションパラメータは以下の通りである。
X軸素子の数:N 9
Y軸素子の数:M 9
素子間隔:dx及びdy λmin/2
搬送波周波数:fc 10GHz
X軸周波数オフセット:Δfx 1kHz
Y軸周波数オフセット:Δfy 10kHz
X格子限界 [-100;100]km
X格子間隔 2km
Y格子限界 [-100;100]km
Y格子間隔 2km
Z格子限界 [0;200]km
Z格子間隔 2km
標的X位置:x0 0km
標的Y位置:y0 0km
標的Z位置:z0 100km
【0179】
送信空間パターン
本節では、完全な送信信号を考察し、平面送信空間パターンの閉形式表現(closed-form expression)を提示し、メインビーム空間パターンの形状を図形的に示す。(n;m)エミッタによって送信される信号は、以下のように与えられる複素正弦曲線である。
snm(t)=anm(t)exp{j2πfnmt} (1)
【0180】
標的位置まで遅延する際の信号は以下の通りであり、
【数4】
ここでのanm(t)は、この目的では無視することができる送信及び伝搬効果を表す複素重み係数(すなわち、a
nm(t)=1∀
t,n,m)である。
【0181】
この信号は、
【数5】
を設定することによって、素子位置(xn,ym;0)についての(x
0,y
0,z
0)における標的について測定される。
【0182】
基準点を(0;0;0)として遠視野近似を行うことで以下のように範囲を表し、
【数6】
ここでは
【数7】
【数8】
及び
【数9】
であり、Z軸に沿った基準素子に対して垂直にボアサイトが測定される。これにより、(2)を以下のように書き換えることができる。
【数10】
【0183】
送信時にメインローブを掃引するために、2つの成分(角度及び距離)を含むさらなる位相項(phase term)が必要である。
【0184】
角度
【数11】
及び距離
【数12】
においてメインローブを掃引して複素ビーム重み付け係数を生じ、
【数13】
ここでの
【数14】
及び
【数15】
は基準素子に関連する。空間内の点目標から見える単一素子からの送信信号は以下の通りである。
【数16】
【0185】
引き続き、各素子からの(6)の送信信号を考慮し、全てのX軸及びY軸寄与を合計して、(x
0,y
0,z
0)における総観測信号を与える。
【数17】
【0186】
平面波近似(標的距離
【数18】
Dは開口の最大次元)及び狭帯域仮定(narrowband assumption)(帯域幅≪fc)を行って閉形式表現を導出する。
【数19】
【数20】
であり、項exp{jФ}は、セットアップの形状に関連するさらなる位相因子を含むが、必ずしも最も重要なパターンの構造には寄与しない。重要なこととして、狭帯域仮定を行い、信号を操作してシンク様構造(sinc-like structure)にすることにより、周波数成分を展開(multiplying out)する際に現れる二次位相項(quadratic phase terms)を除外する。
【0187】
図8には、10dBのメインビーム幅を表示している。サイドローブも存在するが、これらはメインビームから10dBよりも多く低下し、従ってこの描画では見えない。
【0188】
より良好な等位面表現の感覚を得るために、CF送信空間パターンの断面を観察して利得値の減少を表す変動勾配の同心リングに注目する。予想される通りに、CFパターンは範囲内で変化せず、CW-FDAパターンは3次元の角度及び距離が周期的に見える。また、
図9には4つの異なるオフセット構成のパターンも示す。
【0189】
なお、たとえオフセットが同じ大きさを有することができるとしても、パターンは、オフセットの「方向」(+、-)及びオフセットがどの軸(X,Y)に沿って進むかによっても決まる。ここでは、単一のパターン曖昧性(single pattern ambiguity)を視覚化しており、大量のパターンを計算した場合には周期性が明らかになると思われる。
【0190】
この現象は、レーダー設計者にとっては厄介かもしれないが、この問題は、所与のシステムについて距離の低下(range fall-off)及び選択的周波数オフセットの選択肢を、必要に応じて曖昧性がシステムの最低識別可能信号未満になるように選択することによって解決することができる。
【0191】
好ましい本実施形態において生じるパターンは、使用できるクラスのパターンのうちの1つである。しかしながら、さらなる自由度が導入されたことで、異なる方位角、高度及び距離における複数の標的の単一ビーム内での追跡を可能にして固定形状受信アンテナの使用を可能にする3Dヌルステアリングが可能になる。
【0192】
一般的に言えば、連続波周波数ダイバースアレイ(FDA)検出器、送信機、受信機及び/又は方法を提供する。周波数は、電波又は音波とすることができる。各送信機素子に異なる周波数を適用して、建設的干渉の反復パターンを有する送信スキームを生成する(例えば、各パターンは螺旋とすることができる)。これらのパターンは、各パターンの結果として反射された信号のタイミングから、物体/標的が視野内のどこに存在するかにかかわらず物体の方位角及び/又は距離を決定できるほど十分な程度に異なる(例えば、方位角を決定するのに役立つ反対の螺旋方向、又は距離を決定するのに役立つ異なる螺旋回転速度)。連続波送信を使用することで低送信電力が可能になり、及び/又は高価なビーム操作送信機又は受信機の必要性を避けることができる。