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特許7568511カチオン性ポリマーおよびその生体分子送達のための使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カチオン性ポリマーおよびその生体分子送達のための使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/48 20060101AFI20241008BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 38/52 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241008BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241008BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C08G69/48
A61K48/00
A61K38/46
A61K31/711
A61K38/52
A61K47/34
C12N9/22
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/09 100
C12N15/55
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020560189
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019029746
(87)【国際公開番号】W WO2019210326
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】62/663,985
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/750,097
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520113376
【氏名又は名称】ジーンエディット インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】リー、クンウー
(72)【発明者】
【氏名】マイティー、サンタヌ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026219(JP,A)
【文献】国際公開第2010/093036(WO,A1)
【文献】特開2011-173802(JP,A)
【文献】特開2010-285460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08G 73/00-73/26
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
A61K 41/00-45/08
C12N 9/00-9/99
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式4の構造を含むポリマー:
【化1】
式中、
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;但しm1+ n1の合計は2よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;
各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、但しA1およびA2はそれぞれ少なくとも1個の3級アミンを含み;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;および
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。
【請求項2】
式4Aの構造を有する、請求項1のポリマー:
【化2】

式中、
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして開裂可能なリンカーであり;
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;但しm1+ n1の合計は2よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;
R1は水素、1個以上の置換基で置換されていてもよい、アリール基、複素環基、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、あるいはC1-C12線状または分岐アルキル基であり;
各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、但しA1およびA2はそれぞれ少なくとも1個の3級アミンを含み;
R3aおよびR3aは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
R6は水素、アミノ基、1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、C1-C12線状または分岐アルキル基;あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位であり;および
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、
該組織特異的または細胞特異的標的化部位は、
【化3】

であり、式中、R9、R10、R11、およびR12のそれぞれは独立して水素、ハロゲン、1個以上のアミノ基で置換されていてもよい、C1-C4アルキル、またはC1-C4アルコキシである;あるいは抗体またはタンパク質抗原である。
【請求項3】
A1およびA2のそれぞれが式-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2 2の基であり、ここで各場合のR2が独立してC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、末端アミンが1級アミンである場合は例外である、請求項1または2のポリマー。
【請求項4】
A1およびA2のそれぞれが式-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2 2の基であり、ここで各場合のR2が独立してC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、末端アミンが2級アミンである場合は例外である、請求項1または2のポリマー。
【請求項5】
A1およびA2のそれぞれが式-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2 2の基であり、ここで各場合のR2が独立してC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である、請求項1または2のポリマー。
【請求項6】
各場合のR2がメチルであり、末端アミンが1級アミンである場合は例外である、請求項1-3のいずれかのポリマー。
【請求項7】
各場合のR2がメチルであり、末端アミンが2級アミンである場合は例外である、請求項1、2および4のいずれかのポリマー。
【請求項8】
各場合のR2がメチルである、請求項1、2および5のいずれかのポリマー。
【請求項9】
以下:
【化4】

【化5】

【化6】

ここで(a+b)が約5~約160である、
から選ばれる請求項1のポリマー。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか1項のポリマーならびに核酸および/またはポリペプチドを含有する組成物。
【請求項11】
ガイド核酸および/またはドナー核酸;RNA-誘導エンドヌクレアーゼまたはこれをコードする核酸;DNAリコンビナーゼ;ジンクフィンガーヌクレアーゼ;または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼをさらに含有する、請求項10の組成物。
【請求項12】
RNA-誘導エンドヌクレアーゼがCas9またはCpf1である、請求項11の組成物。
【請求項13】
ポリエチレンオキシドを含む第2のポリマーを含有する、請求項10~12のいずれか1項の組成物。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項の組成物を含む胞。
【請求項15】
核酸またはタンパク質を細胞に送達するための請求項10~13のいずれか1項の組成物。
【請求項16】
細胞が哺乳動物中にある、請求項15の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月27日に出願された米国仮特許出願第62/663,985号および2018年10月24日に出願された米国仮特許出願第62/750,097号の利益を主張し、それの全体の開示は、本明細書に参考として援用される。
【0002】
電子的に提出された資料の参考としての援用
本明細書と同時に提出されたコンピューター読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列が本明細書に参考として援用され、そして以下の通り同定される: One 62527 Byte ASCII (Text) file named "512879.TXT," created on April 29, 2019。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ペプチド、たんぱく質、および核酸ベースの技術は、疾患を予防、治癒および治療するための無数の用途を有する。しかし、大分子(例、ポリペプチドおよび核酸)のそれらの標的組織への安全かつ効率的な送達は、問題のあるままである。従って、治療分子の送達に有用な新たな組成物および方法の必要性が続いている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の簡単な要旨
本明細書中、式1:
【0005】
【化1】
【0006】
式中:
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;
m2およびn2のそれぞれは0~1000の整数であり、但しm2+ n2の合計は5よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
B1およびB2は、それぞれ独立して
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R4-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2;または
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2
であり、
ここで、p1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-であり;そして各場合のR5は独立して、必要に応じて1~8個(例、2~8個)の2級または3級アミンを含む、置換または無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である、
の構造を含むポリマーが提供される。
【0007】
また、式2:
【0008】
【化2】
【0009】
式中:
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり、但しm1およびn1の合計は10~2000であり;
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして開裂可能なリンカーであり;
R1は水素、1個以上のアミンなどの1個以上の置換基で置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、あるいはC1-C12線状または分岐アルキル基であり;
各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
R8は組織特異的または細胞特異的標的化部位であり;および
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である、
のポリマーが提供される。
【0010】
本開示はまた、式1の構造および/または式2のポリマー、ならびに核酸および/またはポリペプチドを含有する組成物を提供する。式1の構造を含むポリマーまたは式2のポリマーの調製方法、ならびに、例えば、核酸またはタンパク質を細胞に送達するための当該ポリマーおよび当該ポリマーを含有する組成物の使用方法がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、Streptococcus pyogeneからのCas9のアミノ酸配列(配列番号1)を提供する。
図2図2は、Francisella tularensis subsp. Novicida U112からのCpf1のアミノ酸配列(配列番号2)を提供する。
図3図3は、ポリマー/Cas9組成物の異なる投薬量でのGFP-HEK細胞における緑色蛍光タンパク質(「GFP」)陰性%によって測定されるCas9 RNP送達のレベルのグラフである。
図4図4は、ai9レポーター対立遺伝子の略図である。
図5図5は、ポリマー/Cre組成物の異なる濃度でのRFP+発現の量によって測定される初代筋芽細胞へのCreリコンビナーゼ送達のレベルを示す。
図6図6は、赤色蛍光タンパク質によって視覚化されたマウス筋肉におけるCreリコンビナーゼ送達のレベルを説明する(色の薄い部分は蛍光を示す)。
図7図7は、Cas9送達によって示されるヒト神経幹細胞のインデル(indel)変異率を示す。
図8図8は、HEK 293Tにおけるトラフィックライトリポーターの略図である。
図9図9は、ポリマー/Cre組成物の異なる濃度でのRFP+発現の量によって測定されるTLR-HEK 293TへのCreリコンビナーゼ送達のレベルを示す。
図10図10は、ポリマー/Cas9組成物の異なる投薬量でのGFP-HEK細胞における緑色蛍光タンパク質(「GFP」)%によって測定されるCas9 RNP送達のレベルのグラフである。
図11図11は、GFP %によって測定されるHEK 293T細胞へのeGFP mRNA送達のレベルを説明する。
図12図12は、GFP %によって測定されるHEK 293T細胞へのeGFP mRNA送達のレベルのインキュベーション時間依存性を示す。
図13図13は、1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーの存在下および不在下の両方でのRFP+発現によって測定されるHEK 293T細胞への赤色蛍光タンパク質(「RFP」)mRNA送達のレベルを説明する。
図14図14は、1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーの存在下および不在下の両方でのRFP+発現によって測定されるHEK 293T細胞への赤色蛍光タンパク質(「RFP」)mRNAのレベルを説明する。
図15図15は、緩衝液中のポリマー/Cas9ナノ粒子について、GFP-HEK細胞における緑色蛍光タンパク質(「GFP」)%によって測定されるCas9 RNP送達のレベルのグラフである。
図16図16は、AsCpf1の配列(配列番号19)を提供する。
図17図17は、LbCpf1の配列(配列番号20)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、式1の構造を含むポリマーを提供する:
【0013】
【化3】
【0014】
式中:
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;
m2およびn2のそれぞれは0~1000の整数であり、但しm2+ n2の合計は5よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
B1およびB2は、それぞれ独立して
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R4-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2;または
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2
であり、
ここで、
p1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-であり;
そして各場合のR5は独立して、必要に応じて1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含む、置換または無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である。
【0015】
本明細書中で使用される「アルキル」は、置換されたまたは無置換の炭化水素鎖をいう。アルキル基は、任意の数の炭素原子(例、C1-C100アルキル、C1-C50アルキル、C1-C12アルキル、C1-C8アルキル、C1-C6アルキル、C1-C4アルキル、C1-C2アルキルなど)を有し得る。炭化水素鎖は、飽和であり得、またはいくつかの実施態様において任意の程度まで不飽和であり得(例、アルケニルまたはアルキニル基を提供する)、そして線状、分岐状、直鎖、環状(例、シクロアルキルまたはシクロアルケニル)、またはそれらの組み合わせであり得る。環状基は、単環式であり得、縮合して二環式または三環式基を形成し得、結合によって連結され得、またはスピロ環式であり得る。環状基は、少なくとも3個の炭素(例、C3-C12、C3-C10、C3-C8、C3-C6、またはC5-C6)を含む。いくつかの実施態様において、炭化水素鎖は1個以上のヘテロ原子(例、1、2、3、4、または5個以上の酸素、窒素および/または硫黄原子)によって中断され、それによってヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、またはヘテロシクリル(すなわち複素環基)を提供し得る。いくつかの実施態様において、アルキル、アルケニル、アルキニルは1個以上の置換基で置換される。
【0016】
用語「ヘテロシクリル」、または「複素環基」は、環状基、例えば、芳香族(例、ヘテロアリール)または環状基が1個以上のヘテロ原子(例、1、2、3、4、または5個以上の酸素、窒素および/または硫黄原子)を有する非芳香族をいう。いくつかの実施態様において、ヘテロシクリルまたは複素環基(すなわち、環状基、例、芳香族(例、ヘテロアリール)または環状基が1個以上のヘテロ原子を有する非芳香族)は1個以上の置換基で置換される。
【0017】
用語「アリール」は、任意の適切な数の環原子および任意の適切な数の環を有する芳香族環系をいう。アリール基は、任意の適切な数の環原子、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子、ならびに6~10、6~12、または6~14環員を含み得る。アリール基は、単環式であり得、縮合して二環式または三環式基を形成し得、または結合によって連結してビアリール基を形成し得る。代表的なアリール基は、フェニル、ナフチルおよびビフェニルを含む。いくつかの実施態様において、アリール基は、アルキレン連結基を含み、その結果アリールアルキル基(例、ベンジル基)を形成する。いくつかのアリール基は、6~12環員を有し、例えば、フェニル、ナフチルまたはビフェニルである。他のアリール基は、6~10環員を有し、例えば、フェニルまたはナフチルである。いくつかの実施態様において、アリール置換基は、1個以上のヘテロ原子(例、1、2、3、4、または5個以上の酸素、窒素および/または硫黄原子)を含み、それによってヘテロアリール基を提供する。いくつかの実施態様において、アリールは1個以上の置換基で置換される。
【0018】
任意の前述の基が1価、2価、または多価(例、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレンなど)であり得ることが理解される。
【0019】
本明細書中で使用される用語「置換された」は、指定された原子又は基上の1個以上の水素(例、置換されたアルキル基)が、指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で別の基で置き換えられることを意味し得る。例えば、置換基がオキソ(すなわち、-O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。置換基は、1個以上のアルデヒド、エステル、アミド、ケトン、ニトロ、シアノ、フルオロアルキル(例、トリフルオロメタン)、ハロ(例、フルオロ)、アリール(例、フェニル)、ヘテロシクリルまたは複素環基(すなわち、環状基、例えば、芳香族(例、ヘテロアリール)または環状基が1個以上のヘテロ原子を有する非芳香族)、オキソ、またはそれらの組み合わせを含み得る。置換基および/または変数の組み合わせは、置換基が化合物の合成または使用に対して著しく悪影響を与えないという条件で許容される。
【0020】
式1に従って、m1およびn1のそれぞれは0~1000、例えば0-500、0-200、0-100、または0-50の整数である。さらに、m2およびn2のそれぞれは、m2 + n2の合計が5よりも大きいという条件で0~1000、例えば0-500、または0-100(例、5-2000、5-1000、5-500、5-200、5-100、または5-50)の整数である。言い換えれば、ポリマーは基B1および/またはB2を含む少なくともいくつかのモノマー単位を含み、本明細書中、集合的に「Bモノマー」という。いくつかの実施態様において、m1およびn1は0であり、その結果ポリマーはA1またはA2基を含まない。他の実施態様において、ポリマーはいくつかのA1および/またはA2基およびいくつかのB1および/またはB2基を含む。このような実施態様において、(m1+n1)/(m2+n2)の比は約20以下(例、約10以下、約5以下、約2以下、または実に約1以下)である。また、いくつかの実施態様において、(m1+n1)/(m2+n2)比は約0.2以上、例えば約0.5以上である。
【0021】
ポリマーは、任意の適切な構造タイプとして存在し得る。例えば、ポリマーは交互ポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー、線状ポリマー、分岐ポリマー、環状ポリマー、またはそれらの組み合わせとして存在し得る。ある実施態様において、ポリマーはランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー、またはそれらの組み合わせである。
【0022】
従って、式1の構造において、モノマー(それらのそれぞれの側鎖A1、A2、B1、およびB2によって言及され得る)は、ランダムにまたは任意の順序で配置され得る。整数m1、n1、m2、およびn2は、鎖全体において現れるそれぞれのモノマーの数を単に示し、そしてこれらのモノマーのブロックを必ずしも表さないが、所定のモノマーのブロックまたは伸長はいくつかの実施態様において示され得る。例えば、式1の構造は-A1-A2-B1-B2-、-A2-A1-B2-B1-、-A1-B1-A2-B2-などの順序でモノマーを含み得る。いくつかの実施態様において、ポリマーはアルファ/ベータ配置で配置されたポリペプチド(例、ポリアスパルトアミド)骨格を有し、その結果「1」および「2」モノマーが交互する(例、-A1-A2-B1-B2-、-A2-A1-B2-B1-、-A1-B2-B1-A2-、-A2-B1-B2-A1-、-B1-A2-B1-A2-など)。しかし、「A」および「B」モノマーまたは側鎖(例、A1/A2およびB1/B2)はポリマー骨格全体を通してランダムに分散され得、またはブロック、あるいはそれらのいくつかの組み合わせで配置され得る。
【0023】
さらなる説明によって、ポリマーは、代わりに、式1.1:
【0024】
【化4】
【0025】
として、または骨格がアルファ、ベータ配置である場合、式1.2:
【0026】
【化5】
【0027】
として記載され得る
式中、
m1およびn1は前期の通りであり;
m3は5-2000(例、5-1000、5-500、5-100、25-2000、25-500、25-100、50-2000、50-1000、50-500、または50-100)の整数であり;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
各A3は独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R4-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2;または
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2
の基であり、
ここでp1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;
各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-であり;および
各場合のR5は独立して、必要に応じて1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含む、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基であり;
但し、少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または実に100%)のA3基は
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R4-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2;または
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2
から選ばれる。
【0028】
さらに他の実施態様において、ポリマーはいくつかまたは実に大多数のA3基(少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)を有し、A3基は
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
から選ばれる。
【0029】
任意の前述のポリマー構造において、R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基である。いくつかの実施態様において、R3aはエチレン基であり、そしてR3bはメチレン基である;あるいは、R3aはメチレン基であり、そしてR3bはエチレン基である。ある実施態様において、R3aおよびR3bはそれぞれエチレン基である。好ましい実施態様において、R3aおよびR3bはそれぞれメチレン基である。
【0030】
基A1およびA2は独立して選ばれ、従って、互いに同じであり得るかまたは異なり得る。同様に、基B1およびB2は独立して選ばれ、従って、互いに同じであり得るかまたは異なり得る。さらに、各場合のA3は他のA3基と同じであり得るかまたは異なり得る。
【0031】
基A1、A2、A3、B1、およびB2において、整数p1~p4(すなわち、p1、p2、p3、およびp4)、q1~q6(すなわち、q1、q2、q3、q4、q5、およびq6)、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数(例、1、2、3、4、または5)である。いくつかの実施態様において、p1~p4(すなわち、p1、p2、p3、およびp4)、q1~q6(すなわち、q1、q2、q3、q4、q5、およびq6)、および/またはr1およびr2は、それぞれ独立して1~3の整数(例、1、2、または3)である。ある実施態様において、p1~p4(すなわち、p1、p2、p3、およびp4)および/またはq1~q6(すなわち、q1、q2、q3、q4、q5、およびq6)はそれぞれ2である。いくつかの実施態様において、p1~p4(すなわち、p1、p2、p3、およびp4)および/またはq1~q6(すなわち、q1、q2、q3、q4、q5、およびq6)はそれぞれ2であり、そしてr1およびr2はそれぞれ1である。いくつかの実施態様において、s1-s4は、それぞれ独立して1、2、3、4、または5、例えば、1、2、または3、あるいは1-2の整数である。
【0032】
ポリマー構造において、各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-である。いくつかの実施態様において、各場合のR4は独立して-C(O)O-または-C(O)NH-である。ある実施態様において、各場合のR4は-C(O)O-である。ある実施態様において、各場合のR4は-C(O)NH-である。
【0033】
式1のいくつかの実施態様において、A1およびA2のそれぞれは式-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH2の基、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2である。さらに、または別に、B1およびB2のそれぞれは式-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH-(CH2)2-R4-R5の基、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-R4-R5、または基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-C(O)-O-R5である。いくつかの実施態様において、B1およびB2のそれぞれは式-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5または-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2-(CH2)2-R5の基であり、必要に応じてここで各R2は独立してC1-C3アルキル(例、メチル)であり、および必要に応じてここでR5はC1-C3アルキルアミノまたはC1-C3ジアルキルアミノ(例、R5は-CH2-NH-CH3または-CH2-N-(CH3)2である)である。
【0034】
式1.1のいくつかの実施態様において、A3は式-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH2の基、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH2;または式-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH-(CH2)2-R4-R5の基、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-R4-R5;-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-C(O)-O-R5;または基-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5、例えば-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2-(CH2)2-R5であり、必要に応じてここで各R2は独立してC1-C3アルキル(例、メチル)であり、および必要に応じてここでR5はC1-C3アルキルアミノまたはC1-C3ジアルキルアミノ(例、R5は-CH2-NH-CH3または-CH2-N-(CH3)2である)であり;但し少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または実に100%)のA3基は-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH-(CH2)2-R4-R5、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-R4-R5、または基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-C(O)-O-R5;あるいは基-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5、例えば-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2-(CH2)2-R5であり、必要に応じてここで各R2は独立してC1-C3アルキル(例、メチル)であり、および必要に応じてここでR5はC1-C3アルキルアミノまたはC1-C3ジアルキルアミノ(例、R5は-CH2-NH-CH3または-CH2-N-(CH3)2である)である。さらに、いくつかの実施態様において、ポリマーはいくつかまたは実に大多数のA3基(少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%)を有し、A3基は-(CH2)p1-[NH-(CH2)q1-]r1NH-(CH2)2-R4-R5、例えば基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-R4-R5、または基-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-C(O)-O-R5;あるいは基-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5、例えば-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2-(CH2)2-R5であり、必要に応じてここで各R2は独立してC1-C3アルキル(例、メチル)であり、および必要に応じてここでR5はC1-C3アルキルアミノまたはC1-C3ジアルキルアミノ(例、R5は-CH2-NH-CH3または-CH2-N-(CH3)2である)である。
【0035】
さらに、ポリマー構造において、各場合のR5は独立して、必要に応じて1~8個(または2~8個)の2級または3級アミンを含む、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせである。任意の前述の基R5は、置換され得るかまたは無置換であり得る。R5はまた、組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基であり得る。いくつかの実施態様において、R5は約1~約50個の炭素原子(例、約2~約50個の炭素原子、例えば約2~約40個の炭素原子、約2~約30個の炭素原子、約2~約20個の炭素原子、約1~約16個または約2~約16個の炭素原子、約1~約12個または約2~約12個の炭素原子、約1~約10個または約2~約10個の炭素原子、あるいは約1~約8個または約2~約8個の炭素原子)を含み得る。いくつかの実施態様において、R5は1~8個または2~8個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8個)の2級または3級アミンを含むヘテロアルキル基である。2級または3級アミンはヘテロアルキル骨格の一部であり得る(すなわち、ヘテロアルキル基中の原子の最長の連続した鎖、または懸垂置換基。従って、例えば、2級または3級アミンを含むヘテロアルキル基は、1~8個(または2-8個)の2級または3級アミンを含む、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、アミノアルキルアミノ基などであり得る。
【0036】
いくつかの実施態様において、各R5は独立して以下から選ばれる:
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
式中
各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
R7は、1個以上のアミンで置換されていてもよい、C1-C50アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
zは1~5の整数であり;
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして開裂可能なリンカーであり;
nは0~50の整数であり;および
R8は組織特異的または細胞特異的標的化部位、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。
【0041】
各場合のR2は水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり得る。いくつかの実施態様において、R2はC1-C12(例、C1-C10アルキル基;C1-C8アルキル基;C1-C6アルキル基;C1-C4アルキル基、C1-C3アルキル基、あるいはC1またはC2アルキル基)線状または分岐アルキル基である。ある実施態様において、R2はメチルまたは水素である。
【0042】
R7は、1個以上のアミンで置換されていてもよい、C1-C50(例、C1-C40、C1-C30、C1-C20、C1-C10、C4-C12、またはC6-C8)アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり得る。いくつかの実施態様において、R7は、1個以上のアミンで置換されていてもよい、C4-C12、例えばC6-C8、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。いくつかの実施態様において、R7は1個以上のアミンで置換されている。ある実施態様において、R7は1~8個または2~8個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、または8個)の2級または3級アミンで置換されている。アミンは、アルキル基の一部(すなわち、アルキル基骨格中に含まれる)または懸垂置換基であり得る。
【0043】
R13は水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり得る。いくつかの実施態様において、R13はC1-C12(例、C1-C10アルキル基;C1-C8アルキル基;C1-C6アルキル基;C1-C4アルキル基、C1-C3アルキル基、あるいはC1またはC2アルキル基)線状または分岐アルキル基である。ある実施態様において、R13はメチルである。他の実施態様において、R13は水素であり得る。典型的には、所定のポリマー内で、各R13は同じ(例、全てメチルまたは全て水素)であり;しかし、各R13は独立して選ばれ、そして同じであり得るかまたは異なり得る。
【0044】
各場合のYは必要に応じて存在する。本明細書中で使用される表現「必要に応じて存在する」は、必要に応じて存在すると指定された置換基が存在し得るかまたは存在し得ず、そしてその置換基が存在しない場合、隣接する置換基が互いに直接結合されることを意味する。Yが存在する場合、Yは開裂可能なリンカーである。本明細書中で使用される表現「開裂可能なリンカー」は、開裂されて2つの種に分離し得る2つの種を接続する任意の化学要素をいう。例えば、開裂可能なリンカーは加水分解プロセス、光化学プロセス、ラジカルプロセス、酵素プロセス、電気化学プロセス、またはそれらの組み合わせによって開裂され得る。例示的な開裂可能なリンカーは以下を含むが、これらに限定されない:
【0045】
【化9】
【0046】
式中、各場合のR14は独立してC1-C4アルキル基であり、各場合のR15は独立して水素、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり、およびR16は、1個以上の-OCH3、-NHCH3、-N(CH3)2、-SCH3、-OH、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい、6員芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0047】
ポリマーは、ポリマーがポリマーの一部として前述のポリマー構造を含むという条件で、任意の適切なポリマーであり得る。いくつかの実施態様において、ポリマーは、式1、1.1、または1.2の構造を有するポリマーブロックおよび1個以上の他のポリマーブロック(例、エチレンオキシドサブユニット、またはプロピレンオキシドサブユニット)を含むブロックコポリマーである。他の実施態様において、式1、1.1、または1.2の構造は、ポリマーのただ1つのポリマー単位であり、これは適切な末端でいずれかの端部で「キャップ」され得る。ある実施態様において、ポリマーは、組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基をさら含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、ポリマーは、式1A:
【0049】
【化10】
【0050】
式中、Qは式:
【0051】
【化11】
【0052】
である;
または式1A1:
【0053】
【化12】
【0054】
式中
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして前記の開裂可能なリンカーであり;
R1は水素、1個以上の置換基、例えば1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、あるいはC1-C12線状または分岐アルキル基であり;
R6は水素、アミノ基、1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、C1-C12線状または分岐アルキル基;あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
および全ての他の置換基(例、m1、n1、m2、n2、R2、R3a、R3b、R4、R5、およびR13)は前記の通りである
の構造を有する。
【0055】
同様に、ポリマーは、式1.1A:
【0056】
【化13】
【0057】
または、骨格がアルファ、ベータ配置である場合、式1.2A:
【0058】
【化14】
【0059】
式中、
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして前記の開裂可能なリンカーであり;
R1は水素、1個以上の置換基、例えば1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、あるいはC1-C12線状または分岐アルキル基であり;
R6は水素、アミノ基、1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、C1-C12線状または分岐アルキル基;あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
および全ての他の置換基(例、m3、R3a、R3b、およびA3)は前記の通りである
の構造を有し得る。
【0060】
前述のいくつかの実施態様において、R1および/またはR6は、1個以上の置換基で置換されたC1-C12(例、C1-C10アルキル基;C1-C8アルキル基;C1-C6アルキル基;C1-C4アルキル基、C1-C3アルキル基、あるいはC1またはC2アルキル基)線状または分岐アルキル基である。ある実施態様において、ヘテロアルキルまたはアルキル基は、1個以上のアミン、例えば、1~8個または2~8個(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、または8個)の2級または3級アミンを含むかまたはこれで置換されている。アミンは、ヘテロアルキル骨格鎖の一部または懸垂置換基であり得る。
【0061】
本明細書中で提供されるポリマーの非限定的な例は、例えば以下を含む:
【0062】
【化15】
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
【化18】
【0066】
【化19】
【0067】
【化20】
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
【0075】
式中、a、b、c、およびdはそれぞれ独立して、(a+b+c+d)>約5という条件で、0~1000、例えば0-500、0-200、0-100、または0-50の整数である。いくつかの実施態様において、(a+b)は約0~約75(例、約5~約75、約20~約75、約40~約75、約40~約60、約50~約75、約60~約75、または約70~約75)であり、および(c+d)は約5~約80(例、約5~約75、約5~約60、約5~約40、約20~約40、約5~約30、約5~約20、または約5~約10)である。ある実施態様において、(a+b)は(c+d)よりも大きい。例えば、いくつかの実施態様において、(a+b)/(c+d)比は約1~約3であり(例、(a+b)は約55であり、および(c+d)は約25である)、または(a+b)/(c+d)比は約3~約10である(例、(a+b)は約70であり、および(c+d)は約10である)。他の実施態様において、(a+b)は(c+d)より小さく、その結果(a+b)/(c+d)比は1より小さい(例、約0.1以上、しかし1未満)。再度、これらの例示的ポリマーにおける単位の数(「a」、「b」、「c」、および「d」)の指示は、ブロックコポリマー構造を暗示しておらず;むしろ、これらの数は全体の単位の数を示し、これらの単位は式中の記号「/」によって示されるようにランダムに配列され得る。
【0076】
本発明はまた、式2の構造を含むポリマーを提供する:
【0077】
【化28】
【0078】
式中:
aは10~2,000の整数であり;
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして本明細書中前記の開裂可能なリンカーであり;
R1、R2、およびR13ならびに全ての他の置換基は、他のポリマー式(例、式1、1A、1A1、1.1A、および1.2Aに関して本明細書中前記の通りであり;
およびR8は組織特異的または細胞特異的標的化部位である。
【0079】
本発明はまた、式4の構造を含むポリマーを提供する:
【0080】
【化29】
【0081】
式中、
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;但しm1 + n1の合計は2よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;
各場合のR2は独立して水素、C1-C12アルキル基、C1-C12アルケニル基、C3-C12シクロアルキル基、またはC3-C12シクロアルケニル基であり、但しA1およびA2は少なくとも1個(例、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または実に少なくとも5個の3級アミン(例、少なくともいくつかの場合のR2はC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である)を含み;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;および
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。
【0082】
本発明はさらに、式4Aの構造を有するポリマーを提供する:
【0083】
【化30】
【0084】
式中、
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして開裂可能なリンカーであり;
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;但しm1 + n1の合計は2よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;
R1は水素、1個以上の置換基で置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、あるいはC1-C12線状または分岐アルキル基であり;
各場合のR2は独立して水素、C1-C12アルキル基、C1-C12アルケニル基、C3-C12シクロアルキル基、またはC3-C12シクロアルケニル基であり、但しA1およびA2は少なくとも1個(例、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または実に少なくとも5個の3級アミン(例、少なくともいくつかの場合のR2はC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である)を含み;
R3aおよびR3aは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
R6は水素、アミノ基、1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基(例、芳香族または非芳香族)、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、C1-C12線状または分岐アルキル基;あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位であり;および
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。
【0085】
式4の構造を含むポリマーおよび式4Aの構造を有するポリマーの実施態様において、各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、C1-C12アルケニル基、C3-C12シクロアルキル基、またはC3-C12シクロアルケニル基であり、但しA1およびA2はそれぞれ少なくとも1個の3級アミン(例、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または実に少なくとも5個の3級アミン)を含む。いくつかの実施態様において、各場合のR2は独立してC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。従って、式4の構造を含むポリマーおよび式4Aの構造を有するポリマーの実施態様において、各窒素含有R2置換基は、末端アミンが1級、2級、または3級アミン、好ましくは2級または3級アミンであり得ることを除いて、3級アミンである。式4の構造を含むポリマーおよび式4Aの構造を有するポリマーのいくつかの実施態様において、A1およびA2のそれぞれは、末端アミンが1級、2級、または3級アミン、好ましくは2級または3級アミンであり得ることを除いて、式-(CH2)2-NR2-(CH2)2-NR2 2の基であり、ここで各場合のR2は独立して、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。式4の構造を含むポリマーおよび式4Aの構造を有するポリマーのある実施態様において、各場合のR2は、必要に応じて、末端アミンが1級、2級、または3級アミン、好ましくは2級または3級アミンであり得ることを除いて、エチルまたはメチルである。
【0086】
式4の構造を含むポリマーおよび式4Aの構造を有するポリマーの実施態様において、各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である。一般に、各場合のR13は独立して水素またはメチル置換基である。ある実施態様において、各場合のR13は水素である。
【0087】
前述のいずれかに従って、基A1およびA2の例は、例えば、-NH-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)2;-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)2;-NH-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)2;-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)2;-NH-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-NH(CH3);-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-NH(CH3);-NH-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-NH(CH3);-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-N(CH3)-CH2-CH2-NH(CH3)を含む。
【0088】
従って、本明細書中で提供されるポリマーの非限定的な例は、例えば、以下を含む:
【0089】
【化31】
【0090】
【化32】
【0091】
【化33】
【0092】
【化34】
【0093】
式中、aおよびbのそれぞれは独立して0~1000、例えば0-500、0-200、0-100、または0-50の整数である。従って、aまたはbのいずれかがいくつかの実施態様において0であり得、またはポリマーはaおよびbのいくつかの比を有し得る。いくつかの実施態様において、(a+b)は約5以上(例、約5~約160、約5~約140、約5~約120、約5~約100、約5~約80、または約5~約60)または約25以上(例、約25~約160、約25~約140、約25~約120、約25~約100、約25~約80、または約25~約60)あるいは実に約50以上(例、約50~約160、約50~約140、約50~約120、約50~約100、または約50~約80)である。さらなる例は、ポリマー30-33を含み、ここで一方または両方の側鎖の末端3級アミンは、脱メチル化されて2級アミン(例、-NHCH3)を提供する:
【0094】
【化35】
【0095】
【化36】
【0096】
【化37】
【0097】
式中、aおよびbは上記の通りである。
【0098】
任意の前述のポリマーは、記載した式中に示した位置で組織特異的または細胞特異的標的化部位を含み得、またはそうでなければポリマーは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含むように修飾され得る。組織特異的または細胞特異的標的化部位を結合するための方法は当該分野で公知であり、これらのいくつかは、適切な官能基を有する組織特異的または細胞特異的標的化部位を用いた、Michael付加、エポキシド開環、置換反応、または「クリック」化学(例、CuAAC、SPAAC、SPANC、または歪んだアルケンの反応)を含む。組織特異的または細胞特異的標的化部位は、所定の標的組織または細胞(例、特定のリガンド、レセプター、あるいは標的化部位が標的組織または細胞と他の非標的組織または細胞とを区別するのを可能とする他のタンパク質または分子に特異的に結合する)を認識する(例、特異的に結合する)ことができる、任意の小分子、タンパク質(例、抗体または抗原)、アミノ酸配列、糖、オリゴヌクレオチド、金属ベースのナノ粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施態様において、組織特異的または細胞特異的標的化部位はリガンドのためのレセプターである。いくつかの実施態様において、組織特異的または細胞特異的標的化部位はレセプターのためのリガンドである。
【0099】
組織特異的または細胞特異的標的化部位は、任意の所望の組織または細胞型を標的化するために使用され得る。いくつかの実施態様において、組織特異的または細胞特異的標的化部位は、ポリマーを被検体の末梢神経系、中枢神経系、肝臓、筋肉(例、心筋)、肺、骨(例、造血細胞)、または眼の組織へと局在化させる。ある実施態様において、組織特異的または細胞特異的標的化部位は、ポリマーを腫瘍細胞へと局在化させる。例えば、組織特異的または細胞特異的標的化部位は、特定の組織または細胞上のレセプターに結合する糖であり得る。
【0100】
いくつかの実施態様において、組織特異的または細胞特異的標的化部位は以下である:
【0101】
【化38】
【0102】
式中、R9、R10、R11、およびR12のそれぞれは独立して水素、ハロゲン、1個以上のアミノ基で置換されていてもよい、C1-C4アルキル、またはC1-C4アルコキシである。特定の組織-特異的または細胞-特異的標的化部位は、ポリマーを本明細書中で記載した組織に局在化させるよう選ばれ得る。例えば、アルファ-d-マンノースはポリマーを末梢神経系、中枢神経系、または免疫細胞に局在化させるよう用いられ得、アルファ-d-ガラクトースおよびN-アセチルガラクトサミンはポリマーを肝細胞に局在化させるよう用いられ得、そして葉酸はポリマー腫瘍細胞に局在化させるよう用いられ得る。
【0103】
典型的には、ポリマーはカチオン性(すなわち、pH 7および23℃で正に帯電された)である。本明細書中で使用される「カチオン性」ポリマーは、ポリマーがカチオン性モノマー単位のみまたはカチオン性モノマー単位と非イオン性またはアニオン性モノマー単位との組み合わせを含むかに関わらず、全体として正味の正電荷を有するポリマーをいう。
【0104】
ある実施態様において、ポリマーは約5 kDa~約2000 kDa、例えば約10 kDa~約2,000 kDaの重量平均分子量を有する。ポリマーは、約2,000 kDa以下、例えば、約1,800 kDa以下、約1,600 kDa以下、約1,400 kDa以下、約1,200 kDa以下、約1,000 kDa以下、約900 kDa以下、約800 kDa以下、約700 kDa以下、約600 kDa以下、約500 kDa以下、約100 kDa以下、または約50 kDa以下あるいは実に約40 kDa以下、例えば約30 kDa以下または25 kDa以下の重量平均分子量を有し得る。あるいは、またはさらに、ポリマーは、約5 kDa以上または約10 kDa以上、例えば、約50 kDa以上、約100 kDa以上、約200 kDa以上、約300 kDa以上、または約400 kDa以上の重量平均分子量を有し得る。従って、ポリマーは、上述の端点の任意の2つによって境界を示される重量平均分子量を有し得る。例えば、ポリマーは、約5 kDa~約50 kDa、約10 kDa~約50 kDa、約10 kDa~約100 kDa、約10 kDa~約500 kDa、約50 kDa~約500 kDa、約100 kDa~約500 kDa、約200 kDa~約500 kDa、約300 kDa~約500 kDa、約400 kDa~約500 kDa、約400 kDa~約600 kDa、約400 kDa~約700 kDa、約400 kDa~約800 kDa、約400 kDa~約900 kDa、約400 kDa~約1,000 kDa、約400 kDa~約1,200 kDa、約400 kDa~約1,400 kDa、約400 kDa~約1,600 kDa、約400 kDa~約1,800 kDa、約400 kDa~約2,000 kDa、約200 kDa~約2,000 kDa、約500 kDa~約2,000 kDa、または約800 kDa~約2,000 kDaの重量平均分子量を有し得る。
【0105】
重量平均分子量は、任意の適切な技術によって決定され得る。一般に、重量平均分子量は、TSKgel Guard、GMPW、GMPW、G1000PW、およびWaters 2414(Waters Corporation, Milford, Massachusetts)屈折率検出器から選ばれる、カラムを備えたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて決定される。さらに、重量平均分子量は、150-875,000ダルトンの範囲のポリエチレンオキシド/ポリエチレングリコール標準を用いた較正から決定される。
【0106】
調製方法
本明細書中で提供されるポリマーは、任意の適切な方法によって提供され得る。いくつかの実施態様において、ポリマーは、式3:
【0107】
【化39】
【0108】
式中:
m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり、但しm1+ n1は5よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;および各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基である、
の構造を含むポリマーの基A1および/またはA2の少なくとも一部を修飾して式1:
【0109】
【化40】
【0110】
式中、m1およびn1のそれぞれは0~1000の整数であり;
m2およびn2のそれぞれは0~1000の整数であり、但しm2+ n2の合計は5よりも大きく;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
A1およびA2は、それぞれ独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
B1およびB2は、それぞれ独立して
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2;
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2;
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R4-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2;または
-(CH2)p1-[N{(CH2)s1-R5}-(CH2)q1-]r1NR2 2
であり、ここでp1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-であり;および各場合のR5は独立して、1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である、
の構造を含むポリマーを製造することを包含する方法によって調製され得る。
【0111】
本方法によって製造される式1の構造を含むポリマーは、式1.1、1.2、1A1、1A、1.1A、1.2A、4、または4Aを含む式1の任意のポリマーならびに本発明のポリマーに関して記載したそれらの任意のおよび全ての実施態様であり得る。
【0112】
式3の構造を含むポリマーは、この基準を満たす任意の適切なポリマーであり得る。いくつかの実施態様において、ポリマーは、代わりに、式3.1:
【0113】
【化41】
【0114】
または、骨格がアルファ、ベータ配置である場合、式3.2:
【0115】
【化42】
【0116】
式中、
m3は5-2000(例、5-1000、5-500、5-100、25-2000、25-500、25-100、50-2000、50-1000、50-500、または50-100)の整数であり;
記号「/」は、それによって分離された単位がランダムにまたは任意の順序で結合していることを示し;
R3aおよびR3bは、それぞれ独立してメチレンまたはエチレン基であり;
各場合のR13は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
各A3は独立して式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、ここで、p1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;および各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である、
として記載され得る。この場合、本方法は、本明細書中に記載される式1.1または1.2の構造を有するポリマーを提供するのに十分なA3基の少なくとも一部を修飾することを含み得る。以下の構造のうちの1つを含むポリマーの例は、pAsp(DET)(ポリ(2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチルアスパルトアミド))またはPEG-pAsp(DET)(ポリエチレングリコール-b-ポリ{N’-[N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチル]アスパルトアミド})である。
【0117】
A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)は、任意の適切な方法によって修飾され、B1および/またはB2と指定される基(あるいは式1.1または1.2のポリマーの基A3)を生じ得る。例えば、A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)は、Michael付加反応、エポキシド開環、または置換反応によって修飾され得る。好ましい実施態様において、A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)は、Michael付加反応によって修飾される。
【0118】
1つの実施態様において、式3の構造を含むポリマーの基A1および/またはA2、あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3は、式3の構造を含むポリマーとα,β-不飽和カルボニル化合物との間のMichael付加反応によって修飾される。本明細書中で使用される用語「Michael付加」は、ポリマーの求核剤(例、カルボアニオン、酸素アニオン、窒素アニオン、酸素原子、窒素原子、またはそれらの組み合わせ)のα,β-不飽和カルボニル化合物への求核付加をいう。従って、Michael付加反応は、式3の構造を含むポリマーとα,β-不飽和カルボニル化合物との間である。いくつかの実施態様において、ポリマーの求核剤は、窒素アニオン、窒素原子、またはそれらの組み合わせである。
【0119】
α,β-不飽和カルボニル化合物は、求核剤からのMichael付加を受け入れることができる任意のα,β-不飽和カルボニル化合物であり得る。いくつかの実施態様において、α,β-不飽和カルボニル化合物は、アクリレート、アクリルアミド、ビニルスルホン、またはそれらの組み合わせである。従って、Michael付加反応は、式3の構造を含むポリマーとアクリレート、アクリルアミド、ビニルスルホン、またはそれらの組み合わせとの間であり得る。従って、いくつかの実施態様において、本方法は、式3の構造を含むポリマーとアクリレートとを接触させる;式3の構造を含むポリマーとアクリルアミドとを接触させる;または式3の構造を含むポリマーとビニルスルホンとを接触させることを含む。
【0120】
A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)がMichael付加反応によって修飾される実施態様において、それらは式1、1.1.、1.2、1A、1A1などに関して本明細書中で記載されるB1および/またはB2と指定される基(あるいは式1.1または1.2のポリマーの基A3)を生じる。例えば、B1および/またはB2は以下の式であり得る:
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R4-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R4-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R4-R5};
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R4-R5]2}2
ここで、p1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;各場合のR4は独立して-C(O)O-、-C(O)NH-、または-S(O)(O)-であり;および各場合のR5は独立して、1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である;あるいは基および置換基はそうでなければ本発明のポリマーに関して本明細書中で記載した通りであり得る。
【0121】
使用に適切なアクリレート、アクリルアミド、およびビニルスルホンの例は、以下の式のアクリレートを含む:
【0122】
【化43】
【0123】
ここで、R5は式1、1.1、1.2、1A、1.1A、または1.2Aのいずれかに関して記載の通りである。
【0124】
いくつかの実施態様において、Michael付加反応は酸および/または塩基によって促進される。酸および/または塩基は、任意の適切なpKaを有する任意の適切な酸および/または塩基であり得る。酸および/または塩基は、有機酸(例、p-トルエンスルホン酸)、有機塩基(例、トリエチルアミン)、無機酸(例、四塩化チタン)、無機塩基(例、炭酸カリウム)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0125】
いくつかの実施態様において、Michael付加反応は酸によって促進される。酸は、ブロンステッド酸またはルイス酸であり得る。酸がブロンステッド酸である実施態様において、酸は弱酸(すなわち、約4~約7のpKa)または強酸(すなわち、約-2~約4のpKa)であり得る。典型的には、酸は弱酸である。ある実施態様において、酸はルイス酸である。例えば、酸はビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドまたはp-トルエンスルホン酸であり得る。
【0126】
いくつかの実施態様において、Michael付加反応は塩基によって促進される。塩基は、弱塩基(すなわち、約7~約12のpKa)または強塩基(すなわち、約12~約50のpKa)であり得る。典型的には、塩基は弱塩基である。例えば、塩基はトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、またはN,N-ジメチル-ピペラジン、あるいはそれらの誘導体であり得る。
【0127】
いくつかの実施態様において、Michael付加反応は溶媒中で行われる。溶媒は、反応させるポリマーおよびα,β-不飽和カルボニル化合物を可溶化することができる任意の適切な溶媒、または溶媒の混合物であり得る。例えば、溶媒は、水、プロトン性有機溶媒、および/または非プロトン性有機溶媒を含み得る。溶媒の例示的なリストは、水、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、およびエタノールを含む。
【0128】
1つの実施態様において、ポリマーの基A1および/またはA2(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)は、ポリマーとエポキシド化合物との間のエポキシド開環反応によって修飾される。本明細書中で使用される用語「エポキシド開環」は、ポリマーの求核剤(例、カルボアニオン、酸素アニオン、窒素アニオン、酸素原子、窒素原子、またはそれらの組み合わせ)のエポキシド化合物への求核付加をいい、それによってエポキシドを開環する。従って、エポキシド開環反応は、ポリマーとエポキシド化合物との間である。いくつかの実施態様において、ポリマーの求核剤は、窒素アニオン、窒素原子、またはそれらの組み合わせである。
【0129】
A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)がエポキシド開環反応によって修飾される実施態様において、それらは以下の式のB1および/またはB2と指定される基(あるいは式1.1または1.2のポリマーの基A3)を生じる:
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2-CH2-CHOH-R5;
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-CH2-CHOH-R5]2}2
ここで、p1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;および各場合のR5は独立して、1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である。
【0130】
使用に適切なエポキシドの例は、以下の式のエポキシドを含む:
【0131】
【化44】
【0132】
ここでR5は任意の本発明のポリマー(例、式1、1.1、1.2、1A、1.1A、または1.2A)に関して記載した通りである。
【0133】
いくつかの実施態様において、エポキシド開環反応は、酸および/または塩基によって促進される。酸および/または塩基は、任意の適切なpKaを有する任意の適切な酸および/または塩基であり得る。酸および/または塩基は、有機酸(例、p-トルエンスルホン酸)、有機塩基(例、トリエチルアミン)、無機酸(例、四塩化チタン)、無機塩基(例、炭酸カリウム)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0134】
いくつかの実施態様において、エポキシド開環反応は酸によって促進される。酸は、ブロンステッド酸またはルイス酸であり得る。酸がブロンステッド酸である実施態様において、酸は弱酸(すなわち、約4~約7のpKa)または強酸(すなわち、約-2~約4のpKa)であり得る。典型的には、酸は弱酸である。ある実施態様において、酸はルイス酸である。例えば、酸はビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドまたはp-トルエンスルホン酸であり得る。
【0135】
いくつかの実施態様において、エポキシド開環反応は塩基によって促進される。塩基は、弱塩基(すなわち、約7~約12のpKa)または強塩基(すなわち、約12~約50のpKa)であり得る。典型的には、塩基は弱塩基である。例えば、塩基はトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、またはN,N-ジメチル-ピペラジン、あるいはそれらの誘導体であり得る。
【0136】
いくつかの実施態様において、エポキシド開環反応は溶媒中で行われる。溶媒は、反応させるポリマーおよびエポキシド化合物を可溶化することができる任意の適切な溶媒、または溶媒の混合物であり得る。例えば、溶媒は、水、プロトン性有機溶媒、および/または非プロトン性有機溶媒を含み得る。溶媒の例示的なリストは、水、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、およびエタノールを含む。
【0137】
1つの実施態様において、ポリマーの基A1および/またはA2(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)は、ポリマーと脱離基(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トシレート、トリフレート、メシレートなど)を含む化合物との間の置換反応によって修飾される。本明細書中で使用される用語「置換」は、ポリマーの求核剤(例、カルボアニオン、酸素アニオン、窒素アニオン、酸素原子、窒素原子、またはそれらの組み合わせ)の脱離基を含む化合物への求核付加をいう。従って、置換反応は、ポリマーと脱離基を含む化合物との間である。いくつかの実施態様において、ポリマーの求核剤は、窒素アニオン、窒素原子、またはそれらの組み合わせである。
【0138】
A1および/またはA2と指定される基(あるいは式3.1または3.2のポリマーの基A3)が置換反応によって修飾される実施態様において、それらは以下の式のB1および/またはB2と指定される基(あるいは式1.1または1.2のポリマーの基A3)を生じる:
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2-(CH2)s1-R5;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2-(CH2)s2-R5]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2(CH2)s3-R5};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2-(CH2)s4-R5]2}2
ここで、p1~p4、q1~q6、r1およびr2、ならびにs1~s4は、それぞれ独立して1~5の整数であり;各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;および各場合のR5は独立して、1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基である。
【0139】
いくつかの実施態様において、本方法は、式A:
【0140】
【化45】
【0141】
式中、
R3bはメチレンまたはエチレン基であり;
Wは-NR14-または-O-であり、ここでR14は水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり;
ZはA1、あるいは1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせ、あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位を含む置換基であり;
A1は式
-(CH2)p1-[NR2-(CH2)q1-]r1NR2 2;
-(CH2)p2-N[-(CH2)q2-NR2 2]2;
-(CH2)p3-N{[-(CH2)q3-NR2 2][-(CH2)q4-NR2-]r2R2};または
-(CH2)p4-N{-(CH2)q5-N[-(CH2)q6-NR2 2]2}2
の基であり、
ここでp1~p4、q1~q6、ならびにr1およびr2は、それぞれ独立して1~5の整数であり;および各場合のR2は独立して水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基である、
の化合物から、式5の構造を含むポリマーを調製することを含む。
【0142】
一般に、式Aの化合物から式5の構造を含むポリマーを形成することを含む方法は、化合物式Aの開環重合を含む。式Aの化合物の開環重合は、任意の適切な方法(例、温度、光、触媒、化合物など)によって開始され得る。いくつかの実施態様において、式Aの化合物の開環重合は、アミン含有化合物を用いて開始される。
【0143】
ある実施態様において、式Aの化合物の開環重合は、以下の式のアミン含有化合物を用いて開始される:
【0144】
【化46】
【0145】
式中、
cは0~50の整数であり;
Yは必要に応じて存在し、そして開裂可能なリンカーであり;および
R6は水素、アミノ基、1個以上のアミンで置換されていてもよい、アリール基、複素環基、C1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、C1-C12線状または分岐アルキル基;あるいは組織特異的または細胞特異的標的化部位である。好ましい実施態様において、アミン含有化合物は
【0146】
【化47】
【0147】
である。
【0148】
いくつかの実施態様において、式Aの化合物において、Yは-O-であり、およびZは、1~8個または2~8個の2級または3級アミンを含んでいてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアルキル基、複素環基、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施態様において、Zはアリールアルキル基、例えばベンジルである。式5のポリマーの製造方法は、次いで、開環重合の後、得られる中間体ポリマーを式NHR17-A1、ここでA1は式1に関して定義した通りである、の化合物で処理することをさらに含む。式NHR17-A1の化合物は、必要に応じてジエチレンアミントリアミンである。いくつかの実施態様において、式NHR17-A1の化合物はジエチレンアミントリアミンではない。
【0149】
R17は水素あるいはC1-C12アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基であり得る。いくつかの実施態様において、R17はC1-C12(例、C1-C10アルキル基;C1-C8アルキル基;C1-C6アルキル基;C1-C4アルキル基、C1-C3アルキル基、あるいはC1またはC2アルキル基)線状または分岐アルキル基である。ある実施態様において、R17はメチルである。他の実施態様において、R17は水素であり得る。典型的には、所定のポリマー内で、各R17は同じ(例、全てメチルまたは全て水素)である;しかし、各R17は独立して選ばれ、そして同じであり得るかまたは異なり得る。
【0150】
使用に適切な脱離基を含む化合物の例は、以下の式の化合物を含む:
【0151】
【化48】
【0152】
ここでLGは脱離基(例、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トシレート、トリフレート、メシレートなど)であり、およびR5は式1、1.1、1.2、1A、1.1A、または1.2Aのいずれかに関して記載した通りである。
【0153】
いくつかの実施態様において、置換反応は、酸および/または塩基によって促進される。酸および/または塩基は、任意の適切なpKaを有する任意の適切な酸および/または塩基であり得る。酸および/または塩基は、有機酸(例、p-トルエンスルホン酸)、有機塩基(例、トリエチルアミン)、無機酸(例、四塩化チタン)、無機塩基(例、炭酸カリウム)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0154】
いくつかの実施態様において、置換反応は、酸によって促進される。酸は、ブロンステッド酸またはルイス酸であり得る。酸がブロンステッド酸である実施態様において、酸は弱酸(すなわち、約4~約7のpKa)または強酸(すなわち、約-2~約4のpKa)であり得る。典型的には、酸は弱酸である。ある実施態様において、酸はルイス酸である。例えば、酸はビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドまたはp-トルエンスルホン酸であり得る。
【0155】
いくつかの実施態様において、置換反応は、塩基によって促進される。塩基は、弱塩基(すなわち、約7~約12のpKa)または強塩基(すなわち、約12~約50のpKa)であり得る。典型的には、塩基は弱塩基である。例えば、塩基はトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、またはN,N-ジメチル-ピペラジン、あるいはそれらの誘導体であり得る。
【0156】
いくつかの実施態様において、置換反応は溶媒中で行われる。溶媒は、反応させるポリマーおよび脱離基を含む化合物を可溶化することができる任意の適切な溶媒、または溶媒の混合物であり得る。例えば、溶媒は、水、プロトン性有機溶媒、および/または非プロトン性有機溶媒を含み得る。溶媒の例示的なリストは、水、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、およびエタノールを含む。
【0157】
いくつかの実施態様において、本方法はさらに、式1の構造を含むポリマーを単離することを含む。式1の構造を含むポリマーは、任意の適切な方法によって単離され得る。例えば、式1の構造を含むポリマーは、抽出、結晶化、再結晶、カラムクロマトグラフィー、濾過、またはそれらの任意の組み合わせによって単離され得る。
【0158】
組成物
ポリマーは、任意の用途について使用され得る。しかし、ポリマーは核酸および/またはポリペプチド(例、タンパク質)を細胞に送達するために特に有用であると考えられる。従って、本明細書中で記載したポリマーならびに核酸および/またはポリペプチド(例、タンパク質)を含有する組成物が本明細書中で提供される。
【0159】
いくつかの実施態様において、組成物は核酸を含有する。任意の核酸が使用され得る。核酸の例示的なリストは、CRISPR系のガイドおよび/またはドナー核酸、siRNA、microRNA、干渉RNAまたはRNAi、dsRNA、mRNA、DNAベクター、リボザイム、アンチセンスポリヌクレオチド、およびsiRNA、microRNA、dsRNA、リボザイムまたはアンチセンス核酸をコードするDNA発現カセットを含む。SiRNAは、典型的には15-50塩基対および好ましくは19-25塩基対を含み、そして細胞内で発現された標的遺伝子またはRNAと同一またはほぼ同一のヌクレオチド配列を有する二本鎖構造を含む。siRNAは、2つのアニールされたポリヌクレオチドまたはヘアピン構造を形成する1つのポリヌクレオチドからなり得る。MicroRNA(miRNA)は、それらのmRNA標的の破壊または翻訳抑制を命令する小さい非コードポリヌクレオチド、約22ヌクレオチド長である。アンチセンスポリヌクレオチドは、遺伝子またはmRNAを優遇する配列を含む。アンチセンスポリヌクレオチドは:モルフォリノ、2’-O-メチルポリヌクレオチド、DNA、RNAなどを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド-ベースの発現阻害剤は、インビトロで重合され得、組み換え、キメラ配列、またはこれらの基の誘導体を含み得る。ポリヌクレオチド-ベースの発現阻害剤は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、合成ヌクレオチド、または標的RNAおよび/または遺伝子が阻害されるような任意の適切な組み合わせを含み得る。ポリヌクレオチドはまた、インビトロまたはインビボでの送達を追跡するなどの目的のための「バーコード」として役立つ配列であり得る。
【0160】
組成物はまた、核酸に加えてまたはその代わりに、送達のための任意のタンパク質を含有し得る。ポリペプチドは任意の適切なポリペプチドであり得る。例えば、ポリペプチドはジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(「TALEN」)、リコンビナーゼ、デアミナーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施態様において、ポリペプチドはRNA-誘導エンドヌクレアーゼ(例、Cas9ポリペプチド、Cpf1ポリペプチド、またはそれらの変異体)またはDNAリコンビナーゼ(例、Creポリペプチド)である。
【0161】
本明細書中で提供されるポリマーは、CRISPR系の1つ以上の成分を送達するために特に有用であると考えられる。従って、いくつかの実施態様において、組成物はガイドRNA、RNA-誘導エンドヌクレアーゼまたはこれをコードする核酸、および/またはドナー核酸を含有する。組成物は、本明細書中で記載したポリマーと一緒に1つ、2つ、または全ての3つの成分を含有し得る。さらに、組成物は多数のガイドRNAs、RNA-誘導エンドヌクレアーゼまたはこれをコードする核酸、および/またはドナー核酸を含有し得る。例えば、必要に応じて複数の異なるドナー核酸およびさらには複数の異なるRNA誘導エンドヌクレアーゼまたはこれをコードする核酸とともに、異なる標的部位のための複数の異なるガイドRNAが含まれ得る。
【0162】
さらに、CRISPR系の成分は、任意の特定の様式または順序で互いに(複数の成分が存在する場合)およびポリマーと組み合わされ得る。いくつかの実施態様において、ガイドRNAは、ポリマーと合わせる前にRNAエンドヌクレアーゼと複合体化される。さらに、または代わりに、ガイドRNAは、ポリマーと合わせる前にドナー核酸に(共有結合的にまたは非共有結合的に)連結され得る。
【0163】
組成物は、任意の特定のCRISPR系(すなわち、任意の特定のガイドRNA、RNA-誘導エンドヌクレアーゼ、またはドナー核酸)、これらの多くは公知である、に関して限定されない。にもかかわらず、さらなる説明のために、いくつかのこのような系の成分は以下に記載される。
【0164】
ドナー核酸
ドナー核酸(あるいは「ドナー配列」または「ドナーポリヌクレオチド」または「ドナーDNA」)は、RNA-依存性エンドヌクレアーゼ(例、Cas9ポリペプチドまたはCpf1ポリペプチド)によって誘起される開裂部位で挿入されるべき核酸配列である。ドナーポリヌクレオチドは、開裂部位で標的ゲノム配列に対して十分な相同性、例えば70%、80%、85%、90%、95%、または100%の、例えば開裂部位の約50塩基以下、例えば約30塩基、約15塩基、約10塩基、約5塩基内で開裂部位をフランキングするかまたは開裂部位を直ちにフランキングしてそれと相同性を有するゲノム配列との間の相同組換修復を支持するヌクレオチド配列との相同性を含む。ドナーとゲノム配列(あるいは10と200との間の任意の整数値、あるいはそれ以上のヌクレオチド)との間の配列相同性の約25、50、100、または200のヌクレオチド、あるいは200を超えるヌクレオチドは、相同組換修復を支持する。ドナー配列は、例えば10ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、250ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上などの任意の長さであり得る。
【0165】
ドナー配列は典型的には、それが置き換わるゲノム配列とは同一ではない。むしろ、ドナー配列は、十分な相同性が存在して相同組換修復を支持する限り、ゲノム配列に関して1つ以上の単一塩基変化、挿入、欠失、反転または再配列を含み得る。いくつかの実施態様において、ドナー配列は、相同性の2つの領域によってフランキングされる非相同性配列を含み、その結果、標的DNA領域と2つのフランキング配列との間の相同組換修復は標的領域で非相同性配列の挿入を生じる。ドナー配列はまた、目的のDNA領域と相同性でなく、そして目的のDNA領域への挿入を意図しない配列を含むベクター骨格を含み得る。一般に、ドナー配列の相同性の領域は、組み換えが所望されるゲノム配列に対して少なくとも50%配列同一性を有する。ある実施態様において、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または99.9%配列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに依存して、1%配列同一性と100%配列同一性との間の任意の値が存在し得る。
【0166】
ドナー配列は、ゲノム配列、例えば制限部位、ヌクレオチド多形、選択可能なマーカー(例、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素など)などと比較してある配列の相違を含み得、これは開裂部位でのドナー配列の成功する挿入を評価するために使用され得る、またはいくつかの実施態様において他の目的(例、標的化ゲノム遺伝子座での発現を示すため)に使用され得る。いくつかの実施態様において、コード領域に位置する場合、このようなヌクレオチド配列の相違はアミノ酸配列を変化させず、またはサイレントアミノ酸変化(すなわち、タンパク質の構造または機能に影響を与えない変化)を作る。あるいは、これらの配列の相違は、マーカー配列の除去のためにその後活性化され得るFLP、loxP配列などのフランキング組み換え配列を含み得る。
【0167】
ドナー配列は、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、または二本鎖RNAとして細胞に提供され得る。それは、線状または環状形態で細胞に導入され得る。線状形態で導入される場合、ドナー配列の端部は、当業者に公知の方法によって(例えば、核外分解性劣化から)保護され得る。例えば、1個以上のジデオキシヌクレオチド残基は、線状分子の3'末端に付加され、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドは一方または両方の端部に結合される。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad Sci USA 84:4959-4963; Nehls et al. (1996) Science 272:886-889を参照。ローリングサークル増幅などの増幅手順はまた、本明細書中で例示されるように、有利に使用され得る。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法は、末端アミノ基の付加および例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデート、およびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間連結の使用を含むが、これらに限定されない。
【0168】
線状ドナー配列の末端を保護する代わりとして、組み換えに影響を与えることなく分解され得る追加の長さの配列が、相同性の領域の外側に含まれ得る。ドナー配列は、例えば、複製起点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナー配列は、Cas9ガイドRNAおよび/またはCas9融合ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸について本明細書中で記載したように、裸核酸として、リポソームまたはポリマーなどの剤と複合体化した核酸として導入され得、または、ウイルス(例、アデノウイルス、AAV)によって送達され得る。
【0169】
ガイド核酸
いくつかの実施態様において、組成物はガイド核酸を含有する。本開示の組成物に含めるのに適切なガイド核酸は、一分子ガイドRNA(「シングル-ガイドRNA」/「sgRNA」)および二分子ガイド核酸(「デュアル-ガイドRNA」/「dgRNA」)を含む。
【0170】
本開示の複合体に含めるのに適切なガイド核酸(例、ガイドRNA)は、RNA-誘導エンドヌクレアーゼ(例、Cas9またはCpf1ポリペプチド)の標的核酸内の特異的標的配列に対する活性を指示する。ガイド核酸(例、ガイドRNA)は:第1の断片(本明細書中、「核酸標的化断片」または単純に「標的化断片」ともいう);および第2の断片(本明細書中、「タンパク質-結合断片」ともいう)を含む。用語「第1の」および「第2の」は、断片がガイドRNAに現れる順序を意味しない。互いに対する要素の順序は、使用される特定のRNA-誘導ポリペプチドに依存する。例えば、Cas9のためのガイドRNAは、典型的には標的化断片の3’に位置したタンパク質-結合断片を有し、一方、Cpf1のためのガイドRNAは、典型的には標的化断片の5’に位置したタンパク質-結合断片を有する。
【0171】
ガイドRNAは、線状または環状形態で細胞に導入され得る。線状形態で導入される場合、ガイドRNAの端部は、当業者に公知の方法によって(例えば、核外分解性劣化から)保護され得る。ローリングサークル増幅などの増幅手順はまた、本明細書中で例示されるように、有利に使用され得る。
【0172】
第1の断片:標的化断片
ガイド核酸(例、ガイドRNA)の第1の断片は、標的核酸における配列(標的部位)に相補的であるヌクレオチド配列を含む。言い換えると、ガイド核酸(例、ガイドRNA)の標的化断片は、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して配列-特異的様式で標的核酸(例、RNA、DNA、二本鎖DNA)と相互作用し得る。そのため、標的化断片のヌクレオチド配列は変化し得、そしてガイド核酸(例、ガイドRNA)および標的核酸が相互作用するであろう標的核酸内の位置を決定し得る。ガイド核酸(例、ガイドRNA)の標的化断片は、(例えば、遺伝子工学によって)修飾され、標的核酸内の任意の所望の配列(標的部位)にハイブリダイズし得る。
【0173】
標的化断片は、12ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。標的核酸のヌクレオチド配列(標的部位)に相補的である標的化断片のヌクレオチド配列(標的化配列、ガイド配列ともいう)は、12 nt以上の長さを有し得る。例えば、標的核酸の標的部位に相補的である標的化断片の標的化配列は、12 nt以上、15 nt以上、17 nt以上、18 nt以上、19 nt以上、20 nt以上、25 nt以上、30 nt以上、35 nt以上または40 ntの長さを有し得る。
【0174】
標的化断片の標的化配列(すなわち、ガイド配列)と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、60%以上(例、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)であり得る。いくつかの実施態様において、標的化断片の標的化配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の7つの隣接する5’-最大ヌクレオチドに対して100%である。いくつかの実施態様において、標的化断片の標的化配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、20の隣接するヌクレオチドに対して60%以上である。いくつかの実施態様において、標的化断片の標的化配列と標的核酸の標的部位との間のパーセント相補性は、標的核酸の標的部位の17、18、19または20の隣接する5’-最大ヌクレオチドに対して100%であり、そして残りに対して0%以上の低さである。このような場合、標的化配列は、それぞれ長さ17、18、19または20のヌクレオチドであると考えられ得る。
【0175】
第2断片:タンパク質-結合断片
ガイド核酸(例、ガイドRNA)のタンパク質-結合断片は、RNA-誘導エンドヌクレアーゼと相互作用(結合)する。ガイド核酸(例、ガイドRNA)は、上述の標的化断片/標的化配列/ガイド配列を介して、結合したエンドヌクレアーゼを標的核酸(標的部位)内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。ガイド核酸(例、ガイドRNA)のタンパク質-結合断片は、ヌクレオチドの互いに相補的である2つの伸長を含む。タンパク質-結合断片の相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RNA二本鎖(dsRNA)を形成する。
【0176】
シングルおよびデュアルガイド核酸
デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、2つの別個の核酸分子を含む。被検体デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)の2つの分子のそれぞれは、互いに相補的であるヌクレオチドの伸長を含み、その結果、2つの分子の相補的ヌクレオチドはハイブリダイズしてタンパク質-結合断片の二本鎖RNA二本鎖を形成する。
【0177】
いくつかの実施態様において、アクチベーターの二本鎖-形成断片は、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のアクチベーター(tracrRNA)の1つ、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上同一または100%同一である。
【0178】
いくつかの実施態様において、標的物の二本鎖-形成断片は、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載の標的物(crRNA)配列の1つ、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上同一または100%同一である。
【0179】
デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、標的物のアクチベーターとの制御された(すなわち、条件付き)結合を可能とするよう設計され得る。デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、アクチベーターおよび標的物の両方がCas9との機能的複合体において結合されない限り機能的ではないので、デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、アクチベーターと誘導できる標的物との間の結合を与えることによって誘導可能(例、薬物誘導可能)であり得る。1つの非限定的例として、RNAアプタマーを用いて、アクチベーターの標的物との結合を調整(すなわち、制御)し得る。従って、アクチベーターおよび/または標的物は、RNAアプタマー配列を含み得る。
【0180】
アプタマー(例、RNAアプタマー)は、当該分野で公知であり、そして一般にリボスイッチの合成版である。用語「RNAアプタマー」および「リボスイッチ」は、本明細書中互いに交換可能で使用され、それらが一部である核酸分子(例、RNA、DNA/RNAハイブリッドなど)の構造(および従って特異的配列の利用可能性)の誘導可能な調整を提供する合成および天然核酸配列の両方を含む。RNAアプタマーは、通常、特定の構造(例、ヘアピン)へと折り畳まれる配列を含み、これは特定の薬物(例、小分子)を特異的に結合する。薬物の結合は、RNAの折り畳みにおいて構造変化を引き起こし、これはアプタマーが一部である核酸の特徴を変化させる。非限定的例として:(i)アプタマーを有するアクチベーターは、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同種標的物に結合することができない;(ii)アプタマーを有する標的物は、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同種アクチベーターに結合することができない;および(iii)それぞれ異なる薬物を結合する異なるアプタマーを含む標的物およびアクチベーターは、両方の薬物が存在しない限り、互いに結合することができない。これらの例によって説明されるように、デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)は誘導可能であるように設計され得る。
【0181】
アプタマーおよびリボスイッチの例は、例えば:Nakamura et al., Genes Cells. 2012 May;17(5):344-64; Vavalle et al., Future Cardiol. 2012 May;8(3):371-82; Citartan et al., Biosens Bioelectron. 2012 Apr 15;34(1):1-11;およびLiberman et al., Wiley Interdiscip Rev RNA. 2012 May-Jun;3(3):369-84において見い出され得;これらは全て、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0182】
ハイブリダイズしてタンパク質結合断片を形成し得る国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に含まれるデュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)、またはそれらの相補体に含まれ得るヌクレオチド配列の非限定的例。
【0183】
被検体シングルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、ハイブリダイズしてタンパク質-結合断片(従ってステムループ構造を生じる)二本鎖RNA二本鎖(dsRNA二本鎖)を形成し、そして介在ヌクレオチド(「リンカー」または「リンカーヌクレオチド」)によって共有結合される、ヌクレオチド(デュアルガイド核酸の「標的物」および「アクチベーター」に似ている)の互いに相補的である2つの伸長を含む。従って、被検体シングルガイド核酸(例、シングルガイドRNA)は、それぞれ二本鎖-形成断片を有する標的物およびアクチベーターを含み得、ここで標的物およびアクチベーターの二本鎖-形成断片は互いにハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成する。標的物およびアクチベーターは、標的物の3’端部およびアクチベーターの5’端部を介して共有結合され得る。あるいは、標的物およびアクチベーターは、標的物の5’端部およびアクチベーターの3’端部を介して共有結合され得る。
【0184】
シングルガイド核酸のリンカーは、3ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの実施態様において、シングルガイド核酸(例、ガイドRNA)のリンカーは4 ntである。
【0185】
例示的なシングルガイド核酸(例、ガイドRNA)は、ヌクレオチドのハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成する2つの相補的な伸長を含む。いくつかの実施態様において、シングルガイド核酸(例、ガイドRNA)(または伸長をコードするDNA)のヌクレオチドの2つの相補的な伸長の1つは、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のアクチベーター(tracrRNA)分子の1つ、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上同一または100%同一である。
【0186】
いくつかの実施態様において、シングルガイド核酸(例、ガイドRNA)(または伸長をコードするDNA)のヌクレオチドの2つの相補的な伸長の1つは、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載の標的物(crRNA)配列の1つ、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上同一または100%同一である。
【0187】
いくつかの実施態様において、シングルガイド核酸(例、ガイドRNA)(または伸長をコードするDNA)のヌクレオチドの2つの相補的な伸長の1つは、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載の標的物(crRNA)配列またはアクチベーター(tracrRNA)配列の1つ、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上同一または100%同一である。
【0188】
標的物およびアクチベーターの適切な同種対は、種の名前および塩基対合(タンパク質-結合ドメインのdsRNA二本鎖について)を考慮して規定通りに決定され得る。任意のアクチベーター/標的物対は、デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)の一部としてまたはシングルガイド核酸(例、ガイドRNA)の一部として使用され得る。
【0189】
いくつかの実施態様において、デュアルガイド核酸(例、ガイドRNA)(例、デュアルガイドRNA)またはシングルガイド核酸(例、ガイドRNA)(例、シングルガイドRNA)のアクチベーター(例、trRNA、trRNA-様分子など)は、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のアクチベーター(tracrRNA)分子、またはそれらの相補体と60%,、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%以上、または100%配列同一性を有するヌクレオチドの伸長を含む。
【0190】
いくつかの実施態様において、デュアルガイド核酸(例、デュアルガイドRNA)またはシングルガイド核酸(例、シングルガイドRNA)のアクチベーター(例、trRNA、trRNA-様分子など)は、30以上のヌクレオチド(nt)(例、40以上、50以上、60以上、70以上、75以上のnt)を含む。いくつかの実施態様において、デュアルガイド核酸(例、デュアルガイドRNA)またはシングルガイド核酸(例、シングルガイドRNA)のアクチベーター(例、trRNA、trRNA-様分子など)は、30~200ヌクレオチド(nt)の範囲の長さを有する。
【0191】
タンパク質-結合断片は、10ヌクレオチド~100ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0192】
また、被検体シングルガイド核酸(例、シングルガイドRNA)および被検体デュアルガイド核酸(例、デュアルガイドRNA)の両方に関し、タンパク質-結合断片のdsRNA二本鎖は、6塩基対(bp)~50bpの長さを有し得る。ハイブリダイズしてタンパク質-結合断片のdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間のパーセント相同性は60%以上であり得る。例えば、ハイブリダイズしてタンパク質-結合断片のdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間のパーセント相同性は、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上であり得る(例、いくつかの実施態様において、ハイブリダイズせず、そして従ってdsRNA二本鎖内で隆起を生成するいくつかのヌクレオチドがある。いくつかの実施態様において、ハイブリダイズしてタンパク質-結合断片のdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間のパーセント相同性は100%である。
【0193】
ハイブリッドガイド核酸
いくつかの実施態様において、ガイド核酸は2つのRNA分子(デュアルガイドRNA)である。いくつかの実施態様において、ガイド核酸は1つのRNA分子(シングルガイドRNA)である。いくつかの実施態様において、ガイド核酸はDNA/RNAハイブリッド分子である。このような実施態様において、ガイド核酸のタンパク質-結合断片はRNAであり、そしてRNA二本鎖を形成する。従って、アクチベーターおよび標的物の二本鎖-形成断片はRNAである。しかし、ガイド核酸の標的化断片はDNAであり得る。従って、DNA/RNAハイブリッドガイド核酸がデュアルガイド核酸である場合「標的物」分子はハイブリッド分子である(例、標的化断片はDNAであり得、そして二本鎖-形成断片はRNAであり得る)。このような実施態様において、「アクチベーター」分子の二本鎖-形成断片はRNAであり得(例、標的物分子の二本鎖-形成断片を有するRNA-二本鎖を形成するために)、一方、二本鎖-形成断片の外側にある「アクチベーター」分子のヌクレオチドはDNAであり得(この場合においてアクチベーター分子はハイブリッドDNA/RNA分子である)、あるいはRNAであり得る(この場合においてアクチベーター分子はRNAである)。DNA/RNAハイブリッドガイド核酸がシングルガイド核酸である場合、標的化断片はDNAであり得、二本鎖-形成断片(シングルガイド核酸のタンパク質-結合断片を作り出す)はRNAであり得、そして標的化および二本鎖-形成断片の外側のヌクレオチドはRNAまたはDNAであり得る。
【0194】
DNA/RNAハイブリッドガイド核酸は、いくつかの実施態様において、例えば標的核酸がRNAである場合に有用であり得る。Cas9は、通常、標的DNAとハイブリダイズし、従って標的部位でDNA-RNA二本鎖を形成するガイドRNAと関連する。従って、標的核酸がRNAである場合、RNAの代わりにDNAである(ガイド核酸の)標的化断片を用いることによって標的部位でDNA-RNA二本鎖を反復することが時々有利である。しかし、ガイド核酸のタンパク質-結合断片はRNA-二本鎖であるので、標的物分子は、標的化断片においてDNAであり、そして二本鎖-形成断片においてRNAである。ハイブリッドガイド核酸は、二本鎖標的核酸に対して一本鎖標的核酸へのCas9結合を偏らせ得る。
【0195】
例示的なガイド核酸
任意のガイド核酸が使用され得る。多くの異なるタイプのガイド核酸が当該分野で公知である。選択されたガイド核酸は、使用される特定のCRISPR系(例、特定のRNA誘導エンドヌクレアーゼが使用される)に適切に対合される。従って、ガイド核酸は、例えば、本明細書中に記載されたまたは当該分野で公知の任意のRNA誘導エンドヌクレアーゼに対応するガイド核酸であり得る。ガイド核酸およびRNA誘導エンドヌクレアーゼは、例えば、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載されている。
【0196】
いくつかの実施態様において、適切なガイド核酸は、2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子を含む。いくつかの実施態様において、第1の2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子(アクチベーター)は、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のヌクレオチド配列の任意の1つ、またはそれらの相補体と60%以上(例、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%)のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様において、第2の2つの別個のRNAポリヌクレオチド分子(標的物)は、8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のヌクレオチド配列の任意の1つ、またはそれらの相補体と60%以上(例、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%)のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0197】
いくつかの実施態様において、適切なガイド核酸は、シングルRNAポリヌクレオチドであり、そして8以上の隣接するヌクレオチド(例、8以上の隣接するヌクレオチド、10以上の隣接するヌクレオチド、12以上の隣接するヌクレオチド、15以上の隣接するヌクレオチド、または20以上の隣接するヌクレオチド)の伸長に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617に記載のヌクレオチド配列の任意の1つ、またはそれらの相補体と60%以上(例、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%)のヌクレオチド配列同一性を有する第1および第2のヌクレオチド配列を含む。
【0198】
いくつかの実施態様において、ガイドRNAはCpf1および/またはCas9ガイドRNAである。Cpf1および/またはCas9ガイドRNAは、30ヌクレオチド(nt)~100 nt、例えば、30 nt~40 nt、40 nt~45 nt、45 nt~50 nt、50 nt~60 nt、60 nt~70 nt、70 nt~80 nt、80 nt~90 nt、または90 nt~100 ntの全長を有し得る。いくつかの実施態様において、Cpf1および/またはCas9ガイドRNAは、35 nt、36 nt、37 nt、38 nt、39 nt、40 nt、41 nt、42 nt、43 nt、44 nt、45 nt、46 nt、47 nt、48 nt、49 nt、または50 ntの全長を有する。Cpf1および/またはCas9ガイドRNAは、標的核酸-結合断片および二本鎖-形成断片を含み得る。
【0199】
Cpf1および/またはCas9ガイドRNAの標的核酸-結合断片は、15 nt~30 nt、例えば、15 nt、16 nt、17 nt、18 nt、19 nt、20 nt、21 nt、22 nt、23 nt、24 nt、25 nt、26 nt、27 nt、28 nt、29 nt、または30 ntの長さを有し得る。いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は23 ntの長さを有する。いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は24 ntの長さを有する。いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は25 ntの長さを有する。
【0200】
Cpf1および/またはCas9ガイドRNAの標的核酸-結合断片は、標的核酸配列の対応する長さと100%相補性を有し得る。標的化断片は、標的核酸配列の対応する長さと100%未満の相補性を有し得る。例えば、Cpf1および/またはCas9ガイドRNAの標的核酸結合断片は、標的核酸配列と相補的ではない1、2、3、4、または5ヌクレオチドを有し得る。例えば、いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は25ヌクレオチドの長さを有し、そして標的核酸配列は25ヌクレオチドの長さを有し、いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は標的核酸配列と100%相補性を有する。別の例として、いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は25ヌクレオチドの長さを有し、そして標的核酸配列は25ヌクレオチドの長さを有し、いくつかの実施態様において、標的核酸-結合断片は、1つの非相補的ヌクレオチドおよび標的核酸配列を有する24の相補的ヌクレオチドを有する。
【0201】
Cpf1および/またはCas9ガイドRNA二本鎖-形成断片は、15 nt~25 nt、例えば、15 nt、16 nt、17 nt、18 nt、19 nt、20 nt、21 nt、22 nt、23 nt、24 nt、または25 ntの長さを有し得る。
【0202】
いくつかの実施態様において、Cpf1ガイドRNAの二本鎖-形成断片は、ヌクレオチド配列5’-AAUUUCUACUGUUGUAGAU-3’を含み得る。
【0203】
さらなる要素
いくつかの実施態様において、ガイド核酸(例、ガイドRNA)は、さらなる断片(単数または複数)(いくつかの実施態様において、5’末端で、いくつかの実施態様において、3’末端で、いくつかの実施態様において、5’または3’末端のいずれかで、いくつかの実施態様において、配列内に埋め込まれ(すなわち、5’および/または3’末端でではない)、いくつかの実施態様において、5’末端および3’末端の両方で、いくつかの実施態様において、埋め込まれそして5’末端および/または3’末端で、など)を含む。例えば、適切なさらなる断片は、5’キャップ(例、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化テール(すなわち、3’ポリ(A)テール);リボザイム配列(例えば、ガイド核酸またはガイド核酸の成分の自己開裂を可能にするため、例、標的物、アクチベーターなど);リボスイッチ配列(例、タンパク質およびタンパク質複合体によって調節された安定性および/または調節されたアクセス性を可能にするため);dsRNA二本鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列);RNAを細胞内部位(例、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列;追跡を提供する修飾または配列(例、蛍光分子(すなわち、蛍光染料)などの標識、蛍光検出を容易にする配列または他の部分;タンパク質(例、DNAに作用するタンパク質、転写アクチベーター、転写リプレッサー、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、RNA(例、RNAアプタマー)を結合するタンパク質、標識化タンパク質、蛍光標識化タンパク質などを含む)のための結合部位を提供する配列または他の修飾;増加した、減少したおよび/または制御可能な安定性を提供する修飾または配列;およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0204】
RNA-誘導エンドヌクレアーゼ
ガイド核酸に加えて、またはその代わりに、組成物はRNA-誘導エンドヌクレアーゼタンパク質またはこれをコードする核酸(例、mRNAまたはベクター)を含有し得る。任意のRNA-誘導エンドヌクレアーゼが使用され得る。使用されるRNA誘導エンドヌクレアーゼの選択は、少なくとも一部は、使用されるCRISPR系の意図する最終用途に依存する。
【0205】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドはCas9ポリペプチドである。本開示の組成物に含めるのに適切なCas9ポリペプチドは、以下に記載されるように、天然に存在するCas9ポリペプチド(例、細菌および/または古細菌細胞に天然に存在する)、または非自然発生Cas9ポリペプチド(例、Cas9ポリペプチドは、以下で議論される変異体Cas9ポリペプチド、キメラポリペプチドなど)を含む。いくつかの実施態様において、当業者は、本明細書中で開示したCas9ポリペプチドが任意の源に由来するまたは任意の源から単離された任意の変異体であり得ることを理解し得る。他の実施態様において、本開示のCas9ペプチドは、以下に記載の機能性変異を含むがこれらに限定されない、文献に記載の1つ以上の変異を含み得る:Fonfara et al. Nucleic Asids Res. 2014 Feb;42(4):2577-90; Nishimasu H. et al. Cell. 2014 Feb 27;156(5):935-49; Jinek M. et al. Science. 2012 337:816-21;およびJinek M. et al. Science. 2014 Mar 14;343(6176);2013年3月15日に出願された米国特許出願番号13/842,859、これは本明細書中に参考として援用される、もまた参照;さらに、米国特許番号8,697,359; 8,771,945; 8,795,965; 8,865,406; 8,871,445; 8,889,356; 8,895,308; 8,906,616; 8,932,814; 8,945,839; 8,993,233;および8,999,641、これらは全て本明細書中に参考として援用される、を参照。従って、いくつかの実施態様において、本明細書中で開示した系および方法は、二本鎖ヌクレアーゼ活性を有する野生型Cas9タンパク質、一本鎖ニッカーゼとして作用するCas9変異体、または修飾ヌクレアーゼ活性を有する他の変異体とともに使用され得る。従って、本開示の組成物に含めるのに適切なCas9ポリペプチドは、例えば、標的核酸における一本鎖または二本鎖切断を行い得るか、あるいは野生型Cas9ポリペプチドと比較して減少した酵素活性を有し得る酵素的に活性なCas9ポリペプチドであり得る。
【0206】
天然に存在するCas9ポリペプチドはガイド核酸を結合し、それによって標的核酸(標的部位)内の特定の配列に向けられ、そして標的核酸を開裂する(例、dsDNAを開裂して二本鎖切断を生じる、ssDNAを開裂する、ssRNAを開裂するなど)。被検体Cas9ポリペプチドは、2つの部分、RNA-結合部分および活性部分を含む。RNA-結合部分は被検体ガイド核酸と相互作用し、そして活性部分は部位-指向酵素活性(例、ヌクレアーゼ活性、DNAおよび/またはRNAメチル化のための活性、DNAおよび/またはRNA開裂のための活性、ヒストンアセチル化のための活性、ヒストンメチル化のための活性、RNA修飾のための活性、RNA-結合のための活性、RNAスプライシングのための活性などを示す。いくつかの実施態様において、活性部分は、野生型Cas9ポリペプチドの対応する部分に関して減少したヌクレアーゼ活性を示す。いくつかの実施態様において、活性部分は酵素的に不活性である。
【0207】
タンパク質が被検体ガイド核酸と相互作用するRNA-結合部分を有するかどうかを決定するアッセイは、タンパク質と核酸との間の結合について試験する任意の便利な結合アッセイであり得る。例示的な結合アッセイは、ガイド核酸およびCas9ポリペプチドを標的核酸に加えることを含む結合アッセイ(例、ゲルシフトアッセイ)を含む。
【0208】
タンパク質が活性部分を有するかどうかを決定する(例、ポリペプチドが標的核酸を開裂するヌクレアーゼ活性を有するかどうかを決定する)アッセイは、核酸開裂について試験する任意の便利な核酸開裂アッセイであり得る。ガイド核酸およびCas9ポリペプチドを標的核酸に加えることを含む例示的な開裂アッセイ。
【0209】
いくつかの実施態様において、本開示の組成物に含めるのに適切なCas9ポリペプチドは、標的核酸を修飾する酵素活性(例、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポーゼース活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、ホトリアーゼ活性またはグリコシラーゼ活性)を有する。
【0210】
他の実施態様において、本開示の組成物に含めるのに適切なCas9ポリペプチドは、標的核酸に関連するポリペプチド(例、ヒストン)を修飾する酵素活性(例、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性)を有する。
【0211】
広範な種々の種からの多くのCas9オルソログが同定されており、そしていくつかの実施態様において、タンパク質はいくつかの同一のアミノ酸のみを共有する。全ての同定されたCas9オルソログは、中央のHNHエンドヌクレアーゼドメインおよび分裂RuvC/RNaseHドメインと同じドメイン構造を有する。Cas9タンパク質は、保存された構造を有する4つの鍵となるモチーフを共有する。モチーフ1、2、および4はRuvC様モチーフであり、一方モチーフ3はHNH-モチーフである。
【0212】
いくつかの実施態様において、適切なCas9ポリペプチドは4つのモチーフを有するアミノ酸配列を含み、モチーフ1-4のそれぞれは、図1に示すCas9アミノ酸配列(配列番号1);あるいは、以下の表1に示すCas9アミノ酸配列のモチーフ1-4(配列番号1のモチーフ1-4は、それぞれ以下の表1に示す配列番号3-6である);あるいは、図1に示すCas9アミノ酸配列(配列番号1)のアミノ酸7-166または731-1003と60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上または100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0213】
いくつかの実施態様において、Cas9ポリペプチドは、図1に示しそして配列番号1に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または98%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;そして配列番号1に示すアミノ酸配列に関してN497、R661、Q695、およびQ926のアミノ酸置換を含み;または配列番号1に示すアミノ酸配列に関してK855のアミノ酸置換を含み;あるいは配列番号1に示すアミノ酸配列に関してK810、K1003、およびR1060のアミノ酸置換を含み;あるいは配列番号1に示すアミノ酸配列に関してK848、K1003、およびR1060のアミノ酸置換を含む。
【0214】
本明細書中で使用される用語「Cas9ポリペプチド」は、用語「変異体Cas9ポリペプチド」を含み;および用語「変異体Cas9ポリペプチド」は用語「キメラCas9ポリペプチド」を含む。
【0215】
変異体Cas9ポリペプチド
本開示の組成物に含めるのに適切なCas9ポリペプチドは、変異体Cas9ポリペプチドを含む。変異体Cas9ポリペプチドは、野生型Cas9ポリペプチド(例、上記のような天然に存在するCas9ポリペプチド)のアミノ酸配列と比較した場合に1つのアミノ酸が異なる(例、欠失、挿入、置換、融合を有する)(すなわち、少なくとも1つのアミノ酸が異なる)アミノ酸配列を有する。いくつかの場合において、変異体Cas9ポリペプチドは、Cas9ポリペプチドのヌクレアーゼ活性を減少させるアミノ酸変化(例、欠失、挿入、または置換)を有する。例えば、いくつかの場合において、変異体Cas9ポリペプチドは、対応する野生型Cas9ポリペプチドのヌクレアーゼ活性の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を有する。いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、実質的なヌクレアーゼ活性を有しない。Cas9ポリペプチドが実質的なヌクレアーゼ活性を有しない変異体Cas9ポリペプチドである場合、それは「dCas9」と呼ばれ得る。
【0216】
いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは減少したヌクレアーゼ活性を有する。例えば、本開示の結合方法における使用に適切な変異体Cas9ポリペプチドは、野生型Cas9ポリペプチド、例えば、図1に示すアミノ酸配列(配列番号1)を含む野生型Cas9ポリペプチドのエンドヌクレアーゼ活性の約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、または約0.1%未満を示す。
【0217】
いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、標的核酸の相補的鎖を開裂し得るが、二本鎖標的核酸の非相補的鎖を開裂する能力が減少している。例えば、変異体Cas9ポリペプチドは、RuvCドメイン(例、図1の「ドメイン1」)の機能を減少させる変異(アミノ酸置換)を有し得る。非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、D10A変異(例、配列番号1の位置10に対応するアミノ酸位置でアスパルテートからアラニンへ)を有し、そしてそれゆえ二本鎖標的核酸の相補的鎖を開裂し得るが、二本鎖標的核酸(従って、変異体Cas9ポリペプチドが二本鎖標的核酸を開裂する場合、二本鎖切断(DSB)の代わりに一本鎖切断(SSB)を生じる)(例えば、Jinek et al., Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21を参照)の非相補的鎖を開裂する能力が減少している。
【0218】
いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、二本鎖標的核酸の非相補的鎖を開裂し得るが、標的核酸の相補的鎖を開裂する能力が減少している。例えば、変異体Cas9ポリペプチドは、HNHドメイン(RuvC/HNH/RuvCドメインモチーフ、図1の「ドメイン2」)の機能を減少させる変異(アミノ酸置換)を有し得る。非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはH840A変異(例、配列番号1の位置840に対応するアミノ酸位置でヒスチジンからアラニンへ)(図1)を有し得、そしてそれゆえ標的核酸の非相補的鎖を開裂し得るが、標的核酸(従って、変異体Cas9ポリペプチドが二本鎖標的核酸を開裂する場合、DSBの代わりにSSBを生じる)の相補的鎖を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸(例、一本鎖標的核酸)を開裂する能力が減少しているが、標的核酸(例、一本鎖または二本鎖標的核酸)を結合する能力を維持する。
【0219】
いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、二本鎖標的核酸の相補的鎖および非相補的鎖の両方を開裂する能力が減少している。非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはD10A変異およびH840A変異の両方(例、RuvCドメインおよびHNHドメインの両方における変異)を有し、その結果、ポリペプチドは、二本鎖標的核酸の相補的鎖および非相補的鎖の両方を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸(例、一本鎖標的核酸または二本鎖標的核酸)を開裂する能力が減少しているが、標的核酸(例、一本鎖標的核酸または二本鎖標的核酸)を結合する能力を維持する。
【0220】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドは、W476AおよびW1126A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0221】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはP475A、W476A、N477A、D1125A、W1126A、およびD1127A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0222】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはH840A、W476A、およびW1126A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0223】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはH840A、D10A、W476A、およびW1126A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0224】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはH840A、P475A、W476A、N477A、D1125A、W1126A、およびD1127A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0225】
別の非限定的例として、いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはD10A、H840A、P475A、W476A、N477A、D1125A、W1126A、およびD1127A変異を有し、その結果、ポリペプチドは標的核酸を開裂する能力が減少している。このようなCas9ポリペプチドは、標的核酸を開裂する能力が減少しているが、標的核酸を結合する能力を維持する。
【0226】
他の残基は、変異して上記の効果を達成し得る(すなわち、1つまたは他のヌクレアーゼ部分を不活性化し得る)。非限定的例として、残基D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、および/またはA987は、変更(すなわち、置換)され得る(Cas9アミノ酸残基の保存に関するさらなる情報について表1を参照)。また、アラニン置換以外の変異が適切である。
【0227】
いくつかの実施態様において、減少した触媒活性を有する変異体Cas9ポリペプチド活性(例、Cas9タンパク質がD10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、および/またはA987変異、例えば、D10A、G12A、G17A、E762A、H840A、N854A、N863A、H982A、H983A、A984Aおよび/またはD986Aを有する場合)、変異体Cas9ポリペプチドは、それがガイド核酸と相互作用する能力を維持する限り、依然として、部位-特異的様式で標的核酸に結合し得る(それがガイド核酸によって標的核酸配列に依然として誘導されるので)。
【0228】
【表1】
【0229】
上記に加えて、変異体Cas9タンパク質は、配列同一性について、Cas9ポリペプチドについて上記したのと同じパラメーターを有し得る。従って、いくつかの実施態様において、適切な変異体Cas9ポリペプチドは、4つのモチーフを有するアミノ酸配列を含み、モチーフ1-4のそれぞれは、図1に示すCas9アミノ酸配列(配列番号1)の60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上または100%のアミノ酸配列同一性を有し、またはあるいはモチーフ1-4(配列番号1のモチーフ1-4は、表1に示されるようにそれぞれ配列番号3-6である)に対して;またはあるいは図1に示すCas9アミノ酸配列のアミノ酸7-166または731-1003(配列番号1.に対して、国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617において具体的に参照されるものを含む、上記で定義した任意のCas9タンパク質が、本開示の組成物においてCas9ポリペプチドとして、またはキメラCas9ポリペプチドの一部として使用され得る。
【0230】
いくつかの実施態様において、適切な変異体Cas9ポリペプチドは、図1に示すCas9アミノ酸配列(配列番号1)の60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。国際特許出願番号PCT/US2016/052690およびPCT/US2017/062617において具体的に参照されるものを含む、上記で定義した任意のCas9タンパク質が、本開示の組成物において変異体Cas9ポリペプチドとして、またはキメラ変異体Cas9ポリペプチドの一部として使用され得る。
【0231】
キメラポリペプチド(融合ポリペプチド)
いくつかの実施態様において、変異体Cas9ポリペプチドはキメラCas9ポリペプチド(本明細書中、融合ポリペプチド、例えば、「Cas9融合ポリペプチド」ともいう)である。Cas9融合ポリペプチドは、標的核酸および/または標的核酸に関連するポリペプチドを結合および/または修飾(例、開裂、メチル化、脱メチル化など)し得る(例、例えばヒストンテールのメチル化、アセチル化など)。
【0232】
Cas9融合ポリペプチドは、野生型Cas9ポリペプチド(例、天然に存在するCas9ポリペプチド)からの配列の相違による変異体Cas9ポリペプチドである。Cas9融合ポリペプチドは、共有結合した異種ポリペプチド(「融合パートナー」ともいう)に融合したCas9ポリペプチド(例、野生型Cas9ポリペプチド、変異体Cas9ポリペプチド、減少したヌクレアーゼ活性を有する変異体Cas9ポリペプチド(上記のような)など)である。いくつかの実施態様において、Cas9融合ポリペプチドは、共有結合した異種ポリペプチドに融合した、ヌクレアーゼ活性が減少した変異体Cas9ポリペプチド(例、dCas9)である。いくつかの実施態様において、異種ポリペプチドは、Cas9融合ポリペプチド(例、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)によっても示される活性(例、酵素活性)を示す(そしてそれゆえ提供する)。いくつかの実施態様において、例えば、Cas9ポリペプチドが標的核酸を修飾する活性(例、酵素活性)を有する融合パートナーを有する(すなわち、異種ポリペプチドを有する)変異体Cas9ポリペプチドである場合の結合方法、本方法はまた、標的核酸を修飾する方法であると考えられ得る。いくつかの実施態様において、標的核酸(例、一本鎖標的核酸)を結合する方法は、標的核酸の修飾を生じ得る。従って、いくつかの実施態様において、標的核酸(例、一本鎖標的核酸)を結合する方法は、標的核酸を修飾する方法であり得る。
【0233】
いくつかの実施態様において、異種配列は、細胞内局在性を提供し、すなわち、異種配列は、核への標的化のための細胞内局在性配列(例、核局在化シグナル(NLS)、融合タンパク質を核外に維持するための配列、例えば、核外輸送配列(NES)、融合タンパク質を細胞質に保持するための配列、ミトコンドリアへの標的化のためのミトコンドリア局在化シグナル、葉緑体への標的化のための葉緑体局在化シグナル、小胞体(ER)保留シグナルなど)である。いくつかの実施態様において、変異体Cas9は、NLSを含まず、その結果、タンパク質は核に標的化されない(これは、例えば、標的核酸が細胞質ゾルに存在するRNAである場合、有利であり得る)。いくつかの実施態様において、異種配列は、追跡および/または精製の容易さのためのタグ(すなわち、異種配列は検出可能標識である)(例、蛍光タンパク質、例、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;ヒスチジンタグ、例、6XHisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;など)を提供し得る。いくつかの実施態様において、異種配列は、減少したまたは増加した安定性を提供し得る(すなわち、異種配列は安定性制御ペプチド、例、デグロンであり、これはいくつかの実施態様において制御可能である(例、温度感受性または薬物制御可能デグロン配列、以下を参照)。いくつかの実施態様において、異種配列は標的核酸からの増加したまたは減少した転写を提供し得る(すなわち、異種配列は転写調節配列、例、転写因子/アクチベーターまたはそれらの断片、転写因子/アクチベーターを採用するタンパク質またはそれらの断片、転写リプレッサーまたはそれらの断片、転写リプレッサーを採用するタンパク質またはそれらの断片、小分子/薬物-応答性転写調節遺伝子などである)。いくつかの実施態様において、異種配列は結合ドメインを提供し得る(すなわち、異種配列はタンパク質結合配列、例、Cas9融合ポリペプチドの目的の別のタンパク質、例、DNAまたはヒストン修飾タンパク質に結合する能力を提供するため、転写因子または転写リプレッサー、採用タンパク質、RNA修飾酵素、RNA-結合タンパク質、翻訳開始因子、RNAスプライシング因子などである)。異種核酸配列は、(例、遺伝子工学によって)別の核酸配列に連結され、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。
【0234】
被検体Cas9融合ポリペプチド(Cas9融合タンパク質)は、上記の任意の組み合わせにおいて複数(1以上、2以上、3以上など)の融合パートナーを有し得る。例示的な例として、Cas9融合タンパク質は活性(例、転写調節、標的修飾、標的核酸に関連するタンパク質の修飾などのため)を提供する異種配列を有し得、そしてまた細胞内局在性配列を有し得る。いくつかの実施態様において、このようなCas9融合タンパク質はまた、追跡および/または精製の容易さのためのタグ(例、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;ヒスチジンタグ、例、6XHisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;など)を有し得る。別の例示的な例として、Cas9タンパク質は1個以上のNLS(例、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、1、2、3、4、または5つのNLS)を有し得る。いくつかの実施態様において、融合パートナー(または複数の融合パートナー)(例、NLS、タグ、活性を提供する融合パートナーなど)は、Cas9のC-末端にまたはその近くに位置する。いくつかの実施態様において、融合パートナー(または複数の融合パートナー)(例、NLS、タグ、活性を提供する融合パートナーなど)は、Cas9のN-末端に位置する。いくつかの実施態様において、Cas9はN-末端およびC-末端の両方に融合パートナー(または複数の融合パートナー)(例、NLS、タグ、活性を提供する融合パートナーなど)を有する。
【0235】
増加したまたは減少した安定性を提供する適切な融合パートナーは、デグロン配列を含むが、これに限定されない。デグロンはそれらが一部であるタンパク質の安定性を制御するアミノ酸配列であることは当業者に容易に理解される。例えば、デグロン配列を含むタンパク質の安定性は、一部はデグロン配列によって制御される。いくつかの実施態様において、適切なデグロンは構成的であり、その結果、デグロンは、実験的制御と無関係にタンパク質の安定性に対してその影響を発揮する(すなわち、デグロンは薬物誘導可能ではなく、温度誘導可能ではないなど)。いくつかの実施態様において、デグロンは制御可能な安定性を有する変異体Cas9ポリペプチドを提供し、その結果、変異体Cas9ポリペプチドは、所望の条件に依存して「オン」(すなわち、安定)または「オフ」(すなわち、不安定、分解する)に向けられ得る。例えば、デグロンが温度感受性デグロンである場合、変異体Cas9ポリペプチドは、閾値温度以下(例、42℃、41℃、40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃など)で機能的(すなわち、「オン」、安定)であり得るが、閾値温度を超えると非機能的(すなわち、「オフ」、分解する)であり得る。別の例として、デグロンが薬物誘導可能デグロンである場合、薬物の存在または不在は、タンパク質を「オフ」(すなわち、不安定)状態から「オン」(すなわち、安定)状態に、あるいはその逆に切り替え得る。例示的な薬物誘導可能デグロンは、FKBP12タンパク質由来である。デグロンの安定性は、デグロンに結合する小分子の存在または不在によって制御される。
【0236】
適切なデグロンの例は、Shield-1、DHFR、オーキシン、および/または温度によって制御されるデグロンを含むが、これらに限定されない。適切なデグロンの非限定的な例は当該分野で公知である(例、Dohmen et al., Science, 1994. 263(5151): p. 1273-1276: Heat-inducible degron: a method for constructing temperature-sensitive mutants; Schoeber et al., Am J Physiol Renal Physiol. 2009 Jan;296(1):F204-11 : Conditional fast expression and function of multimeric TRPV5 channels using Shield-1 ; Chu et al., Bioorg Med Chem Lett. 2008 Nov 15;18(22):5941-4: Recent progress with FKBP-derived destabilizing domains; Kanemaki, Pflugers Arch. 2012 Dec 28: Frontiers of protein expression control with conditional degrons; Yang et al., Mol Cell. 2012 Nov 30;48(4):487-8: Titivated for destruction: the methyl degron; Barbour et al., Biosci Rep. 2013 Jan 18;33(1).: Characterization of the bipartite degron that regulates ubiquitin-independent degradation of thymidylate synthase;およびGreussing et al., J Vis Exp. 2012 Nov 10;(69): Monitoring of ubiquitin-proteasome activity in living cells using a Degron (dgn)-destabilized flurescent protein (GFP)-based reporter protein;これらは全て、それらの全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0237】
例示的なデグロン配列はよく特徴付けられており、そして細胞および動物の両方において試験されている。従って、Cas9(例、野生型Cas9;変異体Cas9;減少したヌクレアーゼ活性を有する変異体Cas9、例、dCas9;など)のデグロン配列への融合は、「調節可能」でかつ「誘導可能」なCas9ポリペプチドを産生する。本明細書中に記載の任意の融合パートナーは、任意の所望の組み合わせで使用され得る。この点を説明する1つの非限定的例として、Cas9融合タンパク質(すなわち、キメラCas9ポリペプチド)は、検出のためのYFP配列、安定性のためのデグロン配列、および標的核酸の転写を増加させるための転写アクチベーター配列を含み得る。Cas9ポリペプチド(例、野生型Cas9、変異体Cas9、減少したヌクレアーゼ機能を有する変異体Cas9など)のための融合パートナーとしての使用のための適切なリポータータンパク質は、以下の例示的なタンパク質(またはそれらの機能的断片):his3、β-ガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質(例、GFP、RFP、YFP、サクランボ、トマトなど、およびそれらの種々の誘導体)、ルシフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびアルカリホスファターゼを含むが、これらに限定されない。さらに、Cas9融合タンパク質に使用され得る融合パートナーの数は制限がない。いくつかの実施態様において、Cas9融合タンパク質は1つ以上(例えば2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上)の異種配列を含む。
【0238】
適切な融合パートナーは、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、または脱ミリストイル化活性、これらはいずれも核酸を直接修飾すること(例、DNAまたはRNAのメチル化)または核酸-関連のポリペプチド(例、ヒストン、DNA結合タンパク質、およびRNA結合タンパク質など)を修飾することに指向され得る、を提供するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。さらなる適切な融合パートナーは、境界要素(例、CTCF)、末梢補充を提供するタンパク質およびそれらの断片(例、ラミンA、ラミンBなど)、およびタンパク質ドッキング要素(例、FKBP/FRB、Pil1/Aby1など)を含むが、これらに限定されない。
【0239】
被検体変異体Cas9ポリペプチドのための種々のさらなる適切な融合パートナー(またはそれらの断片)の例は、PCT特許出願:WO2010/075303、WO2012/068627、およびWO2013/155555、これらはそれらの全体が本明細書中に参考として援用される、に記載のものを含むが、これらに限定されない。
【0240】
適切な融合パートナーは、標的核酸または標的核酸に関連するポリペプチド(例、ヒストン、DNA-結合タンパク質、RNA-結合タンパク質、RNA編集タンパク質など)に直接作用することによって転写を間接的に増加させる活性を提供するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。適切な融合パートナーは、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、または脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0241】
さらなる適切な融合パートナーは、標的核酸の増加した転写および/または翻訳を直接提供するポリペプチド(例、転写アクチベーターまたはそれらの断片、転写アクチベーターを補充するタンパク質またはそれらの断片、小分子/薬物-応答性転写および/または翻訳調節遺伝子、翻訳-調節タンパク質など)を含むが、これらに限定されない。
【0242】
増加したまたは減少した転写を達成するための融合パートナーの非限定的な例は、転写アクチベーターおよび転写リプレッサードメイン(例、Kruppel関連ボックス(KRABまたはSKD);Mad mSIN3相互作用ドメイン(SID);ERFリプレッサードメイン(ERD)など)を含む。いくつかの実施態様において、Cas9融合タンパク質は、ガイド核酸によって標的核酸中の特定の位置(すなわち、配列)に標的化され、そしてプロモーター(これは転写アクチベーター機能を選択的に阻害する)に結合するRNAポリメラーゼをブロックする、および/または局所クロマチン状態(例、標的核酸を修飾するまたは標的核酸に関連するポリペプチドを修飾する融合配列が使用される場合)を修飾するなどの遺伝子座特異的調整を発揮する。いくつかの実施態様において、変化は一時的(例、転写抑制または活性化)である。いくつかの実施態様において、変化は遺伝性(例、エピジェネティック修飾が標的核酸または標的核酸に関連するタンパク質、例、ヌクレオソームヒストンになされる場合)である。
【0243】
ssRNA標的核酸を標的化する場合に使用するための融合パートナーの非限定的な例は:スプライシング因子(例、RSドメイン);タンパク質翻訳成分(例、翻訳開始、伸長、および/または終結因子;例、eIF4G);RNAメチラーゼ;RNA編集酵素(例、RNAデアミナーゼ、例、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、A~Iおよび/またはC~U編集酵素を含む);ヘリ態様(heliembodiment);RNA-結合タンパク質;などを含む(がこれらに限定されない)。融合パートナーはタンパク質全体を含み得、またはいくつかの実施態様においてタンパク質の断片(例、機能性ドメイン)を含み得ることが理解される。
【0244】
いくつかの実施態様において、異種配列はCas9ポリペプチドのC-末端に融合され得る。いくつかの実施態様において、異種配列はCas9ポリペプチドのN-末端に融合され得る。いくつかの実施態様において、異種配列はCas9ポリペプチドの内部部分(すなわち、N-またはC-末端以外の部分)に融合され得る。
【0245】
さらに、キメラCas9ポリペプチドの融合パートナーは、一次的または不可逆的、直接的または間接的に関わらずssRNAと相互作用し得る任意のドメイン(これは、この開示の開示のために、分子内および/または分子間2次構造、例、ヘアピン、ステムループなどの二本鎖RNA二本鎖を含む)であり得;エンドヌクレアーゼ(例えば、RNase I、CRR22 DYWドメイン、Dicer、ならびにSMG5およびSMG6などのタンパク質からのPIN(PilT N-末端)ドメイン);RNA開裂を刺激するのに関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、CPSF、CstF、CFImおよびCFIIm);エクソヌクレアーゼ(例えば、XRN-1またはエクソヌクレアーゼT);デアデニラーゼ(例えば、HNT3);ナンセンス媒介RNA崩壊に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、UPF1、UPF2、UPF3、UPF3b、RNP S1、Y14、DEK、REF2、およびSRm160);RNAの安定化に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、PABP);翻訳の抑制に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、Ago2およびAgo4);翻訳の刺激に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、Staufen);翻訳の調節に関与する(例えば、調節し得る)タンパク質およびタンパク質ドメインタンパク質(例、開始因子、伸長因子、終結因子などの翻訳因子、例、eIF4G);RNAのポリアデニル化に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、PAP1、GLD-2、およびStar-PAP);RNAのポリウリジニル化に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、CI D1および末端ウリジレートトランスフェラーゼ);RNA局在化に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、IMP1、ZBP1、She2p、She3p、およびBicaudal-Dから);RNAの核内保持に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、Rrp6);RNAの核外輸送に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、TAP、NXF1、THO、TREX、REF、およびAly);RNAスプライシングの抑制に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、PTB、Sam68、およびhnRNP A1);RNAスプライシングの刺激に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、セリン/アルギニン-豊富(SR)ドメイン);転写の効率を減少させるのに関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、FUS(TLS));ならびに転写の刺激に関与するタンパク質およびタンパク質ドメイン(例えば、CDK7およびHIV Tat)を含む群より選ばれるエフェクタードメインを含むが、これらに限定されない。あるいは、エフェクタードメインは、エンドヌクレアーゼ;RNA開裂を刺激し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;エクソヌクレアーゼ;デアデニラーゼ;ナンセンス媒介RNA崩壊活性を有するタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNAを安定化し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;翻訳を抑制し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;翻訳を刺激し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;翻訳を調節し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン(例、開始因子、伸長因子、終結因子などの翻訳因子、例、eIF4G);RNAをポリアデニル化し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNAをポリウリジニル化し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNA局在化活性を有するタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNAを核内保持し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNA核外輸送活性を有するタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNAスプライシングを抑制し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;RNAスプライシングを刺激し得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;転写の効率を減少させ得るタンパク質およびタンパク質ドメイン;ならびに転写を刺激し得るタンパク質およびタンパク質ドメインを含む群より選ばれ得る。別の適切な融合パートナーはPUF RNA-結合ドメインであり、これはWO2012068627により詳細に記載されている。
【0246】
Cas9ポリペプチドのための融合パートナーとして(全体またはそれらの断片として)使用され得るいくつかのRNAスプライシング因子は、別個の配列-特異的RNA結合モジュールおよびスプライシングエフェクタードメインを有するモジュール構造化を有する。例えば、セリン/アルギニン-豊富(SR)タンパク質ファミリーのメンバーは、エキソン内包を促進するプレ-mRNAおよびC-末端RSドメイン中のエキソンスプライシングエンハンサー(ESE)に結合するN-末端RNA認識モチーフ(RRM)を含む。別の例として、hnRNPタンパク質hnRNP Alは、そのRRMドメインを介してエキソンスプライシングサイレンサー(ESS)に結合し、そしてC-末端グリシン-豊富ドメインを介したエキソン内包を阻害する。いくつかのスプライシング因子は、2つの別の部位間の調節配列に結合することによって、スプライス部位(ss)の代替使用を調節し得る。例えば、ASF/SF2は、ESEを認識し得、そしてイントロン近位部位の使用を促進し得、一方、hnRNP Alは、ESSに結合し得、そしてスプライシングをイントロン遠位部位の使用へ転換させ得る。このような因子の1つの用途は、内因性遺伝子の別のスプライシング、特に遺伝子に関連する疾患を調整するESFを生成することである。例えば、Bcl-x pre-mRNAは、2つの別の5'スプライス部位を有する2つのスプライシングアイソフォームを産生し、反対の機能のタンパク質をコードする。長いスプライシングアイソフォームBcl-xLは、長寿命の分裂終了細胞において発現される強力なアポトーシス阻害剤であり、そして多くの癌細胞、アポトーシスシグナルに対する保護細胞において上方制御される。短いアイソフォームBcl-xSは、プロアポトーシスのアイソフォームであり、そして高い回転率を有する細胞(例、リンパ球を発生する)において高いレベルで発現される。2つのBcl-xスプライシングアイソフォームの比は、核エキソン領域またはエキソン伸長領域のいずれか(すなわち、2つの別の5'スプライス部位の間)に位置する複数のcω-要素によって調節される。さらなる例について、WO2010075303を参照。
【0247】
いくつかの実施態様において、Cas9ポリペプチド(例、野生型Cas9、変異体Cas9、減少したヌクレアーゼ活性を有する変異体Cas9など)は、ペプチドスペーサーを介して融合パートナーに連結され得る。
【0248】
いくつかの実施態様において、Cas9ポリペプチドは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、あるいは脂質二重層、ミセル、細胞膜、オルガネラ膜、または小胞膜を横断することを容易にする有機または無機化合物に言及し得る「タンパク質形質導入ドメイン」またはPTD(CPP - 細胞透過性ペプチドとしても知られる)を含む。小極性分子から大マクロ分子および/またはナノ粒子までの範囲にわたり得る別の分子に付着したPTDは、分子が膜を横断する、例えば細胞外空間から細胞内空間へ行く、または細胞質ゾルからオルガネラ内に行くのを容易にする。いくつかの実施態様において、別の分子に付着したPTDは、分子が核(例、いくつかの実施態様において、PTDは核局在化シグナル(NLS)を含む)に入るのを容易にする。いくつかの実施態様において、Cas9ポリペプチドは2つ以上のNLS、例えば、2つ以上のNLSを縦一列で含む。いくつかの実施態様において、PTDはCas9ポリペプチドのアミノ末端に共有結合される。いくつかの実施態様において、PTDはCas9ポリペプチドのカルボキシル末端に共有結合される。いくつかの実施態様において、PTDはCas9ポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシル末端に共有結合される。いくつかの実施態様において、PTDは核酸(例、ガイド核酸、ガイド核酸をコードするポリヌクレオチド、Cas9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなど)に共有結合される。例示的なPTDは、最少ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRR;配列番号7を含むHIV-1 TATの残基47-57に対応);細胞に直接入るのに十分な数のアルギニン(例、3、4、5、6、7、8、9、10、または10-50のアルギニン)を含むポリアルギニン配列;VP22ドメイン(Zender et al. (2002) Cancer Gene Ther. 9(6):489-96);Drosophila Antennapediaタンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al. (2003) Diabetes 52(7):1732-1737);切断ヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al. (2004) Pharm. Research 21:1248-1256);ポリリジン(Wender et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13003-13008);RRQRRTSKLMKR(配列番号8);Transportan GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号9);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号10);およびRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号11)を含むが、これらに限定されない。例示的なPTDは、YGRKKRRQRRR(配列番号12)、RKKRRQRRR(配列番号13);3アルギニン残基~50アルギニン残基のアルギニンホモポリマーを含むが、これらに限定されない;例示的なPTDドメインアミノ酸配列は、以下のいずれかを含むが、これらに限定されない:YGRKKRRQRRR(配列番号14);RKKRRQRR(配列番号15);YARAAARQARA(配列番号16);THRLPRRRRRR(配列番号17);およびGGRRARRRRRR(配列番号18)。いくつかの実施態様において、PTDは活性化可能なCPP(ACPP)(Aguilera et al. (2009) Integr Biol (Camb) June; 1(5-6): 371-381)である。ACPPsは、開裂可能なリンカーを介してマッチングポリアニオン(例、Glu9または「E9」)に接続されたポリカチオン性CPP(例、Arg9または「R9」)を含み、これは、正味の電荷をほぼゼロに減少させ、そしてそれによって細胞への接着および取り込みを阻害する。リンカーが開裂すると、ポリアニオンが放出され、ポリアルギニンおよびその固有の接着性を局所的に脱マスキングし、従ってACPPを「活性化」して膜を横断する。
【0249】
いくつかの実施態様において、組成物はCpf1 RNA-誘導エンドヌクレアーゼを含有し得、この例は図2、16、または17に提供される。Cpf1 RNA-誘導エンドヌクレアーゼについての別の名前はCas12aである。本開示のCpf1 CRISPR系は、i)シングルエンドヌクレアーゼタンパク質、およびii)crRNAを含み、ここでcrRNAの3’末端の部分は標的核酸に相補的なガイド配列を含む。この系において、Cpf1ヌクレアーゼはcrRNAによって標的DNAに直接補充される。いくつかの実施態様において、Cpf1のためのガイド配列は、検出可能なDNA開裂を達成するために少なくとも12nt、13nt、14nt、15nt、または16ntでなければならず、そして十分なDNA開裂を達成するために最少14nt、15nt、16nt、17nt、または18ntである。
【0250】
本開示のCpf1系は、様々な方法でCas9とは異なる。第1に、Cas9とは異なり、Cpf1は開裂のために別個のtracrRNAを必要としない。いくつかの実施態様において、Cpf1 crRNAは約42-44塩基長ほどの短さであり得-このうち23-25 ntはガイド配列であり、そして19 ntは構成的直接反復配列である。対照的に、組み合せたCas9 tracrRNAおよびcrRNA合成配列は約100塩基長であり得る。
【0251】
第2に、Cpf1はその標的の5’上流に位置する「TTN」PAMモチーフを好む。これはCas9系についての標的DNAの3’に位置する「NGG」PAMモチーフとは対照的である。いくつかの実施態様において、ガイド配列の直前のウラシル塩基は置換され得ない(Zetsche, B. et al. 2015. “Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163, 759-771、これは、全ての目的についてその全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0252】
第3に、Cpf1についての切断部位は約3-5塩基によって互い違いであり、これは「付着末端」を作り出す(Kim et al., 2016. “Genome-wide analysis reveals specificities of Cpf1 endonuclease s in human cells”、2016年6月06日にオンライン発行)。3-5 bp突出を有するこれらの付着末端は、NHEJ-媒介-ライゲーションを容易にし、そしてマッチング末端を有するDNA断片の遺伝子編集を改善すると考えられる。切断部位は、PAMである5’末端に対して遠位の標的DNAの3’末端である。切断位置は、通常、ハイブリダイズしていない鎖上の18番目の塩基およびcrRNAにハイブリダイズした相補的鎖上の対応する23番目の塩基に続く。
【0253】
第4に、Cpf1複合体において、「種子」領域はガイド配列の最初の5 nt内に位置する。Cpf1 crRNA種子領域は、変異に対して非常に高感度であり、そしてこの領域における一塩基置換でさえ開裂活性を劇的に減少させ得る(Zetsche B. et al. 2015 “Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163, 759-771を参照)。非常に、Cas9 CRISPR標的とは異なり、Cpf1系の開裂部位および種子領域は重複しない。Cpf1 crRNA標的化オリゴの設計に対するさらなる指導は入手可能である(Zetsche B. et al. 2015. “Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163, 759-771)。
【0254】
当業者は、本明細書中に開示したCpf1が任意の源から誘導されたかまたは単離された任意の変異体であり得、これらの多くが当該分野で公知であることを理解する。例えば、いくつかの実施態様において、本開示のCpf1ペプチドは、図2に示すFnCPF1(例、配列番号2)、AsCpf1(例、図16)、LbCpf1(例、図17)あるいは種々の他の微生物種からの任意の他の多くの公知のCpf1タンパク質およびそれらの合成変異体を含み得る。
【0255】
いくつかの実施態様において、組成物はCpf1ポリペプチドを含有する。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは酵素的に活性であり、例えば、Cpf1ポリペプチドは、ガイドRNAに結合される場合、標的核酸を開裂する。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、野生型Cpf1ポリペプチドに対して(例、図2、16、または17に示すアミノ酸配列を含むCpf1ポリペプチドに対して)減少した酵素活性を示し、そしてDNA結合活性を維持する。
【0256】
いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、図2、16、または17に示すアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、2、16、または17に示すアミノ酸配列の100アミノ酸~200アミノ酸(aa)、200 aa~400 aa、400 aa~600 aa、600 aa~800 aa、800 aa~1000 aa、1000 aa~1100 aa、1100 aa~1200 aa、または1200 aa~1300 aaの隣接する伸長と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0257】
いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、2、16、または17に示すアミノ酸配列のCpf1ポリペプチドのRuvCIドメインと少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、2、16、または17に示すアミノ酸配列のCpf1ポリペプチドのRuvCIIドメインと少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、図2、16、または17に示すアミノ酸配列のCpf1ポリペプチドのRuvCIIIドメインと少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0258】
いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、野生型Cpf1ポリペプチドに対して(例、図2、16、または17に示すアミノ酸配列を含むCpf1ポリペプチドに対して)減少した酵素活性を示し、そしてDNA結合活性を維持する。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、図2、16、または17に示すアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;そして図2、16、または17に示すアミノ酸配列のアミノ酸917に対応するアミノ酸残基でアミノ酸置換(例、D→A置換)を含む。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、図2、16、または17に示すアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;そして図2、16、または17に示すアミノ酸配列のアミノ酸1006に対応するアミノ酸残基でアミノ酸置換(例、E→A置換)を含む。いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは、図2、16、または17に示すアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;そして図2、16、または17に示すアミノ酸配列のアミノ酸1255に対応するアミノ酸残基でアミノ酸置換(例、D→A置換)を含む。
【0259】
いくつかの実施態様において、Cpf1ポリペプチドは融合ポリペプチドであり、例えば、ここでCpf1融合ポリペプチドは:a)Cpf1ポリペプチド;およびb)異種融合パートナーを含む。いくつかの実施態様において、異種融合パートナーはCpf1ポリペプチドのN-末端に融合される。いくつかの実施態様において、異種融合パートナーはCpf1ポリペプチドのC-末端に融合される。いくつかの実施態様において、異種融合パートナーはCpf1ポリペプチドのN-末端およびC-末端の両方に融合される。いくつかの実施態様において、異種融合パートナーはCpf1ポリペプチド内に内部に挿入される。
【0260】
適切な異種融合パートナーは、NLS、エピトープタグ、蛍光ポリペプチドなどを含む。
【0261】
結合したガイドRNAおよびドナー核酸
1つの局面において、本発明は、RNA-誘導エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCpf1ポリペプチド)、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドを含むCRISPR系を含む複合体を提供し、ここでガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは結合されている。本明細書中で例示されるように、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは、共有結合され得るかまたは非共有結合され得るかのいずれかである。1つの実施態様において、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは化学的に結合される。別の実施態様において、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは酵素的に結合される。1つの実施態様において、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは互いにハイブリダイズする。別の実施態様において、ガイドRNAおよびドナーポリヌクレオチドは両方ともブリッジ配列にハイブリダイズする。任意の数のこのようなハイブリダイゼーションスキームが可能である。
【0262】
デアミナーゼ
いくつかの実施態様において、複合体または組成物はデアミナーゼ(例、アデニン塩基エディター)をさらに含む。本明細書中で使用される用語「デアミナーゼ」または「デアミナーゼドメイン」は、分子からのアミン基の除去、すなわち脱アミノ化を触媒する酵素をいう。いくつかの実施態様において、デアミナーゼはシチジンデアミナーゼであり、シチジンまたはデオキシシチジンのそれぞれウリジンまたはデオキシウリジンへの加水分解脱アミノ化を触媒する。いくつかの実施態様において、デアミナーゼはシトシンデアミナーゼであり、シトシンのウラシル(例、RNA中)またはチミン(例、DNA中)への加水分解脱アミノ化を触媒する。
【0263】
いくつかの実施態様において、デアミナーゼはアデノシンデアミナーゼであり、これはアデニンまたはアデノシンの加水分解脱アミノ化を触媒する。いくつかの実施態様において、デアミナーゼまたはデアミナーゼドメインはアデノシンデアミナーゼであり、アデノシンまたはデオキシアデノシンのそれぞれイノシンまたはデオキシイノシンへの加水分解脱アミノ化を触媒する。いくつかの実施態様において、アデノシンデアミナーゼは、デオキシリボ核酸(DNA)におけるアデニンまたはアデノシンの加水分解脱アミノ化を触媒する。本明細書中で提供されるアデノシンデアミナーゼ(例えば改変されたアデノシンデアミナーゼ、発生したアデノシンデアミナーゼ)は、バクテリアなどの任意の有機体からであり得る。いくつかの実施態様において、デアミナーゼまたはデアミナーゼドメインは、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、サル、ウシ、イヌ、ラット、またはマウスなどの有機体からの天然に存在するデアミナーゼの変異体である。
【0264】
いくつかの実施態様において、デアミナーゼまたはデアミナーゼドメインは天然に存在しない。例えば、いくつかの実施態様において、デアミナーゼまたはデアミナーゼドメインは、天然に存在するデアミナーゼと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一である。いくつかの実施態様において、アデノシンデアミナーゼは、E. coli、S. aureus、S. typhi、S. putrefaciens、H. influenzae、またはC. crescentusなどのバクテリアからである。いくつかの実施態様において、アデノシンデアミナーゼはTadAデアミナーゼである。いくつかの実施態様において、TadAデアミナーゼはE. coli TadAデアミナーゼ(ecTadA)である。いくつかの実施態様において、TadAデアミナーゼは切断E. coli TadAデアミナーゼである。例えば、切断ecTadAは、全長ecTadAに対して1つ以上のN-末端アミノ酸を欠損し得る。いくつかの実施態様において、切断ecTadAは、全長ecTadAに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、6、17、18、19、または20のN-末端アミノ酸残基を欠損し得る。いくつかの実施態様において、切断ecTadAは、全長ecTadAに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、6、17、18、19、または20のC-末端アミノ酸残基を欠損し得る。いくつかの実施態様において、ecTadAデアミナーゼはN-末端メチオニンを含まない。いくつかの実施態様において、デアミナーゼはAPOBEC1またはその変異体である。
【0265】
デアミナーゼは、本明細書中に記載の任意の他のCRISPR要素と接合して(すなわち、組成物として)使用され得るか、またはデアミナーゼは本明細書中に記載の任意の他のCRISPR要素(例、Cas9またはCpf1)に融合され得る(すなわち、複合体として)。ある実施態様において、デアミナーゼはCas9、Cpf1、またはそれらの変異体に融合される。
【0266】
他の成分
組成物は、典型的には核酸またはタンパク質送達処方において使用される任意の他の成分をさらに含有し得る。例えば、組成物は、脂質、リポタンパク質(例、コレステロールおよび誘導体)、リン脂質、ポリマーあるいはリポソームまたはミセル送達ビヒクルの他の成分をさらに含有し得る。組成物はまた、細胞あるいは哺乳動物またはヒトなどの宿主への投与に適切な溶媒または担体を含有し得る。
【0267】
いくつかの実施態様において、組成物は、ポリエチレンオキシド(PEG)を含む第2のポリマーを含有する。例えば、組成物は、PEG-pAsp(DET)、PEG-pAsp、PEG-pAsp(DET)の誘導体、PEG-pAspの誘導体、またはそれらの組み合わせを含有し得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まず、これらのPEG化ポリマーはナノ粒子のサイズならびにそれらの血清タンパク質および標的細胞との相互作用を制御し得ると考えられる。ポリエチレンオキシドポリマーは、任意の方法および任意の順序で他の成分と組み合わされ得る。
【0268】
いくつかの実施態様において、組成物は1つ以上の界面活性剤をさらに含有する。界面活性剤は非イオン性界面活性剤および/または両性界面活性剤であり得る。例示的な界面活性剤のリストは:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(通常Tweensと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、DOWFAX(登録商標)商品名で販売、例えば線状EO/POブロックコポリマー;オクトキシノール、これは繰り返しエトキシ(オキシ-1,2-エタンジイル)基の数が変化し得、オクトキシノール-9(Triton X-100、またはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)は特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-6301NP-40);ホスファチジルコリン(レシチン)などのリン脂質;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)などの、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されるポリオキシエチレン脂肪酸エーテル(Brij界面活性剤として知られる);ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ならびにソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル(一般にSpanとして知られる)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、界面活性剤は抗凝固剤(例、ヘパリンなど)である。いくつかの実施態様において、組成物は1つ以上の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤をさらに含有する。
【0269】
いくつかの場合において、成分(例、核酸成分(例、ガイド核酸など);タンパク質成分(例、Cas9またはCpf1ポリペプチド、変異体Cas9またはCpf1ポリペプチド);など)は標識部分を含む。本明細書中で使用される用語「標識」、「検出可能な標識」、または「標識部分」は、シグナル検出を提供し、そしてアッセイの特定の性質に依存して広範に変化し得る任意の部分をいう。目的の標識部分は、直接的に検出可能な標識(直接標識)(例、蛍光標識)および間接的に検出可能な標識(間接標識)(例、結合対メンバー)の両方を含む。蛍光標識は、任意の蛍光標識(例、蛍光染料(例、フルオレセイン、テキサスレッド(Texas red)、ローダミン、ALEXAFLUOR(登録商標)標識など)、蛍光タンパク質(例、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強GFP(EGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、サクランボ、トマト、タンジェリン、およびそれらの任意の蛍光誘導体)など)であり得る。本方法における使用のために適切な検出可能(直接的または間接的)標識部分は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的、または他の手段によって検出可能である任意の部分を含む。例えば、適切な間接的標識は、ビオチン(結合対メンバー)を含み、これはストレプトアビジン(これは、それ自体直接的または間接的に標識され得る)によって結合され得る。標識はまた:放射標識(直接標識)(例、3H、125I、35S、14C、または32P);酵素(間接標識)(例、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼなど);蛍光タンパク質(直接標識)(例、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、およびそれらの任意の便利な誘導体);金属標識(直接標識);比色分析標識;結合対メンバー;などを含み得る。「結合対のパートナー」または「結合対メンバー」は、第1および第2の部分のうちの1つを意味し、ここで第1および第2の部分は互いに対して特異的結合親和性を有する。適切な結合対は:抗原/抗体(例えば、ジゴキシゲニン/抗-ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル(DNP)/抗-DNP、ダンシル-X-抗-ダンシル、フルオレセイン/抗-フルオレセイン、ルシファーイエロー/抗-ルシファーイエロー、およびローダミン抗-ローダミン)、ビオチン/アビジン(またはビオチン/ストレプトアビジン)およびカルモジュリン結合タンパク質(CBP)/カルモジュリンを含むが、これらに限定されない。任意の結合対メンバーは、間接的に検出可能な標識部分としての使用に適切であり得る。
【0270】
任意の所定の成分、または成分の組み合わせは、標識され得ないか、または標識部分で検出可能に標識され得る。いくつかの実施態様において、2つ以上の成分が標識される場合、それらは、互いに区別可能である標識部分で標識され得る。
【0271】
カプセル化およびナノ粒子
組成物のいくつかの実施態様において、ポリマーは核酸および/またはポリペプチドと組み合わされ、そして部分的にまたは完全に核酸および/またはポリペプチドをカプセル化する。組成物は、いくつかの処方物において、ポリマーならびに核酸および/またはポリペプチドを含むナノ粒子を提供し得る。
【0272】
いくつかの実施態様において、組成物は、本明細書中に記載のポリマーおよび核酸またはポリペプチドに加えて、核ナノ粒子を含有し得る。金属(例、金)ナノ粒子またはポリマーナノ粒子を含む、任意の適切なナノ粒子が使用され得る。
【0273】
本明細書中に記載のポリマーおよび核酸(例、ガイドRNA、ドナーポリヌクレオチド、または両方)またはポリペプチドは、ナノ粒子表面に直接的または間接的に接合され得る。例えば、本明細書中に記載のポリマーおよび核酸(例、ガイドRNA、ドナーポリヌクレオチド、または両方)またはポリペプチドは、ナノ粒子の表面に直接的に、または介在リンカーを介して間接的に接合され得る。
【0274】
任意のタイプの分子がリンカーとして使用され得る。例えば、リンカーは、少なくとも2個の炭素原子(例、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の炭素原子)を含む脂肪族鎖であり得、そしてケトン、エーテル、エステル、アミド、アルコール、アミン、尿素、チオ尿素、スルホキシド、スルホン、スルホンアミド、およびジスルフィド官能性を含む1個以上の官能基で置換され得る。ナノ粒子が金を含む実施態様において、リンカーは任意のチオール-含有分子であり得る。チオール基の金との反応は、共有スルフィド(-S-)結合を生じる。リンカーの設計および合成は、当該分野で周知である。
【0275】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子に接合した核酸は、本明細書中に記載の1つ以上の要素(例、Cas9ポリペプチド、およびガイドRNA、ドナーポリヌクレオチド、ならびにCpf1ポリペプチド)をナノ粒子-核酸接合体に非共有結合するよう働くリンカー核酸である。例えば、リンカー核酸は、ガイドRNAまたはドナーポリヌクレオチドにハイブリダイズする配列を有し得る。
【0276】
ナノ粒子(例、コロイド状金属(例、金)ナノ粒子;生体適合性ポリマーを含むナノ粒子)に接合した核酸は、任意の適切な長さを有し得る。核酸がガイドRNAまたはドナーポリヌクレオチドである場合、長さは、本明細書中で議論されそして当該分野で公知のように、このような分子に適切である。核酸がリンカー核酸である場合、それはリンカーについて任意の適切な長さ、例えば10ヌクレオチド(nt)~1000 nt、例、約1 nt~約25 nt、約25 nt~約50 nt、約50 nt~約100 nt、約100 nt~約250 nt、約250 nt~約500 nt、または約500 nt~約1000 ntの長さを有し得る。いくつかの場合において、ナノ粒子(例、コロイド状金属(例、金)ナノ粒子;生体適合性ポリマーを含むナノ粒子)ナノ粒子に接合した核酸は、1000 ntよりも大きい長さを有し得る。
【0277】
ナノ粒子に結合した(例、共有結合した;非共有結合した)核酸が、本開示の複合体に存在するガイドRNAまたはドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む場合、それは、ハイブリダイゼーションを容易にするのに十分なガイドRNAまたはドナーポリヌクレオチド配列の相補体の領域と配列同一性を有する領域を有する。いくつかの実施態様において、本開示の複合体におけるナノ粒子と結合した核酸は、複合体に存在するガイドRNAまたはドナーポリヌクレオチドの10~50ヌクレオチド(例、10ヌクレオチド(nt) ~15 nt、15 nt~20 nt、20 nt~25 nt、25 nt~30 nt、30 nt~40 nt、または40 nt~50 nt)の相補体と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0278】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子に結合した(例、共有結合した;非共有結合した)核酸は、ドナーポリヌクレオチドであるか、あるいはドナーポリヌクレオチドと同じかまたは実質的に同じヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施態様において、ナノ粒子に結合した(例、共有結合した;非共有結合した)核酸は、ドナーDNAテンプレートに相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0279】
使用方法
本明細書中で提供されるポリマーは、任意の目的のために使用され得るが、種々の目的のために生体分子(例、核酸およびポリペプチド)と組み合わせるのに、およびいくつかの実施態様においてカプセル化するのに特に有用であると考えられる。1つの局面において、ポリペプチドまたは核酸などの生体分子を、本明細書中に記載の本発明のポリマーを生体分子と組み合わせることによってカプセル化し、それによってポリマーが部分的にまたは完全に生体分子をカプセル化する方法が提供される。ポリマーによって部分的にまたは完全にカプセル化される生体分子は、時々ナノ粒子と呼ばれる。
【0280】
本明細書中、核酸および/またはポリペプチドを細胞に送達する方法もまた提供され、ここで細胞はインビトロまたはインビボであり得る。本方法は、本明細書中に記載のポリマーならびに核酸および/またはポリペプチドを含有する組成物を、細胞または細胞を含む被検体に投与することを含む。本方法は、任意のタイプの細胞または被検体に関して使用され得るが、哺乳類細胞(例、ヒト細胞)にとって特に有用である。いくつかの実施態様において、ポリマーは標的化剤を含み、その結果、核酸および/またはポリペプチドは、標的細胞または組織(例、末梢神経系、中枢神経系、被検体の眼、肝臓、筋肉、肺、骨(例、造血細胞)の細胞または組織、あるいは腫瘍細胞または組織)に主としてまたは独占的に送達される。
【0281】
CRISPR系の1つ以上の成分を含有する組成物とともに使用する場合、本方法は、標的核酸または遺伝子の編集を誘導するために使用され得る。いくつかの実施態様において、標的核酸を修飾する方法は相同組換修復(HDR)を含む。いくつかの実施態様において、HDRを行うための本開示の複合体の使用は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または25%超のHDRの効率を提供する。いくつかの実施態様において、標的核酸を修飾する方法は非相同末端結合(NHEJ)を含む。いくつかの実施態様において、HDRを行うための本開示の複合体の使用は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または25%超のNHEJの効率を提供する。
【0282】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、いかようにもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0283】
実施例1
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの合成のための指導を提供する。合成は、アクリレートを用いたMichael付加を含む。例示的な手順は以下の通りである。
【0284】
【化49】
【0285】
ガラスバイアル中、pAsp(DET)(5 mg, 0.22 μmol)をジメチルスルホキシド(「DMSO」; 700 μL)中に懸濁した。懸濁液に30 μLのトリメチルアミン(「TEA」)を加え、そして得られた懸濁液を、全てのポリマーが完全に溶解するまで攪拌した。反応混合物にアクリレート1(1.15 mg, 5.5 μmol)を加え、そして反応混合物を室温で40時間攪拌した。粗生成物をアセトニトリル中に沈殿させることによって精製し、そしてアセトニトリルで3回洗浄して4 mgのポリマー5、ここで(a+b)は55であり、そして(c+d)は25である、を得た。1H NMR (400 MHz, D2O): δ 4.8-4.6 (bs, 4H), 4.2 (t, 2H), 3.4-2.4 (m, 40H).
【0286】
スキーム1によって実証したように、アクリレート1を用いたMichael付加はアミン-ベースの結合(例えば、ポリマー5を参照)を生じる。従って、pAsp(DET)における元のアミン-官能性は損なわれていないままである。
【0287】
同様の手順を用いて式1のさらなるポリマー(例、ポリマー1-4および6-12)を調製し得る。求核置換を用いてポリマー28および29を提供し得る。
【0288】
さらに、本手順を異なる開始ポリマー、例えば実施例7に示すように調製したポリマーに適用して式1の他のポリマー(例、ポリマー30または32を用いて開始し、末端窒素で脱メチル化し、1級または2級アミンを提供する、本方法はポリマー13-24を提供し得る)を提供し得る。
【0289】
実施例2
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの合成のための指導を提供する。合成は、アクリレートを用いたMichael付加を含む。例示的な手順は以下の通りである。
【0290】
【化50】
【0291】
ガラスバイアル中、pASP(DET)(5 mg, 0.22 μmol)を無水メタノール(300 μL)中に懸濁し、そして30 μLのトリエチルアミン(「TEA」)を懸濁液に加えた。得られた溶液を室温で10分間攪拌し、ポリマーを完全に溶解した。溶液を300 μLのDCMで希釈した。反応混合物に30 μLのDCM中のアクリレート2(1.05 mg, 5.5 μmol)を加え、そして反応混合物を室温で48時間攪拌した。粗生成物を大過剰のジエチルエーテル中に沈殿させることによって精製し、4.3 mgのポリマー8、ここで(a+b)は55であり、そして(c+d)は25である、を得た。1H NMR (400 MHz, D2O): δ 4.8-4.6 (bs, 4H), 4.03 (t, 2H), 3.8-2.5 (m, 27H), 1.5 (t, 2H), 1.25 (s, 12H), 0.7 (t, 3H).
【0292】
スキーム2によって実証したように、アクリレート2を用いたMichael付加はアミン-ベースの結合(例えば、ポリマー8を参照)を生じる。従って、pAsp(DET)における元のアミン-官能性は損なわれていないままである。
【0293】
実施例3
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのCas9リボヌクレオタンパク質(「Cas9 RNP」)を細胞に送達する能力を実証する。Cas9 RNP送達のレベルは、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)誘導可能HEK293T(「GFP-HEK」)細胞を用いて評価した。
【0294】
10 pmoleのCas9 RNPを(i)ポリマー5、(ii)ポリマー8、およびコントロールとして(iii)pAsp(DET)と混合した。GFP-HEK細胞を非血清条件において得られた混合物で処理した。ポリマーを0.375 μg、0.75 μg、1.25 μg、2.5 μg、5 μg、および10 μgの投薬量で加え、最大効率および最小毒性を与える最適用量をスクリーニングした。結果を図3に示す。
【0295】
図3は、3つの混合物で処理したGFP-HEK細胞のGFP(-)パーセントによって測定したCas9 RNP送達のレベルを示す。全ての3つのポリマー(すなわち、ポリマー5、ポリマー8、およびpAsp(DET))は、0.375 μg~2.5 μgのポリマー投薬量で同様のレベルの遺伝子編集を示した。しかし、ポリマー8およびpAsp(DET)は、5 μgおよび10 μgのポリマー投薬量で有意なレベルの細胞毒性(50%未満の細胞生存)を示した。一方、ポリマー5は、有意な毒性なく、GFP %のレベルによって実証されるように5 μgのポリマー投薬量で最適送達を示した。
【0296】
実施例4
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのloxP配列を変化させ得るCreリコンビナーゼを細胞に送達する能力を実証する。
【0297】
loxPの間に終止配列を有するai9マウスからの初代筋芽細胞(図4中の灰色矢印を参照)を用いて、送達されたCreリコンビナーゼのレベルをRFP発現によって測定し得る。Ai9レポーター対立遺伝子は、loxP配列によってフランキングされるSTOPカセットを含み、それによってRFP転写を防止する。Creリコンビナーゼは、loxP配列によってフランキングされるSTOPカセットを除去し、そしてRFPの転写を可能とする。
【0298】
Creリコンビナーゼ(2 ug)を(i)ポリマー5およびコントロールとして(ii)pAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。ポリマーを1.25 μg、2.5 μg、5 μg、10 μg、および20 μgの投薬量に加え、最大効率および最小毒性を与える最適用量をスクリーニングした。Ai9筋芽細胞を得られたナノ粒子で処理し、そしてRFP+集団を、フローサイトメトリーを用いて処理4日後に定量した。結果を図5に示す。
【0299】
図5は、RFP+発現の量によって測定される初代筋芽細胞へのCreリコンビナーゼ送達のレベルを示す。図5に示すように、ポリマー5は、5 μg、10 μg、および20 μgのポリマー投薬量でコントロール(pAsp(DET))よりも高いレベルのRFP+発現を生じ、それによってポリマー5が、より高い投薬量でpAsp(DET)よりもCreリコンビナーゼ送達がより効率的であったことを実証した。
【0300】
実施例5
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのマウスにおいてインビボでCreリコンビナーゼを送達する能力を実証する。
【0301】
Ai9マウスに、(i)Creリコンビナーゼのみおよび(ii)Creリコンビナーゼをカプセル化するPEG化ポリマーナノ粒子(すなわち、ポリマー5およびPEG-ポリマーの混合物)を注入した。Creリコンビナーゼ(35 ug)をポリマー5およびPEG-PAsp(DET)の混合物(100 ug)と送達した。ポリマー5およびPEG-PAsp(DET)の共混合は、ポリマーナノ粒子のサイズを制御することを助ける。注入後2週間で腓腹筋{ひふくきん}をai9マウスから採集した。採集した筋肉の横断面を画像化して、DNA組み換えの結果として発生した赤色蛍光タンパク質を可視化した。結果を図6に示す。
【0302】
図6は、マウス筋肉におけるCreリコンビナーゼ送達がポリマーナノ粒子によって増進されたことを示す。Creリコンビナーゼのみの注入は、可視化された赤色蛍光タンパク質がより少ないことによって実証されるように、筋肉の限られた領域においてRFP発現を生じた。一方、ポリマーナノ粒子によってカプセル化されたCreリコンビナーゼの注入は、腓腹筋において大部分の領域でRFP発現を示す。
【0303】
タンパク質送達のチャレンジは、どのようにして広範にタンパク質が組織の多くの領域に送達され得そして影響を与え得るかである。ポリマー5およびPEG-ポリマーの混合物から誘導されたナノ粒子は、ai9マウスにおいてCreリコンビナーゼを効率的に送達し得、そしてその分布を助け得る。
【0304】
実施例6
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのCas9をGFP発現神経細胞に送達する能力を実証する。
【0305】
神経前駆細胞から分化したGFP発現神経細胞を用いて、ポリマー5がCas9 RNPを神経細胞に送達し得るかどうかを調査した。GFP発現神経細胞を、本明細書中に記載のポリマーを送達方法として用いて、sgRNAおよびCas9タンパク質で処理した。処理7日後に、ゲノムDNAを細胞から抽出し、そしてGFP遺伝子のPCR増幅を行った。TIDE分析(Desktop Genetics, Netherlands Cancer InstituteによるTIDEソフトウェア)を行い、Cas9による遺伝子編集によるインデル変異の頻度を測定した。結果を図7に示す。
【0306】
図7によって実証されるように、ポリマー5は、神経細胞においてCas9 RNPを送達し得、そして11%のインデル変異を誘起し得た。
【0307】
実施例7
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの合成のための指導を提供する。合成は、開環重合、続いてさらなる修飾を含み、式4のポリマーを製造する。例示的な手順は以下の通りである。
【0308】
【化51】
【0309】
ポリマー33の合成: (a)塩化トシル、TEA、DCM; (b) N,N,N-トリメチルエチレンジアミン、K2CO3、アセトニトリル、還流; (c) LiAlH4、THF; (d) 7、K2CO3、アセトニトリル、還流; (e) LiAlH4、THF; (f)ブチルアミン、DCM-DMF (9:1)、48時間; (g) 9、NMP、6時間。
【0310】
スキーム3によって実証したように、化合物10の開環重合は、伝搬を生じ、n = 63の化合物11を形成し、これは化合物9との処理でさらに修飾されてポリマー33を形成し得る。
【0311】
同様の手順を用いて式4の他のポリマー(例、ポリマー30-32)を調製し得る。さらに、ポリマーの側鎖上の末端3級アミンは、通常の技術によって脱メチル化されてポリマー39-42を提供し得る。
【0312】
実施例8
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのloxP配列を変化させ得るCreリコンビナーゼを細胞に送達する能力を実証する。
【0313】
HEK 293Tにおけるトラフィックライトリポーターのウイルス形質導入で発生したトラフィックライトリポーター(TLR)-HEK 293T細胞(図8を参照)を用いて、送達されたCreリコンビナーゼのレベルを赤色蛍光タンパク質(「RFP」)発現によって測定し得る。HEK 293Tにおけるトラフィックライトリポーターは、STOPカセット、およびGFP配列をフランキングする2つのloxP配列を含み、それによってRFP転写を防止し、そして次にCreの不在下でGFPを発現する。Creリコンビナーゼは、loxP配列を除去し、そしてRFPの転写を可能にする。
【0314】
Creリコンビナーゼ(1 ug)を実施例7において調製したポリマー33、または比較としてpAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。ポリマーを1.25 μgまたは2.5 μgの投薬量に加え、最大効率および最小毒性を与える最適用量をスクリーニングした。TLR-HEK293T細胞を得られたナノ粒子で処理し、そしてRFP+集団を、フローサイトメトリーを用いて処理3日後に定量した。結果を図9に示す。
【0315】
図9は、RFP+発現の量によって測定される(TLR)-HEK 293T細胞へのCreリコンビナーゼ送達のレベルを示す。図9に示すように、ポリマー33は、1.25 μgおよび2.5 μgのポリマー投薬量で、Creのみおよび比較pAsp(DET)を含むサンプルに対して増強された送達を提供した。
【0316】
実施例9
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのCas9リボヌクレオタンパク質(「Cas9 RNP」)を細胞に送達する能力を実証する。Cas9 RNP送達のレベルは、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)誘導可能HEK293T(「GFP-HEK」)細胞を用いて評価した。
【0317】
15 pmoleのCas9 RNP(sgRNA + Cas9タンパク質)を、実施例7において調製したポリマー33、または比較としてpAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。ポリマーを投薬量2.5 μgに加えた。GFP-HEK細胞を、非血清条件において得られた混合物で処理した。結果を図10に示す。
【0318】
図10は、2つの混合物で処理したGFP-HEK細胞のGFP %によって測定したCas9 RNP送達のレベルを示す。両方のポリマー(すなわち、ポリマー33およびpAsp(DET))は、コントロールに対して2.5 μgのポリマー投薬量でCas9 RNPを送達する能力を示した。しかし、ポリマー33は、2.5 μgのポリマー投薬量でpAsp(DET)よりも優れていた。
【0319】
実施例10
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの核酸を送達する能力を実証する。HEK 293T細胞へのeGFP mRNA送達のレベルは、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)を用いて評価した。
【0320】
eGFP mRNA(200 ng)を実施例7において調製したポリマー33(600 ng)と混合し、そして5分間インキュベートした。得られたポリマーナノ粒子をOptiMEM培地中、HEK 293T細胞に処理した。24時間後、細胞をプレートから剥がし、そしてフローサイトメトリーで分析した。リポフェクトアミンを、eGFP mRNA送達のためのポジティブコントロールとして用いた。結果を図11に示す。
【0321】
図11は、ポリマー33が、コントロールに対し、HEK 293T細胞へのeGFP mRNAの増加した送達を提供することを示す。
【0322】
実施例11
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの核酸を送達する能力に対する効果インキュベーション時間を実証する。HEK 293T細胞へのeGFP mRNA送達のレベルは、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)を用いて評価した。
【0323】
eGFP mRNA (200 ng)を実施例7において調製したポリマー33(1.2 μg)と混合し、そして2分間、5分間、10分間、および30分間の期間インキュベートした。得られたポリマーナノ粒子をOptiMEM培地中、HEK 293T細胞に処理した。24時間後、細胞をプレートから剥がし、そしてフローサイトメトリーで分析した。リポフェクトアミンを、eGFP mRNA送達のためのポジティブコントロールとして用いた。結果を図12に示す。
【0324】
図12は、ナノ粒子が2分以内のインキュベーションで形成し、そしてポリマー33が全てのインキュベーション時間でeGFP mRNAの効率的な送達を提供したことを示す。
【0325】
実施例12
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのmRNAを送達する能力を実証する。HEK 293T細胞への赤色蛍光タンパク質(「RFP」)mRNA送達のレベルは、RFP+発現を用いて評価した。
【0326】
RFP mRNA(200 ng)を実施例7において調製したポリマー33、または比較としてpAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。ポリマー33およびpAsp(DET)を、120 ngの1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーと組み合わせて(i)600 ngまたは(ii)480 ngの投薬量に加えた。1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーは、ナノ粒子のサイズを制御することにおいて役割を果たすのを助け得る。TLR-HEK293T細胞を得られたナノ粒子で処理し、そしてRFP+集団を、フローサイトメトリーを用いて処理24時間後に定量した。結果を図13に示す。
【0327】
図13は、ポリマー33が、比較ポリマー(PAsp(DET))に対して、1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーの不在下で、HEK 293T細胞へのmRNAsの送達を改善したことを示す。さらに、図13は、600 ngのポリマー33が、120 ngの1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーと組み合わせて、480 ngのポリマー33よりも、HEK 293T細胞へのmRNAsのより効率的な送達を提供することを示す。
【0328】
実施例13
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのmRNAsを送達する能力を実証する。HEK 293T細胞への赤色蛍光タンパク質(「RFP」)mRNA送達のレベルは、RFP+発現を用いて評価した。
【0329】
RFP mRNA(200 ng)を実施例7において調製したポリマー33、または比較としてpAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。ポリマー33およびpAsp(DET)を、200 ngの1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーと組み合わせて(i)1 μgまたは(ii)800 ngの投薬量に加えた。1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーは、ナノ粒子のサイズを制御することにおいて役割を果たすのを助け得る。TLR-HEK293T細胞を得られたナノ粒子で処理し、そしてRFP+集団を、フローサイトメトリーを用いて処理24時間後に定量した。結果を図14に示す。
【0330】
図14は、ポリマー33が、比較ポリマー(PAsp(DET))に対して、200 ngの1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーと組み合わせて(i)1 μgまたは(ii)800 ngの投薬量で、1.5 kDa PEG-PAsp(DET)ポリマーの存在下および不在下の両方で、HEK 293T細胞へのmRNAの同等な送達を提供することを示す。
【0331】
実施例14
この実施例は、異なる緩衝剤を用いた本明細書中に記載のポリマーのCas9リボヌクレオタンパク質(「Cas9 RNP」)を細胞に送達する能力を実証する。Cas9 RNP送達のレベルは、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)誘導可能HEK293T(「GFP-HEK」)細胞を用いて評価した。
【0332】
30 pmoleのCas9 RNP(sgRNA + Cas9タンパク質)を実施例7において調製した4 μgのポリマー33または比較として5 μgのpAsp(DET)と混合し、ナノ粒子を製造した。GFP-HEK細胞(200,000細胞)を3つの異なる緩衝条件、すなわち(i)(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(「HEPES」;20 mM)、(ii)Opti-MEMTM(Thermo Fisher Scientific; Waltham, MAから市販入手可能)、またはダルベッコ改変イーグル培地(「DMEM」;Thermo Fisher Scientific; Waltham, MAから市販入手可能)下で処理した。結果を図15に示す。
【0333】
図15は、3つの異なる緩衝条件下、2つの混合物(すなわち、4 μgのポリマー33または5 μgのpAsp(DET))で処理したGFP-HEK細胞のGFP(-)パーセントによって測定されるCas9 RNP送達のレベルを示す。両方のポリマー(すなわち、ポリマー33およびpAsp(DET))は、3つの異なる緩衝剤について同じ傾向、HEPESはOpti-MEMTMよりも優れ、そしてOpti-MEMTMはDMEMよりも優れた、を示した。さらに、ポリマー33は、全ての3つの緩衝剤においてpAsp(DET)よりも優れた。
【0334】
実施例15
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーの核酸を安定にカプセル化する能力を実証する。
【0335】
本開示のポリマー2、5、および33(1 ug/uL, 10 mM HEPES)をオリゴヌクレオチド(oligionucleotdies)(1 ug/uL, 10 mM HEPES)と5:1の質量比でピペット混合し、次いで室温で10分間放置してナノ粒子を形成した。それらを、使用しない時には4Cで保存した。ストックからのナノ粒子を~1:20比で10 mM HEPESで希釈し、そして調製後0、3、5および7日(n=1)で動的光散乱(DLS)によって特徴付けた。強度平均粒子サイズを図18に示す。
【0336】
150 nm~350 nmの間のナノ粒子サイズを観察した。ポリマーは、7日間にわたって最小限のサイズ変化を示し、これはナノ粒子が安定であったことを示す。pAsp[DET]はコントロールとして実行し(データは示さず)、そして7日目までに他の試験したナノ粒子よりもいくらか大きいサイズ変化を示した。
【0337】
実施例16
この実施例は、本開示によるポリマーの調製を実証する。
【0338】
100 mg(0.0074 mmol)のポリ(β-ベンジル l-アスパルテート)(PBLA)を3 mLのNMPに溶解した。この反応混合物に1.5 gmの1,4,7,10-テトラメチル-トリエチレンテトラアミンを加え、そして反応物をRTで16h攪拌した。粗反応混合物をジエチルエーテル中に沈殿させ、そして粗生成物を遠心分離(5000gで15分)によって集めた。粗生成物を3 mLの1M HClに溶解し、そして水に対して透析して得られたpH = 6を達成した。得られたポリマー溶液を凍結乾燥してポリマー41を白色粉末として得た。
【0339】
実施例17
この実施例は、本明細書中に記載のポリマーのmRNAを細胞に送達するための使用を実証する。
【0340】
緑色または赤色蛍光タンパク質をコードするmRNAを試験ポリマーと混合し、そして表2に示したいくつかの異なる細胞型の1つと組み合わせた。トランスフェクションを蛍光の関数として測定した。結果を表2に示し、これは、ほぼ全てのポリマーが少なくとも1つの細胞型において同じレベルのトランスフェクションを生じたことを示す。
【0341】
【表2】
【0342】
本発明の好ましい実施態様は、本発明を実施するために発明者に知られたベストモードを含めて本明細書に説明される。これらの好ましい実施態様の変形は以上の説明を読んだ当業者には自明になるかもしれない。発明者は当業者がかかる変形を適宜用いることを予想し、発明者は本明細書に特に説明した以外にも本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は適用可能な法律によって許されるとおり、本明細書に添付する特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変及び均等物を含む。さらに、本明細書で特段示されるか、文脈によって明らかに矛盾しないかぎり、全ての可能な変形における上記の要素のいずれかの組み合わせは本発明に包含される。
【0343】
値の範囲が提供されている場合、文脈がそうでないと明確に指示しない限り各介在値、下限の第10の単位、その範囲の上限と下限との間およびその述べた範囲における任意の他の述べたまたは介在する値は、本発明内に含まれることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれ得、そしてまた本発明内に含まれ、述べた範囲における任意の特に排除された限定に供される。述べた範囲が1つまたは両方の限定を含む場合、これらの含まれる限定のいずれかまたは両方を排除する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0344】
そうでないと定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたのと同様または等しい任意の方法および物質もまた、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および物質は今記載される。本明細書中で述べた全ての刊行物は、刊行物が引用されるのと関連して方法および/または物質を開示および記載するために、本明細書中に参考として援用される。
【0345】
本明細書中および添付の特許請求の範囲中で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないと明確に指示しない限り複数の指示を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「複合体(a complex)」に対する言及は、多数のこのような複合体を含み、そして「Cas9ポリペプチド(the Cas9 polypeptide)」に対する言及は、当業者に公知の1つ以上のCas9ポリペプチドおよびそれらの等価物などへの言及を含む。特許請求の範囲は任意の必要に応じた要素を排除するよう起草され得ることがさらに留意される。従って、この陳述は、クレーム要素の記載に関連して「単独(solely)」、「のみ(only)」などのこのような排他的な専門用語の使用のため、または「否定的な(negative)」限定の使用のための先行詞として役立つことが意図される。
【0346】
明確性のために別個の実施態様の文脈において記載される本発明のある特徴もまた、単一の実施態様において組み合わせて提供され得ることが理解される。反対に、簡潔さのために単一の実施態様の文脈において記載される本発明の種々の特徴もまた、別個にまたは任意の適切なサブの組み合わせで提供され得る。本発明に関する実施態様の全ての組み合わせは、各および全ての組み合わせが個々にかつ明確に開示されていたかのごとく、本発明によって特別に含まれ、そして本明細書中に開示される。さらに、種々の実施態様およびそれらの要素の全てのサブの組み合わせもまた、各および全てのサブの組み合わせが本明細書中に個々にかつ明確に開示されていたかのごとく、本発明によって特別に含まれ、そして本明細書中に開示される。
【0347】
本明細書中で議論した刊行物は、本願の出願日前のそれらの開示のためだけに提供される。本発明が前の発明によりこのような刊行物に先行する権利を与えられないという許可と解釈される記載は本明細書にはない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日とは異なり得、これは独立して確認される必要があり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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