(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ヒューズユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 85/175 20060101AFI20241008BHJP
H01H 85/20 20060101ALI20241008BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01H85/175
H01H85/20 B
H01R4/38 C
(21)【出願番号】P 2021002967
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 政和
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 光彦
(72)【発明者】
【氏名】南 由香理
(72)【発明者】
【氏名】北川 遼
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245001(JP,A)
【文献】特開2015-022978(JP,A)
【文献】実開昭51-134162(JP,U)
【文献】特開2010-043720(JP,A)
【文献】特開2010-192329(JP,A)
【文献】特開2013-150518(JP,A)
【文献】特開平06-333651(JP,A)
【文献】特開2010-225379(JP,A)
【文献】特開2018-007430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
H01R 4/24 - 4/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を伝達可能なバスバと、前記バスバを格納する樹脂筐体と、外部端子を締結するための柱状端子と、を備えるヒューズユニットであって、
前記バスバは、
電力を入力可能な入力部と、前記入力部に入力された電力を出力可能な出力部と、前記入力部と前記出力部との間に設けられるヒューズ部と、を有するとともに、前記入力部及び前記出力部を外部に露出させた状態で前記樹脂筐体に格納され、
前記バスバと前記柱状端子とは、
互いに独立した部材であり、前記柱状端子が前記出力部を貫通した状態で前記バスバに固定される、ように構成され
、
前記柱状端子は、
前記出力部から出力された電力を入力可能な接点部と、前記接点部から延びるとともに前記外部端子を締結するためのボルト部と、前記ボルト部が前記出力部を貫通し且つ前記接点部が前記出力部に接触した状態にて前記出力部に係合する係合部と、を有し、
前記ボルト部を介して前記外部端子、前記出力部及び前記接点部を共締めすることにより、前記出力部と前記接点部とが導通接続される、ように構成され、
前記係合部は、
前記出力部の厚さ方向の一方側から前記ボルト部を前記出力部に貫通させる場合、及び、前記厚さ方向の他方側から前記ボルト部を前記出力部に貫通させる場合、の双方において、前記出力部に係合可能であるように構成され、
前記係合部は、樹脂から構成されている、
ヒューズユニット。
【請求項2】
請求項1
に記載のヒューズユニットであって、
前記バスバから延び出した延出バスバから構成されて前記入力部に入力された電力を出力可能な第2出力部と、前記第2出力部を外部に露出させた状態で前記延出バスバを格納する第2樹脂筐体と、を更に備え、
前記樹脂筐体と前記第2樹脂筐体とは、
ヒンジ状に湾曲可能であるように連結されている、
ヒューズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用バッテリ等に用いられるヒューズユニットが提案されている。例えば、従来のヒューズユニットの一つは、バッテリ上面の端子(いわゆるバッテリポスト)が接続される入力部と、外部負荷に繋がる電線の端末にある外部端子が接続される出力部と、前記入力部と前記出力部とを繋ぐバスバに設けられるヒューズ部と、を一纏めに樹脂筐体にインサート成形した構造を有している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した種類のヒューズユニットは、一般に、ヒューズユニットが搭載される車両の仕様ごとに異なる構造を有する。例えば、外部負荷とヒューズユニットとの位置関係に応じて(例えば、車両が右ハンドル車であるか左ハンドル車かにより)、ヒューズユニットの定格電流値等の機能自体は同じであっても、ヒューズユニットの形状が相違する(例えば、左右反転した異なる形状を有する)場合がある。このような相違に起因し、多種多様な車両の仕様ごとに、多数の品番のヒューズユニットを準備することになる。ヒューズユニットの製造の合理化等の観点から、車両の仕様が異なっても、ヒューズユニットを出来る限り共通化することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒューズユニットが用いられる車両等の仕様が異なっても出来る限り共通化が可能なヒューズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るヒューズユニットは、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
電力を伝達可能なバスバと、前記バスバを格納する樹脂筐体と、外部端子を締結するための柱状端子と、を備えるヒューズユニットであって、
前記バスバは、
電力を入力可能な入力部と、前記入力部に入力された電力を出力可能な出力部と、前記入力部と前記出力部との間に設けられるヒューズ部と、を有するとともに、前記入力部及び前記出力部を外部に露出させた状態で前記樹脂筐体に格納され、
前記バスバと前記柱状端子とは、
互いに独立した部材であり、前記柱状端子が前記出力部を貫通した状態で前記バスバに固定される、ように構成され、
前記柱状端子は、
前記出力部から出力された電力を入力可能な接点部と、前記接点部から延びるとともに前記外部端子を締結するためのボルト部と、前記ボルト部が前記出力部を貫通し且つ前記接点部が前記出力部に接触した状態にて前記出力部に係合する係合部と、を有し、
前記ボルト部を介して前記外部端子、前記出力部及び前記接点部を共締めすることにより、前記出力部と前記接点部とが導通接続される、ように構成され、
前記係合部は、
前記出力部の厚さ方向の一方側から前記ボルト部を前記出力部に貫通させる場合、及び、前記厚さ方向の他方側から前記ボルト部を前記出力部に貫通させる場合、の双方において、前記出力部に係合可能であるように構成され、
前記係合部は、樹脂から構成されている、
ヒューズユニットであること。
[2]
上記[1]に記載のヒューズユニットであって、
前記バスバから延び出した延出バスバから構成されて前記入力部に入力された電力を出
力可能な第2出力部と、前記第2出力部を外部に露出させた状態で前記延出バスバを格納
する第2樹脂筐体と、を更に備え、
前記樹脂筐体と前記第2樹脂筐体とは、
ヒンジ状に湾曲可能であるように連結されている、
ヒューズユニットであること。
【0007】
上記[1]の構成のヒューズユニットによれば、バスバと柱状端子とが、互いに独立した別体の部材である。そのため、例えば、ヒューズユニットが搭載される車両の仕様ごとに入力部に対して出力部を配置するべき箇所が異なる場合(例えば、外部負荷とヒューズユニットとの位置関係が異なることで、ボルト部の配置を相違させる)、ヒューズユニットのおもて面または裏面を上方に向かわせるようにヒューズユニットの搭載姿勢を選択するとともに、柱状端子を上方に突出させるようにバスバに固定すれば、柱状端子を上方に突出させた姿勢を保ちながら出力部の位置を変更することができる。このように、バスバ、樹脂筐体および柱状端子を共用しながら、入力部に対する出力部(又はボルト部)の配置を変更することができる。したがって、本構成のヒューズユニットは、ヒューズユニットが用いられる車両等の仕様が異なっても出来る限り共通化が可能である。
【0008】
更に、別の効果として、バスバのヒューズ部が溶断した場合、バスバ及び樹脂筐体のみを交換することで、柱状端子を再利用することができる。
【0009】
なお、バスバに柱状端子を固定する方法は、特に制限されず、例えば、バスバに設けた貫通孔に柱状端子を圧入する方法(いわゆる打ち込み)を用いてもよいし、バスバに設けた被係止部に柱状端子に設けた係止部を係合させる方法を用いてもよい。
【0010】
更に、上記[1]の構成のヒューズユニットによれば、バスバに柱状端子を係合して一体化することで、ボルト部に外部端子を取り付ける(即ち、共締めする)までの間、バスバと柱状端子とを仮固定することができる。これにより、ボルト部に外部端子を取り付ける作業の作業性が向上する。更に、出力部の厚さ方向の一方側および他方側の(換言すると、出力部のおもて側および裏側の)何れの向きからボルト部を貫通させる場合でも、バスバと柱状端子とを係合可能である。これにより、バスバと柱状端子との係合構造を共通化しながら、車両の仕様ごとにボルト部を異なる位置に配置できる。
【0011】
更に、上記[1]の構成のヒューズユニットによれば、柱状端子の係合部が樹脂製であるため、係合部が適度な柔軟性を有することで、係合部を出力部に固定する作業が容易になる。
【0012】
上記[2]の構成のヒューズユニットによれば、例えば、ヒューズユニットのおもて面または裏面を上方に向かわせるようにヒューズユニットの搭載姿勢を選択した上で、樹脂筐体に対して第2樹脂筐体を下方に向かわせるように連結部分を湾曲させれば、第2樹脂筐体を下方に向かわせた姿勢を保ちながら、ヒューズユニットに設けられた出力部(又はボルト部)の配置を変更させることができる。よって、本構成のヒューズユニットは、車両等の仕様に応じて第2樹脂筐体を備える場合であっても、ヒューズユニットを出来る限り共通化することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、ヒューズユニットが用いられる車両等の仕様が異なっても出来る限り共通化が可能なヒューズユニットを提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るヒューズユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すヒューズユニットを構成する、バスバが一体化されたハウジング、及び、柱状端子が、分離した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、バスバが一体化されたハウジングの上面図であり、
図3(b)は、柱状端子の側面図である。
【
図5】
図5は、通常の向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付ける場合、及び、上下逆向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付ける場合を説明するための斜視図である。
【
図6】
図6(a)ば、通常の向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付けたヒューズユニットの出力部に、電線の端末に接続された外部端子を締結固定した状態を示す斜視図であり、
図6(b)ば、上下逆向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付けたヒューズユニットの出力部に、電線の端末に接続された外部端子を締結固定した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るヒューズユニットについての
図5に対応する図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すヒューズユニットの斜視図であり、
図8(a)は、通常の向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付け、且つ、ハウジング及び第2ハウジングの裏面同士が近づく向きに延出バスバの境界部を湾曲させた状態を示し、
図8(b)は、上下逆向きのハウジングに柱状端子を上方に突出する向きで組み付け、且つ、ハウジング及び第2ハウジングのおもて面同士が近づく向きに延出バスバの境界部を湾曲させた状態を示す。
【
図9】
図9(a)は、
図7のB-B断面図であり、
図9(b)は、
図8(a)のC-C断面図であり、
図9(c)は、
図8(b)のD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るヒューズユニット1について説明する。
図1に示すヒューズユニット1は、車両に搭載されたバッテリ(図示省略)に取り付けられて使用される。ヒューズユニット1は、バッテリと、車両に搭載された電装品等の外部負荷(図示省略)から延びる電線(図示省略)とを電気的に接続すると共に、電線に定格電流を超える電流が流れたときにバッテリと電線との電気的接続を断つ機能を有する。ヒューズユニット1には、その上面を覆うカバー(図示省略)が取り付けられてもよい。
【0017】
以下、説明の便宜上、
図1~
図8に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。上下方向は、バッテリ及びヒューズユニット1が搭載された車両の上下方向と一致している。
【0018】
図1に示すヒューズユニット1は、略直方体状のバッテリの上面に沿って延びる略矩形平板状の形状を有している。ヒューズユニット1は、
図1~
図4に示すように、バスバ10と、ハウジング20と、柱状端子30と、ハウジング20に組み付けられるカバー40と、を含んで構成される。
【0019】
ハウジング20は、
図2等に示すように、おもて面20a及び裏面20bを有する略矩形平板状の形状を有している。ハウジング20は、平板状の金属部材であるバスバ10の大部分を覆うように樹脂材料によりバスバ10と一体に成形されたモールド成形体である。バスバ10と柱状端子30とは互いに独立した部材であり、柱状端子30がバスバ10の後述する出力部12に組み付けられることで、
図1に示すヒューズユニット1が構成される。
【0020】
バスバ10のうち、入力部11と、出力部12と、入力部11及び出力部12を電気的に接続するヒューズ部13とが、ハウジング20から露出している。入力部11は、バッテリ(より具体的には、バッテリの上面に設けられたバッテリポストに接続されるバッテリ端子)に接続されることになり、出力部12には、車両に搭載された電装品から延びる電線2(
図6参照)の端末に接続された外部端子3(
図6参照)が接続されることになる。
【0021】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、入力部11は、ハウジング20の右後角部近傍に位置して前後方向及び左右方向に延びる平板状の部分である。入力部11の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔11aが形成されている。入力部11は、ボルト挿通孔11aをバッテリ端子に設けられたスタッドボルト(図示省略)に挿通した状態にて、当該スタッドボルトを介してバッテリ端子に締結固定されることになる。
【0022】
出力部12は、ハウジング20の左前角部近傍に位置して前後方向及び左右方向に延びる平板状の部分である。出力部12の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔12aが形成されている。出力部12におけるボルト挿通孔12aの前後方向両側には、上下方向(板厚方向)に貫通する一対の係止孔12bが形成されている。一対の係止孔12bには、柱状端子30の後述する一対の係止片34が係止されることになる(
図4参照)。
【0023】
出力部12は、ボルト挿通孔12aに柱状端子30の後述するボルト部32を挿通して柱状端子30を組み付け、更に、電装品から延びる電線2の端末に接続された外部端子3の貫通孔(図示省略)をボルト部32に挿通した状態にて、ボルト部32を介して外部端子3と共締めされることになる。
【0024】
ヒューズ部13は、ハウジング20の左後角部近傍にて上下方向に貫通し且つ前後方向に延びるように設けられた窓部21の内部にて上下へ露出している(
図4参照)。ヒューズ部13は、出力部12(即ち、出力部12に接続される電線2)に定格電流を超える電流が流れたときに、ジュール熱によって溶断されるように設計されている。ヒューズ部13が溶断されると、入力部11と出力部12との間(即ち、バッテリと、出力部12に接続される電線との間)の電気的接続が断たれる。
【0025】
ヒューズ部13を露出させる窓部21には、窓部21の開口形状に対応する形状を有する平板状の樹脂製の透明の一対のカバー40(
図4参照)が、窓部21の上下開口を塞ぐように装着されている。これにより、ヒューズ部13が視認可能な状態で、窓部21の上下開口が一対のカバー40によって塞がれている。
【0026】
柱状端子30は、
図3及び
図4に示すように、接点部31と、ボルト部32と、係合部33とを含んで構成される。接点部31及びボルト部32は、金属部材である。係合部33は、樹脂材料により接点部31と一体に成形されたモールド成形体である。なお、係合部33を構成する樹脂材料と、ハウジング20を構成する樹脂材料とは、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、比較的高温となるヒューズ部13と一体のハウジング20は、耐熱性に優れる高価な樹脂材料で構成し、係合部33は、汎用の安価な樹脂材料で構成してもよい。
【0027】
接点部31は、本例では、前後方向及び左右方向に延びる矩形平板状の形状を有している。接点部31の側面は全周に亘って係合部33に覆われており、接点部31の上下面が係合部33から露出している。ボルト部32は、接点部31の上面から一体で上方に突出するように延びるスタッドボルトである。接点部31の側面を覆う係合部33の前後方向両端部には、ボルト部32の前後方向両側にて上方へ突出する一対の係止片34が設けられている。以上、ヒューズユニット1を構成する各部材について説明した。
【0028】
次いで、ハウジング20に一体化されたバスバ10の出力部12に対して柱状端子30を組み付ける際の手順について説明する。本例では、
図5に示すように、おもて面20aが上方を向いた向き(通常の向き)のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付けることも(
図5の左側図参照)、裏面20bが上方を向いた向き(上下逆向き)のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付けることも(
図5の右側図参照)、可能となっている。
【0029】
まず、「通常の向き」のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付ける場合について説明する。この場合、
図5の左側図に示すように、ボルト部32が上方を向いた柱状端子30を、「通常の向き」のハウジング20の下側に配置する。次いで、柱状端子30及びハウジング20を上下方向に相対的に近づけて、バスバ10の出力部12のボルト挿通孔12aを上側から柱状端子30のボルト部32に挿通させながら、出力部12の一対の係止孔12bの縁に、柱状端子30の一対の係止片34の爪部を係止させる(
図4参照)。係る係止により、「通常の向き」のハウジング20に一体化されたバスバ10の出力部12に対して、柱状端子30が仮固定される。
【0030】
次いで、バスバ10の出力部12に対して柱状端子30を締結固定する。このため、
図6(a)に示すように、電装品から延びる電線2の端末に接続された外部端子3の貫通孔(図示省略)を上側からボルト部32に挿通した状態で、ボルト部32に螺号されたナット4を用いて外部端子3と出力部12とを規定トルクで共締めする。
【0031】
これにより、ボルト部32が出力部12のボルト挿通孔12aを貫通し且つ接点部31が出力部12に接触した(導通接続した)状態(
図4参照)にて、外部端子3が出力部12に締結固定されると共に、柱状端子30が出力部12に対して締結固定される(
図6(a)参照)。これにより、「通常の向き」のハウジング20に対して柱状端子30が上方に突出する向きで組み付けられたヒューズユニット1が完成する。
【0032】
次いで、「上下逆向き」のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付ける場合について説明する。この場合、
図5の右側図に示すように、ボルト部32が上方を向いた柱状端子30を、「上下逆向き」のハウジング20の下側に配置する。次いで、柱状端子30及びハウジング20を上下方向に相対的に近づけて、バスバ10の出力部12のボルト挿通孔12aを上側から柱状端子30のボルト部32に挿通させながら、出力部12の一対の係止孔12bの縁に、柱状端子30の一対の係止片34の爪部を係止させる(
図4参照)。係る係止により、「上下逆向き」のハウジング20に一体化されたバスバ10の出力部12に対して、柱状端子30が仮固定される。
【0033】
次いで、バスバ10の出力部12に対して柱状端子30を締結固定する。このため、
図6(b)に示すように、電装品から延びる電線2の端末に接続された外部端子3の貫通孔(図示省略)を上側からボルト部32に挿通した状態で、ボルト部32に螺号されたナット4を用いて外部端子3と出力部12とを規定トルクで共締めする。
【0034】
これにより、ボルト部32が出力部12のボルト挿通孔12aを貫通し且つ接点部31が出力部12に接触した(導通接続した)状態(
図4参照)にて、外部端子3が出力部12に締結固定されると共に、柱状端子30が出力部12に対して締結固定される(
図6(b)参照)。これにより、「上下逆向き」のハウジング20に対して柱状端子30が上方に突出する向きで組み付けられたヒューズユニット1が完成する。
【0035】
図6(a)及び
図6(b)の比較から理解できるように、「通常の向き」のハウジング20に対して柱状端子30が上方に突出する向きで組み付けられたヒューズユニット1と、「上下逆向き」のハウジング20に対して柱状端子30が上方に突出する向きで組み付けられたヒューズユニット1とでは、入力部11に対する出力部12の相対位置が異なる。よって、車両の仕様ごとに入力部11に対して出力部12を配置するべき箇所が異なる場合(例えば、左ハンドルの車両と右ハンドルの車両とにヒューズユニット1を用いる場合)であっても、ハウジング20の向きを「通常の向き」及び「上下逆向き」の何れかに選択するとともに、柱状端子30を上方に突出する向きで組み付けることで、異なる仕様の車両に対して、ハウジング20に一体化されたバスバ10、及び、柱状端子30を共用できる。更に、車両の仕様ごとにボルト部32の長さを変更する必要がある場合であっても、柱状端子30のみを変更するだけで、ハウジング20に一体化されたバスバ10を共用できる。
【0036】
このように、「通常の向き」又は「上下逆向き」のハウジング20に対して柱状端子30が上方に突出する向きで組み付けられたヒューズユニット1は、バッテリの上面に設けられたバッテリポストに接続されたバッテリ端子に締結固定される。具体的には、略矩形平板状のヒューズユニット1が、バッテリの上面に向かい合うように配置された状態で、バスバ10の入力部11のボルト挿通孔11aに、バッテリ端子に設けられたスタッドボルトを挿通し、当該スタッドボルトを介して入力部11がバッテリ端子に締結固定される。
【0037】
これにより、ヒューズユニット1から延びる電線2(
図6参照)が、ヒューズ部13を介してバッテリと電気的に接続される。そして、電線2に定格電流を超える電流が流れたとき、ヒューズ部13が溶断されて、電線2とバッテリとの電気的接続が断たれる。
【0038】
なお、上記説明では、ハウジング20に一体化されたバスバ10の出力部12に対する柱状端子30の仮固定、及び、電装品から延びる電線2の端末に接続された外部端子3の出力部12への締結固定の後に、ヒューズユニット1のバッテリへの締結固定がなされている。これに対し、ハウジング20に一体化されたバスバ10の出力部12に対する柱状端子30の仮固定、及び、電装品から延びる電線2の端末に接続された外部端子3の出力部12への締結固定の前に、ヒューズユニット1のバッテリへの締結固定がなされてもよい。
【0039】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るヒューズユニット1によれば、バスバ10と柱状端子30とが、互いに独立した別体の部材である。そのため、例えば、ヒューズユニット1が搭載される車両の仕様ごとに入力部11に対して出力部12を配置するべき箇所が異なる場合(例えば、左ハンドルの車両と右ハンドルの車両とにヒューズユニットを用いる場合)であっても、ヒューズユニット1のおもて面または裏面を上方に向かわせるようにヒューズユニット1のおもて裏を選択するとともに、柱状端子30を上方に向かわせるようにバスバ10に固定することで、異なる仕様の車両に対してハウジング20に一体化されたバスバ10、及び、柱状端子30を共用できる。したがって、本実施形態に係るヒューズユニット1は、ヒューズユニット1が用いられる車両等の仕様が異なっても出来る限り共通化が可能である。
【0040】
更に、本実施形態に係るヒューズユニット1によれば、バスバ10に柱状端子30を係合して一体化することで、ボルト部32に外部端子3を取り付ける(即ち、共締めする)までの間、バスバ10と柱状端子30とを仮固定することができる。これにより、ボルト部32に外部端子3を取り付ける作業の作業性が向上する。更に、出力部12の厚さ方向の一方側および他方側の(換言すると、出力部12のおもて側および裏側の)何れの向きからボルト部32を貫通させる場合でもバスバ10と柱状端子30とを係合可能であることで、車両の仕様ごとにボルト部32を貫通させる向きが異なる場合であっても、両者の係合を容易に行うことができる。更に、別の効果として、バスバ10のヒューズ部13が溶断した場合、ハウジング20に一体化されたバスバ10のみを交換することで、柱状端子30を再利用することができる。
【0041】
更に、上記実施形態に係るヒューズユニット1によれば、柱状端子30の係合部33が樹脂製であるため、係合部33が適度な柔軟性を有することで、係合部33を出力部12に固定する作業が容易になる。
【0042】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
上記実施形態では、バスバ10の出力部12に設けられた一対の係止孔12bに、柱状端子30に設けられた一対の係止片34を係合させることで、バスバ10の出力部12に柱状端子30が仮固定されている。これに対し、バスバ10の出力部12に設けられた貫通孔に柱状端子30のボルト部32を圧入することで(いわゆる打ち込み)、バスバ10の出力部12に柱状端子30が仮固定されてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態では、バスバ10に設けられた単一の出力部12に柱状端子30が固定されるようになっている。これに対し、バスバ10に設けられた複数の出力部12の各々に柱状端子30が固定されるように構成されてもよい。
【0045】
更に、
図7に示すように、上記実施形態に対して、ハウジング20に一体化されているバスバ10から連続してハウジング20の前端縁部から前方へ延出する平板状の延出バスバ50を設け、延出バスバ50の大部分を覆うように延出バスバ50と一体に成形された第2ハウジング60を設けてもよい。
【0046】
図7に示す例では、第2ハウジング60が、おもて面60a及び裏面60bを有し且つ前端に開口部61を有する略矩形フード状の形状を有している。第2ハウジング60の内部空間に位置する延出バスバ50の一部である第2出力部52は、開口部61を介して外部に露出している。第2出力部52は、ヒューズ部13を介して入力部11と接続されている。第2ハウジング60に、電装品から延びる電線の端末に接続された外部端子を収容する相手側ハウジングを、開口部61を介して嵌合させることで、第2出力部52と当該外部端子とが接続可能となっている。
【0047】
ハウジング20及び第2ハウジング60は、延出バスバ50におけるバスバ10との境界部51(左右方向に帯状に延びる部分)によって連結されている(
図9(a)も参照)。境界部51は、ハウジング20及び第2ハウジング60の裏面20b,60b同士が近づく向き(
図8(a)及び
図9(b)参照)、及び、ハウジング20及び第2ハウジング60のおもて面20a,60a同士が近づく向き(
図8(b)及び
図9(c)参照)の何れの向きにも、ヒンジ状に湾曲可能となっている。
【0048】
図8(a)に示すように、ハウジング20及び第2ハウジング60の裏面20b,60b同士が近づく向きに境界部51を湾曲させることで、略左右方向からみて略L字状のヒューズユニット1を構成する場合、
図9(b)に示すように、ハウジング20の裏面20bに設けられた係止片22bの爪部を、第2ハウジング60の裏面60bに設けられた係止板62bに係合させることで、ヒューズユニット1を略L字状の形状に維持可能となっている。同様に、
図8(b)に示すように、ハウジング20及び第2ハウジング60のおもて面20a,60a同士が近づく向きに境界部51を湾曲させることで、略左右方向からみて略L字状のヒューズユニット1を構成する場合、
図9(c)に示すように、第2ハウジング60のおもて面60aに設けられた係止片62aの爪部を、ハウジング20のおもて面60aに設けられた係止板22aに係合させることで、ヒューズユニット1を略L字状の形状に維持可能となっている。
【0049】
更に、
図7に示す例では、バスバ10の一部である第3出力部14がハウジング20から露出している。第3出力部14は、略矩形平板状のハウジング20の右前角部近傍に位置して前後方向及び左右方向に延びる平板状の部分である。第3出力部14は、ヒューズ部13を介して入力部11と接続されている。第3出力部14の中央部には、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト挿通孔14aが形成されている。第3出力部14には、ボルト挿通孔14aに挿通されたスタッドボルト等を利用することで、例えば、車両に搭載されたオルタネータ等(図示省略)から延びる電線の端末に接続された外部端子が締結固定可能となっている。
【0050】
図7に示す例では、
図8(a)に示すように、「通常の向き」のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付けた上で、ハウジング20及び第2ハウジング60の裏面20b,60b同士が近づく向きに境界部51を湾曲させることで、略左右方向からみて略L字状のヒューズユニット1を構成することができる。同様に、
図8(b)に示すように、「上下逆向き」のハウジング20に対して柱状端子30を上方に突出する向きで組み付けた上で、ハウジング20及び第2ハウジング60のおもて面20a,60a同士が近づく向きに境界部51を湾曲させても、略左右方向からみて略L字状のヒューズユニット1を構成することができる。ここで、
図8(a)及び
図8(b)の比較から理解できるように、ハウジング20を「通常の向き」及び「上下逆向き」の何れの向きで、略直方体状のバッテリの上面に沿うように配置しても、第2ハウジング60を配置すべき所望の同じ箇所に(即ち、バッテリの所望の同じ一側面に沿うように)配置することができる。
【0051】
ここで、上述した本発明に係るヒューズユニット1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電力を伝達可能なバスバ(10)と、前記バスバ(10)を格納する樹脂筐体(20)と、外部端子(3)を締結するための柱状端子(30)と、を備えるヒューズユニット(1)であって、
前記バスバ(10)は、
電力を入力可能な入力部(11)と、前記入力部(11)に入力された電力を出力可能な出力部(12)と、前記入力部(11)と前記出力部(12)との間に設けられるヒューズ部(13)と、を有するとともに、前記入力部(11)及び前記出力部(12)を外部に露出させた状態で前記樹脂筐体(20)に格納され、
前記バスバ(10)と前記柱状端子(30)とは、
互いに独立した部材であり、前記柱状端子(30)が前記出力部(12)を貫通した状態で前記バスバ(10)に固定される、ように構成される、
ヒューズユニット(1)。
[2]
上記[1]に記載のヒューズユニット(1)において、
前記柱状端子(30)は、
前記出力部(12)から出力された電力を入力可能な接点部(31)と、前記接点部(31)から延びるとともに前記外部端子(3)を締結するためのボルト部(32)と、前記ボルト部(32)が前記出力部(12)を貫通し且つ前記接点部(31)が前記出力部(12)に接触した状態にて前記出力部(12)に係合する係合部(33)と、を有し、
前記ボルト部(32)を介して前記外部端子(3)、前記出力部(12)及び前記接点部(31)を共締めすることにより、前記出力部(12)と前記接点部(31)とが導通接続される、ように構成され、
前記係合部(33)は、
前記出力部(12)の厚さ方向の一方側から前記ボルト部(32)を前記出力部(12)に貫通させる場合、及び、前記厚さ方向の他方側から前記ボルト部(32)を前記出力部(12)に貫通させる場合、の双方において、前記出力部(12)に係合可能であるように構成される、
ヒューズユニット(1)。
[3]
上記[2]に記載のヒューズユニット(1)において、
前記係合部(33)は、樹脂から構成されている、
ヒューズユニット(1)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載のヒューズユニット(1)であって、
前記バスバ(10)から延び出した延出バスバ(50)から構成されて前記入力部(11)に入力された電力を出力可能な第2出力部(52)と、前記第2出力部(52)を外部に露出させた状態で前記延出バスバ(50)を格納する第2樹脂筐体(60)と、を更に備え、
前記樹脂筐体(20)と前記第2樹脂筐体(60)とは、
ヒンジ状に湾曲可能であるように連結されている、
ヒューズユニット(1)。
【符号の説明】
【0052】
1 ヒューズユニット
3 外部端子
10 バスバ
11 入力部
12 出力部
13 ヒューズ部
20 ハウジング(樹脂筐体)
30 柱状端子
31 接点部
32 ボルト部
33 係合部
50 延出バスバ
52 第2出力部
60 第2ハウジング(第2樹脂筐体)