(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品の電離放射線照射滅菌およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20241008BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241008BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20241008BHJP
A61K 41/17 20200101ALI20241008BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241008BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20241008BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K35/74 B
A61K9/10
A61K9/19
A61K41/17
A61K47/26
A61P35/00
C12N1/20 C
(21)【出願番号】P 2021003185
(22)【出願日】2021-01-13
(62)【分割の表示】P 2018505427の分割
【原出願日】2016-08-03
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2015-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511001448
【氏名又は名称】バキシオン セラピューティクス,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】ジャカローン,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ゲイリー エイチ.
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】山村 祥子
【審判官】吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-131920(JP,A)
【文献】特開2011-178798(JP,A)
【文献】特表2014-506893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガンマ線照射済の完全に滅菌された細菌由来ミニ細胞を含
む医薬組成物
であって、
前記医薬組成物が無菌であり、
前記細菌由来ミニ細胞が標的治療用ミニ細胞を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記
細菌由来ミニ細胞が、5kGy~40kGyの照射量
のガンマ線照射済である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記
細菌由来ミニ細胞が、25kGy
の照射量のガンマ線照射済である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記
ガンマ線照射済の完全に滅菌された細菌由来ミニ細胞が、USP38NF33に基づくUSP<71>基準に適合するレベルま
で滅菌
されたものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される賦形剤が、トレハロースである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される希釈剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容される希釈剤が、滅菌水である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
凍結懸濁液の形態である、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
凍結乾燥物の形態である、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記細菌由来ミニ細胞が、インベイシンまたはその機能等価物を提示する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記インベイシンが、仮性結核菌由来のインベイシンである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記細菌由来ミニ細胞が、パーフリンゴリジンO(PFO)をさらに含む、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記細菌由来ミニ細胞が、エシェリヒア属、サルモネラ属、リステリア属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ナイセリア属、シゲラ属、バチルス属またはヘモフィルス属の細菌に由来するものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
無菌である、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記細菌由来ミニ細胞が、免疫調節性ミニ細胞を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記細菌由来ミニ細胞が、免疫原性ミニ細胞を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願に係る請求項は、2015年8月4日に提出した米国仮出願第62/200,903号に基づく優先権を享受するものである。本関連出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に明確に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、診断、治療および予防のためのバイオ医薬品ならびにがん、遺伝性障害、感染性疾患およびその他の病気の検知、治療および予防のための試薬として使用される、真正細菌ミニ細胞の製造、精製、処方および完全滅菌のための組成物および方法について記述する。
【0003】
関連技術の説明
本発明の背景についての以下の記載は本発明への理解を助けるために提供され、本発明に対する先行技術を記載するまたは構成することを認めるものではない。本出願で言及または引用される記事、特許、特許出願およびその他すべての書類ならびに電子的に入手可能な情報の内容は、各出版物が具体的および独立して参照により本明細書に取り込まれると表示されるのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。出願人は、本出願にそのような記事、特許、特許出願およびその他書類から得られるあらゆる資料及び情報を物理的に統合する権利を保持する。
【0004】
細菌由来ミニ細胞、その他の生体適合微粒子およびナノ粒子、小分子薬物、高分子薬物輸送ビヒクルの使用は、選択的にがんを標的にするおよび治療するおよび/またはワクチンとして作用するよう設計される新規バイオ医薬品の開発において、興味深い成長地域である。細菌由来ミニ細胞は、ナノサイズで球形(約400nm)、組み換え型ミニ細胞を産生する細菌の菌株から生み出される粒子である。ミニ細胞は、細菌染色体を除く親細菌のすべての成分および分子構成を含む。その結果、ミニ細胞は生きておらず、複製できず、非感染性であり、in vivo輸送ビヒクルおよび感染のリスクのないワクチンとして高度に適したものとなっている。本明細書でより詳細に記述されるとおり、ミニ細胞は細菌の菌株に由来し、組み換え工学や組み換え発現技術に高度に適しており容易な分子生物学的手法であるため、組み換え工学に高度に適しており、他のナノ輸送技術と比較して容易に目的の薬物輸送およびワクチンビヒクルに変換される。
【0005】
ミニ細胞は被保持物中に残留することがよくあり、標準的な0.22ミクロンのフィルター膜を容易に通過できないため、組み換え型細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品のヒトへの使用に関する開発における主要な障害の一つは、従来の標準化されたフィルターに基づく方法を用いてこれらの製品を確実に滅菌できるかであった。ミニ細胞をバイオ医薬品として精製するために用いられる他のフィルターに基づく方法では、米国特許2004/0265994号に記載されているように、ICHガイドラインの見地から見て正当な方法を用いながら着実な滅菌状態についての確実性が得られない。加えて、この方法ではミニ細胞処理の下流工程において、抗生物質の存在下および高い塩濃度での長期インキュベーションを含む多数の追加工程が必要となり、そのそれぞれにおいて最終的な薬物製品では除去されているかについての追加特性試験が必要となる。
【0006】
したがって、細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品を滅菌する効果的で確実な方法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本明細書においては、複数の細菌由来ミニ細胞を含む組成物に電離放射線を照射することを含む医薬品用途を意図した完全に滅菌された細菌由来ミニ細胞の製造方法が開示される。電離放射線照射は、例えば、ガンマ線照射、E-ビーム(電子線、β線)照射、X線(光子)照射およびUV照射でありうる。最も好ましい電離放射線照射の種類はガンマ線照射である。ある実施形態において、電離放射線照射は約5kGy~約40kGyの照射量である。ある実施形態において、電離放射線照射は約25kGyの照射量である。ある実施形態において、ガンマ線の照射量は米国薬局方第38改訂版および国民医薬品集第33版(USP38NF33)に基づくUSP<71>基準に適合するレベルにまで前記組成物を滅菌するのに十分である。
【0008】
ある実施形態において、前記組成物は前記細菌由来ミニ細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。ある実施形態において、前記方法は前記細菌由来ミニ細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を製造することを含む。ある実施形態において、薬学的に許容される賦形剤はトレハロースである。ある実施形態において、前記組成物は前記細菌由来ミニ細胞および薬学的に許容される希釈剤を含む医薬組成物である。ある実施形態において、前記方法は前記細菌由来ミニ細胞および薬学的に許容される希釈剤を含む医薬組成物を製造することを含む。ある実施形態において、薬学的に許容される希釈剤は滅菌水である。
【0009】
ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は凍結懸濁液として完全滅菌量の電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、前記組成物は凍結懸濁液として完全滅菌量の電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は凍結乾燥物(frozen lyophile)として完全滅菌量の電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、前記組成物は凍結乾燥物として完全滅菌量の電離放射線照射を受ける。
【0010】
ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞はインベイシンまたはその機能等価物を発現および/または提示する。前記インベイシンは、例えば、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)由来のインベイシンでありうる。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞はパーフリンゴリジンO(PFO)を含む。
【0011】
本明細書においてはまた、複数の細菌由来ミニ細胞を含む医薬組成物が開示され、前記細菌由来ミニ細胞は電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、前記医薬組成物は無菌である。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞または前記医薬組成物は完全に滅菌されている。ある実施形態において、前記医薬組成物は電離放射線照射を受けている。
【0012】
ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は標的治療用ミニ細胞を含む。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は免疫調節性ミニ細胞を含む。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は免疫原性ミニ細胞を含む。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞はエシェリヒア属、サルモネラ属、リステリア属、シュードモナス属、アシネトバクター属、ナイセリア属、シゲラ属、バチルス属またはヘモフィルス属由来の細菌から得られる。
【0013】
ある実施形態において、前記医薬組成物は薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。前記薬学的に許容される賦形剤は、例えば、トレハロースでありうる。ある実施形態において、前記医薬組成物は薬学的に許容される希釈剤をさらに含む。前記薬学的に許容される希釈剤は、例えば、滅菌水でありうる。
【0014】
ある実施形態において、前記医薬組成物中の生存能力のある汚染微生物はUSP38NF33に基づくUSP<71>基準に適合するレベルである。
【0015】
ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞はインベイシンまたはその機能等価物を発現および/または提示する。例えば、前記インベイシンは仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)由来のインベイシンでありうる。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞はパーフリンゴリジンO(PFO)を含む。
【0016】
ある実施形態において、前記医薬組成物は凍結懸濁液の形態である。ある実施形態において、前記医薬組成物は凍結乾燥物の形態である。
【0017】
本明細書においてはまた、滅菌量の電離ガンマ線照射を受けた複数の細菌由来ミニ細胞を含む医薬組成物が開示される。ある実施形態において、前記バイオ医薬組成物は米国薬局方<71>の意味において無菌であり、前記細菌由来細胞は(i)ミニ細胞表面でインベイシンを発現および/または提示し(ii)生物活性ペイロード(payload)としてパーフリンゴリジンOを含みその活性は滅菌量のガンマ線照射に影響されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本明細書に記載の実施形態での使用に好適な二重特異性抗体および二重特異性抗体誘導体の、非限定的で典型的なタイプの模式図である。
【
図2】
図2A~Bは、増加させていった各ガンマ線照射量でのVAX014ミニ細胞が入ったバイアルを示す(凍結懸濁液または凍結乾燥物)。
【
図3】
図3は、目視のため容器から取り出した後の、増加させていった各ガンマ線照射量を受けた再構成凍結乾燥物VAX014ミニ細胞およびVAX014ミニ細胞の解凍凍結懸濁液を示す。
【
図4】
図4は、増加させていった各電離ガンマ線照射量を受けた後の、VAX014ミニ細胞凍結懸濁液および凍結乾燥物における溶血作用(すなわちパーフリンゴリジンO作用)を示す。
【
図5A】
図5Aは、増加させていった各電離ガンマ線照射量を受けた後の、VAX014ミニ細胞凍結懸濁液または凍結乾燥物のVAX014ミニ細胞を介した殺細胞活性(効力)のプロットを示す。
【
図5B】
図5Bは、増加させていった各電離ガンマ線照射量を受けた後の、VAX014ミニ細胞凍結懸濁液または凍結乾燥物のVAX014ミニ細胞を介した殺細胞活性(効力)のプロットを示す。
【
図6】
図6は、腫瘍に対して膀胱内投与したMB49同系同所性膀胱がんマウスモデルにおいて、予備滅菌された未照射VAX014と比較して、25kGyでの滅菌後にVAX014抗腫瘍活性に損失がないことを示すカプラン・マイヤー生存曲線である。
【
図7A】
図7Aは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図7B】
図7Bは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図7C】
図7Cは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図7D】
図7Dは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図7E】
図7Eは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図7F】
図7Fは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性、完全性または効力に損失がないことを示し、前記ミニ細胞はドキソルビシンを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図8A】
図8Aは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性または完全性に損失がないことを示し、前記ミニ細胞は組み換え発現プラスミドを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【
図8B】
図8Bは、25kGyでのガンマ線照射の後ミニ細胞の安定性または完全性に損失がないことを示し、前記ミニ細胞は組み換え発現プラスミドを含み、その表面にヒト上皮成長因子受容体(EGFR-1)に対する抗体を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明において、付属する図面への参照がなされるが、それらは本明細書の一部である。本詳細な説明に記載される模式的な実施形態、図面および請求項は限定的であることを意味しない。ここで表明されている内容の精神または要旨から逸脱しない範囲で、その他の実施形態が利用可能であり、その他変更がなされうる。本開示の側面は、本明細書全体に記載されているとおり、多様な構成において変更、修飾、結合および設計でき、それらすべては予定されており本開示の一部となることが容易に理解されるであろう。
【0020】
別に定めのない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本出願は実施形態および実施例への参照をともなって記載されるが、本発明の精神から逸脱しない範囲で様々な修正がなされうることが理解されよう。本明細書で引用されるすべての参考資料は、参照によりその全体が本明細書に明確に取り込まれる
【0021】
以下の実施例において、本出願の実施形態がさらに詳細に開示され、これらは決して本出願の範囲を限定することを意図していない。
【0022】
定義
本明細書で使用される用語「免疫調節性ミニ細胞」とは、病気を患う哺乳類レシピエントに有益なまたは治療に効果的であるという方法で免疫システムを活性化する、非活性化するまたは影響を与えることができるミニ細胞を指す。
【0023】
本明細書で使用される用語「免疫原性ミニ細胞」とは、特定の抗原、抗原、病原菌、日和見菌、寄生生物またはがん細胞に対する適応免疫反応を調節することができるミニ細胞を指す(すなわちワクチン)。
【0024】
本明細書で使用される用語「免疫療法」とは、免疫反応を生成する、強化する、妨げる、その他影響を与える免疫調節性化合物、好ましくは免疫調節性ミニ細胞の使用を指し、その結果が病気、特にがんの進行を除去または遅らせることについて有益な効果がある。
【0025】
本明細書で使用される用語「接着ミニ細胞」とは、前記ミニ細胞のエンドサイトーシスを調節することなく、非構造的に真核食細胞の表面に結合するまたは接着することができるミニ細胞を指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「粘液接着ミニ細胞」とは、粘膜表面に結合または接着することができるミニ細胞を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「標的ミニ細胞」とは、例えば組み換え工学および/または外因性の標的指向性部位の付与(例えば抗体および抗体誘導体)によって特定の組織、臓器および/または細胞を選択的に標的とするように修飾されたミニ細胞を指す。
【0028】
本明細書で使用される用語「標的治療用ミニ細胞」とは、例えば組み換え工学および/または外因性の標的指向性部位の付与(例えば抗体および抗体誘導体)によって特定の組織、臓器および/または細胞を選択的に標的とするように修飾され、さらに小分子薬物、治療用核酸、治療用ポリペプチドおよびその組み合わせを含むミニ細胞を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「標的ミニ細胞ワクチン」とは、感染性疾患の病原体または最適な腫瘍細胞に由来するタンパク質抗原および/または核酸型ワクチン(例えばDNAまたはRNA型ワクチン)をカプセル化する細菌由来ミニ細胞を指し、前記ミニ細胞は、in vitroまたはin vivoでミニ細胞の抗原性内容物を抗原提示標的細胞、組織または臓器型に輸送するために、有意にレシピエントの宿主免疫反応の発生、進行および/または維持に関与する抗原提示細胞、臓器または組織型と結合するまたは結合されるという方法によって、または、有意にレシピエントの宿主免疫反応の発生、進行および/または維持に関与する抗原提示細胞、臓器または組織型を認識して輸送し、局在し、または凝集するという他の方法によって、前記ミニ細胞の表面(例えば外表面)上において、抗原提示細胞に対する免疫システムの特異性を与える標的部位をさらに発現および/または提示する。このような標的ミニ細胞ワクチンはまた、組み換え型ケモカイン、サイトカインまたはインターロイキンタンパク質およびそれらをコードする機能性核酸を含んでもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語「同系ミニ細胞ワクチン」とは、病原細菌により生成された細菌由来ミニ細胞を指し、このミニ細胞ワクチンは前記病原細菌に対して抵抗性である。同系ミニ細胞ワクチンは、同じ感染性疾患の病原体由来のタンパク質抗原および/または核酸型ワクチンをさらに含んでもよい(例えばDNAまたはRNA型ワクチン)。このような同系ミニ細胞ワクチンは、組み換え型ケモカイン、サイトカインまたはインターロイキンタンパク質およびそれらをコードする機能性核酸をさらに含んでもよい。そのような同系ミニ細胞ワクチンは、標的ミニ細胞ワクチンをさらに含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用される用語「インテグリン標的ミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子(pan-Beta1-integrin-targeting cell surface molecule)インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「インテグリン標的治療用ミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、治療用ポリペプチド、小分子薬物、治療用核酸およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない1つ以上の生理活性分子をさらに含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用される用語「インテグリン標的免疫調節性ミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、免疫調節性ポリペプチド、小分子薬物、免疫調節性核酸およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない1つ以上の生理活性分子をさらに含んでもよい。
【0034】
本明細書で使用される用語「VAX-IPミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および
/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)をさらに含んでもよい。
【0035】
本明細書で使用される用語「VAX014ミニ細胞」とは、賦形剤として滅菌D-トレハロースを含む医薬組成物中に処方されているVAX-IPミニ細胞を指す。
【0036】
本明細書で使用される用語「VAX-IPTミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびタンパク毒素をさらに含んでもよい。
【0037】
本明細書で使用される用語「VAX-IPPミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびタンパク毒素以外の外因性ポリペプチドをさらに含んでもよい。
【0038】
本明細書で使用される用語「VAX-IPDミニ細胞」とは、インベイシン(例えば、仮性結核菌由来の全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシン)を発現および/または提示するミニ細胞およびその機能等価物を指し、前記ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびジフテリア毒素の触媒断片をさらに含んでもよい。
【0039】
本明細書で使用される用語「原核細胞分裂遺伝子」とは、原核細胞分裂プロセスに関与する遺伝子産物をコードする遺伝子を指す。当技術分野では多くの細胞分裂遺伝子が発見され特性付けされている。細胞分裂遺伝子の例としては、zipA、sulA、secA、dicA、dicB、dicC、dicF、ftsA、ftsI、ftsN、ftsK、ftsL、ftsQ、ftsW、ftsZ、minC、minD、minE、seqA、ccdB、sfiCおよびddlBを含むがそれらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される用語「導入遺伝子」とは、自然にまたは遺伝子工学技術によってある微生物から別のものへ移された遺伝子または遺伝物質を指す。ある実施形態において、前記導入遺伝子は、ある微生物から分離され別の微生物に導入された遺伝子配列を含むDNA断片である。この非天然のDNA断片は、遺伝子導入微生物においてRNAおよび/またはタンパク質を生成する能力を持つことがあり、遺伝子導入微生物の遺伝子コードの元々の機能を変化させることがある。ある実施形態において、遺伝子コード配列を含むかにかかわらず、導入遺伝子は人工的に構築されたDNA配列であり、導入遺伝子がかつて見つかっていなかった微生物へ導入される。
【0041】
本明細書で使用されるように、ある組成物中の試薬は、該試薬が精製された元の組成物と比べて、その濃度が増加した場合および/または1つ以上の望ましくない不純物の濃度が低下した場合、「精製された」と言う。ある実施形態において、精製は、組成物における試薬の濃縮および/またはそれからの試薬の分離を含む。
【0042】
本明細書で使用され、「十分に欠けている」と同義の用語「生存能力のある親細胞が十分に欠けている」とは、生存能力のある親細胞不純物組成物が標的治療用ミニ細胞の毒性プロファイルおよび/または治療効果にほとんどまたはまったく影響がないレベルの精製されたミニ細胞の組成物を指す。
【0043】
本明細書で使用される用語「滅菌された」は、十分にバイオバーデンを欠いていて、USP38NF33、米国薬局方の標準滅菌試験<71>、それに調和する外国のカウンタ
ーパート、および他の承認された国際的な医薬品基準に基づく要求を満たしていることを意味する。
【0044】
本明細書で使用される用語「完全に滅菌された」とは、薬物製造工程における最終段階で、前記最終薬物製品が十分にバイオバーデンを欠いていて、USP38NF33、米国薬局方の標準滅菌試験<71>、それに調和する外国のカウンターパート、および他の承認された国際的な医薬品基準に基づく要求を満たしていることを指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」とは、共通の物理的および/または化学的特徴を有する分子または構造の領域を指す。タンパク質ドメインの非限定的な例としては、疎水性膜貫通性または表在性膜結合領域、球形酵素またはレセプター領域、タンパク質―タンパク質相互作用ドメインおよび/または核酸結合ドメインを含む。
【0046】
用語「真正細菌」および「原核生物」は、当技術分野で使用されている通りに本明細書で使用される。本明細書で使用される用語「真正細菌」は、例えば、グラム陰性およびグラム陽性細菌を含む真正細菌、原核生物ウイルス(例えばバクテリオファージ)および偏性細胞内寄生体(例えばリケッチア、クラミジア等)を包含する。
【0047】
本明細書で使用される用語「免疫調節性ポリペプチド」とは、真核生物または細胞(例えばヒトなどの哺乳類)に導入された場合に免疫調節効果をもつ多様なタンパク質分子型の集合を指す。免疫調節性ポリペプチドはサイトカイン、ケモカイン、コレステロール依存細胞溶解素、機能性酵素、抗体または疑似抗体、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチドまたはそれらの組み合わせおよび/またはそれらのうちの複数でありうる。本用語は、以下にそれぞれ記載される「免疫原性」または「抗原」という語と混同すべきではない。
【0048】
用語「免疫原性」または「抗原」は置き換え可能であり、本明細書で使用されポリペプチド、炭水化物、脂質、核酸ならびに抗原特異的抗体、細胞および/またはアレルギー反応を備えうる他の分子を指す。抗原特異的免疫反応は抗原/免疫原性の存在に依存し、本明細書で使用される免疫調節反応の定義には含まれるべきではない。
【0049】
本明細書で使用される用語「過剰発現」は、宿主細胞のDNAによってコードされる機能性核酸、ポリペプチドまたはタンパク質の発現を指し、前記核酸、ポリペプチドまたはタンパク質はいずれも通常宿主細胞に存在しない、または核酸、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする内因性遺伝子により核酸、ポリペプチドまたはタンパク質は通常発現するよりも高いレベルで宿主細胞に存在する。
【0050】
本明細書で使用される用語「調節する」は、標的の活性を変えるために標的と直接的または間接的に相互作用し、生物学的プロセスを制御することを意味する。「調節する」という方法は、標的の活性を増強すること、標的の活性を制限すること、標的の活性を拡張することおよび標的の活性を弱めることを含むがこれに限定されない
【0051】
本明細書で使用される用語「異種」とは、発現され、転写され、翻訳され、増幅され、その他ミニ細胞または前記異種物質(例えば、親細胞に由来しない生物活性代謝物)をコードするまたは前記異種物質を産生することができる遺伝子をコードする組み換え型遺伝物質を寄生させるミニ細胞を産生する細菌の菌株により生み出されたミニ細胞を産生する細菌の菌株(例えばミニ細胞を産生する親細胞に組み換えによって導入されたまたは形質転換された)において天然には見いだされないタンパク質、遺伝子、核酸、造影剤、緩衝剤成分または他の生物学的に活性な物質を指す。
【0052】
本明細書で使用される用語「外因性」とは、タンパク質(例えば抗体)、遺伝子、核酸、小分子薬物、造影剤、緩衝材、放射性核種、その他本来細胞にない、またはミニ細胞の場合はそのミニ細胞の親細胞に本来ない、生物学的に活性または不活性な物質(例えばミニ細胞を産生する親細胞に組み換えによって導入されたまたは形質転換された)を指す。外因性物質は、それが個別に生み出され、精製され、加えられるという理由で異種物質とは異なる。
【0053】
本明細書で使用される用語「治療用」は、生物学的な効果または疾患またはその他動物(ヒトを含む)における異常な生物学的プロセスを抑制する、除去する、低減するまたは進行を妨げるという生物学的な効果の組み合わせをもつという意味である。
【0054】
本明細書で使用される用語「予防のための」は、生物学的な効果または疾患、病状またはその他動物(ヒトを含む)における異常な生物学的プロセスの進行または成立を防ぐまたは遅らせる、という生物学的な効果の組み合わせをもつという意味である。
【0055】
本明細書で使用される用語「診断のための」は、動物(人を含む)内の、または血液、尿、唾液、汗および糞便物質を含むがこれらに限定されない生物学的試料から、疾病または状態を検知、観察、把握および/または同定する能力を持つという意味である。
【0056】
本明細書で使用される用語「セラノスティック」は、治療用および診断用組成物の複合効果を持つという意味である。
【0057】
本明細書で使用される用語「組み換え技術によって発現した」は、現代の遺伝子組み換え技術を用いて人工的に構築された核酸分子からの1つ以上の核酸および/またはタンパク質の発現を意味し、前記人工的に構築された核酸分子はミニ細胞および/またはミニ細胞を産生する細菌の菌株において自然には発生せず、前記人工的核酸分子はエピソーム性核酸分子としてまたはミニ細胞を産生する細菌染色体の一部として存在する。
【0058】
本明細書で使用される用語「エピソーム性」とは、ある微生物または細胞の独立した染色体である核酸分子を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「無毒化された」とは、組成物またはその要素に対してなされる修飾で、前記組成物またはその要素に対する毒性についての原因となる生物学的基礎が何であるかにかかわらず、前記組成物またはその要素に対する急性毒性の著しい低下という結果をもたらすものを指す。
【0060】
本明細書で使用される用語「生理活性分子」とは、真核微生物または細胞に導入されるとその真核微生物または細胞に(例えばヒトなどの哺乳類)生物学的効果を持つ分子を指す。生理活性分子の例としては、治療用核酸、治療用ポリペプチド(たんぱく毒素を含む)および治療用小分子薬物を含むがこれらに限定されない。
【0061】
本開示は、脊索動物門を含むがこれに限定されない高等生物におけるがん、感染性疾患、自己免疫疾患、遺伝性障害および他の生物学的病気の治療および予防における薬剤として使用されることを意図とした、小分子薬物、核酸、ポリペプチドおよび造影剤を異なる組織、臓器および細胞型への標的化遺伝子導入のためのin vitroおよびin vivoでの完全に滅菌された細菌由来ミニ細胞型組成物の生成および使用に関する。
【0062】
本開示は、電離放射線照射、例えば高線量の電離放射線照射、が製品の滅菌のために行われる、細菌由来ミニ細胞型医薬用、診断用およびワクチン製品の生産のための組成物お
よび方法を提供する。滅菌細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品の生成という文脈において、本明細書で開示される方法は、ミニ細胞の完全性、安定性および製品の機能を保持しながら、滅菌性を確保し、より少ない工程を用い、追加の抗生物質または高張状態を追加する必要なく、生存能力のある親細胞不純物および他の偶発性微生物を除去する。
【0063】
細菌由来ミニ細胞は、細菌の細胞の正常な分裂装置の破壊の後に細菌によって形成される、染色体を有さない、膜で覆われた生物学的ナノ粒子(直径約250~500nm)である。要するにミニ細胞は、染色体DNAを除かれた、小さく、代謝活性を有する、正常な細菌細胞の複製物であり、したがって分裂せず、生存能力がなく、非感染性である。細菌由来ミニ細胞は、エシェリヒア属、サルモネラ属、シュードモナス属、リステリア属、バークホルデリア属、シゲラ属、バチルス属、アシネトバクター属、フランシセラ属、レジオネラ属、ラクトバチルス属、クロストリジウム属、カンピロバクター属、ナイセリア属、クラミジア属などを含むがこれに限定されない幅広いグラム陰性およびグラム陽性の種および菌株から生成されうる。ミニ細胞は細菌染色体を含まないが、プラスミドDNA分子(染色体よりも小さい)、RNA分子(全亜型および構造)、天然および/または組み換え発現タンパク質、核酸および他の代謝産物はすべてミニ細胞中に分離されることが示されている。単一粒子中に1つ以上の様々な天然に発生する、異種のまたは外因性の、治療用分子成分と組み合わせて、抗体または細菌接着因子などの表面局在化細胞に特異的な標的指向性リガンドおよびインベイシンを発現および/または提示するように加工することができるため、ミニ細胞は、他に類を見ないほどin vivo標的型薬物輸送試薬に適している。要するに、疾患の予防、維持および/または抑制が望ましい場合に、予防用と治療用どちらの場合でも薬剤を使用した後に続く輸送および反応の発生のために、核酸、タンパク質、小分子薬物、およびそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない生物学的活性分子を選択的にカプセル化する、結合するまたは吸収するようにミニ細胞を「加工」することができる。
【0064】
一般的に加工される細菌由来ミニ細胞は、米国特許第7,183,105号に記載のとおり抗がん剤として直接的に利用されており、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。例えば、米国特許第7,183,105号は、前記ミニ細胞を加工して、小分子薬物、ペプチド、タンパク質および様々な核酸を標的とし、一緒にまたは同時におよび直接がん細胞へ輸送して、直接目標の抗がん効果を及ぼすミニ細胞表面局在化抗体を利用することができると記載している。米国特許公開第20070298056および20080051469号、米国特許第9,169,495に示されているとおり、他の研究者も標的輸送ビヒクルとしてミニ細胞を利用することについてこの7,183,105号特許中の教示と同様の知見を報告しており、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。先の研究では、細菌由来ミニ細胞の潜在的なワクチンおよびワクチン担体としての利用を前者は異種ポリペプチド抗原担体として、後者は核酸型ワクチン担体として、記載している。より細菌の研究では、細菌由来ミニ細胞型治療のレパートリーがより広がり、免疫調節性組成物および免疫調節法も含む。
【0065】
最終的な細菌由来ミニ細胞型製品の種類にかかわらず、非経口または局所的に治療または診断用に用いることを意図しているのであれば、生きた親細胞不純物および他の偶発性微生物を高い信頼性で最終有効活性成分(API)または最終製剤(DP)から除去することが、高い安全性と使用のための販売開始のためには最も重要である。細菌由来ミニ細胞を生成する生きた親細胞から、細菌由来ミニ細胞の精製を試みる多くの方法が過去になされてきた。研究者が用いる最も一般的な細菌由来ミニ細胞の精製方法は、分画遠心法および線形または段階濃度勾配のどちらかを用いたさらなる精製を1回以上行う方法の組み合わせである。他の方法としては、ろ過方式、溶菌性ファージの誘発、浸透圧ショックおよび/または超音波処理と組み合わせた抗生物質による選択的な処理が含まれるがこれらに限定されない。これらの方法を用いた一般的な精製レベルは、105~108ミニ細胞
中に生きた親細胞不純物が1~の範囲である。近年、より新しい方法が記載されている。例えば、米国特許第7,611,885号では、(i)分画遠心法、(ii)濃度勾配精製を2回行う(iii)0.45uMフィルターでのクロスフローろ過(iv)浸透圧ショックを誘引し親細胞のフィラメンテーションをもたらす高濃度塩による処理(v)抗生物質による処理(vi)0.2uMフィルターでのクロスフローろ過(vii)0.45uMフィルターでの2回目のクロスフローろ過(viii)100kDaフィルターでのミニ細胞のろ過(ix)磁気ビーズと結合した抗エンドトキシンでの処理(x)前記ビーズに結合したエンドトキシンの磁気分離(xi)ミニ細胞の収集、およびおそらくは(xii)賦形剤や他の媒材に入れた状態で製剤し最終APIとすること、を組み合わせた方法が記載されている。米国特許第7,611,885号に記載の方法は、生きた親細胞不純物を1011ミニ細胞中に1まで下げることを予言的に目指している一方で、ミニ細胞の著しい損失、外因性の抗生物質および/または塩の添加および工程中に偶発性微生物が誘引される可能性のある多重ろ過工程という結果となっている。最も重要なのは、最終ろ過工程がデッドエンドろ過(すなわちミニ細胞の貯留)に依存し、したがってFDA、他のICHガイドラインに基づいて運営される規制機関および他の認証された国際的な製薬基準によると完全滅菌事象とはみなされない。
【0066】
本開示は、細菌由来ミニ細胞が電離放射線照射、例えば高線量の電離放射線照射によって、完全に滅菌でき、有効性、標的指向性能または安定性の損失なく、また生きた親細胞不純物の完全な除去という利益をもたらすという予期しない知見に影響を与える。この知見により、より拡張性のある、普通の、GMP互換/準拠のミニ細胞精製方法が可能となり、また細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品を、USP38NF33のUSP<71>の滅菌試験標準およびそれに調和する外国の等価物に適合するほど十分なレベルで完全に滅菌することが可能となる。
【0067】
電離放射線照射は滅菌性を得ることができ、医療器具や手術器具に最適な滅菌方法であることはよく知られている。滅菌という文脈において、電離放射線照射はフリー酸素ラジカルを発生させることにより作用する。フリー酸素ラジカルは、反応性の高い分子種であり、速やかに核酸およびタンパク質の共有結合を切断し、細胞および/または微生物の死をもたらす。滅菌性および生きた微生物の成長が完全にないことを確保するために大抵はより高線量の25kGyが用いられているが、滅菌用途では、完全滅菌には5kGyの線量で十分とされている。これらの線量レベルでの電離放射線照射による滅菌は、微生物を死滅させるには強力で非選択的な方法であり、理論的には細菌由来ミニ細胞の安定性と活性に悪影響を与えるということになる。滅菌量の電離放射線照射を受けることは細菌由来ミニ細胞には影響がないが親細胞不純物はすべて生存不能状態になるという事実は全く予期せぬことである。特定の理論に縛られることなく、電離放射線照射が核酸にのみ影響し、タンパク質成分には影響しない、そして細菌由来細胞は染色体を持つがミニ細胞にはないために選択的に除去されている、という可能性があると考えられる。しかしながら、もしタンパク質が影響を受けないのであれば、どのレベルの電離放射線照射を受けた細菌由来細胞もこのタンパク質型DNA修復システムを利用して元の状態に戻ることが可能となる。細菌は、約3kGyを超えるレベルの電離放射線照射を受けると元に戻らないことから、このような線量ではタンパク質も影響を受けるという見解が支持される。他の研究者は、6~8kGyのガンマ線照射を受けた場合に細菌内のタンパク質の機能についての疾患が10%まで下がると記載していることから、細菌内のタンパク質の機能はガンマ線照射でマイナスの影響を受けているという見解が支持される(Kato et al., Journal of Radiation Research and Applied Sciences, 2014, Volume 7, pp.568-71を参照のこと)。さらに、電離放射線照射を受けたタンパク質またはタンパク質混合物は、分離されるとすぐに不活性状態になる。本開示に記載の方法は、生体材料および機能性タンパク質を含む細菌への電離放射線照射の効果について周知のことと反するものであり、電離放射線照射を受けることによって、親細胞不純物および/または偶発性微生物を全て除去しながら、
完全性、特異性、安定性、有効性およびin vivo活性を失うことなく、細菌由来ミニ細胞および細菌由来ミニ細胞型バイオ医薬品を完全に滅菌できるということが本明細書で示される。
【0068】
安全性をさらに高め、親細胞不純物の生存能力またはリポ多糖体(エンドトキシン)の存在による毒性を制限するため、ある実施形態において、本明細書で開示されるミニ細胞は、以下に記載の3つの安全特性のうち1つ以上を含むミニ細胞を産生する菌株に由来する。ある実施形態において、ミニ細胞を産生する菌株は、3つの相乗的な安全特性のうち1つ以上を含む。例えば、ミニ細胞を産生する菌株は、3つの安全特性のうち1つ、2つ、または3つ全てを含みうる。1つ目は、ミニ細胞形成工程が完了した後に残存する生存親細胞を溶解させることなく(およびリポ多糖体を放出することなく)死滅させる遺伝子自殺機序である。本出願は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許公開第2010/0112670号に記載の、適切な誘導因子によって修復不能なダメージを、ミニ細胞を産生する親細胞に誘導する、制御された遺伝子自殺機序の使用を包含する。自殺機序は、親細胞の染色体に対して、二本鎖の修復不能な断裂を誘発し、ミニ細胞精製を向上させるために従来型分離技術の補助として用いることができる。2つ目の安全特性は、必須ではないが好ましくはジアミノピメリン酸(DAP)生合成経路における、より好ましくはミニ細胞を産生する大腸菌(E.coli)の菌株のdapA遺伝子における、明確な栄養要求性である。ミニ細胞を産生する大腸菌の菌株は、DAP要求性(dapA-)を示し、DAPの補給のない研究室外では生存できない。さらに、DAPはヒトを含む哺乳類では見いだされず、ミニ細胞製品内に存在するミニ細胞を産生する親細胞は研究室外または製造設備外またはin vivoでは生存できない。この議題では、様々なグラム陰性およびグラム陽性細菌で多くのバリエーションが存在する。例えば、サルモネラ属では、芳香族アミノ酸生合成経路における栄養要求性(aro遺伝子)で実際に同じ結果が生じる。シゲラ属の場合では、グアニン生合成経路における栄養要求性で実際に同じ結果が生じるであろう。3つ目の安全特性は、大腸菌のミニ細胞を産生する菌株のlpxM遺伝子の欠失を必然的に伴う。lpxM遺伝子の欠失は、無毒化されたリポ多糖体(LPS)分子の産生をもたらす。lpxM遺伝子(msbB遺伝子とも言われる)は末端ミリストレイン酸基をLPS分子の脂質A部分に付加するという機能を持ち、この基の(lpxM遺伝子除去による)欠失はLPSの著しい無毒化をもたらす。具体的には、無毒化はLPSへの暴露に対応する炎症性サイトカインの産生が減少することによって特性付けされる。注目すべきは、無毒化形態のLPSに対応するサイトカイン産生は、野生型のLPSと同じレベルではないものの発生しうることから、この改良は免疫調節性ミニ細胞組成物に関する本発明から外れて教示するものではないということである。無毒化は産生されるサイトカインのレベルのみを制御し、急性敗血症様炎症反応を抑えることを可能にし、一方でより強いTh1および/またはTh2免疫反応を明らかな毒性なしに可能にする。この欠失は、グラム陰性およびグラム陽性のミニ細胞を産生する菌株の機能的に同等な遺伝子に導入することができ、同じ効果が得られる。強化された安全性プロファイルは敗血症発症のリスクおよび可能性を低減することができる。規制上および製造上の観点からは、ミニ細胞を産生する親細胞の菌株の細菌染色体から抗生物質抵抗性マーカーを除去することも好ましい。1つ以上の安全性特性は任意とすることができる。
【0069】
本明細書で開示されるある実施形態では、本明細書で開示される免疫調節性ミニ細胞を産生する細菌を培養し、ミニ細胞を産生する親細胞から免疫調節性ミニ細胞を実質的に分離し、そして免疫治療用ミニ細胞を含む組成物を生成することを含む、免疫調節性ミニ細胞を作成する方法が提供される。ある実施形態において、前記方法は、ミニ細胞を産生する親細胞の培地からの免疫調節性ミニ細胞形成を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、前記方法は、遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、ミニ細胞形成は、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)、ラムノース、アラビノース、キシロース、
フルクトース、メリビオースおよびテトラサイクリンから選択される1つ以上の化学物質の存在に誘引される。ある実施形態において、前記遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現は、温度変化によって誘引される。ある実施形態において、前記方法は、前記免疫調節性ミニ細胞を前記組成物から精製することをさらに含む。ある実施形態において、前記免疫調節性ミニ細胞は、遠心分離、ろ過、限外ろ過、超遠心分離、濃度勾配、イムノアフィニティー、免疫沈降およびこれらの精製方法の組み合わせを含むがこれに限定されない群から選択される工程によって実質的に親細胞から分離される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は凍結乾燥される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は凍結される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は凍結乾燥された後に凍結される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は抗凍結性賦形剤または他の薬学的に許容される担体またはGRAS物質中の凍結懸濁液として処方される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は電離放射線照射を受けることによって完全に滅菌される。ある実施形態において、免疫調節性ミニ細胞は電離ガンマ線照射を受けることによって完全に滅菌される。
【0070】
ある実施形態では、本明細書で開示される適切な免疫原性ミニ細胞を産生する細菌を培養し、ミニ細胞を産生する親細胞から免疫原性ミニ細胞を実質的に分離し、そして免疫原性ミニ細胞を含む組成物を生成することを含む、免疫原性ミニ細胞(例えばワクチン)を作成する方法が提供される。ある実施形態において、前記方法は、ミニ細胞を産生する親細胞の培地からの免疫原性ミニ細胞形成を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、前記方法は、遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、ミニ細胞形成は、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、メリビオースおよびテトラサイクリンから選択される1つ以上の化学物質の存在に誘引される。ある実施形態において、前記遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現は、温度変化によって誘引される。ある実施形態において、前記方法は、前記免疫原性ミニ細胞を前記組成物から精製することをさらに含む。ある実施形態において、前記免疫原性ミニ細胞は、遠心分離、ろ過、限外ろ過、超遠心分離、濃度勾配、イムノアフィニティー、免疫沈降およびこれらの精製方法の組み合わせを含むがこれに限定されない群から選択される工程によって実質的に親細胞から分離される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は凍結乾燥される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は凍結される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は凍結乾燥された後に凍結される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は抗凍結性賦形剤または他の薬学的に許容される担体またはGRAS物質中の凍結懸濁液として処方される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は電離放射線照射を受けることによって完全に滅菌される。ある実施形態において、免疫原性ミニ細胞は電離ガンマ線照射を受けることによって完全に滅菌される。
【0071】
ある実施形態では、本明細書で開示される標的治療用ミニ細胞を産生する細菌を培養し、ミニ細胞を産生する親細胞から標的治療用ミニ細胞を実質的に分離し、そして標的治療用ミニ細胞を含む組成物を生成することを含む、標的治療用ミニ細胞を作成する方法が提供される。ある実施形態において、前記方法は、ミニ細胞を産生する親細胞の培地からの標的治療用ミニ細胞形成を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、前記方法は、遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現を誘引することをさらに含む。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞形成は、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、メリビオースおよびテトラサイクリンから選択される1つ以上の化学物質の存在に誘引される。ある実施形態において、前記遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現は、温度変化によって誘引される。ある実施形態において、前記方法は、前記標
的治療用ミニ細胞を前記組成物から精製することをさらに含む。ある実施形態において、前記標的治療用ミニ細胞は、遠心分離、ろ過、限外ろ過、超遠心分離、濃度勾配、イムノアフィニティー、免疫沈降およびこれらの精製方法の組み合わせを含むがこれに限定されない群から選択される工程によって実質的に親細胞から分離される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は凍結乾燥される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は凍結される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は凍結乾燥された後に凍結される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は抗凍結性賦形剤または他の薬学的に許容される担体またはGRAS物質中の凍結懸濁液として処方される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は電離放射線照射を受ける。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は電離放射線照射を受けることによって完全に滅菌される。ある実施形態において、標的治療用ミニ細胞は電離ガンマ線照射を受けることによって完全に滅菌される。
【0072】
さらなる実施形態では、外部膜を含む免疫調節性、免疫原性および標的治療用ミニ細胞が提供され、前記外部膜のリポ多糖体成分はミリストイル部位を持たない脂質A分子(無毒化リポ多糖体または無毒化LPS)を含む。無毒化LPSは、対応する野生型の細菌に由来する真正細菌由来ミニ細胞の外部膜によって誘引される炎症反応と比べると、哺乳類宿主において炎症性の免疫反応の減少をもたらす。
【0073】
1.ミニ細胞の製造
ミニ細胞は、細菌の細胞の正常な分裂装置の破壊の後に細菌により形成される、染色体を有さず、膜で覆われた生物学的ナノ粒子(直径約250~500nm、使用する菌株の種類および成長条件による)である。要するにミニ細胞は、染色体DNAを除き、小さく、代謝活性を有する、正常な細菌細胞の複製物であり、したがって分裂せず、生存能力がなく、非感染性である。ミニ細胞は染色体DNAを含まないが、プラスミドDNA分子、RNA分子、天然および/または組み換え発現タンパク質、核酸および他の代謝産物はすべてミニ細胞中に分離されることが示されている。ミニ細胞は、エシェリヒア属、サルモネラ属、シゲラ属、ビブリオ属、ナイセリア属、カンピロバクター属、シュードモナス属、エルシニア属、クラミドモナス属、アシネトバクター属、リステリア属、バチルス属、ヘモフィルス属、クロストリジウム属、フランシセラ属、リケッチア属などを含むがこれに限定されない多くの細菌種および菌株から作成することができる。
【0074】
染色体複製と細胞分裂の間の協調の破壊は、多くの桿状原核生物の極領域からのミニ細胞形成をもたらす。染色体複製と細胞分裂の間の協調の破壊は、隔膜形成および二分裂に関与する遺伝子のいくつかの過剰発現によって促進される。代わりに、ミニ細胞は、隔膜形成および二分裂に関与する遺伝子に変異を引き起こす菌株において産生される。染色体分離機構の正常な機能が損なわれることはまた、様々な多くの原核生物で示されているようなミニ細胞形成をもたらすことができる。
【0075】
同様に、ミニ細胞の製造は、発生期の染色体の娘細胞への分裂に関与する遺伝子の過剰発現または変異によって達成されうる。例えば、大腸菌のparCまたはmukB座における変異はミニ細胞を産生させることが示されている。どちらも腸内細菌科の染色体分離工程における必須の段階にそれぞれ影響する。上記の細胞分裂遺伝子のように、ミニ細胞の産生をもたらす染色体分離工程に関与する遺伝子の野生型レベルの操作は、そのファミリーにおいて同様の効果を持つだろう。
【0076】
細胞分裂および染色体複製工程は、生存できるか否かにとって決定的なものであるため、これらの工程に関与する遺伝子について、原核生物ファミリーに対して高レベルの遺伝的および機能的保護が存在する。結果として、あるファミリーでミニ細胞の産生を活発にすることができる細胞分裂遺伝子の過剰発現または変異は、他のファミリーでミニ細胞を産生するのに利用することができる。例えば、大腸菌のftsZ遺伝子を、サルモネラ属
およびシゲラ属などの他の腸内細菌科の細菌ならびにシュードモナス属など他の綱の細菌において過剰発現させることで、同様のレベルのミニ細胞の産生をもたらすことが示されている。
【0077】
腸内細菌科に属する細菌のミニ細胞を産生する菌株の変異型のものにおいても同様のことが示されうる。例えば、腸内細菌科に属するある細菌のmin座の欠失はミニ細胞の産生をもたらす。変異がミニ細胞形成をもたらす腸内細菌科由来の細胞分裂遺伝子は、min遺伝子(MinCDE)を含むがこれに限定されない。min変異菌株からのミニ細胞産生が可能である一方で、これらの菌株は、ミニ細胞型バイオ医薬品のために製造される菌株であるという観点から商業的な価値が限られてきた。min遺伝子に欠失または変異のある菌株は、構造的にミニ細胞を作成するレベルが低く、商業化、スケールメリットおよび生物活性分子を組み換え発現技術の利用がかなり限定されるという観点での課題がある。min変異菌株によるミニ細胞の収量は相対的に低く、製造コストおよび/またはそのバイオ医薬品の市場での需要に応えるのに十分な数のミニ細胞を生成するための規模が大きくなる。さらに、min座における欠失はこれらの菌株に対して一定で選択的な圧力を示し、代償的サプレッサー突然変異の自然発生によりミニ細胞を産生する表現型の損失がもたらされうる。この事態はミニ細胞の収量に潜在的にマイナスの効果をもつ。加えて、ミニ細胞を産生する親細胞(タンパク質、RNA、DNAおよび他の診断用または治療用の輸送のための異化生成物など)の組み換え発現による生物学的活性分子をカプセル化するミニ細胞を産生するために細胞分裂変異菌株を使用することは課題がある。変異菌株におけるミニ細胞産生の開始は制御できず、構造的に低いレベルで起きるため、輸送のための生物活性分子を組み換えによって生成するために親細胞を用いるという方法をとる結果として、あるミニ細胞では生物学的に活性な分子を含まず(すなわちミニ細胞が組み換え発現の前に作成された)、一方で他では幅広い量の生物学的に活性な分子を含むという一貫性のない製品となる。要約すれば、変異型のミニ細胞を産生する菌株の欠点により、商業目的でのミニ細胞産生においてその有用性を制限する可能性のある製造上の複雑さがもたらされうる。
【0078】
過剰発現される細胞分裂遺伝子が誘導可能なまたは他の条件付きで活性な真正細菌プロモーターシステムの制御下にある限りミニ細胞産生表現型は制御可能であるため、細胞分裂遺伝子を過剰発現させるミニ細胞を産生する菌株(過剰発現体)が変異型菌株に好ましい。細胞分裂遺伝子ftsZを過剰発現する菌株由来のミニ細胞産生は、プラスミド型相補性試験を用いて大腸菌の最も重要な細胞分裂遺伝子を同定した研究者によって発見された。これらの研究において、ftsZ遺伝子は細胞あたり10コピー超に存在していた。ftsZ遺伝子の複数コピーの存在により、ミニ細胞および極端に長い糸状細胞が製造できることが証明された。結局のところ、産生されるミニ細胞の数は変異菌株よりはまだ多いものの、この非可逆的な繊維状の表現型への転移は複数コピープラスミドによるftsZを過剰発現する菌株由来のミニ細胞の収量にマイナスの効果を与える。ftsZ遺伝子コピー数を1に減少させることによって、ftsZが複数コピープラスミド上に位置する菌株より染色体複製、産生されるミニ細胞の数は増えること、および繊維状の表現型の規模が小さくなることが証明されている。したがって、ある好ましい組成物は、複製され、染色体的に統合されたftsZのコピーにより誘導されてftsZ遺伝子を過剰発現するミニ細胞を産生する菌株を含む。使用される複製されたftsZ遺伝子は、細菌種に直接由来し、そのミニ細胞産生表現型は加工され、他の細菌種由来のftsZ遺伝子配列から導かれうる。非限定的な例として、大腸菌およびサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)からミニ細胞を生成するために大腸菌のftsZ遺伝子の過剰発現を用いることができる。結果として得られる菌種は、染色体上に野生型ftsZ遺伝子および区別され、重複し、誘導的なftsZ遺伝子のコピーならびにその全体が本明細書に取り込まれる米国特許公開第2010/0112670号に記載の誘導的な遺伝子自殺機序からなる。非限定的な例として、腸内細菌科に属する、過剰発現してミニ細胞を産
生することができる分裂遺伝子は、ftsZ、minE、sulA、ccdBおよびsfiCを含むがこれに限定されない。より好ましい組成物は、細菌の菌株の染色体と安定的に統合する誘導的なプロモーターの制御下で細胞分裂遺伝子の重複したコピーを持つ。誘導的な細胞分裂遺伝子カセットがプラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、組み換え型バクテリオファージまたは細胞中に存在する他のエピソーム性DNA分子上に存在する場合、同じ方法が開示されうることが当業者に容易に認識される。
【0079】
ミニ細胞産生に対するこの誘導的な表現型アプローチは変異システムと比べていくつか大きな優位性を持つ。1つ目は、これらの菌株には構成遺伝子変異がないため、正常な増殖中の選択的圧力がなく、ミニ細胞表現型が誘引されるまでは培地の細胞が非常に安定な状態および正常な生理機能を維持する。最終的な結果としては、誘導的なミニ細胞を産生する菌株はより状態がよく、より安定であり、それにより最終的にミニ細胞表現型が誘引される。ミニ細胞産生に対して誘導的な表現型アプローチを用いるもう1つの際立った優位性は、タンパク質、治療用RNA、プラスミドDNA、および、その分子がミニ細胞を産生する親細胞によって、ミニ細胞を産生する表現型の誘発の前に組み換え技術によって発現する(前誘発)または同時に発現する(共誘発)他の生物活性異化生成物、などの生物学的に活性な分子を輸送するためにミニ細胞が利用され、そして産生されたミニ細胞がこれらの組み換え型生物学的に活性な分子をカプセル化する場合においてである。これらの場合において好ましい方法は、ミニ細胞の表現型を誘引する前に親細胞中の生物学的に活性な分子の形成を誘引することであり、そうするとすべての産生されたミニ細胞は望ましい量の生物学的に活性な分子を含むことになる。代わりに、親細胞から分離された後、ミニ細胞は生物活性分子を産生することができる。これは、ミニ細胞中に位置し生物活性分子をコードするエピソーム性核酸またはRNAから、または親細胞から分離された後、ミニ細胞に前から存在するタンパク質構成物質により生物活性分子を形成することを含むがこれに限定されない。これらの発現戦略はいずれもミニ細胞の表面にある結合部位を発現するおよび/または提示するために用いることができる。これらの優位性は、組み合わせて用いた場合、より高い質および量のミニ細胞をもたらす。加えて、これらのミニ細胞は、以下により詳しく記載されるようにミニ細胞に負荷することができる小分子薬物をさらに含むことができる。
【0080】
2.ミニ細胞の精製
ミニ細胞は、病原性細菌または日和見病原性細菌に由来するため、バイオ医薬品として投与する前に集合体から親細胞を機能的に除去することが重要である。本明細書に開示されるあらゆる方法は、電離放射線照射による完全滅菌に先立ちミニ細胞を精製するために単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0081】
従来、生存親細胞は物理的方法または生物学的方法またはその両方によって除去されてきた。物理的方法は、遠心分離型分離処置、ろ過法、クロマトグラフィー法、またはその組み合わせの使用を含む。生物学的除去は、これらに限定されないが、親細胞の優先溶解、栄養要求性の親細胞の使用、抗生物質による処理、UV照射による処置、ジアミノピメリン酸(DAP)の喪失、親細胞の選択的吸収、別のDNA損傷試薬による処理および自殺遺伝子の誘発を含むがこれに限定されない必須代謝物の喪失、によって達成される。
【0082】
親細胞の優先溶解は、一般的に溶原性プロファージの溶解サイクルの誘引によってもたらされる。ミニ細胞を産生する菌株の場合、溶解受容能力があるが再感染においては不完全なプロファージを用いるのが最も有用で、ミニ細胞はその後感染せず、溶解性表現型の活性化の間に溶解する。代わりに、非限定的な例として、holin遺伝子ファミリーと分類された遺伝子など個別の遺伝子は、発現することができ溶原性プロファージの使用に伴う再感染の心配なしに同様のレベルの溶解を達成できる。両方の方法は、溶解事象はそれを達成するために用いる方法にかかわらず、受容できないほどの量のフリーエンドドキ
シンを培地中に放出するという事実によって制限される。このような大量のエンドトキシンの除去は難しく、時間がかかり、ロット間変動に悩まされ、最終的にコストが非常に高い。
【0083】
栄養要求性菌株の使用は隔世遺伝について注目が高まっており、ミニ細胞を片利共生的なまたは非病原性細菌菌種から産生されるものである場合でのみ、使用される。したがって、その用途は、ミニ細胞の産生で用いられる生存非病原性親細胞の削除方法として用いられるにとどまっている。
【0084】
UV照射による処理は、UV照射が核酸への効果についてはランダムで、ロット間変動が非常に高い結果となるいくつかの実施形態を除いて、ミニ細胞産生を実行する際の生存親細胞の除去に有用である。ある実施形態において、UV照射はランダムにすべての核酸に損傷を与えるため、治療用または予防用核酸を輸送するためにミニ細胞を使用する場合、UV照射は用いられない。例えば、プラスミドDNAはUV照射によるDNA損傷に敏感である可能性があり、ミニ細胞によって効果的に輸送されるものの、効果がないとされている。
【0085】
ジアミノピメリン酸(DAP)の喪失は、この方法は使用できる種の数に制限があることを除いて、生存親細胞の除去に有用である。言い換えれば、すべてのミニ細胞を産生する能力を持つ親細胞種が生存のためにDAPを必要とするわけではない。大腸菌のミニ細胞を産生する菌株におけるDAP突然変異体は野生型よりも好ましいとされるあるケースにおいて大きな利点がある。DAP使用の利点は、この化合物(ジアミノピメリン酸、大腸菌の細胞壁成分)は大腸菌の増殖に不可欠で、動物中に存在しないまたは動物によって産生されない。したがって、「生存可能」大腸菌のミニ細胞を産生する親細胞は、標的ミニ細胞に沿って投与され、親細胞は増殖することができず、それによって動物に対しておよびミニ細胞に関して不活性となる。aro遺伝子、好ましくはaroB遺伝子が除去された場合を除いて、サルモネラ属型ミニ細胞を産生する親菌株について同様の方法を用いることができる。
【0086】
選択的吸収の方法はミニ細胞を生きた親細胞から精製することに関してまだ探索されるべきである。選択的吸収は、それによって親細胞またはミニ細胞が基質への親和性により選択的に基質に吸収される工程、として定義される。非限定的な例として、高親和性タンパク質-タンパク質相互作用がこの用途に利用される。非限定的な例として、新規ミニ細胞外部膜タンパク質Lpp-OmpA::ProteinAは、多くの抗体のFc領域に高い親和性を持つ。Lpp-OmpA::ProteinAをコードする遺伝子は、誘導的なプロモーターの制御下にあり、ミニ細胞を産生する菌株の染色体に容易に導入される。ミニ細胞は、Lpp-OmpA::ProteinA遺伝子の発現の活性化に先立ちこの菌種から産生することができ、産生されたミニ細胞はその細胞表面でLpp-OmpA::ProteinA遺伝子を発現しないまたは提示しない。所望の量のミニ細胞が菌種から産生されると、培地中の生きた細胞はLpp-OmpA::ProteinAタンパク質を産生するためのシグナルを与えられ、Lpp-OmpA::ProteinAは生きた細胞においてのみ発現および提示される。Lpp-OmpA::ProteinAが生きた親細胞の表面で発現すると、親細胞は抗体またはタンパク質を含む他のFc領域でコートされた基質に容易に吸収される。吸収されると、使用する基盤の種類によって異なる多くの方法でミニ細胞を生きた親細胞から選択的に精製することができる。基質は、重力ろ過用途で用いられる固相クロマトグラフィーカラム、磁気ビーズ、イオン交換カラムまたはHPLCカラムを含むがこれに限定されない。
【0087】
ある実施形態において、ミニ細胞を含む組成物中のミニ細胞を産生する親細胞から実質的に分離される。例えば、分離後、ミニ細胞を含む組成物は、約99.99%、99.9
5%、99.9%、99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%または30%以上ミニ細胞を産生する親細胞が除かれている。ある実施形態において、電離放射線照射による滅菌に先立ち、組成物は約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%未満でミニ細胞を産生する親細胞を含む。
【0088】
ある実施形態において、最終組成物において、治療目的でin vivo投与された場合に、生きたまたはその他の親細胞不純物の含有量が十分に少なく毒性が強すぎないまたは標的ミニ細胞の活性を阻害しないことが好都合である。
【0089】
3.特定の細胞、組織および臓器に対する標的ミニ細胞
電離放射線照射により完全に滅菌されたミニ細胞型バイオ医薬品は、生物活性分子を標的化および輸送し、そうでなければ様々な方法を用いて特定のレセプター、タンパク質、核酸、細胞、組織および臓器型に対してその免疫調節性、免疫原性および治療用特性を発揮するために利用することができる。ミニ細胞の標的指向性の方法は、2つのカテゴリーを含むがこれに限定されない。1つ目は、目的とする特定の細胞、組織および臓器に対して親和性を元来持つ細菌種に由来するミニ細胞の使用である。2つ目の方法は、ミニ細胞が選択した特定のレセプター、タンパク質、核酸、細胞、組織および臓器を志向するように加工することである。2つ目の方法はさらに、例えば、(i)外因性ポリペプチドの標的指向性タンパク質の組み換え発現および表面提示、または(ii)外因的にミニ細胞表面に追加された標的指向性部位、のいずれかを含む2つのおおまかなカテゴリーに分類することができる。これらの方法の非限定的な応用および利用が本明細書により詳細に記載される。
【0090】
当業者に理解されるように、ミニ細胞は、エシェリヒア属、サルモネラ属、シゲラ属、ビブリオ属、ナイセリア属、カンピロバクター属、シュードモナス属、エルシニア属、クラミジア属、アシネトバクター属、リステリア属、バチルス属、ヘモフィルス属、クロストリジウム属、フランシセラ属およびリケッチア属を含むがこれに限定されない、様々な細菌種および菌株より作成することができる。これらの細菌種および菌株の多くは元々、それぞれ異なるレセプター、タンパク質、核酸、細胞、組織および臓器型に対して親和性を持つ。異なるレセプター、タンパク質、核酸、細胞、組織および臓器型に対して親和性を持つこれらの細菌種および菌株に由来するミニ細胞も、それを導く親細胞を含む生存可能染色体として、同じレセプター、タンパク質、核酸、細胞、組織および臓器に対して親和性を持つ。
【0091】
ミニ細胞は、例えば細胞に特異な標的指向性部位の組み換え発現およびミニ細胞表面提示を通じて選択的に特定の細胞型を標的とするように、加工することができる。この方法は、細菌膜タンパク質融合および提示技術、ならびに異種の細菌接着因子および他の細菌細胞接着またはインベイシン分子の発現を含む。前者の場合、ミニ細胞はポリペプチドを標的とする細胞に融合した外部膜タンパク質を発現および/または提示するよう加工され、細胞が標的とするポリペプチドは、細胞に特異な標的指向特性を前記ミニ細胞に与えるのに十分な量でミニ細胞の表面に提示される。細胞が標的とするポリペプチドが融合しうるおよびミニ細胞の表面に提示しうるそのような外部膜タンパク質は、Lpp-OmpA、LamB、TraA、OmpC、OmpF、FliC、FliD、IgAP、線毛タンパク質および繊毛タンパク質を含むがこれに限定されない。融合され、提示される標的指
向性ポリペプチドは、真核細胞膜タンパク質に特異な一本鎖抗体フラグメント(scFv)、真核細胞レセプターリガンド(EGF、VEGF、PDGFなど)およびファージ提示法のような直交スクリーニング技術によって到達した非自然発生型標的指向性ポリペプチドを含むがこれに限定されない。細菌細胞表面に局在化した接着因子およびインベイシンタンパク質の組み換え発現は、細胞に特異な標的指向特性を前記ミニ細胞に与えることにも利用される。この場合、真核細胞外部膜タンパク質に元々特異性を持つ細菌接着因子は、組み換え発現されるおよび前記膜タンパク質を発現する真核細胞にミニ細胞を選択的に標的とすることを与えるのに十分な量でミニ細胞表面に提示される。細菌接着因子およびインベイシン分子の例としては、仮性結核菌由来のインベイシン、大腸菌由来のFimH、インターナリンA、インターナリンBおよびIV型線毛を含むがこれに限定されない。
【0092】
ミニ細胞は、細胞特異性標的指向性部位をミニ細胞表面に非共有結合または共有結合する技術を用いて、選択的に特定の細胞型を標的とするように加工することができる。共有結合技術は、幅広い種類の標的指向性部位をミニ細胞の表面に結合する化学架橋剤の使用を包含する。そのような部位は、ポリペプチド、核酸および小分子およびそれぞれに適切な架橋試薬を含むがこれに限定されず、それぞれは、当業者により各部位の型に合わせて容易に選択される。架橋試薬は、表1に挙げたものを含むがこれに限定されない。共有結合でミニ細胞の表面に結合されるより好ましい標的指向性部位は、抗体および抗体誘導体を含むがこれに限定されない。抗体誘導体FcおよびFab,単一重鎖または軽鎖、ならびにその可変領域および相補性決定領域が特定のエピトープに対する特異性を与えることについて機能的である他の抗体誘導体を含むがこれに限定されない。使用される標的指向性部位の他の型は、レセプター特異性ポリペプチドリガンド(例えば、成長因子)、レセプター特異性ホルモンリガンドおよびアプタマーを含む。
【0093】
表1に、どの架橋剤が様々な目的に最も適しているかの記載とともに、様々な標的指向性分子をミニ細胞の表面に結合するために使用される化学架橋試薬の非限定的な種類を挙げる。表に挙げられているように、化学架橋剤の多くは、ミニ細胞の表面に置かれることがある二重特異性抗体型標的指向性部位を、前記ミニ細胞が特定の細胞、組織または臓器型を標的とすることができるようにする目的で、生成するのにも利用することができる。標的指向性分子を共有結合的にミニ細胞の表面に直接結び付ける架橋剤が用いられる場合、標的指向性分子、好ましくは抗体または抗体誘導体は、ある反応についての架橋剤の製造者の添付製品文書で提供される製品仕様書に従って機能化され、一方で結合するミニ細胞は、別個の反応(一般的にジチオトレイトール、2-betaメルカプトエタノールまたはトリス(2-カルボキシエチル)フォスフィン)などの還元剤)についての製造者のさらなる仕様書に従って機能化される。例えば、機能化された標的指向性部位および機能化されたミニ細胞は、好ましくは1ミニ細胞に対して1標的指向性分子を超えるモル比で、一緒に混合することができ、培養させて架橋剤の製造者の添付製品文書の明細書に従って結合反応を完了させることができる。ある実施形態において、1組の簡単な洗浄工程(例えば、ミニ細胞をペレット化するおよび標的のミニ細胞を緩衝溶液、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させる)の後に、室温または4℃のどちらかまたは両方で2~24時間の予備培養によって標的のミニ細胞にさらに小分子薬物または小核酸ペイロードを負荷することができる。ある実施形態において、培養の後、過剰な薬物および小核酸を洗い流し(ペレット化および再懸濁により)、標的のペイロードを含むミニ細胞を医薬品グレードの希釈剤中の薬学的に許容される賦形剤、好ましくはGRAS物質中に処方する。ある実施形態において、薬学的に許容される賦形剤(例えば、注射用滅菌水中のD-トレハロース)に再懸濁した後、ミニ細胞はそれぞれ密閉され栓をされたバイアルに入れて凍結懸濁液またはさらに凍結乾燥されたものとして保管することができ、凍結乾燥物は凍結した状態で保管することができる。凍結乾燥または凍結懸濁液状態のミニ細胞を含むバイアルは、次いで電離放射線照射により完全に滅菌され、利用するときまで凍結した状態で
保管することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0094】
抗体は、疾病の発生、進行、維持または症状に関与する特定の組織、臓器または細胞型をミニ細胞が標的とするのを助けるために使用することができ、免疫グロブリンまたはIgA、IgM、IgD、IgGおよびIgEを含むがこれに限定されない免疫グロブリンサブクラスに由来するまたは一部であることができる。細胞特異性抗原に対するサブクラス抗体はどれも、同じ目的を達成する適応免疫を通じて抗体反応を生成することが知られているどの動物からも育てることが可能であるが、ミニ細胞の標的化機能を促進することを意図している抗体のサブクラスはどれも、「ヒト化」することができる。自然に、抗体は生成されて、2つの分かれた腕(Fab’)を持ち、そのそれぞれは特定の抗原の同じエピトープを認識する。しかしながら、以下に記載するように、分子生物学の進歩により、研究者は各腕(またはあるケースでは、分子のFc領域)の特異性を修飾し、同じまたは異なる抗原において発生しうるまたはしえない明らかに異なるエピトープを認識するこが可能になった。これらの抗体誘導体は「二重特異性」抗体または「二重特異性」標的指向性部位と言われる。
【0095】
研究室では、抗体は異なる抗原に対して独立に特異性を持つように加工することができ
、ひとつの抗体は2つの別個の抗原を同時に標的とする。非限定的な例として、抗体は組み換えにより、一方のFab’において真正細菌ミニ細胞(例えば、LPS O-抗原またはポリンタンパク質)の想定される表面成分を認識するように加工することができ、および二重特異性抗体のもう一方のFab’は、真核細胞特異性表面抗原を認識するように加工することができる。このテーマについて他の非限定的なバリエーションにおいては、ある抗原(例えばLPS)に特定のエピトープを明確に結合するように抗体の重鎖のFc領域を遺伝子操作することができ、一方で分子のFab’部分は別の真核細胞特異性表面抗原の異なるエピトープを認識する、またはその逆である。組み換え方法により二重特異性抗体を生成するための方法と同じものは、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Bis-scFv、Fab2およびミニボディに用いることができ、そのそれぞれはミニ細胞の表面分子に特異的な一方の腕および標的真核細胞における抗原またはレセプターに特異的なもう一方の腕を含むよう加工することができる。
【0096】
加えて、当業者は、複合体中の一方の抗体はミニ細胞の表面に特異的に接着し、もう一方の抗体は真核細胞特異性表面抗原をin vivoで発現する特定の細胞、組織または臓器型を特異的に認識して「標的とする」ために提示する、ミニ細胞の表面に接着可能な二重特異性抗体誘導体を形成するために、異なる特異性を持つ2つの別個の抗体を、溶解性プロテインA、プロテインGまたはプロテインA/G(または2つ以上の抗体を認識し接着する他の結合分子)に結合させて非共有結合的に結合することができることを容易に認識することができるであろう。同様に当業者は、同じ効果をもたらす無数の架橋方法を用いて異なる特異性を持つ2つの別個の抗体を共有結合することができることを認識するであろう。
【0097】
標的指向性部位の非共有結合は、一方の部分がミニ細胞の表面を認識し、もう一方の部分が真核細胞膜タンパク質を認識する、二重特異性リガンドおよび二重特異性抗体の使用を含む。二重特異性抗体および抗体誘導体は、ミニ細胞の表面分子に特異的な相補性決定領域(CDR)を1つ以上、真核細胞に特異的なCDRを1つ以上含むものとして定義される。本明細書で開示される方法および組成物における使用に適した二重特異性抗体および二重特異性抗体誘導体の非限定的な例が、
図1に示される。二重特異性リガンドは、ある実施形態において、1つ以上のミニ細胞の表面に特異的な部分および真核細胞に特異的な別の部分を含むことができる。抗体および他のリガンドをミニ細胞に非共有結合的に結合する好ましい方法の1つが、国際公開第2012/112,696号に記載され、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。国際公開第2012/112,696号に記載される技術は、ミニ細胞の表面にあるプロテインAまたはプロテインGのFc結合領域を、融合タンパク質およびこれらのミニ細胞をFc領域含有抗体または他のポリペプチドリガンドに結合することにより提示し前記ミニ細胞に標的指向特性を与えるという方法を利用する。
【0098】
図1に示されるように、当技術分野で一般的に認識される様々な型の多価抗体誘導体サブタイプを用いて標的ミニ細胞を生成することができる。実施例1の各非限定的な例において、使用される抗体誘導体の少なくとも1つの腕はポリンタンパク質、鞭毛、線毛およびO抗原を含むがこれに限定されない1つ以上のミニ細胞の表面構造に特異的であり、1つ以上の付加的な腕は1つ以上の真核細胞標的に特異的である。架橋剤を用いて作成される二重特異性抗体(二重特異性(mab)
2および二重特異性F(ab’)
2)は、
図1に挙げたうちの適切な要素、特にSPDPまたは列挙されたその誘導体、を用いて生成される。示される他の多価抗体型は、当業者に周知の定着している組み換え型、選択、精製および特性付け技術を用いて作成される。
【0099】
抗体または他の標的指向性部位の共有結合および非共有結合が利用される用途において、標的指向性部位の結合に先立ち、第一にミニ細胞を親細胞から精製することが必須では
ないが好ましい。以下により詳しく記載されているように、精製されたミニ細胞は、それぞれ治療用、免疫調節性および免疫原性ペイロードを精製の時点で含んでいるか、またはペイロードが精製のあとでミニ細胞に加えられるかのいずれかである。ある実施形態において、これらの方法の両方の組み合わせを用いることが望ましい。後半の2つのシナリオの文脈において、標的指向性部位は、当業者の裁量により外因性ペイロードのミニ細胞への付加の前または後に加えることができる。最終的なミニ細胞組成物はついでさらに加工され、電離放射線照射による完全滅菌用に準備される。
【0100】
標的の治療用ミニ細胞上の抗体、抗体誘導体、他の標的指向性分子は選択的に、3β1インテグリン、α4β1インテグリン、α5β1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ1インテグリン、β1インテグリン、5T4、CAIX、CD4、CD13、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD40、CD44v6、CD45、CD51、CD52、CD54、CD56、CD64、CD70、CD74、CD79、CD105、CD117、CD123、CD133、CD138、CD144、CD146、CD152、CD174、CD205、CD227、CD326、CD340、Cripto、ED-B、GD2、TMEFF2、VEGFR1、VEGFR2、FGFR、PDGFR、ANGPT1、TIE1、TIE2、NRP1、TEK(CD202B)、TGFβR、細胞死受容体5(Trail-R2)、DLL4、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPHA10、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6、FAP、GPNMB、ICAMs、VCAMs、PSMA、HER-2/neu、IL-13R alpha 2、MUC-1、MUC16、EGFR1(HER-1)、EGFR2(HER-2/neu)、EGFR3(HER-3)、IGF-1R、IGF-2R、c-Met(HGFR)、メソテリン、PDGFR、EDGR、TAG-72、トランスフェリン受容体、EpCAM、CTLA-4、PSMA、テネイシンC、αフェトプロテイン、vimentin、C242抗原、TRAIL-R1、TRAIL-R2、CA-125、GPNMB、CA-IX、GD3ガングリオシド、RANKL、BAFF、IL-6R、TAG-72、HAMAおよびCD166を含むがこれに限定されない細胞特異的表面抗原を認識することができるが、これらを含む細胞特異的表面抗原を認識することに限定されない。
【0101】
ある実施形態において、抗体標的指向性部位、抗体誘導体および/または抗原に特異的な他の標的指向性分子により提示されるミニ細胞の表面の結合は、細胞内ペイロード輸送を促進しながら標的ミニ細胞の内在化を誘引するため、標的指向性部位は部分的に選択される。標的指向性成分として使用される、以前に記載した標的特異性抗体は、ある実施形態において、mAb 3F8、mAb CSL362、mAb CSL360、mAb J591、アバゴボマブ(Abagovomab)、アブシキシマブ(Abciximab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アフェリモマブ(Afelimomab)、アフツズマブ(Afutuzumab)、アラシツマブ(Alacizumab)、ALD518、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、アルツモマブ(Altumomab)、アナツモマブ(Anatumomab)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、アポリズマブ(Apolizumab)、アルシツモマブ(Arcitumomab)、アセリズマブ(Aselizumab)、アトリツマブ(Atlizumab)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネオズマブ(Bapineuzmab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、バビツキシマブ(Bavituximab)、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ(Belimumab)、ベンラリズマブ(Benralizumab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、ベシレソマブ
(Besilesomab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ビシロマブ(Biciromab)、ビバツズマブ(Bivatuzumab)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブレンツキシマブ(Brentuximab)、ブリアキヌマブ(Briakinumab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、カンツズマブ(Cantuzumab)、カプロマブ(Capromab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、CC49、セデリズマブ(Cedelizumab)、セルトリズマブ(Certolizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、mAb528、シタツズマブ(Citatuzumab)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クレノリキシマブ(Clenoliximab)
、クリバツズマブ(Clivatuzumab)、コナツムマブ(Conatumumab)、CR6261、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、デノスマブ(Denosumab)、デツモマブ(Detumomab)、ドルリモマブ(Dorlimomab)、ドルリキシズマブ(Dorlixizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ(Eculizumab)、エドバコマブ(Edobacomab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、エファリズマブ(Efalizumab)、エフングマブ(Efungumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エンリモマブ(Enlimomab)、エピツモマブ(Epitumomab)、エプラツズマブ(Epratuzumab)、エルリズマブ(Erlizumab)、エルツマクソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、エクシビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、ファラリモマブ
(Faralimomab)、ファルレツズマブ(Farletuzumab)、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ(Fezakinumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、フォントリズマブ(Fontolizumab)、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、ガリキシマブ(Galiximab)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)、ガビリモマブ(Gavilimomab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレムバツムマブ(Glembatumumab)、ゴリムマブ(Golimumab)、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、イルビツモマブ(Irbitumomab)、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ(Imciromab)、インフリキシマブ(Infliximab)、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ(Inolimomab)、イノツズマブ(Inotuzumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、イラツムマブ(Iratumumab)、J591、ケリキシマブ(Keliximab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、レマレソマブ(Lemalesomab)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)、レクサツムマブ(Lexatumumab)、リビビルマブ(Libivirumab)、リンツズマブ(Lintuzumab)、ロルボツズマブ(Lorvotuzumab)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ、(Lumiliximab)、マパツムマブ(Mapatumumab)、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ(Matuzumab)、メポリゾマブ(Mepolizomab)、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミツモマブ(Mitumomab)、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ(Motavizumab)、ムロモナブ(Muromonab)、ナコロマブ(Nacolomab)、ナプツモマブ(Naptumomab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ネバクマブ(Nebacumab)、ネシツツマブ(Necitutumab)、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、オヅリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、オララツマブ(Olaratumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、オポルツズマブ(Oportuzumab)、オレゴボマブ(Oregovomab)、オテリキシズマブ(Otelixizumab)、パギバキシマブ(Pagibaximab)、パリビズマブ(Palivizumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、パノバクマブ(Panobacumab)、パスコリズマブ(Pascolizumab)、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、パキセリズマブ(Pexelizumab)、ピンツモマブ(Pintumomab)、プリリキシマブ(Priliximab)、プリツムマブ(Pritumumab)、PRO140、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)、レガビルマブ(Regavirumab)、レシリズマブ(Resilizumab)、リロツムマブ(Rilotumumab)、リツキシマブ(Rituximab)、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロンタリズマブ(Rontalizumab)、ロベリズマブ(Rovelizumab)、ルプリズマブ(Ruplizumab)、サツモマブ(Satumomab)、セビルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ(Sifalimumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シプリズマブ(Siplizumab)、ソラネズマブ(Solanezumab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ(Stamulumab)、スレソマブ(Sulesomab)、タカツズマブ(Tacatuzumab)、タドシズマブ(Tadocizumab)、タリズマブ(Talizumab)、タネズマブ(Tanezumab)、タプリツモマブ(Taplitumomab)、テフィバズマブ(Tefibazumab)、テリモマブ(Telimomab)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テプリズマブ(Teplizumab)、TGN1412、チシリムマブ(Ticilimumab)、ティガツズマブ(Tigatuzumab)、TNX-650、トシリズマブ(Tocilizumab)、トラリズマブ(Toralizumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、ツコツズマブ(Tucotuzumab)、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウルトキサズマブ(Urtoxazumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、バパリキシ
マブ(Vapaliximab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、ベパリモマブ(Vepalimomab)、ビジリズマブ(Visilizumab)、ボロシキシマブ(Volociximab)、ボツムマブ(Votumumab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、ザノリムマブ(Zanolimumab)、ジラリムマブ(Ziralimumab)、ゾリモマブ(Zolimomab)、および前述のものの任意の組合せを含むがこれに限定されない。
【0102】
4.ミニ細胞へのペイロード負荷
真正細菌ミニ細胞は、動物、例えば哺乳類(例えばヒト)に対して治療的、免疫調節性、免疫原性および/または診断的な恩恵がある、いくつかのクラスの生物学的に活性な化合物をカプセル化および輸送することができる。ミニ細胞によって輸送されうる生物学的に活性な化合物(ペイロード)のタイプは、小分子(小分子薬物を含む)、核酸、ポリエステル、放射性同位体、脂質、リポ多糖体およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれに限定されない。ミニ細胞に生物活性なペイロードを負荷する方法は、2つのカテゴリーの方法を含み、これら2つのカテゴリーの方法は組み合わせてもよい。1つ目のカテゴリーの方法は、外因性のペイロードの物理的または化学的な方法でのミニ細胞への負荷である。2つ目のカテゴリーの方法は、生物活性なペイロードの組み換え型のミニ細胞中での産生または発現である。
【0103】
ミニ細胞にペイロードを負荷する1つ目の方法は、外因性の小分子薬物の負荷に適しているがそれに限定されない。本明細書で使用されるように、用語「小分子」は、生物学的効果を持ち、分子量が5000未満である分子を指す。ある実施形態において、小分子は分子量が2500未満である。ある実施形態において、小分子は分子量が1000未満である。ある実施形態において、小分子は分子量が800未満である。ある実施形態において、小分子は分子量が500未満である。小分子薬物は、動物(ヒトを含む)に対して薬理的な治療効果をもたらすこれらの小分子を含む。
【0104】
ある実施形態において、小分子は、ミニ細胞を高濃度の前記小分子中で培養することによって、ミニ細胞に負荷される。時間とともに、小分子は受動的にミニ細胞内に拡散し、ミニ細胞の様々な分子構成と相互作用して、ミニ細胞に取り込まれる。小分子は、ある実施形態において、ミニ細胞から標的細胞へ放出され、ミニ細胞がエンドソームに吸収されると分解/放出工程が続いて起きる。
【0105】
ミニ細胞での使用に適した小分子薬物の種は、抗生物質(抗感染剤、抗腫瘍剤および抗ウイルス剤)、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬理的小分子剤から選択することができるがこれに限定されない。この文脈で使用されうる抗生物質(抗感染剤、抗腫瘍剤および抗ウイルス剤)は、(1)アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン)などのDNA損傷剤およびDNA合成を阻害する剤、アルキル化剤(ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルマスティン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトタン、マイトマイシン、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオテパおよびトリエチレンメラミン)、白金誘導体(シスプラチン、カルボプラチン、cis-ジアンミンジクロロ白金)、テロメラーゼおよびトポイソメラーゼ阻害剤(Camptosar)、(2)タキサン類およびタキサン誘導体(パクリタキセル、ドセタキセル、BAY59-8862)を含むがこれに限定されない微小管およびチューブリン結合剤、(3)カペシタビン、クロロデオキシアデノシン、シタラビン(およびその活性化形態ara-CMP)、シトシンアラビノシド、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、5-DFUR、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ペントスタチン、トリメトレキサートおよび6-チオグアニンなどの代謝拮抗物質、(4)血管新生阻害剤(サリドマイド、スニチニブ、レナリドミド)、血管破裂剤(フラボノイド/フラボン、DMXAA、
CA4DP、ZD6126、AVE8062Aなどのコンブレタスタチン誘導体)、(5)アロマターゼ阻害剤などの内分泌療法(4-ヒドロアンドロステンジオン、エキセメスタン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、レトロゾール)、(6)抗エストロゲン剤(タモキシフェン、トレミフェン、ラオキシフェン、Faslodex)、デキサメタゾンのようなステロイド剤、(7)Toll様受容体作動薬または拮抗薬などの免疫調節剤、(8)インテグリン、その他の接着タンパク質およびマトリックスメタロプロテイナーゼに対する阻害剤、(9)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、(10)イマチニブ(Gleevec)のようなチロシンキナーゼ阻害剤などのシグナル伝達阻害剤、(11)熱ショックタンパク質阻害剤、(12)全トランスレチノイン酸のようなレチノイド、(13)増殖因子受容体阻害剤または増殖因子それ自体、(14)ナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗有糸分裂化合物、(15)COX阻害剤のような抗炎症剤、(16)チェックポイント調節剤およびテロメラーゼ阻害剤などの細胞周期調節剤、(17)転写因子阻害剤およびBcl-2、Bcl-xおよびXIAPの阻害剤などのアポトーシス誘導因子、および前述の1~17の任意の組み合わせを含むがこれに限定されない。
【0106】
ミニ細胞に治療用、免疫原性および免疫原性ペイロードを負荷する2つ目の方法は、ミニ細胞中でのペイロードの組み換え型の発現または産生を介することができる。ミニ細胞が産生されるのに先立ってまたは同時に、ミニ細胞を産生する親細胞を、1つ以上の治療用、免疫調節性および/または免疫原性核酸分子および/またはポリペプチドを組み換え技術によって発現/産生するために用いることができる。in vivoまたはin vitroにおいて、組み換え型核酸および/またはポリペプチドはミニ細胞によって発現され、ミニ細胞内に分離され、カプセル化され、次いで、標的ミニ細胞によって真核細胞に輸送される。
【0107】
ミニ細胞によって輸送される、組み換え技術によって発現/産生する治療用、免疫調節性および/または免疫原性核酸の例としては、RNA干渉分子、リボザイム、二本鎖治療用RNA(例えばdsRNAまたはsiRNA)、一本鎖治療用RNA(例えばshRNA)、マイクロRNA、長鎖ノンコーティングRNA、CRISPR RNA、アプタマー、リボザイム、治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする真核細胞発現プラスミド、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれに限定されない。核酸の組み換え型の発現は、プラスミド、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BACs)および前述の例の任意の組み合わせを含むがこれに限定されない当技術分野で知られている様々なエピソーム性組み換え型原核生物発現ベクターの発現の結果とすることができる。組み換え型の発現は、ミニ細胞を産生する親細胞染色体の1つ以上の複製中に存在する染色体上にある原核細胞の発現カセットにより達成することができる。輸送される核酸分子が作用の「遺伝子抑制」機構を通じてその効果を表す場合、核酸は1つ以上の異なる真核細胞mRNA転写産物に対して特異的である。核酸は同じミニ細胞によって輸送され、一回の輸送イベントで1つ以上の遺伝子が抑制される。標的ミニ細胞はこれらの核酸のいずれかを組み合わせて輸送する目的でも使用される。加えて、標的ミニ細胞は1つ以上の小分子薬物を1つ以上の核酸と同時に輸送する目的で使用される。
【0108】
治療用核酸分子が、親細胞によって原核細胞の発現カセットによる組み換え型の発現という方法で予備形成され(場所において染色体性またはエピソーム性)、次いでミニ細胞中に二本鎖RNA(例えばsiRNA)または折りたたまれヘアピン構造となることができる一本鎖RNA(例えばshRNA)としてパッケージされる場合、細胞内二本鎖および/またはヘアピンRNA分子の分解を担うRNA分解酵素遺伝子(例えば原核細胞RNaseIII)の欠失または非機能性変異をもたらすミニ細胞を産生する細菌の菌株を用いることにより、ミニ細胞中での治療用RNAの半減期は増加する。RNA分解酵素がない場合、治療用RNA分子は高度に堆積し、標的ミニ細胞が治療用核酸分子を輸送する能力が
高まる。大腸菌ミニ細胞産生菌株の場合、変異または欠失がrnc遺伝子に導入され、この種においては唯一知られている体細胞RNaseIIIをコードする。
【0109】
ミニ細胞によって輸送される組み換え技術によって発現した治療用、免疫調節性および免疫原性ポリペプチドは、タンパク毒素、コレステロール依存性細胞溶解素、機能性酵素、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞浸透性ペプチド、ワクチン抗原および極性を調節するおよび/または半減期を延長する目的で設計された分子との複合体(例えば脂質またはポリエチレングリコール)を含む前述の例の任意の組み合わせを含むがこれに限定されない。ポリペプチドの組み換え型の発現は、プラスミド、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BACs)および前述の例の任意の組み合わせを含むがこれに限定されない当技術分野で知られている様々なエピソーム性組み換え型原核生物発現ベクターの発現の結果とすることができる。同様に、組み換え型の発現は、ミニ細胞を産生する親細胞染色体の1つ以上の複製中に存在する染色体上にある原核細胞の発現カセットにより達成することができる。本出願の標的ミニ細胞を用いたタンパク毒素の輸送は、細胞の選択的なin vivoでの欠失が望ましい用途において有利な方法である。ペイロードおよび/または毒性ペイロードとしての機能のエンドソーム輸送を促進することができるタンパク毒素は、ジフテリア毒素のフラグメントA/B、ジフテリア毒素のフラグメントA、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリシンB、ボツリノリシンE3、ボツリノリシンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、Bおよびα、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、パーフリンゴリジンO、シュードモナス外毒素A、大腸菌易熱性毒素(LTB)、メリチン、リステリオリシンOのpH安定性異型体(pH非依存性;L461Tのアミノ酸置換)、リステリオリシンOの熱安定性異型体(E247MおよびD320Kのアミノ酸置換)、リステリオリシンOのpHおよび熱安定性異型体(E247M、D320KおよびL461Tのアミノ酸置換)、ストレプトリシンO、ストレプトリシンOc、ストレプトリシンOe、スフェリコリシン(sphaericolysin)、アントロリシン(anthrolysin)O、セレオリシン(cereolysin)、チューリンゲンシリシン(thuringiensilysin)O、ワイヘンステファネンシリシン(weihenstephanensilysin)、アルベオリシン(alveolysin)、ブレビリシン(brevilysin)、ブチリクリシン(butyriculysin)、テタノリジンO(tetanolysin)、ノビリシン(novyilysin)、レクチノリシン(lectinolysin)、ニューモリシン、ミチリシン(mitilysin)、シュードニューモリシン、スイリシン(suilysin)、インターメジリシン(intermedilysin)、イバノリシン(ivanolysin)、ゼーリゲリオリシン(seeligeriolysin)O、バジノリシン(vaginolysin)、ピオリシン(pyolysin)およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれに限定されない。サイトカインはミニ細胞中で組み換え技術によって発現し、ミニ細胞によって輸送され、治療用および免疫調節性効果を表す。ミニ細胞中発現し、ミニ細胞によって輸送されるサイトカインは、粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)、インターフェロン・アルファ2b(IFN-α2b)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-1a(IL-1a)、インターロイキン12(IL-12)およびTRAILを含むがこれに限定されない。組み換え技術によって発現され輸送されるワクチン抗原は、細菌の、ウイルスのおよび寄生生物のゲノム中でコードされたものを含むがこれに限定されない。組み換え技術によって発現され輸送されるワクチン抗原はまた、これらの抗原および、癌胎児性抗原(CEA)、メソテリン、ムチン1(MUC1)、BAGE、GAGE、MAGE、SSX、EGFRvIII、Her-2、Gp100、Melan-A/Mart-1、チロシナーゼ、PSA、マンマグロビンA、p53、リビン(livin)、サバイビン(survivin)、βカテニン-m、HSP70-2/m、HLA-A2-R17OJ、WT1、PR1、E75、ras、AFP、URLC10、p53突然変異体およびNY-ESO-1を含むがこれに限定されないがん細胞上に存在する新生抗原を含む。
【0110】
ポリペプチドは、当業者の裁量で、ミニ細胞の異なる細胞内コンパートメントに局在化することができる。本明細書で開示される標的ミニ細胞がミニ細胞を産生するグラム陰性親株に由来する場合、それから産生された組み換え発現したポリペプチドは、細胞質ゾル、内膜の内葉、内膜の外葉、ペリプラズム、外膜の内葉、ミニ細胞の外膜および前述のものの任意の組み合わせに局在化することができる。本明細書で開示されるが標的ミニ細胞ミニ細胞を産生するグラム陽性親株に由来する場合、それから産生された組み換え発現した治療用ポリペプチドは、細胞質ゾル、細胞壁、膜の内葉、ミニ細胞の膜よび前述のものの任意の組み合わせに局在化することができる。
【0111】
ポリペプチドペイロードが、親細胞によって真核細胞の発現カセット(場所においてクロモソーマルまたはエピソーム)による組み換え型の発現という方法で予備形成され、次いでミニ細胞の内部にペイロードとしてパッケージされる場合、タンパク質分解を担うプロテアーゼ遺伝子(例えば大腸菌のlonプロテアーゼ)の欠失または非機能性変異をもたらすミニ細胞を産生する細菌の菌株を用いることにより、ミニ細胞中でのポリペプチドペイロードの半減期は増加する。プロテアーゼがない場合、ポリペプチドペイロードは高度に堆積し、標的ミニ細胞がポリペプチドペイロードを輸送する能力が高まる。大腸菌ミニ細胞産生菌株の場合、変異または欠失がlon、tonB、abgA、ampA、ampM、pepP、clpP、dcp、ddpX/vanX、elaD、frvX、gcp/b3064、hslV、hchA/b1967、hyaD、hybD、hycH、hycI、iadA、ldcA、ycbZ、pepD、pepE、pepQ、pepT、pmbA、pqqL、prlC、ptrB、sgcX、sprT、tldD、ycaL、yeaZ、yegQ、ygeY、yggG、yhbO、yibG、ydpF、degS、ftsH/hflB、glpG、hofD/hopD、lepB、lspA、pppA、sohB、spa、yaeL、yfbL、dacA、dacB、dacC、degP/htrA、degQ、iap、mepA、nlpC、pbpG、tsp、ptrA、teas、umuD、ydcP、ydgD、ydhO、yebA、yhbU、yhjJおよびnlpD遺伝子のうち1つ以上に導入される。
【0112】
標的真核細胞が細胞質ゾルへ放出されるよりも前に輸送されたポリペプチドおよび/または核酸がプロスターゼおよびヌクレアーゼの多いエンドソームコンパートメント環境に長時間暴露されると、レセプター介在エンドサイトーシスという方法での、治療用、免疫調節性および免疫原性ポリペプチドおよび核酸の効果的な輸送は制限することができる。多くのポリペプチドおよび核酸はエンドソームコンパートメントを脱出する能力を本来持っていない。コレステロール依存細胞溶解素/毒素(例えばLLO、パーフリンゴリジンO(PFO)およびストレプトリジンO(SLO))およびジフテリア毒素フラグメントA/B(フラグメントBの介在により脱出する)、リシン、シュードモナス外毒素Aを含むタンパク毒素の一種によるわずかな例外が存在する。内因性エンドソーム脱出能をもつタンパク毒素は、効果的であるために標的ミニ細胞における別個のエンドソーム崩壊要素との共存を特別必要とせず、エンドソーム崩壊剤を含めるという決定は熟練者の裁量により行われる。他のポリペプチドおよび核酸はエンドソームコンパートメントを脱出する内因性能力を持たないため、熟練者は、エンドソーム経路により輸送される多くの様々な治療用ポリペプチドについてエンドソーム脱出の増強が望ましいということを認識するであろう。細胞内グラム陽性病原性細菌リステリア・モノサイトゲネスのリステオリシンO(LLO)タンパク質は、本出願の、ポリペプチドまたは核酸ペイロード要素または最良の活性を示すためにはエンドソーム脱出を必要とする他の治療用ペイロードを含むがこれに限定されない実施形態に取り込まれることができる。ある実施形態において、完全長のLLO(シグナル分泌配列を含む)がエンドソーム崩壊剤として使用される。ある実施形態において、LLOのシグナル配列(cLLOを作成する)が当技術分野で既知の組み換え技術を用いて遺伝子レベルで取り除かれ、cLLOはエンドソーム崩壊剤として使用される。ある実施形態において、LLOの熱安定性および/またはpH非依存性型(E247
M、D320Kおよび/またはL461T、sLLOpH変異体をもつ)が用いられる。治療用ポリペプチドおよび/または核酸を発現するミニ細胞を産生する最近の菌株において発現する場合、LLO(またはLLO異型体のいずれか、または他のエンドソーム脱出促進剤)は、治療用ポリペプチドおよび/または核酸と共にカプセル化することができる。ミニ細胞を標的とする際、レセプター介在エンドサイトーシスはミニ細胞をエンドソーム内に運ぶ。エンドソームの過酷な環境により、取り込まれたミニ細胞は、エンドソーム崩壊剤(例えばLLOまたはLLO異型体のいずれか、または他のエンドソーム崩壊剤)とともにペイロードを放出しながら分解を始める。放出されたエンドソーム崩壊剤は、ペイロードがエンドソームからペイロードが本来の生物学的効果を発揮できる場所である細胞質ゾルへ放出されるのを促進する。LLOに加えて、好ましいエンドソーム崩壊剤は、PFOおよびSLOならびにそれらの誘導体などの他のサイトリシン、ならびにPI-PLCまたはPC-PLCなどのホスホリパーゼを含む。
【0113】
標的治療用、免疫調節性および免疫原性ミニ細胞として使用されるのに加えて、本明細書で開示されるミニ細胞は、標的免疫原性ミニ細胞ワクチンとしても使用できる。タンパク質抗原および/またはDNAワクチンを負荷したミニ細胞は、細胞サブセットを表すこれらの抗原により発現された真核細胞表面マーカーに特異的な抗体または他のミニ細胞表面提示分子を用いることにより、免疫システムの細胞を表す抗原の明らかに異なるサブセットを直接標的とする。ある実施形態において、抗原またはDNAワクチンの真核細胞の細胞質ゾルへの輸送を促進し細胞性免疫を刺激するMHCクラスIの負荷を促進するために、LLOまたはその異型株(上述)の1つを含むことが必須ではないが望ましい。大部分のMHCクラスII結合が発生するエンドソームコンパートメントに抗原を保持することにより、MHCクラスIIの負荷を促進して体液性(抗体介在)免疫を刺激することもまた望ましい。これは標的ミニ細胞ワクチンのLLOコンポーネントを削除または低減することにより達成される。加えて、標的ワクチンミニ細胞は、熟練者によって適切とみなされた外因性アジュバントを発現するかまたは負荷されるかのいずれかになるようにさらに加工される。アジュバントは一般的なアジュバント(キーホールリンペットヘモシアニンまたは完全フロイントアジュバントなど)または標的分子アジュバントとすることができる。標的分子アジュバントは、Toll様受容体作動薬または拮抗薬、および免疫調節性を持つ他の細胞構成要素を含む。標的ワクチンは、細菌、ウイルスおよび寄生生物に起因する感染性疾患の病原体に対する免疫をレシピエントに付与する。標的ワクチンは、自己の腫瘍および他の異常疾患に対する免疫もまたレシピエントに付与する。
【0114】
前述のミニ細胞組成物はいずれも、創生および必要な特性付けの後に、前記ミニ細胞組成物は医薬組成物に処方され、医薬品グレードの滅菌容器に充填され、栓をされ、密閉され、放射線照射により完全滅菌される。
【0115】
5.医薬組成物
本出願はまた、医薬組成物を含むがこれに限定されない組成物に関する。本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、少なくとも1つの賦形剤、好ましくは生理学的に許容される賦形剤、および1つ以上のミニ細胞組成物を含む混合物を指す。前記医薬組成物は、1つ以上の「希釈剤」または「担体」をさらに含んでもよい。
【0116】
本明細書で使用される用語「賦形剤」は生物学的に活性なペプチドの細胞または組織への組み込みを抑制または妨害しない化学化合物または化合物の組み合わせを指す。賦形剤は組成物に適切な特性、例えば、目的とする活性物質濃度、適切な濃度や安定性を与えるためおよび/または活性物質の標的への輸送が促進されるという特性をもたらすために加えることができる、ほぼ不活性な物質である(例えば薬剤処方)。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などのフィラー、流動促進剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、高分子(持続放出)、トウモロコシでんぷん、小
麦のでんぷん、米デンプン、寒天、ペクチン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸、カゼインバレイショでんぷん、ゼラチン、トラガカント・ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤、エタノール、ポリエチレングリコール、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、香料、錯化剤、凍結乾燥保護剤および抗凍結剤などの共溶媒を含む。電離放射線照射による完全滅菌を受けたミニ細胞処方中のある好ましい賦形剤は、滅菌水中のD-トレハロースである。D-トレハロースの濃度を変えたものまたは希釈剤を変えたものも使用してよいが、好ましいD-トレハロース濃度は12%(w/v)であり、好ましい希釈剤は滅菌水である。
【0117】
「希釈剤」とは薬学的に許容される溶媒、例えば組成物の溶媒中への溶解を促進する水性溶媒であり、組成物または1つ以上のその要素の生物学的に活性な形態を安定化することができる。緩衝溶液を作成するための水中に溶解した塩が希釈剤として当技術分野で利用され、好ましい希釈剤は1つ以上の異なる塩を含む緩衝溶液である。好ましい緩衝溶液の非限定的な例は、緩衝溶液は投与経路、緩衝能力、および投与される製品の容積によって極端なpHで調整され使用されるにもかかわらずヒト血液の塩状態を再現するためリン酸緩衝生理食塩水である(特に薬物投与を目的とした組成物と結合して)。緩衝塩は溶液のpHを低い濃度に制御することができるため、緩衝希釈剤は組成物または医薬組成物の生物学的活性をほとんど変えない。
【0118】
本明細書で使用される用語「担体」は、活性成分が、適切な薬剤形態に処方されるまたは構成されるようにする不活性物質である(例えば、微粒子(例えばマイクロスフィア)、ピル、カプセル、タブレット、溶液、コロイド、懸濁液、乳濁液、フィルム、ゲル、クリーム、軟膏、ペーストなど)。「生理学的に許容される担体」は、化合物の生物学的な活性および特性を止める(低減させる、抑制する、妨害する)ことがない、生理学的条件での使用に適した化合物である。好ましくは、担体は生理学的に許容される担体、好ましくは薬学的にまたは獣医学的に許容される担体であり、その中にミニ細胞組成物を配置する。
【0119】
「医薬組成物」は、賦形剤が薬学的に許容される賦形剤である組成物を指し、一方で「獣医学的組成物」は賦形剤が獣医学的に許容される賦形剤であるものである。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される賦形剤」または「獣医学的に許容される賦形剤」は、生物学的にまたはそれ以外で不適切でない、つまり、その賦形剤はミニ細胞組成物とともに生物に投与することができ、複合物またはその要素のいずれかまたはその生物と望ましくない生物学的効果または有害な相互作用を起こさない、培地または物質を含む。薬学的に許容される賦形剤の例が、参照によって本明細書に取り込まれている米国薬局方、国民医薬品集、米国薬局方協会(ロックビル、メリーランド、1990)において提供されている。用語「治療的に有効な量」および「薬学的に有効な量」は、標的細胞、組織または生物の体に治療上の応答を誘引するまたは引き起こすのに十分な量を指す。何が治療的に有効な量を構成するかは様々な因子に依存し、熟練した施術者は、望ましい投薬に到達する際にそれを考慮するであろう。
【0120】
必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどの塩などの崩壊剤も含むことができる。他の適切な賦形剤および担体としては、ハイドロゲル、ゲル化親水コロイドおよびキトサンが含まれる。キトサンマイクロスフィアおよびマイクロカプセルは担体として使用することができる。国際公開第98/52547号を参照のこと(胃に対する標的指向性化合物のマイクロスフィアの処方が記載され、前記処方は1つ以上の活性成分を含む内部核(ゲル化ハイドロコロイドを任意で含む)、活性分子の放出速度を制御する水不溶性ポリマー(例えばエチルセルロース)および
生体接着性カチオン性ポリマー、たとえばカチオン性多糖類、カチオン性タンパク質および/または合成カチオン性ポリマーからなる外部膜を含む、米国特許第4,895,724号)。一般的にキトサンは適切な薬剤、例えばグルタルアルデヒド、グリオキサル、エピクロルヒドリンおよびスクシンアルデヒドを用いて架橋されている。担体としてキトサンを用いている組成物は、ピル、タブレット、微粒子、活性化成分を制御しながら放出できるものを含むマイクロスフィアを含む幅広い薬剤形状に処方することができる。他の適切な生体接着性カチオン性ポリマーは、酸性ゼラチン、ポリガラクトサミン、ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリ4級アンモニウム化合物、プロラミン、ポリイミン、ジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE)、DEAE-イミン、DEAE-メタクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-デキストラン、DEAE-セルロース、ポリpアミノスチレン、ポリオキセタン、コポリメタクリレート、ポリアミドアミン、カチオン性でんぷん、ポリビニルピリジンおよびポリチオジエチルアミノメチルエチレンを含む。
【0121】
組成物は任意の適切な方法で処方することができる。例えば、ミニ細胞組成物は均一に(ホモ)または不均一に(ヘテロ)担体中に分散することができる。ミニ細胞組成物の適切な剤形は、コロイド溶液、乾燥粉末、凍結懸濁液、液体懸濁液および凍結乾燥製剤を含むがこれに限定されない。乾燥剤形は、凍結乾燥および凍結乾燥粉末を含み、これらは副鼻腔または肺へのエアロゾル輸送、または長期保存とその後の投与前に適切な希釈剤で再構成することに特に適している。他の好ましい乾燥剤形は、本明細書で開示される組成物を圧縮して経口投与に適したピルまたはタブレットに成型するもの、または調合して徐放性製剤とするものを含む。組成物が経口投与で腸の上皮に輸送されることを意図している場合、ある実施形態において、製剤を保護しそれに含まれているミニ細胞組成物の早期放出を防ぐために、製剤は腸溶コーティングでカプセル化されたものであることが有利である。当業者により、本明細書で開示される組成物は任意の適切な投与形態にすることができることが理解される。ピルおよびタブレットはそのような投与形態のいくつかを表す。組成物もまた任意の適切なカプセル化またはコーティング物質で、例えば圧縮、浸漬、パンコーティング、噴霧乾燥などによって、カプセル化することができる。適切なカプセルはゼラチンおよびでんぷんで作成されたものを含む。次に、必要に応じて、そのようなカプセルを1つ以上の追加物質でコーティング、例えば腸溶コーティングすることができる。液体剤形は水溶液製剤、ゲルおよび乳濁液を含む。
【0122】
いくつかの好ましい実施形態では、生体接着性、好ましくは粘膜接着性コーティングを含む組成物を提供する。「生体接着性コーティング」は、それがない場合よりも、物質(例えばミニ細胞組成物)が生物学的表面に良く接着できるようにするコーティングである。「粘膜接着性コーティング」は、それがない場合よりも、物質、例えば組成物が粘膜に良く接着できるようにするより好ましい生体接着性コーティングである。例えば、ミニ細胞を粘膜接着性物質でコーティングすることができる。コーティングされた粒子は、次に臓器への輸送に適した投与形態に組み立てられる。好ましくは、標的となる細胞表面の輸送部位が発現している部分に応じて、所望の場所に到達するまで製剤を保護するために前記投与形態は別のコーティング剤でコートされたものになり、粘膜接着性物質は、組成物が標的細胞表面の輸送部位と相互作用する間、製剤を保持することができる。
【0123】
本明細書で開示される組成物は、任意の生物、好ましくは動物、好ましくは哺乳類、鳥類、魚類、昆虫またはクモ類に投与することができる。好ましい哺乳類は、ウシ亜科、イヌ科、ウマ科、猫科、ヒツジ、豚および非ヒト霊長類を含む。ヒトは特に好ましい。複数の投与方法または輸送方法が当技術分野に存在し、眼、耳、口腔、経口、直腸(例えばかん腸または坐薬)、膣内、経尿道、経鼻、経肺、非経口および局所投与が含まれるがこれに限定されない。好ましくは、意図した効果を達成するために十分な量の生物学的に活性なペプチドが輸送される。特定量の組成物が輸送されるには、達成すべき効果、組成物が
輸送される臓器の型、輸送経路、投薬計画、およびその生物の年齢、健康状態、性別を含む多くの因子に依存する。そのため、ある製剤に取り込まれている組成物の詳細な投与量は当業者の裁量に委ねられている。
【0124】
当業者により、特定の、治療用、診断用または予防用(ワクチン接種を含む)効果を含む望ましい生物学的結果を得るために本明細書で開示される組成物が作用薬として投与される場合、ミニ細胞組成物と適切な薬学的担体を組み合わせることが可能である。薬学的担体の選択およびミニ細胞の治療用または予防用物質としての調製は、意図する用途および投与方法に依存する。治療薬の適切な剤形および投与方法は、経口、経肺、経鼻、口腔、眼、経皮、直腸、静脈内、膀胱内、髄腔内、頭蓋内、腫瘍内、胸膜、膣内輸送を含むがこれに限定されない。
【0125】
用いる輸送方法に応じて、文脈に依存する機能を持つ物質を、様々な薬学的に許容される形態で輸送することができる。例えば、文脈に依存する機能を持つ物質は、ピル、カプセル、タブレット、座薬、エアロゾル、飛沫またはスプレーに取り込まれた固体、懸濁液、溶液、乳濁液、分散液などの形態で輸送することができる。ピル、タブレット、座薬、エアロゾル、粉末、飛沫およびスプレーは、複雑な多層構造をとることができ、幅広いサイズが可能である。エアロゾル、粉末、飛沫およびスプレーの平均サイズは小さいもの(サブミクロン)から大きいもの(≧200ミクロン)まで幅がある。
【0126】
本明細書で開示される医薬組成物は、固体、凍結乾燥粉末、溶液、乳濁液、分散液などの形態で使用することができ、結果として得られる組成物は、1つ以上の本明細書で開示される化合物を活性成分として腸内用途または非経口用途に適した有機または無機担体または賦形剤との混合物の状態で含む。活性成分は、例えば、タブレット、ペレット、カプセル、座薬、溶液、乳濁液、懸濁液および他の使用に適した形態のための、通常の非毒性の薬学的に許容される担体と共に調合することができる。使用できる賦形剤は、グルコース、ラクトース、マンノース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、トレハロース、でんぷん糊、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシでんぷん、ケラチン、コロイダルシリカ、バレイショでんぷん、尿素、中鎖トリグリセリド、デキストランおよび、固体、半固体または液体調製物の製造での使用に適した他の担体を含む。加えて、助剤、安定化剤、増粘剤、香味剤および着色剤を使用してもよい。安定化剤の例として、トレハロース、好ましくは濃度0.1%以上(米国特許第5,314,695を参照のこと)が含まれる。活性化合物は、工程や疾患の状態に応じた所望の効果を出すのに十分な量で医薬組成物に含まれる。
【0127】
6.電離放射線照射による最近由来ミニ細胞組成物の完全滅菌
治療用、免疫調節性および/または免疫原性ミニ細胞が生成され、処方され、バイアルまたはシリンジを含むがこれに限定されない薬学的に許容される容器に充填されると、密閉され前記容器内で電離放射線照射を用いた完全滅菌を受ける。電離放射線照射の非限定的な例は、ガンマ線照射、高周波数電磁照射、Eビーム(電子線ビーム、ベータ線照射)照射X線(光子)照射およびUV照射を含む。本明細書で開示される方法および組成物において使用される好ましい電離放射線照射の型は、ガンマ線照射である。
【0128】
本明細書で開示される方法および組成物において使用するのに適した電離放射線照射の線量は変化しうる。ある実施形態において、親細胞および偶発性微生物バイオバーデンを許容可能な滅菌基準まで低下させるために必要な電離放射線照射の線量は、経験的に決定されうる。非限定的で例示的な照射線量の範囲は5kGy~40kGyの間であり、例えば、放射線照射は5kGy、8kGy、10kGy、11kGy、12kGy、13kGy、14kGy、15kGy、16kGy、17kGy、18kGy、19kGy、20kGy、21kGy、22kGy、23kGy、24kGy、25kGy、28kGy、
30kGy、35kGy、40kGyまたはこれらの2つの値間の範囲の線量またはおおよそそのくらいとすることができる。ある実施形態において、放射線照射は約5kGy~約30kGyまたは約10kGy~約25kGyの線量である。ある実施形態において、放射線照射は25kGyの線量である。滅菌のために放射線照射を受けるのに適したミニ細胞を含む組成物は、様々な形態をとることができ、液体懸濁液、凍結懸濁液、凍結乾燥された(凍結乾燥物)固形製剤を含むがこれに限定されない。ある実施形態において、ミニ細胞を含む組成物を電離放射線照射によって滅菌するための処方は、凍結懸濁液または凍結乾燥物である。ある実施形態において、電離放射線照射によるミニ細胞を含む組成物の完全滅菌は、25kGyの線量での電離ガンマ線照射による完全滅菌を含む、またはそれである。
【0129】
ミニ細胞由来バイオ医薬品の滅菌性は、当技術分野で知られている方法を用いて決定され、例えば、USP38NF33に基づくUSP<71>基準に記載されているとおりである。要するに、USP<71>に基づく滅菌性は、滅菌後14日を超える期間、32.5℃±2.5℃で培養された液状チオグリコール酸培地(バリデーション済みの工程で滅菌された培地)中で増殖がないこと(陰性対照と比較した濁度)と定義される。米国薬局方<71>に従って、ミニ細胞バイオ医薬品が1mL以下の液体として処方される場合、滅菌性試験のため増殖培地に植菌するためにバイアル全体が使用される。1mLを超え、40mL以下の場合は、容器の半分、ただし1mL以上の量が滅菌性試験のために植菌するために使用される。40mLを超え、100mL以下の場合は、20mLを使用する。100mLを超える場合は、容器の内容量の10%、ただし20mL以上の量が使用される。凍結乾燥物を含む固体に処方された場合は、50mg未満の場合は、容器の内容量の全量を使用すること。50mgを超え300mg未満の場合は、重量の半分、ただし50mg以上の量が使用される。300mgを超え5g未満の場合は、150mgが使用される。5gを超える場合は500mgが使用される。米国薬局方<71>に基づくある製品ロットについて試験される容器の数は100個未満の場合、10%または4個の容器の大きい方とする。100個を超え500個未満の場合、10個の容器が使用される。500個の容器より多い場合は、2%または20個の容器で少ない方とする。眼科のまたは他の非注射型バイオ医薬品向けでは、200個以下の場合は5%または2個の容器の多い方とする。200個の容器より多い場合は10個の容器の試験が必要となる。
【0130】
7.臨床試験および投与経路
本出願は、がん、感染性疾患、遺伝性障害、自己免疫疾患、および他の病気に対して効果的であるように設計されたミニ細胞型バイオ製剤に関する。
【0131】
がんは、固形腫瘍、転移性腫瘍および液性腫瘍を含むがこれに限定されない。固形腫瘍および転移性腫瘍は、上皮、線維芽細胞、筋肉および骨に起因する腫瘍を含み、乳がん、肺がん、すい臓がん、前立腺がん、睾丸がん、卵巣がん、胃がん、大腸がん、口腔がん、舌がん、咽頭がん、肝がん、肛門がん、直腸がん、結腸がん、食道がん、膀胱がん、胆のうがん、皮膚がん、子宮がん、膣がん、ペナル(penal)がん、腎臓がんを含むがこれに限定されない。本明細書で開示されるミニ細胞を用いで治療できる他の固形がんの型は、腺がん、肉腫、線維肉腫並びに目、脳および骨のがんを含むがこれに限定されない。本明細書で開示されるミニ細胞を用いで治療できる他の液性がんは、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病および他の白血病を含むがこれに限定されない。
【0132】
感染性疾患は、免疫原性ミニ細胞または標的ミニ細胞ワクチン組成物を用いて、前記ワクチンが予防しようとする感染性病原体に再度暴露する前に被験者に免疫を付与することにより予防的に治療することができる。代わりに、治療用ワクチンは、前記ワクチンが予防しようとする感染性病原体によって引き起こされた疾患を現在患っている被験者に与え
ることができる。感染性疾患は、細菌、ウイルス、真菌および寄生生物に関するものを含むがこれに限定されない。
【0133】
設計された免疫原性ミニ細胞および標的ワクチンミニ細胞が予防しようとする細菌性病原菌は、エシェリヒア属、サルモネラ属、シゲラ属、ビブリオ属、ナイセリア属、カンピロバクター属、シュードモナス属、エルシニア属、クラミジア属、アシネトバクター属、リステリア属、バチルス属、ヘモフィルス属、クロストリジウム属、フランシセラ属、リケッチア属などを含むがこれに限定されない。これらの病原菌に対する免疫原性ミニ細胞および標的ワクチンミニ細胞は、ミニ細胞を産生する病原性菌株に由来するミニ細胞または非病原性菌株であるが病原性菌株から異種の抗原を発現または産生するように加工されたものに由来するミニ細胞から生成される。
【0134】
設計された免疫原性ミニ細胞および標的ワクチンミニ細胞が予防しようとするウイルス性病原菌は、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、RSウイルス、水痘帯状ヘルペス、ヒトパピローマウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、MERSウイルス、SARSウイルス、コクサッキーウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、狂犬病ウイルスなどのすべての菌株および亜系を含むがこれに限定されない。
【0135】
設計された免疫原性ミニ細胞および標的ワクチンミニ細胞が予防しようとする真菌性病原菌は、カンジダ属、アスペルギルス属、クリプトコッカス属、ヒストプラズマ属、ニューモシスティス属、スタキボトリス属などを含むがこれに限定されない。
【0136】
設計された免疫原性ミニ細胞および標的ワクチンミニ細胞が予防しようとする寄生生物病原菌は、アカントアメーバ、ヒトカイチュウ、大腸バランチジウム、ラセンウジバエ、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、肝蛭、ランブル鞭毛虫、リーシュマニア、ロア糸状虫、熱帯熱マラリア原虫、住血吸虫属、糞線虫、トキソプラズマ原虫、トリパノソーマ、バンクロフト糸状虫などを含むがこれに限定されない。
【0137】
電離放射線照射を受けることによって完全に滅菌され、上記の疾患の型および感染性病原体を治療するまたは防ぐことを目的としたミニ細胞型バイオ医薬品は、対象に非経口または局所投与されうる。非経口投与の経路は注射であり、静脈内、硝子体内、髄腔内、腹腔内、腫瘍内、筋肉内、皮下投与を含むがこれに限定されない。局所投与の経路は、膀胱内、直腸内、膣内、粘膜、耳、経口、経鼻、経肺、胸膜腔内(胸膜カテーテルを通じて)および経皮投与を含むがこれに限定されない。
【0138】
8.ミニ細胞型医薬組成物
本明細書で開示されるある実施形態は、最適化された菌株をつくり、標的治療用、免疫調節性および免疫原性ミニ細胞を、腸内細菌科を含むがこれに限定されない細菌から作製し、前記ミニ細胞を医薬組成物に処方し、滅菌バイアルまたはシリンジに充填し、前記ミニ細胞型医薬組成物を電離放射線照射によって密閉し完全に滅菌することに関する。
【0139】
複数の細菌由来ミニ細胞を含み、前記細菌由来ミニ細胞および/または医薬組成物が電離放射線照射を受ける医薬組成物もまた本明細書で開示される。前記医薬組成物は、例えば、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または薬学的に許容される希釈剤を含んでもよい。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、トレハロース(例えば希釈剤中のトレハロース)であってもよい。薬学的に許容される希釈剤は、例えば、滅菌水(注射用滅菌水)であってもよい。ある実施形態において、前記医薬組成物および/またはその中に含まれる複数の細菌由来細胞は完全に滅菌されている。ある実施形態において、前記医薬組成物は
無菌状態である。例えば、前記医薬組成物は生きた汚染微生物をUSP38NF33に基づくUSP<71>基準に適合するレベルで含みうる。電離放射線照射(例えばガンマ線照射)を受けた前記医薬組成物における生きた汚染微生物のレベルは、例えば、1mLあたり1×108コロニー形成単位(CFU)未満、1mLあたり1×107CFU未満、1mLあたり1×106CFU未満、1mLあたり1×105CFU未満、1mLあたり1×104CFU未満、1mLあたり1×103CFU未満、1mLあたり1×102CFU未満、1mLあたり1×10CFU未満または1mLあたり1CFU未満、とすることができる。ある実施形態において、電離放射線照射(例えばガンマ線照射)を受けた前記医薬組成物における生きた汚染微生物のレベルは、1mLあたり1×108CFU、1mLあたり5×107CFU、1mLあたり1×107CFU、1mLあたり5×106CFU、1mLあたり1×106CFU、1mLあたり5×105CFU、1mLあたり1×105CFU、1mLあたり5×104CFU、1mLあたり1×104CFU、1mLあたり5×103CFU、1mLあたり1×103CFU、1mLあたり5×102CFU、1mLあたり1×102CFU、1mLあたり50CFU、1mLあたり10CFU、1mLあたり5CFU、1mLあたり1CFU、またはこれらの2つの値間の範囲、またはおおよそそのくらいとすることができる
【0140】
電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物のレベルは、例えば、102ミニ細胞あたり1未満、103ミニ細胞あたり1未満、104ミニ細胞あたり1未満、105ミニ細胞あたり1未満、106ミニ細胞あたり1未満、107ミニ細胞あたり1未満、108ミニ細胞あたり1未満、109ミニ細胞あたり1未満、1010ミニ細胞あたり1未満、1011ミニ細胞あたり1未満、1012ミニ細胞あたり1未満、1013ミニ細胞あたり1未満、1014ミニ細胞あたり1未満、1015ミニ細胞あたり1未満、1016ミニ細胞あたり1未満とすることができる。
【0141】
医薬品に含まれるミニ細胞の型、遺伝子型、表現型は変化しうる。ある実施形態において、前記細菌由来ミニ細胞は、その表面でインベイシンまたはその機能等価物を発現および/または提示する。例えば、インベイシンは仮性結核菌由来のインベイシンであり得るがこれに限定されない。細菌由来ミニ細胞は、例えば、パーフリンゴリジンO(PFO)を含みうる。ある実施形態において、細菌由来ミニ細胞は、その表面でインベイシンまたはその機能等価物を発現するおよび/または提示し、PFOを含む。
【0142】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は105ミニ細胞あたり1未満である。
【0143】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は106ミニ細胞あたり1未満である。
【0144】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は107ミニ細胞あたり1未満である。
【0145】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は108ミニ細胞あたり1未満である。
【0146】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は109ミニ細胞あたり1未満である。
【0147】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1010ミニ細胞あたり1未満である。
【0148】
ある好ましい実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1011ミニ細胞あたり1未満である。
【0149】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1012ミニ細胞あたり1未満である。
【0150】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1013ミニ細胞あたり1未満である。
【0151】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1014ミニ細胞あたり1未満である。
【0152】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1015ミニ細胞あたり1未満である。
【0153】
ある実施形態において、電離放射線照射の後の医薬組成物中のミニ細胞を産生する生きた親細胞不純物は1016ミニ細胞あたり1未満である。
【0154】
電離放射線照射の後のミニ細胞を含む医薬組成物(例えばミニ細胞型バイオ医薬品)は、その後約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日またはこれらの2つの値間の範囲において、例えば32.5℃±2.5℃において、液体チオグリコール酸培地中での増殖がない。ある好ましい実施形態において、電離放射線照射の後、ミニ細胞型バイオ医薬品はその後14日間、32.5℃±2.5℃において、液状チオグリコール酸培地中での増殖がなく、したがってUSP38NF33に基づくUSP<71>基準の定義のとおり、無菌状態である。
【実施例】
【0155】
上で議論された実施形態のいくつかの局面が以下の実施例においてより詳細に開示されるが、決して本開示の範囲を制限することを目的としたものではない。
【0156】
実施例1
5、15および25kGyの照射量で電離ガンマ線照射を受けた後の凍結懸濁液中のVAX-IP(VAX014)ミニ細胞の特性における無変化
この実施例は、5、15および25kGyの照射量で電離ガンマ線照射を受けた後の凍結懸濁液中のVAX-IP(VAX014)ミニ細胞の特性に変化がなかったことを示す。
【0157】
VAX014ミニ細胞(インベイシンおよびパーフリンゴリジンOの両方を含む)を親菌株VAX20B9、L-ラムノース誘導細菌発現プラスミドであるpVX-336(pRHABADプロモーターの制御下でインベイシンおよびパーフリンゴリジンO間の転写融合を含む)を備える組み換え型大腸菌K-12ミニ細胞産生菌株、から作成した。VAX20B9研究細胞バンクのバイアルを室温で解凍し、バイアルの内容物全体をカナマイシン(50μg/mL)、ジアミノピメリン酸(100μg/mL)、リジン(55μg/mL)および0.2%D-グルコースを含むSoytone型MSB-NaCl培地中の1Lスターター培地に植菌した。スターター培地を18時間、30℃で増殖し、翌日200mLを使用しD-グルコースなしの同様の培地14Lに植菌した。OD600が0.1になるまで増殖をモニターし、その時点で、pVX-336由来のインベイシンおよびパーフリンゴリジンOの発現を誘引させるためL-ラムノースを加えた。OD600が1.0になるまで増殖をモニターし、その時点で、ミニ細胞産生表現型を誘引させるためI
PTGを20μMの最終濃縮物に加え、培地を一晩増殖させた。培地は、分画遠心法(2,000xgにて15分)を用いて親細胞を減量し、2連続スクロース線形濃度勾配を用いたさらなる精製に先立ちミニ細胞が濃縮された上澄みをタンジェント流ろ過(TFF)で濃縮した。最終的なミニ細胞分画を(TFF)で濃縮し、高速遠心分離(11,000xgにて20分)でペレット化し、最終VAX014ミニ細胞ペレットを12%滅菌D-トレハロース製薬等級純水中に再懸濁し、1ミリリットルあたり3.33x1010VAX014ミニ細胞の濃度とし、製剤粗原料とした。目的の濃度において100μLの製剤粗原料を、ジアミノピメリン酸(100μg/mL)およびリジン(55μg/mL)を含むSoytone型MSB-NaCl固定寒天培地に置き、30℃で一晩増殖させ、ガンマ線照射による滅菌に先立ち不純物VAX20B9親細胞およびさらなる偶発性微生物の数を決定した。そしてVAX014製剤粗原料を、半自動ハンドフィルを用いて5mL透明血清バイアルに入れ(バイアルあたり3mL-バイアルあたり1x1011VAX014ミニ細胞)、各バイアルに栓をして密閉した。バイアル中のVAX014製剤原料に、凍結させた状態で、3種類の照射量のうちの1つの電離放射線照射を行った(5、15および25kGy、各線量レベルあたり25バイアル)。照射後7日目に3つのランダムに選択したバイアルを室温で解凍し、濃度均一性、外観、容器施栓の完全性、目視、pH試験、製品の凝集および粒状物質の存在を顕微鏡評価すること、インベイシンに対するモノクローナル抗体を用いたFACSによるVAX014ミニ細胞表面上のインベイシンの量の決定、クエン酸ヒツジ全血におけるパーフリンゴリジンOの溶血作用、HTB-9ヒト尿路上皮がん細胞に対するVAX014の細胞死滅能力、および未照射物質に由来するバイオバーデンの減少方法として最終生存可能コロニー形成単位の計数を含む一連の特性付け試験によってVAX014製剤原料を特性付けした。
【0158】
実験結果を表2にまとめる。表2に示されるように、5kGy、15kGyおよび25kGy、電離ガンマ線照射を受けた後のVAX014ミニ細胞凍結懸濁液について、未照射物質と比較して、製品の完全性、安定性、特性および能力に変化がないことが観察された。バイオバーデンは各線量レベルでゼロまで下がった。
【表2】
【0159】
実施例2
5、15および25kGyの照射量で電離ガンマ線照射を受けた後の凍結乾燥物中のVAX-IP(VAX014)ミニ細胞の特性における無変化
この実施例は、5、15および25kGyの照射量で電離ガンマ線照射を受けた後の凍結乾燥物中のVAX-IP(VAX014)ミニ細胞の特性に変化がなかったことを示す。
【0160】
VAX014ミニ細胞(インベイシンおよびパーフリンゴリジンOの両方を含む)を親菌株VAX20B9、L-ラムノース誘導細菌発現プラスミドであるpVX-336(pRHABADプロモーターの制御下でインベイシンおよびパーフリンゴリジンO間の転写融合を含む)を備える組み換え型大腸菌K-12ミニ細胞産生菌株、から作成した。VAX20B9研究細胞バンクのバイアルを室温で解凍し、バイアルの内容物全体をカナマイシン(50μg/mL)、ジアミノピメリン酸(100μg/mL)、リジン(55μg/mL)および0.2%D-グルコースを含むSoytone型MSB-NaCl培地中の1Lスターター培地に植菌した。スターター培地を18時間、30℃で増殖し、翌日200mLを使用しD-グルコースなしの同様の培地14Lに植菌した。OD600が0.
1になるまで増殖をモニターし、その時点で、pVX-336由来のインベイシンおよびパーフリンゴリジンOの発現を誘引させるためL-ラムノースを加えた。OD600が1.0になるまで引き続き増殖をモニターし、その時点で、ミニ細胞産生表現型を誘引させるためIPTGを20μMの最終濃縮物に加え、培地を一晩増殖させた。培地は、分画遠心法(2,000xgにて15分)を用いて親細胞を減量し、2連続スクロース線形濃度勾配を用いたさらなる精製に先立ちミニ細胞が濃縮された上澄みをタンジェント流ろ過(TFF)で濃縮した。最終的なミニ細胞分画を(TFF)で濃縮し、高速遠心分離(11,000xgにて20分)でペレット化し、最終VAX014ミニ細胞ペレットを12%滅菌D-トレハロース製薬等級純水中に再懸濁し、1ミリリットルあたり3.33x1010VAX014ミニ細胞の濃度とし、製剤粗原料とした。目的の濃度において100μLの製剤粗原料を、ジアミノピメリン酸(100μg/mL)およびリジン(55μg/mL)を含むSoytone型MSB-NaCl固定寒天培地に置き、30℃で一晩増殖させ、ガンマ線照射による滅菌に先立ち不純物VAX20B9親細胞およびさらなる偶発性微生物の数を決定した。そしてVAX014製剤粗原料を、半自動ハンドフィルを用いて5mL透明血清バイアルに入れ(バイアルあたり3mL-バイアルあたり1x1011VAX014ミニ細胞)、各バイアルにNovaPure凍結乾燥物適合ストッパーを用いて栓をした。バイアルの内容物は凍結乾燥され、オーバーシールを施した。バイアル中の凍結乾燥物VAX014製剤原料に、凍結させた状態で、3種類の照射量のうちの1つの電離放射線照射を行った(5、15および25kGy、各線量レベルあたり25バイアル)。照射後7日目に3つのランダムに選択したバイアルを室温で解凍し、濃度均一性、外観、容器施栓の完全性、目視、pH試験、製品の凝集および粒状物質の存在を顕微鏡評価すること、インベイシンに対するモノクローナル抗体を用いたFACSによるVAX014ミニ細胞表面上のインベイシンの量の決定、クエン酸ヒツジ全血におけるパーフリンゴリジンOの溶血作用、HTB-9ヒト尿路上皮がん細胞に対するVAX014の細胞死滅能力、および未照射物質に由来するバイオバーデンの減少方法として最終生存可能コロニー形成単位の計数を含む一連の特性付け試験によってVAX014製剤原料を特性付けした。製品の完全性、安定性、特性および能力に変化がないことが観察され、バイオバーデンは各線量レベルでゼロまで下がった。
【0161】
実験結果を表3にまとめる。表3に示されるように、5kGy、15kGyおよび25kGy、電離ガンマ線照射を受けた後のVAX014ミニ細胞凍結乾燥物の特性および性質は、未照射物質と比較して変化がなかった。
【表3】
【0162】
実施例3
ガンマ線照射を受けた後のミニ細胞を含む組成物の考察
電離ガンマ線照射のレベルを増加させていったことを確実にするおよび証明する目的で、透明なバイアルを選択した。ミニ細胞を含むバイアルに、5kGy、15kGyまたは25kGyのガンマ線照射を行い、未照射コントロール(すなわち0kGy)と比較した。
図2A~Bは、照射後、バイアルレベルでの、初期の目視の結果を示す。照射線量のレベルが増加するにつれてバイアルの色が濃くなったのがわかるが、製品の目に見える損失(量および製剤原料を含む)は見られない。
図2Aは密封したバイアルを示し、
図2Bは封をあけた状態のバイアルを示し、栓は目視では無傷の状態であった。オーバーシールまたは栓に肉眼的異常は見られなかった。
【0163】
図3はさらに、放射線照射を受けたVAX014製剤をバイアルから取り出した際の第二の目視を通じて、未照射コントロールと比較して外見(色、濃度および、不透明さを含む)に変化がなかったことを示す。凍結乾燥物は、目視に先立ち3mLの注射用滅菌水で再構成した。
【0164】
ガンマ線照射を受けた後のミニ細胞を含む組成物の溶血作用について考察した。
図4に示されるように、VAX014ミニ細胞溶解物におけるパーフリンゴリジンOタンパク毒素の構造-機能は、試験したいずれのレベル(5kGy、10kGyおよび25kGyを含む)でも、未照射コントロールと比較してガンマ線照射に影響を受けなかった。この研究では、照射および未照射ミニ細胞は、EDTAおよびリゾチーム、次いで浸透圧ショックで処理され、ミニ細胞溶解物を生成し、次いでそのそれぞれを振盪しながら37℃で1時間固定数のヒツジ赤血球で滴定した。1時間の補助培養の後、赤血球(RBC)をペレット化し、上澄みを取り除き、溶血作用の測定としてヘモグロビン遊離を評価した。組み換え型PFOを用いた標準曲線を同時に作成し、1x10
8VAX014ミニ細胞中のパーフリンゴリジンOの濃度計算に用いた。結果として、電離ガンマ線照射量を増加させていったVAX014ミニ細胞凍結懸濁液または凍結乾燥物におけるパーフリンゴリジンO
(タンパク毒素)活性の損失はなかった。
【0165】
ガンマ線照射(5kGy、10kGyまたは25kGy)の後のミニ細胞の有効性もHTB-9ヒト尿路上皮がん細胞に対する細胞死滅能力アッセイを用いて未照射コントロールと比較して評価した。照射また非照射VAX014ミニ細胞のバイアルを室温で解凍し、速やかに固定数のHTB-9細胞で滴定し、EC
50曲線(0時間、
図5A)を生成した。加えて、HTB-9細胞に加えるのに先立ち解凍したバイアルを室温で4時間おいて、この時間、この温度での活性の損失がないことを示した(室温(RT)にて4時間、
図5B)。
図5A~Bに示されるように、すべてのEC
50値が重なり、ガンマ線照射量を増加させたVAX014ミニ細胞凍結懸濁液または凍結乾燥物の有効性に損失がないことを示している。
【0166】
ガンマ線照射(5kGy、10kGyまたは25kGy)の後のミニ細胞の薬理活性を、未照射コントロールと比較して、シンジェニックな同所性MB49膀胱がんマウスを用いてin vivoで考察した。この実験では、容積50μLのDMEM細胞培地中の100,000のMB49細胞を、麻酔をされた雌のC57BL/6マウスの膀胱に尿路カテーテルを通して直接注入した(グループあたりn=8)。注入に先立ち、膀胱はBovie電気焼灼ユニットに取り付けられたプラチナ製ガイドワイヤを用いて2領域に焼灼し、2つの別々の膀胱内接点(腫瘍取り付け部分を提供する)に5Wの単極パルスを2秒加えた。腫瘍細胞の取り付け後、膀胱を100μL滅菌食塩水で1回すすぎ、次いで容積50μLの食塩水(ビヒクルコントロール)または同じ数の照射(25kGy)または未照射VAX014ミニ細胞を1回の処置として投与した。合計1時間の照射の間カテーテルを固定し、その後取り外し、動物を回復させた。動物を週に2回、70日間モニターし、相対的な薬理効果の指標として生存曲線を評価した。結果を
図9にまとめ、in vivoでのVAX014ミニ細胞薬理活性の損失がないことが示された。
【0167】
結果を
図9に示すカプラン・マイヤー生存曲線にまとめる。
図9に示されるように、腫瘍形成マウスに膀胱内投与した後、予備滅菌された未照射VAX014と比較して、シンジェニックな同所性MB49膀胱がんマウスにおける25kGyでの滅菌後のVAX014抗腫瘍活性に損失がなかった。
【0168】
ドキソルビシンを含むEGFR-1標的ミニ細胞の完全性、安定性、および活性もまた、ガンマ線照射のレベルの増加に対する応答について評価した。大腸菌K-12菌株(VAX8I3菌株)に由来し、誘導的なミニ細胞表現型をもつミニ細胞を、この菌株をジアミノピメリン酸(100μg/mL)およびリジン(55μg/mL)を含むSoytone型MSB-NaCl培地で30℃でOD
600が1.0になるまで増殖することによって生成した。その時点でIPTGを加え、ミニ細胞産生表現型を誘引し、培地を引き続き一晩増殖させた。ミニ細胞は分画遠心法、次いで線形スクロース密度勾配を2回用いて採取した。精製後、ミニ細胞(3x10
12)は、ドキソルビシンと400μg/mL/
1.0x10
10ミニ細胞の濃度で一晩室温で振盪しながら補助培養することにより、ドキソルビシンを負荷した。翌日、ヒトEGFR-1特異マウスモノクローナル抗体mAb528をプロテインA精製ウサギポリクローナル抗ミニ細胞抗体試薬に組み換え型プロテインA/G(Pierce,Thermo-Fisher)を用いてモル比1:1で結合させることにより、二重特異性抗体を生成した。プロテインA/Gの添加に先立ち、抗体を等モル量で混合した。プロテインA/Gの添加後、反応混合物を静かに振盪しながら1時間室温に置き、二重特異抗体を作成した。ドキソルビシンを負荷したミニ細胞を980μLの1XPBSおよび20μLの二重特異抗体コンプレックス中でのペレッティングおよび再懸濁により2回洗浄し、1時間4℃で静かに振盪しながら予備培養した。抗体をミニ細胞に取り付けた後、ドキソルビシンが負荷され抗体がコートされたミニ細胞を12%のD-トレハロース中でのペレッティングおよび再懸濁により2回洗浄し、3.33x10
10/mLの濃度とした。目的の濃度に処方されたら、ドキソルビシンが負荷されEGFR-1標的ミニ細胞を無菌で半自動工程を用いて5mLの琥珀色の血清バイアルにハンドフィルし、栓をしてオーバーシールし、凍結した。ドキソルビシン負荷EGFR-1標的ミニ細胞のバイアルに、凍結させた状態で、25kGyの線量でガンマ線照射し、未照射コントロールと比較分析を行った。ドキソルビシンの天然赤色蛍光(コントロールセットアップの左上象限)、mAb528を検知するAlexa-Flour388結合ヤギポリクローナル抗マウス抗体(コントロールセットアップの右下象限)を利用したデュアルカラーフローサイトメトリーにより抗EGFR-1抗体およびドキソルビシンの貯留が検証された。二重シグナル(右上象限)はドキソルビシンおよびmAb528の両方をその表面に含むミニ細胞に由来するシグナルを指す(すなわち、二重陽性)。制御設定を設定後、この方法を用いて25kGyでのガンマ線照射後のmAb528のミニ細胞表面での保持およびドキソルビシンの貯留を分析した。ドキソルビシンの貯留は、25kGyでのガンマ線照射の前後で、ミニ細胞ペレットの蛍光顕微鏡観察および巨視的観察によってモニターした。EGFR-1標的ドキソルビシン負荷ミニ細胞を、ガンマ線照射の前後で、A549ヒト非小細胞がん細胞(EGFR-1を過剰発現する)による滴定によって評価した。
図7A~Fに示されるように、ガンマ線照射のレベルの増加に対してEC
50で決定される有効性に差がないことが観察された。
【0169】
凍結懸濁液へのガンマ線照射後の機能性核酸(プラスミドDNA)を含むEGFR-1標的ミニ細胞の安定性を考察した。プラスミドの完全性は、ミニ細胞内のプラスミド構成に特異なプライマーを用いたPCRによって、非修飾プラスミドコントロール(同数のミニ細胞から直接精製されたプラスミドコントロール)と比較して評価した。抗EGFR-1抗体であるmAb528を、
図7A~Fについて上述したのと同じプロテインA/G法を用いてミニ細胞の表面に結合させ、またミニ細胞の表面でのその存在について同じフローサイトメトリー法および二次的なAlexa-Flour388結合ヤギポリクローナル抗マウス抗体試薬を用いて照射後に分析した。
図8A~Bに示されるように、ミニ細胞を含む凍結懸濁液がガンマ線照射を受けた後、プラスミドの完全性または安定性に損失は見られなかった。
【0170】
少なくともこれまでに記載したいくつかの実施形態において、実施形態で使用される1つ以上の要素は、そのような置き換えが技術的に実行不能でない限り、他の実施形態で使用されうる。請求された内容から逸脱しない限り、上記の方法及び構造について他の様々な省略、追加、修正が可能であることが当業者によって理解されるであろう。このような修正および変更はすべて、付属する請求項の範囲で定義される内容の範囲内であると意図される。
【0171】
本明細書中の実質上すべての複数および/または単数の用語の使用について、それが文脈および/または利用にふさわしい限り、当業者は複数から単数へおよび/または単数から複数へ変換可能である。明確性のため、様々な単数/複数の変更がはっきりと明記され
る。
【0172】
一般に本明細書で、特に付属する請求項の範囲(例えば付属する特許請求の範囲の本体部分)で使用される用語は、「非限定用語(open term)」であることが意図されているということが当業者に理解されるであろう(例えば、用語「を含んでいる」は「を含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「を持っている」は「を少なくとも持っている」と解釈されるべきであり、用語「を含む」は「を含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである、等)。さらに、特定の数の導入された請求項への記載が意図された場合、そのような意図は明確に請求項に記載され、そのような記載がない場合はそのような意図は存在しないということが当業者に理解されるであろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の付属する請求項は、請求項への記載を導入するために、導入的なフレーズ「少なくとも1つ」または「1つ以上」の使用を含みうる。しかしながら、そのようなフレーズの使用は、同じ請求項が導入的なフレーズ「1つ以上」または「少なくとも1つ」および不定冠詞「a」または「an」を含んでいる場合でも、不定冠詞「a」または「an」による請求項への記載の導入が、そのような導入された請求項への記載を含む特定の請求項を、そのような記載のみを含む実施形態に限定する、ということを暗示すると解釈されるべきではなく(例えば、「a」または「an」は「少なくとも1つ」または「1つ以上」と解釈されるべきである)、同じことが請求項への記載を導入するために用いられる定冠詞の使用についても当てはまる。加えて、特定の数の導入された請求項への記載が明確に記載されている場合でも、当業者はそのような記載は少なくとも記載された数であるということを意味すると解釈すべきである(例えば、「2つの記載」という最低限の記載は、他の修飾がなければ、少なくとも2つの記載または2つ以上の記載という意味である)。さらに、「A、B、および、Cなどのうちの少なくとも1つ」に類似する伝統的表現法(convention analogous)が用いられる例において、当業者が上記伝統的表現法を理解するという意味で、一般的に、こうした構文は意図される(例えば、「A、B、および、Cのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、および/または、A、B、および、Cなどを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。「A、B、または、Cなどのうちの少なくとも1つ」に類似する伝統的表現法が用いられる例においては、当業者が上記伝統的表現法を理解するという意味で、一般的に、こうした構文は意図される(例えば、「A、B、または、Cのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、および/または、A、B、および、Cなどを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。さらに、2つ又はそれ以上の代替用語を示す選言的な(disjunctive)用語および/またはフレーズは、明細書、請求項、または、図面のいずれに含まれていようと、文脈が他を指定しない限り、前記用語、前記用語のいずれか一方、または、前記用語の両方のうちの1つを含む可能性があると当業者に解釈されるべきである。例えば、「AまたはB」というフレーズは、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと、通常理解される。
【0173】
加えて、開示の特徴または局面がマーカシュ群を用いて記載される場合、開示もまたマーカシュ群のそれぞれの構成要素またはサブグループを用いて記載されると当業者に認識される。
【0174】
当業者に理解されるように、いかなる目的においても、例えば文字による記載を提供することに関して、本明細書で開示されるすべての範囲はまたあらゆる可能性のある部分的な範囲およびその部分的な範囲の組み合わせを包含する。あらゆる記載された範囲は、少なくとも同等な半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分類される同じ範囲を十分に説明しかつ可能にすると容易に認識される。非限定的な例として、本明細書に述べられているそれぞれの範囲は容易に下位、中位、上位などに分類できる。当業者に理解されるように、「以下」「少なくとも」「より大きい」「未満」などといったすべて
の言葉は、列挙された数字を含み、その後上記で述べられたように部分的な範囲に分類でき範囲を意味する。最後に、当業者に理解されるように、範囲はそれぞれの個別の要素が含まれる。そのため、例えば、1~3個の要素を有する群は、1、2または3個の要素を有する群を意味する。同様に、1~5個の要素を有する群は、1、2、3、4または5個の要素を有する群を意味する、などである。
【0175】
様々な局面および実施形態が本明細書に開示された一方で、当業者には他の局面および実施形態が明らかであろう。本明細書に開示された様々な局面および実施形態は、例示目的であり、制限する意図はなく、真の範囲および精神は以下の請求項により示される。
【0176】
特許、特許出願、論文、教科書などの本明細書で引用されるすべての参照文献、およびそれらにおいて引用された参考文献は、それらについて既に言及した程度において、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。1つ以上の取り込まれた文献および同様の資料が本出願、定義された用語、用語の使用方法、記載された手法などを含むがこれに限定されない、と異なるまたは矛盾する場合、本出願が優先する。