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特許7568520前照灯の制御装置、前照灯の制御方法、前照灯システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】前照灯の制御装置、前照灯の制御方法、前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241008BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60Q1/14 Z
B60Q1/04 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021004746
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109440
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中島 航
(72)【発明者】
【氏名】喜多 靖
(72)【発明者】
【氏名】木村 能子
(72)【発明者】
【氏名】大山 修斗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 功基
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 暁久
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032803(JP,A)
【文献】特開2007-099222(JP,A)
【文献】特開2018-034758(JP,A)
【文献】特開平07-047878(JP,A)
【文献】特開2014-024399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部において車幅方向に離間して配置される第1前照灯及び第2前照灯と接続可能な制御装置であって、
前記車両に設置された降雨量検出手段と、
前記車両に設置されて前記降雨量検出手段と接続されており、前記降雨量検出手段により検出される降雨量が所定値以上である場合に前記第1前照灯の第1照射光が前記第2前照灯の第2照射光に比べて相対的に暗くなるように制御するコントローラと、
を含み、
前記第1前照灯及び前記第2前照灯は、前記第1照射光及び前記第2照射光としてハイビーム又はアダプティブドライビングビームを照射するものであり、
前記第1前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と同じ側に配置されており、
前記第2前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と反対側に配置されており、
前記コントローラは、前記第1照射光の光度が前記第2照射光の光度に比べて1/2以下となるように前記第1照射光及び前記第2照射光を制御する、
前照灯の制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1照射光の光度が前記第2照射光の光度に比べて1/10以下となるか若しくは前記第1照射光の光度が実質的に0となるように前記第1照射光及び前記第2照射光を制御する、
請求項1に記載の前照灯の制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記降雨量が前記所定値より小さい場合における前記第2前照灯の照射光に比べて前記降雨量が所定値以上である場合における前記第2前照灯の照射光の照射幅が相対的に狭くなるように制御する、
請求項1又は2に記載の前照灯の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記降雨量が前記所定値より小さい場合における前記第2前照灯の照射光に比べて前記降雨量が所定値以上である場合における前記第2前照灯の照射光の範囲が前記車両の運転席と反対側へ偏るように前記照射幅を狭める、
請求項3に記載の前照灯の制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記降雨量が前記所定値より小さい場合における前記第1前照灯の照射光に比べて前記降雨量が所定値以上である場合における前記第1前照灯の照射光の範囲が前記車両の運転席と同じ側へ偏るように前記照射幅を狭める、
請求項に記載の前照灯の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記降雨量が前記所定値より小さい場合における前記第1前照灯の照射光に比べて前記降雨量が所定値以上である場合における前記第1前照灯の照射光の範囲が前記車両の進行方向において相対的に近い側へ偏るように前記照射幅を狭める、
請求項に記載の前照灯の制御装置。
【請求項7】
前記車両に設置され、前記コントローラと接続された歩行者検出器を更に含み、
前記コントローラは、前記歩行者検出器により前記車両周辺に歩行者が検出されている場合には当該歩行者の位置に応じて設定された範囲に前記第2前照灯の照射光が照射されるように制御する、
請求項1~6の何れか1項に記載の前照灯の制御装置。
【請求項8】
車両の前部において車幅方向に離間して配置される第1前照灯及び第2前照灯の点灯状態をコントローラによって制御する制御方法であって、
前記コントローラは、降雨量検出手段により検出される降雨量が所定値以上である場合に前記第1前照灯の第1照射光が前記第2前照灯の第2照射光に比べて相対的に暗くなるように制御するものであって
前記第1前照灯及び前記第2前照灯は、前記第1照射光及び前記第2照射光としてハイビーム又はアダプティブドライビングビームを照射するものであり、
前記第1前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と同じ側に配置されており、
前記第2前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と反対側に配置されており、
前記コントローラは、前記第1照射光の光度が前記第2照射光の光度に比べて1/2以下となるように前記第1照射光及び前記第2照射光を制御する、
前照灯の制御方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の制御装置と、
車両の前部において車幅方向に離間して配置されており前記制御装置と接続された第1前照灯及び第2前照灯と、
を含む、前照灯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前照灯の制御装置、前照灯の制御方法、前照灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6032248号公報(特許文献1)には、車両前方が視界不良となる天候状態が検出された場合、走行路推定部により推定された道路形状に対応する車両前方の路面部分を減光して照射するように前照灯を制御する車両用照明装置が記載されている。また、この車両用照明装置は、降雨時や降雪時には高所へ向けた照射を行わないように制御される。しかし、道路脇の歩道などに存在する歩行者の視認性向上という観点では更なる改良の余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6032248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、歩行者の視認性を向上することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本開示に係る一態様の制御装置は、
車両の前部において車幅方向に離間して配置される第1前照灯及び第2前照灯と接続可能な制御装置であって、
前記車両に設置された降雨量検出手段と、
前記車両に設置されて前記降雨量検出手段と接続されており、前記降雨量検出手段により検出される降雨量が所定値以上である場合に前記第1前照灯の第1照射光が前記第2前照灯の第2照射光に比べて相対的に暗くなるように制御するコントローラと、
を含み、
前記第1前照灯及び前記第2前照灯は、前記第1照射光及び前記第2照射光としてハイビーム又はアダプティブドライビングビームを照射するものであり、
前記第1前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と同じ側に配置されており、
前記第2前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と反対側に配置されており、
前記コントローラは、前記第1照射光の光度が前記第2照射光の光度に比べて1/2以下となるように前記第1照射光及び前記第2照射光を制御する、
前照灯の制御装置である。
[2]本開示に係る一態様の制御方法は、
車両の前部において車幅方向に離間して配置される第1前照灯及び第2前照灯の点灯状態をコントローラによって制御する制御方法であって、
前記コントローラは、降雨量検出手段により検出される降雨量が所定値以上である場合に前記第1前照灯の第1照射光が前記第2前照灯の第2照射光に比べて相対的に暗くなるように制御するものであって
前記第1前照灯及び前記第2前照灯は、前記第1照射光及び前記第2照射光としてハイビーム又はアダプティブドライビングビームを照射するものであり、
前記第1前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と同じ側に配置されており、
前記第2前照灯は、前記車幅方向において前記車両の所定位置を基準として当該車両の運転席と反対側に配置されており、
前記コントローラは、前記第1照射光の光度が前記第2照射光の光度に比べて1/2以下となるように前記第1照射光及び前記第2照射光を制御する、
前照灯の制御方法である。
[3]本開示に係る一態様の前照灯システムは、前記[1]の制御装置と、車両の前部において車幅方向に離間して配置されており前記制御装置と接続される第1前照灯及び第2前照灯と、を含む、前照灯システムである。
【0006】
上記構成によれば、歩行者の視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の前照灯システムの構成を示す図である。
図2図2は、前照灯システムのコントローラにおける一実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
図3図3(A)は、ステップS12でのハイビーム照射の様子を模式的に示す図である。図3(B)は、ステップS14でのハイビーム照射の様子を模式的に示す図である。
図4図4は、前照灯システムのコントローラにおける他の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
図5図5(A)は、ステップS24でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。また、図5(B)は比較例のアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。
図6図6は、前照灯システムのコントローラにおける他の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
図7図7(A)、図7(B)は、ステップS30でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。
図8図8(A)、図8(B)は、変形実施例でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施形態の前照灯システムの構成を示す図である。図示の前照灯システムは、コントローラ1、撮像装置2、ランプスイッチ3、降雨量検出手段4、一対の前照灯ユニット5a、5bを含んで構成されている。この前照灯システムは、車両の前部に搭載されて車両前方へ光照射を行うためのものである。なお、本明細書においては、コントローラ1、撮像装置2、降雨量検出手段4を含んで前照灯の制御装置が構成されている。また、本明細書においては、撮像装置2が歩行者検出器に対応し、前照灯ユニット5aが第1前照灯に対応し、前照灯ユニット5bが第2前照灯に対応する。
【0009】
コントローラ1は、各前照灯ユニット5a、5bによる光照射を制御するものである。このコントローラ1は、例えばプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶デバイス、入出力インターフェースなどを備えたコンピュータシステムを用いて構成することができる。本実施形態のコントローラ1は、予め記憶デバイス(あるいはROM)に記憶されたプログラムがプロセッサによって読み出されて実行されることにより、所定の機能を発揮できる状態となる。コントローラ1は、プログラム実行によって実現される機能ブロックとしての照射状態設定部11、制御信号生成部12を含む。
【0010】
照射状態設定部11は、撮像装置2によって撮影される自車両前方の状況、ランプスイッチ3の操作状態、降雨量検出手段4によって検出される降雨量に基づいて、各前照灯ユニット5a、5bによる照射光の状態を設定する。
【0011】
制御信号生成部12は、照射状態設定部11によって設定される照射光の状態に応じた照射光を各前照灯ユニット5a、5bに形成させるための制御信号を生成し、各前照灯ユニット5a、5bへ供給する。
【0012】
撮像装置2は、自車両前方の空間を撮影して得られる画像に基づいて歩行者の位置などの状況を検出するものであり、カメラ21と画像処理部22を備える。カメラ21は、自車両前方の空間を撮影して画像データを生成する。画像処理部22は、カメラ21によって生成された画像データに対して画像認識処理を行うことにより、歩行者の位置、前方車両(先行車両または対向車両)の位置、道路上の白線など自車両前方の状況を検出する。
【0013】
なお、この画像処理部22による機能はコントローラ1に設けられていてもよい。その場合には、撮像装置2から画像データがコントローラ1へ供給され、コントローラ1において所定のプログラムを実行することで画像認識処理が行われる。
【0014】
ランプスイッチ3は、自車両の運転席付近において運転者によって操作可能な位置に設置されている。このランプスイッチ3は、前照灯ユニット5a、5bによる光照射を行わせたい場合に運転者によって操作される。
【0015】
降雨量検出手段4は、自車両の存在する場所における降雨量を検出し、降雨量に応じた変化を示す信号(又はデータ)を出力する。降雨量検出手段4としては公知の種々のものを用いることが可能である。一例を挙げると、特開2006-29807号公報に記載されるような、自車両のフロントガラスの内側に設置されて当該ガラスの外面に付着する雨滴を光学的手法によって検出するセンサを用いることができる。また、別の例として、降雨量検出手段4は、上記のようなセンサの出力に基づいて車両のワイパーの駆動を制御するワイパー制御装置からその稼働状況に関する情報を得るような構成とすることも可能である。
【0016】
一対の前照灯ユニット5a、5bは、自車両前部の左右の所定位置に搭載されており、コントローラ1から与えられる制御信号に応じて動作して自車両前方へ照射される光を形成する。本実施形態の前照灯ユニット5a、5bは、ロービーム(すれ違い灯)、ハイビーム(走行灯)の各照射光を形成可能であるとともに、前方車両の位置等に応じて設定される範囲を部分的に減光(または消灯)した照射光であるアダプティブドライビングビーム(ADB)を形成可能である。
【0017】
各前照灯ユニット5a、5bとしては公知の種々の構成を採用することができる。例えば、光源バルブと反射鏡や遮蔽板を組み合わせた構成のランプユニットによりハイビームやロービームを形成することができる。また、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子が一方向または二方向に配列されており、各発光素子の点灯状態を個別に制御可能なランプユニットを用いてアダプティブドライビングビームを形成することもできる。また、光源と液晶素子などを備え、液晶素子の各画素の光透過状態を個別に制御可能なランプユニットを用いてアダプティブドライビングビームを形成することもできる。また、レーザダイオードなどの発光素子と、この発光素子から出射する光を走査するミラーデバイス等の走査素子などを備え、発光素子の点消灯のタイミングと走査素子による走査タイミングを制御可能なランプユニットを用いてアダプティブドライビングビームを形成することも可能である。さらに、これらの構成のランプユニットにおいてアダプティブドライビングビームに加えてハイビームやロービームが形成されてもよい。
【0018】
図2は、前照灯システムのコントローラにおける一実施形態の動作手順を示すフローチャートである。ここでは、ランプスイッチ3の操作に応じて各前照灯ユニット5a、5bによりロービームが形成されて自車両前方へ照射されていることを前提とし、降雨量検出手段4によって検出される降雨量に応じてハイビームの照射態様を可変に設定する動作について説明する。なお、ここで示すフローチャートにおいて示される動作手順は一例であり、動作に不整合が生じない限りにおいて各ステップの処理順序が入れ替えられてもよく、図示しない他の処理が追加されても構わない。後述する図4図6で示すフローチャートにおいても同様である。
【0019】
コントローラ1の照射状態設定部11は、ランプスイッチ3からその操作状態を示す信号を受け取り、当該信号に基づいてハイビームの動作を指示するスイッチがオンとなっている場合には(ステップS11;YES)、左右それぞれの前照灯ユニット5a、5bによりハイビームが点灯状態となるように照射状態を設定する(ステップS12)。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによって形成されたハイビームが自車両の前方に照射される。
【0020】
次に、照射状態設定部11は、降雨量検出手段4の出力する信号に基づいて検出される降雨量が所定値以上である場合には(ステップS13;YES)、車両の車幅方向の中心を基準にして運転席と同じ側に位置する前照灯ユニット5aによるハイビーム(右側ハイビーム)を相対的に暗くなるように減光し、運転席と反対側の前照灯ユニット5bによるハイビーム(左側ハイビーム)の明るさが維持されように照射状態を設定する(ステップS14)。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによって形成されたハイビームが自車両の前方に照射される。他方で、降雨量が所定値以上ではない場合には(ステップS13;NO)、ステップS11に戻る。
【0021】
ここで、降雨量の所定値については実験等に基づいて任意に設定してよく、例えば20mm/時とすることができる。また、右側ハイビームの「減光」については、左側ハイビームに比べて相対的に暗ければよく、例えば光度が1/10以下となるようにしてもよいし、光度が実質的に0となるようにしてもよい。少なくとも、左側ハイビームに比べて1/2以下の光度となることが好ましい。これらは後述する他の実施形態においても同様である。
【0022】
次に、照射状態設定部11は、ランプスイッチ3からその操作状態を示す信号を受け取り、当該信号に基づいてハイビームの動作を指示するスイッチがオフとなった場合には(ステップS15;YES)、左右それぞれの前照灯ユニット5a、5bによるハイビームが消灯状態となるように照射状態を設定する(ステップS16)。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによるハイビームが消灯される。その後、ステップS11に戻る。
【0023】
同様に、ステップS11においてハイビームの動作を指示するスイッチがオンではなくオフであった場合にも(ステップS11;NO)、照射状態設定部11によって照射状態が設定され、各前照灯ユニット5a、5bによるハイビームが消灯される(ステップS17)。その後、ステップS11に戻る。
【0024】
他方、ステップS15においてハイビームの動作を指示するスイッチがオフとなっていない場合に(ステップS15;NO)、照射状態設定部11は、降雨量検出手段4の出力する信号に基づいて降雨量が所定値よりも小さければ(ステップS18;YES)、ステップS11へ戻る。この場合、ハイビームの動作を指示するスイッチがオンであれば左右のハイビームが点灯され(ステップS12)、降雨量が引き続き所定値より小さければ(ステップS13;NO)、各ハイビームの点灯状態が維持される。
【0025】
また、降雨量が所定値よりも小さくない場合、すなわち所定値以上である場合には(ステップ18;NO)、ステップS15へ戻る。この場合、ハイビームの動作を指示するスイッチがオンであれば、降雨量が所定値以上である間はハイビーム105aが減光された状態が維持される(ステップS14)。
【0026】
図3(A)は、ステップS12でのハイビーム照射の様子を模式的に示す図である。本明細書では、左側通行が法定され、運転席が車両の右側に設置されている場合を想定する。図3(A)並びに後述する図3(B)では、二車線の道路の左側レーンを走行する自車両100の様子が上側からの平面視によって示されている。図中において符号dは運転席の位置を模式的に示している。図示のように各前照灯ユニット5a、5bにより形成されたハイビーム105a、105bが部分的に重なりながら自車両100の前方に照射される。
【0027】
図3(B)は、ステップS14でのハイビーム照射の様子を模式的に示す図である。図示の例では、運転席の位置dと同じ側の前照灯ユニット5aにより形成されるハイビーム105aは、実質的に消灯した状態に近い状態に減光されている(完全に消灯でもよい)。他方で、反対側の前照灯ユニット5bにより形成されるハイビーム105bは、十分な光度による点灯が維持されている。このような制御により、降雨量が多い場合において自車両100の走行する前方に対する光照射が相対的に少なくなるので、左側の道路脇(歩道等)に存在する歩行者101の視認性が改善される。
【0028】
図4は、前照灯システムのコントローラにおける他の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。ここでは、ランプスイッチ3の操作に応じて各前照灯ユニット5a、5bによりロービームが形成されて自車両前方へ照射されていることを前提とし、降雨量検出手段4によって検出される降雨量に応じてアダプティブドライビングビーム(ADB)の照射態様を可変に設定する動作について説明する。
【0029】
照射状態設定部11は、ランプスイッチ3からその操作状態を示す信号を受け取り、当該信号に基づいてアダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオンとなっている場合には(ステップS21;YES)、左右それぞれの前照灯ユニット5a、5bによるアダプティブドライビングビームが点灯状態となるように照射状態を設定する(ステップS22)。この場合、照射状態設定部11は、撮像装置2によって検出される前方車両の位置に応じた範囲を部分的に減光(または消灯)した照射光であるアダプティブドライビングビームが形成されるように照射状態を設定する。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによって形成されたアダプティブドライビングビームが自車両の前方に照射される。
【0030】
次に、照射状態設定部11は、降雨量検出手段4の出力する信号に基づいて検出される降雨量が所定値以上である場合には(ステップS23;YES)、運転席と同じ側の前照灯ユニット5aによるアダプティブドライビングビーム(右側ADB)を相対的に暗くなるように減光し、反対側の前照灯ユニット5bによるアダプティブドライビングビーム(左側ADB)は照射範囲がより狭くなって相対的に自車両から遠い路肩側に偏って照射されるように照射状態を設定する(ステップS24)。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによって形成されたアダプティブドライビングビームが自車両の前方に照射される。他方で、降雨量が所定値以上ではない場合には(ステップS23;NO)、ステップS21に戻る。
【0031】
図5(A)は、ステップS24でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。また、図5(B)は比較例のアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。図示の例では、運転席の位置dと同じ側の前照灯ユニット5aにより形成されるアダプティブドライビングビーム105aは、実質的に消灯した状態に近い状態に減光されている(完全に消灯でもよい)。他方で、反対側の前照灯ユニット5bにより形成されるアダプティブドライビングビーム105cは、その照射範囲が上記アダプティブドライビングビーム105bに比べてより狭められ、運転席と反対側の道路脇へ偏って照射されるように形成されている。このような制御により、降雨量が多い場合において自車両100の走行する前方に対する光照射がより少なくなるので、左側歩道等に存在する歩行者101の視認性がより改善される。
【0032】
次に、照射状態設定部11は、ランプスイッチ3からその操作状態を示す信号を受け取り、当該信号に基づいてアダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオフとなった場合には(ステップS25;YES)、左右それぞれの前照灯ユニット5a、5bによるハイビームが消灯状態となるように照射状態を設定する(ステップS26)。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによるアダプティブドライビングビームが消灯される。その後、ステップS21に戻る。
【0033】
同様に、ステップS21においてアダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオンではなくオフであった場合にも(ステップS21;NO)、照射状態設定部11によって照射状態が設定され、各前照灯ユニット5a、5bによるアダプティブドライビングビームが消灯される(ステップS27)。その後、ステップS21に戻る。
【0034】
他方、アダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオフとなっていない場合に(ステップS25;NO)、照射状態設定部11は、降雨量検出手段4の出力する信号に基づいて降雨量が所定値よりも小さければ(ステップS28;YES)、ステップS21へ戻る。この場合、アダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオンであれば左右のアダプティブドライビングビームが点灯され(ステップS22)、降雨量が引き続き所定値より小さければ(ステップS23;NO)、各アダプティブドライビングビームの点灯状態が維持される。
【0035】
また、降雨量が所定値よりも小さくない場合、すなわち所定値以上である場合には(ステップ28;NO)、ステップS25へ戻る。この場合、アダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオンであれば、降雨量が所定値以上である間はアダプティブドライビングビーム105aを減光した状態が維持される(ステップS24)。
【0036】
図6は、前照灯システムのコントローラにおける他の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。この実施形態は、図4に示した実施形態と大部分が共通しており、ステップS25とステップS28の各処理の間に、歩行者の検知結果に応じた処理を追加した点のみが異なっている。従って、以下では主に追加した処理について説明し、それ以外の処理については説明を省略する。
【0037】
アダプティブドライビングビームの動作を指示するスイッチがオフとなっていない場合に(ステップS25;NO)、照射状態設定部11は、撮像装置2の出力するデータに基づいて、歩行者が検知されている場合には(ステップS29;YES)、歩行者の位置に応じた狭角なアダプティブドライビングビームが形成されるように照射状態を設定する。照射状態が設定されると、それに基づいて制御信号生成部12により制御信号が生成されて各前照灯ユニット5a、5bに出力され、各前照灯ユニット5a、5bによって形成されたアダプティブドライビングビームが自車両の前方に照射される(ステップS30)。その後、ステップS28へ進む。他方、歩行者が検知されていない場合には(ステップS29;NO)、ステップS25に戻る。
【0038】
歩行者に応じた光照射が実行された後、照射状態設定部11は、降雨量検出手段4の出力する信号に基づいて降雨量が所定値よりも小さければ(ステップS28;YES)、ステップS21の処理へ戻る。また、降雨量が所定値よりも小さくない場合、すなわち所定値以上である場合には(ステップ28;NO)、ステップS25へ戻る。
【0039】
図7(A)、図7(B)は、ステップS30でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。各図の例では、運転席の位置dと同じ側の前照灯ユニット5aにより形成されるアダプティブドライビングビーム105aは、実質的に消灯した状態に近い状態に減光されている(完全に消灯でもよい)。他方で、反対側の前照灯ユニット5bにより形成されるアダプティブドライビングビーム105dは、図7(A)に例示されるように自車両100の左側の歩道に存在する歩行者101の位置に応じて狭角に照射され、かつその照射方向が歩行者101の位置の移動に応じて可変に設定される。また、図7(B)に例示されるように2人の歩行者101、102が存在する場合においては、それぞれに対応したアダプティブドライビングビーム105d、105eが前照灯ユニット5bにより形成され、歩行者101、102の各位置に応じて狭角に照射される。このような制御により、降雨量が多い場合においても、自車両100の前方に存在する歩行者101、120の視認性がより改善される。
【0040】
以上のような各実施形態によれば、歩行者の視認性を向上することが可能となる。
【0041】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、本明細書において前照灯とは車両の前方(さらに側方や周辺)へ光照射を行うものであればよく、例えばコーナリングランプ、フォグランプ、舵角に応じて方向を可変に設定するランプ、その他種々のランプに対して本開示に係る技術内容を適用することができる。
【0042】
また、図2および図4に示した実施形態による制御を行う場合には、前照灯システムには必ずしも撮像装置2が含まれていなくてもよい。また、図2に示した実施形態による制御を行う場合には、前照灯システムの各前照灯ユニット5a、5bには必ずしもアダプティブドライビングビームを形成する機能が備えられていなくてもよい。
【0043】
また、上記した各実施形態では降雨量が所定値以上である場合には前照灯ユニット5aによる照射光を全体的に減光していたが、特定の範囲については減光しつつ照射してもよい。図8(A)、図8(B)は、変形実施例でのアダプティブドライビングビーム照射の様子を模式的に示す図である。図8(A)に示す変形実施例では、前照灯ユニット5aによる照射光105aは、自車両100の運転席の位置dと同じ側の道路脇側へ偏るように照射幅を狭めて照射されている。また、図8(B)に示す変形実施例では、前照灯ユニット5による照射光105aは、自車両100の進行方向において相対的に近い前方へ偏るように照射幅を狭めて照射されている。このような照射光105aを前照灯ユニット5bによる照射光105d、105eと合わせて照射する制御によっても、歩行者101や歩行者102の視認性を高めることができる。
【0044】
なお、以上の実施形態では、車両が左側通行の場合を例示しているが、これとは異なり、車両が右側通行の場合には、上記した実施形態における左右を逆にして制御すればよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1:コントローラ、2:撮像装置、3:ランプスイッチ、4:降雨量検出手段、5a、5b:前照灯ユニット、11:照射状態設定部、12:制御信号生成部、21:カメラ、22:画像処理部、100:自車両、101、102:歩行者、105a、105b、105c、105d、105e:照射光(ハイビームまたはアダプティブドライビングビーム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8