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特許7568529発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011688
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115190
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】平井 賢治
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023305(JP,A)
【文献】特開2011-026506(JP,A)
【文献】特開2012-184393(JP,A)
【文献】特開平09-100366(JP,A)
【文献】特開2001-220458(JP,A)
【文献】特開2016-130282(JP,A)
【文献】特開2002-284917(JP,A)
【文献】特開2012-167267(JP,A)
【文献】特開2022-140406(JP,A)
【文献】特開2024-18942(JP,A)
【文献】特開昭58-141219(JP,A)
【文献】特開2018-100380(JP,A)
【文献】特開2014-167062(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096327(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/054017(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/189759(WO,A1)
【文献】特開2015-199923(JP,A)
【文献】特開2021-54887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と発泡剤とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
該スチレン系樹脂が、スチレン系単量体を90質量%~99質量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体を1質量%~10質量%含む単量体混合物の重合体であり、その重量平均分子量Mwが24万~50万であり、
該発泡性スチレン系樹脂粒子における該発泡剤の含有量が3質量%~8.5質量%であり、該発泡剤が、その全量に対して35質量%~85質量%のイソブタンを含み、
該発泡性スチレン系樹脂粒子における溶剤および可塑剤の合計量が1.5質量%~3質量%であり、および、残存する未反応単量体の量が0.15質量%~0.7質量%である、
発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる、予備発泡スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
請求項2に記載の予備発泡スチレン系樹脂粒子を発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子を含有し、互いに融着した複数の該発泡スチレン系樹脂粒子により構成されている、スチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽量かつ断熱性および機械的強度に優れることから、住宅および自動車等に用いられる断熱材、建築資材等に用いられる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に幅広く使用されている。中でも、発泡性粒子を原料として製造される型内発泡成形体が広く使用されている。型内発泡成形においては、省エネルギー性および成形性が求められている。省エネルギー性としては、例えば、使用する蒸気量が少ないこと、加熱時間が短いことが挙げられる。成形性としては、例えば、成形時に発泡性粒子が破断しないこと、得られる発泡成形体の外観が良好であること、良好な成形体が得られる蒸気圧が適正であること、放冷時間が短いことが挙げられる。この説明から明らかなとおり、省エネルギー性と成形性とは、互いに関連し得る特性である。省エネルギー性および成形性を改善するために、種々の技術が提案されている。しかし、多くの場合、省エネルギー性および成形性を改善しようとすると型内発泡成形時に過度の収縮が起こり、所望の形状の発泡成形体が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-184393号公報
【文献】特開2011-026506号公報
【文献】特許第6424037号
【文献】特許第3532323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、型内発泡成形時の省エネルギー性および成形性に優れ、かつ、収縮が抑制された発泡成形体を形成し得る発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することにある。本発明はまた、そのような発泡性スチレン系樹脂粒子を用いた予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み;該スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を90質量%~99質量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体を1質量%~10質量%含む単量体混合物の重合体であり、その重量平均分子量Mwが24万~50万であり;該発泡性スチレン系樹脂粒子における該発泡剤の含有量は3質量%~8.5質量%であり、該発泡剤は、その全量に対して35質量%~85質量%のイソブタンを含み;該発泡性スチレン系樹脂粒子における溶剤および可塑剤の合計量は0.5質量%~3質量%であり、および、残存する未反応単量体の量は0.15質量%~0.7質量%である。
本発明の別の実施形態によれば、予備発泡スチレン系樹脂粒子が提供される。予備発泡スチレン系樹脂粒子は、上記の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる。
本発明のさらに別の実施形態によれば、スチレン系樹脂発泡成形体が提供される。スチレン系樹脂発泡成形体は、上記の予備発泡スチレン系樹脂粒子を発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子を含有し、互いに融着した複数の該発泡スチレン系樹脂粒子により構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、発泡性スチレン系樹脂粒子において、発泡剤の含有量、溶剤および可塑剤の含有量、ならびに、残存する未反応単量体の量、さらに、スチレン系樹脂におけるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との比率、発泡剤におけるイソブタンの含有量を組み合わせて制御することにより、型内発泡成形時の省エネルギー性および成形性に優れ、かつ、収縮が抑制された発泡成形体を形成し得る発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本明細書における用語の定義は以下のとおりである。
発泡性スチレン系樹脂粒子(単に発泡性粒子と称する場合がある):発泡前の発泡剤を含浸した粒子を意味する。
予備発泡スチレン系樹脂粒子(単に予備発泡粒子と称する場合がある):発泡成形に供する前に発泡性粒子を予備的に発泡させた粒子を意味する。
発泡スチレン系樹脂粒子(単に発泡粒子と称する場合がある):発泡成形により予備発泡粒子がさらに発泡して発泡成形体を構成する粒子を意味する。
スチレン系発泡樹脂成形体(単に発泡成形体と称する場合がある):スチレン系樹脂発泡粒子の成形体を意味する。
【0008】
A.発泡性スチレン系樹脂粒子
A-1.全体構成
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性粒子)は、スチレン系樹脂と発泡剤とを含み、全体として粒子の形状を有する。発泡性粒子の粒径は、例えば0.3mm~3.0mmであり、好ましくは0.3mm~1.7mmである。粒径は、JIS Z 8815に準拠して測定され得る。具体的には、粒径は、JIS Z 8815の篩分け試験による粒度分布から積算値50%の粒径として測定した値とされる。発泡性粒子の形状としては、任意の適切な形状を採用することができる。形状の具体例としては、球状、略球状、楕円球状(卵状)、円柱状、略円柱状が挙げられる。
【0009】
本発明の実施形態においては、発泡性粒子は以下の構成を有する。スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を90質量%~99質量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体を1質量%~10質量%含む単量体混合物の重合体である。発泡性粒子における発泡剤の含有量は3質量%~8.5質量%である。発泡剤は、その全量に対して35質量%~85質量%のイソブタンを含む。さらに、発泡性粒子における溶剤および可塑剤の合計量は0.5質量%~3質量%であり、および、残存する未反応単量体(以下、単に残存単量体と称する場合がある)の量は0.15質量%~0.7質量%である。このような構成を有することにより、型内発泡成形時の省エネルギー性および成形性に優れ、かつ、収縮が抑制された発泡成形体を形成し得る発泡性スチレン系樹脂粒子を実現することができる。以下、発泡性粒子の構成要素を具体的に説明する。
【0010】
A-2.スチレン系樹脂
スチレン系樹脂は、単量体成分としてスチレン系単量体を含む高分子化合物である。スチレン系単量体は、スチレンまたはスチレン誘導体を含む。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系単量体は、スチレンをスチレン系単量体の全量に対して好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上含有する。
【0011】
スチレン系樹脂は、単量体成分の主成分としてスチレン系単量体を含んでいればよく、スチレン系単量体と共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の代表例としては、ビニル単量体が挙げられる。本発明の実施形態においては、スチレン系樹脂は、上記のとおり、スチレン系単量体を90質量%~99質量%およびビニル単量体としての(メタ)アクリル酸エステル単量体を1質量%~10質量%含む単量体混合物の重合体である。単量体混合物におけるスチレン系単量体の含有量は、好ましくは95質量%~99質量%であり、より好ましくは97質量%~99質量%である。単量体混合物における(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは1質量%~5質量%であり、より好ましくは1質量%~3質量%である。
【0012】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシルが挙げられる。アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることにより、スチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くすることができ、優れた省エネルギー性および成形性を実現することができる。一方で、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いた場合には発泡成形時の収縮に起因して所望形状の発泡成形体が得られない場合があるところ、本発明の実施形態によれば、(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合比を上記の範囲とし、さらに、発泡剤の含有量、発泡剤におけるイソブタンの含有量、溶剤および可塑剤の含有量、ならびに、残存単量体の量を組み合わせて制御することにより、優れた省エネルギー性および成形性を維持しつつ、発泡成形体の収縮を抑制することができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0013】
上記のとおり、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の共重合成分(他の共重合成分)を含む単量体混合物の重合体であってもよい。単量体混合物における他の共重合成分の含有量は、単量体混合物全体を100質量%としたときのスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計含有量の残部として規定される。他の共重合成分は、代表的には、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外のビニル単量体(他のビニル単量体)であり得る。他のビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体、多官能単量体、マレイン酸エステル単量体、フマル酸エステル単量体が挙げられる。他のビニル単量体は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。他のビニル単量体の数、種類、組み合わせ、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0014】
多官能単量体の具体例としては、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能単量体を用いることにより、スチレン系樹脂に分岐構造を付与することができる。
【0015】
マレイン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチルが挙げられる。
【0016】
フマル酸エステル単量体としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸エチルが挙げられる。
【0017】
スチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば24万~50万であり、また例えば24万~45万であり、また例えば24万~40万である。また、スチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば28万~40万であってもよく、また例えば35万~40万であってもよい。重量平均分子量が大きすぎると、省エネルギー性および成形性が不十分となる場合がある。重量平均分子量が小さすぎると、発泡成形時の収縮に起因して所望形状の発泡成形体が得られない場合がある。
【0018】
A-3.発泡剤
発泡剤としては、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤は、好ましくは、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンまたはネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素が挙げられる。発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。発泡剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。脂肪族炭化水素が好ましい。オゾン層の破壊を防止することができ、かつ、空気と速く置換するので発泡成形体の経時変化を抑制することができるからである。より好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、およびこれらの組み合わせである。
【0019】
本発明の実施形態においては、n-ブタンおよびイソブタンが特に好ましく用いられ得る。さらに、本発明の実施形態においては、発泡剤は、その全量に対して上記のとおり35質量%~85質量%、好ましくは35質量%~80質量%、より好ましくは40質量%~80質量%、さらに好ましくは40質量%~70質量%のイソブタンを含む。イソブタンの含有量が小さすぎると、発泡成形時の収縮に起因して所望形状の発泡成形体が得られない場合がある。イソブタンの含有量が大きすぎると、省エネルギー性または成形性が不十分となる(特に、成形後の放冷時間が長くなる)場合がある。
【0020】
さらに、本発明の実施形態においては、発泡剤におけるペンタン(n-ペンタンおよびイソペンタン)の含有量は、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは5質量%未満であり、さらに好ましくは3質量%未満である。ペンタンの含有量は0(ゼロ)であってもよい。ペンタンの含有量が大きすぎると、発泡成形体の強度が不十分となる場合がある。
【0021】
発泡性粒子中における発泡剤の含有量は、上記のとおり3質量%~8.5質量%であり、好ましくは3質量%~8質量%であり、より好ましくは4質量%~6質量%である。発泡剤の含有量が小さすぎると、発泡成形体自体が得られない場合がある。発泡剤の含有量が大きすぎると、省エネルギー性または成形性が不十分となる(特に、成形後の放冷時間が長くなる)場合がある。
【0022】
A-4.可塑剤および溶剤
発泡性粒子は、可塑剤および/または溶剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、例えば、ジイソブチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、ステアリン酸トリグリセライド、グリセリントリステアレート、グリセリントリカプリレート等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、オリーブ油等の植物油、流動パラフィン等が挙げられる。これら可塑剤のうちでも、ジイソブチルアジペート、ヤシ油、流動パラフィンが好ましい。なお、可塑剤として、RоHS指令(RоHS2)や食品衛生法などの法令で使用が禁止されている化学物質を用いないことが好ましい。当該化学物質としては、例えば、フタル酸エステルが挙げられる。フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸-n-オクチルが挙げられる。溶剤としては、例えば、へキサン、ヘプタン等のC6以上の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これら溶剤のうちでも、発泡力が良好である点、環境・健康の観点からシクロへキサンが好ましい。本発明の実施形態においては、発泡性粒子における溶剤および可塑剤の合計量は、上記のとおり0.5質量%~3質量%であり、好ましくは0.8質量%~2.5質量%であり、より好ましくは1.5質量%~2.2質量%である。当該合計量が小さすぎると、省エネルギー性および成形性が不十分となる場合がある。当該合計量が大きすぎると、発泡成形時の収縮に起因して所望形状の発泡成形体が得られない場合がある。当該合計量は、製造時のそれぞれの添加量により調整することができる。
【0023】
A-5.残存単量体
発泡性粒子には、未反応の単量体が残存し得る。本発明の実施形態においては、残存単量体の量は、上記のとおり0.15質量%~0.7質量%であり、好ましくは0.15質量%~0.6質量%であり、より好ましくは0.15質量%~0.5質量%である。残存単量体の量が小さすぎると、成形性が不十分となる場合がある。残存単量体の量が大きすぎると、発泡成形時の収縮に起因して所望の形状の発泡成形体が得られない場合がある。残存単量体の量は、製造時の重合反応温度、重合反応時間、重合開始剤の添加量などの調整、またはスチレン系樹脂粒子に意図的に添加することにより調整することができる。
【0024】
A-6.平均気泡径
発泡性粒子を60倍に発泡させた場合(したがって、これは予備発泡粒子または発泡粒子であり得る)の表層部の平均気泡径は、好ましくは20μm~200μmであり、より好ましくは40μm~150μmであり、さらに好ましくは50μm~120μmである。平均気泡径がこのような範囲であれば、発泡成形体の外観が美麗という利点がある。発泡粒子の表層部とは、発泡粒子の表面から中心方向(すなわち、直径方向)に300μmまでの領域をいう。平均気泡径は、例えば、ASTM D2482-69に準拠して測定され得る。
【0025】
A-7.その他
発泡性粒子は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、輻射伝熱抑制成分、スチレン系樹脂以外の樹脂、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、耐候剤、老化防止剤、防曇剤、香料が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0026】
発泡性粒子は、表面添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、発泡性粒子の予備発泡において予備発泡粒子同士の合着を抑制するための表面添加剤としては、粉末状金属石鹸類(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど)、シリコーンオイルなどが挙げられる。また例えば、成形時の予備発泡粒子の融着を促進するための表面添加剤としては、脂肪酸エステル(例えば。硬化ひまし油、ステアリン酸トリグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリドなど)、植物油(ヤシ油、オリーブオイルなど)、流動パラフィンなどが挙げられる。帯電防止のための表面添加剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0027】
発泡性粒子は、業界で周知慣用の方法により作製され得る。したがって、発泡性粒子の製造方法の説明は省略する。
【0028】
B.予備発泡スチレン系樹脂粒子
本発明の実施形態による予備発泡粒子は、上記A項に記載の発泡性粒子を予備発泡させてなる。予備発泡は、発泡性粒子を、水蒸気等を用いて所望の嵩発泡倍率(嵩密度)に発泡させることを含む。予備発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~70倍である。嵩密度は、嵩発泡倍率の逆数である。嵩発泡倍率および嵩密度は、例えば以下のようにして求められる。
発泡性粒子を測定試料としてW(g)採取する。この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm)をJIS K 6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。測定資料の質量および体積から、下記式に基づいて嵩発泡倍数および嵩密度を求めることができる。
嵩発泡倍数(倍=cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の質量(W)
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0029】
1つの実施形態においては、予備発泡粒子は、発泡成形体の成形に用いることができる。別の実施形態においては、予備発泡粒子は、そのままで緩衝剤、断熱材等として用いることができる。予備発泡粒子をそのまま用いる場合、予備発泡粒子は、好ましくは、多数の予備発泡粒子を袋体に充填した充填体として用いられ得る。
【0030】
C.スチレン系樹脂発泡成形体
本発明の実施形態による発泡成形体は、上記B項に記載の予備発泡粒子をさらに発泡させた発泡スチレン系樹脂粒子(発泡粒子)を含む。発泡成形体は、代表的には、互いに融着した複数の発泡粒子により構成されている。
【0031】
発泡成形体は、代表的には、目的に応じた所定の形状を有する型内に予備発泡粒子を仕込み、型内発泡成形を行うことにより作製され得る。より詳細には、型内発泡成形は、(i)予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填すること、(ii)熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で予備発泡粒子を加熱発泡させて発泡粒子を得ること、(iii)当該加熱発泡により、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させること;を含む。発泡成形体の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡成形体の密度は、例えば、金型内に充填する予備発泡粒子の嵩発泡倍率を予め調整すること、あるいは、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整することにより調整することができる。
【0032】
加熱発泡の温度(実質的には、熱媒体の温度)は、好ましくは90℃~150℃であり、より好ましくは110℃~130℃である。加熱発泡時間は、好ましくは5秒~50秒であり、より好ましくは10秒~50秒である。加熱発泡の成形蒸気圧(熱媒体の吹き込みゲージ圧)は、好ましくは0.06MPa~0.08MPaである。加熱発泡がこのような条件であれば、発泡粒子を相互に良好に融着させることができる。
【0033】
必要に応じて、発泡成形体の成形前に予備発泡粒子を熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、好ましくは20℃~60℃である。熟成温度が低すぎると、過度に長い熟成時間が必要とされる場合がある。熟成温度が高すぎると、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下する場合がある。
【0034】
発泡成形体における発泡粒子の嵩発泡倍率は、好ましくは3倍~100倍であり、より好ましくは30倍~90倍であり、さらに好ましくは50倍~70倍である。
【0035】
本発明の実施形態においては、発泡成形時の収縮が抑制されるので、所望の形状を有する発泡成形体を安定的にかつ高い歩留まりで得ることができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0037】
(A)発泡性粒子の未反応単量体含有量および溶剤含有量
発泡性粒子の未反応単量体含有量および溶剤含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。発泡性粒子をそれぞれ1g精秤し、精秤したサンプルに、0.1体積%のシクロペンタノールを含有するジメチルホルムアミド溶液1mLを内部標準液として加えた後、さらに、ジメチルホルムアミドを加えて25mLの測定溶液を調製した。次いで、この測定溶液1.8μLをガスクロマトグラフ(島津製作所社製、商品名「GC-2014」)に供給して測定した。発泡性粒子の全重量に対する未反応単量体含有量および溶剤含有量を予め測定しておいた検量線に基づいて算出することにより、それぞれの含有量(ppm)を算出した。測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
検出器:FID
カラム:ジーエルサイエンス社製(φ3mm×2m)
液相:PEG-20MPT25%
担体:Chromosorb WAW-DWCS
メッシュ:60/80
カラム温度:95℃
DET 温度:220℃
検出器温度:220℃
キャリアーガス:窒素
窒素流量:40mL/min
【0038】
(B)発泡性粒子の重量平均分子量
重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算の平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。具体的には、発泡性粒子の試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに加えて72時間静置して溶解させ(完全溶解)、得られた溶液を、倉敷紡績社製の非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)で濾過して測定した。予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求めた。またクロマトグラフの条件は下記の通りとする。
<測定条件>
使用装置:高速GPC装置、東ソー社製、HLC-8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ-H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM-H(4.6mmID×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側=0.175mL/分、リファレンス側=0.175mL/分
検出器:RI検出器、試料濃度=0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0分~25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
<検量線の作成>
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製の商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製の商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000のものである、標準ポリスチレン試料を用いた。
検量線の作成方法は以下の通りであった。上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1,030,000のもの)、グループB(重量平均分子量が、3,840,000、102,000、9,100、500のもの)、およびグループC(重量平均分子量が5,480,000、355,000、37,900、2,630のもの)にグループ分けした。グループAを5mg秤量した後に、テトラヒドロフラン20mLに溶解し(A溶液)、グループBも各々5mg~10mg秤量した後に、テトラヒドロフラン50mLに溶解し(B溶液)、グループCも各々1mg~5mg秤量した後に、テトラヒドロフラン40mLに溶解した(C溶液)。標準ポリスチレン検量線は、作成したA溶液、B溶液、およびC溶液のそれぞれを50μL注入して、測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)をHLC-8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC-WS)にて作成することにより得られ、その検量線を用いて測定した。
なお、重量平均分子量は、発泡粒子、発泡成形体からの試料を用いても測定できる。
【0039】
(C)発泡性粒子の発泡剤含有量および発泡剤組成
発泡性粒子の発泡剤含有量(質量%)および発泡剤組成は、以下のようにして測定した。発泡性粒子を20mg程度の量を精秤し、島津製作所社製熱分解炉PYR-1Aの分解炉入り口にセットし、15秒間ほどヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入ガスを排出する。密閉後試料を180℃の炉心に挿入し、120秒間加熱してガスを放出させ、この放出ガスを以下の条件で測定定量した。発泡剤組成については発泡剤全量に対する各発泡剤種の含有量から算出した。
<測定条件>
測定装置:ガスクロマトグラフ GC-14B,熱分解炉PYR-1A(株式会社島津製作所製)
カラム :Shimalite 60/80 NAW(Squalane 25%)3m×3φ
検出器 :FID
測定条件:カラム温度(70℃),注入口温度(110℃),検出器温度(110℃)
キャリアーガス(N2),N2流量(50mL/min),絶対検量線法
【0040】
(1)省エネルギー性
発泡時加熱時間を省エネルギー性の評価指標とした。具体的には以下のとおりであった。実施例および比較例で得られた発泡性粒子を円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.07MPaの水蒸気により加熱し、嵩密度0.017g/cm(嵩発泡倍率60倍)となるまでの時間を加熱時間とし、以下の基準で評価した。
◎:加熱時間が90秒以下
〇:加熱時間が90秒を超えて120秒以下
△:加熱時間が120秒を超えて150秒以下
×:加熱時間が150秒を超える
【0041】
(2)成形性
型内発泡成形として積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、長さ400mm×幅300mm×厚み30mmサイズの板形状の金型に、実施例および比較例で得られた予備発泡粒子を充填し、加熱時間を20秒、成形蒸気圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.03MPa~0.08MPa(0.01MPa刻みで調整)とした。以下の4項目について評価した。
【0042】
(2-1)融着性
成形蒸気圧0.05MPaで成形した。得られた発泡成形体を破断し、破断面を観察して、粒子界面ではなく、粒子が破断している割合を求めて、以下の基準で評価した。
◎:粒子破断の割合が90%以上
〇:粒子破断の割合が80%以上90%未満
△:粒子破断の割合が70%以上80%未満
×:粒子破断の割合が70%未満
【0043】
(2-2)表面性
成形蒸気圧0.05MPaで成形した。得られた発泡成形体の表面状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面の溶融、粒間がなく、非常に美麗
〇:表面の溶融、粒間が少なく、美麗
△:表面の溶融、粒間があり、外観やや不良
×:表面の溶融、粒間が多く、外観不良
【0044】
(2-3)成形蒸気圧
成形蒸気圧0.03MPa~0.08MPaで成形した。上記の「(2-1)融着性」および「(2-2)表面性」がいずれも「◎」または「〇」となる成形蒸気圧を特定し、以下の基準で評価した。
◎:0.04MPa以下
〇:0.04MPaを超えて0.05MPa以下
△:0.05MPaを超えて0.06MPa以下
×:0.06MPaを超える
【0045】
(2-4)放冷時間
上記の「(2-3)成形蒸気圧」で特定した成形蒸気圧において、成形時の放冷時間を以下の基準で評価した。
◎:80秒以下
〇:80秒を超えて100秒以下
△:100秒を超えて120秒以下
×:120秒を超える
【0046】
(3)収縮
実施例および比較例で得られた発泡性粒子を円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.07MPaの水蒸気により加熱し、嵩密度0.017g/cm(嵩発泡倍数70倍)に予備発泡を行った後に24時間静置し、予備発泡粒子を得た。型内発泡成形には積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、長さ400mm×幅300mm×厚み10mmサイズの板形状の金型に上記で得られた予備発泡粒子を充填し、加熱時間は20秒、成形蒸気圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.08MPaとし、発泡成形体を得た。金型から取り出してから5分後に発泡成形体の長さおよび幅の4辺の直線距離を測定し、金型寸法に対する比率を寸法収縮率とした。また、金型から取り出してから1時間後についても同様の測定を行った。測定した4辺の内、最も収縮が大きい辺を以下の基準にて評価した。
◎:5分後の収縮率が5%以下、かつ、1時間後の収縮率が5分後の収縮率よりも小さい
〇:5分後の収縮率が5%超6%以下、かつ、1時間後の収縮率が5分後の収縮率よりも小さい
△:5分後の収縮率が6%超、かつ、1時間後の収縮率が5分後の収縮率よりも小さい
×:5分後の収縮率が6%超、かつ、1時間後の収縮率が5分後の収縮率よりも大きい
【0047】
(4)総合評価
上記の6項目の評価を基に、以下の基準で総合評価を行った。
◎:評価6項目のいずれにも△および×がなく、かつ◎が5つ以上
〇:評価6項目のいずれにも△および×がなく、かつ◎が4つ以下
△:評価6項目のいずれかに△があり、かつ×がない
×:評価6項目のいずれかに×がある
【0048】
[実施例1]
(スチレン系樹脂粒子の作製)
攪拌機付き100Lオートクレーブに、純水40000質量部、リン酸カルシウム100質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.2質量部を仕込み、さらに、攪拌しながらスチレン40000質量部、ベンゾイルパーオキサイド102質量部、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート24質量部を仕込んだ。続いて90℃まで昇温し、引き続き90℃で6時間保持し、次いで125℃まで昇温し、125℃で2時間保持した後に冷却して、スチレン系樹脂粒子を得た。得られたスチレン系樹脂粒子を篩分けし、種粒子として粒子径0.5mm~0.71mmのスチレン系樹脂種粒子を得た。尚、撹拌の回転数についてはこのような粒子径が得られるように調整した。
【0049】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の作製)
撹拌機付き25Lオートクレーブに、上記で得られた種粒子2150質量部、ピロリン酸マグネシウム30質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0質量部を仕込み、230rpmで攪拌して分散液を調製した。続いて72℃まで昇温した後、当該分散液に、スチレン786質量部およびアクリル酸ブチル137質量部の単量体混合物にベンゾイルパーオキサイド31質量部、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート8質量部を溶解させた溶液を添加した。溶液をすべて添加した後、72℃で60分間保持した。次いで、87℃まで1時間で昇温させながらスチレン2346質量部を一定供給し、さらに87℃で1時間30分保持しながらスチレン3744質量部にジビニルベンゼンを2.7質量部溶解した単量体混合物を一定供給し、さらに30分保持した。次いで、125℃まで昇温し、30分保持したのちに100℃まで冷却した。
次いで、シクロヘキサン92質量部、アジピン酸ジイソブチル(可塑剤)82質量部、およびスチレン45質量部添加し、次いで混合ブタン(n-ブタン/イソブタン=50%/50%)640質量部を圧入して2時間に亘って保持した後、25℃に冷却した。オートクレーブからスラリーを取り出し、洗浄、脱水、乾燥することにより、発泡性粒子を得た。単量体混合物におけるアクリル酸ブチルの含有量、発泡性粒子における発泡剤の含有量、発泡剤におけるイソブタンの含有量、発泡性粒子における残存単量体の含有量、発泡性粒子における可塑剤および溶剤の合計量、ならびに、スチレン系樹脂の重量平均分子量は表1に示すとおりであった。なお、残存単量体の含有量、可塑剤量および溶剤量は、発泡性粒子の作製における上記の添加量に若干の変更を加えることにより調整した。
得られた発泡性粒子に表面添加剤を塗布した。表面添加剤は、発泡性粒子100質量部に対し、ステアリン酸亜鉛0.05質量部、ステアリン酸トリグリセライド0.05質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、およびポリエチレングリコール0.05質量部であった。
【0050】
(予備発泡スチレン系樹脂粒子の作製)
発泡性粒子を円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.07MPaの水蒸気により加熱し、嵩密度0.017g/cm(嵩発泡倍率60倍)に予備発泡を行った後に24時間静置し、予備発泡粒子を得た。
【0051】
(スチレン系樹脂発泡成形体の作製)
型内発泡成形として積水工機社製のACE-3SP成形機を用い、長さ400mm×幅300mm×厚み30mmサイズの板形状の金型に、実施例および比較例で得られた予備発泡粒子を充填し、加熱時間を20秒、成形蒸気圧(蒸気吹き込みゲージ圧)を0.03MPa~0.08MPa(0.01MPa刻みで調整)とし、発泡成形体を得た。
【0052】
得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を上記(1)~(3)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2~12および比較例1~11]
単量体混合物におけるアクリル酸ブチルの含有量、発泡性粒子における発泡剤の含有量、発泡剤におけるイソブタンの含有量、発泡性粒子における残存単量体の含有量、発泡性粒子における可塑剤および溶剤の合計量、ならびに、スチレン系樹脂の重量平均分子量が表1に示す値となるように処方および製造方法を変更したこと以外は実施例1と同様にして、発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を得た。得られた発泡性粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、優れた省エネルギー性および優れた成形性を維持しつつ、収縮が抑制された発泡成形体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の実施形態による発泡性スチレン系樹脂粒子、ならびに、それを用いた予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、住宅および自動車等に用いる断熱材、建築資材等に用いる保温材、魚箱および食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に好適に用いられる。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡スチレン系樹脂粒子およびスチレン系樹脂発泡成形体は、より具体的には、壁用断熱材、床用断熱材、屋根用断熱材、自動車用断熱材、温水タンク用保温材、配管用保温材、ソーラーシステム用保温材、給湯器用保温材、食品および工業製品等の容器、魚および農産物等の梱包材、盛土材、畳の芯材等に好適に用いられる。