(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】放射性物質収納容器の製造方法、および放射性物質収納容器
(51)【国際特許分類】
G21F 5/00 20060101AFI20241008BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20241008BHJP
G21F 5/06 20060101ALI20241008BHJP
G21F 1/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G21F5/00 K
G21F3/00 N
G21F5/06 Z
G21F1/10
G21F3/00 F
(21)【出願番号】P 2021018667
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】下条 純
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 健一
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135496(JP,A)
【文献】特開2020-173114(JP,A)
【文献】特開平07-318692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/00
G21F 3/00
G21F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質が内部に収納される有底円筒形状の容器本体を備える放射性物質収納容器の製造方法であって、
ブロック状の中性子遮蔽体を室温よりも低温の状態にすることで当該中性子遮蔽体を収縮させる冷却工程と、
収縮した前記中性子遮蔽体を、前記放射性物質収納容器の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置する中性子遮蔽体設置工程と、
を備え
、
前記中性子遮蔽体は、前記容器本体の側部の前記閉空間に設置されるものであり、且つ、複数であって、
前記冷却工程において、複数の前記中性子遮蔽体のうちの少なくとも1つを室温よりも低温の状態にすることで収縮させ、
前記中性子遮蔽体設置工程において、前記容器本体を構成する外筒の内側に先行して設置された当該外筒の周方向において隣り合う前記中性子遮蔽体の間に、収縮した前記中性子遮蔽体を設置する、
放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の放射性物質収納容器の製造方法において、
前記中性子遮蔽体設置工程において、前記容器本体の側面に前記外筒を貫通するように設置されるトラニオンの設置部において、前記外筒の周方向において隣り合う前記中性子遮蔽体の間に、収縮した前記中性子遮蔽体を設置する、
放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項3】
放射性物質が内部に収納される有底円筒形状の容器本体を備える放射性物質収納容器の製造方法であって、
ブロック状の中性子遮蔽体を室温よりも低温の状態にすることで当該中性子遮蔽体を収縮させる冷却工程と、
収縮した前記中性子遮蔽体を、前記放射性物質収納容器の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置する中性子遮蔽体設置工程と、
を備え、
前記中性子遮蔽体は、前記放射性物質収納容器の底部または蓋部の前記閉空間に設置されるものであり、
前記中性子遮蔽体は、分割された複数の分割中性子遮蔽体で構成され、
前記冷却工程において、複数の前記分割中性子遮蔽体のうちの少なくとも1つを室温よりも低温の状態にすることで収縮させ、
前記中性子遮蔽体設置工程において、前記底部または前記蓋部に先行して設置された複数の前記分割中性子遮蔽体で形成された空間に、収縮した前記分割中性子遮蔽体を設置する、
放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の放射性物質収納容器の製造方法において、
前記中性子遮蔽体は、複数であって、且つ、層状に積み重ねられて設置されるものであって、
前記中性子遮蔽体設置工程において、前記容器本体の軸方向において隣接する前記中性子遮蔽体の層同士間で前記分割中性子遮蔽体同士の境目が互いに重ならないように前記分割中性子遮蔽体を設置する、
放射性物質収納容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の放射性物質収納容器の製造方法において、
樹脂またはゴムを主材とする前記中性子遮蔽体を用いる、
放射性物質収納容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質収納容器の製造方法、および放射性物質収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載の放射性物質収納容器の製造方法では、まず、周方向に分割された複数の外筒分割体を準備する。そして、伝熱部材の一端部を外筒分割体の内面に固定するとともに、互いに隣り合う2つの伝熱部材の間にブロック状の中性子遮蔽体を配置することなどで、外筒分割体、伝熱部材、および中性子遮蔽体が一体化された分割体ユニットを製作する。その後、分割体ユニット同士を内筒の周りで連結させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法によると、周方向に分割された複数の外筒分割体として外筒が準備されることで、伝熱部材、および中性子遮蔽体の放射性物質収納容器への組み込み作業が容易となり、放射性物質収納容器の生産効率を向上させることが可能となる。
【0005】
一方で、放射性物質収納容器の製造には、次のような解決すべき課題が残されていた。ブロック状の中性子遮蔽体を、放射性物質収納容器の側部、底部などに組み込んだ際、中性子遮蔽体や放射性物質収納容器を構成する部材の製造誤差などが原因で、隣接する中性子遮蔽体との間、中性子遮蔽体と被組み込み部の内面との間などに、比較的大きな、中性子のストリーミングパス(隙間)が生じてしまうことがある。また、極力小さなストリーミングパス(隙間)となるように中性子遮蔽体などの寸法を設計すると、中性子遮蔽体を放射性物質収納容器に組み込むことがそもそもできなくなってしまうことがある。
【0006】
本発明の目的は、ブロック状の中性子遮蔽体を放射性物質収納容器に組み込む際に生じ得る隙間を極力小さくすることができる放射性物質収納容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放射性物質が内部に収納される有底円筒形状の容器本体を備える放射性物質収納容器の製造方法であって、ブロック状の中性子遮蔽体を室温よりも低温の状態にすることで当該中性子遮蔽体を収縮させる冷却工程と、収縮した前記中性子遮蔽体を、前記放射性物質収納容器の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置する中性子遮蔽体設置工程と、を備える。
【0008】
本発明は、放射性物質収納容器の発明でもある。本発明は、放射性物質が内部に収納される有底円筒形状の容器本体を備える放射性物質収納容器であって、室温よりも低温の状態にされることで収縮したブロック状の中性子遮蔽体が、前記放射性物質収納容器の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置されてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体を、放射性物質収納容器の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置することで、ブロック状の中性子遮蔽体を放射性物質収納容器に組み込む際に生じ得る隙間を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示すトラニオンチーク部A(外筒の平坦部)の縦断面図である。
【
図7】
図1に示す放射性物質収納容器のB部(底部)の縦断面図である。
【
図8】
図7に示す底部中性子遮蔽体の平面図、および断面図である。
【
図9】
図1に示す放射性物質収納容器のC部(蓋部)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1~
図9を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る放射性物質収納容器100の構造、およびその製造方法について説明する。
【0012】
放射性物質収納容器100は、使用済燃料などの放射性物質を収納して、輸送、貯蔵するために用いられるものであって、放射性物質が内部に収納される有底円筒形状の容器本体1と、容器本体1の上部開口にボルトなどで着脱可能に取り付けられる一次蓋2、二次蓋3、および三次蓋4(
図9参照)という複数の蓋とを備えている。一次蓋2は、容器本体1の開口を密封する蓋であり、一次蓋2の外側に設置される二次蓋3は、一次蓋2との間の空間S1の圧力を一次蓋2および容器本体1とともに保持する蓋である。また、二次蓋3の外側に設置される三次蓋4は、放射性物質収納容器100を輸送する際に取り付けられる蓋であって、放射性物質収納容器100を所定の貯蔵場所へ輸送した後は特別な場合を除いて外される。
【0013】
図1に示すように、容器本体1の側面には、放射性物質収納容器100を移動させる際にクレーンのフックなどで把持するための複数のトラニオン5が設置されている。
【0014】
図7などに示すように、容器本体1は、放射性物質を収納するための内部空間を有する有底円筒形状の内筒6と、内筒6の外側に間隔をあけて設けられる円筒形状の外筒7(カバー材)とを有する。内筒6は、円筒形状の筒材8の下端部に底板9が溶接されることで有底円筒形状に構成されている。
【0015】
容器本体1(内筒6)内から外部への中性子の放出を抑えるために、容器本体1の外周部には、側部中性子遮蔽体10が設置され、容器本体1の底部(
図7参照)、および二次蓋3(
図9参照)には、それぞれ、底部中性子遮蔽体11、および蓋部中性子遮蔽体12が設置される。また、トラニオン5部分からの中性子の放出を抑えるために、トラニオン5は中空とされ、且つその内部空間(閉空間)に中性子遮蔽体13が設置される(
図2参照)。各中性子遮蔽体10~13は、例えば、エポキシ樹脂、もしくはポリエステル樹脂などの樹脂を主材とする遮蔽体、またはシリコンゴム、もしくはエチレンポリプロピレンゴムなどのゴムを主材とする遮蔽体である。
【0016】
なお、容器本体1、一次蓋2、二次蓋3、三次蓋4、およびトラニオン5は、ガンマ線遮蔽機能と構造強度とを確保するため、例えば炭素鋼からなる。
【0017】
上記側部中性子遮蔽体10は、容器本体1の側部の閉空間に設置されるものであり、
図3などに示すように、複数のブロック状に分割されて所定の形状、寸法にプレ成型加工されたものである。ブロック状の複数の側部中性子遮蔽体10は、内筒6の外周面と外筒7との間の上記閉空間に閉じ込められた状態とされる。内筒6と外筒7との間の閉空間には、複数の側部中性子遮蔽体10に加えて複数の伝熱部材14が設置される。伝熱部材14は、収納された放射性物質の崩壊熱を外部に逃がすための部材である。伝熱部材14は、断面形状が例えばZ字形状とされる。伝熱部材14の一方の端部は内筒6の外周面に接触させられ、他方の端部は外筒7の内周面に接触させられる。伝熱部材14の他方の端部は、外筒7の内周面に例えば溶接固定される。
【0018】
トラニオン5は、容器本体1の側面に外筒7を貫通するように設置される。トラニオン5の貫通部において外筒7が円弧形状であると、トラニオン5が貫通する箇所の外筒7に形成する円形穴の製作が難しい。そのため、外筒7のトラニオン5貫通部の製作が容易となるように、外筒7のトラニオン5設置部分は平坦材17(平らな板材)が用いられ平坦な面とされている(=トラニオンチーク部A)。
【0019】
図3などに示すように、複数の側部中性子遮蔽体10は、内筒6の外周面と外筒7との間の閉空間に外筒7の周方向において隙間なく接するように設置される。ここで、本実施形態では、符号10aを付したブロック状の側部中性子遮蔽体10aは、中性子遮蔽体を室温よりも低温の状態にすることで収縮させる冷却工程にて収縮させられた状態で、隣り合う2つの側部中性子遮蔽体10の間に設置されたものである。設置後、側部中性子遮蔽体10aが室温(常温)に戻ると、側部中性子遮蔽体10aは膨張する。この膨張により周りの側部中性子遮蔽体10は加圧される。その結果、側部中性子遮蔽体10間の隙間は極めて小さいものとなる。なお、側部中性子遮蔽体10aの寸法は、冷却されて収縮したときに隣り合う2つの側部中性子遮蔽体10の間に嵌り込み、室温(常温)に戻る際に隣り合う2つの側部中性子遮蔽体10を加圧できる寸法とされる。
【0020】
外筒7への伝熱部材14および側部中性子遮蔽体10の組み込み方法は、例えば次の通りである。なお、外筒7は、特開2016-217893号公報に記載されているような、周方向に2分割されてなる1組の半割形状のもの(周方向に分割された1組の複数の外筒分割体)であってもよいし、円筒形状のものであってもよい。外筒7は、例えば鋼板を曲げ加工することによって製作される。
【0021】
準備した外筒7の内側に、その周方向に沿って複数の伝熱部材14、および複数の側部中性子遮蔽体10を設置していく。ここで、例えば、トラニオンチーク部Aに設置する複数の側部中性子遮蔽体10のうちの符号10aを付した側部中性子遮蔽体10a以外の部材を、先に外筒7の内側にその周方向に沿って設置しておく。そして、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた側部中性子遮蔽体10aを、外筒7の内側に先行して設置された隣り合う側部中性子遮蔽体10の間に設置する(中性子遮蔽体設置工程)。側部中性子遮蔽体10a(中性子遮蔽体)の冷却は、冷蔵庫、冷凍庫、液体窒素、液化炭酸ガスなどを用いて行われる。
【0022】
側部中性子遮蔽体10aの設置後、時間が経過すると、側部中性子遮蔽体10aは室温(常温)に戻り、側部中性子遮蔽体10aは膨張する。この膨張により周りの側部中性子遮蔽体10が加圧され、側部中性子遮蔽体10間の隙間は極めて小さいものとなる。これにより、中性子のストリーミングパス(隙間)を小さなものとすることができ、中性子の漏洩量を低減することができる。
【0023】
本実施形態では、中性子遮蔽体は、容器本体1の側部の閉空間に設置されるブロック状の複数の側部中性子遮蔽体10である。ブロック状の中性子遮蔽体を室温よりも低温の状態にすることで収縮させる冷却工程において、複数の側部中性子遮蔽体10のうちの少なくとも1つを室温よりも低温の状態にすることで収縮させる。そして、中性子遮蔽体設置工程において、外筒7の内側に先行して設置された当該外筒7の周方向において隣り合う側部中性子遮蔽体10の間に、収縮した側部中性子遮蔽体10aを設置する。この構成によると、ブロック状の中性子遮蔽体を放射性物質収納容器100の側部に組み込む際に生じ得る隙間を極力小さくすることができる。その結果、中性子のストリーミングパス(隙間)を小さなものとすることができ、中性子の漏洩量を低減することができる。
【0024】
また、本実施形態では、トラニオンチーク部A、すなわちトラニオン5の設置部において、外筒7の周方向において隣り合う側部中性子遮蔽体10の間に、収縮した側部中性子遮蔽体10aを設置している。トラニオンチーク部Aは、他の部位よりも容器の径方向の厚みが小さく、且つトラニオン5が設置される部分であることで中性子遮蔽体を設置しづらい部位である。本実施形態によると、中性子遮蔽体を設置しづらいトラニオンチーク部Aにおいて、中性子遮蔽体間の隙間を容易に小さいものとすることができる。
【0025】
図6は、
図1に示すトラニオン5の断面図である。トラニオン5は、その先端側から順に小径穴5aおよび大径穴5bを有する。これら小径穴5aおよび大径穴5bに、それぞれ、ブロック状の中性子遮蔽体13aおよび中性子遮蔽体13bが設置される。中性子遮蔽体13a、13bはプレ成型加工されたものである。本実施形態では、小径の中性子遮蔽体13aおよび大径の中性子遮蔽体13bのいずれもが、室温よりも低温の状態にされることで収縮した状態にて、それぞれ、小径穴5aおよび大径穴5bに設置される。中性子遮蔽体13a、13bの冷却は、冷蔵庫、冷凍庫、液体窒素、液化炭酸ガスなどを用いて行われる。中性子遮蔽体13a、13bが室温(常温)に戻ると、中性子遮蔽体13a、13bは膨張する。この膨張により、中性子遮蔽体13a、13bは小径穴5aおよび大径穴5bにそれぞれ押し付けられ、小径穴5aおよび大径穴5bとの間の隙間はほとんど無くなる。
【0026】
トラニオン5の内部空間に収縮した中性子遮蔽体13を設置することで、ブロック状の中性子遮蔽体をトラニオン5に組み込む際に生じ得る中性子のストリーミングパス(隙間)を極力小さくすることができる。
【0027】
中性子遮蔽体13bの基端部側には、例えばリング部材15が設置される。リング部材15は、中性子遮蔽体13a、13bの位置決め、中性子遮蔽体13a、13bの熱膨張代確保、および中性子遮蔽体13a、13bからの発生ガスに起因する圧力上昇緩和のための部材である。リング部材15の内側空間が、上記熱膨張代確保、および圧力上昇緩和のための空間となる。また、トラニオン5は栓部材16で閉止される。栓部材16は、ガンマ線遮蔽の役割を担っている。
【0028】
図2に示すように、容器本体1を構成する内筒6の側面には、例えば、トラニオン5を捩じ込んで固定するための捩子穴6aが設けられる。この捩子穴6aの開口部に筒部材21が溶接固定される。トラニオン5は、筒部材21に挿入されて捩子穴6aに捩じ込まれることで内筒6の側面に固定される。
【0029】
図7は、
図1に示す放射性物質収納容器100のB部(底部)の縦断面図である。
図8は、
図7に示す底部中性子遮蔽体11の平面図、および断面図である。
【0030】
底部中性子遮蔽体11は、容器本体1(放射性物質収納容器100)の底部の閉空間に設置されるものであり、複数の底部中性子遮蔽体11a、11b、11cが層状に積み重ねられたものである。底部中性子遮蔽体11a、11b、11cは、それぞれ、分割された複数の分割中性子遮蔽体18a~18e、19a~19e、20a~20eで構成されている。
【0031】
底部中性子遮蔽体11aは、円形状の分割中性子遮蔽体18aと、分割中性子遮蔽体18aの周りに配置される略扇形状の4つの分割中性子遮蔽体18b~18eとで構成される。同様に、底部中性子遮蔽体11b(11c)は、円形状の分割中性子遮蔽体19a(20a)と、分割中性子遮蔽体19a(20a)の周りに配置される略扇形状の4つの分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)とで構成される。円形状の分割中性子遮蔽体18a、19a、20aの径は相互に異なる。
【0032】
円形状の分割中性子遮蔽体18aは、室温よりも低温の状態にされることで収縮した状態にて、略扇形状の4つの分割中性子遮蔽体18b~18eで形成された中央の空間に設置される。分割中性子遮蔽体18aが室温(常温)に戻ると、分割中性子遮蔽体18aは膨張する。この膨張により周りの分割中性子遮蔽体18b~18eは加圧される。その結果、分割中性子遮蔽体18aと略扇形状の分割中性子遮蔽体18b~18eとの隙間は極めて小さいものとなる。また、閉空間を構成する容器本体1の底部の内壁面1a(
図7参照)に分割中性子遮蔽体18b~18eが押し付けられ、分割中性子遮蔽体18b~18eと内壁面1aとの間の隙間はほとんど無くなる。
【0033】
同様に、円形状の分割中性子遮蔽体19a(20a)は、室温よりも低温の状態にされることで収縮した状態にて、略扇形状の4つの分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)で形成された中央の空間に設置される。分割中性子遮蔽体19a(20a)が室温(常温)に戻ると、分割中性子遮蔽体19a(20a)は膨張する。この膨張により周りの分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)は加圧される。その結果、分割中性子遮蔽体19a(20a)と略扇形状の分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)との隙間は極めて小さいものとなる。また、閉空間を構成する容器本体1の底部の内壁面1a(
図7参照)に分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)が押し付けられ、分割中性子遮蔽体19b~19e(20b~20e)と内壁面1aとの間の隙間はほとんど無くなる。
【0034】
また、容器本体1の軸方向において隣接する底部中性子遮蔽体11a、11b、11cの層同士間(底部中性子遮蔽体11a、11b、11c同士の間)で、分割中性子遮蔽体18a~18e同士、分割中性子遮蔽体19a~19e同士、および分割中性子遮蔽体20a~20e同士の境目が互いに重ならないように配置される。
【0035】
なお、底部中性子遮蔽体11が設置された閉空間はカバー材22でカバーされる。
【0036】
容器本体1(放射性物質収納容器100)の底部の閉空間に底部中性子遮蔽体11を設置する手順は例えば次のとおりである。
【0037】
まず、容器本体1の底部に略扇形状の分割中性子遮蔽体18b~18eを設置する。その後、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた円形状の分割中性子遮蔽体18aを、分割中性子遮蔽体18b~18eで形成された中央の空間に設置する。これにより、1層目の底部中性子遮蔽体11aの設置が完了する。なお、底部中性子遮蔽体11aは容器本体1の底面に例えば接着により固定される。
【0038】
2層目の底部中性子遮蔽体11bも、1層目の底部中性子遮蔽体11aと同じ要領で設置する。但し、1層目の分割中性子遮蔽体18bと分割中性子遮蔽体18cとの境目と、2層目の分割中性子遮蔽体19bと分割中性子遮蔽体19cとの境目とが重ならないように、すなわち、分割中性子遮蔽体18b~18e同士、分割中性子遮蔽体19b~19e同士の境目が互いに重ならないように設置する。本実施形態では、1層目の分割中性子遮蔽体18b~18eに対して、2層目の分割中性子遮蔽体19b~19eが45°ずらされて設置されている。なお、中心部の2層目の分割中性子遮蔽体19aは、1層目の分割中性子遮蔽体18aと径が異なるので、境目は重ならない。
【0039】
3層目の底部中性子遮蔽体11cも同様である。2層目の分割中性子遮蔽体19bと分割中性子遮蔽体19cとの境目と、3層目の分割中性子遮蔽体20bと分割中性子遮蔽体20cとの境目とが重ならないように、すなわち、分割中性子遮蔽体19b~19e同士、分割中性子遮蔽体20b~20e同士の境目が互いに重ならないように設置する。本実施形態では、2層目の分割中性子遮蔽体19b~19eに対して、3層目の分割中性子遮蔽体20b~20eが45°ずらされて設置されている。なお、中心部の3層目の分割中性子遮蔽体20aは、2層目の分割中性子遮蔽体19aと径が異なるので、境目は重ならない。
【0040】
上記実施形態によると、仮に、1層目の略扇形状の分割中性子遮蔽体18b~18e同士の境目に隙間が生じ、中性子がその隙間を通過した場合でも、2層目の分割中性子遮蔽体19b~19eで遮蔽される。また、1層目の円形状の分割中性子遮蔽体18aと略扇形状の分割中性子遮蔽体18b~18eとの間に隙間が生じても、その隙間を通過した中性子は2層目の分割中性子遮蔽体19a、および3層目の分割中性子遮蔽体20aで遮蔽される。
【0041】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0042】
上記実施形態の放射性物質収納容器100では、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体を、放射性物質収納容器100の側部、および底部の所定の閉空間に設置している。これに加えて、またはこれに代えて、放射性物質収納容器100の蓋部の所定の閉空間に、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体を設置してもよい。
図9は、放射性物質収納容器100の蓋部の縦断面図である。放射性物質収納容器100の蓋部には二次蓋3が配置される。放射性物質収納容器100の蓋部の所定の閉空間に、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体を設置する場合、この二次蓋3の閉空間に設置される蓋部中性子遮蔽体12を、例えば、放射性物質収納容器100の底部に設置される底部中性子遮蔽体11と同様の構成とする。
【0043】
上記実施形態の放射性物質収納容器100では、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体を、放射性物質収納容器100の側部、および底部の所定の閉空間に設置している。室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体の設置は、放射性物質収納容器100の側部の所定の閉空間だけであってもよいし、放射性物質収納容器100の底部の所定の閉空間だけであってもよい。すなわち、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた中性子遮蔽体は、放射性物質収納容器100の側部、底部、および蓋部のうちの少なくともいずれかの所定の閉空間に設置される。
【0044】
上記実施形態では、トラニオンチーク部A、すなわちトラニオン5の設置部において、室温よりも低温の状態にすることで収縮させたブロック状の側部中性子遮蔽体10を外筒7の内側の閉空間に設置している。放射性物質収納容器100の側部において、トラニオンチーク部A以外の部分の外筒7の内側の閉空間に、室温よりも低温の状態にすることで収縮させたブロック状の側部中性子遮蔽体10を設置してもよい。
【0045】
放射性物質収納容器100の底部に設置する複数の底部中性子遮蔽体11a、11b、11cに関し、上記実施形態では、中心部の円形状の分割中性子遮蔽体18a、19a、20aは、容器本体1の底板9から離れる方向へ、順に径が大きくなるようにされている。これに代えて、例えば中心部の円形状の分割中性子遮蔽体18a、19a、20aは、容器本体1の底板9へ近づく方向へ、順に径が大きくなるようにされてもよい。すなわち、円形状の分割中性子遮蔽体18a、19a、20aの径は相互に異なっていればよい。
【0046】
上記実施形態では、底部中性子遮蔽体11は、複数の底部中性子遮蔽体11a、11b、11cが層状に積み重ねられたものである(3層構造)。これに代えて、例えば、分割中性子遮蔽体19a~19eで構成される底部中性子遮蔽体11bの厚みを大きくして、単層構造の底部中性子遮蔽体11とされてもよい。なお、底部中性子遮蔽体11を複数層構造とする場合、3層構造に限定されることはない。
【0047】
上記実施形態では、底部中性子遮蔽体11(底部中性子遮蔽体11a、11b、11c)は、略扇形状に4分割されているが、2分割でも6分割でもよく、この分割数は4分割に限定されることはない。
【0048】
上記実施形態では、トラニオンチーク部の中性子遮蔽体10は、容器本体1の周方向において分割されているが、容器本体1の軸方向において分割されていてもよく、この分割方法はこれに限定されるものではない。
【0049】
上記実施形態では、例えば1層目の底部中性子遮蔽体11aに関し、中心部の分割中性子遮蔽体18aを室温よりも低温の状態にすることで収縮させた状態で設置している。底部中性子遮蔽体11aを構成する複数の分割中性子遮蔽体18a~18eのうち、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた状態で設置するのは、中心部の分割中性子遮蔽体18aに限らない。複数の分割中性子遮蔽体18a~18eのうちの少なくとも1つを室温よりも低温の状態にすることで収縮させた状態で設置すればよい。
【0050】
上記実施形態では、トラニオン5は内部空間として小径穴5aおよび大径穴5bを有し、小径穴5aに中性子遮蔽体13a、大径穴5bに中性子遮蔽体13bが設置されている。中性子遮蔽体13を設置する内部空間は、複数の異なる径の穴ではなく、1種の径の穴とされてもよい。この場合、例えば、室温よりも低温の状態にすることで収縮させた1つの中性子遮蔽体13が、トラニオン5の内部空間として設けられた1つの穴に設置される。
【0051】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:容器本体
5:トラニオン
7:外筒
10:側部中性子遮蔽体(中性子遮蔽体)
11:底部中性子遮蔽体(中性子遮蔽体)
11a、11b、11c:底部中性子遮蔽体(中性子遮蔽体)
18a~18e、19a~19e、20a~20e:分割中性子遮蔽体
13:中性子遮蔽体
100:放射性物質収納容器