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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電線用の外装体およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241008BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H01B7/00 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025337
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127277
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴 正秀
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】高松 昌博
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035803(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021347(WO,A1)
【文献】特開2014-033485(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077654(WO,A1)
【文献】特開2020-102974(JP,A)
【文献】特開2016-046929(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031814(WO,A1)
【文献】特開2017-220286(JP,A)
【文献】特開平10-201041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16L 11/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を収容保持する電線用の外装体であって、
前記電線を直線状に保持する直管部を有する外装体本体と、
前記外装体本体に外装され当該外装体本体に対し軸線方向に移動可能な筒状可動体と、
前記筒状可動体の前記軸線方向の位置を固定するロック手段と、を備え、
前記直管部は、少なくとも一対の短尺直管部と、当該一対の短尺直管部の間に形成され屈曲自在な可撓管部とによって構成され、
前記筒状可動体は、前記可撓管部を覆う位置に移動させられた際に前記ロック手段により固定され、前記直管部を直管状に形状規制する、
ことを特徴とする電線用の外装体。
【請求項2】
前記筒状可動体は、前記ロック手段により固定されていない状態で前記一対の短尺直管部のうちの一方側に外装され、
前記ロック手段は、
前記一対の短尺直管部のうちの他方の外周に形成された係止突起と、
前記筒状可動体に形成され、前記係止突起と係合可能な係止孔と、
により構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電線用の外装体。
【請求項3】
前記一方の短尺直管部は、前記可撓管部に隣接する箇所の外周に嵩上げ部が形成されており、
前記嵩上げ部は、前記可撓管部を覆う位置に移動させられた前記筒状可動体の内周面に当接する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電線用の外装体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の外装体と、当該外装体に収容された一または複数本の電線と、を備えた、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を内部に収容することで、電線を保護すると共に電線を所定の配索経路に沿うように支持する電線用の外装体および該外装体を備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、所定の配索経路に沿って電線を配索するために、電線を硬質樹脂製の筒状の外装体の内部に収容することが行われている。その外装体として、直管部と可撓管部(蛇腹部とも言う)を軸線方向に交互に組み合わせた外装体が知られている。直管部は、直線状に配索する経路部分に対応するように設けられ、可撓管部は、屈曲状に配索する経路部分に対応するように設けられている。
【0003】
例えば、図8には、軸線方向の両端の可撓管部511A、511Bの間に、1本の長い直管部512を設けた外装体510の内部に電線Wを収容したワイヤハーネスWZの例が示されている。
【0004】
ところが、このように長い直管部512を持つ外装体510をワイヤハーネスWZの部品として使用した場合、輸送用の梱包箱110の長さが大きくなってしまい、輸送コストが嵩む問題がある。
【0005】
一方、特許文献1や特許文献2には、外装部材(外装体)に設けた可撓管部をプロテクタで覆うことが開示されている。これらのプロテクタは、電線を収容した外装部材の配索形状を規定するもので、可撓管部にプロテクタを被せることにより、可撓管部が直管状または曲管状に形状規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-46929号公報
【文献】特開2020-102974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来では、長い直管部を持つ外装体を使用した場合、梱包箱が長くなるため、輸送コストが嵩む問題があった。また、可撓管部をプロテクタで覆うことにより、可撓管部を形状規制することが開示されているが、プロテクタを別途用意する必要があるため、外装体とプロテクタとを別々に梱包し輸送する必要が生じ、また、配索の際にプロテクタを装着する作業が発生し煩わしいという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、直管部を短く畳めて輸送コストが嵩む問題を解決できると共に、配索時には必要長さの直管部を簡単に構成することができ、しかも、梱包や輸送ならびに作業の合理化を図ることのできる、電線用の外装体およびその外装体を用いたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線用の外装体およびワイヤハーネスは、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1) 電線を収容保持する電線用の外装体であって、
前記電線を直線状に保持する直管部を有する外装体本体と、
前記外装体本体に外装され当該外装体本体に対し軸線方向に移動可能な筒状可動体と、
前記筒状可動体の前記軸線方向の位置を固定するロック手段と、を備え、
前記直管部は、少なくとも一対の短尺直管部と、当該一対の短尺直管部の間に形成され屈曲自在な可撓管部とによって構成され、
前記筒状可動体は、前記可撓管部を覆う位置に移動させられた際に前記ロック手段により固定され、前記直管部を直管状に形状規制する、
ことを特徴とする電線用の外装体。
【0010】
(2) 前記筒状可動体は、前記ロック手段により固定されていない状態で前記一対の短尺直管部のうちの一方側に外装され、
前記ロック手段は、
前記一対の短尺直管部のうちの他方の外周に形成された係止突起と、
前記筒状可動体に形成され、前記係止突起と係合可能な係止孔と、
により構成されている、
ことを特徴とする上記(1)に記載の電線用の外装体。
【0011】
(3) 前記一方の短尺直管部は、前記可撓管部に隣接する箇所の外周に嵩上げ部が形成されており、
前記嵩上げ部は、前記可撓管部を覆う位置に移動させられた前記筒状可動体の内周面に当接する、
ことを特徴とする上記(2)に記載の電線用の外装体。
【0012】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載の外装体と、当該外装体に収容された一または複数本の電線と、を備えた、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【0013】
上記(1)の構成の電線用の外装体によれば、予め外装体本体の外周に筒状可動体を外装している。したがって、筒状可動体が可撓管部を覆っていない状態において可撓管部を曲げることによって、ワイヤハーネスを折り畳んだ形態にし、全体の長手方向の寸法を小さくすることができる。その結果、長さを短くした梱包箱の中にワイヤハーネスを収容することができ、輸送コストの低減に寄与することができる。
また、車両への配索時には、可撓管部を直線状に伸ばした状態において、予め外装体本体に装着してある筒状可動体を、可撓管部を覆う位置まで移動してロック手段によりロックすることによって、可撓管部を直管状に形状規制することができる。したがって、屈曲自在な可撓管部を中間部に有するものの、複数の短尺直管部を連続した1本の直管部と同等のものとして取り扱うことができるようになり、内部に収容した電線を直線状に保持することが可能となる。
また、筒状可動体は、外装体本体に予め装着してあるので、別途用意して輸送し後から外装体本体に装着する必要がなく、筒状可動体を可撓管部の位置まで移動させるという簡単な操作を配索時に行うだけで、可撓管部を直管状に形状規制することができる。そのため、筒状可動体を別途輸送したり後から装着したりする工程を省略でき、作業時間を大幅に短縮できると共に、間違った筒状可動体を装着してしまうおそれもなく、作業の合理化を図ることができる。
【0014】
上記(2)の構成の電線用の外装体によれば、配索時に作業者は、輸送のために屈曲させてある可撓管部を直線状に伸ばし、筒状可動体を可撓管部を覆う位置まで移動させて、移動方向の短尺直管部に設けてある係止突起に筒状可動体の係止孔を係合させるだけで、筒状可動体を定位置に確実に固定することができる。したがって、配索時の作業効率を高めることができる。
【0015】
上記(3)の構成の電線用の外装体によれば、係止側と反対側において、筒状可動体の内周面と外装体本体に設けた嵩上げ部とが当接するようになっているので、筒状可動体のガタ付きを防止することができる。また、車載時の振動などにより、可撓管部(蛇腹の山の頂部など)に筒状可動体が繰り返し当たることによる悪影響を抑制できる。
【0016】
上記(4)の構成のワイヤハーネスによれば、電線を収容保持する外装体として、上記(1)~(3)のいずれかに記載の外装体を使用しているので、上述の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外装体の長い直管部を短く畳めるので輸送コストが嵩む問題を解決できる。また、配索時には必要長さの直管部を簡単に構成することができる。しかも、そのための形状規制部材を別途用意する必要がなく、梱包や輸送ならびに作業の合理化を図ることができる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は梱包前の状態を示す図、図1(b)は外装体の可撓管部を屈曲させて短く畳んで梱包箱に収めた状態を示す図である。
図2図2は、ワイヤハーネスを輸送してから実際に車両に配索するまでの状態の変化を示す図で、図2(a)は梱包箱に収まった状態を示す図、図2(b)は梱包箱から取り出して外装体の可撓管部を直線状に伸ばした状態を示す図、図2(c)は可動パイプをスライドさせて可撓管部を直管状に形状規制した配索時の状態を示す図である。
図3図3は、ワイヤハーネスの要部拡大構成図で、図3(a)は可動パイプで可撓管部を覆う前の状態を示す図、図3(b)は可動パイプをスライドさせて可撓管部を覆い直管状に保持した状態を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る外装体の可動パイプを可撓管部を覆う位置までスライドさせている途中の状態を示す部分拡大斜視図で、スライド方向の短尺直管部の外周に設けたストッパおよび係止突起と、可動パイプに設けたストッパ係合凹部および係止孔との関係を詳細に示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る外装体の可動パイプを可撓管部を覆う位置までスライドさせてロックした状態を示す斜視図で、図5(a)は要部を取り出して示す斜視図、図5(b)は図5(a)の要部を更に拡大して示す要部斜視図である。
図6図6は、本発明の応用例のワイヤハーネスの説明図で、図6(a)は梱包前の状態を示す図、図6(b)は外装体の可撓管部の一部を屈曲させて梱包箱に収めた状態を示す図、図6(c)は屈曲を伸ばした可撓管部の位置まで可動パイプをスライドさせる前の状態を示す図、図6(d)は屈曲を伸ばした可撓管部の位置まで可動パイプをスライドさせてロックし当該部分を直管状に形状規制した状態を示す図である。
図7図7は、上述した可動パイプの構成例を示す図で、図7(a)は一体品、図7(b)は半割り品、図7(c)は半割りヒンジ結合品を示す図である。
図8図8は、従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの構成図で、図1(a)は梱包前の状態を示す図、図2(b)は外装体の可撓管部を屈曲させて短く畳んで梱包箱に収めた状態を示す図である。また、図2は、ワイヤハーネスを輸送してから実際に車両に配索するまでの状態の変化を示す図で、図2(a)は梱包箱に収まった状態を示す図、図2(b)は梱包箱から取り出して外装体の可撓管部を直線状に伸ばした状態を示す図、図2(c)は可動パイプをスライドさせて可撓管部を直管状に形状規制した配索時の状態を示す図である。
【0022】
図1(a)に示すように、本実施形態のワイヤハーネスWXは、外装体1と、外装体1の内部に挿通された一または複数本の電線Wと、を備えている。本実施形態では、電線Wの両端にコネクタ81、82が取り付けられている。この外装体1は、樹脂製の外装体本体10(直管部付きのコルゲートチューブ)と、剛性を有する硬質樹脂製の可動パイプ20と、後述するロック手段と、を備えている。また、配索時に電線Wを直線状に収容保持する直管部として機能する直管機能部(この部分を単に「直管部」と言うこともある)Sを備えている。
【0023】
外装体本体10は、全体が1本の連続した筒状に形成されており、一例として、軸線方向の両端に屈曲自在の可撓管部11A、11Cを備えている。また、外装体本体10は、両端の可撓管部11A、11Cの間に、直管機能部Sを備えており、この直管機能部Sの軸線方向中間部に、もう一つの屈曲自在な可撓管部11Bを備えている。この可撓管部11Bは、実際の配索時には直管状に保持して使用する部分であり、この可撓管部11Bによって、直管機能部Sは、複数(本図示例では一対)の短尺直管部12A、12Bに分割されている。なお、直管機能部Sの長さが大きい場合には、可撓管部11Bの個数を増やして、短尺直管部12A、12Bの分割本数を増やしてもよい。可撓管部11A、11B、11Cは、蛇腹部とも呼ばれる柔軟性を付与された部分であり、環状の山部と谷部を軸線方向に交互に配列した形状となっている。
【0024】
軸線方向中間部の可撓管部11Bは、梱包時や輸送時に、直管機能部Sを折り曲げて外装体1全体の長手方向の寸法を小さくするための部分である。この可撓管部11Bは、車両配索時には直管状に保持される必要があることから、その可撓管部11Bの隣接箇所に、可撓管部11Bを直管状に保持するための可動パイプ20が設けられている。つまり、可動パイプ20は、予め外装体1に装着されているため、配索時に後付けせずに済むようになっている。
【0025】
この可動パイプ20は、直管状の硬質樹脂パイプであり、可撓管部11Bに隣接する一方の直管部12Bの外周に、軸線方向に対し移動可能に外装されている。そして、この可動パイプ20は、可撓管部11Bを覆う位置に移動させられて、ロック手段(次述)により保持されることにより、可撓管部11Bを直管状に形状規制する機能を果たす。そのために、可動パイプ20の内径は、可撓管部11Bの外径よりも僅かに大きい値に設定されている。具体的には、可撓管部11Bは蛇腹管として構成されているので、可動パイプ20の内径は、可撓管部11Bの山部の頂点が可動パイプ20の内周面に軽く接する程度に設定されている。また、可動パイプ20の長さは、可撓管部11Bの長さよりも若干大きめに設定されている。具体的には、可動パイプ20の長さは、可撓管部11Bの両側の短尺直管部12A、12Bの端部に必要十分な長さだけ重なる長さに設定されている。
【0026】
可動パイプ20は、可撓管部11Bを覆う位置にスライドさせただけでは、車両の振動などにより軸線方向や周方向に位置が動いてしまう可能性がある。そのため、外装体1には、所定位置に確実に可動パイプ20を位置決め固定するためのロック手段が設けられている。
【0027】
図3および図4を参照してロック手段について説明する。
図3は、ワイヤハーネスの要部拡大構成図で、図3(a)は可動パイプ20で可撓管部11Bを覆う前の状態を示す図、図3(b)は可動パイプ20をスライドさせて可撓管部11Bを覆い直管状に保持した状態を示す図である。また、図4は、可動パイプ20を可撓管部11Bを覆う位置までスライドさせている途中の状態を示す部分拡大斜視図で、スライド方向の短尺直管部12Aの外周に設けたストッパ15および係止突起16と、可動パイプ20に設けたストッパ係合凹部21および係止孔22との関係を詳細に示す斜視図である。また、図5は、可動パイプ20を可撓管部11Bを覆う位置までスライドさせてロックした状態を示す斜視図で、図5(a)は要部を取り出して示す斜視図、図5(b)は図5(a)の要部を更に拡大して示す要部拡大斜視図である。
【0028】
図3に示すように、ロック手段は、外装体本体10側に設けた係止突起16と、可動パイプ20側に設けた係止孔22とを備えている。ロック手段を構成する係止突起16は、可動パイプ20が外装された短尺直管部12Bと可撓管部11Bを挟んで反対側に隣接する短尺直管部12Aの外周面に突設されている。図4および図5に示すように、係止突起16は、短尺直管部12Aの外周の周方向に180°離間した2箇所に一対設けられている。また、係止突起16は、可動パイプ20がスライドする方向に向かった壁面(可撓管部11B側の壁面)の全部または一部が誘導用の傾斜面として構成されており、スライドされた可動パイプ20側の係止孔22が容易に係合するようになっている。また、いったん可動パイプ20が係合した後は、係合が外れ難いように、係止突起16の反対側の壁面(可撓管部11Bと反対側の壁面)が、可動パイプ20のスライド方向(軸線方向)に直交する垂直面(垂直な係止壁面)として構成されている。
【0029】
また、一方の係止孔22は、可動パイプ20の周壁に貫通形成されており、係止突起16に対応する形状に形成されている。この場合、図5(b)に示すように、係止孔22を、可動パイプ20の周壁に軸線方向に沿った2本の切り込み22bを入れて形成した弾性舌片22aの上に設けてもよい。
【0030】
また、係止突起16と係止孔22のみによる係合では係合時の周方向の位置決めがしにくい場合には、係止突起16を設けた短尺直管部12Aの外周にストッパ15を突設してもよい。この場合、係合孔22を設けた可動パイプ20の周壁のスライド方向前端には、可動パイプ20をスライドさせたときに、突起状のストッパ15を受け入れるストッパ係合凹部21を設けるようにする。
【0031】
これら、ストッパ15およびストッパ係合凹部21は、係止突起16および係止孔22の係合の邪魔にならない位置、つまり、係止突起16および係止孔22と周方向に例えば90°離れた位置に配置されている。ストッパ15とストッパ係合凹部21は、互いに係合することにより、可動パイプ20の周方向移動を規制する役目を果たすと共に、可動パイプ20のスライド方向への過剰スライドを阻止するようになっている。
【0032】
ストッパ係合凹部21は、可動パイプ20をスライドさせるに従い可動パイプ20の周方向移動を規制する役割を高めることができるように、入口の両側縁部に傾斜を付けてストッパ15を受け入れ始める入口を幅広にとり、奥に行くほどストッパ15が周方向に移動できないように狭くなっている。また、ストッパ15と係止突起16の軸線方向の位置関係は、ストッパ15がストッパ係合凹部21の奥部に嵌まった時に、ちょうど係止突起16が係止孔22に係合するように設定されている。
【0033】
また、図3(a)に示すように、可動パイプ20が外装された短尺直管部12Bの可撓管部11Bに隣接する箇所の外周には、可撓管部11Bを覆う位置に移動させられる可動パイプ20の内周面に当接する嵩上げ部14が形成されている。嵩上げ部14の高さは、可撓管部11Bの山部の高さと同程度に設定されている。この嵩上げ部14は、短尺直管部12Bの外周の周方向に等間隔に複数設けてもよいし、可撓管部11Bの山部と同じように連続した環状に設けてもよい。この嵩上げ部14は、短尺直管部12Bの外周と可動パイプ20の内周の差を埋めて、可動パイプ20のガタつきを抑えるようになっている。
【0034】
次に作用を説明する。
この実施形態のワイヤハーネスWXを作る際は、最初に外装体本体10を用意し、その外周の所定位置に可動パイプ20を嵌める。それから、外装体本体10の内部に電線Wを挿通させる。
【0035】
上述のように構成した外装体1を使用したことにより、次のような作用効果を得ることができる。即ち、予め外装体本体10の短尺直管部12Bの外周に可動パイプ20を外装しているので、可撓管部11Bを可動パイプ20で覆っていない状態において、図1(a)中の矢印AのようにワイヤハーネスWXを曲げて、可撓管部11Bを屈曲させることによって、図1(b)に示すようにワイヤハーネスWXを折り畳んだ形態にし、全体の長手方向の寸法を小さくすることができる。その結果、長手方向の寸法を従来より短くした梱包箱100の中にワイヤハーネスWXを収容することができて、輸送コストの低減に寄与することができる。
【0036】
また、車両への配索時には、図2(a)、(b)に示すように、輸送された梱包箱100からワイヤハーネスWXを取り出して直線状に伸ばす。そして、可撓管部11Bを直線状に伸ばした状態において、予め可撓管部11Bに隣接した短尺直管部12Bに外装してある可動パイプ20を、図2(c)に示すように、可撓管部11Bを覆う位置まで移動して、ロック手段によりロックする。これにより、可撓管部11Bを直管状に形状規制することができる。したがって、屈曲自在な可撓管部11Bを中間部に有するものの、複数の短尺直管部12A、12Bを連続した1本の直管部Sと同等のものとして取り扱うことができるようになり、内部に収容した電線Wを直線状に保持することが可能となる。
【0037】
しかも、可動パイプ20は、輸送時に屈曲させる可撓管部11Bの隣りの短尺直管部12Bなど、可撓管部11Bの近傍に予め装着してあるので、別途に用意して輸送し後から外装体本体10に装着する必要が全くなく、可動パイプ20を可撓管部11Bの位置まで移動させるという簡単な操作を配索時に行うだけで、可撓管部11Bを直管状に形状規制することができる。そのため、可動パイプ20を別途に輸送したり後から装着したりする面倒がない上、作業時間を大幅に短縮できると共に、間違った可動パイプ20を装着してしまうおそれもなく、作業の合理化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、配索時に作業者は、輸送のために屈曲させてある可撓管部11Bを直線状に伸ばし、短尺直管部12B側に外装してある可動パイプ20を可撓管部11Bを覆う位置まで移動させて、図3図5に示すように、移動方向の短尺直管部12Aに設けてある係止突起16に可動パイプ20の係止孔22を係合させるだけで、可動パイプ20を定位置に確実に固定することができる。したがって、配索時の作業性を良くすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、係止側と反対側において、可動パイプ20の内周面と外装体本体10に設けた嵩上げ部14とが当接するようにしてあるので、可動パイプ20のガタ付きを防止することができる。また、車載時の振動などにより、可撓管部11B(蛇腹の山の頂部など)に可動パイプ20が繰り返し当たることによる悪影響を抑制することができる。
【0040】
なお、応用例として、図6(a)、(b)に示すように、ワイヤハーネスWYが短尺直管部を有しない場合においても、コルゲートチューブ210にストレート管状の可動パイプ20を外装させておくことができる。この場合も、可動パイプ20の無い位置で可撓管部211を曲げることで、ワイヤハーネスWYを小さく折り畳むことができ、従来より長手方向の寸法が短い梱包箱100に収納することができる。そして、配索時に、図6(c)、(d)に示すように、直管状に形状規制したい箇所に可動パイプ20をスライドさせてロック手段(係止突起16、ストッパ15、係止孔22、ストッパ係合凹部21)でロックすることで、当該部分を直管部として機能させることができる。この際、ロック手段である係止突起16やストッパ15は、コルゲートチューブ210の任意位置に装着可能なバンド230(コルゲートチューブの山部や谷部を利用して位置固定するものなど)に設けておくことにより、任意の位置に可動パイプ20をロックさせることができる。
【0041】
また、可動パイプ20は、図7(a)に示すように、最初から円筒状に一体形成したものを利用してもよいが、図7(b)、(c)に示すように、半割り状に形成して後から筒状に結合できるようにしてもよい。図7(b)の例では、半割体20A、20B同士を後からロック部26、27で結合できるようにしている。また、図7(c)の例では、半割体20A、20Bの一方の対向側縁同士をヒンジ25で結合し、他方の側縁同士をロック部26、27で結合できるようにしている。
【0042】
また、図示しないが、可動パイプ20に、車両への取付部(クリップや取付ブラケット等)を設けておくこともできる。
【0043】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線用の外装体及びワイヤハーネスの特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(W)を収容保持する電線用の外装体(1)であって、
前記電線を直線状に保持する直管部(12A、12B、11B)を有する外装体本体(10)と、
前記外装体本体(10)に外装され当該外装体本体(10)に対し軸線方向に移動可能な筒状可動体(20)と、
前記筒状可動体(20)の前記軸線方向の位置を固定するロック手段(15、16、21、22)と、を備え、
前記直管部(12A、12B、11B)は、少なくとも一対の短尺直管部(12A、12B)と、当該一対の短尺直管部(12A、12B)の間に形成され屈曲自在な可撓管部(11B)とによって構成され、
前記筒状可動体(20)は、前記可撓管部(11B)を覆う位置に移動させられた際に前記ロック手段(15、16、21、22)により固定され、前記直管部(12A、12B、11B)を直管状に形状規制する、
ことを特徴とする電線用の外装体。
【0044】
[2] 前記筒状可動体(20)は、前記ロック手段(15、16、21、22)により固定されていない状態で前記一対の短尺直管部のうちの一方(12B)側に外装され、
前記ロック手段は、
前記一対の短尺直管部のうちの他方(12A)の外周に形成された係止突起(16)と、
前記筒状可動体(20)に形成され、前記係止突起(16)と係合可能な係止孔(22)と、
により構成されている、
ことを特徴とする上記[1]に記載の電線用の外装体。
【0045】
[3] 前記一方の短尺直管部(12B)は、前記可撓管部(11B)に隣接する箇所の外周に嵩上げ部が形成されており、
前記嵩上げ部(14)は、前記可撓管部(11B)を覆う位置に移動させられた前記筒状可動体(20)の内周面に当接する、
ことを特徴とする上記[2]に記載の電線用の外装体(1)。
【0046】
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の外装体(1)と、当該外装体(1)に収容された一または複数本の電線(W)と、を備えた、
ことを特徴とするワイヤハーネス(WX)。
【符号の説明】
【0047】
1 外装体
10 外装体本体
11B 可撓管部
12A,12B 短尺直管部
14 嵩上げ部
15 ストッパ(ロック手段)
16 係止突起(ロック手段)
20 可動パイプ(筒状可動体)
21 ストッパ係合凹部(ロック手段)
22 係止孔(ロック手段)
WX ワイヤハーネス
W 電線
S 直管機能部(直管部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8