(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】靴の製造方法
(51)【国際特許分類】
A43B 9/18 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A43B9/18
(21)【出願番号】P 2021025353
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若杉 晋作
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小塚 祐也
(72)【発明者】
【氏名】新 陽介
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正律
(72)【発明者】
【氏名】高浜 健太
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/234374(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206039(US,A1)
【文献】特開2018-166881(JP,A)
【文献】特開2006-198018(JP,A)
【文献】特開2003-304901(JP,A)
【文献】特開平04-099501(JP,A)
【文献】特開平08-154706(JP,A)
【文献】特開平11-070597(JP,A)
【文献】特表2020-527078(JP,A)
【文献】特表2017-521187(JP,A)
【文献】登録実用新案第3227574(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029368(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0325546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
B29D35/00- 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、
履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、
ソール本体を準備する工程と、
前記シェルに前記アッパー本体を収容するとともに、前記シェルおよび前記アッパー本体を部分的に固定し、さらに前記シェルに収容された前記アッパー本体にラストを挿入した状態において、前記アッパー本体を成形する工程と、
成形後の前記アッパー本体から前記ラストを取り出す工程と、
前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程とを備える、靴の製造方法。
【請求項2】
前記アッパー本体を熱収縮性を有する部材にて構成し、
前記アッパー本体を成形する工程において、前記アッパー本体を加熱することにより、前記アッパー本体が前記シェルに沿った外面形状および前記ラストに沿った内面形状のうちの少なくともいずれかを有することとなるように、前記アッパー本体を熱収縮させる、請求項1に記載の靴の製造方法。
【請求項3】
前記アッパー本体を準備する工程において、前記アッパー本体として、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第1袋状部と、着用者の足の踏まず部に対応する部分を少なくとも有するとともに、履き口に対応する部分および履き口に対応する当該部分以外の部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第2袋状部とを含み、かつ、前記第1袋状部に前記第2袋状部が収容されてなるものを準備し、
前記アッパー本体を成形する工程において、前記第1袋状部の内部であってかつ前記第2袋状部の内部に前記ラストを挿入するとともに、前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程において前記ソール本体を挿入する空間となる、前記第1袋状部と前記第2袋状部との間の空間に、前記ソール本体の外形に対応した外形を有する型部材をさらに挿入した状態において、前記アッパー本体の成形が行なわれ、
前記ラストを取り出す工程において、成形後の前記アッパー本体から前記ラストに加えて前記型部材が取り出される、請求項1または2に記載の靴の製造方法。
【請求項4】
内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、
履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、
ソール本体を準備する工程と、
前記アッパー本体にラストを挿入した状態において、前記アッパー本体を成形する工程と、
成形後の前記アッパー本体から前記ラストを取り出す工程と、
前記シェルに成形後の前記アッパー本体を収容するとともに、前記シェルおよび成形後の前記アッパー本体を部分的に固定する工程と、
前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程とを備える、靴の製造方法。
【請求項5】
前記アッパー本体を熱収縮性を有する部材にて構成し、
前記アッパー本体を成形する工程において、前記アッパー本体を加熱することにより、前記アッパー本体が前記ラストに沿った内面形状を有することとなるように、前記アッパー本体を熱収縮させる、請求項4に記載の靴の製造方法。
【請求項6】
前記シェルおよび前記アッパー本体を縫製によって接合することにより、前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を行なう、請求項1から5のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項7】
前記シェルを準備する工程において、前記シェルにワイヤ状または帯状の係合部を設け、
前記アッパー本体を準備する工程において、前記アッパー本体に孔部を設け、
前記係合部を前記孔部に挿通することで当該孔部に係合させることにより、前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を行なう、請求項1から5のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項8】
前記シェルを準備する工程において、前記シェルに孔部を設け、
前記アッパー本体を準備する工程において、前記アッパー本体にワイヤ状または帯状の係合部を設け、
前記係合部を前記孔部に挿通することで当該孔部に係合させることにより、前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を行なう、請求項1から5のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項9】
前記シェルおよび前記アッパー本体を係止するための係止具を準備する工程をさらに備え、
前記係止具によって前記シェルおよび前記アッパー本体を係止することにより、前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を行なう、請求項1から5のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項10】
前記シェルを準備する工程において、着用者の足甲を覆う部分を少なくとも含むように前記シェルを製作し、
前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を、前記シェルの着用者の足甲を覆う部分において行なう、請求項1から9のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項11】
前記シェルを準備する工程において、着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分を少なくとも含むように前記シェルを製作し、
前記シェルおよび前記アッパー本体の部分的な固定を、前記シェルの着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分において行なう、請求項1から9のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項12】
前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程において、前記ソール本体を、前記内部空間のうちの前記アッパー本体の内側に配置する、請求項1から11のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項13】
前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程において、前記ソール本体を、前記内部空間のうちの前記シェルの底壁部と前記アッパー本体の底部との間に配置する、請求項1から10のいずれかに記載の靴の製造方法。
【請求項14】
前記シェルを準備する工程において、前記底壁部に前記内部空間に向けて突出する突出部を有するように前記シェルを製作し、
前記ソール本体を準備する工程において、下面に凹部を有するように前記ソール本体を製作し、
前記シェルに前記ソール本体を挿入する工程において、前記突出部を前記凹部に挿入することにより、前記シェルと前記ソール本体との位置決めを行なう、請求項13に記載の靴の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の製造方法に関し、特に、ソール本体と当該ソール本体を収容するシェルとを備えた靴の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第10241498号明細書(特許文献1)の
図6Eおよび
図6Fには、ソール本体と、アッパー本体と、これらソール本体およびアッパー本体が収容されてなるシェルとを備えた靴が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ソール本体は、クッション性には優れているものの、その形が大きく崩れることはない。したがって、上記特許文献1に開示される靴のように、ソール本体をシェルに収容した場合にも、これが大きく位置ずれしてしまうことは基本的にない。
【0005】
しかしながら、フィット性を高めるためにアッパー本体を柔軟な部材にて構成しつつ、これを何ら固定することなくシェルに収容した場合には、アッパー本体に顕著な位置ずれが生じ得る。このアッパー本体の顕著な位置ずれが生じた場合には、結果としてフィット性が低下するばかりでなく、場合によっては靴としての機能そのものが損なわれることにもなりかねない。
【0006】
ここで、アッパーおよびソールからなり、シェルを具備しない一般的な靴においては、アッパーとソールとが全面的に接着剤によって固定される場合が多い。そのため、上記特許文献1に開示される靴のようにアッパー本体をシェルに収容する場合にも、アッパー本体とソール本体とを全面的に接着剤にて固定するか、あるいは、アッパー本体とシェルとを全面的に接着剤にて固定することが想定され得る。しかしながら、このように構成した場合には、製造に要するタクトが長くなるばかりでなく、製造プロセスも大幅に煩雑化してしまう。
【0007】
そのため、上記特許文献1に開示される如くのソール本体およびアッパー本体がシェルに収容されてなる靴においては、特にアッパー本体とシェルとをどのように固定するかが問題となる。
【0008】
加えて、上記特許文献1に開示される如くのソール本体およびアッパー本体がシェルに収容されてなる靴においては、着用者の足に対するフィット性をどのようにして確保するかが重要な課題となる。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ソール本体およびアッパー本体がシェルに収容されてなる靴において、アッパー本体がシェルに対して位置ずれすることでそのフィット性や靴としての機能が損なわれることがないようにしつつ、そのような靴を容易にかつ短時間に製造可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面に係る靴の製造方法は、内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、ソール本体を準備する工程と、上記シェルに上記アッパー本体を収容するとともに、上記シェルおよび上記アッパー本体を部分的に固定し、さらに上記シェルに収容された上記アッパー本体にラストを挿入した状態において、上記アッパー本体を成形する工程と、成形後の上記アッパー本体から上記ラストを取り出す工程と、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程とを備えている。
【0011】
本発明の第2の局面に係る靴の製造方法は、内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、ソール本体を準備する工程と、上記アッパー本体にラストを挿入した状態において、上記アッパー本体を成形する工程と、成形後の上記アッパー本体から上記ラストを取り出す工程と、上記シェルに成形後の上記アッパー本体を収容するとともに、上記シェルおよび成形後の上記アッパー本体を部分的に固定する工程と、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ソール本体およびアッパー本体がシェルに収容されてなる靴において、アッパー本体がシェルに対して位置ずれすることでそのフィット性や靴としての機能が損なわれることがないようにしつつ、そのような靴を容易にかつ短時間に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示す靴を他の方向から見た斜視図である。
【
図4】
図1に示す靴の組付構造を説明するための分解斜視図である。
【
図7】実施の形態1に係る靴の製造方法を示すフロー図である。
【
図8】
図7に示す製造フローにおけるシェルにアッパー本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図9】
図7に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程を示す模式図である。
【
図10】
図7に示す製造フローにおけるラストを挿入する工程を示す模式図である。
【
図11】
図7に示す製造フローにおけるラストを取り出す工程を示す模式図である。
【
図12】
図7に示す製造フローにおけるシェルにソール本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図14】
図7に示す製造フローにおけるアッパー本体を準備する工程の他の例を示す模式図である。
【
図15】
図7に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程の他の例を示す模式図である。
【
図16】
図7に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程の他の例を示す模式図である。
【
図17】
図7に示す製造フローにおけるシェルにアッパー本体を収容する工程の他の例を示す模式図である。
【
図19】
図7に示す製造フローにおけるアッパー本体を準備する工程のさらに他の例を示す模式図である。
【
図20】
図7に示す製造フローにおけるラストを挿入する工程のさらに他の例を示す模式図である。
【
図21】実施の形態2に係る靴の製造方法を示すフロー図である。
【
図22】
図21に示す製造フローにおけるラストを挿入する工程を示す模式図である。
【
図23】
図21に示す製造フローにおけるラストを取り出す工程を示す模式図である。
【
図24】
図21に示す製造フローにおけるシェルにアッパー本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図25】
図21に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程を示す模式図である。
【
図26】
図21に示す製造フローにおけるシェルにソール本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図30】
図27に示す靴の組付構造を説明するための分解斜視図である。
【
図31】実施の形態3に係る靴の製造方法を示すフロー図である。
【
図32】
図31に示す製造フローにおけるシェルにソール本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図33】
図31に示す製造フローにおけるシェルにアッパー本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図34】
図31に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程を示す模式図である。
【
図35】
図31に示す製造フローにおけるラストを挿入する工程を示す模式図である。
【
図36】
図31に示す製造フローにおけるラストを取り出す工程を示す模式図である。
【
図37】
図31に示す製造フローにおけるアッパー本体を準備する工程の他の例を示す模式図である。
【
図38】
図31に示す製造フローにおけるシェルにソール本体を収容する工程のさらに他の例を示す模式図である。
【
図39】実施の形態4に係る靴の製造方法を示すフロー図である。
【
図40】
図39に示す製造フローにおけるラストを挿入する工程を示す模式図である。
【
図41】
図39に示す製造フローにおけるラストを取り出す工程を示す模式図である。
【
図42】
図39に示す製造フローにおけるシェルにソール本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図43】
図39に示す製造フローにおけるシェルにアッパー本体を収容する工程を示す模式図である。
【
図44】
図39に示す製造フローにおけるシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程を示す模式図である。
【
図45】実施の形態5に係る靴の概略斜視図である。
【
図46】実施の形態6に係る靴の概略斜視図である。
【
図47】実施の形態7に係る靴の概略斜視図である。
【
図48】実施の形態8に係る靴の概略斜視図である。
【
図50】実施の形態9に係る靴の概略斜視図である。
【
図51】実施の形態10に係る靴の概略斜視図である。
【
図52】実施の形態11に係る靴が具備するシェルの一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る靴の斜視図であり、
図2は、
図1に示す靴を他の方向から見た斜視図である。また、
図3は、
図1に示すIII-III線に沿った断面図であり、
図4は、
図1に示す靴の組付構造を説明するための分解斜視図である。まず、これら
図1ないし
図4を参照して、本実施の形態に係る靴1Aの構成について説明する。
【0017】
図1ないし
図4に示すように、本実施の形態に係る靴1Aは、着用者の足のほぼ全体(すなわち、足首よりも末端側の部位)を覆うソック状のものであり、シェル10と、ソール本体20と、アッパー本体30とを備えている。靴1Aの上部には、足を挿入するための部分である履き口33が設けられており、靴1Aの内部には、着用時において着用者の足が挿入される空間である内部空間SP(
図3参照)が形成されている。
【0018】
ここで、靴1Aの具体的な構成を説明するに先立って、後述する
図5を参照して、靴1Aの部位の名称について説明する。なお、
図5に示す平面図は、作図の都合によりシェル10のみを図示したものではあるが、靴1A全体として見た場合にも、同様の名称が用いられる。
【0019】
図5に示すように、靴1Aは、平面視した状態において着用者の足の足幅方向に合致する方向である左右方向(
図5中の略左右方向)に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(
図5中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(
図5中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0020】
また、靴1Aは、平面視した状態において着用者の足の足長方向に合致する方向である前後方向(
図5中の略上下方向)に沿って、着用者の足の足趾部および踏付け部に対応して位置する前足部R1と、着用者の足の踏まず部に対応して位置する中足部R2と、着用者の足の踵部に対応して位置する後足部R3とに区画される。
【0021】
ここで、靴1Aの前方側末端を基準とし、当該前方側末端から靴1Aの前後方向の寸法の40%の寸法に相当する位置を第1境界位置とし、当該前方側末端から靴1Aの前後方向の寸法の80%の寸法に相当する位置を第2境界位置とした場合に、前足部R1は、前後方向に沿って前方側末端と第1境界位置との間に含まれる部分に該当し、中足部R2は、前後方向に沿って第1境界位置と第2境界位置との間に含まれる部分に該当し、後足部R3は、前後方向に沿って第2境界位置と靴1Aの後方側末端との間に含まれる部分に該当する。
【0022】
図1ないし
図4に示すように、本実施の形態に係る靴1Aにあっては、ソール本体20が、アッパー本体30に収容されており、ソール本体20が収容されたアッパー本体30が、さらにシェル10に収容されている。これらシェル10、ソール本体20およびアッパー本体30は、いずれも前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がって位置している。
【0023】
より詳細には、シェル10は、靴1Aの最外殻を構成しており、袋状に形成された単一の可撓性部材からなる。シェル10は、底壁部11と、当該底壁部11の周縁から上方に向けて連続して延びるように立設された周壁部12とを含んでおり、このうちの底壁部11が、靴1Aの上下方向の下方側に位置する最外面を規定しており、周壁部12が、靴1Aの前後方向ならびに左右方向に位置する最外面を規定している。
【0024】
底壁部11は、一対の主面である内面11aおよび外面11bを有しており、周壁部12は、一対の主面である内面12aおよび外面12bを有している。シェル10の底壁部11および周壁部12は、基礎構造部16としての網目状部材16aにて構成されており、これに伴い、これら部分のシェル10には、内面11a,12aおよび外面11b,12bに達する無数の孔部14が形成されている。なお、当該基礎構造部16の詳細については、後において説明する。
【0025】
また、周壁部12の上端には、開口形状の挿入部13が設けられている。この挿入部13は、中足部R2と後足部R3とに跨がって設けられている。
【0026】
図3に示すように、シェル10には、内部空間SPが形成されている。この内部空間SPは、底壁部11の内面11aと周壁部12の内面12aとによって規定されており、上述した挿入部13に通じている。内部空間SPは、前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がって位置している。当該内部空間SPには、ソール本体20およびアッパー本体30が収容されることでこれらが配置される空間と、着用者の足が挿入される空間である挿入空間SP3とが含まれる。
【0027】
図1ないし
図4に示すように、アッパー本体30は、靴1Aのうちの着用者の足に接触する部分の一部を構成することで着用者の足を保持するものであり、柔軟に変形が可能な袋状の部材からなる。アッパー本体30は、シェル10の内部空間SPに収容されている。アッパー本体30は、底部31と、当該底部31の周縁から上方に向けて連続して延びるように立設された壁部32とを含んでいる。
【0028】
底部31は、一対の主面である内面31aおよび外面31bを有しており、壁部32は、一対の主面である内面32aおよび外面32bを有している。このうちのアッパー本体30の底部31の外面31bは、シェル10の底壁部11の内面11aに対向しており、アッパー本体30の壁部32の外面32bは、シェル10の周壁部12の内面12aに対向している。これにより、底部31は、シェル10の底壁部11の内面11aを覆っており、壁部32は、シェル10の周壁部12の内面12aを覆っている。
【0029】
また、壁部32の上端には、上述した履き口33が設けられている。この履き口33は、中足部R2と後足部R3とに跨がって設けられている。
【0030】
ソール本体20は、靴1Aのうちの着用者の足に接触する部分の一部を構成することで着用者の足の足裏を支持するものであり、弾性変形が可能な偏平な部材からなる。ソール本体20は、シェル10の内部空間SPに収容されており、さらにアッパー本体30の内部に収容されている。
【0031】
ソール本体20は、一対の主面である上面21および下面22と、これらを接続する側面23とを有している。このうちのソール本体20の下面22は、アッパー本体30の底部31の内面31aに対向しており、ソール本体20の側面23は、アッパー本体30の壁部32の内面32aのうちの下端側の部分に対向している。これにより、ソール本体20は、アッパー本体30の底部31の内面31aと、アッパー本体30の壁部32の内面32aのうちの下端側の部分とを覆っている。
【0032】
図3に示すように、シェル10の上述した内部空間SPは、下部側空間SP1と上部側空間SP2とに区画される。下部側空間SP1は、靴1Aの上下方向の下側部分に位置しており、上部側空間SP2は、靴1Aの上下方向の上側部分に位置している。
【0033】
下部側空間SP1は、底壁部11と、当該底壁部11に隣接する部分の周壁部12(以下、周壁部12の当該部分を「第1部分」と称する)とによって規定された空間であり、この下部側空間SP1には、ソール本体20の全体と、アッパー本体30の下側部分(すなわち、底部31と、当該底部31に隣接する部分の壁部32)とが配置されている。
【0034】
上部側空間SP2は、上記第1部分よりも上方に位置する部分の周壁部12(以下、周壁部12の当該部分を「第2部分」と称する)によって規定された空間であり、この上部側空間SP2には、アッパー本体30の上側部分(すなわち、底部31に隣接する部分の壁部32よりも上方に位置する部分の壁部32)が配置されている。
【0035】
上述したように、アッパー本体30は、シェル10の内面11a,12aを覆うように内部空間SPに収容されており、さらにソール本体20は、アッパー本体30の底部31の内面31aおよびアッパー本体30の壁部32の内面32aのうちの下端側の部分を覆うように内部空間SPに収容されているため、シェル10の内部空間SPには、ソール本体20とアッパー本体30とによって規定される挿入空間SP3が形成されることになる。
【0036】
この挿入空間SP3は、上述したように着用時において着用者の足が挿入される空間であり、より具体的には、挿入空間SP3は、ソール本体20の上面21と、アッパー本体30のうちのソール本体20によって覆われていない部分の壁部32の内面32a(すなわち、上述したシェル10の周壁部12の第2部分に対応する位置の壁部32の内面32a)とによって規定されている。なお、挿入空間SP3は、上述した内部空間SPのうちの上部側空間SP2に含まれる。
【0037】
本実施の形態に係る靴1Aにあっては、アッパー本体30が、着用者の足の足首よりも末端側の部位をすべて覆う形状を有しているとともに、上部側空間SP2を形成する部分のシェル10が、着用者の足が挿入される履き口33に対応する部分以外の部分において、着用者の足の足裏を除く部位を全面的に覆っている。
【0038】
したがって、着用者が靴1Aを着用した状態においては、着用者の足の足裏を除く部位(すなわち、足甲および踵の周面等)が、柔軟に変形が可能なアッパー本体30の壁部32の内面32aに接触することになるとともに、着用者の足の足裏が、弾性変形が可能なソール本体20の上面21に接触することになる。そのため、シェル10が着用者の足に直接的に接触することはなく、快適な履き心地が確保できることになる。
【0039】
ただし、アッパー本体30およびソール本体20は、必ずしも全面的に着用者の足に接触する必要はなく、履き心地が損なわれない範囲において、これらアッパー本体30およびソール本体20に切り欠き形状または開口形状の欠除部が設けられてもよい。
【0040】
本実施の形態に係る靴1Aにおいては、上述したように、シェル10によって当該靴1Aの最外殻が構成されており、特に、シェル10の底壁部11によってソール本体20の下面22が覆われることにより、靴1Aの上下方向の下方側に位置する最外面が、シェル10の底壁部11によって規定されている。これにより、当該靴1Aにおいては、その接地面がシェル10の底壁部11の外面11bによって構成されることになる。
【0041】
そのため、このように構成することにより、ソール本体20によって接地面が構成されることがないため、ソール本体20の材料選択の余地が格段に広がることになり、一般的なソールに要求される機能のうち、履き心地の改善やクッション性の確保といった点に照らして、ソール本体20の最適な材料選択を行なうことが可能になる。一方で、接地面に要求される耐摩耗性やグリップ性といった性能については、これをシェル10の材料選択またはこれに加えて形状選択等によって確保することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る靴1Aにおいては、上述したように、シェル10によって当該靴1Aの最外殻が構成されており、当該シェル10には、接地面を規定する底壁部11と、当該底壁部11の周縁から立設されるとともに着用者の足の足甲を覆う部分を含む周壁部12とが含まれている。このように構成することにより、靴の最外殻がソールおよびアッパーによって構成された従来の靴(すなわち、本実施の形態に係る靴1Aのシェル10のような部材を備えていない靴)に比べて、高性能化する利点もある。
【0043】
すなわち、上述した従来の靴にあっては、通常、着用者の足の足甲を覆う部分を含むアッパーが織地や編地、不織布等のみによって構成されており、また、当該アッパーがソールに接着等によって接合された構成であるため、蹴り出し時に当該足甲を覆う部分のアッパーに印加された荷重が当該アッパーの側壁を介してソールに伝わるまでの伝達時間に遅れが生じ易く、特に走行時等において足に対する靴の追従性が劣ることになってしまう。
【0044】
しかしながら、本実施の形態に係る靴1Aにあっては、着用者の足の足甲を覆う部分を含むシェル10の周壁部12が、後述するように樹脂製やゴム製の部材にて構成されており、しかもこれが織地や編地、不織布等に比較して硬質の材料にて構成されているため、また、足甲を覆う部分を含む周壁部12と接地面を規定する部分を含む底壁部11とが単一の部材からなるシェル10によって一体的に構成されているため、蹴り出し時における荷重伝達が速くなり、特に走行時等において足に対する靴の追従性が優れたものとなる。なお、このシェル10による荷重伝達の方向を
図3中において模式的に黒色矢印にて表わしており、これによってシェル10の底壁部11に加えられる荷重の方向を
図3中において模式的に白抜き矢印にて表わしている。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る靴1Aにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40としての縫合部41が設けられている。縫合部41は、着用者の足が挿入される履き口33に隣接する部分のシェル10に設けられており、より詳細には、シェル10の周壁部12の上端の近傍において履き口33を取り囲むように位置している。
【0046】
当該縫合部41は、重ね合わされたシェル10とアッパー本体30とを縫製用の糸が交互に貫くように縫い付けられることで形成されたものであり、これにより履き口33に隣接する部分において、アッパー本体30がシェル10に対して移動不能に固定されることになる。
【0047】
このように構成することにより、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着せずともに、アッパー本体30をシェル10に対して固定することが可能になり、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれしてしまうことが未然に防止できることになる。そのため、フィット性が低下することが抑制可能になり、靴としての機能が損なわれることが防止できることになる。
【0048】
また、当該構成を採用した場合には、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着した場合に比べ、製造に要するタクトが大幅に短縮化でき、さらには製造プロセスも簡便化することになる。したがって、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0049】
なお、本実施の形態に係る靴1Aにあっては、上述のようにアッパー本体30が袋状の形状を有しているため、上記のように、着用者の足が挿入される履き口33に隣接する部分のシェル10に縫合部41を設けることにより、他の部分においてシェル10とアッパー本体30とを固定したり、当該部分においてさらに他の手段を用いて付加的にこれらを固定したりすることは基本的に必要ないことになる。しかしながら、上記の部分以外の部分においてさらにシェル10とアッパー本体30とを縫合してもよいし、部分的であれば、上記の部分あるいはそれ以外の部分においてシェル10とアッパー本体30とを接着剤によって接合してもよい。さらには、上記の部分あるいはそれ以外の部分において、溶着等の他の手段を用いてこれらシェル10とアッパー本体30とを固定してもよい。
【0050】
ここで、シェル10は、可撓性を有していれば基本的にどのような材料によって構成されていてもよいが、適度な強度を有していることが好ましい。当該観点から、シェル10は、樹脂材料またはゴム材料にて構成されていることが好ましい。より具体的には、シェル10を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、シェル10をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
【0051】
シェル10は、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマーやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0052】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマーやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0053】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマーやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0054】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマーやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられ、特にウレタンアクリレートが好適に使用できる。
【0055】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマーやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0056】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマー、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0057】
一方、ソール本体20は、弾性変形が可能であれば基本的にどのような材料によって構成されていてもよいが、適度な強度を有しつつもクッション性に優れた部材にて構成されることが好ましい。当該観点から、ソール本体20としては、たとえば、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤や架橋剤とを含む樹脂製の発泡材が用いられる。また、これに代えて、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や発泡剤、補強剤、架橋剤とを含むゴム製の発泡材を用いてもよい。
【0058】
特に好適には、ソール本体20は、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)等の発泡材にて構成することができる。なお、ソール本体20は、必ずしも発泡材で構成されている必要はなく、これを非発泡材にて構成することとしてもよい。
【0059】
他方、アッパー本体30としては、熱収縮性を有する部材が好適に用いられ、特に熱収縮性を有する合成繊維の織地や編地、不織布等が用いられる。熱収縮性を有する合成繊維としては、たとえばポリエステル、ポリウレタン等を主成分とするものが挙げられる。
【0060】
このように、アッパー本体30として、熱収縮性を有する部材を用いることとすれば、着用者の足によりフィットするアッパー本体30とすることができるが、この点については、後において詳述することとする。
【0061】
ここで、シェル10の製作方法は、特にこれが制限されるものではないが、シェル10は、たとえば射出成形や注型成形、あるいは三次元積層造形装置を用いた造形によって製作することができる。特に、三次元積層造形装置を用いた造形によってシェル10を製作することとすれば、射出成形や注型成形では製作することが困難な多種多様な構造のシェル10を製作することができる。
【0062】
図5は、本実施の形態に係る靴が具備するシェルの模式平面図であり、
図6は、
図5に示すシェルの部分断面図である。次に、これら
図5および
図6ならびに前述の
図1ないし
図4を参照して、本実施の形態に係る靴1Aが具備するシェル10の構造について詳説する。
【0063】
図5および
図6に示すように、シェル10は、曲成された網目状部材16aにて構成された基礎構造部16を有している。
図1ないし
図5に示すように、この基礎構造部16は、シェル10の底壁部11および周壁部12の全体(すなわち、シェル10の挿入部13を除く部分の全体)にわたって位置している。
【0064】
これにより、底壁部11の内面11aおよび外面11bは、この網目状部材16aにて構成された基礎構造部16の一対の主面によって構成されており、周壁部12の内面12aおよび外面12bもまた、この網目状部材16aにて構成された基礎構造部16の一対の主面によって構成されている。なお、網目状部材16aは、その全体が曲成されている必要は必ずしもなく、その一部に曲成されていない部分が含まれていてもよい。
【0065】
網目状部材16aは、互いに交差するように接続された複数のワイヤ要素16a1を含んでおり、これによりワイヤ要素16a1が交差することで形成された交点と、隣り合うワイヤ要素16a1の間に位置する孔部14とを有している。ここで、
図6に示す断面は、このワイヤ要素16a1の交点を含む断面である。なお、シェル10においては、これら複数のワイヤ要素16a1が互いに直交するように格子状に配置されるとともに、これら複数のワイヤ要素16a1の各々が、靴1Aの前後方向ならびに左右方向に対して斜めに延在するように配置されている。
【0066】
このように、シェル10に無数の孔部14が設けられることにより、当該シェル10の軽量化が図られるとともに、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30が当該無数の孔部14を介して外部から視認可能に構成されることにより、その意匠性の向上が図られることになる。
【0067】
このような構造を有するシェル10は、射出成形や注型成形によってもその製作が可能なものではあるが、特に、上述した三次元積層造形装置を用いた造形によって比較的容易にその製作が可能なものである。
【0068】
図7は、実施の形態1に係る靴の製造方法を示すフロー図である。また、
図8ないし
図12は、
図7に示す製造フローにおける一部の工程を示す模式図である。次に、これら
図7ないし
図12を参照して、本実施の形態に係る靴の製造方法について説明する。なお、
図8ないし
図12においては、後述する加熱による成形が行なわれる前後のアッパー本体を区別するために、成形前のアッパー本体に参照符号30’を付すとともに、成形後のアッパー本体に参照符号30を付している。
【0069】
図7に示すように、本実施の形態に係る靴1Aを製造するに際しては、まず、ステップST101において、シェル10が準備される。シェル10は、どのような方法によって製作されてもよいが、好ましくは、上述した三次元積層造形装置を用いた造形によって製作される。ここで、三次元積層造形装置を用いた造形によってシェル10が製作される場合には、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて、製作すべきシェル10の形状が決定されることがさらに好ましい。このようにすれば、製造される靴1Aの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。
【0070】
次に、ステップST102において、アッパー本体30’が準備される。アッパー本体30’は、どのような方法によって製作されてもよいが、たとえば熱収縮性を有する合成繊維の織地や編地、不織布等からなるシートが丸められつつこれが縫合されることにより、履き口33に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体30’が容易に製作できることになる。
【0071】
次に、ステップST103において、ソール本体20が準備される。ソール本体20は、どのような方法によって製作されてもよいが、たとえば射出成形やプレス成形等によってこれを製作することができる。
【0072】
なお、シェル10、アッパー本体30’およびソール本体20は、これらがどの順で製作されてもよく、また同時並行的にこれらが製作されてもよい。さらには、サイズ毎にこれらを予め複数ストックしておき、必要に応じてこれらのうちから最適なサイズのものが選択されて使用されてもよい。
【0073】
次に、
図7および
図8に示すように、ステップST104において、シェル10にアッパー本体30’が収容される。具体的には、
図8(A)に示すように、アッパー本体30’が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0074】
ここで、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、これをシェル10の上端に設けられた開口形状の挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。挿入されたアッパー本体30’は、これがシェル10の内面11a,12aに沿うように配置される。また、アッパー本体30’の履き口33の近傍は、これがシェル10の挿入部13から外部に露出した状態とされる。
【0075】
これにより、
図8(B)に示すように、アッパー本体30’がシェル10に収容された状態となる。
【0076】
次に、
図7および
図9に示すように、ステップST105において、シェル10およびアッパー本体30’が部分的に固定される。具体的には、
図9に示すように、重ね合わされたシェル10およびアッパー本体30’のうち、履き口33を取り囲むように当該履き口33に隣接する部分においてこれらを固定する固定部40としての縫合部41が設けられることにより、シェル10およびアッパー本体30’の部分的な固定が行なわれる。
【0077】
次に、
図7および
図10に示すように、ステップST106において、ラスト100が挿入される。具体的には、
図9(A)に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30’の内部に、ラスト100が挿入される。
【0078】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30’に設けられた履き口33を介してアッパー本体30’の内部に挿入することができる。これにより、アッパー本体30’の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿うように配置される。
【0079】
これにより、
図10(B)に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30’の内部に、ラスト100が挿入された状態となる。
【0080】
このとき、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、製造される靴1Aの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。なお、この他にも、ラスト100としては、着用者の足のサイズに応じた標準的な形状のものを使用してもよい。
【0081】
次に、
図7に示すように、ステップST107において、アッパー本体30’の成形が行なわれる。具体的には、シェル10にアッパー本体30’が収容されるとともに、シェル10およびアッパー本体30’が部分的に固定され、さらにシェル10に収容されたアッパー本体30’にラスト100が挿入された状態(すなわち、
図10(B)に示す状態)において、アッパー本体30’が所定温度に加熱されることにより、アッパー本体30’の成形が行なわれる。
【0082】
このとき、上述したように、アッパー本体30’が熱収縮性を有しているため、この加熱により、アッパー本体30’が全体的に熱収縮する。この熱収縮による変形に伴い、成形後のアッパー本体30の外面31b,32bは、シェル10の内面11a,12aに沿った外面形状を有することになるとともに、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿った内面形状を有することになる。
【0083】
ここで、上述したように、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、成形後のアッパー本体30の内面32aは、着用者の足の外形形状に概ね合致したものとなるため、製造される靴1Aの着用者の足へのフィット性が特に高められることになる。
【0084】
次に、
図7および
図11に示すように、ステップST108において、ラスト100が取り出される。具体的には、
図11に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30の内部から、ラスト100が取り出される。
【0085】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の外部に取り出すことができる。
【0086】
次に、
図7および
図12に示すように、ステップST109において、シェル10にソール本体20が収容される。具体的には、
図12に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30の内部に、ソール本体20が挿入される。
【0087】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ソール本体20をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の内部に挿入することができる。これにより、ソール本体20の下面22および側面23が、アッパー本体30の内面31a,32aに沿うように配置される。
【0088】
以上の手順を経ることにより、シェル10、ソール本体20およびアッパー本体30の相互の組付けが完了し、これにより上述した本実施の形態に係る靴1Aの製造が完了する。
【0089】
このように、本実施の形態に係る靴の製造方法に従えば、予め個別に製作されたシェル10とソール本体20とアッパー本体30’とを相互に組付けるという非常に簡便な作業にて靴1Aの製造が行なえることになる。したがって、本実施の形態に係る靴1Aとすることにより、上述したように、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれすることでそのフィット性や靴としての機能が損なわれることがないようにすることが可能になるばかりでなく、さらに当該靴1Aを容易にかつ短時間に製造することが可能になる。
【0090】
なお、上述した本実施の形態に係る靴の製造方法においては、ソール本体20とアッパー本体30とを特段の固定手段を用いて固定しない場合を例示して説明を行なったが、必要に応じてこれらを固定手段を用いて固定することとしてもよい。当該固定には、たとえば縫製や接着、溶着、クリップ留め、あるいは、ソール本体20およびアッパー本体30に設けられた係合部同士による係合等が利用できる。
【0091】
また、上述したアッパー本体30を成形する工程においては、成形後のアッパー本体30がシェル10に沿った外面形状およびラスト100に沿った内面形状のうちの少なくともいずれかを有することとなるように、その成形が行なわれればよく、必ずしも上述したように、成形後のアッパー本体30がシェル10に沿った外面形状およびラスト100の表面に沿った内面形状の双方を有することとなるように、その成形が行なわれる必要はない。
【0092】
(第1変形例)
図13は、第1変形例に係る靴の斜視図であり、
図14ないし
図17は、当該第1変形例に係る靴を製造するための、
図7に示す製造フローにおける一部の工程の他の例を示す模式図である。以下、これら
図13ないし
図17を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係る靴1A1の構成ならびに当該靴1A1を製造するための具体的な製造フローについて説明する。
【0093】
上述した実施の形態1に係る靴1Aにあっては、固定部40としての縫合部41が、外部から視認可能な位置に設けられていたが、
図13に示すように、本変形例に係る靴1A1にあっては、当該縫合部41が外部から視認できないように構成されている。なお、
図13においては、縫合部41が形成された位置が把握できるように、これを二点鎖線にて示しているが、実際には、縫合部41は、外部から視認できない。
【0094】
具体的には、本変形例に係る靴1A1にあっては、縫合部41が設けられた部分を覆い隠すようにアッパー本体30が折り返されてシェル10の挿入部13に挿入されることにより、縫合部41の外部からの視認ができなくなっている。すなわち、アッパー本体30の壁部32の上端は、シェル10の周壁部12の外面12bの上端に重なり合うように配置されており、当該部分において縫合部41が形成されるとともに、アッパー本体30の当該上端の下側部分においてアッパー本体30の壁部32が上方に向けて折り返され、さらにこれがシェル10の挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに入り込むように折り曲げられることにより、アッパー本体30自体によって縫合部41が覆われている。
【0095】
このように構成すれば、縫合部41が外部から視認できないため、意匠性が向上するとともに、当該縫合部41がアッパー本体30によって覆われることで縫合部41が保護されることにもなるため、縫合部41にほつれ等が発生することを抑制することができる。
【0096】
このような構成の靴1A1は、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法における一部の工程において、シェル10に対するアッパー本体30の重ね合わせ方を変更すること等で製造できる。
【0097】
具体的には、
図14に示すように、まず、アッパー本体を準備する工程(
図7に示すステップST102)において、履き口33に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体30’の底部31に、前後方向に沿って延びるスリット状の切り込み31cが形成され、当該切り込み31cを図中に示す矢印方向に沿って開くことにより、アッパー本体30’が裏返しにされる。
【0098】
次に、
図15(A)に示すように、シェルにアッパー本体を収容する工程(
図7に示すステップST104)に先だって、シェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程(
図7に示すステップST105)が行なわれ、シェルおよびアッパー本体を部分的に固定する当該工程において、まず、裏返しにされたアッパー本体30’が図中に示す矢印方向に沿ってシェル10に被せ付けられる。ここで、シェル10は、アッパー本体30’の底部31に設けられた切り込み31cを介してアッパー本体30’の内部に挿入されるようにする。
【0099】
これにより、
図15(B)に示すように、裏返しにされたアッパー本体30’によってシェル10の周壁部12が覆われることになる。このとき、アッパー本体30’の壁部32の履き口33側の端部である上端が、シェル10の挿入部13側の端部である上端に重ね合わされる。
【0100】
続いて、
図16に示すように、重ね合わされたアッパー本体30’の壁部32の上端とシェル10の周壁部12の上端とに、履き口33を取り囲むように固定部40としての縫合部41が設けられる。これにより、シェル10およびアッパー本体30’の部分的な固定が行なわれる。
【0101】
次に、
図17に示すように、シェルにアッパー本体を収容する工程が行なわれ、アッパー本体30’の上述した縫合部41が設けられた部分である上端を除く部分が、図中に示す矢印方向に沿ってシェル10の内部空間SPに挿入される。このとき、アッパー本体30’は、裏返しにされた状態から再度裏返されることになり、上述した縫合部41が設けられた部分である上端を除く部分において、その内面31a,32aが内側にかつその外面31b,32bが外側に配置された元の状態に戻ることになる。これにより、縫合部41は、アッパー本体30’自体によって覆われることになり、縫合部41が外部に露出することがなくなる。
【0102】
なお、シェル10の内部空間SPにアッパー本体30’を挿入するに際しては、最終的に成形後のアッパー本体30の底部31がソール本体20によって覆われることになるため、上述した切り込み31cがそのままの状態とされてもよい。しかしながら、成形後のアッパー本体30の位置ずれを確実に防止する観点からは、シェル10の内部空間SPにアッパー本体30’を挿入するに先だって、当該切り込み31cを縫合すること等によって閉じることが好ましい。
【0103】
このように、本変形例の如くに構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られるとともに、さらに意匠性が向上する効果を得ることができる。
【0104】
(第2変形例)
図18は、第2変形例に係る靴の断面図であり、
図19および
図20は、当該第2変形例に係る靴を製造するための、
図7に示す製造フローにおける一部の工程のさらに他の例を示す模式図である。以下、これら
図18ないし
図20を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第2変形例に係る靴1A2の構成ならびに当該靴1A2を製造するための具体的な製造フローについて説明する。
【0105】
上述した実施の形態1に係る靴1Aにあっては、着用者の足の足裏を支持する部分が、すべてソール本体20の上面21によって規定されていたが、
図18に示すように、本変形例に係る靴1A2にあっては、当該着用者の足の足裏を支持する部分のうちの一部が、アッパー本体30の一部によって規定されている。
【0106】
具体的には、本変形例に係る靴1A2にあっては、アッパー本体30が、第1袋状部30Aと第2袋状部30Bとを有している。
図19に示すように、第1袋状部30Aは、履き口33以外の部分に開口が設けられていない袋状の形状を有しており、第2袋状部30Bは、履き口33が設けられるとともに、前端に前側開口36が設けられた袋状の形状を有している。なお、
図19は、成形前のアッパー本体30’を図示するものであるため、第1袋状部30Aおよび第2袋状部30Bとも、成形前の第1袋状部30A’および第2袋状部30B’として図示されている。
【0107】
換言すれば、第1袋状部30Aは、着用者の足の全体を覆うように(厳密には、これに加えてソール本体20を覆うように)構成されたものであるのに対し、第2袋状部30Bは、着用者の足の足趾部は覆わないものの、着用者の足の踏まず部および踵部を覆うように構成されたものである。これら第1袋状部30Aおよび第2袋状部30Bは、たとえば履き口33において縫合等されることで一体化されている。
【0108】
図18に示すように、第1袋状部30Aは、前足部R1、中足部R2および後足部R3において、シェル10の底壁部11の内面11aおよび周壁部12の内面12aを覆うように、シェル10の内部空間SPに収容されている。
【0109】
一方、第2袋状部30Bは、中足部R2および後足部R3において、上述したシェル10の周壁部12の第2部分とソール本体20の上面21とを覆うように、第1袋状部30Aの内部に配置されている。すなわち、第2袋状部30Bは、中足部R2および後足部R3においてソール本体20の上面21を覆う底部31”と、中足部R2および後足部R3において第1袋状部30Aの壁部32のうちの下端部分を除く部分の内面32aを覆う壁部32”とを有している。
【0110】
これにより、ソール本体20は、第1袋状部30Aのうちの着用者の足の足裏に対応する部分と、第2袋状部30Bのうちの着用者の足の踏まず部および踵部に対応する部分との間に配置されている。
【0111】
その結果、本変形例に係る靴1A2においては、着用者の足の足裏を支持する部分が、前足部R1に対応する部分においてソール本体20の上面21によって規定されるとともに、中足部R2および後足部R3においてアッパー本体30のうちの第2袋状部30Bの底部31”によって規定されることになる。なお、着用者の足の足裏を除く部分については、その足趾がアッパー本体30の第1袋状部30Aの壁部32に接触することになるとともに、その足甲および踵の周面がアッパー本体30の第2袋状部30Bの壁部32”に接触することになる。
【0112】
このように構成した場合には、特に、高いフィット性が求められる中足部R2および後足部R3において、着用者の足の足裏が、ソール本体20ではなくアッパー本体30に接触することになる。そのため、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたラスト100を用いてアッパー本体30を成形することにより、アッパー本体30の壁部32”の内面32aのみならず、アッパー本体30の底部31”の内面31aについても、これが着用者の足にフィットしたものとなり、中足部R2および後足部R3において高いフィット性が得られることになる。
【0113】
このような構成の靴1A2は、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法におけるアッパー本体を準備する工程において、準備するアッパー本体30の形状を変更すとともに、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法におけるアッパー本体を成形する工程において、ラスト100に加えて後述する型部材200をシェル10に収容されたアッパー本体30に挿入するように変更すること等で製造できる。
【0114】
具体的には、
図19に示すように、アッパー本体を準備する工程(
図7に示すステップST102)において、第2袋状部30B’が、第1袋状部30A’の内部に当該第1袋状部30A’に設けられた履き口33を介して挿入され、この状態において第1袋状部30A’と第2袋状部30B’とが、たとえば縫合されることで一体化される。
【0115】
その後、
図20に示すように、第1袋状部30A’および第2袋状部30B’からなる成形前のアッパー本体30’が、シェル10の内部空間SPに収容され、ラストを収容する工程(
図7に示すステップST106)において、このシェル10に収容された成形前のアッパー本体30’に対して、型部材200およびラスト100が挿入される。
【0116】
より詳細には、まず、型部材200が、アッパー本体30’に挿入される。この型部材200は、後において組付けられるソール本体20の外形に対応した外形を有するたとえば金属または架橋樹脂からなるものであり、アッパー本体30’の成形の際に、第1袋状部30A’の底部31および壁部32のうちの下端部分と、第2袋状部30B’の底部31”を成形するためのものである。
【0117】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であり、さらには、アッパー本体30’の第2袋状部30B’には、上述した前側開口36が設けられているため、型部材200をアッパー本体30’に設けられた履き口33および上記前側開口36を介して、アッパー本体30’の内部であってかつ上述した下部側空間SP1に挿入することができる。
【0118】
次に、ラスト100が、アッパー本体30’の内部に挿入される。ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30’に設けられた履き口33を介してアッパー本体30’の内部に挿入することができる。
【0119】
この状態において、アッパー本体30’の成形が行なわれ、その後、上述したラスト100および型部材200がこの順で成形後のアッパー本体30から取り出され、さらにその後、ソール本体20がアッパー本体30の内部に挿入される。これにより、上述した本変形例に係る靴1A2が製造できることになる。
【0120】
このように、本変形例の如くに構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られるとともに、さらにフィット性が高まる効果を得ることができる。
【0121】
なお、本変形例においては、第2袋状部30B’が中足部R2および後足部R3において着用者の足を覆う形状を有するように構成された場合を例示したが、第2袋状部30B’が中足部R2のみを覆う形状を有するように構成されていてもよい。
【0122】
(実施の形態2)
図21は、実施の形態2に係る靴の製造方法を示すフロー図である。また、
図22ないし
図26は、
図21に示す製造フローにおける一部の工程を示す模式図である。以下、これら
図21ないし
図26を参照して、本実施の形態に係る靴の製造方法について説明する。なお、
図22ないし
図26においては、後述する加熱による成形が行なわれる前後のアッパー本体を区別するために、成形前のアッパー本体に参照符号30’を付すとともに、成形後のアッパー本体に参照符号30を付している。
【0123】
本実施の形態に係る靴の製造方法は、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法とは、一部の工程の順序が異なるものではあるが、当該製造方法に従って製造される靴も、上述した実施の形態1に係る靴1Aと実質的に同様のものとなる。上述した実施の形態1に係る靴の製造方法は、アッパー本体を成形する工程が、シェル10の内部にアッパー本体30’が収容された状態でアッパー本体30’を加熱することで行なわれるものであるが、本実施の形態に係る靴の製造方法では、この工程が、シェルにアッパー本体を収容する工程の前に実施される。そのため、本実施の形態に係る靴の製造方法は、加熱によってシェル10に許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合に、特に好適なものである。
【0124】
図21に示すように、本実施の形態に係る靴の製造方法にあっては、まず、ステップST201~ST203において、シェル10、アッパー本体30’およびソール本体20が準備される。これらステップST201~ST203の工程は、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法のステップST101~ST103と同様である。
【0125】
次に、
図21および
図22に示すように、ステップST204において、ラスト100が挿入される。具体的には、
図22(A)に示すように、アッパー本体30’の内部にラスト100が挿入される。
【0126】
ここで、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30’に設けられた履き口33を介してアッパー本体30’の内部に挿入することができる。これにより、アッパー本体30’の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿うように配置される。
【0127】
このとき、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、製造される靴1Aの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。なお、この他にも、ラスト100としては、着用者の足のサイズに応じた標準的な形状のものを使用してもよい。
【0128】
これにより、
図22(B)に示すように、アッパー本体30’の内部にラスト100が挿入された状態となる。
【0129】
次に、
図21に示すように、ステップST205において、アッパー本体30’の成形が行なわれる。具体的には、アッパー本体30’にラスト100が挿入された状態(すなわち、
図22(B)に示す状態)において、アッパー本体30’が所定温度に加熱されることにより、アッパー本体30’の成形が行なわれる。
【0130】
このとき、上述したように、アッパー本体30’が熱収縮性を有しているため、この加熱により、アッパー本体30’が全体的に熱収縮する。この熱収縮による変形に伴い、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿った内面形状を有することになる。
【0131】
ここで、上述したように、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、成形後のアッパー本体30の内面32aは、着用者の足の外形形状に概ね合致したものとなるため、製造される靴1Aの着用者の足へのフィット性が特に高められることになる。
【0132】
次に、
図21および
図23に示すように、ステップST206において、ラスト100が取り出される。具体的には、
図23に示すように、アッパー本体30の内部からラスト100が取り出される。
【0133】
ここで、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の外部に取り出すことができる。
【0134】
次に、
図21および
図24に示すように、ステップST207において、シェル10にアッパー本体30が収容される。具体的には、
図24(A)に示すように、アッパー本体30が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0135】
ここで、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、これをシェル10の上端に設けられた開口形状の挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。挿入されたアッパー本体30は、これがシェル10の内面11a,12aに沿うように配置される。また、アッパー本体30の履き口33の近傍は、これがシェル10の挿入部13から外部に露出した状態とされる。
【0136】
これにより、
図24(B)に示すように、アッパー本体30がシェル10に収容された状態となる。
【0137】
次に、
図21および
図25に示すように、ステップST208において、シェル10およびアッパー本体30が部分的に固定される。具体的には、
図25に示すように、重ね合わされたシェル10およびアッパー本体30のうち、履き口33を取り囲むように当該履き口33に隣接する部分においてこれらを固定する固定部40としての縫合部41が設けられることにより、シェル10およびアッパー本体30の部分的な固定が行なわれる。
【0138】
次に、
図21および
図26に示すように、ステップST209において、シェル10にソール本体20が収容される。具体的には、
図26に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30の内部に、ソール本体20が挿入される。
【0139】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ソール本体20をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の内部に挿入することができる。これにより、ソール本体20の下面22および側面23が、アッパー本体30の内面31a,32aに沿うように配置される。
【0140】
以上の手順を経ることにより、シェル10、ソール本体20およびアッパー本体30の相互の組付けが完了し、これにより上述した実施の形態1に係る靴1Aと実質的に同様の靴の製造が完了する。
【0141】
このように、本実施の形態に係る靴の製造方法に従えば、予め個別に製作されたシェル10とソール本体20とアッパー本体30’とを相互に組付けるという非常に簡便な作業にて靴の製造が行なえることになる。したがって、本実施の形態に係る靴の製造方法は、上述した実施の形態1に係る靴の製造方法とすることで得られる効果とほぼ同様の効果が得られるものであり、さらたに上述したように、シェル10に加熱により許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合に好適なものとなる。
【0142】
なお、上述した本実施の形態に係る靴の製造方法においては、ソール本体20とアッパー本体30とを特段の固定手段を用いて固定しない場合を例示して説明を行なったが、必要に応じてこれらを固定手段を用いて固定することとしてもよい。当該固定には、たとえば縫製や接着、溶着、クリップ留め、あるいは、ソール本体20およびアッパー本体30に設けられた係合部同士による係合等が利用できる。
【0143】
(実施の形態3)
図27は、実施の形態3に係る靴の斜視図であり、
図28は、
図27に示す靴を他の方向から見た斜視図である。また、
図29は、
図27に示すXXIX-XXIX線に沿った断面図であり、
図30は、
図27に示す靴の組付構造を説明するための分解斜視図である。まず、これら
図27ないし
図30を参照して、本実施の形態に係る靴1Bの構成について説明する。
【0144】
図27ないし
図30に示すように、本実施の形態に係る靴1Bは、着用者の足のほぼ全体(すなわち、足首よりも末端側の部位)を覆うソック状のものであり、シェル10と、ソール本体20と、アッパー本体30とを備えている。靴1Bの上部には、足を挿入するための部分である履き口33が設けられており、靴1Bの内部には、着用時において着用者の足が挿入される空間である内部空間SP(
図29参照)が形成されている。
【0145】
本実施の形態に係る靴1Bにあっては、ソール本体20が、シェル10に収容されており、アッパー本体30が、ソール本体20上に位置するようにシェル10に収容されている。これにより、ソール本体20は、シェル10とアッパー本体30とによって挟み込まれている。これらシェル10、ソール本体20およびアッパー本体30は、いずれも前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がって位置している。
【0146】
より詳細には、シェル10は、靴1Bの最外殻を構成しており、袋状に形成された単一の可撓性部材からなる。シェル10は、底壁部11と、当該底壁部11の周縁から上方に向けて連続して延びるように立設された周壁部12とを含んでおり、このうちの底壁部11が、靴1Bの上下方向の下方側に位置する最外面を規定しており、周壁部12が、靴1Bの前後方向ならびに左右方向に位置する最外面を規定している。
【0147】
底壁部11は、一対の主面である内面11aおよび外面11bを有しており、周壁部12は、一対の主面である内面12aおよび外面12bを有している。シェル10の底壁部11および周壁部12は、基礎構造部16としての網目状部材16aにて構成されており、これに伴い、これら部分のシェル10には、内面11a,12aおよび外面11b,12bに達する無数の孔部14が形成されている。
【0148】
また、周壁部12の上端には、開口形状の挿入部13が設けられている。この挿入部13は、中足部R2と後足部R3とに跨がって設けられている。
【0149】
なお、当該シェル10は、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するシェル10と同様の構成のものであり、その材質や基礎構造部16の構成等についても、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するシェル10と同様である。また、当該シェル10は、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するシェル10と同様に、たとえば射出成形や注型成形、あるいは三次元積層造形装置を用いた造形によって製作することができ、特に、三次元積層造形装置を用いた造形によって好適に製作できる。
【0150】
図29に示すように、シェル10には、内部空間SPが形成されている。この内部空間SPは、底壁部11の内面11aと周壁部12の内面12aとによって規定されており、上述した挿入部13に通じている。内部空間SPは、前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がって位置している。当該内部空間SPには、ソール本体20およびアッパー本体30が収容されることでこれらが配置される空間と、着用者の足が挿入される空間である挿入空間SP3とが含まれる。
【0151】
図27ないし
図30に示すように、ソール本体20は、着用者の足の足裏を支持するものであり、弾性変形が可能な偏平な部材からなる(
図29参照)。ソール本体20は、シェル10の内部空間SPに収容されている。
【0152】
ソール本体20は、一対の主面である上面21および下面22と、これらを接続する側面23とを有している。このうちのソール本体20の下面22は、シェル10の底壁部11の内面11aに対向しており、ソール本体20の側面23は、シェル10の周壁部12の内面12aのうちの下端側の部分に対向している。これにより、ソール本体20は、シェル10の底壁部11の内面11aと、シェル10の周壁部12の内面12aのうちの下端側の部分とを覆っている。
【0153】
なお、当該ソール本体20は、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するソール本体20と同様の構成のものであり、その材質等についても、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するソール本体20と同様である。
【0154】
アッパー本体30は、靴1Bのうちの着用者の足に接触する部分を構成することで着用者の足を保持するものであり、柔軟に変形が可能な袋状の部材からなる。アッパー本体30は、シェル10の内部空間SPに収容されている。アッパー本体30は、底部31と、当該底部31の周縁から上方に向けて連続して延びるように立設された壁部32とを含んでいる。
【0155】
底部31は、一対の主面である内面31aおよび外面31bを有しており、壁部32は、一対の主面である内面32aおよび外面32bを有している。このうちのアッパー本体30の底部31の外面31bは、ソール本体20の上面21に対向しており、アッパー本体30の壁部32の外面32bは、シェル10の周壁部12の内面12aのうちの下端側を除く部分に対向している。これにより、底部31は、ソール本体20の上面21を覆っており、壁部32は、シェル10の周壁部12の内面12aのうちの下端側を除く部分を覆っている。
【0156】
なお、当該アッパー本体30は、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するアッパー本体30と同様の構成のものであり、その材質等についても、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するアッパー本体30と同様である。
【0157】
図29に示すように、シェル10の上述した内部空間SPは、下部側空間SP1と上部側空間SP2とに区画される。下部側空間SP1は、靴1Bの上下方向の下側部分に位置しており、上部側空間SP2は、靴1Bの上下方向の上側部分に位置している。
【0158】
下部側空間SP1は、底壁部11と、当該底壁部11に隣接する部分の周壁部12(すなわち、上述した第1部分)とによって規定された空間であり、この下部側空間SP1には、ソール本体20の全体が配置されている。
【0159】
上部側空間SP2は、上記第1部分よりも上方に位置する部分の周壁部12(すなわち、上述した第2部分)によって規定された空間であり、この上部側空間SP2には、アッパー本体30の全体が配置されている。
【0160】
上述したように、ソール本体20は、シェル10の底壁部11の内面11aおよびシェル10の周壁部12の内面12aの下端側の部分を覆うように内部空間SPに収容されており、さらにアッパー本体30は、ソール本体20の上面21およびシェル10の周壁部12の内面12aのうちの下端側の部分を除く部分を覆うように内部空間SPに収容されているため、シェル10の内部空間SPには、アッパー本体30によって規定される挿入空間SP3が形成されることになる。
【0161】
この挿入空間SP3は、上述したように着用時において着用者の足が挿入される空間であり、より具体的には、挿入空間SP3は、アッパー本体30の底部31の内面31aと壁部32の内面32aとによって規定されている。なお、挿入空間SP3は、上述した内部空間SPのうちの上部側空間SP2に含まれる。
【0162】
本実施の形態に係る靴1Bにあっては、アッパー本体30が、着用者の足の足首よりも末端側の部位をすべて覆う形状を有しているとともに、上部側空間SP2を形成する部分のシェル10が、着用者の足が挿入される履き口33に対応する部分以外の部分において、着用者の足の足裏を除く部位を全面的に覆っている。
【0163】
したがって、着用者が靴1Bを着用した状態においては、着用者の足が、柔軟に変形が可能なアッパー本体30の底部31の内面31aおよび壁部32の内面32aに接触することになる。そのため、シェル10が着用者の足に直接的に接触することはなく、快適な履き心地が確保できることになる。
【0164】
ただし、アッパー本体30は、必ずしも全面的に着用者の足に接触する必要はなく、履き心地が損なわれない範囲において、このアッパー本体30に切り欠き形状または開口形状の欠除部が設けられてもよい。
【0165】
本実施の形態に係る靴1Bにおいては、上述したように、シェル10によって当該靴1Bの最外殻が構成されており、特に、シェル10の底壁部11によってソール本体20の下面22が覆われることにより、靴1Bの上下方向の下方側に位置する最外面が、シェル10の底壁部11によって規定されている。これにより、当該靴1Bにおいては、その接地面がシェル10の底壁部11の外面11bによって構成されることになる。
【0166】
そのため、このように構成することにより、ソール本体20によって接地面が構成されることがないため、ソール本体20の材料選択の余地が格段に広がることになり、一般的なソールに要求される機能のうち、履き心地の改善やクッション性の確保といった点に照らして、ソール本体20の最適な材料選択を行なうことが可能になる。一方で、接地面に要求される耐摩耗性やグリップ性といった性能については、これをシェル10の材料選択またはこれに加えて形状選択等によって確保することができる。
【0167】
また、本実施の形態に係る靴1Bにおいては、上述したように、シェル10によって当該靴1Bの最外殻が構成されており、当該シェル10には、接地面を規定する底壁部11と、当該底壁部11の周縁から立設されるとともに着用者の足の足甲を覆う部分を含む周壁部12とが含まれている。このように構成することにより、靴の最外殻がソールおよびアッパーによって構成された従来の靴(すなわち、本実施の形態に係る靴1Bのシェル10のような部材を備えていない靴)に比べて、高性能化する利点もある。
【0168】
すなわち、上述した従来の靴にあっては、通常、着用者の足の足甲を覆う部分を含むアッパーが織地や編地、不織布等のみによって構成されており、また、当該アッパーがソールに接着等によって接合された構成であるため、蹴り出し時に当該足甲を覆う部分のアッパーに印加された荷重が当該アッパーの側壁を介してソールに伝わるまでの伝達時間に遅れが生じ易く、特に走行時等において足に対する靴の追従性が劣ることになってしまう。
【0169】
しかしながら、本実施の形態に係る靴1Bにあっては、着用者の足の足甲を覆う部分を含むシェル10の周壁部12が、上述した実施の形態1の場合と同様に樹脂製やゴム製の部材にて構成されており、しかもこれが織地や編地、不織布等に比較して硬質の材料にて構成されているため、また、足甲を覆う部分を含む周壁部12と接地面を規定する部分を含む底壁部11とが単一の部材からなるシェル10によって一体的に構成されているため、蹴り出し時における荷重伝達が速くなり、特に走行時等において足に対する靴の追従性が優れたものとなる。なお、このシェル10による荷重伝達の方向を
図29中において模式的に黒色矢印にて表わしており、これによってシェル10の底壁部11に加えられる荷重の方向を
図29中において模式的に白抜き矢印にて表わしている。
【0170】
ここで、本実施の形態に係る靴1Bにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40としての縫合部41が設けられている。縫合部41は、着用者の足が挿入される履き口33に隣接する部分のシェル10に設けられており、より詳細には、シェル10の周壁部12の上端の近傍において履き口33を取り囲むように位置している。
【0171】
当該縫合部41は、重ね合わされたシェル10とアッパー本体30とを縫製用の糸が交互に貫くように縫い付けられることで形成されたものであり、これにより履き口33に隣接する部分において、アッパー本体30がシェル10に対して移動不能に固定されることになる。
【0172】
このように構成することにより、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着せずともに、アッパー本体30をシェル10に対して固定することが可能になり、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれしてしまうことが未然に防止できることになる。そのため、フィット性が低下することが抑制可能になり、靴としての機能が損なわれることが防止できることになる。
【0173】
また、当該構成を採用した場合には、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着した場合に比べ、製造に要するタクトが大幅に短縮化でき、さらには製造プロセスも簡便化することになる。したがって、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0174】
なお、本実施の形態に係る靴1Bにあっては、上述のようにアッパー本体30が袋状の形状を有しているため、上記のように、着用者の足が挿入される履き口33に隣接する部分のシェル10に縫合部41を設けることにより、他の部分においてシェル10とアッパー本体30とを固定したり、当該部分においてさらに他の手段を用いて付加的にこれらを固定したりすることは基本的に必要ないことになる。しかしながら、上記の部分以外の部分においてさらにシェル10とアッパー本体30とを縫合してもよいし、部分的であれば、上記の部分あるいはそれ以外の部分においてシェル10とアッパー本体30とを接着剤によって接合してもよい。さらには、上記の部分あるいはそれ以外の部分において、溶着等の他の手段を用いてこれらシェル10とアッパー本体30とを固定してもよい。
【0175】
図31は、実施の形態3に係る靴の製造方法を示すフロー図である。また、
図32ないし
図36は、
図31に示す製造フローにおける一部の工程を示す模式図である。次に、これら
図31ないし
図36を参照して、本実施の形態に係る靴の製造方法について説明する。なお、
図32ないし
図36においては、後述する加熱による成形が行なわれる前後のアッパー本体を区別するために、成形前のアッパー本体に参照符号30’を付すとともに、成形後のアッパー本体に参照符号30を付している。
【0176】
図31に示すように、本実施の形態に係る靴1Bを製造するに際しては、まず、ステップST301において、シェル10が準備される。シェル10は、どのような方法によって製作されてもよいが、好ましくは、上述した三次元積層造形装置を用いた造形によって製作される。ここで、三次元積層造形装置を用いた造形によってシェル10が製作される場合には、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて、製作すべきシェル10の形状が決定されることがさらに好ましい。このようにすれば、製造される靴1Bの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。
【0177】
次に、ステップST302において、アッパー本体30’が準備される。アッパー本体30’は、どのような方法によって製作されてもよいが、たとえば熱収縮性を有する合成繊維の織地や編地、不織布等からなるシートが丸められつつこれが縫合されることにより、履き口33に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体30’が容易に製作できることになる。
【0178】
次に、ステップST303において、ソール本体20が準備される。ソール本体20は、どのような方法によって製作されてもよいが、たとえば射出成形やプレス成形等によってこれを製作することができる。
【0179】
なお、シェル10、アッパー本体30’およびソール本体20は、これらがどの順で製作されてもよく、また同時並行的にこれらが製作されてもよい。さらには、サイズ毎にこれらを予め複数ストックしておき、必要に応じてこれらのうちから最適なサイズのものが選択されて使用されてもよい。
【0180】
次に、
図31および
図32に示すように、ステップST304において、シェル10にソール本体20が収容される。具体的には、
図32(A)に示すように、ソール本体20が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0181】
ここで、シェル10は、可撓性を有しているため、ソール本体20をシェル10に設けられた挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。これにより、ソール本体20の下面22および側面23が、シェル10の内面11a,12aに沿うように配置される。
【0182】
これにより、
図32(B)に示すように、ソール本体20がシェル10に収容された状態となる。
【0183】
次に、
図31および
図33に示すように、ステップST305において、シェル10にアッパー本体30’が収容される。具体的には、
図33(A)に示すように、アッパー本体30’が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0184】
ここで、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、これをシェル10の上端に設けられた開口形状の挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。挿入されたアッパー本体30’は、これがソール本体20の上面21およびシェル10の内面12aに沿うように配置される。また、アッパー本体30’の履き口33の近傍は、これがシェル10の挿入部13から外部に露出した状態とされる。
【0185】
これにより、
図33(B)に示すように、アッパー本体30’がシェル10に収容された状態になるとともに、ソール本体20が、シェル10の内部においてアッパー本体30’とシェル10とによって挟み込まれた状態となる。
【0186】
次に、
図31および
図34に示すように、ステップST306において、シェル10およびアッパー本体30’が部分的に固定される。具体的には、
図34に示すように、重ね合わされたシェル10およびアッパー本体30’のうち、履き口33を取り囲むように当該履き口33に隣接する部分においてこれらを固定する固定部40としての縫合部41が設けられることにより、シェル10およびアッパー本体30’の部分的な固定が行なわれる。
【0187】
次に、
図31および
図35に示すように、ステップST307において、ラスト100が挿入される。具体的には、
図35(A)に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30’の内部に、ラスト100が挿入される。
【0188】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30’に設けられた履き口33を介してアッパー本体30’の内部に挿入することができる。これにより、アッパー本体30’の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿うように配置される。
【0189】
これにより、
図35(B)に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30’の内部に、ラスト100が挿入された状態となる。
【0190】
このとき、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、製造される靴1Bの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。なお、この他にも、ラスト100としては、着用者の足のサイズに応じた標準的な形状のものを使用してもよい。
【0191】
次に、
図31に示すように、ステップST308において、アッパー本体30’の成形が行なわれる。具体的には、シェル10にソール本体20およびアッパー本体30’が収容されるとともに、シェル10およびアッパー本体30’が部分的に固定され、さらにシェル10に収容されたアッパー本体30’にラスト100が挿入された状態(すなわち、
図35(B)に示す状態)において、アッパー本体30’が所定温度に加熱されることにより、アッパー本体30’の成形が行なわれる。
【0192】
このとき、上述したように、アッパー本体30’が熱収縮性を有しているため、この加熱により、アッパー本体30’が全体的に熱収縮する。この熱収縮による変形に伴い、成形後のアッパー本体30の外面31b,32bは、ソール本体20の上面21およびシェル10の内面12aに沿った外面形状を有することになるとともに、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿った内面形状を有することになる。
【0193】
ここで、上述したように、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、着用者の足の外形形状に概ね合致したものとなるため、製造される靴1Bの着用者の足へのフィット性が特に高められることになる。
【0194】
次に、
図31および
図36に示すように、ステップST309において、ラスト100が取り出される。具体的には、
図36に示すように、シェル10の内部空間SPに収容されたアッパー本体30の内部から、ラスト100が取り出される。
【0195】
ここで、シェル10は、可撓性を有しており、また、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の外部に取り出すことができる。
【0196】
以上の手順を経ることにより、シェル10、ソール本体20およびアッパー本体30の相互の組付けが完了し、これにより上述した本実施の形態に係る靴1Bの製造が完了する。
【0197】
このように、本実施の形態に係る靴の製造方法に従えば、予め個別に製作されたシェル10とソール本体20とアッパー本体30’とを相互に組付けるという非常に簡便な作業にて靴1Bの製造が行なえることになる。したがって、本実施の形態に係る靴1Bとすることにより、上述したように、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれすることでそのフィット性や靴としての機能が損なわれることがないようにすることが可能になるばかりでなく、さらに当該靴1Bを容易にかつ短時間に製造することが可能になる。
【0198】
なお、上述した本実施の形態に係る靴の製造方法においては、ソール本体20とアッパー本体30とを特段の固定手段を用いて固定しない場合を例示して説明を行なったが、必要に応じてこれらを固定手段を用いて固定することとしてもよい。当該固定には、たとえば縫製や接着、溶着、クリップ留め、あるいは、ソール本体20およびアッパー本体30に設けられた係合部同士による係合等が利用できる。
【0199】
また、上述したアッパー本体30を成形する工程においては、成形後のアッパー本体30がシェル10およびソール本体20に沿った外面形状、ならびに、ラスト100に沿った内面形状のうちの少なくともいずれかを有することとなるように、その成形が行なわれればよく、必ずしも上述したように、成形後のアッパー本体30がシェル10およびソール本体20に沿った外面形状、ならびに、ラスト100の表面に沿った内面形状の双方を有することとなるように、その成形が行なわれる必要はない。
【0200】
(第3および第4変形例)
上述した本発明の実施の形態3に係る靴の製造方法は、アッパー本体を成形する工程が、シェル10の内部にソール本体20およびアッパー本体30’が収容された状態でアッパー本体30’を加熱することで行なわれるものであるため、加熱によってソール本体20に許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合には、当該製造方法をそのまま適用することができない。以下において説明する第3および第4変形例に係る靴の製造方法は、上述した実施の形態3に係る靴の製造方法を基本的に採用しつつも、シェルにソール本体を収容する工程が、アッパー本体を成形する工程の後に実施されることにより、このような問題を解決するものである。
【0201】
図37は、第3変形例に係る靴の製造方法を説明するための、
図31に示す製造フローにおける一部の工程の他の例を示す模式図であり、
図38は、第4変形例に係る靴の製造方法を説明するための、
図31に示す製造フローにおける一部の工程のさらに他の例を示す模式図である。以下、これら
図37および
図38を参照して、第3および第4変形例に係る靴1B1,1B2およびその製造方法について説明する。
【0202】
第3および第4変形例に係る靴の製造方法にあっては、上述した実施の形態3に係る靴の製造方法とは異なり、シェルにソール本体を収容する工程(
図31に示すステップST304)が、アッパー本体を成形する工程(
図31に示すステップST308)の後(より厳密には、ラストを取り出す工程(
図31に示すステップST309)の後に実施される。
【0203】
ここで、第3変形例に係る靴の製造方法においては、
図37に示すように、アッパー本体を準備する工程(
図31に示すステップST302)において、履き口33に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体30’の底部31に、左右方向に沿って延びるスリット状の切り込み31dが形成される。
【0204】
そして、ラストを取り出す工程(
図31に示すステップST309)の後に、ソール本体20が、アッパー本体30の壁部32の上端に設けられた履き口33およびアッパー本体30の底部31に設けられた当該切り込み31dを介して、シェル10の内部であってかつアッパー本体30の下方に挿入される。
【0205】
一方、第4変形例に係る靴の製造方法においては、
図38に示すように、シェルを準備する工程(
図31に示すステップST301)において、シェル10の前後方向の後端に位置する部分の周壁部12に予め開口形状の付加挿入部12cが設けられる。
【0206】
そして、ラストを取り出す工程(
図31に示すステップST309)の後に、ソール本体20が、シェル10の周壁部12に設けられた付加挿入部12cを介して、シェル10の内部であってかつアッパー本体30の下方に挿入される。
【0207】
このようにすれば、シェルにソール本体を収容する工程がアッパー本体を成形する工程の後に実施されることになるため、ソール本体が加熱されることがなくなる。したがって、これら第3および第4変形例に係る靴の製造方法は、ソール本体20に加熱により許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合に、特に好適なものとなる。
【0208】
なお、これら第3および第4変形例に係る靴の製造方法においては、ソール本体20がシェル10の内部空間SPに収容されていない状態でアッパー本体30’の成形が行なわれるものであるため、上述した第2変形例に係る靴の製造方法のように、アッパー本体30’の成形の際には、シェル10の内部空間SPのうちの当該ソール本体20が収容される部分に、ソール本体20の外形に対応した外形を有する型部材200を挿入しておくことが好ましい。ただし、上述した第2変形例に係る靴の製造方法のように、型部材200とラスト100とを必ずしも別部材にする必要はなく、これらが一体化されたものを用いることとしてもよい。
【0209】
(実施の形態4)
図39は、実施の形態4に係る靴の製造方法を示すフロー図である。また、
図40ないし
図44は、
図39に示す製造フローにおける一部の工程を示す模式図である。以下、これら
図39ないし
図44を参照して、本実施の形態に係る靴の製造方法について説明する。なお、
図40ないし
図44においては、後述する加熱による成形が行なわれる前後のアッパー本体を区別するために、成形前のアッパー本体に参照符号30’を付すとともに、成形後のアッパー本体に参照符号30を付している。
【0210】
本実施の形態に係る靴の製造方法は、上述した実施の形態3に係る靴の製造方法とは、一部の工程の順序が異なるものではあるが、当該製造方法に従って製造される靴も、上述した実施の形態3に係る靴1Bと実質的に同様のものとなる。上述した実施の形態3に係る靴の製造方法は、アッパー本体を成形する工程が、シェル10の内部にソール本体20およびアッパー本体30’が収容された状態でアッパー本体30’を加熱することで行なわれるものであるが、本実施の形態に係る靴の製造方法では、この工程が、シェルにアッパー本体を収容する工程の前に実施される。そのため、本実施の形態に係る靴の製造方法は、加熱によってシェル10および/またはソール本体20に許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合に、特に好適なものである。
【0211】
図39に示すように、本実施の形態に係る靴の製造方法にあっては、まず、ステップST401~ST403において、シェル10、アッパー本体30’およびソール本体20が準備される。これらステップST401~ST403の工程は、上述した実施の形態3に係る靴の製造方法のステップST301~ST303と同様である。
【0212】
次に、
図39および
図40に示すように、ステップST404において、ラスト100が挿入される。具体的には、
図40(A)に示すように、アッパー本体30’の内部にラスト100が挿入される。
【0213】
ここで、アッパー本体30’は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30’に設けられた履き口33を介してアッパー本体30’の内部に挿入することができる。これにより、アッパー本体30’の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿うように配置される。
【0214】
このとき、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、製造される靴1Bの着用者の足へのフィット性がより高められることになる。なお、この他にも、ラスト100としては、着用者の足のサイズに応じた標準的な形状のものを使用してもよい。
【0215】
これにより、
図40(B)に示すように、アッパー本体30’の内部にラスト100が挿入された状態となる。
【0216】
次に、
図39に示すように、ステップST405において、アッパー本体30’の成形が行なわれる。具体的には、アッパー本体30’にラスト100が挿入された状態(すなわち、
図40(B)に示す状態)において、アッパー本体30’が所定温度に加熱されることにより、アッパー本体30’の成形が行なわれる。
【0217】
このとき、上述したように、アッパー本体30’が熱収縮性を有しているため、この加熱により、アッパー本体30’が全体的に熱収縮する。この熱収縮による変形に伴い、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、ラスト100の表面に沿った内面形状を有することになる。
【0218】
ここで、上述したように、ラスト100として、着用者の足を計測することで得られる足の形状データに基づいて製作されたものが使用されれば、成形後のアッパー本体30の内面31a,32aは、着用者の足の外形形状に概ね合致したものとなるため、製造される靴1Bの着用者の足へのフィット性が特に高められることになる。
【0219】
次に、
図39および
図41に示すように、ステップST406において、ラスト100が取り出される。具体的には、
図41に示すように、アッパー本体30の内部からラスト100が取り出される。
【0220】
ここで、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、ラスト100をアッパー本体30に設けられた履き口33を介してアッパー本体30の外部に取り出すことができる。
【0221】
次に、
図39および
図42に示すように、ステップST407において、シェル10にソール本体20が収容される。具体的には、
図42(A)に示すように、ソール本体20が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0222】
ここで、シェル10は、可撓性を有しているため、ソール本体20をシェル10に設けられた挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。これにより、ソール本体20の下面22および側面23が、シェル10の内面11a,12aに沿うように配置される。
【0223】
これにより、
図42(B)に示すように、ソール本体20がシェル10に収容された状態となる。
【0224】
次に、
図39および
図43に示すように、ステップST408において、シェル10にアッパー本体30が収容される。具体的には、
図43(A)に示すように、アッパー本体30が、シェル10の内部空間SPに挿入される。
【0225】
ここで、アッパー本体30は、柔軟に変形が可能であるため、これをシェル10の上端に設けられた開口形状の挿入部13を介してシェル10の内部空間SPに挿入することができる。挿入されたアッパー本体30は、これがソール本体20の上面21およびシェル10の内面12aに沿うように配置される。また、アッパー本体30の履き口33の近傍は、これがシェル10の挿入部13から外部に露出した状態とされる。
【0226】
これにより、
図43(B)に示すように、アッパー本体30がシェル10に収容された状態になるとともに、ソール本体20が、シェル10の内部においてアッパー本体30とシェル10とによって挟み込まれた状態となる。
【0227】
次に、
図39および
図44に示すように、ステップST409において、シェル10およびアッパー本体30が部分的に固定される。具体的には、
図44に示すように、重ね合わされたシェル10およびアッパー本体30のうち、履き口33を取り囲むように当該履き口33に隣接する部分においてこれらを固定する固定部40としての縫合部41が設けられることにより、シェル10およびアッパー本体30の部分的な固定が行なわれる。
【0228】
以上の手順を経ることにより、シェル10、ソール本体20およびアッパー本体30の相互の組付けが完了し、これにより上述した実施の形態3に係る靴1Bと実質的に同様の靴の製造が完了する。
【0229】
このように、本実施の形態に係る靴の製造方法に従えば、予め個別に製作されたシェル10とソール本体20とアッパー本体30’とを相互に組付けるという非常に簡便な作業にて靴の製造が行なえることになる。したがって、本実施の形態に係る靴の製造方法は、上述した実施の形態3に係る靴の製造方法とすることで得られる効果とほぼ同様の効果が得られるものであり、さらに上述したように、シェル10および/またはソール本体20に加熱により許容できない変形や変質が生じるおそれがある場合に好適なものとなる。
【0230】
なお、上述した本実施の形態に係る靴の製造方法においては、ソール本体20とアッパー本体30とを特段の固定手段を用いて固定しない場合を例示して説明を行なったが、必要に応じてこれらを固定手段を用いて固定することとしてもよい。当該固定には、たとえば縫製や接着、溶着、クリップ留め、あるいは、ソール本体20およびアッパー本体30に設けられた係合部同士による係合等が利用できる。
【0231】
(実施の形態5)
図45は、実施の形態5に係る靴の概略斜視図である。以下、この
図45を参照して、本実施の形態に係る靴1Cについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Cは、上述した実施の形態1に係る靴1Aと比較した場合に、主として固定部40の構成が異なるものである。なお、
図45においては、理解を容易とするために、後述する固定部40の一部について、これを固定していない状態で表わしている。
【0232】
図45に示すように、本実施の形態に係る靴1Cにおいては、シェル10の周壁部12の上端に設けられた開口形状の挿入部13が、前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がるように大きく形成されている。より詳細には、周壁部12は、着用者の足の足趾の先端に対応する部分と、着用者の足の足甲の内足側および外足側に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足裏側に対応する部分とを主として覆うように構成されており、着用者の足の足趾の根元に対応する部分と、着用者の足の足甲の足幅方向の中央部に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足首側に対応する部分とは、概ね周壁部12によって覆われていない。
【0233】
これにより、アッパー本体30の壁部32は、着用者の足の足趾の根元に対応する部分と、着用者の足の足甲の足幅方向の中央部に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足首側に対応する部分とにおいて、外部に向けて露出している。
【0234】
また、本実施の形態に係る靴1Cにあっては、シェル10が、基礎構造部16としてのプレート状部材16bにて構成されており、これに伴い、シェル10には、実施の形態1に係る靴1Aが具備する如くの無数の孔部14(
図1等参照)は形成されていない。
【0235】
ここで、本実施の形態に係る靴1Cにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、シェル10に設けられた係合部17と、アッパー本体30に設けられた係合用孔部34とが用いられている。
【0236】
シェル10に設けられた係合部17は、ワイヤ状の形状を有しており、図においては現われていないものの、シェル10の周壁部12の所定位置から延設されている。すなわち、係合部17の延在方向における一端は、周壁部12と一体である。一方、係合部17の延在方向における他端は、シェル10の周壁部12の他の所定位置に重ね合わされており、当該所定位置において溶着部18によって周壁部12に溶着されている。
【0237】
係合部17は、シェル10に複数設けられている。複数の係合部17の各々は、周壁部12のうちの内足側の部分から延設されており、各々が有する上述した他端が、いずれも周壁部12の外足側の部分に溶着されている。これにより、複数の係合部17は、着用者の足の足甲を覆う部分のアッパー本体30上を跨がるように延びている。
【0238】
アッパー本体30に設けられた係合用孔部34は、上述した複数の係合部17に重なるように、アッパー本体30のうちの着用者の足の足甲を覆う部分に複数形成されている。これら複数の係合用孔部34の各々は、アッパー本体30にスリット状の切り込みを設けることで形成されており、上述した複数の係合部17の各々の延在方向に沿って複数位置している。
【0239】
シェル10に設けられた複数の係合部17の各々は、これに重なる位置に設けられたアッパー本体30の複数の係合用孔部34に挿通されている。そのため、複数の係合部17の各々は、アッパー本体30の内面32a上と外面32b上とを互い違いに通るように配索されている。これにより、係合部17と係合用孔部34とが係合することになり、これに伴って、シェル10とアッパー本体30とが部分的に固定されることになる。
【0240】
なお、このような固定構造は、係合部17の上述した他端を、対応する複数の係合用孔部34に図中に示す矢印DR1方向に沿って順次挿通させ、その後に当該他端を周壁部12に溶着することで実現することができる。なお、この溶着に代えて、係合部17の上記他端を接着、縫合、係止部材(たとえば留め金等)による係止等を行なうことによって周壁部12に固定することとしてもよい。
【0241】
このように、本実施の形態に係る靴1Cとした場合にも、上述した実施の形態1に係る靴1Aの場合と同様に、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着せずともに、アッパー本体30をシェル10に対して固定することが可能になり、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれしてしまうことが未然に防止できることになる。そのため、フィット性が低下することが抑制可能になり、靴としての機能が損なわれることが防止できることになる。
【0242】
また、当該構成を採用した場合には、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着した場合に比べ、製造に要するタクトが大幅に短縮化でき、さらには製造プロセスも簡便化することになる。したがって、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0243】
上述した如くの係合部17および係合用孔部34による固定は、上述した実施の形態1ないし4に係る靴の製造方法において説明したシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程において、シェル10およびアッパー本体30(またはアッパー本体30’)を縫合することによって固定する作業に代えて実施することができる。
【0244】
ここで、上述したように、アッパー本体30の内面32aは、着用者の足に接触する部分である。そのため、上述したように、係合部17をアッパー本体30の内面32a上と外面32b上とを互い違いに通るように配索した場合には、係合部17が部分的に着用者の足に接触することになる。シェル10が十分に軟質である場合には、そのように構成することも可能ではあるが、当該部分のアッパー本体30を2層構造とし、その外層側にのみ係合用孔部34を設ければ、内層側によって係合部17が覆われることになるため、より好ましい構成とすることができる。
【0245】
(実施の形態6)
図46は、実施の形態6に係る靴の概略斜視図である。以下、この
図46を参照して、本実施の形態に係る靴1Dについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Dは、上述した実施の形態5に係る靴1Cと比較した場合に、固定部40の構成が異なるものである。
【0246】
図46に示すように、本実施の形態に係る靴1Dにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、シェル10に設けられた係合部17と、アッパー本体30に設けられた係合用孔部34とが用いられている。ここで、係合部17は、帯状の形状を有する部分を複数含む単一の部材(すなわち、シェル10とは別部材)にて構成されており、係合用孔部34は、アッパー本体30に設けられた一対の開口形状の切り欠き部によって構成されている。
【0247】
係合部17の一端は、内足側に位置しており、係合部17の他端は、外足側に位置している。これにより、係合部17は、着用者の足の足甲を覆う部分のアッパー本体30上を跨がるように延びている。一方、一対の係合用孔部34は、上述した係合部17に重なるように、アッパー本体30のうちの着用者の足の足甲を覆う部分に形成されている。
【0248】
係合部17の上記一端は、図においては現われていないものの、シェル10の周壁部12の所定位置に重ね合わされており、当該所定位置において溶着部18によって周壁部12に溶着されている。また、係合部17の他端は、シェル10の周壁部12の所定位置に重ね合わされており、当該所定位置において溶着部18によって周壁部12に溶着されている。
【0249】
係合部17は、アッパー本体30の一対の係合用孔部34に挿通されている。そのため、係合部17は、アッパー本体30の内面32a上と外面32b上とを互い違いに通るように配索されている。これにより、係合部17と係合用孔部34とが係合することになり、これに伴って、シェル10とアッパー本体30とが部分的に固定されることになる。
【0250】
なお、このような固定構造は、係合部17を一対の係合用孔部34に順次挿通させ、その後に係合部の両端を周壁部12に溶着することで実現することができる。なお、この溶着に代えて、係合部17の上記両端を接着、縫合、係止部材(たとえば留め金等)による係止等を行なうことによって周壁部12に固定することとしてもよい。
【0251】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態5に係る靴1Cとした場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る靴1Dとすることにより、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。なお、アッパー本体30を2層構造とし、その外層側にのみ係合用孔部34を設ければ、内層側によって係合部17が覆われることになるため、係合部17が着用者の足に接触することがなくなる。
【0252】
上述した如くの係合部17および係合用孔部34による固定は、上述した実施の形態1ないし4に係る靴の製造方法において説明したシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程において、シェル10およびアッパー本体30(またはアッパー本体30’)を縫合することによって固定する作業に代えて実施することができる。
【0253】
(実施の形態7)
図47は、実施の形態7に係る靴の概略斜視図である。以下、この
図47を参照して、本実施の形態に係る靴1Eについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Eは、上述した実施の形態1に係る靴1Aと比較した場合に、主として固定部40の構成が異なるものである。なお、
図47においては、理解を容易とするために、後述する固定部40の一部について、これを固定していない状態で表わしている。
【0254】
図47に示すように、本実施の形態に係る靴
1Eにあっては、シェル10が、基礎構造部16としてのプレート状部材16bにて構成されており、これに伴い、シェル10には、実施の形態1に係る靴1Aが具備する如くの無数の孔部14(
図1等参照)は形成されていない。一方で、シェル10の所定位置には、後述する係合用孔部19が設けられている。
【0255】
本実施の形態に係る靴1Eにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、シェル10に設けられた係合用孔部19と、アッパー本体30に設けられた係合部35とが用いられている。
【0256】
アッパー本体30に設けられた係合部35は、帯状の形状を有しており、図においては現われていないものの、アッパー本体30の壁部32の所定位置から延設されている。すなわち、係合部35の延在方向における一端は、壁部32と一体である。一方、係合部35の延在方向における他端は、シェル10の周壁部12の所定位置に重ね合わされており、当該所定位置において縫合部42によって周壁部12に縫合されている。
【0257】
係合部35は、壁部32のうちの内足側の部分から延設されており、各々が有する上述した他端が、いずれも周壁部12の外足側の部分に縫合されている。これにより、複数の係合部35は、着用者の足の足甲を覆う部分のシェル10上を跨がるように延びている。
【0258】
シェル10に設けられた係合用孔部19は、上述した複数の係合部35に重なるように、シェル10のうちの着用者の足の足甲を覆う部分に複数形成されている。これら複数の係合用孔部19の各々は、シェル10にスリット状の切り込みを設けることで形成されており、上述した複数の係合部35の各々の延在方向に沿って複数位置している。
【0259】
アッパー本体30に設けられた複数の係合部35の各々は、これに重なる位置に設けられたシェル10の複数の係合用孔部19に挿通されている。そのため、複数の係合部35の各々は、シェル10の内面12a上と外面12b上とを互い違いに通るように配索されている。これにより、係合部35と係合用孔部19とが係合することになり、これに伴って、シェル10とアッパー本体30とが部分的に固定されることになる。
【0260】
なお、このような固定構造は、係合部35の上述した他端を、対応する複数の係合用孔部19に図中に示す矢印DR2方向に沿って順次挿通させ、その後に当該他端を周壁部12に縫合することで実現することができる。なお、この縫合に代えて、係合部35の上記他端を接着、溶着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等を行なうことによって周壁部12に固定することとしてもよい。
【0261】
このように、本実施の形態に係る靴1Eとした場合にも、上述した実施の形態1に係る靴1Aの場合と同様に、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着せずともに、アッパー本体30をシェル10に対して固定することが可能になり、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれしてしまうことが未然に防止できることになる。そのため、フィット性が低下することが抑制可能になり、靴としての機能が損なわれることが防止できることになる。
【0262】
また、当該構成を採用した場合には、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着した場合に比べ、製造に要するタクトが大幅に短縮化でき、さらには製造プロセスも簡便化することになる。したがって、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0263】
上述した如くの係合部35および係合用孔部19による固定は、上述した実施の形態1ないし4に係る靴の製造方法において説明したシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程において、シェル10およびアッパー本体30(またはアッパー本体30’)を縫合することによって固定する作業に代えて実施することができる。
【0264】
ここで、上述したように、アッパー本体30の内面32aは、着用者の足に接触する部分である。そのため、上述したように、係合部35をシェル10の内面12a上と外面12b上とを互い違いに通るように配索した場合には、アッパー本体30が部分的に着用者の足に接触せず、当該部分においてシェル10が着用者の足に接触することになる。シェル10が十分に軟質である場合には、そのように構成することも可能ではあるが、当該部分のアッパー本体30を2層構造とし、その外層側にのみ係合部35を設ければ、内層側によってシェル10の露出する部分の内面12aが覆われることになるため、より好ましい構成とすることができる。
【0265】
(実施の形態8)
図48は、実施の形態8に係る靴の概略斜視図であり、
図49は、
図48に示す靴の固定部の構成を示す模式図である。以下、これら
図48および
図49を参照して、本実施の形態に係る靴1Fについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Fは、上述した実施の形態7に係る靴1Eと比較した場合に、固定部40の構成が異なるものである。
【0266】
図48に示すように、本実施の形態に係る靴1Fにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、シェル10に設けられた係合用孔部19と、アッパー本体30に設けられた係合部35とが用いられている。ここで、係合部35は、着用者の足の足甲を覆う部分のアッパー本体30に複数設けられており、その各々は、一対の係合片35a,35bとそれらを縫合する縫合部35cとによって構成されている。また、係合用孔部19は、着用者の足の足甲を覆う部分のシェル10にスリット状に複数設けられている。
【0267】
図49(A)に示すように、一対の係合片35a,35bは、アッパー本体30に平面視H字状の切り込み35dを設けることで形成される。
図49(B)に示すように、一対の係合片35a,35bは、これが図中に示す矢印方向に沿って折り曲げられることによって拡開し、これによりアッパー本体30には、開口部35eが形成される。
【0268】
図49(C)に示すように、この開口部35eを閉塞するように、シェル10が配置される。このとき、シェル10に設けられた複数のスリット状の係合用孔部19のうちの一組が、一対の係合片35a,35bの根元部分に合致するように配置され、当該一対の係合片35a,35bが、それぞれ一組の係合用孔部19から引き出されるとともに、図中に示す矢印方向に向けて再び折り曲げられることにより、これら一対の係合片35a,35bが、元の状態に戻される。
【0269】
図49(D)に示すように、一対の係合片35a,35bの先端同士が突き合わされた状態とされ、これら先端同士が縫合部35cを設けることで縫合される。これにより、シェル10とアッパー本体30とが、編物構造様に編み込まれることになり、係合部35と係合用孔部19とが係合することでシェル10とアッパー本体30とが部分的に固定されることになる。
【0270】
なお、この縫合に代えて、一対の係合片35a,35bの先端同士を接着、溶着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等を行なうことによって接合することとしてもよい。
【0271】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態7に係る靴1Eとした場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る靴1Fとすることにより、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。なお、アッパー本体30を2層構造とし、その外層側にのみ係合部35を設ければ、内層側によってシェル10の露出する部分の内面12aが覆われることになるため、シェル10が着用者の足に接触することがなくなる。
【0272】
上述した如くの係合部35および係合用孔部19による固定は、上述した実施の形態1ないし4に係る靴の製造方法において説明したシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程において、シェル10およびアッパー本体30(またはアッパー本体30’)を縫合することによって固定する作業に代えて実施することができる。
【0273】
(実施の形態9)
図50は、実施の形態9に係る靴の概略斜視図である。以下、この
図50を参照して、本実施の形態に係る靴1Gについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Gは、上述した実施の形態1に係る靴1Aと比較した場合に、主として固定部40の構成が異なるものである。なお、
図50においては、理解を容易とするために、後述する固定部40の一部について、これを固定していない状態で表わしている。
【0274】
図50に示すように、本実施の形態に係る靴1Gにおいては、シェル10の周壁部12の上端に設けられた開口形状の挿入部13が、前足部R1、中足部R2および後足部R3に跨がるように大きく形成されている。より詳細には、周壁部12は、着用者の足の足趾の先端に対応する部分と、着用者の足の足甲の内足側および外足側に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足裏側に対応する部分とを主として覆うように構成されており、着用者の足の足趾の根元に対応する部分と、着用者の足の足甲の足幅方向の中央部に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足首側に対応する部分とは、概ね周壁部12によって覆われていない。
【0275】
これにより、アッパー本体30の壁部32は、着用者の足の足趾の根元に対応する部分と、着用者の足の足甲の足幅方向の中央部に対応する部分と、着用者の足の踵の周面のうちの足首側に対応する部分とにおいて、外部に向けて露出している。
【0276】
また、本実施の形態に係る靴1Gにあっては、シェル10が、基礎構造部16としてのプレート状部材16bにて構成されており、これに伴い、シェル10には、実施の形態1に係る靴1Aが具備する如くの無数の孔部14(
図1等参照)は形成されていない。
【0277】
ここで、本実施の形態に係る靴1Gにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、シェル10に設けられた係合用孔部19と、アッパー本体30に設けられた係合用孔部34と、係止具43とが用いられている。
【0278】
係止具43は、ワイヤ状の形状を有しており、本実施の形態においては、これが1本の紐によって構成されている。一方、シェル10に設けられた係合用孔部19は、開口形状の切り欠き部によって構成されており、周壁部12に複数設けられている。また、アッパー本体30に設けられた係合用孔部34は、開口形状の切り欠き部によって構成されており、壁部32に点在するように複数設けられている。
【0279】
係止具43は、図には現われていないが、その一端および他端がシェル10の所定位置またはアッパー本体30の所定位置にたとえば縫製や溶着、接着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等によって固定されている。係止具43の上述した一端と他端との間の部分は、シェル10に設けられた係合用孔部19およびアッパー本体30に設けられた係合用孔部34に所定の順序で挿通されている。これにより、係止具43と係合用孔部19,34とが係合することになり、これに伴って、シェル10とアッパー本体30とが部分的に固定されることになる。ここで、係止具43は、着用者の足の足甲を覆う部分のアッパー本体30ならびに着用者の足の踵の周面を覆う部分のアッパー本体30に沿って位置している。
【0280】
なお、このような固定構造は、係止具43を、対応する複数の係合用孔部19,34に図中に示す矢印DR3方向に沿って順次挿通させ、その後に係止具43の一端および他端を周壁部12または壁部32に溶着することで実現することができる。
【0281】
このように、本実施の形態に係る靴1Gとした場合にも、上述した実施の形態1に係る靴1Aの場合と同様に、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着せずともに、アッパー本体30をシェル10に対して固定することが可能になり、アッパー本体30がシェル10に対して位置ずれしてしまうことが未然に防止できることになる。そのため、フィット性が低下することが抑制可能になり、靴としての機能が損なわれることが防止できることになる。
【0282】
また、当該構成を採用した場合には、シェル10とアッパー本体30とを全面的に接着剤によって接着した場合に比べ、製造に要するタクトが大幅に短縮化でき、さらには製造プロセスも簡便化することになる。したがって、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0283】
上述した如くの係止具43および係合用孔部19,34による固定は、上述した実施の形態1ないし4に係る靴の製造方法において説明したシェルおよびアッパー本体を部分的に固定する工程において、シェル10およびアッパー本体30(またはアッパー本体30’)を縫合することによって固定する作業に代えて実施することができる。
【0284】
ここで、上述したように、アッパー本体30の内面32aは、着用者の足に接触する部分である。そのため、係止具43がアッパー本体30の内面32a側を通るように配索した場合には、係止具43が部分的に着用者の足に接触することになる。係止具43が十分に軟質である場合には、そのように構成することも可能ではあるが、当該部分のアッパー本体30を2層構造とし、その外層側にのみ係合用孔部34を設ければ、内層側によって係止具43が覆われることになるため、より好ましい構成とすることができる。
【0285】
(実施の形態10)
図51は、実施の形態10に係る靴の概略斜視図である。以下、この
図51を参照して、本実施の形態に係る靴1Hについて説明する。ここで、本実施の形態に係る靴1Hは、上述した実施の形態9に係る靴1Gと比較した場合に、固定部40の構成が異なるものである。
【0286】
図51に示すように、本実施の形態に係る靴1Hにあっては、シェル10とアッパー本体30とを部分的に固定する固定部40として、係止具43と、シェル10に設けられた係合用孔部19と、アッパー本体30と係止具43とを縫合する縫合部43aとが用いられている。ここで、係止具43は、帯状の形状を有しており、係合用孔部19は、シェル10の内足側の部分および外足側の部分にそれぞれ複数設けられた開口形状の切り欠き部によって構成されている。
【0287】
係止具43の一端は、図には現われていないが、シェル10の内足側の部分の所定位置にたとえば縫製や溶着、接着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等によって固定されている。係止具43の他端は、図には現われていないが、シェル10の内足側の部分の所定位置にたとえば縫製や溶着、接着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等によって固定されている。
【0288】
ここで、係止具43は、シェル10の内足側の部分および外足側の部分に設けられた係合用孔部19に交互に挿通されている。これにより、係止具43は、着用者の足の足甲を覆う部分のアッパー本体30の外面32bに沿って蛇行状に位置している。
【0289】
また、係止具43の所定位置は、アッパー本体30に縫合部43aによって縫合されている。なお、この縫合に代えて、係止具43の所定位置を接着、溶着、係止部材(たとえば留め金等)による係止等を行なうことによってアッパー本体30に接合することとしてもよい。
【0290】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態9に係る靴1Gとした場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る靴1Hとすることにより、フィット性や靴としての機能が損なわれることがない靴を、比較的容易にかつ短時間のうちに製造することが可能になる。
【0291】
(実施の形態11)
図52は、実施の形態11に係る靴が具備するシェルの一部破断斜視図である。以下、この
図52を参照して、本実施の形態に係る靴1Iについて説明する。なお、本実施の形態に係る靴1Iは、
図52において示すシェル10を、上述した実施の形態1に係る靴1Aが具備するシェル10に代えて具備するものであり、その他の構成については、上述した実施の形態1と同様である。
【0292】
図52に示すように、本実施の形態に係る靴1Iが具備するシェル10は、上述した実施の形態1におけるシェル10と同様に、底壁部11と周壁部12とを備えており、周壁部12の上端には、開口形状の挿入部13を有している。シェル10の底壁部11および周壁部12は、基礎構造部16としての網目状部材16aにて構成されており、これに伴い、これら部分のシェル10には、無数の孔部14が形成されている。
【0293】
シェル10にあっては、前足部R1に対応する部分の底壁部11の略中央部と、後足部R3に対応する部分の底壁部11の前方寄りの略中央部に、突起部11cが設けられている。この突起部11cは、内部空間SP側に向けて底壁部11の内面11aから突出するように設けられている。
【0294】
突起部11cは、シェル10にソール本体20を組付ける際のガイドとなるとともに、組付け後において、シェル10に対してソール本体20が位置ずれを起こさないようにするためのものであり、ソール本体20には、当該突起部11cに対応した凹部(不図示)が設けられる。
【0295】
このように、本実施の形態に係る靴1Iとすることにより、上述した実施の形態1において説明した効果に加え、製造時における組付作業が容易化する効果ならびに組付け後のソール本体20の位置ずれを防止することができる効果とをさらに得ることが可能になる。このような構造を有するシェル10は、射出成形や注型成形によってもその製作が可能なものではあるが、特に、上述した三次元積層造形装置を用いた造形によって比較的容易にその製作が可能なものである。
【0296】
なお、突起部を設ける位置や数、大きさ、その形状等は、特にこれが制限されるものではなく、適宜変更が可能である。また、突起部は、必ずしもシェルの底壁部に設ける必要はなく、ソール本体に対向する部分の周壁部である、上述した第1部分にこれを設けることとしてもよい。
【0297】
(実施の形態等における開示内容の要約)
上述した実施の形態1ないし11およびそれらの変形例において開示した特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0298】
本開示のある形態に従った靴の製造方法は、内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、ソール本体を準備する工程と、上記シェルに上記アッパー本体を収容するとともに、上記シェルおよび上記アッパー本体を部分的に固定し、さらに上記シェルに収容された上記アッパー本体にラストを挿入した状態において、上記アッパー本体を成形する工程と、成形後の上記アッパー本体から上記ラストを取り出す工程と、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程とを備えている。
【0299】
上記本開示のある形態に従った靴の製造方法にあっては、上記アッパー本体を熱収縮性を有する部材にて構成してもよく、その場合には、上記アッパー本体を成形する工程において、上記アッパー本体を加熱することにより、上記アッパー本体が上記シェルに沿った外面形状および上記ラストに沿った内面形状のうちの少なくともいずれかを有することとなるように、上記アッパー本体を熱収縮させることが好ましい。
【0300】
上記本開示のある形態に従った靴の製造方法にあっては、上記アッパー本体を準備する工程において、上記アッパー本体として、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第1袋状部と、着用者の足の踏まず部に対応する部分を少なくとも有するとともに、履き口に対応する部分および履き口に対応する当該部分以外の部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第2袋状部とを含み、かつ、上記第1袋状部に上記第2袋状部が収容されてなるものを準備してもよい。その場合には、上記アッパー本体を成形する工程において、上記第1袋状部の内部であってかつ上記第2袋状部の内部に上記ラストを挿入するとともに、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程において上記ソール本体を挿入する空間となる、上記第1袋状部と上記第2袋状部との間の空間に、上記ソール本体の外形に対応した外形を有する型部材をさらに挿入した状態において、上記アッパー本体の成形が行なわれてもよい。さらにその場合には、上記ラストを取り出す工程において、成形後の上記アッパー本体から上記ラストに加えて上記型部材が取り出されてもよい。
【0301】
本開示の他の形態に従った靴の製造方法は、内部空間を有する可撓性のシェルを準備する工程と、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有するアッパー本体を準備する工程と、ソール本体を準備する工程と、上記アッパー本体にラストを挿入した状態において、上記アッパー本体を成形する工程と、成形後の上記アッパー本体から上記ラストを取り出す工程と、上記シェルに成形後の上記アッパー本体を収容するとともに、上記シェルおよび成形後の上記アッパー本体を部分的に固定する工程と、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程とを備えている。
【0302】
上記本開示の他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記アッパー本体を熱収縮性を有する部材にて構成してもよく、その場合には、上記アッパー本体を成形する工程において、上記アッパー本体を加熱することにより、上記アッパー本体が上記ラストに沿った内面形状を有することとなるように、上記アッパー本体を熱収縮させることが好ましい。
【0303】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルおよび上記アッパー本体を縫製によって接合することにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を行なってもよい。
【0304】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルを準備する工程において、上記シェルにワイヤ状または帯状の係合部を設けてもよく、また、上記アッパー本体を準備する工程において、上記アッパー本体に孔部を設けてもよく、その場合には、上記係合部を上記孔部に挿通することで当該孔部に係合させることにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を行なってもよい。
【0305】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルを準備する工程において、上記シェルに孔部を設けてもよく、また、上記アッパー本体を準備する工程において、上記アッパー本体にワイヤ状または帯状の係合部を設けてもよく、その場合には、上記係合部を上記孔部に挿通することで当該孔部に係合させることにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を行なってもよい。
【0306】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法は、さらに、上記シェルおよび上記アッパー本体を係止するための係止具を準備する工程を備えていてもよく、その場合には、上記係止具によって上記シェルおよび上記アッパー本体を係止することにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を行なってもよい。
【0307】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルを準備する工程において、着用者の足甲を覆う部分を少なくとも含むように上記シェルを製作してもよく、その場合には、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を、上記シェルの着用者の足甲を覆う部分において行なってもよい。
【0308】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルを準備する工程において、着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分を少なくとも含むように上記シェルを製作してもよく、その場合には、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定を、上記シェルの着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分において行なってもよい。
【0309】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程において、上記ソール本体を、上記内部空間のうちの上記アッパー本体の内側に配置してもよい。
【0310】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記アッパー本体を準備する工程において、着用者の足裏の踏まず部に対応する部分の厚みが着用者の足裏の足趾部に対応する部分の厚みよりも厚くなるように上記アッパー本体を製作してもよい。
【0311】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程において、上記ソール本体を、上記内部空間のうちの上記シェルの底壁部と上記アッパー本体の底部との間に配置してもよい。
【0312】
上記本開示のある形態および他の形態に従った靴の製造方法にあっては、上記シェルを準備する工程において、上記底壁部に上記内部空間に向けて突出する突出部を有するように上記シェルを製作してもよく、また、上記ソール本体を準備する工程において、下面に凹部を有するように上記ソール本体を製作してもよく、その場合には、上記シェルに上記ソール本体を挿入する工程において、上記突出部を上記凹部に挿入することにより、上記シェルと上記ソール本体との位置決めを行なってもよい。
【0313】
本開示のある形態に従った靴は、シェルと、アッパー本体と、ソール本体とを備えている。上記シェルは、着用者の足が挿入される内部空間が形成された可撓性の部材からなる。上記アッパー本体は、上記シェルに収容されるとともに、着用者の足が挿入される履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有している。上記ソール本体は、上記シェルに収容されるとともに、着用者の足の足裏を支持するものである。上記シェルは、底壁部と、当該底壁部の周縁から立設された周壁部とを含んでいる。上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記底壁部と、当該底壁部に隣接する部分の上記周壁部とにより、上記内部空間のうちの上記ソール本体が配置される空間である下部側空間が形成されるとともに、上記底壁部に隣接する部分よりも上方に位置する部分の上記周壁部により、上記内部空間のうちの着用者の足が挿入される空間である上部側空間の少なくとも一部が形成されている。上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルおよび上記アッパー本体が、部分的に固定されている。
【0314】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルおよび上記アッパー本体が縫製によって接合されることにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が行なわれていてもよい。
【0315】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルにワイヤ状または帯状の係合部が設けられるとともに、上記アッパー本体に孔部が設けられていてもよく、その場合には、上記係合部が上記孔部に挿通されて当該孔部に係合することにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が行なわれていてもよい。
【0316】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルに孔部が設けられるとともに、上記アッパー本体にワイヤ状または帯状の係合部が設けられていてもよく、その場合には、上記係合部が上記孔部に挿通されて当該孔部に係合することにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が行なわれていてもよい。
【0317】
上記本開示のある形態に従った靴は、さらに、上記シェルおよび上記アッパー本体を係止するための係止具を備えていてもよく、その場合には、上記係止具によって上記シェルおよび上記アッパー本体が係止されることにより、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が行なわれていてもよい。
【0318】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルが、着用者の足甲を覆う部分を少なくとも含んでいてもよく、その場合には、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が、上記シェルの着用者の足甲を覆う部分において行なわれていてもよい。
【0319】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記シェルが、着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分を少なくとも含んでいてもよく、その場合には、上記シェルおよび上記アッパー本体の部分的な固定が、上記シェルの着用者の足が挿入される履き口に隣接する部分において行なわれていてもよい。
【0320】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記ソール本体が、上記内部空間のうちの上記アッパー本体の内側に配置されていてもよい。
【0321】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記アッパー本体が、履き口に対応する部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第1袋状部と、上記第1袋状部に収容されるとともに、着用者の足の踏まず部に対応する部分を少なくとも有し、かつ、履き口に対応する部分および履き口に対応する当該部分以外の部分に開口が設けられた袋状の形状を有する第2袋状部とを含んでいてもよい。その場合には、上記ソール本体が、上記第1袋状部のうちの着用者の足の足裏に対応する部分と、上記第2袋状部のうちの着用者の足の踏まず部に対応する部分との間に配置されていることが好ましい。
【0322】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記ソール本体が、上記内部空間のうちの上記底壁部と上記アッパー本体の底部との間に配置されていてもよい。
【0323】
上記本開示のある形態に従った靴にあっては、上記底壁部に上記内部空間に向けて突出する突出部が設けられるとともに、上記ソール本体の下面に凹部が設けられていてもよく、その場合には、上記突出部が上記凹部に挿入されることにより、上記シェルと上記ソール本体との位置決めが行なわれていてもよい。
【0324】
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態1ないし11およびそれらの変形例においては、シェルとアッパー本体とを部分的に固定する固定部として、ワイヤ状また帯状の係合部とこれが挿通される係合用孔部との組み合わせ、係止具とこれが挿通される係合用孔部との組み合わせ、縫合等を例示して説明を行なったが、これらシェルとアッパー本体とを部分的に固定する固定方法は、これらに限定されるものではない。たとえば、シェルおよびアッパー本体の一方にフック状の係止部を設け、他方にこの係止部によって係止される被係止部を設けたりしてもよいし、シェルおよびアッパー本体の一方に凸状の部位を設け、他方にこの凸状の部位に嵌合する凹状の部位を設けたりしてもよいし、留め金様の部材によってこれらシェルおよびアッパー本体を直接的に固定してもよい。
【0325】
また、上述した実施の形態1ないし11およびそれらの変形例において例示した固定部としての縫合部や係合部、係合用孔部、係止具、溶着部、接着部等の具体的な形状や構成、大きさ、数、これらを設ける位置等は、特に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0326】
また、上述した実施の形態1ないし11およびそれらの変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、相互に組み合わせることが可能である。
【0327】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0328】
1A~1I,1A1,1A2,1B1,1B2 靴、10 シェル、11 底壁部、11a 内面、11b 外面、11c 突起部、12 周壁部、12a 内面、12b 外面、12c 付加挿入部、13 挿入部、14 孔部、16 基礎構造部、16a 網目状部材、16a1 ワイヤ要素、16b プレート状部材、17 係合部、18 溶着部、19 係合用孔部、20 ソール本体、21 上面、22 下面、23 側面、30 (成形後の)アッパー本体、30A (成形後の)第1袋状部、30B (成形後の)第2袋状部、30’ (成形前の)アッパー本体、30A’ (成形前の)第1袋状部、30B’ (成形前の)第2袋状部、31,31’,31” 底部、31a 内面、31b 外面、31c,31d 切り込み、32,32’,32” 壁部、32a 内面、32b 外面、33 履き口、34 係合用孔部、35 係合部、35a,35b 係合片、35c 縫合部、35d 切り込み、35e 開口部、36 前側開口、40 固定部、41,42 縫合部、43 係止具、43a 縫合部、100 ラスト、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、SP 内部空間、SP1 下部側空間、SP2 上部側空間、SP3 挿入空間。