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特許7568546道路通行情報提供装置、道路通行情報提供システムおよび道路通行情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】道路通行情報提供装置、道路通行情報提供システムおよび道路通行情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20241008BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/26 C
G08G1/0968
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021032719
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133816
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】廣井 康生
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-049172(JP,A)
【文献】特開2006-052973(JP,A)
【文献】特開2012-242894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行情報を収集する車両走行情報収集部と、
前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析部と、
前記走行情報解析部による解析結果を出力する出力部と、
を備える道路通行情報提供装置において、
前記車両走行情報収集部は、
前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得部と、
前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得部と、
を備え、
前記走行情報解析部は、
前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納部と、
前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較部と、
前記比較部において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定部と、
を備え、
前記走行情報解析部は、前記比較部で比較された前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報に基づいて前記基準走行データが更新された新たな基準走行データを生成し、
前記出力部は、前記走行情報解析部の判定結果に基づく前記新たな基準走行データ反映させて、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する道路通行情報提供装置。
【請求項2】
前記基準走行データは、前記車両の車速情報、加速度情報、位置情報、ブレーキ信号の情報、アクセル開度の情報からなる群より選択される複数種の情報を含み、
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される前記複数種の情報を含む基準走行データから選択される請求項1に記載の道路通行情報提供装置。
【請求項3】
車両の走行情報を収集する車両走行情報収集部を構成する車載器と、
前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析部を構成する運行管理サーバと、
を備える道路通行情報提供システムにおいて、
前記車載器は、
前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得部と、
前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を前記運行管理サーバに送信すると共に、前記運行管理サーバから解析結果を受信する通信部と、
前記解析結果を出力する出力部と、
を備え、
前記運行管理サーバは、
前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納部と、
前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較部と、
前記比較部において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を前記車載器に送信する送信部と、
を備え、
前記運行管理サーバは、前記比較部で比較された前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報に基づいて前記基準走行データが更新された新たな基準走行データを生成し、
前記車載器の出力部は、前記走行情報解析部の判定結果に基づく前記新たな基準走行データ反映させて、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する道路通行情報提供システム。
【請求項4】
前記基準走行データは、前記車両の車速情報、加速度情報、位置情報、ブレーキ信号の情報、アクセル開度の情報からなる群より選択される複数種の情報を含み、
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される前記複数種の情報を含む基準走行データから選択される請求項に記載の道路通行情報提供システム。
【請求項5】
道路通行情報提供装置または道路通行情報提供システムで実行され、
車両の走行情報を収集する車両走行情報収集過程と、
前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析過程と、
前記走行情報解析過程による解析結果を出力する解析結果出力過程と、
を有する道路通行情報提供プログラムにおいて、
前記車両走行情報収集過程は、
前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得過程と、
前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得過程と、
前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得過程と、
を有し、
前記走行情報解析過程は、
前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納過程と、
前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較過程と、
前記比較過程において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定過程と、
を有し、
前記走行情報解析過程は、前記比較過程で比較された前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報に基づいて前記基準走行データが更新された新たな基準走行データを生成し、
前記解析結果出力過程では、前記走行情報解析過程による判定結果に基づく前記新たな基準走行データ反映させて、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する道路通行情報提供プログラム。
【請求項6】
前記基準走行データは、前記車両の車速情報、加速度情報、位置情報、ブレーキ信号の情報、アクセル開度の情報からなる群より選択される複数種の情報を含み、
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される前記複数種の情報を含む基準走行データから選択される請求項に記載の道路通行情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路状況を反映した道路通行情報を生成して提供する道路通行情報提供装置、道路通行情報提供システムおよび道路通行情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の走行状態のデータを収集して運行管理等を行う技術は種々提案されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、車両走行時のナビゲーションなどに使用され、道路状況等のデータを含む地図情報は、地図情報を提供する業者等による定期的な実測により、データ収集や更新が行われることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-14988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、従来においては、例えば道路の路面状態の変化、道路の曲がり具合や形状などの道路環境の変化、道路付近の構造物の変化などを含む道路通行情報が、地図情報に反映されるまでにタイムラグを生じていた。
このように道路通行情報の提供が遅れると、車両の安全な走行に支障を生じるという不都合がある。
特に、大型車、商用車、特殊作業車などの場合には、道路の些細な変化であっても走行に大きな支障を来たす場合がある。
このような道路通行情報の提供の遅延により、車両の安全走行を保つことが難しくなり、車両の運行管理上も問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、道路環境の変化などの情報についてタイムラグを低減して反映させた道路通行情報を生成して提供することのできる道路通行情報提供装置、道路通行情報提供システムおよび道路通行情報提供プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る道路運行情報提供装置は、車両の走行情報を収集する車両走行情報収集部と、前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析部と、前記走行情報解析部による解析結果を出力する出力部と、を備える道路通行情報提供装置において、前記車両走行情報収集部は、前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得部と、前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得部と、を備え、前記走行情報解析部は、前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納部と、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較部と、前記比較部において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定部と、を備え、前記出力部は、前記走行情報解析部の判定結果を、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する。
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される複数種の基準走行データから選択されることが好ましい。
前記基準走行データは、前記車両の車速情報、加速度情報、位置情報、ブレーキ信号の情報、アクセル開度の情報を含むことが好ましい。
【0008】
本発明の他の態様に係る道路運行情報提供システムは、車両の走行情報を収集する車両走行情報収集部を構成する車載器と、前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析部を構成する運行管理サーバと、を備える道路通行情報提供システムにおいて、前記車載器は、前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得部と、前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を前記運行管理サーバに送信すると共に、前記運行管理サーバから解析結果を受信する通信部と、前記解析結果を出力する出力部と、を備え、前記運行管理サーバは、前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納部と、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較部と、前記比較部において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定部と、前記判定部の判定結果を前記車載器に送信する送信部と、を備え、前記車載器の出力部は、前記走行情報解析部の判定結果を、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する。
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される複数種の基準走行データから選択されることが好ましい。
【0009】
本発明の他の態様に係る道路通行情報提供プログラムは、道路通行情報提供装置または道路通行情報提供システムで実行され、車両の走行情報を収集する車両走行情報収集過程と、前記走行情報の解析処理を行う走行情報解析過程と、前記走行情報解析過程による解析結果を出力する解析結果出力過程と、を有する道路通行情報提供プログラムにおいて、前記車両走行情報収集過程は、前記車両の方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得過程と、前記車両の周辺の画像データを取得する画像データ取得過程と、前記画像データを取得した場所の位置情報を取得する位置情報取得過程と、を有し、前記走行情報解析過程は、前記車両が走行して前記走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報を格納する格納過程と、前記走行情報、前記画像データおよび前記位置情報と、当該走行情報に対応する前記道路の基準走行データとを比較する比較過程と、前記比較過程において所定の差異が検出された場合に、前記基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定する判定過程と、を有し、前記解析結果出力過程では、前記走行情報解析過程による判定結果を、前記道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力する。
前記基準走行データは、予め設定され、または前記道路通行情報に基づいて更新される複数種の基準走行データから選択されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、道路環境の変化などの情報についてタイムラグを低減して反映させた道路通行情報を生成して提供することのできる道路通行情報提供装置、道路通行情報提供システムおよび道路通行情報提供プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る道路運行情報提供システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係る道路運行情報提供システムに適用される車載器(デジタルタコグラフ)の構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る道路運行情報提供システムで実行される解析処理の処理手順の例を示すフローチャートである。
図4】変更前の道路状況の例を示す説明図である。
図5】変更後の道路状況の例を示す説明図である。
図6】実施の形態に係る道路運行情報提供システムの判定部における判断基準の例を示すチャート図である。
図7】実施の形態に係る道路運行情報提供システムで提供される道路運行情報に基づいて経路を変更しない場合(a)と、経路を変更する場合(b)の例を示す説明図である。
図8】実施の形態に係る道路運行情報提供システムにおける車載器の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図8を参照して、本発明の実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1について説明する。
【0013】
(道路運行情報提供システムの機能構成)
図1を参照して、本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1の機能構成等について説明する。
本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1は、車両(大型車、商用車、特殊作業車などを含む)Vの走行情報を収集する車両走行情報収集部を構成する車載器(デジタルタコグラフ)DT1と、走行情報の解析処理を行う走行情報解析部を構成する運行管理サーバSA1とを備える。
車載器DT1は、車両Vの方向指示器信号を含む走行情報を取得する走行情報取得部100を備える。
また、車載器DT1は、車両Vの周辺の画像データを取得する車載カメラで構成される画像データ取得部50を備える。
また、車載器DT1は、画像データを取得した場所の位置情報をGPS信号等で取得する位置情報取得部15を備える。
【0014】
また、車載器DT1は、走行情報、画像データおよび位置情報を運行管理サーバSA1に無線回線N1を介して送信すると共に、運行管理サーバSA1から解析結果を受信する通信部24を備える。
さらに、車載器DT1は、運行管理サーバSA1から受信した解析結果を出力する出力部(出力インタフェース等)101を備える。
【0015】
車載器DT1は、走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、走行情報、画像データおよび位置情報を格納するフラッシュメモリ等で構成される記録部17を備える。
【0016】
ここで、基準走行データは、例えば、車両Vの車速情報、加速度情報、位置情報、ブレーキ信号の情報、アクセル開度の情報、方向指示器の操作の情報等を用いて作成するようにできる。
また、車載器DT1は、運行管理サーバSA1から受信した解析結果などを表示する液晶表示装置等で構成される表示器205を備える。
なお、車載器DT1を構成するデジタルタコグラフの構成例については後述する。
【0017】
一方、運行管理サーバSA1は、車両Vが走行して走行情報を取得する複数の道路についての基準となる基準走行データ、走行情報、画像データおよび位置情報を格納するハードディスク装置等で構成される格納部300を備える。
【0018】
また、運行管理サーバSA1は、走行情報、画像データおよび位置情報と、当該走行情報に対応する道路の基準走行データとを比較するCPU350等で構成される比較部301を備える。
【0019】
また、運行管理サーバSA1は、比較部301において所定の差異が検出された場合に、基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定するCPU350等で構成される判定部302を備える。
【0020】
また、運行管理サーバSA1は、判定部302の判定結果を車載器DT1に送信する送信部305を備える。なお、運行管理サーバSA1は、車載器DT1からの情報を受信する受信部304を備え、送信部305と受信部304とで通信部303を構成している。
【0021】
そして、車載器DT1の出力部101は、走行情報解析部としての運行管理サーバSA1の判定結果を、道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力するようになっている。
なお、基準走行データは、予め設定され、または道路通行情報に基づいて更新される複数種の基準走行データから選択されるようにできる。
【0022】
道路運行情報提供システムS1では、比較部301において、走行情報、画像データおよび位置情報と、当該走行情報に対応する道路の基準走行データとを所定時間毎、或いは所定距離毎に比較している。そして、所定の差異が検出された場合には、基準走行データに対応する道路に変化が有ると判定している。
道路の変化としては、例えば道路の路面状態の変化、道路の曲がり具合や形状などの道路環境の変化、道路付近の構造物の変化などを挙げることができる。
そして、運行管理サーバSA1の判定結果は、車載器DT1の出力部101から、道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報として出力される。
【0023】
より具体的には、道路通行情報は、車載器DT1の表示器205に表示されて、運転者が車両Vを走行させる際に、道路状況の変化に注意するように促すことができ、安全性を向上できる。
また、道路通行情報に基づいて、基準走行データの更新を行うようにできる。これにより、道路状況の変化等を最新の基準走行データに反映することができる。
【0024】
したがって、例えばカーナビゲーションシステムにおいて、道路状況の変化等を反映した基準走行データおよび道路通行情報を用いて経路等をナビゲートすることにより、車両Vをより安全に走行させることができる。
【0025】
特に、大型車、商用車、特殊作業車などにおいて、道路の些細な変化についても最新の基準走行データおよび道路通行情報に反映することができ、安全走行に寄与することができる。
【0026】
(車載器(デジタルタコグラフ)の構成例)
図2を参照して、車載器としてのデジタルタコグラフDT1の構成例について説明する。
図2は、道路運行情報提供システムS1に適用される車載器としてのデジタルタコグラフDT1の構成例を示すブロック図である。
【0027】
図2に示す車載器としてのデジタルタコグラフDT1は、車両Vに搭載され、エンジン回転数オーバ、急発進、急加速、急減速等の運転状態を表す運転データを含む走行情報(運行データ)を時刻毎に記録するものである。
【0028】
図2に示すデジタルタコグラフDT1は、CPU11、速度/エンジン回転数I/F12、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、GPS受信部15、CAN_I/F16、記録部17、カードI/F18、音声I/F19、スピーカ204、RTC(時計IC)21、出庫/入庫ボタンSW入力部22、表示コントローラ23、通信部24、電源部25、メモリ26、LED表示部203及び陸送ON/OFFボタンSW入力部31を有している。
【0029】
CPU11は、マイクロコンピュータ等により構成される制御部であり、プログラムに従ってデジタルタコグラフDT1の全体を制御する。CPU11が実行するプログラムや制御に必要な定数等のデータはメモリ26上に保持されている。メモリ26は不揮発性であり、データの読み出しおよび書き込みが可能である。
【0030】
記録部17は、データの読み出しおよび書き込みが可能な不揮発性のメモリであり、外部入力I/F13に接続される撮影手段としての車載カメラ50から入力される画像情報(画像データ)の記録、運行データの記録、基準走行データ等の保持のために利用される。
【0031】
また、記録部17には、過去に走行した運転履歴のデータも履歴テーブル17aとして保持されている。この履歴テーブル17aには、場所、速度、エンジン回転数、及び燃費を登録することができる。
また、外部入力I/F13には、方向指示器270からの信号が入力されるようになっている。
【0032】
カードI/F(インタフェース)18は、所定の規格に適合するメモリカードをCPU11に接続するためのインタフェースであり、メモリカードを着脱自在に保持するカードスロットを備えている。このカードI/F18には、業務用車両を運転する各乗務員が所持している所定のメモリカード55が装着される。このメモリカード55は、不揮発性のメモリを内蔵しており、各乗務員を特定するための番号などが登録された状態で使用される。
【0033】
音声I/F19は、疑似音声信号を合成して出力するためのインタフェースであり、CPU11の制御により様々なメッセージに対応する音声信号を出力することができる。音声I/F19の出力にはスピーカ204が接続されている。
【0034】
RTC(リアルタイムクロック)21は、所定のクロックパルスを常時計数することにより、現在時刻の情報を把握している。また、RTC21はタイマ機能も有している。CPU11は、RTC21を制御することにより、現在時刻の情報を取得したり、タイマを利用することができる。
【0035】
出庫/入庫ボタンSW入力部22には、出庫/入庫ボタンのON/OFF信号が入力される。したがって、CPU11は、出庫/入庫ボタンSW入力部22を介して出庫/入庫ボタンのON/OFF状態を監視し、自車両が出庫/入庫のいずれの状態であるかを把握できる。
【0036】
表示コントローラ23は、表示器205の表示内容を制御する。表示器205は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等で構成され、車載カメラ50のよる撮影の有無等の種々の情報をグラフィック表示を混じえて表示することができる。
【0037】
LED表示部203は、複数のLED(発光ダイオード)を内蔵し、CPU11の制御により各LEDを点灯、消灯、または点滅し、通信や動作の状態を表示することができる。
陸送ON/OFFボタンSW入力部31は、乗務員または作業者等により操作され、手動操作による陸送モードのオンオフ切り替えに使用される。
【0038】
速度/エンジン回転I/F12には、車速センサやエンジン回転数センサからそれぞれ速度パルスや回転パルスが入力される。速度/エンジン回転数I/F12は、入力された信号をCPU11の処理に適した信号に変換する。
【0039】
センサ入力I/F14は、様々なセンサをCPU11に接続するためのインタフェースである。センサ入力I/F14の入力には、例えば車速センサ、加速度センサ、ブレーキセンサ、アクセル開度センサ等からの信号が入力される。なお、センサ入力I/F14には、その他、エンジン温度を検知する温度センサ、燃料量を検知する燃料センサ、車両に加わる衝撃(G値)を感知するGセンサ等の信号が入力されるようにできる。
【0040】
画像取得部を構成する車載カメラ50は、車両Vの走行時において、車両Vの周辺の画像データを取得する。なお、車載カメラ50は、一台に限定されず、前方撮影用、側方撮影用、後方撮影用など複数台を設置するようにしてもよい。
また、車載カメラ50は、Gセンサによる衝撃(G値)の検知等を契機として、車両Vの周辺を撮像した映像データの生成を開始するようにしてもよい。
【0041】
位置情報取得部を構成するGPS受信部15は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波をGPSアンテナ15aで受信し、所定の計算処理を行って受信信号から車両の現在位置を表す緯度、経度の情報を取得する。
【0042】
CAN_I/F16は、CAN(Controller Area Network)規格の通信ネットワークと接続するためのインタフェースである。CPU11は、車両上の通信ネットワークに接続されている様々な機器との間でCAN_I/F16を介して通信できる。実際には、速度、エンジン回転数、燃料量等の各種データの通信が行われる。
通信部24は、所定の無線通信インタフェースを内蔵しており、車両の外部との間で無線通信回線を利用してデータ通信を行うことができる。
電源部25は、車両のバッテリーなどから供給される電力に基づき、CPU11等が動作するために必要な安定した電圧(例えば+5[V])を生成し、イグニッションスイッチがオンの時にデジタルタコグラフDT1の各回路に電力を供給するようになっている。
【0043】
(解析処理について)
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1で実行される解析処理の処理手順について説明する。
【0044】
なお、本処理は、例えば運行管理サーバSB1側のCPU350等で実行され、運行管理サーバSB1が備えるOS(オペレーティングシステム)と所定のアプリケーションプログラムとの協働により実現することができる。但し、各種機能の一部または全部をハードウェアで実現するようにしてもよい。
【0045】
この処理が開始されると、ステップS10で、車載器DT1から所定の道路についての走行情報、画像データおよび位置情報等を受信してステップS11に移行する。
【0046】
ステップS11では、基準走行データを選択する。なお、何れの基準走行データを選択するのか等の選択設定は、車載器DT1側から行うようにできる。また、未だ基準走行データが無い場合には、ステップS15で新たな基準走行データを取得するようにしてもよい。
次いで、ステップS12では、走行情報等と選択した基準走行データとを比較してステップS13に移行する。
ステップS13では、所定の差異が検出されたか否かが判定される。なお、判定基準の例については後述する。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS14に移行して、基準走行データの更新を行わずに処理を終了する。
また、判定結果が「Yes」の場合にはステップS15に移行する。
【0047】
ステップS15では、車載器DT1から受信した走行情報、画像データおよび位置情報等に基づいて、新たな基準走行データを生成してステップS16に移行する。
【0048】
ステップS16では、生成された基準走行データと、格納部300に格納されている所定の道路について以前に作成された基準走行データとを比較して所定の差異があるか否かが判定される。
判定結果が「No」の場合にはステップS14に移行して、基準走行データの更新を行わずに処理を終了する。
判定結果が「Yes」の場合にはステップS17に移行する。
【0049】
ステップS17では、差異の検出回数が閾値(N)に達したか否かが判定される。この判定は、例えば差異が検出される毎に検出回数(n(但し、n≦N))を「1」づつインクリメントし、閾値(N)に達したか否かで判定することができる。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS13に戻り、「Yes」の場合にはステップS18に移行する。
ステップS18では、車載器DT1から受信した走行情報、画像データおよび位置情報等に基づいて、基準走行データを更新して処理を終了する。
【0050】
これにより、解析処理による判定結果に基づく基準走行データを反映させて、所定の道路に関する情報を含む地図情報に重畳した道路通行情報を生成、出力することができる。
このようにして得られる道路通行情報は、車載器DT1に送信されて、表示器205に表示することができる。
【0051】
したがって、例えば車両Vに搭載されるカーナビゲーションシステムにおいて、道路状況の変化等を反映した基準走行データおよび道路通行情報を用いて経路等をナビゲートすることにより、車両Vをより安全に走行させることができる。
特に、大型車、商用車、特殊作業車などにおいて、道路の些細な変化についても最新の基準走行データおよび道路通行情報に反映することができ、安全走行に寄与することができる。
【0052】
(道路状況の例について)
図4および図5を参照して道路状況の例について説明する。
ここで、図4は、変更前の道路状況の例を示す説明図、図5は、変更後の道路状況の例を示す説明図である。
まず、図4に示す変更前の道路状況の例では、直進する道路R1、R2に対して図上、右手に延びる道路R3が接続されている。
そして、道路R1、R2と道路R3との曲がり角(コーナー)C1、C2は、ほぼ直角となっている。
一方、図5に示す変更後の道路状況の例では、所定の曲率でカーブして接続する道路R2a、R3aに対して、道路R1aが接続するようになっている。
そして、道路R2a、R3aは緩やかにカーブするコーナーC10、C12を有している。また、道路R1a、R3aは、緩やかにカーブするコーナーC11を有している。
このような道路状況の変化により、車両Vの運転者は、減速の仕方や、ハンドルの切り具合を変更する必要がある。
特に、車両Vが大型車、商用車、特殊作業車である場合などには、道路状況の変化によって、運転の仕方を繊細に調整する必要がある。
【0053】
本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1によれば、例えば図4に示すような道路状況から、図5に示すような道路状況に変更された場合であっても、上述の解析処理により、道路状況に則した判定結果を基準走行データに反映させることができる。
【0054】
したがって、例えば車両Vに搭載されるカーナビゲーションシステムにおいて、道路状況の変化を反映した基準走行データおよび道路通行情報を用いて経路等をナビゲートすることにより、運転者の運転を補助し、車両Vをより安全に走行させることができる。
【0055】
(走行情報のサンプリング間隔設定の例などについて)
本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1では、例えば走行情報を取得した際に、合致する道路(経路)の基準走行データと比較し、同一である場合には基準走行データを変更しないように処理している。
ここで、図6に、車両Vが位置P1からP2までの全行程を所要時間(X秒:例えば60秒以上)で表した場合の走行情報のサンプリング間隔設定の例を示す。
サンプリング間隔は、時間T1として、所定頻度で走行情報のサンプリング(取得)を行うようにできる。
なお、所定頻度は、例えばサンプリング間隔(T1)の1/2以下とすることができる。
また、走行情報のサンプリング間隔設定は、上述のように時間で行う場合に限らず、所定の距離毎にサンプリングを行うようにしてもよい。
【0056】
そして、例えば、連続するX秒間で明らかに道路状況が異なると判断できる場合には、新たな走行基準データとして一時保管し、所定回数に亘って繰り返された場合に、道路状況に「変化あり」として確定するようにできる。
これにより、道路状況の変化を正確に走行基準データに反映させることができる。
【0057】
また、「変化あり」とされた地点について、画像データ取得部50で取得された変更前の画像と変更後の画像とを比較し、新たな走行基準データに優位性が認められるときに、カーナビゲーションシステム等で用いる走行基準データを切り替えて、車両Vの経路を変更するようにしてもよい。
【0058】
より具体的には、変更前の画像データと変更後の画像データとをAI(人工知能)技術や自動画像認識技術(RPA:Robotic Process Automation)などを用いて比較することで実現できる。
【0059】
(経路変更の例などについて)
図7を参照して、走行基準データを切り替えて、車両Vの経路を変更するケース等について説明する。
図7(a)は、結果的に位置P10からP1までの経路を変更しないケースを示す。
図7(a)において、細線は、これまでの経路(道路)R101を、太線は、変更可能性のある経路(道路)R102を示す。
そして、経路(道路)R101が、形状変更等の道路状況の変化により、120secだけ所要時間が増える場合を想定する。一方、経路(道路)R102を用いた場合には、到達距離が長くなり、所要時間が240sec多くかかるものとする。
【0060】
この場合には、AI(人工知能)等は、例えば到達時間の短い方を優先し、車両Vが走行する経路を変更せずに、経路(道路)R101の走行基準データを用いるように処理することができる。
一方、図7(b)において、細線は、これまでの経路(道路)R101を、太線は、変更可能性のある経路(道路)R103を示す。
【0061】
そして、経路(道路)R101が、形状変更等の道路状況の変化により、120secだけ所要時間が増える場合を想定する。一方、経路(道路)R103を用いた場合には、従前と所要時間は変わらないものとする。
【0062】
この場合には、AI(人工知能)等は、例えば到達時間の短い方を優先し、車両Vが走行する経路を道路R103に変更し、経路(道路)R103の走行基準データを用いるように処理することができる。
【0063】
(車載器の表示例等について)
図8を参照して、車載器(デジタルタコグラフ)DT1の表示器205における表示例等について説明する。
図8に示す例では、解析処理による判定結果に基づく基準走行データを反映させて、所定の道路に関する情報を出力する際に、車載器(デジタルタコグラフ)DT1の表示器205に、例えば「道路状況に変更がありました。注意して走行してクレームださい。」等のメッセージを表示する。
また、スピーカ204から同様の内容を音声出力するようにしてもよい。
これにより、車両Vの運転者に、走行中の道路状況に変化があったことを報知して、運転に気をつけるように注意喚起することができる。
【0064】
また、表示器205、或いは車載器(デジタルタコグラフ)DT1と連動するように接続されるカーナビゲーションシステムの表示部に、走行中の道路状況の変化を反映した地図情報等を表示するようにできる。
【0065】
即ち、道路状況の変化等を反映した基準走行データおよび道路通行情報を用いた地図情報により経路等をナビゲートすることにより、車両Vをより安全に走行させることができる。
【0066】
これにより、車両Vが、例えば大型車、商用車、特殊作業車である場合などにおいても、道路の些細な変化についても最新の基準走行データおよび道路通行情報を提供して、安全走行に寄与することができる。
【0067】
以上、本発明の道路運行情報提供システムS1を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、本実施の形態に係る道路運行情報提供システムS1では、走行情報解析部を運行管理サーバで構成する場合を述べたが、これに限らず、走行情報解析部を車載器(デジタルタコグラフ)DT1のCPU11等で構成するようにしてもよい。
その場合には、比較部および判定部もCPU11等で構成するようにできる。
【符号の説明】
【0068】
S1 道路運行情報提供システム
DT1 車載器(車両情報収集部、デジタルタコグラフ)
SA1 運行管理サーバ(走行情報解析部)
V 車両
15 位置情報取得部
17 記録部
24 通信部
50 画像データ取得部(車載カメラ)
100 走行情報取得部
101 出力部
102 設定部
205 表示器
300 格納部
301 比較部
302 判定部
305 送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8