(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】三相DCモータの制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241008BHJP
【FI】
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2021033886
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-9875(JP,A)
【文献】特開2008-278573(JP,A)
【文献】特開2018-133853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外付けの外部抵抗および三相インバータとともに使用される三相DCモータの制御回路であって、
前記三相インバータの第1相に流れる第1電流の電流量を示す第1電流検出値を生成する電流検出回路を備え、
前記外部抵抗は、前記第1電流が流れうる経路上に設けられた外付け部品であり、
前記電流検出回路は、
前記第1電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または前記第1相のアームのオン抵抗である第1抵抗の電圧降下にもとづいて、前記第1電流検出値を生成するとともに、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として、前記第1抵抗の電圧降下にもとづく前記第1電流検出値を校正可能に構成される、制御回路。
【請求項2】
前記電流検出回路は、
前記三相インバータの第2相に流れる第2電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または前記第2相のアームのオン抵抗である第2抵抗の電圧降下にもとづいて、第2電流検出値を生成可能であり、
前記三相インバータの第3相に流れる第3電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または前記第3相のアームのオン抵抗である第3抵抗の電圧降下にもとづいて、第3電流検出値を生成可能である、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記第1抵抗は、前記三相インバータの前記第1相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、
前記第2抵抗は、前記三相インバータの前記第2相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、
前記第3抵抗は、前記三相インバータの前記第3相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、
前記外部抵抗は、前記三相インバータと接地の間に挿入されている、請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記電流検出回路は、
前記第1相のみが電流シンク相である期間、前記第1相の下アームの電圧降下にもとづく前記第1電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正し、
前記第2相のみが電流シンク相である期間、前記第2相の下アームの電圧降下にもとづく前記第2電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正し、
前記第3相のみが電流シンク相である期間、前記第3相の下アームの電圧降下にもとづく第3電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正し、
前記第1相のみが電流ソース相である期間、前記第1相の上アームの電圧降下にもとづく前記第1電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正し、
前記第2相のみが電流ソース相である期間、前記第2相の上アームの電圧降下にもとづく前記第2電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正し、
前記第3相のみが電流ソース相である期間、前記第3相の上アームの電圧降下にもとづく前記第3電流検出値を、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく前記電流検出値を基準として校正する、請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記第1抵抗は、前記三相インバータの第1相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第2抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第3抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記外部抵抗は、前記三相インバータの前記第1相出力と前記三相DCモータの間に、前記第1抵抗と直列に挿入され、
前記電流検出回路は、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と前記第1抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、前記第2電流検出値および前記第3電流検出値を校正する、請求項2に記載の制御回路。
【請求項6】
前記第1抵抗は、前記三相インバータの第1相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第2抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第3抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記外部抵抗は、前記三相インバータの第1相出力と前記三相DCモータの間に、前記第1抵抗と直列に挿入され、
前記電流検出回路は、
前記第2電流がゼロであるときに、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、前記第3抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、前記第3電流検出値を校正し、
前記第3電流がゼロであるときに、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、前記第2抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、前記第2電流検出値を校正する、請求項2に記載の制御回路。
【請求項7】
前記第1抵抗は、前記三相インバータの第1相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記外部抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に挿入され、
前記電流検出回路は、第3相出力に流れる第3電流がゼロであるときに、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、前記第1抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、前記第1電流検出値を校正する、請求項1に記載の制御回路。
【請求項8】
前記電流検出回路は、前記外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を、前記第2相出力に流れる第2電流を示す第2電流検出値として取得し、
前記第1電流検出値と前記第2電流検出値の合成値にもとづいて、前記第3電流を示す第3電流検出値を取得する、請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記第1抵抗は、前記三相インバータの第1相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第2抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記第3抵抗は、前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、
前記外部抵抗は、前記三相インバータと接地の間に挿入される、請求項2に記載の制御回路。
【請求項10】
前記電流検出回路は、前記三相インバータの前記第1相出力のみが電流シンク相である期間に、前記第1電流検出値を校正する、請求項9に記載の制御回路。
【請求項11】
前記電流検出回路は、
前記三相インバータの第2相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分である第2抵抗の電圧降下にもとづいて、前記第2電流検出値を生成可能であり、
前記三相インバータの第3相出力と前記三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分である第3抵抗の電圧降下にもとづいて、前記第3電流検出値を生成可能である、請求項9に記載の制御回路。
【請求項12】
前記電流検出回路は、
前記三相インバータの前記第1相出力のみが電流シンク相である期間に、前記第1電流検出値を校正し、
前記三相インバータの前記第2相出力のみが電流シンク相である期間に、前記第2電流検出値を校正し、
前記三相インバータの前記第3相出力のみが電流シンク相である期間に、前記第3電流検出値を校正する、請求項11に記載の制御回路。
【請求項13】
前記外部抵抗に代えて、磁気検出型の電流センサを備え、
前記電流検出回路は、前記第1抵抗の電圧降下にもとづく前記第1電流検出値を、前記電流センサの出力にもとづく電流検出値を基準として校正可能に構成される、請求項1から12のいずれかに記載の制御回路。
【請求項14】
ひとつの半導体基板に集積化される、請求項1から13のいずれかに記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三相DCモータの制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動方式として、矩形波駆動、正弦波駆動、ベクトル制御などが知られている。これらの駆動方式において、モータの正確な制御のためには、モータの各相の電流を正確に検出する必要がある。
【0003】
図1および
図2は、従来の電流検出を説明する図である。
図1は、1シャント方式と呼ばれる検出方式であり、三相インバータ(ブリッジ回路)6の下側に、1個の電流検出抵抗Rsが挿入される。電流検出回路4は、1個の電流検出抵抗Rsの電圧降下にもとづいて、ブリッジ回路6が三相DCモータ2から吸い込む電流を検出する。1シャント方式では、U相、V相、W相の電流を検出するタイミングが制約される。
【0004】
図2は、3シャント方式と呼ばれる検出方式であり、三相インバータ(ブリッジ回路)のU相、V相、W相のレグの下側に、電流検出抵抗Rs
U~Rs
Wが挿入される。電流検出回路4は、3個の電流検出抵抗Rs
U~Rs
Wの電圧降下にもとづいて、ブリッジ回路6がモータ2から吸い込む電流を検出する。3シャント方式は、同時に、三相の電流を検出できるが、外付けの3個の抵抗が必要であるため、コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は係る状況においてされたものであり、そのある態様の目的のひとつは、低コストで正確に、モータに流れる電流を検出可能なモータの制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、外付けの外部抵抗および三相インバータとともに使用される三相DCモータの制御回路に関する。制御回路は、三相インバータの第1相に流れる第1電流の電流量を示す第1電流検出値を生成する電流検出回路を備える。外部抵抗は、第1電流が流れうる経路上に設けられた外付け部品であり、電流検出回路は、第1電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または第1相のアームのオン抵抗である第1抵抗の電圧降下にもとづいて、第1電流検出値を生成するとともに、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として、第1抵抗の電圧降下にもとづく第1電流検出値を校正可能に構成される。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、低コストで正確にモータに流れる電流を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来の電流検出を説明する図である。
【
図2】
図2は、従来の電流検出を説明する図である。
【
図3】
図3は、モータの駆動システムの回路図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る制御回路の回路図である。
【
図5】
図5は、PdCuワイヤの温度特性を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る校正処理を説明する波形図である。
【
図7】
図7は、実施例2に係る校正処理を説明する波形図である。
【
図8】
図8は、実施例3に係る制御回路の回路図である。
【
図9】
図9は、実施例4に係る制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係る三相DCモータの制御回路は、外付けの外部抵抗とともに使用される。制御回路は、三相インバータの第1相に流れる第1電流の電流量を示す第1電流検出値を生成する電流検出回路を備える。外部抵抗は、第1電流が流れうる経路上に設けられた外付け部品であり、電流検出回路は、第1電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または第1相のアームのオン抵抗である第1抵抗の電圧降下にもとづいて、第1電流検出値を生成するとともに、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として、第1抵抗の電圧降下にもとづく第1電流検出値を校正可能に構成される。
【0013】
この構成によれば、三相インバータの出力に接続されるリードやワイヤの直列抵抗成分(寄生抵抗)あるいは3相インバータのアームのオン抵抗を、電流検出用の抵抗として利用することで、シンク電流とソース電流の両方を検出可能となる。また外付けの抵抗に代えて、リードやワイヤの抵抗成分を利用しているため、コストを下げることができる。一方で、リードやワイヤの抵抗値は、温度依存性が無視できない。そこで、温度依存性が小さい外付けの外部抵抗を1個、追加して、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値が正しいものとして、寄生抵抗にもとづく電流検出値を校正することで、正確性を担保することができる。
【0014】
一実施形態において、電流検出回路は、三相インバータの第2相に流れる第2電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または第2相のアームのオン抵抗である第2抵抗の電圧降下にもとづいて、第2電流検出値を生成可能であり、三相インバータの第3相に流れる第3電流の経路上に存在する銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分または第3相のアームのオン抵抗である第3抵抗の電圧降下にもとづいて、第3電流検出値を生成可能であってもよい。この構成によれば、三相の出力電流を常時検出し続けることができる。
【0015】
一実施形態において、第1抵抗は、三相インバータの第1相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、第2抵抗は、三相インバータの第2相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、第3抵抗は、三相インバータの第3相の上アームおよび下アームそれぞれのオン抵抗であり、外部抵抗は、三相インバータと接地の間に挿入されていてもよい。上アームおよび下アームのオン抵抗を利用することで、追加の部品や配線が不要となる。
【0016】
一実施形態において、電流検出回路は、第1相のみが電流シンク相である期間、第1相の下アームの電圧降下にもとづく第1電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正し、第2相のみが電流シンク相である期間、第2相の下アームの電圧降下にもとづく第2電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正し、第3相のみが電流シンク相である期間、第3相の下アームの電圧降下にもとづく第3電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正し、第1相のみが電流ソース相である期間、第1相の上アームの電圧降下にもとづく第1電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正し、第2相のみが電流ソース相である期間、第2相の上アームの電圧降下にもとづく第2電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正し、第3相のみが電流ソース相である期間、第3相の上アームの電圧降下にもとづく第3電流検出値を、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を基準として校正してもよい。
【0017】
一実施形態において、第1抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第2抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第3抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、外部抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に、第1抵抗と直列に挿入され、電流検出回路は、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と第1抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、第2電流検出値および第3電流検出値を校正してもよい。第2抵抗と第3抵抗は、第1抵抗と同じ温度依存性を有するから、第1電流検出値について得られた校正のための情報を、第2電流検出値、第3電流検出値の校正に利用することができ、これにより、三相の出力電流を正確に検出できる。また、第1電流が非ゼロであればいつでも校正のための測定が可能であり、校正のタイミングの制約が少ないという利点がある。
【0018】
一実施形態において、第1抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第2抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第3抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、外部抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に、第1抵抗と直列に挿入されてもよい。電流検出回路は、第2電流がゼロであるときに、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、第3抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、第3電流検出値を校正し、第3電流がゼロであるときに、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、第2抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、第2電流検出値を校正してもよい。第3電流がゼロであるとき、第2電流と第1電流が等しくなるから、第2電流検出値の校正が可能となる。また第2電流がゼロであるとき、第3電流と第1電流が等しくなるから、第3電流検出値の校正が可能となる。
【0019】
一実施形態において、第1抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、外部抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に挿入され、電流検出回路は、第3相出力に流れる第3電流がゼロであるときに、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値と、第1抵抗の電圧降下の関係にもとづいて、第1電流検出値を校正してもよい。
【0020】
一実施形態において、電流検出回路は、外部抵抗の電圧降下にもとづく電流検出値を、第2相出力に流れる第2電流を示す第2電流検出値として取得し、第1電流検出値と第2電流検出値の合成値にもとづいて、第3電流を示す第3電流検出値を取得してもよい。三相の出力電流の合計がゼロの関係を利用することにより、1個の外部抵抗と、1個の寄生抵抗を利用して、三相の電流検出が可能となる。
【0021】
一実施形態において、第1抵抗は、三相インバータの第1相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第2抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、第3抵抗は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分であり、外部抵抗は、三相インバータと接地の間に挿入されてもよい。
【0022】
一実施形態において、電流検出回路は、三相インバータの第1相出力のみが電流シンク相である期間に、第1電流検出値を校正してもよい。
【0023】
一実施形態において、電流検出回路は、三相インバータの第2相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分である第2抵抗の電圧降下にもとづいて、第2電流検出値を生成可能であり、三相インバータの第3相出力と三相DCモータの間に設けられる、銅を含む材料で形成される配線の抵抗成分である第3抵抗の電圧降下にもとづいて、第3電流検出値を生成可能であってもよい。
【0024】
一実施形態において、電流検出回路は、三相インバータの第1相出力のみが電流シンク相である期間に、第1電流検出値を校正し、三相インバータの第2相出力のみが電流シンク相である期間に、第2電流検出値を校正し、三相インバータの第3相出力のみが電流シンク相である期間に、第3電流検出値を校正してもよい。
【0025】
一実施形態において、外部抵抗に代えて、磁気検出型の電流センサが設けられてもよい。電流検出回路は、第1抵抗の電圧降下にもとづく第1電流検出値を、電流センサの出力にもとづく電流検出値を基準として校正可能に構成されてもよい。
【0026】
一実施形態において制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0027】
(実施形態)
以下、好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
図3は、モータの駆動システム100の回路図である。システム100は、ブラシレス三相DCモータ(以下、単にDCモータという)102と、駆動回路200を備える。
【0031】
DCモータ102は、U相コイルLU、V相コイルLV、W相コイルLWを含む。駆動回路200は、DCモータ102のコイルLU~LWに供給する駆動信号VU~VWに応じてDCモータ102を駆動する。
【0032】
駆動回路200は、コントローラ210、プリドライバ220、三相インバータ230、電流検出回路240を備える。
【0033】
三相インバータ230は、U相レグ、V相レグ、W相レグを有する三相ブリッジ回路である。#相(#=U,V,W)のレグは、上アームQ
#-Hおよび下アームQ
#-Lを含む。上アームおよび下アームはそれぞれ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT、バイポーラトランジスタなどのスイッチング素子と、スイッチング素子と並列に接続される還流ダイオード(フライホイルダイオードともいう)を含む。
図1のように、スイッチング素子としてMOSFETを用いる場合、そのボディーダイオード(不図示)が還流ダイオードとなる。
【0034】
電流検出回路240は、DCモータ102のU相コイルLU、V相コイルLV、W相コイルLWに流れる電流IU,IV,IWを検出し、各電流を示す電流検出値を生成する。
【0035】
コントローラ210は、電流検出回路240が生成する電流検出値にもとづいて、DCモータ102と接続される三相インバータ230を制御する。たとえばコントローラ210は、ベクトル制御によって、DCモータ102の制御信号Sctrlを生成する。
【0036】
プリドライバ220は、コントローラ210が生成する制御信号Sctrlにもとづいて、三相インバータ230の上アームQU-H,QV-H,QW-Hおよび下アームQU-L,QV-L,QW-Lを駆動する。
【0037】
以上が駆動回路200全体の構成である。続いて、電流検出回路240による電流検出について、いくつかの実施例をもとに、詳細に説明する。
【0038】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る制御回路300Aの回路図である。制御回路300Aのパッケージは、半導体チップ(ダイ)302と、複数のピン(端子)Tを備える。パッケージの種類は特に限定されないが、QFNパッケージ(Quad Flat No leaded package)やQFPパッケージ(Quad Flat Package)、SONパッケージ(Small Outline Non-leaded package)であってもよいし、リードフレームを有するSIP(Single Inline Package)、DIP(Dual Inline Package)、ZIP(Zigzag Inline Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-leaded)などであってもよいし、BGA(Ball Grid Array)パッケージやPGA(Pin Grid Array)パッケージ、LGA(Land Grid Array)パッケージであってもよい。
【0039】
端子Tは、外部電極パッド、外部電極パッド、リード電極やバンプであり、パッケージの種類に応じた形態を取りうる。半導体チップ302のパッド(あるいは電極)Pと、端子Tの間は、パッケージの内部において、ボンディングワイヤなどの接続手段(インターコネクト)を介して接続される。インターコネクトの種類は、パッケージの種類に応じて異なり、フリップチップの場合、インターコネクトは、ハンダボールまたは銅ピラー(ポスト)でありうる。
【0040】
この例では、半導体チップ302には、コントローラ210、プリドライバ220、電流検出回路240がひとつの半導体チップ302に集積化されており、三相インバータ230は外付けのディスクリート部品あるいはパワーモジュールやIPM(Intelligent Power Module)で構成される。
【0041】
なお、駆動回路200の構成要素のすべてを、制御回路300Aのパッケージに収容してもよい。この場合において、各構成要素の集積化の態様は特に限定されず、複数の半導体チップに分割して構成してもよい。たとえば、小信号を扱うコントローラ210および電流検出回路240を第1チップ(第1ダイ)に集積化し、大信号を扱うプリドライバ220および三相インバータ230を、別の第2チップ(第2ダイ)に集積化してもよい。プリドライバ220は、小信号側の第1チップに設けてもよい。
【0042】
三相インバータ230は、第1相出力(U相出力)OUT1、第2相出力(V相出力)OUT2、第3相出力(W相出力)OUT3を有する。なお、第1相~第3相と、U相~W相の対応関係は例示であり、V相を第1相としてもよいし、W相を第1相としてもよい。三相インバータ230の三相出力OUT1~OUT3は、出力配線LOUT1~LOUT3を介してDCモータ102の三相コイルLU,LV、LWと接続される。
【0043】
出力配線LOUT1~LOUT3に流れる電流を、第1電流I1(U相電流Iu)、第2電流I2(V相電流Iw)、第3電流I3(W相電流Iw)という。
【0044】
電流検出回路240は、第1抵抗Rs1の電圧降下にもとづいて、第1電流I1を示す第1電流検出値Dcs1を生成する。同様に電流検出回路240は、第2抵抗Rs2、第3抵抗Rs3の電圧降下にもとづいて、第2電流I2を示す第2電流検出値Dcs2、第3電流I3を示す第3電流検出値Dcs3を生成する。
【0045】
第1抵抗Rs1~第3抵抗Rs3は、実際の抵抗素子が存在していることを意味するのではなく、出力配線LOUT1~LOUT3それぞれに含まれる直列抵抗成分(寄生抵抗)である。
【0046】
本実施例では、電流検出に利用できる程度の抵抗成分を生じさせるために、出力配線LOUT1の一部が、制御回路300Aに引き込まれる。具体的には出力配線LOUT1は、入力端子Tiから制御回路300Aに引き込まれ、内部の配線(リードやボンディングワイヤ、ポストを含みうる)を介して、出力端子Toから引き出され、DCモータ102と接続される。
【0047】
本実施例では、第1抵抗Rs1は、パッケージ内部において、入力端子Ti1と出力端子To1を接続するインターコネクト、具体的にはリード、ワイヤ、ポストなどであり、銅(Cu)を含む材料で形成される配線の直列抵抗成分(寄生抵抗)である。たとえば、ワイヤを使用するパッケージでは、第1抵抗Rs1は、ワイヤの抵抗成分が支配的である。第2抵抗Rs2、第3抵抗Rs3も同様である。
【0048】
半導体チップ302は、入力端子Ti1~Ti3と接続されるパッドPi1~Pi3、出力端子To1~To3と接続されるパッドPo1~Po3を有する。パッドPi1とPo1の間には、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1が発生し、パッドPi2とPo2の間には、第2抵抗Rs2の電圧降下Vcs2が発生し、パッドPi3とPo3の間には、第3抵抗Rs3の電圧降下Vcs3が発生する。
【0049】
電流検出回路240は、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1にもとづいて、第1相出力OUT1に流れる第1電流I1(U相電流IU)を示す第1電流検出値Dcs1を生成する。同様に、第2抵抗Rs2の電圧降下Vcs2にもとづいて、第2相出力OUT2に流れる第2電流I2(V相電流IV)を示す第2電流検出値Dcs2を生成する。同様に、第3抵抗Rs3の電圧降下Vcs3にもとづいて、第3相出力OUT3に流れる第3電流I3(W相電流Iw)を示す第3電流検出値Dcs3を生成する。
【0050】
第1抵抗Rs1は、銅(Cu)を主材料とするワイヤやリードフレームであるから、その抵抗値の温度依存性が大きい。
図5は、PdCuワイヤの温度特性を示す図である。横軸は、DCモータ102の通電電流であり、縦軸は、ワイヤの抵抗値および温度を示す。通電電流を増やすと、ワイヤの温度は上昇し、それにともなってワイヤの抵抗値も増大する。一方、通電電流を増やしても、半導体チップ302の温度はそれほど上昇しない。したがって、半導体チップ302の温度を監視しても、ワイヤの温度を知ることはできないことに留意されたい。
【0051】
図4に戻る。外部抵抗Rs0は、制御回路300Aの外部であって、第1電流I1が流れうる経路上に設けられる。実施例1では、具体的に外部抵抗Rs0は、第1出力端子To1とDCモータ102の間に、第1抵抗Rs1と直列に挿入される。外部抵抗Rs0はチップ抵抗などの抵抗部品であり、その抵抗値は温度依存性が十分に小さい。なお、外部抵抗Rs0は、三相インバータ230の第1相出力OUT1と第1入力端子Ti1の間に設けられてもよい。
【0052】
制御回路300Aの端子Trextには、外部抵抗Rs0の一端が接続される。また半導体チップ302のパッドPrextと端子Trextの間は、ワイヤなどのインターコネクトを介して接続される。パッドPo1とPrextの間には、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0が発生する。
【0053】
電流検出回路240は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづく電流検出値Dcs0を基準として、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1にもとづく第1電流検出値Dcs1を校正可能に構成される。
【0054】
電流検出回路240は、マルチプレクサ242、A/Dコンバータ244、校正処理部246を備える。マルチプレクサ242は、複数の抵抗Rs1~Rs3,Rs0のいずれかを選択し、A/Dコンバータ244と接続する。A/Dコンバータ244は、選択された抵抗Rs#(#=0~3)の両端間電圧をデジタルの検出値Dcs#に変換する。A/Dコンバータ244は必要に応じて、微小な電圧降下Vcs0~Vcs3を増幅するアンプを含んでもよい。A/Dコンバータ244は、各抵抗ごとに設けてもよく、その場合にはマルチプレクサ242は省略することができる。
【0055】
校正処理部246は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづく電流検出値Dcs0を基準として、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1にもとづく第1電流検出値Dcs1を校正する。
【0056】
ベクトル制御によりDCモータ102を駆動するシステムにおいては、コントローラ210はプロセッサとソフトウェアプログラムの組み合わせで実装される場合が多い。この場合、校正処理部246の機能は、コントローラ210と同じプロセッサを用いて実装することができる。
【0057】
校正処理部246による校正処理について説明する。外部抵抗Rs0と第1抵抗Rs1には、同じ第1電流I1が流れる。外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0は、Rs0×I1であり、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1は、Rs1×I1となる。
【0058】
校正処理部246は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0=Rs0×I1にもとづく電流検出値Dcs0が真値であるとの前提のもと、その電流検出値Dcs0を基準として、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1=Rs1×I1にもとづく電流検出値Dcs1を校正する。
【0059】
校正処理部246は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0=Rs0×I1にもとづく電流検出値Dcs0を定期的に取得する。そして、電流検出値Dcs0と、近い時刻に測定された第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1=Rs1×I1にもとづく第1電流検出値Dcs1との比率を算出する。
α1=Dcs0/Dcs1=Rs0/Rs1 …(1)
【0060】
校正処理部246は、この比率α1を補正係数として保持する。そして、それ以降、生成される第1電流検出値Dcs1を、補正係数α1を利用して補正する。補正後の第1電流検出値Dcs1’は、
Dcs1’=Dcs1×α1 …(2)
となる。
【0061】
式(2)に式(1)を代入すると、補正後の第1電流検出値Dcs1’は、
Dcs1’=(I1×Rs1)×(Rs0/Rs1)=I1×Rs0 …(3)
となり、第1抵抗Rs1の抵抗値の変動の影響が除去されている。
【0062】
第1抵抗Rs1~第3抵抗Rs3が同じ材料であって同じ温度依存性を示し、それらが同じ温度を有しているとの仮定が成り立つ場合、第1抵抗Rs1について得られた補正係数α1を、第2電流検出値Dcs2、第3電流検出値Dcs3の補正用の係数α2,α3として用いることができる。補正後の検出値Dcs2’,Dcs3’は、
Dcs2’=Dcs2×α2=Dcs2×α1
Dcs3’=Dcs3×α3=Dcs3×α1
つまり電流検出回路240は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづく電流検出値Dcs0と第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1の関係にもとづいて、第2電流検出値Dcs2および第3電流検出値Dcs3を校正する。
【0063】
図6は、実施例1に係る校正処理を説明する波形図である。
図6には、コイル電流I1(I
U)、第1抵抗Rs1の抵抗値、外部抵抗Rs0の抵抗値、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0が示される。PWM制御する場合には、コイル電流がピーク(あるいはボトム、あるいはセンター)となるタイミングで、電圧降下Vcs0,Vcs1をサンプリングし、電流検出値Dcs0,Dcs1を取得してもよい。電流検出回路240が、2個、あるいはそれより多いA/Dコンバータ244を有する場合、2つの電圧降下Vcs0,Vcs1を同時刻t
0にサンプリングし、それらの比を取得してもよい。
【0064】
電流検出回路240が、1個のA/Dコンバータ244を有する場合、2つの電圧降下Vcs0,Vcs1のうち一方(たとえばVcs0)を、時刻t0にてサンプリングし、他方(たとえばVcs1)を、時刻t1にてサンプリングしてもよい。
【0065】
校正処理部246は、2つの電流検出値Dcs0,Dcs1の取得が完了すると、それらの比に応じた補正係数α1を算出しする。
【0066】
そして、補正係数α1が得られると、それ以降のサンプリングタイミングtsごとに得られる電流検出値Dcs1に補正係数α1を乗じて、補正後の電流検出値Dcs1’を得ることができる。
【0067】
以上が実施例1に係る校正処理である。この校正処理によれば、第1抵抗Rs1の抵抗値の変動の影響を受けない電流検出値Dcs1’を得ることができる。さらに、同じ補正係数α1を、第2電流検出値Dcs2,第3電流検出値Dcs3に乗算することにより、第2抵抗Rs2の抵抗値の変動の影響を受けない電流検出値Dcs2’、第3抵抗Rs3の抵抗値の変動の影響を受けない電流検出値Dcs3’を得ることができる。
【0068】
実施例1は、第1抵抗Rs1~第3抵抗Rs3が同じ温度とみなすことができる場合、たとえば
図3の3つの端子To1~To3が隣接するパッケージにおいて有効である。
【0069】
電流検出回路240は、DCモータ102の駆動条件を切りかえるたびに、補正係数α1を更新してもよい。駆動条件の切りかえは、通電電流の切りかえ、通電方式の切りかえであってもよい。あるいは電流検出回路240は、定期的に、補正係数α1を更新してもよい。
【0070】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る校正処理を説明する波形図である。
図6には、180度通電(正弦波駆動)制御における三相の出力電流I
U~I
Wが示される。
【0071】
第2電流IVがゼロである時刻(電気角120度および300度)において、第1電流IUと第3電流IWの量は等しくなるから、外部抵抗Rs0と第3抵抗Rs3には同量の電流が流れることとなる。そこで、同量の電流が流れているとみなすことができる時刻あるいはそれと非常に隣接する時間区間中に、第3抵抗Rs3の電圧降下Vcs3と、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0をサンプリングし、2つの電流検出値Dcs3とDcs0の関係にもとづいて、補正係数α3を算出することができる。
α3=Dcs0/Dcs3=Rs0/Rs3 …(4)
【0072】
同様に、第3電流IWがゼロである時刻(電気角60度、240度)に、第1電流IUと第2電流IVの量は等しくなるから、外部抵抗Rs0と第2抵抗Rs2には同量の電流が流れることとなる。そこで、同量の電流が流れているとみなすことができる時刻t2あるいはそれと非常に隣接する時間区間中に、第2抵抗Rs2の電圧降下Vcs2と、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0をサンプリングし、2つの電流検出値Dcs2とDcs0の関係にもとづいて、補正係数α2を算出することができる。
α2=Dcs0/Dcs2=Rs0/Rs2 …(5)
【0073】
なお、第1抵抗Rs1と外部抵抗Rs0には、常に同じ量の電流が流れるから、補正係数α1を算出するために、2つの電流検出値Dcs1とDcs0を取得する時刻は特に制限されない。
【0074】
実施例2によれば、第1抵抗Rs1~第3抵抗Rs3が異なる温度を有しうる場合に有効である。たとえば、
図3の3つの端子To1~To3が隣接しないようなパッケージにおいて有効である。
【0075】
(実施例3)
図8は、実施例3に係る制御回路300Bの回路図である。実施例3では、U相が第2相、V相が第1相、W相が第3相とされる。外部抵抗Rs0は、第2出力端子TO2とDCモータ102の間に挿入される。電流検出回路240は、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1と、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0を検出可能に構成される。第2抵抗Rs2と第3抵抗Rs3の実体は、ワイヤやリードフレームの寄生抵抗であるから、ゼロではないが、本実施例では電流検出には使用されない。たとえば第1抵抗Rs1としてワイヤの抵抗成分を利用する場合、端子Ti2とTo2のワイヤおよび端子Ti3とTo3のワイヤを、端子Ti1とTo1のワイヤよりも短くしてもよい。あるいは、第1出力配線LOUT1のみをパッケージ内に引き込み、第2出力配線LOUT2および第3出力配線LOUT3は引き込まないようにしてもよい。
【0076】
電流検出回路240は、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1をサンプリングし、第1相の出力電流I1(IV)を示す第1電流検出値Dcs1を生成する。
【0077】
また電流検出回路240は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0をサンプリングし、電流検出値Dcs0を生成する。
【0078】
電流検出回路240は、第1電流検出値Dcs1を、電流検出値Dcs0を基準として校正し、校正後の第1電流検出値Dcs1’を出力する。
【0079】
実施例3における校正処理を説明する。電流検出回路240は、第3相出力OUT3に流れる第3電流I3(IW)がゼロであるときに、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづく電流検出値Dcs2と、第1抵抗Rcs1の電圧降下Vcs1の関係にもとづいて、第1電流検出値Dcs1を校正する。
【0080】
第3電流I3がゼロである時刻において、第1電流I1と第2電流I2の量は等しくなるから、外部抵抗Rs0と第1抵抗Rs1には同量の電流が流れることとなる。そこで、同量の電流が流れているとみなすことができる時刻あるいはそれと非常に隣接する時間区間中に、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1と、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0をサンプリングし、2つの電流検出値Dcs1とDcs2の関係にもとづいて、補正係数α1を算出することができる。
α1=Dcs2/Dcs1=Rs0/Rs1 …(4)
【0081】
校正処理部246は、この比率α1を補正係数として保持する。そして、それ以降、生成される第1電流検出値Dcs1を、補正係数α1を利用して補正する。補正後の第1電流検出値Dcs1’は、
Dcs1’=Dcs1×α1 …(2)
となる。
【0082】
電流検出回路240は、外部抵抗Rs0にもとづく電流検出値Dcs0を、第2電流I2を示す第2電流検出値Dcs2として出力する。
Dcs2=Dcs0
【0083】
さらに電流検出回路240は、第1電流検出値Dcs1’と第2電流検出値Dcs2(=Dcs0)とにもとづいて、第3電流検出値Dcs3を生成する。
Dcs3=-Dcs1’-Dcs2
【0084】
実施例3によれば、1個の内部抵抗Rs1と、1個の外部抵抗Rs0を用いることで、三相すべての電流を検出できる。
【0085】
(実施例4)
図9は、実施例4に係る制御回路300Cの回路図である。電流検出端子TCSは、三相インバータ230の低電位側ノードと接続される。外部抵抗Rs0は、電流検出端子TCSと外部の接地の間に挿入されるシャント抵抗である。また、接地端子TGNDは接地される。
【0086】
電流検出回路240は、実施例1と同様に、第1抵抗Rs1の電圧降下Vcs1にもとづいて、第1相出力OUT1に流れる第1電流I1(U相電流IU)を示す第1電流検出値Dcs1を生成する。同様に、第2抵抗Rs2の電圧降下Vcs2にもとづいて、第2相出力OUT2に流れる第2電流I2(V相電流IV)を示す第2電流検出値Dcs2を生成する。同様に、第3抵抗Rs3の電圧降下Vcs3にもとづいて、第3相出力OUT3に流れる第3電流I3(W相電流Iw)を示す第3電流検出値Dcs3を生成する。
【0087】
電流検出回路240は、三相インバータの第1相出力のみが電流シンク相である期間あるいはタイミングに、第1電流検出値Dcs1を校正する。
【0088】
三相インバータ230の第1相出力OUT1のみが,電流を吸い込むシンク相であり、第2相出力OUT2、第3相出力OUT3が電流を吐き出すソース相である期間では、第1相出力OUT1が吸い込む電流I1は、抵抗Rs1を経由して、外部抵抗Rs0に流れることとなる。つまり2つの抵抗Rs1、Rs0には同じ電流が流れる。そこで電流検出回路240は、第1相出力OUT1のみが電流シンク相である期間あるいはタイミングにおいて、第1電流検出値Dcs1と電流検出値Dcs0を取得し、2つの比率にもとづく補正係数α1を取得する。
α1=Dcs0/Dcs1
補正係数α1を取得した後は、補正係数α1を利用して、第1電流検出値Dcs1を補正する。
Dcs1’=Dcs1×α1
【0089】
同様にして、三相インバータ230の第2相出力OUT2のみが、電流を吸い込むシンク相である期間あるいはタイミングでは、第2相出力OUT2が吸い込む電流I2は、抵抗Rs2を経由して、外部抵抗Rs0に流れることとなる。つまり2つの抵抗Rs2、Rs0には同じ電流が流れる。そこで電流検出回路240は、第2相出力OUT2のみが電流シンク相である期間あるいはタイミングにおいてに、第2電流検出値Dcs2と電流検出値Dcs0を取得し、2つの比率にもとづく補正係数α2を取得する。
α2=Dcs0/Dcs2
そしてそれ以降、補正係数α2を利用して、第2電流検出値Dcs2を補正する。
Dcs2’=Dcs2×α2
【0090】
同様にして、三相インバータ230の第3相出力OUT3のみが、電流を吸い込むシンク相である期間あるいはタイミングでは、第3相出力OUT3が吸い込む電流I3は、抵抗Rs3を経由して、外部抵抗Rs0に流れることとなる。つまり2つの抵抗Rs3、Rs0には同じ電流が流れる。そこで電流検出回路240は、第3相出力OUT3のみが電流シンク相である期間あるいはタイミングに、第3電流検出値Dcs3と電流検出値Dcs0を取得し、2つの比率にもとづく補正係数α3を取得する。
α3=Dcs0/Dcs3
そしてそれ以降、補正係数α3を利用して、第3電流検出値Dcs3を補正する。
Dcs3’=Dcs3×α3
【0091】
図10は、
図9の制御回路300Cにおける校正処理を説明する波形図である。横軸は時間であり、電気角で表している。0°~60°の期間は、W相電流のみが負、つまりW相出力のみが電流シンク相である。したがって期間0°~60°の間に、第3電流検出値Dcs3を補正するための情報(補正係数α3)を得ることができる。
【0092】
120°~180°の期間は、V相電流のみが負、つまりV相出力のみが電流シンク相である。したがって期間120°~180°の間に、第2電流検出値Dcs2を補正するための情報(補正係数α2)を得ることができる。
【0093】
240°~300°の期間は、U相電流のみが負、つまりU相出力のみが電流シンク相である。したがって期間240°~300°の間に、第1電流検出値Dcs1を補正するための情報(補正係数α1)を得ることができる。
【0094】
たとえば、電流検出回路240は、60°、120°、180°、240°、300°のように、いずれかの電流がゼロとなるタイミングにおいて、補正のための情報を取得してもよい。
【0095】
実施例4によれば、実施例1~3と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(実施例5)
図11は、実施例5に係る制御回路300Fの回路図である。実施例5は、実施例4の変形であり、実施例4では外付けであった三相インバータ230が、実施例5では、半導体チップ302に集積化されている。
【0097】
三相インバータ230の出力OUT1~OUT3は、半導体チップ302の出力パッドPo1~Po3と接続される。出力パッドPo1~Po3は、ワイヤなどのインターコネクトを介して、出力端子To1~To3と接続される。実施例5では、このインターコネクトの直接抵抗成分が第1抵抗Rs1~第3抵抗Rs3として利用される。
【0098】
半導体チップ302のパッドPs1~Ps3は、出力端子To1~To3と接続される。パッドPs1とPo1の間には、第1抵抗Rs1の電圧降下Vs1が発生し、パッドPs2とPo2の間には、第2抵抗Rs2の電圧降下Vs2が発生し、パッドPs3とPo3の間には、第3抵抗Rs3の電圧降下Vs3が発生する。
【0099】
制御回路300Fの接地端子Tgndは接地され、電流検出端子Tcsは、外付け抵抗Rs0を介して接地される。半導体チップ302のパッドPgndは端子Tgndと接続される。パッドPcsとPgndの間には、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0が発生する。
【0100】
電流検出回路240には、電圧降下Vcs0~Vcs3が入力される。電流検出回路240は、実施例4と同様にして、電流検出値Dcs1~Dcs3を生成し、またそれらを補正する。実施例5によれば、実施例4と同様の効果が得られる。
【0101】
(実施例6)
図12は、実施例6に係る制御回路300Dの回路図である。これまでの実施例1~5では、Cuを含む材料の配線の直列抵抗成分を利用して、電流を検出した。実施例6では、配線の直列抵抗成分に変えて、三相インバータ230のアームのオン抵抗を、第1抵抗Rs1として利用する。同様に、第2抵抗Rs2、第3抵抗Rs3としても、三相インバータ230のアームのオン抵抗を利用する。
【0102】
あるアームがオンであるとき、そのアームには、そのオン抵抗と電流の積に比例した電圧降下が発生する。
【0103】
具体的には、第1相(U相とする)の上アームQU-Hおよび下アームQU-Lのオン抵抗が、第1抵抗Rs1となり、第2相(V相とする)の上アームQV-Hおよび下アームQV-Lのオン抵抗が、第2抵抗Rs2となり、第3相(W相とする)の上アームQW-Hおよび下アームQW-Lのオン抵抗が、第3抵抗Rs3となる。
【0104】
制御回路300Dは、各アームの両端間電圧を検出可能に構成される。制御回路300Dの端子Ts1~Ts3は、三相インバータ230の出力OUT1~OUT3と接続される。また端子Tvccは、三相インバータ230の電源端子と接続される。端子Tcsは外部抵抗Rs0と接続され、接地端子Tgndは接地される。
【0105】
半導体チップ302のパッドPvcc,Pcs,Pgnd,Ps1~Ps3はそれぞれ、端子Tvcc,Tcs,Tgnd,Ts1~Ts3と接続される。
【0106】
#=1~3とするとき、パッドPs#とパッドPvccの間には、第#相の上アームQ#-Hの電圧降下V#-Hが発生し、パッドPs#とパッドPcsの間には、第#相の下アームQ#-Lの電圧降下V#-Lが発生する。またパッドPcsとパッドPgndの間には、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0が発生する。
【0107】
電流検出回路240は、各アームの電圧降下にもとづいて、第1相~第3相に流れる第1電流I1~第3電流I3を示す電流検出値Dcs1~Dcs3を生成する。
【0108】
具体的には、第1相(U相)がソース相であるとき、第1相の上アームQU-Hの電圧降下VU-Hにもとづいて、第1電流I1を示す電流検出値Dcs1Hが生成され、第1相(U相)が電流シンクモードであるとき、第1相の下アームQU-Lの電圧降下VU-Lにもとづいて、第1電流I1を示す電流検出値Dcs1Lが生成される。
【0109】
同様に、第2相(V相)がソース相であるとき、第2相の上アームQV-Hの電圧降下VV-Hにもとづいて、第2電流I2を示す電流検出値Dcs2Hが生成され、第2相(U相)が電流シンクモードであるとき、第2相の下アームQV-Lの電圧降下VV-Lにもとづいて、第2電流I2を示す電流検出値Dcs2Lが生成される。
【0110】
同様に、第3相(W相)がソース相であるとき、第3相の上アームQW-Hの電圧降下VW-Hにもとづいて、第3電流I3を示す電流検出値Dcs3Hが生成され、第3相(W相)が電流シンクモードであるとき、第3相の下アームQW-Lの電圧降下VW-Lにもとづいて、第3電流I2を示す電流検出値Dcs3Lが生成される。
【0111】
電流検出回路240は、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづいて、電流検出値Dcs1~Dcs3を補正するために必要な情報を取得する。この校正については、Cu配線の直列抵抗成分とシャント抵抗の組み合わせを利用した実施例4と同様に行うことが可能であるが、上アームにもとづく電流検出値Dcs#Hと下アームにもとづく電流検出値Dcs#Lそれぞれについて、異なる補正係数が生成される。
【0112】
たとえば電流検出回路240は、三相インバータ230の第1相(U相)出力OUT1のみが電流ソース相である期間中(I1>0,I2≦0,I3≦0)に、第1相の上アームQU-Hの電圧降下VU-Hにもとづく電流検出値Dcs1Hの補正に必要な情報(補正係数α1H)を取得する。
【0113】
α1H=Dcs0/Dcs1H
【0114】
また電流検出回路240は、三相インバータ230の第1相(U相)出力OUT1のみが電流シンク相である期間中(I1<0,I2≧0,I3≧0)に、第1相の下アームQU-Lの電圧降下VU-Lにもとづく電流検出値Dcs1Lの補正に必要な情報(補正係数α1L)を取得する。
α1L=Dcs0/Dcs1L
【0115】
また電流検出回路240は、三相インバータ230の第2相(V相)出力OUT2のみが電流ソース相である期間中(I2>0,I1≦0,I3≦0)に、第2相の上アームQV-Hの電圧降下VV-Hにもとづく電流検出値Dcs2Hの補正に必要な情報(補正係数α2H)を取得する。
α2H=Dcs0/Dcs2H
【0116】
また電流検出回路240は、三相インバータ230の第2相(V相)出力OUT2のみが電流シンク相である期間中(I2<0,I1≧0,I3≧0)に、第2相の下アームQV-Lの電圧降下VV-Lにもとづく電流検出値Dcs2Lの補正に必要な情報(補正係数α2L)を取得する。
α2L=Dcs0/Dcs2L
【0117】
また電流検出回路240は、三相インバータ230の第3相(W相)出力OUT3のみが電流ソース相である期間中(I3>0,I1≦0,I2≦0)に、第3相の上アームQW-Hの電圧降下VW-Hにもとづく電流検出値Dcs3Hの補正に必要な情報(補正係数α3H)を取得する。
α3H=Dcs0/Dcs3H
【0118】
また電流検出回路240は、三相インバータ230の第3相(W相)出力OUT3のみが電流シンク相である期間中(I3<0,I1≧0,I2≧0)に、第3相の下アームQW-Lの電圧降下VW-Lにもとづく電流検出値Dcs3Lの補正に必要な情報(補正係数α3L)を取得する。
α3L=Dcs0/Dcs3L
【0119】
電流検出回路240は、補正係数にもとづいて、電流検出値を補正する。
Dcs1H’=Dcs1H×α1H
Dcs1L’=Dcs1L×α1L
Dcs2H’=Dcs2H×α2H
Dcs2L’=Dcs2L×α2L
Dcs3H’=Dcs3H×α3H
Dcs3L’=Dcs3L×α3L
【0120】
図13は、
図12の制御回路300Dにおける校正処理を説明する波形図である。
【0121】
0°~60°の期間は、W相出力のみが電流シンク相であるから、W相下アームQW-Lの電圧降下VW-Lにもとづく第3電流検出値Dcs3Lを補正するための情報(補正係数α3L)を得ることができる。
【0122】
60°~120°の期間は、U相出力のみが電流ソース相であるから、U相上アームQU-Hの電圧降下VU-Hにもとづく第1電流検出値Dcs1Hを補正するための情報(補正係数α1H)を得ることができる。
【0123】
120°~180°の期間は、V相出力のみが電流シンク相であるから、V相下アームQV-Lの電圧降下VV-Lにもとづく第2電流検出値Dcs2Lを補正するための情報(補正係数α2L)を得ることができる。
【0124】
180°~240°の期間は、W相出力のみが電流ソース相であるから、W相上アームQW-Hの電圧降下VW-Hにもとづく第3電流検出値Dcs3Hを補正するための情報(補正係数α3H)を得ることができる。
【0125】
240°~300°の期間は、U相出力のみが電流シンク相であるから、U相下アームQU-Lの電圧降下VU-Lにもとづく第1電流検出値Dcs1Lを補正するための情報(補正係数α1L)を得ることができる。
【0126】
300°~360°の期間は、V相出力のみが電流ソース相であるから、V相上アームQV-Hの電圧降下VV-Hにもとづく第2電流検出値Dcs2Hを補正するための情報(補正係数α2H)を得ることができる。
【0127】
たとえば、電流検出回路240は、60°、120°、180°、240°、300°のように、いずれかの電流がゼロとなるタイミングにおいて、補正のための情報を取得してもよい。
【0128】
U相電流(第1電流)が0となる時刻t0において、V相電流(第2電流)は正、W相電流(第3電流)は負である。このとき、V相上アームQV-H、W相下アームQW-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0129】
校正処理部246は、時刻t0における電流検出値Dcs0を基準として、V相上アームQV-Hの電圧降下QV-Hにもとづく電流検出値Dcs2Hを補正するために必要な情報(補正係数α2H)を取得する。
【0130】
また校正処理部246は、時刻t0における電流検出値Dcs0を基準として、W相下アームQW-Lの電圧降下QW-Lにもとづく電流検出値Dcs3Lを補正するために必要な情報(補正係数α3L)を取得する。
【0131】
V相電流(第2電流)が0となる時刻t1において、U相電流(第1電流)は正、W相電流(第3電流)は負である。このとき、U相上アームQU-H、W相下アームQW-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0132】
校正処理部246は、時刻t1における電流検出値Dcs0を基準として、U相上アームQU-Hの電圧降下QU-Hにもとづく電流検出値Dcs1Hを補正するための情報(補正係数α1H)を取得する。
【0133】
また校正処理部246は、時刻t1における電流検出値Dcs0を基準として、W相下アームQW-Lの電圧降下QW-Lにもとづく電流検出値Dcs3Lを補正するための情報(補正係数α3L)を取得する。
【0134】
W相電流(第3電流)が0となる時刻t2において、U相電流(第1電流)は正、V相電流(第2電流)は負である。このとき、U相上アームQU-H、V相下アームQV-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0135】
校正処理部246は、時刻t2における電流検出値Dcs0を基準として、U相上アームQU-Hの電圧降下QU-Hにもとづく電流検出値Dcs1Hを補正するための情報(補正係数α1H)を取得する。
【0136】
また校正処理部246は、時刻t2における電流検出値Dcs0を基準として、V相下アームQV-Lの電圧降下QV-Lにもとづく電流検出値Dcs2Lを補正するための情報(補正係数α2L)を取得する。
【0137】
次にU相電流(第1電流)が0となる時刻t3において、W相電流(第3電流)は正、V相電流(第2電流)は負である。このとき、W相上アームQW-H、V相下アームQV-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0138】
校正処理部246は、時刻t3における電流検出値Dcs0を基準として、W相上アームQW-Hの電圧降下QW-Hにもとづく電流検出値Dcs3Hを補正するための情報(補正係数α3H)を取得する。
【0139】
また校正処理部246は、時刻t3における電流検出値Dcs0を基準として、V相下アームQV-Lの電圧降下QV-Lにもとづく電流検出値Dcs2Lを補正するための情報(補正係数α2L)を取得する。
【0140】
次にV相電流(第2電流)が0となる時刻t4において、W相電流(第3電流)は正、U相電流(第1電流)は負である。このとき、W相上アームQW-H、U相下アームQU-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0141】
校正処理部246は、時刻t4における電流検出値Dcs0を基準として、W相上アームQW-Hの電圧降下QW-Hにもとづく電流検出値Dcs3Hを補正するための情報(補正係数α3H)を取得する。
【0142】
また校正処理部246は、時刻t4における電流検出値Dcs0を基準として、U相下アームQU-Lの電圧降下QU-Lにもとづく電流検出値Dcs1Lを補正するための情報(補正係数α1L)を取得する。
【0143】
次にW相電流(第3電流)が0となる時刻t5において、V相電流(第2電流)は正、U相電流(第1電流)は負である。このとき、V相上アームQV-H、U相下アームQU-Lおよび外部抵抗(シャント抵抗)Rs0に、同じ量の電流が流れる。
【0144】
校正処理部246は、時刻t5における電流検出値Dcs0を基準として、V相上アームQV-Hの電圧降下QV-Hにもとづく電流検出値Dcs2Hを補正するための情報(補正係数α2H)を取得する。
【0145】
また校正処理部246は、時刻t5における電流検出値Dcs0を基準として、U相下アームQU-Lの電圧降下QU-Lにもとづく電流検出値Dcs1Lを補正するための情報(補正係数α1L)を取得する。
【0146】
電気角360°の間に、電流検出値Dcs1H,Dcs1L,Dcs2H,Dcs2L,Dcs3H,Dcs3Lそれぞれを校正可能な電流ゼロクロスのタイミングは、電気角1周期(0~360°)の間に2回存在する。電流検出回路240は、2回の電流ゼロクロスのタイミングの両方で、補正係数を取得してもよいし、一方のタイミングのみで補正係数を取得してもよい。
【0147】
図12の制御回路300Dにおいて、三相インバータ230はPWM制御される。
(1相回生)
たとえばU相が電流ソース相、V相、W相が電流シンク相である期間(
図10の60°~120°)の期間において、U相出力がロー(つまり下アームがオン)である期間は、U相下アームQ
U-Lに逆向きに電流が流れ、ボディダイオードの影響が無視できなくなるから、U相下アームQ
U-Lのオン抵抗にもとづく電流検出の精度が低下する。
【0148】
したがって、U相のみが電流ソース相であり、下アームQU-Lがオンである期間は、残りの2相(V相、W相)の電流検出値Dcs2L’,Dcs3L’を加算することにより、U相の電流検出値を生成してもよい。
Dcs1=-(Dcs2L’+Dcs3L’)
【0149】
同様に、V相のみが電流ソース相であり、下アームQV-Lがオンである期間は、残りの2相(U相、W相)の電流検出値Dcs1L’,Dcs3L’を加算することにより、V相の電流検出値を生成してもよい。
Dcs2=-(Dcs1L’+Dcs3L’)
【0150】
同様に、W相のみが電流ソース相であり、下アームQW-Lがオンである期間は、残りの2相(U相、V相)の下アームQU-L、QV-Lの電圧降下VU-L,VV-Lにもとづく電流検出値Dcs1L’,Dcs2L’を加算することにより、W相の電流検出値を生成してもよい。
Dcs3=-(Dcs1L’+Dcs2L’)
【0151】
(2相回生)
たとえばU相およびV相が電流ソース相、W相が電流シンク相である期間(
図10の0°~60°)の期間において、U相出力およびW相出力がロー(つまり下アームがオン)である期間は、U相下アームQ
U-LとV相下アームQ
V-Lに、逆向きに電流が流れ、ボディダイオードの影響が無視できなくなり、U相下アームQ
U-L、V相下アームQ
V-Lのオン抵抗にもとづく電流検出の精度が低下する。
【0152】
したがって、2相(U相,V相)のみが電流ソース相であり、下アームQU-L、QV-がオンである期間は、残りの1相(W相)の下アームQW-Lの電圧降下VW-Lにもとづく電流検出値Dcs3L’を分配することにより、U相およびV相の電流検出値を生成してもよい。
Dcs1=Dcs3L’×X
Dcs2=Dcs3L’×(1-X)
【0153】
分配比率X:1-Xは、直前において、電流ソース相である2相(U相、V相)において、上アームがオン(ハイ出力)であった状態において得られる電流検出値Dcs1H,Dcs2Hの比を用いることができる。
【0154】
実施形態では、外部抵抗Rs0の電圧降下Vcs0にもとづいて、配線の直列抵抗成分にもとづく電流検出値、あるいは三相インバータ230の上アームおよび下アームの電圧降下にもとづく電流検出値を校正したが、その限りでない。外部抵抗Rs0に代えて、磁気検出型の電流センサを設け、電流センサの出力にもとづいて、電流検出値Dcs1~Dcs3を校正するようにしてもよい。つまり上述の説明および回路図において、外部抵抗Rs0を、磁気検出型の電流センサと読み替えて、電圧降下Vcs0を、電流センサの出力と読み替えればよい。
【0155】
具体的な用語を用いて説明される実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0156】
Rs0 外部抵抗
Rs1 第1抵抗
Rs2 第2抵抗
Rs3 第3抵抗
102 DCモータ
200 駆動回路
210 コントローラ
220 プリドライバ
230 三相インバータ
240 電流検出回路
242 マルチプレクサ
244 A/Dコンバータ
246 校正処理部
300 駆動回路
302 半導体チップ