(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インサートおよび切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/14 B
(21)【出願番号】P 2021058879
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 唯之
(72)【発明者】
【氏名】森 聡史
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096304(JP,A)
【文献】特開2017-189848(JP,A)
【文献】特開2017-170544(JP,A)
【文献】特開2014-159072(JP,A)
【文献】特開2013-078840(JP,A)
【文献】特開2001-212703(JP,A)
【文献】特開平07-216561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054544(US,A1)
【文献】国際公開第2018/155644(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/189935(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/105348(WO,A1)
【文献】特開2007-283487(JP,A)
【文献】特開2000-326110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
C22C 1/04-1/059
C22C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金、サーメット、窒化硼素質焼結体、セラミックスのいずれかからなる基体と、
前記基体の上に位置する被覆層と
を有し、
前記基体は、
すくい面を有する第1面と、
逃げ面を有する第2面と、
前記第1面および前記第2面との間に位置する稜線部
と、
前記稜線部の少なくとも一部
に位置する
切刃と
を有し、
前記切刃は、少なくとも一部に第3面を有しており、
前記第3面における前記稜線部に平行な方向の平均算術表面粗さRaをRa1とした場合、前記Ra1は、0.20μm以下であ
り、
前記第3面における前記稜線部に垂直な方向の平均算術表面粗さRaをRa2とした場合、前記Ra1と前記Ra2との差は、0.1μm以下であると共に
、
前記被覆層は、前記第1面に位置する第1被覆層と前記第2面に位置する第2被覆層とを有しており、
前記第1被覆層の切刃近傍において、2D法で測定した残留応力をσ1とし、
前記第2被覆層の切刃近傍において、2D法で測定した残留応力をσ2とした場合、
前記σ1は、前記第1被覆層について、前記第1面に水平であって前記稜線部に垂直な方向における残留応力σ1
22と、前記σ1
22の方向に直角な方向における残留応力σ1
11と、の平均値であり、
前記σ2は、前記第2被覆層について、前記第1面に垂直な方向における残留応力σ2
11と、前記第1面に水平な方向における残留応力σ2
22と、の平均値であり、
前記σ1は、-1050MPa以上、-750MPa以下であり、
前記σ2は、-1400MPa以上、-1100MPa以下である、インサート。
【請求項2】
前記第3面における前記稜線部に平行な方向の十点平均表面粗さRzをRz1とした場合、前記Rz1は、1.5μm以下である、請求項
1に記載のインサート。
【請求項3】
前記第3面における前記稜線部に垂直な方向の十点平均表面粗さRzをRz2とした場合、前記Rz1と前記Rz2との差は、0.2μm以下である、請求項
2に記載のインサート。
【請求項4】
前記被覆層は、
硬質層と、
前記基体と前記硬質層との間に位置する、Ti、Zr、V、Cr、Ta、Nb、Hf、Alの単体以外の金属層と
を含む、請求項1~
3のいずれか一つに記載のインサート。
【請求項5】
前記金属層は、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Si、Yのうち少なくとも一種以上の元素を含有する、請求項
4に記載のインサート。
【請求項6】
端部にポケットを有する棒状のホルダと、
前記ポケット内に位置する、請求項1~
5のいずれか一つに記載のインサートとを有する、切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インサートおよび切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
旋削加工や転削加工等の切削加工に用いられる工具として、たとえば超硬合金、サーメット、セラミックス等の基体を有するインサートが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術には、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させるという点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させることができるインサートおよび切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるインサートは、すくい面を有する第1面と、逃げ面を有する第2面と、第1面および第2面との間に位置する稜線部と、を有し、稜線部の少なくとも一部に切刃が位置するインサートである。切刃は、少なくとも一部に第3面を有しており、第3面における稜線部に平行な方向の平均算術表面粗さRaをRa1とした場合、Ra1は、0.20μm以下である。
【0007】
本開示の一態様による切削工具は、端部にポケットを有する棒状のホルダと、ポケット内に位置する上述のインサートとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るインサートの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るインサートの一例を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る被覆層の構成を示す模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、第3面に対して垂直な方向から第3被覆層を見た模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る切削工具の一例を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第3面の平均算術表面粗さRaの測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、第3面の十点平均表面粗さRzの測定結果を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例1および比較例1,3,4に係るインサートに対する耐摩耗性試験の結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例1および比較例1,3,4に係るインサートに対する耐欠損性試験の結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例1および比較例1に係るインサートの第2被覆層に対する残留応力測定の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示によるインサートおよび切削工具を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示によるインサートおよび切削工具が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
<インサート>
図1は、実施形態に係るインサートの一例を示す斜視図である。
図1に示すように、実施形態に係るインサート1は、チップ本体2と、切刃部3とを有していてもよい。実施形態に係るインサート1は、たとえば、上面および下面(
図1に示すZ軸と交わる面)の形状が平行四辺形である六面体形状を有する。
【0013】
インサート1は、第1面6(ここでは、上面)と、第1面6に連接する第2面7(ここでは、側面)と、第1面6と第2面7との間に位置する稜線部8とを有する。第1面6は、切削により生じた切屑をすくい取るすくい面を有する。また、第2面7は、逃げ面を有する。
【0014】
第1面6は、平面視したとき、複数(ここでは、4つ)の角部61を有する。角部61は、第1面6の角を含む領域である。複数の角部61のうちの少なくとも1つにおける稜線部8には、切刃11が位置している。インサート1は、切刃11を被削材に当てることによって被削材を切削する。
【0015】
(チップ本体2)
チップ本体2は、たとえば超硬合金で形成される。超硬合金は、W(タングステン)、具体的には、WC(炭化タングステン)を含有する。また、超硬合金は、Ni(ニッケル)およびCo(コバルト)の少なくとも一方を含有していてもよい。また、チップ本体2は、サーメットで形成されてもよい。サーメットは、たとえばTi(チタン)、具体的には、TiC(炭化チタン)またはTiN(窒化チタン)を含有する。また、サーメットは、NiやCoを含有していてもよい。
【0016】
チップ本体2のうち、インサート1の角部61に対応する箇所の1つには、切刃部3を取り付けるための座面4が位置していてもよい。また、チップ本体2の中央部には、チップ本体2を上下に貫通する貫通孔5が位置していてもよい。貫通孔5には、後述するホルダ70にインサート1を取り付けるためのネジ75が挿入される(
図7参照)。
【0017】
(切刃部3)
切刃部3は、チップ本体2の座面4に取り付けられることによってチップ本体2と一体化されている。切刃部3は、インサート1が有する複数の角部61のうちの1つを構成する。また、切刃部3は、上述した第1面6、第2面7および稜線部8の一部を構成する。切刃11は、切刃部3における稜線部8の少なくとも一部に位置している。
【0018】
かかる切刃部3の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、実施形態に係るインサート1の一例を示す側断面図である。
図2に示すように、切刃部3は、基体10を有する。また、切刃部3は、被覆層20を有していてもよい。
【0019】
(基体10)
基体10は、超硬合金やサーメット、セラミックスであってもよい。また、複数の窒化硼素粒子を含有する窒化硼素質焼結体であってもよい。実施形態において、基体10は、立方晶窒化硼素(cBN)質焼結体であり、複数の立方晶窒化硼素粒子を含有していてもよい。基体10は、複数の窒化硼素粒子の間に、TiN、Al、Al
2O
3等を含有する結合相を有していてもよい。複数の窒化硼素粒子は、かかる結合相によって強固に結合される。なお、基体10は、必ずしも結合相を有することを要しない。なお、
図1や
図2では、基体10は切刃部3に位置しているが、基体10が、チップ本体2と切刃部3とであってもよい。言い換えると、例えば、矩形状の基体10を用いてもよい。
【0020】
切刃11の少なくとも一部には、第1面6と第2面7とに連続する第3面9が位置している。第3面9は、たとえば、第1面6と第2面7との角部を斜め且つ直線的に削ったC面(チャンファー面)である。第3面9は、第1面6と第2面7との角部を丸めたR面(ラウンド面)であってもよい。
【0021】
基体10の下面には、たとえば超硬合金またはサーメットからなる基板30が位置していてもよい。この場合、基体10は、基板30および接合材40を介してチップ本体2の座面4に接合している。接合材40は、たとえばロウ材である。チップ本体2の座面4以外の部分では、基体10は接合材40を介してチップ本体2と接合していてもよい。
【0022】
(被覆層20)
被覆層20は、例えば、切刃部3の耐摩耗性、耐熱性等を向上させることを目的として基体10に被覆される。
図2の例では、被覆層20がチップ本体2および基体10の両方に位置しているが、被覆層20は、少なくとも基体10の上に位置していればよい。被覆層20が切刃部3の第2面7に相当する基体10の側面に位置する場合、第2面7の耐摩耗性、耐熱性が高い。
【0023】
図3は、実施形態に係る被覆層の構成を示す模式的な側面図である。また、
図4は、第3面9に対して垂直な方向から第3被覆層203を見た模式的な平面図である。
【0024】
図3に示すように、被覆層20は、第1面6に位置する第1被覆層201と、第2面7に位置する第2被覆層202と、第3面9に位置する第3被覆層203とを有する。
【0025】
ここで、第3面9における稜線部8に平行な方向D1(
図4参照)の平均算術表面粗さRaをRa1とした場合、Ra1は、0.20μm以下であってもよい。かかる構成を有するインサート1は、耐久性を損なうことなく、被削材の仕上げ面品位を向上させることができる。
【0026】
また、第3面9における稜線部8に垂直な方向D2(
図4参照)の平均算術表面粗さRaをRa2とした場合、Ra1とRa2との差は、0.1μm以下であってもよい。かかる構成を有するインサート1によれば、被削材の仕上げ面粗さを小さくすることができる。
【0027】
また、第3面9における稜線部8に平行な方向D1の十点平均表面粗さRzをRz1とした場合、Rz1は、1.5μm以下であってもよい。かかる構成を有するインサート1によれば、被削材の仕上げ面粗さを小さくすることができる。
【0028】
また、第3面9における稜線部8に垂直な方向D2の十点平均表面粗さRzをRz2とした場合、Rz1とRz2との差は、0.2μm以下であってもよい。かかる構成を有するインサート1によれば、被削材の仕上げ面粗さを小さくすることができる。
【0029】
また、被覆層20のうち第2面7に位置する第2被覆層202は、立方晶粒子を含有していてもよい。たとえば、第2被覆層202に含有される立方晶粒子は、AlTiNであってもよい。
【0030】
第1被覆層201および第2被覆層202を2D法(X線2次元検出器を用いた応力測定法)で測定した残留応力のうち、第1被覆層201の切刃11近傍における残留応力をσ1とし、第2被覆層202の切刃11近傍における残留応力をσ2とする。
【0031】
たとえば、
図3に示すように、第2被覆層202について、第1面6に垂直な方向における残留応力σ2
11と、第1面6に水平な方向における残留応力σ2
22とを2D法を用いてそれぞれ測定する。そして、得られたσ2
11およびσ2
22の平均値をσ2として算出してもよい。同様に、第1被覆層201について、第1面6に水平で第1面6と第2面7との稜線部に垂直な方向の残留応力をσ1
22とし、σ1
22に直角な方向における残留応力をσ1
11として2D法を用いてそれぞれ測定し、これらの平均値をσ1として算出してもよい。
【0032】
σ1およびσ2は、いずれも圧縮応力であってもよい。一般的に、被覆層の残留応力として引っ張り応力を有する被覆工具は、割れが生じ易い。これに対し、σ1およびσ2がいずれも圧縮応力であるインサート1は、割れが生じにくい。したがって、かかる構成を有するインサート1は、耐久性が高い。
【0033】
また、σ1の残留応力値は、-1050MPa以上、-750MPa以下であってもよい。また、σ2の残留応力は、-1400MPa以上、-1100MPa以下であってもよい。かかる構成を有するインサート1は、さらに耐久性が高い。
【0034】
第2被覆層202の厚みは、0.5μm以上5.0μm以下であってもよい。上記の構成を有するインサート1は、被覆層20の耐剥離性が高く耐衝撃性も高くなるため、被覆層20の耐久性が更に高くなる。
【0035】
(被覆層20の具体的な構成)
次に、被覆層20の具体的な構成について
図5を参照して説明する。
図5は、
図2に示すV部の模式的な拡大図である。
【0036】
図5に示すように、被覆層20は、少なくとも硬質層21を有する。硬質層21は、1層以上の金属窒化物層を有していてもよい。硬質層21は、金属層22と比較して耐摩耗性に優れた層である。硬質層21は1層であってもよい。また、複数の金属窒化物層が重なっていてもよい。また、硬質層21は、複数の金属窒化物層が積層された積層部23と、積層部23の上に位置する第3金属窒化物層24とを有していてもよい。かかる硬質層21の構成については後述する。
【0037】
(金属層22)
また、被覆層20は、金属層22を有していてもよい。金属層22は、基体10と硬質層21との間に位置していてもよい。具体的には、金属層22は、一方の面において基体10に接し、且つ、他方の面において硬質層21に接していてもよい。
【0038】
金属層22は、基体10との密着性が硬質層21と比べて高い。このような特性を有する金属元素としては、たとえば、Zr、V、Cr、W、Al、Si、Yが挙げられる。金属層22は、上記金属元素のうち少なくとも1種以上の金属元素を含有する。
【0039】
なお、Tiの単体、Zrの単体、Vの単体、Crの単体およびAlの単体は、金属層22としては用いられない。これらはいずれも融点が低く、耐酸化性が低いことから、切削工具への使用に適さないためである。また、Hfの単体、Nbの単体、Taの単体、Moの単体は基体10との密着性が低い。ただし、Ti、Zr、V、Cr、Ta、Nb、Hf、Alを含む合金については、この限りではない。
【0040】
金属層22は、Al-Cr合金を含有するAl-Cr合金層であってもよい。かかる金属層22は、基体10との密着性が特に高いことから、基体10と被覆層20との密着性を向上させる効果が高い。
【0041】
金属層22がAl-Cr合金層である場合、金属層22におけるAlの含有量は、金属層22におけるCrの含有量よりも多くてもよい。たとえば、金属層22におけるAlとCrとの組成比(原子%)は、70:30であってもよい。このような組成比率とすることで、基体10と金属層22との密着性はより高い。
【0042】
金属層22は、上記金属元素(Zr、V、Cr、W、Al、Si、Y)以外の成分を含有していてもよい。ただし、基体10との密着性の観点から、金属層22は、上記金属元素を合量で少なくとも95原子%以上含有していてもよい。より好ましくは、金属層22は、上記金属元素を合量で98原子%以上含有してもよい。たとえば、金属層22がAl-Cr合金層である場合、金属層22は、少なくとも、AlおよびCrを合量で95原子%以上含有していてもよい。さらに金属層22は、少なくとも、AlおよびCrを合量で98原子%以上含有していてもよい。なお、金属層22における金属成分の割合は、たとえば、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いた分析により特定可能である。
【0043】
また、Tiは実施形態に係る基体10との濡れ性が悪いため、基体10との密着性向上の観点から、金属層22は、Tiを極力含有していないことが好ましい。具体的には、金属層22におけるTiの含有量は、15原子%以下であってもよい。
【0044】
このように、実施形態に係るインサート1では、基体10との濡れ性が硬質層21と比べて高い金属層22を基体10と硬質層21との間に設けることにより、基体10と被覆層20との密着性を向上させることができる。なお、金属層22は、硬質層21との密着性も高いため、硬質層21が金属層22から剥離するといったことも生じにくい。
【0045】
また、基体10として用いられるcBNは、絶縁体である。絶縁体であるcBNには、PVD法(物理蒸着)により形成される膜との密着性に改善の余地があった。これに対し、実施形態に係るインサート1では、導電性を有する金属層22を基体10の表面に設けることで、PVDにより形成される硬質層21と金属層22との密着性が高い。
【0046】
(硬質層21)
次に、硬質層21の構成について
図6を参照して説明する。
図6は、
図5に示すVI部の模式的な拡大図である。
【0047】
図6に示すように、硬質層21は、金属層22の上に位置する積層部23と、積層部23の上に位置する第3金属窒化物層24とを有する。
【0048】
積層部23は、複数の第1金属窒化物層23aと複数の第2金属窒化物層23bとを有する。積層部23は、第1金属窒化物層23aと第2金属窒化物層23bとが交互に積層された構成を有している。
【0049】
第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの厚みは、それぞれ50nm以下としてもよい。このように、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bを薄く形成することで、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの残留応力が小さい。これにより、たとえば、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの剥離やクラック等が生じ難くなることから、被覆層20の耐久性が高い。
【0050】
第1金属窒化物層23aは、金属層22に接する層であり、第2金属窒化物層23bは、第1金属窒化物層23a上に形成される。
【0051】
第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bは、金属層22に含まれる金属を含有していてもよい。
【0052】
たとえば、金属層22に2種類の金属(ここでは、「第1の金属」、「第2の金属」とする)が含まれているとする。この場合、第1金属窒化物層23aは、第1の金属および第3の金属の窒化物を含有する。第3の金属は、金属層22に含まれない金属である。また、第2金属窒化物層23bは、第1の金属および第2の金属の窒化物を含有する。
【0053】
たとえば、実施形態において、金属層22は、AlおよびCrを含有してもよい。この場合、第1金属窒化物層23aは、Alを含有してもよい。具体的には、第1金属窒化物層23aは、AlおよびTiの窒化物であるAlTiNを含有するAlTiN層であってもよい。また、第2金属窒化物層23bは、AlおよびCrの窒化物であるAlCrNを含有するAlCrN層であってもよい。
【0054】
このように、金属層22に含まれる金属を含有する第1金属窒化物層23aを金属層22の上に位置させることで、金属層22と硬質層21との密着性が高い。これにより、硬質層21が金属層22から剥離し難くなるため、被覆層20の耐久性が高い。
【0055】
第1金属窒化物層23aすなわちAlTiN層は、上述した金属層22との密着性の他、たとえば耐摩耗性に優れる。また、第2金属窒化物層23bすなわちAlCrN層は、たとえば耐熱性、耐酸化性に優れる。このように、被覆層20は、互いに異なる組成の第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bを含むことで、硬質層21の耐摩耗性や耐熱性等の特性を制御することができる。これにより、インサート1の工具寿命を延ばすことができる。たとえば、実施形態に係る硬質層21においては、AlCrNが持つ優れた耐熱性を維持しつつ、金属層22との密着性や耐摩耗性といった機械的性質を向上させることができる。
【0056】
なお、積層部23は、たとえばアークイオンプレーティング法(AIP法)により成膜してもよい。AIP法は、真空雰囲気でアーク放電を利用してターゲット金属(ここでは、AlTiターゲットおよびAlCrターゲット)を蒸発させ、N2ガスと結合することによって金属窒化物(ここでは、AlTiNとAlCrN)を成膜する方法である。なお、金属層22もAIP法により成膜してもよい。
【0057】
第3金属窒化物層24は、積層部23の上に位置してもよい。具体的には、第3金属窒化物層24は、積層部23のうち第2金属窒化物層23bと接する。第3金属窒化物層24は、たとえば、第1金属窒化物層23aと同様、TiおよびAlを含有する金属窒化物層(AlTiN層)である。
【0058】
第3金属窒化物層24の厚みは、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの各厚みよりも厚くてもよい。具体的には、上述したように第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの厚みは50nm以下とした場合、第3金属窒化物層24の厚みは、1μm以上としてもよい。たとえば、第3金属窒化物層24の厚みは、1.2μmであってもよい。
【0059】
これにより、たとえば、第3金属窒化物層24の摩擦係数が低い場合には、インサート1の耐溶着性を向上させることができる。また、たとえば、第3金属窒化物層24の硬度が高い場合には、インサート1の耐摩耗性を向上させることができる。また、たとえば、第3金属窒化物層24の酸化開始温度が高い場合には、インサート1の耐酸化性を向上させることができる。
【0060】
また、第3金属窒化物層24の厚みは、積層部23の厚みよりも厚くてもよい。具体的には、実施形態において、積層部23の厚みは0.5μm以下とした場合、第3金属窒化物層24の厚みは、1μm以上であってもよい。たとえば、積層部23の厚みが0.3μmである場合、第3金属窒化物層24の厚みは1.2μmであってもよい。このように、第3金属窒化物層24を積層部23よりも厚くすることで、上述した耐溶着性、耐摩耗性等を向上させる効果がさらに高い。
【0061】
なお、金属層22の厚みは、たとえば0.1μm以上、0.6μm未満であってもよい。すなわち、金属層22は、第1金属窒化物層23aおよび第2金属窒化物層23bの各々よりも厚く、且つ、積層部23よりも薄くてもよい。
【0062】
<切削工具>
次に、上述したインサート1を備えた切削工具の構成について
図7を参照して説明する。
図7は、実施形態に係る切削工具の一例を示す正面図である。
【0063】
図7に示すように、実施形態に係る切削工具100は、インサート1と、インサート1を固定するためのホルダ70とを有する。
【0064】
ホルダ70は、第1端(
図7における上端)から第2端(
図7における下端)に向かって伸びる棒状の部材である。ホルダ70は、たとえば、鋼、鋳鉄製である。特に、これらの部材の中で靱性の高い鋼が用いられることが好ましい。
【0065】
ホルダ70は、第1端側の端部にポケット73を有する。ポケット73は、インサート1が装着される部分であり、被削材の回転方向と交わる着座面と、着座面に対して傾斜する拘束側面とを有する。着座面には、後述するネジ75を螺合させるネジ孔が設けられている。
【0066】
インサート1は、ホルダ70のポケット73に位置し、ネジ75によってホルダ70に装着される。すなわち、インサート1の貫通孔5にネジ75を挿入し、このネジ75の先端をポケット73の着座面に形成されたネジ孔に挿入してネジ部同士を螺合させる。これにより、インサート1は、切刃部3がホルダ70から外方に突出するようにホルダ70に装着される。
【0067】
実施形態においては、いわゆる旋削加工に用いられる切削工具を例示している。旋削加工としては、例えば、内径加工、外径加工及び溝入れ加工が挙げられる。なお、切削工具としては旋削加工に用いられるものに限定されない。例えば、転削加工に用いられる切削工具にインサート1を用いてもよい。
【0068】
たとえば、被削材の切削加工は、(1)被削材を回転させる工程、(2)回転する被削材にインサート1の切刃11を接触させて被削材を切削する工程、および、(3)インサート1を被削材から離す工程を含む。なお、被削材の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄、または非鉄金属などが挙げられる。
【0069】
(実施例)
次に、インサート1の製造方法の一例について説明する。ここでは、基体10がcBNからなる場合の製造方法の一例について説明する。まず、TiN原料粉末72体積%以上82体積%以下と、Al原料粉末13体積%以上23体積%以下と、Al2O3原料粉末1体積%以上11体積%以下とを準備する。そして、準備した各原料粉末に有機溶媒を添加する。有機溶媒としては、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類が用いられ得る。その後、ボールミルにて、20時間以上24時間以下、粉砕および混合する。粉砕および混合後、溶媒を蒸発させることにより、第1混合粉末が得られる。
【0070】
次に、平均粒径が2.5μm以上4.5μm以下であるcBN粉末と、平均粒径が0.5μm1.5μm以下であるcBN粉末とを、体積比で8以上9以下:1以上2以下の割合で調合する。さらに、有機溶媒を添加する。有機溶媒としては、アセトン、IPA等のアルコール類が用いられ得る。その後、ボールミルにて、20時間以上24時間以下、粉砕および混合する。粉砕および混合後、溶媒を蒸発させることにより、第2混合粉末が得られる。
【0071】
次に、得られた第1混合粉末と第2混合粉末とを、体積比で68以上78以下:22以上32以下の割合で調合する。調合した粉末に有機溶媒と有機バインダとを添加する。有機溶媒としては、アセトン、IPA等のアルコール類が用いられ得る。また、有機バインダとしては、パラフィン、アクリル系樹脂等が用いられ得る。その後、ボールミルにて20時間以上24時間以下粉砕混合し、さらにその後、有機溶媒を蒸発させることにより、第3混合粉末が得られる。なお、ボールミルを用いた工程では必要に応じて分散剤を添加しても良い。
【0072】
そして、この第3混合粉末を所定形状に成形することによって成形体が得られる。成形には、一軸加圧プレス、冷間等方圧プレス(CIP)等の既知の方法が使用され得る。この成形体を300℃以上600℃以下の範囲内の所定の温度にて加熱し、有機バインダを蒸発除去する。
【0073】
次に、成形体を超高圧加熱装置に装入し、4GPa以上6GPa以下の圧力下において1200℃以上1500℃以下で15分以上30分以下加熱する。これにより、実施形態に係る立方晶窒化硼素質焼結体が得られる。そして、得られた立方晶窒化硼素質焼結体を、超硬合金からなるチップ本体の座面に接合材を介して取り付ける。
【0074】
次に、物理気相蒸着(PVD)法によってチップの表面に被覆層20を製膜する。その後、被覆層20に対し、エアロラップ(登録商標)処理を以下に示す条件にて行うことにより、実施例1および比較例3~5に係るインサートを作製した。また、製膜した被覆層20に対してエアロラップ(登録商標)処理を行わなかったインサートを比較例1とし、市販のインサートを比較例2とした。
【0075】
<エアロラップ(登録商標)処理の条件>
装置:ヤマシタワークス社製 エアロラップ(登録商標)
メディア:マルチコーン
メディア径:0.1~0.5mm
羽部インバータ周波数:40Hz
噴射時間:0秒(処理なし、比較例1)、5秒(比較例2)、10秒(実施例1)、15秒(比較例3)
湿式/乾式:湿式
【0076】
なお、メディアは、羽部の回転により噴射される。羽部の回転数は、インバータによって40Hz(1秒間に40回転)に制御される。
【0077】
実施例1および比較例1~5に係るインサートについて、第3面9の表面粗さの測定を行った。表面粗さ測定には、たとえば、KEYENCE社製 形状解析レーザ顕微鏡 VK-X1000が使用される。具体的な測定条件としては、第3面9に対して垂直な方向から第3面9を観察した時に、第1面6に平行な方向に750μm、第1面6から垂直な方向に300μmで囲まれる領域を、波長661nmの赤色半導体レーザにて走査した。その後、測定領域内の第3面9の中央部に第1面6に平行な方向に測定距離0.4mm粗さ曲線を5ヶ所抽出し、測定5ヶ所の粗さ曲線を合成して1本の粗さ曲線を求めた。求めた1本の粗さ曲線から算術表面粗さ(Ra)および十点表面粗さ(Rz)を測定した。
【0078】
図8は、第3面9の平均算術表面粗さRaの測定結果を示す図である。
図8には、実施例1および比較例1~5について、第3面9における稜線部8に平行な方向D1の平均算術表面粗さRa1および第3面9における稜線部8に垂直な方向D2の平均算術表面粗さRa2を示している。
【0079】
図8に示すように、比較例1~4に係るインサートの平均算術表面粗さRa1は、0.20μmよりも大きいのに対し、実施例1および比較例5に係るインサートの平均算術表面粗さRa1は、0.20μm以下であった。
【0080】
また、実施例1に係るインサートにおいて、平均算術表面粗さRa1と平均算術表面粗さRa2との差は、0.1μm以下であった。具体的には、Ra1の方がRa2よりも大きく、その差(Ra1-Ra2)は、0.01μm以上0.025μm以下であった。
【0081】
図9は、第3面9の十点平均表面粗さRzの測定結果を示す図である。
図9には、実施例1および比較例1~5について、第3面9における稜線部8に平行な方向D1の十点平均表面粗さRz1および第3面9における稜線部8に垂直な方向D2の十点平均表面粗さRz2を示している。
【0082】
図9に示すように、比較例1~5に係るインサートの十点平均表面粗さRz1は、1.5μmよりも大きいのに対し、実施例1に係るインサートの十点平均表面粗さRz1は、1.5μm以下であった。
【0083】
また、実施例1に係るインサートにおいて、十点平均表面粗さRz1と十点平均表面粗さRz2との差は、0.2μm以下であった。具体的には、Rz1の方がRz2よりも大きく、その差(Rz1-Rz2)は、0.1μm以上0.20μm以下であった。
【0084】
また、実施例1および比較例1,3,4に係るインサートについて、以下の条件にて耐摩耗性試験および耐欠損性試験を行った。
【0085】
<耐欠損性試験>
被削材:SCr420
切削速度:160m/分
送り:0.2mm/rev
切込み:0.2mm
切削状態:乾式
評価方法:欠損するまでの衝撃回数
【0086】
図10は、実施例1および比較例1,3,4に係るインサートに対する耐摩耗性試験の結果を示すグラフである。また、
図11は、実施例1および比較例1,3,4に係るインサートに対する耐欠損性試験の結果を示すグラフである。
【0087】
図10および
図11に示すように、実施例1に係るインサートは、比較例1に係るインサートすなわちエアロラップ(登録商標)処理を行っていないインサートと比較して同等の耐摩耗性および耐欠損性を有することがわかる。また、比較例3,4に係るインサートについても、エアロラップ(登録商標)処理を行っていないインサートと比較して同等の耐摩耗性および耐欠損性を有することがわかる。なお、比較例5に係るインサートすなわちエアロラップ(登録商標)処理においてメディアを30秒間照射したインサートは、比較例1に係るインサートと比較して、耐欠損性は同等であったが耐摩耗性が悪化した。
【0088】
比較例5に係るインサートの耐摩耗性が悪化した原因は、メディアの照射時間を30秒間とすることで、第2面と第3面との境界部分の角部に位置する被覆層の厚みが薄くなり過ぎたためだと考えられる。これに対し、実施例1に係るインサートは、メディアの照射時間を10秒間に抑えることで、第2面と第3面との境界部分の角部に位置する被覆層の厚みが薄くなることが抑えられる結果、耐摩耗性が良好であったと考えられる。
【0089】
また、上述した耐摩耗性試験に用いた被削材の仕上げ面の面粗さの測定を行った。
<測定条件>
測定装置:オリンパス製 LEXT OLS4000
測定長さ:4.0mm
カットオフ値:0.8mm
走査速度:0.6mm/秒
【0090】
実施例1に係るインサートを用いて切削した被削材は、比較例1に係るインサートを用いて切削した被削材と比べて仕上げ面粗さが小さかった。また、実施例1に係るインサートを用いて切削した被削材は、比較例3に係るインサートを用いて切削した被削材および比較例4に係るインサートを用いて切削した被削材と比べても仕上げ面粗さが小さかった。
【0091】
実施例1および比較例1に係るインサートについて、第2被覆層の残留応力の測定を以下の条件にて行った。残留応力測定は、第1被覆層は、切刃の刃先からインサートの中心方向に向かって0.8mm離れた位置で行った。また、第2被覆層は、切刃の刃先から、第1面に平行な方向に1.3mm離れ、第1面に垂直な方向に0.5mm離れた位置で行った。残留応力値は第1被覆層の互いに垂直な2つの方向の残留応力値を平均し、第2被覆層の第1面と平行および垂直な方向の残留応力値を平均して、それぞれσ1およびσ2とした。
【0092】
<残留応力測定の条件>
装置:Bruker Japan社製 D8 Discover Plus IμS
線源:CuKα
コリメータ径:0.3mm
測定回折線:TiAlN(311)面、2θ=75.5°
測定方法:2D法
【0093】
図12は、実施例1および比較例1に係るインサートの第2被覆層に対する残留応力測定の結果を示す表である。なお、
図12には、実施例1および比較例1に係るインサートの第2被覆層に対する残留応力測定の結果と合わせて、実施例1および比較例1~3に係るインサートにおける第3面の表面粗さの測定結果を示している。表面粗さの測定結果は、
図8および
図9に示した結果と同様のものである。
【0094】
図12に示すように、実施例1に係るインサートにおいて、σ1は、-1050MPa以上、-750MPa以下の圧縮応力であり、σ2は、-1400MPa以上、-1100MPa以下の圧縮応力であった。これに対し、比較例1に係るインサートのσ2は、-1400MPa以上、-1100MPa以下の範囲からはずれていた。
【0095】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、窒化硼素粒子等からなる基体10を、超硬合金等からなるチップ本体2に取り付け、これらを被覆層20でコーティングしたインサート1について説明した。これに限らず、本開示によるインサートは、たとえば、上面および下面の形状が平行四辺形である六面体形状の基体の全てが立方晶窒化硼素質焼結体であって、かかる基体の上に被覆層が形成されたものであってもよい。
【0096】
上述した実施形態では、インサート1の上面および下面の形状が平行四辺形である場合の例を示したが、インサート1の上面および下面の形状は、ひし形や正方形等であってもよい。また、インサート1の上面および下面の形状は、三角形、五角形、六角形等であってもよい。
【0097】
また、インサート1の形状は、ポジティブ型であってもよいしネガティブ型であってもよい。ポジティブ型は、インサート1の上面の中心および下面の中心を通る中心軸に対して側面が傾斜しているタイプであり、ネガティブ型は、上記中心軸に対して側面が平行なタイプである。
【0098】
上述した実施形態では、基体10が立方晶窒化硼素(cBN)の粒子を含有する場合の例について説明した。これに限らず、本願の開示する基体は、たとえば、六方晶窒化硼素(hBN)、菱面体晶窒化硼素(rBN)、ウルツ鉱窒化硼素(wBN)等の粒子を含有していてもよい。また、基体10は、窒化硼素に限らず、たとえば超硬合金およびサーメット等であってもよい。超硬合金は、W(タングステン)、具体的には、WC(炭化タングステン)を含有する。また、超硬合金は、Ni(ニッケル)やCo(コバルト)を含有していてもよい。また、サーメットは、たとえばTi(チタン)、具体的には、TiC(炭化チタン)またはTiN(窒化チタン)を含有する。また、サーメットは、NiやCoを含有していてもよい。
【0099】
上述した実施形態では、インサート1が切削加工に用いられるものとして説明したが、本願によるインサートは、たとえば掘削用の工具や刃物など、切削工具以外への適用も可能である。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 インサート
2 チップ本体
3 切刃部
4 座面
5 貫通孔
6 第1面
7 第2面
8 稜線部
9 第3面
10 基体
11 切刃
20 被覆層
21 硬質層
22 金属層
23 積層部
23a 第1金属窒化物層
23b 第2金属窒化物層
24 第3金属窒化物層
100 切削工具
201 第1被覆層
202 第2被覆層
203 第3被覆層