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  • 特許-ワニス滴下装置およびワニス滴下方法 図1
  • 特許-ワニス滴下装置およびワニス滴下方法 図2
  • 特許-ワニス滴下装置およびワニス滴下方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ワニス滴下装置およびワニス滴下方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20241008BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241008BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241008BHJP
   B05D 7/26 20060101ALI20241008BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241008BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02K15/12 D
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/26
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059852
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156259
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】須貝 直史
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0064604(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0020138(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
B05C 5/00
B05C 11/10
B05D 7/26
B05D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワニスを供給する供給手段と、
前記供給手段から供給されるワニスをノズルから滴下するディスペンサと、を備え、
前記ディスペンサは、
前記供給手段から供給されるワニスを一時的に蓄えるチャンバーと、
前記チャンバーの中に設けられ、所定の大きさよりも小さい貫通部を有することでワニス中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能なフィルタと、
前記フィルタの前記貫通部を通過したワニスを前記チャンバーから前記ノズルに導く流路と、を有
前記チャンバーは、大径部と、前記流路から前記大径部に向けて拡径する拡径部と、で構成され、
前記フィルタは、前記大径部と前記拡径部との境界部に配置される平板状のフィルタである、ワニス滴下装置。
【請求項2】
前記チャンバーにおける前記フィルタよりも上流の位置に開閉可能に設けられ、ワニスの滴下時に閉口されると共に、開口時に、前記チャンバーの中に残留する気泡を排出する気泡排出手段を備える、請求項1に記載のワニス滴下装置。
【請求項3】
前記フィルタは、ワニスに対して非溶解性の金属で構成される、請求項1又は2に記載のワニス滴下装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のワニス滴下装置を用いてワニスを滴下する、ワニス滴下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワニス滴下装置およびワニス滴下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばステータコアにステータコイルが装着されたステータのコイルエンド部等に向けて、ワニスを滴下するワニス滴下装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1のワニス滴下装置では、ディスペンサのノズルからワークに向けてワニスを滴下することにより、ワークに対してワニスを塗布、含浸させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6221574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ワニスをディスペンサへ供給する際、外乱等にてワニス内に生じる気泡の除去が考慮されていないため、気泡をそのまま含んだ状態のワニスがワークに滴下され、許容範囲を超える大きさの気泡がワークに付着する。そのため、ワークに高品質なワニスを精度良く滴下することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスを滴下するワニス滴下装置およびワニス滴下方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係るワニス滴下装置(例えば、後述するワニス滴下装置1)は、ワニス(例えば、後述するワニスV)を供給する供給手段(例えば、後述する供給部10)と、前記供給手段から供給されるワニスをノズル(例えば、後述するノズル20a)から滴下するディスペンサ(例えば、後述するディスペンサ20)と、を備え、前記ディスペンサは、前記供給手段から供給されるワニスを一時的に蓄えるチャンバー(例えば、後述するチャンバー41)と、前記チャンバーの中に設けられ、所定の大きさよりも小さい貫通部(例えば、後述する網目42a)を有することでワニス中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能なフィルタ(例えば、後述するフィルタ42)と、前記フィルタの前記貫通部を通過したワニスを前記チャンバーから前記ノズルに導く流路(例えば、後述する小径貫通部43)と、を有する。
【0007】
(1)のワニス滴下装置によれば、所定の大きさよりも小さい貫通部を有することでワニス中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能なフィルタを備え、該フィルタの貫通部を通過したワニスをディスペンサのノズルに導くので、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスを滴下することができる。これにより、高品質なワニスを滴下することができ、ひいては、ワニスを滴下する作業の効率を向上させることができる。
【0008】
(2) (1)のワニス滴下装置において、前記チャンバーにおける前記フィルタよりも上流の位置に開閉可能に設けられ、ワニスの滴下時に閉口されると共に、開口時に、前記チャンバーの中に残留する気泡(例えば、後述する気泡B)を排出する気泡排出手段(例えば、後述する気泡排出部44)を備えてよい。
【0009】
(2)のワニス滴下装置によれば、気泡排出手段を開口することで、フィルタを通過できずにチャンバーの中に残留する気泡を排出することができ、チャンバーの中に気泡が残留することに起因するワニスの滴下不良を防止することができる。
【0010】
(3) (1)又は(2)のワニス滴下装置において、前記フィルタは、ワニスに対して非溶解性の金属で構成されることが好ましい。
【0011】
(3)のワニス滴下装置によれば、フィルタが、ワニスに対して非溶解性の金属で構成されるので、経年でフィルタの機能が損なわれてしまうことを防止できる。
【0012】
(4) また本発明は、(1)から(3)いずれかのワニス滴下装置を用いてワニスを滴下する、ワニス滴下方法を提供する。
【0013】
(4)のワニス滴下方法によれば、所定の大きさよりも小さい貫通部を有することでワニス中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能なフィルタを備え、該フィルタの貫通部を通過したワニスをディスペンサのノズルに導くので、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスを滴下することができる。これにより、高品質なワニスを滴下することができ、ひいては、ワニスを滴下する作業の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスを滴下することができ、高品質なワニスを滴下することができる。ひいては、ワニスを滴下する作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るワニス滴下装置の概略図である。
図2】ワニス滴下装置におけるアダプタの周辺を示す図である。
図3】許容範囲を超える大きさの気泡とフィルタの網目の大きさとを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
まず、図1および図2を用いて、本発明の実施形態に係るワニス滴下装置1の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るワニス滴下装置1の概略図である。図2は、ワニス滴下装置1におけるアダプタ40の周辺を示す図である。
【0018】
本実施形態に係るワニス滴下装置1は、ワークに対してワニスVを滴下することにより、該ワークにワニスVを塗布するものである。ワークとしては特に限定されないが、例えば、ステータコアにステータコイルが装着されたステータが挙げられ、該ステータのコイルエンド部等に向けて、ワニスVを滴下するものである。
【0019】
図1図3に示すように、ワニス滴下装置1は、ワーク等(図示省略)に対してワニスVを滴下する装置である。具体的に、ワニス滴下装置1は、供給部10と、ディスペンサ20と、を備える。
【0020】
供給部10は、コンプレッサ(図示省略)から供給される空気の圧力によって、ディスペンサ20にワニスVを供給する。具体的に、供給部10は、タンク11と、加圧計12と、チューブ13と、ストレーナ14と、継手15と、圧力センサ16と、を有する。
【0021】
タンク11は、ワニスVを収容している。このタンク11は、コンプレッサ(図示省略)から空気の供給を受けて、チューブ13を介してディスペンサ20にワニスVを供給する。加圧計12は、タンク11内の圧力を計測してその計測結果を表示する。チューブ13は、タンク11が収容しているワニスVをディスペンサ20に導く管である。
【0022】
ストレーナ14は、チューブ13の途中に設けられ、チューブ13を流れるワニスVに混入する異物を除去する。継手15は、チューブ13とディスペンサ20を接続する。圧力センサ16は、継手15内の圧力を検出して、その検出結果を信号にして出力する。
【0023】
ディスペンサ20は、供給部10から供給されるワニスVをノズル20aから滴下する。具体的に、ディスペンサ20は、ディスペンサ本体30と、アダプタ40と、を有する。
【0024】
ディスペンサ本体30は、ディスペンサ20の動力部分である。具体的に、ディスペンサ本体30は、筐体31と、スクリュー32と、モータ33と、減速機34と、を有する。
【0025】
筐体31は、スクリュー32を収容していると共に、供給部10から供給されるワニスVを受け入れる。スクリュー32は、回転することで、供給部10から筐体31が受け入れたワニスVをアダプタ40に送り出す。モータ33は、圧力センサ16,45の検出結果等に基づいて駆動することで、スクリュー32を回転させる。減速機34は、モータ33の回転速度を減速してスクリュー32に出力する。
【0026】
アダプタ40は、ワニス滴下装置1の特徴部分であり、ディスペンサ本体30に取り付けられて使用される。具体的に、アダプタ40は、チャンバー41と、フィルタ42と、小径貫通部43と、気泡排出部44と、圧力センサ45と、等を有する。
【0027】
チャンバー41は、供給部10から供給され、ディスペンサ本体30から送り出されたワニスVを一時的に蓄える。チャンバー41は、後述の小径貫通部43と比べて大径の筒状である大径部41aと、後述の小径貫通部43から該大径部に向けて拡径する筒状の拡径部41bと、を含んで構成される。
【0028】
フィルタ42は、チャンバー41の中に設けられる。より具体的に、フィルタ42は、チャンバー41を構成する大径部41aと拡径部41bとの境界部に配置される。フィルタ42は、所定の大きさよりも小さい貫通部としての網目42aを有することで、ワニスV中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能なフィルタである。なお、本実施形態では網目状のフィルタ42を用いたが、これに限定されず、例えば多孔質状のフィルタ等を用いることも可能である。
【0029】
フィルタ42の貫通部の大きさは、ワニスV中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能な大きさである。具体的には、例えば0.2mmよりも小さい径(例えば平均径)の貫通部や、各辺の長さが0.2mmより小さい貫通部である。0.2mm以上の気泡が含まれた状態のワニスVがワークに滴下されると、仕損になってしまうことが実験により判明しているところ、フィルタ42の貫通部の大きさが0.2mmよりも小さいことにより、仕損の原因となる0.2mm以上の気泡を除去することができ、仕損の原因を取り除くことが可能となっている。
【0030】
ここで、図3は、許容範囲を超える大きさの気泡Bとフィルタ42の網目42aの大きさとを比較する図である。上述したように、許容範囲を超える気泡の大きさは、0.2mm以上である。図3に示されるように、フィルタ42の網目42aの大きさ(四角形の各辺の長さ)は0.2mmよりも小さいため、許容範囲を超える0.2mm以上の径の気泡は、フィルタ42の網目42aを通過することができず、チャンバー41内に残存する。
【0031】
特にワニス滴下装置は、システムを構築するうえで、タンク、チューブ、継手等の結合部を多く有することから、これら結合部からエアが侵入するおそれがある。また、ディスペンサのワニス垂れ防止として通常行われるサックバックにより、ワニスを引き込む際にエアが混入する可能性が高い。これに対して本実施形態に係るワニス滴下装置1によれば、上述のフィルタ42を備えることで、ワニスV中に含まれる気泡を効果的に除去可能となっている。
【0032】
フィルタ42は、ワニスに対して非溶解性の金属で構成されることが好ましい。例えば、SUSやアルミ等の金属により構成されることが好ましい。これらの非溶解性の金属で構成されたフィルタを用いることにより、フィルタの経年劣化が抑制される。
【0033】
小径貫通部43は、フィルタ42を通過したワニスVを、チャンバー41からディスペンサ20のノズル20aに導く流路である。
【0034】
気泡排出部44は、チャンバー41におけるフィルタ42よりも上流の位置に開閉可能に設けられ、ワニスVの滴下時にボルト44aで閉口されると共に、開口時に、供給部10からワニスVを空打ちすることで、チャンバー41の中に残留する気泡を排出する。圧力センサ45は、チャンバー41内の圧力を検出してその検出結果を信号にして出力する。
【0035】
以上の構成を備える本実施形態に係るワニス滴下装置1を用いることにより、本発明のワニス滴下方法の実行が可能である。即ち、本実施形態に係るワニス滴下装置1を用いることにより、供給部10から供給されるワニスVを、フィルタ42の網目42aを通過させてから、ディスペンサ20のノズル20aから滴下することで、ワークに対してワニスを塗布可能である。
【0036】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0037】
本実施形態に係るワニス滴下装置1によれば、所定の大きさよりも小さい貫通部を有することでワニス中に含まれる気泡の少なくとも一部を除去可能な貫通部としての網目42aを有するフィルタ42を備え、該フィルタ42の網目42aを通過したワニスVをディスペンサ20のノズル20aに導くので、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスVを滴下することができる。これにより、高品質なワニスVを滴下することができ、ひいては、ワニスVを滴下する作業の効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るワニス滴下装置1によれば、気泡排出部44を開口することで、チャンバー41の中に残留する気泡Bを排出することができ、チャンバー41の中に気泡Bが残留することに起因するワニスVの滴下不良を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るワニス滴下装置1によれば、フィルタ42が、ワニスVに対して非溶解性の金属で構成されるので、経年で劣化してフィルタ42の機能が損なわれてしまうことを防止できる。
【0040】
さらには、本実施形態に係るワニス滴下装置1を用いてワニスを滴下するワニス滴下方法によれば、同様に、許容範囲を超える大きさの気泡を排除してからワニスVを滴下することができる。これにより、高品質なワニスVを滴下することができ、ひいては、ワニスVを滴下する作業の効率を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 ワニス滴下装置
10 供給部(供給手段)
11 タンク
12 加圧計
13 チューブ
14 ストレーナ
15 継手
16 圧力センサ
20 ディスペンサ
20a ノズル
30 ディスペンサ本体
31 筐体
32 スクリュー
33 モータ
34 減速機
40 アダプタ
41 チャンバー
42 フィルタ
42a 網目(貫通部)
43 小径貫通部(流路)
44 気泡排出部(気泡排出手段)
44a ボルト
45 圧力センサ
V ワニス
B 気泡
図1
図2
図3