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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】空調制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60H1/00 102E
B60H1/32 613K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021062852
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158151
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】三上 博亮
(72)【発明者】
【氏名】今井 賢一郎
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306234(JP,A)
【文献】特開2003-118641(JP,A)
【文献】特開平7-304326(JP,A)
【文献】実開平2-103809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下辺に沿って車幅方向に延びるカウルパネルと、
前記カウルパネルに設けられた排水孔と、
前記排水孔を閉塞可能な閉塞パネルと、
降雨の有無を検出するレインセンサと、
前記レインセンサの出力に応じて前記閉塞パネルを用いた前記排水孔の開閉制御を行う制御部と、を備えた
空調制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記開閉制御の処理として、
車室の空調に関する設定において車外の空気を導入するモードが設定されている場合に前記閉塞パネルを用いて前記排水孔を閉塞させる処理を実行する
請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記開閉制御の処理として、
車外の温度が所定温度よりも高い場合に前記閉塞パネルを用いて前記排水孔を閉塞させる処理を実行する
請求項1から請求項2の何れかに記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記開閉制御の処理として、
車両の速度が所定速度よりも低い場合に前記閉塞パネルを用いて前記排水孔を閉塞させる処理を実行する
請求項1から請求項3の何れかに記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記開閉制御の処理として、
所定条件が成立していない場合には前記閉塞パネルを用いて前記排水孔を開放させる処理を実行する
請求項1から請求項4の何れかに記載の空調制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の空調についての制御を行う空調制御システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の空調制御システムにおいては、車外の空気を導入する外気導入モードが設定されている場合に、降雨による空調制御システムへの浸水を防止する構造が知られている。
例えば、下記特許文献1においては、カウルパネルに形成された外気導入孔に回動可能な開閉体が装着された車両についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-86647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷房運転時においてエアコンユニットに導入された外気が高すぎる場合には、燃費や電費が悪化してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、降雨時の排水性能と外気導入モードにおけるエネルギー効率の向上の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空調制御システムは、フロントガラスの下辺に沿って車幅方向に延びるカウルパネルと、前記カウルパネルに設けられた排水孔と、前記排水孔を閉塞可能な閉塞パネルと、降雨の有無を検出するレインセンサと、前記レインセンサの出力に応じて前記閉塞パネルを用いた前記排水孔の開閉制御を行う制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、降雨時の排水性能と外気導入モードにおけるエネルギー効率の向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両が備える空調制御システムの構成例を示す概略図である。
図2】車両のフロントパネルの下辺に沿って配置された外気取込ユニットを示す概略図である。
図3】カウルパネルの一部を示す斜視図である。
図4】板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図5】板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図6】制御部が実行する処理の一例についてのフローチャートである。
図7】第1の変形例において板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図8】第1の変形例において板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図9】第2の変形例における閉塞パネルの斜視図である。
図10】第2の変形例における閉塞パネルを図9とは異なる方向から見た状態を示す斜視図である。
図11】第2の変形例において板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図12】第2の変形例において板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルの横断面図である。
図13】第2の変形例において板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図14】第2の変形例において板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルの横断面図である。
図15】第3の変形例において板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルを示す斜視図である。
図16】第3の変形例において板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルを示す斜視図である。
図17】第4の変形例において板部が開放位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である。
図18】第4の変形例において板部が閉塞位置に位置された状態の閉塞パネルを車幅方向から見た側面図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.車両制御システムの構成>
図1を参照して車両100が備える空調制御システム1の構成について説明する。なお車両100は、内燃機関を備えた車両や電動車両やハイブリッド車両などの各種の車両に適用することができる。
【0010】
また、以降の説明においては、車両100の進行方向を前方として前後方向を説明する。
【0011】
空調制御システム1は、エアコンユニット2と、制御部3と、センサ類4と、操作子類5と、外気取込ユニット6と、モータ7と、を備えている。
【0012】
エアコンユニット2は、外気取込ダクト8や、ラジエータや、水温センサや、コンデンサ(凝縮器)や、コンプレッサや、エバポレータや、ラジエータファンや、送風ファン等を備えて構成されている。
【0013】
制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成されている。制御部3は、ROMに記憶されたプログラムに基づいて処理を実行することにより、後述する制御を実現する。
【0014】
なお、制御部3は、複数のECU(Electric Control Unit)によって構成されていてもよい。複数のECUとは、例えば、ACECU(Air Conditioner ECU)やエンジン制御ECUや充電制御ECUやエアバッグECUなどが挙げられる。
【0015】
また、エアコンユニット2は、制御部3の一部であるACECUを含んで構成されていてもよい。即ち、エアコンユニット2と制御部3の構成態様は図1に示す態様に限られない。
【0016】
センサ類4は、車内及び車外における各種の情報を取得するためのセンサを包括的に示したものである。センサ類4が備える各種センサとしては、例えば、レインセンサ4a、外気温センサ4b、車速センサ4c、カメラなどを挙げることができる。
【0017】
レインセンサ4aは、降雨の有無に応じた信号を出力するセンサである。レインセンサ4aは、降雨を検出した場合にON信号を出力し、降雨を検出していない場合にはOFF信号を出力する。なお、レインセンサ4aは、降雨の状態を雨量に応じて何段階かに分けて検出するものであってもよい。
【0018】
外気温センサ4bは、検出した車外の気温に応じた信号を出力するセンサである。
【0019】
車速センサ4cは、車両100の走行速度を検出するセンサである。
【0020】
操作子類5は、車両100の各部に設けられた操作子を包括的に示したものである。操作子類5が備える各種操作子としては、例えば、イグニッションスイッチ5a、エアコン関連スイッチ5b、ブレーキスイッチ、ウインカスイッチなどを挙げることができる。
【0021】
イグニッションスイッチ5aは、エンジンを始動及び停止させるためにユーザが操作するスイッチである。
【0022】
エアコン関連スイッチ5bは、設定温度を上限させるための操作子や暖房及び冷房機能をON、OFFするためのスイッチや、外気を取り込むモードについてのスイッチなどが挙げられる。以降の説明では、外気を取り込むモードである「外気導入モード」と車室内の空気を循環させるモードである「内気循環モード」を切り替えるスイッチを切替スイッチ9と記載する。
【0023】
外気取込ユニット6は、エアコンユニット2の外気取込ダクト8に接続されるものであり、カウルパネル10とカウルルーバ11とを備えて構成されている。
【0024】
カウルパネル10及びカウルルーバ11は、図2に示すように、フロントガラス12の下辺に沿って車両100の車幅方向に延びる形状とされ、樹脂材料を用いた射出成形によって形成されている。
【0025】
カウルパネル10は、図3に示すように、上方に開口された凹部形状に形成され、シール部材を介してボンネット13などの周辺部材に連結されて配置されている。
カウルパネル10には、エアコンユニット2の外気取込ダクト8が接続され、該接続部分は外気取込口14として形成されている。
【0026】
カウルルーバ11はカウルパネル10の上部を覆うように配置され、通気孔11aが形成されている。
【0027】
カウルルーバ11とカウルパネル10に囲まれた空間は外気取込通路15として形成される。即ち、外気導入モードが設定されている場合には、外気OAがカウルルーバ11の通気孔11aと外気取込通路15と外気取込口14と外気取込ダクト8を順次通過してエアコンユニット2の内部に取り込まれる。
【0028】
なお、カウルルーバ11に形成された通気孔11aとカウルパネル10に形成された外気取込口14は、車幅方向において異なる位置に配置されていてもよい(図2参照)。
例えば、通気孔11aが車両100の左サイドに形成されると共に、外気取込口14が車両100の右サイドに形成されていてもよい。これにより、通気孔11aを通過した雨水が外気取込口14からエアコンユニット2の内部に侵入してしまうことを防止することができる。
【0029】
カウルパネル10の底面は、車幅方向の中央部が高くされ、車両100の側部に近づくにつれて低くなるように形成され、カウルルーバ11の通気孔11aを介して外気取込通路15に侵入した雨水が車両100の側部に向かって流れるようにされている。
【0030】
カウルパネル10における車幅方向を向く面を有する側壁10aには、外気取込通路15に侵入した雨水等を排出するための排水孔16が形成されている。図3に示す例では、側壁10aは、カウルパネル10の底面付近に形成された車両前後方向に長い第1排水孔16aと、該底面から少し上方に形成された上下方向に長い第2排水孔16bを有している。
【0031】
外気取込通路15には、第1排水孔16a及び第2排水孔16bを閉塞するための閉塞パネル17が設けられている。
【0032】
車両100において外気導入モードが設定されていた場合には、上述したルート以外にもエンジンルームなどと称されるフロントコンパートメントの空気が排水孔16及び外気取込通路15等を介してエアコンユニット2の内部に取り込まれる可能性がある。
【0033】
車両100においては、このような取込ルートを遮断するために閉塞パネル17が設けられている。
【0034】
閉塞パネル17の実施の態様は各種考えられる。本例においては、閉塞パネル17は、略車両前後方向に延びる軸部18と、軸部18の回動によって閉塞位置と開放位置を移動可能とされた板部19と、を備えている。
【0035】
アクチュエータとしてのモータ7は、付与された電気信号に応じて軸部18を軸周り方向に回動させる。
【0036】
図3に示す状態は板部19が開放位置に位置された状態であり、その状態を車幅方向から見た図が図4である。
また、板部19が閉塞位置に位置された状態を車幅方向から見た図が図5である。
【0037】
図4及び図5に示すように、閉塞パネル17は軸部18が軸周り方向に回動することにより板部19が回動され排水孔16を閉塞可能とされる。
【0038】
図1に示すモータ7は制御部3の駆動信号に基づいて閉塞パネル17を駆動する。具体的には、モータ7は、図示しない配線を介して得られる駆動電力を動力に変えて閉塞パネル17の軸部18を回動させる。これにより板部19が閉塞位置と開放位置の間で移動される。
【0039】
閉塞パネル17の板部19が閉塞位置に位置した状態においては、液体及び気体が外気取込通路15から排水孔16を介して外気取込ユニット6の外部に流出することや、外気取込ユニット6の外部から排水孔16を介して気体が外気取込通路15に流入することが妨げられる。
【0040】
<2.閉塞パネルを用いた排水孔の開閉制御>
制御部3は、各種条件に応じて閉塞パネル17を用いた排水孔16の開閉制御を行う。具体的な処理の流れについて図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図6に示すフローチャートは、冷房使用時にエアコンユニット2の吹き出し口から十分に冷却されていない風が吐出されることを防止するために実行される処理の一例である。
【0041】
制御部3は、先ず、ステップS101において、イグニッションスイッチがONであるか否かを判定する。イグニッションスイッチがOFFである場合には、エアコンユニット2の制御を行う必要はない。従って、制御部3はステップS102において排水孔16の開放制御を行う。なお、ステップS102には開放制御と記載しているが、実際には、排水孔16が開放状態となるように閉塞パネル17の板部19が開放位置に位置していればよく、制御自体を行わなくてもよい。即ち、常時電源を用いて閉塞パネル17の板部19が開放位置に保持されるように構成してもよいし、電力を供給しない状態で閉塞パネル17の板部19が開放位置に位置されるように構成してもよい。
【0042】
なお、イグニッションスイッチがONである場合とは、イグニッション電源がONとされた状態を指していてもよいし、アクセサリ電源がONとされた状態を指していてもよい。
【0043】
イグニッションスイッチがONであると判定した場合、制御部3はステップS103において、降雨状態であるか否かを判定する。この判定処理は、レインセンサ4aの出力に基づいて行われる。
【0044】
降雨状態であると判定した場合、制御部3はステップS102において排水孔16の開放制御を行う。
【0045】
一方、降雨状態でないと判定した場合、制御部3はステップS104において、外気温が所定温度よりも低いか否かを判定する。この処理は、外気温センサ4bの出力に基づいて行われる。
【0046】
外気温が所定温度(例えば摂氏25度や摂氏30度など)よりも低い場合、フロントコンパートメントの空気も低いことが想定されるため、フロントコンパートメントの空気がエアコンユニット2の内部に取り込まれたとしてもエアコンユニット2の吹き出し口から吐出される空気の温度が高くなってしまうという問題は起きないと考えられる。
【0047】
従って、外気温が所定温度よりも低いと判定した場合には、制御部3はステップS102において排水孔16の開放制御を行う。
【0048】
外気温が所定温度以上であると判定した場合、制御部3はステップS105において、外気導入の有無について判定する。具体的には、検出した切替スイッチ9の状態をエアコンユニット2から取得することにより判定を行う。
【0049】
車室内の空気を循環させる内気循環モードが設定されており、外気導入が無いと判定した場合には、そもそもフロントコンパートメントの空気がエアコンユニット2の内部に取り込まれるという現象自体が起きえない。従って、制御部3はステップS102において排水孔16の開放制御を行う。
【0050】
一方、外気導入モードが設定されており外気導入ありと判定した場合には、制御部3はステップS106において、車両100の車速が所定速度よりも速いか否かを判定する。
【0051】
車速が所定速度よりも速い場合には、コンデンサに十分な風が当たるため、冷却性能が高くされる。従って、温度の高い空気がフロントコンパートメントからエアコンユニット2の内部に取り込まれたとしても問題がないことが推定される。
【0052】
従って、車速が所定速度よりも速いと判定した場合には、制御部3はステップS102において排水孔16の開放制御を行う。
【0053】
一方、車速が所定速度以下であると判定した場合、制御部3はステップS107において排水孔16の閉塞制御を行う。具体的には、制御部3は、閉塞パネル17の板部19を閉塞位置に移動させることにより排水孔16の閉塞制御を行う。
【0054】
制御部3が図6に示す一連の処理を実行することにより、熱気がエアコンユニット2の内部に取り込まれてしまい、冷房効率が低下してしまう問題や、燃費及び電費の悪化してしまう問題や、エアコンユニット2の吹き出し口から暖かい空気が吐出されてしまう問題などを改善することができる。また、閉塞パネル17を用いて排水孔16を閉塞する条件を絞ることにより、外気取込通路15から雨水等が排出されなくなってしまう問題を回避することができる。
【0055】
なお、図6に示す一連の処理を実行する前の初期状態としては、制御部3はステップS102の開放制御を実行しておいてもよい。これにより、所定の条件が成立するまで排水孔16の開放状態が維持される。
【0056】
<3.変形例>
<3-1.第1の変形例>
第1の変形例に係る閉塞パネル17Aは、上下方向に延びる軸部18Aと板部19Aを備えている。板部19Aは、図示しないモータ7によって軸部18Aが軸周り方向に回動されることにより、開放位置(図7参照)と閉塞位置(図8参照)を移動可能とされている。
【0057】
カウルパネル10における外気取込口14が形成された面は、板部19Aの回動を規制する規制面として機能している。これにより、板部19Aを開放位置に保持するための部材を別途設ける必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。
【0058】
<3-2.第2の変形例>
第2の変形例に係る閉塞パネル17Bについて、図9及び図10を参照して説明する。
【0059】
閉塞パネル17Bは、モータ7によって駆動され、リンク板20と、リンク21と、板部19Bと、シール部22とを備えている。
【0060】
モータ7は、ステータやヨーク等の各部を備える本体部7aと本体部7aから延びる軸7bとを備えている。軸7bにおける本体部7aに接続された端部と反対側の端部は、円盤形状とされたリンク板20の中央部に取り付けられている。
【0061】
リンク板20の下面側にはリンク21の一端が取り付けられる突部20aが形成されている。突部20aは、リンク板20の外周縁に近い位置に形成されている。
【0062】
板部19Bには、リンク21の他端部が取り付けられる被支持突部19aが形成されている。即ち、リンク21は、棒状に形成され、リンク板20の突部20aと板部19Bの被支持突部19aを連結している。
【0063】
板部19Bには、第2排水孔16bごとに第2排水孔16bと略同じ幅とされた孔部19bが形成されている。
【0064】
板部19Bにおける被支持突部19aが設けられた面とは反対側の面には、孔部19bに隣接してリング形状のシール部22が取り付けられている。また、板部19Bにおける同じ面の下端部にも同様にシール部22が取り付けられている。
それぞれのシール部22は、排水孔16と対応した位置に設けられると共に、対応する排水孔16よりも大きいリング形状とされている。
【0065】
板部19Bが開放位置に位置された状態の閉塞パネル17Bの正面図を図11に、同状態の横断面図を図12に示す。
【0066】
図示するように、開放位置に位置された板部19Bは、カウルパネル10の側壁10aとの間に間隙が形成されることにより、排水孔16が開放状態とされている。この状態においては、外気取込通路15に侵入した雨水等の排水が可能とされている。
【0067】
板部19Bが閉塞位置に位置された状態の閉塞パネル17Bの正面図を図13に、同状態の横断面図を図14に示す。
【0068】
図示するように、軸7bの回動に伴ってリンク板20が回動することにより、リンク21に連結された板部19Bがカウルパネル10の側壁10aに押しつけられる。このとき、板部19Bに取り付けられたシール部22がそれぞれ第1排水孔16a及び第2排水孔16bの縁部に押しつけられることにより、排水孔16bと外気取込通路15が略隔離された状態とされる。これにより、フロントコンパートメントの空気の排水孔16bを介した外気取込通路15への侵入が抑制される。
【0069】
また、円盤形状のリンク板20の回動に伴って板部19Bが側壁10aに押しつけられることにより、板部19Bが側壁10aに十分に接近した状態においては、板部19Bが略垂直に側壁10aに押しつけられる。従って、側壁10aに対して板部19Bを全面に亘って均一に押しつけることができるため、シール部22によってそれぞれの排水孔16を均一の力で塞ぐことが可能となる。これにより、排水孔16によって閉塞具合に差が出てしまい、閉塞しきれない状態が生じてしまうことが防止される。
【0070】
また、先の例で示した板部19と比較して、板部19Bの可動範囲が小さくて済むため、板部19Bが可動するための空間を広く確保しなくて済む。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0071】
<3-3.第3の変形例>
第3の変形例に係る排水孔16C及び閉塞パネル17Cについて、図15及び図16を参照して説明する。
【0072】
本例における排水孔16Cは、側壁10aの下端まで延びる上下方向に長い孔として設けられている。排水孔16Cは、車両前後方向に離隔して三つ設けられている。
【0073】
閉塞パネル17Cは、モータ7によって駆動され、ピニオンギヤ23と、板部19Cとを備えている。
【0074】
モータ7は、ステータやヨーク等の各部を備える本体部7aと本体部7aから延びる軸7bとを備えている。軸7bにおける本体部7aに接続された端部と反対側の端部は、ピニオンギヤ23の中央部に取り付けられている。
【0075】
板部19Cは、車両前方側の領域にラックギヤ24が形成されている。ピニオンギヤ23及びラックギヤ24は、歯溝が延びる方向が上下方向とされている。
【0076】
板部19Cには、車両100の車幅方向及び下方に開放された切欠部19cが形成されている。
【0077】
ピニオンギヤ23は板部19Cに形成されたラックギヤ24と咬合されている。ピニオンギヤ23は、軸7bの回動に伴って中心軸の軸周り方向に回動する。ピニオンギヤ23の回動に伴って、ラックギヤ24は車両前後方向に摺動する。
【0078】
板部19Cが開放位置に位置した状態の排水孔16Cと閉塞パネル17Cの位置関係を図15に示す。
図示するように、閉塞パネル17Cの板部19Cに形成された切欠部19cの前後方向の位置と排水孔16Cの前後方向の位置が一致されている。これにより、フロントコンパートメントの空間と外気取込通路15の空間が切欠部19cと排水孔16Cを介して連通される。
【0079】
板部19Cが閉塞状態に位置した状態の排水孔16Cと閉塞パネル17Cの位置関係を図16に示す。
図示するように、板部19Cに形成された切欠部19cと排水孔16Cの位置が前後方向において互い違いにされる。これにより、切欠部19c及び排水孔16Cを介したフロントコンパートメントの空間と外気取込通路15の空間の連通状態が解除されている。
【0080】
図示するように、板部19Cがスライドすることで排水孔16Cを閉塞するように構成されることで、リンク機構を用いた第2の変形例に係る閉塞パネル17Bよりも板部19Cの可動範囲が更に小さくて済むため、省スペース化を更に図ることができる。
また、リンク機構を用いるよりも部品点数の削減を図ることができる。
【0081】
なお、板部19Cにおける上方を向く面とされた側面にラックギヤ24を形成し、該ラックギヤ24に咬合されるようにピニオンギヤ23を板部19Cの上方に配置してもよい。
この場合には、外気取込通路15に侵入した雨水等の量が多く水面が上昇した場合であっても、ラックギヤ24やピニオンギヤ23が水に浸かる可能性を低減させることができ、浸食の影響を低減させ部品の長寿命化を図ることができる。
【0082】
<3-4.第4の変形例>
第4の変形例に係る排水孔16D及び閉塞パネル17Dについて、図17及び図18を参照して説明する。
【0083】
本例における排水孔16Dは、カウルパネル10の底面付近に形成された車両前後方向に長い第1排水孔16aと、該底面から少し上方に形成された上下方向に長い第3排水孔16cを有している。
【0084】
第3排水孔16cは、上下方向に長い孔とされた第2排水孔16bを略45度回転させた形状に形成されている。即ち、車両前方へ行くに従って下方に変位する斜めの細長い孔とされている。
【0085】
閉塞パネル17Dは、板部19Dと、板部19Dの上下方向の移動を補助するガイドレール25とを備えている。
【0086】
板部19Dには、第3排水孔16cと同方向に細長い形状とされた孔部19dが形成されている。
孔部19dは、板部19Dが所定の位置に在るときに第3排水孔16cと略同位置に位置される。
【0087】
板部19Dは、車両前後方向の両端部がガイドレール25に係合することにより、ガイドレール25が延びる上下方向に移動可能とされる。
【0088】
板部19Dが開放位置に位置された状態を図17に示し、閉塞位置に位置された状態を図18に示す。
【0089】
図17に示すように、板部19Dが開放位置に位置された状態では、孔部19dと第3排水孔16cの位置が略一致される。これにより、フロントコンパートメントの空間と外気取込通路15の空間が孔部19dと第1排水孔16a及び第3排水孔16cを介して連通される。
【0090】
図18に示すように、板部19Dが閉塞状態に位置した状態では、板部19Dにおいて孔部19dが形成された部分以外の部分で第1排水孔16a及び第3排水孔16cが閉塞される。これにより、孔部19dと第1排水孔16a及び第3排水孔16cを介したフロントコンパートメントの空間と外気取込通路15の空間の連通状態が解除されている。
【0091】
本例に示す閉塞パネル17Dを用いることにより、第1排水孔16aが側壁10aの下方に形成されると共に、その上部に第3排水孔16cが形成された場合であっても、板部19Dの開放位置と閉塞位置の間の移動量が小さく抑えることができる。
従って、閉塞パネル17Dの可動範囲を考慮して確保される空間が少なくされ、省スペース化を図ることができる。
【0092】
なお、第3の変形例のようにラックギヤとピニオンギヤを用いた構成を本例に適用することにより、板部19Dが上下方向に移動可能とされてもよい。このような形態を採ることにより板部19Dが開放位置と閉塞位置を移動可能とされる。
【0093】
また、本例の構成を第3の変形例に適用してもよい。即ち、第3の変形例にガイドレールを用いた構成を適用してもよい。
【0094】
<3-5.その他の変形例>
上述した例では、ステップS106において車速が所定速度よりも速いと判定した場合に十分な冷却性能が得られることから排水孔16の開放制御を行う例を説明した。
しかし、車速が所定速度よりも速かったとしても、排水孔16の閉塞制御を行ってもよい。この場合には、外気取込口14から取り込まれる空気の温度を下げることができるため、冷却風を生成するために必要なエアコンユニット2の仕事量が減少し、電費を改善することが可能となる。
【0095】
また、板部19の位置として開放位置と閉塞位置の2種類が設けられている例を説明したが、開放位置として複数の位置が設けられていてもよい。例えば、雨量が多い場合において排水孔16を全て開放する全開位置が設けられ、雨量が少ない場合において排水孔16の一部のみを開放する半開位置が設けられていてもよい。
そして、半開位置としては、例えば、第1排水孔16aと第2排水孔16bが設けられている例においては、第1排水孔16aのみを開放するようにしてもよいし、第1排水孔16aと第2排水孔16bのそれぞれの開口面積の略半分を覆うようにしてもよい。
【0096】
上述した各例においては、カウルパネル10の内部に閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)が配置されている例を示したが、カウルパネル10の側壁10aにおける反対側の面、即ち、カウルパネル10の外面に配置されていてもよい。換言すれば、カウルパネル10の外面側から排水孔16(16C)を閉塞可能に閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)が配置されていてもよい。
【0097】
<4.まとめ>
上述した各例で説明したように、車両100が備える空調制御システム1は、フロントガラス12の下辺に沿って車幅方向に延びるカウルパネル10と、カウルパネル10に設けられた排水孔16(16a、16b、16c、16C)と、排水孔16を閉塞可能な閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)と、降雨の有無を検出するレインセンサ4aと、レインセンサ4aの出力に応じて閉塞パネル17を用いた排水孔16の開閉制御を行う制御部3と、を備えている。
閉塞パネル17を用いて排水孔16を閉塞可能に構成することにより、エンジンルームなどと称されるフロントコンパートメントの熱気が排水孔16を介してエアコンユニット2内に取り込まれてしまうことを抑制することができる。
従って、冷却風を吐出するためのエアコンユニット2の仕事量を削減することができるため、電費及び燃費の向上を図ることができる。
また、エアコンユニット2の吹き出し口から熱風が吐出されてしまうことが防止され、ユーザに不快感を抱かせてしまうことを抑制することができる。
【0098】
なお、上記した各例では、排水孔16の開閉制御を制御部3がプログラムに従って処理を行うことにより実現するものとして説明した。
しかし、本発明の適用はこれに限らず、図6に示す少なくとも一部の処理についてスイッチ等を用いたハードウェアによって実現してもよい。
なお、ソフトウェアによって図6に示す一連の処理を実現する場合には、以下のような構成を採ることも可能である。
【0099】
フロントガラスの下辺に沿って車幅方向に延びるカウルパネルと、
前記カウルパネルに設けられた排水孔と、
前記排水孔を閉塞可能な閉塞パネルと、
降雨の有無を検出するレインセンサと、
一または複数のプロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体と、を備え、
前記プログラムは、一または複数の命令を含み、
前記命令は、前記一または複数のプロセッサに、
前記レインセンサの出力に応じて前記閉塞パネルを用いた前記排水孔の開閉制御の処理を実行させる
空調制御システム。
【0100】
上述した各例においては、夏期などの暑い時期においてエアコンユニット2の吹き出し口から熱風が吐出されてしまうことを防止する効果を記載した。しかし、冬季などの寒い時期においても本発明の実施による効果を得ることができる。
冬季などにおいて暖房運転時には、フロントコンパートメントにおいて熱された空気を積極的にエアコンユニット2の内部に取り込むことにより、温風を吐出するために必要なエアコンユニット2の仕事量を減少させることが考えられる。
しかし、従来のように排水孔16を閉塞する手段を備えていない車両の場合には、夏期にフロントコンパートメントにおいて熱された空気をエアコンユニット2の内部に取り込みすぎないように、排水孔16の孔を大きくすることができない。
一方、上述した構成であれば、排水孔16を閉塞する手段が設けられているため、排水孔16の開口面積を大きくすることにより、冬季においてフロントコンパートメントにおいて熱された空気をより多くエアコンユニット2の内部に取り込むことが可能である。これにより、冬季等に暖房運転時においても電費や燃費を改善することが可能となる。
【0101】
そして、上述した本発明の構成は、低発熱の車両100において好適である。具体的には、低発熱の車両100は、低発熱であるが故にフロントコンパートメントの空気が十分に熱されておらず、暖房運転時に効率的に利用することができなかった。しかし、本構成によれば、排水孔16を大口径化することが可能となるため、フロントコンパートメントにおける暖かい空気を十分に利用することが可能となり、電費及び燃費の改善を図ることが可能となる。
【0102】
空調制御システム1が備える制御部3は、開閉制御の処理として、車室の空調に関する設定において車外の空気を導入するモードが設定されている場合に閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)を用いて排水孔16(16a、16b、16c、16C)を閉塞させる処理を実行してもよい。
これにより、外気導入モードが設定されていない場合には、排水孔16の開放制御が行われる。
従って、不要に排水孔16を閉塞してしまうことが抑制され、外気取込通路15に侵入した雨水等の排水性能を確保することができる。
【0103】
空調制御システム1が備える制御部3は、開閉制御の処理として、車外の温度が所定温度よりも高い場合に閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)を用いて排水孔16(16a、16b、16c、16C)を閉塞させる処理を実行してもよい。
これにより、車外の温度が所定温度以下とされフロントコンパートメントにおいて空気が暖められ過ぎる可能性が低い場合には、排水孔16を閉塞してしまう制御が抑制され、外気取込通路15に侵入した雨水等の排水性能を確保することができる。
【0104】
空調制御システム1が備える制御部3は、開閉制御の処理として、車両100の速度が所定速度よりも低い場合に閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)を用いて排水孔16(16a、16b、16c、16C)を閉塞させる処理を実行してもよい。
これにより、車両100の速度が十分に高くエアコンユニット2のコンデンサの冷却性能を十分に発揮できる場合には、排水孔16を閉塞してしまう制御が抑制され、外気取込通路15に侵入した雨水等の排水性能を確保することができる。
【0105】
空調制御システム1が備える制御部3は、開閉制御の処理として、所定条件が成立していない場合には閉塞パネル17(17A、17B、17C、17D)を用いて排水孔16(16a、16b、16c、16C)を開放させる処理を実行してもよい。
即ち、各種の条件が同時に成立した場合に限り排水孔16の閉塞制御を行い、それ以外のときには排水孔16を開放しておくことにより、仮に閉塞パネル17が閉塞位置と開放位置を移動することができなくなってしまった場合でも、外気取込通路15に侵入した雨水等の排水性能を確保することができる。
そしてこのためには、電断時に閉塞パネル17の板部19(19A、19B、19C、19D)が開放位置に移動するように構成されていてもよい。これにより、特定の条件が成立しない場合において排水孔16の開放状態を担保することができる。
【0106】
なお、上述した各種の例は、適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 空調制御システム
3 制御部
4a レインセンサ
10 カウルパネル
12 フロントガラス
16、16C 排水孔
16a 第1排水孔(排水孔)
16b 第2排水孔(排水孔)
16c 第3排水孔(排水孔)
17、17A、17B、17C、17D 閉塞パネル
図1
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