(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】近接通信システム、X線CT装置及び近接通信制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61B6/03 521A
(21)【出願番号】P 2021066030
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】守田 淳
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-530(JP,A)
【文献】特開2000-308635(JP,A)
【文献】特開平8-294481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0310039(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0046913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
H01P 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の装置に具備される長尺カプラと、
第2の装置に具備され、前記長尺カプラとの間で電磁界結合による無線通信を行なう短尺カプラと、
前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じて、前記長尺カプラと前記短尺カプラとの間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる信号処理部と
を備える、近接通信システム。
【請求項2】
前記長尺カプラは、前記短尺カプラに対して前記信号を送信する、請求項1に記載の近接通信システム。
【請求項3】
前記短尺カプラは、前記長尺カプラに対して前記信号を送信する、請求項1に記載の近接通信システム。
【請求項4】
前記第2の装置は、整形回路を更に備え、
前記整形回路は、前記短尺カプラと接続され、当該短尺カプラが受信する前記信号の波形が略矩形となる終端抵抗を有する、請求項2に記載の近接通信システム。
【請求項5】
前記第2の装置は、整形回路を更に備え、
前記整形回路は、前記短尺カプラと接続され、略100Ωの終端抵抗を有する、請求項2に記載の近接通信システム。
【請求項6】
前記第1の装置は、整形回路を更に備え、
前記整形回路は、前記長尺カプラと接続され、略100Ωの終端抵抗を有する、請求項3に記載の近接通信システム。
【請求項7】
前記信号処理部として、前記第1の装置に具備される第1の信号処理部及び前記第2の装置に具備される第2の信号処理部の少なくとも一方を備え、
前記第1の信号処理部は、前記長尺カプラから前記短尺カプラに対して送信される前記信号のエンファシスを行ない、
前記第2の信号処理部は、前記短尺カプラが前記長尺カプラから受信した前記信号のイコライズを行なう、請求項2に記載の近接通信システム。
【請求項8】
前記第1の信号処理部は、前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じた前記信号の周波数ごとの減衰量に応じて前記エンファシスを行なうことで、前記信号の周波数ごとのゲインを変化させる、請求項7に記載の近接通信システム。
【請求項9】
前記第2の信号処理部は、前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じた前記信号の周波数ごとの減衰量に応じて前記イコライズを行なうことで、前記信号の周波数ごとのゲインを変化させる、請求項7又は8に記載の近接通信システム。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの複数の位置における前記信号の周波数ごとの減衰量の測定結果に基づく、前記短尺カプラが前記長尺カプラの終端部に位置する場合の前記信号の周波数ごとの減衰量の推定結果に基づいて、前記信号の周波数ごとのゲインを変化させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の近接通信システム。
【請求項11】
前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置を検出する検出部を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の近接通信システム。
【請求項12】
被検体の周囲で回転可能に構成され、X線を発生するX線発生部及び当該X線を検出するX線検出部を備える第1の装置と、
前記被検体に対する位置が固定される第2の装置と、
前記第1の装置に具備される長尺カプラと、
前記第2の装置に具備され、前記長尺カプラとの間で電磁界結合による無線通信を行なう短尺カプラと、
前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じて、前記長尺カプラと前記短尺カプラとの間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる信号処理部と
を備える、X線CT装置。
【請求項13】
第1の装置に具備される長尺カプラと、第2の装置に具備される短尺カプラとの間で電磁界結合による無線通信を行なう近接通信制御方法であって、
前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じて、前記長尺カプラと前記短尺カプラとの間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させることを含む、近接通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、近接通信システム、X線CT装置及び近接通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界結合による無線通信の技術が知られている。この技術では、電磁界結合した一対の通信回路(カプラとも記載する)の間で信号が送受信される。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置においては、被検体の周囲を回転する回転部においてX線の検出が行なわれ、X線検出結果は、回転部から固定部に対して無線で送信される。このようなX線検出結果の送信において、電磁界結合による無線通信の技術を利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-202415号公報
【文献】国際公開第2016/88421号
【文献】国際公開第2007/4428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の近接通信システムは、長尺カプラと、短尺カプラと、信号処理部とを備える。長尺カプラは、第1の装置に具備される。短尺カプラは、第2の装置に具備され、前記長尺カプラとの間で電磁界結合による無線通信を行なう。信号処理部は、前記長尺カプラに対する前記短尺カプラの位置に応じて、前記長尺カプラと前記短尺カプラとの間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る近接通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る長尺カプラ及び短尺カプラの断面構造の一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る整形回路の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る波形の整形処理の一例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係る整形回路の別の例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施形態に係る波形の整形処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る近接通信システムの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る信号の減衰について説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る短尺カプラの位置に応じた波形の変化を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る短尺カプラの位置に応じた波形の変化を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、第1の実施形態に係る信号の補正について説明するための図である。
【
図10B】
図10Bは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【
図10C】
図10Cは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【
図10D】
図10Dは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る信号処理部が行なう処理の概念図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る信号処理部が行なう処理の概念図である。
【
図13】
図13は、
図4Aの整形回路を適用する場合において、第1の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。
【
図14】
図14は、
図5Aの整形回路を適用する場合において、第1の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係るゲインの設定方法の一例について説明するための図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係る近接通信システム20の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図4Aの整形回路を適用する場合において、第2の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、近接通信システム、X線CT装置及び近接通信制御方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
近接通信システム20を含んだX線CT装置1を例として説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。例えば、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0009】
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図1は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0010】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。また、架台装置10は、図示しない近接通信システム20を更に有する。近接通信システム20については後述する。
【0011】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。なお、X線管11は、X線発生部の一例である。
【0012】
X線検出器12は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。なお、X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0013】
例えば、X線検出器12は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0014】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。例えば、回転フレーム13は、後述する回転部側通信部21を支持することができる。
【0015】
以下では、架台装置10において、回転フレーム13、及び、回転フレーム13と共に回転移動する部分を、回転部(ロータ)とも記載する。回転部は、第1の装置の一例であり、被検体Pの周囲で回転可能に構成される。回転部には、例えば、回転フレーム13、X線管11、X線検出器12、及び回転部側通信部21が含まれる。また、以下では、架台装置10において、回転部を支持する、回転しない部分を、固定部(ステータ)とも記載する。固定部には、後述する固定部側通信部22や、回転フレーム13を回転させるための回転機構が含まれる。即ち、回転フレーム13は、固定部によって回転可能に支持される。回転機構は、例えば回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは例えば当該固定部に設けられ、ベアリングは回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレームが回転する。
【0016】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行なうX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転部に含まれてもよいし、固定部に含まれてもよい。
【0017】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インタフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行なう。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30の動作等について制御を行なう。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0018】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を減衰させるX線フィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して作製される。
【0019】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図1においては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0020】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行なう増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。DAS18が生成したデータは、電磁界結合による無線通信の技術を用いて固定部に送信される。この点については後述する。
【0021】
寝台装置30は、CTスキャンの対象となる被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0022】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インタフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0023】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、被検体Pから収集された各種データの保存を行なったり、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶したりする。
【0024】
ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。例えば、ディスプレイ42は、被検体Pから収集されたX線CT画像や、ユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、X線CT装置1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。なお、X線CT装置1は、ディスプレイ42に代えて又は加えてプロジェクタを備えることとしてもよい。プロジェクタは、処理回路44による制御の下、スクリーンや壁、床、被検体Pの体表面等に対して投影を行なう。一例を挙げると、プロジェクタは、プロジェクションマッピングによって、任意の平面や物体、空間等への投影を行なうことができる。
【0025】
入力インタフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インタフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース43は、X線CT装置1本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース43は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース43は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線CT装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース43の例に含まれる。
【0026】
処理回路44は、制御機能441、収集機能442及び出力機能443を実行することで、X線CT装置1全体の動作を制御する。
【0027】
例えば、処理回路44は、制御機能441に対応するプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより、入力インタフェース43を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、収集機能442、出力機能443といった各種機能を制御する。
【0028】
また、例えば、処理回路44は、収集機能442に対応するプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより、被検体Pに対するCTスキャンを実行する。例えば、収集機能442は、X線高電圧装置14を制御することにより、X線管11に高電圧を供給する。これにより、X線管11は、被検体Pに対し照射するX線を発生する。また、収集機能442は、寝台駆動装置32を制御することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内へ移動させる。また、収集機能442は、ウェッジ16の位置、及び、コリメータ17の開口度及び位置を調整することで、被検体Pに照射されるX線の分布を制御する。また、収集機能442は、制御装置15を制御することにより回転部を回転させる。また、収集機能442によってCTスキャンが実行される間、DAS18は、X線検出器12における各検出素子からX線の信号を収集し、検出データを生成する。
【0029】
DAS18が生成した検出データは、回転部から固定部に送信される。具体的には、検出データは、回転部に含まれる回転部側通信部21から、固定部に含まれる固定部側通信部22に対して無線で送信され、更には処理回路44に送信される。
【0030】
収集機能442は、回転部側通信部21及び固定部側通信部22を介して受信した検出データに対して、前処理を施すことができる。例えば、収集機能442は、検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後のデータについては生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データ及び前処理を施した後の生データを総称して、投影データとも記載する。また、収集機能442は、投影データに基づいてCT画像データ(ボリュームデータ)を生成することもできる。例えば、収集機能442は、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行なうことにより、CT画像データを生成する。
【0031】
また、例えば、処理回路44は、出力機能443に対応するプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより各種のデータを出力する。例えば、出力機能443は、ディスプレイ42における表示の制御を行なう。例えば、出力機能443は、入力インタフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを任意の断面画像や任意視点方向のレンダリング画像といった表示用画像に変換し、ディスプレイ42に表示させる。
【0032】
また、例えば、出力機能443は、被検体Pに対するCTスキャンを実行することで収集された各種のデータを、ネットワークを介して外部装置に送信する。例えば、出力機能443は、上述した投影データやCT画像データを図示しない画像保管装置に送信し、保管させる。このような画像保管装置の例としては、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)のサーバが挙げられる。
【0033】
図1に示すX線CT装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0034】
なお、
図1においては単一の処理回路44にて、制御機能441、収集機能442及び出力機能443が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路44を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0035】
また、処理回路44は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路44は、メモリ41から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。
【0036】
次に、回転部と固定部との間の無線通信を行なう近接通信システム20について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態に係る近接通信システム20の構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
近接通信システム20は、回転部側通信部21と、固定部側通信部22とから構成される。例えば、回転部側通信部21は、第1信号処理部211と、長尺カプラ212と、治具213とを含む。回転部側通信部21は、回転フレーム13に対して設けられ、CTスキャン時には回転フレーム13とともに被検体Pの周囲で回転する。即ち、回転部側通信部21は、回転部に含まれる。また、固定部側通信部22は、第2信号処理部221と、短尺カプラ222とを含む。固定部側通信部22は、固定部に含まれる。
【0038】
第1信号処理部211及び第2信号処理部221は、信号の送信又は受信に関して後述する各種の処理を行なう処理回路である。長尺カプラ212及び短尺カプラ222は、電磁界結合する1対の通信回路である。なお、
図2に示すように、短尺カプラ222は、長尺カプラ212と比較して、回転部の円周方向に短い寸法を有する。また、治具213は、アルミニウム等で作製されたリング状の部材である。例えば、長尺カプラ212がFPC(Flexible Printed Circuits)である場合において、治具213は、回転フレーム13に対する長尺カプラ212の位置や形状を固定することができる。
【0039】
なお、
図2では、円形の長尺カプラ212に対して半径方向内側に短尺カプラ222が位置する場合を示すが、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置については特に限定されるものではない。例えば、短尺カプラ222は、長尺カプラ212に対して半径方向外側に配置されてもよい。或いは、短尺カプラ222は、長尺カプラ212に対して半径方向に同じ位置であり、Z方向に異なる位置に配置されてもよい。
【0040】
図3は、第1の実施形態に係る長尺カプラ212及び短尺カプラ222の断面構造の一例を示す図である。
図3に示すように、長尺カプラ212と短尺カプラ222とは、非接触の状態で対向し、電磁界結合して1対の通信回路を構成する。なお、本実施形態では、長尺カプラ212から短尺カプラ222に対して信号を送信する場合について説明する。即ち、本実施形態では、長尺カプラ212が送信カプラであり、短尺カプラ222が受信カプラであるものとして説明する。
【0041】
以上、近接通信システム20を含んだX線CT装置1の構成例について説明した。かかる構成の下、近接通信システム20は、X線CT装置1の回転部と固定部との間で電磁界結合による無線通信を実行する。
【0042】
ここで、電磁界結合による無線通信においては、通信時に生じる信号の減衰や外来ノイズ等に対処するため、整形回路が用いられる場合がある。
図4Aは、第1の実施形態に係る整形回路の一例を示す図である。
図4Aにおいては、送信カプラと受信カプラとが電磁界結合しており、送信カプラ側から入力信号Viが入力され、受信カプラ側で受信信号Vrが受信される。
【0043】
図4Aの整形回路は、コンパレータを含んでおり、また、比較的低いインピーダンスZ1を有している。例えば、
図4Aの整形回路は、受信カプラと接続され、略100Ωの終端抵抗を有する。ここで、
図4Bに示すように、入力信号Viが矩形波である場合において、受信信号Vrは、入力信号Viのエッジに反応する波形となる。即ち、受信信号Vrは、入力信号Viの高周波成分を示す波形となる。受信信号Vrは、
図4Bに示すコンパレータ後の波形Voとなるように整形される。例えば、コンパレータは、受信信号Vrがコンパレータ閾値を超えたか否かに応じて「1」及び「0」のいずれかを出力することにより、受信信号Vrを、
図4Bの波形Voに示されるような矩形波に変換する。なお、
図4Bは、第1の実施形態に係る波形の整形処理の一例を示す図である。
【0044】
図5Aは、第1の実施形態に係る整形回路の別の例を示す図である。
図5Aにおいては、
図4Aと同様、送信カプラと受信カプラとが電磁界結合しており、送信カプラ側から入力信号Viが入力され、受信カプラ側で受信信号Vrが受信される。
【0045】
図5Aの整形回路は、増幅器(amplifier:AMP)を含んでおり、また、比較的高いインピーダンスZ2を有している。例えば、
図5Aの整形回路は、受信カプラと接続され、受信カプラが受信する信号の波形が略矩形となる終端抵抗を有する。即ち、
図5Bに示すように、入力信号Viが矩形波である場合において、受信信号Vrも略矩形となる。AMPは、受信信号Vrを増幅することにより、
図5Bの波形Voに示されるような矩形波に変換することができる。なお、
図5Bは、第1の実施形態に係る波形の整形処理の一例を示す図である。
【0046】
図4Aの整形回路は、
図5Aの整形回路と比較して、外来ノイズへの耐性が強いという利点を有する。
図5Aの整形回路は、
図4Aの整形回路と比較して、カプラ間のギャップ(gap)変動に強く、また、コストが安いという利点を有する。
【0047】
次に、近接通信システム20において長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で送受信される信号の波形について説明する。以下では、近接通信システム20が
図6に示すように構成される場合について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る近接通信システム20の一例を示す図である。
【0048】
図6では、2つの長尺カプラ212によって1つの円周が構成される。即ち、個々の長尺カプラ212は、円周上の180°分の長さを有する。また、長尺カプラ212は、それぞれが第1信号処理部211に接続される。第1信号処理部211は、
図6の矢印に示す通り、送信部から終端部に向けて信号を送信する。なお、送信部は、長尺カプラ212において第1信号処理部211と接続される側の一端である。終端部は、長尺カプラ212における送信部と反対側の一端である。第1信号処理部211から送信された信号は、長尺カプラ212のうち短尺カプラ222と対向する位置において、短尺カプラ222に受信される。
【0049】
ここで、CTスキャンにおける長尺カプラ212と短尺カプラ222との位置関係は、回転部の回転に伴って変化する。即ち、長尺カプラ212と短尺カプラ222との位置関係は、
図6に示す状態となる場合もあれば、短尺カプラ222が送信部に位置した状態となる場合もあれば、短尺カプラ222が終端部に位置した状態となる場合もある。即ち、回転部の回転に伴って、第1信号処理部211から第2信号処理部221までの信号の伝送路の長さは変化する。なお、この伝送路の長さは、短尺カプラ222が送信部に位置している時に最小となり、短尺カプラ222が終端部に位置している時に最大となる。
【0050】
伝送される信号は、伝送路の長さに応じて減衰する。また、減衰の程度は、伝送される信号の周波数によっても異なり、高周波であるほど減衰しやすい。以上より、伝送される信号の減衰の程度については、
図7のように図示することができる。
図7の横軸は信号の周波数を示し、縦軸は伝送損失(Sdd21)を示す。即ち、短尺カプラ222が送信部に位置している時は、周波数に関わらず、減衰はあまり生じない。一方で、短尺カプラ222が終端部に位置している時は減衰が生じ、特に高周波の信号は大幅に減衰する。一例として、短尺カプラ222が終端部に位置しており、信号の周波数が5GHzである場合には「-4.1dB(約40%)」程度の減衰が生じる場合がある。なお、
図7は、第1の実施形態に係る信号の減衰について説明するための図である。
【0051】
長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で送受信される信号に対して、
図4A又は
図5Aの整形回路を適用する場合、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて波形が変化してしまう場合がある。以下、この点について
図8及び
図9を用いて説明する。
図8及び
図9は、第1の実施形態に係る短尺カプラ222の位置に応じた波形の変化を示す図である。
【0052】
例えば、長尺カプラ212から短尺カプラ222に送信される信号に対して
図4Aの整形回路を適用する場合、短尺カプラ222が送信部に位置している時と比較して、短尺カプラ222が終端部に位置している時の高周波の信号が大幅に減衰する。この結果、
図8に示すように、高周波成分を示す波形となる受信信号Vrの振幅が小さくなり、コンパレータ閾値を超えなくなって、通信エラーが発生する場合がある。また、長尺カプラ212から短尺カプラ222に送信される信号に対して
図5Aの整形回路を適用する場合も同様であり、短尺カプラ222が送信部に位置している時と比較して、短尺カプラ222が終端部に位置している時の高周波の信号が大幅に減衰する。この結果、
図9に示すように開口率が低下してしまい、通信エラーが発生しやすくなる。
【0053】
伝送時における信号の減衰に関し、エンファシスやイコライズといった技術が知られている。エンファシスは、信号を送信する前に、信号の値が変化する時の出力を、値が変化しない時の出力より強くなるように処理する技術である。具体的には、矩形波は、信号の値が変化する時の出力と、値が変化しない時の出力とが一定になる波形である。これに対し、エンファシスでは、信号の値が変化しない時の出力に対して、値が変化する時の出力が大きくなるように波形を整形した上で、信号を送信する。
【0054】
言い換えると、エンファシスは、信号を送信する前に、高周波成分を強調する処理を行なう技術である。なお、エンファシスは、低周波成分を低下させて高周波成分はそのままにするディエンファシスと、低周波成分はそのままで高周波成分を増加させるプリエンファシスとに分類することができる。伝送時において高周波成分は低周波成分よりも大きく減衰するため、適切なゲイン(増幅率又は増幅量)でエンファシスされている場合、低周波成分に対する高周波成分の比率がオリジナルに近い比率まで減衰した状態で受信される。言い換えると、適切なゲインでエンファシスされている場合、値が変化しない時の信号と値が変化する時の信号とが一定になる矩形波の状態で信号が受信される。
【0055】
また、イコライズは、信号を受信した後に、伝送路上での減衰分を補填する技術である。例えば、イコライズでは、受信した信号における高周波成分を増加させる。信号を受信した時点で、高周波成分は低周波成分より大幅に減衰しているため、適切なゲインでイコライズを行なった場合、低周波成分に対する高周波成分の比率がオリジナルに近い比率まで復元される。
【0056】
長尺カプラ212から短尺カプラ222に送信される信号の減衰を、エンファシスやイコライズによって補正することが考えられる。即ち、信号の送信前にエンファシスをし、或いは信号の受信後にイコライズすることによって、高周波成分の減衰に対処することが考えられる。例えば、長尺カプラ212から短尺カプラ222に対して信号が送信される場合、第1信号処理部211は、エンファシスを行なった上で信号を送信することができる。また、第2信号処理部221は、短尺カプラ222が受信した信号に対してイコライズを行なうことができる。
【0057】
具体的には、
図10Aに示すように、高周波であるほどゲインが増加するように、エンファシスやイコライズ等の補正を行なうことが考えられる。より具体的には、
図10Aでは、短尺カプラ222が終端部に位置している時の減衰量を基準として、周波数ごとのゲインを設定している。この結果、短尺カプラ222が終端部に位置している時に送信される信号は、周波数ごとの減衰量が略一定となるように補正される。但し、この場合、短尺カプラ222が送信部に位置している時に送信される信号は過度に増幅され、高周波であるほど減衰量が小さくなるように補正される。なお、
図10Aは、第1の実施形態に係る信号の補正について説明するための図である。
【0058】
例えば、
図10Aに示したゲインで補正を行なった場合、長尺カプラ212から短尺カプラ222に送信される信号は
図10Bに示すような波形となる。即ち、短尺カプラ222が終端部に位置している時に送信される信号は矩形波に近い波形に補正されるのに対し、短尺カプラ222が送信部に位置している時に送信される信号は、低周波成分に対して高周波成分が大きい階段状の波形に補正される。なお、
図10Bは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【0059】
例えば、矩形波の信号について
図10Aに示したゲインでエンファシスを行ない、短尺カプラ222が終端部に位置している時に信号を送信した場合、送信時においては高周波成分が強調されているものの、伝送時において高周波成分は適度に減衰し、矩形波の状態で信号が受信される。一方で、矩形波の信号について
図10Aに示したゲインでエンファシスを行ない、短尺カプラ222が送信部に位置している時に信号を送信した場合、送信時に強調された高周波成分が十分に減衰せず、高周波成分が強調された階段状の波形の状態で信号が受信される。
【0060】
また、例えば、矩形波の信号をそのまま送信した場合、信号を受信した時点では、高周波成分は低周波成分より大幅に減衰している。ここで、短尺カプラ222が終端部に位置している時に送信された信号について、
図10Aに示したゲインでイコライズを行なった場合、高周波成分が適切に増幅され、矩形波の状態に整形される。一方で、短尺カプラ222が送信部に位置している時に送信された信号について
図10Aに示したゲインでイコライズを行なった場合、高周波成分が過度に増幅され、高周波成分が強調された階段状の波形に整形される。
【0061】
図10Bに示す波形の信号について
図4Aの整形回路を適用する場合、受信信号Vrは
図10Cのような波形となる。即ち、短尺カプラ222が終端部に位置している時の受信信号Vrは、適切に増幅されてコンパレータ閾値を超えるようになり、通信エラーの発生が回避される。一方で、短尺カプラ222が送信部に位置している時の受信信号Vrには、余分なエッジによる成分が含まれてしまっている。即ち、エンファシスやイコライズ等の補正に起因して、オリジナルの波形(入力信号Viの波形)にはなかった波形の変化が生じ、この変化がエッジとなって受信信号Vrに現れてしまっている。当該余分なエッジによる成分がコンパレータ閾値を超える場合、通信エラーが発生する。なお、
図10Cは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【0062】
また、
図10Bに示す波形の信号について
図5Aの整形回路を適用する場合、受信信号Vrは
図10Dのような波形となる。即ち、短尺カプラ222が終端部に位置している時の受信信号Vrは、適切に増幅されて開口度が増加し、通信エラーの発生が回避される。一方で、短尺カプラ222が送信部に位置している時の受信信号Vrには、無駄な高周波成分が含まれてしまい、ノイズの原因となる場合がある。なお、
図10Dは、第1の実施形態に係る補正を行なった場合の波形を示す図である。
【0063】
そこで、近接通信システム20は、以下で説明する処理によって、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間での信号の送受信の品質を向上させる。具体的には、近接通信システム20は、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる。
【0064】
例えば、第1信号処理部211は、長尺カプラ212から短尺カプラ222に対して送信される信号のエンファシスを行なうことができる。ここで、第1信号処理部211は、エンファシスにおけるゲインを、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置ごと且つ信号の周波数ごとに変化させる。また、第2信号処理部221は、短尺カプラ222が長尺カプラ212から受信した信号のイコライズを行なうことができる。ここで、第2信号処理部221は、イコライズにおけるゲインを、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置ごと且つ信号の周波数ごとに変化させる。
【0065】
エンファシス及びイコライズの双方を行なうこととしてもよい。この場合、第1信号処理部211及び第2信号処理部221は、エンファシス及びイコライズの双方の処理による合計のゲインを、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置ごと且つ信号の周波数ごとに変化させる。以下の説明において第1信号処理部211と第2信号処理部221とを特に区別しない場合、単に信号処理部と記載する。信号処理部は、エンファシス及びイコライズの少なくとも一方を実行し、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる。
【0066】
図11及び
図12は、第1の実施形態に係る信号処理部が行なう処理の概念図である。
図11では、説明を簡単にするため、長尺カプラ212を直線として図示している。第1信号処理部211によって送信された信号は、送信部から終端部まで、長尺カプラ212上を伝搬する。また、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置は、
図11の矢印に示すように変化する。即ち、CTスキャンにおける回転部の回転に伴って長尺カプラ212が移動することで、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の相対的な位置が、
図11の矢印に示すように変化する。
【0067】
具体的には、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置は、送信部から終端部まで変化する。
図12の左図に示す通り、短尺カプラ222が終端部に近いほど、また、高周波であるほど信号の減衰が生じやすいことから、信号処理部は、
図12の右図に示すようにゲインを変化させる。即ち、信号処理部は、周波数の増加に伴うゲインの増加量を、短尺カプラ222が終端部に近いほど増加するように変化させる。
【0068】
図13は、
図4Aの整形回路を適用する場合において、第1の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。例えば、
図13に示す場合、固定部は整形回路を備え、当該整形回路は、短尺カプラ222と接続され、略100Ωの終端抵抗を有する。
【0069】
例えば、
図13の左図に示すように、短尺カプラ222が送信部に位置している場合、信号処理部は、周波数ごとのゲインを略一定として、エンファシスやイコライズ等の補正を行なう。また、
図13の中図に示すように、短尺カプラ222が送信部と終端部の間に位置している場合、信号処理部は、周波数が増加するほどゲインが増加するように補正を行なう。また、
図13の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している場合、信号処理部は、周波数の増加に伴うゲインの増加量を更に増加させて、補正を行なう。
【0070】
図13の左図に示すように、短尺カプラ222が送信部に位置している時の受信信号Vrには、余分なエッジによる成分は含まれない。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が送信部に位置している時は伝送路が短くなって高周波成分の減衰が生じにくいことを考慮し、ゲインを低めに設定することで、
図10Cに示したような余分なエッジによる成分が受信信号Vrに含まれることを回避できる。また、
図13の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している時の受信信号Vrは、適切に増幅されてコンパレータ閾値を超えている。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が終端部に位置している時は伝送路が長くなって高周波成分が減衰しやすくなることを考慮し、ゲインを高めに設定することで、
図8に示したように受信信号Vrがコンパレータ閾値を超えなくなることを回避できる。以上のように、信号処理部は、
図4Aの整形回路を適用する場合において、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置や信号の周波数に関わらず通信エラーの発生を回避し、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0071】
図14は、
図5Aの整形回路を適用する場合において、第1の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。例えば、
図14に示す場合、固定部は整形回路を備え、当該整形回路は、短尺カプラ222と接続され、当該短尺カプラ222が受信する信号の波形が略矩形となる終端抵抗を有する。
【0072】
例えば、
図14の左図に示すように、短尺カプラ222が送信部に位置している場合、信号処理部は、周波数ごとのゲインを略一定として、エンファシスやイコライズ等の補正を行なう。また、
図14の中図に示すように、短尺カプラ222が送信部と終端部の間に位置している場合、信号処理部は、周波数が増加するほどゲインが増加するように補正を行なう。また、
図14の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している場合、信号処理部は、周波数の増加に伴うゲインの増加量を更に増加させて、補正を行なう。
【0073】
図14の左図に示すように、短尺カプラ222が送信部に位置している時の受信信号Vrは、適度な開口率の波形となる。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が送信部に位置している時は伝送路が短くなって高周波成分の減衰が生じにくいことを考慮し、ゲインを低めに設定することで、
図10Dに示したように無駄な高周波成分が受信信号Vrに含まれることを回避できる。また、
図14の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している時の受信信号Vrは、適切に増幅されている。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が終端部に位置している時は伝送路が長くなって高周波成分が減衰しやすくなることを考慮し、ゲインを高めに設定することで、
図9に示したように受信信号Vrの開口率が低下することを回避できる。以上のように、信号処理部は、
図5Aの整形回路を適用する場合において、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置や信号の周波数に関わらず通信エラーの発生を回避し、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0074】
上述した信号処理部によるゲインの設定は、信号の周波数ごとの減衰量の測定結果に基づいて設定することができる。以下、
図15を用いてこの点の説明を行なう。
図15は、第1の実施形態に係るゲインの設定方法の一例について説明するための図である。
【0075】
例えば、第1信号処理部211は、短尺カプラ222が
図15に示す位置X1及び位置X2に位置した状態で、トレーニング用の信号を送信する。なお、位置X1及び位置X2は、送信部と終端部との間の任意の2点である。短尺カプラ222が終端部に位置している時は機械的な構造に起因して誤差が生じる場合があるため、位置X1及び位置X2は、終端部と異なる位置であることが好ましい。また、位置X1と位置X2との間にある程度の距離が設けられることが好ましい。例えば、位置X1及び位置X2は、送信部から終端部までの伝送路を3等分するように設定される。また、トレーニング用の信号は、各帯域の信号が既知な広帯域の信号である。
【0076】
第1信号処理部211が送信したトレーニング用の信号は、長尺カプラ212を伝搬し、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間での電磁界結合による無線通信を経て、第2信号処理部221により受信される。そして、第1信号処理部211が送信した信号と、第2信号処理部221が受信した信号とを比較することにより、周波数ごとの減衰量を測定することができる。なお、当該減衰量の測定は、第1信号処理部211によって行われてもよいし、第2信号処理部221によって行われてもよいし、近接通信システム20と通信可能な他の装置において行なわれてもよい。以下では一例として、コンソール装置40における処理回路44が減衰量の測定を行うものとして説明する。
【0077】
例えば、処理回路44は、第1信号処理部211が送信したトレーニング用の信号の周波数ごとの値(以下、第1の信号値とする)を取得し、また、第2信号処理部221が受信した信号の周波数ごとの値(以下、第2の信号値とする)を位置X1及び位置X2のそれぞれについて取得する。そして、処理回路44は、位置X1及び位置X2のそれぞれについて、第1の信号値に対する第2の信号値の比を算出することにより、短尺カプラ222の位置に対する減衰量を算出することができる。
【0078】
位置X1及び位置X2における減衰量の測定は、例えば、X線CT装置1の工場出荷時や病院への設置時、或いは定期メンテナンスなどにおいて行なうことができる。或いは、減衰量の測定は、X線CT装置1の使用時(例えば電源を投入した時、又は停止した時など)において行なうこととしてもよい。或いは、減衰量の測定は、医師等のユーザ、或いはメンテナンスを行なうサービスマン等からの指示に応じて行なうこととしてもよい。減衰量の測定は一種のキャリブレーションであるところ、高い頻度で行なうほど精度は向上する反面、減衰量の測定を行なっている間は装置の使用ができないため、適当な頻度で行なうことが好ましい。
【0079】
また、
図15では、位置X1及び位置X2の2点で測定を行なう場合を示すが、測定する位置が多いほどキャリブレーションの精度は向上する。例えば、製造時の誤差や経年劣化等によって、位置X1や位置X2といった位置ごとに、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間のギャップの大きさにばらつきが生じ、減衰量の測定結果にも影響する場合がある。ここで、測定する位置を増やすことにより、ギャップの大きさが平均化され、測定結果への影響を低減することができる。但し、測定する位置が多いほど測定時間が増加するため、測定する位置の数は、キャリブレーションのために割くことのできる時間の長さに応じて調整されることが好ましい。例えば、工場出荷時等においては多くの位置で測定を行ない、X線CT装置1の使用時においては少ない位置で測定を行なうこととしてもよい。
【0080】
短尺カプラ222の位置に対する減衰量は、
図15において点線で示すように、直線近似することができる。これにより、処理回路44は、短尺カプラ222が終端部に位置する場合の減衰量を推定することができる。当該推定結果は、信号処理部に送信される。例えば、エンファシス及びイコライズの双方が行なわれる場合、処理回路44は、当該推定結果を第1信号処理部211及び第2信号処理部221に送信する。
【0081】
CTスキャンが実行されて長尺カプラ212と短尺カプラ222との間の無線通信が行なわれる際、信号処理部は、短尺カプラ222が終端部に位置する場合の減衰量の推定結果に基づいて、信号の周波数ごとのゲインを変化させることができる。例えば、第1信号処理部211は、減衰量の推定結果に基づいて、エンファシスの信号レベルの設定値を設定する。また、第2信号処理部221は、減衰量の推定結果に基づいて、イコライズのフィルタ特性を設定する。
【0082】
上述したように、第1の実施形態によれば、近接通信システム20は、回転部に具備される長尺カプラ212と、固定部に具備され、長尺カプラ212との間で電磁界結合による無線通信を行なう短尺カプラ222と、信号処理部とを備える。信号処理部は、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で送受信される信号の周波数ごとのゲインを変化させる。従って、第1の実施形態に係る近接通信システム20は、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0083】
即ち、
図8及び
図9に示したように、長尺カプラ212と短尺カプラ222との間で電磁界結合による無線通信を行なう場合、伝送路の長さが変化することに起因する通信エラーが発生する場合がある。また、
図10A~
図10Dに示したように、伝送路での減衰をエンファシスやイコライザ等で補正しようとしても、当該補正に起因する通信エラーが発生する場合がある。これに対し、第1の実施形態に係る近接通信システム20は、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じてゲインを変化させることにより、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置や信号の周波数に関わらず通信エラーの発生を回避し、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0084】
また、第1の実施形態に係る近接通信システム20は、
図4Aに示した整形回路及び
図5Aに示した整形回路のいずれを用いる場合においても、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。即ち、
図4Aに示した整形回路を用いる場合において、第1の実施形態に係る近接通信システム20によれば、
図10Cに示したような余分なエッジよる信号が発生しなくなり、放射ノイズが軽減される。また、
図5Aに示した整形回路を用いる場合において、第1の実施形態に係る近接通信システム20によれば、
図10Dに示したような無駄な高周波成分が発生しなくなり、放射ノイズが軽減される。従って、近接通信システム20は、各整形回路が有する利点に応じて、任意の整形回路を選択して使用することができる。
【0085】
なお、X線CT装置1は、X線検出器12として、被検体Pを透過したX線に由来する光を個々に計数するフォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器12aを備えてもよい。検出器12aは、X線光子が入射するごとに、X線光子のエネルギー値を計測可能な信号を出力する。また、DAS18は、検出器12aから出力される個々の信号を弁別し、X線光子の入射位置(検出位置)とX線光子のエネルギー値とを含む計数情報を、X線管11の位相(管球位相)ごとに収集する。即ち、DAS18は、投影データとして、X線光子のエネルギー情報を含む計数情報を収集する。
【0086】
近接通信システム20は、検出器12aを用いて収集された計数情報についても同様に、回転部から固定部に送信することができる。このような計数情報は、フォトンカウンティング方式でない場合に収集される投影データと比較して大きいデータサイズを有する場合が多い。近接通信システム20は、通信エラーの発生を回避することで、計数情報を効率的に無線で送信させることができる。
【0087】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、長尺カプラ212から短尺カプラ222に対して信号を送信する場合について説明した。これに対し、第2の実施形態では、短尺カプラ222から長尺カプラ212に対して信号を送信する場合について説明する。即ち、第1の実施形態では、X線検出器12等を含む回転部から固定部へのダウンリンク方向の通信を行なう場合について説明したのに対し、第2の実施形態では、固定部から回転部へのアップリンク方向の通信を行なう場合について説明する。以下、第1の実施形態において説明した点は、
図1~
図15と同じ符号を付して説明を省略する。
【0088】
アップリンク方向の通信を行なう場合であっても、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて伝送路の長さが変化する点、高周波成分が減衰しやすい点ではダウンリンク方向の通信と同様であるため、エンファシスやイコライズ等の補正を行なわずに信号を送信すれば、
図8及び
図9と同様に通信エラーが発生する場合がある。また、伝送路での減衰をエンファシスやイコライザ等で補正しようとしても、
図10A~
図10Dに示した場合と同様に、当該補正に起因する通信エラーが発生する場合がある。これに対し、第2の実施形態に係る近接通信システム20は、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置に応じて、短尺カプラ222から長尺カプラ212に対して送信される信号の周波数ごとのゲインを変化させることにより、アップリンク方向の通信の品質を向上させる。
【0089】
図16は、第2の実施形態に係る近接通信システム20の一例を示す図である。例えば、近接通信システム20は、第1信号処理部211に代えて第1信号処理部214を備え、第2信号処理部221に代えて第2信号処理部223を備える。第2信号処理部223は、短尺カプラ222に向けて信号を送信する。第2信号処理部223から送信された信号は、長尺カプラ212のうち短尺カプラ222と対向する位置において、長尺カプラ212に受信される。長尺カプラ212が受信した信号は、長尺カプラ212の一端である受信部まで伝搬して、第1信号処理部214に受信される。なお、第2信号処理部223から送信される信号の例としては、例えばX線管11やX線検出器12の制御情報が挙げられる。
【0090】
図17は、
図4Aの整形回路を適用する場合において、第2の実施形態に係る信号処理部によりゲインを変化させながら補正を行なった場合の波形を示す図である。例えば、
図17に示す場合、回転部は整形回路を備え、当該整形回路は、長尺カプラ212と接続され、略100Ωの終端抵抗を有する。
【0091】
例えば、
図17の左図に示すように、短尺カプラ222が受信部に位置している場合、信号処理部は、周波数ごとのゲインを略一定として、エンファシスやイコライズ等の補正を行なう。また、
図17の中図に示すように、短尺カプラ222が受信部と終端部の間に位置している場合、信号処理部は、周波数が増加するほどゲインが増加するように補正を行なう。また、
図17の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している場合、信号処理部は、周波数の増加に伴うゲインの増加量を更に増加させて、補正を行なう。
【0092】
図17の左図に示すように、短尺カプラ222が受信部に位置している時の受信信号Vrには、余分なエッジによる成分は含まれない。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が受信部に位置している時は伝送路が短くなって高周波成分の減衰が生じにくいことを考慮し、ゲインを低めに設定することで、
図10Cに示したような余分なエッジによる成分が受信信号Vrに含まれることを回避できる。また、
図17の右図に示すように、短尺カプラ222が終端部に位置している時の受信信号Vrは、適切に増幅されてコンパレータ閾値を超えている。即ち、信号処理部は、短尺カプラ222が終端部に位置している時は伝送路が長くなって高周波成分が減衰しやすくなることを考慮し、ゲインを高めに設定することで、
図8に示したように受信信号Vrがコンパレータ閾値を超えなくなることを回避できる。以上のように、信号処理部は、アップリンク方向の通信に
図4Aの整形回路を適用する場合において、長尺カプラ212に対する短尺カプラ222の位置や信号の周波数に関わらず通信エラーの発生を回避し、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0093】
なお、図示は省略するが、アップリンク方向の通信に
図5Aの整形回路を適用する場合についても同様に適用が可能である。また、近接通信システム20は、ダウンリンク方向の通信とアップリンク方向の通信との双方を行なってもよい。この場合、回転部側通信部21は、第1信号処理部と第1信号処理部214との双方を備え、固定部側通信部22は、第2信号処理部221と第2信号処理部223との双方を備える。
【0094】
また、上述した各実施形態では、2つの長尺カプラ212によって1つの円周が構成される場合について説明したが、長尺カプラ212の数については任意に変更が可能である。例えば、90°分の長さを有する4つの長尺カプラ212を用いて、1つの円周を構成することとしてもよい。また、例えば、360°分の長さを有する1つの長尺カプラ212を用いて、1つの円周を構成することとしてもよい。長尺カプラ212の数が多いほど伝送路が短くなり、信号の減衰が生じにくくなる。一方で、長尺カプラ212の数が少ないほど装置の構造が簡潔になり、製造コストやメンテナンスの負担が軽減される。また、上述した各実施形態では、回転部側に長尺カプラ212が設けられ、固定部側に短尺カプラ222が設けられる場合について説明したが、回転部側に短尺カプラが設けられ、固定部側に長尺カプラが設けられる場合についても同様に適用が可能である。
【0095】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0096】
また、
図1においては、単一のメモリ41が処理回路44の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ41を分散して配置し、処理回路44は、個別のメモリ41から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0097】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0098】
また、上述した実施形態で説明した近接通信制御方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0099】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、電磁界結合による無線通信の品質を向上させることができる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
20 近接通信システム
21 回転部側通信部
211 第1信号処理部
212 長尺カプラ
213 治具
214 第1信号処理部
22 固定部側通信部
221 第2信号処理部
222 短尺カプラ
223 第2信号処理部
30 寝台装置
40 コンソール装置
44 処理回路
441 制御機能
442 収集機能
443 出力機能