(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20241008BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G06F8/65
G06F11/07 193
(21)【出願番号】P 2021072226
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】磯野 弘典
【審査官】久々宇 篤志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097576(JP,A)
【文献】特開2019-067264(JP,A)
【文献】特開2014-191573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
G06F 11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器に搭載されたソフトウェアを、ネットワークを経由して取得した更新用ソフトウェアにより更新するために用いられる監視装置であって、
コントローラと、
第1のメモリと
を備え、
前記コントローラは、
前記産業機器と通信可能であるとともに、前記ネットワークを介してサーバと通信可能であり、
更新用ソフトウェアが保存されている前記サーバと前記ネットワークを介して通信することで前記更新用ソフトウェアを取得し、取得した前記更新用ソフトウェアを前記第1のメモリに書込むための書込み処理を実行する機能と、
前記更新用ソフトウェアを前記産業機器に送信することで、前記産業機器内の第2のメモリに書込まれている現在のソフトウェアを、前記更新用ソフトウェアにより更新するための更新処理を実行する機能と、
前記更新処理の実行中において、前記第2のメモリに対して前記更新用ソフトウェアの書込みが完了した部分を示す更新経過情報を前記第1のメモリに記憶させる更新経過監視処理を実行する機能と、
前記更新経過情報に基づいて、前記更新用ソフトウェアへの前記更新処理が正常完了したか否かを判定するための正常完了判定処理を実行する機能と、
前記正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、前記更新経過情報から前記更新処理に失敗した部分を特定し、特定した前記部分に関して再更新処理を実行する機能と
を有
し、
前記第2のメモリは、書込み可能な最小単位に相当するページと、消去可能な最小単位に相当するブロックとを有し、1つのブロックは複数のページで構成されており、
前記コントローラは、
前記更新経過監視処理を実行する際に、ページ単位で書込みが完了したか否かを示す情報として前記更新経過情報を生成し、
前記正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、前記再更新処理を実行する際に、前記更新経過情報から前記更新処理に失敗したページを前記部分として特定し、特定した前記ページを含むブロックのみを前記第2のメモリから消去させ、消去したブロックの先頭ページからブロック単位での書込みを再開することで前記再更新処理を実行する
監視装置。
【請求項2】
産業機器に搭載されたソフトウェアを、ネットワークを経由して取得した更新用ソフトウェアにより更新するために用いられる監視装置であって、
コントローラと、
第1のメモリと
を備え、
前記コントローラは、
前記産業機器と通信可能であるとともに、前記ネットワークを介してサーバと通信可能であり、
更新用ソフトウェアが保存されている前記サーバと前記ネットワークを介して通信することで前記更新用ソフトウェアを取得し、取得した前記更新用ソフトウェアを前記第1のメモリに書込むための書込み処理を実行する機能と、
前記更新用ソフトウェアを前記産業機器に送信することで、前記産業機器内の第2のメモリに書込まれている現在のソフトウェアを、前記更新用ソフトウェアにより更新するための更新処理を実行する機能と、
前記更新処理の実行中において、前記第2のメモリに対して前記更新用ソフトウェアの書込みが完了した部分を示す更新経過情報を前記第1のメモリに記憶させる更新経過監視処理を実行する機能と、
前記更新経過情報に基づいて、前記更新用ソフトウェアへの前記更新処理が正常完了したか否かを判定するための正常完了判定処理を実行する機能と、
前記正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、前記更新経過情報から前記更新処理に失敗した部分を特定し、特定した前記部分に関して再更新処理を実行する機能と
を有
し、
前記コントローラは、
前記再更新処理を実行する際に、前記更新処理が正常完了したと判定した後に、前記第2のメモリに書込まれた前記更新用ソフトウェアのサム値を第1のサム値として前記産業機器から取得し、前記第1のメモリに書込まれた前記更新用ソフトウェアのサム値を第2のサム値として算出し、前記第1のサム値と前記第2のサム値とが不一致の場合には、前記第2のメモリに書込まれた前記更新用ソフトウェアの全ブロックを消去させ、先頭ページから書込みを始めることで前記再更新処理を実行する
監視装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記更新処理を実行する日時を更新開始日時としてあらかじめ設定するための更新時刻設定処理を実行する機能をさらに有し、
前記更新開始日時になったタイミングで前記更新処理を開始する
請求項1
または2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記書込み処理を実行する際に、前記更新用ソフトウェアを暗号化されたデータによって前記サーバから取得する
請求項1から
3のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記サーバから、前記更新用ソフトウェアのバージョンを含む情報を第1の情報として取得し、前記産業機器の前記第2のメモリに書込まれているソフトウェアのバージョンを含む情報を第2の情報として取得し、前記第1の情報と前記第2の情報とが不一致の場合には、更新すべき最新の更新用ソフトウェアが前記サーバに存在すると判断し、前記書込み処理を実行することで、前記更新用ソフトウェアを前記サーバから取得する
請求項1から
4のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記更新処理の実行を開始する際、および前記再更新処理の実行を開始する際に、書込み中を示すビットを1に設定し、前記正常完了判定処理において正常完了したと判定した場合には前記ビットを0にリセットし、電源起動時に前記ビットが1であるか否かを判定し、前記ビットが1である場合には、前記再更新処理を実行する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソフトウェアが搭載された産業機器、およびネットワークと通信可能な監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器には、ソフトウェアが搭載されており、機能変更あるいは機能追加に伴い、ソフトウェアを更新する必要がある。従来、産業機器のソフトウェア更新をリモートで行う方法として、LAN通信等により、更新するソフトウェアを、産業機器の格納用メモリにリモートで書込む方法があった。
【0003】
しかしながら、この方法では、ソフトウェアの書込み中に、電源断などのトラブルが発生して書込みに失敗した場合には、産業機器が正常に起動できなくなる、という問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、更新データのバックアップ用フラッシュメモリと更新データ格納用フラッシュメモリとを産業機器に搭載した従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、更新データをバックアップ用フラッシュメモリに格納した後、更新データ格納用フラッシュメモリに格納する方法が開示されている。
【0005】
この方法によると、更新データ格納用フラッシュメモリへの書込みが失敗した場合でも、バックアップ用フラッシュメモリに格納された更新データを、更新データ格納用フラッシュメモリへ書込むことにより、産業機器を容易に復旧させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る構成では、ネットワークとの通信機能が産業機器に搭載されていることが前提である。さらに、フラッシュメモリを2個搭載する必要もある。
【0008】
なお、フラッシュメモリを2個搭載する代わりに、大容量のフラッシュメモリを1個搭載し、パーティション分割して、更新データ格納用とバックアップ用の領域を設けることも考えられる。
【0009】
しかしながら、いずれにせよ、産業機器に搭載すべきメモリ容量が大きくなってしまう。そのため、ネットワークとの通信機能が搭載されていない産業機器、およびメモリ容量に余裕がない産業機器には、特許文献1に開示された方法は適用できないという課題がある。
【0010】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ネットワーク経由で取得した更新用ソフトウェアにより、産業機器に搭載されているソフトウェアの更新処理を迅速かつ確実に完了させることができる監視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る監視装置は、産業機器に搭載されたソフトウェアを、ネットワークを経由して取得した更新用ソフトウェアにより更新するために用いられる監視装置であって、コントローラと、第1のメモリとを備え、コントローラは、産業機器と通信可能であるとともに、ネットワークを介してサーバと通信可能であり、更新用ソフトウェアが保存されているサーバとネットワークを介して通信することで更新用ソフトウェアを取得し、取得した更新用ソフトウェアを第1のメモリに書込むための書込み処理を実行する機能と、更新用ソフトウェアを産業機器に送信することで、産業機器内の第2のメモリに書込まれている現在のソフトウェアを、更新用ソフトウェアにより更新するための更新処理を実行する機能と、更新処理の実行中において、第2のメモリに対して更新用ソフトウェアの書込みが完了した部分を示す更新経過情報を第1のメモリに記憶させる更新経過監視処理を実行する機能と、更新経過情報に基づいて、更新用ソフトウェアへの更新処理が正常完了したか否かを判定するための正常完了判定処理を実行する機能と、正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、更新経過情報から更新処理に失敗した部分を特定し、特定した部分に関して再更新処理を実行する機能とを有し、第2のメモリは、書込み可能な最小単位に相当するページと、消去可能な最小単位に相当するブロックとを有し、1つのブロックは複数のページで構成されており、コントローラは、更新経過監視処理を実行する際に、ページ単位で書込みが完了したか否かを示す情報として更新経過情報を生成し、正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、再更新処理を実行する際に、更新経過情報から更新処理に失敗したページを部分として特定し、特定したページを含むブロックのみを第2のメモリから消去させ、消去したブロックの先頭ページからブロック単位での書込みを再開することで再更新処理を実行するものである。
また、本開示に係る監視装置は、産業機器に搭載されたソフトウェアを、ネットワークを経由して取得した更新用ソフトウェアにより更新するために用いられる監視装置であって、コントローラと、第1のメモリとを備え、コントローラは、産業機器と通信可能であるとともに、ネットワークを介してサーバと通信可能であり、更新用ソフトウェアが保存されているサーバとネットワークを介して通信することで更新用ソフトウェアを取得し、取得した更新用ソフトウェアを第1のメモリに書込むための書込み処理を実行する機能と、更新用ソフトウェアを産業機器に送信することで、産業機器内の第2のメモリに書込まれている現在のソフトウェアを、更新用ソフトウェアにより更新するための更新処理を実行する機能と、更新処理の実行中において、第2のメモリに対して更新用ソフトウェアの書込みが完了した部分を示す更新経過情報を第1のメモリに記憶させる更新経過監視処理を実行する機能と、更新経過情報に基づいて、更新用ソフトウェアへの更新処理が正常完了したか否かを判定するための正常完了判定処理を実行する機能と、正常完了判定処理において正常完了していないと判定した場合には、更新経過情報から更新処理に失敗した部分を特定し、特定した部分に関して再更新処理を実行する機能とを有し、コントローラは、再更新処理を実行する際に、更新処理が正常完了したと判定した後に、第2のメモリに書込まれた更新用ソフトウェアのサム値を第1のサム値として産業機器から取得し、第1のメモリに書込まれた更新用ソフトウェアのサム値を第2のサム値として算出し、第1のサム値と第2のサム値とが不一致の場合には、第2のメモリに書込まれた更新用ソフトウェアの全ブロックを消去させ、先頭ページから書込みを始めることで再更新処理を実行するものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、産業機器とネットワークとの間に通信手段を有する監視装置を接続する構成を備えることで、ネットワークとの通信機能が搭載されていない、かつ不揮発性メモリ容量に余裕がない産業機器であっても、ネットワーク経由で取得した更新用ソフトウェアにより、産業機器に搭載されているソフトウェアの更新処理を迅速かつ確実に完了させることができる監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る監視装置を含む全体構成図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る監視装置における、ソフトウェア更新処理の一連の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る監視装置により実行される、産業機器に搭載された不揮発性メモリへの書込み処理を説明するための図であり、不揮発性メモリのページとブロックの関係を示す説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態2に係る監視装置を含む全体構成図である。
【
図5】本開示の実施の形態3に係る監視装置を含む監視システムの構成図である。
【
図6】本開示の実施の形態4に係る監視装置における、ソフトウェアのサム値確認処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る監視装置を含む全体構成図である。
図1に示した本実施の形態1に係る監視装置20は、ソフトウェアが搭載された産業機器10と通信ケーブル2を介して接続されている。さらに、監視装置20は、LANまたは専用回線3を介して外部のネットワーク4に接続されている。
【0015】
従って、監視装置20は、産業機器10とネットワーク4との間に配置され、通信ケーブル2を介して産業機器10と通信可能な構成を有しているとともに、専用回線3およびネットワーク4を介してサーバ5と通信可能な構成を有している。
【0016】
産業機器10は、ソフトウェアが搭載される不揮発性メモリ11を備えている。また、監視装置20は、CPU(コントローラ)21および不揮発性メモリ22を備えている。ここで、CPU21はコントローラに相当し、不揮発性メモリ22は第1のメモリに相当し、不揮発性メモリ11は第2のメモリに相当する。
【0017】
図2は、本開示の実施の形態1に係る監視装置20における、ソフトウェア更新処理の一連の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態1に係る監視装置20による一連処理について、
図1の構成図および
図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0018】
ステップS1において、監視装置20は、サーバ5と通信を行うことで、サーバ5に、産業機器10の更新用ソフトウェアが格納されているか否かを判定する。
【0019】
更新用ソフトウェアが格納されていないと判定した場合には、ステップS2に進み、監視装置20は、産業機器10のソフトウェア更新を行わず、一連処理を終了する。
【0020】
一方、更新用ソフトウェアが格納されていると判定した場合には、ステップS3に進み、監視装置20は、ネットワーク4を介して、サーバ5から産業機器10のための更新用ソフトウェアを取得する。
【0021】
次に、ステップS4において、監視装置20は、監視装置20に搭載された不揮発性メモリ22へ、ステップS3で取得した更新用ソフトウェアを書込む。
【0022】
監視装置20は、不揮発性メモリ22へ格納された更新用ソフトウェアを、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11に書込むように制御する機能を有している。そこで、ステップS5において、監視装置20は、不揮発性メモリ22に格納された更新用ソフトウェアを、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11に書込むための書込み処理を実行する。
【0023】
次に、ステップS6において、監視装置20は、不揮発性メモリ11への更新用ソフトウェアの書込み処理を実行中における書込み状況を、更新経過情報として不揮発性メモリ22に記録する。
【0024】
次に、ステップS7において、監視装置20は、監視装置20から不揮発性メモリ11への更新用ソフトウェアの書込み処理が成功したか、途中で失敗したかを判定する。書込みが成功したと判定した場合には、ステップS10に進み、監視装置20は、産業機器10のソフトウェア書込みに関する一連処理を完了する。
【0025】
一方、書込みが失敗したと判定した場合には、ステップS8に進み、監視装置20は、不揮発性メモリ11への書込み状況に基づいて、書込みが失敗したページを含むブロックを消去する。
【0026】
さらに、ステップS9において、監視装置20は、消去したブロックの先頭ページから、書込みを再開し、ステップS7に戻る。すなわち、監視装置20は、書込み状況に基づいて、書込みに失敗した部分を特定し、特定した部分に関して再更新処理を実行することができる。
【0027】
なお、更新経過情報に基づく書込みの再開処理の詳細に関しては、
図3を用いて後述する。
【0028】
そして、ステップS7に戻った後、監視装置20は、ステップS9により再開した書込みが成功したか否かを再度判定する。書込みが成功したと判定した場合には、ステップS10に進み、産業機器のソフトウェア書込みを完了する。
【0029】
一方、書込みが失敗したと判定した場合には、ステップS8に進み、監視装置20は、ステップS8以降の処理を再度実行する。
【0030】
このように、
図2に示した一連処理が実行されることで、ネットワーク4との通信機能が搭載されていない、かつ搭載された不揮発性メモリ11の容量にソフトウェアをバックアップしておく余裕がない産業機器10であっても、監視装置20を介することで、ネットワーク4経由で取得した更新用ソフトウェアにより、産業機器10に搭載されているソフトウェアを、迅速かつ確実に更新することができる。
【0031】
なお、
図2におけるステップS3、S4による処理は「書込み処理」に相当し、ステップS5による処理は「更新処理」に相当し、ステップS6による処理は「更新経過監視処理」に相当し、ステップS7による処理は、「正常完了判定処理」に相当し、ステップS8、S9による処理は「再更新処理」に相当する。
【0032】
本開示において使用される産業機器10の種類は問わず、たとえば、工作機械、検査装置、製造装置、電源装置、電力変換装置などでもよい。
【0033】
なお、「メモリ容量に余裕がない」とは、たとえば、産業機器10用のソフトウェアを1つ保存するだけのメモリ容量はあるものの、バックアップ用と更新用の2つのソフトウェアを保存するメモリ容量は無いような状態である。
【0034】
監視装置20には、産業機器10との通信を可能とするインターフェース部が設けられているが、この通信手段についてはその種類を問わず、たとえばシリアル通信、パラレル通信等を用いることができる。このような通信手段を備えることで、監視装置20は、産業機器10の運転状態、計測値等の監視、各種設定、制御等を行うことができる。
【0035】
また、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11、および監視装置20に搭載された不揮発性メモリ22の種類は問わず、たとえば、フラッシュROM(フラッシュメモリと称することもできる)、EEPROMなどを用いることができる。また、監視装置20に搭載される不揮発性メモリ22は、CPU(コントローラ)21に内蔵されているものであってもよい。
【0036】
次に、監視装置20から不揮発性メモリ11への更新用ソフトウェアの書込み処理が成功したか途中で失敗したかを判定し、必要に応じて書込みの再開処理を行う手法について詳細に説明する。
【0037】
一般的に、不揮発性メモリは、書込み可能な最小単位と、消去可能な最小単位とが互いに異なる。ここで、書込み可能な最小単位は、ページ(ワードと称することもできる)に相当し、消去可能な最小単位は、ブロックに相当する。また、1つのブロックは、複数のページで構成されている。
【0038】
監視装置20は、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11へ更新用ソフトウェアの書込みを行う際に、ページ単位で書込み状況を監視装置20内に記録する。記録方法は問わず、たとえば、更新用ソフトウェアを監視装置20から不揮発性メモリ11のページに書込む度に、産業機器10から監視装置20に書込み完了応答を送信することが考えられる。
【0039】
この手法を採用する場合には、監視装置20は、完了応答を受信するごとに、カウントしておく。また、監視装置20は、受信応答がない、あるいは否定応答を受信した場合には、書込み失敗と判断する。すなわち、監視装置20は、更新経過監視処理を実行する際に、書込み状況を示す更新経過情報を、ページ単位で書込みが完了したか否かを示す情報として生成することができる。
【0040】
電源断などのトラブルによって、監視装置20から不揮発性メモリ11への更新用ソフトウェアの書込みが失敗した場合について考える。この場合、本実施の形態1に係る監視装置20は、更新用ソフトウェアの書込み処理中に、更新経過情報としての書込み状況を逐次記録している。
【0041】
このため、監視装置20は、書込み状況に基づいて、書込みが失敗したページを特定することができる。この結果、監視装置20は、書込みが失敗したページを含むブロックのみを消去し、消去したブロックの先頭ページから書込みを再開することで、ソフトウェア更新を正常に完了させることができる。
【0042】
図3は、本開示の実施の形態1に係る監視装置20により実行される、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11への書込み処理を説明するための図であり、不揮発性メモリ11のページとブロックの関係を示す説明図である。
図3を用いて書込み再開時の処理について説明する。
【0043】
図3では、それぞれのブロックが、ページ1~ページNで構成されている場合を例示している。たとえば、ブロック1の全ページを正常に書き終え、ブロック2のページ3に書込んでいる途中で、電源断などのトラブルにより書込みが失敗した場合を考える。
【0044】
この場合、監視装置20は、書込み状況から、ブロック2のページ2までは正常に完了したが、ブロック2のページ3が正常完了していないことと判定することができる。そこで、監視装置20は、ブロック2の内容を消去し、ブロック2のページ1から書込みを再開する。
【0045】
書込み状況を記録しておくことで、書込み失敗時に全ブロックを消去して、ブロック1のページ1から再書込みする必要がなく、書込みが失敗したページを含むブロックのみを消去し、消去したブロックの先頭ページから書込みをすることができる。この結果、書込み時間の短縮化を図ることができる。
【0046】
また、一般的に、不揮発性メモリは、書換え回数の上限がある。従って、書込みが失敗したページを含むブロックのみを消去することで、消去するブロックの数を最小限に抑え、書換え回数を少なくすることができる。
【0047】
以上のように、実施の形態1によれば、ネットワークとの通信機能が搭載されていない、かつメモリ容量に余裕がない産業機器であっても、産業機器およびサーバと通信可能な監視装置を用いることで、ネットワーク経由で取得した更新用ソフトウェアにより、産業機器に搭載されているソフトウェアを更新することができる。
【0048】
また、ネットワーク経由で取得した更新用ソフトウェアは、監視装置搭載の不揮発性メモリに記憶されるとともに、更新処理を実行中には書込み状況をモニタリングし、不揮発性メモリに記録させることができる。この結果、電源断などのトラブルによって書込みが失敗した場合であっても、書込み状況に基づいて、更新処理を再開させることで、ソフトウェア更新を正常に完了させることができる。
【0049】
さらに、書込み状況を記録しておくことで、書込み失敗時に全ブロックを消去して最初から書込みをする必要がなく、書込みが失敗したページを含むブロックのみを消去し、消去したブロックの先頭ページから書込みをすることが可能となる。この結果、書込み時間の短縮化を図ることができる。また、消去するブロックの数を最小限に抑え、書換え回数を抑制することができる。
【0050】
実施の形態2.
本実施の形態2では、サーバ5が、クラウドサーバ7として構成されている場合について説明する。
【0051】
図4は、本開示の実施の形態2に係る監視装置を含む全体構成図である。
図4に示した本実施の形態2に係る構成は、先の実施の形態1における
図1の構成と比較すると、ネットワーク4とサーバ5との組合せの代わりに、インターネット6とクラウドサーバ7との組合せが使用されるとともに、ホスト管理システム8がインターネット6にさらに接続されている。
【0052】
図4に示すように、ネットワーク4を介したサーバ5の構成は、インターネット6を介したクラウドサーバ7として構成されている。また、管理者用のホスト管理システム8をさらに設けてもよい。
【0053】
図4に示した構成では、あらかじめ、ホスト管理システム8により、クラウドサーバ7上に、産業機器10の更新用ソフトウェアを保存しておく。監視装置20は、インターネット6を介して、クラウドサーバ7から産業機器10の更新用ソフトウェアを取得することができる。
【0054】
以上のように、実施の形態2によれば、監視システムが国内、海外各所の遠隔地に点在していても、迅速かつ確実にソフトウェアを更新することが可能となる。
【0055】
実施の形態3.
本実施の形態3では、産業機器10に対して別の産業機器がさらに接続されている場合について説明する。
【0056】
図5は、本開示の実施の形態3に係る監視装置を含む監視システムの構成図である。
図5に示すように、産業機器10には、第2の産業機器30がさらに接続されていてもよい。
【0057】
監視装置20は、第2の産業機器30の更新用ソフトウェアを、不揮発性メモリ22へ書込んだ後、監視装置20から第2の産業機器30に搭載された不揮発性メモリ31に書込むことで、同様に、第2の産業機器30のソフトウェアを更新することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態2によれば、複数台の産業機器のソフトウェアを更新することができる。
【0059】
実施の形態4.
本実施の形態4では、本開示に係る監視装置におけるデータ化け対策について説明する。
【0060】
図6は、本開示の実施の形態4に係る監視装置における、ソフトウェアのサム値確認処理手順を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS10において、監視装置20は、監視装置20から産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11へのソフトウェアの書込みが完了したことを確認する。その後、ステップS11において、監視装置20は、産業機器10から、産業機器10によって算出された、更新後のソフトウェアのサム値を第1のサム値として取得する。
【0062】
次に、ステップS12において、監視装置20は、不揮発性メモリ11に書込みを行ったソフトウェアのサム値を第2のサム値として算出し、ステップS11で取得した第1のサム値と比較する。第1のサム値と第2のサム値との比較結果が一致した場合には、ステップS15に進み、監視装置20は、サム値確認完了とする。
【0063】
一方、第1のサム値と第2のサム値との比較結果が不一致の場合には、ステップS13に進み、監視装置20は、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11の全ブロックを消去する。さらに、ステップS14において、監視装置20は、不揮発性メモリ11の先頭ページから、再度、更新すべきソフトウェアの書込みを始める。
【0064】
このようにすることで、データ化け等のトラブルが起こったとしても、確実にソフトウェアを更新することができる。
【0065】
以上のように、実施の形態4によれば、更新用ソフトウェアを産業機器内の不揮発性メモリに正常に書込み完了した後に、サム値を比較することで、データ化け等のトラブルを検出でき、データ化け等のトラブルが起こったとしても、確実にソフトウェアを再更新することができる。
【0066】
実施の形態5.
本実施の形態5では、本開示に係る監視装置20において、ソフトウェアの更新日時を事前に設定する機能について説明する。
【0067】
本実施の形態5に係る監視装置20は、産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11へのソフトウェアの書込み日時を設定するための更新時刻設定処理を実行する機能を有する。
【0068】
産業機器10の運転中は、ソフトウェア更新を行うことができない。このため、産業機器10を停止してからソフトウェアを更新することになる。本実施の形態1に係る監視装置20では、更新開始日時の設定が可能なため、産業機器10が停止している日時に更新開始日時を設定することで、運転中の装置を停止させることなく、ソフトウェアの更新処理を所望のタイミングで開始させることができる。
【0069】
以上のように、実施の形態5によれば、運転中の産業機器を停止させることなく、事前に設定した所望のタイミングで、ソフトウェアを更新することができる。
【0070】
実施の形態6.
本実施の形態6では、本開示に係る監視装置20において、暗号化されたデータを用いて通信を行う場合について説明する。
【0071】
本実施の形態6に係る監視装置20は、ネットワーク4を介したサーバ5との間で、暗号化された通信を実行する。暗号化された通信を利用することで、セキュリティ性能を高めることができ、更新用ソフトウェアに関するデータの盗聴、改ざん等を防ぐことができる。
【0072】
以上のように、実施の形態6によれば、更新用ソフトウェアデータの盗聴、改ざん等を防ぐことができ、セキュリティ性能を高めた更新処理を実現できる。
【0073】
実施の形態7.
本実施の形態7では、本開示に係る監視装置20において、ソフトウェアの更新が必要であるか否かを判定する機能について説明する。
【0074】
本実施の形態7に係る監視装置20は、ネットワーク4を介してサーバ5から、サーバ5に保存された最新のソフトウェア情報を第1の情報として取得する機能と、産業機器10から、現在実装されているソフトウェアのソフトウェア情報を第2の情報として取得する機能とを有する。ここで。ソフトウェア情報とは、ソフトウェアのバージョン情報を含むことができる。
【0075】
そして、監視装置20は、取得した互いの情報を比較し、差があり、不一致の場合には、産業機器10に実装されているソフトウェアを、サーバ5に存在している最新のソフトウェアによって更新する必要があると判定する。
【0076】
監視装置20は、更新処理が必要であると判定した場合には、ネットワーク4経由でサーバ5から最新のソフトウェアを取得することができる。さらに、必要に応じて、産業機器10のソフトウェアを、取得した最新のソフトウェアにより更新することができる。
【0077】
以上のように、実施の形態7によれば、産業機器のソフトウェアを、常に最新のバージョンに保つことができる。
【0078】
実施の形態8.
本実施の形態8では、本開示に係る監視装置20において、ソフトウェアの書込み中に電源オフとなった場合の対策について説明する。
【0079】
本実施の形態8に係る監視装置20は、監視装置20から産業機器10に搭載された不揮発性メモリ11へのソフトウェアの書込み中に、書込み中を示すビットを1に設定し、不揮発性メモリ22に記憶させておく。書込み完了時には、書込み中を示すビットを0にリセットする。
【0080】
監視装置20は、起動時に、書込み中を示すビットを確認し、1であれば書込みを再開し、0であれば書込みは行わず、通常通り起動することができる。このようにすることで、電源断などのトラブルによって監視装置20の電源がオフになった場合にも、再起動時に書込み中を示すビットを確認し、1であれば書込みを再開することができ、確実にソフトウェアを更新することができる。
【0081】
以上のように、実施の形態8によれば、電源起動時において、書込み中を示すビットを確認し、ビットが1であれば、何らかの理由で更新処理中に電源がオフになったと判定し、更新処理を再開することができ、確実にソフトウェアを更新することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 監視システム、2 通信ケーブル、3 LANまたは専用回線、4 ネットワーク、5 サーバ、6 インターネット、7 クラウドサーバ、8 管理者用のホスト管理システム、10 産業機器、11 産業機器搭載の不揮発性メモリ(第2のメモリ)、20 監視装置、21 CPU(コントローラ)、22 監視装置搭載の不揮発性メモリ(第1のメモリ)、30 第2の産業機器、31 第2の産業機器搭載の不揮発性メモリ(第2のメモリ)。