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  • 特許-再生器の防水構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】再生器の防水構造
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/40 20220101AFI20241008BHJP
   F23J 13/00 20060101ALI20241008BHJP
   F23J 11/00 20060101ALI20241008BHJP
   F22B 7/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F24H9/40
F23J13/00 Z
F23J11/00
F22B7/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021074691
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022168964
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑亮
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-076638(JP,A)
【文献】特開平06-265167(JP,A)
【文献】特開2019-168196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0017847(US,A1)
【文献】中国実用新案第209893648(CN,U)
【文献】中国実用新案第206861496(CN,U)
【文献】特開昭60-253771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/40
F23J 13/00
F23J 11/00
F22B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面を有する筐体と、前記第一端面に開口した燃焼ガスの流入口を有する炉筒と、前記第一端面に開口した前記燃焼ガスの流出口を有する煙管と、を有する再生器と、
対向面を有し、かつ前記対向面を前記第一端面と対向させて前記再生器に取り付けられており、前記煙管の流出口から流出する前記燃焼ガスを外部に導く煙室と、
前記流入口に取り付けられて前記対向面に向けて突出しており、前記炉筒に向かう前記燃焼ガスの流路と前記煙室とを仕切る筒状の隔壁と、
前記隔壁の先端面と前記対向面との間をシールする環状のパッキンと、
前記隔壁における基端側の側面を覆っており、かつ前記隔壁と共に前記筐体に固定されており、前記煙管の流出口から前記隔壁の側面に向けて落ちる結露水を前記隔壁の側方に導く防滴部材と、
を備えることを特徴とする再生器の防水構造。
【請求項2】
前記防滴部材は、
前記結露水を受けて前記結露水を導く受け部と、
前記隔壁の側面から遠ざかる方向に向けて前記受け部から立設されており、前記筐体に対して固定される固定部と、
を有し、
前記固定部は、前記炉筒に向かう前記燃焼ガスの流れ方向において前記第一端面よりも下流側に位置するように固定されている
請求項1に記載の再生器の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生器の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結露水の発生を防止する技術がある。特許文献1には、温風暖房機における煙室部の結露水発生による腐食防止方法が開示されている。特許文献1では、温風暖房機の煙室部にドーナツ状のバッフルを配置し、燃焼ガスがバッフルの中空部を通り抜けるだけでなくチューブプレートや煙室胴の壁面に沿って流れるようにし、それによってチューブプレート、煙室胴の壁面の温度を上昇させ該壁面に結露水が作られることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-42732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、吸収式冷温水機の場合、再生器の煙管内部で結露水が発生するという問題がある。結露水がパッキンに付着すると、パッキンの劣化を招きやすい。再生器においてパッキンを結露水から保護できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、パッキンを結露水から保護することができる再生器の防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の再生器の防水構造は、第一端面を有する筐体と、前記第一端面に開口した燃焼ガスの流入口を有する炉筒と、前記第一端面に開口した前記燃焼ガスの流出口を有する煙管と、を有する再生器と、対向面を有し、かつ前記対向面を前記第一端面と対向させて前記再生器に取り付けられており、前記煙管の流出口から流出する前記燃焼ガスを外部に導く煙室と、前記流入口に取り付けられて前記対向面に向けて突出しており、前記炉筒に向かう前記燃焼ガスの流路と前記煙室とを仕切る筒状の隔壁と、前記隔壁の先端面と前記対向面との間をシールする環状のパッキンと、前記隔壁における基端側の側面を覆っており、かつ前記隔壁と共に前記筐体に固定されており、前記煙管の流出口から前記隔壁の側面に向けて落ちる結露水を前記隔壁の側方に導く防滴部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る再生器の防水構造は、防滴部材を有する。防滴部材は、隔壁における基端側の側面を覆っており、かつ隔壁と共に筐体に固定されており、煙管の流出口から隔壁の側面に向けて落ちる結露水を隔壁の側方に導く。本発明に係る再生器の防水構造によれば、隔壁の先端に配置されたパッキンを結露水から保護できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る再生器の防水構造の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る再生器の防水構造の断面図である。
図3図3は、実施形態に係る再生器の防水構造の斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る防滴部材の取り付け構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る再生器の防水構造につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から図4を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、再生器の防水構造に関する。図1は、実施形態に係る再生器の防水構造の分解斜視図、図2は、実施形態に係る再生器の防水構造の断面図、図3は、実施形態に係る再生器の防水構造の斜視図、図4は、実施形態に係る防滴部材の取り付け構造の断面図である。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る再生器の防水構造1は、再生器2と、煙室3と、隔壁4と、パッキン5と、防滴部材6と、を有する。本実施形態の防滴部材6は、煙管22から流出する結露水を隔壁4の側方へ導き、結露水がパッキン5に向けて流れることを規制する。よって、本実施形態に係る再生器の防水構造1は、パッキン5の劣化を抑制することができる。
【0012】
図2を参照して、装置全体の概略構成について説明する。本実施形態に係る再生器2は、吸収式冷温水機の高温再生器であり、燃焼ガスと溶液との熱交換を行なう。吸収液として用いられる溶液は、例えば、臭化リチウム水溶液である。再生器2は、筐体20、炉筒21、および複数の煙管22を有する。筐体20は、再生器2の本体であり、炉筒21および煙管22を収容する。筐体20は、例えば、軸方向Xが鉛直方向Zと直交するように設置される。
【0013】
筐体20は、第一端面20aを有する。第一端面20aは、筐体20における軸方向Xの一方側の端面である。例示された第一端面20aは、軸方向Xに対して直交している。炉筒21は、燃焼器100によって生成される燃焼ガスを受け入れる通路である。燃焼器100の筒部101は、隔壁4の貫通孔に挿入される。燃焼器100で発生する燃焼ガスは、筒部101を介して炉筒21に流入する。例示された炉筒21の形状は、円筒形状である。炉筒21は、第一端面20aに開口している流入口21aを有する。炉筒21は、第一端面20aから軸方向Xに沿って筐体20の奥部20bまで延在している。燃焼ガスは、図1に矢印AR1で示すように、流入口21aから奥部21bに向けて流れる。
【0014】
煙管22は、炉筒21に対して半径方向の外側に配置されている。煙管22は、筒状に形成されており、炉筒21よりも小径である。複数の煙管22は、炉筒21を囲むように周方向に沿って並んでいる。複数の煙管22は、炉筒21の上方や側方に配置されている。煙管22は、第一端面20aに開口している流出口22bを有する。煙管22は、流出口22bから軸方向Xに沿って筐体20の奥部20bまで延在している。複数の煙管22は、奥部20bにおいて炉筒21と連通している。筐体20の奥部20bは、例えば、炉筒21と複数の煙管22とを連通する煙室を有する。炉筒21から煙管22に流入した燃焼ガスは、図1に矢印AR2で示すように、流出口22bから流れ出る。
【0015】
炉筒21と煙管22の周囲には、希溶液が導入される容器が設けられている。図示しない吸収器から容器に導入された希溶液は、炉筒21および煙管22を流れる燃焼ガスにより加熱される。加熱されて濃縮された溶液は、吸収器に送られる。
【0016】
煙室3は、第一端面20aを覆うカバーである。煙室3は、図2に示すように、第一端面20aと対向する対向面31を有する。煙室3は、対向面31を第一端面20aと対向させて再生器2の本体に取り付けられている。煙室3は、取付部材7によって筐体20に対して固定される。煙室3は、第一端面20aと対向面31との間に燃焼ガスを導く空間部32を形成する。煙管22の流出口22bから流れ出る燃焼ガスは、空間部32を介して外部に排出される。
【0017】
隔壁4は、筐体20と、煙室3と、燃焼器100とを相互に組み付ける部材である。隔壁4は、流入口21aに取り付けられる。隔壁4は、筒部40と、フランジ部41と、頂壁42と、を有する。筒部40、フランジ部41、および頂壁42は、一体に形成されている。筒部40は、先細の筒形状を有する。より詳しくは、筒部40は、軸方向Xに沿って筐体20から離れるに従って径が小さくなるテーパ形状を有する。筒部40の形状は、例えば、燃焼器100の側における接続部の径と、再生器2の側における接続部の径とが異なることに対応している。
【0018】
フランジ部41は、筒部40の基端から径方向の外側に向けて突出している。フランジ部41には、締結部材が挿入される貫通孔が形成されている。頂壁42は、筒部40の先端から半径方向の内側に向けて延出している。頂壁42は、円環形状に形成されており、先端面42aを有する。
【0019】
パッキン5は、煙室3と頂壁42との間をシールする部材である。例示されたパッキン5は、円環形状を有する。図2に示すように、パッキン5は、隔壁4の先端面42aと煙室3の対向面31との間をシールする。隔壁4は、炉筒21に向かう燃焼ガスの流路GRと、煙室3との間を仕切っている。パッキン5は、燃焼ガスの流路GRと煙室3との間を気密にシールして、燃焼ガスの漏出を抑制する。
【0020】
防滴部材6は、結露水がパッキン5に向かわないように、結露水を隔壁4の側方に導く部材である。図2に示すように、防滴部材6は、隔壁4における基端側の側面40aを覆っている。すなわち、防滴部材6は、筒部40におけるフランジ部41の近傍を外側から覆っている。防滴部材6は、隔壁4と共に流入口21aに対して固定されている。
【0021】
防滴部材6は、受け部60と、固定部61と、を有する。受け部60は、結露水を受け止めて結露水を隔壁4の側方に導く部分である。受け部60は、フランジ部41から軸方向Xに向けて突出している。受け部60の先端は、上方に向けて折れ曲がっており、結露水がパッキン5に向けて流れることを規制する。受け部60は、鉛直方向Zにおいて第一端面20aの延長線と交差するように配置されている。固定部61は、受け部60から径方向の外側に向けて立設されている。すなわち、固定部61は、隔壁4の側面40aから遠ざかる方向に向けて立設されている。
【0022】
結露水は、高温の燃焼ガスが、煙管22で冷やされることによって、燃焼ガスに含まれる水蒸気が凝縮して発生する。冬季の朝一番の運転開始時などは、再生器2が冷え切っているので、特に多くの結露水が発生する。発生した結露水は、煙管22の流出口22bから流れ出る。流出した結露水は、図2に矢印AR3で示すように、第一端面20aに沿って隔壁4に向けて流れ落ちる。防滴部材6が無い場合、結露水が筒部40の表面に沿って流れ、パッキン5に到達してしまう可能性がある。その結果、結露水によってパッキン5の劣化を招くことがある。
【0023】
本実施形態に係る再生器の防水構造1は、結露水がパッキン5に向けて流れてしまうことを防滴部材6によって抑制する。図2に示すように、防滴部材6の受け部60は、筐体20に形成されている開口の縁20cと、隔壁4との間に配置されている。よって、受け部60は、第一端面20aに沿って流れ落ちる結露水を受け止めることができる。
【0024】
図3に示すように、防滴部材6の形状は、隔壁4のフランジ部41の形状と対応している。軸方向Xから見た場合の防滴部材6の形状は、フランジ部41に対応する円弧形状である。防滴部材6は、煙管22の流出口22bから流れ落ちる結露水を受け止めて、矢印AR4で示すように結露水を隔壁4の側方に導く。導かれた結露水は、パッキン5へ向かうことなく隔壁4の下方へ向かう。
【0025】
防滴部材6は、隔壁4の上端から所定の角度範囲に設けられる。この角度範囲は、結露水がパッキン5に到達できないように設定される。よって、本実施形態に係る再生器の防水構造1は、結露水によるパッキン5の劣化を適切に抑制することができる。
【0026】
図4を参照して、防滴部材6の取り付け構造について説明する。図4は、筐体20に対する隔壁4および防滴部材6の取り付け構造を示す断面図である。筐体20は、固定用の壁部23を有する。壁部23に対して燃焼ガスの流れ方向X1の下流側には、隔壁4を指示する支持部材24が配置されている。支持部材24と隔壁4のフランジ部41とは、壁部23を間に挟んで軸方向Xにおいて対向する。防滴部材6の固定部61は、フランジ部41に対して壁部23の側とは反対側に配置される。
【0027】
支持部材24には、ボルト25が固定されている。ボルト25は、軸方向Xに沿って隔壁4の側に向けて突出している。フランジ部41および固定部61には、それぞれボルト25に対応する貫通孔41a,61aが形成されている。ボルト25は、貫通孔41a,61aに挿入される。固定部61、フランジ部41、および壁部23は、ナット26によって共締めされる。つまり、防滴部材6は、筐体20と隔壁4との固定構造をそのまま利用して固定される。支持部材24とフランジ部41との間には、シール部材27が配置されている。
【0028】
図4に示すように、隔壁4のフランジ部41および防滴部材6の固定部61は、炉筒21へ向かう燃焼ガスの流れ方向X1において、第一端面20aよりも下流側に位置している。よって、滴下する結露水がフランジ部41に付着しにくい。固定部61とフランジ部41の隙間に結露水が入り込んだとしても、その量は微量である。従って、隔壁4に付着した結露水は、高温の隔壁4によって蒸発する。
【0029】
本実施形態の防滴部材6は、既存の隔壁4に対してそのまま増設することができる。また、防滴部材6が隔壁4に対してボルト25およびナット26によって組み付けられることで、防滴部材6に熱変形による劣化が発生しにくい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る再生器の防水構造1は、再生器2と、煙室3と、隔壁4と、パッキン5と、防滴部材6と、を有する。再生器2は、第一端面20aを有する筐体20と、炉筒21と、煙管22と、を有する。炉筒21は、第一端面20aに開口した燃焼ガスの流入口21aを有する。煙管22は、第一端面20aに開口した燃焼ガスの流出口22bを有する。
【0031】
煙室3は、対向面31を有し、対向面31を第一端面20aと対向させて再生器2の本体に取り付けられている。煙室3は、煙管22の流出口22bから流出する燃焼ガスを外部に導く。隔壁4は、流入口21aに取り付けられて対向面31に向けて突出している。隔壁4は、炉筒21に向かう燃焼ガスの流路GRと煙室3とを仕切る。環状のパッキン5は、隔壁4の先端面42aと対向面31との間をシールする。
【0032】
防滴部材6は、隔壁4における基端側の側面40aを覆っており、かつ隔壁4と共に筐体20に固定されている。防滴部材6は、煙管22の流出口22bから隔壁4の側面40aに向けて落ちる結露水を隔壁4の側方に導く。よって、本実施形態に係る再生器の防水構造1は、結露水がパッキン5に付着することによるパッキン5の劣化を抑制することができる。
【0033】
本実施形態の防滴部材6は、受け部60と、固定部61と、を有する。受け部60は、結露水を受けて結露水を導く部分である。固定部61は、筐体20に対して固定される部分である。固定部61は、隔壁4の側面40aから遠ざかる方向に向けて受け部60から立設されている。固定部61は、炉筒21に向かう燃焼ガスの流れ方向X1において第一端面20aよりも下流側に位置するように固定されている。このような構成の防滴部材6は、結露水を適切に受け止めてパッキン5を結露水から保護することができる。
【0034】
[実施形態の変形例]
防滴部材6の形状および配置は、実施形態において例示された形状および配置には限定されない。例えば、軸方向Xから見た場合の防滴部材6の形状は、円弧形状には限定されない。一例として、防滴部材6は、隔壁4の上端から斜め下方に向けて直線状に延在していてもよい。
【0035】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 再生器の防水構造
2 再生器
3 煙室
4 隔壁
5 パッキン
6 防滴部材
7 取付部材
20:本体、 20a:第一端面、 20b:奥部、 20c:縁部
21:炉筒、 21a:流入口、 22:煙管、 22b:流出口
23:壁部、 24:支持部材、 24a:貫通孔
25:ボルト、 26:ナット
31:対向面、32:空間部
40:筒部、 41:フランジ部、 41a:貫通孔
42:頂壁、 42a:先端面
60:受け部、 61:固定部、 61a:貫通孔
100:燃焼器、 101:筒部
X:軸方向、 X1:排気ガスの流れ方向、 Z:鉛直方向
図1
図2
図3
図4