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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】DC/DC変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021099998
(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公開番号】P2022191655
(43)【公開日】2022-12-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】奥山 涼太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩毅
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-044391(JP,U)
【文献】国際公開第2018/021172(WO,A1)
【文献】特開2014-121200(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167271(WO,A1)
【文献】特開2009-261160(JP,A)
【文献】特開平03-089848(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056503(WO,A1)
【文献】特開2019-054572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート信号によって制御され、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する電力変換器と、
前記第1の直流電圧を出力する第1の直流電源と前記電力変換器との間に設けられ、リアクトルおよびコンデンサを含む第1のフィルタ回路と、
前記第1の直流電圧が変動した場合における前記第2の直流電圧の変動が抑制されるように、前記第1の直流電圧の検出値に基づいて前記第2の直流電圧の指令値および検出値のうちの少なくともいずれか1つを補正する第1の補正部と、
前記第1の補正部によって少なくとも1つが補正された前記第2の直流電圧の指令値および検出値に基づいて電気量制御値を生成する制御部と、
前記電気量制御値に基づいて前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部とを備え、
前記第1および第2の直流電圧の変動の位相は互いに180度ずれており、
前記第1の補正部は、前記第2の直流電圧の検出値を前記第1の直流電圧の検出値で除算して、前記第2の直流電圧の検出値を補正する、DC/DC変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の直流電圧の指令値と前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の検出値の補正値との偏差に正極性のゲインを乗算して、前記電気量制御値を生成する、請求項1に記載のDC/DC変換装置。
【請求項3】
前記第2の直流電圧の指令値はゼロに設定されており、
前記制御部は、前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の検出値の補正値に負極性のゲインを乗算して、前記電気量制御値を生成する、請求項に記載のDC/DC変換装置。
【請求項4】
前記電力変換器と前記第2の直流電圧を出力する第2の直流電源との間に設けられ、リアクトルおよびコンデンサを含む第2のフィルタ回路と、
前記第2の直流電圧が変動した場合における前記第1の直流電圧の変動が抑制されるように、前記第2の直流電圧の検出値に基づいて前記第1の直流電圧の指令値および検出値のうちの少なくともいずれか1つを補正する第2の補正部をさらに備え、
前記2の補正部は、前記第1の直流電圧の検出値を前記第2の直流電圧の検出値で除算して、前記第1の直流電圧の検出値を補正し、
前記制御部は、前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の検出値の補正値と、前記第2の補正部による前記第1の直流電圧の検出値の補正値とに基づいて、前記電気量制御値を生成する、請求項1に記載のDC/DC変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の検出値の補正値に正極性の第1のゲインを乗算して、第1の電気量制御値を生成し、
前記第2の補正部による前記第1の直流電圧の検出値の補正値に正極性の第2のゲインを乗算して、第2の電気量制御値を生成し、
前記第2の電気量制御値から前記第1の電気量制御値を減算して、前記電気量制御値を生成する、請求項4に記載のDC/DC変換装置。
【請求項6】
ゲート信号によって制御され、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する電力変換器と、
前記第1の直流電圧を出力する第1の直流電源と前記電力変換器との間に設けられ、リアクトルおよびコンデンサを含む第1のフィルタ回路と、
前記第1の直流電圧が変動した場合における前記第2の直流電圧の変動が抑制されるように、前記第1の直流電圧の検出値に基づいて前記第2の直流電圧の指令値および検出値のうちの少なくともいずれか1つを補正する第1の補正部と、
前記第1の補正部によって少なくとも1つが補正された前記第2の直流電圧の指令値および検出値に基づいて電気量制御値を生成する制御部と、
前記電気量制御値に基づいて前記ゲート信号を生成するゲート信号生成部とを備え、
前記第1および第2の直流電圧の変動の位相は互いに180度ずれており、
前記第1の補正部は、前記第2の直流電圧の指令値に前記第1の直流電圧の検出値を乗算して、前記第2の直流電圧の指令値を補正し、
前記制御部は、前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の指令値の補正値と、前記第2の直流電圧の検出値との偏差に正極性のゲインを乗算して、前記電気量制御値を生成する、DC/DC変換装置。
【請求項7】
記電力変換器は、
前記第1の直流電圧を第1の交流電圧に変換して第1の交流端子に出力する第1のDC/AC変換器と、
前記第2の直流電圧を第2の交流電圧に変換して第2の交流端子に出力する第2のDC/AC変換器と、
前記第1および第2の交流端子間に接続され、前記第1および第2のDC/AC変換器間で交流電力を授受するリアクトル回路とを含み、
前記電気量制御値は電力制御値であり、
前記ゲート信号は、
前記第1のDC/AC変換器を駆動させる第1の副ゲート信号と、
前記第2のDC/AC変換器を駆動させる第2の副ゲート信号とを含み、
前記ゲート信号生成部は、前記電力制御値に基づいて前記第1および第2の交流電圧の位相差を求め、その位相差に基づいて前記第1および第2の副ゲート信号を生成する、請求項1から6のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置。
【請求項8】
記電力変換器は、リアクトルを含み、前記第1の直流電圧を前記第2の直流電圧に変換するチョッパ回路を含み、
前記電気量制御値はデューティ比制御値であり、
前記制御部は、前記リアクトルに流れる電流の検出値に、前記第1の補正部による前記第2の直流電圧の検出値の補正値を乗算して電力制御値を生成し、前記電力制御値にゲインを乗算して前記デューティ比制御値を生成し、
前記ゲート信号生成部は、前記デューティ比制御値に基づいて前記ゲート信号を生成する、請求項1に記載のDC/DC変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC/DC変換装置に関し、特に、第1の直流電気量を第2の直流電気量に変換するDC/DC変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2019/167271号(特許文献1)には、ゲート信号によって制御され、第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する電力変換器と、第2の直流電圧の指令値および検出値に基づいて電圧制御値を生成する制御部と、電圧制御値に基づいてゲート信号を生成するゲート信号生成部とを備えるDC/DC変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/167271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このようなDC/DC変換装置と直流電源の間には、直流電流を通過させ、高周波電流を遮断するフィルタ回路が設けられる。このフィルタ回路はリアクトルとコンデンサを含むので、共振現象(LC共振)が発生する恐れがある。従来のDC/DC変換装置では、共振現象が発生して第1の直流電圧が変動すると、第2の直流電圧も変動し、その変動を減衰させることができないという問題があった。
【0005】
それゆえに、本開示の主たる目的は、第1の直流電気量が変動した場合における第2の直流電気量の変動を減衰させることが可能なDC/DC変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るDC/DC変換装置は、ゲート信号によって制御され、第1の直流電気量を第2の直流電気量に変換する電力変換器と、第1の直流電気量が変動した場合における第2の直流電気量の変動が抑制されるように、第1の直流電気量の検出値に基づいて第2の直流電気量の指令値および検出値のうちの少なくともいずれか1つを補正する第1の補正部と、第1の補正部によって少なくとも1つが補正された第2の直流電気量の指令値および検出値に基づいて電気量制御値を生成する制御部と、電気量制御値に基づいてゲート信号を生成するゲート信号生成部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るDC/DC変換装置では、第1の直流電気量が変動した場合における第2の直流電気量の変動が抑制されるように、第1の直流電気量の検出値に基づいて第2の直流電気量の指令値および検出値のうちの少なくともいずれか1つを補正し、補正後の第2の直流電気量の指令値および検出値に基づいて電気量制御値を生成する。したがって、第1の直流電気量が変動した場合における第2の直流電気量の変動を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に従うDC/DC変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示すDC/AC変換器の構成を示す回路図である。
図3図2に示す交流電圧の波形を例示するタイムチャートである。
図4図1に示す制御装置の要部を示すブロック図である。
図5】実施の形態1の変更例を示す回路図である。
図6】実施の形態2に従うDC/DC変換装置の要部を示すブロック図である。
図7】実施の形態3に従うDC/DC変換装置の要部を示すブロック図である。
図8】実施の形態4に従うDC/DC変換装置の要部を示すブロック図である。
図9】実施の形態5に従うDC/DC変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図10図9に示す制御装置の要部を示すブロック図である。
図11図10に示す補正部を設けた理由を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従うDC/DC変換装置の構成を示す回路ブロック図である。図1において、このDC/DC変換装置は、DC/AC変換器1,2、変圧器3、リアクトルL1,L2、コンデンサC1,C2、操作部4、および制御装置5を備える。このDC/DC変換装置は、DAB(Dual Active Bridge)方式のDC/DC変換装置であり、直流電源PS1,PS2間で直流電力を授受するものである。
【0010】
直流電源PS1,PS2のうちのいずれか一方から他方に直流電力が供給され、他方は一方からの直流電力を蓄える。たとえば、直流電源PS1,PS2のうちのいずれか一方は太陽電池のような直流電力発生装置であり、他方はバッテリ、コンデンサ等の電力貯蔵装置である。あるいは、直流電源PS1,PS2は、ともに電力貯蔵装置である。
【0011】
直流電源PS1の正極はリアクトルL1を介してDC/AC変換器1の正側直流端子1aに接続され、その負極はDC/AC変換器1の負側直流端子1bに接続される。リアクトルL1は、DC/AC変換器1で短絡事故が発生した場合に流れる故障電流を抑制する。コンデンサC1は、DC/AC変換器1の直流端子1a,1b間に接続され、直流端子1a,1b間の直流電圧VD1を平滑化させる。直流電圧VD1は、制御装置5によって検出される。
【0012】
また、リアクトルL1およびコンデンサC1は、フィルタ回路F1を構成する。フィルタ回路F1は、低域通過フィルタであって、直流電流を通過させ、DC/AC変換器1で発生する高周波信号が直流電源PS1に流れることを防止する。
【0013】
同様に、直流電源PS2の正極はリアクトルL2を介してDC/AC変換器2の正側直流端子2aに接続され、その負極はDC/AC変換器2の負側直流端子2bに接続される。リアクトルL2は、DC/AC変換器2で短絡事故が発生した場合に流れる故障電流を抑制する。コンデンサC2は、DC/AC変換器2の直流端子2a,2b間に接続され、直流端子2a,2b間の直流電圧VD2を平滑化させる。直流電圧VD2は、制御装置5によって検出される。
【0014】
また、リアクトルL2およびコンデンサC2は、フィルタ回路F2を構成する。フィルタ回路F2は、低域通過フィルタであって、直流電流を通過させ、DC/AC変換器2で発生する高周波信号が直流電源PS2に流れることを防止する。
【0015】
DC/AC変換器1は、制御装置5からのゲート信号G1~G4によって駆動され、直流電圧VD1(第1の直流電気量)を交流電圧VA1に変換して交流端子1c,1d間に出力する。DC/AC変換器1は、交流端子1c,1d間に正電圧(+VD1)と負電圧(-VD1)を一定時間(半周期)ずつ交互に出力することによって交流電圧VA1を生成する。交流電圧VA1の位相θ1は、制御装置5によって制御される。
【0016】
DC/AC変換器2は、制御装置5からのゲート信号G5~G8によって駆動され、直流電圧VD2(第2の直流電気量)を交流電圧VA2に変換して交流端子2c,2d間に出力する。DC/AC変換器2は、交流端子2c,2d間に正電圧(+VD2)と負電圧(-VD2)を一定時間(半周期)ずつ交互に出力することによって交流電圧VA2を生成する。交流電圧VA2の位相θ2は、制御装置5によって制御される。
【0017】
図2は、DC/AC変換器1,2の構成を示す回路図である。図2において、DC/AC変換器1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1~Q4、ダイオードD1~D4、およびコンデンサC11~C14を含む。
【0018】
IGBTQ1,Q2のコレクタはともに正側直流端子1aに接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流端子1c,1dに接続される。IGBTQ3,Q4のコレクタはそれぞれ交流端子1c,1dに接続され、それらのエミッタはともに負側直流端子1bに接続される。IGBTQ1~Q4のゲートは、それぞれゲート信号G1~G4を受ける。ダイオードD1~D4は、それぞれIGBTQ1~Q4に逆並列に接続される。コンデンサC11~C14は、それぞれダイオードD1~D4に並列接続される。
【0019】
IGBTQ1,Q4とIGBTQ2,Q3とが一定周期で交互にオンされる。IGBTQ1,Q4がオンされ、IGBTQ2,Q3がオフされると、直流端子1a,1bがそれぞれ交流端子1c,1dに接続され、交流電圧VA1は正電圧VD1となる。逆に、IGBTQ1,Q4がオフされ、IGBTQ2,Q3がオンされると、直流端子1a,1bがそれぞれ交流端子1d,1cに接続され、交流電圧VA1は負電圧(-VD1)となる。したがって、交流電圧VA1は、一定周期で交互に正電圧VD1および負電圧(-VD1)となる。
【0020】
同様に、DC/AC変換器2は、IGBTQ5~Q8、ダイオードD5~D8、およびコンデンサC15~C18を含む。IGBTQ5,Q6のコレクタはともに正側直流端子2aに接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流端子2c,2dに接続される。IGBTQ7,Q8のコレクタはそれぞれ交流端子2c,2dに接続され、それらのエミッタはともに負側直流端子2bに接続される。IGBTQ5~Q8のゲートは、それぞれゲート信号G5~G8を受ける。ダイオードD5~D8は、それぞれIGBTQ5~Q8に逆並列に接続される。コンデンサC15~C18は、それぞれダイオードD5~D8に並列接続される。
【0021】
IGBTQ5,Q8とIGBTQ6,Q7とが一定周期で交互にオンされる。IGBTQ5,Q8がオンされ、IGBTQ6,Q7がオフされると、直流端子2a,2bがそれぞれ交流端子2c,2dに接続され、交流電圧VA2は正電圧VD2となる。逆に、IGBTQ5,Q8がオフされ、IGBTQ6,Q7がオンされると、直流端子2a,2bがそれぞれ交流端子2d,2cに接続され、交流電圧VA2は負電圧(-VD2)となる。したがって、交流電圧VA2は、一定周期で交互に正電圧VD2および負電圧(-VD2)となる。
【0022】
変圧器3(リアクトル回路)は、1次巻線3a,3bを含む。1次巻線3aは、DC/AC変換器1の交流端子1cと交流端子1dとの間に接続される。2次巻線3bは、DC/AC変換器2の交流端子2cと交流端子2dとの間に接続される。1次巻線3aの巻数と2次巻線3bの巻数との比は、たとえば1:1である。変圧器3は、DC/AC変換器1,2間で交流電力を授受する。
【0023】
図3は、交流電圧VA1,VA2の波形を例示するタイムチャートである。図3において、交流電圧VA1,VA2は、それぞれDC/AC変換器1,2の交流出力電圧である。交流電圧VA1,VA2の振幅は、それぞれ直流電圧VD1,VD2である。図3では、直流電圧VD1が直流電圧VD2よりも大きく、交流電圧VA1の位相が交流電圧VA2の位相よりもΔθだけ遅れている場合が示されている。位相差Δθは、制御装置5によって制御される。
【0024】
VD1=VD2であり、かつ交流電圧VA1の位相θ1が交流電圧VA2の位相θ2よりも進んでいる場合には(Δθ=θ1-θ2>0)、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθ=θ1-θ2に応じた値の直流電力が直流電源PS1から直流電源PS2に供給される。この場合、DC/AC変換器2は、交流電圧VA2を直流電圧VD2に変換するAC/DC変換器として動作する。また、DC/AC変換器1、変圧器3、およびDC/AC変換器2は、直流電圧VD1を直流電圧VD2に変換するDC/DC変換器として動作する。
【0025】
また、VD1=VD2であり、かつ交流電圧VA2の位相θ2が交流電圧VA1の位相θ1よりも進んでいる場合には(Δθ=θ1-θ2<0)、交流電圧VA2,VA1の位相差Δθ=θ2-θ1に応じた値の直流電力が直流電源PS2から直流電源PS1に供給される。この場合、DC/AC変換器1は、交流電圧VA1を直流電圧VD1に変換するAC/DC変換器として動作する。また、DC/AC変換器2、変圧器3、およびDC/AC変換器1は、直流電圧VD2を直流電圧VD1に変換するDC/DC変換器として動作する。
【0026】
図3では、VD1>VD2であるので、交流電圧VA1の位相θ1と交流電圧VA2の位相θ2が同じである場合には(Δθ=0)、直流電圧VD1,VD2の差(VD1-VD2)に応じた値の直流電力が直流電源PS1から直流電源PS2に供給される。VD1>VD2であり、交流電圧VA1の位相θ1が交流電圧VA2の位相θ2よりも所定値θpだけ遅れている場合には(Δθ=-θp)、直流電源PS1,PS2間で電力は移動しない。
【0027】
再び図1を参照して、操作部4は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示部などを含み、DC/DC変換装置のユーザーによって操作される。ユーザーは、操作部4を操作して、直流電力を供給する側の直流電源(たとえばPS1)、直流電力を蓄える側の直流電源(たとえばPS2)、直流電圧指令値などを設定する。
【0028】
操作部4は、ユーザーによって設定された情報を示す信号を制御装置5に出力する。制御装置5は、操作部4からの信号、直流電圧VD1,VD2などに基づいて、ゲート信号G1~G8を生成することにより、DC/AC変換器1,2を制御する。
【0029】
次に、このようなDC/DC変換装置の問題点について説明する。上述の通り、このDC/DC変換装置では、直流電源PS1から直流電源PS2に直流電力を供給する動作と、直流電源PS2から直流電源PS1に直流電力を供給する動作との両方が可能となっているが、ここでは図面および説明の簡単化のため、直流電源PS1から直流電源PS2に直流電力を供給する場合について説明する。
【0030】
直流電源PS1とDC/AC変換器1の間のフィルタ回路F1は、リアクトルL1およびコンデンサC1を含むのでLC共振回路を構成する。このため、フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1が共振周波数で変動する場合がある。
【0031】
直流電圧VD1が変動すると、交流電圧VA1の振幅VD1が変動し、直流電圧VD2も共振周波数で変動してしまう。従来のDC/DC変換装置では、共振現象によって直流電圧VD1が変動した場合における直流電圧VD2の変動を減衰させることができなかった。本実施の形態1では、この問題の解決が図られる。
【0032】
図4は、制御装置5の要部を示すブロック図である。図4において、制御装置5は、電圧検出器11,12、補正部13、制御部14、加算器17、およびゲート信号生成部20を含む。
【0033】
電圧検出器11は、直流電圧VD2を検出し、その検出値を示す信号を出力する。電圧検出器12は、直流電圧VD1を検出し、その検出値を示す信号を出力する。補正部13(第1の補正部)は、電圧検出器11の出力信号によって示される直流電圧VD2を、電圧検出器12の出力信号によって示される直流電圧VD1で除算して、直流電圧VD2の補正値VD2A=VD2/VD1を生成する。
【0034】
ここで、補正部13を設けた理由について説明する。フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動しているとき、直流電圧VD1に発生する共振周波数の交流電圧をVR1とし、DC/AC変換器1から変圧器3を介してDC/AC変換器2に流れる共振周波数の交流電流をIR1とし、直流電圧VD2に発生する共振周波数の交流電圧をVR2とする。
【0035】
変圧器3は誘導性負荷であるので、交流電流IR1の位相は交流電圧VR1の位相よりも90度遅れる。また、LC共振では電圧の位相は電流の位相よりも90度遅れるので、交流電圧VR2の位相は交流電流IR1の位相よりも90度遅れる。したがって、交流電圧VR2の位相は交流電圧VR1の位相よりも180度遅れる。
【0036】
交流電圧VR2を減衰させるためには、交流電圧VR1,VR2がそれぞれ上昇および下降している場合には交流電圧VR2を上昇させ、交流電圧VR1,VR2がそれぞれ下降および上昇している場合には交流電圧VR2を下降させるように、DC/AC変換器1,2を制御すればよい。
【0037】
そこで本実施の形態1では、補正部13を設け、直流電圧VD1が上昇した場合には直流電圧VD2の補正値VD2A=VD2/VD1を下降させることによって直流電圧VD2を上昇させ、直流電圧VD1が下降した場合には直流電圧VD2の補正値VD2Aを上昇させることによって直流電圧VD2を下降させる。
【0038】
制御部14は、減算器15およびゲイン乗算器16を含む。減算器15は、直流電圧VD2の指令値VD2と直流電圧VD2の補正値VD2Aとの偏差ΔVD2=VD2-VD2を求める。ゲイン乗算器16は、偏差ΔVD2にゲインK1を乗算して電力制御値Pc(電気量制御値)を生成する。加算器17は、基準電力制御値P0に電力制御値Pcを加算して電力指令値Pを生成する。なお、加算器17がゲート信号生成部20に含まれていても構わない。
【0039】
ゲート信号生成部20は、位相差演算部21、加算器22、キャリア信号生成部23、および比較器24,25を含む。位相差演算部21は、次式(1)に基づいて、電力指令値Pに基づいて位相差指令値Δθを求める。なお、式(1)中の関数signは符号関数(シグナム関数)であり、引数の符号に応じて「+1」、「0」、「-1」の何れかを返す関数である。
【0040】
【数1】
【0041】
加算器22は、基準位相制御値θ0に位相差指令値Δθを加算して位相制御値θcを生成する。キャリア信号生成部23は、三角波状のキャリア信号φ1~φ4を生成する。比較器24は、位相制御値θcとキャリア信号φ1~φ4との高低を比較し、比較結果を示すゲート信号G5~G8を出力する。比較器25は、位相制御値θcとキャリア信号φ1~φ4との高低を比較し、比較結果を示すゲート信号G1~G4を出力する。ゲート信号G1~G4およびゲート信号G5~G8は、それぞれDC/AC変換器1,2に与えられる。
【0042】
DC/AC変換器1は、ゲート信号G1~G4によって駆動され、位相制御値θc=θ0+Δθに応じた値の位相θ1を有する交流電圧VA1を出力する。DC/AC変換器2は、ゲート信号G5~G8によって駆動され、基準位相制御値θ0に応じた値の位相θ2を有する交流電圧VA2を出力する。したがって、交流電圧VA1の位相θ1は、交流電圧VA2の位相θ2よりも位相差指令値θに応じた値の位相差Δθだけ進む。
【0043】
次に、このDC/DC変換装置の動作について説明する。まずフィルタ回路F1で共振現象が発生せず、直流電圧VD1が一定の定格値である場合について説明する。この場合は、直流電圧VD2が下降して直流電圧VD2の補正値VD2が電圧指令値VD2*よりも低下すると、正極性の偏差ΔVD2が増大する。正極性の偏差ΔVD2が増大すると、電力制御値Pcおよび電力指令値P*が増大し、位相差指令値Δθ*および位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大して直流電圧VD2が上昇する。
【0044】
逆に、直流電圧VD2が上昇して直流電圧VD2の補正値VD2が電圧指令値VD2*よりも上昇すると、負極性の偏差ΔVD2が増大する。負極性の偏差ΔVD2が増大すると、負極性の電力制御値Pcが増大して電力指令値P*が減少し、位相差指令値Δθ*および位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少して直流電圧VD2が減少する。したがって、直流電圧VD2は一定値に維持される。
【0045】
次に、フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動した場合について説明する。上述したように、直流電圧VD1,VD2の変動の位相は互いに180度ずれている。
【0046】
直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降して直流電圧VD2の補正値VD2=VD2/VD1が電圧指令値VD2よりも低下すると、正極性の偏差ΔVD2が増大する。正極性の偏差ΔVD2が増大すると、電力制御値Pcおよび電力指令値Pが増大し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大して直流電圧VD2が上昇する。
【0047】
逆に、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇して直流電圧VD2の補正値VD2=VD2/VD1が電圧指令値VD2よりも上昇すると、負極性の偏差ΔVD2が増大する。負極性の偏差ΔVD2が増大すると、負極性の電力制御値Pcが増大して電力指令値Pが減少し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少して直流電圧VD2が下降する。
【0048】
したがって、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降すると直流電圧VD2が上昇し、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇すると直流電圧VD2が下降するので、直流電圧VD2の変動は減衰する。
【0049】
以上のように、この実施の形態1では、共振現象によって直流電圧VD1が変動した場合における直流電圧VD2の変動が抑制されるように、直流電圧VD1の検出値に基づいて直流電圧VD2の検出値を補正し、その補正値VD2Aに基づいて電力制御値Pcを生成する。したがって、共振現象が発生して直流電圧VD1が変動した場合における直流電圧VD2の変動を減衰させることができる。
【0050】
図5は、実施の形態1の変更例を示す回路図であって、図2と対比される図である。図5を参照して、この変更例は実施の形態1の変圧器3をリアクトル回路26で置換したものである。リアクトル回路26は、リアクトル26a,26bを含む。リアクトル26a,26bの一方端子はそれぞれDC/AC変換器1の交流端子1c,1dに接続され、それらの他方端子はそれぞれDC/AC変換器2の交流端子2c,2dに接続される。リアクトル回路26は、DC/AC変換器1,2間で交流電力を授受する。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0051】
[実施の形態2]
図6は、この発明の実施の形態2に従うDC/DC変換装置の要部を示す回路ブロック図であって、図4と対比される図である。図6を参照して、このDC/DC変換装置が実施の形態1のDC/DC変換装置と異なる点は、制御部14が制御部30で置換されている点である。
【0052】
制御部30は、ゲイン乗算器31を含む。ゲイン乗算器31は、補正部13で生成された直流電圧VD2の補正値VD2Aに負極性のゲイン(-K1)を乗算して電力制御値Pc=-K1×VD2Aを生成する。すなわち、制御部30は、制御部14において電圧指令値VD2を0にしたものと等価である。
【0053】
次に、フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動した場合について説明する。上述したように、直流電圧VD1,VD2の変動の位相は互いに180度ずれている。
【0054】
直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降して直流電圧VD2の補正値VD2=VD2/VD1が減少すると、負極性の電力制御値Pcが減少して電力指令値Pが増大し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大して直流電圧VD2が上昇する。
【0055】
逆に、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇して直流電圧VD2の補正値VD2が増大すると、負極性の電力制御値Pcが増大して電力指令値Pが減少し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少して直流電圧VD2が減少する。
【0056】
したがって、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降すると直流電圧VD2が上昇し、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇すると直流電圧VD2が下降するので、直流電圧VD2の変動は減衰する。
【0057】
他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0058】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3に従うDC/DC変換装置の要部を示す回路ブロック図であって、図6と対比される図である。図7を参照して、このDC/DC変換装置が実施の形態2のDC/DC変換装置と異なる点は、補正部35が追加され、制御部30が制御部36で置換されている点である。
【0059】
補正部35(第2の補正部)は、電圧検出器12の出力信号によって示される直流電圧VD1を、電圧検出器11の出力信号によって示される直流電圧VD2で除算して、直流電圧VD1の補正値VD1A=VD1/VD2を生成する。
【0060】
ここで、補正部35を設けた理由について説明する。フィルタ回路F2で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動しているとき、直流電圧VD2に発生する共振周波数の交流電圧をVR2とし、DC/AC変換器2から変圧器3を介してDC/AC変換器1に流れる共振周波数の交流電流をIR2とし、直流電圧VD1に発生する共振周波数の交流電圧をVR1とする。
【0061】
変圧器3は誘導性負荷であるので、交流電流IR2の位相は交流電圧VR2の位相よりも90度遅れる。また、LC共振では電圧の位相は電流の位相よりも90度遅れるので、交流電圧VR1の位相は交流電流IR2の位相よりも90度遅れる。したがって、交流電圧VR1の位相は交流電圧VR2の位相よりも180度遅れる。
【0062】
交流電圧VR1を減衰させるためには、交流電圧VR2,VR1がそれぞれ上昇および下降している場合には交流電圧VR1を上昇させ、交流電圧VR2,VR1がそれぞれ下降および上昇している場合には交流電圧VR1が下降させるように、DC/AC変換器1,2を制御すればよい。
【0063】
そこで本実施の形態3では、補正部35を設け、直流電圧VD2が上昇した場合には直流電圧VD1の補正値VD1Aを下降させることによって直流電圧VD1を上昇させ、直流電圧VD2が下降した場合には直流電圧VD1の補正値VD1Aを上昇させることによって直流電圧VD1を下降させる。
【0064】
制御部36は、ゲイン乗算器37,38および減算器39を含む。ゲイン乗算器37は、補正部13で生成された直流電圧VD2の補正値VD2AにゲインK1を乗算して電力制御値Pc1=K1×VD2Aを生成する。ゲイン乗算器38は、補正部35で生成された直流電圧VD1の補正値VD1AにゲインK2を乗算して電力制御値Pc2=K2×VD1Aを生成する。減算器39は、電力制御値Pc2から電力制御値Pc1を減算して電力制御値Pc=Pc2-Pc1を生成する。
【0065】
次に、フィルタ回路F1,F2のうちの少なくともいずれか一方で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動した場合について説明する。上述したように、直流電圧VD1,VD2の変動の位相は互いに180度ずれている。
【0066】
直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降して、直流電圧VD2の補正値VD2A=VD2/VD1が減少するとともに直流電圧VD1の補正値VD1A=VD1/VD2が増大すると、電力制御値Pc1=K1×VD2Aが減少するとともに電力制御値Pc2=K2×VD1Aが増大する。
【0067】
これにより、電力制御値Pc=Pc2-Pc1が増大して電力指令値Pが増大し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大し、直流電圧VD1が下降するとともに直流電圧VD2が上昇する。
【0068】
逆に、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇して、直流電圧VD2の補正値VD2A=VD2/VD1が増大するとともに直流電圧VD1の補正値VD1A=VD1/VD2が減少すると、電力制御値Pc1=K1×VD2Aが増大するとともに電力制御値Pc2=K2×VD1Aが減少する。
【0069】
これにより、電力制御値Pc=Pc2-Pc1が減少して電力指令値Pが減少し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少し、直流電圧VD1が上昇するとともに直流電圧VD2が下降する。
【0070】
したがって、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降すると直流電圧VD1,VD2をそれぞれ下降および上昇させ、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇すると直流電圧VD1,VD2をそれぞれ上昇および下降させるので、直流電圧VD1,VD2の変動は減衰する。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0071】
以上のように、この実施の形態3では、共振現象によって直流電圧VD1,VD2が変動した場合における直流電圧VD2,VD1の変動が抑制されるように、直流電圧VD1,VD2の検出値に基づいて直流電圧VD2,VD1の検出値を補正し、直流電圧VD2,VD1の補正値VD2A,VD1Aに基づいて電力制御値Pcを生成する。したがって、共振現象が発生して直流電圧VD1,VD2が変動した場合における直流電圧VD2,VD1の変動を減衰させることができる。
【0072】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4に従うDC/DC変換装置の要部を示す回路ブロック図であって、図4と対比される図である。図8を参照して、このDC/DC変換装置が実施の形態1のDC/DC変換装置と異なる点は、補正部13が補正部40で置換され、電圧検出器11の出力信号が制御部14の減算器15に直接与えられる点である。
【0073】
補正部40は、電圧指令値VD2に、電圧検出器11の出力信号によって示される直流電圧VD1を乗算して、電圧指令補正値VD2A=VD2×VD1を生成する。減算器15は、電圧指令補正値VD2Aから、電圧検出器11の出力信号によって示される直流電圧VD2を減算して偏差ΔVD2=VD2A-VD2を生成する。ゲイン乗算器16は、偏差ΔVD2にゲインK1を乗算して電力制御値Pc=K1×ΔVD2を求める。
【0074】
ここで、補正部40を設けた理由について説明する。実施の形態1で説明したように、フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動しているとき、直流電圧VD1が上昇している場合には直流電圧VD2が上昇し、直流電圧VD1が下降している場合には直流電圧VD2が下降するように、DC/AC変換器1,2を制御すればよい。
【0075】
そこで本実施の形態4では、補正部40を設け、直流電圧VD1が上昇した場合には電圧指令値VD2の補正値VD2Aを上昇させることによって直流電圧VD2を上昇させ、直流電圧VD1が下降した場合には電圧指令値VD2の補正値VD2Aを下降させることによって直流電圧VD2を下降させる。
【0076】
次に、このDC/DC変換装置の動作について説明する。まずフィルタ回路F1で共振現象が発生せず、直流電圧VD1が一定の定格値である場合について説明する。この場合は、直流電圧VD2が下降して電圧指令値VD2の補正値VD2Aよりも低下すると、正極性の偏差ΔVD2が増大する。正極性の偏差ΔVD2が増大すると、電力制御値Pcおよび電力指令値Pが増大し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大して直流電圧VD2が上昇する。
【0077】
逆に、直流電圧VD2が上昇して電圧指令値VD2の補正値VD2Aよりも上昇すると、負極性の偏差ΔVD2が増大する。負極性の偏差ΔVD2が増大すると、負極性の電力制御値Pcが増大して電力指令値Pが減少し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少して直流電圧VD2が減少する。したがって、直流電圧VD2は一定値に維持される。
【0078】
次に、フィルタ回路F1で共振現象が発生し、直流電圧VD1,VD2が共振周波数で変動した場合について説明する。上述したように、直流電圧VD1,VD2の変動の位相は互いに180度ずれている。
【0079】
直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降して直流電圧VD2が電圧指令値VD2の補正値VD2Aよりも低下すると、正極性の偏差ΔVD2が増大する。正極性の偏差ΔVD2が増大すると、電力制御値Pcおよび電力指令値Pが増大し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが増大し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが増大して直流電圧VD2が上昇する。
【0080】
逆に、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇して直流電圧VD2が電圧指令値VD2の補正値VD2Aよりも上昇すると、負極性の偏差ΔVD2が増大する。負極性の偏差ΔVD2が増大すると、負極性の電力制御値Pcが増大して電力指令値Pが減少し、位相差指令値Δθおよび位相差制御値θcが減少し、交流電圧VA1,VA2の位相差Δθが減少して直流電圧VD2が下降する。
【0081】
したがって、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ上昇および下降すると直流電圧VD2を上昇させ、直流電圧VD1,VD2がそれぞれ下降および上昇すると直流電圧VD2を下降させるので、直流電圧VD2の変動は減衰する。
【0082】
以上のように、この実施の形態4では、共振現象によって直流電圧VD1が変動した場合における直流電圧VD2の変動が抑制されるように、直流電圧VD1の検出値に基づいて電圧指令値VD2を補正し、電圧指令値VD2の補正値VD2Aに基づいて電力制御値Pcを生成する。したがって、共振現象が発生して直流電圧VD1が変動した場合における直流電圧VD2の変動を減衰させることができる。
【0083】
[実施の形態5]
図9は、実施の形態5に従うDC/DC変換装置の構成を示す回路ブロック図である。図9において、このDC/DC変換装置は、リアクトルL21、コンデンサC21,C22、チョッパ回路41、配線43、操作部44、および制御装置45を備える。このDC/DC変換装置は、直流電源PS11,PS12間で直流電力を授受するものである。
【0084】
直流電源PS11,PS12のうちのいずれか一方から他方に直流電力が供給され、他方は一方からの直流電力を蓄える。たとえば、直流電源PS11,PS12のうちのいずれか一方は太陽電池のような直流電力発生装置であり、他方はバッテリ、コンデンサ等の電力貯蔵装置である。あるいは、直流電源PS11,PS12は、ともに電力貯蔵装置である。
【0085】
直流電源PS11の正極はリアクトルL21を介してチョッパ回路41の高圧側直流端子41aに接続され、その負極はチョッパ回路41の負側直流端子41bに接続される。リアクトルL21は、チョッパ回路41で短絡事故が発生した場合に流れる故障電流を抑制する。コンデンサC21は、チョッパ回路41の直流端子41a,41b間に接続され、直流端子41a,41b間の直流電圧VD11を平滑化させる。直流電圧VD11は、制御装置45によって検出される。
【0086】
また、リアクトルL21およびコンデンサC21は、フィルタ回路F21を構成する。フィルタ回路F21は、低域通過フィルタであって、直流電流を通過させ、チョッパ回路41で発生する高周波信号が直流電源PS11に流れることを防止する。
【0087】
直流電源PS12の正極は配線43を介してチョッパ回路41の低圧側直流端子41cに接続され、その負極はチョッパ回路41の負側直流端子41dに接続される。コンデンサC22は、チョッパ回路41の直流端子41c,41d間に接続され、直流端子41c,41d間の直流電圧VD12を平滑化させる。直流電圧VD12は、制御装置45によって検出される。
【0088】
また、配線43は、所定のインダクタンスを有する。配線43およびコンデンサC22は、フィルタ回路F22を構成する。フィルタ回路F22は、低域通過フィルタであって、直流電流を通過させ、チョッパ回路41で発生する高周波信号が直流電源PS12に流れることを防止する。
【0089】
チョッパ回路41は、IGBTQ11,Q12、ダイオードD11,D12、およびリアクトルL22を含む。IGBTQ11のコレクタは高圧側直流端子41aに接続され、そのエミッタはノードN1に接続される。IGBTQ12のコレクタはノードN1に接続され、そのエミッタは負側直流端子41b,41dに接続される。
【0090】
IGBTQ11,Q12のゲートは、それぞれ制御装置45からのゲート信号G11,G12を受ける。ダイオードD11,D12は、それぞれIGBTQ11,Q12に逆並列に接続される。リアクトルL22は、ノードN1と低圧側直流端子41cとの間に接続され、電磁エネルギーを蓄える。
【0091】
降圧動作時には、ゲート信号G11が一定周期で「H」レベルおよび「L」レベルにされてIGBTQ11が一定周期でオンおよびオフされ、ゲート信号G12は「L」レベルに維持されてIGBTQ12はオフ状態に維持される。
【0092】
IGBTQ11がオンされると、直流電源PS11の正極からリアクトルL21、IGBTQ11、リアクトルL22、配線43、および直流電源PS12を介して直流電源PS11の負極に電流が流れ、直流電源PS11から直流電源PS12に直流電力が供給されるとともに、リアクトルL22に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0093】
IGBTQ11がオフされると、リアクトルL22の一方端子から配線43、直流電源PS12、およびダイオードD12を介してリアクトルL22の他方端子に電流が流れ、直流電源PS12が充電されるとともに、リアクトルL22の電磁エネルギーが放出される。
【0094】
コンデンサC22の端子間電圧VD12は、リアクトルL22の端子間電圧分だけ直流電源PS11の直流出力電圧VD11よりも低くなる。ゲート信号G11の一周期T1内におけるゲート信号G11が「H」レベルにされる時間T2の割合T2/T1は、デューティ比Ddと呼ばれる。ゲート信号G11のデューティ比Ddを増大させると直流電圧VD12が上昇し、ゲート信号G11のデューティ比Ddを減少させると直流電圧VD12が低下する。したがって、ゲート信号G11のデューティ比Ddを調整することにより、直流電圧VD12を所望の目標電圧VD12rに調整することが可能となっている。
【0095】
昇圧動作時には、ゲート信号G12が一定周期で「H」レベルおよび「L」レベルにされてIGBTQ12が一定周期でオンおよびオフされ、ゲート信号G11は「L」レベルに維持されてIGBTQ11はオフ状態に維持される。
【0096】
IGBTQ12がオンされると、直流電源PS12の正極から配線43、リアクトルL22、およびIGBTQ12を介して直流電源PS12の負極に電流が流れ、リアクトルL22に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0097】
IGBTQ12がオフされると、直流電源PS12の正極から配線43、リアクトルL22、ダイオードD11、リアクトルL21、および直流電源PS11を介して直流電源PS12の負極に電流が流れ、直流電源PS11が充電されるとともに、リアクトルL22の電磁エネルギーが放出される。
【0098】
コンデンサC21の端子間電圧VD11は、リアクトルL22の端子間電圧分だけ直流電源PS12の直流出力電圧VD12よりも高くなる。ゲート信号G12の一周期T3内におけるゲート信号G12が「H」レベルにされる時間T4の割合T4/T3は、デューティ比Duと呼ばれる。ゲート信号G12のデューティ比Duを増大させると直流電圧VD11が上昇し、ゲート信号G12のデューティ比Duを減少させると直流電圧VD11が低下する。したがって、ゲート信号G12のデューティ比Duを調整することにより、直流電圧VD11を所望の目標電圧VD11rに調整することが可能となっている。
【0099】
電流検出器42は、リアクトルL22に流れる電流I12を検出し、その検出値を示す信号を制御装置45に与える。
【0100】
操作部44は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示部などを含み、DC/DC変換装置のユーザーによって操作される。ユーザーは、操作部44を操作して、直流電力を供給する側の直流電源(たとえばPS11)、直流電力を蓄える側の直流電源(たとえばPS12)、直流電圧指令値などを設定する。操作部44は、ユーザーによって設定された情報を示す信号を制御装置45に出力する。
【0101】
制御装置45は、操作部44からの信号、直流電圧VD11,VD12、電流検出器42の出力信号などに基づいて、ゲート信号G11,G12を生成することにより、チョッパ回路41を制御する。
【0102】
次に、このようなDC/DC変換装置の問題点について説明する。上述の通り、このDC/DC変換装置では、直流電源PS11から直流電源PS12に直流電力を供給する降圧動作と、直流電源PS12から直流電源PS11に直流電力を供給する昇圧動作との両方が可能となっているが、本実施の形態5では、図面および説明の簡単化のため降圧動作について説明する。
【0103】
直流電源PS11とチョッパ回路41の間のフィルタ回路F21は、リアクトルL21およびコンデンサC21を含むのでLC共振回路を構成する。このため、フィルタ回路F21で共振現象が発生し、直流電圧VD11が共振周波数で変動する場合がある。
【0104】
直流電圧VD11が変動すると、直流電流I12が変動し、直流電圧VD12も共振周波数で変動してしまう。従来のDC/DC変換装置では、共振現象によって直流電圧VD11が変動した場合における直流電圧VD12の変動を減衰させることができなかった。本実施の形態5では、この問題の解決が図られる。
【0105】
図10は、制御装置45の要部を示すブロック図である。図10において、制御装置45は、電圧検出器51,52、補正部53、制御部54、加算器57、およびゲート信号生成部60を含む。
【0106】
電圧検出器51は、直流電圧VD12を検出し、その検出値を示す信号を出力する。電圧検出器52は、直流電圧VD11を検出し、その検出値を示す信号を出力する。補正部53は、電圧検出器51の出力信号によって示される直流電圧VD12を、電圧検出器52の出力信号によって示される直流電圧VD11で除算して、直流電圧VD12の補正値VD12A=VD12/VD11を生成する。
【0107】
ここで、補正部53を設けた理由について説明する。フィルタ回路F21で共振現象が発生し、直流電圧VD11,VD12が共振周波数で変動しているとき、直流電圧VD11に発生する共振周波数の交流電圧をVR11とし、リアクトルL22に流れる共振周波数の交流電流をIR12とし、直流電圧VD12に発生する共振周波数の交流電圧をVR12とする。
【0108】
図11は、補正部53を設けた理由を説明するための波形図である。図11において、(A)は交流電圧VR11の一周期分の波形を示し、(B)は交流電流IR12の一周期分の波形を示し、(C)は交流電圧VR12の一周期分の波形を示している。
【0109】
リアクトルL22に流れる交流電流IR1の位相は、交流電圧VR1の位相よりも90度遅れる。また、LC共振では電圧の位相は電流の位相よりも90度遅れるので、交流電圧VR12の位相は交流電流IR12の位相よりも90度遅れる。したがって、交流電圧VR12の位相は交流電圧VR11の位相よりも180度遅れる。
【0110】
交流電圧VR12を減衰させるためには、交流電圧VR11,VR12がそれぞれ上昇および下降している場合には交流電圧VR12を上昇させ、交流電圧VR11,VR12がそれぞれ下降および上昇している場合には交流電圧VR12を下降させるように、チョッパ回路41を制御すればよい。
【0111】
そこで本実施の形態5では、補正部53を設け、直流電圧VD11が上昇した場合には直流電圧VD12の補正値VD12Aを下降させることによって直流電圧VD12を上昇させ、直流電圧VD11が下降した場合には直流電圧VD12の補正値VD12Aを上昇させることによって直流電圧VD12を下降させる。
【0112】
制御部54は、乗算器55およびゲイン乗算器56を含む。乗算器55は、電流検出器42の出力信号によって示される電流I12の検出値に直流電圧VD12の補正値VD12Aを乗算して電力制御値Pcを生成する。
【0113】
ゲイン乗算器56は、電力制御値PcにゲインK3を乗算してデューティ比制御値Dcを生成する。減算器57は、基準デューティ比制御値D0からデューティ比制御値Dcを減算してデューティ比指令値Dを生成する。なお、減算器57がゲート信号生成部60に含まれていても構わない。
【0114】
ゲート信号生成部60は、キャリア信号生成部61および比較器62を含む。キャリア信号生成部61は、三角波状のキャリア信号φ11,φ12を生成する。比較器62は、デューティ比指令値Dとキャリア信号φ11,φ12との高低を比較し、比較結果を示すゲート信号G11,G12を出力する。
【0115】
降圧動作時には、ゲート信号G11はデューティ比指令値Dに応じた値のデューティ比を有し、ゲート信号G12は「L」レベルに維持される。チョッパ回路41は、ゲート信号G11によって駆動され、直流電圧VD11を直流電圧VD12に変換する。
【0116】
昇圧動作時には、ゲート信号G12はデューティ比指令値Dに応じた値のデューティ比を有し、ゲート信号G11は「L」レベルに維持される。チョッパ回路41は、ゲート信号G12によって駆動され、直流電圧VD12を直流電圧VD11に変換する。
【0117】
次に、このDC/DC変換装置の動作について説明する。まずフィルタ回路F21で共振現象が発生せず、直流電圧VD1が一定の定格値である場合について説明する。直流電圧VD12が低下して補正値VD12Aが低下すると、電力制御値Pcおよびデューティ比制御値Dcが減少し、デューティ比指令値D*が増大して直流電圧VD12が上昇する。
【0118】
逆に、直流電圧VD12が上昇して補正値VD12Aが上昇すると、電力制御値Pcおよびデューティ比制御値Dcが増大し、デューティ比指令値Dが減少して直流電圧VD12が低下する。したがって、直流電圧VD12は一定値に維持される。
【0119】
次に、フィルタ回路F21で共振現象が発生し、直流電圧VD11,VD12が共振周波数で変動した場合について説明する。上述したように、直流電圧VD11,VD12の変動の位相は互いに180度ずれている。
【0120】
直流電圧VD11,VD12がそれぞれ上昇および下降して直流電圧VD12の補正値VD12A=VD12/VD11が低下すると、電力制御値Pcおよびデューティ比制御値Dcが減少し、デューティ比指令値Dが増大して直流電圧VD12が上昇する。
【0121】
逆に、直流電圧VD11,VD12がそれぞれ下降および上昇して直流電圧VD12の補正値VD12=VD12/VD11が上昇すると、電力制御値Pcおよびデューティ比制御値Dcが増大し、デューティ比指令値Dが減少して直流電圧VD12が低下する。
【0122】
したがって、直流電圧VD11,VD12がそれぞれ上昇および下降すると直流電圧VD12を上昇させ、直流電圧VD11,VD12がそれぞれ下降および上昇すると直流電圧VD12を下降させるので、直流電圧VD12の変動は減衰する。
【0123】
以上のように、この実施の形態5では、共振現象によって直流電圧VD11が変動した場合における直流電圧VD12の変動が抑制されるように、直流電圧VD11の検出値に基づいて直流電圧VD12の検出値を補正し、直流電圧VD12の補正値VD12Aに基づいてデューティ比制御値Dcを生成する。したがって、共振現象が発生して直流電圧VD11が変動した場合における直流電圧VD12の変動を減衰させることができる。
【0124】
なお、上記実施の形態1~5を適宜組み合わせてよいことはいうまでもない。たとえば、実施の形態1,4を組み合わせ、補正部13,14の両方を設けても構わない。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1,2 DC/AC変換器、3 変圧器、L1,L2,L21,L22 リアクトル、C1,C2,C11~C18,C21,C22 コンデンサ、4,44 操作部、5,45 制御装置、PS1,PS2,PS11,PS12 直流電源、F1,F2,F21,F22 フィルタ回路、Q1~Q8,Q11,Q12 IGBT、D1~D8,D11,D12 ダイオード、11,12,51,52 電圧検出器、13,35,40,53 補正部、14,30,36,54 制御部、15,39,57 減算器、16,31,37,38,56 ゲイン乗算器、17,22 加算器、20,60 ゲート信号生成部、21 位相差演算部、23,61 キャリア信号生成部、24,25,62 比較器、26 リアクトル回路、55 乗算器、41 チョッパ回路、42 電流検出器、43 配線。
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