(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241008BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021108599
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 高明
(72)【発明者】
【氏名】大岸 智彦
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134897(JP,A)
【文献】特開2002-183889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0168093(US,A1)
【文献】特開2007-316772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両に搭載される通信モジュールを介して通信相手車両と車車間通信を行う通信装置において、
自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を通信相手車両へ送信し、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両から受信すると、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作要求部と、
通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、
当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両へ送信する希望動作応答部と、
を備え、
前記希望動作要求部は、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付部を更に備え、
前記希望動作受付部は、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定し、
前記希望動作受付部は、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、
通信装置。
【請求項2】
自車両の運転者から受付けた希望動作を示す希望動作情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する希望動作情報送信部と、
前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作応答情報を自車両の運転者へ報知する希望動作応答報知部と、
前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知する受信希望動作報知部と、
前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果を示す希望動作応答情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する希望動作応答情報送信部と、
を備える請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記受信希望動作報知部が前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知した後に入力された音声に対して音声認識処理を実行し、当該音声認識処理の結果に基づいて自車両の走行状態を検知する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記検知部は、希望動作が実行されなかったことを検知し、
前記希望動作応答情報送信部は、前記検知部が希望動作が実行されなかったことを検知した場合に、希望動作が実行されなかったことを示す希望動作応答情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する、
請求項2又は3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記検知部は、希望動作における対象エリアに進入してから、一定期間内に希望動作の実行を検知しない場合、又は希望動作における対象エリアに進入してから希望動作の実行を検知しないまま対象エリア外へ移動した場合、希望動作が実行されなかったことを検知する、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
第1車両と第2車両とが車車間通信を行う通信方法であって、
前記第1車両が、自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を前記第2車両へ送信する希望動作情報送信ステップと、
前記第2車両が、前記第1車両から受信した希望動作応答情報を自車両の運転者へ報知する受信希望動作報知ステップと、
前記第2車両が、前記第1車両から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、
当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を前記第1車両へ送信する希望動作応答ステップと、
前記第1車両が、前記第2車両へ送信した希望動作情報に示される希望動作が前記第2車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を前記第2車両から受信すると、当該希望動作が前記第2車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作応答報知ステップと、
を含み、
前記希望動作情報送信ステップは、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付ステップを更に含み、
前記希望動作受付ステップは、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定し、
前記希望動作受付ステップは、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、
通信方法。
【請求項7】
車両に搭載され、前記車両に搭載される通信モジュールを介して通信相手車両と車車間通信を行う通信装置のコンピュータに、
自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を通信相手車両へ送信し、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を受信すると、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作要求ステップと、
通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、
当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両へ送信する希望動作応答ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記希望動作要求ステップは、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付ステップを更に備え、
前記希望動作受付ステップは、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定する、
前記希望動作受付ステップは、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)において、例えば事故や渋滞等の交通情報や信号情報等の動的な情報を車両が活用することにより、自動運転車の動作支援や自動車の運転の快適性及び利便性などの向上を図ることが検討されている。
【0003】
また、V2V(vehicle to vehicle:車車間)通信(車車間通信)と呼ばれる通信方式として、5.8GHz帯を利用したDSRC(dedicated short range communications:狭域通信)システムや、760MHz帯を利用した「ITS Connect」システムや、「3GPP Release 14」で規定されているセルラーV2X(C-V2X:Cellular Vehicle to Everything)PC5通信システムなどが知られている(例えば、非特許文献1参照)。それらV2V通信においては、各車両から位置情報や運転情報を周囲に定期的に拡散することにより、車両同士で位置情報や運転情報を交換している。V2V通信によって各車両は互いの位置情報や運転情報を把握し、把握された情報は例えば交差点などでの危険察知システムなどに活用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「ITS Connectシステム 車車間通信メッセージ仕様」、ITS Connect TD-001、1.1版、ITS Connect推進協議会、令和元年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、例えば交差点での車両同士の譲り合いは、運転者(ドライバー)がアイコンタクトやパッシングを行うことによって行われている。しかし、一方の車両の運転者が期待した相手車両の動作が確実に行われる保証がない。このため、運転者が不安を感じながら運転したり、両方の運転者が相手の様子をうかがってお見合い状態になったりし、運転者に対して安全運転のための負担が生じていた。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、V2V通信(車車間通信)を利用して例えば交差点での車両同士の譲り合い等における車両間コミュニケーションの円滑化を図り、安全運転のための運転者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、車両に搭載され、前記車両に搭載される通信モジュールを介して通信相手車両と車車間通信を行う通信装置において、自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を通信相手車両へ送信し、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両から受信すると、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作要求部と、通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両へ送信する希望動作応答部と、を備え前記希望動作要求部は、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付部を更に備え、前記希望動作受付部は、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定し、前記希望動作受付部は、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、通信装置である。
(2)本発明の一態様は、自車両の運転者から受付けた希望動作を示す希望動作情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する希望動作情報送信部と、前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作応答情報を自車両の運転者へ報知する希望動作応答報知部と、前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知する受信希望動作報知部と、前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知する検知部と、前記検知部の検知結果を示す希望動作応答情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する希望動作応答情報送信部と、を備える上記(1)の通信装置である。
(3)本発明の一態様は、前記検知部は、前記受信希望動作報知部が前記通信モジュールにより通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知した後に入力された音声に対して音声認識処理を実行し、当該音声認識処理の結果に基づいて自車両の走行状態を検知する、上記(2)の通信装置である。
(4)本発明の一態様は、前記検知部は、希望動作が実行されなかったことを検知し、前記希望動作応答情報送信部は、前記検知部が希望動作が実行されなかったことを検知した場合に、希望動作が実行されなかったことを示す希望動作応答情報を前記通信モジュールにより通信相手車両へ送信する、上記(1)から(3)のいずれかの通信装置である。
(5)本発明の一態様は、前記検知部は、希望動作における対象エリアに進入してから、一定期間内に希望動作の実行を検知しない場合、又は希望動作における対象エリアに進入してから希望動作の実行を検知しないまま対象エリア外へ移動した場合、希望動作が実行されなかったことを検知する、上記(4)の通信装置である。
【0008】
(6)本発明の一態様は、第1車両と第2車両とが車車間通信を行う通信方法であって、前記第1車両が、自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を前記第2車両へ送信する希望動作情報送信ステップと、前記第2車両が、前記第1車両から受信した希望動作応答情報を自車両の運転者へ報知する受信希望動作報知ステップと、前記第2車両が、前記第1車両から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を前記第1車両へ送信する希望動作応答ステップと、前記第1車両が、前記第2車両へ送信した希望動作情報に示される希望動作が前記第2車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を前記第2車両から受信すると、当該希望動作が前記第2車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作応答報知ステップと、を含み、前記希望動作情報送信ステップは、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付ステップを更に含み、前記希望動作受付ステップは、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定し、前記希望動作受付ステップは、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、通信方法である。
【0009】
(7)本発明の一態様は、車両に搭載され、前記車両に搭載される通信モジュールを介して通信相手車両と車車間通信を行う通信装置のコンピュータに、自車両の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を通信相手車両へ送信し、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を受信すると、当該希望動作が当該通信相手車両で実行されたことを自車両の運転者へ報知する希望動作要求ステップと、通信相手車両から受信した希望動作情報を自車両の運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が自車両で実行されたことを検知すると、当該希望動作が自車両で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両へ送信する希望動作応答ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記希望動作要求ステップは、自車両の運転者から希望動作を受付ける希望動作受付ステップを更に備え、前記希望動作受付ステップは、自車両の走行位置に応じて、自車両の運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定し、前記希望動作受付ステップは、決定された選択候補を自車両の運転者へ提示する、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、V2V通信(車車間通信)を利用して例えば交差点での車両同士の譲り合い等における車両間コミュニケーションの円滑化を図り、安全運転のための運転者の負担を軽減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る通信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る通信方法の概略の手順を示すシーケンス図である。
【
図4】一実施形態に係る通信方法の詳細の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態では、車両として自動車を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る通信装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、通信装置1は車両100に搭載される。車両100は、例えば自動車である。車両100は、カーナビゲーションシステムや運転支援システム等を備えた自動車であってもよい。
【0014】
通信装置1は、車両100に搭載される通信モジュール2を介して通信相手車両200とV2V通信(車車間通信)を行う。通信相手車両200は、V2V通信における通信相手の車両である。通信モジュール2は、車車間通信機能を有する。通信モジュール2は、通信相手車両200との間でデータを送受する。
【0015】
なお、本実施形態では、車車間通信機能を有する通信モジュール2を通信装置1とは別個に設けたが、これに限定されない。通信装置1が車車間通信機能を有し、通信装置1が直接に通信相手車両200とV2V通信を行ってもよい。
【0016】
通信装置1は、希望動作要求部10と希望動作応答部20とを備える。希望動作要求部10は、希望動作受付部11と、希望動作情報送信部12と、希望動作応答報知部13とを備える。希望動作応答部20は、受信希望動作報知部21と、検知部22と、希望動作応答情報送信部23とを備える。
【0017】
通信装置1の各機能は、通信装置1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0018】
なお、通信装置1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えばカーナビゲーションシステムや運転支援システム等が通信装置1の機能を備えてもよい。また、通信装置1は、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯端末装置を使用して構成されてもよい。
【0019】
(希望動作要求部)
希望動作要求部10は、希望動作要求処理を実行する。希望動作要求処理は、自車両100が通信相手車両200に対して希望動作を要求するときの処理である。希望動作要求処理における希望動作は、自車両100が通信相手車両200に実行して欲しい動作である。
【0020】
希望動作要求処理は、自車両100の運転者から指示された希望動作を示す希望動作情報を通信相手車両200へ送信し、当該希望動作が当該通信相手車両200で実行されたことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両200から受信すると、当該希望動作が当該通信相手車両200で実行されたことを自車両100の運転者へ報知する。
【0021】
希望動作受付部11は、自車両100の運転者から希望動作を受付ける。希望動作情報送信部12は、自車両100の運転者から受付けた希望動作を示す希望動作情報を通信モジュール2により通信相手車両200へ送信する。希望動作応答報知部13は、通信モジュール2により通信相手車両200から受信した希望動作応答情報を自車両100の運転者へ報知する。希望動作応答報知部13は、車両100に搭載されたカーナビゲーションシステムや運転支援システムを介して希望動作応答情報を報知してもよい。
【0022】
(希望動作応答部)
希望動作応答部20は、希望動作応答処理を実行する。希望動作応答処理は、通信相手車両200から自車両100に対して希望動作が要求されたときの処理である。希望動作応答処理における希望動作は、通信相手車両200が自車両100に実行して欲しい動作である。
【0023】
希望動作応答処理は、通信相手車両200から受信した希望動作情報を自車両100の運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が自車両100で実行されたことを検知すると、当該検知結果を示す希望動作応答情報を当該通信相手車両200へ送信する。
【0024】
受信希望動作報知部21は、通信モジュール2により通信相手車両200から受信した希望動作情報を自車両100の運転者へ報知する。受信希望動作報知部21は、車両100に搭載されたカーナビゲーションシステムや運転支援システムを介して希望動作情報を報知してもよい。検知部22は、通信モジュール2により通信相手車両200から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両100で実行されたことを検知する。希望動作応答情報送信部23は、検知部22の検知結果を示す希望動作応答情報を通信モジュール2により通信相手車両200へ送信する。
【0025】
次に
図2を参照して本実施形態に係る一実施例を説明する。
図2に示される実施例では、通信装置1は、スマートフォンを使用して構成される。通信装置1(スマートフォン)は、モバイル通信機能やGPS(Global Positioning System)機能や通知表示機能や音声入力機能や6軸センサー等を備える。通知表示機能は、スマートフォンのタッチパネルの表示画面上への表示や音声再生等による報知を行う。音声入力機能は、スマートフォンのマイクからの音声による入力の受付けを行う。
【0026】
6軸センサーは、通信装置1(スマートフォン)の各方向の加速度を検知する。通信装置1(スマートフォン)は車両100の特定方向(例えば前方の向き)に固定される。これにより、通信装置1(スマートフォン)の6軸センサーの検知結果から、車両100のどの方向にどのくらいの加速度が加わったのかが分かるので、車両100の動作を検知することができる。例えば、通信装置1(スマートフォン)の6軸センサーの検知結果から、車両100が停止したことや右折したこと等を検知することができる。
【0027】
図2において通信モジュール2は、V2X(vehicle to X)通信を実現するためのソフトウェア(V2X通信ソフト)を備え、V2X通信ソフトによってV2X通信を実現する。本実施形態では、V2X通信ソフトによってV2V通信が実現される。V2X通信ソフトによるV2V通信は、「ITS Connect」システムや「Wi-Fi(登録商標)」等の無線LANシステムによって実現される。通信モジュール2は、車両100に備わるアンテナを利用してV2V通信の電波を送受する。
【0028】
次に
図3、
図4を参照して本実施形態に係る通信方法を説明する。以下、
図3及び
図4の説明では、車両A及び車両Bは、通信装置1と通信モジュール2を備え、V2V通信を行い、車両A(第1車両)が車両B(第2車両)に希望動作を要求する。したがって、車両Aの通信装置1が希望動作要求処理を実行し、車両Bが希望動作応答処理を実行する。
【0029】
図3は、本実施形態に係る通信方法の概略の手順を示すシーケンス図である。
図3において、車両A及び車両Bは、信号機がない交差点に向かって対向して走行している。この時、車両A及び車両Bは、V2V通信を行い、車両Aが車両Bに希望動作を要求する。
【0030】
まず、車両Aの通信装置1が、車両Aの運転者から受付けた希望動作を示す希望動作情報を車両Bへ送信する(ステップS100)。次いで、車両Bの通信装置1が、車両Aから受信した希望動作情報を車両Bの運転者へ報知し、当該希望動作情報に示される希望動作が車両Bで実行されたことを検知すると、当該検知結果を示す希望動作応答情報を車両Aへ送信する(ステップS200)。次いで、車両Aの通信装置1が、ステップS100で車両Bへ送信した希望動作情報に示される希望動作が車両Bで実行されたことを示す希望動作応答情報を車両Bから受信すると、当該希望動作が車両Bで実行されたことを車両Aの運転者へ報知する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る通信方法の詳細の手順を示すシーケンス図である。
図4の例では、
図3の例と同様に、車両A及び車両Bは、信号機がない交差点に向かって対向して走行している。この時、車両A及び車両Bは、V2V通信を行い、車両Aが車両Bに対して、交差点の前で停止すること(希望動作)を要求する。以下、
図4の説明では、車両Aの通信装置1を通信装置Aと称し、車両Bの通信装置1を通信装置Bと称する。また、車両Aの運転者をドライバーAと称し、車両Bの運転者をドライバーBと称する。
【0032】
(ステップS101)ドライバーAは、車両Bが交差点の前で停止すること(希望動作)を通信装置Aへ指示する。
【0033】
(ステップS102)通信装置Aは、ドライバーAから受付けた希望動作「交差点の前で停止する」を示す希望動作情報を車両Bへ送信する。通信装置Bは、当該希望動作情報を受信する。
【0034】
(ステップS103)通信装置Bは、車両Aから受信した希望動作情報の希望動作「交差点の前で停止する」を画面表示によりドライバーBへ報知する。ドライバーBは、当該画面表示により、自車両Bが交差点の前で停止することを車両Aが要求していることを認識する。ドライバーBは、当該認識に基づいて、次の運転動作を判断する。ここでは、ドライバーBは、自車両Bが交差点の前で停止するように運転を行う。
【0035】
(ステップS201)通信装置Bは、車両Aから受信した希望動作情報に示される希望動作「交差点の前で停止する」が車両Bで実行されたことを検知すると、当該検知結果を示す希望動作応答情報を車両Aへ送信する。
【0036】
(ステップS202)通信装置Aは、ステップS102で車両Bへ送信した希望動作情報に示される希望動作「交差点の前で停止する」が車両Bで実行されたことを示す希望動作応答情報を車両Bから受信すると、当該希望動作「交差点の前で停止する」が車両Bで実行されたことを画面表示によりドライバーAへ報知する。ドライバーAは、当該画面表示により、車両Bが交差点の前で停止したことを認識する。ドライバーAは、当該認識に基づいて、安心して次の運転動作を判断する。例えば、ドライバーAは、対向車両である車両Bが交差点の前で停止していることから、安心して、自車両Aが交差点を右折するように運転を行う。
【0037】
このように本実施形態によれば、V2V通信を利用して例えば交差点での車両同士の譲り合い等における車両間コミュニケーション(希望動作の共有と当該希望動作の実行の確認)の円滑化が図られる。これにより、運転者は、安心して次の運転動作を判断することができるので、安全運転のための運転者の負担を軽減する効果が得られる。
【0038】
(希望動作の例)
希望動作は、複数の希望動作が予め定義されて通信装置1に設定される。希望動作の例として交差点における例1、例2を以下に示す。
(例1)交差点の前で停止する。
(例2)交差点で右折する。
【0039】
通信装置1の希望動作受付部11は、複数の希望動作を選択候補として画面表示等により運転者へ提示する。運転者は、提示された複数の希望動作の中から、所望の希望動作を指示する。なお、運転中はスマートフォン等の手操作が禁止されるので、希望動作受付部11は、音声入力機能により、運転者から所望の希望動作の指示を受付ける。
【0040】
なお、通信装置1の希望動作受付部11は、自車両100の走行状態や走行位置に応じて、運転者へ提示する希望動作の選択候補を決定してもよい。例えば、交差点に向かって走行している時は、交差点における複数の希望動作を、運転者へ提示する希望動作の選択候補に決定する。
【0041】
(検知方法)
希望動作応答処理において、検知部22は、自車両100の現在位置を示す位置情報と自車両100の動作の検知結果とから、希望動作が自車両100で実行されたことを検知する。車両100の現在位置を示す位置情報は、例えば通信装置1(スマートフォン)のGPS機能によって取得される。車両100の動作は、例えば通信装置1(スマートフォン)の6軸センサーの検知結果から検知される。
【0042】
例えば、車両100の位置情報が交差点エリアに進入したことを示し、且つ当該車両100の動作が一定時間内に進行方向軸の加速度がマイナスになりその後0になって停止である場合、検知部22は、希望動作「交差点の前で停止する」が当該車両100で実行されたことを検知する。
【0043】
例えば、車両100の位置情報が交差点エリアに進入したことを示し、且つ当該車両100の動作が一定時間内に垂直方向の角速度が閾値以上のマイナスの値から閾値以上のプラスの値に変化した場合、検知部22は、希望動作「交差点で右折する」が当該車両100で実行されたことを検知する。
【0044】
なお、検知部22は、希望動作が自車両100で実行されなかったことを検知してもよい。この検知方法の例1、例2、例3を以下に示す。
【0045】
(例1)通信相手車両200から希望動作情報を受信してから一定期間内に自車両100による希望動作の実行を検知しない場合に、検知部22は、希望動作が自車両100で実行されなかったことを検知する。
【0046】
(例2)希望動作における対象エリア(例えば交差点エリア)に進入してから一定期間内に自車両100による希望動作の実行を検知しない場合に、検知部22は、希望動作が自車両100で実行されなかったことを検知する。
【0047】
(例3)希望動作における対象エリア(例えば交差点エリア)に進入してから自車両100による希望動作の実行を検知しないまま自車両100が当該対象エリア外へ移動した場合に、検知部22は、希望動作が自車両100で実行されなかったことを検知する。
【0048】
希望動作応答情報送信部23は、通信相手車両200から受信した希望動作情報に示される希望動作が自車両100で実行されなかったことを示す希望動作応答情報を通信モジュール2により当該通信相手車両200へ送信してもよい。
【0049】
また、希望動作応答報知部13は、自車両100から通信相手車両200へ送信した希望動作情報に示される希望動作が当該通信相手車両200で実行されなかったことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両200から受信した場合、当該希望動作応答情報を自車両100の運転者へ報知してもよい。
【0050】
また、希望動作要求部10は、自車両100から通信相手車両200へ送信した希望動作情報に示される希望動作が当該通信相手車両200で実行されなかったことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両200から受信した場合、希望動作情報送信部12が同じ希望動作を示す希望動作情報を他の通信相手車両200(例えば、前回の通信相手車両200に後続する通信相手車両200)へ送信し、希望動作要求処理を継続してもよい。又は、希望動作要求部10は、自車両100から通信相手車両200へ送信した希望動作情報に示される希望動作が当該通信相手車両200で実行されなかったことを示す希望動作応答情報を当該通信相手車両200から受信した場合、希望動作要求処理を終了し、その旨を自車両100の運転者へ報知してもよい。
【0051】
なお、車両100の運転者が、通信相手車両200から受信した希望動作情報に示される希望動作に対する実行の意思を音声により通信装置1に入力してもよい。通信装置1は、当該入力された音声に対して音声認識処理を実行し、当該音声認識処理の結果に基づいて自車両の走行状態を検知する。例えば、
図3において、車両Bの検知部22は、受信希望動作報知部21が通信モジュール2により車両Aから受信した希望動作情報「交差点の前で停止すること」を車両Bの運転者へ報知した後に入力された音声「停止します」に対して音声認識処理を実行し、当該音声認識処理の結果に基づいて自車両の走行状態「交差点の前で停止」を検知する。
【0052】
(他の実施例)
図5は、本実施形態に係る他の実施例を示す構成図である。
図5の実施例では、V2V通信がモバイルネットワークを経由して行われる。車両100は、定期的に現在位置を中継サーバSVへ通知する。中継サーバSVは、基地局BSの通信エリア内に存在する各車両100の位置を管理する。中継サーバSVは、基地局BSの通信エリア内に存在する各車両100について、車両100に固有の車両識別子(車両ID)とモバイルネットワーク上の端末識別子(端末ID、例えば携帯電話番号)とを関連付けて保持する。中継サーバSVは、車両100間のルーティングを行う。これにより、
図5において、車両Aと車両Bとの間のルーティングが基地局BSを介して実行され、車両Aと車両BとはV2V通信を行うことができる。
【0053】
車両Aは、車両Bに対する希望動作を示す希望動作情報を中継サーバSV宛てに送信する(ステップS1001)。中継サーバSVは、車両Bの車両IDに関連付けられた端末IDを取得し、当該端末IDに付与されたIPアドレスを取得する。次いで、中継サーバSVは、当該IPアドレス宛に、車両Aから受信した希望動作情報を送信する(ステップS1002)。
【0054】
車両Bは、車両Aに対する希望動作応答情報を中継サーバSV宛てに送信する(ステップS2001)。中継サーバSVは、車両Aの車両IDに関連付けられた端末IDを取得し、当該端末IDに付与されたIPアドレスを取得する。次いで、中継サーバSVは、当該IPアドレス宛に、車両Bから受信した希望動作応答情報を送信する(ステップS2002)。
【0055】
上述した実施形態によれば、V2V通信(車車間通信)を利用して例えば交差点での車両同士の譲り合い等における車両間コミュニケーションの円滑化を図り、安全運転のための運転者の負担を軽減することができるという効果が得られる。
【0056】
なお、車両は、自動運転システムを備えた自動運転車であってもよい。自動運転車において、自動運転システムは運転者(ドライバー)に対応する。また、自動運転システムが通信装置1の機能を備えてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、車両として自動車を例に挙げたが、自動二輪や原動機付自転車等の自動車以外の他の車両にも適用可能である。
【0058】
なお、これにより、例えばITS(高度道路交通システム)における総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0060】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0061】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…通信装置、2…通信モジュール、10…希望動作要求部、11…希望動作受付部、12…希望動作情報送信部、13…希望動作応答報知部、20…希望動作応答部、21…受信希望動作報知部、22…検知部、23…希望動作応答情報送信部、100…車両、SV…中継サーバ、BS…基地局