(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】合成石英ガラスの調製方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20241008BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C03B8/04 Z
C03B8/04 D
C03B8/04 F
C03B37/018 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202995
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーティン テューラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トロマー
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505809(JP,A)
【文献】特開平11-246232(JP,A)
【文献】特開2003-130311(JP,A)
【文献】特開2004-026518(JP,A)
【文献】特開2000-327341(JP,A)
【文献】特表2005-528318(JP,A)
【文献】特開平07-223834(JP,A)
【文献】特開平07-267671(JP,A)
【文献】特開昭59-232934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-5/44
8/00-8/04
19/12-20/00
37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程と、
(2)工程(1)からの前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO
2スート粒子に変換する工程と、
(3)工程(2)により生じた前記SiO
2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程と、
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記スート体を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程と
を有する合成石英ガラスの製造方法であって、
前記方法において用いる前記合成火炎は、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori)に対する比が、12より大きい
ものとし、
前記垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)は、以下のように求められるものであり:
2次元カメラ画像から、カメラの各水平画素列を水平方向に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm
2
)である水平方向の積算発光強度を決定するものであり、
前記水平方向の積算発光強度は、バーナー距離(各列)又は火炎の高さ(単位:cd/mmとしての結果)ごとに計算されるものであり、
前記水平方向の積算発光強度は、バーナーからの垂直距離の関数として得られるものであり、
前記バーナーからの垂直距離の関数が、所定のバーナー距離で最大となる曲線形状から、前記垂直方向の発光強度の半値全幅(単位:mm)を求めるものである、並びに、
前記水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)は、以下のように求められるものであり:
2次元カメラ画像から、該カメラの各垂直画素列を縦に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm
2
)である垂直方向の積算発光強度を求めるものであり、
前記垂直方向の積算発光強度は、バーナー中心軸から左と右の水平距離ごとに求められる(単位:cd/mmとしての結果)ものであり、
前記垂直方向の積算発光強度は、バーナー中心軸の左と右の水平距離の関数として得られるものであり、
前記バーナー中心軸の左と右の水平距離の関数が、前記バーナー中心軸の近傍で最大となる曲線形状から水平方向の発光強度の半値幅(単位:mm)を決定するものである
ことを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記方法において用いる前記火炎は、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori)に対する比が、14より大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法において用いる前記火炎は、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori)に対する比が、15より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)において能動的に供給されるバーナーガスが、合計1以下の空気数を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)において能動的に供給されるバーナーガスが、合計0.85以下の空気数を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(2)において能動的に供給されるバーナーガスが、合計0.76以下の空気数を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(2)は、同心円状の断面を有するバーナーによって行われ、該同心円状の断面の内部において、前記原料蒸気が酸素と共に供給混合体としてバーナー火炎に導入され、前記供給混合体が分離ガスによって酸素含有酸化ガスから分離されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機ケイ素出発化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、デカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物から選択されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアルキルシロキサン化合物は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
前記垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)を決定する工程と、
前記水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)を求める工程と、
前記方法において用いる前記合成火炎を、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)に対する比を、12より大きいものに調整する工程と
を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(a)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む少なくとも1つの原料を蒸発させて原料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器部と、
(b)前記蒸発器部(a)から前記原料蒸気が供給され、前記原料が熱分解又は加水分解によってSiO
2粒子に変換される少なくとも1つの反応部であって、火炎を有するバーナーを含む前記反応部と、
(c)前記反応部(c)により生じたSiO
2粒子を堆積させて合成石英ガラスを形成する少なくとも1つの堆積部であって、スート体からなる前記堆積部と
を具備する合成石英ガラスの製造装置であって、
前記バーナーは、ターゲットの無い状態のその火炎が、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori)に対する比が、12より大きいようになるように調整され、前記発光強度はカンデラ/mm
2で測定されたものであ
り、
前記垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)は、2次元カメラ画像から、カメラの各水平画素列を水平方向に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm
2
)である水平方向の積算発光強度を決定するものであり、
前記水平方向の積算発光強度は、バーナー距離(各列)又は火炎の高さ(単位:cd/mmとしての結果)ごとに計算されるものであり、
前記水平方向の積算発光強度は、バーナーからの垂直距離の関数として得られるものであり、
前記バーナーからの垂直距離の関数が、所定のバーナー距離で最大となる曲線形状から、前記垂直方向の発光強度の半値幅(単位:mm)を求めるものであり、並びに、
前記水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)は、2次元カメラ画像から、該カメラの各垂直画素列を縦に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm
2
)である垂直方向の積算発光強度を求めるものであり、
前記垂直方向の積算発光強度は、バーナー中心軸から左と右の水平距離ごとに求められる(単位:cd/mmとしての結果)ものであり、
前記垂直方向の積算発光強度は、バーナー中心軸の左と右の水平距離の関数として得られるものであり、
前記バーナー中心軸の左と右の水平距離の関数が、前記バーナー中心軸の近傍で最大となる曲線形状から水平方向の発光強度の半値幅(単位:mm)を決定するものである
ことを特徴とする合成石英ガラスの製造装置。
【請求項12】
前記装置は、1以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、0.85以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項
11又は請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、0.76以下の空気数で操作されるバーナーを具備することを特徴とする請求項
11から請求項
13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)を決定し、
前記水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)を決定し、及び、
前記火炎を、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHM
vert
)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHM
hori
)に対する比を、12より大きいものに調整するようになるように構成されたものであることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
合成石英ガラスを製造するための請求項
11から請求項
15のいずれか1項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英ガラスの製造方法と、本発明による方法を実施するための対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するには、CVDプロセスにより、ケイ素含有出発物質から加水分解又は酸化によってSiO2粒子を生成し、動いている担体上に堆積させる。外部堆積プロセスと内部堆積プロセスに分けることができる。外部堆積プロセスでは、SiO2粒子は、回転する担体の外側に堆積される。このような外部堆積プロセスの例としては、いわゆるOVDプロセス(Out-side Vapour Phase Deposition、外付気相堆積法)、VADプロセス(Vapour Phase Axial Deposition、気相軸堆積法)、PECVDプロセス(Plasma Enhanced Chemical Vapour Deposition、プラズマ支援化学気相堆積法)などがある。内部堆積プロセスの最も良く知られた例は、外部から加熱した管の内壁にSiO2粒子を堆積するMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition、内付化学堆積法)プロセスである。
【0003】
担体表面の領域で、十分に高い温度では、SiO2粒子は直接ガラス化し、これは「直接ガラス化」とも呼ばれる。これに対して、いわゆる「スートプロセス」では、SiO2粒子の堆積時の温度が非常に低いため、多孔質のSiO2スート層が得られ、これを別の工程で焼結して透明な石英ガラスとする。直接ガラス化法、スート法ともに、緻密で透明な高純度合成石英ガラスが得られる。
【0004】
合成石英ガラスの製造のための先行技術のプロセスでは、一般に、SiO2粒子の十分な堆積効率を確保するための方法が用いられ、ここで、堆積効率は、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の数学的な最大総量との商と理解される。
【0005】
ガラス化後に低いOH値(繊維用途に良好)を有する炭素質スート体を提供するために、DE 10 2011 121 153 Aは、SiO2粒子の堆積中に酸素と比較して超化学量論的にポリシロキサン化合物を火炎に供給する、すなわち、堆積中にいわゆるリッチフレームを使用することを提案している。
【0006】
合成石英ガラスの製造のための別のプロセスは、DE 101 02 611 Aに開示されており、この中で、SiO2粒子が堆積表面への衝突時に、バーナー火炎の開角度が3°~15°で、堆積バーナーと堆積表面の間の距離を160mm~240mmとして堆積すれば、堆積石英ガラス中の不均一性を回避できることが記載されている。この刊行物には、堆積効率をどのように向上させることができるかについての更なる情報は開示されていない。
【0007】
全体として、先行技術のプロセスは、ケイ素含有出発物質の堆積効率に関して依然として向上の必要性があり、したがって、ケイ素含有出発物質の堆積効率を向上することができる合成石英ガラスの製造のためのプロセスが必要とされている。堆積効率の向上は、合成石英ガラスの製造コストの低減を伴う。
【発明の開示】
【0008】
本発明の範囲内においては、堆積効率は、数学的に生成されたSiO2の総量に対するターゲット管に堆積されたSiO2の重量の商(使用された前駆体量から全てのケイ素を完全に変換したと仮定する)であると理解される。
【0009】
本発明によれば、この課題は、合成石英ガラスの製造方法によって解決され、この方法は、まず、以下の工程によって特徴付けられる。
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程、
(2)工程(1)からの前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する工程、
(3)工程(2)により生じた前記SiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程、及び、
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記スート体を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程。
【0010】
そして、本発明に係る方法は、当該方法に用いられる合成火炎が、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比が、10より大きいことを特徴とする。
【0011】
垂直方向と水平方向の発光強度の半値幅を求めるには、以下の手順で行う。
【0012】
バーナーの上方のある高さにおける火炎の「垂直方向の発光強度」(及びその半値全幅FWHMvert)を求めるには、2次元カメラ画像から、カメラの各水平画素列を水平方向に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm2)を決定する。この水平方向の強度和は、バーナー距離(各列)又は火炎の高さ(単位:cd/mmとしての結果)ごとに計算される。そして、火炎のこの水平方向の積算発光強度は、バーナーからの垂直距離の関数として得られる(この関数を「垂直方向の発光強度」と称する)。あるバーナー距離で最大となる曲線形状から、垂直方向の発光強度の半値幅(単位:mm)を求めることができる。
【0013】
バーナーの中心軸の左右の2つの特定の距離の間で、火炎の「水平方向の発光強度」(及びその半値全幅FWHMhori)を求めるには、2次元カメラ画像から、該カメラの各垂直画素列を縦に積分して火炎の発光強度(単位:cd/mm2)を求める。この垂直方向の強度和は、バーナー中心軸(位置「0」に位置する)から左と右の水平距離ごとに求められる(単位:cd/mmとしての結果)。そして、火炎の垂直方向の積算発光強度は、バーナー中心軸の左と右の水平距離の関数として得られ(この関数を「水平方向の発光強度」と称する)、水平距離「0」(バーナー中心軸で表される)の近傍で最大となる曲線形状から水平方向の発光強度の半値幅(単位:mm)を決定することができる。そして、水平発光強度がその最大値の半分になったバーナー軸の左と右の2点間の水平距離でFWHM値が与えられる。
【0014】
本発明によれば、SiO2粒子の堆積のために、ターゲット(管、棒、又は、スート体)を上記のように定義された火炎中に導入すると、優れた堆積効率が得られることを見出した。
【0015】
そこで、本発明はターゲットレスで操作される合成火炎に関する。ターゲットレス火炎とは、成長管を使用せずに操作される合成火炎を意味し、そうでなければ火炎形状がターゲット管(又はスート体)の厚さ及びターゲット表面からのバーナーの距離並びにターゲット温度に依存することになるからである。この場合、合成火炎は一般に本質的に乱れない。
【0016】
本発明による向上した堆積効率は、既に定義したように、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の計算上の最大量との商から得られる。
【0017】
一般的なプロセスで使用される各フレームは、ラジカルOH*、CH*、C2*などの化学的に形成された短寿命の中間体による固有の放射線(化学発光)を放出し、これが紫外及び可視スペクトル範囲での火炎の輝きの原因となっている。
【0018】
化学発光は非常に局所的に生じ、紫外線や赤外線の発光強度の測定は困難であるため、後述の実験の項で説明する手順でSI単位のカンデラに校正したカメラを用いて火炎形状を測定する。カンデラは一般に人間の目の感覚に対応するもので、特殊なカメラや窓が必要になる紫外線や赤外線の成分は考慮されていない。したがって、カンデラで校正された強度のほとんどは、火炎中で生成されるSiO2や炭素スートの粒子の黒体放射によるものである。
【0019】
本発明による方法で使用される合成火炎の上述の特性は、ターゲットの無い状態で実現される。上記のようなターゲットの無い状態の火炎を提供するための測定は、当業者に知られており、特に、ノズルの数、バーナーのタイプ、他のガス、およびガス量によって実現することが可能である。いずれにせよ、当業者は、本発明の意味でのターゲットレス火炎を容易に準備し、確認することができる。
【0020】
本発明による方法の好ましい実施形態では、バーナーの火炎形状は、垂直方向の発光強度の半値全幅(Full Width at Half Maximum、FWHMvert)と水平方向の発光強度の半値全幅(Full Width at Half Maximum、FWHMhori)の比が12以上(ターゲットレス)、より好ましくは14以上、なおより好ましくは15以上で、これらの発光強度はカンデラ/mm2で測定されているものが使用される。
【0021】
本発明においては、工程(2)で行う原料蒸気の変換が、バーナー内の空気数が1.00以下で行われるとさらに好ましい。
【0022】
特に、本発明による方法における好ましい空気数は、0.95以下、さらに好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.78以下、さらに好ましくは0.76以下である。
【0023】
上記空気数は、本発明による方法において、先に定義された成長時間の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%、さらに好ましくは少なくとも98%、さらに好ましくは少なくとも99%の間において維持されることが望ましい。
【0024】
本発明によれば、工程(2)で提供される反応中にバーナーに能動的かつ中心的に供給される酸素の総量が、化学量論量的又は好ましくは化学量論量より少なく、結果として空気数が1以下であれば、SiO2粒子の堆積効率を著しく向上できることが追加的に見いだされた。
【0025】
本発明によれば、このように、本発明による装置のバーナーにおけるガス流が、すなわち、バーナーに能動的に(すなわち加圧されて)供給される全ての可燃物に対する、バーナーから能動的に(すなわち加圧されて)供給される酸素(供給酸素を含む)の比率が、調整され、バーナーに能動的に(すなわち加圧されて)供給される全てのガスに対する空気数が1以下であることが実現するように調整されていることが、規定される。
【0026】
空気数λは、理論的に化学量論的に完全燃焼に必要な酸素の最小量に対する、実際に利用可能な酸素量の比率として定義される。
【0027】
本発明の範囲内においては、バーナーにおいて有機ケイ素出発化合物の変換のために(最大で)化学量論的に使用される酸素の総量は、加圧下でバーナーに能動的に供給される酸素の量であると理解される。この酸素の総量の定義から、大気から火炎に受動的に(すなわち加圧されずに)供給される酸素の量は、本発明に従って供給される酸素の総量に加えられないことが導かれる。特に、有機ケイ素出発化合物の燃焼中にバーナーの周囲の雰囲気から火炎に拡散される酸素や負圧によって吸引される酸素は除外される。
【0028】
また、バーナーで有機ケイ素出発化合物(及び可燃性補助ガス)を変換するために(最大で)化学量論的に使用される酸素量は、バーナーに中心的に供給される酸素の総量であると理解される。
【0029】
同心バーナーにおける「バーナーに供給される酸素」という用語は、バーナーの火炎側の表面領域においてバーナーから能動的に出て行く全酸素の量を意味し、この表面領域は、半径rを有する実質的に円形の領域によって形成されている。ここで、半径rは、原料ノズルの中心又は原料ノズル群(ケイ素含有出発化合物を供給するためのノズル)の中心からベイトロッド回転軸の方向に垂直に伸び、半径rは、形成されたスート体の堆積表面からの原料ノズルの平均間隔の約1/5に相当する。
【0030】
バーナーに中心的に供給される酸素という用語は、線状バーナーの場合、バーナーの火炎側で、表面領域において能動的に後者を離れる全酸素の量を意味すると理解され、ここで、該表面領域は、ある表面、すなわち、材料ノズルの中心又は材料ノズル群(ケイ素含有出発化合物を供給するためのノズル(又は複数のノズル))の中心線からベイトロッド回転軸の方向に垂直な距離dを有し、距離dは形成されたスート体の堆積表面からの材料ノズル(又は複数のノズル)の平均距離の約1/5に相当する表面、によって形成されている。
【0031】
酸素の(最大で)化学量論的な使用は、好ましくは、固体の完全な成長時間の間維持され、ここで、該成長時間とは、ケイ素含有出発化合物を本発明によるプロセスに供給するのに要する時間である。
t成長時間 = t開始-終了 ケイ素含有出発化合物の供給
【0032】
本発明の範囲内においては、燃焼時に空気数が1以下となるように適用することで、以下に述べる技術的効果が得られる。
【0033】
しかしながら、燃焼中の空気数が1以下を満たすターゲットレス火炎を設定することが、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比が、10より大きい火炎に十分な条件ではない。空気数1以下で操作される火炎が、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比が、10より大きいことを自動的に有するわけではない。
【0034】
つまり、空気数が1以下の先行技術によるプロセスでの火炎の使用は、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する、請求項に記載した10より大きい比を強制的には保有しない。
【0035】
濃度の高い燃焼混合物の使用(空気数1未満を伴う)は、燃料供給体中のO2が既に十分に拡散している火炎の周辺部のみに、より遅く、局所的に着火することになる。火炎の中心部は、濃すぎる混合物のため、より着火しにくくなる。その結果、より少ない量のガスしか同時に着火せず、酸素はまず内拡散しなければならない。これにより、着火した領域から高温の燃焼ガスが他の火炎の領域に膨張することがなくなり、火炎の乱れが少なくなる。
【0036】
本発明による方法では、着火性混合物を有するガスボリュームは、上方に大きく伸び、横方向の膨張が小さくなる。この結果、より層流の火炎が得られる。これに関連する効果として、より狭く、より層流の火炎が、それ自体をスート体によりよく付着し、スート体の直下に、より安定した滞留点を形成することである。これにより、スート体の堆積表面へのSiO2粒子の拡散経路が短くなり、滞留点での滞留時間が長くなるため、全体として堆積効率が高くなる。
【0037】
本発明による方法は、特に、外付気相堆積法(Outside Vapor Deposition Method)(OVD)プロセス、気相軸堆積法(Vapor Axial Deposition)(VAD)プロセス、又はスートブール(Soot-Boule)プロセスである。対応するOVDプロセス及びVADプロセスは、当業者に十分に知られており、スートブール(Soot-Boule)プロセスは、例えばUS8,230,701から知られている。
【0038】
空気数を1未満の上記値に設定することで、本発明による火炎形状がさらに支持される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による方法の個々の工程を、以下により詳細に説明する。
【0040】
[工程(1) - 供給原料の蒸発]
工程(1)において、少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を気化させて、原料蒸気を形成する。重合性ケイ素含有出発化合物は、好ましくは、重合性ポリアルキルシロキサン化合物である。
【0041】
原則として、合成石英ガラスの製造に適した任意の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を本発明に従って使用することができる。本発明の範囲内においては、ポリアルキルシロキサンという用語は、直鎖(分岐構造を含む)と環状の分子構造の両方を包含する。
【0042】
特に好適な環状代表物は、一般実験式
SipOp(R)2p
で表されるポリアルキルシロキサンである。ここで、pは3以上の整数であり、基「R」はアルキル基であり、最も単純な場合はメチル基である。
【0043】
ポリアルキルシロキサンは、重量分率あたりのケイ素含有量が特に高いことが特徴で、合成石英ガラスの製造に使用する際の経済性に寄与する。
【0044】
ポリアルキルシロキサン化合物は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。D3、D4、D6、D7及びD8という表記は、General Electric Inc.によって導入された表記法を採用したものであり、「D」は基[(CH3)2Si]-O-を表す。
【0045】
本発明の範囲内で、前述のポリアルキルシロキサン化合物の混合物も使用することができる。
【0046】
高純度で大量に入手できることから、現在ではオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が好ましい。したがって、本発明の範囲内においては、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であれば、特に好ましい。
【0047】
原則として、工程(1)に導入される前に、原料が精製に供されることが可能である。このような精製プロセスは当業者に知られている。しかしながら、好ましい実施形態では、原料は、予め上流の精製プロセスに供されない。
【0048】
原料の蒸発は、キャリアガス成分の存在下でも存在しなくても行うことができる。好ましくは、有機ケイ素出発化合物の沸点を下回る温度で蒸発を行うことができるため、原料はキャリアガスの存在下で蒸発させる。キャリアガスとしては、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンが典型的に使用される。キャリアガスが使用される場合、有機ケイ素出発化合物のキャリアガスに対するモル比は、好ましくは0.01~2の範囲であり;より好ましくは0.02~1.5の範囲であり、最も好ましくは0.05~1.25の範囲である。特に、キャリアガスとして水分含有量<40体積ppmの窒素を使用し、有機ケイ素出発化合物としてOMCTSを使用することが好ましい。さらに、OMCTSの窒素に対する分子比が0.015~1.5の範囲であることが好ましい。
【0049】
蒸発工程は、当業者に知られている。有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に応じて、有機ケイ素出発化合物は、好ましくは120~200℃の温度で、蒸気相に変換される。蒸発チャンバーでの気化温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点より少なくとも数度高いことが好ましい。蒸発チャンバーでの蒸発温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点より少なくとも数度高いことが好ましい。露点は、同様に、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に依存する。好ましい実施形態では、これは、蒸発前に有機シリコン出発化合物を40~120℃の温度に予熱し、その後、原料の予熱よりも高い温度を有する蒸発チャンバーに噴霧することによって達成される。好ましい実施形態では、不活性キャリアガスは、さらに、蒸発チャンバーに供給される前に250℃までの温度に予熱することができる。蒸発チャンバー内の温度は、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの混合物の露点温度よりも常に平均的に高いことが有利である。好適な蒸発プロセスは、例えば、国際出願WO2013/087751A及びWO2014/187513A並びにドイツ特許出願DE 10 2013 209 673に記載されている。
【0050】
本発明の範囲内においては、「露点」という用語は、凝縮する液体と蒸発する液体の間で平衡状態に達する温度を記述するものである。
【0051】
本発明の範囲内においては、「気化」は、原料が本質的に液相から気相に変換されるプロセスであると理解される。これは、好ましくは、上述のように、原料の主成分としての有機ケイ素出発化合物の露点以上である温度を使用することによって行われる。当業者は、プロセス工学の観点から、原料の小さな液滴が同伴される可能性が否定できないことを認識する。したがって、工程(1)において、好ましくは97mol%以上、好ましくは98mol%以上、特に好ましくは99mol%以上、非常に特に好ましくは99.9mol%以上のガス状成分を含む原料上記が生成される。
【0052】
気化した有機ケイ素出発化合物、又はキャリアガスと気化した有機ケイ素出発化合物の混合物は、通常、蒸発チャンバーから取り出されてバーナーへ供給される。バーナーに供給される前に、気化性物質又は気化性物質とキャリアガスの混合物は、好ましくは酸素と混合される。火炎の中で、有機ケイ素出発化合物はSiO2に酸化される。微粒子の非晶質SiO2(SiO2スート)が形成され、これは多孔質塊の形で、最初は担体の表面上に、その後は形成中のスート体の表面上に堆積される。
【0053】
[工程(2) - 原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する]
工程(2)では、工程(1)で得られたガス状の原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸化及び/又は加水分解することによりSiO2粒子に変換させる。
【0054】
この工程は、特に、公知のスートプロセス又は公知の直接ガラス化に対応するものである。これら2つのプロセスの可能な設計は、当業者に知られている。
【0055】
原料蒸気の燃焼には、バーナー口の中心を中心に円形に複数のガス出口ノズルが配置された、同心バーナーが、通常使用される。
【0056】
本発明の範囲内においては、第1の、ケイ素を含む出発成分を中心領域で堆積バーナーに供給し、酸素流を外側領域でバーナーに供給し、分離ガス流(水素)を中心領域と外側領域との間に供給する方法が好ましい。
【0057】
中心ノズルは、通常、原料蒸気を供給するために使用され、本発明の範囲内においては、通常、キャリアガスと予め混合されて使用される。さらに、好ましくは、酸素が原料蒸気に添加され、その結果、通常使用される同心バーナーの中心ノズルから、原料蒸気に加えてキャリアガス及び酸素を含む供給流が生じる。
【0058】
バーナーの中心ノズルは、通常、中心ノズルの周囲に同心円状に配置された、第2ノズル(ここから分離ガスがバーナー内に導入される)に取り囲まれる。この分離ガスは、中心ノズル及び分離ガスノズルの周囲に同心円状に配置された別の同心円状ノズルからバーナーに入るさらなる酸素流から、SiO2出発化合物を分離する。
【0059】
本発明によれば、ターゲットが無く、概して実質的に乱されていない火炎において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比が、10より大きくなるようにバーナーを操作することが意図されており、ここで、発光強度はカンデラ/mm2で測定される。まず、ターゲットレス火炎でガス流量を同一にし、水平方向及び垂直方向の発光強度の半値幅を測定する。
【0060】
堆積トーチによって製造されたSiO2スート粒子は、通常、その長手軸を中心に回転するキャリア管上に、スート体が層ごとに構築されるように、堆積される。この目的のために、堆積トーチは、2つの転換点の間でキャリア管の長手方向軸に沿って前後に移動させることができる。さらに、それぞれ1つの火炎を有する複数の堆積バーナーが配置されたバーナーブロックを使用することが好ましい。バーナーブロックを使用する場合、少なくとも1つの火炎は、本発明による特性(垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比)で操作される。さらなる好ましい実施形態において、バーナーブロックの全ての火炎は、本発明による特性を有する。
【0061】
本発明の範囲内において、さらに、空気比、すなわち酸素の原料に対する比が、1以下であると、収率に有利であることを見出した。したがって、本発明によれば、工程(2)において、加水分解及び/又は重合される原料蒸気及び他の燃料ガス(例えば、他のノズルからのH2又はCH4)に対して、酸素が化学量論量より少なく使用されることがさらに好ましい。
【0062】
さらに好ましいのは、空気数0.95以下、さらに好ましいのは0.90以下、さらに好ましいのは0.85以下、さらに好ましいのは0.80以下、さらに好ましいのは0.78以下、さらに好ましいのは0.76以下である。
【0063】
空気数を1以下の値に設定することでも、本発明に従って用いられる火炎の特性は影響を受け、結果として堆積効率が向上されるので、本発明による垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比の調整とともに、空気数を前述の好ましい範囲に設定することにより、さらに堆積効率を向上させることが可能である。
【0064】
より濃度の高い燃焼混合物の使用(空気数1未満を伴う)は、火炎の周辺部のみの、より遅い局所的な着火につながる。最初は、酸化剤ノズルから十分なO2が既に拡散している供給ノズル流の外縁部のみが着火する。火炎の中心部は、過剰に濃い混合物のため、より着火しにくい。その結果、より少ない量のガスしか同時に着火せず、まず酸素を内拡散させなければならない。着火した部分から高温の燃焼ガスが膨張することで、火炎はより乱れやすくなる。増加した乱流が酸素との混合を促進するため、この効果は自己強化される。着火性の混合物を有するガス体は、本発明の方法ではさらに上方に伸びており、横方向の膨張が少ない。この結果、火炎はより一層層流になる。これに関連する効果として、より狭く、より層流の火炎は、それ自体をスート体によりよく付着し、より安定した滞留点を形成することである。これにより、SiO2粒子のスート体の堆積表面への拡散経路が短くなり、滞留点での滞留時間が長くなるため、全体として堆積効率が高くなる。
【0065】
より濃厚なガス構成における着火能力の低下は、同時に着火するガス領域の平均直径を小さくする(より小さい「小火炎」)。熱膨張と、分解によるモル増加(例えば、OMCTSガス1モルは燃焼ガスのモル数のx倍を生成する)による体積の大きな増加は、火炎をより乱流にする圧力波を発生させる。したがって、より濃厚なガスの構成によって燃焼領域がより長くなることで、先に述べたような利点を有する燃焼長がより長い層流火炎となる。本発明による方法におけるバーナー及び火炎中心では、原料流(酸素を含む)及び水素のみが存在し、これらはともに、迅速に着火するには高濃度すぎること、及び外側ノズルからの酸素O2が、より低い乱流性のために、より長い距離に分散して、より遅く中心に達することを考慮する必要がある。
【0066】
本発明の範囲内において、原料は、好ましくは同心バーナーの中心ノズルからキャリアガス及び酸素と共に燃焼部に送られるので、空気数の計算に用いられる酸素量は、原料の流れに含まれる酸素及び同心バーナーの外側ノズル(燃焼ガス又は酸化ガス)で用いられる追加の酸素の混合から生じることを考慮に入れなければならない。
【0067】
[工程(3)-SiO2粒子の堆積]
工程(3)では、工程(2)で生じたSiO2粒子を堆積表面に堆積させる。この工程の設計は、当業者の知識の範囲内である。
【0068】
この目的のため、工程(2)で形成したSiO2粒子を回転する担体上に一層ずつ堆積させ、多孔質スート体を形成する。
【0069】
スート粒子の堆積中、前述の条件を満たすために、必要に応じてトーチと支持体との間の距離を変更する。
【0070】
[工程(4) - 乾燥とガラス化(必要な場合)]
工程(4)では、必要に応じて、工程(3)により生じたSiO2粒子を乾燥させ、ガラス化することにより、合成石英ガラスを形成する。この工程は、先に行われた工程がスートプロセスに従って行われた場合に特に必要となる。この工程の設計は、当業者の知識の範囲内である。
【0071】
工程(3)におけるSiO2粒子の堆積中の温度が非常に低いため、多孔質のSiO2スート層が得られ、これが別の工程(4)で乾燥及びガラス化されて合成石英ガラスを形成する、「スートプロセス」による石英ガラスの製造に、本発明による方法は特に好適である。
【0072】
本発明による方法は、外部堆積プロセスまたは内部堆積プロセスとして実施される合成石英ガラスの製造に適している。本発明による方法を外部堆積プロセスとして実施する場合、好ましくは、OVDプロセス(外付気相堆積法)、VADプロセス(気相軸堆積法)、またはスートブールプロセスである。
【0073】
本発明によるプロセスは、石英ガラスの製造コストを低減することができる。
【0074】
本発明のさらなる目的は、合成石英ガラスを製造するための装置を提供することであり、該装置は、以下を備える。
(a)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む少なくとも1つの原料を蒸発させて原料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器部と、
(b)前記蒸発器部(a)から前記原料蒸気が供給され、前記原料が熱分解又は加水分解によってSiO2粒子に変換される少なくとも1つの反応部であって、バーナーを含む前記反応部と、
(c)前記反応部(c)により生じたSiO2粒子を堆積させて合成石英ガラスを形成する少なくとも1つの堆積部であって、スート体からなる前記堆積部。
【0075】
本発明による装置は、使用するバーナーが、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比が10より大きい火炎を生成するように設計されている。
【0076】
垂直方向及び水平方向の発光強度の定義については、上記を参照されたい。
【0077】
本発明による方法の上記考察に従って、バーナーの火炎は、ターゲットの無い状態において、垂直方向の発光強度の半値全幅(FWHMvert)の、水平方向の発光強度の半値全幅(FWHMhori)に対する比は、好ましくは12より大きく、より好ましくは14より大きく、さらに好ましくは15より大きくなるように調整される。
【0078】
さらなる関連する特徴は、上記の方法の説明に記載されている。
【0079】
最後に、本発明は、合成石英ガラスの製造のための本装置の使用に関する。
【0080】
[実施例]
国際特許出願PCT/EP2012/075346の実施形態による気化器において、180℃に予熱されたキャリアガスとしての窒素と共に液体原料OMCTSを170℃で気化させる。窒素-OMCTS蒸気混合物は、酸素(混合O2)と共に同心バーナーに導入され、バーナーは以下の条件下で操作される。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【図面の簡単な説明】
【0085】
これらの例で使用したバーナー形状を
図1に示すが、その意味は次の通りである。
1:内側のノズル、
2:中間のノズル、及び、
3:外側のノズル。
【0086】
本発明による方法(例1)は、比較例(例2及び3)よりも向上した堆積効率をもたらす。
【0087】
上記実験において、SiO2合成火炎の発光強度の校正は、以下のように行った。
【0088】
火炎の発光強度の校正は、校正済み光源(LOT-OrielのK-150WH及びGossen-Metrawattのconstant SLP120-80/snTD4541060001;最初の校正はopto.cal SCS 053,証明書番号09333、4.11.2009;二度目の校正はopto.cal SCS 053, 証明書番号16428、9.12.2016)と比較し実施された。
【0089】
カメラの感度を校正するために、校正用光源を測定が行われる典型的な距離に取り付けた。今回の設定では、作動距離は450mmである。完全なランバーシアン発光特性のため、発光強度は1/r2の振る舞いをするので、実験では、光束はopto.calで校正に使用した距離を作動距離として計算することが可能である。
【0090】
校正プロトコルでは、照度を校正対象パラメータとする。この校正では、発光エリアを参照するため、輝度がより適している。従って、照度の単位[Ev]=lm/m2=lxは、輝度の単位[Lv]=cd/m2またはCd/mm2に変換された。
【0091】
ランバート・ラジエーターの場合、この変換には校正や測定の際に距離の追加の知識が必要である。この特定の光源は、250mmの距離でEv=293.5lxの照度を持ち、実験の作業距離である450mmの距離ではIv=90.59Cdの照度である。光量の単位は検出器単位、つまり検出器の面積を基準とし、全発光量を積分したものである。エミッターベースの測定では、エミッターの有効面積が含まれるため、結果として輝度が単位となる。
【0092】
測光単位(ルクス/ルーメン/カンデラ)の適用は、人間の目の分光感度を模倣するためにCIE輝度関数を用いる。校正用光源と火炎放射は異なる分光特性を持っている。そのため、CIE輝度関数を用いて波長依存の発光に重み付けを行い、測光単位を求める。
【0093】
使用したカメラは、Basler acA1300-200umにBasler C125-0818-5M-P f8mmを装着したものである。カメラは技術的に有用な測定信号が得られるように一度設定した後、焦点距離、絞り、火炎に対するカメラの位置を固定し、測定中も一定に保った。
【0094】
校正用光源の分光分解された発光スペクトルは、CIE光度関数全体をカバーするのに十分な大きさである280nmから800nmまでの2nmの波長分解能で校正プロトコルに報告される。火炎からの発光は、異なる条件で分光分解された。
【0095】
これらの前提条件があれば、スイス計量局にトレーサブルな校正光源に対して、火炎の光量を測定することが可能である。