(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20241008BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B01D53/26 230
B60T17/00 B
(21)【出願番号】P 2021502268
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007469
(87)【国際公開番号】W WO2020175470
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019031993
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
(72)【発明者】
【氏名】除田 和也
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526628(JP,A)
【文献】特開2010-221110(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170737(WO,A1)
【文献】特開2013-024448(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0649341(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
F04B 41/02
F04B 39/16
B60T 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働
率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている、
空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されている、
請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、
前記上限圧が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気供給システム。
【請求項5】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、
前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている、
空気供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されている、
請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項7】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって
、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
一定期間内の前記コンプレッサの稼働
率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する、
空気供給システムの制御方法。
【請求項8】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって
、
前記制御装置が、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、
前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する、
空気供給システムの制御方法。
【請求項9】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって
、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び
一定期間内の前記コンプレッサの稼働
率に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる、
空気供給システムの制御プログラム。
【請求項10】
圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって
、
前記制御装置を、
前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、
前記空気乾燥回路を制御して前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び
前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる
空気供給システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気供給システム、空気供給システムの制御方法、及び空気供給システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキシステム及びサスペンションシステム等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる可能性がある。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去する圧縮空気乾燥装置が設けられている。
【0003】
圧縮空気乾燥装置は、乾燥剤を含むフィルタと各種バルブとを備えている。圧縮空気乾燥装置は、圧縮空気をフィルタに通過させて圧縮空気から水分等を除去する除湿動作を行う。除湿動作によって生成された圧縮乾燥空気は、エアタンクに貯留される。また、圧縮空気乾燥装置の清浄機能は、圧縮乾燥空気の供給量に応じて低下する。このため、圧縮空気乾燥装置は、フィルタに吸着された油分及び水分をフィルタから取り除き、取り除いた油分及び水分をドレンとして放出する再生動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば再生動作を実行する時間、フィルタを通過させる再生空気量等といった実行条件は、一定であるように設定されるか、又はコンプレッサから送出される圧縮空気量等に応じて決定されている。しかし、いずれの場合も、過不足が生じることが発明者らによって判明している。再生時間や再生空気量が不足すると、乾燥剤の水分捕捉能力が本来の程度まで復帰せず、圧縮空気乾燥装置から送出される空気に含有される水分量が多くなる可能性がある。一方、再生時間や再生空気量が過剰となる場合には、本来、空気圧システムに供給するものであるエアタンク内の圧縮乾燥空気を無駄に消費することにつながる。圧縮乾燥空気は、エンジン等の回転駆動源によって駆動されるコンプレッサによって生成されるため、圧縮乾燥空気の過剰な消費は回転駆動源の負荷を増加させ、車両の燃費を低下させることとなる。
【0006】
本開示の目的は、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気供給システムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記コンプレッサの稼働状態に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている。
【0008】
上記課題を解決する空気供給システムの制御方法は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって前記制御装置が、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記コンプレッサの稼働状態に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する。
【0009】
上記課題を解決する空気供給システムの制御プログラムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって前記制御装置を、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び、前記コンプレッサの稼働状態に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる。
【0010】
上記構成によれば、制御装置は、コンプレッサの稼働状態に基づき、再生動作で消費される再生空気量を設定する。コンプレッサは空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給状態に応じて駆動されるので、再生空気量を変更することにより、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給及びフィルタの清浄化のいずれかを優先することができる。
【0011】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、一定期間内の前記コンプレッサの稼働率が高い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されてよい。
【0012】
上記構成によれば、コンプレッサの稼働率が高く、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給の度合いが大きい場合には、再生空気量を小さくすることにより、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、コンプレッサの稼働率が低く、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給の度合いが小さい場合にはフィルタの清浄化を優先させることができる。
【0013】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が高い場合には、前記再生空気量を大きくし、前記貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標が低い場合には、前記再生空気量を小さくするように構成されてよい。
【0014】
上記構成によれば、圧縮乾燥空気の湿潤状態が高い場合には、再生空気量を大きくすることにより、フィルタの清浄化を優先させることができる。また、湿潤状態が低い場合には、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制することによって、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。
【0015】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記コンプレッサの稼働率が高い場合には前記貯留部の圧力であって前記再生動作を開始するための上限圧を高く設定し、前記コンプレッサの稼働率が低い場合には前記上限圧を低く設定し、前記上限圧が高い場合には前記再生空気量を小さくし、前記上限圧が低い場合には前記再生空気量を大きくするように構成されてよい。
【0016】
上記構成によれば、コンプレッサの稼働状態に応じて再生動作を開始するための上限圧が設定される。また、上限圧に応じて再生空気量が決定される。コンプレッサの稼働率が高い場合には上限圧を高く設定し且つ再生空気量を小さくするので、再生動作の実行頻度を低下させるとともに貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、コンプレッサの稼働率が低い場合には上限圧を低く設定し且つ再生空気量を大きくするので、再生動作の実行頻度を高くしてフィルタを浄化する効果を高めることができる。
【0017】
上記課題を解決する空気供給システムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記圧縮空気又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定するように構成されている。
【0018】
上記課題を解決する空気供給システムの制御方法は、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御方法であって前記制御装置が、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御し、前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する。
【0019】
上記課題を解決する空気供給システムの制御プログラムは、圧縮空気を送出するコンプレッサ及び圧縮乾燥空気を貯留する貯留部の間に設けられており、水分を捕捉するフィルタを有する、空気乾燥回路と、前記空気乾燥回路を制御する制御装置とを備える空気供給システムの制御プログラムであって前記制御装置を、前記コンプレッサから送出された前記圧縮空気を前記フィルタに順方向に通過させて前記貯留部に供給する除湿動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する除湿動作実行部、前記貯留部に貯留された前記圧縮乾燥空気を前記フィルタに逆方向に通過させて前記フィルタを通過した流体を排出口から排出する再生動作を実行するように前記空気乾燥回路を制御する再生動作実行部、及び、前記圧縮空気の温度又は前記圧縮乾燥空気の温度に応じて、1回の前記再生動作で消費する再生空気量を設定する設定部、として機能させる。
【0020】
上記構成によれば、制御装置は、圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度に応じて、再生動作で消費される再生空気量を設定する。圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度が上昇すると、空気に含まれる水分量も多くなるため、空気に含まれる水分量の多さに応じて再生空気量を変更することにより、貯留部から空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給、及びフィルタの清浄化のいずれかを優先することができる。
【0021】
上記空気供給システムについて、前記制御装置は、前記温度が低い場合には、前記再生空気量を小さくし、前記温度が高い場合には、前記再生空気量を大きくするように構成されてよい。
【0022】
上記構成によれば、空気の温度が低く、飽和水蒸気量が小さい場合には再生空気量を小さくすることにより、貯留部に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気乾燥回路以外の装置への圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、空気の温度が高く、飽和水蒸気量が大きい場合には再生空気量を大きくしてフィルタの清浄化を優先させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、空気供給システムの除湿性能を維持しつつ、空気供給システムによる圧縮乾燥空気の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】空気供給システムの第1実施形態の概略構成を示す構成図。
【
図3】
図3Aは、
図1の実施形態の再生空気量を算出するための標準再生空気量のマップ、
図3Bは、
図1の実施形態の再生空気量を算出するための補正単位空気量のマップ。
【
図5】
図1の実施形態における圧縮空気を供給する手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】
図1の実施形態における再生動作を行う手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図1の実施形態における再生空気量を決定する手順の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図8Aは、第2実施形態の再生空気量を算出するための標準再生空気量のマップ、
図8Bは、第2実施形態の再生空気量を算出するための補正単位空気量のマップ。
【
図9】
図8の実施形態における再生空気量を決定する手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1~
図6を参照して、空気供給システムの第1実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されている。空気供給システムにより生成された圧縮乾燥空気は、例えば、自動車のブレーキシステム(制動装置)又はサスペンションシステム(懸架装置)等の空気圧システムに用いられる。
【0026】
<空気供給システム10>
図1を参照して空気供給システム10について説明する。空気供給システム10は、コンプレッサ4と、空気乾燥回路11と、ECU(Electronic Control Unit)80とを備える。なお、ECU80が、制御装置、除湿動作実行部、再生動作実行部、設定部として機能する。
【0027】
ECU80は、複数の配線E61~E67を介して空気乾燥回路11と接続されている。ECU80は、演算部、通信インターフェース部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えている。演算部は、コンピュータプロセッサであって、不揮発性記憶部(記憶媒体)に記憶された空気供給プログラムにしたがって、空気乾燥回路11を制御するように構成されている。演算部は、自身が実行する処理の少なくとも一部を、ASIC等の回路により実現してもよい。空気供給プログラムは、一つのコンピュータプロセッサによって実行されてもよいし、複数のコンピュータプロセッサによって実行されてもよい。また、ECU80は、空気乾燥回路11の各動作の実行頻度を決定するための情報を記憶する記憶部80Aを備える。記憶部80Aは、不揮発性記憶部又は揮発性記憶部であり、上記制御プログラムが記憶された記憶部と同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0028】
ECU80は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介して、例えばエンジンECU、ブレーキECU等、車両に搭載された他のECU(図示略)に接続されている。ECU80は、それらのECUから、車両状態を示す情報を取得する。車両状態を示す情報には、例えば、イグニッションスイッチのオフ情報、車速、エンジンの駆動情報等が含まれる。
【0029】
コンプレッサ4の状態は、ECU80からの指令に基づいて、空気を圧縮して送出する稼働状態(負荷運転)と、空気の圧縮を行わない非稼働状態(空運転)との間で切り替えられる。コンプレッサ4は、エンジン等の回転駆動源から伝達された動力で稼働する。
【0030】
空気乾燥回路11は、いわゆる、エアドライヤである。空気乾燥回路11は、ECU80に接続され、負荷運転中のコンプレッサ4から送られた圧縮空気から該圧縮空気に含まれる水分等を除去する。空気乾燥回路11は、乾燥された後の圧縮空気(以下、圧縮乾燥空気)を、供給回路12に供給する。供給回路12に対し供給された圧縮乾燥空気は、エアタンク30に貯留される。
【0031】
エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気は、車両に搭載されたブレーキシステム等の空気圧システムに供給される。例えば、車両が降坂路又は市街地を走行する状況等、ブレーキが作動される頻度が高い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が多くなる。逆に、ブレーキが作動される頻度が低い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費量が少なくなる。
【0032】
空気乾燥回路11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にそれを通じて空気乾燥回路11に空気を供給するためのポートである。
【0033】
空気乾燥回路11は、ケース11A(
図2A参照)の内部等にフィルタ17を備えている。フィルタ17は、コンプレッサ4と供給回路12とを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。フィルタ17は、乾燥剤を含む。また、フィルタ17は、乾燥剤とは別に、油分を捕捉する油分捕捉部を含む。油分捕捉部は、ウレタンフォーム等の発泡体、多数の通気孔を有する金属材、ガラス繊維フィルタ等、空気を通過させながら油分を捕捉できるものであればよい。
【0034】
フィルタ17は、コンプレッサ4から送出された圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって、圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させる。また、油分捕捉部は、圧縮空気に含まれる油分を捕捉して圧縮空気を清浄化する。フィルタ17を通過した圧縮空気は、下流チェックバルブ19を介して供給回路12へ供給される。下流チェックバルブ19は、フィルタ17側を上流、供給回路12側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。なお、下流チェックバルブ19は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。
【0035】
また、フィルタ17の下流には、下流チェックバルブ19を迂回する迂回路としてのバイパス流路20が下流チェックバルブ19に対して並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が設けられている。
【0036】
再生制御弁21は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E64を介して再生制御弁21の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、再生制御弁21の動作を切り替える。再生制御弁21は、電源が切れた状態において閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態において開弁してバイパス流路20を連通させる。ECU80は、例えば、エアタンク30内の空気圧の値を受けて、空気圧の値が所定の範囲を超えたとき再生制御弁21を動作させる。
【0037】
バイパス流路20には、再生制御弁21とフィルタ17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、供給回路12側の圧縮乾燥空気が、バイパス流路20を介して、オリフィス22によって流量を規制された状態でフィルタ17に送られる。フィルタ17に対し送られた圧縮乾燥空気は、フィルタ17を下流から上流に向けて逆流し、フィルタ17を通過する。このような処理は、フィルタ17を再生させる動作であり、空気乾燥回路11の再生動作という。このとき、フィルタ17に対し送られる圧縮乾燥空気は、空気供給通路18からフィルタ17等を通過して供給回路12に供給された乾燥及び清浄化された空気であるため、フィルタ17に捕捉された水分及び油分をフィルタ17から除去することができる。ECU80は、通常の制御において、エアタンク30内の圧力が上限値(カットアウト圧)に到達すると、再生制御弁21を開弁する。一方、エアタンク30内の圧力が下限値(カットイン圧)に到達すると、開弁した再生制御弁21を閉弁する。
【0038】
コンプレッサ4とフィルタ17との間の部分から、分岐通路16が分岐している。分岐通路16にはドレン排出弁25が設けられており、分岐通路16の末端にはドレン排出口27が接続されている。
【0039】
フィルタ17から除去された水分及び油分を含む流体であるドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に対し送られる。ドレン排出弁25は、空気圧により駆動される空気圧駆動式の弁であって、分岐通路16において、フィルタ17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25が開弁位置にあるとき、ドレンはドレン排出口27へ送られる。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。なお、ドレンがフィルタ17を逆方向に通過した流体に相当する。
【0040】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aによって制御される。ガバナ26Aは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E63を介してガバナ26Aの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、ガバナ26Aの動作を切り替える。ガバナ26Aは、電源が入れられると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力する入力位置に切り替わることによって、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26Aは、電源が切られると、ドレン排出弁25に空気圧信号を入力せずにドレン排出弁25のポートを大気圧に開放する開放位置に切り替わることによって、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0041】
ドレン排出弁25は、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されていない状態では、分岐通路16を遮断する閉弁位置に維持され、ガバナ26Aから空気圧信号が入力されると、分岐通路16を連通する開弁位置に切り替わる。また、ドレン排出弁25においてコンプレッサ4に接続されている入力ポートの圧力が上限値を超えた場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0042】
コンプレッサ4とフィルタ17との間であって、かつ、コンプレッサ4と分岐通路16の間には、上流チェックバルブ15が設けられている。上流チェックバルブ15は、コンプレッサ4側を上流、フィルタ17側を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。上流チェックバルブ15は、所定の開弁圧(封止圧)を有していることから、圧縮空気が流れるとき、上流の圧力は下流の圧力よりも開弁圧だけ高くなる。なお、上流チェックバルブ15の上流には、コンプレッサ4の出口のリード弁が設けられている。上流チェックバルブ15の下流には、分岐通路16やフィルタ17が設けられている。
【0043】
コンプレッサ4は、アンロード制御弁26Bによって制御される。アンロード制御弁26Bは、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E62を介してアンロード制御弁26Bの電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、アンロード制御弁26Bの動作を切り替える。アンロード制御弁26Bは、電源が切られると、開放位置に切り替わり、アンロード制御弁26Bとコンプレッサ4との間の流路を大気開放する。また、アンロード制御弁26Bは、電源が入れられると、供給位置に切り替わり、コンプレッサ4に圧縮空気からなる空気圧信号を送る。
【0044】
コンプレッサ4の状態は、アンロード制御弁26Bから空気圧信号が入力されると、非稼働状態(空運転)に切り替わる。例えば、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達したとき、圧縮乾燥空気の供給は不要である。供給回路12側の圧力がカットアウト圧に到達し、ECU80がアンロード制御弁26Bの電源を入れる(アンロード制御弁26Bを駆動する)と、アンロード制御弁26Bは、供給位置に切り替わる。これにより、アンロード制御弁26Bから、コンプレッサ4に空気圧信号が供給され、コンプレッサ4の状態が非稼働状態に切り替わる。
【0045】
コンプレッサ4と上流チェックバルブ15との間には、圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、空気供給通路18に対し接続されており、空気供給通路18の空気圧を測定して、測定した結果を配線E61を介してECU80に伝達する。
【0046】
下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、湿度センサ51及び温度センサ52が設けられている。湿度センサ51は、絶対湿度を検出するものであってもよく、相対湿度を検出するものであってもよい。湿度センサ51及び温度センサ52はそれぞれ、フィルタ17の下流の圧縮空気の湿度、圧縮空気の温度を測定して、測定した結果を配線E65,E66を介してECU80に出力する。ECU80は、湿度センサ51及び温度センサ52から入力された湿度及び温度に基づいて圧縮乾燥空気の湿潤状態を判定する。
【0047】
さらに下流チェックバルブ19と供給回路12との間には、圧力センサ53が設けられている。圧力センサ53は、エアタンク30内の空気圧を検出可能に設けられ、検出した圧力値を、配線E67を介してECU80に出力する。下流チェックバルブ19及び供給回路12の間の圧力は、エアタンク30の圧力と同じであり、圧力センサ53の検出結果はエアタンク30内の圧力として用いることができる。なお、圧力センサ53は、供給回路12に設けられてもよいし、エアタンク30に設けられてもよい。
【0048】
<空気乾燥回路11の動作説明>
図2A~
図2Fに示すように、空気乾燥回路11は、少なくとも第1動作モード~第6動作モードを含む、複数の動作モードを有する。
【0049】
(第1動作モード)
図2Aに示すように、第1動作モードは、通常の除湿動作(ロード運転)を行うモードである。第1動作モードでは、再生制御弁21及びアンロード制御弁26Bをそれぞれ閉弁し(図において「CLOSE」と記載)、ガバナ26Aを、コンプレッサ4に空気圧信号を入力しない開放位置とする(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21、ガバナ26A、及びアンロード制御弁26Bには、電源が供給されない。また、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bは、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。第1動作モードでは、コンプレッサ4から圧縮空気が供給されているとき(図において「ON」と記載)、フィルタ17で水分等が除去され、供給回路12に対し圧縮空気が供給される。
【0050】
(第2動作モード)
図2Bに示すように、第2動作モードは、空気乾燥回路11内の圧縮乾燥空気を、フィルタ17に通過させてフィルタ17を浄化するパージ動作を行うモードである。第2モードでは、再生制御弁21を閉弁し、アンロード制御弁26Bを供給位置とし(図において「OPEN」と記載)、ガバナ26Aを入力位置(図において「OPEN」と記載)とする。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bにはそれぞれ、電源が供給されるとともに、それらの下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートはそれぞれ上流(供給回路12側)に接続される。これにより、コンプレッサ4が非稼働状態に切り替わり(図において「OFF」と記載)、ドレン排出弁25が開弁される。その結果、下流チェックバルブ19とフィルタ17との間の圧縮乾燥空気が、フィルタ17内を、第1動作モード(除湿モード)の空気の流れとは逆方向に流れ(逆流)、フィルタ17によって捕捉された水分等が、ドレンとしてドレン排出口27から排出される。また、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0051】
(第3動作モード)
図2Cに示すように、第3動作モードは、フィルタ17を再生する再生動作を行うモードである。第3動作モードでは、再生制御弁21を開弁し、ガバナ26Aを入力位置とし、アンロード制御弁26Bを供給位置とする(それぞれ図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26A及びアンロード制御弁26Bに加え、再生制御弁21にも電源が供給される。第3動作モードでは、コンプレッサ4を非稼働状態とさせるとともに、供給回路12又はエアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気を、フィルタ17に逆流させて、ドレン排出口27から排出させる。これによって、フィルタ17に捕捉された水分等が除去される。第2動作モード及び第3動作モードは、いずれもフィルタ17を浄化させるモードであるが、第3動作モードは、少なくとも再生制御弁21を開弁する点で第2動作モードと異なる。これにより、第3動作モードでは、エアタンク30内の圧縮乾燥空気を、供給回路12及びバイパス流路20を介して、フィルタ17に通過させることができる。そのため、フィルタ17を浄化する効果が第2動作モードよりも高い。また、第3動作モードでも、フィルタ17及び空気供給通路18の空気圧が大気圧に開放される。
【0052】
(第4動作モード)
図2Dに示すように、第4動作モードは、オイルカット動作を行うモードである。第4動作モードでは、コンプレッサ4を稼働させながら、コンプレッサ4から送られた油分過多な空気を、フィルタ17を通過させることなくドレン排出口27から排出する。コンプレッサ4が非稼働状態である場合、コンプレッサ4の圧縮室に油分が溜まることがある。圧縮室内に油分が溜まった状態でコンプレッサ4の状態が稼働状態に切り替えられると、圧縮室から送られる圧縮空気に含まれる油分量が多くなる。油分が乾燥剤に付着すると、乾燥剤の除湿性能が低下する。そのため、油分過多な圧縮空気を排出するオイルカット動作が実行される。第4動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、アンロード制御弁26Bを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とするとともに、ガバナ26Aを一定期間の駆動後に開放位置とする(図において「CLOSE」と記載)。これにより、コンプレッサ4から比較的多くの油分を含む圧縮空気が送出されても、その圧縮空気をフィルタ17に通過させることなく、ドレン排出口27から排出することができる。したがって、コンプレッサ4が非稼働状態から稼働状態へ切り替えられた直後にフィルタ17の除湿性能が低下することを抑制することができる。稼働状態でエンジン回転数が大きくなるとき及びエンジンの高負荷時等にコンプレッサ4からの油分が増加するときには、オイルカット動作を行うこともできる。
【0053】
(第5動作モード)
図2Eに示すように、第5動作モードは、パージ無しのコンプレッサ停止動作を行うモードである。第5動作モードでは、再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26Aを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とするとともに、アンロード制御弁26Bを供給位置(図において「OPEN」と記載)とする。第5動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18又はフィルタ17の乾燥剤中に残留する圧縮空気又は圧縮乾燥空気をドレン排出口27から排出させないことで空気圧が維持される。
【0054】
(第6動作モード)
図2Fに示すように、第6動作モードは、与圧処理のためにアシスト動作を行うモードである。第6動作モードでは、再生制御弁21を開弁し、アンロード制御弁26Bを供給位置(図において「OPEN」と記載)とするとともに、ガバナ26Aを開放位置(図において「CLOSE」と記載)とする。第6動作モードでは、コンプレッサ4が非稼働状態であるとき、空気供給通路18及びフィルタ17の乾燥剤中に供給回路12の圧縮空気を供給する(逆流させる)ことで、空気供給通路18及びフィルタ17の圧力を大気圧よりも高くして、上流チェックバルブ15の背圧(空気圧)を大気圧よりも高い圧力に維持させる。
【0055】
(実行条件の設定)
次に
図3を参照して、再生動作(第3動作モード)で消費される空気量(以下、再生空気量という)の決定方法について説明する。ECU80は、制御プログラムを実行することにより、再生空気量Amを、以下の式(1)にしたがって算出する。なお、再生空気量Amは、体積単位で算出されても質量単位で算出されてもよい。なお、この式(1)の右辺(又は左辺)に単位を変換する各種の係数を用いてもよい。
【0056】
再生空気量Am
=標準再生空気量Am1-補正単位空気量Am2×過不足係数α…(1)
なお、「標準再生空気量Am1」は、「補正単位空気量Am2×過不足係数α」よりも大きくなるように設定されており、再生空気量Amが「0」を超えるようになっている。標準再生空気量Am1は、基本的に空気乾燥回路11の仕様(スペック)で決められる空気量であるが、エアタンク30の圧力の上限値であるカットアウト圧に応じて変更される。上述したようにカットアウト圧は、再生動作及びパージ動作が開始される条件となる圧力であり、コンプレッサ4の稼働率が高いほど、高い値が設定され、記憶部80Aに記憶されている。例えば、稼働率が所定値R1(例えば30%)未満では、相対的に低い値であるカットアウト圧Po1が設定され、稼働率が所定値R1以上所定値R2(例えば60%)未満では、カットアウト圧Po1よりも高いカットアウト圧Po2が設定されている(Po2>Po1)。さらに、稼働率が所定値R2以上では、カットアウト圧Po2よりも高いカットアウト圧Po3が設定されている(Po3>Po2)。本実施形態では、カットアウト圧を、コンプレッサ4の稼働率に応じて3段階に設定しているが、これを2段階に設定してもよく、4つ以上の段階で設定してもよい。又は、コンプレッサ4の稼働率に応じて、カットアウト圧を連続的に変化させてもよい。
【0057】
カットアウト圧Poをコンプレッサ4の稼働率が高くなるに伴い高くする理由について説明する。コンプレッサ4は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の量等に応じて駆動されるため、その稼働率が低い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的少ない状況下にあると推定される。このような状況では、カットアウト圧を相対的に低い値にして、再生動作の実行頻度を相対的に高くし、フィルタ17の清浄化を積極的に行う。一方、コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的多い状況下にあると推定される。このような状況では、カットアウト圧を相対的に高い値にして、再生動作の実行頻度を相対的に低くし、空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給を優先する。
【0058】
図3Aは、標準再生空気量Am1を、限界通気量及びカットアウト圧に応じて設定したマップ100である。このマップ100は、記憶部80Aに記憶されている。マップ100の横軸は限界通気量であり、縦軸は標準再生空気量Am1である。図では単位は体積(リットル)であるが、単位が質量であってもよい。限界通気量は、空気乾燥回路11を通過する空気量の限界を示す値であり、空気乾燥回路11(エアドライヤ)の仕様に応じて決まる量である。標準再生空気量Am1は、限界通気量が大きくなるに伴い小さくなり、限界通気量が小さくなるに伴い大きくなる。また、標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、カットアウト圧が高くなるに伴い小さくなり、カットアウト圧が低くなるに伴い大きくなる。つまり、カットアウト圧にはコンプレッサ4の稼働率が高くなるに伴い高い値が設定されているので、標準再生空気量Am1は、コンプレッサ4の稼働率が高くなるに伴い小さくなるといえる。上述したように、コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的多い状況下にあると推定される。このため、コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、標準再生空気量Am1を小さくして、空気圧システムへ圧縮乾燥空気を供給することを優先する。また、標準再生空気量Am1は、コンプレッサ4の稼働率が低くなるに伴い大きくなる。稼働率が低い場合には、ブレーキシステム等の空気圧システムによる圧縮乾燥空気の消費量が比較的少ない状況下にあると推定される。このため、コンプレッサ4の稼働率が低い場合には、標準再生空気量Am1を大きくして、1回の再生動作あたりのフィルタ17の清浄効果を高める。
【0059】
図3Bは、カットアウト圧に応じた補正単位空気量Am2と限界通気量との関係を示しているマップ101である。このマップ101は、記憶部80Aに記憶されている。横軸が限界通気量、縦軸が補正単位空気量Am2である。図では単位は体積(リットル)であるが、単位が質量であってもよい。補正単位空気量Am2は、標準再生空気量Am1と同様に限界通気量が大きくなるほど小さくなる一方で、限界通気量を一定としたとき、カットアウト圧が高くなるに伴い大きくなり、カットアウト圧が低くなるに伴い小さくなる。
【0060】
過不足係数α(再生過不足係数)は、補正単位空気量Am2に乗算される係数であり、負の値、正の値又は「0」に設定されている。この過不足係数αは、エアタンク30内に貯留された圧縮乾燥空気の湿潤状態の傾向に基づき設定されるものである。再生動作の過不足は、フィルタ17によって捕捉された水分量によって判定することができるが、圧縮空気に含まれる水分量は空気の温度や湿度によって変化するため、フィルタ17によって捕捉された水分量を、再生動作の実行時間やフィルタ17を通過した空気量だけを用いて推定するのは困難である。また、フィルタ17によって捕捉された水分量を直接的に計測することも困難である。本実施形態のように、貯留部内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づき再生動作の過不足を判定することによって、再生動作の過不足を間接的ではあっても適切に判定することができる。
【0061】
過不足係数αの根拠となる湿潤状態の傾向は、前回行われた再生動作から次の再生動作を行う前までの期間を対象として判定される。また、湿潤状態を判定するための指標は限定されないが、本実施形態ではエアタンク30内の圧縮乾燥空気に含有される水分量(以下、含有水分量)の飽和度を算出し、前回の再生動作の終了時における含有水分量の飽和度から今回の含有水分量の飽和度を減算する。前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が高い場合、すなわち圧縮乾燥空気の湿潤状態が高まる傾向にある場合には、フィルタ17が捕捉している水分量が増加傾向にあると判定される。このため、上記式(1)において、過不足係数αは、「0」未満の負の値とされる。過不足係数αが負の値である場合には、再生空気量は標準再生空気量よりも大きくなるように補正される。
【0062】
一方、前回の再生終了時よりも今回の再生終了時の方が含有水分量の飽和度が低い場合、すなわち圧縮乾燥空気の湿潤状態が低下する傾向にある場合には、フィルタ17が捕捉している水分量が減少傾向にあると判定される。このため、過不足係数αは、「0」よりも大きい正の値とされ、再生空気量は標準再生空気量よりも小さくなるように補正される。また、圧縮乾燥空気の湿潤状態が適した状態にあると判定した場合には、過不足係数は「0」とされ、再生空気量Amは標準再生空気量Am1から補正されない。
【0063】
図4は、過不足係数αの一例を示す過不足係数情報200である。過不足係数情報200は、記憶部80Aに記憶されている。過不足係数情報200は、過不足条件200A、過不足係数200Cを含んでいる。状態200Bは、過不足条件200Aが示す状態を便宜的に示したものであり、省略可能である。過不足条件200Aには、再生過不足度の範囲が設定されている。再生過不足度は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、増加傾向にあるか減少傾向にあるかを示す指標である。
【0064】
過不足係数200Cは、再生過不足度に重み付け係数を乗算したものである。過不足係数103は、再生過不足度の範囲である過不足条件200Aにそれぞれ対応している。なお、
図4では重み付け係数を正の整数としているが、正の整数でなくてもよい。
【0065】
過不足係数情報200において、再生空気量が大幅に不足している場合、すなわち含有水分量が大きい場合は、再生過不足度が、例えば「-1」以下であり、負の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数も、例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に不足」とまではいえなくとも再生空気量が不足している場合には、再生過不足度は、例えば「-1」よりも大きく「-0.5」よりも小さい範囲であって、「大幅に不足」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0066】
また、再生空気量が大幅に過剰である場合、すなわち含有水分量が小さい場合は、再生過不足度が、例えば「1」以上であり、正の値であって且つ絶対値が大きい。この場合には、重み付け係数にも例えば「2」等の相対的に大きい値が設定されている。また、「大幅に過剰」とまではいえなくとも再生空気量が過剰である場合には、再生過不足度は、例えば「0.5」以上であり「1」よりも小さい範囲であって、「大幅に過剰」よりも絶対値が小さい。また、重み付け係数の値も、例えば「1」など、「大幅に不足」よりも小さい値が設定されている。
【0067】
再生過不足度が、例えば「-0.5」以上「0.5」未満の範囲である場合には、過不足係数には「0」が設定されている。
これらの標準再生空気量、補正単位空気量、及び過不足係数を用いて算出される再生空気量Amについて、コンプレッサ4の稼働率が低い場合及び高い場合と、エアタンク30内の湿潤状態が低い場合及び高い場合にと場合分けして説明する。なお、限界通気量は一定であることを前提とする。
【0068】
(A)コンプレッサ4の稼働率:低、エアタンク30内の湿潤状態:高
コンプレッサ4の稼働率が低い場合、カットアウト圧は低く設定される。これにより、再生動作及びパージ動作の実行頻度は高められる。また、標準再生空気量Am1は、カットアウト圧が低く設定されることにより大きくなる。
【0069】
さらに、補正単位空気量Am2は、カットアウト圧が低く設定されることにより小さくなる。また、過不足係数αは、エアタンク30内の湿潤状態が高いため、「大幅不足」又は「不足」の状態となり、負の値となる。このため、標準再生空気量に、正の値の補正値が加算され、再生空気量Amは大きくなる。なお、「大幅不足」の状態の方が、「不足」の状態よりも再生空気量Amは大きくなる。
【0070】
(B)コンプレッサ4の稼働率:低、エアタンク30内の湿潤状態:低
標準再生空気量Am1及び補正単位空気量Am2は、上記の状態(A)と同様である。一方、過不足係数αは、エアタンク30内の湿潤状態が低いため、「大幅過剰」又は「過剰」の状態となり、正の値となる。このため、標準再生空気量から補正値が減算され、状態(A)の再生空気量Amに比べ、再生空気量Amが小さくなる。
【0071】
(C)コンプレッサ4の稼働率:高、エアタンク30内の湿潤状態:高
コンプレッサ4の稼働率が高い場合、カットアウト圧は高く設定される。これにより、再生動作及びパージ動作の実行頻度が低くなる。また、標準再生空気量Am1は、カットアウト圧が高く設定されることにより小さくなる。
【0072】
さらに、補正単位空気量Am2は、カットアウト圧が高く設定されることにより大きくなる。また、過不足係数αは、エアタンク30内の湿潤状態が高いため、「大幅不足」又は「不足」の状態となり、負の値となる。このため、標準再生空気量に、正の値の補正値が加算されるが、状態(A)の再生空気量Amに比べ、再生空気量Amは小さくなる。なお、状態(C)の再生空気量Amは、状態(B)の再生空気量Amに比べて小さくてもよいし、大きくてもよい。また、状態(B)の再生空気量Am及び状態(C)の再生空気量Amは同じであってもよい。
【0073】
(D)コンプレッサ4の稼働率:高、エアタンク30内の湿潤状態:低
標準再生空気量Am1及び補正単位空気量Am2は、上記の状態(C)と同様である。一方、過不足係数αは、エアタンク30内の湿潤状態が低いため、「大幅過剰」又は「過剰」の状態となり、正の値となる。このため、標準再生空気量から補正値が減算され、状態(C)の再生空気量Amに比べ、再生空気量Amが小さくなる。つまり、過不足係数αの設定値にもよるが、基本的に、再生空気量Amは、状態(A)の場合が最も大きく、状態(D)の場合が最も小さい。
【0074】
(空気乾燥回路11の制御)
次に
図5~
図7を参照して、ECU80が空気乾燥回路11を制御する手順について説明する。
【0075】
図5を参照して、全体的な制御の手順について説明する。ECU80は、コンプレッサ4の出力する圧縮空気を供給回路12に供給する空気供給工程を行う(ステップS1)。空気供給工程は、例えばエンジンが駆動されたとき等、所定の条件で開始される。また、空気供給工程は、エアタンク30の圧力が、下限値であるカットイン圧力等の所定圧力に到達したとき等に開始されてもよい。空気供給工程では、空気乾燥回路11が第1動作モードにあり、除湿動作を実行している。
【0076】
空気供給工程が開始されると、ECU80は、空気の供給を停止するか否かを判断する(ステップS2)。詳述すると、ECU80は、圧力センサ53が検出したエアタンク30内の圧力を取得し、圧力がカットアウト圧に到達したか否かを判断する。ECU80が、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達していないと判断すると(ステップS2:NO)、処理を空気供給工程に戻す(ステップS1)。
【0077】
ECU80は、エアタンク30内の圧力がカットアウト圧に到達したと判断すると(ステップS2:YES)、空気供給工程を終了し、コンプレッサ4を非稼働状態にさせるとともに、浄化工程を実行する(ステップS3)。浄化工程では、ECU80は、予め設定された条件にしたがって、再生動作及びパージ動作の要否を判定し、再生動作が必要であると判定すると、再生動作を実行し、パージ動作が必要であると判定するとパージ動作を実行する。
【0078】
浄化工程(ステップS3)が終了すると、ECU80は、空気非供給工程を行う(ステップS4)。空気非供給工程では、コンプレッサ4が非稼働状態であるときに、上流チェックバルブ15の背圧の調整等、空気乾燥回路11の圧力調整を行う。例えば、空気非供給工程では、第2動作モード、第5動作モード、及び第6動作モードの少なくとも一つを1乃至複数回実行して空気乾燥回路11の空気圧の調整を行う。圧力調整が終了すると、ECU80は、車両状態に基づいて、空気供給を終了するか否かを判断する(ステップS5)。空気供給の終了は、例えば、車両のエンジン停止等の車両状態に基づいて判定される。
【0079】
空気供給を終了しないと判定した場合(ステップS5:NO)、ECU80は、ステップS1に処理を戻し、空気供給工程(ステップS1)以下の処理を実行する。一方、空気供給を終了すると判定した場合(ステップS5:YES)、空気の供給を停止する。
【0080】
次に
図6を参照して、再生動作の制御の手順について説明する。ECU80は、予め決められた条件にしたがって、再生動作が必要であるか否かを判断する(ステップS100)。このとき、ECU80は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気の湿潤状態に基づいて再生動作の要否を判断する。例えば、ECU80は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分量(タンク含有水分量)を算出し、タンク含有水分量が所定値以上である場合には、再生動作が必要であると判断し、タンク含有水分量が所定値未満である場合には、再生動作が不要であると判断する。
【0081】
ECU80は、再生動作が必要ではないと判断すると(ステップS100:NO)、処理を終了する。一方、ECU80は、再生動作が必要であると判断すると(ステップS100:YES)、決定された再生空気量を取得する(ステップS101)。そして、ECU80は、取得した再生空気量を用いて、空気乾燥回路11を第3動作モードに切り替え、再生動作を実行する(ステップS102)。ここで、圧力センサ53が検出した圧力値の変化を、再生動作で消費された空気量に換算して、換算した空気量が再生空気量に到達した場合に、再生動作を終了してもよい。又は、再生空気量に対応する再生時間だけ、空気乾燥回路11を第3動作モードに切り替え、再生動作を行ってもよい。再生時間は、再生空気量と再生時間とを関連付けたマップを用いて算出したり、再生時にフィルタ17を通過する単位時間当たりの空気量が一定であることを前提に換算式を用いて算出したりしてもよい。再生動作が終了すると、浄化工程(ステップS3)が終了し、処理が次のステップに進められる。
【0082】
次に
図7を参照して、再生空気量を決定するための処理について説明する。なお、ECU80は、再生動作終了時から、次の再生動作開始時までを1サイクルと定義する。そして、1サイクルにおける所定のタイミングで再生空気量を更新する。なお、再生空気量の更新タイミングは特に限定されない。例えば、再生空気量の更新が、1サイクルの開始時に行われてもよいし、1サイクルの終了時に行われてもよいし、1サイクルの開始時と終了時との間に行われてもよいし、例えば1サイクルの平均時間よりも短い期間等、所定の期間毎に行われてもよい。
【0083】
ECU80は、再生空気量の更新を行うか否かを判断する(ステップS110)。例えば、ECU80は、新たなサイクルの所定のタイミングに到達したか否かを判断する。ECU80は、所定のタイミングに到達していないと判断すると(ステップS110:NO)、処理を終了する。
【0084】
ECU80は、再生空気量を更新すると判断すると(ステップS110:YES)、再生過不足度を算出する(ステップS111)。再生過不足度は、上述したように、タンク空気水分飽和度の変化に基づき算出されてもよい。タンク空気水分飽和度は、湿度センサ51により検出された湿度、温度センサ52により検出された温度等から算出することができる。
【0085】
ECU80は、再生過不足度を算出すると、過不足係数情報200を用いて、過不足係数を取得する(ステップS112)。さらに、ECU80は、再生動作の開始圧力であるカットアウト圧を取得する(ステップS113)。また、ECU80は、取得したカットアウト圧に基づいて、マップ100を用いて標準再生空気量を取得するとともに(ステップS114)、マップ101を用いて補正単位空気量を取得する(ステップS115)。そして、ECU80は、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数を用いて、上記した式(1)にしたがって再生空気量を算出する(ステップS116)。ここで算出された再生空気量は、
図6のステップS101で用いられる。ECU80は、ここで算出された再生空気量を用いて再生動作を行う。
【0086】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)ECU80は、コンプレッサ4の稼働状態に基づき、再生動作で消費される再生空気量を設定する。コンプレッサ4は空気乾燥回路11以外の空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給状態に応じて駆動されるので、再生空気量を変更することにより、エアタンク30から空他の空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給及びフィルタ17の清浄化のいずれかを優先することができる。
【0087】
(2)コンプレッサ4の稼働率が高く、エアタンク30から空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給の度合いが大きい場合には、再生空気量を小さくすることにより、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、コンプレッサ4の稼働率が低く、エアタンク30から空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給の度合いが小さい場合にはフィルタ17の清浄化を優先させることができる。
【0088】
(3)エアタンク30内の圧縮乾燥空気の湿潤状態が高い場合には、再生空気量を大きくすることにより、フィルタ17の清浄化を優先させることができる。また、圧縮乾燥空気の湿潤状態が低い場合には、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制することによって、空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。
【0089】
(4)コンプレッサ4の稼働状態に応じて再生動作を開始するための上限圧であるカットアウト圧が設定され、カットアウト圧に応じて再生空気量が決定される。コンプレッサ4の稼働率が高い場合には、カットアウト圧が高く設定され且つ再生空気量が小さくされるので、再生動作の実行頻度を低下させるとともにエアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、コンプレッサ4の稼働率が低い場合には、カットアウト圧が低く設定され且つ再生空気量が大きくされるので、再生動作の実行頻度を高くしてフィルタ17を浄化する効果を高めることができる。
【0090】
(第2実施形態)
図8及び
図9に従って、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、標準再生空気量及び補正単位空気量を空気乾燥回路11の状態に応じて変更して、再生空気量を算出する点で、第1実施形態と共通している。また、第1実施形態では、カットアウト圧に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更したが、第2実施形態では、圧縮乾燥空気の温度に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を変更する点で第1実施形態と異なる。そこで、以下では、主に第1実施形態と相違する構成について詳細に説明することとし、説明の便宜上、同様の構成については詳細な説明を割愛する。
【0091】
図8Aは、標準再生空気量Am1を、限界通気量及び温度に応じて設定したマップ110であり、記憶部80Aに記憶されている。マップ110は、第1実施形態のマップ100(
図3参照)がカットアウト圧に応じて標準再生空気量を決定しているのに対し、温度に応じて標準再生空気量を決定している点が異なる。温度には、温度センサ52により検出された値を用いることができる。又は、空気乾燥回路11の入口側であってフィルタ17の上流側に温度センサを設け、その温度センサが検出した温度を用いてもよい。標準再生空気量Am1は、限界通気量を一定としたとき、温度が低くなるに伴い小さくなり、温度が高くなるに伴い大きくなる。つまり、温度が高い場合には、空気の飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)が大きくなるため、圧縮空気に含まれる水分量も多くなる傾向にある。したがって、フィルタ17に捕捉される水分量も多くなることが想定されるため、標準再生空気量Am1を大きくして、1回の再生動作でのフィルタ17から水分を除去する効果を高める。また、温度が低い場合には、空気の飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)が小さくなるため、圧縮空気に含まれる水分量が少なくなる傾向にある。したがって、フィルタ17に捕捉される水分量も少なくなることが想定されるため、標準再生空気量Am1を小さくすることによって、1回の再生動作により消費される圧縮乾燥空気の量を低減する。
【0092】
図8Bは、補正単位空気量Am2を、限界通気量及び温度に応じて設定したマップ111であり、記憶部80Aに記憶されている。補正単位空気量Am2は、標準再生空気量Am1から減算される値であるため、標準再生空気量Am1と同様に限界通気量が大きくなるほど小さくなる一方で、限界通気量を一定としたとき、温度が高くなるに伴い小さくなり、温度が低くなるに伴い大きくなる。
【0093】
次に
図9を参照して、再生空気量を決定するための処理について説明する。第2実施形態における再生空気量を決定するための処理は、第1実施形態の処理のステップS110~S112、ステップS114~ステップS116と共通とするので詳細な説明を省略する。
【0094】
ステップS120において、ECU80は、温度センサ52が検出した圧縮乾燥空気の温度を取得する(ステップS120)。そして、ECU80は、取得した温度と、マップ110を用いて、標準再生空気量を取得する(ステップS114)。さらに、ECU80は、取得した温度とマップ111とを用いて、補正単位空気量(ステップS115)を取得する。そして、ECU80は、標準再生空気量、補正単位空気量、過不足係数とを用いて、再生空気量を算出する(ステップS116)。
【0095】
第2実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(5)ECU80は、圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度に応じて、再生動作で消費される再生空気量を設定する。圧縮空気の温度又は圧縮乾燥空気の温度が上昇すると、空気に含まれる水分量も多くなるため、空気に含まれる水分量の多さに応じて再生空気量を変更することにより、エアタンク30から空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給、及びフィルタ17の清浄化のいずれかを優先することができる。
【0096】
(6)空気の温度が低く、飽和水蒸気量が小さい場合には再生空気量を小さくすることにより、エアタンク30に貯留された圧縮乾燥空気の消費を抑制し、空気圧システムへの圧縮乾燥空気の供給を優先させることができる。また、空気の温度が高く、飽和水蒸気量が大きい場合には再生空気量を大きくしてフィルタ17の清浄化を優先させることができる。
【0097】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1実施形態では、再生過不足度に応じて再生空気量を決定したが、再生過不足度に応じて再生時間を決定してもよい。この場合、補正単位時間に過不足係数を乗算して補正再生時間を算出し、補正再生時間を標準となる再生時間に加算する。
【0098】
・第1実施形態では、再生過不足度に重み付け係数を乗算することによって過不足係数αを算出したが、過不足係数αとして、再生過不足度そのものを用いてもよい。この場合でも、再生の過不足に応じて、再生空気量を増大させたり減少させたりすることができる。
【0099】
・第1実施形態では、再生過不足度は、エアタンク30内の圧縮乾燥空気に含まれる水分の飽和度が、増加傾向にあるか減少傾向にあるかを示す指標であるとしたが、再生過不足度の代わりに湿度を指標として用いてもよい。また、再生過不足度の代わりにタンク含有水分量を指標として用いてもよい。
【0100】
・第1実施形態の再生過不足度は、数サイクルの間の平均値を用いてもよい。平均値が負の値であれば、エアタンク30内の水分量が上昇していると推定されるため、再生空気量が不足していると判断する。
【0101】
・第1実施形態では、コンプレッサ4の稼働率に応じてカットアウト圧を設定し、再生空気量を構成する標準再生空気量及び補正単位空気量をカットアウト圧に応じて設定した。この態様以外に、コンプレッサ4の稼働率と標準再生空気量及び補正単位空気量とを関連付けたマップ等を用いて、標準再生空気量及び補正単位空気量を設定してもよい。
【0102】
・第2実施形態では、温度に応じて標準再生空気量及び補正単位空気量を設定した。この態様以外に、温度に加え湿度を用いて標準再生空気量及び補正単位空気量を設定してもよい。又は湿度センサ51等が検出した湿度のみを用いて、標準再生空気量及び補正単位空気量を設定してもよい。
【0103】
・上記各実施形態では、エアタンク30の圧縮乾燥空気の湿潤状態が高い場合には、過不足係数を負の値として再生空気量を大きくし、エアタンク30の圧縮乾燥空気の湿潤状態が低い場合には、過不足係数を正の値として再生空気量を小さくした。この態様以外に、コンプレッサ4から送出される圧縮乾燥空気の湿潤状態や、外気の湿潤状態を用いて再生空気量を変化させてもよい。
【0104】
・再生空気量は、カットアウト圧と圧縮空気又は圧縮乾燥空気の温度とに基づいて決定されてもよい。この態様では、カットアウト圧、温度、及び標準再生空気量を対応付けたマップや、カットアウト圧、温度、及び補正単位空気量を対応付けたマップ等が用いられる。
【0105】
・上記各実施形態では、標準再生空気量を、補正単位空気量に過不足係数を乗算した補正量で補正して再生空気量を算出したが、マップ等から再生空気量を直接的に算出するようにしてもよい。この場合、マップは、カットアウト圧(又は温度)、圧縮乾燥空気の湿潤状態を示す指標、再生空気量を対応付けたものであってもよい。
【0106】
・上記各実施形態では、フィルタ17は、油分捕捉部を含むが、フィルタ17から油分捕捉部を省略してもよい。
・空気乾燥回路は、上記した構成のものに限られない。空気乾燥回路は、要は、除湿動作と再生動作とを実行できる構成であればよい。したがって、空気乾燥回路は、第2動作モード、第4動作モード~第6動作モードを必須の動作とするものではない。
【0107】
・上記各実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の車両に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システム10は、乗用車、鉄道車両等、他の移動体に搭載されてもよい。
【0108】
・ECU80は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、ECU80は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、ECU80は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0109】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…空気乾燥回路、12…供給回路、15…上流チェックバルブ、16…分岐通路、17…フィルタ、18…空気供給通路、19…下流チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26A…ガバナ、26B…アンロード制御弁、27…排出口としてのドレン排出口、30…貯留部としてのエアタンク、50…圧力センサ、51…湿度センサ、52…温度センサ、53…圧力センサ、80…ECU、80A…記憶部、E61~E67…配線。