(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】付加製造のための精密システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20241008BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20241008BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20241008BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20241008BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20241008BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20241008BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241008BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241008BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241008BHJP
C08F 2/46 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/295
B29C64/268
B29C64/393
C08G59/68
C08G65/18
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y70/00
C08F2/46
(21)【出願番号】P 2021532894
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 US2019065436
(87)【国際公開番号】W WO2020123479
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521165035
【氏名又は名称】インクビット, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INKBIT, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウェンチョウ
(72)【発明者】
【氏名】エリソン, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, デサイ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィディムス, キリル
(72)【発明者】
【氏名】マトゥシック, ウォーチエック
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221516(JP,A)
【文献】特開2016-087831(JP,A)
【文献】特表2017-528342(JP,A)
【文献】特表2017-537178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 70/00
C08G 59/68
C08G 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタと、光硬化性インクとを含む3D印刷システムであって、
前記インクジェットプリンタは、光学フィードバックスキャナと、噴射されたインクの光学フィードバックによりプリンタジェットからの材料の放出を制御するためのコントローラと、を含み、
前記インクは、光硬化性のカチオン重合性成分と、光増強成分とを含むことを特徴とする3D印刷システム。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタは、前記光硬化性インクを装填された印刷ヘッドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
材料の層の堆積間に前記カチオン重合性成分を硬化させるように構成されたUVランプをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
非接触フィードバック手法を用いた3D印刷によるオブジェクトの製造方法であって、以下の方法:
カチオン重合性の光硬化性材料を含むインクを選択的に噴射し、オブジェクトの層を形成すること;
光重合によって前記光硬化性材料を硬化させること;
前記硬化の少なくとも一部が行われた後、部分的に硬化した前記光硬化性材料を光学的に検出すること;
前記インクをさらに選択的に噴射し、前記オブジェクトの後続の層を形成すること;および
前記検出によって生成された検出データに従って、前記さらなる噴射を修正すること;
を含
み、
前記インクを選択的に噴射することは、カチオン重合性成分と光増強成分とを堆積することを含む方法。
【請求項5】
非接触フィードバック手法を用いた3D印刷によるオブジェクトの製造方法であって、以下の方法:
カチオン重合性の光硬化性材料を含むインクを選択的に噴射し、オブジェクトの層を形成すること;
光重合によって前記光硬化性材料を硬化させること;
前記硬化の少なくとも一部が行われた後、部分的に硬化した前記光硬化性材料を光学的に検出すること;
前記インクをさらに選択的に噴射し、前記オブジェクトの後続の層を形成すること;および
前記検出によって生成された検出データに従って、前記さらなる噴射を修正すること;
を含
み、
後続の層は、先に形成された層の前記光硬化性材料が部分的に硬化されるときに形成さ
れ、
前記インクを選択的に噴射することは、カチオン重合性成分と光増強成分とを堆積することを含む方法。
【請求項6】
前記光増強成分は、スチルベン又はチオフェンの材料を含む、請求項
4または5に記載の方法。
【請求項7】
カチオン重合性成分を堆積することは、光酸発生剤(PAG)を堆積することを含む、請求項
4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン重合性成分は、エポキシ官能基を有する分子、オキセタン官能基を有する分子、ビニル官能基を有する分子又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エポキシ官能基を有する分子は、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシ架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記エポキシ官能基を有する分子は、2,3-エポキシプロピルフェニルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、(3-4-エポキシシクロヘキサン)メチル3’-4’-エポキシシクロヘキシル-カルボキシレート、ビス(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル)アジペート、変性ビスフェノールA液体エポキシ樹脂及びビスフェノールFエポキシ樹脂からなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記オキセタン官能基を有する分子は、オキセタンモノマー、オキセタンオリゴマー、オキセタン架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記オキセタン官能基を有する分子は、3-エチル-3-(メタクリロイルオキシ)メチルオキセタン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-シクロヘキシルオキシメチル-オキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチル-オキセタン及び3-エチル-[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタンからなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記ビニル官能基を有する分子は、ビニルモノマー、ビニルオリゴマー、ビニル架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
前記ビニル官能基を有する分子は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル及びN-ビニル-カプロラクタムからなる群から選択される、請求項
8に記載の方法。
【請求項15】
前記光酸発生剤は、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]、-エタノン,1,1’-(1,3-プロパンジイルビス(オキシ-4,1-フェニレン))ビス(2,2,2-トリフルオロ-,1,1’-ビス(O-(プロピルスルホニル)オキシム)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(99%min)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(99%min)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート(99%min)、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(9%min)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(λmax233nm)、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax242nm)、(4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax260nm)、(4-ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax262nm)、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax298nm)、(4-フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax256nm)、スルホニウムテトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレート及びプロピレンカーボネート中のヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-,ヘキサフルオロホスフェート(1-)の75%溶液からなる群から選択される、請求項
7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光酸発生剤は、前記光硬化性材料の全重量を基準として0.1%~10%である、請求項
7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記光酸発生剤は、前記光硬化性材料の全重量を基準として0.5%~5%である、請求項
7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記光硬化性材料の機械的、熱的及び/又は光学的性質を高める粒子を堆積することをさらに含む、請求項4~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
界面活性剤を前記光硬化性材料とともに堆積することをさらに含む、請求項4~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
増感剤を堆積することをさらに含む、請求項4~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記光硬化性材料を検出することは、印刷される物体の表面をキャプチャすることを含む、請求項4~
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記光硬化性材料を検出することは、印刷される物体の体積データ又はトモグラフィーデータをキャプチャすることを含む、請求項4~
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記さらなる噴射を修正することは、前記検出によって生成された検出データにしたがって前記さらなる噴射を修正するための能動的フィードバックループを使用することを含む、請求項4~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記さらなる噴射を修正することは、印刷される物体の表面の測定に基づく、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる噴射を修正することは、印刷される物体の体積データ/トモグラフィーデータの測定を使用する、請求項
23に記載の方法。
【請求項26】
印刷プラットフォーム又は印刷チャンバーを加熱し、それにより光硬化性材料の硬化を加速させることをさらに含む、請求項4~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
非一時的機械可読媒体上に記憶された命令を含むソフトウェアであって、前記命令の実行は、請求項4~
26のいずれか一項に記載の方法の制御を引き起こす、ソフトウェア。
【請求項28】
請求項4~
26のいずれか一項に記載の3D印刷のための方法に使用するための光硬化性材料を提供することを含む方法。
【請求項29】
請求項4~
26のいずれか一項に記載のすべてのステップを行うように構成された3D印刷システム。
【請求項30】
請求項4~
17のいずれか一項に記載のすべてのステップを行うように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される、2018年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/777,422号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、付加製造に使用される精密な方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
3D印刷とも呼ばれる付加製造は、一般に、所望の3D仕様、例えばソリッドモデルに適合するコンピュータ制御された方法によって部品を製造する、比較的広い分類の技術を意味する。多数の異なる種類の材料がこのような3D印刷に使用されており、種々の材料で種々の製造技術の対応する利点及び/欠点が得られる。例えば、材料の概説は、Ligon et al.“Polymers for 3D printing and customized additive manufacturing.”Chemical reviews 117,no.15(American Chemical Society,2017),pp.10212-10290に見ることができる。
【0004】
製造技術の種類の1つでは、インクジェット印刷技術を用いて、部分的に製造された物体上に、堆積するための材料が噴射される。噴射される材料は、典型的には、堆積された直後にUV硬化され、硬化材料の薄層を形成する。アクリレートが一般に使用され、迅速な硬化及び硬質の材料を提供する。精密な製造を実現するために、いくつかの技術は、正確な層間構造を維持するために、例えば表面形状を制御するための機械的ローラー又は「プラナライザー」を使用する機械的手法を使用し、それにより製造された物体の精度を制御する。したがって、平坦化を可能にし、正確に製造された物体を得るために、迅速な硬化が重要な特徴となる。
【0005】
しかし、このようなインクを用いて得られる材料の特性が不十分となる場合がある。本発明は、この欠点を克服することを意図している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、インクジェットプリンタを用いた付加プロセスで製造される正確な物体の材料特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、一般に、精密付加製造の手法は、部分的に製造された物体の走査に基づいて後続の層の噴射を制御するために使用される非接触(例えば、光学的)フィードバック手法と合わせてカチオン性組成物の噴射を使用する。
【0008】
3D製造に使用されている組成物の種類の1つは、例えば、エポキシド及びビニルエーテルなど、紫外(UV)活性化光酸発生剤(PAG)を使用するカチオン性組成物である。例えば、このような組成物は、バット光重合技術に使用されている。カチオン性組成物の使用は、結果として得られる材料特性において特定の利点を有し得る。これらの性質の一部は、UV活性化後の比較的長い硬化時間と関連し得る。
【0009】
しかし、このような組成物は、付加製造のためのインクジェットプリンタでの使用に不適切である。遅い硬化は、2Dインクジェット印刷には許容できるが、現在のインクジェットプリンタを用いて行われる特定の付加プロセスに適合していない。実際、その遅い硬化の場合、製造物体の欠陥、低い精度又はプリンタの汚れを引き起こすことなく、堆積されたUV硬化性カチオン性インクの平坦化を行うことができない。例えば、ローラー又はプラナライザーを用いた機械的表面制御は、このような表面制御を行う必要が生じる時点では、表面が十分な硬化状態でないために実現できない。UV硬化性カチオン性インクは、噴射式付加製造に適切な他の製造材料の場合と同様に、走査中に材料から不適切な光信号強度が伝播し得るため、光学式走査に直接的に適していない。
【0010】
別の態様では、一般に、3D印刷システムは、インクジェットプリンタと、UV硬化性インクとを含み、インクジェットプリンタは、光学フィードバックスキャナ及び噴射されたインクの光学フィードバックによりプリンタジェットからの材料の放出を制御するためのコントローラも含み、そして、インクがUV硬化性カチオン性化合物を含むことを特徴とする。好ましくは、インクは、部分的に製造された物体を形成する放出材料の表面及び/又は本体の性質を正確に検出するための光学フィードバックスキャナの能力を改善するための光増強成分をさらに含む。
【0011】
別の態様では、一般に、3D印刷のための方法は、光硬化性材料を前記材料の硬化前に選択的に堆積することと、その後、前記材料の少なくとも一部の硬化後、堆積された光硬化性材料を検出することとを含む。その後、前記材料のさらなる選択的堆積は、その検出によって制御される。
【0012】
態様は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。
【0013】
堆積された材料の検出は、材料が部分的に硬化される(例えば、50%未満が硬化される)ときに行われる。
【0014】
後続の層は、先に堆積された層の材料が部分的に硬化される(例えば、50%未満が硬化される)ときに堆積される。
【0015】
光硬化性材料を選択的に堆積することは、カチオン重合性成分を堆積することを含む。
【0016】
光硬化性材料を選択的に堆積することは、光増強成分を堆積することを含む。
【0017】
カチオン重合性成分を堆積することは、光酸発生剤(PAG)を堆積することを含む。
【0018】
カチオン重合性成分は、エポキシ官能基を有する分子、オキセタン官能基を有する分子、ビニル官能基を有する分子又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
エポキシ官能基を有する分子は、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシ架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0020】
エポキシ官能基を有する分子は、2,3-エポキシプロピルフェニルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、(3-4-エポキシシクロヘキサン)メチル3’-4’-エポキシシクロヘキシル-カルボキシレート、ビス(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル)アジペート、変性ビスフェノールA液体エポキシ樹脂及びビスフェノールFエポキシ樹脂からなる群から選択される。ビスフェノールA/F又はフェノールノバラックをベースとするエポキシ樹脂は、性質を変化させるために、それぞれの製造業者により独自の方法で変性されることが多い。これらの一般名のCAS番号は、以下の通りである:エポキシフェノールノバラック-0028064-14-4;ビスフェノールAジグリシジルエーテル-1675-54-3;及びビスフェノールFジグリシジルエーテル-2095-03-6。
【0021】
オキセタン官能基を有する分子は、オキセタンモノマー、オキセタンオリゴマー、オキセタン架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0022】
オキセタン官能基を有する分子は、ETERNACOLL(登録商標)OXBP、3-エチル-3-(メタクリロイルオキシ)メチルオキセタン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-シクロヘキシルオキシメチル-オキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチル-オキセタン及び3-エチル-[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタンからなる群から選択される。
【0023】
ビニル官能基を有する分子は、ビニルモノマー、ビニルオリゴマー、ビニル架橋剤又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
ビニル官能基を有する分子は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル及びN-ビニル-カプロラクタムからなる群から選択される。
【0025】
光酸発生剤は、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]、-エタノン,1,1’-(1,3-プロパンジイルビス(オキシ-4,1-フェニレン))ビス(2,2,2-トリフルオロ-,1,1’-ビス(O-(プロピルスルホニル)オキシム)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(99%min)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(99%min)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート(99%min)、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート(9%min)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(λmax233nm)、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax242nm)、(4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax260nm)、(4-ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax262nm)、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax298nm)、(4-フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(λmax256nm)、高分子量スルホニウムテトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレート及びプロピレンカーボネート中のヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-,ヘキサフルオロホスフェート(1-)の75%溶液からなる群から選択される。
【0026】
光酸発生剤は、好ましくは、材料の0.1重量%~10重量%である。
【0027】
光酸発生剤は、より好ましくは、材料の0.5重量%~5重量%である。
【0028】
この方法は、光硬化性材料の機械的、熱的及び/又は光学的性質を高める粒子を堆積することをさらに含む。
【0029】
この方法は、界面活性剤を光硬化性材料とともに堆積することをさらに含む。
【0030】
この方法は、防止剤を光硬化性材料とともに堆積することをさらに含む。
【0031】
この方法は、増感剤を堆積することをさらに含む。
【0032】
堆積された材料を検出することは、印刷される物体の表面をキャプチャすることを含む。
【0033】
堆積された材料を検出することは、印刷される物体の体積データ又はトモグラフィーデータをキャプチャすることを含む。
【0034】
さらなる選択的堆積を制御することは、検出によって生成された検出データにより、さらなる選択的堆積を修正するための能動的フィードバックループを使用することを含む。
【0035】
さらなる選択的堆積を修正することは、印刷される物体の表面の測定に基づく。
【0036】
さらなる選択的堆積を修正することは、印刷される物体の体積データ/トモグラフィーデータの測定を使用する。
【0037】
この方法は、印刷プラットフォーム又は印刷チャンバーを加熱し、それにより光硬化性材料の硬化を加速させることをさらに含む。
【0038】
別の態様では、一般に、ソフトウェアは、非一時的機械可読媒体上に記憶された命令を含み、これらの命令は、プロセッサによって実行されると、前述の方法のいずれかの制御を引き起こす。
【0039】
別の態様では、一般に、方法は、前述のいずれかの方法に使用するための光硬化性材料を提供することを含む。
【0040】
別の態様では、一般に、3D印刷システムは、前述の方法のいずれかのすべてのステップを行うように構成される。
【0041】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明及び請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】カチオン性光硬化性材料を用いた「犬の骨」型印刷製品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の説明は、例えば、
図1に示される噴射をベースとする3Dプリンタ100を用いた付加製造に関する。プリンタ100は、部分的に製造された対象の層の上に堆積する材料を放出するために、ジェット120(インクジェット)を使用する。
図1に示されるプリンタでは、物体は、造形プラットフォーム上で製造され、この造形プラットフォームは、連続層を形成するラスター状パターンであるジェットに対して移動するように制御され、この例では、ジェットと、部分的に製造された物体の表面との間で所望の間隔を維持するためにもジェットに対して移動するように制御される。図示されるように、複数のジェット122、124が存在し、1つのジェット122は、物体の支持構造142を形成するための支持材料を放出するために使用され、別のジェット124は、物体144自体を形成するための造形材料を放出するために使用される。紫外照射などの励起信号によって硬化が開始する材料の場合、硬化信号発生器170(例えば、UVランプ)により、物体上に噴射された直後の材料の硬化が開始する。別の実施形態では、複数の異なる材料を使用することができ、例えばそれぞれの材料に別々のジェットが使用される。さらに別の実装形態では、励起信号(例えば、光、RFなど)が必ずしも使用されず、むしろ、硬化は、化学的に開始し、例えば噴射前に複数の成分を混合することにより、又は別々の成分を噴射し、それらが混合され、物体上で硬化が開始することにより開始する。いくつかの例では、付加堆積の終了後、例えば物体をUV放射線にさらに曝露することにより、物体のさらなる硬化(例えば、硬化を完了させること)を行うことができることに留意されたい。
【0044】
表面形状(例えば、部分的に製造された物体厚さ/深さを特徴付ける深さマップ)、表面下(数十又は数百の堆積層を含む表面付近など)の特性の1つ以上を含む、部分的に製造された物体の物理的特性を求めるためにセンサ160が使用される。検出できる特性としては、材料の密度、材料の識別及び硬化状態の1つ以上を挙げることができる。光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、レーザープロフィロメトリー及び/又は異なる材料の区別に使用できるマルチスペクトル光学検出などの様々な種類の検出を使用することができる。図示されるプリンタでは、センサは、放出(例えば、蛍光)及び/又は物体に出入りする反射、散乱又は吸収を引き起こすことができる信号を出力する。センサ出力信号は、物体の上部(すなわち最も後に堆積された部分)から得ることができる一方、いくつかの実施形態では、センサ出力信号は、物体の下又は別の方向から到来する場合もある。
【0045】
インクジェット技術を使用する精密付加製造には、従来使用されてきた機械的手法を必要とすることなく、物体構造が正確に実現されるように材料の堆積を適合させるために、光学式走査に基づくフィードバックの使用が導入されている。例えば、このような光学フィードバック技術は、米国特許第10,252,466号明細書「Systems and methods of machine vision assisted additive fabrication」及び米国特許第10,456,984号明細書「Adaptive material deposition for additive manufacturing」(これらは、参照により本明細書に援用される)に記載されている。しかし、おそらく光学フィードバックを用いて得られる精度が実現されない方法又は迅速に硬化するインクを伴う機械的手法を使用する手法が比較的単純であるため、光学フィードバックに基づくプリンタは、商業的に普及した3D印刷手法ではない。さらに、噴射式付加製造に適した多くの製造材料は、走査中に材料から不十分な光学信号強度が伝播し得るため、光学式走査に直接的に適していない。例えば、材料は、本来、実質的に透明な場合があり、製造される物体の正確な特性決定を行うためのキャプチャに適した入射光を反射しない場合がある。しかし、製造材料中に光増強成分を適切に混入すると、堆積されている材料を走査する能力を高めることができる。適切な光増強成分に関するさらなる詳細は、2019年11月1日に出願された「Optical Scanning for Industrial Metrology」という名称の同時係属中の国際出願PCT/米国特許出願公開第19/59300号明細書(参照により本明細書に援用される)に見ることができる。
【0046】
製造される物体の表面形状を制御するために接触を必要としないことにより、この手法は、カチオン性組成物の比較的遅い硬化を許容しながら、製造プロセス中のフィードバックによる堆積プロセスの制御の利点を維持する。この手法は、精密な物体を製造し、且つ製造される物体の材料特性から、例えば少なくとも部分的に遅い硬化の結果であり得る等方性及び従来の噴射されるアクリレートを使用して達成することができない可撓性構造で利益を得るための方法を提供する。さらに、走査後に進行する硬化により、例えば収縮のために、部分の形状が変化し得る場合、予測技術(例えば、2019年11月2日に出願された「Intelligent Additive Manufacturing」という名称の同時係属出願の国際出願PCT/米国特許出願公開第19/59567号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるような機械学習手法の使用)を、そのような変化を予測するための制御プロセスに使用することができ、カチオン性組成物を精密噴射製造手法にさらに適合させることができる。
【0047】
コントローラ110は、製造される物体のモデル190を用いることで、モーションアクチュエータ150(例えば、3つの運動度が得られる)を用いた造形プラットフォーム130の動きを制御し、センサ160によって測定される物体の特性の非接触フィードバックにより、ジェット120からの材料の放出を制御する。フィードバック配列を使用すると、噴射に固有の予測不可能な側面(例えば、ジェットオリフィスの詰まり)と、例えば噴射された材料の流動、混合、吸収及び硬化などの堆積後の予測不可能な材料変化とを補償することにより、精密な物体を製造することができる。
【0048】
図1に示されるプリンタは、単に一例であり、使用可能な別のプリンタ配置は、例えば、米国特許第10,252,466号明細書「Systems and methods of machine vision assisted additive fabrication」、米国特許第10,456,984号明細書「Adaptive material deposition for additive manufacturing」、米国特許出願公開第2018/0056582号明細書「System,Devices,and Methods for Injet-Based Three-Dimensional Printing」及びSitthi-Amorn et al.“MultiFab:a machine vision assisted platform for multi-material 3D printing.”ACM Transactions on Graphics(TOG)34,no.4(2015):129に記載されている。
【0049】
図1に示される種類の印刷システムでは、様々な種類の材料を使用することができる。本明細書の説明の残りの部分は、ある種類の材料、特にカチオン重合プロセスを用いて液体から固体に相が変化するUV硬化性でインクジェット印刷可能なマトリックス材料に重点を置いている。この方法は、UV硬化性樹脂が堆積され、次にUV光を用いて硬化される前述の概略の種類のインクジェットベースの付加製造に使用することができる。一実施形態では、UV硬化樹脂の組成物は、カチオン重合性成分と、光酸発生剤(PAG)との成分を含む。本発明の一実施形態によると、カチオン重合性成分は、エポキシ官能基を有する分子、オキセタン官能基を有する分子、ビニル官能基を有する分子又はそれらの組み合わせである。
【0050】
さらに、カチオン重合性成分が、エポキシ官能基を有する分子である本発明の実施形態によると、種々の実施形態の分子は、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシ架橋剤又はそれらの任意の組み合わせである。表1は、エポキシ官能基を有するカチオン重合性分子のいくつかを列挙しているが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0051】
【0052】
さらに、本発明の種々の実施形態によると、カチオン重合性成分は、オキセタン官能基を有する分子である。オキセタン官能基を有する分子は、オキセタンモノマー、オキセタンオリゴマー、オキセタン架橋剤又はそれらの任意の組み合わせである。表2は、オキセタン官能基を有するカチオン重合性分子のいくつかを列挙しているが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0053】
【0054】
さらに、本発明の種々の実施形態によると、カチオン重合性成分は、ビニル官能基を有する分子である。ビニル官能基を有する分子は、ビニルモノマー、ビニルオリゴマー、ビニル架橋剤又はそれらの任意の組み合わせである。ビニル官能基を有する分子のいくつかの実施形態は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、N-ビニル-カプロラクタムなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の種々の実施形態によると、カチオン重合性組成物は、光酸発生剤(PAG)を含む。光酸は、光を吸収すると酸性がより強くなる分子である。この変換は、光会合による強酸の形成又は光会合によるプロトンの解離のいずれかによるものである。照射によってプロトンを放出する分子には、2つの主要な種類の光酸発生剤(PAGs)及び光酸(PAHs)が存在する。PAGは、不可逆的なプロトン光解離が起こる。
【0056】
表3は、PAGのいくつかの実施形態を示す。
【0057】
【0058】
PAGの種々の実施形態によると、配合物中のPAGの含有量は、0.1重量%~10重量%の範囲内である。さらに、配合物中のPAGの含有量は、0.5重量%~5重量%の範囲内である。種々の実施形態によると、増感剤が加えられる。増感剤は、カチオン性反応の開始を促進するPAG以外の物質であり、増感剤のいくつかの例は、ITX、CPTX、UVS 1101などである。
【0059】
UV硬化性で印刷可能なマトリックス材料の上記成分に加えて、種々の実施形態では、組成物は、材料の機械的、熱的及び/又は光学的性質を高める粒子を含む。いくつかの実施形態では、材料のスペクトル特性を変化させるナノスケール粒子が加えられる。例えば、4~6%のNanomer I.28E-BR(Nanocor LLC製)を配合物中に加えると、結果として得られる印刷可能な物体の難燃性及び耐熱性を改善することができる。いくつかの実施形態では、光学特性を変化させるために顔料又は染料が加えられる。例えば、0.5重量%のMagenta DPGDA Dispersion(Penn Color製)を配合物中に加えると、赤色の印刷物が得られる。
【0060】
種々の実施形態における組成物への別の添加剤としては、増感剤、界面活性剤、防止剤及び他の構造フィラーが挙げられる。粒子状物質がフィラーとして使用される場合、フィラー粒子のサイズは、ノズルサイズの1/20未満、理想的には1ミクロン未満となるべきことに留意すべきである。
【0061】
印刷可能なマトリックス材料の第1の層の吐出は、一実施形態では、1つ以上のインクジェット分配装置を用いて行われる。第2の流体の吐出も1つ以上のインクジェット分配装置を用いて行われる。この分配は、典型的には、室温又はその付近及び100℃未満で行われる。第1の流体及び第2の流体は、一実施形態では、カチオン重合性で印刷可能なマトリックス材料であり、いくつかの実施形態では、第1の流体及び第2の流体は、同じ印刷可能なマトリックス材料であり;いくつかの実施形態では、第2の流体は、フリーラジカル重合性の印刷可能なマトリックス材料などの異なる種類のインクの印刷可能なマトリックス材料であり;いくつかの別の実施形態では、第2の流体は、溶媒系の印刷可能なマトリックス材料などの別の種類の印刷可能なマトリックス材料である。さらなる印刷可能なマトリックス材料が別の実施形態では支持材料として使用される。
【0062】
付加製造システムでは、印刷中の造形プラットフォームと、印刷された物体とを画像化する検出装置が使用される。この画像化システムは、印刷される1つ以上の物体の空間寸法、3D表面、3D体積又は材料を測定する。これらの測定で得られるデータに基づき、それに応じて次の層の印刷データを適応させる/修正する。
【0063】
前述のように、製造材料(「インク」)は、好ましくは、光増強成分(「ブライトナー」)を含み、これは、付加製造中の材料からの光学(又は別の電磁)放出を発生させて光学式走査を改善するか若しくはその放出の強度を増加させるか、又は他の方法で特性(例えば、強度、スペクトル成分など)に影響を与える。材料からの信号の「放出」は、限定するものではないが、材料中の信号の反射若しくは散乱、材料を通過した信号の減衰、材料中の蛍光若しくは発光又はこのような効果の組み合わせのいずれかによって生じるあらゆる形態の信号(すなわち電磁放射)の伝播を意味し、放出された信号の「走査」は、伝播した信号のあらゆる形態の検出及び/又は処理を意味する。いくつかの例では、この手法では、産業用計測学の光学式走査において、光学放出を引き起こすか若しくは受信信号強度を増加させ、且つ/又は受信した信号対雑音比を改善する添加剤(又は複数の添加剤の組み合わせ)が利用される。蛍光、散乱又は発光を増加させるために、製造に使用される材料中に本来存在しない元素が添加剤中に導入される。このような添加剤としては、小分子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、金属又は半導体のナノ粒子及びシリケートナノ粒子の1つ以上を挙げることができる。製造中に堆積された複数の材料が存在する場合、それぞれの材料が異なる光増強成分(又はこれらの成分の組み合わせ)を含むことができ、これによってそれらを走査中に区別することが可能となる。例として、光増強成分は、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)などのスチルベン類の材料又は2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾールなどのチオフェン類の材料を含む。
【0064】
さらに、付加製造システムは、機械視覚を介した機械学習及びフィードバックの1つ以上を用いることによって処理能力を有する。例えば、修正3Dモデルを生成するために、印刷される部分の3Dモデルに対して変換が適用される。この変換は、例えば、米国特許出願公開第16/672,711号明細書「Intelligent Additive Manufacturing」に記載されるように、収縮、混合及び又は流動などの印刷プロセス中の少なくとも一部の特性を補償するために、構成データを用いて補正される。
【0065】
付加製造システムには、分配されたカチオン重合性で印刷可能なマトリックス材料を硬化させるための光源が取り付けられ;種々の実施形態では、光源は、LED、LEDアレイ、水銀ランプなどである。光源の出力スペクトルは、配合中に使用される光開始剤の吸収ピークと重なるべきである。いくつかの実施形態では、付加製造システムには、噴射された材料の重合を加速させるための発熱要素が取り付けられる。例えば、内部造形体積を印刷時間全体中に加熱することができる。別の実施形態における発熱要素は、印刷される物体に所望の間隔で取り付けられる。種々の実施形態における発熱要素は、ヒーター、セラミックヒーター及び送風機である。別の実施形態では、赤外性によって熱を発生させる。
【0066】
代わりに、種々の実施形態では、印刷された物体の性質を改善するために後処理ステップが行われる。一実施形態では、後処理は、完成印刷物を光に曝露することを含む。この後処理は、薄い物体又はより大きい物体の外層に適している。
【0067】
別の実施形態では、後処理は、印刷された物体を熱放射に曝露することを含む。例えば、印刷された物体は、制御された温度の熱オーブン中にある時間にわたって入れられる。さらに、別の実施形態における印刷された物体は、プログラムされた温度で後処理され、例えば80℃で2時間、次に100℃で後処理される。
【0068】
カチオン性光重合性組成物の一実施形態を表4に列挙する。
【0069】
【0070】
この組成物の調製は、40gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、30gのOmnilane OC 2005、30gのErisys GE-13及び1gのIrgacure 290(光開始剤として)を200mlのアンバーボトルに加えることで開始する。この結果得られる混合物を、固体(Irgacure 290)が完全に溶解し、均一な溶液が得られるまで磁気撹拌子で撹拌する。
【0071】
組成物の流体特性を表5に示す。一般に、印刷用材料は、噴射温度において3~20cps、より理想的には噴射温度において5~15cpsの粘度を有する。噴射中の粘度の変化は、2cps未満となるべきである。さらに、印刷用材料は、噴射温度において15~40mN/mの表面張力を有する。
【0072】
【0073】
組成物の機械的性質を求めるために、ASTM D638 accomplicanceの犬の骨(
図3)を印刷し、3つの異なる条件:(1)90℃で1時間(EPX1-aと示される);(2)90℃で2時間(EPX1-bと示される);(3)90℃で2時間及び120℃で2時間(EPX1-cと示される)で後硬化させ、後硬化後のそれらの機械的性質を試験した。
図3は、カチオン性光硬化性マトリックス材料を用いて印刷した試料の3D物体を示す。印刷プロセスでは、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)スキャナを用いた閉フィードバックループを使用して、フィードバック印刷ループのための正確な測定値を得た。印刷データは、OCTスキャナによって取得した体積データに基づいて印刷プロセス中に修正した。機械的性質を表6に示す。
【0074】
【0075】
多数の実装形態について説明してきた。しかしながら、本開示の意図及び範囲から逸脱することなく種々の修正形態がなされ得ることが理解されるであろう。例えば、順序の変更、追加又は除去を行ったステップを用いて、前述の種々の形態の材料を使用することができる。したがって、他の実装形態は、以下の請求項の範囲内である。
【0076】
本明細書に示される例は、本開示の可能性がある特定の実装形態を説明することが意図される。これらの例は、当業者に対する本発明の説明が主として意図される。これらの例の1つ以上の特定の態様は、必ずしも本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【0077】
本発明の図及び説明は、本発明の明確な理解に適切である要素を説明するために簡略化されており、明確にするために他の要素を省いている。しかし、当業者が認識し得るように、これらの種類の集中した議論により、本開示のよりよい理解が進むものではなく、したがって、これらの要素のより詳細な説明は、本明細書に示されない。
【0078】
他に示されるのでなければ、本明細書及び請求項で使用される長さ、幅、深さ又は他の寸法などを表すすべての数値は、すべての場合において、正確な値で示される場合と、「約」という用語で修飾される場合との両方で示されるものと理解すべきである。本明細書において使用される場合、「約」という用語は、公称値から±10%のばらつきを意味する。したがって、逆のことが示されるのでなければ、本明細書及び添付の請求項に記載の数値パラメータは、得ようとする望ましい性質によって変動し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものではないが、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数値を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。任意の特定の値は、20%だけ変動し得る。
【0079】
本発明の多数の実施形態を説明してきた。しかしながら、以上の記述は、説明を意図したものであり、以下の請求項の範囲によって規定される本発明の範囲の限定を意図したものではないことを理解すべきである。したがって、別の実施形態も以下の請求項の範囲内となる。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修正形態がなされ得る。さらに、前述のステップの一部は、順序とは無関係である場合があり、したがって記載の順序と異なる順序で行うことができる。