(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241008BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20241008BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20241008BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C07F7/18 X
C07F7/10 W
C07F7/08 X
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021538676
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 US2019068727
(87)【国際公開番号】W WO2020142372
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィスク、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクォ
(72)【発明者】
【氏名】サティオサッダーム、ムハンザン
(72)【発明者】
【氏名】テルゲンホフ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィ、トゥ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097154(JP,A)
【文献】特開2018-043938(JP,A)
【文献】特表2018-531997(JP,A)
【文献】米国特許第04940766(US,A)
【文献】国際公開第2018/111458(WO,A1)
【文献】特開2018-177918(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082601(WO,A1)
【文献】ACS Symposium Series,2013年,59-78,Progress in Silicones and Silicone-Modified Materials, ISSN: 0097-6156
【文献】Synthesis and Reactivity in Inorganic, Metal-Organic, and Nano-Metal Chemistry,2014年,44,514-522
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法であって、前記方法が、
(A)1つのアルコール基を有する初期有機ケイ素化合物および(B)アクリレート化合物を、式M[RC(O)CHC(O)R]
4を有する(C)触媒の存在下で反応させることであって、式中、Mが、第IV族遷移金属であり、各Rが、独立して選択される置換または非置換ヒドロカルビル基であり、それによって、前記アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する、反応させること、を含み、前記反応が、減圧下で行われ、前記初期有機ケイ素化合物(A)が、モノヒドロキシ官能性であ
り、
前記初期有機ケイ素化合物(A)が、以下の式を有し、
[R
3
3
SiO
1/2
]
a
[R
3
2
SiO
2/2
]
b
[R
3
SiO
3/2
]
c
[SiO
4/2
]
d
式中、各R
3
が、置換または非置換ヒドロカルビル基および線状または分岐状シロキシ基から独立して選択されるが、但し、1つのR
3
が、アルコール基を含み、下付き文字a、b、c、およびdが、各々、a+b+c+d=1となるようなモル分率であるが、但し、a+b+c>0であり、
前記アクリレート化合物(B)が、以下の式を有し、
【化1】
式中、R
1
が、HもしくはCH
3
であり、R
2
が、CH
3
、CH
2
CH
3
、もしくはCH
2
(CH
2
)
2
CH
3
である、方法。
【請求項2】
前記触媒(C)において、(i)Mが、ZrまたはHfであるか、(ii)各Rが、独立して、CH
3もしくはCH
2CH
3であるか、または(iii)(i)および(ii)の両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)前記初期有機ケイ素化合物(A)および前記アクリレート化合物(B)が、0.1~20の(A):(B)のモル比で反応するか、(ii)前記初期有機ケイ素化合物(A)および前記アクリレート化合物(B)が、25~180℃の温
度で反応するか、(iii)前記触媒(C)が、成分(A)、(B)、および(C)の合計量に基づいて、0.05~10モル%の量で前記反応に利用されるか、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期有機ケイ素化合物(A)および前記アクリレート化合物(B)が、(D)重合防止剤の存在下で反応する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合防止剤(D)が、(i)ラジカル捕捉剤、(ii)酸化防止剤、(iii)光安定剤、(iv)UV吸収剤、または(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記初期有機ケイ素化合物(A)および前記アクリレート化合物(B)を反応させることが、前記アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を形成し、前記方法が、前記反応生成物から前記アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することをさらに含む、請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応生成物が、前記初期有機ケイ素化合物(A)および前記アクリレート化合物(B)を反応させることによって形成された有機アルコールをさらに含み、前記方法が、前記反応生成物から前記有機アルコールを除去することをさらに含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2018年12月31日に出願された米国仮特許出願第62/786,953号に対する優先権およびそのすべての利点を主張する。
【0002】
本発明は、概して、有機ケイ素化合物に関し、より具体的には、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法、およびそれによって調製されたアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ケイ素材料は、当技術分野において既知であり、多種多様の最終用途および環境において利用されている。例えば、それによって調製された有機ポリシロキサンは、多くの産業、ホームケア、およびパーソナルケア配合物に利用されている。シリコーンおよび有機官能性の両方を有するハイブリッド材料のそのような配合物における利用が増加しており、その結果、そのようなハイブリッド材料は、従来はシリコーン材料または有機材料のみに関連付けられていた利益の組み合わせを呈し得る。しかしながら、ハイブリッド材料を調製する多くの方法は、官能性有機ケイ素化合物を必要とし、これは、多くの場合、合成および/または利用することが困難である。特に、ある特定の官能性有機ケイ素化合物を調製する従来の方法は、生成中に容易に管理されない毒性の問題を有する触媒に依存している。残念ながら、そのような毒性触媒の使用を最小化または回避する従来の試みは、多くのシリコーン材料と相溶性がない場合が多く(例えば、シリコーン転位の促進、非選択的反応、分解、官能基の加水分解などを介して)、収率および純度の低下をもたらし、そのような手法の一般的な適用性が限定される。
【発明の概要】
【0004】
アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法が提供される。方法は、(A)初期有機ケイ素化合物および(B)アクリレート化合物を、(C)触媒の存在下で反応させることを含む。初期有機ケイ素化合物(A)は、1つのアルコール官能基を有する。触媒(C)は、式M[RC(O)CHC(O)R]4を有し、式中、Mは、第IV族遷移金属であり、各Rは、独立して選択される置換または非置換ヒドロカルビル基である。
【0005】
本方法によって調製されたアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法が開示される。
【0007】
調製されたアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物は、多様な最終用途において利用され得る。例えば、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物は、例えば、共重合、グラフト化などを介して、シリコーン-有機ハイブリッド材料を調製する場合の出発成分として利用され得る。
【0008】
方法は、(A)初期有機ケイ素化合物および(B)アクリレート化合物を、(C)触媒の存在下で反応させることを含む。初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)を反応させることは、一般に、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)を、触媒(C)の存在下で組み合わせることを含む。別の言い方をすると、一般に、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)を、触媒(C)の存在下で組み合わせることの他に、反応に必要な事前工程はない。当業者によって理解されるように、反応は、エステル交換反応として定義され得るか、またはそうでなければ、エステル交換反応として特徴付けられ得る。
【0009】
初期有機ケイ素化合物(A)は、1つのアルコール基を有する有機ケイ素化合物であり(すなわち、モノヒドロキシル官能性である)、他の点では特に限定されない。
【0010】
いくつかの実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(I)を有し、
【化1】
、
式中、Xは、二価の連結基であり、各R
3は、ヒドロカルビル基およびシロキシ基から独立して選択される。
【0011】
一般に、Xは、二価の連結基であり、線状または分岐状および置換または非置換であり得る。分岐状の場合、Xは、任意選択的に、シロキサンセグメントまたはシラン部分(すなわち、上記の一般的な有機ケイ素化合物の式において、部分式R3
3Si-で表されるシラン部分以外)に結合(例えば、架橋)され得る。典型的には、Xは、任意選択的に、例えば、アルコキシ、シロキシ、シリル、アミノ、アミド、アセトキシ、およびアミノキシ基で修飾または置換され得る、二価の置換または非置換炭化水素基から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、Xは、式-(CH2)n-を有する炭化水素部分を含み、式中、下付き文字nは、1~16である。これらのまたは他の実施形態では、Xは、置換炭化水素、すなわち、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)を有する骨格を含む炭化水素基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、Xは、エーテル部分、アミノ部分、またはその両方を含む骨格を有する炭化水素である。
【0012】
各R3は、ヒドロカルビル基およびシロキシ基から独立して選択される。しかしながら、本明細書の説明から理解されるように、各R3は、そのようなヒドロカルビル基およびシロキシ基の組み合わせを含み得る。好適なヒドロカルビル基は、置換または非置換であり得る。そのようなヒドロカルビル基に関して、「置換」という用語は、1つ以上の水素原子が、水素以外の原子(例えば、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子)で置き換えられているか、炭化水素の鎖内の炭素原子が、炭素以外の原子で置き換えられている(すなわち、R3が、1つ以上のヘテロ原子(酸素、硫黄、窒素など)を鎖内に含むか、またはその両方である、炭化水素部分を説明する。したがって、R3が、その炭素鎖/骨格内におよび/またはその上に(すなわち、付加されて、および/または一体になって)置換基を有し得る炭化水素部分を含み、それによって、R3が、エーテル、アミンなどを含み得るか、またはそれらであり得ることが理解されるであろう。
【0013】
一般に、R3に好適なヒドロカルビル基は、独立して、線状、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、ならびに飽和または非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式または多環式であり得る。線状および分岐状ヒドロカルビル基は、独立して、飽和または不飽和であり得る。線状および環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例として、アラルキル基が挙げられる。ヒドロカルビル基の一般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基など、ならびにそれらの誘導体、修飾、および組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ-プロピルおよび/またはn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、および/またはsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、および/またはtert-ペンチル)、ヘキシル、ならびに6~18個の炭素原子を有する分岐状飽和炭化水素基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、およびジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、ヘキセニル、およびシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価のハロゲン化炭化水素基(すなわち、ハロカーボン基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、FまたはClなどのハロゲン原子で置き換えられている上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の具体的な例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、および8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、および3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、および2,3-ジクロロシクロペンチル基、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、FまたはClなどのハロゲン原子で置き換えられている上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体的な例としては、クロロベンジルおよびフルオロベンジル基が挙げられる。
【0014】
好適なシロキシ基の例としては、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位が挙げられ、これらは、当技術分野で理解されるように、各々が、有機ポリシロキサン中に存在する個別の官能性の構造単位を表す。より具体的には、以下のシロキシ基の一般式で示すように、[M]は、一般式R
3
3SiO
1/2の単官能性単位を表し、[D]は、一般式R
3
2SiO
2/2の二官能性単位を表し、[T]は、一般式R
3SiO
3/2の三官能性単位を表し、[Q]は、一般式SiO
4/2の四官能性単位を表す。
【化2】
【0015】
これらの一般的な構造部分において、各R3は、独立して、一価または多価の置換基である。当技術分野で理解されるように、各R3に好適な具体的な置換基は、限定されるものではなく、単原子または多原子、有機または無機、線状または分岐状、置換または非置換、芳香族、脂肪族、飽和または不飽和、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0016】
通常、各R3は、ヒドロカルビル基およびシロキシ基から独立して選択される。R3により表されるヒドロカルビル基(複数可)は、存在する場合、置換または非置換であり得、R2に好適なヒドロカルビル基の例に関して上述したように、脂肪族、芳香族、環状、脂環式などであり得、R3に関する使用に好適なものについて同様に例示的である。R3により表されるシロキシ基は、存在する場合、置換または非置換であり得、代替的に、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位の任意の組み合わせを含み得る(すなわち、シラン部分は、分岐状および/またはデンドリマー状シロキサンを含み得る)。
【0017】
いくつかの実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(I)を有し、
[R3
3SiO1/2]a[R3
2SiO2/2]b[R3SiO3/2]c[SiO4/2]d(II)、
式中、各R3は、置換または非置換ヒドロカルビル基および線状または分岐状シロキシ基から独立して選択されるが、但し、1つのR3は、アルコール基を含み、下付き文字a、b、c、およびdは、各々、a+b+c+d=1であるようなモル分率であるが、但し、a+b+c>0である。そのような実施形態では、アルコール基を含むR3は、典型的には、式-X-OHを有し、式中、Xは、上述の二価の連結基である。
【0018】
上記で紹介および説明したように、下付き文字a、b、c、およびdで示されるシロキシ部分が、それぞれ、[M]、[D]、[T]、および[Q]シロキシ単位に対応することが、当業者によって理解されるであろう。いくつかの実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、反復[D]単位を含み、すなわち、この場合、下付き文字b>0である。これらの実施形態では、下付き文字bは、典型的には、0.3~1(例えば、0.3≦b≦1)、例えば、0.3~0.9999、代替的に0.3~0.999、代替的に0.3~0.99、代替的に0.3~0.9、代替的に0.5~0.999、代替的に0.6~0.999、代替的に0.7~0.99、代替的に0.8~0.99、代替的に0.85~0.99、代替的に0.9~0.99の値である。下付き文字aは、典型的には、0~0.1(0≦a≦0.1)、例えば、0~0.099、代替的に0~0.09、代替的に0~0.085、代替的に0~0.08、代替的に0~0.075、代替的に0~0.07、代替的に0~0.065、代替的に0~0.06、代替的に0~0.055、代替的に0~0.05、代替的に0.001~0.05、代替的に0.002~0.05、代替的に0.005~0.01の値である。下付き文字cおよびdは、典型的には、各々、0~0.1(例えば、0≦c≦0.1および0≦d≦0.1)、例えば、0~0.09、代替的に0~0.075、代替的に0~0.05、代替的に0~0.025、代替的に0~0.009、代替的に0~0.001、代替的に0~0.0001の独立して選択される値である。ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、線状シロキサンセグメントを含み、この場合、下付き文字bは、0.9~1であり、下付き文字aは、0~0.1であり、下付き文字cおよびdは、各々0である。初期有機ケイ素化合物(A)が反復[D]単位を含む場合、任意の1つのシロキサンセグメント中の具体的な[D]単位の数(すなわち、重合度、DP)は限定されない。典型的には、そのようなシロキサンセグメントは、1~700反復[D]単位、例えば、2~600、代替的に2~500、代替的に5~400、代替的に5~300、代替的に10~250、代替的に10~200、代替的に15~150、代替的に15~100、代替的に15~50の反復[D]単位を含む。
【0019】
上述の初期有機ケイ素化合物(A)の両方の式に関して(すなわち、初期有機ケイ素化合物(A)が、式(I)または(II)を有する場合)、[M]、[D]、[T]、および[Q]単位の存在および割合は、シラン部分の各シリル置換基の各R3について(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)が、式(I)を有する場合)ならびに任意の特定のシロキシ単位の各R3について(例えば、上記の式(II)に関して下付き文字a、b、およびcによって示されるもの)の特定の置換基であるように、独立して選択される。例えば、初期有機ケイ素化合物(A)が線状有機ポリシロキサンである場合、初期有機ケイ素化合物(A)の線形性を増加させるように、典型的には、0またはその付近の[T]および[Q]単位の割合が選択される。そのような有機ポリシロキサンは、典型的には、線状、または実質的に線状であるが、[T]および/または[Q]単位(例えば、c+d>0の場合)に起因するいくつかの分岐を含み得る。逆に、初期有機ケイ素化合物(A)が有機ポリシロキサン樹脂である場合、[T]および/または[Q]単位の割合は、0を超えるように選択される。したがって、当業者は、例えば、特定の初期有機ケイ素化合物(A)の所望の特性、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物またはそれで調製された化合物の所望の/意図された特性および/または特徴(例えば、物理的、化学的、美学的など)などに基づいて、初期有機ケイ素化合物(A)、ひいてはアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の組成物を制御するように、シロキサンセグメントの組成物を選択する。例えば、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物またはそれで調製された化合物が、高い融点および/もしくは軟化点を有すること、またはそれで調製された配合物が、具体的な形態(例えば、固体、ゲルなどの形態)であることが望ましい場合があり、初期有機ケイ素化合物(A)の組成物を選択することによって、当業者が、そのような望ましい特性の範囲を達成することが可能になり得る。一般に、線状シロキサンセグメントは、有機ポリシロキサンに利用され、[T]および/または[Q]単位に起因する分岐の増加を含む有機ポリシロキサンを使用するものと比較して、改善された感触(例えば、快適な堆積)および柔軟性を有する層またはコーティングを形成する。同様に、樹脂性有機ポリシロキサンは、より線状の有機ポリシロキサンが利用されるものと比較して、硬度、耐移動性などが増加した生成物を形成するために使用される。
【0020】
ある特定の実施形態では、方法は、2つ以上の初期有機ケイ素化合物(A)、例えば、2、3、4つ以上の初期有機ケイ素化合物(A)を利用することを含む。そのような実施形態では、各初期有機ケイ素化合物(A)は、独立して選択され、任意の他の初期有機ケイ素化合物と同じかまたは異なってもよい。
【0021】
初期有機ケイ素化合物(A)は、任意の形態、例えば、ニート(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などを含まない)で利用され得るか、または担体ビヒクル、例えば、溶媒または分散剤に配置され得る。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、脂肪族炭化水素、例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタンなど、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなど、エーテル、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、シリコーン流体、水性溶媒(例えば、水)、またはそれらの組み合わせを含み得るか、またはそれらであり得る。ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、担体ビヒクルを含まないか、代替的に、実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、アクリレート化合物(B)および/または触媒(C)と反応する水および担体ビヒクル/揮発性物質を含まないか、代替的に、実質的に含まない。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、初期有機ケイ素化合物(A)から、揮発性物質および/または溶媒(例えば、有機溶媒、水など)をストリッピングすることを含み得る。初期有機ケイ素化合物(A)をストリッピングするための技術は、当技術分野において既知であり、加熱、減圧/真空の印加、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用など、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0022】
アクリレート化合物(B)は、典型的には、アクリレートエステルであるが、他のアクリレートも利用されてもよい(例えば、アクリル酸無水物)。典型的には、アクリレート化合物(B)は、以下の式を有し、
【化3】
、
式中、R
1は、置換または非置換ヒドロカルビル基およびHから選択され、R
2は、1~4個の炭素原子を有する置換または非置換ヒドロカルビル基である。当業者によって理解されるように、R
2は、一般に、アルキル基であり(すなわち、それによって、アクリレート化合物(B)が、アルキルアクリレートエステルとして定義され得る)、メチル、エチル、プロピル基(n-プロピル、イソ-プロピル)、およびブチル基(例えば、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル)から選択される。典型的には、R
2は、メチル、エチル、n-プロピル、またはn-ブチルである。
【0023】
ある特定の実施形態では、R1は、Hであり、それによって、アクリレート化合物(B)は、アルキルアクリル酸エステルとして定義され得る他の実施形態では、R1は、置換または非置換ヒドロカルビル基、例えば、R3に関して上述のもののいずれかから選択される。いくつかのそのような実施形態では、R1は、アルキル基であり、それによって、アクリレート化合物(B)は、アルキルアルキルアクリル酸エステルとして定義され得る。具体的な実施形態では、R1は、メチルであり、それによって、アクリレート化合物(B)は、アルキルメタクリル酸エステルとして定義され得る。
【0024】
アクリレート化合物(B)としての使用に好適な化合物の具体的な例としては、一般に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソ-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソ-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、およびtert-ブチル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソ-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、およびtert-ブチルアクリレートが挙げられる。ある特定の実施形態では、アクリレート化合物(B)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびn-ブチル(メタ)アクリレートから選択される。いくつかの実施形態では、アクリレート化合物(B)は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびn-ブチルアクリレートから選択される。
【0025】
ある特定の実施形態では、方法は、2つ以上のアクリレート化合物(B)、例えば、2、3、4つ以上のアクリレート化合物(B)を利用することを含む。そのような実施形態では、各アクリレート化合物(B)は、独立して選択され、任意の他のアクリレート化合物(B)と同じかまたは異なってもよい。
【0026】
アクリレート化合物(B)は、任意の形態、例えば、ニート(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などを含まない)で利用され得るか、または担体ビヒクル、例えば、溶媒または分散剤に配置され得る。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、脂肪族炭化水素、例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタンなど、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなど、エーテル、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど、アルコール、例えば、メタノール、エタノールなど)、シリコーン流体、水性溶媒(例えば、水)、またはそれらの組み合わせを含み得るか、またはそれらであり得る。ある特定の実施形態では、アクリレート化合物(B)は、担体ビヒクルを含まないか、代替的に、実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、アクリレート化合物(B)は、初期有機ケイ素化合物(A)および/または触媒(C)と反応する水および担体ビヒクル/揮発性物質を含まないか、代替的に、実質的に含まない。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、アクリレート化合物(B)から、揮発性物質および/または溶媒(例えば、水、有機溶媒、例えば、アルコール、エーテルなど)をストリッピングすることを含み得る。アクリレート化合物(B)をストリッピングするための技術は、当技術分野において既知であり、加熱、減圧/真空の印加、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用など、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0027】
利用される初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)の相対量は、例えば、選択される特定の有機ケイ素化合物(A)、選択される特定のアクリレート化合物(B)、採用される反応パラメータなどに基づいて変動し得る。当業者によって理解されるように、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコールによるアクリレート化合物(B)のエステル交換は、1:1の(A):(B)の理論的最大モル比で発生する。しかしながら、典型的には、成分のうちの1つを過剰に利用して、化合物(A)または(B)のうちの1つを完全に消費し、例えば、形成される反応生成物の精製を単純化する。例えば、ある特定の実施形態では、化合物(B)を比較的過剰に利用して、初期有機ケイ素化合物(A)のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物への転化速度を最大化する。
【0028】
ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)は、0.1:20の(A):(B)のモル比で反応する。例えば、ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)は、1:1~1:10、例えば、1:1.1~1:10、代替的に1:1.5~1:10、代替的に1:2~1:10、代替的に1:2.5~1:10、代替的に1:3~1:10、代替的に1:4~1:10、代替的に1:5~1:10、代替的に1:6~1:10の(A):(B)のモル比で反応する。いくつかの実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)は、1:1~20:1、例えば、1.1:1~20:1、代替的に1.5:1~20:1、代替的に2:1~20:1、代替的に2.5:1~20:1、代替的に3:1~20:1、代替的に4:1~20:1、代替的に5:1~20:1、代替的に10:1~20:1、代替的に15:1~20:1の(A):(B)のモル比で反応する。これらの範囲外の比率も利用されてもよいことが理解されるであろう。例えば、ある特定の実施形態では、例えば、アクリレート化合物(B)は、アクリレート化合物(B)が反応中に担体(すなわち、溶媒、希釈剤など)として利用される場合、過剰な総量(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)のモル量の≧10倍、代替的に≧15倍、代替的に≧20倍の量)で利用される。
【0029】
触媒(C)は、式M[RC(O)CHC(O)R]4を有し、式中、Mは、第IV族遷移金属であり、各Rは、独立して選択される置換または非置換ヒドロカルビル基である。
【0030】
第IV族遷移金属には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、およびラザホージウム(Rf)が含まれる。典型的には、Mは、ジルコニウムおよびハフニウムから選択される。例えば、いくつかの実施形態では、触媒(C)は、式Zr[RC(O)CHC(O)R]4を有する。他の実施形態では、触媒(C)は、式Hf[RC(O)CHC(O)R]4を有する。
【0031】
各Rは、独立して選択される置換または非置換ヒドロカルビル基、例えば、R3に関して上述のもののいずれかである。したがって、式RC(O)CHC(O)Rの各ベータ-ジケトンは、触媒(C)中の任意の他のベータ-ジケトンと同じかまたは異なってもよい。しかしながら、典型的には、各ベータ-ジケトンは、触媒(C)中で同じである。各Rは、触媒(C)中の任意の他のRと同じかまたは異なってもよい(すなわち、特定のベータ-ジケトンの群Rは、同じであっても異なってもよく、特定のベータ-ジケトンの群Rは、触媒(C)中の別の特定のベータ-ジケトンのものと同じかまたは異なってもよい。Rのそのようなヒドロカルビル基の具体的な例としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル、4-メトキシフェニル、4-クロロフェニル、tert-ブチル、2-ピリジル、ヘプタフルオロプロピル、イソ-ブチル、2-メセチレニル(mesetylenyl)、フェニル、ベンジル、2-チエニル、および2-ナフチル基が挙げられる。典型的には、各Rは、メチルおよびエチル基から独立して選択される。ある特定の実施形態では、各Rは、メチルであり、それによって、触媒(C)のベータ-ジケトンは、各々、ペンタン-2,4-ジオンの各々のアニオンであり、したがって、アセチルアセトン(AcAc)配位子として定義され得る。従来、ジケトン(すなわち、ジオン」)に関して説明されたが、当業者は、式RC(O)CHC(O)Rにより表されるアニオン性配位子が、典型的には、親ジケトンのエノラート(例えば、ベータ-ケトエノラート)として特徴付けられることを容易に理解するであろう。
【0032】
具体的な実施形態では、触媒(C)は、Zr(AcAc)4および/またはHf(AcAc)4である。
【0033】
ある特定の実施形態では、方法は、2つ以上の触媒(C)、例えば、2つの異なる触媒(C)を利用することを含む。そのような実施形態では、各触媒(C)は、独立して選択され、利用されている任意の他の触媒(C)と同じかまたは異なってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、触媒(C)は、Zr(AcAc)4およびHf(AcAc)4の組み合わせである(すなわち、混合塩触媒である)。
【0034】
触媒(C)中で、または触媒(C)として使用するのに好適な化合物を調製する方法は、当技術分野で周知であり、本明細書に列挙された化合物の多くは、様々な供給業者から市販されている。したがって、触媒(C)は、方法の一部として調製されてもよく、またはそうでなければ、入手されてもよい(すなわち、調製された化合物として)。触媒(C)の調製物(例えば、適切なベータ-ジケトン塩をZrおよび/またはHf無機塩と混合することによる)は、成分(A)および(B)の反応の前、またはその場で(すなわち、成分(A)および(B)の反応中に)形成され得る。
【0035】
触媒(C)は、任意の形態、例えば、ニート(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などを含まない)で利用され得るか、または担体ビヒクル、例えば、溶媒または分散剤に配置され得る。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、脂肪族炭化水素、例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタンなど、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなど、エーテル、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、シリコーン流体、またはそれらの組み合わせを含み得るか、またはそれらであり得る。ある特定の実施形態では、触媒(C)は、担体ビヒクルを含まないか、代替的に、実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、触媒(C)は、初期有機ケイ素化合物(A)、アクリレート化合物(B)、および/または触媒(C)自体と反応する水および担体ビヒクル/揮発性物質を含まないか、代替的に、実質的に含まない。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、触媒(C)から、揮発性物質および/または溶媒(例えば、水、有機溶媒など)をストリッピングすることを含み得る。触媒(C)をストリッピングするための技術は、当技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の印加、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用など、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
触媒(C)は、当業者により選択される任意の量で、例えば、選択される特定の触媒(C)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、成分(A)および(B)の総量)などに応じて利用され得る。反応に利用される触媒(C)の、成分(A)および/または(B)に対するモル比は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するためのエステル交換の速度および/または量に影響を及ぼし得る。したがって、成分(A)および/または(B)と比較した触媒(C)の量、ならびにそれらの間のモル比は、変動してもよい。典型的には、これらの相対量およびモル比は、成分(A)および(B)のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物への転化速度を最大化すると同時に、触媒(C)の装填を最小化するように選択される(例えば、反応の経済的効率の向上、形成される反応生成物の精製の容易さの向上などのため)。
【0037】
ある特定の実施形態では、触媒(C)は、利用される成分(A)および/または(B)の総量に基づいて、0.01~10モル%の量で反応に利用される。例えば、触媒(C)は、利用される成分(A)および/または(B)の総量に基づいて、0.01~8、代替的に0.01~6、代替的に0.05~5モル%の量で使用され得る。具体的な実施形態では、触媒(C)は、反応する初期有機ケイ素化合物(A)の量に基づいて、0.05~10モル%の量で反応に利用される。例えば、そのような実施形態では、成分(A)および(C)は、最大2000:1、代替的に最大1000:1、代替的に最大500:1、代替的に最大500:1、代替的に最大200:1、代替的に最大100:1、代替的に最大50:1、代替的に最大20:1、代替的に最大5:1のモル比で利用され得る。
【0038】
ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)およびアクリレート化合物(B)は、(D)重合防止剤の存在下で反応する。重合防止剤は、限定されず、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤など、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、代替的にそれらであってもよい。そのような化合物は、当技術分野において既知であり、一般に、フリーラジカルと相互作用して、例えば、それとの共有結合の形成を通したフリーラジカルの除去を介して、フリーラジカルを不活性化し得る化学化合物または部分であるか、またはそれらを含む。重合防止剤(D)は、重合遅延剤、すなわち、ラジカル重合の開始および/または伝播の速度を低減する化合物でもあり得るか、または代替的にそれであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、重合防止剤(D)は、酸素ガスを含むか、代替的に酸素ガスである。一般に、重合防止剤(D)は、アクリレート化合物(B)および/またはアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物のラジカル重合を介して形成され得る副生成物の形成を防止および/または抑制するために利用される。
【0039】
重合防止剤(D)は、限定されず、フェノール化合物、キノンもしくはヒドロキノン化合物、N-オキシル化合物、フェノチアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、代替的に、それらであってもよい。
【0040】
フェノール化合物の例としては、フェノール、アルキルフェノール、アミノフェノール(例えば、p-アミノフェノール)、ニトロソフェノール、およびアルコキシフェノールが挙げられる。そのようなフェノール化合物の具体例としては、o-、m-、およびp-クレゾール(メチルフェノール)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノールまたは2,2′-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4′-オキシビフェニル、3,4-メチレンジオキシジフェノール(セサモール)、3,4-ジメチルフェノール、ピロカテコール(1,2-ジヒドロキシベンゼン)、2-(1′-メチルシクロヘキサ-1′-イル)-4,6-ジメチルフェノール、2-または4-(1′-フェニルエチ-1′-イル)フェノール、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、2,4,6-トリス-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′,5,5′-テトラブロモビスフェノールA、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、メチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、4-tert-ブチルピロカテコール、2-ヒドロキシベンジルアルコール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、6-イソプロピル-m-クレゾール、n-オクタデシルβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5,-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレートまたはペンタエリスリチルテトラキス[p-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、6-sec-ブチル-2,4-ジニトロフェノール、オクタデシル3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサデシル3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-チア-1,5-ペンタンジオールビス[(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス[(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジオールビス[(3′-tert-ブチル-4′-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)プロピオネート]、1,9-ノナンジオールビス[(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7-ヘプタンジアミンビス[3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、1,1-メタンジアミンビス[3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3-(3′,5′-ジメチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス(3-tert-ブチル-5-エチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェン-1-イル)メタン、ビス[3-(1′-メチルシクロhex-1′-イル)-5-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル]メタン、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェン-1-イル)メタン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)エタン、ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェン-1-イル)スルフィド、ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェン-1-イル)スルフィド、1,1-ビス(3,4-ジメチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-3-メチル-2-ヒドロキシフェン-1-イル)ブタン、1,3,5-トリス-[1′-(3Δ,5″-ジ-tert-ブチル-4″-ヒドロキシフェン-1″-イル)メチ-1′-イル]-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,1,4-トリス(5′-tert-ブチル-4′-ヒドロキシ-2′-メチルフェン-1′-イル)ブタンおよびtert-ブチルカテコール、p-ニトロソフェノール、p-ニトロソ-o-クレゾール、メトキシフェノール(グアヤコール、ピロカテコールモノメチルエーテル)、2-エトキシフェノール、2-イソプロポキシフェノール、4-メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ-またはジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール、2,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン(アセトバニロン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α-、β-、γ-、δ-、およびε-トコフェロール、トコール、α-トコフェロールヒドロキノン、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ヒドロキシベンゾフラン(2,2-ジメチル-7-ヒドロキシクマラン)などが挙げられる。
【0041】
好適なキノンおよびヒドロキノンには、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(4-メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、4-メチルピロカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、3-メチルピロカテコール、ベンゾキノン、2-メチル-p-ヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、4-エトキシフェノール、4-ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p-フェノキシフェノール、2-メチルヒドロキノン、テトラメチル-p-ベンゾキノン、ジエチル-1,4-シクロヘキサンジオン2,5-ジカルボキシレート、フェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ベンジル-p-ベンゾキノン、2-イソプロピル-5-メチル-p-ベンゾキノン(チモキノン)、2,6-ジイソプロピル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-アミノ-5-メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ビスフェニルアミノ-1,4-ベンゾキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アニリノ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、N,N-ジメチルインドアニリン、N,N-ジフェニル-p-ベンゾキノンジイミン、1,4-ベンゾキノンジオキシム、コエルリグノン(coerulignone)、3,3′-ジ-tert-ブチル-5,5′-ジメチルジフェノキノン、p-ロゾール酸(アウリン)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ベンジリデンベンゾキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノンなどが含まれる。
【0042】
好適なN-オキシル化合物(すなわち、ニトロキシルまたはN-オキシルラジカル)には、少なくとも1つのN-O●基、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)、4,4′,4″-トリス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)ホスファイト、3-オキソ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-N-オキシル、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-トリメチルシリルオキシピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル2-エチルヘキサノエート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルセバケート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルステアレート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル-ベンゾエート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(4-tert-ブチル)ベンゾエート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン4-イル)サクシネート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)1,10-デカンジオエート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン4-イル)n-ブチルマロネート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)フタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)イソフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン4-イル)テレフタレート、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N′-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジパミド、N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カプロラクタム、N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6-トリス[N-ブチル-N-(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル]トリアジン、N,N′-ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-N,N′-ビスホルミル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4′-エチレンビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペラジン-3-オン)などを有する化合物が含まれる。
【0043】
重合防止剤(D)中で、または重合防止剤(D)として使用するのに好適な他の化合物には、フェノチアジン(PTZ)および同様の構造を有する化合物、例えば、フェノキサジン、プロマジン、N,N′-ジメチルフェナジン、カルバゾール、N-エチルカルバゾール、N-ベンジルフェノチアジン、N-(1-フェニルエチル)フェノチアジン、N-アルキル化フェノチアジン誘導体、例えば、N-ベンジルフェノチアジンおよびN-(1-フェニルエチル)フェノチアジンなどが含まれる。当然ながら、重合防止剤(D)は、任意の数の特定の化合物を含んでもよく、それらは各々独立して選択され、重合防止剤(D)の任意の他の化合物と同じかまたは異なってもよい。
【0044】
利用する場合、重合防止剤(D)は、別個の成分として反応に添加され得るか、または成分(A)および(B)の反応の前に別の成分(例えば、アクリレート化合物(B))と組み合わされ得る。重合防止剤(D)は、当業者により選択される任意の量で、例えば、選択される特定の重合防止剤(D)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、成分(A)および/または(B)の総量、反応の雰囲気、反応の温度および/または圧力など)に応じて利用され得る。ある特定の実施形態では、重合防止剤(D)は、50~2000ppmの量、例えば、50、代替的に100、代替的に250、代替的に500、代替的に1000、代替的に1500、代替的に2000ppmの量で反応に存在する。しかしながら、当業者は、例えば、反応規模および/または条件が、追加量の重合防止剤(D)を必要とする場合、これらの範囲外の量および例示的な量も利用してもよいことを容易に理解するであろう。さらに、上記の量の追加または代替として、酸素を別々の成分として(例えば、上記の化合物から選択される別個の重合防止剤(D)の代わりに、またはそれに追加して)反応に添加してもよい。そのような事例では、酸素は、酸素ガスの形態で、任意選択的に他のガスの存在下で(例えば、空気の形態で)反応に導入され得る。利用する場合、酸素ガスの量は、反応混合物の上の気相が爆発限界未満のままであるように選択される。
【0045】
典型的には、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するための成分(A)および(B)の反応は、槽または反応器内で実行される。以下に記載されるように、反応を高温で実行する場合、槽または反応器は、例えば、ジャケット、加熱マントル、ホットプレート、コイルなどを介して、任意の好適な様式で加熱され得る。
【0046】
成分(A)、(B)、および(C)、ならびに任意選択的に(D)は、一緒にまたは別々に槽に供給され得るか、または任意の添加順序および任意の組み合わせで槽内に配置され得る。例えば、ある特定の実施形態では、成分(B)および(C)は、成分(A)、および任意選択的に成分(D)を含有する槽に添加され得る。そのような実施形態では、成分(B)および(C)は、添加前に最初に組み合わされ得るか、または順次槽に添加され得る。一般に、本明細書における「反応混合物」への言及は、一般に、成分(A)、(B)、および(C)を含む混合物(例えば、上述のように、そのような成分を組み合わせることによって得られるような)を指す。
【0047】
方法は、反応混合物を撹拌することをさらに含み得る。撹拌することは、例えばその反応混合物において組み合わされた場合、成分(A)、(B)、および(C)を一緒に混合および接触させることを促進し得る。そのような接触は、撹拌を伴う(例えば、同時または順次)か、または伴わない(すなわち、撹拌から独立して、代替的にその代わりに)かにかかわらず、他の条件を独立して使用し得る。他の条件は、アクリレート化合物(B)の初期有機ケイ素化合物(A)との接触、ひいては反応(すなわち、エステル交換)を促進させて、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を形成するように調整され得る。他の条件は、反応収率を促進させるため、またはアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物とともに反応生成物内に含まれる特定の反応副生成物の量を最小化するための結果に有効な条件であり得る。
【0048】
ある特定の実施形態では、成分(A)および(B)の反応は、任意の担体ビヒクルまたは溶媒の不在下で実行される。例えば、担体ビヒクルまたは溶媒を、初期有機ケイ素化合物(A)、アクリレート化合物(B)、触媒(C)、および/または重合防止剤(D)(すなわち、存在する場合)と別個に組み合わせ得ない。これらまたは他の実施形態では、成分(A)、(B)、(C)、および(D)(すなわち、存在する場合)のいずれも、任意の担体ビヒクルまたは溶媒中に配置されず、その結果、担体ビヒクルまたは溶媒はエステル交換中の反応混合物中に存在しない。上記にもかかわらず、ある特定の実施形態では、成分(A)および/または(B)のうちの1つは、例えば、反応混合物の任意の他の成分を担持、溶解、または分散させるのに十分な量の流体として利用される場合に、担体であり得る。具体的な実施形態では、アクリレート化合物(B)は、担体として利用される。加えて、成分(B)の成分(A)とのエステル交換が、式R2-OHのアルコールの生成(以下、「アルコール副生成物」)をもたらし、式中、R2は、アクリレート化合物(B)に関して上記で定義された通りであることが理解されるであろう。アルコール副生成物は、それ自体が担体として利用され得る(すなわち、一度生成されると)。
【0049】
ある特定の実施形態では、アルコール副生成物は、一度生成されると反応混合物から除去される。当技術分野で理解されるように、エステル交換は、可逆反応であり、それによって、反応混合物からアルコール副生成物を除去することは、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の選択性、および/または全体的な収率に関して反応に影響を与える(例えば、反応の平衡を選択的に駆動することによって)。典型的には、アルコール副生成物は、揮発性であるか、または反応混合物中の成分(A)、(B)、および(C)のいずれかよりも少なくとも揮発性である。アルコール副生成物の除去には、蒸留、加熱、減圧/真空の印加、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用など、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、アルコール副生成物は、反応が蒸留条件下で実行されるように、反応中に反応混合物から蒸留される。蒸留条件には、典型的には、(i)高温、(ii)減圧、または(iii)高温および減圧の両方が含まれる。高温または減圧とは、室温および大気圧と比較した場合を意味する。当技術分野で理解されるように、任意の蒸留で利用されるトレイの数は、最適化されてもよく、生成された蒸留物に関してアルコール副生成物の速度および/または回収に影響を及ぼし得る。蒸留は、連続的またはバッチ式であり得、蒸留が共沸蒸留であり得るように、溶媒(例えば、ヘキサン、トルエンなど)の使用を含み得る。利用される共沸溶媒を含む蒸留物は、そこからアルコール副生成物を除去した後(例えば、溶媒相抽出を介して)、再利用および/またはリサイクルされ得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、反応は、高温で実行される。高温は、選択される特定の有機ケイ素化合物(A)、選択される特定のアクリレート化合物(B)、生成される特定のアルコール副生成物(例えば、成分(B)の要素として)、およびそれらの組み合わせに応じて選択および制御される。したがって、高温は、選択される反応条件およびパラメータ、ならびに本明細書の説明を考慮して、当業者によって容易に選択されるであろう。高温は、典型的には、周囲温度超~180℃、例えば、30~170、代替的に40~170、代替的に40~160、代替的に50~150、代替的に50~135、代替的に60~135、代替的に70~130、代替的に80~120℃である。
【0052】
ある特定の実施形態では、反応は、減圧で実行される。減圧は、選択される特定の有機ケイ素化合物(A)、選択される特定のアクリレート化合物(B)、生成される特定のアルコール副生成物(例えば、成分(B)の要素として)、およびそれらの組み合わせに応じて選択および制御される。したがって、減圧は、選択される反応条件およびパラメータ、ならびに本明細書の説明を考慮して、当業者によって容易に選択されるであろう。減圧は、典型的には、真空として操作されるが、真空と大気圧との間の任意の減圧(すなわち、101.325kPa)を利用してもよい。例えば、減圧は、0超~30、代替的に0超~20、代替的に0超~15、代替的に0超~10、代替的に0超~8、代替的に0超~6、代替的に0超~5、代替的に0超~4、代替的に0超~3、代替的に0超~2kPa(例えば、mmHgにより測定される場合)であり得る。
【0053】
高温および/または減圧もまた、特に高温および減圧の両方が利用される場合、上記の範囲とは異なってもよいことを理解されたい。例えば、ある特定の実施形態では、より低い反応温度を利用しながら反応の進行を維持するために減圧が利用され、これは、望ましくない副生成物(例えば、アクリレート化合物(B)および/またはアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の重合副生成物)の形成の減少をもたらし得る。同様に、成分(A)および(B)の反応中に、反応パラメータを修正してもよいことも理解されたい。例えば、温度、圧力、および他のパラメータを、反応中に独立して選択または修正してもよい。これらのパラメータのいずれも、独立して、周囲パラメータ(例えば、室温および/または大気圧)、および/または非周囲パラメータ(例えば、低温もしくは高温、および/または低圧もしくは高圧)であり得る。あらゆるパラメータはまた、動的に修正され得るか、リアルタイムで、すなわち、方法中に修正され得るか、または静的であり得る(例えば、反応の継続時間中、またはその任意の部分の間)。
【0054】
アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するための成分(A)および(B)の反応が実行される時間は、規模、反応パラメータおよび条件、特定の成分の選択などの関数である。ある特定の実施形態では、反応が実行される時間は、成分(A)および(B)の成分(C)の存在下での組み合わせ後、0超~48時間、代替的に1~36時間、代替的に2~24時間、代替的に4~12時間である。
【0055】
一般に、成分(A)および(B)の反応は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を調製する。特に、反応の過程にわたって、成分(A)、(B)、(C)、および(D)(存在する場合)を含む反応混合物は、増加するアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の量および減少する成分(A)および(B)の量を含む。反応が完了すると(例えば、成分(A)または(B)のうちの1つが消費される、追加のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物が調製されていないなど)、反応混合物は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物と呼ばれ得る。この様式において、反応生成物は、典型的には、成分(A)、(B)、(C)、および(D)(存在する場合)の任意の残量、ならびにそれらの分解および/または反応生成物(例えば、任意の蒸留、ストリッピングなどを介して先に除去されなかった材料)を含む。反応が任意の担体ビヒクルまたは溶媒中で実行される場合、反応生成物は、そのような担体ビヒクルまたは溶媒も含み得る。しかしながら、方法は、典型的には、ニート(すなわち、追加の溶媒なしで)で実行され、蒸留および/または他の加熱条件下で実施されるため、これは、典型的には当てはまらない。
【0056】
ある特定の実施形態では、方法は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を反応生成物から単離および/または精製することをさらに含む。本明細書で使用される場合、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、典型的には、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の相対濃度の、それとの組み合わせの(例えば、反応生成物またはその精製バージョン中の)他の化合物と比較しての増加として定義される。したがって、当技術分野で理解されるように、単離/精製することは、他の化合物をそのような組み合わせから除去すること(すなわち、例えば、反応生成物中のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物と組み合わされた不純物の量を減少させること)、および/またはアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物自体を、組み合わせから除去することを含み得る。単離のための任意の好適な技術および/またはプロトコルを利用してもよい。好適な単離技術の例としては、蒸留、ストリッピング/蒸発、抽出、濾過、洗浄、分配、相分離、クロマトグラフィーなどが挙げられる。当業者によって理解されるように、これらの技術のいずれかを、任意の別の技術と組み合わせて(すなわち、順次に)使用して、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を単離してもよい。単離することは、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することを含み得、ひいては、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することと呼ばれ得ることを理解されたい。しかしながら、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することは、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の単離に利用される技術と比較して、代替および/または追加の技術を含んでもよい。選択される特定の技術(複数可)に関係なく、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の単離および/または精製は、反応自体と順番に(すなわち、したがって)実施され得、ひいては自動化され得る。他の事例では、精製は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物が供される独立した手順であり得る。
【0057】
特定の実施形態では、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、揮発性物質を反応生成物から蒸留および/またはストリッピングすることを含む。例えば、ある特定の実施形態では、例えば、成分(B)が成分(A)を超えて使用される場合、成分(B)の残量は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応混合物から蒸留および/またはストリッピングされる。これらまたは他の実施形態では、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、反応生成物を濾過して、触媒(C)の残量および/またはそれから形成された固体を除去することを含む。両方またはいずれかの場合(例えば、ストリッピング/蒸留および/または濾過を介した成分(B)および/または(C)を除去した後)、反応生成物は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む精製反応生成物と呼ばれ得る。
【0058】
特定の実施形態では、方法は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することをさらに含む。精製のための任意の好適な技術を利用してもよい。ある特定の実施形態では、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することは、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を除去する(例えば、蒸留物として)か、またはそこから他の化合物/成分をストリッピングする(すなわち、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を、反応混合物または精製反応混合物の高沸点成分としてポット内に残す)ための蒸留を含む。当業者によって理解されるように、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を精製および/または単離するために、反応生成物または精製反応生成物を蒸留することは、典型的には、高温および減圧で実行される。高温および減圧は、例えば、反応の特定の成分、調製される特定のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物、利用される他の単離/精製技術などに基づいて、独立して選択される。例えば、本明細書に記載の高温および減圧のいずれかを、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の精製に利用してもよい。
【0059】
方法に従って調製されたアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物は、以下の一般式を有し、
【化4】
、
式中、Yは、有機ケイ素部分を含み、Xは、二価の連結基であり、R
1は、置換または非置換ヒドロカルビル基およびHから独立して選択される。本明細書の説明を考慮して当業者によって理解されるように、方法で利用される初期有機ケイ素化合物(A)は、部分式Y-X-O-により表される有機ケイ素部分に対応するアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の一部分を形成し、方法で利用されるアクリレート化合物(B)は、部分式-C(O)C(CH
2)R
1のアクリレート部分に対応するアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の一部分を形成する。したがって、式、構造、部分、基、または他のそのようなモチーフがアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物と化合物(A)および(B)との間で共有される場合、そのような共有モチーフに関する上記の説明は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を同等に説明し得る。
【0060】
例えば、二価の連結基Xは、上述の通りであり、ひいては、線状または分岐状および置換または非置換であり得る。同様に、二価の連結基Xは、置換炭化水素、すなわち、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)を有する骨格を含む炭化水素基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、二価の連結基Xは、エーテル部分、アミノ部分(例えば、アルキルアミノ部分)、またはその両方を含む骨格を有する炭化水素である。これらまたは他の実施形態では、二価の連結基Xは、式-(CH2)n-を有する炭化水素部分を含み、式中、下付き文字nは、1~16である。
【0061】
ある特定の実施形態では、有機ケイ素部分Yは、式(R3)3Si-を有するシラン部分であり、式中、上述のように、各R3は、置換または非置換ヒドロカルビル基および線状または分岐状シロキシ基から独立して選択される。これらまたは他の実施形態では、有機ケイ素部分Yは、以下の式を有し、
[R3
3SiO1/2]a[R3
2SiO2/2]b[R3SiO3/2]c[SiO4/2]d、
式中、上述のように、下付き文字a、b、c、およびdは、各々、a+b+c+d=1となるようなモル分率であるが、但し、a+b+c>0であり、各R3は、置換または非置換ヒドロカルビル基および線状または分岐状シロキシ基から独立して選択される。この式では、1つのR3は、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物の二価の連結基Xに結合しているか、代替的にそれへの共有結合を表す。
【0062】
ある特定の実施形態では、R1は、Hであり、それによって、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物は、有機ケイ素アクリル酸エステルとして定義され得る。他の実施形態では、R1は、上述のものなどの置換または非置換ヒドロカルビル基から選択される。例えば、いくつかのそのような実施形態では、R1は、アルキル基であり、それによって、アクリロキシ官能性有機ケイ素化合物は、有機ケイ素アルキルアクリル酸エステルとして定義され得る。具体的な実施形態では、R1は、メチルであり、それによって、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物は、有機ケイ素メタクリル酸エステルとして定義され得る。
【0063】
添付の特許請求の範囲が、「発明を実施するための形態」に説明される表現および特定の化合物、組成物、または方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇にある特定の実施形態間で変動し得ることが理解されるべきである。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、他のすべてのマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/または予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、およびまたは組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。
【0064】
さらに、本発明の様々な実施形態の説明に依拠する任意の範囲および部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範疇に独立してかつ集合的に含まれ、そのような値が本明細書に明示的に書かれていない場合であっても、それらの全体および/または小数値を含むすべての範囲を説明および企図すると理解される。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が本発明の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、かつそのような範囲および部分範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9の」範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、および上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに詳しく説明され、これは、個別および集合的に添付の特許請求の範囲の範疇にあり、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。加えて、「少なくとも」、「~を超える」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または修飾する文言に関して、そのような文言が部分範囲および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲には、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などが本質的に含まれ、各部分範囲は、個別および/または集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。最後に、開示された範囲内の個別の数字は、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。例えば、「1~9」という範囲には、3などの様々な個別の整数、ならびに4.1などの小数点(または分数)を含む個別の数値が含まれ、これは、依拠され、添付の特許請求の範囲の範疇の具体的な実施形態に適切なサポートを提供する。
【0065】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0066】
実施例で利用される様々な成分は、以下の表1に記載されている。
【表1】
【0067】
実施例1:
初期有機ケイ素化合物(A1)(657.13g)を、真空に接続され、かつ2つの塔頂部受器、蒸留塔、リボイラー、およびコールドトラップ(ドライアイス)を装着した反応槽に装填する。容器を129℃まで加熱し、揮発性物質(29.15g、ヘキサン/水)をストリッピングする。次に、真空を引いて(10mmHgまで)、槽ポットを135℃まで加熱し、追加の揮発性物質を除去する(塔頂部から26.91g、コールドトラップから21.56g)。次に、防止剤(D1)を、2つの塔頂部受器(各々0.410g)、コールドトラップ(0.3g)、および蒸留塔の上部(0.50g)を含む4つの部分においてシステムに装填する。次に、リボイラー液のパージ(7%O2/N2、40sccm)を開始する。次に、触媒(C1)(2.9g)およびアクリレート化合物(B1)(298.77g)を槽に装填する。反応器の設定点を加熱して還流させ、揮発性物質を除去し、塔頂部温度を64℃以下にする。反応を6時間保持し、その時間中、システムを真空下に保って還流および103℃のポット温度を維持し、揮発性物質を回収する(35.4g)。ポット内の反応混合物を試験して(GC)、転化速度(GC、96.3%転化)を決定する。次に、真空を535mmHgに引き、ポットを103℃まで加熱し、塔頂部取り出しを還流比40に設定し、反応器を2.5時間保持する。次に、真空を10mmHgに引き、ポットを118℃まで加熱し、揮発性物質を除去しながら(204.31g、コールドトラップの19.03gを含む)、反応器を1時間維持し、白色の粉末が沈殿した黄色で濁った材料として、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(544.02g、メタクリルオキシエステルへの100%転化(GC)、97.2%の質量平衡)。
【0068】
実施例2:
初期有機ケイ素化合物(A1)(616g)を反応槽に装填する。次に、防止剤(D1)を、塔頂部受器(各々0.14g)、コールドトラップ(0.02g)、蒸留塔の上部(0.20g)、およびポット(0.5157g)を含む部分において、システムに装填する。次に、リボイラー液のパージ(7%O2/N2)を開始し、次に、アクリレート化合物(B1)(228.3g)をポットに装填する。次に、反応器を加熱して、真空下(97.5℃、450mmHg)で還流する。還流比は、塔頂部温度が上昇し始めるまで1:40に保持され、次に、塔頂部温度が純粋なアクリレート化合物(B1)を得るまで1:99に変更される。揮発性物質(ヘキサン/水)を回収する(111.63gの全揮発性物質を除去)。反応器を冷却し、触媒(C1)(3.2g)で充填する。流動O2/N2を開始し、反応器を97.5℃で保持する。還流比は、OH温度が上昇し始めるまで1:40に保持され、次に、1:180に変更される。還流を6時間保持して、次に、1:40に設定して残留メタノールをすべて除去する。1時間後、揮発性物質を除去しながら(166.05gの揮発性物質を回収)、ポットを97℃で維持しながら真空を10mmHgに引き下げ、最終反応器条件を97.6℃および238mmHgにする。次に、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物(565.2g、メタクリルオキシエステルへの98.5%転化(GC))を含む反応生成物を、白色の粉末が沈殿した淡黄色で濁った材料として回収する。
【0069】
実施例3:3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロピルメタクリレート(MD’M-ALMA)。
初期有機ケイ素化合物(A2)(150.23g)、アクリレート化合物(B1)(121.34g)、防止剤(D1)(0.12g)、および防止剤(D2)(0.2g)を、撹拌棒、加熱マントル、熱電対、過熱保護付き温度制御器、塔頂部温度モニター、ガス入口管、および316ステンレス鋼0.16インチPro-Pak(登録商標)梱包材で梱包された、高さ12インチの蒸留塔/蒸留ヘッド、凝縮器、および磁気還流分割器/制御器を装備した500mL反応槽に装填する。防止剤(D1)の追加部分を、凝縮器の上部(0.7g)および受器番号1(0.2g)に装填する。次に、リボイラー液のパージ(6%O2/N2)を開始する。触媒(C1)(2.08g、0.01モル当量)を反応に添加し、反応混合物を115℃まで加熱し、蒸留物が停止するまで115℃で保持する。次に、蒸留物が停止し、塔頂部温度が37.7℃~27℃に低下するまで、真空を熱で0.5mmHgに引く。真空およびO2/N2パージを停止し、反応混合物を冷却する。次に、アクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応混合物を、GC(Agilent 7200 GC-QTOF、Phenomenex ZB-5M Splus 30m×0.25mm×0.25μmカラム、250℃インジェクタおよびソース温度、1.2mL/分の流量、50:1分割比、0.1μL注入量、最初に4分間40℃で保持して、次に10℃/分~320℃にステップアップし、5分間320℃で保持する)を介して分析する。GC分析は、初期有機ケイ素化合物の100%転化および所望の生成物の79.3%のポット内収率を示す。
【0070】
蒸留物を、受器番号1から除去する(「ライトカット」、68.14g)。防止剤(D1)の追加部分を、反応槽(0.30g)、凝縮器の上部(0.71g)、および受器番号1(0.23g)に添加する。次に、反応混合物を真空下(1トール)で140℃まで加熱し、3:1の還流比に保持する。揮発性物質(「混合カット」)を、塔頂部温度が52℃に達したときに、塔頂部温度が約102℃で10分間安定するまで回収する。回収は、受器番号2に切り替えられ、揮発性物質の回収を開始し(「生成物カット」)、1時間の回収後に還流比を2:1の比率に変更する。蒸留物が停止し、塔頂部温度が低下すると、生成物カットの回収を停止する。生成物カット(64.49g、透明で淡黄色の液体)は、所望のアクリルオキシ官能性有機ケイ素化合物(純度5.1%、単離収率44%)を含有する。
【0071】
実施例4:3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロピルアクリレート
初期有機ケイ素化合物(A3)(10.02g)、アクリレート化合物(B2)(9.0g)、防止剤(D1)(0.008g)、および防止剤(D2)(0.02g)を、撹拌棒、加熱マントル、熱電対、過熱保護付き温度制御器を装備し、かつ凝縮器および受器に接続されているVigreux蒸留塔を装着した、100mL反応槽に装填する。防止剤(D1)の追加部分(0.15g)を、凝縮器の上部に装填する。触媒(C1)(0.18g.0.01当量)を、反応槽に添加する。反応温度を88℃まで上昇させ、揮発性物質を回収する(合計2.4mL)。反応温度をさらに90℃まで上昇させ、追加の揮発性物質を回収する(合計3.5mL)。GC分析(実施例3と同じ方法)がアルコール転化に変化を示さなくなるまで(1時間)、反応を90℃で保持する。次に、揮発性物質を回収しながら(合計3.8mL、3.52g)、反応温度を100℃まで1時間、次に110℃まで1時間上昇させる。最終反応生成物の混合物(12.93g)は、透明で淡黄色の液体である。GC分析は、初期有機ケイ素化合物の97.5%の転化を示す。
【0072】
実施例5:3-メチル-4-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)ブチルアクリレート
塔頂部撹拌器、過熱保護付き温度制御器、塔頂部温度モニター、ガス入口管、および自動還流分割器/制御器を有する10プレートOldershaw蒸留塔/蒸留ヘッドを装着した、1000mlの4つ口丸底フラスコに、初期シリコーン化合物(A5)(155.3g、0.5モル)、アクリレート化合物(B1)(152.4g、1.5モル、3:1モル比(B1):(A5))、および触媒(C1)(3.34g、0.0068モル)を装入する。反応混合物を、防止剤(D1)および(D3)とともに装入して、混合物中でそれぞれ1338ppmおよび288ppmを達成する。ガスパージ(N2中8%O2)を開始し、撹拌器をオンにする。NMR分析のためにポットの内容物の試料を採取する。フラスコの圧力を550mmHgに低下させ、ポットの内容物をゆっくりと96~106℃まで加熱し、約1時間還流した。蒸気温度は、58~56℃の間で安定する。MMA-メタノール共沸混合物を、70:30の還流比を使用して56℃の蒸気温度で蒸留除去する。蒸気温度が65℃に達するまで蒸留を継続する。加熱をオフにし、ポットの内容物を70℃まで冷却し、NMR分析のために試料を採取する。過剰なMMAを、65℃のポット温度および150mmHgの真空での蒸留を介して除去する。最終生成物は、琥珀色の低粘度液体である(生成物重量は185g、収率98%であった)。最終モノマーのNMR分析は、1%のMMAの存在を示し、および
【0073】
比較例1
初期有機ケイ素化合物(A4)(10.08g)、アクリレート化合物(B1)(100g)、防止剤(D1)(0.008g)、および防止剤(D2)(0.02g)を、撹拌棒、加熱マントル、熱電対、過熱保護付き温度制御器を装備し、かつ凝縮器および受器に接続されているVigreux蒸留塔を装着した、100mL反応槽に装填する。防止剤(D1)の追加部分(0.15g)を、凝縮器の上部に装填する。触媒(C2)(0.015g、0.02モル当量)を反応槽に添加し、反応物を90℃まで加熱する。3時間後、GC分析(実施例3と同じ方法)は、A5の22.3%の転化を示し、白い沈殿物が反応物中に形成し始めた。触媒の第2の部分(C2)(0.023g)を添加する。55分後、GC分析は、A5の53.7%の転化を示し、これはさらに1時間変化しないままである。触媒の第2の部分(C2)(0.028g)を添加して、A5転化(65.2%(GC))を増加させる。次に、触媒(C2)の追加部分を1~2時間の間隔内で添加して(各々0.02~0.03g)、A5の転化を増加させ(合計で0.324gの触媒(C2)を添加、0.41モル当量)、反応温度を2時間115℃で保持する。揮発性物質は回収されない。反応生成物混合物(12.1g)を、白色の沈殿物を含有する不透明な液体として回収する。GC分析は、最終生成物の66.8%のポット内収率および初期有機ケイ素化合物の96%の転化を示す。
【0074】
本発明を例示的に説明してきたが、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質であることを意図していることを理解されたい。明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。本発明を、具体的な説明とは違うように実践してもよい。