(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】尿検体中ステロイド測定方法、並びに、それに用いるための尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241008BHJP
G01N 33/493 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N33/53 A
G01N33/493 A
(21)【出願番号】P 2021553731
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040896
(87)【国際公開番号】W WO2021085617
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019199808
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉見 達成
(72)【発明者】
【氏名】小島 哲
(72)【発明者】
【氏名】青柳 克己
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142241(JP,A)
【文献】特開平07-280811(JP,A)
【文献】特開昭62-002157(JP,A)
【文献】GOMES, Rachel L. et al.,Analysis of conjugated steroid androgens: Deconjugation, derivatisation and associated issues,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2009年,Vol.49,pp.1133-1140
【文献】山辺真一、他,エストラジオール抱合体の分析条件の検討,岡山県環境保健センター年報,2003年,No.27,pp.35-37
【文献】宮田崇、他,尿中17-ケトステロイド抱合体の酸加水分解条件検討,日本鑑識科学技術学会誌 第10回学術集会講演要旨集,2004年,Vol.9, Supplement,p.33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿検体中のステロイドを測定する方法であり、
尿検体に、酸の規定度が0.6~4Nとなるように酸溶液を混合して反応させ、酸処理液とする酸処理工程と、
前記酸処理液と中和液とを混合して反応させ、中和処理液とする中和処理工程と、
前記中和処理液と、ステロイドと特異的に結合可能な抗体とを混合してステロイドを測定する測定工程と、
を含む、尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項2】
前記酸処理液の20~40℃におけるpHが1.0~6.0である、請求項1に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項3】
前記酸処理工程における反応時間が1~60分間である、請求項1又は2に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項4】
前記酸溶液の酸の規定度が1~6Nである、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項5】
前記中和処理液の25℃におけるpHが4.0~10.0である、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項6】
前記中和液が、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項7】
前記中和液の20℃におけるpKaが6~8である、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
【請求項8】
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法に用いるためのキットであり、
酸の規定度が1~6Nである酸溶液、
グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する中和液、並びに、
ステロイドと特異的に結合可能な抗体
からなる群から選択される少なくとも1種を含む、尿検体中ステロイド測定用キット。
【請求項9】
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の尿検体中ステロイド測定方法に用いるための中和液であり、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、尿検体中ステロイド測定用中和液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿検体中ステロイド測定方法、並びに、それに用いるための尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液に関する。
【背景技術】
【0002】
血液検体や尿検体中に含まれるステロイドの測定は、様々な疾患の診断や鑑別に用いられており、例えば、アルドステロンの測定は、原発性アルドステロン症をはじめとした高血圧疾患、腎疾患、浮腫性疾患等の診断や鑑別に有用である。
【0003】
検体中に含まれるステロイドを測定する方法としては、ステロイドと該ステロイドに対する抗体(抗ステロイド抗体)との抗原抗体反応によって免疫学的に測定する方法が知られており、例えば、抗アルドステロン抗体を用いたアルドステロン測定試薬として、DiaSorin社から「LIAISON」(非特許文献1)が、富士レビオ株式会社から「スパック(登録商標)-S アルドステロンキット」(非特許文献2)が、それぞれ販売されている。
【0004】
体内から排出される尿中において、ステロイドは通常、グルクロン酸や硫酸と結合して包合体を形成している。そのため、尿検体をそのまま抗原抗体反応による免疫学的測定に供すると、包合体を形成している他の分子に抗原抗体反応が阻害されて実際のステロイド量と検出されるステロイド量との間に乖離が生じ、正確な測定結果を得ることができない。したがって、かかる包合体からステロイドを脱包合させるための前処理が必要であり、このような前処理として、上記のような従来のアルドステロン測定試薬ではいずれも、尿検体に0.2Nの塩酸を加えて16~24時間反応させた後、血清やバッファーを加えて中和をするといった処理が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】DiaSorin社、「LIAISON」添付文書、2014年改訂
【文献】富士レビオ株式会社、「スパック(登録商標)-S アルドステロンキット」添付文書、2018年改訂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、尿検体中のステロイドの測定は、患者から検体を採取した施設(病院等)とは別の機関(検査会社等)で行われることが多く、測定結果が得られるまで数日を要することが通常であった。しかしながら、近年、免疫学的測定装置の自動化によって、検体を採取した施設で様々な生体物質の自家測定を行うことが可能となっており、尿検体中のステロイドの測定についても、そのニーズが高まっている。尿検体中のステロイドの測定の完全自動化においては、測定装置上で検体の前処理(特に、ステロイドの脱包合)から測定完了までの操作を一貫して行えることが求められるが、尿検体の前処理に長時間(16~24時間)を要する従来の方法では、当該前処理は装置外で行うことになる。そのため、前処理を含めた完全自動化が可能な、より短時間で尿検体の前処理ができるステロイドの測定方法が求められる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、従来よりも短時間で尿検体の前処理が可能な、尿検体中ステロイド測定方法、並びに、それに用いる尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、尿検体に対して、酸の規定度を従来よりも大きく、かつ、特定の範囲内として酸処理をした後、それを中和した前処理後の試料を用いることにより、驚くべきことに、従来よりも著しく短時間の酸処理で、従来の測定方法と同等の、十分な前処理の効果(特に、ステロイドの脱包合等)を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
[1]
尿検体中のステロイドを測定する方法であり、
尿検体に、酸の規定度が0.6~4Nとなるように酸溶液を混合して反応させ、酸処理液とする酸処理工程と、
前記酸処理液と中和液とを混合して反応させ、中和処理液とする中和処理工程と、
前記中和処理液と、ステロイドと特異的に結合可能な抗体とを混合してステロイドを測定する測定工程と、
を含む、尿検体中ステロイド測定方法。
[2]
前記酸処理液の20~40℃におけるpHが1.0~6.0である、[1]に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[3]
前記酸処理工程における反応時間が1~60分間である、[1]又は[2]に記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[4]
前記酸溶液の酸の規定度が1~6Nである、[1]~[3]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[5]
前記中和処理液の25℃におけるpHが4.0~10.0である、[1]~[4]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[6]
前記中和液が、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[5]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[7]
前記中和液の20℃におけるpKaが6~8である、[1]~[6]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法。
[8]
[1]~[7]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法に用いるためのキットであり、
酸の規定度が1~6Nである酸溶液、
グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する中和液、並びに、
ステロイドと特異的に結合可能な抗体
からなる群から選択される少なくとも1種を含む、尿検体中ステロイド測定用キット。
[9]
[1]~[7]のうちのいずれかに記載の尿検体中ステロイド測定方法に用いるための中和液であり、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、尿検体中ステロイド測定用中和液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも短時間で尿検体の前処理が可能な、尿検体中ステロイド測定方法、並びに、それに用いる尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液を提供することが可能となる。また、これにより、尿検体の前処理から測定完了までを一貫して自動化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例2-1における、酸処理時間と、測定値平均の参考例2-1に対する割合との関係を示すグラフである。
【
図2】実施例2-2における、酸処理時間と、測定値平均の参考例2-2に対する割合との関係を示すグラフである。
【
図3】実施例4における、酸処理時間と、測定値平均の参考例4に対する割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<尿検体中ステロイド測定方法>
本発明は、尿検体に、酸の規定度が0.6~4Nとなるように酸溶液を混合して反応させ、酸処理液とする酸処理工程と、
前記酸処理液と中和液とを混合して反応させ、中和処理液とする中和処理工程と、
前記中和処理液と、ステロイドと特異的に結合可能な抗体とを混合してステロイドを測定する測定工程と、
を含む、尿検体中ステロイド測定方法を提供する。
【0013】
本発明において、「尿検体」としては、特に制限されず、随時尿、24時間蓄積尿等が挙げられる。また、尿検体の由来としても特に制限されず、例えば、ヒト、及びヒト以外の哺乳類や鳥類(チンパンジーやサルなどの霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ等の家畜や愛玩動物)が挙げられる。本発明に係る尿検体としては、下記の酸の規定度を満たすことができる限り、希釈液で適宜希釈されていてもよく、前記希釈液としては、例えば、緩衝液、生理食塩水、精製水、血清、及び血漿からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0014】
本発明において「ステロイド」とは、ステロイド骨格(シクロペンタノヒドロフェナントレン骨格)を持つ化合物の総称である。前記ステロイドとしては、ステロイドホルモン、及びステロイド骨格を保持するその誘導体(例:タンパク質同化ステロイド、抗男性ホルモン剤及び抗卵胞ホルモン剤等の合成ステロイド)が挙げられる。前記ステロイドホルモンとしては、例えば、精巣ホルモン(例:テストステロン)、卵胞ホルモン(例:エストラジオール)、黄体ホルモン(例:プロゲステロン)、コルチコイド(例:糖質コルチコイド(コルチゾール等)、鉱質コルチコイド(アルドステロン等))が挙げられる。本発明に適用されるステロイドとしては、特に制限はないが、例えば、アルドステロン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾール、及びエストラジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
アルドステロンは、副腎皮質の球状帯から分泌されるステロイドホルモン(鉱質コルチコイド)の一種であり、主に腎臓の尿細管でのナトリウムイオン再吸収とそれに伴う水分吸収、及びナトリウムイオンと交換的なカリウムイオンと水素イオンの排出を促進する。
【0016】
プロゲステロンは、卵巣の黄体で合成されるステロイドホルモン(黄体ホルモン)の一種であり、主に子宮内膜分泌期変化、妊娠維持、体温の上昇、排卵抑制、乳腺発育などの作用を有する。
【0017】
テストステロンは、精巣の間質細胞で分泌されるステロイドホルモン(男性ホルモン)の一種であり、主に男性の思春期における二次性徴の発育促進作用、筋量増加作用、造血作用を有する。
【0018】
コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン(糖質コルチコイド)の一種であり、主に糖質・脂質・蛋白質代謝・核酸の代謝を調節する作用を有する。
【0019】
エストラジオールは、卵巣の顆粒膜細胞、外卵胞膜細胞、胎盤、副腎皮質、精巣間質細胞で作られるステロイドホルモン(卵胞ホルモン)の一種であり、主に乳腺細胞の増殖促進、卵巣排卵制御、脂質代謝制御、インスリン作用、血液凝固作用、中枢神経(意識)女性化、皮膚薄化、LDLの減少とVLDL・HDLの増加とによる動脈硬化抑制などの作用を有する。
【0020】
〔酸処理工程〕
本発明の尿検体中ステロイド測定方法においては、先ず、尿検体に、酸の規定度が0.6~4Nとなるように酸溶液を混合して反応させ、酸処理液とする(酸処理工程)。
【0021】
尿検体中においては、通常、ステロイドが他の分子と結合して包合体を形成しているため、かかる酸処理工程では、主にこの包合されたステロイドを脱包合させて遊離のステロイドとする。ステロイドと包合体を形成する他の分子としては、例えば、グルクロン酸;硫酸;N-アセチルグルコサミド、グルコース等の糖;グリシンが挙げられる。なお、本発明において「包合」とは、前記他の分子と結合していることを意味し、「脱包合」とは、ステロイドが前記他の分子に結合しておらず遊離の状態になっていることを意味する。
【0022】
本発明においては、酸処理工程において、前記尿検体に酸溶液を混合し、混合後の溶液(好ましくは反応後、すなわち、酸処理時間経過後の溶液(本明細書中、「酸処理液」という))中の酸の規定度を0.6~4Nにすることが必要である。酸処理工程における酸濃度がこのように高いことにより、脱包合に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。前記酸の規定度としては、当該範囲内であれば、酸処理時間、酸処理温度、及び下記の中和液の種類等に応じて適宜調整することができるが、より好適な酸処理時間及び酸処理温度で効率よく各操作が可能となる傾向にある観点から、1.3~3Nであることがより好ましく、1.3~2Nであることが特に好ましい。前記酸の規定度が前記下限未満であると、酸処理に時間がかかる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸処理の時間が短くなり過ぎて次の操作の準備のための時間が確保できなくなったり、中和が困難となって測定値が低下する傾向にある。なお、本発明において、溶液中の「酸の規定度」は、水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により測定することができる。
【0023】
また、前記尿検体と酸溶液との混合後の溶液(好ましくは酸処理液)としては、上記と同様の観点から、20~40℃(好ましくは25℃)におけるpHが、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~4.9であることがより好ましい。
【0024】
前記尿検体に混合する酸溶液としては、酸性を示す水溶液が挙げられる。本発明に係る酸溶液としては、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の混合物であってもよい。また、本発明に係る酸溶液としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、メタノール等をさらに含有していてもよい。
【0025】
本発明に係る酸溶液において、酸の濃度は、前記尿検体に酸溶液が混合された後の溶液中における酸の規定度を上記範囲内にできる濃度である限り、特に制限はない。例えば、尿検体に混合された際にn倍に希釈されることを意図しているのであれば、予め、n倍の濃度の酸を含む酸溶液として調製すればよい。操作の安全性及び作業効率の観点からは、本発明に係る酸溶液における酸の濃度としては、酸の規定度が1~6Nであることが好ましく、2~4Nであることがより好ましく、2~3Nであることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に係る酸処理工程において、前記尿検体と酸溶液との混合比としても、混合された後の溶液中における酸の規定度を上記範囲内にできる限り、特に制限はないが、作業効率の観点からは、例えば、尿検体100μLに対して、酸溶液10~1000μLの混合比であることが好ましい。
【0027】
本発明の尿検体中ステロイド測定方法によれば、酸処理工程における反応時間(酸処理時間)を十分に短く、具体的には、1~60分間とすることができる。反応時間は、当該範囲内において、酸溶液中の酸の規定度、酸処理温度、及び下記の中和液の種類等によって適宜調整することができるが、より好適な酸濃度及び酸処理温度で効率よく各操作が可能となる傾向にある観点から、1~10分間であることが好ましく、1~7分間であることがより好ましく、5~7分間であることがさらに好ましく、5~6分間であることがさらにより好ましい。前記酸処理時間が前記下限未満であると、ステロイドの脱包合が不十分となって測定値が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、過剰な酸加水分解反応によりステロイド自体が分解されたり変質したりして測定値が低下する傾向にある。
【0028】
本発明に係る酸処理工程において、反応温度(酸処理温度)としては、特に制限されず、例えば、5~95℃の範囲が挙げられ、酸溶液中の酸の規定度、酸処理時間、及び下記の中和液の種類等によって適宜調整することができるが、より好適な酸濃度及び酸処理時間で効率よく各操作が可能となる傾向にある観点から、20~40℃であることが好ましい。前記酸処理温度が前記下限未満であると、ステロイドの脱包合が不十分となって測定値が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、過剰な酸加水分解反応によりステロイド自体が分解されたり変質したりして測定値が低下する傾向にある。
【0029】
このような酸処理条件の一例としては、例えば、前記酸処理液中の酸の規定度が0.6~4N、酸処理時間が1~60分間、酸処理温度が5~95℃の条件;前記酸処理液中の酸の規定度が1.3~3N、酸処理時間が1~10分間(より好ましくは1~7分間)、酸処理温度が20~40℃の条件;前記酸処理液中の酸の規定度が1.3~2N、酸処理時間が1~10分間(より好ましくは1~7分間)、酸処理温度が20~40℃の条件;前記酸処理液の酸の規定度が1.3~2N、酸処理時間が5~6分間、酸処理温度が20~40℃の条件が挙げられる。
【0030】
〔中和処理工程〕
本発明の尿検体中ステロイド測定方法においては、次いで、前記酸処理工程で尿検体と酸溶液とを混合して反応させた後の溶液(酸処理液)と、中和液と、を混合して反応させ、中和処理液とする(中和処理工程)。かかる中和処理工程では、主に下記の測定工程で用いる抗体等の変性を抑制するため、前記酸処理工程で加えた酸を中和する。
【0031】
中和処理工程において、酸処理液と中和液との混合後の溶液(好ましくは反応後、すなわち、中和処理時間経過後の溶液(本明細書中、「中和処理液」という))としては、25℃におけるpHが、4.0~10.0であることが好ましく、5.0~8.0であることがより好ましい。pHが前記範囲外であると、下記の測定工程で用いる抗体等が変性して測定値が低下する傾向にある。
【0032】
本発明に係る中和液としては、例えば、緩衝液(バッファー)をベースとして、その緩衝能を阻害しない限り、必要に応じて適宜添加物を含有する水溶液が挙げられる。前記緩衝液としては、グッド緩衝液(HEPESバッファー、MOPSバッファー等)、トリス緩衝液(Tris-HCl緩衝液、TE緩衝液、TAE緩衝液、TBE緩衝液、トリス緩衝生理食塩水等)、炭酸-重炭酸緩衝液、及びホウ酸ナトリウム緩衝液からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
また、本発明に係る中和液としては、例えば、塩基性物質の水溶液に、必要に応じて適宜添加物を含有するものも挙げられる。前記塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(NaOH、KOH、Ca(OH)2等)、アンモニア、アミンが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明に係る中和液としては、ステロイドを含有しない限り、例えば、血清をベースとして、必要に応じて適宜添加物を含有するものでもよい。前記血清としては特に制限はなく、例えば、動物由来の血清(ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラマ、イヌ、ニワトリ、ロバ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス等の動物由来の血清)、脱脂血清(DDC Mass Spect Gold(株式会社ベリタス製)等)が挙げられる。
【0035】
本発明に係る中和液としては、前記酸処理液中の酸を中和できる中和能を有する限り特に制限されないが、上記の中でも、各種緩衝液をベースとした水溶液、塩基性物質の水溶液、及び脱脂血清からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、原料由来のロット差が低減できる観点、及びより好適な酸濃度及び酸処理時間で効率よく各操作が可能となる傾向にある観点から、各種緩衝液をベースとした水溶液、及び/又は、塩基性物質の水溶液であることがより好ましく、塩の生成等を抑制できる観点から、上記緩衝液をベースとした水溶液であることがさらに好ましい。
【0036】
上記の各種緩衝液をベースとした水溶液及び塩基性物質の水溶液として、より具体的には、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水溶液が挙げられる。
【0037】
前記グッド緩衝剤としては、例えば、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、TAPSO、POPSO、HEPSO、EPPS、トリシン、ビシン、TAPS、CHES、CAPSが挙げられる。また、前記トリス緩衝剤としては、例えば、Tris、Tris-HCl、TRIS-Maleateが挙げられる。
【0038】
また、本発明に係る中和液として、より具体的には、20℃におけるpKa(電解離定数)が6~8であることも好ましい。pKaが前記範囲内であれば、前記酸処理液を十分に中和してそのpHを上げられ、下記の測定工程で用いる抗体等の変性を抑制することができるため、酸処理工程における酸の規定度を大きくして、酸処理時間をより短時間化することが可能となる。
【0039】
本発明に係る中和液としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他に、前記添加物として、塩化ナトリウム等の塩濃度調整用分子、アジ化ナトリウム等の保存剤(防腐剤)、ウシ血清アルブミン(BSA)等のタンパク質成分、ブロッキング剤、タンパク質安定化剤、増感剤、糖類、親水性ポリマー(例、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール)などを1種のみ又は2種以上の組み合わせでさらに含有していてもよい。
【0040】
また、本発明に係る中和液としては、ステロイドの安定化が見込める観点から、シクロデキストリンをさらに含有することも好ましい。本発明において「シクロデキストリン」は、複数のグルコースが結合して環状構造をとった環状オリゴ糖の総称を示し、例えば、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、及びγシクロデキストリンが挙げられ、これらのうちの1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0041】
本発明に係る中和処理工程において、前記酸処理液と中和液との混合比としては、中和が可能な限り(好ましくは中和処理液のpHを上記範囲内にできる限り)、特に制限はないが、作業効率の観点からは、例えば、酸処理液100μLに対して、中和液10~1000μLの混合比が挙げられる。
【0042】
本発明に係る中和処理工程において、中和処理の時間(中和処理時間)としては、特に制限はなく、通常、1~10分間である。また、本発明に係る中和処理工程において、温度(中和処理温度)としても、特に制限されず、例えば、5~95℃の範囲が挙げられ、前記酸処理工程と同じ温度である方が簡便な観点からは、20~40℃であることが好ましい。
【0043】
〔測定工程〕
本発明の尿検体中ステロイド測定方法においては、次いで、前記中和処理工程後の中和処理液と、ステロイドと特異的に結合可能な抗体と、を混合してステロイドを測定する(測定工程)。
【0044】
尿検体中のステロイドが包合体を形成したままで抗体を添加して抗原抗体反応を行った場合には、抗原抗体反応が阻害されて実際のステロイド量と検出されるステロイド量との間に乖離が生じて測定値が低下してしまうが、本発明の尿検体中ステロイド測定方法においては、前記酸処理工程及び中和処理工程による前処理によって、ステロイドが十分に脱包合されるため、このような乖離が生じることを抑制することができる。
【0045】
本発明において、「測定」には、試料(中和処理液)中のステロイドの存在の有無及び量をシグナルとして取り出す検出の他、ステロイドの量の定量又は半定量が含まれる。本発明において、ステロイドの測定は、標識物質によって生じるシグナルを検出し、必要に応じてこれを定量することによって行うことが好ましい。前記「シグナル」には、呈色(発色)、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた測定方法・装置によって確認できるものも含まれる。
【0046】
本発明に係る測定工程においては、ステロイドと特異的に結合可能な抗体を用いて、抗原抗体反応による免疫学的測定を行う。このような測定方法としては、例えば、標識(標識物質)として酵素を用いるCLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)やEIA法(酵素免疫測定法);標識として放射性同位元素を用いるRIA法(放射免疫測定法);標識として化学発光性化合物を用いるCLIA法(化学発光免疫測定法);ラテックス凝集法;イムノクロマトグラフィーなどの免疫学的手法が挙げられるが、これらに制限されない。また、これらの免疫学的手法としては、非競合的測定法であっても、競合的測定法であってもよい。
【0047】
本発明において、「ステロイドと特異的に結合可能な抗体(以下、場合により「抗ステロイド抗体」という)」としては、ステロイドと結合可能である限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等)であってもよい。また、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等のいずれのアイソタイプであってもよい。本発明において、「抗体」には、完全な抗体の他、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディー等)や抗体の可変領域を結合させた低分子化抗体も含まれる。本発明に係る抗ステロイド抗体としては、好ましくは、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体としては、例えば、ハイブリドーマ法や組換えDNA法など公知の方法によって作製したものを用いることができる。
【0048】
本発明に係る抗ステロイド抗体としては、標識物質を結合させた抗体を使用することができる。前記標識物質としては、抗体に結合させて検出できるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、βガラクトシダーゼ(β-gal)等の酵素;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やローダミンイソチオシアネート(RITC)等の蛍光色素;125I等の放射性同位元素;アロフィコシアニン(APC)やフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光蛋白質;アビジン;ビオチン;ラテックス;金粒子が挙げられるが、これらに制限されない。
【0049】
前記標識物質として酵素を用いた場合には、基質として、例えば、発色基質、蛍光基質、化学発光基質等を用いることにより、前記基質に応じて種々のシグナル検出を行うことができる。
【0050】
本発明においてステロイドを測定する方法としては、前記標識物質を結合させた抗ステロイド抗体を用いて試料(中和処理液)中のステロイドを直接的に検出する方法以外に、前記抗ステロイド抗体には前記標識物質を結合させず、前記標識物質が結合した二次抗体等を利用して間接的に検出する方法を利用することもできる。ここで「二次抗体」とは、抗ステロイド抗体に対して反応性を示す抗体である。例えば、前記抗ステロイド抗体をマウス抗体として調製した場合には、当該二次抗体として抗マウスIgG抗体を使用することができる。前記二次抗体としては、ウサギ、ヤギ、マウスなどの様々な生物種に由来する抗体に対して、これらにそれぞれ使用可能な標識二次抗体が市販されており、前記抗ステロイド抗体の由来する生物種に応じて、適切な二次抗体を選択して使用することができる。また、前記二次抗体に代えて、前記標識物質を結合させたプロテインGやプロテインAなどを用いることも可能である。
【0051】
前記抗ステロイド抗体と前記標識物質、或いは前記二次抗体と前記標識物質との結合には、従来公知の方法を適宜採用することができ、また、かかる結合には、ビオチン-アビジン系を利用することもできる。この方法においては、例えば、抗ステロイド抗体をビオチン化し、これに、アビジン化した標識物質を作用させ、ビオチンとアビジンとの相互作用を利用して、抗ステロイド抗体に標識物質を結合させる。
【0052】
上記の免疫学的手法の検出原理としては、サンドイッチ法及び競合法が好適である。前記サンドイッチ法においては、固相に固定した(固相化した)捕捉用抗体(例えば、抗ステロイド抗体)で検出対象物質(例えば、抗原(ステロイド))を捕捉し、それを標識物質が結合した検出用抗体(例えば、標識物質を結合させた抗ステロイド抗体、標識物質を結合させた二次抗体等)に認識させ、前記標識物質の種類に応じた検出を行う。前記固相としては、例えば、磁性粒子やラテックス粒子等の微小粒子、プラスチックプレート等のプレート、或いはニトロセルロース等の繊維状物質を用いることができる。
【0053】
前記捕捉用抗体は前記固相に直接固定してもよいが、間接的に固定してもよい。例えば、前記捕捉用抗体に結合する物質を前記固相に固定し、当該物質に前記捕捉用抗体を結合させることにより、前記捕捉用抗体を前記固相に間接的に固定することができる。前記捕捉用抗体に結合する物質としては、例えば、上記の二次抗体、プロテインG、プロテインAなどが挙げられるが、これらに制限されない。前記固相への固定には、従来公知の方法を適宜採用することができ、また、前記捕捉用抗体がビオチン化されている場合には、アビジン化した固相を利用することができる。
【0054】
前記サンドイッチ法においては、例えば、前記中和処理液及び固相化した前記捕捉用抗体を混合して、第一抗原抗体反応(第一反応)を行い、中和処理液中のステロイドと前記捕捉用抗体との複合体(免疫複合体)を形成させ、この免疫複合体を必要に応じて分離洗浄後、これに前記標識物質が結合した検出用抗体を添加して、第二抗原抗体反応(第二反応)を行い、前記標識物質に応じて種々の検出を行うことが好ましい。
【0055】
前記検出用抗体としては、ステロイドのみに結合する抗体のみならず、ステロイドと抗体との複合体に特異的に結合する抗体を用いることもできる。
【0056】
前記サンドイッチ法としては、例えば、CLIA法の一態様であるサンドイッチCLIA法、CLEIA法の一態様であるサンドイッチCLEIA法、RIA法の一態様であるIRMA法(免疫放射定量法)が好適である。
【0057】
一方、前記競合法としては、例えば、第一の態様においては、試料中の検出対象物質(ステロイド)と固相化した競合物質(検出対象物質と同じステロイド又はこれと交差反応を生じる物質)とで、標識物質が結合した検出用抗体(例えば、標識物質を結合させた抗ステロイド抗体)への結合を競合させる。例えば、前記中和処理液、前記標識物質が結合した検出用抗体、及び固相化した前記競合物質を混合して、抗原抗体反応を行うことが好ましい。
【0058】
また、例えば、前記競合法の第二の態様においては、固相化した捕捉用抗体への結合に関して、試料中の検出対象物質と標識物質が結合した前記競合物質とを競合させる。例えば、前記中和処理液及び前記標識物質が結合した競合物質を混合し、これに固相化した前記捕捉用抗体を添加して、抗原抗体反応を行うことが好ましい。
【0059】
前記競合法における競合物質や捕捉用抗体の固相への固定には、従来公知の方法を適宜採用することができ、かかる固定としては、上記のサンドイッチ法における捕捉用抗体の固相への固定と同様であり、直接的であってもよく、間接的であってもよい。
【0060】
本発明に係る測定工程において、前記中和処理液は、そのまま測定に供することができるが、上記中和液にシクロデキストリンが添加されている場合などには、例えば、界面活性剤を含む処理液を、測定工程前の中和処理液、及び/又は、抗原抗体反応系に添加してもよい。前記界面活性剤を含む処理液としては、例えば、国際公開第2019/098314号に記載されているものが挙げられる。前記界面活性剤を含む処理液としては、例えば、抗原抗体反応系に用いる他の溶液(例えば、前記競合法の第一の態様における標識物質が結合した検出用抗体、前記競合法の第二の態様における標識物質が結合した競合物質等)に当該処理液を予め添加して用いてもよく、これらの溶液に前記界面活性剤を予め添加して当該処理液を兼ねさせてもよい。
【0061】
本発明に係る測定工程で得られた測定値からのステロイドの量の定量は、一般的に、各濃度のステロイドを含む標準溶液による測定値との比較により行う。この場合、例えば、標準溶液による測定値に基づいて作成された標準曲線上のどの位置に、被検試料(中和処理液)において得られた測定値が位置づけられるかを調べることにより、尿検体中のステロイドの量を求めることができる。
【0062】
本発明の尿検体中ステロイド測定方法は、ステロイドホルモンの分泌量異常に関連する疾患の診断(罹患やそのリスクの評価)の基礎となるステロイド濃度を測定することができるため、前記診断に利用することができる。ここで「ステロイドホルモンの分泌量異常に関連する疾患」には、ステロイドホルモンの分泌量異常に起因する疾患、及び、疾患の発症の結果としてステロイドホルモンの分泌量が異常となる疾患、の双方を含む意である。
【0063】
例えば、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、悪性高血圧、レニン産生腫瘍、バーター症候群、浮腫性疾患(肝硬変・心不全)などでは、血液中のアルドステロン濃度が高値を示し、アジソン病、21-ヒドロキシラーゼ欠損症、選択的低アルドステロン症などでは、低値を示すことが知られている。また、先天性副腎過形成、クッシング症候群、副腎腫瘍などでは、血液中のプロゲステロン濃度が高値を示し、卵巣機能不全、黄体機能不全などでは、低値を示すことが知られている。さらに、肝疾患、エストロゲン産生腫瘍、先天性副腎皮質過形成、多胎妊娠、卵巣過剰刺激症候群などでは、血液中のエストラジオール濃度が高値を示し、卵巣機能不全、早発卵巣不全、低ゴナドトロピン症、Chiari-Frommel症候群などでは、低値を示すことが知られている。
【0064】
<尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液>
本発明は、上記の本発明の尿検体中ステロイド測定方法に用いることができる、尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液も提供する。
【0065】
本発明の尿検体中ステロイド測定用キットは、
酸の規定度が1~6Nである酸溶液、
グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有する中和液、並びに、
ステロイドと特異的に結合可能な抗体
からなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、本発明の尿検体中ステロイド測定用中和液は、グッド緩衝剤、トリス緩衝剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、及び塩基性物質からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである。
【0066】
前記酸溶液、中和液、及びステロイドと特異的に結合可能な抗体(抗ステロイド抗体)としては、その好ましい態様も含めて、上述のとおりである。
【0067】
本発明のキットとしては、さらに例えば、標準ステロイド試薬、界面活性剤を含む処理液、対照試薬、洗浄液、希釈液、希釈用カートリッジなどを組み合わせることができる。また例えば、前記標識物質として酵素標識を利用する場合には、標識の検出に必要な基質や反応停止液などを含めることができる。
【0068】
さらに、前記サンドイッチ法を検出原理とする場合には、例えば、固相化したステロイド捕捉用抗体、或いはステロイド捕捉用抗体に結合する物質を固定した固相、標識物質が結合した検出用抗体などを含めることができる。一方、前記競合法を検出原理とする場合には、例えば、これらの他、固相化した競合物質、或いは競合物質に結合する物質を固定した固相などを含めることができる。
【0069】
また、一次抗体(抗原に直接結合する抗体)や二次抗体を標識しない場合には、例えば、これらの抗体に結合する物質を標識したものをキットに含めることができる。また、抗ステロイド抗体がビオチン化されている場合には、例えば、アビジン化された標識物質をキットに含めることができる。本発明のキットには、さらに、当該キットの使用説明書を含めることができる。
【0070】
本発明のキット及び中和液は、研究用としてのみならず、例えば、体外診断用医薬品として、上記ステロイドホルモンの分泌量異常に関連する疾患の診断の基礎となるステロイド濃度の定量に利用することができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例、参考例、及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「%」の表示は、特に記載のない場合は、重量/体積(w/v)パーセント(g/100mL)を示す。
【0072】
<尿検体の前処理の短時間化>
(参考例1-1)
〔前処理〕
尿検体として、ボランティアAの随時尿検体(検体A)、ボランティアBの随時尿検体(検体B)、ボランティアCの随時尿検体(検体C)を用いた。各尿検体と0.2Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、30℃において18時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸)に、MOPS濃度が50mMの中和液(50mM MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD(2-Hydroxypropyl-β-Cyclodextrin)、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.5、pKa(20℃におけるpKa、以下同じ)=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。
【0073】
〔ステロイド測定〕
測定は、各測定試料について、抗アルドステロン抗体結合粒子(従来法で調製した抗アルドステロン抗体結合磁性粒子(抗体結合粒子))及びアルカリホスファターゼ標識抗アルドステロン免疫複合体抗体(従来法で調製したアルカリホスファターゼ標識抗アルドステロン抗体(酵素標識抗体))を用いた2ステップ法で実施した。詳しくは、以下の(a)~(g)の工程で行った。
(a)抗体結合粒子約50μLに約30μLの測定試料を加えて攪拌し、37℃で8分間反応させる(第一反応)。
(b)磁気分離器を使用して磁性粒子を集磁し、洗浄を行う。
(c)酵素標識抗体約50μLを加えて攪拌し、37℃で8分間反応させる(第二反応)。
(d)磁気分離器を使用して磁性粒子を集磁し、洗浄を行う。
(e)AMPPD(基質、3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’’-ホスホリルオキシ)フェニル-1、2-ジオキセタン・2ナトリウム塩)約200μLを加えて攪拌し、37℃で4分間反応させる(酵素反応)。
(f)前記基質の分解に伴って放出される波長463nm付近に発光極大ピークをもつ光の発光量(カウント)を測定する。発光量の測定結果は、4重測定(n=4)の平均値(カウント平均)とする。
(g)測定試料に代えて標準アルドステロン試薬(富士レビオ株式会社製)を用い、(a)~(f)の工程を実施し、標準曲線を作成する。作成した標準曲線を用いて、(f)で測定されたカウントから測定試料中のアルドステロン量を算出し、測定値(pg/mL)とする。結果は、4重測定(n=4)の各カウント値から算出された各測定値の平均(測定値平均)とする。
【0074】
(参考例1-2)
中和液を、MOPS濃度が1Mの中和液(1M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.5、pKa=7.2)に代えて測定試料を調製した。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0075】
(比較例1)
各尿検体(検体A~C)と0.2Nの塩酸とを混合した後のインキュベート条件を、37℃において6.5分間に代え、かつ、中和液を、MOPS濃度が1Mの中和液(1M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.5、pKa=7.2)に代えて測定試料を調製した。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0076】
(実施例1)
各尿検体(検体A~C)と、1N(実施例1-1)、2N(実施例1-2)、3N(実施例1-3)、4N(実施例1-4)、又は5N(実施例1-5)の塩酸とを、それぞれ、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、37℃において6.5分間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.67N塩酸(実施例1-1)、1.33N塩酸(実施例1-2)、2N塩酸(実施例1-3)、2.67N塩酸(実施例1-4)、又は3.33N塩酸(実施例1-5))に、MOPS濃度が1Mの中和液(1M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.5、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0077】
下記の表1に、参考例1-1~1-2、比較例1、実施例1-1~1-5における、検体A~Cでのカウント平均及び測定値平均の結果をそれぞれ示す。また、表1には、参考例1-1のカウント平均及び測定値平均をそれぞれ100%(対照)としたときの、参考例1-2、比較例1、及び各実施例におけるカウント平均及び測定値平均の割合(カウント 対 対照(%)、測定値 対 対照(%))も示す。測定値平均の対照に対する割合は、測定系により異なる場合があるが、25%以上で、ステロイド測定に使用可能な十分な脱包合能を有すると判断できる(以下同様)。
【0078】
【0079】
表1に示したように、酸処理液における酸の規定度を0.6N以上とした場合(例えば、実施例1-1~1-5)には、酸処理の時間を6.5分間と短くしても、従来の長時間条件で酸処理を行った場合(例えば、参考例1-1~1-2)と同等の測定結果が得られ、ステロイドの脱包合が十分になされていることが確認された。他方、従来と同様に0.2Nの塩酸を用いた場合、すなわち、酸処理液における酸の規定度が0.13N程度である場合(例えば、比較例1)には、酸処理の時間を6.5分間と短くすると、同じ検体であってもカウント値平均及び測定値平均の値が著しく低下し、ステロイドの脱包合が十分になされていないことが示唆された。
【0080】
<尿検体の前処理における酸処理時間、中和液の比較1>
〔バッファー中和液〕
(参考例2-1)
尿検体として、ボランティアDの随時尿検体(検体D)を用いた。尿検体と0.2Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、30℃において18時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸)に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0081】
(実施例2-1)
尿検体(検体D)と、3N、4N、5N、又は6Nの塩酸とを、それぞれ、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、37℃において1、2、3、4、5、又は6分間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、2N、2.67N、3.33N、又は4N塩酸)に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0082】
図1に、酸処理時間と、参考例2-1の測定値平均を100%(対照)としたときの、実施例2-1における各測定値平均の割合(対 0.2N HCl、18h、30℃ 酸処理測定値(%))との関係を示す。
【0083】
〔脱脂血清中和液〕
(参考例2-2)
尿検体(検体D)と、0.2Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、30℃において18時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸)に、中和液として、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0084】
(実施例2-2)
尿検体(検体D)と、3Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、37℃において1、2、3、4、5、又は6分間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、2N塩酸)に、中和液として、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0085】
図2に、酸処理時間と、参考例2-2の測定値平均を100%(対照)としたときの、実施例2-2における測定値平均の割合(対 0.2N HCl、18h、30℃ 酸処理測定値(%))との関係を示す。
【0086】
図1に示したように、酸処理における酸の規定度が大きいほど、酸処理の時間が短くなる傾向にあることが確認された。さらに、
図2に示したように、中和液として脱脂血清を用いても(例えば、実施例2-2)、短時間の酸処理で、従来の長時間条件で酸処理を行った場合(例えば、参考例2-2)に近いレベルの測定結果が得られることが確認された。ただし、脱脂血清ベースの中和液を用いた場合には、酸処理における酸の規定度をさらに大きくすると測定値平均の値が低下する傾向にあった。これは、脱脂血清の中和能が緩衝液に比べると低いため、酸濃度の高い酸処理液を十分に中和できず、抗原抗体反応が阻害されたためであると推察される。これらの結果より、中和液として緩衝液ベースの中和液を用いた場合(例えば、実施例2-1)の方が、脱脂血清ベースの中和液を用いた場合(例えば、実施例2-2)よりも、酸処理における酸濃度をより高くすることができるため、酸処理時間をより短時間化できることが確認された。
【0087】
<尿検体の前処理における中和液の比較2>
(参考例3)
〔バッファー中和液〕
尿検体として、ボランティアEの随時尿検体(検体E)を用いた。尿検体と0.2Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、30℃において18時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸)に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0088】
〔脱脂血清中和液〕
また、中和液を、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)に代えたこと以外は上記と同様にして測定試料を調製し、ステロイド測定を行った。
【0089】
(比較例3、実施例3)
〔バッファー中和液〕
尿検体(検体E)と、0.2N(比較例3)、1N(実施例3-1)、2N(実施例3-2)、又は3N(実施例3-3)の塩酸とを、それぞれ、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、37℃において6.5分間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸(比較例3)、0.67N塩酸(実施例3-1)、1.33N塩酸(実施例3-2)、又は2N塩酸(実施例3-3))に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0090】
〔脱脂血清中和液〕
また、中和液を、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)に代えたこと以外は上記と同様にして各測定試料を調製し、それぞれ、ステロイド測定を行った。
【0091】
下記の表2に、参考例3、比較例3、実施例3-1~3-3における測定値平均と、参考例3の各中和液を用いたときの測定値平均を100%(対照)としたときの、比較例3及び実施例3-1~3-3における各中和液を用いたときの測定値平均の割合(測定値 対 対照(%))とをそれぞれ示す。
【0092】
【0093】
表2に示したように、酸処理液における酸の規定度を0.6N以上とすることで(例えば、実施例3-1~3-3)、酸処理の時間を6.5分間と短くしても、従来の長時間条件で酸処理を行った場合(例えば、参考例3)と同等の測定結果が得られることが確認され、少なくとも2N程度までは、中和液としてバッファーを用いた場合と脱脂血清を用いた場合とで同様の挙動を示すことが確認された。ただし、中和液として脱脂血清を用いた場合には、酸処理における酸の規定度をさらに大きくすると、中和液としてバッファーを用いた場合に比べると測定値平均の値が低下する傾向にあった。
【0094】
<尿検体の前処理における中和液の比較3>
(参考例4)
〔バッファー中和液〕
尿検体として、ボランティアFの随時尿検体(検体F)を用いた。尿検体と0.2Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、30℃において18時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.13N塩酸)に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0095】
〔脱脂血清中和液〕
また、中和液を、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)に代えたこと以外は上記と同様にして測定試料を調製し、ステロイド測定を行った。
【0096】
(実施例4)
〔バッファー中和液〕
尿検体(検体F)と1Nの塩酸とを、体積比(尿検体:塩酸)で1:2となるように混合し、37℃において10分間、30分間、1時間、2時間、又は3時間インキュベートして酸処理をした。次いで、酸処理後の溶液(酸処理液、0.67N塩酸)に、中和液として、MOPS濃度が2Mのバッファー(2M MOPS、150mM NaCl、1% HPβCD、0.025% Lipidure802(日油株式会社製)、pH7.3、pKa=7.2)を、体積比(酸処理液:中和液)が1:9となるように混合し、測定試料(中和処理液)とした。得られた測定試料を用いたこと以外は参考例1-1と同様にして、ステロイド測定を行った。
【0097】
〔脱脂血清中和液〕
また、中和液を、脱脂血清(「DDC Mass Spect Gold」、ステロイド系ホルモン及びコレステロール・TGフリー血清、株式会社ベリタス製)に代えたこと以外は上記と同様にして各測定試料を調製し、それぞれ、ステロイド測定を行った。
【0098】
図3に、酸処理時間と、参考例4の測定値平均を100%(対照)としたときの、実施例4における測定値平均の割合(対 0.2N HCl、18h、30℃ 酸処理測定値(%))との関係を示す。
【0099】
図3に示したように、少なくとも酸処理液における酸の規定度が0.67Nの場合、中和液のベースとしてバッファーを用いた場合と脱脂血清を用いた場合とで同様の挙動を示し、いずれも酸処理の時間を十分に短くできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも短時間で尿検体の前処理が可能な、尿検体中ステロイド測定方法、並びに、それに用いる尿検体中ステロイド測定用キット及び中和液を提供することが可能となる。また、これにより、尿検体の前処理から測定完了までを一貫して自動化することも可能となる。ステロイド活性は、様々な疾患と関連することから、本発明は、研究上の利用にとどまらず、疾患の診断においても大きく貢献しうるものである。