(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】高い剛性特性を有するポリプロピレンポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20241008BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L23/10
C08F10/06
(21)【出願番号】P 2021557664
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 US2020026548
(87)【国際公開番号】W WO2020206229
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールト、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チン
(72)【発明者】
【氏名】モントーヤ-ゴニ、アマイア
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535802(JP,A)
【文献】特表2003-509562(JP,A)
【文献】特開2002-294010(JP,A)
【文献】特表2018-531888(JP,A)
【文献】特開2018-135419(JP,A)
【文献】特開2019-019289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00、301/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンポリマー組成物であって、
第2のポリプロピレンポリマーと組み合わされた第1のポリプロピレンポリマーを含み、前記第1のポリプロピレンポリマーが、0.1g/10分~3g/10分のメルトフローレートを有し、かつ1.0重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有し、前記第2のポリプロピレンポリマーが、5g/10分~100g/10分のメルトフローレートを有し、かつ1重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有し、前記ポリプロピレンポリマー組成物が、以下の式による曲げ弾性率を有し、
FX≧2072*XS
-0.18
式中、FXが、前記曲げ弾性率であり、XSが、前記ポリプロピレンポリマー組成物の前記キシレン可溶分含量であり、前記ポリプロピレンポリマー組成物の前記キシレン可溶分含量が、2.5重量%~7重量%であり;
メルトフローレートは、ASTM D 1238試験法に従って、230℃で、2.16kgの重量のプロピン系ポリマーを用いて測定され;および
曲げ弾性率は、ASTM 3641による、かつASTM D4101に従って成形された1型試験片を使用して、ASTM D790-10法Aに従って1.3mm/分で決定される、
ポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のポリプロピレンポリマーが、2.5重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有し、前記第2のポリプロピレンポリマーが、2.5重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレンポリマーのうちの一方が、5重量%超のキシレン可溶分含量を有し、他方のポリプロピレンポリマーが、4重量%未満のキシレン可溶分含量を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリプロピレンポリマーのうちの一方が、6重量%超のキシレン可溶分含量を有し、他方のポリプロピレンポリマーが、4重量%未満のキシレン可溶分含量を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項5】
前記第1のポリプロピレンポリマーが、66重量%未満の量で、かつ30%超の量で、前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、核形成剤を含有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が、核形成剤を含有しない、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、0.5g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有し、かつ3重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、5~10の多分散性指数を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項10】
前記第1のポリプロピレンポリマーが、4~5.5の多分散性指数を有し、前記第2のポリプロピレンポリマーが、4~5.5の多分散性指数を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項11】
前記第1のポリプロピレンポリマーと前記第2のポリプロピレンポリマーとの間の重量比が、5:95~80:20である、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項12】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーが両方とも、非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒化ポリプロピレンポリマーを含む、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、1,500MPa~2,500MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項14】
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、0.5g/10分~3g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項15】
前記組成物が、3.5重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有する、請求項14に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリプロピレン組成物が、5g/10分~30g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、40J/m超かつ90J/m未満のIZOD耐衝撃性を有する、請求項1に記載のポリプロピレンポリマー組成物。
【請求項18】
ポリプロピレンポリマー組成物を製造する方法であって、前記方法が、非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンモノマーを重合して、前記ポリプロピレンポリマー組成物を生成することを含んでなり、
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、第2のポリプロピレンポリマーと組み合わされた第1のポリプロピレンポリマーを含み、前記第1のポリプロピレンポリマーが、0.1g/10分~3g/10分のメルトフローレートを有し、かつ1.0重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有し、前記第2のポリプロピレンポリマーが、5g/10分~100g/10分のメルトフローレートを有し、かつ1重量%~7重量%のキシレン可溶分含量を有し、
前記ポリプロピレンポリマー組成物が、以下の式による曲げ弾性率を有し、
FX≧2072*XS
-0.18
式中、FXが、前記曲げ弾性率であり、XSが、前記ポリプロピレンポリマー組成物の前記キシレン可溶分含量であり、前記ポリプロピレンポリマー組成物の前記キシレン可溶分含量が、2.5重量%~7重量%であり;
メルトフローレートは、ASTM D 1238試験法に従って、230℃で、2.16kgの重量のプロピン系ポリマーを用いて測定され;および
曲げ弾性率は、ASTM 3641による、かつASTM D4101に従って成形された1型試験片を使用して、ASTM D790-10法Aに従って1.3mm/分で決定される、
方法。
【請求項19】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーがそれぞれ、気相反応器内で形成される、請求項18に記載の
方法。
【請求項20】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーがそれぞれ、バルク相反応器内で形成される、請求項18に記載の
方法。
【請求項21】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーのうちの一方が、気相反応器内で形成され、前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーのうちの他方が、バルク相反応器内で形成される、請求項18に記載の
方法。
【請求項22】
前記第1のポリプロピレンポリマーが、バルク相反応器内で形成され、前記第2のポリプロピレンポリマーが、気相反応器内で形成される、請求項21に記載の
方法。
【請求項23】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーのそれぞれが、別個の反応器内で形成され、次いで一緒に組み合わされる、請求項18に記載の
方法。
【請求項24】
前記第1のポリプロピレンポリマー及び前記第2のポリプロピレンポリマーが、一連の反応器内で順次形成される、請求項18に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/830,007号に基づき、かつその優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多くのポリマー材料の1つの重要な特性は、剛性である。剛性は、材料の硬性特性を指し、材料の曲げ弾性率を決定することによって測定することができる。曲げ弾性率は、材料の屈曲する能力、又は、換言すれば、ポリマーから形成された成形プラークに対して力が垂直に印加されたときの屈曲に対するその抵抗性に関する。
【0003】
剛性を増加させて作製されたポリマーは、製品及び物品に成形されるときに、様々な利点を提供する。例えば、高剛性ポリマーは、一般に、外部力を受けたときに変形しない。したがって、自立型及び形状保持製品は、高剛性ポリマーから作製することができる。例えば、ポリマーの剛性を増加させることにより、容器などの様々なポリマー物品の壁厚を最小化しながら、依然として十分な硬性及び形状適合特性を有するようにすることができる。
【0004】
過去には、ポリプロピレンポリマーの剛性を増加させるために、様々な取り組みが行われてきた。例えば、過去には、ポリプロピレンポリマーの剛性は、材料の結晶化度を増加させることによって増加された。材料の結晶化度を増加させることにより、所望の剛性の増加がもたらされた。しかしながら、様々な問題が生じた。
【0005】
例えば、ポリプロピレンポリマーの結晶化度を増加させることにより、ポリマーの靭性が低減し、最終製品の脆性をもたらし得る。加えて、高結晶性ポリプロピレンは、加工することがいくらか困難であり得る。例えば、ポリプロピレンポリマーの結晶化度を増加させることにより、ポリマーを溶融加工するための操作窓が短くなり得、このことは、製品の形成の困難さを増加させる。
【0006】
更に、高結晶性ポリプロピレンは、生成することがいくらか高価であり得る。例えば、ポリマーの結晶化度を増加させることにより、ポリマーを生成するために使用される触媒の有効性が低下し得る。例えば、チーグラー・ナッタ触媒は、ポリマーの結晶化度が増加するにつれて触媒活性が低下する。結果的に、ポリマーを生成するためにより多量の触媒が必要とされ、このことは、ポリマーの作製コストを大幅に増加し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の見解から、比較的高い剛性特性及び高い靭性特性を有するポリプロピレンポリマー組成物に対する必要性が存在する。また、触媒活性を低下させることなく、高い剛性特性を有するポリプロピレンポリマー組成物を生成するためのプロセスに対する必要性も存在する。
【0008】
概して、本開示は、比較的高い剛性特性を有するポリプロピレンポリマー組成物を対象とする。本開示のポリマー組成物は、触媒活性を犠牲にすることなく、かつ広範な分子量分布を有して、生成することができる。広範な分子量分布は、組成物の加工性を向上させる。
【0009】
一実施形態では、本開示は、第1のポリプロピレンポリマーを第2のポリプロピレンポリマーと共に含む、ポリプロピレンポリマー組成物を対象とする。第1のポリプロピレンポリマーは、約0.1g/10分超かつ約3g/10分未満のメルトフローレートを有する。第1のポリプロピレンポリマーは、約1重量%超、例えば約2.5重量%超、例えば約3重量%超、例えば約3.5重量%超、かつ一般に約8重量%未満、例えば約7重量%未満のキシレン可溶分含量を有する。一態様では、キシレン可溶分含量は、約5重量%超、例えば約6重量%超である。別の態様では、キシレン可溶分含量は、約4重量%未満である。第1のポリプロピレンポリマーは、一般に、約4超かつ約10未満の多分散性指数を有し得る。
【0010】
第1のポリプロピレンポリマーに添加される第2のポリプロピレンポリマーは、約5g/10分超かつ約100g/10分未満のメルトフローレートを有し得る。第2のポリプロピレンポリマーは、約1重量%超、例えば約2.5重量%超、例えば約3重量%超、例えば約4重量%超、かつ一般に、約8重量%未満、例えば約7重量%未満のキシレン可溶分含量を有し得る。第2のポリプロピレンポリマーは、約4超かつ約5.5未満の多分散性指数を有し得る。
【0011】
一態様では、ポリプロピレンポリマーのうちの一方は、約5重量%超、例えば約6重量%超のキシレン可溶分含量を有し、他方のポリプロピレンポリマーは、約4重量%未満のキシレン可溶分含量を有する。
【0012】
第1のポリプロピレンポリマーは、第2のポリプロピレンポリマーに対して約5:95~約80:20、例えば約30:70~約67:33の重量比で、ポリプロピレンポリマー組成物中に存在し得る。特定の一実施形態では、第1の低メルトフローレートのポリプロピレンポリマーは、第2のポリプロピレンポリマーよりも少ない量で存在する。例えば、一実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー対第2のポリプロピレンポリマーの重量比は、約5:95~約45:55であり得る。全体的なポリプロピレンポリマー組成物は、一般に、約0.5g/10分超、例えば約0.7g/10分超、例えば約1g/10分超、かつ一般に、約30g/10分未満、例えば約25g/10分未満、例えば約20g/10分未満のメルトフローレートを有し得る。一実施形態では、例えば、メルトフローレートは、約0.5g/10分~約3g/10分であり得る。代替的な実施形態では、メルトフローレートは、約5g/10分~約20g/10分であり得る。
【0013】
ポリプロピレンポリマー組成物は、一般に、約3重量%超、例えば約3.5重量%未満、例えば約4重量%超、かつ一般に、約8重量%未満、例えば約7重量%未満、例えば約6.8重量%未満の総キシレン可溶分含量を有し得る。ポリプロピレンポリマー組成物は、約5超かつ約10未満の全体多分散性指数を有し得る。
【0014】
上記のように、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、比較的高い剛性特性を有する。例えば、ポリプロピレンポリマー組成物は、以下の等式による曲げ弾性率(ASTM試験D790)を有し得、
2072*XS-0.18
式中、XSは、ポリプロピレンポリマー組成物のキシレン可溶分含量であり、ポリプロピレンポリマー組成物のキシレン可溶分含量は、約2.5重量%~約8重量%であり得る。
【0015】
例えば、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、約1500MPa超、例えば約1550MPa超、例えば約1600MPa超、例えば約1650MPa超、例えば約1700MPa超、かつ一般に、約2500MPa未満の曲げ弾性率を有し得る。優れた剛性特性を有することに加えて、ポリプロピレンポリマー組成物はまた、約40J/m超、例えば約45J/m超、例えば約55J/m超、かつ一般に、約90J/m未満のIZOD耐衝撃性を表示し得る。
【0016】
一実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは両方とも、ポリプロピレンホモポリマーを含むことができる。代替的な実施形態では、ポリプロピレンポリマーのうちの少なくとも一方は、エチレン単位を含有するコポリマーなどのコポリマーであり得る。
【0017】
本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、一実施形態では、非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンポリマーが重合されるプロセスにおいて形成することができる。チーグラー・ナッタ触媒は、約50kg/g超の触媒活性を有して、ポリプロピレンポリマー組成物を生成することができる。ポリプロピレンポリマーは、気相反応器内で、又はバルク相反応器内で生成することができる。一実施形態では、第1及び第2のポリプロピレンポリマーのそれぞれは、別個のプロセスで形成され、次いで組み合わされる。あるいは、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、一連の反応器内で順次形成することができる。
【0018】
本開示のポリプロピレンポリマー組成物を使用して、ありとあらゆる種類の成形物品を形成することができる。一実施形態では、ポリマー組成物を使用して、任意の好適な熱成形プロセス又は成形プロセスを使用して、ありとあらゆる種類の成形物品を製造することができる。例えば、物品は、押出吹込成形、射出成形、回転成形、押出などを使用して製造することができる。また、ポリプロピレンポリマー組成物を使用して、二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造することもできる。本開示に従って作製され得る物品としては、食品容器などの貯蔵容器又は包装容器が挙げられる。
【0019】
本開示の他の特性及び態様を以下でより詳細に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含めて、本明細書の残りの部分に、より具体的に記載される。
【
図1】
図1は、以下の実施例で得られた結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び図面における参照文字の使用を繰り返すことは、本発明の同じ又は類似の特性又は要素を表すことが意図される。
定義及び試験手順
【0022】
本明細書で使用される場合、「ポリプロピレンホモポリマー」という用語は、プロピレンモノマー単位を含有するホモポリマーである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「プロピレン-エチレンコポリマー」という用語は、二次構成成分としてエチレンモノマーを有するプロピレンモノマーの大部分の重量パーセントを含有するコポリマーである。「プロピレン-エチレンコポリマー」(ポリプロピレンランダムコポリマー、PPR、PP-R、RCP、又はRACOとも称される)は、ポリマー鎖内にランダム又は統計的な分布で存在するエチレンモノマーの個々の繰り返し単位を有するポリマーである。
【0024】
本明細書で使用される場合、メルトフローレート(Melt flow rate、MFR)は、ASTM D 1238試験法に従って、230℃で、2.16kgの重量のプロピン系ポリマーを用いて測定する。
【0025】
キシレン可溶分(Xylene soluble、XS)は、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂の試料を熱いキシレン中に溶解し、溶液を25℃に冷却させた後に、溶液中に残存する樹脂の重量パーセントとして定義する。これは、90分の沈殿時間を使用するASTM D5492-06に従って重量XS法とも称され、本明細書では「湿式法」とも称される。XSはまた、Viscotek法に従って、以下のように測定することができる:0.4gのポリマーを、130℃で60分間撹拌しながら20mLのキシレン中に溶解する。次いで、溶液を25℃に冷却し、60分後、不溶性ポリマー画分を濾別する。得られた濾液を、1.0mL/分で流動するTHF移動相を有するViscotek ViscoGEL H-100-3078カラムを使用して、フローインジェクションポリマー分析により分析する。カラムを、45℃で動作する光散乱、粘度計、及び屈折計の検出器を備えたViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに連結する。計器較正を、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準を用いて維持する。参照材料として2軸配向ポリプロピレン(biaxially oriented polypropylene、BOPP)グレードのDow 5D98などのポリプロピレン(polypropylene、PP)ホモポリマーを使用して、Viscotek計器及び試料調製手順が、方法性能を確認する対照として5D98などのポリプロピレンホモポリマーを使用することによって一貫した結果をもたらすことを確実にする。5D98などの参照ポリプロピレンホモポリマーの値を、最初に、上記で特定されたASTM法を使用する試験から導き出す。
【0026】
上述のASTM D5492-06法を適合して、キシレン可溶性部分を決定してもよい。概して、手順は、試料を2g秤量することと、その試料を24/40ジョイントを備える400mLフラスコ中の200mLのo-キシレン中に溶解させることとからなる。フラスコを水冷コンデンサに接続し、内容物を撹拌し、窒素(N2)下で加熱還流し、次いで、更に30分間還流を維持する。次いで、溶液を温度制御された水浴内で25℃で90分間冷却して、キシレン不溶性画分を結晶化させる。溶液が冷却し、不溶性画分が溶液から沈殿した時点で、キシレン可溶性部分(xylene soluble portion、XS)のキシレン不溶性部分(xylene insoluble portion、XI)からの分離を、25ミクロン濾紙を通して濾過することによって達成する。100mLの濾液を、予め秤量したアルミニウムパン内に収集し、o-キシレンを、この100mLの濾液から窒素流下で蒸発させる。溶媒が蒸発した時点で、パン及び内容物を100℃の真空オーブン内に30分間又は乾燥するまで設置する。次いで、パンを室温に冷却させ、秤量する。キシレン可溶性部分は、XS(重量%)=[(m3-m2)*2/m1]*100として計算し、式中、m1は、使用される試料の元の重量であり、m2は、空のアルミニウムパンの重量であり、m3は、パン及び残渣の重量である(アスタリスク*は、ここで及び本開示の他の場所で、特定された用語又は値が乗算されていることを示す)。
【0027】
エチレン含量は、主な方法として13C NMRを使用して決定されたエチレン値と相関する、フーリエ変換赤外線法(Fourier Transform Infrared、FTIR)を使用して測定する。2つの方法を使用して実行される測定間の関係及び一致は、例えば、J.R.Paxson、J.C.Randallの「Quantitative Measurement of Ethylene Incorporation into Propylene Copolymers by Carbon-13 Nuclear Magnetic Resonance and Infrared Spectroscopy」,Analytical Chemistry,Vol.50,No.13,Nov.1978,1777-1780に記載されている。
【0028】
曲げ弾性率は、ASTM 3641による、かつASTM D4101に従って成形された1型試験片を使用して、ASTM D790-10法Aに従って1.3mm/分で決定する。
【0029】
多分散性指数は、小さな振幅の振動剪断(small amplitude oscillatory shear、SAOS)によって測定する。試験は、Zeichner G R,Patel P D(1981)「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」Proc.(the 2nd World Congress of Chemical Eng.,Montreal,Canada)に従う方法を使用して、TA Instrumentsによって製造された応力制御動的分光計であるARES G2(TA instrument)を使用して行う。ETCオーブンを使用して、180℃±0.1℃で温度を制御する。窒素を使用してオーブンの内部をパージして、試料を酸素及び水分による分解から保護する。試料ホルダーは、直径25mmの平行プレートである。試料は、直径25mm及び厚さ2mmで、230℃で圧縮成形した。振動周波数掃引を使用して、窒素雰囲気下、190℃で、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)を得る。190℃でのG’及びG’’のクロスオーバー、Gcを使用して、以下の等式を使用して多分散性(PDI)を計算する。
PDI=105/Gc
試験方法はまた、異なる試料サイズ及びコーンプレートレオメトリーを用いる米国特許第9,045,570号にも一般に記載されている。
【0030】
IZOD衝撃強度は、ASTM D 256及びD4101に従って測定する。
【0031】
詳細な説明
本考察は、例示的な実施形態のみの説明であり、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことが当業者に理解されよう。
【0032】
概して、本開示は、物理的特性の特有のブレンドを有するポリオレフィンポリマー組成物を対象とする。例えば、一実施形態では、ポリマー組成物は、比較的高い剛性特性を優れた靭性特性と共に有するように配合することができる。加えて、ポリマー組成物は、良好な流動特性を有するように配合することができる。したがって、ポリマー組成物は、熱成形製品、及び射出成形物品などの成形物品を形成するのに特によく適している。一実施形態では、例えば、ポリマー組成物を使用して容器を形成することができる。ポリマー組成物の剛性及び靭性特性により、容器、及び内部容積を有する他の物品を、最小の壁厚で形成することができる。このように、ポリマー物品を、最小量のポリマー組成物を使用して、効率的に形成することができる。
【0033】
特定の利点の中でも、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、高い剛性特性を有しながら、広範な分子量分布も有し、重合プロセス中に高い触媒活性を維持する触媒系を使用して配合することができる。例えば、本開示のポリマーの重合中、ポリマー組成物の生成中に約50kg/g超、約55kg/g超、例えば約60kg/g超の活性を維持する、非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒を使用することができる。
【0034】
概して、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、ポリマーのブレンドを含む。より具体的には、ポリマー組成物は、第2のポリプロピレンポリマーと組み合わされた第1のポリプロピレンポリマーを含む。第1のポリプロピレンポリマーは、第2のポリプロピレンポリマーと比較して、比較的低いメルトフローレートを有する。予想外にも、所望の高い剛性特性を有するポリマー組成物を得るために、比較的少量の低メルトフローレートのポリマーが第2のポリプロピレンポリマーと組み合わせて必要とされることが発見された。実際に、低メルトフローレートのポリプロピレンポリマーは、50重量%未満の量で、例えば40重量%未満の量で、例えば30重量%未満の量で、例えば20重量%未満の量で存在し得、依然として優れた剛性特性を有する全体的なポリマー組成物を提供し得る。これらの結果は、劇的かつ予想外である。
【0035】
加えて、上記のように、比較的広範な分子量分布を有するポリプロピレンポリマー組成物を生成することができる。広範な分子量分布は、組成物の加工性を著しく向上させる。
【0036】
更に、第1及び第2のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量は、ポリマーの生成中に高い触媒活性を維持しながら、剛性も最大化するように、選択的に制御される。例えば、得られたポリマー組成物は、以下の等式に従って曲げ弾性率を示すことができ、
2072*XS-0.18
式中、XSは、ポリプロピレンポリマー組成物のキシレン可溶分含量である。ポリプロピレンポリマー組成物のキシレン可溶分含量は、例えば、約2.5重量%~約8%であり得る。
【0037】
例えば、一実施形態では、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、約1500MPa超、例えば、約1550MPa超、例えば約1600MPa超、例えば約1650MPa超、例えば約1700MPa超、例えば約1750MPa超、かつ一般に、約2500MPa未満、例えば約2000MPa未満の曲げ弾性率を有し得る。例えば、一実施形態では、ポリプロピレンポリマー組成物は、約1525MPa超かつ約2000MPa未満、及びその間の25MPaの増分全てを含む、曲げ弾性率を有し得る。
【0038】
優れた剛性特性に加えて、本開示のポリプロピレンポリマー組成物はまた、優れた靭性特性も有する。例えば、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、約40J/m超、例えば約50J/m超、例えば約55J/m超、例えば約60J/m超、例えば約65J/m超のIZOD衝撃強度を有し得る。IZOD耐衝撃性強度は、一般に、約90J/m未満、例えば約80J/m未満である。
【0039】
上記のように、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、第2のポリプロピレンポリマーとブレンドされた第1のポリプロピレンポリマーを含む。第1のポリプロピレンポリマーは、一般に、低いメルトフローレートを有し、得られる組成物の剛性特性に著しく寄与する。例えば、第1のポリプロピレンポリマーは、約3g/10分未満、例えば約1g/10分未満、例えば約0.8g/10分未満、例えば約0.5g/10分未満、かつ一般に、約0.01g/10分超、例えば約0.1g/10分超のメルトフローレートを有し得る。第1のポリプロピレンポリマーは、低メルトフローレートを有するが、一般に、約2.5重量%超、例えば約3重量%超、例えば約3.5重量%超、例えば約4重量%超、例えば約4.5重量%超、かつ一般に、約8重量%未満、約7重量%未満のキシレン可溶分含量を有する。第1のポリプロピレンポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒を使用して形成することができ、かつ比較的広範な分子量分布を有し得る。一実施形態では、第1のポリプロピレンポリマーは、約4超、かつ一般に、約10未満、例えば約8.5未満、例えば約7未満、例えば約5.5未満の多分散性指数を有する。
【0040】
第1のポリプロピレンポリマーと組み合わされた第2のポリプロピレンポリマーは、一般に、より高いメルトフローレートを有する。例えば、第2のポリプロピレンポリマーは、一般に、約5g/10分超、例えば約7g/10分超、例えば約9g/10分超のメルトフローレートを有し得る。メルトフローレートは、一般に、約100g/10分未満、例えば約40g/10分未満、例えば約30g/10分未満、例えば約25g/10分未満である。第2のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量は、第1のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量と同様である。例えば、第2のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量は、一般に、約1重量%超、例えば約2重量%超、例えば約2.5重量%超、例えば約3重量%超、例えば約4重量%超である。ある特定の実施形態では、第2のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量は、約5重量%超、例えば約6重量%超、例えば約6.5重量%超であり得る。第2のポリプロピレンポリマーのキシレン可溶分含量は、一般に、約10重量%未満、例えば約9重量%未満、例えば約8重量%未満、例えば約7.5重量%未満である。
【0041】
第2のポリプロピレンポリマーはまた、重合中に高い触媒活性を維持するチーグラー・ナッタ触媒を使用して形成することもできる。第2のポリプロピレンポリマーは、比較的広範な分子量分布を有し得、約4超、かつ一般に、約10未満、例えば約8.5未満、例えば約7未満、例えば約5.5未満の多分散性指数を有し得る。
【0042】
第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、一実施形態では、両方ともポリプロピレンホモポリマーであり得る。代替的な実施形態では、ポリプロピレンポリマーのうちの一方は、コポリマーであり得る。例えば、第1のポリプロピレンポリマーは、ホモポリマーであり得、一方、第2のポリプロピレンポリマーは、コポリマーであり得る。あるいは、第1のポリプロピレンポリマーは、コポリマーであり得、第2のポリプロピレンポリマーは、ホモポリマーであり得る。更に別の実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは両方とも、コポリマーである。コポリマーとして存在する場合、ポリプロピレンポリマーの一方又は両方は、エチレンなどの少量のコモノマーを含み得る。例えば、エチレンは、約1.5重量%未満の量で、例えば1重量%未満の量で存在し得る。コポリマーは、ミニ・ランダムコポリマーなどのランダムコポリマーであり得る。
【0043】
本開示によれば、第1のポリプロピレンポリマーは、第2のポリプロピレンポリマーとブレンドされて、ポリプロピレンポリマー組成物を生成する。最終組成物中の第1のポリプロピレンポリマーと第2のポリプロピレンポリマーとの間の重量比は、一般に、約5:95~約80:20、例えば約30:70~約67:33である。一実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー又は低メルトフローレートのポリプロピレンポリマーは、第2のポリプロピレンポリマーよりも少ない量で存在し得るが、依然として所望の剛性特性を有することができる。例えば、存在する2つのポリプロピレンポリマーの重量に基づいて、第1のポリプロピレンポリマーは、約50重量%未満の量で、例えば約45重量%未満の量で、例えば約40重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で、例えば約30重量%未満の量で、約25重量%未満の量、例えば約20重量%未満の量で、かつ一般に、約5重量%超の量で、例えば約10重量%超の量で、例えば約15重量%超の量で、例えば約20重量%超の量で存在し得る。一態様では、第1のポリプロピレンポリマーは、約30重量%~約66重量%、例えば約30重量%~約50重量%、例えば約30重量%~約45重量%の量でポリマー組成物中に存在する。
【0044】
得られるポリプロピレンポリマー組成物は、良好な剛性特性を有するだけでなく、特に広範な分子量分布に起因して、様々な物品を製造するための熱成形プロセス及び射出成形プロセスなどの成形プロセスにもよく適している。例えば、組成物は、約0.5g/10分超、例えば約0.7g/10分超、例えば約1g/10分超、例えば約2g/10分超、例えば約3g/10分超、例えば約5g/10分超、例えば約8g/10分超、例えば約10g/10分超、例えば約12g/10分超、例えば約15g/10分超のメルトフローレートを有し得る。メルトフローレートは、一般に、約30g/10分未満、例えば約25g/10分未満、例えば約20g/10分未満である。一実施形態では、ポリプロピレン組成物のメルトフローレートは、比較的低い場合があり、約0.5g/10分~約3g/10分であり得る。あるいは、メルトフローレートはより高い場合があり、一般に、約5g/10分~約20g/10分であり得る。メルトフローレートを、異なるポリマーの相対量を調整することによって調整して、所望の流動特性と併せて所望の物理的特性を有するポリマー組成物を生成することができる。
【0045】
ポリプロピレンポリマー組成物の総キシレン可溶分含量は、一般に、約2重量%超、例えば約2.5重量%超、例えば約3重量%超、例えば約3.5重量%超である。総キシレン可溶分含量は、一般に、約10重量%未満、例えば約8重量%未満、例えば約7重量%未満、例えば約6.8重量%未満である。ポリマー組成物の多分散性指数は、一般に、約4超、例えば約5超、例えば約6超、かつ一般に、約10未満、例えば約9未満、例えば約8未満である。
【0046】
第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーに加えて、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、様々な他の添加剤及び成分を含有し得る。
【0047】
例えば、ポリプロピレン組成物は、核形成剤、離型剤、スリップ剤、粘着防止剤、UV安定剤、熱安定剤(例えばDSTDP)、着色剤/染料等を含有し得る。一実施形態では、ポリマー組成物は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤を含有し得る。ポリマー組成物はまた、酸掃去剤を含有し得る。添加剤のそれぞれは、一般に、約3重量%未満の量で、例えば約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で、例えば約0.5重量%未満の量で、かつ一般に、約0.001重量%超の量でポリマー組成物中に存在し得る。
【0048】
例えば、一実施形態では、ポリマー組成物は、任意に、アルファ-核形成剤などの核形成剤を含有し得る。核形成剤は、一般に、約0.001重量%超の量で、かつ一般に、約1重量%未満の量で、例えば約0.5重量%未満の量で、例えば約0.3重量%未満の量で存在し得る。
【0049】
一実施形態では、タルクなどの無機核形成剤が使用され得る。他の核形成剤としては、安息香酸ナトリウム、又はロジン酸の部分金属塩などのポリマー核形成剤が挙げられる。
【0050】
別の実施形態では、核形成剤は、以下の式によって表されるリン酸エステル金属塩のようなリン系核形成剤の群から選択され得、
【化1】
式中、R1は、酸素、硫黄、又は1~10個の炭素原子の炭化水素基であり、R2及びR3のそれぞれは、水素、又は1~10個の炭素原子の炭化水素基であり、R2及びR3は、互いに同じであり得るか又は異なり得、R2のうちの2つ、R3のうちの2つ、又はR2及びR3は、一緒に結合して環を形成し得、Mは、一価~三価の金属原子であり、nは、1~3の整数であり、mは、0又は1のいずれかであり、但し、n>mである。
【0051】
上記式によって表されるアルファ核形成剤の好ましい例としては、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6ジ-t-ブチル-フェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート]、カルシウムビス[2,2’-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、カルシウムビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-t-オクチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジメチル-フェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム(4,4’-ジメチル-5,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート、カルシウム-ビス-[(4,4’-ジメチル-6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチル-フェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-メチルフェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-エチル-フェニル)ホスフェート、カリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)ホスフェート]、アルミニ-トリス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]が挙げられる。
【0052】
リン系核形成剤の第2の群としては、例えば、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホチン-6-オキシダート]及びこれらのLi-ミリステート又はLi-ステアレートとのブレンドが挙げられる。
【0053】
リン系核形成剤の中でも、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、若しくはアルミウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート]、若しくはアルミニウム-ヒドロキシ-ビス-[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホチン-6-オキシダート]、又はこれらのLi-ミリステート又はLi-ステアレートとのブレンドが特に好ましい。
【0054】
また、任意に置換されたジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールなど)のようなソルビトール系核形成剤又は松脂も、核形成剤として使用することができる。
【0055】
更なる好適なアルファ-核形成剤は、ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマーからなる群から選択される、ポリマー核形成剤である。これらのポリマー核形成剤を用いた核形成は、触媒を例えばビニルシクロヘキサン(vinylcyclohexane、VCH)のようなモノマーで予備重合する特別な反応器技法によって、又はプロピレンポリマーをビニル(シクロ)アルカンポリマーとブレンドすることによって、のいずれかで達成される。
【0056】
ADK NA-11(メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩)及びADK NA-21(アルミニウムヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホチン-6-オキシダート]を含む)などの核形成剤は、Asahi Denka Kokaiから市販されており、ポリオレフィン組成物に添加され得るものの例である。Milliken&Companyから入手可能なMillad NX8000(ノニトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン)]、Millad 3988(3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール)、Millad 3905、及びMillad 3940は、利用することができる核形成剤の他の例である。
【0057】
組成物に使用することができる更なる市販のアルファ-核形成剤は、例えば、Ciba Specialty Chemicals製のIrgaclear XT 386(N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチルプロピオンアミド)、Milliken&Company製のHyperform HPN-68L及びHyperform HPN-20Eである。
【0058】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアルファ-核形成剤は、ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー、好ましくはポリ-ビニルシクロヘキサン(poly-vinylcyclohexane、pVCH)からなる群から選択されるポリマー核形成剤で構成される。
【0059】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つのアルファ-核形成剤は、アルミニウムヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホチン-6-オキシダート]系核形成剤(例えば、ADK NA-21、NA-21 E、NA-21 F)、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート(ADK NA-11)、アルミウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート]、及びソルビトール系核形成剤(例えば、Millad 3988、Millad 3905、及びMillad 3940)からなる群から選択される。
【0060】
一実施形態では、ポリプロピレン組成物は、清澄化剤を更に含有し得る。清澄化剤を添加して、組成物の透明性特性を更に改善することができる。清澄化剤は、例えば、組成物内にゲル化ネットワークを生成することができる化合物を含み得る。
【0061】
一実施形態では、清澄化剤は、ソルビトールアセタール誘導体などのソルビトール化合物を含んでもよい。一実施形態では、例えば、清澄化剤は、ベンジルソルビトールを含んでもよい。
【0062】
いくつかの実施形態で添加剤として使用することができるソルビトールアセタール誘導体に関して、ソルビトールアセタール誘導体は、式(I)に示され、
【化2】
式中、R1~R5は、水素及びC1~C3アルキルから選択される同じか又は異なる部分を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、ソルビトールアセタール誘導体が2,4-ジベンジリデンソルビトール(「DBS」)となるように、R1~R5は水素である。いくつかの実施形態では、ソルビトールアセタール誘導体が1,3:2,4-ジ-p-メチルジベンジリデン-D-ソルビトール(「MDBS」)となるように、R1、R4及びR5は水素であり、R2及びR3はメチル基である。いくつかの実施形態では、ソルビトールアセタール誘導体が1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチロベンジリデノ)ソルビトール(「DMDBS」)となるように、R1~R4はメチル基であり、R5は水素である。いくつかの実施形態では、ソルビトールアセタール誘導体が1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-(4-プロピルフェニルメチレン)ノニトール(「TBPMN」)となるように、R2、R3、及びR5はプロピル基(-CH2-CH2-CH3)であり、R1及びR4は水素である。
【0064】
使用され得る清澄化剤の他の実施形態としては、以下が挙げられる。
1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール、
1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、
ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール
ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール
ビス(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフチリデン)ソルビトール
【0065】
一実施形態では、清澄化剤はまた、ベンゼントリアミドなどのビスアミドを含んでもよい。上記の清澄化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0066】
ポリマー組成物中に存在する場合、1つ以上の清澄化剤は、一般に、約200ppm超の量で、例えば約1,800ppm超の量で、例えば約2,000ppm超の量で、例えば約2,200ppm超の量で添加される。1つ以上の清澄化剤は、一般に、約20,000ppm未満、例えば約15,000ppm未満、例えば約10,000ppm未満、例えば約8,000ppm未満、例えば約5,000ppm未満の量で存在する。組成物中に存在する清澄化剤の量は、使用される清澄化剤の種類を含む様々な要因に依存し得る。
【0067】
第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、様々な異なる重合方法及び手順を使用して生成することができる。一実施形態では、ポリマーの両方が、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンモノマーから形成される。例えば、オレフィン重合は、触媒、内部電子供与体、共触媒、並びに任意に外部電子供与体及び/又は活性制限剤を含む、触媒系の存在下で起こり得る。2つのポリマーを生成するために使用される重合プロセスは、既知の技法を使用して行うことができる。例えば、ポリマーは、気相反応器内で、又はバルク相反応器内で形成され得る。具体的には、ポリマーは、流動床若しくは撹拌床反応器を使用して気相反応器内で、又は不活性炭化水素溶媒若しくは希釈剤若しくは液体モノマーを使用してスラリー相中で形成され得る。例えば、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーが両方とも、気相反応器内で形成され得る。あるいは、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーが両方とも、バルク(液体プロピレン)相反応器内で形成され得る。更なる実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーのうちの一方は、気相反応器内で形成され、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーのうちの他方が、バルク相反応器内で形成される。例えば、第1のポリプロピレンポリマーは、バルク相反応器内で形成され得、第2のポリプロピレンポリマーが、気相反応器内で形成され得る。
【0068】
一実施形態では、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、2つの異なる重合プロセスで生成され、次いで一緒に組み合わされる。あるいは、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、一連の反応器を含むプロセスで順次生成することができる。例えば、ポリプロピレンポリマーのうちの一方を第1の反応器内で生成し、次いで、他方のポリプロピレンポリマーが生成される第2の反応器に搬送することができる。
【0069】
本開示の一実施形態では、重合は、立体規則オレフィン重合触媒の存在下で行われる。例えば、触媒は、チーグラー・ナッタ触媒であり得る。例えば、一実施形態では、商品名CONSISTAで販売され、W.R.Grace&Companyから市販されている触媒を使用することができる。一実施形態では、フタレートを含有しない電子供与体が選択される。
【0070】
一実施形態では、触媒は、塩化チタン等のチタン部分、塩化マグネシウム等のマグネシウム部分、及び少なくとも1つの内部電子供与体を含有するプロ触媒組成物を含む。
【0071】
プロ触媒前駆体は、(i)マグネシウム、(ii)第IV族~第VII族からの遷移金属化合物、(iii)ハロゲン化物、オキシハライド及び/又はアルコキシド、及び/又は(i)若しくは(i)及び/又は(ii)のアルコキシド、並びに(iv)(i)、(ii)及び(iii)の組み合わせを含むことができる。好適なプロ触媒前駆体の非限定例としては、ハロゲン化物、オキシハライド、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
一実施形態では、プロ触媒前駆体は、唯一の金属成分としてマグネシウムを含有する。非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド及び又はアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド若しくはアリールオキシドが挙げられる。
【0073】
一実施形態では、プロ触媒前駆体は、無水塩化マグネシウムのアルコール付加物である。無水塩化マグネシウム付加物は、一般に、MgCl2-nROHとして定義され、式中、nは、1.5~6.0、好ましくは2.5~4.0、最も好ましくは2.8~3.5モルの範囲の総アルコールを有する。ROHは、C1~C4アルコール、直鎖若しくは分枝鎖、又はアルコールの混合物である。好ましくは、ROHはエタノール、又はエタノールと高級アルコールとの混合物である。ROHが混合物である場合、エタノールの高級アルコールに対するモル比は、少なくとも80:20、好ましくは90:10、最も好ましくは少なくとも95:5である。
【0074】
一実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成され得る。一実施形態では、球状MgCl2前駆体は、約15~150ミクロン、好ましくは20~100ミクロン、最も好ましくは35~85ミクロンの平均粒径(Malvern d50)を有する。
【0075】
一実施形態では、プロ触媒前駆体は、遷移金属化合物及びマグネシウム金属化合物を含有する。遷移金属化合物は、一般式TrXxを有し、式中、Trは、遷移金属であり、Xは、ハロゲン又はC1~10ヒドロカルボキシル又はヒドロカルビル基であり、xは、マグネシウム金属化合物と組み合わせられた化合物中のかかるX基の数である。Trは、第IV族金属、第V族金属、又は第VI族金属であり得る。一実施形態では、好ましくは、Trは、チタンなどの第IV族金属である。Xは、塩化物、臭化物、C1~4アルコキシド若しくはフェノキシド、又はこれらの混合物であり得る。一実施形態では、Xは、塩化物である。
【0076】
前駆体組成物は、前述の混合マグネシウム化合物、チタン化合物、又はそれらの混合物の塩素化によって調製され得る。
【0077】
一実施形態では、前駆体組成物は、式MgdTi(ORe)fXgを有する混合マグネシウム/チタン化合物であり、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、式中、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、各ORe基は、同じであるか又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素であり、dは、0.5~56であるか、又は2~4、若しくは3であり、fは、2~116又は5~15であり、gは、0.5~116又は1~3である。
【0078】
本開示によれば、上述のプロ触媒前駆体は、少なくとも1つの内部電子供与体と組み合わされる。内部電子供与体は、置換フェニレン芳香族ジエステルを含むことができる。
【0079】
一実施形態では、第1の内部電子供与体は、以下の構造(I)を有する置換フェニレン芳香族ジエステルを含み、
【化3】
式中、R
1~R
14は、同じであるか又は異なる。R
1~R
14はそれぞれ、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせから選択される。R
1~R
14のうちの少なくとも1つは、水素ではない。
【0080】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、2008年12月31日に出願された米国特許出願第61/141,959号に開示される任意の置換フェニレン芳香族ジエステルであってもよい。
【0081】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、2011年12月20日に出願された国際公開第12088028号に開示される任意の置換フェニレン芳香族ジエステルであってもよい。
【0082】
一実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ(又は2つ、又は3つ、又は4つ)のR基は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0083】
一実施形態では、R5~R14のうちの少なくとも1つ(又はいくつか、又は全て)のR基は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、R5~R9のうちの少なくとも1つ及びR10~R14のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びそれらの組み合わせから選択される。
【0084】
一実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ及びR5~R14の少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ、R5~R9のうちの少なくとも1つ、及びR10~R14うちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びそれらの組み合わせから選択される。
【0085】
一実施形態では、R1~R4の任意の連続するR基、及び/又はR5~R9の任意の連続するR基、及び/又はR10~R14の任意の連続するR基は、連結されて、環状又は環状内構造体を形成してもよい。環状/環状内構造体は、芳香族であっても、又は芳香族でなくてもよい。一実施形態では、環状/環状内構造体は、C5員環又はC6員環である。
【0086】
一実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びこれらの組み合わせから選択される。任意に、R5~R14のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基であってもよい。任意に、R1~R4、及び/又はR5~R9、及び/又はR10~R14は、連結されて、環状構造体又は環状内構造体を形成してもよい。環状構造体及び/又は環状内構造体は、芳香族であっても、又は芳香族でなくてもよい。
【0087】
一実施形態では、R1~R4、及び/又はR5~R9、及び/又はR10~R14の任意の連続するR基は、C5~C6員環のメンバーであってもよい。
【0088】
一実施形態では、構造(I)は、水素としてR1、R3及びR4を含む。R2は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同じであるか又は異なり、R5~R14のそれぞれは、水素1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びそれらの組み合わせから選択される。
【0089】
一実施形態では、R2は、C1~C8アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、又は置換C3~C6シクロアルキル基から選択される。R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基であり得る。
【0090】
一実施形態では、構造(I)は、メチルであるR2を含み、R5~R14のそれぞれは、水素である。
【0091】
一実施形態では、構造(I)は、エチルであるR2を含み、R5~R14のそれぞれは、水素である。
【0092】
一実施形態では、構造(I)は、t-ブチルであるR2を含み、R5~R14のそれぞれは、水素である。
【0093】
一実施形態では、構造(I)は、エトキシカルボニルであるR2を含み、R5~R14のそれぞれは、水素である。
【0094】
一実施形態では、構造(I)は、それぞれ水素としてR2、R3及びR4を含み、R1は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同じであるか又は異なり、それぞれが、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0095】
一実施形態では、構造(I)は、メチルであるR1を含み、R5~R14のそれぞれは、水素である。
【0096】
一実施形態では、構造(I)は、水素であるR2及びR4を含み、R1及びR3は同じであるか又は異なる。R1及びR3のそれぞれは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びそれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同じであるか又は異なり、R5~R14のそれぞれは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0097】
一実施形態では、構造(I)は、同じであるか又は異なるR1及びR3を含む。R1及びR3のそれぞれは、C1~C8アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、又は置換C3~C6シクロアルキル基から選択される。R5~R14は同じであるか又は異なっており、R5~R14のそれぞれは、水素、C1~C8アルキル基、及びハロゲンから選択される。好適なC1~C8アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、ネオペンチル、
t-ペンチル、n-ヘキシル、及び2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基が挙げられる。好適なC3~C6シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。更なる実施形態では、R5~R14のうちの少なくとも1つは、C1~C8アルキル基又はハロゲンである。
【0098】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R2、R4及びR5~R14のそれぞれは、水素である。
【0099】
一実施形態では、構造(I)は、イソプロピル基であるR1及びR3を含む。R2、R4及びR5~R14のそれぞれは、水素である。
【0100】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基としてR1、R5、及びR10のそれぞれを含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6~R9、及びR11~R14のそれぞれは、水素である。
【0101】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基としてR1、R7、及びR12のそれぞれを含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0102】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基としてR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、エチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0103】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基としてR1、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14のそれぞれを含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6、R8、R11及びR13のそれぞれは、水素である。
【0104】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基としてR1を含み、R3はt-ブチル基である。R5、R7、R9、R10、R12及びR14のそれぞれは、i-プロピル基である。R2、R4、R6、R8、R11及びR13のそれぞれは、水素である。
【0105】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、メチル基であるR
1を含む構造(II)を有し、R
3は、t-ブチル基である。R
2及びR
4のそれぞれは、水素である。R
8及びR
9は、1-ナフトイル部分を形成するためのC
6員環の成員である。R
13及びR
14は、C
6員環の成員であり、別の1-ナフトイル部分を形成する。構造(II)は、以下に提供される。
【化4】
【0106】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、メチル基であるR
1を含む構造(III)を有し、R
3は、t-ブチル基である。R
2及びR
4のそれぞれは、水素である。R
6及びR
7は、2-ナフトイル部分を形成するためのC
6員環の成員である。R
12及びR
13は、2-ナフトイル部分を形成するためのC
6員環の成員である。構造(III)は、以下に提供される。
【化5】
【0107】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、エトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0108】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、フッ素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0109】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、塩素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0110】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、臭素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0111】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、ヨウ素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0112】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R6、R7、R11、及びR12のそれぞれは、塩素原子である。R2、R4、R5、R8、R9、R10、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0113】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R6、R8、R11、及びR13のそれぞれは、塩素原子である。R2、R4、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0114】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R2、R4及びR5~R14のそれぞれは、フッ素原子である。
【0115】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、トリフルオロメチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0116】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、エトキシカルボニル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13及びR14のそれぞれは、水素である。
【0117】
一実施形態では、R1は、メチル基であり、R3は、t-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、エトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0118】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれは、ジエチルアミノ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは、水素である。
【0119】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3は2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基である。R2、R4及びR5~R14のそれぞれは、水素である。
【0120】
一実施形態では、構造(I)は、それぞれがsec-ブチル基であるR1及びR3を含む。R2、R4及びR5~R14のそれぞれは、水素である。
【0121】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、R
1及びR
2がC
6員環の成員であり、1,2-ナフタレン部分を形成する、構造(IV)を有する。R
5~R
14のそれぞれは、水素である。構造(IV)は、以下に提供される。
【化6】
【0122】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、R
2及びR
3がC
6員環の成員であり、2,3-ナフタレン部分を形成する、構造(V)を有する。R
5~R
14のそれぞれは、水素である。構造(V)は、以下に提供される。
【化7】
【0123】
一実施形態では、構造(I)は、それぞれメチル基であるR1及びR4を含む。R2、R3、R5~R9、及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0124】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含む。R4は、i-プロピル基である。R2、R3、R5~R9、及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0125】
一実施形態では、構造(I)は、R1、R3、及びR4を含み、これらのそれぞれは、i-プロピル基である。R2、R5~R9及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0126】
一実施形態では、R1及びR4のそれぞれは、メチル基、エチル基、及びビニル基から選択される。R2及びR3のそれぞれは、水素、二級アルキル基、又は三級アルキル基から選択され、R2及びR3は、同時に水素ではない。換言すれば、R2が水素である場合、R3は水素ではない(逆もまた同様)。
【0127】
一実施形態では、二座様式で配位することができるポリエーテルを一般に含む第2の内部電子供与体が使用されてもよい。一実施形態では、第2の内部電子供与体は、構造VIの置換1,3-ジエーテルであり、
【化8】
式中、R
1及びR
2は、同じであるか又は異なる、メチル、C
2~C
18直鎖若しくは分岐鎖アルキル、C
3~C
18シクロアルキル、C
4~C
18シクロアルキル-アルキル、C
4~C
18アルキル-シクロアルキル、フェニル、有機ケイ素、C
7~C
18アリールアルキル、又はC
7~C
18アルキルアリールラジカルであり、R
1又はR
2もまた水素原子であってもよい。
【0128】
一実施形態では、第2の内部電子供与体は、環状又は多環式の構造VIIを有する1,3-ジエーテルを含んでもよく、
【化9】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、構造VIのR
1及びR
2について記載したとおりであるか、又は組み合わせされて、任意にN、O又はSヘテロ原子を含有する、1つ以上のC
5~C
7縮合芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよい。第2の内部電子供与体の特定の例としては、
4,4-ビス(メトキシメチル)-2,6-ジメチルヘプタン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0129】
前駆体は、無機ハロゲン化合物、好ましくはハロゲン化チタン化合物と更に反応(ハロゲン化)し、内部電子供与体を組み込むことにより、固体プロ触媒に変換される。
【0130】
前駆体のハロゲン化のための1つの好適な方法は、前駆体を、任意に炭化水素又はハロゲン化炭化水素希釈剤の存在下、高温で、四価のチタンハロゲン化物と反応させることによるものである。好ましい四価のチタンハロゲン化物は、四塩化チタンである。
【0131】
得られるプロ触媒組成物は、一般に、約0.5%~約6重量%、例えば約1.5%~約5重量%、例えば約2重量%~約4重量%の量でチタンを含有することができる。固体触媒は、一般に、約5重量%超の量で、例えば約8重量%超の量で、例えば約10重量%超の量で、例えば約12重量%超の量で、例えば約14重量%超の量で、例えば約16重量%超の量でマグネシウムを含有することができる。マグネシウムは、約25重量%未満の量で、例えば約23重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で触媒中に含有される。内部電子供与体は、約30重量%未満の量で、例えば約25重量%未満の量で、例えば約22重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約19重量%未満の量で、触媒組成物中に存在し得る。内部電子供与体は、一般に、約5重量%超の量で、例えば約9重量%超の量で存在する。
【0132】
一実施形態では、プロ触媒組成物を、触媒系を形成するために共触媒と組み合わせる。触媒系は、重合条件下でオレフィンと接触させたときにオレフィン系ポリマーを形成する系である。触媒系は、任意に、外部電子供与体、活性制限剤、及び/又は様々な他の成分を含み得る。
【0133】
本明細書で使用される場合、「共触媒」は、プロ触媒を活性重合触媒に変換することができる物質である。共触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、及びこれらの組み合わせのヒドリド、アルキル、又はアリールを含み得る。一実施形態では、共触媒は、式R3Alで表されるヒドロカルビルアルミニウムコ触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2つ又は3つのRラジカルは、複素環構造を形成する環式ラジカルに結合することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、このようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであってもよく、すなわち、ラジカルは、アルキル基、アリール基、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。
【0134】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n-ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウムである。一実施形態では、好ましい共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、及びジ-n-ヘキシルアルミニウムヒドリドから選択され、最も好ましい共触媒は、トリエチルアルミニウムである。
【0135】
一実施形態では、共触媒は、式RnAlX3-nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=1又は2であり、Rはアルキルであり、Xはハロゲン化物又はアルコキシドである。好適な化合物の非限定的な例は、メチルアルミノオキサン、イソブチルアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、テトラエチルジアルミノオキサン、テトライソブチルジアルミノオキサン、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、及びジメチルアルミニウムクロリドである。
【0136】
一実施形態では、触媒組成物は、外部電子供与体を含む。本明細書で使用される場合、「外部電子ドナー」は、プロ触媒形成とは無関係に添加される化合物であり、金属原子に一対の電子を供与することができる少なくとも1つの官能基を含有する。特定の理論に拘束されるものではないが、外部電子供与体は、触媒の立体選択性を強化する(すなわち、フォルマントポリマー中のキシレン可溶性物質を還元する)と考えられている。
【0137】
一実施形態では、外部電子供与体は、アルコキシレート、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホンネート、スルホン、及び/又はスルホキシドのうちの1つ以上から選択され得る。
【0138】
一実施形態では、外部電子供与体はアルコキシシランである。アルコキシシランは、一般式SiRm(OR’)4-m(I)を有するアルコキシシランであり、式中、Rは、独立して、各出現時に、水素、又は1つ以上の第14族、第15族、第16族若しくは第17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基で任意に置換されているヒドロカルビル基若しくはアミノ基であり、当該R’は、水素及びハロゲン以外の原子を最大20個含有し、R’は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2、又は3である。一実施形態では、Rは、C6~12アリール、アルキル若しくはアラルキル、C3~12シクロアルキル、C3~12分岐鎖アルキル、又はC3~12環式若しくは非環式アミノ基であり、R’は、C1~4アルキルであり、mは、1又は2である。好適なシラン組成物の非限定的な例としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、及びジメチルジメトキシシランが挙げられる。一実施形態では、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(dicyclopentyldimethoxysilane、DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(methylcyclohexyldimethoxysilane、MChDMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン(diisopropyldimethoxysilane、DIPDMS)、n-プロピルトリメトキシシラン(n-propyltrimethoxysilane、NPTMS)、ジエチルアミノトリエトキシシラン(diethylaminotriethoxysilane、DATES)、又はn-プロピルトリエトキシシラン(propyltriethoxysilane、PTES)、及びこれらの任意の組み合わせである。
【0139】
一実施形態では、外部供与体は、少なくとも2つのアルコキシシランの混合物であり得る。更なる実施形態では、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、又はジシクロペンチルジメトキシシラン及びn-プロピルトリエトキシシランであり得る。
【0140】
一実施形態では、外部電子供与体は、ベンゾエート及び/又はジオールエステルのうちの1つ以上から選択される。別の実施形態では、外部電子供与体は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンである。更に別の実施形態では、外部電子供与体はジエーテルである。
【0141】
一実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含む。本明細書で使用される「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち、約85℃を超える温度)で触媒活性を低下させる物質である。ALAは、重合反応器の不調を抑制又はさもなければ阻止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点に近い温度で高い活性を維持する。発熱重合反応によって生じた熱は、ポリマー粒子凝集体を形成させる場合があり、最終的にはポリマー生成プロセスを中断させ得る。ALAは、昇温で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を阻止し、粒子の凝集を低減(又は阻止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0142】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、ポリ(アルケングリコール)エステル、ジオールエステル及びこれらの組み合わせであってもよい。カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族のモノ又はポリカルボン酸エステルであり得る。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例としては、エチル及びメチルベンゾエート、エチルp-メトキシベンゾエート、
メチルp-エトキシベンゾエート、エチルp-エトキシベンゾエート、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、酢酸エチル、エチルp-クロロベンゾエート、ヘキシルp-アミノベンゾエート、ナフテン酸イソプロピル、n-アミルトルエート、シクロヘキサン酸エチル、及びピバル酸プロピルが挙げられる。
【0143】
一実施形態では、外部電子供与体及び/又は活性制限剤を、反応器に別々に加えてもよい。別の実施形態では、外部電子供与体及び活性制限剤を予め混合し、次いで混合物として反応器に添加してもよい。混合物では、2つ以上の外部電子供与体又は2つ以上の活性制限剤を使用することができる。一実施形態では、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジエトキシシラン及びポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル及びポリ(エチレングリコール)ジオレエート、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、n-プロピルトリメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、ジメチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びn-プロピルトリエトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、並びにジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、ミリスチン酸イソプロピル、吉草酸ペンチル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0144】
一実施形態では、触媒組成物は、前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせた前述の外部電子供与体のいずれかを含む。
【0145】
第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーはそれぞれ、上記の触媒系から形成することができる。プロピレンポリマーは、同じ非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒系から形成することができるか、又は異なる非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒系から作製することができる。上記の触媒系を、プロピレンポリマーのキシレン可溶分含量を制御することと併せて使用することにより、第1及び第2のポリプロピレンポリマーを比較的高い触媒活性で生成しながら、依然として優れた剛性特性を有するポリプロピレンポリマー組成物を生成することができることが発見された。例えば、第1のポリプロピレンポリマー及び第2のポリプロピレンポリマーは、触媒活性が少なくとも50kg/g、例えば少なくとも55kg/g、例えば少なくとも60kg/g、例えば更に約65kg/g超であるプロセス中に、上記の触媒系から生成することができる。触媒活性は、一般に、約100kg/g未満である。本開示に従って、2つの異なるポリプロピレンポリマーは、次いで、靭性を犠牲にすることなく剛性特性を最大化するために組み合わされる。全体として、ポリプロピレンポリマー組成物を、過去に作製された高剛性ポリプロピレンポリマーよりも、より効率的に生成することができる。更に、優れた剛性及び靭性特性に加えて、本開示のポリプロピレンポリマー組成物はまた、優れた熱成形性特性及び成形性特性も有し、様々な異なる物品及び製品に容易に成形することができる。
【0146】
例えば、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、成形物品を製造するのによく適している。ポリプロピレン組成物は、例えば、射出成形、吹込成形、押出、及び回転成形用途に使用することができる。
【0147】
本開示のポリプロピレンポリマー組成物を使用して、多数の多様な物品及び製品を作製することができる。高い剛性特性及び優れた流動特性により、例えば、ポリプロピレンポリマー組成物を使用して、ありとあらゆる種類の自立型物品及び製品を製造することができる。高い剛性特性により、比較的薄い壁を有しながら、依然として所望の形態保持特性を有する物品を製造することが可能になる。加えて、高い剛性及び靭性特性により、本開示に従って作製された製品及び物品は、落下又は他の外部事象から生じ得る衝撃力に耐えることが可能になる。
【0148】
例えば、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、壁厚を最小化し、ひいては物品を製造するために必要とされるポリマーの量を最小化しながら、ありとあらゆる種類の容器を製造するのによく適している。本開示に従って作製され得る容器としては、例えば、貯蔵容器、包装容器、食品容器などが挙げられる。他の容器としては、カップ及び他の飲料又は液体保持容器を挙げることができる。
【0149】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例】
【0150】
様々な異なるポリプロピレンポリマー組成物を本開示に従って作製し、剛性及び靭性について試験した。試料を、塩基性反応器グレードのポリプロピレンポリマーと比較した。
【0151】
本開示に従って作製された試料は、ポリプロピレンポリマー組成物を形成するために第2のポリプロピレンポリマーと組み合わされた第1のポリプロピレンポリマーを含んだ。生成された全てのポリプロピレンポリマーを、上記のように、非フタレートであるチーグラー・ナッタ触媒の存在下で重合した。特に、使用される触媒は、W.R.Grace&Co.により市販されているCONSISTA触媒であった。ポリマーを、気相反応器内で生成した。この実施例では、ポリプロピレンホモポリマーのみを生成した。
【0152】
特に、試験片へと射出成形されたポリマーペレット試料を生成した。試験片をASTM試験D4101に従って作製して、曲げ弾性率及びIZOD耐衝撃性を試験するための試験片を生成した。
【0153】
生成された各ポリプロピレンポリマーのメルトフローレート及びキシレン可溶分含量を測定した。以下の結果を得た。
【表1】
【0154】
図1は、上に示される結果のグラフ表示である。特に、
図1は、ポリマーの曲げ弾性率をキシレン可溶分含量と比較する。示されるように、本開示に従って作製されたポリマーは、比較試料よりも劇的に良好な剛性特性を有した。一態様では、本開示に従って作製された試料は、以下の等式に従って曲げ弾性率を示すことができ、
2072*XS
-0.18
式中、キシレン可溶分含量は、3重量%~6.8%重量で変動する。
【0155】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変形は、添付の特許請求の範囲においてより具体的に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施されてもよい。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的に又は部分的にの両方に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者であれば、前述の説明はあくまで例としてであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。