(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】組換えタンパク質の連続的生産
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20241008BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241008BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
C07K1/16
C12M1/00 A
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2021559051
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020026107
(87)【国際公開番号】W WO2020205928
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-09
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・クールボー
(72)【発明者】
【氏名】タール・ヴェッター
(72)【発明者】
【氏名】チャド・ヴァーナー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ブラウァー
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519137(JP,A)
【文献】特表2013-544524(JP,A)
【文献】特表2017-522169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051054(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0299249(US,A1)
【文献】国際公開第2018/164995(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198320(WO,A1)
【文献】特表2017-515501(JP,A)
【文献】特表2016-510981(JP,A)
【文献】特表2017-518749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00
C12M 1/00
C12P 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質を連続的に生産する方法であって、
(a)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて、実質的に無細胞サンプルから組換えタンパク質を捕捉し、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムから組換えタンパク質を溶出させて、組換えタンパク質を含む溶出物を生成することであって、該溶出物は組換えタンパク質を含む単一の混合物に均質化されることと;
(b)均質化された単一の混合物を、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供し、組換えタンパク質を含む生成物の出力を収集することと;
(c)生成物の出力を限外濾過と透析濾過に供し、組換えタンパク質を精製することと;
を含み
、各工程は単位操作で行われ、各単位操作は、工程(a)から工程(c)まで物理的に接続されており、工程(a)から工程(c)の接続された単位操作は、工程(a)から工程(c)の組換えタンパク質を含む連続的なフローを処理する、前記方法。
【請求項2】
工程(a)に続いて、均質化された単一の混合物をウイルス不活性化に供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス不活性化は、溶媒-界面活性剤溶液による不活性化、熱による不活性化、または酸性pHによる不活性化を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸性pHによる不活性化は:
(a)均質化された単一の混合物に、1つまたはそれ以上の溶液を加えてインラインで低pHに調整することと;
(b)調整された均質化された単一の混合物を、ウイルス不活性化混合物になる間、低pHでインキュベートすることと
を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
期間は15分から2時間の間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の生成物の出力をウイルス濾過に供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
実質的に無細胞サンプルは、組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含む灌流バイオリアクター、組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含むフェッドバッチバイオリアクター、または組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含む清澄化液体培養物から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムおよび1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムは、樹脂ビーズ、多孔質膜、またはナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
クロマトグラフィー媒体は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィーのために官能化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アフィニティークロマトグラフィー媒体は、プロテインAベースの樹脂である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムおよび1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムは、周期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
調整された均質化された単一の混合物を、ウイルス不活性化をもたらす一定期間、低pHでインキュベートすることは管型流通式リアクターで行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
1つまたはそれ以上の溶液の添加は、インラインでの組換えタンパク質濃度測定およびインラインでの流量測定に基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
ウイルス濾過は、加圧ループ内で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
加圧ループは、圧力容器、ウイルス除去フィルタ、および滅菌フィルタを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
圧力容器は、単回使用、密閉式、および滅菌可能な容器である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ウイルス除去フィルタは、限外濾過膜またはナノフィルタである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス濾過は、デッドエンド濾過を用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
デッドエンド濾過は、限外濾過膜またはナノフィルタを用いて行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
限外濾過は、単一パス接線流濾過で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
透析濾過は、単一パス透析濾過カセットを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
組換えタンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)の後に1つまたはそれ以上の賦形剤を加えて治療用薬剤物質を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
組換えタンパク質を生産するための製造システムであって、
(a)組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含むバイオリアクターを含む第1の単位操作と;
(b)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを含む第2の単位操作と;
(c)1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムを含む第3の単位操作と;
(d)限外濾過システムと透析濾過システムを含む第4の単位操作と
を
含み、(a)から(d)の各単位操作は、物理的に接続されており、接続された各単位操作は、組換えタンパク質を含む連続的なフローを処理する、前記製造システム。
【請求項25】
第1の単位操作と第2の単位操作との間に位置する第5の単位操作をさらに含み、第5の単位操作は、ウイルス不活性化を事前に行うためのサブシステムを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
サブシステムは、管型流通式リアクターである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
第3の単位操作と第4の単位操作との間に位置する第6の単位操作をさらに含み、第6の単位操作は、ウイルス濾過を事前に行うための第2のサブシステムを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムおよび1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムは、樹脂ビーズ、多孔質膜、またはナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
クロマトグラフィー媒体は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィーのために官能化されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
アフィニティークロマトグラフィー媒体は、プロテインAベースの樹脂である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーカラムおよび1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムは、周期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)である、請求項24に記載のシステム。
【請求項32】
管型流通式リアクターは、定義された最小滞留時間が少なくとも30分である、請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
ウイルス濾過を行うための第2のサブシステムは、ウイルス除去フィルタ、および滅菌フィルタを含む加圧コンテナである、請求項27に記載のシステム。
【請求項34】
加圧コンテナは、単回使用、密閉式、および滅菌可能なコンテナである、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
ウイルス除去フィルタは、限外濾過膜またはナノフィルタである、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
第1の単位操作は、第2の単位操作の入口に接続された出口を含み、第2の単位操作は、第3の単位操作の入口に接続された出口を含み、第3の単位操作は、第4の単位操作の入口に接続された出口を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項37】
第1の単位操作、第2の単位操作、第3の単位操作、および第4の単位操作のそれぞれの間に、サージ容器をさらに含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項38】
組換えタンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である、請求項24に記載のシステム。
【請求項39】
システムはスキッド上にある、請求項24に記載のシステム。
【請求項40】
システムは閉じられている、請求項24に記載のシステム。
【請求項41】
第3のサブシステムを含む第7の単位操作をさらに含み、第3のサブシステムは、治療用薬剤物質を製剤化するためのインライン賦形剤を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項42】
組換えタンパク質は、単一パス接線流濾過による限外濾過を用いて、および、単一パス透析濾過を用いて、精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
限外濾過システムは、単一パス接線流濾過を含み、透析濾過システムは、単一パス透析濾過カセットを含む、請求項24に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示内容が参照により本明細書に明示的に組み入れられている、2019年4月3日に出願された米国仮出願第62/828,755号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、組換えタンパク質を連続的に生産するための方法およびシステムに関する。特定の実施形態では、本開示は、組換えタンパク質を連続的に生産するための、捕捉クロマトグラフィー、捕捉後クロマトグラフィー、ウイルス濾過、および限外濾過/透析濾過を使用する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
連続的製造は、石油化学や食品生産のような産業において、日常的に行われている生産方法である。連続的プロセスの利点としては、定常運転、装置の小型化、高い容積測定生産性、プロセスフローの合理化、低サイクルタイム、資本コストの削減などが挙げられる。非特許文献1。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Konstantinovら、J.Pharm.Sci.104(3):813~20頁(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオ医薬品業界では、連続的製造は幅広くは実施されていない。上流の開発と下流の開発では技術的なニーズが大きく異なるため、下流での連続運転の経験は限られている。そのため、バイオ医薬品業界では、最小限のオペレーターの操作で長時間稼働できる統合型の連続的バイオプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
組換えタンパク質を連続的に生産する方法であって、(a)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて、実質的に無細胞サンプルから組換えタンパク質を捕捉し、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムから組換えタンパク質を溶出させて、組換えタンパク質を含む溶出物を生成することであって、単一または複数の溶出物は組換えタンパク質を含む単一の混合物に均質化されることと、(b)単一の混合物を、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供し、組換えタンパク質を含む生成物の出力を収集することと、(c)生成物の出力を限外濾過と透析濾過に供し、組換えタンパク質を精製することとを含み、方法は、工程(a)から工程(c)まで統合的かつ連続的に行われる方法が本明細書で提供される。
【0007】
また、組換えタンパク質を生産するための製造システムであって、(a)組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含むバイオリアクターを含む第1の単位操作と、(b)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを含む第2の単位操作と、(c)1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムを含む第3の単位操作と、(d)限外濾過システムと透析濾過システムを含む第4の単位操作とを含む製造システムが本明細書で提供される。
【0008】
また、組換えタンパク質を連続的に生産する方法であって、(a)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて、実質的に無細胞サンプルから組換えタンパク質を捕捉し、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムから組換えタンパク質を溶出させて、組換えタンパク質を含む溶出物を生成することであって、溶出物は組換えタンパク質を含む単一の混合物に均質化されることと、(b)均質化された単一の混合物をウイルス不活性化に供することと、(c)工程(b)の均質化された単一の混合物を、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供し、組換えタンパク質を含む生成物の出力を収集することと、(d)工程(c)の生成物の出力をウイルス濾過に供することと、(e)工程(d)の生成物の出力を限外濾過と透析濾過に供し、組換えタンパク質を精製することとを含み、方法は、工程(a)から工程(e)まで統合的かつ連続的に行われる方法が本明細書で提供される。
【0009】
他の態様、実施形態、および実施態様は、必要に応じて添付の図面を参照して、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書で開示する方法のプロセスフローを示す模式図である。プロセスフローは:(1)二重交互接線流(Alternating Tangential Flow)(ATF)フィルタと細胞分離を結合したバイオリアクターで組換えタンパク質を生産すること(「BRX」と表記)、(2)1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて組換えタンパク質を捕捉し、捕捉クロマトグラフィーシステムに接続されたバイオリアクターから得られた培養液中に存在する組換えタンパク質を捕捉すること(「捕捉」と表記)、(3)培地のウイルス不活性化(「VI」と表記)、(4)培地を1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供すること(「捕捉後」と表記)、(5)培地のウイルス濾過、および(6)培地の限外濾過/透析濾過、を含むインラインでの緩衝液を用いた組換えタンパク質の生産のための連続的プロセスを含む。
【
図2】
図2A~
図2Bは、本明細書で開示する方法およびシステムの単位操作の統合の概要を示す図である。
図2Aは、各単位操作の連続運転のための単位操作の統合の期間を示す。
図2Bは、各単位操作の平均タンパク質滞留時間を示す。本明細書で開示する方法およびシステムは、25日間で約5kgの薬剤物質を生成した。
【
図3-1】
図3A~
図3Fは、本明細書に開示された方法およびシステムのプロテインAの操作性能を示すグラフである。
図3AはプロテインA溶出物の濃度(g/L)を示し、
図3BはプロテインA溶出物残留宿主細胞タンパク質を示し、
図3CはプロテインA溶出物残留タンパク質を示し、
図3DはプロテインAの入口質量流量を示し、
図3Eおよび3FはプロテインAの紫外線クロマトグラムを示す。
【
図4-1】
図4A~
図4Gは、本明細書に開示された方法およびシステムのウイルス不活性化操作性能を示すグラフである。
図4Aは、単位操作を通して維持されるウイルス不活性化pHを示し、
図4Bは、不活性化前のタンパク質濃度を示し、
図4Cは、ウイルス不活性化中のタンパク質質量流量を示し、
図4Dは、ウイルス不活性化中の酸フローを示し、
図4Eは、ウイルス不活性化中の塩基フローを示し、
図4Fは、ウイルス不活性化中の高分子量種を示し、
図4Gは、ウイルス不活性化後のタンパク質濃度を示す。
【
図5-1】
図5A~
図5Dは、本明細書に開示された方法およびシステムの捕捉後の操作性能を示すグラフである。
図5Aは捕捉後の溶出物の残留プロテインAを示し、
図5Bは捕捉後の溶出物のタンパク質濃度を示し、
図5Cは紫外線クロマトグラムを示し、
図5Dは捕捉後の溶出物の残留宿主細胞タンパク質を示す。
【
図6-1】
図6Aは、本明細書に開示された方法およびシステムのウイルス濾過の模式図である。
図6B~
図6Gは、本明細書に開示された方法およびシステムのウイルス濾過操作性能を示すグラフである。
図6Bは、ウイルス濾過後のタンパク質濃度を示し、
図6Cは、ウイルス濾過後の高分子量種を示し、
図6Dは、ウイルス濾過中のタンパク質質量流束を示し、
図6Eは、ウイルス濾過中の濾液体積流束を示し、
図6Fは、ウイルス濾過中の膜貫通圧力を示し、
図6Gは、ウイルス濾過中のフィルタ性能を示す。
【
図7-1】
図7A~
図7Eは、本明細書に開示された方法およびシステムの限外濾過操作性能を示すグラフである。
図7Aは、限外濾過後のタンパク質濃度および変換を示し、
図7Bは、限外濾過中のフィルタ性能を示し、
図7Cは、限外濾過中の入口タンパク質質量流束を示し、
図7Dは、限外濾過中の透過液体積流束を示し、
図7Eは、限外濾過中の膜貫通圧力を示す。
【
図8-1】
図8A~
図8Eは、本明細書に開示された方法およびシステムの透析濾過操作性能を示すグラフである。
図8Aは、透析濾過中の透過液体積流束を示し、
図8Bは、透析濾過中のタンパク質質量流束を示し、
図8Cは、透析濾過中の膜貫通圧力を示し、
図8Dは、透析濾過比を示し、
図8Eは、透析濾過中のフィルタ性能を示す。
【
図9-1】
図9A~
図9Hは、本明細書に開示された方法およびシステムを用いて生産された薬剤物質の性状を示すグラフである。
図9Aは、薬剤物質の濃度を示し、
図9Bは、薬剤物質の高分子量種を示し、
図9Cは、薬剤物質の電荷プロファイルを示し、
図9Dは、薬剤物質の浸透圧を示し、
図9Eは、薬剤物質のpHを示し、
図9Fは、薬剤物質のELISAで測定した宿主細胞タンパク質を示し、
図9Gは、薬剤物質の非還元純度(non-reduced purity)を示し、
図9Hは、薬剤物質の残留プロテインAを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、組換えタンパク質を連続的に生産するための方法およびシステムに関する。特定の実施形態では、本開示は、組換えタンパク質を生産するための、捕捉クロマトグラフィー、捕捉後クロマトグラフィー、および限外濾過/透析濾過を使用する方法およびシステムに関する。本明細書に記載の方法およびシステムは、組換えタンパク質の連続的かつ時間効率的な生産を提供する。
【0012】
本開示に従って利用される場合、特に明記しない限り、すべての技術的および科学的用語は、当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を持つと理解されるものとする。文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0013】
一部の実施形態では、組換えタンパク質を連続的に生産する方法であって、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて、実質的に無細胞サンプルから組換えタンパク質を捕捉し、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムから組換えタンパク質を溶出させて、組換えタンパク質を含む溶出物を生成することであって、溶出物は組換えタンパク質を含む単一の混合物に均質化されることと、均質化された単一の混合物を、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供し、組換えタンパク質を含む生成物の出力を収集することと、生成物の出力を限外濾過と透析濾過に供し、組換えタンパク質を精製することとを含み、方法は、統合され、連続的に行われる方法が本明細書で提供される。
【0014】
また、組換えタンパク質を生産するための製造システムであって、組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含むバイオリアクターを含む第1の単位操作と、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを含む第2の単位操作と、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムを含む第3の単位操作と、限外濾過システムと透析濾過システムを含む第4の単位操作とを含む製造システム、が本明細書で提供される。
【0015】
一部の実施形態では、製造システムは、第1の単位操作と第2の単位操作との間に位置する第5の単位操作を含み、第5の単位操作は、ウイルス不活性化を事前に行うためのサブシステムを含む。一部の実施形態では、製造システムは、第3の単位操作と第4の単位操作との間に位置する第6の単位操作を含み、第6の単位操作は、ウイルス濾過を事前に行うための第2のサブシステムを含む。一部の実施形態では、製造システムは、第3のサブシステムを含む第7の単位操作を含み、第3のサブシステムは、治療用薬剤物質を製剤化するためのインライン賦形剤を含む。
【0016】
本明細書では、「実質的に無細胞」は、哺乳動物細胞のような特定の物質を少なくとももしくは約90%含まない(例えば、少なくとももしくは約95%、96%、97%、98%、または少なくとももしくは約99%、または約100%含まない)サンプルを表す。
【0017】
特定の実施形態では、実質的に無細胞サンプルが、組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含む灌流バイオリアクター、組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含むフェッドバッチバイオリアクター、または組換えタンパク質を産生する宿主細胞を含む清澄化液体培養物から除去される。
【0018】
本明細書では、「液体培養培地」は、細胞がin vitroで成長または増殖するのに十分な栄養分を含む液体を表す。例えば、液体培養培地には:アミノ酸(例えば、20種類のアミノ酸)、プリン(例えば、ヒポキサンチン)、ピリミジン(例えば、チミジン)、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルビン酸、リポ酸、マグネシウム、グルコース、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、および炭酸水素ナトリウム、のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。一部の実施形態では、液体培養培地は、哺乳動物由来の血清を含むことができる。一部の実施形態では、液体培養培地は、哺乳動物由来の血清または他の抽出物を含まない(定義された液体培養培地)。一部の実施形態では、液体培養培地は、微量金属、哺乳動物成長ホルモン、および/または哺乳動物成長因子を含むことができる。追加の適切な液体培養培地は、当技術分野で公知であり、市販されている。
【0019】
本明細書では、「灌流バイオリアクター」は、第1の液体培養培地中に複数の細胞を含むバイオリアクターを表し、バイオリアクター内に存在する細胞の培養は、第1の液体培養培地を定期的または連続的に除去することと、それと同時にまたはその直後に、実質的に同量の第2の液体培養培地をバイオリアクターに加えることとを含む。一部の実施形態では、培養期間中の漸進的期間(例えば、約24時間の期間、約1分から約24時間の間の期間、または24時間を超える期間)にわたって除去および追加される第1の液体培地の量に漸進的変化(例えば、増加または減少)がある(例えば、1日単位での培地の再給率など)。一日ごとに除去され交換される培地の割合は、培養される特定の細胞、初期播種密度、および特定の時間における細胞密度に応じて変化し得る。
【0020】
本明細書では、「フェッドバッチバイオリアクター」は、複数の細胞を含むバイオリアクターで、細胞の成長と生成物の形成に必要な栄養素が、1つまたはそれ以上の供給流によって断続的または連続的に供給されるものを表す。
【0021】
本明細書では、「清澄化液体培養培地」は、細菌や酵母の細胞培養から得られた液体培養培地で、細菌や酵母の細胞が実質的に含まれていない(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、または99%含まれていない)ものを表す。
【0022】
本明細書では、「組換えタンパク質」は、免疫グロブリン、タンパク質断片、操作されたタンパク質、血液因子、ナノボディ、または酵素を表し、そのため抗体または抗体断片も含む。
【0023】
本明細書では、「単位操作」は、組換えタンパク質の製造方法、または組換えタンパク質の製造プロセスで使用されるシステムの構成要素で実行可能な機能工程を表す。例えば、単位操作は、濾過(例えば、組換え治療用タンパク質を含む液体からの汚染細菌、酵母ウイルス、もしくはマイコバクテリア、および/または特定の物質の除去)、捕捉、エピトープタグの除去、精製、保持または保存、研磨、ウイルス不活性化、組換えタンパク質を含む液体のイオン濃度および/またはpHの調整、ならびに不要な塩の除去であり得る。
【0024】
本明細書では、「連続的な方法」または「連続的なシステム」という用語は、単位操作の少なくとも一部に液体が連続的に供給される方法またはシステムを表す。単位操作は、連続的なフロー入力を長時間処理できる場合、連続的である。連続的な単位操作は、最小限の内部保持量を有する。出力は、連続的である、または周期的に生成される小さなパケットで離散化される。統合された(物理的に接続された)連続的な単位操作で構成され、その間の内部保持量がゼロまたは最小の場合、その方法は連続的である。
【0025】
本明細書では、「統合された方法」は、特定の結果(例えば、液体培養培地からの組換えタンパク質の生成)を達成するために協調して機能する構造要素を使用して実行される方法を表す。
【0026】
本明細書では、「溶出物」は、検出可能な量の組換えタンパク質を含むクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から排出される液体を表す。
【0027】
本明細書では、「クロマトグラフィー媒体」は、クロマトグラフィーカラムに充填される材料を表す。
【0028】
一部の実施形態では、本明細書に開示されたシステムは、閉鎖システムである。閉鎖システムは、外部環境への露出を制限するように設計および操作される単位操作を含む。材料を閉鎖システムに導入することができるが、追加は、生成物が室内環境にさらされることを避けるように行われなければならない。
【0029】
本明細書に開示された方法およびシステムは、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて組換えタンパク質を捕捉し、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムから組換えタンパク質を溶出させて、組換えタンパク質を含む溶出物を生成することを含む。捕捉クロマトグラフィーシステムのうちの1つまたはそれ以上に含まれるクロマトグラフィー媒体は、捕捉機構(例えば、プロテインA結合捕捉機構、プロテインG結合捕捉機構、抗体もしくは抗体断片結合捕捉機構、基質結合捕捉機構、補因子結合捕捉機構、タグ結合捕捉機構、および/またはアプタマー結合捕捉機構)を利用する樹脂である可能性がある。一部の実施形態では、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムは、樹脂ビーズ、多孔質膜、またはナノファイバーからなるクロマトグラフィー媒体を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィーのために官能化されている。一部の実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー媒体は、プロテインAベースの樹脂である。
【0030】
一部の実施形態では、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムは、周期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)である。一部の実施形態では、PCCSは、2つのクロマトグラフィーカラムを含むか、または、例えば、4、5、6、7、8、もしくは8以上のカラムまで実行可能な修正AKTAシステム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を含む。一部の実施形態では、PCCSは、カラムスイッチ機構を利用する。カラムスイッチイベントは、クロマトグラフィーシステムを通過する液体中のあるレベルの組換えタンパク質に対応するUV吸光によって検出された組換えタンパク質のレベルの検出、特定の体積の液体(例えば、緩衝液)、または特定の時間経過によって始動される。
【0031】
捕捉クロマトグラフィーシステムを用いて組換えタンパク質を捕捉するためには、捕捉クロマトグラフィーシステムの負荷、洗浄、溶出、再生という一連のクロマトグラフィー工程を行う必要がある。
【0032】
一部の実施形態では、1つまたは複数の捕捉クロマトグラフィーシステムからの溶出物を、組換えタンパク質を含む単一の混合物に均質化する。一部の実施形態では、均質化された単一の混合物を、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供し、組換えタンパク質を含む生成物の出力を収集する。捕捉後クロマトグラフィーシステムは、最終的な所望の純度に近い組換えタンパク質を含む液体から、残存する微量または少量の汚染物質または不純物を除去するために使用される。一部の実施形態では、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムは、樹脂ビーズ、多孔質膜、またはナノファイバーからなるクロマトグラフィー媒体を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、または混合モードクロマトグラフィーのために官能化されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーカラムは、周期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)である。
【0033】
捕捉後クロマトグラフィーシステムを用いて組換えタンパク質を捕捉するためには、捕捉後クロマトグラフィーシステムの負荷、洗浄、溶出、再生という一連のクロマトグラフィー工程を行う必要がある。
【0034】
一部の実施形態では、方法およびシステムは、組換えタンパク質をさらに精製および濃縮するために、限外濾過(UF)および/または透析濾過(DF)を含む。UF/DFは、組換えタンパク質の濃度を高めるだけでなく、緩衝塩を特定の製剤用緩衝液に置換することができる。限外濾過(UF)は、静水圧によって液体を半透膜に押し付ける膜濾過の一種である。一部の実施形態では、UFは、単一TFFおよび高性能接線流濾過(HPTFF)を含む接線流濾過(TFF)で実行される。単一パス接線流濾過(SPTFF)とは、モジュールを通過する単一パスでの変換(透過流量を入口供給流量で除した値)が十分に大きく、システムが保持物(retentate)のリサイクル(再循環)ループなしで運転できる任意のTFFシステムを表す。SPTFFは、例えば、クロマトグラフィーや沈殿工程の前にプロセス量を減らすために、他の単位操作の間にインラインで濃縮するために使用することができる。Zydney、Biotechnol.Bioeng.113(3):465~75頁、(2016)。
【0035】
本明細書では、「透析濾過」は、限外濾過膜を用いて、抗体のようなタンパク質、ペプチド、核酸、およびその他の生体分子を含む溶液から塩や緩衝成分を除去、置換、または濃度を低下させる方法を表す。連続的透析濾過(定容量透析濾過とも呼ばれる)では、組換え産生されたポリペプチドを含む製剤を形成するために、水または製剤用緩衝液のような新しい緩衝液を保持物に加えることにより、保持物中の元の緩衝液の塩(または他の低分子量種)を洗い流すことを含む。一般的には、新しい緩衝液は、透析濾過中に保持物の体積および生成物の濃度が著しく変化しないように、濾液が生成されるのと同じ速度で添加される。特定の実施形態では、透析濾過は単一パス透析濾過カセットを用いて行われる。
【0036】
一部の実施形態では、均質化された単一混合物は、1つまたは複数の捕捉後クロマトグラフィーシステムに供される前に、ウイルス不活性化に供される。一部の実施形態では、ウイルス不活性化は、溶媒-界面活性剤溶液による不活性化、熱による不活性化、または酸性pHによる不活性化を含む。
【0037】
溶媒-界面活性剤によるウイルス不活性化では、組換えタンパク質を含むサンプルを有機溶媒と界面活性剤に供することを含む。溶媒と界面活性剤の組合せは、トリ-n-ブチルリン酸とTritonX-100(商標)、Tween80(商標)とコール酸ナトリウム、その他のような当業者で知られている任意の溶媒と界面活性剤の組合せが可能である。
【0038】
熱不活性化によるウイルス不活性化は、組換えタンパク質を含むサンプルを高温にさらすことを含む。一部の実施形態では、方法は、サンプルを、45℃以上、46℃以上、47℃以上、48℃以上、および約49℃以上、50℃以上、51℃以上まで、およびそれ以上の温度に加熱することを含む。一部の実施形態では、サンプルは、45℃から65℃の間の温度に加熱される。
【0039】
サンプルを加熱する期間は変えることができる。例えば、一部の実施形態では、サンプルは、1分から6時間の間の期間、目標温度に加熱される。一部の実施形態では、サンプルは、10分から180分の間、20分から180分の間、20分から60分の間、または20分から40分の間の期間、目標温度に加熱される。
【0040】
一部の実施形態では、酸性pHによる不活性化は、均質化された単一の混合物を、1つまたはそれ以上の溶液によってインラインで低pHに調整すること、および調整された均質化された単一の混合物を、ウイルス不活性化混合物になる間、低pHでインキュベートすること、によって行われる。
【0041】
本明細書に開示された方法およびシステムは、UV吸光によって検出される組換えタンパク質のレベルの検出、流量の検出、および/または液体(例えば、緩衝液)の体積の検出を含む、インラインモニタリングを含む。組換えタンパク質濃度のモニタリング(例えば、UVモニタリングによって行われるモニタリング)は、フィードバック制御を伴う生成物濃度のインライン測定が可能な任意のツールによって決定することができる。
【0042】
一部の実施形態では、均質化された単一の混合物は、15分から2時間の間、低pHにさらされる。特定の実施形態では、低pHは、3から5の間のpHである。pHレベルの選択は、組換えタンパク質および他の緩衝剤成分の安定性プロファイルに依存する。ウイルス不活性化後、方法を継続する前に、抗体溶液のpHをより中性的なpH、例えば4.0から8.5の間に調整することができる。
【0043】
一部の実施形態では、ウイルスの不活性化は、Parkerら、Biotechnol.Bioeng.115(3):606~16頁(2018)に記載されているような管型流通式リアクターで行われる。一部の実施形態では、管型流通式リアクターは、定義された最小滞留時間が少なくとも30分である。
【0044】
一部の実施形態では、捕捉後クロマトグラフィーシステムから出力された生成物の収集後に、ウイルス濾過のようなウイルス除去工程が含まれる。ウイルス除去工程は、ウイルス不活性化処理に対してより耐性のある小型非エンベロープ型ウイルスを除去するために行われる。一部の実施形態では、ウイルス濾過は、加圧ループで行われ、加圧ループは、圧力容器、ウイルス除去フィルタ、および滅菌フィルタを含む。一部の実施形態では、加圧ループ内のウイルス除去フィルタは、中空繊維ウイルスフィルタである。一部の実施形態では、圧力容器は、単回使用、密閉式、および滅菌可能な容器である。本明細書では、「滅菌可能な」という用語は、既知の滅菌方法に適合する材料から形成された容器を表す。一部の実施形態では、ウイルス濾過は、デッドエンド濾過を用いて行われる。本明細書では、「デッドエンド濾過」は、濾過される液体の流れ全体が、リサイクルまたは保持物の流れを伴わずにフィルタを通過する濾過を表す。一部の実施形態では、ウイルス除去フィルタは、限外濾過膜またはナノフィルタである。適切なウイルス濾過システムの一例は、国際公開WO2018/035116に開示され、参照によって本明細書に組み入れる。
【0045】
一部の実施形態では、第1の単位操作は、第2の単位操作の入口に接続された出口を含み、第2の単位操作は、第3の単位操作の入口に接続された出口を含み、第3の単位操作は、第4の単位操作の入口に接続された出口を含む。一部の実施形態では、第1の単位操作は、第5の単位操作の入口に接続された出口を含み、第5の単位操作は、第2の単位操作の入口に接続された出口を含み、第2の単位操作は、第3の単位操作の入口に接続された出口を含み、第3の単位操作は、第6の単位操作の入口に接続された出口を含み、第6の単位操作は、第4の単位操作の入口に接続された出口を含む。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書に開示されたシステムは、第1の単位操作、第2の単位操作、第3の単位操作、および第4の単位操作のそれぞれの間に、サージ容器を含む。サージ容器は、次の単位操作に移動する前に、任意の液体培養物を保持することができる。
【0047】
本明細書に記載のシステムは、任意の単位操作の間に配置される液体導管も含むことができる。適切な液体導管は、ポリエチレン、ポリカーボネート、またはプラスチック製チューブである。液体導管は、次の:液体導管と液体連通しており、インライン緩衝液調整リザーバ内に貯蔵された緩衝液が液体導管内に存在する液体に追加されるように配置されている1つまたはそれ以上のインライン緩衝液調整リザーバと;液体導管内に存在する液体を濾過(例えば、細菌の除去)することができるように液体導管内に配置されている1つまたはそれ以上のフィルタ、のうちの1つまたはそれ以上を任意の組合せで含むこともできる。
【0048】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるシステムは、ポンプシステムを含む。ポンプシステムは、次のうち1つまたはそれ以上:当技術分野で既知の1つまたはそれ以上のポンプ、当技術分野で既知の1つまたはそれ以上のフィルタ、および1つまたはそれ以上のUV検出器を含むことができる。
【0049】
一部の実施形態では、限外濾過/透析濾過の後に、1つまたはそれ以上の賦形剤を生成物の出力に加えて、治療用薬剤物質を生成する。
【0050】
本明細書では、「治療用薬剤物質」は、汚染タンパク質、脂質、核酸(例えば、液体培養培地中に存在する汚染タンパク質、脂質、核酸)や、宿主細胞(例えば、哺乳動物、酵母、細菌の宿主細胞由来)、および生物学的汚染物質(例えば、ウイルスや細菌の汚染物質)から十分に精製または分離された組換えタンパク質を含む物質を表し、さらに実質的な精製および/または汚染除去の工程を経ることなく、医薬品に製剤化することができる。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書に開示されたシステムは、スキッド上にある。本明細書では、「スキッド」は、本明細書に記載のシステムのプラットフォームまたは支持体として機能することができる3次元の固体構造を表す。スキッドは、移動を可能にする1つまたはそれ以上の構造(例えば、車輪、ローラーなど)を含む場合、システムまたはその一部に移動性を付与することができる。
【0052】
一部の実施形態では、方法およびシステムは、少なくとも約40%、50%、55%、または60%、最大で約65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の組換えタンパク質の回収率を有する。一部の実施形態では、精製回収率は少なくとも約60%~約70%である。
【0053】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムでは、治療用タンパク質薬剤物質中の組換えタンパク質の正味収量が、少なくとも約5日、10日、20日、または30日、および少なくとも約280日、290日、300日、310日、320日、330日、340日、350日、または365日までの連続した期間にわたって、少なくとも約5g/日、10g/日または20g/日、30g/日または40g/日、および少なくとも約200g/日、300g/日、400g/日、500g/日、または1000g/日までとなる。
【0054】
以下の実施例は、本開示の具体的な実施形態およびその種々の使用を説明する。これらは説明のためだけに記載されており、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0055】
組換えタンパク質の連続的生産
二重ATFを結合した100Lの強化灌流バイオリアクターを用いて、組換えモノクローナル抗体(mAb)を70日間にわたって生産した。無細胞のmAbを含む培地(採取)を、さらなる処理のために100Lの採取サージ容器に連続的に投入した。
【0056】
パイロットスケールのスチームインプレイス(steam-in-place)PCCスキッド上で、結合および溶出MCCモードで、充填済みで照射したプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム1L(8×20cm)2本を使用して、抗体含有培地を捕捉した。捕捉工程は、2本のカラムのうち1本が常に採取サージ容器から負荷され、捕捉工程の平均入口流量と灌流バイオリアクターの平均出口流量が一致するように実行した。プロテインAカラムへの負荷は、Delta UVにより約3%のブレークスルーに制御された。個々の捕捉カラムの溶出物は、ウイルス不活性化の前に5Lの混合容器に集められた。プロテインAの操作を、12日目に灌流式バイオリアクターと統合し、58日間連続して行った。プロテインAの操作性能をまとめたデータを
図3A~3Fに示す。
【0057】
個々のプロテインA溶出物を5Lの混合容器で混合し、ウイルス不活性化単位操作のための均一な流れを確保した。混合容器からの流出を、次のプロテインA溶出サイクルの前に容器全体が処理されるように自動化した。1M酢酸を添加することによって、均質化されたプロテインA溶出物を、目標pHの3.6にインラインで調整した。次いで、低pHに調整したプロテインA溶出物を、少なくとも30分以上の定義された最小滞留時間で管型流通式リアクター(TFR)より送り出し、低pHで十分な時間をかけてウイルスを完全に不活性化した。次いで、0.75M酢酸ナトリウムを添加することによって、ウイルス不活性化されたプロテインA溶出物を、目標pHの4.5にインラインで調整した。次いで、調整されたウイルス不活性化プロテインA溶出物を、滅菌グレードのフィルタで処理し、さらに処理するために小型サージ容器に連続的に収集した。ウイルス不活性化の操作を、15日目に先行する操作と統合し、55日間連続して行った。ウイルス不活性化の操作性能をまとめたデータを
図4A~4Gに示す。
【0058】
調整されたウイルス不活性化プロテインAの溶出物を、混合モードの陰イオン交換樹脂と疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂を用いた2つの直交クロマトグラフィー操作でさらに処理し、フロースルーモードで運転した。この処理例では、2つの捕捉後クロマトグラフィー操作の間に工程間の調整はなく、混合モードカラムからのフロースルーを直接疎水性相互作用カラムに負荷することができた。捕捉後装置は、2本の0.2L(5×10cm)充填済み混合モードカラムと2本の0.2L(5×10cm)充填済み疎水性相互作用カラムからなり、プロテインAの操作と同じPCCスキッド上で、MCCモードで運転した。調整してウイルスを不活性化したプロテインAの溶出物の流れを、並行する2つの捕捉後装置のうちの1つに連続的に負荷し、各捕捉後サイクルでプロテインAの溶出物約2本分の質量が負荷されるようにカラムの負荷を自動化した。
【0059】
混合モード/疎水性相互作用を組み合わせたフロースルー(捕捉後溶出物と表示)を、さらなる処理のために小型のサージ容器に連続的に収集した。捕捉後クロマトグラフィー操作を、23日目に先行する単位操作と統合し、47日間連続して行った。捕捉後クロマトグラフィーの操作性能をまとめたデータを
図5A~5Dに示す。
【0060】
捕捉後溶出物を接線流モードで動作する0.1m
2のPlanova 20N(AK Bio)ウイルス除去フィルタでさらに処理した。捕捉後溶出物を、
図6Aに示すように、サージ容器から、圧力容器、ウイルス除去フィルタ、滅菌グレードのフィルタ、および再循環を駆動する蠕動ポンプを含む加圧ループに連続的に移送した。ループ内の圧力を、ウイルスフィルタを通過する正味の体積流量(透過液流束)が、捕捉後操作から排出される正味の体積流量と等しくなるように自動化した。Planova 20Nフィルタは、予備的なウイルス検証研究に基づいて定期的に交換した。ウイルスを濾過した材料を、さらに処理するために小型サージ容器に連続的に収集した。ウイルス濾過の操作を、29日目に先行する単位操作と統合し、41日間連続して行った。ウイルス濾過の操作性能をまとめたデータを
図6B~6Fに示す。
【0061】
ウイルス濾過した材料を、0.065m
2のILC単一パスTFF(SP-TFF)カセットを用いた限外濾過でさらに処理し、目標mAb濃度の65g/Lまで濃縮した。ウイルス濾過後のサージ容器からSP-TFFカセットの入口まで、ウイルス濾過操作の出口流量に合わせた流量で材料を送り出した。SP-TFFカセットからの保持物の流量を、生成物濃度のインライン測定によるフィードバックループを用いて自動的に制御し、目標濃度値を維持した。次いで、濃縮mAbの流れを、単一パス透析濾過(SP-DF)カセットの入口に直接送出し、インラインでの緩衝液交換を行った。透析濾過緩衝液をSP-DFカセットの緩衝液入口に送液し、緩衝液フローを自動化して生成物フローに対する緩衝液の比率を一定に保った。保持物の流量を入口の流量に合わせて制御した。次いで、濃縮した賦形剤溶液をインラインで添加することによって、緩衝液を交換したDFの保持物の流れを製剤化し、製剤原体を生成した。製剤原体を滅菌グレードのフィルタでさらに処理して薬剤物質を生成し、これを単回使用容器に収集した。限外濾過および透析濾過の操作を、42日目に先行する単位操作と統合し、29日間連続して行った。製剤化操作および薬剤物質生成を、46日目に統合し、25日間連続して行った。25日の間に6バッチの薬剤物質が生成された。限外濾過および透析濾過の操作性能をまとめたデータを
図7A~7Eおよび
図8A~8Dに示す。
図9A~9Hは、生成された薬剤物質の性状を示す。
【実施例2】
【0062】
組換えタンパク質の連続的生産
二重ATFを結合した100Lの強化灌流バイオリアクターを用いて、組換えモノクローナル抗体(mAb)を27日間にわたって生産した。無細胞のmAbを含む培地(採取)を、さらなる処理のために100Lの採取サージ容器に連続的に投入した。
【0063】
パイロットスケールのスチームインプレイスPCCスキッド上で、結合および溶出MCCモードで、充填済みで照射したプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム1L(8×20cm)2本を使用して、抗体含有培地を捕捉した。捕捉工程は、2本のカラムのうち1本が常に採取サージ容器から負荷され、捕捉工程の平均入口流量と灌流バイオリアクターの平均出口流量が一致するように実行した。プロテインAカラムへの負荷は、Delta UVにより約3%のブレークスルーに制御された。個々の捕捉カラムの溶出物は、ウイルス不活性化の前に5Lの混合容器に集められた。プロテインAの操作を、12日目に灌流式バイオリアクターと統合し、15日間連続して行った。
【0064】
個々のプロテインAの溶出物を5Lの混合容器で混合し、ウイルス不活性化単位操作のための均一な流れを確保した。混合容器からの流出を、次のプロテインA溶出サイクルの前に容器全体が処理されるように自動化した。1M酢酸を添加することによって、均質化されたプロテインA溶出物を、目標pHの3.6にインラインで調整した。次いで、低pHに調整したプロテインA溶出物を、少なくとも30分以上の定義された最小滞留時間で、ガンマ線を照射した3Dプリントの管型流通式リアクター(TFR)より送り出し、低pHで十分な時間をかけてウイルスを完全に不活性化した。次いで、0.75M酢酸ナトリウムを添加することによって、ウイルス不活性化されたプロテインA溶出物を、目標pHの4.5にインラインで調整した。次いで、調整されたウイルス不活性化プロテインA溶出物を、滅菌グレードのフィルタで処理し、さらに処理するために小型サージ容器に連続的に収集した。ウイルス不活性化の操作を、13日目に先行する操作と統合し、14日間連続して行った。
【0065】
調整されたウイルス不活性化プロテインA溶出物を、混合モードの陰イオン交換樹脂と疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂を用いた2つの直交クロマトグラフィー操作でさらに処理し、フロースルーモードで運転した。捕捉後装置は、2本の0.2L(5×10cm)充填済みガンマ線照射済み混合モードカラムと、2本の0.2L(5×10cm)充填済みガンマ線照射済み疎水性相互作用カラムからなり、MCCモードで運転した。調整してウイルスを不活性化したプロテインAの溶出物の流れを、2本の混合モードカラムのうち1本に連続的に負荷し、混合モードカラムのフロースルーを、2本の疎水性相互作用カラムのうち1本に連続的に負荷した。混合モードカラムと疎水性相互作用カラムは、それぞれの負荷容量まで独立して負荷した。
【0066】
捕捉後クロマトグラフィー操作を、14日目に先行する単位操作と統合し、13日間連続して行った。
【0067】
捕捉後溶出物を接線流モードで動作する0.1m2のPlanova 20N(AK Bio)ウイルス除去フィルタでさらに処理した。捕捉後溶出物を、疎水性相互作用カラムの出口から、圧力容器、ウイルス除去フィルタ、滅菌グレードのフィルタ、および再循環を駆動する蠕動ポンプを含む加圧ループに連続的に移送した。ループ内の圧力を、ウイルスフィルタを通過する正味の体積流量(透過液流束)が、捕捉後操作から排出される正味の体積流量と等しくなるように自動化した。ウイルス濾過した材料を、さらに処理するために小型サージ容器に連続的に収集した。ウイルス濾過の操作を、14日目に先行する単位操作と統合し、13日間連続して行った。
【0068】
ウイルス濾過した材料を、順次、2×0.1m2のガンマ線照射済みTFFカプセルを用いた限外濾過でさらに処理し、単一パスモードで運転した。ウイルス濾過した材料を、目標mAb濃度の110g/Lまで濃縮した。ウイルス濾過後のサージ容器からTFFカプセルの入口まで、ウイルス濾過操作の出口流量に合わせた流量で材料を送出した。TFFカプセルからの保持物の流量を、生成物濃度のインライン測定によるフィードバックループを用いて自動的に制御し、目標濃度値を維持した。次いで、濃縮mAbの流れを、ガンマ線照射済み単一パス透析濾過(SP-DF)カセットの入口に直接送出し、インラインでの緩衝液交換を行った。透析濾過緩衝液をSP-DFカセットの緩衝液入口に送出し、緩衝液フローを自動化して生成物フローに対する緩衝液の比率を一定に保った。保持物の流量を入口の流量に合わせて制御した。次いで、濃縮した賦形剤溶液をインラインで添加することによって、緩衝液を交換したDFの保持物の流れを製剤化し、製剤原体を生成した。製剤用緩衝液の添加を、フィードバックループと製剤流の賦形剤のレベルを測定するインラインセンサーによって制御した。製剤原体を滅菌グレードのフィルタでさらに処理して薬剤物質を生成し、これを単回使用容器に収集した。限外濾過および透析濾過の操作を、18日目に先行する単位操作と統合し、製剤化の操作を20日目に統合した。インラインセンサーに問題があったため、UF/DFと製剤化の操作はキャンペーン終了前に定常状態に達しなかった。
【0069】
本開示を、種々の実施形態の観点から説明してきたが、当業者には変形や改変が生じることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、請求項に記載した本開示の範囲内に入るすべてのそのような同等の変形をカバーすることが意図されている。さらに、本明細書で用いる節の見出しは構成のみを目的としており、記載された対象物を限定するものとみなされるべきではない。
【0070】
本明細書に記載された各実施形態は、明確に反対のことが示されていない限り、他の任意の実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された特徴または実施形態は、明確に反対のことが示されない限り、好ましいまたは有利であると示された他の特徴または実施形態と組み合わせてもよい。
【0071】
本出願で引用されているすべての文献は、参照によって本明細書に明示的に組み入れる。