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特許7568640粉末の粒子を保留するよう最適化された、粉末を受け取るための可動表面を含む付加製造機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】粉末の粒子を保留するよう最適化された、粉末を受け取るための可動表面を含む付加製造機械
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/50 20210101AFI20241008BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241008BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241008BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20241008BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20241008BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/28
B33Y30/00
B29C64/153
B29C64/205
B29C64/236
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021559551
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059752
(87)【国際公開番号】W WO2020207967
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】1903718
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】モッティン ジャン-バティスト
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501292(JP,A)
【文献】特開2015-205512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0186514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0293770(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0190112(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108367352(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床堆積による付加製造機械(10)であって、
ワークトップ(18)と、
ワークエリア(20、120)と、
前記ワークエリアに粉末層を堆積させる装置(29、129)と、
前記ワークエリアに堆積した前記粉末層を選択的に固めるのに使用される熱又はエネルギー源(14)と、
を備え、
前記粉末層を堆積させる装置が、
前記ワークエリアの近傍で前記ワークトップに対して移動する粉末を受け入れるための可動要素(28、128)と、
前記可動要素上に前記粉末のビードを分配する装置(32、132)と、
前記可動要素から前記ワークエリアに向かって前記粉末のビードを拡散する粉末拡散装置(30)と、
を含み、
前記可動要素(28)は、前記ワークエリア(20)に対して横断水平方向(D36)で並進移動するように取り付けられたスライド(36)の形態をとり、前記スライドが前記粉末拡散装置(30)の軌道の外側に配置される格納位置と、前記スライドが前記粉末拡散装置(30)の軌道内に少なくとも部分的に延在する展開位置との間を移動し、又は前記可動要素(128)は、その全周にわたって前記ワークエリア(120)を外部から取り囲み、前記ワークエリア(120)の周りを回転移動し、
前記可動要素の上面(S28、S128)の少なくとも一部は、前記ワークトップの上面(S18)の上方に配置され、かつ/又は前記可動要素の上面(S28、S128)の少なくとも一部は、前記ワークトップの前記上面(S18)の下方に配置され
前記可動要素の上面の少なくとも一部が、前記ワークトップの上面の延長部に配置され、前記可動要素がまた、前記可動要素の上面の上方に上昇した少なくとも1つの隆起形態(60)及び/又は前記可動要素の上面の下方に延びる少なくとも1つの凹状形態(62)を含むことを特徴とする、粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項2】
前記可動要素の上面に凹状形態が機械加工される、請求項に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項3】
隆起形態又は凹状形態が、複数の基本パターン(M)から構成される、請求項に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項4】
前記可動要素の上面に単一の凹状形態(64)が設けられている、請求項に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項5】
前記可動要素の上面に設けられた前記単一の凹状形態は、垂直面において矩形断面の凹部の形態をとり、150マイクロメートルから2ミリメートルの間の範囲の垂直方向の高さをとる、請求項に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項6】
前記単一の凹状形態が、前記可動要素の上面の幅(W28)の少なくとも80%に等しい幅(W64)にわたって延びる、請求項又は請求項に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項7】
前記単一の凹状形態が、前記ワークエリアの最大横方向寸法よりも大きい距離にわたって長手方向に延びる、請求項4から6の何れかに記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項8】
前記可動要素は、前記ワークトップに設けられたレセプタクル(38)内の前記ワークエリアの近傍で移動する、請求項1に記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【請求項9】
粉末のビーを分配する前記装置が固定された状態で、前記可動要素が前記粉末のビードを分配する前記装置の下方を移動する、請求項1からの何れかに記載の粉末床堆積による付加製造機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービーム及び/又は電子ビーム及び/又はダイオードなどの1又は2以上のエネルギー源又は熱源の助けを借りて、この粉末の粒子を溶融することによる粉末ベースの付加製造の分野に含まれる。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明は、粉末床堆積による付加製造の分野に含まれ、粉末床堆積による付加製造のために機械内部で付加製造粉末を層状化することに関する。
【0003】
更により具体的には、本発明の目的は、粉末の各層を生成するのに使用される粉末の量を低減すること、及び粉末床の品質を改善することである。
【0004】
国際公開第2017/108868号には、ワークトップと、粉末層が広がり、選択的に連続して逐次コンソリデーションされる(固められる)少なくとも1つのワークエリアとを含む、粉末床堆積による付加製造用の機械が記載されている。
【0005】
国際公開第2017/108868号に記載されている機械は、粉末の層をワークエリアに堆積させるための装置と、ワークエリアに堆積された粉末の層を選択的にコンソリデーションするのに使用される熱源又はエネルギー源とを備える。堆積装置は、ワークエリアの近傍で移動する粉末を受け入れるためのスライドと、粉末のビーズをスライド上に分配するための装置と、粉末のビーズをスライドからワークエリアに向かって拡散するための装置と、を含む。
【0006】
製造された部品の品質を保証するために、粉末は、ワークエリア全体、又は少なくとも部品が製造されるワークエリアの部分を均一に覆う必要がある。このため、余分な粉末がスライド上に堆積され、粉末の層を生成するのに使用されない余分な粉末は、拡散装置によって粉末回収タンクに押し出される。
【0007】
タンク内で回収された余分な粉末をリサイクルできる場合でも、スライド上に過剰に堆積されリサイクルしなければならない粉末の量は制限することが望ましい。実際に、このリサイクルは費用がかかる可能性があるので、機械の粉末消費量を制限すること、及びリサイクルされる粉末の量を制限することは、常に望ましい。
【0008】
粉末を分配するための装置の流れを制御し、スライドの動きを制御することにより、拡散装置によってワークエリア全体に拡散される粉末のビーズを形成する粉末の量は、可能な限り最良の方法で注入することができる。
【0009】
しかしながら、スライドの何れかの移動の間、スライド上に堆積された粉末は、振動及び揺れに晒されて、スライド上に堆積された粉末の一定量の粒子が落下してしまう可能性がある。更に、スライドの移動中に落下する一定量の粉末を補償するために、スライド上に堆積する過剰な粉末の量が一般に増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2017/108868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い可鋳性を有する付加製造粉末の場合、より多くの量の粉末粒子が落下するのを補償するために、スライド上に堆積する過剰な粉末の量を大幅に増大させる必要がある。本発明の目的は、特に、移動中に付加製造機械の可動粉末受容面によって生じる振動又は揺れの作用を受けて特定の量の粉末の粒子が落下するのを制限及び/又は防止するために、可動粉末受容面上の粉末粒子の保留を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明の目的は、粉末床堆積による付加製造機械であって、本機械は、ワークトップ、ワークエリア、ワークエリアに粉末層を堆積する装置、及びワークエリアに堆積された粉末層を選択的にコンソリデーションするのに使用される熱源又はエネルギー源と、を備え、粉末層を堆積させる装置が、ワークエリアの近傍でワークトップに対して移動する粉末を受け入れるための可動要素と、粉末のビーズを可動要素上に分配する装置と、可動要素からワークエリアに向かって粉末のビードを拡散する装置と、を含む。
【0013】
本発明によれば、可動要素は、ワークエリアに対して横断水平方向で並進移動するように取り付けられたスライドの形態をとり、このスライドが粉末拡散装置の軌道の外側に配置される格納位置と、このスライドが粉末拡散装置の軌道内に少なくとも部分的に延在する展開位置との間を移動し、又は可動要素は、その全周にわたってワークエリアを外部から取り囲み、ワークエリアの周りを回転移動し、可動要素の上面の少なくとも一部が、ワークトップの上面の上方に配置され、及び/又は可動要素の上面の少なくとも一部が、ワークトップの上面の下方に配置される。
【0014】
ワークトップの上面の上方及び/又は下方に配置される可動要素の上面の1又は2以上の部分が、可動要素上に堆積された粉末粒子と可動要素の上面との間の粗度及び/又は相対接触面を増加可能にする。粗度及び/又は相対接触面の増加により、特にこの可動要素の移動中、粉末粒子を可動要素の上面に保留することができる。
【0015】
本発明はまた、以下を提供する:
-可動要素の上面全体がワークトップの上面の下方にある;
-可動要素の上面は、ワークトップの上面の下方で、60マイクロメートルから5ミリメートルの間、又は100マイクロメートルから1ミリメートルの間にある;
-可動要素の上面の少なくとも一部は、ワークトップの上面の延長部に配置され、この可動要素はまた、その上面の上方に上昇する少なくとも1つの隆起形態及び/又はその上面の下方に延びる少なくとも1つの凹状形態を含む;
-隆起形態が可動要素の上面にプリンティングされる;
-可動要素の上面に凹状形態が機械加工される;
-隆起形態又は凹状形態は、複数の基本パターンで構成される;
-可動要素の上面に単一の凹状形態が設けられる;
-可動要素の上面に設けられた単一の凹状形態は、垂直面において矩形断面の凹部の形態をとり、60マイクロメートルから5ミリメートルの間、又は150マイクロメートルから2ミリメートルの間の範囲の垂直方向の高さをとる;
-単一の凹状形態は、可動要素の上面の幅の少なくとも80%に等しい幅にわたって延びる;
-単一の凹状形態は、ワークエリアの最大横方向寸法よりも大きい距離にわたって長手方向に延びる;
-可動要素は、ワークトップに設けられたレセプタクル内のワークエリアの近傍で移動する;
-粉末のビーズを分配する装置が固定された状態で、可動要素が分配装置の下方を移動する。
【0016】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明にて明らかになるであろう。本説明は、非限定的な実施例により提供され、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明で改善することができる付加製造機械の第1の変形形態の概略正面図である。
図2】本発明で改善することができる付加製造機械の第1の変形形態の概略上面図である。
図3】本発明で改善することができる付加製造機械の第1の変形形態の概略側面図である。
図4】本発明で改善することができる付加製造機械の第2の変形形態の概略上面図である。
図5】本発明の第1の実施形態の概略横断面図である。
図6】本発明の代替の実施形態の様々な変形形態の概略横断面図である。
図7】本発明の代替の実施形態の様々な変形形態の概略横断面図である。
図8】本発明の代替の実施形態の様々な変形形態の概略横断面図である。
図9図6、7、及び8の本発明の代替の実施形態において使用できる様々なパターンを示す図である。
図10図6、7、及び8の本発明の代替の実施形態において使用できる様々なパターンを示す図である。
図11図6、7、及び8の本発明の代替の実施形態において使用できる様々なパターンを示す図である。
図12】本発明の別の実施形態の概略横断面図である。
図13図12の本発明の実施形態の概略上面図である。
図14図12及び13の実施形態における本発明の動作原理を示す図である。
図15図12及び13の実施形態における本発明の動作原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、粉末床堆積による付加製造のための機械に関する。粉末床堆積による付加製造は、付加製造粉末の相互に重ね合わされた様々な層を選択的に溶融することによって1又は2以上の部品が製造される付加製造法である。粉末の第1の層は、プラットフォームなどの支持体上に堆積され、製造される1又は2以上の部品の第1の水平断面に沿って、1又は2以上のエネルギー源又は熱源を使用して選択的に焼結又は溶融される。次に、溶融又は焼結したばかりの粉末の第1の層に第2層の粉末を堆積させ、この第2層の粉末を選択的に焼結又は溶融して、以下同様に最後の粉末層に到り、この最後の層は、製造される1又は2以上の部品の最後の水平断面を製造するのに有用である。
【0019】
図1に示されるように、及び粉末床堆積による部品の付加製造を可能にするために、本発明による付加製造機械10は、例えば、製造チャンバ12と、1又は2以上のビーム16を介して、製造チャンバ12内に堆積された付加製造粉末の層を選択的に溶融するのに使用される少なくとも1つの熱源又はエネルギー源14と、を備える。
【0020】
1又は2以上の熱源又はエネルギー源14は、1又は2以上の電子ビーム及び/又は1又は2以上のレーザービームを生成することができる供給源の形態をとることができる。これらの供給源は、例えば、1又は2以上の電子銃及び/又は1又は2以上のレーザー光源である。1又は2以上の供給源14は、例えば、製造チャンバ12に対して固定されている。選択的溶融を可能にし、従って、エネルギー又は熱の1又は2以上のビーム16を移動可能にするために、各ソース14は、1又は2以上のビーム16を移動及び制御する手段を備える。或いは、例えば、1又は2以上の熱源又はエネルギー源14は、これらがレーザービーム放出ダイオードである場合、製造チャンバ12の内部に移動可能に取り付けることができる。
【0021】
製造チャンバ12は、密閉されたチャンバである。この製造チャンバ12の壁は、チャンバ内での製造の進行を観察するためのガラス板を備えることができる。この製造チャンバ12の少なくとも1つの壁は、保守又は洗浄動作のためにチャンバの内部へのアクセスを許可する開口部を含み、この開口部は、製造サイクル中にドアによって再び密閉し閉鎖することができる。製造サイクル中、製造チャンバ12は、付加製造粉末の酸化を防止するため、及び/又は発火又は爆発のリスクを回避するために、窒素などの不活性ガスを充填することができる。製造チャンバ12は、酸素の侵入を回避するためにわずかな過圧で維持することができ、又はチャンバ内で電子ビームを使用して、粉末を焼結又は溶融するときに真空下に維持することができる。
【0022】
製造チャンバ12の内部には、本発明による付加製造機械10は、例えば、ワークエリア20と、ワークエリア20上に粉末層を堆積させるための装置29と、を備える。上面S18を有する水平ワークトップ18を備えた機械では、ワークエリア20は、例えばワークトップ18内に配置される。図2に示すように、ワークエリア20は、例えば、水平ワークトップ18に設けられた開口部21により、及び製造スリーブ22及び製造プラットフォーム24により定められる。スリーブ22は、ワークトップ18の下に垂直方向に延在し、開口部21を介してワークトップ18に開口している。製造プラットフォーム24は、ラムなどのアクチュエータ26の影響下で、製造スリーブ22の内側で垂直方向にスライドする。
【0023】
製造される1又は2以上の部品の付加製造に使用される粉末の様々な層を生成するために、堆積装置29は、例えば、ワークエリア20の近くでワークトップに対して移動する粉末を受け入れるための可動要素28と、粉末のビーズを可動要素に分配するための装置32と、粉末のビーズを可動要素からワークエリアに向かって拡散するための装置30と、を備える。
【0024】
粉末のビーズを分配するための装置32は、例えば、製造チャンバ12及びワークトップ18に対して固定的に取り付けられる。拡散装置30は、キャリッジ35に取り付けられたスクレーパー及び/又は1又は1以上のローラー34の形態をとる。このキャリッジ35は、ワークエリア20上で長手水平方向D35に並進運動するように取り付けられている。キャリッジ35は、長手水平方向の並進移動に設定するために、電動化するか、又は製造チャンバ12の外側に配置され、プーリー及びベルトなどのような運動伝達システムを介してキャリッジに接続されるモーター(図示せず)によって運転することができる。
【0025】
図1、2及び3に示される第1の変形形態では、本発明による付加製造機械は、粉末を受け入れるための2つの可動要素28と、粉末のビーズを分配するための2つの装置32とを備えることができ、各可動要素は、少なくとも1つの分配装置で分配される粉末を受け取る。より詳細には、可動要素及び分配装置は、拡散装置30のキャリッジ35の移動の長手水平方向D35においてワークエリア20の各側部に設けられている。従って、粉体拡散装置は、移動の長手水平方向D35の両方向に粉体を拡散できるので、ワークエリアにわたって不必要に移動することがない。
【0026】
図2に示されるように、可動要素28は、ワークエリアの近傍を並進移動する。このため、可動要素28は、例えば、スライド36の形態をとる。スライド36は、ワークエリア20に対して横断水平方向D36に並進運動するように取り付けられている。スライド36は、このスライドが粉末拡散装置30の軌道の外側に位置する格納位置と、このスライドが粉末拡散装置30の軌道内に少なくとも部分的に延びる展開位置との間を移動する。例えば、スライド36が移動する横方向の水平方向D36は、拡散装置30のキャリッジ35の移動の長手水平方向D35に垂直である。スライド36は、例えば、ラム(図示せず)などのアクチュエータによって並進駆動される。
【0027】
分配装置32は、各スライド36の上方に、従って各可動要素28の上方に設けられている。各スライド36、及び従って各可動要素28は、横断水平方向D36で細長い形状である。各スライド36、及び従って各可動要素28は、スライドがその格納位置から展開位置に移行するときに、粉末分配装置の下方を移動する。
【0028】
図2及び3に示されるように、各スライド36は、製造チャンバ12のワークトップ18に設けられたレセプタクル38内で並進移動するように取り付けられている。各スライド36は、水平面で並進移動する。格納位置では、スライド36は、例えば製造チャンバ12に密封可能に接続され且つワークトップに設けられた溝などのレセプタクル38の反対側に取り付けられたシース39内に配置される。展開位置にあるときに、スライド36は、レセプタクル38に配置されている。レセプタクル38及びシース39は、スライド36が移動する横断水平方向D36に延在する。各レセプタクル38は、ワークエリア20の近傍に延びる。有利には、シース39は、スライドから落下する粉末粒子を回収するためのホッパー41を備えている。ワークエリア20の近傍及びワークトップ18内で並進移動するように取り付けられることによって、各スライド36は、ワークエリア20の近傍の極めて小さなスペースを占める。
【0029】
各可動要素28が並進移動可能なスライドの形態をとる場合、ワークエリア20は、好ましくは、例えば矩形の形態をとる。しかしながら、ワークエリア20はまた、例えば、円形、楕円形、もしくは環状の形態など、製造される1又は2以上の部品の形態に良好に適した他の形態をとることができる。ワークエリア20上に粉末層を生成するために、分配装置32は、ビーズの形態の粉末を可動要素28の上面S28に送達し、次にスクレーパー及び/又は粉末拡散装置の1又は2以上のローラーは、ワークエリア20にわたってビーズの形態で堆積された粉末を拡散させる。可動要素28の上面S28上に粉末のビーズを生成するために、この可動要素28は、粉末分配装置32の下で並進移動する。
【0030】
図2に示されるように、粉末分配装置32は、粉末供給部42に接続されたバッファタンク40と、その下で可動要素28が移動する粉末分配点P1とを備える。粉体供給42は、例えば、容器45が取り外し可能に接続されたバルブ43の形態をとる。容器45は、製造サイクル中に分配装置32のバッファタンク40に供給することを意図した粉末を含む。バルブ43は、粉末分配装置32への粉末の通過を許可又は防止することを可能にする。或いは、粉末供給部42はまた、例えば、粉末を複数の付加製造機械に供給することを可能にする自動化された粉末供給回路の形態をとることができる。
【0031】
図2に示されるように、粉末分配装置32のバッファタンク40は、パイプ46によって、粉末供給部42及び特にバルブ43に接続されている。機械10が、同じワークエリアの何れかの側部に設けられた2つの粉末分配装置32を含む場合、これらの2つの粉末分配装置32は、例えば、同じ粉末供給部42及び従って同じバルブ43に接続される。
【0032】
粉末分配装置32は、粉末の安定した制御された流れが分配点P1に送達されることを可能にし、その下で可動要素28が移動する。より詳細には、分配装置32の出口58は、粉末分配点P1に対応する。図3に示すように、粉末分配装置32は、例えば、シース39の上方に取り付けられている。
【0033】
図4に示される本発明による機械の第2の変形形態では、粉末層を堆積するための装置129は、ワークエリア120を取り囲む粉末を受け入れるための可動要素128と、粉末のビーズを可動要素128上に分配するための装置132と、可動要素128上に堆積された粉末を拡散するための装置30と、を備える。
【0034】
この第2の変形形態では、ワークエリア120は円形である。ワークトップ18に設けられ、このワークエリアを定める開口部121もまた、円形である。例えば、可動要素128は、その全周にわたってワークエリア120を外部から取り囲んでいる。可動素子128はリングの形態をとり、可動素子の上面S128は環状である。可動要素128は、ワークトップ18に設けられたレセプタクル138においてワークエリア120の近傍を移動する。このレセプタクル138は、例えば、ワークエリア120の周りのワークトップ18にて生成された環状凹部の形態をとる。
【0035】
より詳細には、可動要素128は、ワークエリア120の周りを回転する。可動要素は、モーター(図示せず)などの少なくとも1つのアクチュエータによってワークエリア120の周りを回転するように設定される。可動要素は、垂直軸を中心に回転するように設定される。ワークエリア120の周りを自在に回転するように取り付けられ、環状形態を有することにより、可動要素28は、ワークエリア120の周りの極めて小さなスペースを占める。
【0036】
この第2の変形形態では、可動要素128の上面S128に粉末のビーズを分配するための装置32は、粉末供給部50に接続されたバッファタンク48と、可動要素128の上に位置する粉末分配点P1にバッファタンク48を接続する分配パイプ52と、を備える。分配パイプ52は、例えば、振動装置(図示せず)に取り付けられ、分配パイプ及びバッファタンク48において、粉末分配点P1に向かって粉末の連続的な流れを生成する。バッファタンク48は、分配パイプ52に堅固に固定することができる。バッファタンク48は、分配パイプ52の上流端に固定され、粉末分配ポイントP1は、分配パイプの他方の下流端に配置されている。バッファタンク48は、例えば、可撓性パイプ56によって粉末供給部に接続されている。粉末供給部50は、自動粉末供給回路に接続することができ、又は取り外し可能な容器の形態をとることもできる。
【0037】
この第2の変形形態では、拡散装置30はまた、スクレーパーの形態、及び/又はキャリッジ35に取り付けられた1又は2以上のローラーの形態をとる。このキャリッジ35は、ワークエリア120上で長手水平方向D35に並進移動するように取り付けられている。長手水平方向の移動のために案内されるために、キャリッジ35は、レール58に取り付けることができる。
【0038】
前述の変形形態の何れかにおいて、可動要素28、128の上面S28、S128は、粉末分配装置32、132の下で及びワークエリア20、120の近傍で移動する。これらの動作中に、可動要素28、128は、一定量の粉末がスライドから落下する可能性のある振動及び揺れを生じる可能性がある。
【0039】
この可動要素28、128の移動中に可動要素28、128の上面S28、S128からある量の粉末が落下するのを防ぐため、又は少なくとも制限するために、可動要素の上面S28、S128の少なくとも一部は、ワークトップの上面の上方に配置され、及び/又は上面S28、S128の少なくとも一部は、ワークトップの上面の下方に配置される。
【0040】
言い換えれば、可動要素の上面S28、S128の1又は2以上の部分は、ワークトップの上面S18上に配置され、可動要素の上面S28、S128の1又は2以上の部分は、ワークトップの上面S18の下方に配置され、又は可動要素の上面S28、S128の第1の部分のうちの1又は2以上は、ワークトップの上面S18の上方に配置され、及び可動要素の上面S28、S128の第2の部分のうちの1又は2以上は、ワークトップの上面S18の下方に配置される。
【0041】
可動要素の上面S28、S128の粗度を増加させることにより、及び/又は粉末粒子と可動要素の上面との間の相対接触面を増加させることにより、ワークトップの上面の上方及び/又は下方に配置された可動要素の上面の1又は2以上の部分により、粉末粒子は、特にこの可動要素の移動中に可動要素の上面により良好に保留できるようになる。
【0042】
図5に示される本発明の第1の実施形態では、可動要素28、128の上面S28、S128全体は、ワークトップ18の上面S18の下方に配置することができる。このシナリオでは、粉末粒子の残留量Qは、粉末拡散装置30によってワークエリア20、120に向かって運ばれない。この粉末粒子の残留量Qにより、分配装置32、132によって可動要素28、128の上面S28、S128に堆積される新しい粉末粒子との相対的な接触面を増加させることができる。例えば、可動要素28、128の上面S28、S128は、ワークトップ18の上面S18の下方で、60マイクロメートルから5ミリメートルの間、又は100マイクロメートルから1ミリメートルの間に配置される。
【0043】
この第1の実施形態の代替として、可動要素の上面S28、S128の少なくとも一部は、ワークトップの上面の延長部に配置され、可動要素はまた、上面の上方に上昇した少なくとも1つの隆起形態60を及び/又は上面の下方に延びる少なくとも1つの凹状形態62を含む。
【0044】
図6に示されるように、可動要素は、上面の上方に上昇した隆起形態60と、上面より下方に延びる凹状形態62とを備えることができる。
【0045】
図7に示されるように、可動要素は、上面の上方に上昇した隆起形態60のみを含むことができる。
【0046】
図8に示されるように、可動要素は、上面の下方に延びる凹状形態62のみを含むことができる。
【0047】
隆起形態60及び凹状形態62は、例えば、レーザー加工によって得ることができる。隆起形態は、例えば、付加製造法を使用して、可動要素の上面にプリンティングすることができる。凹状形態62は、例えば、可動要素の上面において機械加工され、すなわち、材料を除去することによって得られる。
【0048】
隆起形態60及び/又は凹状形態62により、相対的接触面は、分配装置32、132によって可動要素28、128の上面S28、S128に堆積されることになる新しい粉末粒子で増加させることができる。
【0049】
可動要素の上面上の粉末粒子の保留を更に増大させるために、隆起形態60又は凹状形態62は、複数の基本パターンMから構成される。パターンMは、開いた又は閉じたプロファイルを有することができ、このプロファイルは、円形、三角形、多角形、その他の様々な形態をとることができる。
【0050】
図9に示されている第1の実施例では、基本パターンMが共に結合されている。
【0051】
図10に示す別の実施例では、パターンMが交差している。
【0052】
図11に示す別の実施例では、パターンMは交差せずに隣接している。
【0053】
任意選択的に、隆起形態の1又は2以上及び/又は凹状形態の1又は2以上は、ワークトップ18の上面S18の下方に配置された可動要素28、128の上面S28、S128に設けることができる。
【0054】
図12から図15に示される一実施形態では、単一の凹状形態64が、可動要素の上面S28、S128に設けられる。
【0055】
例えば、可動要素の上面に設けられた単一の凹状形態64は、垂直面内の矩形断面の凹部形態をとり、60マイクロメートルから5ミリメートルの間、又は150マイクロメートルから2ミリメートルの間の範囲の垂直方向の高さH64をとる。
【0056】
分配装置によって堆積された粉末の新しい粒子との相対接触面の増加を最大にするために、単一の凹状形態64は、可動要素の上面の幅W28の幅W28の少なくとも80%に等しい幅W64にわたって延びる。
【0057】
特に、可動要素28がスライドの形態をとる場合、及び図13に示されるように、単一の凹状形態64が、ワークエリアの最大横方向寸法よりも大きい距離にわたって縦方向に延びる。ワークエリアが平行六面体であり、可動要素28もまた平行六面体形態をとる場合、単一の凹状形態64は、ワークエリアの幅W20よりも大きい長さL64にわたって延びる。これにより、ワークエリアの長手方向縁部に堆積される粉末床の品質が確保される。
【0058】
図14及び15は、上記で説明した単一の凹状形態64を用いた本発明の実施構成を示している。図14に示される第1のステップにおいて、粉末のビーズCは、分配装置32、132によって可動要素28、128上に堆積される。粉末の層が事前に生成されていない場合、凹状形態64もまた、この第1のステップの間に分配装置32、132によって粉末で充填される。粉末のビーズCを堆積させるために、可動要素28、128は、例えば、分配装置32、132の下方を移動する。
【0059】
粉末のビーズCが堆積され、可動要素28、128が拡散装置30とワークエリア20、120との間に配置されると、拡散装置は、粉末のビーズをワークエリアに向かって拡散するように動き始める。
【0060】
拡散装置30が可動要素28、128の上方を通過した後、残留量Qの粉末粒子が依然として凹状形態64に存在する。この粉末粒子の残留量Qにより、分配装置32、132によって可動要素28、128の上面S28、S128に堆積されることになる新しい粉末粒子との相対的接触面を増加させることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
10 付加製造機械
14 熱又はエネルギー源
18 ワークトップ
20、120 ワークエリア
28、128 可動要素
29、129 粉末層を堆積させる装置
32、132 粉末のビードを分配する装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15