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特許7568641治療的使用のためのキナーゼ阻害剤としての複素環式化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】治療的使用のためのキナーゼ阻害剤としての複素環式化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/88 20060101AFI20241008BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 473/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C07D239/88 CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/08
A61P37/00
A61P29/00
A61P25/28
A61P17/06
A61P9/10 101
C07D413/14
C07D417/12
C07D239/88
C07D487/04 140
C07D487/04 142
C07D471/04 102
C07D471/04 107
C07D473/00
A61K31/517
A61K31/4709
A61K31/4418
A61K31/53
A61K31/437
A61K31/52
A61K31/551
A61K31/282
A61K31/337
A61K31/192
A61K31/7048
A61K31/706
A61K31/473
A61K31/7068
A61K31/4196
C07D401/14
C07D401/12
C07D405/12
A61K31/5377
C07D403/04 CSP
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021560707
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 US2020027453
(87)【国際公開番号】W WO2020210481
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】62/833,364
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521446820
【氏名又は名称】ナショナル ヘルス リサーチ インスティトゥーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シェ,シン-パン
(72)【発明者】
【氏名】リー,クン-フン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ウェン-シン
(72)【発明者】
【氏名】シー,チュアン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0249182(US,A1)
【文献】特表2012-526054(JP,A)
【文献】特表2010-528009(JP,A)
【文献】特表2009-534410(JP,A)
【文献】特表2012-511535(JP,A)
【文献】特表2018-513150(JP,A)
【文献】特表2007-516273(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104177346(CN,A)
【文献】J. Med. Chem.,2013年,Vol.56,pp.5757-5772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
(式中
はアミノまたはC ~C 15 ヘテロシクロアルキルであり、
は、
【化2】
【化3】

【化4】
【化5】
または
【化6】
(式中、Q、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQはそれぞれ独立してNまたはCRであり、RはH、F、Cl、Br、CNまたはC~Cアルコキシルであり;ZはO、SまたはNRrであり;ZはO、SまたはNRrであり;かつGおよびHはそれぞれCまたはNおよびNまたはCである)であり;
は削除されているか、CH あり;
はC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、C~Cシクロアルキルまたは1つのヘテロ原子を有するC~Cヘテロシクロアルキルであり、ここでは前記1つのヘテロ原子はOまたはNであり;かつ
(X(mは0~5である)中のXは独立してF、Cl、Br、CN、SONH、アミノ、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~Cアルコキシルである)。
【請求項2】
はアミノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、
【化7】
であり;Yはピリジルであり;XはCHであり;XはCH、CHF、CHF、CFまたはOCHであり;かつmは1である、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
は、
【化8】
であり;Yはフェニルであり;XはCHであるか削除されており;Xはそれぞれ独立してF、Cl、Br、CN、SONH、CH、CHF、CHF、CF、OCF、C~Cアルコキシルまたはアミノであり;かつmは0~2である、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
は、
【化9】

【化10】
【化11】
または
【化12】
であり、Yはフェニルまたはピリジルであり、かつXはCHであり、好ましくは、Yは、
【化13】
または
【化14】
である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は以下の化合物:
【化15】
【化16】
【化17】
のうちの1つである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、任意選択で、
抗増殖剤;
抗炎症剤;
免疫調節剤;
免疫抑制剤;
アドゼレシン、アルトレタミン、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボコン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、フォテムスチン、ヘプスルファム、イホスファミド、インプロスルファン、イロフルベン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、ピポスルファン、セムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、チオテパおよびトレオスルファンから選択されるアルキル化剤;
アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、ニボルマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブおよび90Yイブリツモマブチウキセタンから選択される抗体;
ボルテゾミブ、ゲルダナマイシンおよびラパマイシンから選択される標的シグナル伝達阻害剤;
エルロチニブ、ゲフィチニブ、フラボピリドール、メシル酸イマチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、AEE-788、AG-013736、AMG706、AMN107、BMS-354825、BMS-599626、7-ヒドロキシスタウロスポリン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブおよびバタラニブから選択されるキナーゼ阻害剤;
DJ-927、ドセタキセル、TPI287、パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルから選択されるタキサン;
アリトレチノイン、ベキサロテン、フェンレチニド、イソトレチノインおよびトレチノインから選択されるレチノイド;
エトポシド、ホモハリングトニン、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンから選択されるアルカロイド;
ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネオカルチノスタチン、ペントスタチンおよびプリカマイシンから選択される抗生物質;
AE-941、ABT-510、2-メトキシエストラジオール、レナリドマイドおよびサリドマイドから選択される抗血管新生薬;
アムサクリン、エドテカリン、エキサテカン、イリノテカン、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン、ルビテカン、トポテカンおよび9-アミノカンプトテシンから選択されるトポイソメラーゼ阻害剤;
アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、フトラフール、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニンおよびトリメトレキサートからなる群から選択される代謝拮抗薬;
アナストロゾール、アンドロゲン、ブセレリン、ジエチルスチルベストロール、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、イドキシフェン、レトロゾール、ロイプロリド、メゲストロール、ラロキシフェン、タモキシフェンおよびトレミフェンからなる群から選択されるホルモンまたはホルモン拮抗薬;
イミキモド、インターフェロン-αおよびインターロイキン-2から選択される生物学的応答調節物質;
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤;
3-アミノ-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン、アルトラセンタン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アスパラギナーゼ、ブリオスタチン-1、シレンギチド、エレスクロモル、エリブリンメシル酸塩、イクサベピロン、ロニダミン、マソプロコール、ミトグアナゾン、オブリメルセン、スリンダク、テストラクトンおよびチアゾフリンから選択される化学療法剤;
哺乳類ラパマイシン標的阻害剤;
ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤;
サイクリン依存性キナーゼ4阻害剤;
タンパク質キナーゼB阻害剤;
熱ショックタンパク質90阻害剤;
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;
アロマターゼ阻害剤;
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害剤;
チロシンキナーゼ阻害剤;
上皮増殖因子受容体阻害剤;
プログラム細胞死タンパク質1阻害剤;
プログラム死リガンド1阻害剤;および
インターロイキン8受容体β阻害剤からなる群から選択される治療薬をさらに含む、医薬組成物。
【請求項8】
CSF1Rによって調節される病気の治療における使用のための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物であって、前記病気は、癌、炎症性疾患または自己免疫疾患および骨障害から選択され、
記癌は、急性骨髄性白血病、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、胃癌、消化管間質腫瘍、多形性膠芽腫、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、黒色腫、転移性腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、色素性絨毛結節性滑膜炎、前立腺癌、腱滑膜巨細胞腫、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨癌、腎癌、脳癌、骨髄増殖性疾患、食道癌、扁平上皮癌、ブドウ膜黒色腫、濾胞性リンパ腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、星状細胞腫または肺腺癌であり;
記炎症性疾患または前記自己免疫疾患は、乾癬性関節炎、関節炎、喘息、甲状腺炎、糸球体腎炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス脳炎、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症またはてんかんであり;
記骨障害は、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周炎、プロテーゼ周囲骨溶解またはパジェット病である、
化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)はチロシンキナーゼクラスIIIのメンバーである。それは細胞増殖、分化、遊走および生存において重要な役割を担っている。Cannarileら,J.Immunother.Cancer,2017,5:53を参照されたい。このチロシンキナーゼの調節解除は、炎症性疾患、神経障害、心血管疾患、骨関連疾患および癌などの様々な障害および疾患に関連する。
【0002】
最近の研究から、CSF1Rは腫瘍関連マクロファージ(TAM)の分化に関連していることが分かった。El-Gamalら,J.Med.Chem.,2018,61,5450-5466を参照されたい。具体的には、TAMはそれらの表面にCSF1Rを発現し、これが活性リガンド、すなわちコロニー刺激因子-1(CSF1)と共にシグナル伝達軸を形成する。活性化された場合に、CSF1R/CSF1シグナル伝達軸は単球の増殖、単球のTAMへの分化およびTAMの生存を促進する。
【0003】
いくつかの形態の癌におけるCSF1の過剰発現は、TAMの活性化および腫瘍部位への動員に関連している。TAMは腫瘍微小環境を修飾して、それを癌細胞増殖、血管新生および転移へさらに促す。さらに、それらは腫瘍組織における局所化された免疫抑制を引き起こし、癌治療への抵抗性を生じさせることができる。従ってCSF1R/CSF1シグナル伝達軸を阻害することは、CSF1の過剰発現に関連している癌を治療するための魅力的な手段を提供する。
【0004】
従って、CSF1Rを選択的に阻害し、好ましい安全性プロファイルを示し、かつCSF1Rに関連している癌を治療する際に高いインビボ有効性も示す化合物を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の複素環式化合物がコロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)を有効に阻害するという予期せぬ発見に基づいている。
【0006】
一態様では、本発明は、式I:
【化1】
によって包含されるこれらの複素環式化合物およびそれに類似した他の複素環式化合物
(式中、AはH、C1~6アルキルまたはORrであり、RrはHまたはC1~6アルキルであり、Yは(Rで置換されたフェニル、(Rで置換された5員環ヘテロアリール、(Rで置換された5員環ヘテロシクロアルケニルまたは(Rで置換されたアルケニルであり、ここでは、(R(nは0~4である)中のRは独立してF、Cl、Br、NO、CN、アミノ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~C15ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオニル、イミニルまたはスピロアミノであり;かつ(R(oは0~5である)中のRは独立してF、Cl、Br、NO、CN、アミノ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~C15ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオニル、イミニル、スピロアミノまたはC~Cアルコキシルであり;XはNまたはCRであり、RはH、F、Cl、Br、CN、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~Cアルコキシルであり;XはO、S、NHまたはCHであり;Yは、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
または
【化6】
(式中、Q、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQはそれぞれ独立してNまたはCRであり、RはH、F、Cl、Br、CN、アミノ、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~Cアルコキシルであり;ZはO、SまたはNRrであり;ZはO、SまたはNRrであり;かつGおよびHはそれぞれCまたはNおよびNまたはCである)であり;Xは削除されているか、CH、(CHまたはCH(C≡CH)であり;YはC~Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、C~Cシクロアルキルまたは1つのヘテロ原子を有するC~Cヘテロシクロアルキルであり、ここでは1つのヘテロ原子はOまたはNであり;かつ(X(mは0~5である)中のXは独立してF、Cl、Br、CN、SONH、アミノ、C~CアルキルまたはC~Cアルコキシルである)
に関する。
【0007】
「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子を含む直鎖状もしくは分岐鎖状の一価の炭化水素部分、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルを指す。「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「アルケニル」という用語は、2~20個の炭素原子および1つ以上の二重結合を含む、直鎖状もしくは分岐鎖状の一価もしくは二価の炭化水素、例えばエテニル、プロペニル、プロペニレン、アリルおよび1,4-ブタジエニルを指す。「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子および1つ以上の三重結合を含む直鎖状もしくは分岐鎖状の一価もしくは二価の炭化水素、例えばエチニル、エチニレン、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、および1-メチル-2-ブチニルを指す。「アリール」という用語は、一価の6炭素単環式、10炭素二環式、14炭素三環式の芳香族環系、例えばフェニル、ナフチルおよびアントラセニルを指す。「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上のヘテロ原子(O、N、SまたはSeなど)を有する一価の芳香族の5~8員環の単環式、8~12員環の二環式または11~14員環の三環式の環系、例えばイミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、フリルおよびチエニルを指す。「シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子(例えば、C~C12)を有する一価もしくは二価の飽和炭化水素環系、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、1,4-シクロヘキシレン、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを指す。「シクロアルケニル」という用語は、3~30個の炭素(例えばC~C12)および1つ以上の二重結合を有する一価もしくは二価の非芳香族炭化水素環系、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニルを指す。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1つ以上のヘテロ原子(O、N、SまたはSeなど)を有する一価もしくは二価の非芳香族の5~8員環の単環式、8~12員環の二環式、または11~14員環の三環式の環系、例えばピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニルを指す。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、1つ以上のヘテロ原子(O、N、SまたはSeなど)および1つ以上の二重結合を有する一価もしくは二価の非芳香族の5~8員環の単環式、8~12員環の二環式または11~14員環の三環式の環系を指す。「アミノ」という用語は、-NRR’部分(式中、RおよびR’は独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキルである)を指す。「カルボニル」という用語は、-C(O)R部分(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アルコキシル、アミノ、アリールまたはヘテロアリールである)を指す。「チオニル」という用語は、-S(O)R部分(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アルコキシル、アミノ、アリールまたはヘテロアリールである)を指す。「イミニル」という用語は、-C(NR)R’(式中、RはHまたはC~Cアルキルであり、R’はH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アルコキシル、アミノ、アリールまたはヘテロアリールである)を指す。「スピロアミノ」という用語は、1つのNを含む一価の7~11員環の二環式のスピロ部分または1つのNを含む一価の10~16員環の三環式のスピロ部分を指す。
【0008】
またアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルおよびアルコキシルは置換されていても置換されていなくてもよい。可能な置換基としては、限定されるものではないが、D、CN、NO、ハロ、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C10アルコキシル、C~C30シクロアルキル、C~C30シクロアルケニル、C~C30ヘテロシクロアルキル、C~C30ヘテロシクロアルケニル、アリール、アリールオキシル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシル、アミノ、ハロ、オキソ(O=)、チオキソ(S=)、チオ、シリル、C~C10アルキルチオ、アリールチオ、C~C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、メルカプト、アミド、チオウレイド、チオシアナト、スルホンアミド、グアニジン、ウレイド、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルバミド、カルバミル、カルボキシルおよびカルボン酸エステルが挙げられる。
【0009】
式Iの化合物は、それらの化合物それ自体ならびに該当する場合にはそれらの塩、それらの立体異性体、それらの溶媒和物、それらの互変異性体、それらの重水素化類似体およびそれらのプロドラッグを含む。例えば塩は、アニオンと本発明の複素環式化合物上の正に帯電した基(例えばアンモニウム)との間で形成することができる。好適なアニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、重硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、グルタミン酸、グルクロン酸、グルタル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、トシル酸、サリチル酸、乳酸、ナフタレンスルホン酸および酢酸が挙げられる。同様に塩は、カチオンと複素環式化合物上の負に帯電した基(例えばカルボン酸)との間で形成することもできる。好適なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオンなどのアンモニウムカチオンが挙げられる。本発明の複素環式化合物の塩は第4級窒素原子も含んでいてもよい。プロドラッグの例としては、対象に投与すると活性な複素環式化合物を提供することができるエステルおよび他の薬学的に許容される誘導体が挙げられる。溶媒和物は、活性な複素環式化合物と薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンとの間で形成される複合体を指す。
【0010】
本発明のさらなる態様は、式Iによって包含される複素環式化合物の1つ以上を含む医薬組成物に関する。本医薬組成物は、CSF1Rによって調節される病気の治療のために使用することができる。
【0011】
CSF1Rによって調節される病気、例えば癌、炎症性疾患、骨障害または自己免疫疾患を治療する方法も本発明の範囲内である。本方法は、それを必要とする対象に有効量の上記複素環式化合物の1つ以上を投与することを含む。
【0012】
「治療」または「治療する」という用語は、治療もしくは予防効果を与えるという目的で、CSF1Rによって調節される病気、そのような病気の症状またはそれに対する素因を有する対象に1種以上の本発明の複素環式化合物を投与することを指す。「有効量」は、そのような効果を与えるのに必要な活性化合物の量を指す。有効用量は当業者によって認識されるように、治療される疾患の種類、投与経路、賦形剤の使用、および他の治療処置との同時使用の可能性に応じて異なる。
【0013】
本発明の医薬組成物は、非経口、経口、経鼻、直腸内、局所または口腔内投与することができる。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、腹膜内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下腔内、病巣内または頭蓋内注射ならびにあらゆる好適な注入技術を指す。
【0014】
無菌の注射用組成物は、1,3-ブタンジオール中の溶液などの非毒性の非経口で許容される希釈液または溶媒中の溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容される媒体および溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。また不揮発性油は溶媒または懸濁媒体として従来通りに用いられる(例えば、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリド)。オリーブ油およびヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化形態のもののように、オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は注射剤の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈液または分散液、カルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤も含むことができる。TweenやSpanなどの他のよく使用される界面活性剤または他の同様の乳化剤あるいは薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造によく使用される生物学的利用能増強剤も製剤のために使用することができる。
【0015】
経口投与のための組成物は、カプセル、錠剤、乳濁液および水性懸濁液、分散液および溶液などのあらゆる経口で許容される剤形であればよい。錠剤の場合、よく使用される担体としてはラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセルの形態での経口投与に有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液または乳濁液が経口で投与される場合、有効成分は乳化剤または懸濁化剤と組み合わせられた油相中に懸濁または溶解することができる。所望であれば、特定の甘味料、着香料または着色料を添加することができる。
【0016】
経鼻組成物は、医薬製剤の技術分野でよく知られている技術に従って調製することができる。例えばそのような組成物は、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または当該技術分野で知られている他の可溶化剤または分散剤を用いて生理食塩水溶液として調製することができる。
【0017】
本発明の医薬組成物は直腸内投与のために坐薬の形態で投与することもできる。
【0018】
医薬組成物中の担体は、本組成物の有効成分と適合可能であり、かつ好ましくはその有効成分を安定化させることができ、かつ治療される対象に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。1種以上の可溶化剤は本発明の活性な複素環式化合物の送達のための医薬賦形剤として利用することができる。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C Yellow#10が挙げられる。
【0019】
本発明の詳細を以下の「発明を実施するための形態」に記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、いくつかの実施形態の以下の詳細な説明および特許請求の範囲からも明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に詳細に開示されているのは、式Iの複素環式化合物:
【化7】
である。
【0021】
A、Y、X、X、Y、X、Y、Xおよびmは上記発明の概要に定義されている。
【0022】
一実施形態では、式Iの化合物は、(Rで置換されたフェニル、(Rで置換された5員環ヘテロアリールまたは(Rで置換された5員環ヘテロシクロアルケニルであるYを有し、ここでは、(R中のRは独立してF、Cl、Br、NO、CN、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~C15ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオニル、イミニルまたはスピロアミノであり、かつ(R中のRは独立してF、Cl、Br、NO、CN、アミノ、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cアルキニル、C~Cシクロアルキル、C~C15ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボニル、チオニル、イミニル、スピロアミノまたはC~Cアルコキシルである。
【0023】
本実施形態の1つのサブセットでは、式Iの化合物は、
【化8】
であるY、ピリジルであるY、およびC~C15ヘテロシクロアルキルであるRを有する。
【0024】
別の実施形態では、式Iの化合物は、
【化9】

【化10】
または
【化11】
であるYを有し、式中、ZはOまたはNRrである。
【0025】
本実施形態の1つのサブセットでは、式Iの化合物は、
【化12】
であるY、ピリジルであるY、およびアミノであるRを有する。
【0026】
さらに別の実施形態では、式Iの化合物は、式Ia:
【化13】
(式中、RはアミノまたはC~C15ヘテロシクロアルキルである)によって包含されるものである。
【0027】
本実施形態の1つのサブセットでは、式Iaの化合物は、
【化14】
であるY、ピリジルであるY、CHであるX、CH、CHF、CHF、CFまたはOCHであるX、1であるm、および好ましくはアミノであるRを有する。
【0028】
別のサブセットでは、本化合物は、
【化15】
であるY、フェニルであるY、CHであるX、それぞれが独立してF、Cl、Br、CN、SONH、CH、CHF、CHF、CF、OCF、C~CアルコキシルまたはアミノであるXおよび0~2であるmを有する。
【0029】
第3のサブセットでは、本化合物は、
【化16】
であるY、フェニルであるY、削除されているX、それぞれ独立してF、Cl、Br、CN、SONH、CH、CHF、CHF、CF、OCF、C~CアルコキシルまたはアミノであるX、および0~2であるmを有する。
【0030】
式Iaは、Y
【化17】
または
【化18】
であり、Yがフェニルまたはピリジルであり、かつXがCHである化合物を含む。一例として、Yは、
【化19】
である。
【0031】
式Iaは、Y
【化20】
または
【化21】
であり、Yがフェニルまたはピリジルであり、かつXがCHである化合物をさらに含む。例えばYは、
【化22】
である。
【0032】
第4の実施形態では、本発明の複素環式化合物は、式Ib:
【化23】
によって包含される。
【0033】
式Ibの化合物のサブセットは、
【化24】
であるY、フェニルまたはピリジルであるY、および削除されているか、またはCHであるXを有する。
【0034】
異なるサブセットでは、式Ibの化合物は、
【化25】

【化26】
または
【化27】
(式中、QはNまたはCRであり、RはH、F、Cl、Br、CN、アミノ、C~Cアルキル、C~CハロアルキルまたはC~Cアルコキシルである)であるY、フェニルまたはピリジルであるY、および削除されているか、またはCHであるXを有する。
【0035】
別のサブセットでは、この式の化合物は、
【化28】
または
【化29】
であるY、フェニルまたはピリジルであるY、および削除されているか、またはCHであるXを有する。
【0036】
典型的には式Ibの化合物は、それぞれ独立してCH、CHF、CHF、CFまたはOCHであるX、および0~2であるmを有する。
【0037】
式Iの例示的な化合物としては、限定されるものではないが、以下の化合物:
【化30】
が挙げられる。
【0038】
式Iの化合物は、当該分野で周知の方法に従って調製することができる。例えば、R.Larock,包括的有機変換(Comprehensive Organic Transformations)(第2版,VCH Publishers 1999);P.G.M.WutsおよびT.W.Greene,有機合成におけるGreeneの保護基(Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis)(第4版,John Wiley and Sons 2007);L.FieserおよびM.Fieser,有機合成のためのFieserおよびFieserの試薬(Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis)(John Wiley and Sons 1994);L.Paquette編,有機合成のための試薬の百科事典(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)(第2版,John Wiley and Sons 2009)ならびにG.J.Yuら,J.Med.Chem.2008,51,6044-6054を参照されたい。
【0039】
式Iの複素環式化合物の1つ以上を含む医薬組成物も本発明の範囲内である。本医薬組成物は、CSF1Rによって調節される病気を治療するために使用される。
【0040】
特定の実施形態では、本医薬組成物は、以下の治療薬:抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤および免疫抑制剤のうちの1つをさらに含有する。
【0041】
他の実施形態では、本医薬組成物は、以下の治療薬:アルキル化剤(例えばアドゼレシン、アルトレタミン、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボコン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、フォテムスチン、ヘプスルファム、イホスファミド、インプロスルファン、イロフルベン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、ピポスルファン、セムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、チオテパおよびトレオスルファン)、抗体(例えばアレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、ニボルマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブおよび90Yイブリツモマブチウキセタン)、標的シグナル伝達阻害剤(例えばボルテゾミブ、ゲルダナマイシンおよびラパマイシン)、キナーゼ阻害剤(例えばエルロチニブ、ゲフィチニブ、フラボピリドール、メシル酸イマチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、AEE-788、AG-013736、AMG706、AMN107、BMS-354825、BMS-599626、7-ヒドロキシスタウロスポリン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブおよびバタラニブ)、タキサン(例えばDJ-927、ドセタキセル、TPI287、パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセル)、レチノイド(例えばアリトレチノイン、ベキサロテン、フェンレチニド、イソトレチノインおよびトレチノイン)、アルカロイド(例えばエトポシド、ホモハリングトニン、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)、抗生物質(例えばブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネオカルチノスタチン、ペントスタチンおよびプリカマイシン)、抗血管新生薬(例えばAE-941、ABT-510、2-メトキシエストラジオール、レナリドマイドおよびサリドマイド)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばアムサクリン、エドテカリン、エキサテカン、イリノテカン、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン、ルビテカン、トポテカンおよび9-アミノカンプトテシン)、代謝拮抗薬(例えばアザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、フトラフール、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニンおよびトリメトレキサート)、ホルモンまたはホルモン拮抗薬(例えばアナストロゾール、アンドロゲン、ブセレリン、ジエチルスチルベストロール、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、イドキシフェン、レトロゾール、ロイプロリド、メゲストロール、ラロキシフェン、タモキシフェンおよびトレミフェン)、生物学的応答調節物質(例えばイミキモド、インターフェロン-αおよびインターロイキン-2)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤、化学療法剤(例えば3-アミノ-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン、アルトラセンタン(altrasentan)、アミノグルテチミド、アナグレリド、アスパラギナーゼ、ブリオスタチン-1、シレンギチド、エレスクロモル、エリブリンメシル酸塩、イクサベピロン、ロニダミン、マソプロコール、ミトグアナゾン(mitoguanazone)、オブリメルセン、スリンダク、テストラクトンおよびチアゾフリン)、哺乳類ラパマイシン標的阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ4阻害剤、タンパク質キナーゼB阻害剤、熱ショックタンパク質90阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンなど)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮増殖因子受容体阻害剤、プログラム細胞死タンパク質1阻害剤、プログラム死リガンド1阻害剤、またはインターロイキン8受容体β阻害剤うちの1つをさらに含有する。
【0042】
上記複素環式化合物の1つ以上を用いてCSF1Rによって調節される病気を治療する方法も本発明の範囲内である。例えば当該病気は、癌(例えば急性骨髄性白血病、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、胃癌、消化管間質腫瘍、多形性膠芽腫、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、黒色腫、転移性腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、色素性絨毛結節性滑膜炎、前立腺癌、腱滑膜巨細胞腫、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨癌、腎癌、脳癌、骨髄増殖性疾患、食道癌、扁平上皮癌、ブドウ膜黒色腫、濾胞性リンパ腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、星状細胞腫および肺腺癌)、炎症性疾患または自己免疫疾患(例えば乾癬性関節炎、関節炎、喘息、甲状腺炎、糸球体腎炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス脳炎、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症およびてんかん)、または骨障害(例えば骨粗鬆症、骨関節炎、歯周炎、プロテーゼ周囲骨溶解およびパジェット病)であってもよい。
【0043】
さらなる詳細がなくとも、当業者であれば上記説明に基づいて本発明を最大限利用することができると考えられる。従って以下の具体例は単に例示であり、何であっても決して本開示の残りの内容を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書において引用されている全ての文献はそれら全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0044】
実施例1:複素環式化合物の合成
以下の表1に示されている本発明の例示的な化合物をスキーム1、スキーム2、スキーム3またはスキーム4に示されている手順により調製した。表1はこれらの化合物の質量スペクトルデータを含む。
【0045】
全ての化学物質および溶媒を商業的供給源から購入し、受け取った状態のまま使用した。全ての反応は特に指定がない限り、乾燥窒素雰囲気下で行った。反応はMerck 60 F254シリカゲルガラスプレート(5×10cm)を用いる薄層クロマトグラフィにより監視し、領域を紫外線照射(254nm)下またはリンモリブデン酸試薬(Aldrich社)の噴霧およびその後の80℃での加熱により目視で検出した。CEM Discover SPシステムにおいてマイクロ波反応を行った。
【0046】
固定相としてMerck Kieselgel 60、No.9385、230~400メッシュASTMシリカゲルを用いてフラッシュカラムクロマトグラフィを行った。プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルはVarian Mercury-300またはVarian Mercury-400分光計により測定した。化学シフトは溶媒ピークの共鳴に対してデルタ(δ)スケールにより100万分の1(ppm)で記録した。カップリングを記述するために以下の略語を使用した:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quin=五重線、ABq=AB四重線、AA’XX’=二次AA’XX’パターン、app.=見かけ上、br=幅広およびm=多重線。
【0047】
液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)データは、Agilent MSD-1100 ESI-MS/MS、Agilent 1200シリーズLC/MSD VLまたはWaters Acquity UPLC-ESI-MS/MSシステムを用いて得た。
【化31】
【0048】
スキーム1に記載されている試薬および溶媒のうち、SOClは塩化チオニルであり、DMFはジメチルホルムアミドであり、PhMeはトルエンであり、tBuOKはカリウムtert-ブトキシドであり、THFはテトラヒドロフランであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、CHClは塩化メチレンである。
【0049】
4-クロロ-7-フルオロキナゾリン(B)。7-フルオロキナゾリン-4-オール化合物A(6.32g、38.5mmol)の乾燥PhMe(30mL)懸濁液に、SOCl(22mL、7.7当量)およびDMF(2.6mL)を添加した。得られた混合物を10時間還流させた。次いで混合物を室温に冷却し、水(200mL)で失活させ、酢酸エチル(EtOAc、170mL)で抽出した。1つにまとめた有機抽出物を水(300mL)および塩水(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥し、濃縮して化合物Bを黄色の固体として得た(6.08g、86%)。LCMS(ESI)m/z CClFNの計算値:182、184;実測値:183、185[M+H]H-NMR(400MHz,CDCl)δ9.04(s,1H),8.33(dd,J=9.2Hz,F,H=6.0Hz,1H),7.71(dd,F,H=9.2Hz,J=2.4Hz,1H),7.52(ddd,J=9.2,2.4Hz,F,H=8.4Hz,1H).
【0050】
4-((7-フルオロキナゾリン-4-イル)オキシ)アニリン(C)。乾燥THF(100mL)中の4-アミノフェノールF(3.05g、28.0mmol)およびt-BuOK(3.14g、28.0mmol)の混合物を0℃で20分間撹拌した。その後に化合物B(4.44g、24.3mmol)を少しずつゆっくりと添加した。次いで反応混合物を0℃で3時間撹拌し、その間に懸濁液が形成された。その後、懸濁液をセライトパッドで濾過し、そのパッドをTHFで洗い流した。濾液中のTHFを蒸発により除去して粗製の残留物を得た。残留物をメタノール(MeOH)に懸濁させ、超音波処理して固体を形成した。固体を濾過により回収し、乾燥して表題生成物Cをオフホワイトの固体として得た(5.47g、88%)。LCMS(ESI)m/z C1410BrNOの計算値:255;実測値:256[M+H]H-NMR(400MHz,CDCl)δ8.76(s,1H),8.40(dd,J=9.2Hz,F,H=6.0Hz,1H),7.61(dd,F,H=9.2Hz,J=2.4Hz,1H),7.40(ddd,J=9.2,2.4Hz,F,H=8.8Hz,1H),7.04(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,2H),6.77(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,2H),3.71(br,2H).
【0051】
4-(4-アミノフェノキシ)-N,N-ジメチルキナゾリン-7-アミン(D)。化合物C(600mg、2.35mmol)のDMSO(7.1mL)溶液に、THF(3当量、3.53mL)中の2Mのジメチルアミンを添加した。次いで混合物をマイクロ波により170℃で10分間照射した。化合物Cを消費した後、反応混合物をEtOAc(30mL)および2%炭酸ナトリウム(NaCO)溶液(80mL)で希釈し、EtOAc(50mL)で抽出した。1つにまとめた有機抽出物を2%NaCO溶液(160mL)、水(200mL)および塩水(20mL)で連続的に洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。粗製の残留物をMeOHに懸濁させた。懸濁液中の粒子を濾過により回収し、乾燥して表題生成物Dを淡黄色の固体として得た(207mg、32%)。LCMS(ESI)m/z C1616Oの計算値:280;実測値:281[M+H]H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.58(s,1H),8.15(d,J=9.2Hz,1H),7.12(dd,J=9.2Hz,J=2.7Hz,1H),7.03(AA’XX’,JAX=9.0Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.9Hz,JXX’=2.9Hz,2H),6.96(d,J=2.7Hz,1H),6.75(AA’XX’,JAX=9.0Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.9Hz,JXX’=2.9Hz,2H),3.67(br,2H),3.15(s,6H).
【0052】
1-(4-((7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-フェニル尿素(化合物4、E)。化合物D(165mg、0.588mmol)のCHCl(15mL)溶液に、化合物H(108μL、0.883mmol)を添加した。混合物を10時間還流させ、その間に懸濁液が形成された。懸濁液中の粒子を濾過により回収し、過剰なCHClで洗い流して表題生成物Eを白色の固体として得た(214mg、91%)。LCMS(ESI)m/z C2321の計算値:399;実測値:400[M+H]H-NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.77(br s,1H),8.71(br s,1H),8.45(s,1H),8.11(d,J=9.6Hz,1H),7.52(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),7.47(d,J=5.6Hz,2H),7.32-7.27(m,3H),7.19(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),6.97(t,J=7.2Hz,1H),6.88(d,J=2.4Hz,1H),3.12(s,6H).
【0053】
化合物1、2、3、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、52および106を適当なアミンGおよびイソシアネートHを用いて化合物4と同様の方法で調製した。
【化32】
【0054】
スキーム2に記載されている試薬および溶媒のうち、Pyはピリジンであり、EtNはトリエチルアミンである。
【0055】
((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)カルバミン酸4-ニトロフェニル(J)。(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メタンアミンI(2.69g、15.3mmol)およびPy(1.23mL、15.3mmol)のCHCl(50mL)-30℃溶液に、クロロギ酸4-ニトロフェニル(3.85g、19.1mmol)をゆっくりと添加した。反応混合物を8時間撹拌し、ゆっくりと0℃に温めた。その後に水(50mL)を反応混合物に添加した。次いで混合物を20分間撹拌し、その間に懸濁液が形成された。反応混合物をセライトパッドでろ過することにより懸濁液中の粒子を除去した。濾液を2%重硫酸ナトリウム溶液(20mL)、2%重炭酸ナトリウム溶液(40mL)、水(20mL)および塩水(3mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。粗製残留物をカラムクロマトグラフィで精製して表題生成物Jを白色の固体として得た(3.33g、定量)。LCMS(ESI)m/z C1410の計算値:341;実測値:342[M+H]H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.73(d,J=1.4Hz,1H),8.26(AA’XX’,JAX=9.2Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),7.91(dd,J=8.0,1.4Hz,1H),7.71(d,J=8.0Hz,1H),7.33(AA’XX’,JAX=9.2Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),5.68(br t,1H),4.58(d,J=6.4Hz,2H).
【0056】
1-(4-((7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)尿素(化合物27、K)。化合物J(2.19g、6.43mmol)および化合物D(1.06g、3.78mmol)のCHCl(95mL)溶液に、EtN(1.05mL)を添加した。反応混合物を4日間還流させ、その間に懸濁液が形成された。懸濁液中の粒子を濾過により回収し、過剰なCHClで洗い流して表題生成物Kを白色の固体として得た(1.33g、73%)。LCMS(ESI)m/z C2421の計算値:482;実測値:483[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.83(s,1H),8.72(d,J=1.2Hz,1H),8.43(s,1H),8.10(d,J=9.2Hz,1H),8.00(dd,J=8.4,1.2Hz,1H),7.89(d,J=8.4Hz,1H),7.47(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),7.29(d,J=9.2,2.4Hz,1H),7.13(AA’XX’,JAX=8.8Hz,JAX’=0Hz,JAA’=2.6Hz,JXX’=2.6Hz,2H),6.87(d,J=2.4Hz,1H),6.84(t,J=6.0Hz,1H),4.44(d,J=6.0Hz,2H),3.12(s,6H).
【0057】
1-(4-((7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)尿素(化合物65、K)。LCMS(ESI)m/z C2421の計算値:428;実測値:429[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.68(s,1H),8.43(s,1H),8.39(d,J=2.4Hz,1H),8.10(d,J=9.2Hz,1H),7.61(dd,J=8.0,2.4Hz,1H),7.46(AA’XX’,JAX=8.8Hz,2H),7.29(dd,J=9.2,2.4Hz,1H),7.22(d,J=8.0Hz,1H),7.13(AA’XX’,JAX=8.8Hz,2H),6.87(d,J=2.4Hz,1H),6.67(t,J=6.0Hz,1H),4.28(d,J=6.0Hz,1H),3.12(s,6H),2.44(s,3H).
【0058】
1-(4-((7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)尿素(化合物66、K)。LCMS(ESI)m/z C2421の計算値:444;実測値:445[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.68(s,1H),8.43(s,1H),8.39(d,J=2.4Hz,1H),8.10(d,J=9.2Hz,1H),7.61(dd,J=8.0,2.4Hz,1H),7.46(AA’XX’,JAX=8.8Hz,2H),7.29(dd,J=9.2,2.4Hz,1H),7.22(d,J=8.0Hz,1H),7.13(AA’XX’,JAX=8.8Hz,2H),6.87(d,J=2.4Hz,1H),6.67(t,J=6.0Hz,1H),4.28(d,J=6.0Hz,1H),3.12(s,6H),2.44(s,3H).
【0059】
化合物23、24、25、28、30、33、36、39、40、42、43、44、49、50、51、54、55、56、57、58、59、60、63、65、66、87、90、91、92、96および101を適当なアミンHおよびアニリンDを用いて化合物27と同様の方法で調製した。
【化33】
【0060】
スキーム3に記載されている試薬、溶媒および触媒のうち、SOClは塩化チオニルであり、RuPhos Pd G3はメタンスルホン酸(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル)[2-2’-アミノ-1,1’-ビフェニル]]パラジウム(II)であり、RuPhosは2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニルであり、CsCOは炭酸セシウムである。
【0061】
4-クロロ-7-ブロモキナゾリン(M)。7-ブロモキナゾリン-4-オールL(1.17g、5.20mmol)の乾燥PhMe(6mL)懸濁液に、SOCl(6mL)およびDMF(0.6mL)を添加した。得られた混合物を95℃で9時間撹拌し、室温に冷却し、水(100mL)で失活させ、EtOAc(70mL)で抽出した。1つにまとめた有機抽出物を水(200mL)および塩水(5mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮して表題生成物Mを黄色の固体として得た(1.26g、99%)。LCMS(ESI)m/z CBrClNの計算値:242、244、246;実測値:243、245、247[M+H]H-NMR(300MHz,CDCl):δ9.05(s,1H),8.28(d,J=1.8Hz,1H),8.15(d,J=9.0Hz,1H),7.84(dd,J=9.0,1.8Hz,1H).
【0062】
4-((7-ブロモキナゾリン-4-イル)オキシ)アニリン(N)。乾燥THF(15mL)中4-アミノフェノール(0.678g、6.21mmol)およびt-BuOK(0.668g、5.95mmol)の混合物を0℃で20分間撹拌した。その後に4-クロロ-7-ブロモキナゾリンM(1.26g、5.17mmol)を少しずつゆっくりと添加した。次いで反応混合物を0℃で3時間撹拌し、その間に懸濁液が形成された。懸濁液をセライトパッドで濾過した。そのパッドをTHF(20mL)で洗い流し、得られた濾液を蒸発させて粗製の固体を得た。粗製の固体をMeOH(6mL)に懸濁させ、超音波処理した。懸濁液中の粒子を濾過により回収し、乾燥して表題生成物Nをオフホワイトの固体として得た(1.461g、89%)。LCMS(ESI)m/z C1410BrNOの計算値:315、317;実測値:316、318[M+H]
【0063】
1-(4-((7-ブロモキナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)尿素(O、化合物31)。4-((7-ブロモキナゾリン-4-イル)オキシ)アニリンN(305mg、0.964mmol)および化合物Q(461mg、1.35mmol)のCHCl(6mL)溶液に、EtN(0.27mL)を添加した。得られた混合物を1.5日間還流させ、その間に懸濁液が形成された。懸濁液中の粒子を濾過により回収し、過剰なCHClで洗い流して表題生成物Oを白色の固体として得た(462mg、93%)。LCMS(ESI)m/z C2215BrFの計算値:517、519;実測値:518、520[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.87(s,1H),8.74(s,1H),8.72(br s,1H),8.30(d,J=8.8Hz,1H),8.24(d,J=2.0Hz,1H),8.00(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),7.93(dd,J=8.8,2.0Hz,1H),7.90(d,J=8.0Hz,1H),7.50(AA’XX’,JAX=9.0Hz,JAX’=0Hz,2H),7.21(AA’XX’,JAX=9.0Hz,JAX’=0Hz,2H),6.86(t,J=6.0Hz,1H),4.44(d,J=6.0Hz,2H).
【0064】
1-(4-((7-(3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)尿素(P、化合物34)。新たに蒸留したTHF(4mL)をアルゴンで20分間パージし、その後に化合物O(50mg、0.097mmol)、CsCO(47mg、0.15mmol)、シス-2,6-ジメチルピペラジン(17mg、0.15mmol)、Ruphos(4.1mg、0.009mmol)およびRuphos Pd G3(4.1mg、0.005mmol)を添加して懸濁液を形成した。得られた混合物をアルゴン下で5分間撹拌した。その後に反応混合物を一晩還流させた。得られた淡黄色の溶液をセライトパッドで濾過し、濾液を濃縮して残留物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィで精製して表題生成物Pを白色の固体として得た(49mg、92%)。LCMS(ESI)m/z C2828の計算値:551;実測値:552[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.85(s,1H),8.72(d,J=1.6Hz,1H),8.46(s,1H),8.09(d,J=9.2Hz,1H),8.00(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),7.90(d,J=8.0Hz,1H),7.51(dd,J=9.2,2.4Hz,1H),7.47(AA’XX’,JAX=9.2Hz,JAX’=0Hz,2H),7.17-7.13(m,3H),6.85(t,J=5.6Hz,1H),4.44(d,J=5.6Hz,2H),3.91-3.88(m,2H),2.87-2.82(m,2H),2.39-2.33(m,2H),1.06(d,J=6.4Hz,6H).
【0065】
1-(4-((7-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)キナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)尿素(P、化合物30)。化合物34と同様に、化合物30を化合物31から調製し、白色の固体として得た。LCMS(ESI)m/z C2828の計算値:538;実測値:539[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.82(br s,1H),8.72(d,J=1.2Hz,1H),8.45(s,1H),8.08(d,J=9.2Hz,1H),8.00(dd,J=8.0,1.2Hz,1H),7.89(d,J=8.0Hz,1H),7.51-7.45(m,3H),7.15-7.11(m,3H),6.84(t,J=6.0Hz,1H),4.76(d,J=4.0Hz,2H),4.44(d,J=6.0Hz,2H),3.87-3.81(m,2H),3.77-3.72(m,1H),3.21-3.14(m,1H),1.87-1.83(m,2H),1.51-1.43(m,2H).
【0066】
化合物24、96、97、98,99、100を化合物34と同様に調製した。
【化34】
【0067】
スキーム3に記載されている試薬、溶媒および触媒のうち、POClは塩化ホスホリルであり、CuIはヨウ化銅であり、1,10-phenは1,10-フェナントロリンであり、KCOは炭酸カリウムであり、tBuOHはtert-ブタノールである。
【0068】
7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4(3H)-オン(R)。250mLの封管中の7-フルオロキナゾリン-4(3H)-オンA(1.65g、10.1mmol)およびジメチルアミン(THF中に2M、20mL、40.2mmol)の2-メトキシエタノール(60mL)溶液を130℃で1日撹拌し、その間に固体が形成された。その後に反応混合物を室温に冷却し、減圧濃縮した。得られた残留物をMeOH(8mL)に懸濁させ、濾過して表題生成物Rを褐色の固体として得た(1.5g、79%)。LCMS(ESI)m/z C1011Oの計算値:189;実測値:190[M+H]H NMR(300MHz,DMSO-d):δ11.69(br,1H),7.91(s,1H),7.88(d,J=9.0Hz,1H),6.93(dd,J=9.0,2.4Hz,1H),6.98(d,J=2.4Hz,1H),3.04(s,6H).
【0069】
4-クロロ-N,N-ジメチルキナゾリン-7-アミン(S)。7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4(3H)-オンR(910mg、4.81mmol)の乾燥PhMe(10mL)懸濁液に、POCl(4mL)を添加し、その後に得られた混合物を95℃で12時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、氷水(100mL)で失活させ、溶液の色が明るい橙黄色から淡黄色に変わるまで飽和炭酸ナトリウム溶液で中和した。その後に反応混合物をEtOAc(170mL)で抽出し、有機抽出物を水(200mL)および塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮して表題生成物Sを黄色の固体として得た(948mg、95%)。LCMS(ESI)m/z C1010ClNの計算値:207、209;実測値:208、210[M+H]H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.77(s,1H),8.03(d,J=9.3Hz,1H),7.20(dd,J=9.3,2.7Hz,1H),6.96(d,J=2.7Hz,1H),3.18(s,1H).
【0070】
4-((1H-インドール-5-イル)オキシ)-N,N-ジメチルキナゾリン-7-アミン(T)。DMF(4mL)をアルゴンでパージした。その後に4-クロロ-N,N-ジメチルキナゾリン-7-アミンS(322mg、1.55mmol)、5-ヒドロキシインドール(413mg、3.10mmol)、KCO(429mg、3.10mmol)、CuI(29.5mg、0.155mmol)および1,10-phen(27.9mg、0.155mmol)を添加して反応混合物を形成し、これをアルゴン下90℃で3時間撹拌した。次いで反応混合物をEtOAc(15mL)および水(15mL)で希釈し、セライトパッドで濾過した。濾液をEtOAc(60mL)で抽出し、有機抽出物を水(120mL)および塩水(5mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。残留物をMeOHに懸濁させ、粒子を濾過により回収して表題生成物Tを白色の固体として得た(381mg、81%)。LCMS(ESI)m/z C1816Oの計算値:304;実測値:305[M+H]
【0071】
5-((7-(ジメチルアミノ)キナゾリン-4-イル)オキシ)-N-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)-1H-インドール-1-カルボキサミド(U、化合物67)。4-(4-アミノ-3-メトキシフェノキシ)-N,N-ジメチルキナゾリン-7-アミンT(170mg、0.95mmol)の乾燥THF(5mL)溶液に、NaH(油中に60%、112mg、2.79mmol)を添加した。得られた混合物を室温で20分間撹拌した。その後に混合物を-60℃に冷却し、((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)カルバミン酸4-ニトロフェニルV(574mg、1.68mmol)を3回に分けて添加した。次いで混合物をゆっくりと0℃に温め、1時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム溶液で失活させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物をEtOAc(35mL)で希釈し、水(80mL)および塩水(3mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。粗製残留物をカラムクロマトグラフィで精製して表題生成物U(171mg、65%)を白色の固体として得た。LCMS(ESI)m/z C2621の計算値:506;実測値:507[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ8.94(t,J=5.6Hz,1H),8.82(d,J=1.6Hz,1H),8.41(s,1H),8.27(d,J=8.8Hz,1H),8.15(d,J=9.2Hz,1H),8.10(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),7.96(d,J=3.6Hz,1H),7.92(d,J=8.0Hz,1H),7.50(d,J=2.4Hz,1H),7.31(dd,J=9.2,2.4Hz,1H)7.16(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),6.88(d,J=2.4Hz,1H),6.74(d,J=3.6Hz,1H),4.64(d,J=5.6Hz,2H),3.13(s,6H).
【0072】
化合物29、35、38、64、68、69、83および89を化合物67と同様の方法で調製した。
【表1】
【0073】
実施例2:CSF1Rキナーゼアッセイ
CSF1Rキナーゼ活性の阻害について実施例1に記載されている特定の化合物を試験するために研究を行った。この研究からの結果が以下の表2に示されている(列2を参照)。
【0074】
CSF1Rキナーゼ-Gloアッセイを用いてCSF1Rキナーゼの活性を決定した。CSFIRキナーゼドメインを含む組換えN末端GST-CSF1R(CSF1R残基L534-C972)をSf9昆虫細胞において発現させて精製した。当該キナーゼアッセイは、以下の成分:25mMのトリス-HCl(pH7.4)、4mMのMnCl、10mMのMgCl、0.01%のBSA、0.5mMのNaVO、0.02%のTriton X-100、40μMのATP、2mMのDTTおよび20μMのポリ(Glu,Tyr)4:1ペプチド、および600ngの組換えGST-CSF1Rを含む50μlの最終体積で試験される化合物を用いて96ウェルプレートにおいて30℃で180分間行った。インキュベーション後に、50μlのKinase-Glo Plus試薬(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)を添加し、混合物を25℃で20分間インキュベートした。各反応混合物の70μLの一定分量を黒色のマイクロタイタープレートに移し、Wallac Vector 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer社、米国コネチカット州シェルトン)により発光を測定した。対照ウェル(すなわち試験化合物の非存在下)での反応率との比較により阻害率(%)値を得た。GraphPad Prismバージョン6ソフトウェア(GraphPad社、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて様々な試験化合物濃度で決定した一連の阻害率(%)値からIC50値を計算した。
【0075】
実施例3:細胞増殖アッセイ
3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)(MTS)細胞生存度アッセイを用いて、実施例1に記載されている特定の化合物のインビボ抗癌活性を評価するために研究を行った。これらの研究からの結果は以下の表2に示されている(列3および4を参照)。
【0076】
細胞株および培養:
細胞株M-NFS-60(ATCC(登録商標)CRL-1838(商標))およびBaF3-CSF1R-1600はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、米国バージニア州マナッサス)から得た。安定なBaF3-CSF1R-1600細胞株は、N末端ETS変異遺伝子6タンパク質(ETV6残基M1-G337)およびCSF1Rチロシンキナーゼ(CSF1R残基L533-C972)からなるETV6-CSF1R融合タンパク質を発現する。M-NSF-60およびBaF3-CSF1R-1600細胞を10%ウシ胎児血清、0.05mMの2-ME、10U/mlのペニシリンおよび10g/mlのストレプトマイシンが添加されたRPMI1640培地において37℃および5%COで培養した。
【0077】
MTS細胞生存度アッセイ:
M-NFS-60およびBaF3-CSF1R-1600細胞を、それぞれ1つのウェル当たり10000細胞/100μlおよび8000細胞/100μlの密度で96ウェルプレートに16時間播種し、溶媒または培地中の様々な濃度の試験化合物で72時間処理した。MTS法(Promega社、米国ウィスコンシン州マディソン)を用い、製造業者の推奨されるプロトコルに従って、生存細胞を定量化した。それらの結果は、プレートリーダー(Victor2)を用いて490nmで吸光度を測定することにより決定した。GI50値は、DMSO(溶媒)処理した対照と比較して細胞生存度の50%の減少を引き起こす化合物の量として定め、Prism GraphPad Prismバージョン6ソフトウェア(GraphPad)を用いて計算した。
【表2】
【0078】
実施例4:キナーゼ選択性プロファイル
化合物27および67のキナーゼ選択性を決定するために研究を行った。より具体的には、各化合物を7種類の他のキナーゼ、すなわちAurora A、Aurora B、チロシン-タンパク質キナーゼKit(c-Kit)、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)A、PDGFR Bおよびディスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ1(DDR1)の活性と比較して、CSF1Rキナーゼの阻害活性について試験した。この研究からの結果が以下の表3に示されている。
【0079】
「HotSpot」アッセイプラットフォームを用いて、Reaction Biology社(www.reactionbiology.com、ペンシルベニア州マルバーン)においてキナーゼパネルのインビトロプロファイリングを行った。簡単に言うと、必要とされる補因子と共に特異的キナーゼ/基質ペアを20mMのHepes(pH7.5)、10mMのMgCl、1mMのEGTA、0.02%のBrij35、0.02mg/mlのBSA、0.1mMのNaVO、2mMのDTTおよび1%のDMSOを含む反応緩衝液中で調製した。化合物27または67を添加した。20分後にATP(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)および33P ATP(PerkinElmer社、マサチューセッツ州ウォルサム)の混合物を得られた反応溶液に添加して10μMの最終濃度を得た。反応を室温で120分間行い、その後に反応溶液をP81イオン交換濾紙(Whatman社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上に滴下した。0.75%リン酸中で濾紙を広範囲に洗浄することにより未結合のリン酸を除去した。不活性酵素を含む対照反応から得られたバックグラウンドを差し引いた後に、溶媒(DMSO)反応と比較した試験試料中の残留キナーゼ活性の割合としてキナーゼ活性を決定した。Prism(Graph Padソフトウェア)を用いて各キナーゼに対する各化合物のIC50値および用量反応曲線を得た。キナーゼ、例えばAurora AのIC50値をCSF1Rの値で割って、IC50比として表される選択性を決定した。
【表3】
【0080】
他の実施形態
本明細書に開示されている特徴の全てをあらゆる組み合わせで1つにまとめてもよい。本明細書に開示されている各特徴を同じ、同等もしくは同様の目的を果たす他の特徴で置き換えてもよい。従って明示的に別段の定めをした場合を除き、開示されている各特徴は一般的な一連の同等もしくは同様の特徴の例にすぎない。
【0081】
さらに上記説明から、当業者であればその趣旨および範囲から逸脱することなく本発明の必須の特性を容易に確認することができ、かつそれを様々な使用および条件に適合させるために本発明の様々な変更および修正をなすことができる。従って他の実施形態も特許請求の範囲内である。