(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】置換2-[2-(フェニル)エチルアミノ]アルカンアミド誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/12 20060101AFI20241008BHJP
C07C 237/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C07C231/12
C07C237/06
(21)【出願番号】P 2021560991
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060470
(87)【国際公開番号】W WO2020212352
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-31
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505196819
【氏名又は名称】ニューロン・ファーマシューティカルズ・ソチエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NEWRON PHARMACEUTICALS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラン,ドンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェイファン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シジョン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529969(JP,A)
【文献】特開2018-043951(JP,A)
【文献】特表2015-529651(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133419(WO,A1)
【文献】特表2009-521417(JP,A)
【文献】JAMISON, J. et al.,“Syntheses and antifungal activity of pseudomycin side-chain analogues. Part 1”,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2000年,Vol. 10, No. 18,pp. 2101-2105,DOI: 10.1016/s0960-894x(00)00423-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 231/00
C07C 237/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I
’):
【化27】
[式中、Rは、
(C
4
-C
6
)アルキル又はCD
3
-CD
2
-(C
2
-C
4
)アルキルであり;
R
1及びR
2は、水素であ
り;
R
3及びR
4は、水素であ
り;
R
5及びR
6は、独立して、水素又は(C
1-C
3
)アルキルである]で示される化合物又は薬学的に許容し得るその塩の製造方法であって、以下の工程a)~e):
a)式(II
’):
【化29】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示される化合物を式(III):
[(R
9)
3PCH
2OR
8]
+X
ー
(III)
[式中、
R
9は、アリール又は(C
1-C
6)アルキルであり;
Xは、Cl、Br又はIであり;
R
8は、(C
1-C
6)アルキル又はアリールである]で示される化合物と強塩基の存在下で反応させて、式(IV
’):
【化30】
[式中、R、R
1、R
2及びR
8は、上記と同義である]で示される化合物を得る工程;及び
b)得られた式(IV
’)の化合物を
、極性溶媒中で、無水条件又は水性酸性条件下で加水分解して、式(V
’):
【化31】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示される化合物を得る工程;及び
c)得られた式(V
’)の化合物を式(VI):
【化32】
[式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記と同義であり、そしてGは、水素又はアミノ基の保護基である]で示される化合物又はその塩と反応させて、縮合化合物を得る工程;
d)得られた縮合化合物を還元して、式(I
’)の化合物を得る工程;あるいは代わりに
c’)上記と同義の式(IV
’)の化合物を、上記と同義の式(VI)の化合物と直接反応させて、得られた縮合化合物を還元して、式(I
’)の化合物を得る工程;及び
e)得られた式(I
’)の化合物を場合により薬学的に許容し得るその塩に変換する工程
を含む方法。
【請求項2】
請求項1と同義の式(I’)の化合物を得るための、請求項
1に記載の方法であって、Rが、n-ブチル又はCD
3-CD
2-CH
2-CH
2-であり、そしてR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6が、水素である、方法。
【請求項3】
式(I’)の化合物を得るための、請求項1に記載の方法であって、式(I’)の化合物が2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドである、方法。
【請求項4】
工程a)の強塩基が、アルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムイソプロピルアミド、カリウムtert-ブトキシドからなる群より選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
強塩基が、リチウムヘキサメチルジシラジドである、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において生成する副産物の(R
9)
3P(式中、R
9は、請求項1と同義である)が、(R
9)
3POに酸化され、そして除去される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
(R
9)
3POが、濾過によって除去される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
得られた生成物(IV
’)が、クロマトグラフィーによって精製される、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の加水分解が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、1-ブタノール、メチルテトラブチルエーテル(MTBE)又は酢酸エチル又はそれらの混合物から選択される極性溶媒中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程b)の加水分解が、水性酸性条件で実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の加水分解が、アセトニトリル及び塩酸水溶液中で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(VI)の化合物中のGが、水素である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
式(VI)の化合物中のGが、カルバミン酸N-カルボキシアルキル基、カルバミン酸N-t-ブチル(BOC)、カルバミン酸N-ベンジル(Cbz)、カルバミン酸ブロモベンジル、カルバミン酸p-クロロベンジル及びカルバミン酸9-フルオレニルメチル(Fmoc)からなる群より選択されるアミノ基の保護基である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程d)に使用される還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)、Pd/H
2、及びNaBH
3CNからなる群より選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
工程d)に使用される還元剤が、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
工程b
)、工程c)及び工程d)が、中間生成物を単離することなく実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
工程b
)、工程c)及び工程d)が、アセトニトリル及び塩酸水溶液中で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程e)の薬学的に許容し得る酸が、HCl、HBr、CH
3SO
3H、p-トルエンスルホン酸及びリン酸からなる群より選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
R、R
1及びR
2が、請求項1と同義である、式(II
’)の化合物が、Rが、請求項1と同義であり、そしてYが、脱離基である、式:RYの化合物との反応による、Rが、水素である、式(II
’)の化合物のアルキル化によって製造される、請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
Yが、塩化物、臭化物、メシラート、p-トルエンスルホナート、ブロシラート、ノシラート及びホスファートからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
R
9
が、フェニル又はトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
R
9
が、メチル、エチル又はn-プロピルである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
Xが、Cl又はBrである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
R
8
が、メチル、エチル又はn-プロピルである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
R
8
が、フェニル又はトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
R、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
基のうちの1個以上の水素原子が、重水素原子で置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
R基のうちの1個以上の水素原子が、重水素原子で置換されている、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換2-[2-(フェニル)エチルアミノ]アルカンアミド誘導体、特に非常に高い化学純度を持つ2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドの高収率での製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 2008/151702に開示されている置換2-[2-(フェニル)エチルアミノ]アルカンアミド誘導体は、ナトリウム及び/又はカルシウムチャネルモジュレーターであり、したがって、前記メカニズムが病理学的役割を果たす広範囲の病変(神経疾患、認知疾患、精神医学疾患、炎症疾患、泌尿生殖器疾患及び胃腸疾患など)を予防、軽減及び治癒するのに有用である。これらの化合物はまた、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害作用が実質的に認められないと記載されている。
【0003】
ナトリウム及び/又はカルシウムチャネルモジュレーターとして非常に強力な新しい種類のフッ素化アリールアルキルアミノカルボキサミド誘導体が、WO 2013/000651に開示されている。
【0004】
WO 2008/151702は、以下のスキーム1に要約されるとおり、実施例において2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成法を開示している:
【0005】
【0006】
開示されたプロセスには多くの欠点があり、そのため工業用に拡張可能ではない:
・市販の試薬からの調製には数工程が含まれる、3-メトキシフェニルエチルアミンなどの市販されていない出発物質;
・中間体が油状であるため、その精製が困難;
・1-ブロモブタン及び潜在的に遺伝毒性である2-クロロ-N,N-ジメチルアセトアミドなどの毒性試薬の過剰使用;
・非標準装置の使用(NaH/DMFは、反応でH2が生成するため、爆発の恐れがある化合物である);
・空気の存在下で過酸化物を容易に生成するエーテル溶媒の使用に起因する、最終的な塩酸塩を製造するための非実用的で潜在的に非常に危険な条件;
・低い全収率(約13%);
・最終生成物の純度不明。
【0007】
WO 2008/151702はまた、アルデヒドをα-アミノアルカンアミドによる還元的アミノ化に付すことが提案されている、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドを調製するための代替法も提案している(p.20, I. 1-10)。この文献は、反応の条件及び収率を示しておらず、出発アルデヒドの調製方法も開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、α-アミノアルカンアミドによる還元的アミノ化に使用されて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドを生成させるアルドヒドである3-ブトキシフェニル-アセトアルデヒドが、非常に不安定であり、このため、大規模な工業プロセスでの使用に問題があることを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今や、最終生成物を高収率かつ高純度で得ることができる、2-[2-(フェニル)エチルアミノ]アルカンアミド誘導体、特に2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドの革新的かつ実用的な製造方法が見い出された。
【発明の効果】
【0010】
本プロセスは、容易に入手可能な出発物質及び試薬を使用し、当技術分野で既知の標準的な装置で実行することができる。更には本プロセスは、段階的に実行することも、又は時間及び資源を節約できる逐次テレスコーピング合成として実行することもできる。
【0011】
これら全ての特性により、本プロセスは活性成分の工業生産に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、式(I):
【0014】
【化2】
[式中、Rは、(C
3-C
10)アルキル、又はω-トリフルオロ(C
3-C
10)アルキルであり;
R
1及びR
2は、独立して、水素、ヒドロキシ、(C
1-C
8)アルコキシ、(C
1-C
8)アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチル又は2,2,2-トリフルオロエチルであるか;あるいはR
1及びR
2の一方は、R-O-基に対してオルト位にあり、そして同R-O-と一緒になって、R
0が(C
2-C
9)アルキルである、下記式:
【0015】
【化3】
で示される基を表し;
R
3及びR
4は、独立して、水素、(C
1-C
4)アルキルであるか;又はR
4は、水素であり、そしてR
5は、-CH
2-OH、-CH
2-O-(C
1-C
6)アルキル、-CH(CH
3)-OH、-(CH
2)
2-S-CH
3、ベンジル及び4-ヒドロキシベンジルから選択される基であるか;又はR
4及びR
5は、隣接する炭素原子と一緒になって、(C
3-C
6)シクロアルキル残基を形成し;
R
5及びR
6は、独立して、水素又は(C
1-C
6)アルキルであるか;あるいは隣接する窒素原子と一緒になって、場合により-O-、-S-及び-NR
7-(ここで、R
7は、水素又は(C
1-C
6)アルキルである)から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有する、5~6員の単環式飽和複素環を形成し;そして
場合により、R、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6基、好ましくは、R基のうちの1個以上の水素原子は、重水素原子で置換されていてもよい]で示される化合物又は薬学的に許容し得るその塩の調製方法であって、以下の工程a)~e):
a)式(II):
【0016】
【化4】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示される化合物を式(III):
[(R
9)
3PCH
2OR
8]
+X
ー
(III)
[式中、
R
9は、アリール、好ましくは、フェニル、トリル、又は(C
1-C
6)アルキル、好ましくは、メチル、エチル若しくはn-プロピルであり;
Xは、Cl、Br又はI、好ましくは、Cl及びBrであり;
R
8は、(C
1-C
6)アルキル、好ましくは、メチル、エチル若しくはn-プロピル、又はアリール、好ましくは、フェニル若しくはトリルである]で示される化合物と強塩基の存在下で反応させて、式(IV):
【0017】
【化5】
[式中、R、R
1、R
2及びR
8は、上記と同義である]で示される化合物を得る工程;及び
b)得られた式(IV)の化合物を場合により加水分解して、式(V):
【0018】
【化6】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示される化合物を得る工程;及び
c)得られた式(V)の化合物を式(VI):
【0019】
【化7】
[式中、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記と同義であり、そしてGは、水素又はアミノ基の保護基である]で示される化合物又はその塩と反応させて、縮合化合物を得る工程;
d)得られた縮合化合物を還元して、式(I)の化合物を得る工程;あるいは代わりに
c’)上記と同義の式(IV)の化合物を、上記と同義の式(VI)の化合物と直接反応させて、得られた縮合化合物を還元して、式(I)の化合物を得る工程;及び
e)得られた式(I)の化合物を場合により薬学的に許容し得るその塩に変換する工程
を含む方法に関する。
【0020】
工程c)で得られた縮合化合物は、ジアステレオ異性体E若しくはZ又はそれらの混合物としての、下記式(VII):
【0021】
【化8】
で示されるシッフ塩基、又は式(VII
a):
【0022】
【化9】
で示される構造上関連するα-ヒドロキシアミン、又は式(VII
b):
【0023】
【化10】
で示される不飽和アミン又はその塩、あるいは上に報告された縮合化合物の混合物であってよい。
【0024】
HCl水溶液の存在下での式(V)の生成物と式(VI)の生成物との縮合は、以下のスキームによる平衡反応条件下で起こり得る:
【0025】
【0026】
好ましくは、縮合化合物、即ち、式(VII)のシッフ塩基及び式(VIIa)又は(VIIb)の構造上関連する縮合化合物は、次の還元工程を考慮して、出発物質(V)及び(VI)又はH2Oのいずれからも分離されない。工程a)の強塩基は、好ましくは、ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムイソプロピルアミド、カリウムtert-ブトキシドからなる群より選択される。最も好ましくは、強塩基は、ヘキサメチルジシラザンからその場で得ることができるリチウムヘキサメチルジシラジドである。
【0027】
工程a)において、式:(R9)3Pのホスフィン(式中、R9は、上記と同義である)が副産物として生成する。前記ホスフィンは、例えば、H2O2の添加によって(R9)3POに酸化され、そして、例えば、単純な濾過によって、反応混合物から除去され得る。
工程a)で得られた生成物(IV)は、好ましくはクロマトグラフィーによって精製される。
G基は、好ましくは水素である。
アミノ基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis-Third Edition Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts, John Wiley & Sons, Inc. 1999 pages 503-550に報告されている。
好ましくは、アミノ保護基は、カルバミン酸N-カルボキシアルキル基、カルバミン酸N-t-ブチル(BOC)、カルバミン酸N-ベンジル(Cbz)、カルバミン酸ブロモベンジル、カルバミン酸p-クロロベンジル、カルバミン酸9-フルオレニルメチル(Fmoc)である。
工程b)において得られた中間生成物(V)及び工程c)において得られた縮合生成物は、単離されずに直接次の合成段階において使用されてもよい。
この種のプロセスは、テレスコーピングプロセス、即ち、反応の生成物が単離なしに次の工程に運ばれる、連結又は一貫プロセスとして知られている。
【0028】
本発明のプロセスは、以下のスキーム2に報告される:
【0029】
【0030】
本発明の好ましいプロセスは、式(I’):
【0031】
【化13】
[式中、R、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、上記と同義である]で示される化合物を得るための上記のプロセスであり、そして
式(II)の化合物は、下記式(II'):
【0032】
【化14】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示され、
式(IV)の化合物は、下記式(IV'):
【0033】
【化15】
[式中、R、R
1、R
2及びR
8は、上記と同義である]で示され;そして
式(V)の化合物は、下記式(V’):
【0034】
【化16】
[式中、R、R
1及びR
2は、上記と同義である]で示される。
【0035】
前記プロセスにおいて、工程c)で得られた縮合化合物は、ジアステレオ異性体E又はZとしての、下記式(VII'):
【0036】
【化17】
で示されるシッフ塩基、又は式(VII'
a)若しくは(VII'
b):
【0037】
【化18】
で示される構造上関連する化合物又はその塩、あるいは上に報告された縮合化合物の混合物である。
【0038】
好ましくは、縮合化合物、即ち、式(VII')のシッフ塩基又は式(VII'a)若しくは(VII'b)の構造上関連する縮合化合物は、本プロセスにおいて単離されない。
【0039】
本発明の好ましいプロセスは、式(I)又は(I’)の化合物を得るための上記のプロセスであって、式中、
Rは、(C4-C6)アルキル又はCD3-CD2-(C2-C4)アルキルであり;
R1及びR2は、独立して、水素又はハロ、好ましくはフルオロであり;
R3及びR4は、両方とも水素であり;そして
R5及びR6は、独立して、水素又は(C1-C3)アルキルである、プロセスである。
【0040】
本発明の最も好ましいプロセスは、上記と同義の式(I)又は(I’)の化合物を得るための上に定義されたプロセスであって、式中、Rは、n-ブチル又はCD3-CD2-CH2-CH2-であり、そしてR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素である、プロセスである。
【0041】
上に定義されたプロセスの工程a)は、ウィッティヒ反応である。反応は、好ましくは、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフランなどの極性溶媒中で、アルキルリチウム、例えば、ブチルリチウム、リチウムイソプロピルアミド、カリウムt-ブトキシド又はヘキサメチルジシラザンからその場で得ることができるリチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)などの強塩基の存在下で実施される。リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)が好ましい強塩基である。反応温度は-20℃から+25℃まで変化してよい。好ましくは、反応は0℃で実施される。ウィッティヒ反応に使用される反応条件は、Modern Carbonylation Olefination, Edited by Takeshi Takeda 2004 Wiley-VCH, Chapt 1; March’s Advanced Organic Chemistry Seventh Edition 2013 by John Wiley and Sons Inc, p. 1165-1167; Synthesis 2003, No. 3, p. 317-334に記載されている。
【0042】
好ましくは、副産物として生成する式:(R9)3Pのホスフィン(式中、R9は上記と同義である)は、例えば、H2O2の添加によって(R9)3POに酸化され、そして、例えば、濾過によって除去される。
【0043】
上に定義されたプロセスの工程b)は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、1-ブタノール、メチルテトラブチルエーテル(MTBE)又は酢酸エチル又はそれらの混合物などの極性溶媒中で、無水条件又は水性酸性条件下で実施され得る、加水分解反応である。好ましくは、工程b)は、塩酸、臭化水素酸、ギ酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液、メタンスルホン酸などの水性酸の存在下、0℃~5℃の範囲の温度での水性酸性条件下で実施される。好ましくは、工程b)は、アセトニトリル及び塩酸水溶液中で実施される。アリールアセトアルデヒド(V)は、予想外に水性酸性条件で、次の工程c)で生産的に使用されるのに十分な安定性を示した。好ましくは、工程b)で得られたアセトニトリル及び塩酸水溶液中のアリールアセトアルデヒド(V)は、工程c)に直接使用される。
【0044】
工程c)は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフラン又はそれらの混合物などの極性溶媒中で、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸などの水性酸の存在下で0°~40℃の温度で実施され得る、縮合反応である。水の共沸除去又はモレキュラーシーブなどの乾燥剤の使用を伴う、アルデヒド及び第1級アミンからシッフ塩基を調製するために使用される最も一般的な方法とは異なり、工程c)の縮合反応は、水の存在下で首尾よく実施される。好ましくは、工程c)は、アセトニトリル及び塩酸水溶液中で実施される。好ましくは、工程b)で得られた縮合生成物は、工程c)に直接使用される。
【0045】
上に定義されたプロセスの工程d)は、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)、Pd/H2、NaBH3CN、好ましくはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)などの還元剤を使用して、1,2-ジクロロエタン、テトラヒドロフラン若しくは2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミド、エタノール、イソプロパノール、N,N-ジメチルアセトアミド又はそれらの混合物などの溶媒中で-25℃から+25℃で実施され得る、還元反応である(例えば、Organic Process Research & Development 2006, 10, 971-1031に記載されるとおり)。
【0046】
好ましくは、還元は、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)を還元剤として使用して、水性アセトニトリル及び塩酸などの水性酸性条件で実施される。
【0047】
工程b)、工程c)及び工程d)は、反応生成物を単離することなく実施され得る。
【0048】
工程e)は、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸及びシュウ酸などの薬学的に許容し得る酸による式(I)の化合物のオプションの塩化である。塩化工程は、好ましくは、メチルtert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン又はそれらの混合物などの極性溶媒中で、0℃~25℃の範囲の温度で実施される。得られた塩は、使用した溶媒への溶解度が低く、濾過により純粋な生成物として単離され得る。
【0049】
好ましくは、式(I)の化合物の塩酸塩は、メチルイソブチルケトンに溶解した式(I)の化合物に濃HCl水溶液(37% HCl水溶液など)を加え、共沸蒸留に付すことによって得られる。
【0050】
工程c’)は、式(VI)のアミン、又は塩酸塩若しくは臭化水素酸塩などのその塩、及び式(IV)の化合物の溶液に-10℃~50℃の温度で水性酸を加え、続いて-25~+25℃の温度で還元剤を加えることによって実施され得る。適切な溶媒は、極性プロトン性溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール)又は非プロトン性極性溶媒(塩化メチレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル)のいずれか又はそれらの混合物である。還元剤は、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)、Pd/H2及びNaBH3CNの中から選択される。好ましくは、工程c’)は、THF中で、水性酸として酢酸を、還元剤としてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)を使用して実施される。
【0051】
Rが上記と同義である、式(II)の化合物は、Rが上記と同義であり、そしてYが、塩化物、臭化物、メシラート、p-トルエンスルホナート、ブロシラート、ノシラート及びホスファートなどの良好な脱離基である、式:RYの化合物による、R=Hである、式(II)の化合物のアルキル化によって得ることができる。好ましくは、Yは塩化物である。
【0052】
上に報告されたアルキル化反応は、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラフィドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトンなどの極性有機溶媒中で、KOH、NaOH、K2CO3、Et3Nなどの適切な塩基の存在下、又は有機溶媒(トルエン)と水との二相系中で、テトラブチルアンモニウムクロリドなどの相間移動触媒(PTC)の存在下で、1時間未満から数時間の範囲の時間で実施され得る。
【0053】
好ましくは、アルキル化反応は、N,N-ジメチルホルムアミド中で、K2CO3の存在下で実施される。
【0054】
上記と同義の式(II)の化合物は、市販されているか、又は当技術分野において既知の反応によって調製され得る。
【0055】
工程a)に使用される、式(III)の化合物は、式(IX):
XCH2OR8
(IX)
[式中、Xは、上記と同義である]で示される化合物を式(X):
(R9)3P
(X)
[式中、R9は、上記と同義である]で示される化合物と、イソプロピルメチルエーテル、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフランなどの極性溶媒中で反応させてその場で調製することができ、次いで好ましくは、式(II)の化合物と塩基の存在下でその場で反応させることができる。
【0056】
式(VI)の化合物は、市販の製品であるか、又は当技術分野において既知の方法によって調製され得る。
式(VIII)の化合物は、当技術分野において既知の反応によって調製され得る。
【0057】
上に報告されたプロセスは、工程b)、c)及びd)が段階的に、又は単一容器内で(代替工程c’)、又はテレスコーピング方式で、即ち、工程b)、工程c)及び工程d)が、中間生成物を単離することなく実施されるプロセスで実施され得るため、非常に柔軟性が高い。
【0058】
「テレスコーピング」とは、中間体の単離なしに、複数の変換(工程b、工程c及び工程d)(クエンチ及びその他の後処理操作を包含する)を実行することを意味する。中間体の溶液は、抽出、濾過(生成物が濾液に残っている限り)及び溶媒交換が可能であるが、中間体は、最終的に溶液中に保持され、次の変換に持ち越される。
【0059】
本発明の3つの工程b)、c)及びd)に適用されるテレスコーピングプロセスは、非常に独特であり、生成物の単離が行われる、工程d)の終わりまで、あらゆる抽出又は後処理が回避され、試薬が反応混合物に加えられ、そして反応は同じ反応器内で実施され得る。
【0060】
あらゆる後処理、あらゆる抽出及びあらゆる結晶化がないため、このテレスコーピングアプローチは、工業的観点から非常に便利である。
【0061】
革新的なテレスコーピングプロセスにおいて、アルデヒド(V)は、好ましくは酸性の水性条件下で生成される。式(VI)の化合物は、縮合工程を実行するために反応混合物に加えられる。次に、選択された還元剤を前記縮合水性反応混合物に加えることにより、還元工程が実施される。最終的な固体生成物(I)を単離するために、3工程プロセスについて1回だけの反応後処理が第3工程の終了後に実施される。
【0062】
実験の部
【実施例1】
【0063】
3-ブトキシベンズアルデヒドの合成
【0064】
【0065】
N,N-ジメチルホルムアミド 120kg中の3-ヒドロキシベンズアルデヒド 25kg(204.7mol)、炭酸カリウム 39.5kg(285.8mol)、及び1-クロロブタン 28.5kg(307.8mol)を含有する溶液を115℃に加熱し、反応が終了する(3-ヒドロキシベンズアルデヒド 1%未満)までこの温度に保持した。混合物を冷却し、水 325kgで希釈し、次に真空下で約325Lに濃縮した。バッチを水 126kgで希釈し、メチルtert-ブチルエーテル 150kgを約20℃で加えた。水層を廃棄して、バッチを希塩化ナトリウム溶液、次に水で順次洗浄した。バッチを真空下で濃縮し、残留メチルtert-ブチルエーテルを、一連の希釈及び真空下での濃縮によりテトラヒドロフランに置き換えた。得られた3-ブトキシベンズアルデヒド 33.5kg(188.0mol)(モル収率91%、純度99.7%)を含有するテトラヒドロフラン溶液を次の工程に使用した。
MS(M+1:179.1);1H NMRは、与えられた所与の構造と一致している。
【実施例2】
【0066】
3-ブトキシベンズアルデヒドの合成
【0067】
【0068】
N,N-ジメチルホルムアミド 19.75L中に3-ヒドロキシベンズアルデヒド 3.95kg(32.34mol)、1-クロロブタン 4.49kg(48.52mol)、及び炭酸カリウム 6.26kg(45.28mol)を含有する混合物を115~118℃に加熱し、反応が終了する(3-ヒドロキシベンズアルデヒド約0.1面積%)までこの温度に保持した。反応混合物を約20℃に冷却した。スラリーに、tert-ブチルメチルエーテル 32.4L及び水 52.9Lの混合物を加え、15分間撹拌した。二相混合物を分離させた。有機溶液を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。バッチを<50℃で減圧下で濃縮して、油状生成物の3-ブトキシベンズアルデヒド 5.57kgをモル収率96.6%で与えた。
【実施例3】
【0069】
1-ブトキシ-3-(2-メトキシドビニル)ベンゼンの合成
【0070】
【0071】
テトラヒドロフラン 83kg中のリチウムヘキサメチルジシラジド(ヘキサメチルジシラザンから調製)53.4kg(331mol)、n-ヘキサン中のn-ブチルリチウム(2.5M)91kg(328mol)の溶液を、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド 95.6kg(279mol)及びテトラヒドロフラン 290kgの溶液に約-25℃で加えた。前の工程で調製されたTHF溶液中の3-ブトキシベンズアルデヒド 33.5kg(188mol)の予冷したテトラヒドロフラン溶液を加え、反応が終了するまでバッチを約0℃に保持した。反応混合物を水 166kg(約0℃に予冷した)でクエンチした。二相混合物を約266Lに真空下で濃縮した。バッチをn-ヘプタン 77kgで希釈し、n-ヘプタンで濯ぎながらセライトを通して濾過した。合わせた濾液を沈降させ、水層を分離し、n-ヘプタン 115kgで抽出した。合わせた有機層を水で3回、毎回166kgで洗浄した。水 33kg中に過酸化水素 6.05kgを含有する溶液をバッチに加え、約20℃で約6時間撹拌した。バッチを水 66kgで希釈し、次にn-ヘプタンで濯ぎながらセライトを通して濾過した。合わせた濾液を沈降させ、水層を廃棄した。有機溶液を水で3回、毎回100kgで洗浄した。溶液を約66Lに濃縮し、溶離液としてn-ヘプタンを使用してシリカゲル 160kg(200~300メッシュ)で精製した。生成物を含有する画分を合わせ、約66Lに真空下で濃縮した。EおよびZの1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン 25kg(121.2mol)の濃縮溶液、モル収率64%を次の工程に直接使用した。MS(M+1:207.2)及び1H NMR(DMSO-d6)は、それがE-及びZ-異性体の混合物であることを示した。NMR積分値に基づいて、E:Z異性体の比は43:57である。
【0072】
【0073】
1H NMR(400MHz)の帰属は、以下のとおり表にされる:
【0074】
【実施例4】
【0075】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドの合成
【0076】
【0077】
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン;20.7kg(25.8kg×80.2% 分析純度、100.3mol;1当量)、2N 塩酸水溶液(7.3kg)及びアセトニトリル 278kgの溶液を、反応が終了する(1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン<3%)まで約0℃に保持した。これを、2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩;15.5kg(16.6kg×93.3% 分析純度)(111.7mol)、水 6.2kg及びアセトニトリル 93kgを含有する混合物に約10℃で加え、40℃に温めて、反応が終了するまで保持した。バッチの温度を約0℃に調整し、アセトニトリル 93kg中のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム 44.3kg(99% 分析純度、207mol)の溶液を約5℃で加えた。反応終了後(3-n-ブトキシ-フェニルアセトアルデヒドの残量<2%)、バッチを水 207kgでクエンチし、二相混合物を約40℃で約90Lに真空下で濃縮した。バッチをメチルtert-ブチルエーテル 104kgで希釈して、層を分離した。有機層を水で2回(毎回約133kg)洗浄した。合わせた水層をメチルtert-ブチルエーテル 104kgで抽出し、分離した有機層を水 62kgで洗浄した。合わせた水層のpHを、30%水酸化ナトリウム水溶液を使用して約9に調整し、メチルtert-ブチルエーテルで2回(毎回104kg)抽出した。合わせた有機層を、メチルtert-ブチルエーテル(毎回20kg)での一連の希釈を用いて真空下で濃縮し、そして濃縮して最終容量を約20Lとした。バッチをメチルイソブチルケトン 25kgでの一連の希釈により更に共沸して乾燥させ、真空下で濃縮して最終容量を40Lとし、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 20.1kg(72.1mol、モル収率72%)をメチルイソブチルケトン中の濃縮溶液として与えた。2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド(遊離塩基)の同一性は、MS(M+1=279.0)と、400MHz 1H NMR及び元素分析と一致した。
【実施例5】
【0078】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドの合成
3-ブトキシフェニルアセトアルデヒド 1.95g(1当量)及び2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド 5.18g(5当量)を無水THF 340mLに溶解した。この反応混合物に酢酸 3.47mL(6当量)を滴下し、得られた溶液を5分間撹拌した。この溶液に、STAB-H 8.6g(4当量)を何回かに分けて加え、2.5時間撹拌した。反応終了後、Na2CO3水溶液を加え、有機層を分離した。水層をDCM 200mLで2回抽出した。有機層を合わせ、乾燥させて濃縮した。粗物質(ヘプタン中の8%酢酸エチル)で実施したフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、1.66g(モル収率59%の2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基)が生成した。
【実施例6】
【0079】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩
【0080】
【0081】
メチルtert-ブチルエーテル(約36kg)にガス状塩化水素(約4kg)を含有する溶液を、メチルイソブチルケトン中の2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 13.5kg(48.5mol)の溶液に約25℃で加えた。得られた懸濁液を約0~5℃で濾過し、濾滓を冷メチルイソブチルケトンで洗浄した。集めた固体をメチルイソブチルケトン 68kgに35~40℃で数時間懸濁し、次に約20℃で濾過した。濾滓をメチルイソブチルケトン 14kgで洗浄した。集めた固体を水 1.4kg及びメチルイソブチルケトン 54kgの混合物に溶解し、研磨濾過した。濾液を、メチルイソブチルケトンでの一連の希釈により共沸して乾燥させ、濃縮して、最終容量を約81Lとした。沈殿した固体を30~35℃で濾過した。集めた固体をメチルイソブチルケトン 14kgで洗浄し、次に約40℃で真空乾燥した。乾燥した固体を篩にかけて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 10.64kg(33.8mol)をモル収率69.7%で与えた。2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の同一性は、元素分析(理論値対実測値:C 61.04%対61.3±0.2重量%;H 8.64%対8.7±0.1重量%;N 8.90%対8.9±0.1重量%;O 10.16%対10.17±0.1重量%;Cl 11.26%対10.2±0.5重量%)、MS(M+1:279.0)、及びDMSO中の300MHz 1H NMRスペクトル(20℃でBrukerAvance 300)によって確認された:
【0082】
【0083】
20℃でDMSO中のBrukerAvance 300
13C-NMRスペクトル
【表3】
【実施例7】
【0084】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 8.10g(29mmol;1当量)をジエチルエーテル15mLに溶解した。この溶液に、エーテル溶媒中のHCl 46mL(2mmol)を加え、激しく撹拌した。生成した残渣を0℃で引っ掻いて、粗2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の白色沈殿物が生成した。この沈殿物を、酢酸エチル40mL中で粉砕することにより更に精製して、塩酸塩 6.66g(21.1mmol;収率72%)が生成した。
【実施例8】
【0085】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
メチルイソブチルケトン 35L中の2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 5.4kg(19.40mol)の溶液を37%塩酸 2.03kgに加えた。混合物を、メチルイソブチルケトンでの希釈の繰り返しサイクルによって共沸して乾燥させ、次に<45℃で真空下で濃縮して残量を約27Lとした。沈殿した固体を濾過し、メチルイソブチルケトン 10.95kg及びヘプタン 18.70kgで順次洗浄した。湿った生成物を40℃で乾燥させて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 4.91kg
(15.59mol)を白色固体として収率80.3%で与えた。固体のスペクトルデータ(1H NMR)は、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の帰属構造と一致している。
【実施例9】
【0086】
2-[2-(3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミドの合成
【0087】
【0088】
フェニルアセトアルデヒド-3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d
52g(10.1mmol;1当量)及び2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド 5.18g(5当量)を、オーブンで乾燥させた丸底フラスコで無水テトラヒドロフラン 340mLに溶解した。この反応混合物に、酢酸 3.47mL(6当量)を滴下して、得られた溶液を5分間撹拌した。この溶液にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(STAB-H)8.6g(4当量)を何回かに分けて加え、2.5時間撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(200mL)で2回抽出した。有機層を合わせ、乾燥させて濃縮した。粗製物質で実施したフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中の8%酢酸エチル)により、2-[2-(3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d
5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド 1.7g(6.0mmol)が生成した(収率59.4%)。
1H-NMRは
図1に報告される。
上記の合成において出発物質として使用されたフェニルアセトアルデヒド-3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d
5は、1-クロロブタンの代わりに1-クロロブタン-3,3,4,4,4-d
5を使用することにより、3-ヒドロキシベンズアルデヒドから出発する実施例1又は2に報告されたプロセスと、それに続くウィッティヒ反応によって調製された。
【実施例10】
【0089】
2-[2-(3-ブトキシ-4,4,4,3,3-d5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
【0090】
【0091】
2-[2-(3-ブトキシ-4,4,4,3,3-d
5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 8.25g(29.1mmol;1当量)をジエチルエーテル 15mLに溶解した。この溶液に、ジエチルエーテル(46mL)中の2M HCl溶液を加え、激しく撹拌した。生成した粘着性残渣を0℃で引っ掻いて、2-[2-(3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d
5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の粗生成物の白色沈殿物が生成した。この沈殿物を酢酸エチル(40mL)で粉砕することにより更に精製した。得られた沈殿物を濾過し、窒素下で乾燥させて、純粋な2-[2-(3-ブトキシ-3,3,4,4,4-d
5-フェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 6.77g(21.17mmol、収率 73%)が生成した。
1H NMR-スペクトルは
図1に報告されている;
LC-MS:
【0092】
【実施例11】
【0093】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン;20.7kg(25.8kg×80.2% 分析純度、100.3mol=1当量)、2N 塩酸水溶液(7.3kg)及びアセトニトリル 278kgの混合物を、反応が終了する(1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン<3%)まで約0℃で保持した。これを、2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩(VI)(15.5kg(16.6kg×93.3% 分析純度)、111.7mol)、水 6.2kg及びアセトニトリル 93kgを含有する混合物に約10℃で加え、40℃に温めて、反応が終了するまで保持した。バッチの温度を約0℃に調整し、アセトニトリル 93kg中のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム 46.0kg(99% 分析純度、215mol)の溶液を約5℃で加えた。反応終了後(3-n-ブトキシ-フェニルアセトアルデヒドの残量<2%)、バッチを水 207kgでクエンチし、二相混合物を真空下で約40℃で濃縮して約90Lとした。バッチをメチルtert-ブチルエーテル(104kg)で抽出した。有機層を水で2回(毎回約133kg)洗浄した。合わせた水層をメチルtert-ブチルエーテル 104kgで抽出し、分離した有機層を水 62kgで洗浄した。合わせた水層のpHを、30%水酸化ナトリウム水溶液を使用して約9に調整し、メチルtert-ブチルエーテルで2回(毎回104kg)抽出した。合わせた有機層を、メチルtert-ブチルエーテルによる一連の希釈(毎回20kg)を使用して真空下で濃縮し、そして濃縮して最終容量を約20Lとした。バッチをメチルイソブチルケトン 25kgによる一連の希釈により更に共沸して乾燥させ、真空下で濃縮して最終容量を40Lとし、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 20.1kg(72.1mol、モル収率72%)を与えた。
溶液をメチルイソブチルケトン(130L)で約 に希釈した。溶液を36%塩酸(7.6kg)に加えた。混合物をメチルイソブチルケトンでの希釈の繰り返しサイクルによって共沸して乾燥させ、次に<45℃で真空下で濃縮して約100Lの残量とした。沈殿した固体を濾過し、メチルイソブチルケトン 40kg及びヘプタン 70kgで順次洗浄した。湿った生成物を40℃で乾燥させて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 18.7kg(59.4mol)を白色固体として、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基からの収率82%で与えた。
【実施例12】
【0094】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩;15.5kg(16.6kg×93.3% 分析純度)(111.7mol)、水 6.2kg及びアセトニトリル 93kgを、約10℃で1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン;20.7kg(25.8kg×80.2% 分析純度、100.3mol=1当量)、2N 塩酸水溶液(7.3kg)及びアセトニトリル 278kgの混合物に加え、反応が終了する(1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン<3%)まで約0℃に保持した。こうして得られた混合物を40℃に温めて、反応が終了するまで保持した。撹拌バッチの温度を約0℃に調整した。アセトニトリル 93kg及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム 44.3kg(99% 分析純度、207mol)を、5℃に保った撹拌混合物に加えた。反応終了後(3-n-ブトキシ-フェニルアセトアルデヒドの残量<2%)、バッチを水 207kgでクエンチし、混合物を約40℃で撹拌しながら真空下で濃縮して約90Lとした。バッチをメチルtert-ブチルエーテル(104kg)で抽出した。有機層を水で2回(毎回約133kg)洗浄した。合わせた水層をメチルtert-ブチルエーテル 104kgで抽出して、分離した有機層を水 62kgで洗浄した。合わせた水層のpHを、30%水酸化ナトリウム水溶液を使用して約9に調整し、メチルtert-ブチルエーテルで2回(毎回104kg)抽出した。合わせた有機層を、メチルtert-ブチルエーテル(毎回20kg)での一連の希釈を使用して真空下で濃縮し、そして濃縮して最終容量を約20Lとした。バッチを、メチルイソブチルケトン 25kgでの一連の希釈により更に共沸して乾燥させ、真空下で濃縮して2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 20.1kg(72.1mol、モル収率72%)の最終溶液(40L)とし、これをメチルイソブチルケトンで約130Lに希釈し、37%塩酸(7.6kg)を加えた。混合物をメチルイソブチルケトンでの希釈の繰り返しサイクルによって共沸して乾燥させ、次に<45℃で真空下で濃縮して、約100Lの残量とした。沈殿した固体を濾過し、メチルイソブチルケトン 40kg及びヘプタン 70kgで順次洗浄した。湿った生成物を40℃で乾燥させて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 19.0kg(60.3mol)を白色固体として、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基からの収率84%で与えた。
【実施例13】
【0095】
2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン;20.7kg(25.8kg×80.2% 分析純度、100.3mol=1当量)、2N 塩酸水溶液(7.3kg)及びアセトニトリル278kgの溶液を、反応が終了する(1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン<3%)まで約0℃で保持した。これを、2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩(VI)(111.7mol)(N-Boc-2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミドと塩酸からその場で容易に調製)、水 6.2kg及びアセトニトリル 93kgを含有する混合物に約10℃で加えた。
こうして得られた混合物を、40℃に温めて、反応が終了するまで保持した。撹拌バッチの温度を約0℃に調整した。アセトニトリル 93kg及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム 44.3kg(99% 分析純度、207mol)を、5℃に保った撹拌混合物に加えた。反応終了後(3-n-ブトキシ-フェニルアセトアルデヒドの残量<2%)、バッチを水 207kgでクエンチし、混合物を約40℃で撹拌しながら真空下で濃縮して約90Lとした。バッチをメチルtert-ブチルエーテル(104kg)で抽出した。有機層を水で2回(毎回約133kg)で洗浄した。合わせた水層をメチルtert-ブチルエーテル 104kgで抽出し、分離した有機層を水 62kgで洗浄した。合わせた水層のpHを、30%水酸化ナトリウム水溶液を使用して約9に調整し、メチルtert-ブチルエーテルで2回(毎回104kg)抽出した。合わせた有機層を、メチルtert-ブチルエーテルでの一連の希釈(毎回20kg)を使用して真空下で濃縮して、そして濃縮して最終容量を約20Lとした。バッチを、メチルイソブチルケトン 25kgでの一連の希釈によって更に共沸して乾燥させ、真空下で濃縮して、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基 19.1kg(68.5mol、モル収率68.4%)の最終溶液(40L)とし、これをメチルイソブチルケトンで約130Lに希釈し、37%塩酸(7.6kg)を加えた。混合物を、メチルイソブチルケトンでの希釈の繰り返しサイクルによって共沸して乾燥させ、次に<45℃で真空下で濃縮して、残量を約100Lとした。沈殿した固体を濾過し、メチルイソブチルケトン 40kg及びヘプタン 70kgで順次洗浄した。湿った生成物を40℃で乾燥させて、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩 18.2kg(57.8mol)を白色固体として、2-[2-(3-ブトキシフェニル)-エチルアミノ]-N,N-ジメチルアセトアミド遊離塩基からの収率80%で与えた。
【実施例14】
【0096】
1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン(200mg、0.001mol)、THF(0.4mL)中のHClガス(0.001mol)及びアセトニトリル(10V)からなる溶液を25℃で30分間撹拌して、CH3CN中の1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の溶液を与えた。得られた溶液を、実施例4のとおり2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩を含有する混合物に加えた。
【実施例15】
【0097】
1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン(200mg、0.001mol)、EA(1mL)中のHClガス(0.001mol、1当量)及びCH3CN(10V)からなる溶液を0℃で30分間撹拌して、CH3CN中の1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の溶液を与えた。得られた溶液を、実施例4のとおり2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩を含有する混合物に加えた。
【実施例16】
【0098】
1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン(206.29g、1mol、1当量)、MTBE(100ml)中のHClガス(7.3g、0.2当量)、H2O(18.0g、1mol)及びCH3CN(10V)からなる溶液を0~5℃で2時間撹拌して、1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の溶液を与えた。こうして得られた溶液を、実施例4のとおり2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩を含有する混合物に加えた。
【実施例17】
【0099】
1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の合成
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン(206.29g、1mol、1当量)、3N HCl水溶液(67ml、0.2当量)及びCH3CN(10V)からなる溶液を0~5℃で30分間撹拌して、1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の溶液を与えた。得られた溶液を、実施例4のとおり2-アミノ-N,N-ジメチルアセトアミド塩酸塩を含有する混合物に加えた。
【実施例18】
【0100】
1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)の合成及び単離
1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン;20.7g、2N HCl水溶液(7.3g)及びアセトニトリル(278g)の溶液を、反応が終了する(1-ブトキシ-3-(2-メトキシビニル)ベンゼン<3%)まで約0℃に保った。希水酸化ナトリウムを加えることにより、反応混合物を中性にした。バッチをメチルtert-ブチルエーテルで抽出して、溶液を水で洗浄した。減圧下で溶媒を蒸留して、1-ブトキシ-3-フェニルアセトアルデヒド(V)を残渣として与えた。