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特許7568651ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を用いて慢性自発性蕁麻疹を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を用いて慢性自発性蕁麻疹を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20241008BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241008BHJP
   C07D 239/47 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P17/04
C07D239/47 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021568760
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2020054755
(87)【国際公開番号】W WO2020234782
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】62/851,996
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリア,スヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ビエス,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】カバンスキー,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェンニ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】デ バック,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カウル,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】キニカー,アルビンド
(72)【発明者】
【氏名】ラディヴォイェヴィチ,アンドリヤナ
(72)【発明者】
【氏名】セベリン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ストリム,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタリティ ガラミ,アレッサンドラ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538313(JP,A)
【文献】Sonali J. BRACKEN et al.,“Autoimmune Theories of Chronic Spontaneous Urticaria”,Frontiers in Immunology,2019年03月29日,Vol. 10,DOI: 10.3389/fimmu.2019.00627
【文献】James J. CRAWFORD et al.,“Discovery of GDC-0853: A Potent, Selective, and Noncovalent Bruton’s Tyrosine Kinase Inhibitor in Early Clinical Development”,Journal of Medicinal Chemistry,2018年02月19日,Vol. 61, No. 6,p.2227-2245,DOI: 10.1021/acs.jmedchem.7b01712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
C07D201/00-521/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性自発性蕁麻疹(CSU)の治療を、そのような治療を必要する対象に行うために使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、式(I)の化合物
【化1】
含み、前記式(I)の化合物は、約25mgの用量で1日2回投与され、「約」は、+/-10%の変化を意味する、医薬組成物。
【請求項2】
前記式(I)の化合物での治療の前に、前記対象はCSU用全身性薬剤で既に治療されたことがある、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、及びロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物での治療の前に、前記対象はCSU用全身性薬剤で治療されたことがない、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象は中等度から重度のCSUを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記対象は以下の基準:
a)式(I)の化合物の治療の前に、前記対象は、16以上のUAS7スコアを有する;
b)前記式(I)の化合物の治療の前に、前記対象は、8以上のHSS7スコアを有する
の少なくとも1つに従って選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象は成人である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記対象は治療の4週目又は12週目までに、以下のうちの:
a)UAS≦6で判断される蕁麻疹及び掻痒の減少、若しくは蕁麻疹及び掻痒の完全な消失(UAS7=0);又は
b)皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1;
c)血管性浮腫活動性スコア(AAS7)がゼロで判断される血管浮腫がないこと
少なくとも1つを達成する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象は、前記治療の完了後4週目に、完全な蕁麻疹及び掻痒の応答([UAS7]=0)及び/又は皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1及び/又は管性浮腫の消失の継続(AAS7=0)によって判断される持続的応答を達成する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記式(I)の化合物、約0.5~3時間のTmaxを有「約」は、+/-10%の変化を意味する、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤を使用して、慢性自発性蕁麻疹(CSU)などの好塩基球及びマストによる皮膚疾患を治療する方法に関する。
【0002】
開示の背景
蕁麻疹は、痒みを伴う蕁麻疹及び/又は血管性浮腫を特徴とする異種の疾患群である。慢性蕁麻疹は、6週間を超えて継続的又は断続的に出現する蕁麻疹と定義されている(Maurer M et al.(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria. J Dtsch Dermatol Ges.;Bernstein JA,Lang DM,Khan DA,et al(2014)The diagnosis and management of acute and chronic urticaria: 2014 update.J Allergy Clin Immunol;133(5):1270-7)。慢性蕁麻疹はさらに次の2つのサブグループに分けられる:慢性自発性蕁麻疹(CSU)及び慢性刺激誘発型蕁麻疹(IU)。後者には、熱蕁麻疹、寒冷蕁麻疹又は圧迫蕁麻疹などの物理性蕁麻疹、及びコリン性蕁麻疹などの特殊な亜型が含まれる。CSUは既知又は未知の原因により、痒みを伴う膨疹、血管性浮腫、又はその両方が6週間を超えて自発的に出現するものと定義されている(Zuberbier T,et al.(2018)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2017 revision and update.Allergy;73(7):1393-1414)。しばしば観察される症候性皮膚描記症性蕁麻疹とCSUの組み合わせなど、CSUと刺激誘発型の蕁麻疹の両方が組み合わされることもある。
【0003】
以前には、誘因が不明な慢性蕁麻疹型は全て「慢性特発性蕁麻疹」(CIU)と名付けられていた。医学の進歩により、これまで「特発性」と考えられた蕁麻疹型の中に、実際に自己抗体が検出され得るものがあることが今日知られている。しかし、自己抗体を伴うこの慢性蕁麻疹の症状の日々変動する出現は依然として予測不可能であり、誘因が明らかではないため、症状は自発的に現れる。これまでの「特発性」型の一部に実際に自己抗体を検出し得るものがあることを用語において正確に反映するために、この集団は、国際ガイドラインに従って、現在、慢性自発性蕁麻疹(CSU)と呼ばれている(Maurer M et al.(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges.;Zuberbier T,et al.(2018)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2017 revision and update.Allergy;73(7):1393-1414)。医療現場での「慢性特発性蕁麻疹」という表現の使用はもはや推奨されていない。しかし、この新しい命名規則は世界の全ての地域で実施されているわけではなく、米国などの国々では、非特異的な病因又は未知の誘因を有する慢性蕁麻疹の患者集団は慢性特発性蕁麻疹(CIU)と呼ばれている。国際ガイドラインに従い、一貫性のために、この疾患実体は本文書全体を通してCSUと称する。
【0004】
CSUの生涯有病率は約1.8%であり、CSU患者の20人%以上が20年後もこの疾患を有している可能性がある(Greaves M(2000)Chronic urticaria.J Allergy Clin Immunol;105(4):664-72;Zuberbier T,Balke M,Worm M,et al(2010)Epidemiology of urticaria:a representative cross-sectional population survey.Clin Exp Dermatol;35(8):869-73)。罹患患者は、紅斑及び/又は血管性浮腫の発現を伴う掻痒性蕁麻疹を頻繁に経験する。血管性浮腫はCSU症例の約33~67%に関係すると報告されている(Juhlin L(1981)Recurrent urticaria:clinical investigation of 330 patients. Br J Dermatol;104(4):369-81;Toubi E,Kessel A,Avshovich N,et al(2004)Clinical and laboratory parameters in predicting chronic urticaria duration: a prospective study of 139 patients.Allergy;59(8):869-73;Zuberbier T,Balke M,Worm M,et al(2010)Epidemiology of urticaria: a representative cross-sectional population survey. Clin Exp Dermatol;35(8):869-73;Maurer M,Weller K,Bindslev-Jensen C,et al(2011)Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria. A GALEN task force report.Allergy;66(3):317-30)。蕁麻疹における典型的な皮膚病変は淡い隆起性病変と周囲の紅斑を伴う膨疹と発赤であり、大きさは数ミリメートルから数センチメートルにわたり、通常集合的に発生し、しばしば融合して大きな融合性病変を形成する。CSUは強い痒みを伴い、患者の幸福及び生活の質に大きな影響を及ぼし、その影響は重症冠動脈疾患と同等であることが示唆されている(Greaves MW(2003)Chronic idiopathic urticaria.Curr Opin Allergy Clin Immunol;3(5):363-8.Review;Powell RJ,Du Toit GL,Siddique N,et al(2007)BSACI guidelines for the management of chronic urticaria and angio-oedema.Clin Exp Allergy;37(5):631-50)。蕁麻疹及び蕁麻疹関連血管性浮腫の症状は、日常活動及び睡眠に悪影響を及ぼす(O’Donnell BF,Lawlor F,Simpson J,et al(1997).The impact of chronic urticaria on the quality of life.Br J Dermatol;136(2):197-201)。したがって、蕁麻疹患者を管理する場合、患者関連アウトカム(例えば、DLQI)は、治療の重要な尺度である(Kaplan A.,et al. (2013)Omalizumab in patients with symptomatic chronic idiopathic/spontaneous urticaria despite standard combination therapy. J Allergy Clin Immunol;132(1):101-9;Maurer M et al.(2013)Revisions to the international guidelines on the diagnosis and therapy of chronic urticaria.J Dtsch Dermatol Ges;Zuberbier T,Aberer W,Asero R,et al(2018)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2017 revision and update.Allergy;73(7):1393-1414)。
【0005】
CSUの病因は完全には明らかになっていない。CSU症例の最大50%は、高親和性IgE受容体(FcεRI)又はIgE抗体を含む複数の抗原に対するヒスタミン放出自己抗体と関連しており、これらの自己抗体の臨床的意義は不明であるが、疾患の病因に関与している可能性が示唆されている(Kaplan AP(2002)Chronic urticaria--new concepts regarding pathogenesis and treatment.Curr Allergy Asthma Rep;2(4):263-4;Sabroe RA,Greaves MW(2006)Chronic idiopathic urticaria with functional autoantibodies: 12 years on.Br J Dermatol;154(5):813-9.Review)。また、CSU患者の好塩基球が、自己抗体の潜在的役割とは無関係に、FcεRIαを介した脱顆粒に明確な変化がある可能性が示唆されている(Eckman JA,et al. (2008)Basophil phenotypes in chronic idiopathic urticaria in relation to disease activity and autoantibodies. J Invest Dermatol;128(8):1956-63)。
【0006】
CSUの治療は課題であり、非鎮静型(第2世代)H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)がCSUの対症療法の中心である。承認された用量のH1-AHは一部の患者に緩和をもたらすが、50%を超える患者は常用量のH1-AHに応答しない。現在の国際ガイドライン(Zuberbier T,et al.(2018)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria: the 2017 revision and update.Allergy;73(7):1393-1414)の治療アルゴリズムの第2ステップに従って、承認された用量の4倍まで用量を増してさえも、患者のかなりの部分は蕁麻疹症状のコントロールを経験しない(Maurer M,Weller K,Bindslev-Jensen C,et al(2011)Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria. A GALEN task force report.Allergy;66(3):317-30;Marrouche N,Grattan C(2014)Update and insights into treatment options for chronic spontaneous urticaria.Expert Rev Clin Immunol;10(3):397-403)。4倍の用量のH1-AHで疾患のコントロールが得られなかった患者については、国際ガイドラインの治療アルゴリズムの第3ステップでオマリズマブの追加を見込んでおり、オマリズマブで効果が不十分な後には、シクロスポリンを最終治療として用いることができる。
【0007】
蕁麻疹におけるロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の有効性に関するエビデンスレベルは低い。オマリズマブが利用可能になったことにより、(適応外)LTRAは、H1-抗ヒスタミン治療に応答しないCSUの治療にもはや推奨されなくなっている(Zuberbier 2018)。増悪がこれを必要とする場合は、第3レベルの治療レジメンにコルチコステロイドの全身投与を短期間(最大10日間)追加することができる。コルチコステロイドの慢性全身曝露に伴う副作用のため、より長期の治療は望ましくない。静注免疫グロブリンG、ダプソン、ヒドロキシクロロキン、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、メトトレキサート、及びシクロホスファミドなど、以前に使用されていた他の治療選択肢は、好ましくないベネフィット・リスクプロファイル又は有意な副作用プロファイルを有しており、もはやCSUの治療には推奨されていない(Kaplan AP(2002)Chronic urticaria--new concepts regarding pathogenesis and treatment.Curr Allergy Asthma Rep;2(4):263-4;Powell RJ,Du Toit GL,Siddique N,et al(2007)BSACI guidelines for the management of chronic urticaria and angio-oedema.Clin Exp Allergy;37(5):631-50;Zuberbier T,et al.(2018)The EAACI/GA(2)LEN/EDF/WAO Guideline for the definition,classification,diagnosis,and management of urticaria:the 2017 revision and update.Allergy;73(7):1393-1414)。
【0008】
オマリズマブは標準治療に抵抗性のCSUの治療薬として承認された治療法であり、良好なベネフィット・リスクプロファイルを示す。それはIgE分子のC3(FcεRI結合)領域内のIgE特異的エピトープに結合する遺伝子組換えヒト化IgGモノクローナル抗体であり、コントロール不良の中等症以上の喘息及び標準治療に抵抗性のCSUの治療に多くの国で必要とされている。オマリズマブがCSU患者にどのように作用するかについての正確なメカニズムは不明である。オマリズマブは、注射用液剤としてCSUに罹患している患者に投与される。
【0009】
CSUの治療に利用可能であるにもかかわらず、CSU患者のための新しい治療選択肢に対する高い医学的要望が依然として存在する。第2世代のH1-抗ヒスタミン薬で治療されたCSU患者の40%未満は、十分に応答しない(Guillen-Aguinaga et al 2016,Br J Dermatol;175(6):1153-65)。さらに、オマリズマブで治療された患者でCSUの徴候及び症状が完全にコントロールされているのは50%未満である(Kaplan et al.2016,J Allergy Clin Immunol;137(2):474-81)。
【0010】
発明の概要
本発明の目的は、慢性自発性蕁麻疹及びアトピー性皮膚炎などの好塩基球及びマストによる皮膚疾患の治療又は予防を、そのような治療を必要とする対象に対し行う新規な方法であって、治療有効量のN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドを前記対象に投与することを含む方法を提供することである。
【0011】
したがって、本明細書においては、慢性自発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド(これは以下の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩である)を、約0.5mg~約600mg、好ましくは約10mg~約200mg、又はより好ましくは約10mg~約100mgの1日用量を投与することを含む方法を開示する。
【化1】
【0012】
また、慢性自発的蕁麻疹(CSU)の治療に使用するためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩を開示し、このN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩は、約0.5mg~約600mgの1日用量で、好ましくは約10mg~約200mgの1日用量で、最も好ましくは約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】逆受身アルサス反応における式(I)の化合物の阻害効果
図2】投与5時間後の脾臓におけるBTK占有率
図3】式(I)の化合物は、低用量IgE感作後にPCAを阻害する
図4】低用量IgE感作に対する脾臓におけるBTK占有率
図5】0.5mg~600mgの単回投与用量漸増後の化合物(I)の血中濃度の経時変化
図6】10mg~400mg(q.d.投与)の反復投与漸増後の化合物(I)の血中濃度の経時変化
図7】100mg(b.i.d.)及び200mg(b.i.d.)の反復投与用量漸増後の化合物(I)の血中濃度の経時変化
図8】式(I)の化合物の60mgの単回経口投与後に観察された食事の影響
図9】式(I)化合物の単回投与後の末梢血中BTK占有率の算術平均値(標準偏差)
図10】式(I)の化合物の反復投与用量漸増の12日目における式(I)の化合物の1日総投与量に対する好塩基球活性化の阻害率の中央値
図11】反復投与用量漸増における皮膚プリックテストでの膨疹サイズの縮小
【0014】
開示の詳細な記述
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は細胞質チロシンキナーゼであり、TECキナーゼファミリーのメンバーである。BTKは、B細胞、マクロファージ、マスト細胞/好塩基球及び血小板を含む適応免疫系及び自然免疫系の選択された細胞において発現する。BTKは、B細胞抗原受容体(BCR)及びBTK阻害剤と同様に、Fcイプシロン受容体(IgEに対するFcεR1)及び活性化Fcガンマ受容体(IgGに対するFcγR)を介するシグナル伝達に不可欠である。イブルチニブのようなBTK阻害薬は、B細胞悪性腫瘍の治療薬として承認されている(Hendriks et al 2014)。近時、BTKの阻害がインビトロでのマスト細胞及び好塩基球の活性化/脱顆粒の阻害をもたらし、IgE依存性アレルギーに罹患している患者のプリックテストにおいて膨疹サイズを減少させることが実証されている(Smiljkovic et al 2017;Dispenza et al 2018)。したがって、BTKの阻害は、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、原発性シェーグレン症候群を含む様々な自己免疫性及び慢性炎症性疾患を治療するための魅力的な治療概念である(Tan et al 2013;Whang and Chang2014)。
【0015】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドは、2015年6月4日出願の国際公開第2015/079417号パンフレット(代理人整理番号PAT056021-WO-PCT)に記載されている。この化合物は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の選択的で強力な不可逆的共有結合性阻害剤である。
【0016】
本発明において、本発明者らは、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドが、CSUと比較して同様の病態メカニズムの根底にある好塩基球の活性化を、健常ボランティア及びアトピー患者において、CD63上方制御の阻害による測定で、効果的に阻害することを実証した。さらに、本発明者らは、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドが、プリックテストにおいて、膨疹サイズを減少させることを実証した。
【0017】
したがって、本発明者らは、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩を用いてCSU患者を治療するための投薬レジメンを考案した。
【0018】
定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、また単数形で使用される用語は適切であれば常に複数形を含み、その逆も同様である。
【0019】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、良好な医学的判断の範囲内で、過度の毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題若しくは合併症もなしに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0020】
本明細書に示す式はいずれもまた、化合物の非標識形態及び同位体標識形態を表すものとする。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が、選択された原子質量又は質量数を有する原子により置換されている点を除けば、本明細書に示す式によって示される構造を有する。本開示の化合物中に組み込むことのできる同位体としては、例えば、H、11C、13C、14C、15N、18F、及び36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ヨウ素、及び塩素の同位体が挙げられる。したがって、本開示には、例えば、H及び14Cなどの放射性同位体、又はH及び13Cなどの非放射性同位体が存在するものを含む、前述の同位体のいずれかのうちの1つ以上を組み込んだ化合物が含まれることを理解されたい。このような同位体標識化合物は、代謝試験(14Cによる)、反応速度試験(例えば、H若しくはHによる)、薬物若しくは基質の組織分布アッセイを含むポジトロン放出断層撮影(PET)若しくは単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)などの検出若しくはイメージング技術、又は患者の放射性治療において有用である。特に、18F又は標識化合物は、PET又はSPECT試験のために特に望ましい可能性がある。同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られる従来の技術により、例えば、以前に用いられていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、調製することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「医薬の組み合わせ」という用語は、2種以上の有効成分の使用又は混合又は組み合わせから生じる製品を意味する。本明細書で使用される場合、医薬の組み合わせには、有効成分の固定された組み合わせ及び固定されていない組み合わせの両方が含まれることを理解されたい。「固定された組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1種以上の組み合わせパートナーとが、単一の実体又は剤形で患者に同時に投与されることを意味する。このような場合の用語は、1つの単位剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、又はサシェ)における固定用量の組み合わせを指す。「固定されていない組み合わせ」又は「パーツキット」という用語はいずれも、有効成分、例えば本開示の化合物及び1種以上の組み合わせパートナー及び/又は1種以上の助剤が、別個の実体として独立して患者に同時に、並行して、又は特定の制限時間を設けずに逐次的に投与又は同時投与されることを意味し、このような投与は、特にこれらの時間間隔が、組み合わせパートナーが共同的な効果、例えば相加効果又は相乗効果を示すことを可能にする場合、患者の体内に2種の化合物の治療上有効なレベルを提供する。「固定されていない組み合わせ」という用語はまた、カクテル療法、例えば3種以上の有効成分の投与にも当てはまる。したがって、「固定されていない組み合わせ」という用語は、本明細書に記載の化合物を互いに独立して、すなわち同時に又は異なる時点で投与することができるという意味で、特に投与、使用、組成物又は製剤を定義する。用語「固定されていない組み合わせ」はまた、1つ以上の固定された組み合わせ製品と一緒に単一薬剤を使用することを包含し、各独立した製剤は、その中に含まれる有効成分の量が異なることも理解されたい。さらに、本明細書に記載される組み合わせ製品、及び用語「固定されていない組み合わせ」は、組み合わせパートナーが完全に別個の医薬剤形として、又は互いに独立しても販売される医薬製剤として投与される場合の有効成分(本明細書に記載される化合物を含む)を包含することも理解されたい。固定されていない組み合わせを使用するための指示はパッケージング、例えばリーフレットなどにおいて、又は医師及び/又は医療スタッフに提供される他の情報において提供されるか、又は提供され得る。この場合、独立した製剤、又は製剤、製品若しくは組成物のパーツは、同時に又は時系列的にずらして投与することができる、すなわち、パーツキットの個々のパーツを、それぞれ異なる時点で、且つ/又はパーツキットの任意のパーツについて等しい又は異なる時間間隔で投与することができる。特に、投薬のための時間間隔は、パーツの組み合わせ使用により治療された疾患に対する効果が、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩のみの使用によって得られる効果よりも大きくなるように選択され、したがって、本明細書に記載される医薬の組み合わせにおいて使用される化合物は共に活性である。医薬の組み合わせとして投与される第2の薬剤に対する、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の総量の比は、治療される特定の患者亜集団の要求又は一人の患者の要求(これらの要求は、例えば、患者の年齢、性別、体重などに起因し得る)により良好に応えるために変更又は調節することができる。
【0022】
「同時投与」又は「組み合わせ投与」などという用語は、本明細書中で利用される場合、本明細書に記載される1種以上の化合物を、選択された組み合わせパートナーと共に、それを必要とする単一対象(例えば、患者又対象)へ投与することを包含することを意味し、また同じ投与経路及び/又は同じ時間にそれらの化合物を必ずしも投与されるわけではない治療レジメンを含むものとする。
【0023】
「医薬組成物」という用語は、本明細書では、温血動物、例えば哺乳動物又はヒトに、その温血動物に影響を及ぼす特定の疾患又は病態を予防又は治療するために投与される少なくとも1種の有効成分又は治療剤を含有する混合物(例えば、溶液又はエマルション)を指すものと定義される。
【0024】
本開示の化合物(すなわち、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩)の「治療有効量」という用語は、対象(対象の患者)の生物学的又は医学的応答、例えば酵素若しくはタンパク質活性の低下若しくは阻害を誘発する、又は症状を改善し、病態を緩和し、疾患の進行を遅延若しくは遅らせ、若しくは疾患などを予防する、本開示の化合物の量を指す。化合物、医薬組成物、又はそれらの組み合わせの治療に有効な用量は、患者の種、体重、年齢、性別、及び個々の病態、障害若しくは疾患、又は治療を受けるその重症度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床医又は獣医は、障害又は疾患の進行を予防、治療、又は阻害するのに必要な有効成分のそれぞれの有効量を容易に決定することができる。
【0025】
投薬の頻度は、使用する化合物、及び治療又は予防する特定の病態に依存して変わり得る。一般に、有効な治療を提供するのに十分な最小投与量の使用が好ましい。患者は一般に、治療又は予防される病態に好適なアッセイを使用して治療有効性を追跡され得、このことは当業者にはよく知られているであろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「担体」又は「薬学的に許容される担体」には、当業者に知られているであろう、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬物、薬物安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素など、及びこれらの組み合わせが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照)。任意の従来の担体は、活性成分に不適合である場合を除いて、治療用組成物又は医薬組成物でのその使用が考えられる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、動物を指す。通常、動物は哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えば、ヒト(男又は女))、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、トリなども指す。特定の実施形態では、対象は霊長類である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。「対象」という用語は、それがヒトを指す場合、「患者」と互換的に使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、対象が治療「を必要とする」のは、そのような対象が、そのような治療から生物学的に、医学的に又は生活の質において恩恵を受ける場合である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「患者の集団」という語句は、患者の一群を意味するために使用される。
【0030】
「含む(comprising)」という用語には、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」が包含され、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなり得るか、又は何らかの追加されるものを含み得る(例えば、X+Y)。
【0031】
数値xに関連する「約」という用語は、例えば、+/-10%を意味する。数値範囲又は数値リストの前で用いられる場合、「約」という用語は、各数値に順次適用され、例えば「約1~5」という語句は、「約1~約5」と解釈すべきであり、又は例えば「約1、2、3、4」という語句は、「約1、約2、約3、約4など」と解釈すべきである。
【0032】
「治療」又は「治療する」という用語は、本明細書では、本開示による化合物(式(I)の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩、又は前記化合物を含む医薬組成物を対象又は対象から単離された組織若しくは細胞系に適用又は投与することと定義される。ここで、対象は、特定の疾患(例えば、CSU)、疾患(例えば、CSU)に関連する症状、又は疾患(例えば、CSU)発生の素因を有し(適用可能な場合)、この目的は、疾患の治癒(適用可能な場合)、発症の遅延、重症度低下、軽減、1つ以上の症状の寛解、疾患の改善、疾患に関連する何らかの症状又は疾患の発生の素因の低減又は改善である。「治療」又は「治療する」という用語は、疾患を有する疑いのある患者、及び病気の患者又は疾患若しくは医学的病態に罹患していると診断された患者を治療することを含み、また臨床的再発の抑制を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「以前にCSUの全身治療により治療されたことがない」又は「ナイーブ」という語句は、CSU用の全身性薬剤、例えば、シクロスポリンA、モンテルカスト、シクロスポリン、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、生物学的薬剤(例えば、オマリズマブ)などで以前に治療されことがないCSU患者を指す。全身性薬剤(すなわち、経口、注射などにより投与される薬剤)は、全身性薬剤が患者に送達されたときに全身(systemic)(全身(whole body))作用を有するという点で局所剤(例えば、外用剤及び光線療法剤)と異なる。開示された方法、レジメン、使用、キット及び医薬組成物のいくつかの実施形態では、患者は、CSUの全身治療薬を以前に投与されたことがない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「CSU用の全身性薬剤で以前に治療されたことがある」という語句は、以前に全身性薬剤を用いたCSU治療を受けたことがある患者を意味するために使用される。このような患者には、H1-抗ヒスタミン薬、又はオマリズマブなどの生物製剤で以前に治療された患者、及びシクロスポリンなどの非生物製剤で以前に治療された患者が含まれる。本開示のいくつかの実施形態では、患者は、CSU用の全身性薬剤を以前に投与されたことがある。いくつかの実施形態では、患者は、CSU用の全身性薬剤(例えば、シクロスポリン)を以前に投与されたことがあるが、患者は、CSU用の全身性生物学的製剤(すなわち、生物により産生された薬剤、例えば抗体、受容体デコイなど)(例えば、オマリズマブ)を投与されたことがない。この場合、患者は、「生物製剤ナイーブ」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、患者は、生物製剤ナイーブである。
【0035】
本明細書で使用される場合、患者に関連して「選択する」及び「選択される」は、予め決められた基準を有する特定の患者をベースとする(起因する)より大きい患者群から特定の患者が特定的に選択されることを意味するものとして用いられる。同様に、「選択的に治療する」は、特定の疾患を有する患者に治療を提供することを指し、その患者は、予め決められた基準を有する特定の患者をベースとするより大きい患者群から特定的に選択される。同様に、「選択的に投与する」とは、予め決められた基準を有する特定の患者をベースとする(起因する)より大きい患者群から特定的に選択された患者に薬物を投与することを指す。「選択する」、「選択的に治療する」、及び「選択的に投与する」とは、より大きい群における患者のメンバーシップのみに基づいて標準的治療レジメンを提供するのではなく、患者の個人歴(例えば、以前の治療介入、例えば生物製剤による以前の治療)、生物学的因子(例えば、特定の遺伝子マーカー)及び/又は症状(例えば、特定の診断基準を満たさないもの)に基づいて個別治療を患者に提供することを意味する。本明細書で用いられている、治療方法に関連して選択するとは、特定の基準を有する患者の偶発的治療を指すのではなく、特定の基準を有する患者に基づいてその患者に治療を施す意図的選択を意味する。そのため、選択的治療/投与は、個人歴、疾患の症状及び/又は生物学的因子にかかわらず、特定の疾患を有する全ての患者に特定の薬物を送達する標準的治療/投与と異なる。いくつかの実施形態では、患者は、CSUを有することに基づいて治療が選択される。
【0036】
発明の実施形態
慢性蕁麻疹と本発明による治療の有効性
開示したBTK阻害剤、すなわち式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、インビトロ、エクスビボで使用されてもよく、又は医薬組成物に組み込まれて、CSU患者(例えば、ヒト患者)を治療するためにインビボで投与されてもよい。
【0037】
蕁麻疹は、痒みを伴う蕁麻疹及び/又は血管性浮腫を特徴とする異種の疾患群である。
【0038】
慢性蕁麻疹は、6週間を超えて継続的又は断続的に出現する蕁麻疹と定義される(Maurer,et al 2013,Bernstein,et al 2014)。慢性蕁麻疹はさらに次の2つのサブグループに分けられる:慢性自発性蕁麻疹(CSU)及び慢性刺激誘発型蕁麻疹(IU)。後者には、熱蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫蕁麻疹などの物理性蕁麻疹、及びコリン性蕁麻疹などの特殊な亜型が含まれる。CSUは既知又は未知の原因により、痒みを伴う膨疹、血管性浮腫、又はその両方が6週以上自発的に出現するものと定義されている(Zuberbier,et al 2018)。しばしば観察される症候性皮膚描記症性蕁麻疹とCSUの組み合わせなど、CSUと刺激誘発型の蕁麻疹の両方が組み合わされることもある。
【0039】
CSU治療の有効性は、CSU疾患状態及び/又はCSU臨床反応を測定する様々な既知の方法及びツールを使用して評価される。例としては、例えば、蕁麻疹患者日誌(UPDD)、血管浮腫活動性スコア(AAS)、週間蕁麻疹重症度スコア(HSS7)、週間掻痒重症度スコア(ISS7)、週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)、及び皮膚科関連QOL評価指標(Dermatology Life Quality Index)(DLQI)により判断される健康関連の生活の質の改善が挙げられる。
【0040】
蕁麻疹患者日誌(UPDD)
UPDDには、掻痒の重症度と蕁麻疹の数を1日2回評価する蕁麻疹活動性スコア(UAS)、レスキュー薬の使用、睡眠及び活動の妨害、血管性浮腫の発生、その管理、医療従事者(HCP)への電話の記録が含まれる。
構成要素を表1に示し、関連する週間スコアを以下に記載する。
【0041】
【表1】
【0042】
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、患者のUPDDスコアは改善する。
【0043】
週間蕁麻疹重症度スコア(HSS7)
蕁麻疹(膨疹)重症度スコアは、蕁麻疹の数によって定義され、0(なし)から3(12超の蕁麻疹/12時間;表2)の尺度で、対象が電子日誌に1日2回記録する。週間スコア(HSS7)は、来院前7日間の1日平均スコアを加算して算出する。したがって、週間スコアのあり得る範囲は0~21である。
【0044】
【表2】
【0045】
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、蕁麻疹重症度スコア(HSS7)は少なくとも5ポイント改善する。さらに、プラセボ群と比較した場合、治療群とプラセボ群との間の差は、少なくとも4ポイント、好ましくは少なくとも5ポイントである。一実施形態では、患者が本開示の方法に従って治療された場合、蕁麻疹重症度スコア(HSS7)は6未満、好ましくは4未満、好ましくは2未満、最も好ましくはHSS7スコアは0である。
【0046】
週間掻痒重症度スコア(ISS7)
掻痒の重症度は、0(なし)から3(重症)(表3)の尺度で、対象が電子日誌に1日2回記録する。週間スコア(ISS7)は、来院前7日間の1日平均スコアを加算して算出する。したがって、週間スコアのあり得る範囲は0~21である。
【0047】
【表3】
【0048】
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、掻痒重症度スコア(ISS7)は少なくとも5ポイント改善する。さらに、プラセボ群と比較した場合、治療群とプラセボ群との間の差は、少なくとも4ポイント、好ましくは少なくとも5ポイントである。一実施形態では、患者が本開示の方法に従って治療された場合、掻痒重症度スコア(HSS7)は6未満、好ましくは4未満、好ましくは2未満、最も好ましくはISS7スコアは0である。
【0049】
週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)
UAS7は、HSS7スコアとISS7スコアの合計である。
週間UAS7スコアのあり得る範囲は0~42(最高活動性)である。
いくつかの実施形態では、CSU患者は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療に応答して、UAS7の改善を達成する。
好ましい実施形態では、CSU患者は、本発明の方法で治療された場合、4週目まで、又は12週目までにUAS7≦6を特徴とする、蕁麻疹及び掻痒の減少に至る。
最も好ましい実施形態では、本発明の方法で治療された場合、CSU患者は、12週目までに、UAS7=0として評価される、蕁麻疹及び掻痒の完全な消失に至る。
さらに、プラセボ群と比較した場合、治療群とプラセボ群との間の差は、少なくとも8ポイント、好ましくは少なくとも10ポイントである。
【0050】
週間睡眠妨害スコア
睡眠妨害は、電子日誌において、朝に1日1回、対象によって評価される。それは、0から3の尺度でスコア付けされる。週間スコアは、0~21の範囲内である(表4)。
【0051】
【表4】
【0052】
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、睡眠妨害スコアは少なくとも5ポイント改善する。好ましい実施形態では、患者が本開示の方法に従って治療された場合、睡眠妨害スコアは6未満、好ましくは4未満、好ましくは2未満、最も好ましくは睡眠妨害スコアは0である。
【0053】
週間活動妨害スコア
活動妨害は、電子日誌において、夜に1日1回、0~3の尺度で対象によって評価される。日常活動には、仕事、学校、スポーツ、趣味、及び友人及び家族との活動が挙げられる。週間活動妨害スコアは、0~21の範囲内である(表5)。
【0054】
【表5】
【0055】
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、活動妨害スコアは少なくとも5ポイント改善する。好ましい実施形態では、患者が本開示の方法に従って治療された場合、週間活動妨害スコアは6未満、好ましくは4未満、好ましくは2未満、最も好ましくは週間活動妨害スコアは0である。
【0056】
H1-抗ヒスタミンレスキュー薬の使用
掻痒や蕁麻疹などの状態をコントロールするために過去24時間の間に使用したレスキュー薬の錠剤数を、対象が電子日誌に1日1回夜に記録する。レスキュー薬の1日当たりの用量は、1日当たりの錠剤数×各錠剤の用量として算出し、次いで、7日間の1日当たりの用量の合計としてレスキュー薬の1週間当たりの投与量を算出する。
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、1週間当たりの用量又はレスキュー薬の数が減少する。この実施形態の一態様では、レスキュー薬の使用はもはや必要ではない。
【0057】
医師又は看護師への電話回数
対象の皮膚の状態による医師、看護師又はナース・プラクティショナーへの電話の回数は、対象が電子日誌に1日1回記録する。
【0058】
血管性浮腫活動性スコア(AAS)
AASは、対象が、夜に1日1回、電子日誌に記録する。この検証済みツールは、血管性浮腫の発生及び重症度を評価するものである(Weller et al(2013),Allergy 68(9):1185-92)。血管浮腫の発生は、対象が、夜に1日1回、電子日誌に記録する。これらの血管性浮腫の発生に関連する処置及び/又は治療についても、以下のように電子日誌に記録する(複数回答可)。
何もしなかった
処方薬又は市販薬を服用した
かかりつけの医師、看護師又はナース・プラクティショナーに電話した
医師、看護師又はナース・プラクティショナーに診てもらいに行った
病院の緊急治療室に行った
入院した
【0059】
対象が「いいえ」で冒頭の質問に答えた場合、この日のAASスコアは0である。冒頭の質問に「はい」と答えた場合は、対象は、持続期間、重症度及び日常機能への影響、並びに血管性浮腫の外観に関する質問に引き続き答える。全ての回答項目に、0~3のスコアを割り当てる。この試験におけるAASスコアを週間AAS(AAS7)として報告する。AAS7スコアのあり得る最小値及び最大値は0~105である。
スコアが高いほど重症度が高いことを意味する。
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、患者のAAS7スコア12週目までに減少し、好ましくはAAS7スコアは0になる。この実施形態の別の態様においては、患者は数週間にわたって、例えば、少なくとも4週間の治療期間にわたって、少なくとも8週間の治療期間にわたって、又は全12週間の治療期間にわたって、AAS7スコアゼロを達成する。
いくつかの実施形態では、CSU患者の集団が本開示の方法に従って治療された場合、患者は4週目から12週目までの95.5%以上で血管性浮腫のない日(AAS=0)を達成する。さらに、プラセボ群と比較した場合、投与群とプラセボ群との差は少なくとも6%である。
【0060】
皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)
皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)は皮膚疾患特異的生活の質(QoL)尺度である(Finlay et al 1994)。16歳以上の患者についてDLQIを検証した。対象は、皮膚症状、並びに過去7日間で考えた生活の様々な面での皮膚状態の影響を評価する。
総合スコアを算出し、0~30(スコアが高いほど疾患関連QoLが悪いことを意味する)の範囲となる。ドメインスコアは以下に対し算出される:症状及び感覚(0~6)、日常活動(0~6)、レジャー(0~6)、仕事及び学校(0~3)、人間関係(0~6)、治療(0~3)。全体のDLQIスコア範囲をスコアバンドに分割し(Hongbo et al 2005)、患者に対する意味/関連性の点から以下の通り確認した。
【0061】
【表6】
【0062】
10を超えるDLQIスコアは、患者の生活に非常に大きな影響を与え、
例えば乾癬における生物学的処方剤の正当化に関連してくる(Kaplan et al 2005)。DLQI質問票は、無作為化時(1日目)、4週目(29日目)及び12週目(85日目)に記入する。DLQIは他のあらゆる評価の前及び式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の前に完了されるべきである
【0063】
いくつかの実施形態では、CSU患者は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療に応答して、DLQIの改善を達成する。いくつかの実施形態では、CSU患者は、治療の4週目又は12週目に0又は1のDLQIスコアを達成する。
【0064】
慢性蕁麻疹指数(CU指数)
CU-Index(登録商標)は市販のインビトロ好塩基球ヒスタミン放出アッセイであり、患者の血清をドナー好塩基球と混合し、放出されたヒスタミンレベルを定量的酵素免疫アッセイによって測定するものである。10以上のCU-Index値は、患者が疾患の自己免疫基盤(IgE、FcεRI、又は抗FcεRIIに対する自己抗体;陽性結果はどの自己抗体であるかは示さない)、又は代替ヒスタミン放出因子を有することを示す(Biagtan MJ,Viswanathan RK,Evans MD,et al(2011)Clinical utility of the Chronic Urticaria Index.J Allergy Clin Immunol;127(6):1626-7)。
【0065】
いくつかの実施形態では、CSU患者は式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩による治療に応答して、CSU病因関連抗体(例えば、IgE、FcεRI、又は抗FcεRIIに対する自己抗体)の力価の減少を経験する。
【0066】
別の実施形態では、CSU患者は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩による治療に応答して、CU指数値の減少を経験する。いくつかの実施形態において、CSU患者は、治療の4週目、又は12週目に、CU指数が10未満へ減少する。
【0067】
いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも4週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも48週間、又は少なくとも2年間、特許請求の範囲に記載された方法に従ってCSUの治療を受ける。
【0068】
好ましい実施形態では、患者は従来の全身CSU療法(例えば、第2世代H1-抗ヒスタミン薬)に対する応答が以前不十分であった。
【0069】
別の好ましい実施形態では、患者は中等度から重度のCSUを有する成人患者(18歳以上)である。中等度から重度のCSUは、7日間の蕁麻疹活動性スコア(UAS7)が16以上、且つ/又は7日間の蕁麻疹重症度スコア(HSS7)が8以上である患者と定義される。
【0070】
いくつかの実施形態では、特許請求の範囲に記載される方法による治療に応答して、患者は、UAS7スコアリングによる測定で、最初の投薬から4週間で、又は最初の投薬後12週間目には、蕁麻疹掻痒の急速な減少を経験する。好ましい実施形態では、患者は、4週目又は12週目にUAS7スコアが6以下となる、蕁麻疹及び掻痒の減少を経験する。最も好ましい実施形態では、患者は、4週目又は12週目に蕁麻疹及び掻痒の完全な消失(UAS7=0)を経験する。
【0071】
いくつかの実施形態では、特許請求の範囲に記載される方法による治療に応答して、患者は、AAS7スコアリングによる測定で、最初の投薬から4週間で、又は最初の投薬から12週間後に、血管性浮腫の頻度及び重症度の急速な減少を経験する。一実施形態では、患者は、12週間の治療のうちの少なくとも8週間にわたって血管性浮腫の完全な消失(これは、12週間の治療の少なくとも8週間の間、AAS7スコアがゼロと測定される)を経験する。好ましい実施形態では、患者は、全治療期間にわたって血管性浮腫が完全に消失していることを経験する(これは、12週間の間、AAS7スコアがゼロと測定される)。
【0072】
いくつかの実施形態では、特許請求の範囲に記載される方法による治療に応答して、患者はCSU病因関連抗体(IgE、FcεRI、又は抗FcεRIIに対する自己抗体)の力価の減少、及び/又はCU指数値の10未満への減少を経験する。
【0073】
医薬組成物
BTK阻害剤、すなわち式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体と組み合わせた場合に、医薬組成物として使用することができる。このような組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野において知られる他の材料を含有し得る。担体の特性は投与経路に依存する。本開示の方法に用いられる医薬組成物はまた、特定の標的とする障害の治療用の追加の治療剤を含有し得る。例えば、医薬組成物はまた、抗炎症剤又は抗掻痒剤を含み得る。このような追加の因子及び/又は薬剤は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩との相乗効果を生じさせるために、又は式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩によって引き起こされる副作用を最小限に抑えるために、医薬組成物に含まれ得る。好ましい実施形態では、本開示の方法で使用するための医薬組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、約5mg、約10mg、約20mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で含む。
【0074】
経口投与に好適な組成物は、有効量の本発明の化合物を、錠剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散可能な散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤の形態で含む。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物を製造するために当該技術分野で知られる任意の方法に従って調製され、また、そのような組成物は、薬学的に洗練され口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含有することができる。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に好適な毒性のない薬学的に許容される賦形剤と混合して含有してもよい。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性な希釈剤;顆粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;並びに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、又は胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続作用をもたらすように、既知の技術によってコーティングされる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用することができる。経口使用のための製剤は、活性成分が不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、或いは活性成分が水又は油性媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0075】
本開示の方法に用いられる医薬組成物は従来の方式で製造され得る。一実施形態では、医薬組成物は経口投与用として提供される。例えば、本医薬組成物は、次のものと一緒に有効成分を含む錠剤又はゼラチンカプセル剤である:
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン;
b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウム若しくはカルシウム塩、及び/又はポリエチレングリコール;錠剤用に、また
c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン;必要に応じて
d)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、又は発泡性混合物;並びに/或いは
e)吸収剤、着色剤、香料及び甘味料。
錠剤は、当該技術分野で知られる方法によりフィルムコーティングされても又は腸溶コーティングされてもよい。
【0076】
組み合わせ:
本開示の治療又は使用の方法のいくつかを実施する際には、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が患者、例えば哺乳動物(例えばヒト)に投与される。開示された方法は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を用いるCSU患者の治療を提供するものであると理解されるが、治療は必ずしも単独療法であるとは限らない。実際、患者が式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩による治療のために選択されても、式(I)の化合物は本開示の方法に従って、単独で、又はCSU患者を治療するための他の薬剤及び治療法と組み合わせて、例えば、少なくとも1種の追加のCSU薬剤と組み合わせて投与され得る。1種以上の追加のCSU薬剤と同時投与される場合、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、他の薬剤と同時に、又は逐次的に投与され得る。逐次的に投与する場合、担当医は、他の薬剤との組み合わせにおける式(I)の化合物の適切な投与順序、及び共送達に適切な投与量を決定するであろう。
【0077】
CSUの治療時、様々な治療法を本開示の式(I)の化合物と有利に組み合わせることができる。このような治療法としては、局所治療(クリーム[非ステロイド又はステロイド]、洗浄剤、消毒薬)、全身治療(例えば、生物製剤、抗生物質、又は化学物質による)、及び消毒薬、光力学療法、及び外科的介入(レーザー、ドレイニング又は切開、切除)が含まれる。
【0078】
開示された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と共に使用するための局所CSU剤の非限定的な例としては、過酸化ベンゾイル、局所ステロイドクリーム、クリンダマイシン、ゲンタマイシン及びエリスロマイシンなどのアミノグリコシド群の局所抗生物質、レゾルシノールクリーム、ヨウドスクラブ、及びクロルヘキシジンが挙げられる。
【0079】
開示された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と共に使用するための全身治療において使用されるCSU薬剤の非限定的な例としては、IgE拮抗薬(オマリズマブ、リゲリズマブ)が挙げられる。
【0080】
CSUの治療時に、開示された式(I)の化合物と組み合わせて使用するためのさらなるCSU薬剤としては、シクロスポリン及びコルチコステロイド(注射可能又は経口)が挙げられる。
【0081】
開示された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と共に共送達される上記CSU薬剤の適切な投与量は、当業者であれば分かるであろう。
【0082】
本発明のキット:
本発明はまた、CSUを治療するためのキットを提供する。このようなキットは、BTK阻害剤、例えば式(I)の化合物又はその医薬組成物を含む。一実施形態では、キットは2つ以上の別個の医薬組成物を含み、そのうちの少なくとも1つは式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する。一実施形態では、キットは、容器、分割されたボトル、又は分割された金属箔の袋などの、前記組成物を別々に保持する手段を含む。このようなキットの例には、錠剤、カプセル剤などの包装に通常用いられているような、ブリスターパックがある。
【0083】
本開示のキットは、異なる剤形、例えば、経口及び非経口で投与するために、別々の組成物を異なる投与間隔で投与するために、又は互いに対して別々の組成物を漸増するために使用され得る。服薬遵守を助けるために、本開示のキットは通常、投与のための指示書を含む。
【0084】
本発明の組み合わせ療法において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他のCSU薬剤(本明細書で定義されている)は、同一又は異なる製造業者によって製造及び/又は製剤化されていてもよい。さらに、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び他のCSU薬剤は、(i)組み合わせ製品を医師へ提供する前に(例えば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他のCSU薬剤を含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身によって(又は医師の指導の下に);(iii)患者自身において、例えば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他のCSU薬剤を逐次的に投与する間に、組み合わせ療法にまとめることができる。
【0085】
追加の実施形態
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg~約200mg/日の用量で患者に(好ましくは経口で)都合よく投与される。
【0086】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg~約200mg/日の1日用量で患者に(好ましくは経口で)都合よく投与される。
【0087】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約20mg、約25mg、約35mg、約50mg、約100mg又は約200mgの1日用量で投与される。
【0089】
他の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約100mgの1日用量で投与される。
【0090】
他の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約50mgの1日用量で投与される。
【0091】
他の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約35mgの1日用量で投与される。
【0092】
他の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約25mgの1日用量で投与される。
【0093】
他の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約20mgの1日用量で投与される。
【0094】
一実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される。
【0095】
一実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される。
【0096】
特定の患者、例えば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療に対する治療4週目又は12週目までの応答が不十分な応答(例えば、本明細書に開示されるCSUスコアリングシステムのいずれか、例えば、上記請求項のいずれかに記載の方法であって、前記患者は十分な応答による測定で、応答維持を達成する方法(蕁麻疹及び掻痒重症度スコアUAS7)及び皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)などにより測定される)を示したCSU患者には、用量増加が必要となり得ることは理解されよう。また、特定の患者、例えば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療に対し、有害事象又は有害反応を示すCSU患者には、用量低減が必要となり得ることも理解されよう。したがって、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は、約10mg、約20mg、約25mg、約50mg、又は約100mg未満であり得る。
【0097】
投与のタイミングは、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の初回投与日(「ベースライン」としても知られる)から一般に判断される。投与のタイミングは、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の初回投与日(「ベースライン」としても知られる)から一般に判断される。
【0098】
しかしながら、医療提供者は、異なる命名規約を用いて投与スケジュールを特定することがよくある。明確化のために、本明細書に開示されるように、投与の最初の日を1日目と呼ぶ。しかしながら、この命名規約は、単に一貫性を保つために用いられるものであり、限定するものと解釈すべきでないことは当業者であれば理解されよう。すなわち、1日投与は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の一日用量を投与することであり、医師は特定の日を「0日目」又は「1日目」と呼び得る。
【0099】
本明細書においては、慢性自発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、約10mg~約200mgの用量で投与することを含む方法を開示する。
【0100】
本明細書においては、慢性自発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、約10mg~約200mgの1日用量で投与することを含む方法を開示する。
【0101】
また、本明細書においては、CSUの治療に使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であって、その化合物の1日用量は約10mg~約200mgであることを開示する。
【0102】
本開示の方法、使用及びキットの一実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【0103】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約20mg、約25mg、約35mg、約50mg、約100mg又は約200mgの1日用量で投与される。
【0104】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約100mgの1日用量で投与される。
【0105】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約50mgの1日用量で投与される。
【0106】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約35mgの1日用量で投与される。
【0107】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約25mgの1日用量で投与される。
【0108】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約20mgの1日用量で投与される。
【0109】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される。
【0110】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される。
【0111】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者はCSU用全身性薬剤で既に治療されたことがある。この実施形態の一態様では、全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、及びロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者はCSU用全身性薬剤で治療されたことがない。
【0113】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者は中等度から重度のCSUを有する、すなわち、患者はUAS7スコアが16以上で、且つ/又はHSS7スコアが8以上である。
【0114】
本開示の方法、使用、及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者は、それらの疾患の自己免疫基盤(IgE、FcεRI、又は抗FcεRIIに対する自己抗体)又は代替ヒスタミン放出因子を有する。
【0115】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者は、10以上のCU指数を有する。この実施形態の特定の態様では、患者は治療の4週目又は12週目までに、CU指数が10未満まで減少する。
【0116】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は以下の基準の少なくとも1つに従って選択される:
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者は、16以上のUAS7スコアを有する;
b)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、患者は、8以上のHSS7スコアを有する。
【0117】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は成人である。
【0118】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は治療の4週目又は12週目までに、以下のうちの少なくとも1つを達成する:
a)UAS≦6で判断される蕁麻疹及び掻痒の減少、又は蕁麻疹及び掻痒の完全な消失(UAS7=0);
b)皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1;
c)血管性浮腫活動性スコア(AAS7)がゼロで判断される血管性浮腫がないこと。
【0119】
本開示の方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、治療の完了後4週目に、完全な蕁麻疹及び掻痒の応答([UAS7]=0)及び/又は皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1及び/又は血管性浮腫の消失の継続(AAS7=0)によって判断される持続的応答を達成する。
【0120】
さらなる実施形態の列挙
1. 慢性特発性蕁麻疹(CSU)を治療する方法であって、それを必要とする対象に、約10mg~約200mgのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量を投与することを含む方法。
2. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約10mg~約100mgである、実施形態1に記載の方法。
3. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約100mgである、実施形態1に記載の方法。
4. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約50mgである、実施形態1に記載の方法。
5. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約35mgである、実施形態1に記載の方法。
6. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約25mgである、実施形態1に記載の方法。
7. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩の1日用量は約20mgである、実施形態1に記載の方法。
8. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される、実施形態1に記載の方法。
9. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される、実施形態1に記載の方法。
10. 治療の前に、対象は以前にCSU用の全身性薬剤で治療されたことがある、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
11. 全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、及びロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態10に記載の方法。
12. 治療の前に、対象は以前にCSU用の全身性薬剤で治療されたことがない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
13. 対象は中等度から重度のCSUを有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
14. 対象は、以下の基準のうちの少なくとも1つに従って選択される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法:
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、対象は、16以上のUAS7スコアを有する;
b)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、対象は、8以上のHSS7スコアを有する。
15. 対象は成人である、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
16. 前記対象は、治療の4週目又は12週目までに、以下のうちの少なくとも1つを達成する、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法:
a)UAS≦6で判断される蕁麻疹及び掻痒の減少、若しくは蕁麻疹及び掻痒の完全な消失(UAS7=0);又は
b)皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1;
c)血管性浮腫活動性スコア(AAS7)がゼロで判断される血管性浮腫がないこと。
17. 前記対象は、治療の完了後4週目に、完全な蕁麻疹及び掻痒の応答([UAS7]=0)及び/又は皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1及び/又は血管性浮腫の消失の継続(AAS7=0)によって判断される持続的応答を達成する、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
18. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩は医薬製剤に配合され、前記医薬製剤は薬学的に許容される担体をさらに含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
19. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその薬学的に許容される塩は、約05~3時間のTmaxを有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
略語
AE 副作用
AUC 曲線下面積
AUCinf 時間ゼロから無限大までの血漿中(又は血清中又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量×時間/体積)
AUClast 時間ゼロから最終測定可能時点までの血漿中(又は血清中又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量×時間/体積)
AUCtau 時間ゼロから投与間隔tauの終わりまでの血漿中(又は血清中又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量×時間/体積)
b.i.d. 1日2回
BMI ボディマスインデックス
CL/F 投与後の血漿(又は血清若しくは血液)からの見かけの全身(又は全身)クリアランス(質量/体積)
Cmax 薬物投与後の最大濃度
CSU 慢性自発性蕁麻疹
ECG 心電図
Emax プラセボと比較した効果の最大変化
FcγR Fcガンマ受容体
FcεR Fcアルファ受容体
MRT 平均滞留時間
PK 薬物動態
PD 薬力学
PRO 患者報告アウトカム
QoL 生活の質
q.d. 1日1回
QTcF フリデリシアの式により補正されたQT間隔
SAE 重篤な副作用
Tmax 薬物投与後の最大濃度到達時間リミット
T1/2 終末相消失半減期
Tlast PKプロファイルの最終濃度測定可能時点
Vz/F 投薬後の終末相における見かけの分布容積(容積)
【実施例
【0122】
実施例1:前臨床試験
実施例1a:BTK占有率及び前臨床PK/PD関係
化合物(I)のような不可逆的BTK阻害剤のインビボPD効果は、阻害剤による共有結合的BTK占有の程度及び持続時間によって決定される。式(I)の化合物(化合物(I)ともいう)で治療した後のBTK占有率を、エクスビボイムノアッセイで測定した。非占有BTKタンパク質の画分を共有結合性ビオチン化BTKプローブとインビトロでインキュベーションした後に分析した。これは化合物(I)とプローブは相互に排他的な様式でBTKに結合することによる。選択された組織の溶解物中の非占有BTK及び総BTK相対タンパク質レベルを決定し、非占有BTKレベルを、同じサンプル中の総BTKタンパク質レベルに対して正規化した。
【0123】
雌ラットにおいて、3mg/kgの化合物(I)の単回経口投与は完全な脾臓BTK占有をもたらし、1mg/kgの投与は76%~81%の占有をもたらしたが、0.3mg/kgの単回投与後は、30%の部分的占有に到達しただけであった。血液中のBTK占有率は、脾臓で観察されたものと同じレベルであった。実験データから、化合物(I)の短時間の一時的な全身曝露は、1~3mg/kgの低経口用量でいくつかの組織において完全なBTK占有を達成するのに十分であることが明らかであった。1mg/kg投与後の化合物(I)の血液曝露量は、0.5時間で49.1nMに達し、投与5時間後は5.6nMであった。この極めて低い一時的な全身曝露量は、不可逆的阻害薬に典型的なPK/PDモデルと一致している。
【0124】
化合物(I)の単回経口投与後のラット及びマウスで、BTK占有期間を、脾臓、血液、リンパ節及び肺について測定した。ラットにおいて、BTK占有率は、血液中で約87時間の長い半減期を示した。ラット脾臓におけるBTK占有率の推定半減期は、血液中よりもかなり短く、わずか約5時間である。この代謝回転速度の違いは、末梢血中のBTK発現B細胞と単球は静止状態にあり、脾臓と比較して代謝的に比較的不活性であるという事実を反映している可能性がある。血液中のBTK占有率がより長く持続することは以前に報告されている(Advani et al 2013,J Clin Onc;31(1):88-94)。分析した他の全ての組織(肺及びリンパ節)は、脾臓と同様のBTK代謝回転及び占有半減期を示した。
【0125】
実施例1B:皮膚過敏症の急性マウスモデルにおけるインビボ有効性
FcγR及びFcεR誘発過敏症に対する化合物(I)の効果を2種類の急性皮膚マウスモデルで評価した。マウスにおける化合物(I)のPKがあまり好ましくないため、化合物を1日2回投与した。
【0126】
単回投与後の皮膚におけるPD効果の持続時間を、マスト細胞FcγRIII介在性炎症の逆受身アルサス(RPA)モデルで評価した。このRPAモデルでは、ポリクローナルIgG抗体を真皮に局所的に注射し、可溶性抗原をi.v.注射によって全身に与える。このマウスモデルでは、マスト細胞FcγRIIIが主要な役割を有し、補体系による寄与はわずかである(Hazenbos et al.1998,journal of immunology,161(6),pp.3026;Hazenbos et al.,Immunity,1996,5(2),pp.181;Koehl&Gessner 1999,Molecular immunology,36(13-14),pp.893;Sylvestre&Ravetch 1996,Immunity,5(4),pp.387;Sylvestre&Ravetch 1994,Science,265(5175),pp.1095)。遺伝的BTK欠損マウスは、受動アルサス皮膚反応において保護されることが示されている(Fiedler et al.2011,blood,117(4),pp.1329)。
【0127】
RPA応答の誘導の2時間前に与えられた、3、10、30及び100mg/kgの単回投与での化合物(I)による経口治療は、用量依存的に皮膚の腫脹を減少させた。30及び100mg/kg(それぞれ73.0及び61.2%阻害)で最大効果が認められ、3及び10mg/kg(それぞれ22.9及び29.2%阻害)で部分的効果が観察された(図1)。投与5時間後に最終的に観察された脾臓のBTK占有率は皮膚腫脹に対する有効性と相関しており、68.1%(3mg/kg)、82.1%(10mg/kg)、91.3%(30mg/kg)、99.3%(100mg/kg)であった。(図2
【0128】
このモデルでは、アルサス反応を誘発する2時間前に化合物(I)を投与した場合、皮膚腫脹の抑制が最大であった。効果は徐々に減少し、アルサス反応が化合物(I)投与の45時間後又はそれ以降に誘発された場合、ベースラインに達した。これは、皮膚におけるBTK占有が脾臓、肺及びリンパ節のような同様の時間経過を示すことを示唆している。
【0129】
急性皮膚過敏症に対する化合物(I)の効果もまた、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルマウス(Ovary 1958)に化合物(I)を2回経口投与して評価した。補体依存性アナフィラトキシンを最小限に抑えるために、マウスPCAモデルは、低用量の感作IgE抗体で使用した(Schaefer et al.2013,The journal of allergy and clinical immunology,131(2),pp.541; Hata et al.1998,Journal of Experimental Medicine,187(8),pp.1235)。ハプテンによる皮膚アナフィラキシーを誘発する14時間前及び2時間前に投与されたそれぞれ3、10、30、又は100mg/kgの化合物(I)の2回の経口投与は、エバンスブルー溢出として測定された皮膚浮腫の用量依存的阻害を示した。エバンスブルー溢出により測定された皮膚浮腫阻害率は、60.7%(3mg/kg)、66.9%(10mg/kg)、69.2%(30mg/kg)から、87.4%(100mg/kg)までであった。(図3)。最終投与2.5時間後の脾臓の占有率は89.1~99.7%(ピーク占有率を示す)の範囲であった(図4)。
【0130】
実施例1a及び1bにおける試験は、化合物(I)が皮膚においてその標的に到達し、皮膚の炎症反応を効率的に阻害することを示唆している。
【0131】
これらの前臨床薬理試験において、BTK占有率及びそれぞれの薬理学的読み取り値は、強い相関を示した。したがって、BTK占有率及びマスト細胞介在性皮膚過敏反応は、臨床試験での使用に好適なPDバイオマーカーであるため、第1相臨床試験で使用した。
【0132】
実施例2:第1相臨床試験
自己免疫疾患における化合物(I)のさらなる臨床開発を支援するために、健常ボランティアとアトピー素因を有する者を対象に、1日1回(qd)の経口投与及び1日2回(bid)の経口投与の両方で化合物(I)の単回投与及び反復投与の安全性と忍容性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を評価するために、ヒト初回投与試験を実施した。この試験では、食物摂取の影響についても調査した。
【0133】
約168例までの健常ボランティア(HV)を対象としたヒト初回投与試験で、そのうち64例(パート2及び4)は無症候性アトピー素因を有していた。
・パート1は、二重盲検(対象及び治験責任医師盲検、治験依頼者盲検解除)、プラセボ対照単回投与用量漸増(SAD)試験であり、10のコホート(N=80)を対象とした
・パート2は、6つのコホートの無症候性アトピー素因を有する健常ボランティア(N=48)を対象に、1日1回投与を採用した二重盲検(対象及び治験責任医師盲検、治験依頼者盲検解除)、プラセボ対照反復投与用量漸増(MAD)(12日間にわたり13回投与)試験であった
・パート3は、12例のHVを対象とした単回投与非盲検クロスオーバー食事の影響試験であった
・パート4は、2つのコホートの無症候性アトピー素因を有する健常ボランティア(N=16)を対象に、1日2回投与を採用した二重盲検(対象及び治験責任医師盲検、治験依頼者盲検解除)、プラセボ対照反復投与(12日間にわたり25回投与)試験であった
【0134】
SADパート(パート1)は10用量レベルであり、MADパート(パート2及び4)は8用量レベルで構成された(パート2では1日1回投与を用いた6コホート、パート4では1日2回投与を用いた2コホート)。対象8例を各コホートに無作為に割り付け、SADパート及びMADパートで化合物(I)又は対応するプラセボを6:2(実薬:プラセボ)の比率で投与した。SADパートにおいて、推定薬理活性用量(PAD)の約4倍までの用量を評価することとし、その後、SADパートからそれまでに安全性シグナルが出現しなければ、試験のMADパートを開始した。パート2(MAD qdレジメン)及びパート4(反復投与 bidレジメン)で用いた化合物(I)の1日総投与量は、試験したSADの最高用量レベルを超えなかった。さらに、パート4の1日総投与量はパート2の1日総投与量を超えなかった。
【0135】
パート1(SAD)では、以下の通り、初回投与時のセンチネル投与を各投与レベルで行うこととした。最初の2例に初日に投与した(1例は実薬、1例はプラセボ)。48時間の観察期間後、コホートの残り6例(5例は実薬、1例はプラセボ)に投与を行った。
【0136】
標準的な安全性モニタリングを、全ての試験パートで使用した。潜在的な皮膚損傷事象に特化した評価を含めた。最終投与の96時間後までの全てのバイタルサイン、身体診察及び対象の病歴、ECG、有害事象、臨床検査の安全性パラメータ(血液化学検査、血液学的検査及び尿検査)、並びに前回投与群(入手可能な場合)からの、最終投与の48時間後までのPKデータを、各コホートで用量漸増前に盲検下で検討することとした。報告された有害事象、臨床安全性検査パラメータ、QTc及び心拍数の要約安全性報告を各投与レベル終了後に提供した。
【0137】
パート1、2及び4では、各対象は28日間のスクリーニング期間(-29日目~-2日目)、ベースライン期間、治療期間、及び試験終了時の評価を含む追跡期間に参加した。
【0138】
パート1では、ベースライン時の安全性評価及び適格性の確認のため、-2日目又は-1日目に対象を試験実施施設に入院させた。適格な対象には、1日目に絶食条件下で化合物(I)又はプラセボを単回投与した。彼らは-1日目から5日目の朝(最終投与から96時間後)まで施設に滞在した。
【0139】
パート2及びパート4では、ベースラインの安全性評価及び適格性の確認のために、対象を-2日目又は-1日目に入院させた。適格な対象には、1日目に絶食条件下で化合物(I)を初回投与し、12日目まで(12日目を含む)絶食条件下での試験薬投与を継続した。対象は、-2日目又は-1日目から化合物(I)の最後の投与を受けてから96時間後の16日目の朝まで施設に滞在した。パート2及びパート4では、それぞれ1日1回及び1日2回試験薬が投与された(詳細は評価スケジュールに記載)。
【0140】
パート3は、食事の影響を評価するための非盲検無作為化2群クロスオーバー単回投与試験であった。パート3では、各対象は28日間のスクリーニング期間(-29日目~-2日目)、2ベースライン(-1日目)期間及び2治療期間(それぞれ、1日目の単回投与、続く5日目までの安全性及びPK評価から構成された)に参加した。治療期間2は、それぞれ22日目と40日目の追跡調査のための来院と試験終了時の評価から構成された。2つの治療期間は、少なくとも18日(+/-1日)のウォッシュアウト期間によって分離した。
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
選択基準
1. 年齢が18~65歳(両端を含む)で、スクリーニング時の既往歴、身体診察、バイタルサイン、心電図、臨床検査により健康状態が良好と判定された男女の健康な対象。アトピー性素因を有する健康な対象は、パート2又はパート4に、これらの特定の試験部分に対する適格性に従って参加した。アトピーの健常ボランティアはスクリーニング時に既知のアレルゲンに対するプリックテストが陽性でなければならなかった(アトピー性素因)が、臨床的に無症状であり、全身的な投薬の必要はなかった。
2. 対象は、体重が少なくとも50kgで、ボディマスインデックス(BMI)が18~30kg/m2(両端を含む)の範囲内であることが必要であった。BMI=体重(kg)/[身長(m)]
3. スクリーニング時及び初回ベースライン時に、対象を少なくとも3分間安静にさせた後、座位にてバイタルサイン(体温、収縮期血圧及び拡張期血圧、並びに脈拍数)を評価し、3分後に再度(必要な場合)立位にて評価した。座位バイタルサインは以下の範囲(両端を含む)内であることが要求された:
・口腔体温 35.0~37.5℃
・収縮期血圧 90~139mmHg
・拡張期血圧 50~89mmHg
・脈拍数 50~90bpm
【0145】
除外基準
1. 試験薬又は類似の化学的分類の薬物に対する過敏症の既往歴。
2. スクリーニング時及び/又は前治療時に、臨床的に重大なECG異常、又は以下のECG異常のいずれかが認められた既往歴:
・PR間隔 200msec超
・QRS群 120msec超
・QTcF 450msec超(男性)
・QTcF 460msec超(女性)
3. スクリーニング時又は初回ベースライン時のヘモグロビン値が12.0g/dL未満。
4. スクリーニング時又は初回ベースライン時の血小板数が正常範囲外(150×10/L未満又は450×10)超)。
5. スクリーニング時及び/又はベースライン時の、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、又は国際標準化比(INR)を含む標準的な凝固検査のいずれかに何らかの臨床的に重要な異常が認められた場合。
6. 血栓性又は血栓塞栓性イベントの既往又は存在、或いは血栓性又は血栓塞栓性イベントの高いリスク。
【0146】
投与される治療薬
パート1(SAD)
対象を以下の10コホートのうちの1つに割り当てた。各コホートでは、8例の対象を、化合物(I)又は対応するプラセボに、全体で6:2の比率で無作為に割り付けた。第1のサブコホートを、化合物(I)の1人の対象及び対応するプラセボの1人の対象として1:1の比率で無作為化した。最初に投与された2例の対象の48時間の観察期間後に投与された、1コホート当たり残りの6例の対象を5:1の比率で無作為に割り付けた。
・コホート1:0.5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート2:1.5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート3:5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート4:15mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート5:30mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート6:60mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート7:100mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート8:200mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート9:400mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート10:600mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
【0147】
パート2(MAD、qd投与)
対象を以下の6コホートのうちの1つに割り当てた。各コホートでは、8例の対象を、化合物(I)又は対応するプラセボに、6:2の比率で無作為に割り付けた。
・コホート1:10mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート2:25mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート3:50mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート4:100mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート5:400mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート6:600mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
【0148】
パート3(食事の影響)
対象を2つの治療順序(表9)のいずれかに1:1の比率で無作為に割り付けた。
【0149】
【表10】
【0150】
パート4(MAD、bid投与)
対象を以下のコホートのうちの1つに割り当てた。各コホートでは、8例の対象を、化合物(I)又は対応するプラセボに、6:2の比率で無作為に割り付けた。
・コホート1:100mgの化合物(I)又は対応するプラセボをbid投与で反復経口投与
・コホート2:200mgの化合物(I)又は対応するプラセボをbid投与で反復経口投与
【0151】
薬物動態データ
生物学的分析法:
薬物動態用サンプルを血液で採取し、全用量レベルで全対象で評価した。プラセボ対象からのサンプルは解析しなかった。対象からのPK評価用サンプルを、試験の規定された時点で採取した。化合物(I)の血中濃度を、確立されたLC-MS/MS法によって測定した。
【0152】
0.5mg~600mgの単回投与用量漸増の薬物動態:
単回投与用量漸増後の化合物(I)の平均血中濃縮-時間経過を図5に示す。
【0153】
化合物(I)は時間と共に急速に吸収され、全ての用量で約1~1.5時間のCmaxに到達した。吸収相は、ほとんどの対象において、単一の明確な吸収ピークによって特徴付けられた。薬物の体内動態は、双指数関数的減少を示した。薬物の大部分は初期分布相下で排泄されたことから、実質的な薬物クリアランスは全身組織平衡に達する前に起こる可能性が示唆された。見かけの終末消失相には投与12時間後まで達せず、100mg以上の投与を受けた対象でのみ測定可能であった。測定可能な終末相半減期は4時間(100mg)から18時間(600mg)までの範囲であり、循環血液中の平均滞留時間(MRT)は1時間から5時間までであった(MRT≒T1/2/ln2)。分布相は、約1時間の優勢な用量非依存性T1/2を示した。単回投与後の経口血中クリアランスの幾何平均値の算出値(CL/F)はSADコホート全体で250~506L/hの範囲であり、全コホートで約383L/hと推定された。
【0154】
反復経口投与の薬物動態
10mg~400mgの反復投与用量漸増後の化合物(I)の平均血中濃縮-時間経過を図6に示す。
【0155】
経口投与後の定常状態での見かけのクリアランスの幾何平均(CLss/F、12日目 MAD、q.d.)は、コホート全体で246L/h~414L/hの範囲であった。一般に、定常状態では1日目と比較してより低いクリアランスが観察されたが、この差は100mg以上の用量でほとんど消失した(表8-1(1日目)及び表8-2(12日目))。この挙動の理由は、おそらく、化合物(I)の初期クリアランスに寄与する共有結合的標的(BTK)結合であろう。この効果は1日目に最も顕著であり、これは、連続した日では、トラフにおける残りの標的占有がクリアランス(CLss/F)に対する標的結合の部分的寄与を減少させるからである。当然のことながら、この差は、トラフでの標的占有が完全に近づく用量の増加と共に減少する。したがって、薬物曝露量(AUC、Cmax)は1日目と比較して12日目でより高いことが分かった。これは(対象内)薬物累積比率(Racc)によって示され、比率は5(低用量)から1.2(高用量)の範囲であり、一般にCmaxよりもAUCでより高く、全身クリアランスに対する影響が関与している可能性があることが確認された。
【0156】
【表11】
【0157】
【表12】
【0158】
一般に、最終投与の24時間後の血中濃度は、100mg以上の数例の対象が2つの連続投与内の化合物(I)のほぼ完全なウォッシュアウトを示したことを除いては、一般的に1ng/ml未満であった。後者はまた、数回の投与で定常状態に達することを示唆している。
【0159】
BTKの代謝回転が組織でより高いことから、b.i.d.投与についても調べた。100mg及び200mgの1日2回の反復用量漸増投与後に得られた平均血中濃度時間プロファイルを図7に示す。他のコホートの結果と一致して、b.i.d.投与後の投与では、Tmaxが約1時間の速い吸収が観察された。観察された累積係数(Racc)は、AUCで1.5(100mg)及び2.0(200mg)、Cmaxで約1.65(両用量)であった。AUCtauの用量に比例した増加は12日目に観察されたが、Cmaxではわずかな増加(1.33倍)が見られただけであった。結論として、化合物(I)のb.i.d投与は、PKプロファイル全般を損なわず、また高用量q.d.治療を必要とせずに、投与と投与の間の組織におけるより速い標的再合成に対処するための選択肢を提供する。
【0160】
食事の影響:パート3の結果:
下記の表9に要約された食事の影響コホートから得られたPKデータは、Cmaxが1.25倍低いことから示されるように吸収率がより低くなり、AUC0-24が1.4倍高いことから示されるように、全体の吸収がより完全になることを示した。最も重要なことは、平均Tmaxが1時間(絶食)から3時間超(摂食)にシフトしたことである。(図8
【0161】
【表13】
【0162】
薬力学
薬力学(PD)は、標的占有率と抹消経路阻害を評価することにより特徴付けた。治療標的関与の直接マーカーとして機能する、ヒト全血におけるBTK占有率の測定(遊離BTKと総BTKの比として得られる)。
【0163】
BTK占有率、用量、全身性化合物暴露、及び複雑なインビボ経路に対する有効性と疾患の読み出しとの間の関係は、式(I)の化合物についての前臨床モデルにおいて確立されている。(例えば、実施例1)
式(I)の化合物はBTKの不可逆的阻害剤であり、BTK占有の程度及び時間を決定した。化合物(I)のPD効果を、2つの別々のアッセイにおいて、Meso Scale Diagnostics(MSD)プラットフォームでの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、全血中の遊離BTK(結合していない)及び総BTKの両方を測定することによって評価した。
【0164】
用量と薬力学との間の関係は、治療標的関与の直接的マーカーであるヒト血液中のBTK占有率(遊離及び総BTKの比として得られる)の測定によって特徴付けられた。BTK占有率を、q.d.での0.5~400mgの範囲の単回投与用量漸増、10mg~400mgの範囲の反復投与用量漸増、及びb.i.d.での100mg及び200mgの反復投与用量漸増について決定した。
【0165】
式(I)の化合物は、末梢血BTK占有の程度及び期間の両方で明らかな用量依存的増加を示した。標的占有率は一般に投与後0.5時間という早さでピークに達し、これは、薬物曝露のピークに対して、薬物効果における関連したヒステリシスを伴わない急速な発現を示す。BTKと共有結合的に結合するその能力から結論されるように、標的占有は、全身循環からその配置をはるかに超えて維持され、非平衡PK-PD関係を示した。したがって、BTK占有の持続時間は、BTKのデノボ合成の速度によって支配されると結論される。
【0166】
低用量コホート(0.5~1.5mg)とは異なり、15mg以上の化合物(I)の単回投与はほぼ全ての被験体で100%に近い標的占有率のピークを確立し、24時間で80%超を維持した。15mgの対象の間では反応に大きなばらつきが見られたが、30mg以上の用量では全対象において持続的(24時間超)且つほぼ完全(90%超)な占有率が得られ、対象間のばらつきは明らかに減少した。BTKタンパク質プールを投薬前レベルまでリフレッシュする時間は約10日であり、約48時間の平均代謝回転T1/2に一致した(図9)。
化合物(I)を反復投与後、10mgの化合物(I)q.d.は、12日目の投与前の血中BTK占有率で既に96%超を達成した。
【0167】
さらに、好塩基球活性化のエクスビボ阻害(CD63及びCD203cの表面発現によってモニターされる)を遠位メカニズムバイオマーカーとして使用して、化合物(I)の下流PD効果を試験した。好塩基球活性化に対する化合物(I)のPD効果を決定するために、全血をエクスビボで抗IgEにより刺激した。脱顆粒を、フローサイトメトリーにより、CD63+及びCD203+好塩基球のパーセンテージで評価した。
【0168】
化合物(I)の単回投与用量漸増後、データは、FcεR1介在性好塩基球活性化の用量依存的阻害を示す。CD63で測定したエクスビボでの血中における好塩基球活性化は、60mgの用量でほぼ完全に阻害され(89%超)、より高用量では投与24時間後にほぼ100%の阻害に達した。対照的に、化合物(I)の単回投与の24時間後のCD203cの最大阻害(約50%阻害)は、200mgの化合物(I)でのみ達成された。
【0169】
12日目の、式(I)の化合物のMADのq.d.又はb.i.d.投与の8時間後に、最も低い試験用量の化合物(I)(10mg q.d.)で既にCD63アップレギュレーションの90%超の阻害が得られ、CD63のトラフレベル阻害は、化合物(I)の50mg以上q.d.の用量で90%超である(図10)。12日目におけるCD203c活性化の最大トラフ阻害は、化合物(I)の単回投与後よりも一貫して高く、100mg及び200mgの化合物(I)のb.i.d.投与でのみ達成された。
【0170】
定義されたアレルゲン反応を阻害する化合物(I)の能力は、ヒト初回投与試験のMAD試験パートの健康なアトピー対象を対象としたプリックテスト(SPT)によって評価されている。SPTは、投与前(スクリーニング時、ベースライン時及び1日目の投与前)、初回投与後(1日目)及び1日1回投与の11日後(12日目)の異なる時点で実施された。
【0171】
エクスビボ好塩基球活性化の阻害と同様に、ベースラインと比較して投与後の平均膨疹サイズが減少したことによって示されるように、反復投与用量漸増コホートにおいて膨疹径に対する用量依存的な効果が認められた(図11)。効果は、化合物(I)約100mg q.d.でプラトーになり始めた。
【0172】
用量の選択/結論の根拠
健常ボランティアは第1相臨床試験において、化合物(I)に曝露されており、その用量は0.5mg~600mgの範囲であり、単回用量として投与されるか、又は1日1回若しくは2回、最大18日間投与された。化合物(I)は良好な忍容性を示し、化合物(I)の摂取に関連する重篤又は重度の有害事象はなかった。臨床試験において、観察された有害事象(AE)は用量依存性はないようであり、大部分は単一事象であり、一般的に軽度であった。したがって、臨床安全性情報は、本第2b相試験で選択された用量を裏付けるものである。
【0173】
本発明の用量レベルは、以下の分析(健常ボランティアにおけるBTK占有率、塩基性球活性化の阻害(CD63及びCD203cのアップレギュレーションによってモニターされる)、並びに皮膚内でのマスト細胞及び塩基性球阻害の代用である無症候性アトピー健常ボランティアにおけるプリックテスト(SPT)への影響)から導き出された。
【0174】
この上記の臨床試験において、化合物(I)の10mg、q.d.の投与は、血液中のほぼ完全なBTK占有、CD63アップレギュレーションの90%を超える減少(定常状態における化合物(I)の投与の8時間後)、及びSPTにおける膨疹サイズの最小限の阻害をもたらした。したがって、化合物(I)の10mg q.d.は生物学的活性の開始に相当する。式(I)の化合物100mgでは、SPTにおける膨疹サイズの平均減少がプラトーになり始めた。したがって、100mgの化合物は、化合物(I)の最大効果に相当する。35mgの化合物(I)q.d.の中間用量は、化合物(I)q.d.の用量反応曲線を正確に記載するのに十分に適している。
【0175】
式(I)の化合物は、共有結合によってBTKを阻害する。血液中のBTK占有は24時間(h)を超えるが、組織中の速いBTK代謝回転(例えば、げっ歯類の脾臓において約5時間を与える)は最大効力に達するために化合物(I)のb.i.d.投与を必要とし得る。それぞれ10mg、25mg及び100mgの化合物(I)b.i.d.の用量は、1日2回与えられた場合の化合物(I)の用量反応曲線を正確に記載する。
【0176】
ヒトにおける安全性
副作用の分析のために、全てのSAD及びMADコホートからのプラセボ対象(1コホート当たり2例)であって、SADパート及びMADパートによって分離された対象を、1つのプラセボ群(SADでn=20、MADでn=16)にプールし、化合物(I)の各単回投与群(それぞれn=6)及び全化合物(I)群(SADでn=60、MADでn=48)と比較した。SAD集団及びMAD集団のいずれについても、プラセボ群と実薬群との間で人口統計学的データに明らかな大きな差は認められなかった。健常ボランティアを対象としたFIH試験の安全性評価では、600mgまでの用量で重大な安全性の懸念は認められない。
【0177】
実施例3:標準的ケアによる治療にもかかわらず症状が持続するCSU患者における有効性及び安全性データ
第2b相は、(第2世代)H1-抗ヒスタミン薬による治療にもかかわらずCSUの制御が不十分な対象を対象に、式(I)の化合物を経口投与された化合物の6投与群の安全性、忍容性及び有効性を調べるため、多施設共同無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験として実施される。
試験期間中(すなわち、-14日目から113日目まで)、対象は地域で承認された薬量学(「背景薬」)で第2世代H1-抗ヒスタミン薬による安定した治療レジメンを受けている。
【0178】
対象は、レスキュー薬として主に腎排泄により除去される第2世代H1-抗ヒスタミン薬(例えば、セチリジン、レボセチリジン又はビラスチン)を追加服用し得る。レスキューH1-抗ヒスタミン薬は、背景のH1-抗ヒスタミン薬とは異なる必要があり、試験期間(-14日目から113日目まで)を通じてCSUの耐え難い症状(痒み)を日々治療するためにのみ投与し得る。
【0179】
他の全てのCSU治療(承認用量を超えるH1-抗ヒスタミン薬を含む)は禁止される(表10を参照)。
【0180】
試験デザインの概要には以下の3つの期間が含まれる。
・スクリーニング期間(無作為化の10~14日前):スクリーニング期間中に、インフォームド・コンセントを提供した対象について、試験の適格性を評価する。
・治療期間(1日目~85日目):スクリーニング後、適格な対象を以下の治療群のいずれかに1:1:1:1:1:1:1の比率で無作為に割り付ける:
〇化合物(I) 10mg 1日1回
〇化合物(I) 35mg 1日1回
〇化合物(I) 100mg 1日1回
〇化合物(I) 10mg 1日2回
〇化合物(I) 25mg 1日2回
〇化合物(I) 100mg 1日2回
〇プラセボ
全ての対象が4週目の来院(主要エンドポイント)を完了した後、中間解析を実施して、式(I)の化合物の用量反応関係を評価する。
・追跡期間(86日目~113日目):対象を追跡して、治療中止後の反応の耐久性を評価し、安全性をさらに評価する。
【0181】
【表14】
【0182】
【表15】
【0183】
【表16】
【0184】
【表17】
【0185】
【表18】
【0186】
主要エンドポイント
本試験の主要変数は、4週目のUAS7のベースラインからの変化量である。UAS7は、7日間にわたる1日平均UASの合計である。週間スコアは、来院前の最後の7日間を使用することによって導き出されることに留意されたい。
【0187】
副次的エンドポイント
即時型方法の有効性を、記述統計を用いて治療群及び来院(該当する場合)別に解析する。記述統計には、カテゴリー変数の絶対頻度及び相対頻度、並びに連続変数の算術平均、標準偏差、最小値、最大値、中央値、及び第一、第三四分位数が含まれる。UAS7の副次的解析、臨床的完全奏効、制御された疾患及びAAS7=0については、各化合物(I)用量のプラセボとの一対比較を行う。
【0188】
UAS7
治療期及び追跡調査期におけるUAS7のベースラインからの絶対変化及び変化率の要約統計量を治療群及び来院別に解析する。
【0189】
臨床的完全奏効
臨床的完全奏効、すなわち蕁麻疹及び痒みが認められない場合、UAS7=0を達成した対象と定義する。
治療期及び追跡調査期の治療群及び来院別のUAS7=0の対象数。
治療群間(個々の化合物(I)群対プラセボ)一対比較。
【0190】
制御された疾患(UAS7≦6)
治療期及び追跡調査期の治療群及び来院別のUAS7≦6の対象数。
治療群間(個々の化合物(I)群対プラセボ)の一対比較。
【0191】
血管性浮腫なし(AAS7=0)
ベースラインから12週目までのAAS7=0の応答の累積週数。
これは、AAS電子日誌に基づいて導き出される。週間AAS7スコアは、来院前7日間の毎日のスコアを加算することにより導き出され、0~105の範囲である。AAS7の評価が欠測の場合は、対象がAAS7=0応答計算反応計算を行う累積週数への応答がないとみなす。ベースラインから12週目までの間にAAS7=0の反応を達成した累積週数を、治療群、無作為化層及びベースラインのAAS7=0の状態を用い、対数リンクによる負の2項回帰モデルを用いてモデル化する。
【0192】
DLQI
7つのスコアをDLQIから得る。DLQIの合計スコアと同様に、6つの次元のそれぞれのスコアを、開発者のルールに基づいて計算する。これらの7つのスコアのそれぞれについて、ベースラインからの変化量及びベースラインからの変化率も算出する。概要統計量を、絶対値、並びに来院及び治療群別に分類された変化及び変化率に対し計算する。治療群及び来院別の、DLQIスコアが0又は1であった対象数。
【0193】
安全性エンドポイント
全ての安全性エンドポイント(すなわち、AE、臨床検査データ、バイタルサイン及びECG、並びに安全性プロファイリング計画で定義された潜在的リスク)を、安全性の全対象について治療別に要約する。レスキュー薬の使用の有無にかかわらず、全データを解析に含める。
【0194】
上記の臨床試験及び前臨床エビデンスからのデータは10mg~200mgの1日用量の化合物(I)が、好塩基球及びマスト駆動皮膚疾患の治療に安全で且つ薬理学的に有効であることを示している。

以下の態様を包含し得る。
[1] 慢性自発性蕁麻疹(CSU)の治療を、そのような治療を必要する対象に行うために使用する、式(I)の化合物
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であって、式(I)の化合物の1日用量は約10mg~約200mgである、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[2] 前記1日用量は約10mg~約100mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[3] 前記1日用量は約100mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[4] 前記1日用量は約50mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[5] 前記1日用量は約35mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[6] 前記1日用量は約25mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[7] 前記1日用量は約20mgである、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[8] 前記式(I)の化合物は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[9] 前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される、上記[1]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[10] 前記式(I)の化合物での治療の前に、前記対象はCSU用全身性薬剤で既に治療されたことがある、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[11] 前記全身性薬剤は、H1-抗ヒスタミン薬(H1-AH)、H2-抗ヒスタミン薬(H2-AH)、及びロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[10]に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[12] 前記式(I)の化合物での治療の前に、前記対象はCSU用全身性薬剤で治療されたことがない、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[13] 前記対象は中等度から重度のCSUを有する、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[14] 前記対象は以下の基準:
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、前記対象は、16以上のUAS7スコアを有する;
b)前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療の前に、前記対象は、8以上のHSS7スコアを有する
の少なくとも1つに従って選択される、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[15] 前記対象は成人である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[16] 前記対象は治療の4週目又は12週目までに、以下のうちの:
a)UAS≦6で判断される蕁麻疹及び掻痒の減少、若しくは蕁麻疹及び掻痒の完全な消失(UAS7=0);又は
b)皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1;
c)血管性浮腫活動性スコア(AAS7)がゼロで判断される血管浮腫がないこと
少なくとも1つを達成する、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[17] 前記対象は、完全な蕁麻疹及び掻痒の応答([UAS7]=0)及び/又は皮膚科関連QOL評価指標(DLQI)=0~1及び/又は前記治療の完了後4週目に血管性浮腫の消失の継続(AAS7=0)によって判断される持続的応答を達成する、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[18] 前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は医薬製剤に配合され、前記医薬製剤は薬学的に許容される担体をさらに含む、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
[19] 前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約0.5~3時間のT max を有する、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11