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特許7568663吸入器の投与量の制御のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】吸入器の投与量の制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20241008BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021578126
(86)(22)【出願日】2020-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 IB2020056099
(87)【国際公開番号】W WO2020261232
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】62/868,300
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521504913
【氏名又は名称】レズメド ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ハドリー
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-523395(JP,A)
【文献】特表2018-531055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器であって、
薬剤コンテナを保持するアクチュエータと、
前記薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように動作可能な投薬機構であって、前記投薬機構は、前記空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する、投薬機構と、
生理学的センサと通信するセンサインターフェースであって、前記生理学的センサは、前記用量に対する生理学的反応を感知することおよび生理学的データを前記センサインターフェースへ送信することを行うようにユーザへ取り付けられる、センサインターフェースと、および
前記空気混和された1回分の用量が前記ユーザへ送達された時間に対応する、前記感知された生理学的データを前記ユーザから収集し、前記生理学的データから前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定し、前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて用量の有効性を決定するように、前記センサインターフェースへ連結されたコントローラと、
を含む、吸入器。
【請求項2】
前記コントローラは、前記用量の有効性に応答して、前記空気混和された1回分の用量の量を前記投薬機構を介して変更するように動作可能である、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
圧力センサをさらに含み、前記コントローラは、前記圧力センサの出力と前記空気混和された1回分の用量の供給との比較から前記ユーザの吸入ポイントの発生を決定するように動作可能である、請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記コントローラは、前記投薬機構を制御して、前記空気混和された1回分の用量を前記吸入ポイントにおいて前記ユーザへ供給させるように動作可能である、請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記生理学的センサは酸素センサ、心拍数センサ、または二酸化炭素センサの一つであ
り、前記コントローラは、前記酸素センサの出力に基づいてユーザ中の酸素付加を検出することおよび前記ユーザ中の酸素付加のレベルに基づいて前記用量の有効性を決定することを行うように動作可能であるか、
前記コントローラは、前記心拍数センサの出力に基づいてユーザ中の心拍数を検出することおよび前記ユーザの心拍数に基づいて前記用量の有効性を決定することを行うように動作可能であるか、又は、
前記コントローラは、前記ユーザにおける呼吸をセンサの出力に基づいて検出するように動作可能であり、前記ユーザの呼吸の二酸化炭素に基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である、
請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項6】
前記コントローラは、前記データから導出された呼吸形状と投与技術を示す規則とを比較することにより、前記吸入器の起動において前記ユーザが用いた技術の有効性を決定するように動作可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
送受信機をさらに含み、前記送受信機は、前記収集されたデータを外部デバイスへ送信することと、ポンプを調節することにより、前記収集されたデータの分析に応答して前記ポンプから供給される前記空気混和された1回分の用量の量を変更させるための制御データを受信することとを行う、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記外部デバイスは、前記ユーザと関連付けられたモバイルコンピューティングデバイスであり、前記外部デバイスは、前記収集されたデータを分析して、前記制御データを決定するアプリケーションを実行する、請求項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記生理学的センサは、前記投薬機構から薬剤投与量が提供される場合にサンプルレートを高くするように動作可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項10】
前記投薬機構はポンプである、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記薬剤コンテナは、単一用量のカプセルまたは多用量の投与量キャニスターのうちの1つである、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項12】
吸入器上に据え付けられる投与量制御ユニットであって、前記吸入器は、薬剤を収容する薬剤コンテナを保持するアクチュエータと、前記薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように前記薬剤コンテナへ連結された投薬機構と、前記空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する前記投薬機構とを有し、前記投与量制御ユニットは、
前記投与量制御ユニットを前記吸入器へ取り付けるインターフェースと、
前記用量に空気混入を行う前記投薬機構を検出する投薬センサと、
前記吸入器のユーザへ取り付けられた生理学的センサと通信するセンサインターフェースと、
前記投薬センサおよび前記センサインターフェースへ連結されたコントローラであって、前記コントローラは、前記空気混和された1回分の用量が前記ユーザへ送達された時間に対応する生理学的データを前記ユーザから収集し、前記生理学的データから前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定し、前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて用量の有効性を決定するように動作可能であり、前記時間は、前記投薬センサから決定される、コントローラと、
を含む、
投与量制御ユニット。
【請求項13】
吸入器から放出される薬剤の1回分の用量の効果を測定する方法であって、前記吸入器は、前記薬剤および薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように前記薬剤コンテナへ連結された投薬機構を収容する薬剤コンテナを保持するアクチュエータを有し、前記投薬機構は、前記空気混和された1回分の用量をユーザへ提供し、前記方法は、
前記空気混和された1回分の用量が前記投薬機構から前記ユーザへ供給された時間を投薬センサへ連結されたコントローラを介して決定することと、
前記ユーザへ取り付けられた生理学的センサを介して前記ユーザの生理学的データを測定することと、
前記生理学的データを収集し、前記生理学的データと、前記空気混和された1回分の用量とを相関付けることと、
前記生理学的データから前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定することと、
前記ユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて前記用量の有効性を決定することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
【0002】
本出願は、2019年6月28日に出願された米国仮出願第62/868,300号の恩恵と優先権を主張する。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0003】
技術分野
【0004】
本開示は、主に吸入器に関し、より詳細には、用量の有効性に応じて投与量を調節する吸入器システムに関する。
【背景技術】
【0005】
現在、病気を抱える多数の患者に対し、投与量の薬剤を供給する吸入器が提供されている。例えば、喘息の患者に対しては、粘液生成支援および呼吸通路を広げる際の炎症の低減のために、作用薬が提供され得る。そのため、患者の喘息が悪化した場合、患者は、症状軽減のために、吸入器を自身の口の前方に配置し、吸入器スプレーを起動させ得る。
【0006】
薬剤吸入のための公知の吸入器は、ハウジングを有する。このハウジングは、吸入器を通じて空気入口から出口へ延びる流れ通路を少なくとも部分的に規定する。加圧および計量された投与量のキャニスターが、ハウジング内に設けられる。キャニスターは、弁軸と、ハウジング上に形成された弁軸ブロック内に載置されるように配置された絞り弁とを含み、キャニスターの主要キャニスター体は、ハウジングおよび弁軸に相対して移動されて、絞り弁を動作させ、計量された投与量の推進薬および活性薬剤を弁軸ブロックを通じて発進させ、流れ通路内へ移動させ得る。ユーザがキャニスターの押圧によりハウジングのマウスピースを吸い込むと、空気がキャニスターとハウジングの内壁との間のハウジング中に引き込まれ得、キャニスターを通過して出口へ流動し得る。この種の吸入器は概ねうまく機能するものの、ユーザの中には、吸入のための吸気とキャニスターからの発進とを協調させることが困難に感じる者もおり、キャニスターからの発進が吸入呼吸に相対して早すぎたり遅すぎたりする場合、最適な吸入が達成できなくなり得る。
【0007】
別の種類の吸入器として、ドライパウダー吸入器があり、単回用カプセルから分配を行う。このような吸入器の場合、ユーザは、カプセルを吸入器中に装填する。この吸入器においては、ユーザが口腔内に配置することが可能なマウスピースが設けられる。次に、ユーザは、カプセルを貫通する機械的押しボタンを起動させる。空気が空気通路を通じて引き出されて吸入器内を旋回すると、貫通されたカプセルから薬剤が放出される。次に、ユーザは、薬剤を吸入する。しかし、この種の吸入器の場合も、ユーザが自身の呼吸との協調ができない問題があり、最適な吸入が妨げられている。ユーザの吸入が弱すぎる場合、デバイスが1回分の薬物投与を完全にエアロゾル化できない可能性が出てくる。そのため、ユーザの肺活量および/または肺機能が限られている場合、呼吸起動型の吸入器の適切な投与量の薬物を送達させる能力に妥協が生じ得る。
【0008】
ジェットネブライザーを用いれば、ユーザが薬物投与を自身の通常の呼吸パターンを用いて受けることが可能になり得るため、強制吸入無しに薬物送達が可能になり得る。しかし、ジェットネブライザーは、非効率であることが多い。このデバイスは、単一の吸気努力において吸入することが可能な薬物投与量よりも大量の薬物を噴霧し得る。そのため、噴霧された薬物のうち有意な部分が、ユーザの呼吸パターンの呼気サイクルにおいて失われる場合がある。
【0009】
そのため、現行の吸入器は、薬剤送達において非効率である。患者の技術が未熟である場合、空気混和された薬剤の大部分が患者の口内において終わり、薬剤の大部分は送達されない。同様に、薬剤放出が吸気-呼気サイクルにおける正しいタイミングで行われない場合、肺中の薬剤作用が必要な部分に薬剤が届かなくなる。
【0010】
現行の吸入器の場合、吸入器の投与量の調節もできない。そのため、投与量は固定されており、要素に合わせて微調整することができない(例えば、患者の生理(サイズ、体重、性別など)、肺疾患の種類および疾病進行段階)。現行の吸入器の場合、薬剤有効性についてのフィードバックも全く無いため、吸入器の投与量の有効性や、当該薬剤に所望の生理学的効果が有るのか、または患者が吸入器を適切に使用しているかについての測定が不可能である。特定の高度な吸入器の場合、ポンプ起動についての電子インジケータがいくつかあり得るため、吸入器が起動された時期が利害関係人(例えば、医師または支払人)へ報告され得る。
【0011】
よって、最も高度な現行の吸入器システムであっても、医師および/または支払人が決定できるのは、吸入型薬剤上のポンプが起動されたことだけである。患者による吸入器の適切使用についての推定は可能であり得る。しかし、このようなシステムの場合、薬剤が少しでも有効であったかについて決定する手段は全く無い。そのため、薬剤が空気中へ送達されていたり、あるいはキャニスターが空であったり、あるいは患者の技術が未熟であったために肺の所望の部分に届かなかった可能性がある。その場合、患者の健康への遠隔介入をリアルタイムで迅速に行うことができない。現在では、介入が可能になるのは、患者が医師を訪問したとき(これは数ヶ月後になり得る)かまたは患者が(薬剤が効かないために)健康悪化を病院に訴えたときである。そのため、患者の状態にとってより長期間のダメージに繋がり得、健康システムにとっても代償が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
患者からの感知された生理学的パラメータに基づいて投与量有効性についてのデータを収集する吸入器が、必要とされている。薬剤の有効性に基づいて投与量を調節することが可能な吸入器も必要とされている。患者が吸入器を適切に使用しているかについてのフィードバックを可能にする吸入器が、さらに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの開示の例として、薬剤コンテナを保持するアクチュエータを含む吸入器がある。この吸入器は、薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように動作可能な投薬機構を含む。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。センサインターフェースは、生理学的センサと通信する。この生理学的センサは、用量に対する生理学的反応を感知ことおよび生理学的データをセンサインターフェースへ送信することを行うように、ユーザへ取り付けられる。コントローラが、空気混和された1回分の用量がユーザへ送達された時間に対応する、感知された生理学的データをユーザから収集するように、センサインターフェースへ連結される。
【0014】
例示的吸入器のさらなる実装例としての実施形態において、コントローラは、用量の有効性を生理学的データに基づいて決定するように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、用量の有効性に応答して、空気混和された1回分の用量の量を投薬機構を介して変更するように、動作可能である。別の実装形態は、吸入器が、圧力センサを含む実装形態である。コントローラは、圧力センサの出力と空気混和された1回分の用量の供給との比較からユーザの吸入ポイントの発生を決定する。別の実装例において、コントローラは、投薬機構を制御して、空気混和された1回分の用量を吸入ポイントにおいてユーザへ供給させるように、動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは、酸素センサである。コントローラは、ユーザ中の酸素付加をセンサの出力に基づいて検出することと、用量の有効性をユーザ中の酸素付加のレベルに基づいて決定することとを行うように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは、心拍数センサである。コントローラは、ユーザ中の心拍数をセンサの出力に基づいて検出することと、用量の有効性をユーザの心拍数に基づいて決定することとを行うように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは、二酸化炭素センサである。コントローラは、ユーザにおける呼吸をセンサの出力に基づいて検出するように動作可能であり、ユーザの呼吸の二酸化炭素に基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定するように動作可能である。コントローラは、用量の有効性の分析をユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて行うように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、データから導出された呼吸形状と投与技術を示す規則とを比較することにより、吸入器の起動においてユーザが用いた技術の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、ユーザと関連付けられたモバイルコンピューティングデバイスは、技術向上のための通信を技術の有効性に基づいて受信する。別の実装例において、吸入器は、収集されたデータを外部デバイスへ送信する送受信機を含む。送受信機は、ポンプを調節することにより、収集されたデータの分析に応答してポンプから供給される空気混和された1回分の用量の量を変更させるための制御データを受信する。別の実装形態は、外部デバイスがユーザと関連付けられたモバイルコンピューティングデバイスである実装形態である。外部デバイスは、収集されたデータを分析して、制御データを決定するアプリケーションを実行する。別の実装例において、生理学的センサは、投薬機構から薬剤投与量が提供される場合にサンプルレートを高くするように動作可能である。別の実装例において、投薬機構は、ポンプである。別の実装例において、薬剤コンテナは、単一用量のカプセルまたは多用量の投与量キャニスターのうちの1つである。
【0015】
別の開示の例は、吸入器に基づいたデータ収集システムである。本システムは、ユーザへ連結された生理学的センサと、薬剤コンテナと噛み合い可能な吸入器とを含む。この吸入器は、薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように動作可能な投薬機構を含む。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。センサインターフェースは、用量に対する反応を感知するように、生理学的センサへ連結される。吸入器は、空気混和された1回分の用量がユーザへ送達された時間に対応する生理学的データをユーザから収集するコントローラと、送受信機とを含む。データサーバは、収集された生理学的データを送受信機から受信する。分析モジュールは、収集された生理学的データに基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である。
【0016】
例示的なデータ収集システムのさらなる実装例は、分析モジュールは、用量の有効性に応答してポンプからの空気混和された1回分の用量の量の変更のために制御データを送受信機へ送信するように動作可能である実施形態である。別の実装例において、分析モジュールは、用量の有効性に応答して1回分の用量を空気混和する頻度の変更を決定するように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、ユーザの吸入ポイントの発生をセンサの出力から決定するように動作可能であり、コントローラは、空気混和された1回分の用量の供給のタイミングを吸入ポイントと相関付ける。別の実装例において、分析モジュールは、吸入ポイントと吸入器技術を示す規則との比較により吸入器の起動においてユーザが用いた技術の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、分析モジュールは、吸入器技術の有効性に基づいた吸入器技術の向上のために通信をユーザへ送信するように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは酸素センサであり、分析モジュールは、センサの出力に基づいてユーザ中の酸素付加を検出するように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは心拍数センサであり、分析モジュールは、センサの出力に基づいてユーザの心拍数を検出するように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは二酸化炭素センサであり、分析モジュールは、センサの出力に基づいてユーザにおける呼吸を検出するように動作可能である。別の実装例において、分析モジュールは、ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定するように動作可能であり、分析モジュールは、用量の有効性の分析をユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて行うように動作可能である。
【0017】
別の開示の例は、吸入器上に据え付けられる投与量制御ユニットである。吸入器は、薬剤を収容する薬剤コンテナを保持するアクチュエータと、薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように薬剤コンテナへ連結された投薬機構とを有する。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。投与量制御ユニットは、コントローラユニットを吸入器へ取り付けるインターフェースを含む。投薬センサは、用量に空気混入を行う投薬機構を検出する。センサインターフェースは、吸入器のユーザへ取り付けられた生理学的センサと通信する。コントローラは、投薬センサおよびセンサインターフェースへ連結される。コントローラは、空気混和された1回分の用量がユーザへ送達された時間に対応する生理学的データをユーザから収集するように動作可能である。時間は、投薬センサから決定される。
【0018】
例示的な投与量制御ユニットのさらなる実装例は、コントローラが用量の有効性をセンサ出力に基づいて決定するように動作可能である実施形態である。別の実装例において、コントローラは、空気混和された1回分の用量の量を用量の有効性に応答した投薬機構の制御を介して行うように動作可能である。別の実装例において、投与量制御ユニットは圧力センサを含み、コントローラは、圧力センサの出力と空気混和された1回分の用量の供給との比較からユーザの吸入ポイントの発生を決定するように動作可能であり、コントローラは、空気混和された1回分の用量を吸入ポイントにおいてユーザへ供給するように投薬機構をさらに制御する。別の実装例において、生理学的センサは酸素センサであり、コントローラは、センサの出力に基づいてユーザ中の酸素付加を検出するように動作可能であり、ユーザ中の酸素付加のレベルに基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは心拍数センサであり、コントローラは、センサの出力に基づいてユーザ中の心拍数を検出するように動作可能であり、ユーザの心拍数に基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、生理学的センサは二酸化炭素センサであり、コントローラは、ユーザにおける呼吸をセンサの出力に基づいて検出するように動作可能であり、ユーザの呼吸の二酸化炭素に基づいて用量の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、ユーザの呼吸と関連付けられたデータを決定するように動作可能であり、コントローラは、用量の有効性の分析をユーザの呼吸と関連付けられたデータに基づいて行うように動作可能である。別の実装例において、コントローラは、データから導出された呼吸形状と吸入器技術を示す規則との比較により吸入器の起動においてユーザが用いた技術の有効性を決定するように動作可能である。別の実装例において、投与量制御ユニットは送受信機を含み、この送受信機は、収集されたデータを外部デバイスへ送信することと、ポンプを調節することにより、収集されたデータの分析に応答してポンプから供給される空気混和された1回分の用量の量を変更させるためのコントローラのための制御データを受信することとを行う。別の実装例において、外部デバイスは、ユーザと関連付けられたモバイルコンピューティングデバイスであり、外部デバイスは、収集されたデータを分析して、制御データを決定するアプリケーションを実行する。別の実装例において、外部デバイスはデータサーバであり、外部デバイスは、収集されたデータを分析して、制御データを決定するアプリケーションを実行する。
【0019】
別の開示の例は、吸入器から放出される薬剤の1回分の用量の効果を測定する方法である。吸入器は、薬剤および薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように薬剤コンテナへ連結された投薬機構を収容する薬剤コンテナを保持するアクチュエータを有する。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。空気混和された1回分の用量が投薬機構からユーザへ供給された時間は、投薬センサへ連結されたコントローラを介して決定される。ユーザの生理学的データは、ユーザへ取り付けられた生理学的センサを介して測定される。生理学的データは、収集され、空気混和された1回分の用量と相関付けられる。用量の有効性は、収集された生理学的データに基づいて決定される。
【0020】
例示的方法のさらなる実装例は、生理学的センサが酸素センサであり、有効性の決定は、ユーザ中の酸素付加のレベルに基づく実施形態である。別の実装例において、生理学的センサは心拍数センサであり、有効性の決定は、ユーザの心拍数に基づく。別の実装例において、生理学的センサは二酸化炭素センサであり、有効性の決定は、ユーザの呼吸の二酸化炭素に基づく。別の実装例において、有効性の決定は、コントローラによって行われる。別の実装例において、有効性の決定は、吸入器の外部デバイスによって行われる。別の実装例は、命令がコンピュータによって実行されると、上述の方法をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム製品である。別の実装例において、コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【0021】
別の開示の例は、ユーザの吸入器を使用する技術を調整する方法である。吸入器は、薬剤および薬剤コンテナからの1回分の用量の空気混和を行うように薬剤コンテナへ連結された投薬機構を収容する薬剤コンテナを保持するアクチュエータを有する。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。空気混和された1回分の用量が投薬機構からユーザへ供給された時間は、投薬センサへ連結されたコントローラを介して決定される。ユーザの呼吸データは、ユーザと関連付けられたセンサを介して測定される。呼吸データは収集され、空気混和された1回分の用量が投薬機構から提供された時間と相関付けられる。吸入器を使用しているユーザの有効性の評価が、相関付けられた呼吸データと、空気混和された1回分の用量が投薬機構から提供された時間とに基づいて提供される。
【0022】
例示的方法のさらなる実装例は、センサは圧力センサであり、呼吸データは、圧力センサの出力と関連付けられる実施形態である。別の実装例において、センサは二酸化炭素センサであり、呼吸データは、ユーザの検出された二酸化炭素と関連付けられる。別の実装例において、有効性の決定は、コントローラによって行われる。別の実装例において、有効性の決定は、吸入器の外部デバイスによって行われる。別の実装例は、命令がコンピュータによって実行されると、上述の方法をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム製品である。別の実装例において、コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【0023】
別の開示の方法は、吸入器から付加された薬剤の有効性を監視する方法である。吸入器は、薬剤を収容する薬剤キャニスターを保持するアクチュエータと、および薬剤キャニスターからの1回分の用量に対して空気混和を行うように薬剤キャニスターへ連結された投薬機構とを有する。この投薬機構は、空気混和された1回分の用量をユーザへ提供する。空気混和された1回分の用量が投薬機構からユーザへ供給された時間は、コントローラを介して決定される。ユーザの生理学的データは、ユーザと関連付けられた生理学的センサを介して測定される。生理学的データは、収集され、空気混和された1回分の用量と相関付けられる。用量の有効性は、収集された生理学的データに基づいて決定される。
【0024】
別の実装例は、命令がコンピュータによって実行されると、上述の方法をコンピュータに実行させる、コンピュータプログラム製品である。別の実装例において、コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【0025】
上記の要旨は、本開示の各実施形態または各態様を示すことを意図していない。すなわち、上記の要旨は、本明細書中に記載の新規の態様および特徴のうちいくつかの例を示すものに過ぎない。上記の特徴および利点ならび本開示の他の特徴および利点は、本発明の実行のための代表的な実施形態および態様の以下の詳細な説明を添付の図面および添付の特許請求の範囲と共に読めば、容易に明らかになる。
【0026】
例示的実施形態に関する以降の説明を添付図面と併せて参照することにより、本開示に対する理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】例示的吸入器に基づいたシステムの側面図であり、このシステムは、薬剤投与量の有効性を評価する生理学的センサを採用している。
図1B図1Aの吸入器の正面図である。
図2図1A中の吸入器およびセンサのコントローラのブロック図である。
図3A図1A中の吸入器からのデータを処理し、投与量制御および技術分析を提供するアルゴリズムのフロー図である。
図3B図1A中の吸入器からのデータを処理し、投与量制御および技術分析を提供するアルゴリズムのフロー図である。
図4図1A中の吸入器システムをサポートするヘルスケアシステムのブロック図である。
図5A図1A中のシステムを用いて薬剤投与量の有効性を決定するために用いられ得る呼吸数グラフである。
図5B】薬剤投与量の有効性の決定に用いられ得る心拍数および呼吸数の棒グラフである。
図5C】薬剤投与量の有効性の決定に用いられ得る呼吸形状のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示には、種々の変形および代替形態がある。図面に例示したいくつかの代表的な実施形態について、本明細書において以下に詳述する。ただし本発明は、開示された特定の形態に限定されることを意図してはいないものと理解すべきであり、本開示はむしろ、添付の請求項によって定義された本発明の精神および範囲内にあるすべての変形、均等物、および代替物を網羅するものである。
【0029】
本発明は、数多くの異なる形態で具現化することできる。代表的な実施形態を図面に示しており、本明細書において以下に詳述する。本開示は、本開示の原理の一例または例示であり、本開示の広範な態様を、例示された実施形態に限定することを意図するものではない。そのため、例えば「要約」、「発明の概要」、「発明を実施するための形態」の各節で開示されていても、請求項に明記されていない要素や制限は、単独でも集合的にも、暗示、推論、または他の方法によって請求項に組み込むべきでない。本明細書中では、特に断りがない限り、単数形は複数形を含み、その逆もある。「~を含む」という語は、「~を含むがそれ(ら)に限定されない」を意味する。さらに、本明細書においては、「概ね」、「略」、「実質的に」、「約」といった近似を表す語を、例えば、「ちょうど」、「付近」、「前後」、「~の3~5%以内」、「許容可能な製造公差の範囲内」、またはそれらの任意の論理的な組み合わせを意味する目的で使用することできる。
【0030】
本開示は、個々のユーザフィードバックに従った効率的な投与量の付加を可能にするスマート吸入器システムに関連する。エアロゾル薬剤送達システムは、当該薬剤に対する患者の生理学的反応を測定する身体装着型センサと組み合わせられる。薬剤送達システムは、薬剤の時間、頻度および投薬を追跡するのに対し、身体装着型センサは、以下のうち1つまたは複数の組み合わせを追跡する:i)血液への酸素付加、ii)心拍数、iii)血液中の二酸化炭素レベル、iv)呼吸数、v)呼吸形状、またはvi)呼吸のガス組成。双方とも、このデータを制御システムへ送信する。制御システムにおいて、このデータは分析され、薬剤投与量のより効率的な投与のために制御データが送達システムへ返送され得る。データは、薬剤の有効性についての診断情報と、ユーザによる吸入器の適切な操作とを提供するためにも分析され得る。
【0031】
下記に詳述する原理を採用し得る吸入器および薬剤の例を挙げると、テルブタリンを投与するブリカニールタービュヘイラーを含むSABA発作治療薬、およびVentolin吸入器、Aiomir Autohalerまたはサルブタモールを投与するAsmol吸入器がある。非ステイロイド系プリベンターの例を挙げると、クロモグリク酸ナトリウムを投与するIntal吸入器およびネドクロミルナトリウムを投与するTilade吸入器がある。ICSプリベンターの例を挙げると、Flixotide吸入器、Flixotide Accuhaler、プロピオン酸フルチカゾンを投与するフルカチゾンCipla吸入器、ベクロメタゾンを投与するQVAR吸入器またはQVAR autohaler、またはブデソニドを投与するPulmicortタービュヘイラーがある。SAMA薬物投与の例として、イプラトロピウムを投与するAtrovent計量エアロゾルがある。ICS/LABAの組み合わせの例を挙げると、シムビコートタービュヘイラー、シムビコートRapihaler、またはブデソニド/ホルモテロールを投与するDuoResp Spiromax、SeretideMDI、Seretide Accuhalerまたはプロピオン酸フルチカゾン/salmeteroを投与するフルカチゾン+サルメテロールCipla吸入器、プロピオン酸フルチカゾン/フランカルボン酸を投与するFlutiform吸入器、およびフルカチゾンフランカルボン酸/ビランテロールを投与するBreo Elliptaがある。LABA薬物投与の例を挙げると、ホルモテロールを投与するOxisタービュヘイラー、サルメテロールを投与するSerevent Accuhaler、およびインダカテロールを投与するOnbrez Breezhalerがある。LAMA薬物投与の例を挙げると、Spiriva Respimatおよびチオトロピウムを投与するSpiriva Handihaler、アクリジニウムを投与するBretaris Genuair、ウメクリジニウムを投与するIncruse Ellipta、およびグリコピロニウムを投与するSeebri Breezhalerがある。ICS/LAMA/LABAの例として、フルカチゾンフランカルボン酸/ウメクリジニウム/ビランテロールを投与するTrelegyElliptaがある。LAMA/LABAの組み合わせの例を挙げると、チオトロピウム/オロダテロールを投与するSpiolto Respimat、インダカテロール/グリコピロニウムを投与するUltibro Breezhaler、アクリジニウム/ホルモテロールを投与するBrimica Genuair、およびウメクリジニウム/ビランテロールを投与するAnoro Elliptaがある。
【0032】
図1Aは、例示的なスマート吸入器100の側面図である。図1Bは、例示的なスマート吸入器100の正面図である。吸入器100は、蒲鉾形アクチュエータ110と、投与量コンテナ(例えば、キャニスター112)と、スプレーコントローラアセンブリ114とを含む。スプレーコントローラアセンブリ114は、キャニスター112からの用量を調節することと、生理学的測定データを外部センサから収集することとを行うコントローラおよび他の電子機器を含む。アクチュエータ110は、開口端120およびマウスピース122を含む。アクチュエータ110は、キャニスター112を開口端120へ装填することが可能になる。典型的には、非使用時においてアクチュエータ110の内部を汚染から保護するようにキャップ(図示せず)がマウスピース122上に挿入され得る。
【0033】
キャニスター112に含まれるエンクロージャ130は、閉鎖端132と、他端上のアクチュエータノズル134とを含む。エンクロージャ130は、気相と、薬剤である液相とを保持する。投薬機構(例えば、絞り弁を有するポンプ140)は、エンクロージャ130の中間部分に据え付けられる。キャニスター112は、膨張チャンバへ接続された計量チャンバを含む。スプレーコントローラアセンブリ114の押圧によりキャニスター112が圧縮されてユーザから圧力が閉鎖端132へ付加されると、エンクロージャ130が絞り弁に相対して移動して、圧力がポンプ140へ付加されて、1回分の用量が空気混和され、当該用量がアクチュエータノズル134からユーザへ供給される。
【0034】
本例において、コントローラアセンブリ114は、円筒コンテナ152の一部である噛み合いカラー150を含む。噛み合いカラー150は、アクチュエータ110の開口端と噛み合い、エンクロージャ130の閉鎖端132と接触する。ユーザが圧力を円筒コンテナ152の上部へ付加すると、キャニスター112内のポンプ140が作動され得る。よって、アクチュエータ110およびキャニスター112のみを含む既存の吸入器は、コントローラアセンブリ114と噛み合ってデータを収集し、以下に述べるようなポンプ140の制御により薬剤投与量の量を制御する。コントローラアセンブリ114は、電子機器を含む。この電子機器は、キャニスター112の圧縮により1回分の用量が投与されたときのセンサおよびタイミングデータからの入力に基づいた吸入器100の使用量についてのデータを収集する。他の種類のエアロゾル吸入器が、吸入器中のコントローラアセンブリ114のコンポーネントを一体化させ得ることが理解されるべきである。
【0035】
上記したように、本開示中に説明する原理は、他の種類の吸入器に適用され得る(例えば、単一用量のカプセルの形態の薬剤コンテナを用いたドライパウダー吸入器)。ドライパウダー吸入器中の投薬機構は機械的押しボタンであり、カプセルが貫通されたときに起動される。空気が空気通路を通じて引き出されて吸入器内を旋回すると、貫通されたカプセルから薬剤が放出される。次に、ユーザは、薬剤を吸入する。類似のコントローラアセンブリは、吸入器と一体化させてもよいし、あるいは、orbeaモジュールとして既存の「データ処理能力の無い」ドライパウダー吸入器と噛み合わせてもよく、これにより、薬剤投与量の有効性決定のためのデータ収集が可能になる。
【0036】
図2は、吸入器データ収集システム200中のコントローラアセンブリ114のコンポーネントのブロック図である。システム200は、吸入器100およびコントローラアセンブリ114と、ユーザ上に取り付けられた生理学的センサ210と、遠隔外部デバイス212とを含む。吸入器100は、コントローラ220と、薬剤分配器および投薬機構222と、センサインターフェース224と、送受信機226とを含む。コントローラ220は、内部メモリを含み得るが、メモリデバイスをコントローラアセンブリ114内に設けてもよい。このようなメモリは、揮発型コンピュータメモリであり得、例えばRAM、DRAM、SRAMが用いられ得る。このような場合、遵守モニタは、情報を遵守モニタまたは薬剤送達デバイスの外部のコンピューティングデバイスへ連続的に送信する。他の実施形態において、不揮発性メモリフォーマットが用いられ得る(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、強誘電RAM(F-RAM)、光学および磁気コンピュータメモリ記憶デバイスなど)。メモリは、制御アセンブリ114によって収集されたデータを保存するために用いられ得る。
【0037】
センサインターフェース224は、センサ210からのデータ受信のためにセンサ210と通信する。本例において、通信は、ケーブルまたはワイヤを介して行われ得る。あるいは、無線通信をセンサインターフェース224とセンサ210との間に確立してもよい。送受信機226により、吸入器100および遠隔外部デバイス212からの制御データとの間のデータ交換を無線接続または有線接続を介して行うことが可能になる。吸入器100は、ユーザが吸入器100を起動させて1回分の用量が投与された時間を記録する投与量センサ228も含む。本例において、無線通信は、任意の適切なプロトコルであり得る(例えば、Bluetooth(登録商標) Low Energy)。Wi-Fi(IEEE 802.11)、Bluetooth(登録商標)、他の無線周波数、Infra-Red(IR)、GSM(登録商標)、CDMA、GPRS、3G、4G、W-CDMA、EDGEまたはDCDMA200または類似のプロトコル。
【0038】
本例において、投薬機構220は、キャニスター112へ付加される力およびよってキャニスターから付加される投与量を調整するバネ制御を含み得る。あるいは、投薬機構220は、ユーザによる起動動作に応答してコントローラ220によって所定の時間に起動されるように制御され得る。
【0039】
本例において、身体装着型センサ210は光電脈波計であり得、タイムスタンプに対する薬剤の効果に相関付けられる患者の生理学的データ(例えば、酸素飽和度)を定期的に記録する。本例において、タイムスタンプは、遠隔外部デバイス212によりコントローラアセンブリ114を通じて提供される。あるいは、コントローラ220をコントローラアセンブリ114に内蔵させて、タイムスタンプを提供してもよい。一例において、外部センサ210および空気圧力センサ228双方は、外部デバイス212からのタイムスタンプを独立して受信し得る。別の例において、吸入器センサ228は、マスターとして機能し、身体取付型センサ210は、吸入器センサ228からタイムスタンプを受信するスレーブデバイスとして機能する。タイムスタンプは、センサ210中の時計デバイスによって提供してもよい。このようなデータは、ベースライン心拍数、呼吸数、呼吸形状、酸素飽和度、CO2飽和度または呼吸ガス組成を含み得る。
【0040】
以下に述べるように、センサ210からのデータは、吸入器100から投与された用量の有効性の決定のために用いられる。よって、本例において、データは、センサ210によってデータパッケージ中のデータとして提供される。このデータパッケージは、一定期間における所定回数のセンサ測定を含む。例えば、標準的またはベースラインのサンプリングレートは、心拍数監視を60秒毎に15秒間または酸素飽和度監視を5分ごとに30秒間行うことであり得る。データパッケージは、24時間にわたる毎分あたりの15秒間の心拍数の記録であり得る。あるいは、血液酸素飽和度波形の収集を5分ごとに24時間行ってもよい。身体装着型センサ210は、コントローラ220との通信をセンサインターフェース224を介して行い得る。薬剤投与量の投与が検出されると、コントローラ220は、センサ210のサンプリングレートを指定期間(例えば、30分間)にわたって増加させ得、これにより、用量の有効性の評価のためのデータをより多く得ることができる。この指定期間後、サンプリングレートはベースラインサンプルレートに戻って、センサ210の電力を節約する。身体装着型センサ210は、サンプリングレートを増加させるための制御信号を外部デバイス212から直接またはコントローラアセンブリ114上のコントローラ220から直接受信し得る。コントローラ220の使用により、外部デバイス212が給電されていない場合または接続されていない場合であっても、データサンプリングが可能になる。
【0041】
本例において、身体装着型センサ210は、デバイスの一部であり得る(例えば、手首装着型ヘルスモニター、下着の内側に着用されるダイアフラム装着型呼吸モニタ、皮膚に取り付けられるかまたはシャツに縫い込まれる胸部装着型音響モニタ、皮膚下に挿入される恒久型ヘルスモニター、またはモバイルコンピューティングデバイス)。センサ210はまた、ドップラーレーダモーションセンサ、加速度計、温度計、または体重計を含み得、それぞれが、ユーザから測定された追加の生理学的データ(それぞれ、生体運動、身体活動、温度、および体重、酸素飽和度)を提供するように構成されている。任意選択的に、センサ210は、ユーザを監視する数個のセンサのうちの1つであり得る。以下に述べるように、センサ210からのデータは、吸入器100から投与された用量の有効性の決定のために用いられる。
【0042】
本例において、投与量センサ228は、吸入器100の空気路中に取り付けられ得る気流センサであり、ユーザの吸入開始時間と薬剤がトリガされた時間との間の関係を決定するための空気圧力/流れデータを提供する。吸入開始後、効果的な薬剤送達に最適である時間窓が存在する。ユーザによるトリガが吸入前であるかまたは早すぎる場合、薬剤は、気道の所望の部分に到達しなくなる。コントローラ220は、ユーザからのコントローラアセンブリ114への圧力付加に応答して)空気圧力センサ228の出力を読み取り、呼吸サイクルにおいてポンプ起動により薬剤の空気混和された1回分の用量の放出を行う最適なタイミングを決定するように、動作可能であり得る。例えば、コントローラ220は、用量センサ228からのデータがユーザによる空気吸入を示すまで、ポンプ起動を遅延させ得る。他のセンサが、用量の薬剤が分配されたことを検出するように構成され得る。用量検出手段は、以下のうち1つ以上を含み得る:音響センサ、振動センサ、サーミスタ、圧力センサ、圧力スイッチ、力センサ抵抗体、可聴音センサ、光学センサまたは近接センサ、または機械スイッチ。選択されたスイッチまたはセンサの種類に応じて、異なる信号が、分配された1回分の用量検出の検出に用いられ得る(例えば、1回分の用量が送達されたかの決定のために、圧力変化、温度変化、体積変化、可視光またはIRの光度の変化などが用いられ得る)。さらに、1回分の用量が送達されたかをさらに決定するために、2つ以上のセンサ読み取り値の組み合わせが用いられ得る。
【0043】
遠隔外部デバイス212は、スマートフォンなどのポータブルコンピューティングデバイスであり得、アプリケーション上において実行されて、図1B中のポンプ140を制御して吸入器100から提供される用量の体積を増減させるための制御データをコントローラ220のために決定する。あるいは、遠隔デバイス212は、アプリケーションサーバであり得、規則エンジン230を含む。遠隔外部デバイス212は、他の吸入器ユーザからのビッグデータを含むデータベース240へのアクセスを含み得る。このようなデータは、薬剤が所望の効果を奏しているか否かを決定するためのベースライン比較の精緻化に用いられ得る。データベース240は、ユーザが薬剤投与量の付加のために吸入器100を使用している際に正しい技術を用いているかの評価を支援するために、吸入器のユーザに関連する他の関連データも含み得る。
【0044】
図3A図3Bは、スマート吸入器100のコントローラ220および遠隔外部デバイス212上のアプリケーションによって実行される動作ルーチンのフロー図である。先ず、コントローラ220は、事前規定された期間がセンサ210からの最後のデータ送信から経過したかを決定する(300)。本例において、事前規定された期間は、24時間であり得る。あるいは、コントローラ220は、センサ210からのデータパケット送信を、(定期的にまたは1回分の用量が吸入器100から付加されたとコントローラ220が決定した場合に)リクエストし得る。本例において、データパケットは、薬剤投与量に応答したユーザまたは患者の呼吸数を示す生理学的データを含む。送信期間が経過したかまたはコントローラ220からリクエストされた場合、身体センサ210は、データパッケージをコントローラ220へ送信する(302)。次に、ルーチンは、(ユーザが吸入器100を用いて1回分の用量の薬剤を付加した際に)身体センサ210からのデータが薬剤作動期間において利用可能であるかを決定する(304)。データが利用不可能である場合、ルーチンは、身体センサ210からのデータパッケージをリクエストする(306)。本例において、コントローラ220は、薬剤投薬後の身体センサ210によるサンプリングレートを高くするリクエストをトリガし得る。次に、コントローラ220は、薬剤投与量の投与から事前規定された期間(例えば、20~30分)後に高分解能データを自動送信する。
【0045】
データが利用可能である場合、ルーチンは、このデータを評価して、「満足な」薬剤送達技術が実行されたかを規則エンジン230を用いて決定する(308)。例えば、ルーチンは、呼吸数および/または呼吸形状信号を吸入器100からの薬剤作動タイミングに重ね置き、このデータを規則エンジン230からの「満足な」薬剤送達技術のテンプレートと比較する。有効性が最大になるのは、ユーザの呼吸が1つの呼吸形状において行われた時点において吸入器100の作動を行ったときである。理想的な呼吸形状および相関する薬剤送達起動を、吸入器から収集されたデータからとられた呼吸形状における実際の起動時間と比較する。例えば、理想的な起動が行われるのは、ユーザが薬剤投与のトリガを自身の吸入開始から約0.25~1秒後に実行したときである。実際の吸入信号の開始は、圧力の急激な降下または吸入器中の流れの増加であり、これを理想と比較する。例えば、2秒間の遅延がある場合、ユーザは、自分の技術を変更するためのコーチングを受けることができ得る。本例において、薬剤投与後の生理学的反応の正否を規定するアルゴリズムが、2つのデータセットによって駆動される。先ず、薬剤による治療を必要とする病気を持つ患者の研究室ベースの試験を用いて、生理学的反応のベースラインを決定する。例えば、COPD治療のための薬剤の場合、COPD患者の研究室ベースの試験を用いて、呼吸速度、心拍数、SPO2、呼吸形状および他の関連生理学的パラメータが一定範囲の薬剤の摂取と共に変化する様態を追跡する。このデータセットにより、患者の通常時のベースラインからの呼吸速度、心拍数、SPO2、呼吸形状および他の関連生理学的パラメータの変化に対して統計的境界が規定される。例えば、研究室試験により、気管支拡張剤を服用している肺気腫の患者の反応の「予測される範囲」は、「5~12分間の吸入内における患者ベースラインからみたときの14~26%の心拍数低下」と規定され得る。
【0046】
ユーザが薬剤服用を開始すると、第1のデータセットは、実世界の第2のデータセットによってオーグメントされる。この第2のセットから、例えば「気管支拡張剤の服用後にRR、HR、SPO2などがxxxだけ変化する患者の場合のその後12ヶ月において入院する可能性は62%低い」という知見が得られる。本例において、目的は、患者を自宅において健康に保持するために肺の状態を管理することであり得る。よって、第2のデータセットにより、「正しい」および「誤った」生理学的反応を規定するより微細なアルゴリズムに繋がり得る。
【0047】
本ルーチンによれば、身体センサ210からの生理学的データのタイミングに薬剤作動を重ね置くことにより、薬剤投与量に対するユーザの生理学的反応も決定され、薬剤投与量の吸入後の上記期間におけるユーザの生理学的変化が決定される(310)。本ルーチンにおいては、薬剤投薬のタイミングと患者の吸気/呼気のタイミングとを比較し、薬剤が有効であるかを示す患者生理学的変化も探知する。この情報に基づいて、ルーチンを介入手順において用いて、ユーザの薬剤吸入挙動の変更または(有資格の医師との相談の上での)薬剤投与量の変更、投薬頻度の変更または薬剤種類の変更の推奨により、薬剤有効性の最適化を行うことができ得る。
【0048】
正しい技術との比較(308)後、ルーチンは、薬剤吸入技術が正しいかを規則エンジン230に従って決定する(312)。薬剤吸入技術が規則通りである場合、ルーチンは、ユーザからの生理学的データが予測される範囲内であるかまたは予測される範囲未満であるかまたは予測される範囲を超えるかを決定する(310)。規則エンジン230によれば、決定された薬剤吸入技術が正しくない場合、ルーチンは、吸入器100の最後の有意な使用以降に当該技術が向上したかについて、規則エンジン230の分析に基づいて決定する(316)。薬剤吸入技術が向上していない場合、本ルーチンは、技術向上のためのユーザフィードバックをアプリケーション、メッセージングまたは他の媒体を通じて提供する(318)。技術が向上している場合、本ルーチンは、対応する向上が生理学的に存在したかをステップ310において収集された情報に基づいて決定する(320)。
【0049】
生理学的変化に関連するデータに薬剤作動のタイミングを重ね置いた後、ルーチンは、当該生理学的反応が予測される範囲内に収まるかを決定する(314)。例えば、患者が気管支拡張剤を使用している場合、薬剤吸入後の5~10分間において呼吸形状の深さが大きくなる(吸入および呼気がより深くかつ長くなる)はずであり、これは、呼吸数の低下およびおそらくは心拍数の低下を示す。生理学的反応が予測される範囲内である場合(322)、介入は不要であるため、ルーチンは終了する。生理学的反応が予測未満であった場合(324)、これは、薬剤の処方不足、不正確な技術または薬剤の非有効性を示し得る。次に、ルーチンは、患者薬剤技術が正しいかを決定する(312)。生理学的反応が予測を上回る場合(326)、これは、薬剤の過剰処方に起因し得るかまたは当該薬剤が患者の状態に不適切であることであり得る。よって、生理向上が合った場合(320)、薬剤送達技術が正しいか(312)かまたは生理学的反応が予測を上回り(326)、ルーチンは、患者が既に薬剤投与量の変更を既に試行したかを決定する(328)。
【0050】
薬剤投与量の変更が既に試行されている場合、ルーチンは、当該変更が効果的ではないかまたは薬剤の使用または品質についての事前規定された安全範囲の制限にかかっているかを決定する(330)。当該変更が有効ではないかまたは制限にかかっている場合(330)、薬剤処方者(例えば、ヘルスケア専門家)は、薬剤変更が適切であり得る点が変更される(332)。用量変更が試行されていない場合(328)または薬剤の制限において変更が有効であるか否かが分かっている場合(330)、ルーチンは、次回の送達において用量変更を推奨し、生理学的状態への効果を観察する(334)。次に、ルーチンは、薬剤投与量を変更するためのデータパッケージを吸入器100へ送信する(336)。データパッケージが受信され、図2中のコントローラ220は、新規投与量を反映するように調剤および投薬機構設定を変更し得る(340)。あるいは、患者は、薬剤の服用頻度を多くせよとの指示がヘルスケア専門家からまたはモバイルデバイスを通じて付与され得る。次に、コントローラ220は、ユーザによる吸入器100の機械的作動を監視し、作動の時間および場所を記録する(342)。コントローラ220は、身体センサ210のサンプリングレートを所定の期間にわたって増加させて、新規投与量の有効性についてのデータを入手する(343)。コントローラ220は、事前規定された期間(例えば、24時間)が最後の作動から経過したかを決定する(344)。上記期間が経過している場合、コントローラ220は、データパッケージをセンサ210からコントローラ220へ送信させる。所定の期間が経過していない場合、ルーチンはループバックし、機械的作動を監視する(342)。
【0051】
上記のシステムによれば、特定の薬剤がユーザまたは患者の健康を意図通りに管理している旨を示す定量化された証拠が、関係者(例えば、ユーザまたは患者、支払人またはヘルスケア専門家)に対して提供される。図2中のコントローラ220から提供されたデータにより、薬剤の適用により所望の生理学的効果が得られている証拠を得ることができ得る。上記したように、吸入器からの薬剤投与量が現在過小使用されているかまたは過剰使用されている場合に吸入器からの薬剤投薬の最適化のために遠隔介入を行う機構が、直接ユーザまたは患者へまたはヘルスケアプロバイダによって提供され得る。図3A図3B中のルーチンにより、吸入器100から投与される薬剤による患者の生理学的状態に対する所望の効果の最終目標が達成されるかについての見通しが得られる。
【0052】
現行の吸入器の場合、病型、患者サイズ、性別、年齢、代謝率、短期の周期的な健康変化(例えば、悪化)および長期の健康悪化に関係無く、同一の投与量をポンプによって送達させる。上記の分析ルーチンは、生理学的フィードバックを分析して患者への用量を個人に合わせて調節することにより、これらの変動に合わせて調節を行う。そのため、吸入器において用量の変更が可能であるかまたは用量頻度の変更がユーザへの指示を介して可能であるかまたは異なる薬剤が処方可能であり得る場合、用量変更が可能になり得る。
【0053】
図4は、図1中の吸入器100などの吸入器を用いた患者からデータを入手するための例示的ヘルスケアシステム400のブロック図である。ヘルスケアシステム400は、薬剤投与量をユーザまたは患者410へ提供する吸入器(例えば、図1中の吸入器100)を含む。ヘルスケアシステム400は、データサーバ412、健康または在宅医療プロバイダ(HCP)サーバ414、電子医療記録(EMR)サーバ416、患者コンピューティングデバイス420、および図2のセンサ210を含み得る1つ以上の生理学的センサを含む。患者コンピューティングデバイス420および生理学的センサは、本例において患者420および吸入器100と共に同一場所に設置される。システム400において、これらのエンティティは全て、広域ネットワーク430(例えば、インターネット)へ接続されかつ広域ネットワーク430を介して相互通信するように構成される。広域ネットワーク430への接続は、有線型であってもよいし、無線型であってもよい。EMRサーバ416、HCPサーバ416、およびデータサーバ412は全て、別の場所における別個のコンピューティングデバイス上において実行され得、あるいは、これらのエンティティのうち2つ以上の任意の部分的組合せが、同一コンピューティングデバイス上において共に実行され得る。
【0054】
患者コンピューティングデバイス420は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットコンピュータまたは他のデバイスであり得る。患者コンピューティングデバイス420が、広域ネットワーク430を経て、患者410とシステム400の遠隔所在エンティティとの間を仲介するように構成されている。図4の具現例において、この仲介は、患者コンピューティングデバイス420上において実行するソフトウェアアプリケーションプログラム440により、達成される。患者プログラム440は、「患者アプリ」と称される専用アプリケーションであってもよいし、あるいは、健康プロバイダまたは在宅医療プロバイダによって提供されるウェブサイトと対話するウェブブラウザであってもよい。あるいは、センサ210および吸入器100が、Bluetooth(登録商標)などのプロトコルに基づき、ローカルの有線または無線ネットワーク(非図示)を介して患者コンピューティングデバイス420と通信する。システム400は、各患者と関連付けられた他の吸入器(図示せず)を含み得、これらの吸入器(図示せず)は、それぞれの関連付けられたコンピューティングデバイスおよび(恐らくは他の患者と共に共有される)関連付けられたHCPサーバを有する各患者と関連付けられる。システム400内の患者/吸入器ユーザは全て、データサーバ412によって管理され得る。
【0055】
上記したように、センサ210からのデータは、吸入器100からの薬剤投与量の適用と相関付けられ得る。センサ210および吸入器100からのさらなるデータは、分析モジュール454に関連して上記したような薬剤の有効性および患者の薬剤適用技術の追跡のために、コンピューティングデバイス420によって収集され得る。このようなデータは、吸入器100またはコンピューティングデバイス420からデータサーバ412へ送信され得る。分析モジュール454は、図3A図3B中のルーチンからの収集されたデータの分析を提供し得る(例えば、薬剤有効性の決定、個々の患者(例えば、患者410)が服用する投与量の追跡、または使用時における個々の患者による吸入器の適切な技術の決定)。
【0056】
本例において、吸入器100は、薬剤投与量からの生理学的データを無線プロトコルを介して患者コンピューティングデバイス420へ送信するように構成され、患者コンピューティングデバイス420は、このデータを患者プログラム440の一部として受信する。それから患者コンピューティングデバイス420は、プルオアプッシュ(pull or push)モデルに従って、生理学的データをデータサーバ412へ送信する。データサーバ412は、「プル」モデルに従って生理学的データをコンピューティングデバイス420から受信し得、これにより、コンピューティングデバイス420は、データサーバ412からのクエリに応答して生理学的データを送信する。あるいは、データサーバ412は、「プッシュ」モデルに従って生理学的データを受信し得、これにより、コンピューティングデバイス420は、吸入器から投与量が投与された後に生理学的データが利用可能になり次第、生理学的データをデータサーバ412へ送信する。上記したように、データサーバ412は、図2に示す規則エンジン230を実行し得る。さらに、データサーバ412は、データベース(例えば、データベース240)へアクセスして、収集データされた分析データを保存し得る。
【0057】
患者コンピューティングデバイス420から受信されたデータは、吸入器100と一意に関連付けられることによってシステム400中の任意の他の吸入器から収集された生理学的データから区別可能であるように、データサーバ412によって保存およびインデックス付けされる。この点に関し、図4では説明の都合上、1つの吸入器だけが示されているが、システム400は複数の吸入器を含み得る。データサーバ412は、吸入器100から受信されたデータからの各適用量について概要データを計算するように、構成され得る。データサーバ412は、患者コンピューティングデバイス420からデータを受信するようにも構成され得る(例えば、患者410が入力したデータ、患者についての挙動データ、または投与量/要約データ)。
【0058】
EMRサーバ414は、電子医療記録(EMR)を含む(すなわち、患者410について特異的な電子医療記録(EMR)と、患者410と類似の疾患を有する患者からなるより大きな母集団に対して包括的な電子医療記録(EMR)との両方)。EMRは、電子健康記録(EHR)とも呼ばれ、典型的には、患者の医療履歴(例えば、前回の状態、治療、合併症および現在の状態)を含む。EMRサーバ414は、例えば患者410が前回治療を受けた病院に配置され得る。EMRサーバ414は、恐らくはデータサーバ412からのクエリ受信に応答してEMRデータをデータサーバ412へ送信するように構成される。
【0059】
本例において、HCPサーバ416は、患者の呼吸治療について責任を負う健康/在宅医療プロバイダ(これは、個々のヘルスケア専門家または組織であり得る)と関連付けられる。HCPは、DMEまたはHME(国内/家庭用医療機材プロバイダ)とも呼ばれ得る。HCPサーバ416は、プロセス452をホストし得る。プロセス452について、以下により詳細に説明する。HCPサーバプロセス452の1つの機能として、データサーバ412からのクエリ受信に応答して、患者410に関連するデータをデータサーバ412へ送信することがある。
【0060】
いくつかの実装例において、データサーバ412は、HCPサーバ416と通信して、HCPの代行者(例えば、看護婦)への通知またはアクション推奨をトリガするかまたは多様な報告のサポートを行うように、構成される。実行されたアクションの詳細は、従事データの一部としてデータサーバ412によって保存される。HCPサーバ416は、分析モジュール454および患者プログラム440と通信するHCPサーバプロセス452をホストする。
【0061】
例えば、HCPサーバプロセス452は、吸入器の患者ユーザをコンプライアンス規則に従って監視する能力を含み得る。これらのコンプライアンス規則は、コンプライアンス期間(例えば、30日間)にわたる必要な吸入器使用量を、最小投与回数についてコンプライアンス期間内の一定の最小日数(例えば、21日間)にわたって指定する。概要データの後処理において、使用時間と順守規則からの最低持続時間とを比較することにより、最近の期間が順守セッションであるかが決定され得る。このような後処理の結果を「コンプライアンスデータ」と呼ぶ。このような順守データは、吸入器および他の機構を含み得る治療をヘルスケアプロバイダが個別調整する際に、用いられ得る。他の関係者(例えば、支払人)は、患者に対して償還が存在し得るかを決定するために、順守データを用い得る。HCPサーバプロセス452は、他のヘルスケア機能を有し得る(例えば、多数の患者からのデータ収集に基づいた薬剤の全般的利用の決定)。例えば、ヘルスケア組織は、分析アルゴリズムを実行して、薬剤を有効に使用している患者の母集団と、入院率低下との間の相関関係を決定し得る。別の例として、再入院の危険性が迫っているかを示す、薬剤前および薬剤後の使用の生理学的パターンの決定がある。別の例として、異なる薬剤商標(でありかつ同一種類の薬剤の)患者健康管理における有効性の分析がある。
【0062】
理解されるように、データサーバ412、EMRサーバ414、およびHCPサーバ416中のデータは、患者410に関連する機密データであることが多い。典型的には、機密データを別の当事者へ送る許可を患者410から提供する必要があることが多い。このような許可は、サーバ412、414、および416間のデータ転送に必要であり得る(ただし、このようなサーバが異なるエンティティによって操作されている場合)。
【0063】
分析モジュール454は、投与量アプリケーションおよび対応する生理学的データからデータを収集し得、個々のユーザに合わせてカスタマイズされた投与量を決定するために用いられ得る。他の保存されたデータが、投与量のさらなる個別調整のために用いられ得る。そのため、カスタマイズされた投与量は、ユーザに特有の生理、病型および活動に基づいて決定され得る。さらなるデータは、データベース中に保存され得、吸入器100の使用から受信されたデータの個人別の分析の支援のために、図3A図3B中のルーチンによって分析モジュール454の一部として用いられ得る。
【0064】
本例において、吸入器の投与量の有効性の測定に用いられ得るいくつかの技術が存在する。第1に、喘息ベースの薬剤(例えば、気管支拡張剤)の有効性が、呼吸数または呼吸速度に基づいて測定され得る。心拍または呼吸数が、光電脈波計センサから決定され得る。図5Aは、図2中の身体センサ210から決定され得る呼吸数のグラフである。図5Aに示すプロット500は、経時的に測定された呼吸数を示す。破線502は、図1中の吸入器100の起動から薬剤作動が発生する時間を示す。図5Aから分かるように、薬剤有効性は、薬剤作動後の呼吸数低下によって評価され得る。類似の分析が、薬剤有効性の決定のための経時的な心拍数の読み取り値のプロッティングに用いられ得る。
【0065】
図5Bは、吸入器(例えば、図1中の吸入器100)を通じたアルブテロールの投与前後の呼吸および心拍数を比較するグラフである。図5Bに示すバー520は、薬剤治療前の心拍数測定を示し、バー522は、治療後の心拍数測定を示す。バー522によって示される心拍数低下は、薬剤治療有効性を示す。同様に、図5Cに示すバー530は、治療前の呼吸速度測定を示し、バー532は、治療後の呼吸速度測定を示す。バー532によって示す呼吸速度低下は、薬剤治療の有効性を示す。
【0066】
薬剤投与前後の呼吸形状の比較のための別の技術があり得る。図5Cは、薬剤投与前の呼吸曲線550および薬剤投与後の呼吸曲線560のグラフである。これらの曲線は、呼吸をリットル/分によって示す。本例において、呼吸曲線550は、吸入ポイント552および呼気ポイント554を含む。呼吸曲線560上の吸入ポイント562および呼気ポイント564から分かるように、呼吸がより長くかつより深くなっており、これは、薬剤の有効性を示す。
【0067】
別の代替例として、パルスレートデータと吸入器100からの投与適用のタイミングとの比較があり得る。別の例として、光学センサまたはカプノグラフからの患者の呼吸からのCO2またはO2の感知と、上記CO2またはO2レベルと薬剤有効性との相関付けとがあり得る。別の例として、皮下組織中に埋設されたセンサからのCO2またはO2の感知があり得る。別の代替例として、パルスオキシメータセンサからのパルス測定に基づいた吸入器の投与の有効性の測定があり得る。
【0068】
図3A図3Bのフロー図は、図1中の吸入器100による薬剤投与の適用から収集されたデータを収集および分析せよとの例示的な機械可読指示を示す。本例において、機械可読命令は、以下によって実行されるアルゴリズムを含む:(a)プロセッサ;(b)コントローラ;および/または(c)1つ以上の他の適切な処理デバイス(単数または複数)。アルゴリズムは、有形媒体(例えば、フラッシュメモリ、CD-ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、デジタルビデオ(バーサタイル)ディスク(DVD)または他のメモリデバイス)上に保存されたソフトウェア中に埋設され得る。しかし、当業者であれば、アルゴリズム全体および/またはその一部を、プロセッサ以外のデバイスによって実行しかつ/またはファームウェアまたは専用ハードウェア中に周知の様態で埋設してもよい(例えば、これは、特定用途向け集積回路[ASIC]、プログラマブル論理デバイス[PLD]、フィールドプログラマブル論理デバイス[FPLD]、フィールドプログラマブルゲートアレイ[FPGA]、個別論理によって実行され得る)ことを理解する。例えば、インターフェースのコンポーネントのうちいずれかまたは全てを、ソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアによって実行することができる。また、フローチャートによって示される機械可読命令のうちいくつかまたは全てを手動で実行してもよい。さらに、例示的なアルゴリズムについて図3中に示すフローチャートを参照して述べているが、当業者であれば、例示的な機械可読命令を実行するための他の多数の方法も用いられ得ることを容易に理解する。例えば、ブロックを実行する順序を変更しかつおよび/または記載のブロックのうちいくつかを変更、除去または組み合わせてもよい。
【0069】
本出願で使用される「部品」、「モジュール」、「システム」などの用語は、ハードウェア(例えば、回路)、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、または1つ以上の具体的な機能を有する動作機械に関するエンティティのいずれかであるコンピュータ関連エンティティを概して指す。例えば、部品は、プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)上で実行される処理、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラム、および/またはコンピュータであり得るが、これらに限定されない。例として、コントローラと、コントローラ上で動作するアプリケーションの両方が部品であり得る。1つ以上の部品が、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在し得、ある部品が、1台のコンピュータ上でローカライズされたり、2台以上のコンピュータ間で分散されたりし得る。さらに、「デバイス」は、特別に設計されたハードウェア、具体的な機能の実行を可能にするソフトウェアの実行によって特殊化された被汎用化ハードウェア、コンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェア、またはこれらの組み合わせの形態をとることができる。
【0070】
本明細書中に用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定的なものではない。本明細書で使用している単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかな場合を除き、複数形も含むことが意図されている。さらに、発明を実施するための形態および特許請求の範囲において、「含む」、「有する」、またはそれらの活用形が使用されており、これらの用語は、「備える」という用語と同様に包括的であることが意図されている。
【0071】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての用語(技術用語および科学用語を含めて)は、当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。さらには、広く使用されている辞書で定義されているような用語は、当該技術分野の文脈における意味と一致するように解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されている場合を除き、理想化された意味や過剰に形式的な意味で解釈されることはない。
【0072】
以上、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、それらは例示目的でのみ提示されており、限定ではないものと理解すべきである。本発明について、1つ以上の実装形態に関して例示および説明してきたが、本明細書および添付の図面を読み、理解する上で、等価の変更および修正が生じるか、他の当業者に公知であろう。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されたかもしれないが、かかる特徴は、任意の所与または特定の用途に対して所望かつ有利となるように、他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る。したがって、本発明の幅と範囲は、上記実施形態のいずれによっても制限されるべきでない。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項およびその均等物に従って定義されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C