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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ドライブ装置一括管理装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/032 20160101AFI20241008BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02P29/032
G05B23/02 302Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022055808
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147992
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山本 遼太
(72)【発明者】
【氏名】朴 永男
(72)【発明者】
【氏名】宇治川 弘人
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-020124(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133066(WO,A1)
【文献】特表2016-512368(JP,A)
【文献】特開2019-129593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0363750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/032
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブ装置の識別データに紐づけられた1つ以上の制御信号の時系列データのうち前記ドライブ装置の稼働時間を表すデータを取得し、
前記ドライブ装置の現在までの前記稼働時間の合計である総稼働時間を計算し、
前記総稼働時間と、前記ドライブ装置を構成する部品および用品ごとにあらかじめ設定された推奨交換時期とを比較し、
前記総稼働時間が前記推奨交換時期以上となった場合に、前記部品および用品を特定する情報を有する交換候補データベースから、交換すべき前記部品および用品を特定する情報を前記推奨交換時期とともに出力するように構成された演算装置
を備え
前記演算装置は、
前記推奨交換時期をしきい値とする寿命曲線を有し、
前記ドライブ装置が過電流状態で運転された場合に、過電流状態での運転期間に応じて、前記推奨交換時期を早めるように寿命曲線を更新するドライブ装置一括管理装置。
【請求項2】
前記交換すべき前記部品および用品を特定する情報は、複数の候補に対応する情報を含む請求項1記載のドライブ装置一括管理装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記ドライブ装置の稼働時間を表すデータとして運転指令のデータを取得し、前記運転指令の時系列データを基に、前記総稼働時間を計算するとともに、前記ドライブ装置の過電流の検出を表す過電流検出のデータを取得し、前記過電流検出の時系列データを基に、前記過電流状態での運転期間を計算し、
前記運転指令のデータ及び前記過電流検出のデータは、1ビットの2値信号である請求項1または2に記載のドライブ装置一括管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドライブ装置の稼働状況にもとづいて、ドライブ装置の予防保全を行うドライブ装置一括管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場におけるモータ駆動用のドライブ装置は、故障が発生したドライブ装置を調査して、そのドライブ装置を構成する部品や用品のうち故障の原因となったものを特定し、それらを交換、修理してそのドライブ装置を稼働できる状態に復帰させる。故障の原因となった部品や用品を特定した後に、それらの型名等を調査し、調査された型名の部品や用品が生産終了等の場合には、代替品を調査する必要がある。調査された部品や用品は、発注、手配されて、これらの入手後に故障したドライブ装置の修理が可能になる。
【0003】
ドライブ装置の故障後に、故障原因の調査や故障原因となった部品や用品の調査、手配を行っていたのでは、実際に交換すべき部品や用品を入手する期間および故障修理を行う期間が長くなり、故障したドライブ装置のダウンタイムが長くなってしまう。ダウンタイムの長期化は、工場の生産性の低下に直結するため、装置のダウンタイムを低減させることが望まれている。ダウンタイムを短縮するために、予備のドライブ装置を備えておけばよいが、一部の部品の故障によるダウンタイムの回避するために予備のドライブ装置を多数備えるのは、コスト増大や保管場所等の確保等の問題を生じる。
【0004】
そこで、あらかじめ故障を生じる可能性のある部品や用品の寿命等にもとづいて、その部品や用品の交換時期を算出する予防保全技術が知られている(たとえば、特許文献1、2等参照)。特許文献1では、予防保全に有効な監視対象データに対し、一定の学習期間を設けて予測演算モデルの同定を行い、その予測演算データと実測データを用いて傾向監視、予防保全を行う。特許文献2では、高速ネットワークを利用し、コンデンサの温度情報、内部圧力情報を収集することで、操業中のドライブ装置に設けられたコンデンサの状態をタイムリーに監視し、コンデンサの温度特性および内部圧力の測定値があるしきい値を超えると軽故障と判断し、アラームを出力することで予防保全を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-153208号公報
【文献】特開2019-129593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された予防保全装置は、電動機および駆動装置の監視対象データにもとづいて予測演算モデルにて同定を行い、その予測演算データと実測データを用いて傾向監視および異常判定を行うことで予防保全している。この方法では、部品や用品ごとに、温度や電流等の異なるパラメータを実測する必要があり、実測のための測定装置が別途必要となる場合がある。
【0007】
また、異常判定には機器ごとに特徴あるパラメータを収集する必要があり、温度変化や電流値等が比較的長期にわたって安定する機器については、特異値を測定することが困難であり、このような機器では、予防保全の実現性が困難となるおそれがある。
【0008】
特許文献2に開示されたドライブ予防保全システムでは、ドライブ装置に搭載されたコンデンサの温度特性や圧力の特性が事前に判明している場合に適用が可能である一方、そのような特性が判明していないドライブ装置一般には適用ができず、また、コンデンサ以外の有寿命部品等について適用が困難である。
【0009】
本発明の実施形態は、上記の課題を解決するためのものであり、より多くのモータ駆動用のドライブ装置を容易に予防保全することが可能なドライブ装置一括管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、ドライブ装置の識別データに紐づけられた1つ以上の制御信号の時系列データのうち前記ドライブ装置の稼働時間を表すデータを取得し、前記ドライブ装置の現在までの前記稼働時間の合計である総稼働時間を計算し、前記総稼働時間と、前記ドライブ装置を構成する部品および用品ごとにあらかじめ設定された推奨交換時期とを比較し、前記総稼働時間が前記推奨交換時期以上となった場合に、前記部品および用品を特定する情報を有する交換候補データベースから、交換すべき前記部品および用品を特定する情報を前記推奨交換時期とともに出力するように構成された演算装置を備え、前記演算装置は、前記推奨交換時期をしきい値とする寿命曲線を有し、前記ドライブ装置が過電流状態で運転された場合に、過電流状態での運転期間に応じて、前記推奨交換時期を早めるように寿命曲線を更新する
【発明の効果】
【0011】
実施形態によれば、より多くのモータ駆動用のドライブ装置を容易に予防保全することが可能なドライブ装置一括管理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るドライブ装置一括管理装置を有するドライブ装置一括管理システムを例示する模式的なブロック図である。
図2】データ保存収集装置が有するデータベースを例示する模式的なテーブル図である。
図3】ドライブ装置一括管理装置が有するデータベースを例示する模式的なテーブル図である。
図4】ドライブ装置一括管理装置が有する部品の模式的な寿命特性図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係るドライブ装置一括管理システムを例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、ドライブ装置一括管理システム100は、ドライブ装置一括管理装置10と、データ保存収集装置20と、表示装置30と、ドライブ装置40,52,54,56と、制御ネットワーク102と、を備える。ドライブ装置一括管理装置10、データ保存収集装置20、表示装置30およびドライブ装置40,52,54,56は、制御ネットワーク102を介して、通信可能に相互に接続されている。この例では、4台のドライブ装置40,52,54,56が設けられているが、1台以上のドライブ装置が制御ネットワークに接続されていればよい。制御ネットワーク102は、産業用の通信用ネットワーク等であり、たとえば、定周期、高速で接続機器同士の確実な通信を行うことができる。制御ネットワーク102は、有線による通信に対応したものでもよいし、無線による通信に対応したものでもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0015】
ドライブ装置一括管理装置10は、制御ネットワーク102を介して、データ保存収集装置20に接続されている。ドライブ装置一括管理装置10は、データ保存収集装置20からドライブ装置40,52,54,56のそれぞれの稼働時間に関するデータを取得する。ドライブ装置一括管理装置10は、ドライブ装置40,52,54,56のそれぞれの稼働時間の合計である総稼働時間を計算し、ドライブ装置40,52,54,56を構成する部品および用品(以下、部品等という)の寿命特性にもとづいて、それらを交換すべき時期を出力する。ドライブ装置一括管理装置10は、交換すべき部品等の交換時期の出力時に、交換すべき部品等を特定するための情報を合わせて出力する。交換すべき部品等を特定するための情報は、たとえば、その部品等の回路図上の名称および型式名称等である。そのほか、その型式名称の部品等を供給するメーカ等の情報を合わせて出力するようにしてもよい。
【0016】
データ保存収集装置20は、制御ネットワーク102を介して、ドライブ装置40,52,54,56に接続されている。データ保存収集装置20は、ドライブ装置40,52,54,56から、ドライブ装置40,52,54,56のそれぞれの運転に関する制御信号を時系列データとして収集する。データ保存収集装置20が収集した時系列データは、ドライブ装置40,52,54,56ごとに、たとえばデータベースとして保存する。これらのデータは、データ保存収集装置20自体が有する記憶装置に保存してもよいし、たとえば、制御ネットワーク経由で接続されたデータサーバ等の記憶装置に保存するようにしてもよい。
【0017】
なお、データ保存収集装置20は、ドライブ装置以外にも、制御ネットワーク102に接続されている装置やセンサ等の各種機器からの制御信号の時系列データを収集することができる。たとえば、データ保存収集装置20は、制御ネットワーク102に接続されているプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等の制御コンピュータを介して、これらの制御信号を時系列データとして収集する。
【0018】
表示装置30は、ドライブ装置一括管理装置10が出力する交換時期の情報および交換すべき部品等を特定するための情報を出力する。この例では、HMI端末(図1では、HMIと表記)を表示装置として利用することとしているが、他の表示装置としてももちろんかまわない。
【0019】
ドライブ装置40,52,54,56は、それぞれに接続されたモータを駆動する。ドライブ装置40,52,54,56は、制御ネットワーク102に接続されたPLC等が生成する指令にしたがって、所望の回転速度や所望の駆動トルクでそれぞれに接続されたモータを駆動する。ドライブ装置は、自己の過電流や過電圧等の異常状態を検出した場合には、検出したタイミングや期間等を記憶することができる場合がある。ドライブ装置は、このような異常状態の内容や異常期間等によっては、ドライブ装置を構成する部品等の寿命に影響を及ぼすことがある。データ保存収集装置20は、このようなドライブ装置自身が生成する異常状態等に関連する制御信号を収集することができる。
【0020】
ドライブ装置40,52,54,56は、ドライブ装置一括管理装置10が識別できるように、それぞれの識別データを有する。この例では、ドライブ装置40は、識別データID1を有している。ドライブ装置52は識別データID2を有し、ドライブ装置54は識別データID4を有し、ドライブ装置56は識別データID6を有している。なお、制御ネットワーク102に接続されているその他の装置や機器にも識別データがそれぞれ割り当てられている。データ保存収集装置20が収集する時系列データは、識別データに紐づけされており、ドライブ装置一括管理装置10は、識別データを特定することにより、どのドライブ装置の制御信号であるかを識別することができる。
【0021】
なお、この例では、ドライブ装置40は、単独で設置され、単一または複数台のモータを駆動する。ドライブ装置52,54,56は、3台が複数段に積まれて設置され、各ドライブ装置52,54,56は、単一または複数台のモータを連動させて駆動する。このように、ドライブ装置は、制御ネットワーク102を介してデータ保存収集装置20に接続されていれば、どのような形態であってもかまわない。
【0022】
ドライブ装置一括管理装置10は、たとえば、演算装置および記憶装置を備えるコンピュータ装置である。ドライブ装置一括管理装置10は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して、読み出したプログラムの各ステップを演算装置で逐次実行する。上述、および、以下で説明するドライブ装置一括管理装置10の動作や機能は、演算装置で実行されるプログラムの1つ以上のステップによって実現される。
【0023】
実施形態のドライブ装置一括管理装置10の動作について説明する。
図2は、データ保存収集装置が有するデータベースを例示する模式的なテーブル図である。
図2には、識別データID1を有するドライブ装置40に関連して、データ保存収集装置20が収集する制御信号の時系列データを模式的に表したテーブル図が示されている。データベース12aは、たとえば、データ保存収集装置20が有する記憶装置に保存されている。なお、図2の例では、識別データごとの複数の制御信号の時系列データは、ドライブ装置40の場合について示されているが、他のドライブ装置52,54,56のデータも同様の形式でデータベース12aに格納されている。また、データベース12aには、ドライブ装置以外の装置や機器の制御信号の時系列データを含んでももちろんよい。データ保存収集装置20によって収集され、保存される制御信号は、あらかじめ設定されている。本実施形態では、制御ネットワーク102に接続されたすべてのドライブ装置40,52,54,56の選択された制御信号がデータベース12aに格納されるが、任意に選択されたドライブ装置のデータをデータベース12aに格納してももちろんよい。
【0024】
データベース12aには、識別データID1を有するドライブ装置40について、複数の制御信号の時系列データが格納されている。この例では、制御信号は、運転指令および過電流検出に関する時系列データが示されている。運転指令および過電流検出の時系列データは、時刻のデータに紐づけられている。時刻のデータには、その制御データを取得した年月日の情報を含めることができ、長期間にわたる制御データを識別することができる。
【0025】
この例では、運転指令および過電流検出は、“1”か“0”の1ビットの2値信号として示されている。運転指令が“1”のときに、運転指令はアクティブであることを示し、運転指令が“0”のときに、運転指令は非アクティブであることを示している。なお、制御信号は、1ビットのデータに限らないことは言うまでもない。
【0026】
図2に示すように、運転指令は、時刻t1,t2では非アクティブである。つまり、ドライブ装置40は、停止している。その後、時刻tiで運転指令は、アクティブとされ、時刻tnまで運転指令は、アクティブである。その後、時刻tn+1では、運転指令は非アクティブとされている。つまり、この例では、ドライブ装置40は、時刻tiで運転を開始し、時刻tnで運転を終了している。
【0027】
過電流検出は、ドライブ装置40が運転を開始した時刻tiでは、非アクティブであり、過電流非検出とされている。その後、時刻tn-1から時刻tnまでの期間について、過電流検出がアクティブとされ、この期間において過電流が検出されていることが示されている。なお、これの例では、iは2よりも大きい整数であり、n-2はi+1よりも大きい整数である。
【0028】
ドライブ装置一括管理装置10は、各ドライブ装置40,52,54,56の運転指令を監視しており、ドライブ装置40,52,54,56ごとにアクティブとなった運転指令の期間を記憶する。この例では、ドライブ装置一括管理装置10は、時刻tnと時刻tiとの差分を計算し、計算した差分をドライブ装置40の稼働時間として記憶する。その後、再度運転指令がアクティブとされた時刻と非アクティブとされるまでの時刻との差分を計算し、計算した差分を記憶された稼働時間に加算する。このようにして、ドライブ装置一括管理装置10は、ドライブ装置40,52,54,56ごとに、総稼働時間を計算し計算結果を記憶する。
【0029】
ドライブ装置一括管理装置10は、寿命を有する部品等ごとに推奨交換時期のデータを有する。推奨交換時期のデータは、あらかじめ設定されている。寿命を有する部品等は、たとえば、コンデンサやその複合部品であるコンデンサモジュール、電力用半導体によるスイッチング素子のパワーモジュール、光半導体素子を用いた絶縁部品等である。推奨交換時期のデータの具体例については後述する。
【0030】
図3は、ドライブ装置一括管理装置が有するデータベースを例示する模式的なテーブル図である。
図3には、データベース12bの例が模式的に示されている。データベース12bは、識別データID1を有するドライブ装置40を構成する部品等を特定するデータを格納している。データベース12bは、他のドライブ装置52,54,56を構成する部品等を特定するデータもデータベース12bに格納されているのは言うまでもない。
図3に示すように、データベース12bの識別データID1には、部品等の回路図上の記号、部品の名称および複数の交換可能な候補の名称(図3では、交換候補と表記)が格納されている。回路図上の記号は、たとえば表示装置30で表示される回路図記号である。なお、この例では、交換可能な候補は、2種類表示されているが、3種類以上でももちろんよい。部品等によっては、複数の交換可能な候補が用意されない場合もあり、その場合には、1種類の交換可能な候補の情報が格納される。交換候補の欄には、たとえば、その部品等の仕様書やカタログ等の情報のリンクを張るようにして、リンクとともに出力可能にしてもよい。
【0031】
ドライブ装置一括管理装置10は、ID1を有するドライブ装置40を構成する部品等ごとに推奨交換時期に達したか否かを監視する。ドライブ装置一括管理装置10は、推奨交換時期に達した部品等を検出した場合には、交換可能な部品等の候補に関する情報を表示装置30に出力する。表示装置30に出力する情報は、ドライブ装置40を特定する情報とともに、交換すべき部品等を特定する情報を含む。ドライブ装置40を特定する情報は、たとえば、HMI端末である表示装置30が表示しているドライブ装置40,52,54,56を含むシステム構成図において、ドライブ装置40をハイライトすることにより行われる。交換すべき部品等を出力する情報は、データベース12bからリストアップされた回路図上の記号、名称およびすべての交換すべき部品等の候補の型式名称である。出力する情報は、これに限らず、たとえば、ドライブ装置一括管理装置10の操作者が出力情報を任意に設定できるようにしてもよい。なお、総稼働時間を計算するドライブ装置が1台の場合には、表示装置30への出力情報には、ドライブ装置を特定する情報を含めなくてもよい。
【0032】
図4は、ドライブ装置一括管理装置が有する部品の模式的な寿命特性図の例である。
図4に示すように、ドライブ装置一括管理装置10は、ドライブ装置40,52,54,56ごとに、寿命を有する部品等の推奨交換時期のデータを有する。好ましくは、ドライブ装置一括管理装置10は、寿命を有するすべての部品等の推奨交換時期のデータを有している。
【0033】
寿命を有する部品等の推奨交換時期のデータは、たとえばアレニウスプロットにもとづいて設定された寿命曲線14である。好ましくは、寿命曲線14は、複数の寿命曲線14a,14b,14cを含んでいる。まず、寿命曲線14aについて説明する。
【0034】
工場内は、一定の環境温度に保たれているので、ドライブ装置40の運転時の装置内温度を設定し、その温度にもとづいて、あらかじめ寿命曲線14aが求められ、設定される。図4では、横軸は、ドライブ装置40の総稼働時間である。図4では、縦軸は、劣化指数である。劣化指数は、たとえば部品等ごとに実施された加速試験を実施した試験数量中の不良発生数にもとづいて設定される。つまり、寿命曲線14aは、ドライブ装置40の総稼働時間が長くなるほど、部品等の劣化度合いが大きくなることを示している。推奨交換時期は、その部品等が不良となる前の任意の適切な劣化指数を設定することによって決定される。
【0035】
寿命曲線14b,14cは、ドライブ装置40が一時的に過電流状態で運転された場合の曲線を示している。この例の寿命曲線14は、熱による部品等を構成する化成品等の劣化を主因として設定される。ドライブ装置40が過電流や過電圧等の異常状態に置かれたときに、ドライブ装置40を構成する部品等に加わる熱ストレスは大きくなる。
【0036】
この例では、総稼働時間(2)で、寿命曲線14bは、寿命曲線14aのデータが縦軸方向にシフトしている。つまり、稼働時間(2)で過電流を検出し、ドライブ装置40が過電流状態で運転された期間に応じて、その部品等の劣化指数が増大することを表している。寿命曲線14cの場合には、寿命曲線14bの場合よりも長い期間にわたって過電流状態が継続されている。そのため、寿命曲線14aの縦軸方向のシフト量が大きくなっている。なお、過電流状態時の対象の部品等の温度上昇等については、測定やシミュレーション等によりあらかじめ算出されている。過電圧状態の場合についても同様に、測定やシミュレーション等により温度上昇分が算出される。他の異常状態についても同様である。
【0037】
ドライブ装置一括管理装置10は、あらかじめ設定された寿命曲線14aを用いて、推奨交換時期の判定を行う。ドライブ装置40の稼働状況に異常状態が発生し、寿命曲線14aを異常状態の期間に応じて寿命曲線14b,14cに更新する。ドライブ装置一括管理装置10は、更新された寿命曲線14b,14cにより、その部品等の推奨交換時期を判定する。
【0038】
図2の場合では、時刻tn-1から時刻tnまでの期間では、過電流状態が検出されており、ドライブ装置一括管理装置10は、時刻tn-1から時刻tnまでの期間では、過電流状態に応じた温度上昇を生じるものとして、寿命曲線を更新する。
【0039】
なお、上述では、ドライブ装置の異常状態時における部品等の温度上昇により劣化指数が増大する場合としたが、これに限らない。たとえば、部品等ごとに、あらかじめ電圧値等他のパラメータによる加速試験の結果にもとづく寿命特性を測定し、結果を寿命曲線に反映させるようにしてもよい。また、推奨交換時期は1段階に限らず、2段階以上の複数段階のしきい値としてもよい。
【0040】
実施形態に係るドライブ装置一括管理装置10の効果について説明する。
実施形態に係るドライブ装置一括管理装置10は、データ保存収集装置20によって収集され、保存された識別データごとの制御信号にもとづいて、その識別データを有するドライブ装置の総稼働時間をリアルタイムで計算することができる。ドライブ装置一括管理装置10は、ドライブ装置ごとに、ドライブ装置を構成する有寿命の部品等の推奨交換時期のデータを有する。そのため、ドライブ装置一括管理装置10は、ドライブ装置を構成する部品等ごとに推奨交換時期に達したか否かを判定することができる。推奨交換時期は、その部品等の寿命に対して余裕をもって設定することができるので、ドライブ装置が故障等する前に、ドライブ装置一括管理装置10の操作者は、部品等を交換すべき時期を知ることができる。
【0041】
ドライブ装置一括管理装置10は、交換すべき部品等を特定する情報を格納するデータベース12bを有している。そのため、交換すべき部品等が推奨交換時期に達した場合に、その時期を出力するとともに、交換すべき部品等を特定して、その情報を出力することができる。交換すべき部品等の情報は、その部品等の型式名称や製造メーカ等の情報を含めることができるので、ドライブ装置一括管理装置10の操作者は、交換すべき部品等の手配を容易に行うことができる。交換すべき部品等の情報に関して、データベース12bには、複数の候補を格納することができるので、その部品等の製造中止等の場合にも、改めて対象部品等の調査を行う必要がなく、部品等の手配がよりスムーズになる。
【0042】
工場には、部品等の発注や納期管理を行なう発注管理システムが導入されている場合がある。出力された交換すべき部品等の情報をこのような発注管理システムに連携させることによって、部品等の発注、手配の自動化も可能となり、工場管理の省力化を実現することが可能になる。
【0043】
実施形態に係るドライブ装置一括管理装置10は、装置内や装置近傍の発熱にともなうドライブ装置の部品等の劣化指数にもとづいて作成された寿命曲線を推奨交換時期の判定に用いることができる。温度による寿命曲線は、アレニウスプロット等による確立した算定手法があり、部品等のメーカ等でも十分なデータを有する。そのため、より多くの部品等について寿命曲線を用意することができ、制御ネットワーク102に接続されたより多くのドライブ装置の予防保全を行うことが可能になり、ラインダウンの期間を短縮して、工場の生産性を向上させることができる。
【0044】
ドライブ装置一括管理装置10の寿命曲線は、ドライブ装置の過電流や過電圧のような異常状態におけるより大きな発熱等をともなう事象を生じた場合に、その事象の継続時間に応じて、更新される。更新された寿命曲線では、より短期間に劣化指数が上昇し得るので、高精度で部品等の寿命予測をし、ドライブ装置の予防保全を行うことができる。
【0045】
このようにして、モータ駆動用のドライブ装置を総合的に予防保全することが可能なドライブ装置一括管理装置を実現することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 ドライブ装置一括管理装置、12a,12b データベース、14,14a,14b,14c 寿命曲線、20 データ保存収集装置、30 表示装置、40,52,54,56 ドライブ装置、100 ドライブ装置一括管理システム
図1
図2
図3
図4