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特許7568668燃料電池システム、及び、燃料電池システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】燃料電池システム、及び、燃料電池システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241008BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/249
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022058146
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023149529
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2022-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久留 長生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 光由
【合議体】
【審判長】八木 誠
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-125291(JP,A)
【文献】特開平10-144331(JP,A)
【文献】特開2003-123818(JP,A)
【文献】特開2013-258004(JP,A)
【文献】特開2016-18639(JP,A)
【文献】特開2015-201266(JP,A)
【文献】特開2018-147737(JP,A)
【文献】特開2020-9663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記第1排燃料ガスラインから分岐し、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備え
前記排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率がそれぞれ設定される、燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガス供給源から燃料ガス供給ラインを介して接続され、燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガス供給ラインから分岐し、前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第1排燃料ガスラインに供給するためのバイパス供給ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池に供給される前記燃料ガスの一部が、前記バイパス供給ラインを介して前記第2燃料電池に供給され
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率がそれぞれ設定される、燃料電池システム。
【請求項3】
前記再循環ラインの接続箇所より下流側に接続され、前記燃料ガスを前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記排燃料ガスが流れる排燃料ガスラインに外部から水蒸気が供給されない、請求項1から4の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記排燃料ガスが流れる排燃料ガスラインから水蒸気が回収されない、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記第1排燃料ガスラインから分岐し、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率をそれぞれ設定する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項8】
燃料ガス供給源から燃料ガス供給ラインを介して接続され、燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガス供給ラインから分岐し、前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第1排燃料ガスラインに供給するためのバイパス供給ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池に供給される前記燃料ガスの一部が、前記バイパス供給ラインを介して前記第2燃料電池に供給される燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率をそれぞれ設定する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項9】
燃料ガス供給源から燃料ガス供給ラインを介して接続され、燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガス供給ラインから分岐し、前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第1排燃料ガスラインに供給するためのバイパス供給ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池に供給される前記燃料ガスの一部が、前記バイパス供給ラインを介して前記第2燃料電池に供給され、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項10】
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスが流れる第1排燃料ガスラインと、
前記第1排燃料ガスラインを介して前記第1燃料電池の下流側に接続され、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記第1排燃料ガスラインから分岐し、前記第1排燃料ガスラインを流れる前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及び再循環率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項11】
前記運転範囲は、前記第1燃料電池の燃料利用率が80%以下であることを規定する、請求項から10のいずれか一項に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項12】
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池を合計したシステム燃料利用率が90%以上である、請求項11に記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項13】
前記運転範囲は、前記排燃料ガスのS/C比が10以下であることを規定する、請求項から12のいずれか一項に記載の燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム、及び、燃料電池システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電デバイスの一つとして固体酸化物形燃料電池(SOFC)が知られている。固体酸化物形燃料電池は、ガスタービンや蒸気タービンのような他の発電デバイスと組み合わされることにより、複合発電システムとして利用することでより高効率の発電が可能である。複合発電システムでは、前段の固体酸化物形燃料電池に燃料ガスと酸化剤ガス(空気)を供給し、発電を行うとともに、固体酸化物形燃料電池から排出される出口燃料ガス(排燃料ガス)と出口酸化剤ガス(排空気)とを混合し、燃焼器で燃焼させて、後段のガスタービンや蒸気タービンに投入することで、これらのタービンに結合した発電機で発電を行う。タービンから排出される排ガスのエネルギは、更に、排気回収システムで回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3917838号公報
【文献】特許第3924243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前段の燃料電池の排燃料ガスを後段の燃料電池に供給するようにカスケード接続された燃料電池システムでは、上記特許文献2のように、前段の燃料電池の排燃料ガスを冷却することで排燃料ガスに含まれる過剰な水分を回収し、排燃料ガスのS/C比が後段の燃料電池に対して適切になるように排燃料ガスに燃料が追加されることがある。このようなシステムでは、前段の燃料電池の運転状態(例えば負荷率や燃料利用率など)によって排燃料ガスに含まれる水分量が変化するため、特に負荷変化時の過渡的な挙動において、後段の燃料電池にとって排燃料ガスのS/C比を適切に調整することが難しい。
【0005】
また固体酸化物形燃料電池では排燃料ガスの温度が数百度にも及び、排燃料ガスに含まれる水分を十分に回収するためには排燃料ガスを一旦約50~60℃程度まで冷却する必要があり、冷却及び再加熱用の熱交換器が大型化し冷却水などの冷熱源が必要になる。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、カスケード接続された後段の燃料電池に対して前段の燃料電池から供給される排燃料ガスのS/C比を簡易な構成で適切に調整し、高効率な燃料電池システム、及び、燃料電池システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る燃料電池システムは、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備える。
【0008】
他の態様に係る燃料電池システムは、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率をそれぞれ設定する。
【0010】
他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率をそれぞれ設定する。
【0011】
他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する。
【0012】
他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及び再循環率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、カスケード接続された後段の燃料電池に対して前段の燃料電池から供給される排燃料ガスのS/C比を簡易な構成で適切に調整可能な燃料電池システム、及び、燃料電池システムの運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2図1の燃料電池システムの運転方法を示すフローチャートである。
図3】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図4図3の燃料電池システムの運転方法を示すフローチャートである。
図5】燃料電池システムの性能試算例を比較例とともに示す図である。
図6図5に示される比較例の概略構成図である。
図7A】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図7B】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図7C】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図7D】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
図1は一実施形態に係る燃料電池システム1Aの概略構成図である。燃料電池システム1Aは、第1燃料電池2及び第2燃料電池4を備える。第1燃料電池2及び第2燃料電池4は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)であり、燃料ガスGf及び酸化剤ガスGoを用いた電気化学反応により発電を行う。燃料ガスGfは、例えば、メタンガス(天然ガス)又はプロパンガス等の炭化水素ガスであり、酸化剤ガスGoは、例えば、空気である。
【0017】
燃料ガスGfは、燃料ガス供給源6から燃料ガスライン8を介して第1燃料電池2に供給される。第1燃料電池2は複数の電池セル(不図示)を含んでおり、燃料ガスライン8は分岐することで第1燃料電池2を構成する各電池セルに対して並列に燃料ガスGfを供給する。
【0018】
第1燃料電池2の各電池セルから排出される第1排燃料ガスGef1は、第1排燃料ガスライン10を介して、第2燃料電池4に供給される。第2燃料電池4は前述の第1燃料電池2と同様に複数の電池セル(不図示)を含んでおり、第1排燃料ガスライン10は分岐することで第2燃料電池4を構成する各電池セルに対して並列に第1排燃料ガスGef1を供給する。
尚、第1燃料電池2及び第2燃料電池4に含まれる電池セルの数は同じであってもよく、異なってもよく、限定されない。
【0019】
第2燃料電池4から排出される第2排燃料ガスGef2は、第2排燃料ガスライン12を介して外部に排出される。第2排燃料ガスライン12上には、第2排燃料ガスGef2に含まれる未燃分を燃焼するための燃焼器(例えば触媒燃焼器)が設けられていてもよい。
【0020】
酸化剤ガスGoは、酸化剤ガス供給源14から酸化剤ガスライン16を介して第1燃料電池2に供給される。第1燃料電池2は複数の電池セル(不図示)を含んでおり、酸化剤ガスライン16は分岐することで第1燃料電池2を構成する各電池セルに対して並列に酸化剤ガスGoを供給する。
【0021】
第1燃料電池2の各電池セルから排出される第1排酸化剤ガスGeо1は、第1排酸化剤ガスライン18を介して、第2燃料電池4に供給される。第2燃料電池4は前述の第1燃料電池2と同様に複数の電池セル(不図示)を含んでおり、第1排酸化剤ガスライン18は分岐することで第2燃料電池4を構成する各電池セルに対して並列に第1排酸化剤ガスGeо1を供給する。
【0022】
第2燃料電池4から排出される第2排酸化剤ガスGeо2は、第2排酸化剤ガスライン20を介して外部に排出される。
【0023】
このような燃料電池システム1Aでは、第1燃料電池2から排出される第1排燃料ガスGef1が第2燃料電池4に供給されることで、第2燃料電池4の発電反応に用いられるように、第1燃料電池2及び第2燃料電池4の燃料ガス系統がカスケード接続されている。図1では、第1燃料電池2から排出される第1排酸化剤ガスGeo1が第2燃料電池4に供給されることで、第2燃料電池4の発電反応に用いられるように、第1燃料電池2及び第2燃料電池4の酸化剤ガス系統もカスケード接続されているが、酸化剤ガス系統はカスケード接続されていなくともよい。
【0024】
上記構成の燃料電池システム1Aでは、第1燃料電池2からの第1排燃料ガスGef1が流れる第1排燃料ガスライン10には、外部から水分供給及び外部へ水分回収されず、第2燃料電池4では、第1排燃料ガスGef1に含まれる水分を用いて改質が行われる。このような構成において、燃料電池システム1Aは、第1燃料電池2の燃料改質に必要な蒸気を自給するために、第1排燃料ガスライン10を流れる第1排燃料ガスGef1の一部を、燃料ガスライン8に再循環させるための再循環ライン21を備える。再循環ライン21には再循環ブロワ22が設けられており、再循環ブロワ22の動作状態に応じた流量の第1排燃料ガスGef1の一部が第1燃料電池2に再循環される。これにより、再循環ライン21によって第1燃料電池2に再循環される第1排燃料ガスGef1の流量を調整することにより、燃料ガスライン8に対して外部から水分を追加することなく、第1燃料電池2に供給される燃料ガスGfに含まれる水分量を、第1燃料電池2の改質反応に必要水分量になるように調整することができる。また、第1燃料電池2の燃料利用率を適正な値に設定することで第2燃料電池4に供給される第1排燃料ガスGef1に含まれる水分量を第2燃料電池4の発電反応に適した量に調整することが可能である。
尚、第1排燃料ガスGef1の再循環にはエゼクタを用いてもよい。
【0025】
続いて上記構成を有する燃料電池システム1Aの運転方法について説明する。図2図1の燃料電池システム1Aの運転方法を示すフローチャートである。
【0026】
燃料電池システム1Aについてシステム全体の目標出力Pxが設定される(ステップS100)。目標出力Pxは、燃料電池システム1Aを運用する際に定常的に出力される仕事量であり、例えば燃料電池システム1Aの定格出力の設計値である。このような目標出力Pxは、燃料電池システム1Aが電力系統に電力を供給するために接続されている場合には、電力系統における需給状態に応じて、燃料電池システム1Aが受信する出力指令に基づいて決定されてもよい。尚、第1燃料電池2と第2燃料電池4の各出力は同じであっても、異なっていても合計の出力が目標出力Pxを達成できればよい。
【0027】
続いて燃料電池システム1Aに対する燃料ガスGfの全体供給量Q0(初期値)及びシステム燃料利用率Ufを設定する(ステップS101)。そして続いて第1燃料電池2に対する燃料ガスGfの供給量Q1、及び、第1燃料電池2の燃料利用率Uf1に基づいて、第1燃料電池の出力電流値I1が算出される(ステップS102)。続いて、ステップS102で算出された第1燃料電池2の出力電流値I1に対応する第1燃料電池2の出力電圧値V1が算出される(ステップS103)。ステップS103における出力電圧値V1の算出は、予め特定された第1燃料電池2の出力特性(I-V特性)に基づいて行われる。続いてステップS102で算出された第1燃料電池2の出力電流値I1、及び、ステップS103で算出された第1燃料電池2の出力電圧値V1に基づいて、第1燃料電池2の出力P1(=I1×V1)が算出される(ステップS104)。
【0028】
続いて第2燃料電池4に対する第1排燃料ガスGef1の供給量Q2が算出される(ステップS105)。具体的には第1排燃料ガスGef1の供給量Q2は、ステップS101で設定された燃料ガスGfの全体供給量Q0から、第1燃料電池2で消費される燃料ガスGfの流量(=Q1×Uf1)を減算することで求められる。
【0029】
続いて、ステップS105で算出された第1排燃料ガスGef1の供給量Q2で第2燃料電池4で発電を行なった場合にシステム燃料利用率Ufが設定された値となるよう第2燃料電池4の燃料利用率Uf2が算出される(ステップS106)。ステップS106では、例えば燃料電池システム1Aの全体の燃料利用率Ufを用いて、次式により第2燃料電池4の燃料利用率Uf2が算出される。
Uf2=(Q0×Uf-Q1×Uf1)/Q2
【0030】
続いてステップS105で算出された第1排燃料ガスGef1の供給量Q2、及び、ステップS106で算出された第2燃料電池4の燃料利用率Uf2に基づいて、第2燃料電池4の出力電流値I2が算出される(ステップS107)。続いて、ステップS107で算出された第2燃料電池4の出力電流値I2に対応する第2燃料電池4の出力電圧値V2が算出される(ステップS108)。ステップS108における出力電圧値V2の算出は、予め特定された第2燃料電池4の出力特性(I-V特性)に基づいて行われる。
【0031】
続いてステップS107で算出された第2燃料電池4の出力電流値I2、及び、ステップS108で算出された第2燃料電池4の出力電圧値V2に基づいて、第2燃料電池4の出力P2(=I2×V2)が算出される(ステップS109)。
【0032】
続いてステップS104で算出された第1燃料電池2の出力P1、及び、ステップS109で算出された第2燃料電池4の出力P2に基づいて、燃料電池システム1Aの全体出力P(=P1+P2)が算出される(ステップS110)。そしてステップS110で算出された全体出力Pが、ステップS100で設定された目標出力Pxになっているか否かが判定される(ステップS111)。その結果、全体出力Pが目標出力Pxになっていない場合(ステップS111:NO)、ステップS101で設定した燃料ガスGfの全体供給量Qを変更し(ステップS112)、処理をステップS102に戻すことで一連の演算がやり直される。このような一連の演算は、全体出力Pが目標出力Pxになるまで繰り返し実施されることにより、最適な運転条件が探索される(ステップS111:YES)。このようにして得られた最終的な計算結果は、運転条件として出力される(ステップS113)。
【0033】
図3は他の実施形態に係る燃料電池システム1Bの概略構成図であり、図4図3の燃料電池システム1Bの運転方法を示すフローチャートである。
【0034】
図3に示すように、燃料電池システム1Bは、前述の実施形態に係る燃料電池システム1A比べて、バイパスライン30を更に備える点で異なる。バイパスライン30は、燃料ガスライン8のうち再循環ライン21の接続箇所より上流側と、第1排燃料ガスライン10のうち再循環ライン21の接続箇所より下流側とを接続することにより、燃料ガスライン8を流れる燃料ガスGfの一部が、第1燃料電池2をバイパスして第2燃料電池4に供給されるように構成される。
【0035】
このような構成を有する燃料電池システム1Bの設計では、図4に示すステップS200~S201,及び、S203~S214は、前述の図2を参照したフローチャートのステップS100~S213と同様であるが、ステップS202において、第1燃料電池2に対する燃料ガスGfの供給量Q1が、ステップS201で設定した全体供給量Q0、及び、燃料ガスGfのうちバイパスライン30を介して第1燃料電池2をバイパスして第2燃料電池4に供給される割合(バイパス率R)に基づいて算出される点で異なる。具体的には、ステップS202では、第1燃料電池2に対する燃料ガスGfの供給量Q1が、次式により求められる。
Q1=Q0×(1-R)
【0036】
このように燃料電池システム1Bでは、第2燃料電池4には第1燃料電池2からの第1排燃料ガスGef1に加えて、バイパスライン30を介して燃料ガスGfの一部が供給される。これにより、システム全体の燃料利用率を90%以上に高めた場合においても、第2燃料電池4に供給される第1排燃料ガスGef1における燃料濃度を高め、S/C比を適切な範囲に改善できる。その結果、燃料電池システム1Bでは、従来の燃料電池システムに比べて、全体の発電効率を更に向上させることができる。
【0037】
続いて前述の燃料電池システム1A及び1Bの具体的な試算例について、図5を参照して説明する。図5は燃料電池システム1A及び1Bの試算例を比較例とともに示す図であり、図6図5に示される比較例の概略構成図である。尚、比較のため各システムの第1燃料電池および第2燃料電池は同一仕様の燃料電池モジュール2台用いるものとする。
【0038】
尚、図5に示される比較例に係る燃料電池システム1Cは、前述の燃料電池システム1A及び1Bを構成する第1燃料電池2及び第2燃料電池4が、燃料ガスGf及び酸化剤ガスGoに対して互いに並列に接続された構成を有する。すなわち比較例に係る燃料電池システム1Cは、第1燃料電池2及び第2燃料電池4がカスケード接続されていない点において前述の各実施形態に係る燃料電池システム1A及び1Bと基本的構成が異なる。
【0039】
図5の試算結果によれば、燃料電池システム1Aでは、システム燃料利用率を「90%」に設定し、第1燃料電池2の燃料利用率Uf1を「70%」とした場合に、第2燃料電池の燃料利用率Uf2は「74.3%」となるが、S/Cは「7」であり標準的なS/C「3」に対して蒸気供給が過剰となり、燃料濃度が薄くなり発電特性は低下する。それに対して燃料電池システム1Bでは、同じくシステム燃料利用率を「90%」に設定し、第1燃料電池2の燃料利用率Uf1を「73%」に設計した場合において、第2燃料電池の燃料利用率Uf2は「80.6%」となり、S/Cも「3」と適切な値を維持できている。これにより、燃料電池システム1Bでは、バイパスライン30を介して燃料ガスGfの一部を第1燃料電池2をバイパスして第2燃料電池4に直接供給することで、第2燃料電池のS/Cを適正な値に維持したうえで、システム燃料利用率を高めることが可能である。
【0040】
また燃料電池システム1Aでは、第1燃料電池2の出力電流値I1が「1.027A」であるのに対して第2燃料電池の出力電流値I2が「0.292A」である。これに対して燃料電池システム1Bでは、第1燃料電池2の出力電流値I1が「0.829A」であるのに対して第2燃料電池の出力電流値I2が「0.449A」であり、燃料電池システム1Aに比べて両者の差が少なくそれぞれを適切な電流域で運転できている。
【0041】
また燃料電池システム1Aの全体の発電効率は「67.5%」であり、一般的なシステムである比較例に係る燃料電池システム1Cの「64.2%」に比べて良好である。これは燃料電池システム1Aでは第1燃料電池2及び第2燃料電池4をカスケード接続して、更に、再循環ライン21によって第1排燃料ガスGef1の一部を第1燃料電池2に再循環させることで、比較例に係る燃料電池システム1Cでは達成が困難なレベルまでシステム燃料利用率を向上できたことによるものである。そして燃料電池システム1Bでは、全体の発電効率が「69.7%」を達成しており、更に良好な発電効率が得られている。これは、燃料電池システム1Bでは、バイパスライン30を介して燃料ガスGfの一部を第1燃料電池2をバイパスして第2燃料電池4に直接供給することで、第1燃料電池2と第2燃料電池4の出力割合のアンバランスが燃料電池システム1Aに比べ改善され、同時に第2燃料電池4のS/Cを適正な値に設定できたことによると考えられる。
【0042】
図7A図7Dは他の実施形態に係る燃料電池システム1Dの概略構成図である。燃料電池システム1Dは、前述の実施形態と同様に第1燃料電池2及び第2燃料電池4を備えるが、これらの燃料電池は、標準化された少なくとも1つの燃料電池モジュールを含んで構成される。具体的には、第1燃料電池2は、標準化された少なくとも1つの第1燃料電池モジュール40aを含んで構成され、第2燃料電池4は、標準化された少なくとも1つの第2燃料電池モジュール40bを含んで構成される。
【0043】
尚、第1燃料電池2に含まれる複数の第1燃料電池モジュール40aの上流側は、燃料ガスライン8に対して互いに並列に接続されることにより、燃料ガスライン8からの燃料ガスGfが複数の第1燃料電池モジュール40aに対して並列に供給されるように構成される。また複数の第1燃料電池モジュール40aの下流側は第1排燃料ガスライン10に対して互いに並列に接続されることにより、複数の第1燃料電池モジュール40aからの第1排燃料ガスGef1は、第1排燃料ガスライン10に対して合流して排出されるように構成される。
【0044】
また第2燃料電池4に含まれる複数の第2燃料電池モジュール40bの上流側は、第1排燃料ガスライン10に対して互いに並列に接続されることにより、第1排燃料ガスライン10からの第1排燃料ガスGef1が複数の第2燃料電池モジュール40bに対して並列に供給されるように構成される。また複数の第2燃料電池モジュール40bの下流側は第2排燃料ガスライン12に対して互いに並列に接続されることにより、複数の第2燃料電池モジュール40bからの第2排燃料ガスGef2は、第2排燃料ガスライン12に対して合流して排出されるように構成される。
【0045】
尚、図7A図7Dでは燃料電池システム1Dの構成を概略的に示すために、前述の再循環ライン21及び酸化剤ガス側の各ラインに関する構成は省略されている。
【0046】
燃料電池システム1Dでは、第1燃料電池2に含まれる第1燃料電池モジュール40aの数と、第2燃料電池4に含まれる第2燃料電池モジュール40bの数との比を調整することで、燃料電池システム1Dにおけるカスケード比が可変となっている。図7A図7Dには、それぞれ異なるカスケード比に対応する燃料電池システム1Dの概略構成の例が示されている。図7Aでは、第1燃料電池2は1つの第1燃料電池モジュール40aを含むとともに、第2燃料電池4が1つの第2燃料電池モジュール40bを含むことにより、カスケード比が「1:1」である構成が示されている。また図7Bでは、第1燃料電池2は4つの第1燃料電池モジュール40aを含むとともに、第2燃料電池4が3つの第2燃料電池モジュール40bを含むことにより、カスケード比が「4:3」である構成が示されている。また図7Cでは、第1燃料電池2は3つの第1燃料電池モジュール40aを含むとともに、第2燃料電池4が2つの第2燃料電池モジュール40bを含むことにより、カスケード比が「3:2」である構成が示されている。また図7Dでは、第1燃料電池2は2つの第1燃料電池モジュール40aを含むとともに、第2燃料電池4が1つの第2燃料電池モジュール40bを含むことにより、カスケード比が「2:1」である構成が示されている。
【0047】
このような燃料電池システム1Dにおける第1燃料電池モジュール40aの台数、及び、第2燃料電池モジュール40bの台数の比(カスケード比)は、第1排燃料ガスGef1の供給量が、第2燃料電池4の燃料利用率が適切な値となるよう設定される。これにより、燃料電池システム1Dでは前述の実施形態に比べて、更に発電効率を向上させることができる。また第1燃料電池2及び第2燃料電池4をそれぞれ標準化された燃料電池モジュールを単位とした構成にすることで、要求されたシステム出力に応じてより高効率で自由なシステム構成が可能となる。
【0048】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0050】
(1)一態様に係る燃料電池システムは、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備える。
【0051】
上記(1)の態様によれば、再循環ラインによって第1燃料電池の排燃料ガスの一部が第1燃料電池に再循環される。これにより再循環ラインによる排燃料ガスの再循環量を調整することで、外部からの水分供給なしで第1燃料電池に供給される燃料ガスのS/C比を好適に設計範囲に調整できる。
【0052】
(2)他の態様に係る燃料電池システムは、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備える。
【0053】
上記(2)の態様によれば、第1燃料電池に供給される燃料ガスの一部が、バイパス供給ラインを介して、第2燃料電池にも供給される。これにより、第2燃料電池には第1燃料電池からの排燃料ガスに加えて、燃料ガスの一部が供給される。そのため、バイパス供給ラインを介して第2燃料電池にも供給される燃料ガスの量を調整することで、第2燃料電池に供給される排燃料ガスのS/C比をより好適な条件に調整できる。
【0054】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む。
【0055】
上記(3)の態様によれば、第1燃料電池及び第2燃料電池は、それぞれ標準化された複数の燃料電池モジュールを含んで構成される。第1燃料電池及び第2燃料電池をそれぞれ標準化された燃料電池モジュールを単位とした構成にすることで、要求されたシステム出力に応じてより高効率で自由なシステム構成が可能となる。
【0056】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記排燃料ガスが流れる排燃料ガスラインに外部から水分が供給されない。
【0057】
上記(4)の態様によれば、第1燃料電池からの排燃料ガスが第2燃料電池にとって好適なS/C比を有するため、外部から水分供給を行う必要がない。すなわち、第2燃料電池において改質に必要な水分を、第1燃料電池の排燃料ガスによって良好に賄うことができる(自給できる)。
【0058】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記排燃料ガスが流れる排燃料ガスラインから水蒸気が回収されない。
【0059】
上記(5)の態様によれば、第1燃料電池からの排燃料ガスが第2燃料電池にとって好適なS/C比を有するため、排燃料ガスラインから水蒸気を回収することが不要となる。すなわち、第2燃料電池において改質に必要な水分を、第1燃料電池の排燃料ガスによって良好に賄うことができる(自給できる)。
【0060】
(6)一態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率をそれぞれ設定する。
【0061】
上記(6)の態様によれば、前記排燃料ガスに含まれる水分量が外部からの水分の供給や回収することなく、また前記第2燃料電池の排燃料ガスの再循環によらずに、前記排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率がそれぞれ設定される。その結果、システム構成を簡易化できるとともに、負荷の過渡状態においても第2燃料電池のS/Cの挙動に遅れが生じにくく、第2燃料電池に供給される排燃料ガスのS/C比を好適に維持することができる。
【0062】
(7)他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備える燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率をそれぞれ設定する。
【0063】
上記(7)の態様によれば、第1燃料電池に供給される燃料ガスの一部が、バイパス供給ラインを介して、第2燃料電池にも供給される。これにより、第2燃料電池には第1燃料電池からの排燃料ガスに加えて、燃料ガスの一部が供給される。そのため、バイパス供給ラインを介して第2燃料電池にも供給される燃料ガスの量を調整することで、第2燃料電池に供給される排燃料ガスのS/C比をより好適な条件に調整できる。
【0064】
(8)他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記燃料ガスを、前記第1燃料電池をバイパスして前記第2燃料電池に供給するためのバイパス供給ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及びバイパス率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する。
【0065】
上記(8)の態様によれば、第1燃料電池及び第2燃料電池の燃料利用率とともに、第1燃料電池及び第2燃料電池を構成する燃料電池モジュールの出力比を設定することで、排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように調整できる。
【0066】
(9)他の態様に係る燃料電池システムの運転方法は、
燃料ガスを用いて発電可能な第1燃料電池と、
前記第1燃料電池の排燃料ガスを用いて発電可能な第2燃料電池と、
前記排燃料ガスの一部を前記第1燃料電池に再循環するための再循環ラインと、
を備え、
前記第1燃料電池は、前記燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第1燃料電池モジュールを含み、
前記第2燃料電池は、前記排燃料ガスに対して互いに並列に接続され、且つ、標準化された複数の第2燃料電池モジュールを含む燃料電池システムの運転方法であって、
前記第2燃料電池へ供給される燃料ガスのS/C比及びシステム燃料利用率が予め設定される運転範囲になるように、前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池の燃料利用率及び再循環率、並びに、前記複数の第1燃料電池モジュールと前記複数の第2燃料電池モジュールとの出力比をそれぞれ設定する。
【0067】
上記(9)の態様によれば、第1燃料電池及び第2燃料電池の燃料利用率とともに、第1燃料電池及び第2燃料電池を構成する燃料電池モジュールの出力比を設定することで、排燃料ガスのS/C比が予め設定される運転範囲になるように調整できる。
【0068】
(10)他の態様では、上記(6)から(9)のいずれか一態様において、
前記運転範囲は、前記第1燃料電池の燃料利用率が80%以下であることを規定する。
【0069】
上記(10)の態様によれば、上記構成によって第1燃料電池の燃料利用率を80%以下に抑える運転が可能となる。
【0070】
(11)他の態様では、上記(10)の態様において、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池を合計したシステム燃料利用率が90%以上である。
【0071】
上記(11)の態様によれば、上記構成によって第1燃料電池、及び第2燃料電池の燃料利用率をそれぞれ80%以下に抑制しつつシステム燃料利用率を90%以上とすることでシステム全体の発電効率を高めた運転が可能となる。
【0072】
(12)他の態様では、上記(6)から(11)のいずれか一態様において、
前記運転範囲は、前記排燃料ガスのS/C比が10以下であることを規定する。
【0073】
上記(12)の態様によれば、上記構成によって排燃料ガスのS/C比が10以下に抑える運転が可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料電池システム
2 第1燃料電池
4 第2燃料電池
6 燃料ガス供給源
8 燃料ガスライン
10 第1排燃料ガスライン
12 第2排燃料ガスライン
14 酸化剤ガス供給源
16 酸化剤ガスライン
18 第1排酸化剤ガスライン
20 第2排酸化剤ガスライン
21 再循環ライン
22 再循環ポンプ
30 バイパスライン
40a 第1燃料電池モジュール
40b 第2燃料電池モジュール
Gf 燃料ガス
Gef1 第1排燃料ガス
Gef2 第2排燃料ガス
Go 酸化剤ガス
Geо1 第1排酸化剤ガス
Geо2 第2排酸化剤ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D