(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241008BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2022133744
(22)【出願日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 征也
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156063(JP,A)
【文献】特開2011-209457(JP,A)
【文献】特開2015-022013(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013008496(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23 - 35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な車両用表示装置に対して第一の検査を行なって第一補正値を算出し、前記第一補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
前記車両用表示装置に対して第二の検査を行なって第二補正値を算出し、前記第二補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
を含み、
前記第一補正値および前記第二補正値は、画像横方向または画像縦方向の正規の軸方向に対する投影される画像の軸の傾斜を低減させるように、前記車両用表示装置の表示デバイスに対して画像表示領域を補正させる値であり、
前記第一の検査では、前記車両用表示装置は検査台に設置されて検査用のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第一補正値は、前記検査用のウインドシールドへ画像を投影したときの前記正規の軸方向に対する前記画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出され、
前記第二の検査では、前記車両用表示装置は車両に設置されて前記車両のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第二補正値は、前記車両のウインドシールドへ画像を投影したときの前記正規の軸方向に対する前記画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出され、
前記第二の検査において、前記表示デバイスは、前記第一補正値によって補正された画像表示領域に画像を表示
し、
前記車両において前記車両用表示装置の交換がなされる場合、前記車両から取り外される前記車両用表示装置の前記第二補正値が前記車両に取り付けられる新たな前記車両用表示装置の前記不揮発性メモリに移行され、
新たな前記車両用表示装置の前記表示デバイスは、前記第二の検査において、移行された前記第二補正値によって補正された画像表示領域に画像を表示する
ことを特徴とする車両用表示装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚像を補正する技術がある。特許文献1には、スクリーンに中間像を形成する中間像形成部と、中間像を透過反射部材に向けて投射することにより虚像を表示させる投射部と、虚像に関する虚像情報を入力する入力部と、虚像情報に基づいて、虚像の不具合を補正するように中間像をスクリーン内で回転させる補正部と、を備える表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用表示装置において、画像の傾斜による位置ずれを効率よく調整できることが望ましい。例えば、部品位置や筐体の据え付け状態を調整する等の機械的な手段によって位置ずれを調整する場合、調整工程における作業手順が複雑となりやすい。車両用表示装置において、画像の傾斜による位置ずれを効率よく調整できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、画像の傾斜による位置ずれを効率よく調整できる車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置の調整方法は、ウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な車両用表示装置に対して第一の検査を行なって第一補正値を算出し、前記第一補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、前記車両用表示装置に対して第二の検査を行なって第二補正値を算出し、前記第二補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、を含み、前記第一補正値および前記第二補正値は、画像横方向または画像縦方向の正規の軸方向に対する投影される画像の軸の傾斜を低減させるように、前記車両用表示装置の表示デバイスに対して画像表示領域を補正させる値であり、前記第一の検査では、前記車両用表示装置は検査台に設置されて検査用のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第一補正値は、前記検査用のウインドシールドへ画像を投影したときの前記正規の軸方向に対する前記画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出され、前記第二の検査では、前記車両用表示装置は車両に設置されて前記車両のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第二補正値は、前記車両のウインドシールドへ画像を投影したときの前記正規の軸方向に対する前記画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出され、前記第二の検査において、前記表示デバイスは、前記第一補正値によって補正された画像表示領域に画像を表示することを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用表示装置は、車両に搭載され、かつウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な画像表示ユニットを備え、前記画像表示ユニットは、画像を表示する表示デバイスと、前記画像の表示光をウインドシールドに向けて反射するミラーと、第一補正値および第二補正値を記憶する不揮発性メモリと、前記表示デバイスを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、ウインドシールドに対する画像の上下方向の投影位置に応じて、前記第一補正値および前記第二補正値に基づいて前記表示デバイスの画像表示領域を補正し、前記表示デバイスの画像表示領域の補正は、画像横方向または画像縦方向の正規の軸方向に対する投影される画像の軸の傾斜を低減させる補正であり、前記第一補正値は、前記車両に搭載されていない単体の前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であり、前記第二補正値は、前記車両に搭載された前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であって、かつ前記第一補正値による画像表示領域の補正がなされた前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置の調整方法は、検査台で第一の検査を行なって第一補正値を算出し、不揮発性メモリに書き込む工程と、車両で第二の検査を行なって第二補正値を算出し、不揮発性メモリに書き込む工程と、を含む。本発明に係る車両用表示装置は、車両に搭載されていない単体の画像表示ユニットに対する検査結果に基づく第一補正値、および車両に搭載された画像表示ユニットに対する検査結果に基づく第二補正値が不揮発性メモリに記憶されている。本発明に係る車両用表示装置の調整方法および車両用表示装置によれば、画像の傾斜による位置ずれを効率よく調整できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の車両用表示装置によって表示される虚像を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用表示装置を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の第一調整工程の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態の調整工程に係るフローチャートである。
【
図7】
図7は、画像表示領域の補正について説明する図である。
【
図8】
図8は、実施形態の第一調整工程の説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る車両用表示装置のブロック図である。
【
図11】
図11は、画像表示領域の調整についての説明図である。
【
図12】
図12は、画像表示領域の調整についての説明図である。
【
図13】
図13は、画像表示ユニットの交換についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から
図13を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置に関する。
図1は、本実施形態の車両用表示装置によって表示される虚像を示す図、
図2は、実施形態に係る車両用表示装置を示す図、
図3は、虚像のずれを説明する図、
図4は、実施形態の第一調整工程の説明図、
図5は、実施形態の調整工程に係るフローチャート、
図6は、補正前後の画像を示す図、
図7は、画像表示領域の補正について説明する図、
図8は、実施形態の第一調整工程の説明図、
図9は、補正前後の画像を示す図、
図10は、実施形態に係る車両用表示装置のブロック図である。
図11および
図12は、画像表示領域の調整についての説明図、
図13は、画像表示ユニットの交換についての説明図である。
【0012】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る車両用表示装置1は、自動車等の車両100に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置である。車両用表示装置1は、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて投影する。ウインドシールド110は、車両100のアイポイントEPに対して車両前方に位置しており、かつ車両前後方向XにおいてアイポイントEPと対向している。表示光Ltは、ウインドシールド110の反射面110aによってアイポイントEPに向けて反射される。車両100のドライバは、表示光Ltによって虚像Viを視認することができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の車両用表示装置1は、車両100の前方の対象300に重畳させて虚像Viを表示する。対象300は、例えば、歩行者であるが、歩行者には限定されない。対象300は、車両100の前方の他車両や、障害物、路面等であってもよい。車両100には、車両100の前方を撮像する前方カメラ12が搭載されている。車両用表示装置1は、前方カメラ12から取得した画像に基づいて虚像Viの投影位置、および表示デバイス3における画像の表示位置を決定する。
【0014】
本実施形態の車両用表示装置1は、ウインドシールド110への画像の投影位置を上下方向に変更可能である。
図2に示すように、車両用表示装置1は、アイポイントEPの位置に応じてウインドシールド110に対する画像の投影位置を上下させる。アイポイントEPは、ドライバの目の位置であり、例えば、車両用表示装置1のカメラ11を用いて検出される。例示されたカメラ11は、運転席に対して車両前方に配置されており、ドライバを撮像できるように設置されている。アイポイントEPは、カメラ11によって生成された画像に対する画像認識によって検出される。
【0015】
車両用表示装置1は、車両100に搭載される画像表示ユニット10を有する。画像表示ユニット10は、筐体2、表示デバイス3、ミラー4、制御部5、不揮発性メモリ6、およびモータ7を有する。筐体2は、例えば、インストルメントパネルの内部に配置される。筐体2は、ウインドシールド110に対向する開口を有している。表示デバイス3、ミラー4、制御部5、不揮発性メモリ6、およびモータ7は、筐体2の内部に収容される。
【0016】
表示デバイス3は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶表示装置である。表示デバイス3は、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)であってもよい。表示デバイス3は、例えば、バックライトユニットの光によって表示光Ltを出力する。
【0017】
ミラー4は、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射する。ミラー4によって反射された表示光Ltは、筐体2の開口を通過してウインドシールド110の反射面110aに投影される。ミラー4は、凹状の反射面4aを有しており、画像を拡大することができる。反射面4aの形状は、例えば、自由曲面である。反射面4aの形状は、画像の歪みや収差を補正する形状であってもよい。
【0018】
本実施形態の画像表示ユニット10は、ミラー4を回動させるモータ7を有する。ミラー4は、回動可能に支持されている。ミラー4の回転方向は、
図2に矢印AR1で示すように、車両上下方向Zに対する反射面4aの傾斜角度θを変化させる方向である。ミラー4の傾斜角度θが大きくなると、ウインドシールド110への画像の投影位置が下方に移動する。一方、ミラー4の傾斜角度θが小さくなると、ウインドシールド110への画像の投影位置が上方に移動する。
【0019】
モータ7は、ミラー4を回動させることにより、反射面4aの傾斜角度θを所望の角度に調整する。モータ7は、例えば、ステッピングモータである。モータ7は、制御部5によって出力される指令値によって駆動される。指令値は、モータ7の回転方向およびステップ数を含む。
【0020】
制御部5は、表示デバイス3およびモータ7を制御する。制御部5は、例えば、演算部、メモリ、通信インターフェース等を含むコンピュータである。制御部5は、例えば、予め記憶しているプログラムに従ってモータ7を制御する。また、制御部5は、予め記憶しているプログラム、および不揮発性メモリ6から読み込んだ第一補正値および第二補正値に基づいて表示デバイス3を制御する。
【0021】
本実施形態の制御部5は、アイポイントEPの位置に基づいて、自動的に画像の投影位置を調節する。カメラ11の撮像結果に基づくアイポイントEPの検出は、制御部5によって実行されてもよく、他の処理部によって実行されてもよい。なお、制御部5は、外部からの指令によって画像の投影位置を変更することもできる。例えば、制御部5は、ドライバの操作入力に応じて投影位置を変更することや、検査装置からの指令に応じて投影位置を変更することができる。
【0022】
制御部5は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置に応じて、ミラー4の傾斜角度θの目標値を決定する。
図2には、アイポイントEPの上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdが示されている。上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdは、例えば、アイボックスやアイリプスにおける車両上下方向Zの上端位置、中央位置、および下端位置である。
【0023】
制御部5は、アイポイントEPの位置が中央位置EPmである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を可動範囲の中央値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110mに投影される。位置110mは、画像の投影範囲における上下方向の中央位置である。
【0024】
制御部5は、アイポイントEPの位置が上端位置EPuである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を最小値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110uに投影される。位置110uは、画像の投影範囲における上端の位置である。また、制御部5は、アイポイントEPの位置が下端位置EPdである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を最大値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110dに投影される。位置110dは、画像の投影範囲における下端の位置である。
【0025】
ここで、ウインドシールド110に対して投影される画像において、回転ずれが発生することがある。
図3には、画像の投影位置を上下に変化させた場合の画像の回転ずれが示されている。
図3には、正規の横軸50h、正規の縦軸50v、および画像の横軸HXが示されている。正規の横軸50hは、アイポイントEPから見た場合の正規の横軸方向である。言い換えると、正規の横軸50hは、画像横方向GHについての基準軸である。正規の横軸50hは、例えば、車幅方向や水平方向に延在する軸である。
【0026】
正規の縦軸50vは、アイポイントEPから見た場合の正規の縦軸方向である。言い換えると、正規の縦軸50vは、画像縦方向GVについての基準軸である。正規の縦軸50vは、例えば、車両上下方向Zや鉛直方向に延在する軸である。画像の横軸HXは、投影された虚像Viの横軸方向である。
【0027】
図3には、画像G1,G2,G3が示されている。画像G1は、位置110uに投影され、かつ上端位置EPuから視認される画像である。画像G2は、位置110mに投影され、かつ中央位置EPmから視認される画像である。画像G3は、位置110dに投影され、かつ下端位置EPdから視認される画像である。
【0028】
図3では、画像G2における画像の横軸HXは、正規の横軸50hに沿っている。画像G1,G3における画像の横軸HXは、正規の横軸50hに対して傾斜している。より詳しくは、画像G1の画像の横軸HXは、アイポイントEPから見た場合に正規の横軸50hに対して半時計回りの回転方向に位相がずれている。一方、画像G3の画像の横軸HXは、アイポイントEPから見た場合に正規の横軸50hに対して時計回りの回転方向に位相がずれている。このような画像の横軸HXのずれは、画像表示ユニット10における各部の公差による位置ずれや、車両100の側の公差による位置ずれを含む。
【0029】
本実施形態の制御部5は、後述する第一補正値および第二補正値に基づいて表示デバイス3の画像表示領域を補正する。第一補正値は、車両100に搭載されていない単体の画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第一補正値による画像表示領域の補正により、画像表示ユニット10に起因する画像の横軸HXの傾斜がキャンセルされる。第二補正値は、車両100に搭載された画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第二補正値による画像表示領域の補正により、車両100に起因する画像の横軸HXの傾斜がキャンセルされる。
【0030】
本実施形態の車両用表示装置1は、第一補正値および第二補正値を別な補正値として不揮発性メモリ6にそれぞれ独立して記憶している。これにより、以下に説明するように、車両用表示装置1において画像の横軸HXの傾斜が効率よく調整可能である。例えば、車両100に画像表示ユニット10を設置するときの調整作業が容易となる。また、画像表示ユニット10が交換されるときの調整作業が容易となる。
【0031】
まず、第一補正値を算出する工程について説明する。以下の説明では、第一補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む工程を第一調整工程と称する。第一調整工程では、以下に説明する第一の検査によって第一補正値が算出される。
【0032】
図4に示すように、第一調整工程は、検査用のウインドシールド200、ターゲットボード210、検査台220、カメラ230、および制御装置240を含む検査装置を用いて行なわれる。第一調整工程は、例えば、画像表示ユニット10を製造する工場において行なわれる。検査台220は、車両100における画像表示ユニット10の搭載位置を模した台である。ウインドシールド200は、車両100のウインドシールド110と同様に形成された反射面200aを有している。検査台220とウインドシールド200との位置関係は、車両100に搭載された画像表示ユニット10とウインドシールド110との位置関係を再現できるように設定されている。
【0033】
カメラ230は、アイポイントEPから見た画像を撮像する。カメラ230は、三つのカメラ230u,230m,230dを有する。カメラ230uは、車両100の上端位置EPuから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。同様に、カメラ230m,230dは、車両100の中央位置EPmおよび下端位置EPdから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。
【0034】
ターゲットボード210は、例えば、正規の位置に対する投影画像の位置ずれを検出するために参照される。ターゲットボード210は、正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜を検出するために参照されてもよい。ターゲットボード210は、ウインドシールド200に対してカメラ230の側とは反対側に配置されている。ターゲットボード210の位置は、例えば、カメラ230から見て画像の背景となる位置である。
【0035】
制御装置240は、画像表示ユニット10およびカメラ230を制御する。制御装置240は、画像表示ユニット10の制御部5に対して指令を送り、ミラー4の傾斜角度θおよび表示デバイス3による画像表示を制御する。また、制御装置240は、カメラ230を制御し、カメラ230によって撮像された検査画像を取得する。
【0036】
図5を参照して、第一調整工程の動作について説明する。ステップS10において、作業者は、カメラ230を設置する。ステップS10が実行されると、ステップS20に進む。
【0037】
ステップS20において、実体と虚像との誤差が確認される。作業者は、制御装置240を操作し、画像表示ユニット10によって画像を投影させる。制御装置240は、虚像の上下移動を制御部5に指令する。制御装置240は、例えば、ミラー4の傾斜角度θを上端位置EPuに応じた角度、中央位置EPmに応じた角度、または下端位置EPdに応じた角度とするように制御部5に指令する。また、制御装置240は、表示デバイス3に対して画像を表示させるよう指令する。
【0038】
図6の左側には、補正前の画像G1,G2,G3が示されており、
図6の右側には、補正後の画像G1,G2,G3が示されている。制御装置240は、画像G1,G2,G3のそれぞれについて、正規の位置に対する画像G1,G2,G3のずれを検査する。
図4には、中央位置EPmから見る画像G2のずれを検出する検査が示されている。中央位置EPmに対する画像G2のずれを検査する場合、制御装置240は、ミラー4の傾斜角度θを中央位置EPmに対応する角度にさせる。これにより、
図4に示すように、画像の表示光Ltはウインドシールド200の位置200mに投影される。位置200mは、ウインドシールド110の位置110mに対応する位置である。
【0039】
カメラ230mは、制御装置240の指令に従って、画像G2およびターゲットボード210を撮像する。カメラ230mによって撮像された検査画像に基づき、中央位置EPmから見る画像G2の位置ずれが検査される。
図4に示すように、ターゲットボード210は、対象を模したマーク210tを有する。制御装置240は、カメラ230mから取得した検査画像に対する画像認識により、マーク210tに対する虚像Viのずれ量を検出する。このずれ量は、正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜に応じた量である。画像の横軸HXの傾斜角度が大きいほど、マーク210tに対する虚像Viのずれ量が大きくなる。つまり、虚像Viのずれ量に基づいて画像の横軸HXの傾斜角度を推定することができる。
【0040】
なお、上端位置EPuに対応する画像G1のずれ量、下端位置EPdに対応する画像G3のずれ量についても、同様に検出可能である。例えば、制御装置240は、画像G1のずれ量を検出する場合、ミラー4の傾斜角度θを上端位置EPuに対応する角度にさせる。カメラ230uは、画像G1およびターゲットボード210を撮像して検査画像を生成する。制御装置240は、画像G1の虚像Viとマーク210tとのずれ量を検出する。ずれ量が検出されると、ステップS30に進む。
【0041】
ステップS30では、制御装置240により、回転表示ずれが発生しているかの判定がなされる。制御装置240は、ステップS20で算出されたずれ量に基づいてステップS30の判定を行なう。ずれ量が閾値を超えている場合、ステップS30で肯定判定されてステップS40に進み、ずれ量が閾値以下である場合、否定判定されてステップS60に進む。
【0042】
ステップS40では、回転表示ずれの補正値が算出される。制御装置240は、ずれ量に応じて第一補正値を算出する。なお、制御装置240は、算出された第一補正値によって、回転表示ずれが解消されたかを確認してもよい。すなわち、第一補正値に基づいて表示デバイス3における画像表示領域を補正し、補正後の画像において虚像Viが正しくマーク210tに重畳されたかを確認してもよい。
【0043】
図7を参照して、画像表示領域の補正について説明する。
図7には、補正前後の画像G1、および補正前後の画像表示領域31uが示されている。画像表示領域31は、表示デバイス3の表示面3aにおける一部の領域である。画像表示領域31uは、上端位置EPuに対して用いられる画像表示領域31である。中央位置EPmおよび下端位置EPdにもそれぞれ画像表示領域31が設定される。画像表示領域31の形状は、表示面3aからアイポイントEPまでの光学系において発生する歪みに基づいて定められる。画像表示領域31の形状は、例えば、ウインドシールド110によってアイポイントEPに向けて反射される画像G1,G2,G3が矩形となるように設定される。
【0044】
図7に示すように、画像の横軸HXが正規の横軸50hに対して傾斜している場合、傾斜を解消するように補正がなされる。
図7には、正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜角度δが示されている。後述する第一補正値および第二補正値は、この傾斜角度δを低減させるように設定される。補正値は、傾斜角度δを0とするように設定されてもよい。
【0045】
制御部5は、不揮発性メモリ6に第一補正値が記憶されている場合、第一補正値に基づいて画像表示領域31を補正する。第一補正値は、画像表示領域31に対する補正角度[deg]である。制御部5は、第一補正値に基づいて画像G1の画像表示領域31uを回転させる。このときの回転方向は、傾斜角度δを低減させる方向である。これにより、補正後の画像G1では、正規の横軸50hに対する画像G1の傾斜がキャンセルされる。
図6の右上には、補正後の画像G1が示されている。補正後の画像G1では、虚像Viが正しくマーク210tに重畳されている。
【0046】
なお、補正後の画像G1においてマーク210tに対する虚像Viのずれが解消されない場合、制御装置240は、第一補正値を調整してもよい。制御装置240は、虚像Viのずれが解消されるまで第一補正値の調整を繰り返してもよい。第一補正値が確定すると、ステップS50に進む。
【0047】
ステップS50において、制御装置240は、補正値をメモリに書き込む。制御装置240は、ステップS40で決定された第一補正値を画像表示ユニット10の不揮発性メモリ6に書き込む。ステップS50が実行されると、ステップS70に進む。
【0048】
ステップS60において、制御装置240は、補正値として“0”を不揮発性メモリ6に書き込む。ステップS60が実行されると、ステップS70に進む。
【0049】
ステップS70において、制御装置240は、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdの全てに対する第一補正値の設定が完了したかを判定する。制御装置240は、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdのうち、第一補正値がまだ設定されていない位置が存在する場合、ステップS10に移行する。この場合、制御装置240は、画像G1,G2,G3のうち、まだ第一補正値の設定が完了していない画像に対してずれの検出および第一補正値の算出を行なう。
【0050】
一方、制御装置240は、上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdの全てに対する第一補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれている場合、ステップS70で肯定判定して終了する。
【0051】
上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdのそれぞれに対して第一補正値による画像表示領域31の補正がなされることで、
図6の右側に示すように、補正後の画像G1,G2,G3における傾斜が解消される。つまり、第一補正値により、画像表示ユニット10の個体差による回転表示ずれが解消される。
【0052】
次に、第二補正値を算出する工程について説明する。以下の説明では、第二補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む工程を第二調整工程と称する。第二調整工程では、以下に説明する第二の検査によって第二補正値が算出される。第二調整工程は、第一調整工程の後で実行される。
【0053】
図8に示すように、第二調整工程は、画像表示ユニット10を車両100に設置して行なわれる。第二調整工程は、例えば、画像表示ユニット10を車両100に搭載する工場で行なわれる。
図8に示す画像表示ユニット10は、車両100に対して組み付けられ、車両100に対して固定されている。第二の検査では、車両100に対してカメラ130が設置される。カメラ130は、例えば、車両100の運転席に設置される。
【0054】
カメラ130は、三つのカメラ130u,130m,130dを有する。カメラ130uは、車両100の上端位置EPuから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。同様に、カメラ130m,130dは、車両100の中央位置EPmおよび下端位置EPdから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。
【0055】
第二の検査では、例えば、第一の検査と同様にターゲットボード210および制御装置240が用いられる。ターゲットボード210は、ウインドシールド110に対してカメラ130の側とは反対側に配置されている。ターゲットボード210の位置は、例えば、カメラ130から見て画像の背景となる位置である。
【0056】
制御装置240は、画像表示ユニット10およびカメラ130に対して通信可能なように接続される。制御装置240は、
図5のフローチャートに従って処理を実行する。なお、第二調整工程のステップS40では、第二補正値が演算され、ステップS50,S60では第二補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれる。
【0057】
図9には、第二調整工程における補正前の画像G1,G2,G3および補正後の画像G1,G2,G3が示されている。補正前の画像G1,G2,G3は、第一補正値による画像表示領域31の補正がなされて投影されている。つまり、補正前の画像G1,G2,G3において、車両用表示装置1の個体差による誤差は既に補正されている。従って、補正前の画像G1,G2,G3における虚像Viの位置ずれは、主として車両100に起因する。
【0058】
図8には、中央位置EPmから見る画像G2のずれを検出する検査が示されている。中央位置EPmに対する画像G2のずれを検出する場合、制御装置240は、ミラー4の傾斜角度θを中央位置EPmに対応する角度にさせる。これにより、
図8に示すように、画像の表示光Ltはウインドシールド110の位置110mに投影される。カメラ130mは、制御装置240の指令に従って、画像G2およびターゲットボード210を撮像する。カメラ130mによって撮像された検査画像に基づき、中央位置EPmから見る画像G1の位置ずれが検査される。制御装置240は、検出されたずれ量に基づいて画像G2に対する第二補正値を算出し、不揮発性メモリ6に書き込む。
【0059】
上端位置EPuに対応する画像G1のずれ、および下端位置EPdに対応する画像G3のずれについてもそれぞれ検査がなされ、第二補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれる。
【0060】
図9および
図10を参照して、画像の表示位置の補正について更に説明する。不揮発性メモリ6は、例えば、
図10に示すように制御部5の外部に設けられる。不揮発性メモリ6は、例えば、EEPROMである。不揮発性メモリ6には、第一補正値V1、第二補正値V2、および総補正値VTが書き込まれている。制御部5は、総補正値VTに従って各画像表示領域31の補正を行なう。不揮発性メモリ6には、第一補正値V1のための記憶領域、第二補正値V2のための記憶領域、および総補正値VTのための記憶領域がそれぞれ専用に設けられていてもよい。
【0061】
本実施形態の第一補正値V1および第二補正値V2は、それぞれ表示デバイス3における画像表示領域31の回転補正値[deg]である。補正値V1,V2は、例えば、画像表示領域31の中心点を回転軸とする回転角度である。アイポイントEPから見て画像G1,G2,G3を反時計回りに回転させる補正値は、正の値であってもよい。アイポイントEPから見て画像G1,G2,G3を時計回りに回転させる補正値は、負の値であってもよい。
【0062】
制御部5は、第一補正値V1および第二補正値V2から総補正値VTを算出する。総補正値VTは、例えば、第一補正値V1と第二補正値V2とを加算した合計値である。総補正値VTは、上端位置EPuに対応する補正値VTu、中央位置EPmに対応する補正値VTm、および下端位置EPdに対応する補正値VTdを有する。制御部5は、総補正値VTに基づいて、画像表示領域31の回転補正を行なう。例えば、制御部5は、下端位置EPdに対応する画像G3を表示する場合、補正値VTdに基づいて画像表示領域31を回転補正する。
【0063】
本実施形態の制御部5は、アイポイントEPの位置が上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdの何れとも異なる位置である場合、線形補間により総補正値VTを算出する。
図11には検出されたアイポイントEPの位置EPbが示されている。位置EPbは、中央位置EPmと上端位置EPuとの間の位置である。ウインドシールド110の位置110bは、アイポイントEPの位置EPbに対応する投影位置である。
【0064】
図12は、アイポイントEPの位置がEPbである場合の線形補間を説明する図である。
図12の中央に示す画像Gbは、アイポイントEPの位置EPbに対応する補正前の画像である。つまり、画像Gbは、第一補正値V1および第二補正値V2による画像表示領域31の補正がなされない場合に位置EPbから視認される画像である。
【0065】
図12の下部には、アイポイントEPの中央位置EPmに対応する補正前の画像G2が示されている。
図12の上部には、アイポイントEPの上端位置EPuに対応する補正前の画像G1が示されている。
図12に示す例では、画像G2は正規の横軸50hに対して傾斜していないため、総補正値VTmは0である。一方、画像G1には0ではない総補正値VTuが設定されている。総補正値VTuの値は、傾斜角度δuに応じて定められている。
【0066】
図12の左側には、モータ7のステップ数STu,STbが示されている。ステップ数STuは、ウインドシールド110の位置110mから位置110uまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。ステップ数STbは、ウインドシールド110の位置110mから位置110bまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。
【0067】
この場合、位置EPbの画像表示領域31に対応する総補正値VTbは、下記式(1)で算出される。
VTb=VTu×STb/STu (1)
【0068】
アイポイントEPの位置EPbが中央位置EPmと下端位置EPdとの間にある場合、総補正値VTbは下記式(2)で算出される。なお、ステップ数STdは、ウインドシールド110の位置110mから位置110dまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。
VTb=VTd×STb/STd (2)
【0069】
本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法によれば、第一調整工程において画像表示ユニット10の固有の誤差を補正する第一補正値V1が算出される。また、第二調整工程において車両100の固有の誤差を補正する第二補正値V2が算出される。このように二つの補正値V1,V2が別々に算出されることで、画像表示領域31の位置ずれが効率よく調整可能となる。
【0070】
本実施形態に対する比較例として、画像表示ユニット10が車両100に搭載された後に全ての誤差を調整する調整方法を検討する。この場合、画像表示ユニット10の誤差と、車両100の誤差とが累積されて大きな位置ずれが生じることがある。その結果、位置ずれの調整回数が多くなり、効率の低下を招きやすい。
【0071】
これに対して、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法によれば、第一調整工程および第二調整工程における調整回数が少なくなり、各調整工程の効率が向上する。また、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法では、表示デバイス3における画像表示領域31の調整によって画像の位置ずれが補正される。これにより、部品の位置や角度を変更したり、筐体2の据え付け方を変更したりする機械的な調整によって画像の位置ずれを低減させる方法と比較して効率が向上する。
【0072】
また、本実施形態の車両用表示装置1によれば、以下に説明するように、画像表示ユニット10が交換される際の調整作業が効率化される。
図13は、画像表示ユニット10の交換時におけるデータ移行を示す図である。
図13において、車両用表示装置1xは、故障等により車両100から取り外される車両用表示装置1であり、画像表示ユニット10xは、取り外される車両用表示装置1xの画像表示ユニット10である。車両用表示装置1iは、新たに車両100に取り付けられる車両用表示装置1であり、画像表示ユニット10iは、新たな車両用表示装置1iの画像表示ユニット10である。画像表示ユニット10iには、第一調整工程が実行されており、不揮発性メモリ6に第一補正値V1が書き込まれている。
【0073】
取り外される画像表示ユニット10xの第二補正値V2は、取り付けられる新たな画像表示ユニット10iに移行される。第二補正値V2の移行作業は、例えば、サービスツールを用いて実行される。この場合、サービスツールは、取り外す画像表示ユニット10xから第二補正値V2を読み出し、新たな画像表示ユニット10iの不揮発性メモリ6に書き込む。画像表示ユニット10iの制御部5は、この画像表示ユニット10iに固有の第一補正値V1と、移行された第二補正値V2とを加算して総補正値VTを算出する。
【0074】
車両100に設置された画像表示ユニット10iに対して第二調整工程が実行される。第二調整工程では、第二の検査によって画像G1,G2,G3の位置ずれが検出される。このときの表示デバイス3における画像の表示位置は、移行された第二補正値V2に基づいて補正されている。言い換えると、新たな画像表示ユニット10の表示デバイス3は、移行された第二補正値V2による画像表示領域31の補正がなされた画像を表示する。
【0075】
よって、第二の検査において画像の位置ずれが生じるとしても、大幅なずれとなりにくい。検出された位置ずれの量が規格外の値であった場合、第二補正値V2u,V2m,V2dの値が変更される。例えば、上端位置EPuの画像G1において許容範囲外の位置ずれが発生した場合、この位置ずれを低減させるように第二補正値V2uが調整され、調整後の第二補正値V2uが不揮発性メモリ6に書き込まれる。
【0076】
上記のような第二調整工程によれば、車両用表示装置1に対する調整作業が効率化される。例えば、第二調整工程において最初に表示される画像G1,G2,G3の表示位置は、移行された第二補正値V2によって補正されている。よって、第二補正値V2が初期値のままである画像表示ユニット10を調整する場合と比較して、第二補正値V2を適切な値に調節するまでの作業時間が短縮される。
【0077】
なお、位置ずれの有無および位置ずれの量は、作業者の目視によって確認されてもよい。この場合、作業者は、目視によって画像G1,G2,G3の位置ずれを確認し、位置ずれの有無および位置ずれの量を制御装置240に入力する。制御装置240は、入力された位置ずれの量から第一補正値または第二補正値を算出し、不揮発性メモリ6に書き込む。
【0078】
位置ずれの量は、ターゲットボード210に印された正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜角度であってもよい。この場合、表示デバイス3が投影する画像は、画像の横軸HXを示す線を含むことが好ましい。位置ずれの量は、ターゲットボード210に印された正規の縦軸50vに対する画像の縦軸の傾斜角度であってもよい。この場合、表示デバイス3が投影する画像は、画像の縦軸を示す線を含むことが好ましい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、第一調整工程と、第二調整工程と、を含む。車両用表示装置1は、ウインドシールド110,200への画像の投影位置を上下方向に変更可能である。第一調整工程は、車両用表示装置1に対して第一の検査を行なって第一補正値V1を算出し、第一補正値V1を車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に書き込む工程である。第二調整工程は、車両用表示装置1に対して第二の検査を行なって第二補正値V2を算出し、第二補正値V2を車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に対して書き込む工程である。第一の検査および第二の検査は、例えば、フローチャートのステップS10からステップS40に対応する。第一補正値V1および第二補正値V2を不揮発性メモリ6に書き込む手順は、例えば、ステップS50,S60に対応する。
【0080】
第一補正値V1および第二補正値V2は、画像横方向GHまたは画像縦方向GVの正規の軸方向に対する投影される画像の軸の傾斜を低減させるように、車両用表示装置1の表示デバイス3に対して画像表示領域31を補正させる値である。二つの補正値V1,V2は、例えば、正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜を低減させるように、画像表示領域31を補正させる回転角度である。
【0081】
第一の検査では、車両用表示装置1は検査台220に設置されて検査用のウインドシールド200に対して画像を投影する。第一補正値V1は、検査用のウインドシールド200へ画像を投影したときの正規の軸方向に対する画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出される。このずれ量は、例えば、マーク210tに対する虚像Viのずれ量であってもよく、正規の横軸50hに対する画像の横軸HXの傾斜角度δであってもよく、正規の縦軸50vに対する画像の縦軸の傾斜角度であってもよい。
【0082】
第二の検査では、車両用表示装置1は車両100に設置されて車両100のウインドシールド110に対して画像を投影する。第二補正値V2は、車両100のウインドシールド110へ画像を投影したときの正規の軸方向に対する画像の軸の傾斜に応じたずれ量に基づいて算出される。第二の検査において、表示デバイス3は、第一補正値V1によって補正された画像表示領域31に画像を表示する。本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、原因が異なる二つの位置ずれに対する補正値の決定を別々に行なうことで、回転方向の位置ずれを効率よく調整できる。例えば、車両100に搭載されたときの位置ずれの調整が効率化される。また、第二の検査では、第一補正値V1による画像表示領域31の補正がなされた画像が表示される。よって、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、第二調整工程の作業効率を向上させることができる。
【0083】
本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法では、車両100において車両用表示装置1の交換がなされる場合、車両100から取り外される車両用表示装置1の第二補正値V2が車両100に取り付けられる新たな車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に移行される。新たな車両用表示装置1の表示デバイス3は、第二の検査において、移行された第二補正値V2によって補正がなされた画像表示領域31に画像を表示する。よって、新たな車両用表示装置1に対する第二調整工程が効率化される。
【0084】
本実施形態に係る車両用表示装置1は、車両100に搭載され、かつウインドシールド110への画像の投影位置を上下方向に変更可能な画像表示ユニット10を有する。画像表示ユニット10は、画像を表示する表示デバイス3と、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射するミラー4と、第一補正値V1および第二補正値V2を記憶する不揮発性メモリ6と、表示デバイス3を制御する制御部5と、を有する。
【0085】
制御部5は、ウインドシールド110に対する画像の上下方向の投影位置に応じて、第一補正値V1および第二補正値V2に基づいて表示デバイス3の画像表示領域31を補正する。表示デバイス3の画像表示領域31の補正は、画像横方向GHまたは画像縦方向GVの正規の軸方向に対する投影される画像の軸の傾斜を低減させる補正である。
【0086】
第一補正値V1は、車両100に搭載されていない単体の画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第二補正値V2は、車両100に搭載された画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値であって、かつ第一補正値V1による画像表示領域31の補正がなされた画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく。本実施形態に係る車両用表示装置1は、第一補正値V1のための検査および第二補正値V2のための検査を別々に行なうことで、画像表示領域31の位置ずれを効率よく調整できる。例えば、車両100に搭載されたときの位置ずれの調整が効率化される。また、第二補正値V2は、第一補正値V1による画像表示領域31の補正がなされた画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく。よって、第二補正値V2を決定する工程の効率が向上する。
【0087】
なお、不揮発性メモリ6は、制御部5の内部に設けられたメモリであってもよい。不揮発性メモリ6は、EEPROMには限定されず、例えば、Flashメモリであってもよい。第二補正値V2が書き込まれる不揮発性メモリ6は、画像表示ユニット10に対する着脱が可能な記憶媒体のメモリであってもよい。
【0088】
ウインドシールド110,200に対する画像の投影位置を変化させる手段は、ミラー4およびモータ7には限定されない。例えば、画像表示ユニット10は、表示デバイス3において画像表示領域31を画像上下方向に移動させることで投影位置を調節してもよい。
【0089】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用表示装置
2:筐体、 3:表示デバイス、 4:ミラー、 5:制御部、 6:不揮発性メモリ
7:モータ、 10:画像表示ユニット、 11:カメラ、 12:前方カメラ
31:画像表示領域、31u:画像表示領域
50h:正規の横軸、 50v:正規の縦軸
100:車両、 110:ウインドシールド、 110a:反射面
110u,110m,110d:位置
200:ウインドシールド、 210:ターゲットボード、 210r:目印
210u,210m:枠、 210t:マーク
300:対象
C1,C2,C3:画像中心
EP:アイポイント、 EPu:上端位置、 EPm:中央位置、 EPd:下端位置
G1,G2,G3:画像
GH:画像横方向、 GV:画像縦方向
Hr:正規位置
HX:画像の横軸
Lt:表示光
V1,V1u,V1m,V1d:第一補正値
V2,V2u,V2m,V2d:第二補正値
Vi:虚像
X:車両前後方向、 Z:車両上下方向