(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 25/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
F25D25/02 L
(21)【出願番号】P 2022146905
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加納 奨一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 ゆり子
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-159924(JP,A)
【文献】特開2022-94101(JP,A)
【文献】実開昭50-101969(JP,U)
【文献】特開2003-336962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内棚と、
前記庫内棚の前縁部を覆う前縁部材と、
前記前縁部材の左右方向における両端部のうち、一方の端部の側に設けられる固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記前縁部材の前記一方の端部に対向する対向部と、前記対向部に対して後方に配置され前記一方の端部に対して後方で前記庫内棚に固定される被固定部と、を有する冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記固定部材の前記対向部は、前記前縁部材の内側に挿入されて、前記前縁部材に掛け止められる掛止部を有する冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記固定部材の前記被固定部は、前記庫内棚に対して締結具によって固定される冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の冷蔵庫において、
前記締結具は低頭ねじである冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記前縁部材は、曲げ加工された金属製の平板で形成されており、
前記前縁部材は、上面と、前記上面の前縁部に沿って形成された前端面と、前記前端面の下端縁に沿って形成された第1下面と、前記第1下面に対して後方に位置し前記第1下面に対して段付き状に形成された第2下面と、を有し、
前記第2下面は、前記第1下面に対して、上方に位置する冷蔵庫。
【請求項6】
請求項5に記載の冷蔵庫において、
前記前縁部材の前記第2下面には、締結具が配されており、
前記締結具の頭部は、前記第1下面に対して上方に位置する冷蔵庫。
【請求項7】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
当該冷蔵庫を構成する内箱の背面側に、前記庫内棚の後縁部を支持する支持部を有し、
前記支持部は送風ダクトを覆う化粧部材によって構成される冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂の透明部材を用いて射出成形で庫内棚本体を形成し、庫内棚本体の前部に棚前飾りを兼ねたアルミニウム合金製の補強部材を取り付けた冷蔵庫の庫内棚が記載されている。この庫内棚では、庫内棚本体および補強部材の両者を断面C字形もしくは櫛形形状とし、補強部材を庫内棚本体の横から挿入した後、ねじにより固定している(要約参照)。さらに特許文献1には、固定部材を補強部材の両側に、十字穴付タッピンねじ皿13により締結することで、補強部材の左右の位置が規制される構造が開示されている(段落0027-0028参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷蔵庫の庫内棚では、補強部材の左右の位置を規制する固定部材をねじで固定しており、固定部材はねじの頭を収納できる大きさである必要がある。この場合、固定部材を取り付ける補強部材も、固定部材の大きさに対応した大きさである必要があり、補強部材のデザインの自由度が低下する。
【0005】
本発明の目的は、冷蔵庫の庫内棚において、補強部材の固定構造を見直すことで、補強部材のデザインの自由度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の冷蔵庫は、
庫内棚と、
前記庫内棚の前縁部を覆う前縁部材と、
前記前縁部材の左右方向における両端部のうち、一方の端部の側に設けられる固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記前縁部材の前記一方の端部に対向する対向部と、前記対向部に対して後方に配置され前記一方の端部に対して後方で前記庫内棚に固定される被固定部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、
固定部材を補強部材に締結する必要がなく、補強部材のデザインの自由度を向上することができ、意匠性に優れた冷蔵庫を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明に係る冷蔵庫の冷蔵室部分の内箱を斜め前方から見た斜視図。
【
図6】
図3のV部を矢印VI方向から見た拡大斜視図。
【
図8】本発明に係る庫内棚の枠部と前縁部材とを示す概略図。
【
図9】
図3のV部を斜め下から見た斜視図であり、固定部材を取り除いた状態の斜視図。
【
図10】固定部材の近傍を一部断面(
図11のX-X断面)で示す斜視図。
【
図13】
図3のV部を載置面の部分で載置面に平行に切断した拡大断面図。
【
図14】
図2の内箱を左右中央部で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例に係る冷蔵庫について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明に係る冷蔵庫1の外観を示す正面図である。
【0010】
上下方向および左右方向が
図1に示すように定義される。上下方向は、冷蔵庫1が水平面に設置された状態において、鉛直方向に一致する。左右方向は水平面に平行で、かつ
図1の紙面に平行な方向である。左右方向は、冷蔵庫1の幅方向と一致する。上下方向および左右方向のほか、前後方向が
図1の紙面に垂直な方向に定義される。前後方向は、水平面に平行であり、奥行き方向と呼ぶ場合もある。
【0011】
冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順番で貯蔵室を有している。冷蔵庫1は、それぞれの貯蔵室の開口を開閉するドアを備えている。これらのドアは、冷蔵室2の開口を開閉する、左右に分割された回転式の冷蔵室ドア2a,2bと、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の開口をそれぞれ開閉する引き出し式の製氷室ドア3aと、上段冷凍室ドア4aと、下段冷凍室ドア5aと、野菜室ドア6aとで構成される。なお、本実施例では、5つの貯蔵室、6つのドアを有する冷蔵庫を例に挙げて説明するが、貯蔵室およびドアの構成は、上述した構成の冷蔵庫に限定される訳ではない。引出式のドアにはそれぞれ、収納容器と、前後に延在するドア側レールが設けられており、冷蔵庫1の内箱8(
図2参照)側のレールに例えば摺動可能である。
【0012】
冷蔵室2は、庫内を冷蔵温度帯の例えば平均的に4℃程度にした冷蔵貯蔵室である。製氷室3、上段冷凍室4および下段冷凍室5は、庫内を冷凍温度帯の例えば平均的に-18℃程度にした冷凍貯蔵室である。野菜室6は、庫内を冷蔵温度帯の例えば平均的に6℃程度にした冷蔵貯蔵室で、間接的な冷却により、食品の乾燥を抑えた冷蔵貯蔵室である。
【0013】
下段冷凍室5の後側には、各貯蔵室内を冷却する冷却器が配置されている。図示は省略するが、冷却器、圧縮機、凝縮器、およびキャプラリーチューブが接続され、冷凍サイクルが構成される。そして、冷却器の上方には、冷却器にて冷却された冷気を循環させるための送風機が配置され、送風機の下流には貯蔵室内に冷気を吐出する吐出口が形成されている。なお、冷却器は複数あっても良く、配置は下段冷凍室5の後側に限定されるものではなく、冷蔵室2の後側に配置されてもよい。
【0014】
引出式のドアは、引出式のドアに接続されたドア側のレール(不図示)が内箱8側のレール(不図示)に接続され、内箱8に支持される。引出式のドア又はドア側レールには食品を収納可能な容器が取付けられ、引出式のドアとともに移動する。
【0015】
冷蔵庫1の本体は、金属製の外箱7と、合成樹脂製の内箱8(
図2参照)と、外箱7と内箱8との間に充填された硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材や真空断熱材を含む断熱材と、によって形成される断熱箱体で構成される。
【0016】
冷蔵室2と、製氷室3および上段冷凍室4とは、略水平な面として配された断熱仕切部10によって隔てられている。また、下段冷凍室5と野菜室6とは、略水平な面として配された断熱仕切部11によって隔てられている。これらの断熱仕切部10,11は、異なる温度帯の貯蔵室を区画する部分に設けられ、冷凍温度帯室の冷気によって冷蔵温度帯室内が冷え過ぎないようにする役割を果たす。
【0017】
さらに、外箱7と内箱8との間には、発泡断熱材に加えて、発泡断熱材よりも熱伝導率の低い真空断熱材が実装されることで、食品収納容積を低下させることなく断熱性能が高められている。
【0018】
図2を参照して、冷蔵室2について説明する。
図2は、本発明に係る冷蔵庫1の冷蔵室2部分の内箱8を斜め前方から見た斜視図である。
【0019】
冷蔵室2内には、複数の庫内棚70が設けられる。庫内棚70は内箱8に形成された棚リブ13に支持される。複数段の棚リブ13を選択的に使用することにより、上下に配置される複数の庫内棚70の間隔が変更可能である。
【0020】
冷蔵室2の両側面に配された棚リブ13(
図2参照)は、冷蔵庫1の前端から離間したところに前端が位置し、そこから後方に延在している。棚リブ13には、食品を載置可能な庫内棚70が載置され、本実施例では複数が上下に並んでいる。
【0021】
図3乃至
図13を参照して、冷蔵庫1の庫内棚70について説明する。
図3は、本発明に係る冷蔵庫1の庫内棚70の外観斜視図である。
庫内棚70は、略四角形(略長方形)を成す透明なガラス板(載置面部材71)で構成される載置面711と、載置面711を取り囲むように設けられた樹脂製の枠部72と、庫内棚70の前縁部に設けられた前縁部材73と、前縁部材73を固定する固定部材74と、を備える。
【0022】
前縁部材73は、庫内棚70の前縁部を覆い、庫内棚70の剛性を高めたり、樹脂製の枠部72を保護したりする機能を有する部材であり、庫内棚70を補強する。このため前縁部材73を補強部材と呼んで説明する場合がある。
【0023】
図4は、
図3のIV部の拡大斜視図である。
枠部72は、略四角形(略矩形状)を成す載置面の前縁部、後縁部、左側縁部、および右側縁部を取り囲む本体部721と、本体部721の前縁部から前方に突出するように設けられた突出部722と、を有する。突出部722は本体部721を形成する樹脂材で本体部721と一体成形されている。
【0024】
突出部(第1突出部)722は、冷蔵庫1の幅方向(左右方向)における一端部(本実施例では右端部)に設けられる。突出部722は、前縁部材73が本体部721の前縁部に取り付けられた状態で、庫内棚70の一端部で前縁部材73の右方向への移動を規制し、前縁部材73の左右方向における位置を固定する。このため突出部722は、規制部(第1規制部)または固定部(第1固定部)と呼ぶこともできる。突出部(第1固定部)722は、枠部72と一体成形されていることで、枠部72(庫内棚70)に固定されている固定部である。
【0025】
突出部722は、前縁部材73から右側方に露出する部分の左右方向寸法(厚み寸法)がt722の大きさに形成されている。
【0026】
図5は、
図3のV部の拡大斜視図である。
固定部材74は、庫内棚70の他端部に取り付けられ、この他端部で前縁部材73の左方向への移動を規制し、前縁部材73の左右方向における位置を固定するための部材である。すなわち固定部材74は、前縁部材73の規制部(第2規制部)または固定部(第2固定部)を構成する部材である。固定部材74は、枠部72(庫内棚70)に対して着脱可能に構成される固定部であることが好ましい。
【0027】
図6は、
図3のV部を矢印VI方向から見た拡大斜視図である。
固定部材74は、枠部72の本体部721に締結される締結部741と、締結部741から前方に突出する突出部(第2突出部)742と、を有する。
【0028】
締結部741は、ねじやリベット等の締結具75で本体部721に対して締結される。この場合、締結部741は、ねじやその他の着脱を可能とする締結具75により、本体部721に対して締結されることが好ましい。
【0029】
なお締結部741は、枠部72の本体部721に固定される被固定部であり、被固定部と呼んで説明する場合もある。また第2突出部742は、前縁部材73の一方の端部(左端部)に対向する対向部を構成するため、対向部と呼んで説明する場合もある。
【0030】
第2突出部(対向部)742は、前縁部材73の側縁部に当接する部位であり、前縁部材73を介して第1突出部722と対向するように配置される。第2規制部または第2固定部は、第2突出部742によって構成される。
【0031】
締結部741と第2突出部742とは、第2突出部742が締結部741に対して上方に位置するように、階段状に構成されている。すなわち、第2突出部742の上縁部は締結部741の上縁部に対して上方に位置する。締結部741と第2突出部742とが階段状に形成されていることで、締結部741は枠部72の上端面72aの下側に配置され、上端面72aに露出しない。一方、締結部741は、その上縁部が枠部72の上端面72aと同じ高さになるように配置され、上端面72aに露出している。
【0032】
締結部741は上下方向寸法(高さ寸法)がh741である。第2突出部742は上下方向寸法(高さ寸法)がh742である。締結部741の高さ寸法h741は第2突出部742の高さ寸法h742よりも大きい(h741>h742)。
【0033】
締結部741は締結具75により枠部72の本体部721に締結される部位であり、締結具75を収納できる大きさが必要である。本実施例では、締結具75としてねじを用いている。締結具75がねじの場合、締結部741にはねじの頭部を収納できる大きさが必要である。また、ねじの頭部を締結部741から突出させることなく、締結部741の厚み寸法t741の中に収納するために、締結部741には、その側面741aに庫内棚70の左右方向中央部側に向かって窪んだ凹部741bを設ける必要がある。
【0034】
締結具75としてねじを用いる場合、低頭ねじを用いることにより、凹部741bの深さを浅くすることができ、締結部741の厚み寸法t741をより小さくすることができる。
【0035】
また、h741>h742とすることにより、凹部741bの形成が可能になると共に、締結具75の頭部を締結部741の高さ寸法h741の範囲内に収納することが可能になる。なお、締結部741の高さ寸法h741を少しでも小さくできるように、凹部741bは、その下端部で、凹部741bの側壁が切り欠かれ、開放部741cが形成された状態になっている。
【0036】
第2突出部742は、その高さ寸法h742を、左右方向に隣接する前縁部材73の厚み(上下方向の寸法)と揃えることで、意匠性(デザイン性)を向上することができる。h741>h742とすることにより、第2突出部742の高さ寸法h742を小さくすることができ、左右方向に隣接する前縁部材73も、その上下方向の寸法(厚み寸法)を小さくすることができ、意匠性が向上する。
【0037】
図7は、
図3のV部の分解斜視図である。
枠部72の本体部721の前縁部には、前縁部材73が取り付けられる前縁部材取付部723が設けられている。前縁部材取付部723は本体部721を形成する樹脂材で本体部721と一体成形されている。固定部材74が枠部72に取り付けられた状態では、固定部材74の締結部741が枠部72の本体部721と対向する位置に配置され、固定部材74の第2突出部742が前縁部材取付部723の側面と対向する位置に配置される。
【0038】
固定部材74の締結部741は、締結具75が挿通する挿通孔741aを有する。
【0039】
固定部材74の第2突出部742は、前縁部材73の内面に挿入して嵌められる嵌挿部743と、前縁部材73に掛け止める掛止部(フック部)744と、を有する。掛止部(フック部)744は嵌挿部743よりも前縁部材73のさらに奥部まで挿入される長さを有する。すなわち、固定部材74の第2突出部(対向部)742は、前縁部材73の内側に挿入され、前縁部材73に掛け止められる掛止部を有する。
【0040】
図8は、本発明に係る庫内棚70の枠部723と前縁部材73とを示す概略図である。
前縁部材73は、左右方向に垂直な断面形状が後側から前側に向かって窪んだ凹形状を成し、凹形状の内側に空間732が形成されている。また前縁部材73は、左右方向に垂直な断面形状が後方に向かって開口する開口733を有する。そして前縁部材73は、凹形状内側の空間732に前縁部材取付部723が挿入されるようにして、庫内棚70の前縁に取り付けられる。
【0041】
前縁部材73は、上面73aと、上面73aの前縁部に沿って形成された前端面73bと、前端面73bの下端縁に沿って形成された第1下面73c1と、第1下面73c1に対して段付き状に形成された第2下面73c2と、第1下面73c1と第2下面73c2とを接続する段差面73c3と、上面73aの後縁部に沿って形成された下垂部73dと、第2下面73c2の後縁部に沿って形成された傾斜部73eと、を有する。
【0042】
上面73aは、庫内棚70の載置面711と平行な面で構成される。前端面73bは、上面73aの前縁部から下方に向かって折り曲げられて形成される。第1下面73c1は、前端面73bの下端部から水平方向に折り曲げられて形成される。第2下面73c2は、第1下面73c1に対して後方に位置するように段付き状に折り曲げられて形成される。その結果、第1下面73c1と第2下面73c2との間には段差面73c3が形成され、段差面73c3は、第1下面73c1の後縁部と第2下面73c2の前縁部とを接続するように、後方に向かって上昇する傾斜面を構成する。下垂部73dは、上面73aの後縁部から垂直に折り曲げられて下垂するように形成される。傾斜部73eは、第2下面73c2の後縁部から、後方に向かって下降する傾斜面として形成される。本実施例では、上面73aと前端面73bとの間の角度、および第1下面73c1と前端面73bとの間の角度は90°、すなわち垂直に形成される。なお、前端面73bは平面としているが、曲面であってもよい。
【0043】
前縁部材73は、金属製の平板を曲げ加工して形成される。金属製の平板は、加工性を良くし、コストを低減するため、肉厚の小さい平板を用いることが好ましい。しかし肉厚の小さい平板を用いた場合、前縁部材73の剛性が小さくなる。本実施例では、特に第1下面73c1および第2下面73c2を加工するなどして曲げ加工を増やしているため、前縁部材73の剛性を大きくすることができる。これにより、庫内棚70を前縁部材73で補強して、庫内棚70の剛性を大きくすることができ、庫内棚70の撓みを抑制することができる。
【0044】
枠部72の前縁部材取付部723は、上面723aと、上面73aの前縁部に沿って形成された前端面723bと、前端面73bの下端縁に沿って形成された第1下面723c1と、上面723aの後縁部に沿って形成された溝部723dと、第1下面723c1から離間した後方に形成された傾斜部723eと、を有し、第1下面723c1と傾斜面723eとの間には空洞723fを形成する凹面723gが形成されている。
【0045】
上面723aは、庫内棚70の載置面711と平行な面で構成される。前端面723bは、上面723aに対して前側において、上面73aと第1下面723c1との間に設けられる。第1下面723c1は、前端面73bに対して下方かつ後方に設けられる。溝部723dは、上面723aに対して後方に設けられる。傾斜部723eは、後方に向かって下降する傾斜面として形成される。
【0046】
前縁部材73は、前縁部材取付部723の左端、固定部材74が設けられる側の端部から、前縁部材取付部723にスライドさせるようにして取り付けられる。このとき、前縁部材73は、下垂部73dを前縁部材取付部723の溝部723dに挿入した状態で、上面73a、前端面73b、第1下面73c1、および傾斜部73eのそれぞれを、前縁部材取付部723の上面723a、前端面723b、第1下面723c1、および傾斜部723eのそれぞれに摺動させながら、左方向(第1固定部(第1突出部)722に向かう方向)に移動させて、前縁部材取付部723に組み付けられる。
【0047】
前縁部材73が前縁部材取付部723に組み付けられた状態では、前縁部材73の下垂部73dが前縁部材取付部723の溝部723dに挿入された状態で、上面73a、前端面73b、第1下面73c1、および傾斜部73eのそれぞれが、前縁部材取付部723の上面723a、前端面723b、第1下面723c1、および傾斜部723eのそれぞれに当接した状態を維持することで、前縁部材73の前後方向の移動およびガタツキが抑制される。
【0048】
なお、前縁部材73の上面73a、前端面73b、第1下面73c1、および傾斜部73eのそれぞれと、前縁部材取付部723の上面723a、前端面723b、第1下面723c1、および傾斜部723eのそれぞれとが当接した状態は、これらの全ての面で当接している必要はなく、前縁部材73のガタツキを抑制するのに必要な複数の面が当接していればよい。
【0049】
また、前縁部材73の上面73a、前端面73b、および第1下面73c1のそれぞれと、前縁部材取付部723の上面723a、前端面723b、および第1下面723c1のそれぞれとは、平面部で構成されるか、少なくとも一部に平面部を有していて、これらの平面部において前縁部材73と前縁部材取付部723とを当接させることにより、前縁部材73と前縁部材取付部723との当接を容易に得ることができる。
【0050】
また、固定部材74の締結部741が枠部72に取り付けられることで、前縁部材73は、左右両側から固定部材(第2固定部)74および第1固定部(第1突出部)722により挟持され、前縁部材取付部723に固定される。第2固定部74および第1固定部722は、前縁部材73の左右方向の移動およびガタツキを抑制する。この場合、第2固定部74はねじ75による締結力と、第2固定部74を形成する樹脂の剛性とにより、前縁部材73の左右方向の移動およびガタツキを抑制する。
【0051】
図9は、
図3のV部を斜め下から見た斜視図であり、固定部材を取り除いた状態の斜視図である。
枠部72の本体部721の側面721aには反対側の側面に向かって窪んだ凹部724が形成されており、凹部724の底面に締結具を挿入する締結具挿入孔(本実施例の場合、ねじ75を螺合するねじ穴)724aが形成されている。この凹部724に固定部材74の締結部741が挿入されることで、締結部741は側面721aから飛び出すことなく、凹部724の内部に収納される。これにより、上方から庫内棚70を見た場合に、締結部741は枠部72の本体部721の陰に隠れて本体部721からの露出が防止される(
図10および
図11参照)。このとき締結具75は、締結部741の凹部741bに収納されており、上方から庫内棚70を見た場合に、本体部721から露出することはない(
図10および
図11参照)。
【0052】
前縁部材73の第2下面73c2には、上下方向に貫通する貫通穴731が形成されている。貫通穴731は、左右方向において、庫内棚70の中央部よりも固定部材(第2固定部)74側の側縁部の近くに設けられる。
【0053】
図10は、固定部材74の近傍を一部断面(
図11のX-X断面)で示す斜視図である。
図11は、
図3のV部を下方から見た平面図である。
図12は、
図11のXII-XII断面図である。
【0054】
固定部材74に設けられた掛止部(フック部)744は、前縁部材取付部723の凹面723gによって形成される空洞723fに挿入される。掛止部(フック部)744は、下方に向かって突状を成す突形状部744aが設けられており、この突形状部744aが前縁部材73の貫通穴731に嵌入される。固定部材74に対して第2突出部742が前縁部材73から離れる方向に力がかかった場合に、固定部材74が前縁部材73から離れるのを防止して、前縁部材73の前縁部材取付部723からの抜けを防止する。
【0055】
本実施例では、前縁部材73は前縁部材取付部723と複数の面で当接して、前縁部材取付部723に対して、ある程度の固定力が得られる。もし、前縁部材取付部723に対する前縁部材73の固定力が不足する場合は、前縁部材73を締結具76で前縁部材取付部723に固定するとよい。この締結具76は前縁部材73の下面73c1,73c2側に配される。締結具76の頭部は第2下面73c2上に位置する。第2下面73c2は第1下面73c1よりも高い位置にあり、第2下面73c2と第1下面73c1との間に段差が形成されている。このため、前方から見た場合に、締結具76の頭部は前縁部材73の陰に隠れて見えなくなり、意匠性が向上する。
【0056】
固定部材74は、前縁部材73から左側方に露出する部分(すなわち第2突出部)742の左右方向寸法(厚み寸法)がt742の大きさに形成されている。固定部材74の第2突出部742における厚み寸法t742と第1突出部722における厚み寸法t722とは同じ大きさである(t742=t722)。これにより、庫内棚70を左右対称に構成することができ、庫内棚70の意匠性を良好にすることができる。
【0057】
第1突出部722は枠部72の本体部721と一体成形されており、枠部72に締結する締結部を設ける必要がなく、厚み寸法t722を小さくすることは容易である。一方、固定部材74は枠部72に締結する締結部を設ける必要があり、固定部材74の厚み寸法を小さくすることは容易ではない。
【0058】
本実施例では、
図10に示すように、固定部材74を締結部741と第2突出部742とに分け、第2突出部742の厚み寸法t742を締結部741の厚み寸法t741よりも小さくする(t742<t741)。これにより、第2突出部742の厚み寸法t742を第1突出部722の厚み寸法t722と同等に小さくすることができる。第1突出部722の厚み寸法t722および第2突出部742の厚み寸法t742を小さくすることができることで、庫内棚70の外観を美しく仕上げることができ、意匠性に優れた庫内棚70を提供することができる。
【0059】
また、本実施例では、締結具75としてねじを用いているが、締結時に工具を必要としないブッシュや固定部材74に一体成型で設けた爪部(図示無し)であってもよい。これにより、樹脂製の枠部72と金属製の前縁部材73とを分別して解体する作業工程が簡略できる。
【0060】
図13は、
図3のV部を載置面711の部分で載置面711に平行に切断した拡大断面図である。
枠部72の本体部721には、締結具75を挿入する締結具挿入孔724aが形成されている。この締結具挿入孔724aは、載置面711を構成する載置面部材71の外縁71bの角部と干渉し易い位置にある。本実施例では、締結具挿入孔724aに挿入される締結具75と載置面部材71との干渉を避けるため、載置面部材71の外縁71bの角部に切欠き部71cを設けている。
【0061】
次に、
図14および
図15を参照して、庫内棚70の支持構造について説明する。
図14は、
図2の内箱8を左右中央部で切断した断面図である。
図15は、
図14のXV部の拡大斜視図である。
【0062】
冷蔵室2内の庫内棚70は、内箱8の左右方向の両側面に形成された棚リブ13に支持される。このため庫内棚70は、特に左右方向中央部が下がるような撓みを生じ易い。
【0063】
そこで本実施例では、内箱8の背面側に、庫内棚70の後縁部を支持する支持部16を設ける。本実施例では、冷気を送風する送風ダクト15部に支持部16を設けている。より具体的には、支持部16は送風ダクトを覆う部材17に設けられている。支持部16は、送風ダクト15における、冷蔵室2内に面する面から、前方に突出するように、設けられている。この場合、支持部16は送風ダクト15を覆う化粧部材17によって構成することで、部品点数や製造工程における工程数を低減することができる。
【0064】
また、支持部16の前方への突出寸法は、庫内棚70の枠部72を支持することができる程度の大きさにするとよい。
【0065】
上述した本実施例の冷蔵庫1は、下記特徴を備える。
(1)本実施例の冷蔵庫1は、
庫内棚70と、
庫内棚70の前縁部を覆う前縁部材73と、
前縁部材73の左右方向における両端部のうち、一方の端部の側に設けられる固定部材74と、
を備え、
固定部材74は、前縁部材73の前記一方の端部に対向する対向部742と、対向部742に対して後方に配置され前記一方の端部に対して後方で庫内棚70に固定される被固定部741と、を有する。
【0066】
(2)(1)において、
固定部材74の対向部742は、前縁部材73の内側に挿入されて、前縁部材73に掛け止められる掛止部744を有する。
【0067】
(3)(1)において、
固定部材74の被固定部742は、庫内棚70に対して締結具75によって固定される。
【0068】
(4)(3)において、締結具75は低頭ねじである。
【0069】
(5)(1)において、
前縁部材73は、曲げ加工された金属製の平板で形成されており、
前縁部材73は、上面73aと、上面73aの前縁部に沿って形成された前端面73bと、前端面73bの下端縁に沿って形成された第1下面73c1と、第1下面73c1に対して後方に位置し第1下面73c1に対して段付き状に形成された第2下面73c2と、を有し、
第2下面73c2は、第1下面73c1に対して、上方に位置する。
【0070】
(6)(5)において、
前縁部材73の第2下面73c2には、締結具76が配されており、
締結具76の頭部は、第1下面73c1に対して上方に位置する。
【0071】
(7)(1)において、
冷蔵庫1を構成する内箱8の背面側に、庫内棚70の後縁部を支持する支持部16を有し、
支持部16は送風ダクト15を覆う化粧部材によって構成される冷蔵庫。
【0072】
本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。前述した実施例は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…冷蔵庫、8…内箱、15…送風ダクト、16…支持部、70…庫内棚、73…前縁部材、73a…前縁部材73の上面、73b…前縁部材73の前端面、73c1…前縁部材73の第1下面、73c2…前縁部材73の第2下面、74…固定部材、75…締結具、76…締結具、741…被固定部、742…対向部、744…掛止部。