IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用電気接続箱 図1
  • 特許-車両用電気接続箱 図2
  • 特許-車両用電気接続箱 図3
  • 特許-車両用電気接続箱 図4
  • 特許-車両用電気接続箱 図5
  • 特許-車両用電気接続箱 図6
  • 特許-車両用電気接続箱 図7
  • 特許-車両用電気接続箱 図8
  • 特許-車両用電気接続箱 図9
  • 特許-車両用電気接続箱 図10
  • 特許-車両用電気接続箱 図11
  • 特許-車両用電気接続箱 図12
  • 特許-車両用電気接続箱 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20241008BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241008BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241008BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60R16/033 C
H02J7/00 P
H02J7/34 G
F02N11/08 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022154024
(22)【出願日】2022-09-27
(65)【公開番号】P2024048140
(43)【公開日】2024-04-08
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隼人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 順也
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍一
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152003(JP,A)
【文献】特開2019-193435(JP,A)
【文献】特開平9-275635(JP,A)
【文献】特開2017-163736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
H02J 7/00
H02J 7/34
F02N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続箱筐体と、
前記接続箱筐体に装備され、車両に搭載された低圧バッテリの出力電力を受け入れ可能な低圧電源入力端子と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記低圧電源入力端子に供給された電力に基づいて生成した電源電力を前記車両に搭載された車載機器に対して供給可能な1つ以上の低圧負荷出力端子と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に所定の電圧変換器が作動するために必要な動作電圧を前記電圧変換器に対して供給可能な動作電圧出力端子と、
前記接続箱筐体に装備された補助電源と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に、前記低圧電源入力端子に供給された第1電力と、前記補助電源から出力される第2電力とを選択的に切り替えて前記動作電圧を生成するスイッチ回路と、
を備える車両用電気接続箱であって、
前記接続箱筐体は、外部スイッチ端子を有し、
前記外部スイッチ端子は、前記補助電源の出力の第1回路と、前記低圧バッテリと接続される第2回路と、前記電圧変換器のバッテリ線接続端子および前記電圧変換器の起動を制御する制御部と接続される第3回路とを含み、
前記車両用電気接続箱は、前記低圧電源入力端子と接続されるバッテリ電源線とイグニッション入力電源線との接続の開閉を切替可能であり、且つ、前記制御部により前記開閉が制御される、イグニッションリレー回路を、更に備え、
前記スイッチ回路は、前記電圧変換器のイグニッション線接続端子の接続先を、前記第3回路と、前記イグニッション入力電源線とのいずれかに選択的に切り替え、且つ、その選択状態が前記第3回路に対する電圧印加の有無に応じて自動的に切り替わる、
車両用電気接続箱。
【請求項2】
前記電圧変換器は、前記車両に搭載された高圧バッテリの出力から前記低圧バッテリの出力と同等の低圧の電源電力を生成する機能を有し、
前記接続箱筐体は、前記補助電源を着脱可能に収容する補助電源収容部を備え、
前記補助電源は、前記低圧バッテリの出力と同等の低圧の電源電力を供給する機能を有する、
請求項1に記載の車両用電気接続箱。
【請求項3】
記外部スイッチ端子に接続される外部スイッチが、前記第1回路を、前記第2回路および前記第3回路のいずれかに選択的に接続する、
請求項1に記載の車両用電気接続箱。
【請求項4】
前記スイッチ回路は、前記低圧バッテリの出力回路と、前記電圧変換器およびその他の負荷を含む負荷側回路との間に接続された逆流防止回路を有する、
請求項1に記載の車両用電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気接続箱に関し、特に車載バッテリのバッテリ上がり対策のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両を長期間に亘って使用しなかった場合や、車両のエンジンを止めたままでライト、ヒータなどの車載機器を長時間使い続けたような場合には、車載バッテリに蓄積された電気エネルギーが暗電流や負荷電流等の影響で放電するためバッテリ上がりの状態になる。また、車載バッテリが劣化した場合には、バッテリ上がりが生じやすくなる。そして、バッテリ上がりの状態では車載バッテリの出力電圧が低すぎるため、そのままではエンジン始動等の通常の車両の動作ができなくなる。
【0003】
車両においてバッテリ上がりが発生した場合には、例えば車載バッテリを新品のバッテリに交換する作業が行われる。あるいは、救援車両や大型の電源装置を用意して、これらを所定のブースターケーブルを介して対象車両の電源回路と繋ぎ、ジャンプスタートと呼ばれる手法で対象車両のエンジンを始動する。
【0004】
一方、例えば特許文献1は残存電圧値が低いバッテリから引き出した電力を蓄えて短時間で放電させることによりエンジン始動することが可能なジャンプスタータの技術を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-38116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば山間部のように救援車両や大型の電源装置を用意するのが困難な場所で車両のバッテリ上がりが発生する場合も多い。したがって、ジャンプスタートの手法でエンジンを始動する場合であっても、車両のユーザが自分で作業することはできず、ロードサービスなどに救援作業を依頼しなければならない。したがって、バッテリ上がりが生じた車両のエンジンを始動するために、時間や手間がかかる。
【0007】
一方、純粋な電気自動車やプラグインハイブリッド車のような電動車(xEV)においては、走行駆動用の高圧バッテリと低圧バッテリとの両方を搭載している場合が多い。低圧バッテリが出力する電力は、例えば各種電子制御ユニット(ECU)の電源や各種補機(例えば、ランプ、ヒータ、電気モータなどの電装品)の電源として必要である。
【0008】
また、高圧バッテリが蓄積している電力の一部を低圧バッテリ側の回路に供給可能にするために電動車はDC/DCコンバータを搭載している場合が多い。すなわち、高圧バッテリが蓄積している高電圧の電力をDC/DCコンバータで低圧に変換して低圧バッテリ側の回路にも供給できる。
【0009】
しかしながら、高圧バッテリと低圧バッテリとの両方を搭載している電動車において、低圧バッテリ側でバッテリ上がりが生じると、エンジン始動などの車両の動作が不可能な状況が発生する。その場合、高圧バッテリが十分に大きな電力を蓄積している場合でも、DC/DCコンバータの回路が起動しないため、高圧バッテリ側の電力を低圧バッテリ側に供給できない。したがって、バッテリ上がりになった車両を始動するためにジャンプスタートの手法を用いなければならず、時間や手間がかかる。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両において低圧バッテリのバッテリ上がりが生じた場合に、車両の始動を容易にするために役立つ車両用電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用電気接続箱は、下記を特徴としている。
【0012】
接続箱筐体と、
前記接続箱筐体に装備され、車両に搭載された低圧バッテリの出力電力を受け入れ可能な低圧電源入力端子と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記低圧電源入力端子に供給された電力に基づいて生成した電源電力を前記車両に搭載された車載機器に対して供給可能な1つ以上の低圧負荷出力端子と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に所定の電圧変換器が作動するために必要な動作電圧を前記電圧変換器に対して供給可能な動作電圧出力端子と、
前記接続箱筐体に装備された補助電源と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に、前記低圧電源入力端子に供給された第1電力と、前記補助電源から出力される第2電力とを選択的に切り替えて前記動作電圧を生成するスイッチ回路と、
を備える車両用電気接続箱であって、
前記接続箱筐体は、外部スイッチ端子を有し、
前記外部スイッチ端子は、前記補助電源の出力の第1回路と、前記低圧バッテリと接続される第2回路と、前記電圧変換器のバッテリ線接続端子および前記電圧変換器の起動を制御する制御部と接続される第3回路とを含み、
前記車両用電気接続箱は、前記低圧電源入力端子と接続されるバッテリ電源線とイグニッション入力電源線との接続の開閉を切替可能であり、且つ、前記制御部により前記開閉が制御される、イグニッションリレー回路を、更に備え、
前記スイッチ回路は、前記電圧変換器のイグニッション線接続端子の接続先を、前記第3回路と、前記イグニッション入力電源線とのいずれかに選択的に切り替え、且つ、その選択状態が前記第3回路に対する電圧印加の有無に応じて自動的に切り替わる、
車両用電気接続箱。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用電気接続箱を搭載した車両においては、低圧バッテリのバッテリ上がりが発生した場合に、予め用意されている補助電源が供給する電力を、電圧変換器が起動するために必要な動作電圧として出力できる。電圧変換器の起動が完了した後は、高圧バッテリが蓄積している電力を、電圧変換器で降圧して低圧バッテリ側に供給できるので、通常時の動作と同じように車両のエンジン等を始動できる。したがって、ジャンプスタートのように面倒で手間のかかる作業をユーザが行う必要がなくなる。また、電圧変換器を起動するために必要な電力は比較的小さいので、補助電源として比較的小型のバッテリー等を利用できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、電気接続箱の外観を示す斜視図である。
図2図2は、電気接続箱を含む電源制御システムの構成を示す電気回路図である。
図3図3は、変形例-1の電源制御システムを示す電気回路図である。
図4図4は、変形例-2の電源制御システムを示す電気回路図である。
図5図5は、変形例-3の電源制御システムを示す電気回路図である。
図6図6は、変形例-4の電源制御システムを示す電気回路図である。
図7図7は、変形例-5の電源制御システムを示す電気回路図である。
図8図8は、変形例-6の電源制御システムを示す電気回路図である。
図9図9は、変形例-7の電源制御システムを示す電気回路図である。
図10図10は、変形例-8の電源制御システムを示す電気回路図である。
図11図11は、変形例-9の電源制御システムを示す電気回路図である。
図12図12は、変形例-10の電源制御システムを示す電気回路図である。
図13図13は、変形例-11の電源制御システムを示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
図1は、電気接続箱10の外観を示す斜視図である。この電気接続箱10が本発明の車両用電気接続箱に相当する。
電気接続箱10は、基本的には車載バッテリなどの上流側電源と負荷との間を接続し、電源電力を分配して負荷側に供給する機能を有している。電気接続箱10は、一般的な車両に搭載されているジャンクションブロック(J/B)、又はリレーボックス(R/B)に相当する構成要素であるが、以下に説明するように、本実施形態に特有の構成要素も搭載している。
【0018】
電気接続箱10は、筐体70の外側に露出した簡易電源25が配置されている。この簡易電源25は、電池ケース25bのソケットに装着された複数個の乾電池25aを備えている。電池ケース25bは筐体70に固定され、各乾電池25aはソケットに着脱自在に取り付けられている。
【0019】
電池ケース25bに装着された複数個の乾電池25aは、簡易電源25の内部回路で直列に接続され、所定の直流電圧、例えば+12[V]の電圧を出力できるように構成されている。
【0020】
<電源制御システムの構成>
図2は、電気接続箱10を含む電源制御システム100の構成を示す電気回路図である。
【0021】
電源制御システム100は、純粋な電気自動車やプラグインハイブリッド車のような電動車に搭載することを想定して構成されている。電源制御システム100を搭載する電動車は、車載電源装置として図2に示した高圧バッテリ21、低圧バッテリ23、及びDC/DCコンバータ22を備えている。
【0022】
高圧バッテリ21は、車両が走行するために必要な大きな電力を蓄積し、走行用の電気モータなどの負荷が必要とする電源電力を供給できる。高圧バッテリ21は、例えば数百[V]程度の高電圧の電力を蓄積する。高電圧を扱うことで、走行系の配電経路や負荷などにおいて発生する電力の損失を減らすことができる。
【0023】
低圧バッテリ23は、例えば+12[V]程度の低電圧の電力を蓄積し、低圧系の各種負荷に対して必要な電源電力を供給できる。例えば各種ECU(電子制御ユニット)、ランプ、ヒータ、低圧系電気モータなどの負荷は低電圧で動作するので、低圧バッテリ23の出力から適切な電圧の電源電力を供給することで電力の損失を減らすことができる。
【0024】
DC(直流)/DCコンバータ22は、高圧バッテリ21側の高電圧の直流電力を降圧して、低圧バッテリ23側で利用可能な低電圧の直流電力を生成する。DC/DCコンバータ22は、その内部で例えば所定のパルス信号に同期してスイッチングを行うと共に、パルス信号のデューティ等を適切に調整することで、高電圧から目的とする低電圧への電力変換を高効率で行う。
【0025】
但し、DC/DCコンバータ22が動作するためには、外部からの電源電力供給が不可欠である。例えば、低圧バッテリ23から供給される電源電力によりDC/DCコンバータ22が動作する場合には、特別な工夫をしない限り、低圧バッテリ23がバッテリ上がりになった時にDC/DCコンバータ22の動作が起動しない可能性が高くなる。
【0026】
図2に示したDC/DCコンバータ22は、高圧側入力端子22a、低圧側出力端子22b、BAT(バッテリ)線接続端子22c、IG(イグニッション)線接続端子22d、及び制御入力端子22eを備えている。
【0027】
図1に示すように、DC/DCコンバータ22の高圧側入力端子22aは、高圧バッテリ21の出力と接続され、低圧側出力端子22bはバッテリ電源線41と接続され、バッテリ電源線41が低圧バッテリ23と接続されている。また、BAT線接続端子22cは負荷側電源線43と接続され、IG線接続端子22dはIG出力電源線45と接続され、制御入力端子22eは制御線48と接続されている。
【0028】
電源制御システム100は、高圧バッテリ21、DC/DCコンバータ22、低圧バッテリ23以外の主要な構成要素として、電気接続箱10、モードスイッチ26、電源制御ECU31、キー認証ECU32、及びパワトレECU33を備えている。
【0029】
電気接続箱10は、その外部の回路と接続するための各端子T11~T13、T21~T23、T31~T35、及びT41を有している。各端子T11~T13はバッテリ電源線41と接続されている。各端子T21~T23はモードスイッチ26と接続されている。
【0030】
また、電気接続箱10の各端子T31、T32、T33、及びT34は、それぞれ負荷であるDC/DCコンバータ22、パワトレECU33、電源制御ECU31、キー認証ECU32のBAT側電源入力端子と接続されている。また、電気接続箱10の端子T35は、IG出力電源線45を介してDC/DCコンバータ22のIG線接続端子22dと接続されている。端子T41は、IG制御線47を介してパワトレECU33の制御出力と接続されている。
【0031】
モードスイッチ26は、車両の運転者が操作可能な場所(例えばインパネ下方)に配置された特別な手動操作スイッチであり、非常時始動モードと、通常モードとのいずれか一方を選択できる。低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合には、ユーザがモードスイッチ26で非常時始動モードを選択することで、簡易電源25の電源電力を利用して車両の始動を行うことができる。
【0032】
図2に示すように、モードスイッチ26の通常モード側端子、非常時始動モード側端子、及び共通端子は、それぞれ電気接続箱10の端子T21、T22、及びT23と接続されている。実際には、モードスイッチ26と電気接続箱10との間はスイッチ共通線44を含むワイヤハーネスを介して接続される。
【0033】
電源制御ECU31は、ACC(アクセサリ)系やIG系の各回路に対して電源供給を指示する機能を有している。キー認証ECU32は、車両の運転に必要なキーを認証する機能を有している。パワトレ(パワートレイン)ECU33は、DC/DCコンバータ22を制御する機能を有している。
【0034】
電気接続箱10は、図1に示した簡易電源25の他に、IGリレー12、経路切替リレー13、及び逆流防止素子14を内蔵している。
IGリレー12は、接点駆動用の電気コイルと1つの電気接点とを有している。IGリレー12の電気接点の一方の端子はバッテリ電源線41と接続され、他方の端子はIG入力電源線64と接続されている。
【0035】
IGリレー12の電気コイルは、一方の端子がIG制御線47と接続され、他方の端子がグランド(アース)と接続されている。IG制御線47はパワトレECU33の出力と接続されている。IGリレー12の電気接点は、IG制御線47の信号に従い、バッテリ電源線41とIG入力電源線64との接続の開閉を切り替えることができる。この開閉制御はパワトレECU33が行う。
【0036】
経路切替リレー13は、接点駆動用の電気コイルと選択的に接続可能な2つの電気接点とを有するスイッチとを備えている。経路切替リレー13の電気コイルは、一方の端子が負荷側電源線43と接続され、他方の端子がグランドと接続されている。
【0037】
経路切替リレー13のスイッチは、IG出力電源線45と接続された端子を、IG入力電源線64、及び負荷側電源線43のいずれか一方の接点に選択的に接続できる。経路切替リレー13の電気コイルが負荷側電源線43と接続されているので、経路切替リレー13のスイッチの選択状態は、負荷側電源線43に対する電圧印加の有無に応じて自動的に切り替わる。
【0038】
すなわち、負荷側電源線43に所定の電圧が印加されると、経路切替リレー13のスイッチが負荷側電源線43とIG出力電源線45との間を接続する。また、負荷側電源線43に所定の電圧が印加されない状態では、経路切替リレー13のスイッチがIG入力電源線64とIG出力電源線45との間を接続する。
【0039】
逆流防止素子14は、ダイオードにより構成され、バッテリ電源線41から負荷側電源線43に向かう方向の電流通過を許容し、逆方向の電流通過を阻止する。すなわち、負荷側電源線43よりもバッテリ電源線41の電圧が高い場合にのみ、バッテリ電源線41から負荷側電源線43に向かって電流が流れる。
【0040】
制御線48は、パワトレECU33の制御出力とDC/DCコンバータ22の制御入力端子22eとの間を接続している。したがって、パワトレECU33はDC/DCコンバータ22を制御できる。
【0041】
信号線49は、電源制御ECU31の出力とパワトレECU33の入力との間を接続している。この信号線49は、電源制御ECU31が送出する電源モード情報をパワトレECU33に入力できる。信号線50は、キー認証ECU32の出力とパワトレECU33の入力との間を接続している。この信号線50は、キー認証ECU32が送出する認証情報をパワトレECU33に入力できる。
【0042】
<電源制御システムの動作>
図2に示した電源制御システム100の動作について以下に説明する。
通常の状態であれば、モードスイッチ26は端子T21とスイッチ共通線44との間を接続する状態になっている。また、車両のエンジン等を始動する際には、IGリレー12がバッテリ電源線41とIG入力電源線64との間を接続し、経路切替リレー13がIG入力電源線64とIG出力電源線45との間を接続する。また、低圧バッテリ23の出力する低電圧の電源電力が電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33、及びDC/DCコンバータ22にそれぞれ供給される。
【0043】
したがって、通常は低圧バッテリ23が蓄積している電源電力を利用して車両の始動を行うことができる。また、パワトレECU33がDC/DCコンバータ22を起動すれば、高圧バッテリ21が出力する高電圧の電力をDC/DCコンバータ22の内部で低電圧に変換し、低圧側出力端子22bからバッテリ電源線41に供給することもできる。
【0044】
一方、例えば駐車状態で長期間放置された車両を始動する場合や、エンジンを止めたままの状態で車載機器を長時間使い続けたような場合には、低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生する可能性がある。その場合、低圧バッテリ23の出力電圧が異常に低下するため、電源制御ECU31、キー認証ECU32、及びパワトレECU33のいずれかが正常に動作しなくなる可能性が高い。更に、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dに印加される電圧が低下するため、DC/DCコンバータ22が起動しなくなる。
【0045】
したがって、高圧バッテリ21側に十分な電力が蓄積されている場合でも、その電力を降圧してバッテリ電源線41側で利用することができない。そのため、本発明の特別な機能を有する電気接続箱10を備えていない一般的な車両の場合には、エンジン始動等を行うために、ジャンプスタートのような手間のかかる作業が必要になる。
【0046】
一方、図1図2に示した電気接続箱10を含む電源制御システム100を搭載した車両の場合には、低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、エンジン等を簡単に始動することが可能である。
【0047】
すなわち、電気接続箱10に簡易電源25が搭載されているので、簡易電源25の電源電力を始動のために利用できる。バッテリ上がりが発生した車両のユーザは、モードスイッチ26を通常モードから非常時始動モード(図2に示す状態)に切り替える。これにより、以下に説明するようにエンジン等の始動が可能になる。
【0048】
この場合、図2に示すようにモードスイッチ26がスイッチ共通線44と負荷側電源線43とを接続する。したがって、簡易電源25が出力する所定の直流電圧が端子T23、スイッチ共通線44、モードスイッチ26、及び端子T22を経由して負荷側電源線43に供給される。
【0049】
そのため、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子、及びDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22cに負荷側電源線43から必要な電源電力が供給される。
【0050】
更に、負荷側電源線43が高電位になるため経路切替リレー13の電気コイルが通電状態になり、経路切替リレー13内のスイッチが切り替わる。このスイッチにより、負荷側電源線43とIG出力電源線45との間が接続される。したがって、DC/DCコンバータ22のIG線接続端子22dにもIG出力電源線45から十分に電圧の高い電源電力が供給される。
【0051】
なお、図2に示した構成においては逆流防止素子14が存在するため、負荷側電源線43からバッテリ電源線41に向かう方向に電流が流れることはない。したがって、バッテリ電源線41の電圧が異常に低下している状態であっても、負荷側電源線43からバッテリ電源線41に向かって過大な電流が流れることはなく、簡易電源25の負荷が過大になるのを防止できる。
【0052】
この状態では、必要な電源電力がDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dにそれぞれ供給されているので、パワトレECU33が制御線48の信号を制御すればDC/DCコンバータ22の内部回路の動作を起動することができる。
【0053】
DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21から供給される高電圧の電力が、DC/DCコンバータ22の内部回路で降圧され、低電圧の電源電力として低圧側出力端子22bに現れる。
【0054】
DC/DCコンバータ22の低圧側出力端子22bに出力された低電圧の電源電力は、バッテリ電源線41に供給される。したがって、高圧バッテリ21が蓄積している電力を利用して低圧バッテリ23を充電することができる。また、バッテリ電源線41の電圧が負荷側電源線43よりも高くなると、逆流防止素子14を経由してバッテリ電源線41から負荷側電源線43に向かって電流が流れる。
【0055】
つまり、DC/DCコンバータ22の内部回路の動作が起動した後は、簡易電源25が消耗してその出力電圧が低下した場合でも、負荷側電源線43に現れる電源電圧を十分に高く維持できる。したがって、DC/DCコンバータ22の動作および電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の通常の動作を継続し、車両のエンジン等の始動動作を続けることができる。そのため、簡易電源25が小型で、供給可能な電力量が非常に小さい場合であっても、これを車両を始動するための非常時用の電源として十分に利用できる。
【0056】
<変形例-1の構成>
図3は、変形例-1の電源制御システム100Aを示す電気回路図である。図3の電源制御システム100Aの構成は、図2に示した電源制御システム100の変形例である。
【0057】
図3に示した電源制御システム100Aにおいては、電気接続箱10が図2中の簡易電源25の代わりに簡易電源25Aを備えている。それ以外の電気接続箱10の構成および動作は図2の場合と同様である。
【0058】
図3の簡易電源25Aは、内蔵電池25Aa及びDC/DCコンバータ25Abを電源モジュールとして一体化した装置である。DC/DCコンバータ25Abは、内蔵電池25Aaが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
【0059】
図3に示すように、簡易電源25Aの正極側の出力端子は電気接続箱10の端子T23と接続され、簡易電源25Aの負極側の出力端子はグランドと接続されている。したがって、図3の簡易電源25Aは図2の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0060】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Aの電力をDC/DCコンバータ22などの負荷に供給し、DC/DCコンバータ22を起動できる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0061】
<変形例-2の構成>
図4は、変形例-2の電源制御システムを示す電気回路図である。図4の電源制御システム100Bの構成は、図2に示した電源制御システム100の変形例である。
【0062】
図4に示した電源制御システム100Bにおいては、電気接続箱10が図2中の簡易電源25の代わりに簡易電源25BおよびDC/DCコンバータ71を備えている。それ以外の電気接続箱10の構成および動作は図2の場合と同様である。
【0063】
図4中の簡易電源25Bは、複数の乾電池を組み合わせて一体化した電池パックとして構成されている。この電池パックの出力電圧は、低圧バッテリ23における規定電圧(例えば+12[V])よりも低い。
【0064】
図4に示す電気接続箱10に追加されたDC/DCコンバータ71は、簡易電源25Bが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
図4に示すように、簡易電源25Bの正極側の出力端子はDC/DCコンバータ71の入力と接続され、簡易電源25Bの負極側の出力端子はグランドと接続されている。また、DC/DCコンバータ71の出力が電気接続箱10の端子T23と接続されている。したがって、図4の簡易電源25B及びDC/DCコンバータ71は、図2の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0065】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Bが出力する電力をDC/DCコンバータ71で昇圧し、DC/DCコンバータ22などの負荷に供給できるので、DC/DCコンバータ22を起動できる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0066】
<変形例-3の構成>
図3は、変形例-1の電源制御システム100Cを示す電気回路図である。図5の電源制御システム100Cの構成は、図2に示した電源制御システム100の変形例である。
【0067】
図5に示した電源制御システム100Cの電気接続箱10Aは、図2中に示した逆流防止素子14の代わりに経路切替リレー15を備えている。この経路切替リレー15は、接点駆動用の電気コイルと選択的に接続可能な2つの電気接点とを有するスイッチとを備えている。経路切替リレー15の電気コイルは、一方の端子が負荷側電源線43と接続され、他方の端子がグランドと接続されている。
【0068】
経路切替リレー15のスイッチは、負荷側電源線43Aと接続された端子を、バッテリ電源線41、及び負荷側電源線43のいずれか一方の接点に選択的に接続できる。経路切替リレー15の電気コイルが負荷側電源線43と接続されているので、経路切替リレー15のスイッチの選択状態は、負荷側電源線43に対する電圧印加の有無に応じて自動的に切り替わる。
【0069】
また、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22cと、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子がそれぞれ負荷側電源線43Aと接続されている。
【0070】
負荷側電源線43に所定の電圧が印加されると、経路切替リレー15のスイッチが負荷側電源線43と負荷側電源線43Aとの間を接続する。また、負荷側電源線43に所定の電圧が印加されない状態では、経路切替リレー15のスイッチがバッテリ電源線41と負荷側電源線43Aとの間を接続する。
【0071】
つまり、DC/DCコンバータ22、電源制御ECU31、キー認証ECU32、及びパワトレECU33のBAT系の電源電力の供給元の経路を経路切替リレー15が自動的に切り替えることができる。
【0072】
<変形例-3の動作>
図5に示した電源制御システム100Cの動作について以下に説明する。
例えば低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した時に、ユーザはモードスイッチ26を操作して通常モードから非常時始動モード(図5に示す状態)に切り替える。これにより、以下に説明するようにエンジン等の始動が可能になる。
【0073】
この場合、図5に示すようにモードスイッチ26がスイッチ共通線44と負荷側電源線43とを接続する。したがって、簡易電源25が出力する所定の直流電圧(例えば+12[V])が端子T23、スイッチ共通線44、モードスイッチ26、端子T22を経由して負荷側電源線43に供給される。
【0074】
これにより、経路切替リレー13の電気コイルが通電状態になり、経路切替リレー13のスイッチが負荷側電源線43とIG出力電源線45との間を接続する。また、経路切替リレー15の電気コイルが通電状態になり、経路切替リレー15のスイッチが負荷側電源線43と負荷側電源線43Aとの間を接続する。
【0075】
したがって、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dと、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子のそれぞれに、簡易電源25の電源電力が供給される。
【0076】
この状態では、必要な電源電力がDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dにそれぞれ供給されているので、パワトレECU33が制御線48の信号を制御すればDC/DCコンバータ22の内部回路の動作を起動できる。
【0077】
DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21から供給される高電圧の電力が、DC/DCコンバータ22の内部回路で降圧され、低電圧の電源電力として低圧側出力端子22bに現れる。
【0078】
DC/DCコンバータ22の低圧側出力端子22bに出力された低電圧の電源電力は、バッテリ電源線41に供給される。したがって、高圧バッテリ21が蓄積している電力を利用して低圧バッテリ23を充電することができる。
【0079】
また、車両のエンジン始動等が成功し、ユーザがモードスイッチ26を通常モードに切り替えると、或いは簡易電源25の出力電圧が低下すると、負荷側電源線43が低電位になるので、経路切替リレー13の電気コイル、及び経路切替リレー15の電気コイルの通電が停止する。したがって、経路切替リレー13のスイッチはIG入力電源線64とIG出力電源線45との間を接続する状態に切り替わり、経路切替リレー15のスイッチはバッテリ電源線41と負荷側電源線43Aとの間を接続する状態に切り替わる。
【0080】
したがって、DC/DCコンバータ22のIG線接続端子22dに対しては、バッテリ電源線41、IGリレー12、経路切替リレー13、IG出力電源線45を通過する経路で電源電力の供給を継続できる。また、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及び、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子に対しては、バッテリ電源線41、経路切替リレー15、負荷側電源線43Aを通過する経路で電源電力の供給を継続できる。
【0081】
つまり、低圧バッテリ23のバッテリ上がりにより車両のエンジン始動等ができなくなったときに、DC/DCコンバータ22の内部回路が起動するまでの間だけ、簡易電源25側から十分な電源電力を供給できれば、その後は高圧バッテリ21側に蓄積された電源電力を利用できるので、エンジン始動等を容易に行うことができる。そのため、簡易電源25が小型で、供給可能な電力量が非常に小さい場合であっても、これを車両を始動するための非常時用の電源として十分に利用できる。
【0082】
<変形例-4の構成>
図6は、変形例-4の電源制御システム100Dを示す電気回路図である。図6に示した電源制御システム100Dの構成は、図5の電源制御システム100Cの変形例である。
【0083】
図6に示した電源制御システム100Dにおいては、電気接続箱10Aが図5中の簡易電源25の代わりに簡易電源25Aを備えている。それ以外の電気接続箱10Aの構成および動作は図5の場合と同様である。
【0084】
簡易電源25Aは、内蔵電池25Aa及びDC/DCコンバータ25Abを電源モジュールとして一体化した装置である。DC/DCコンバータ25Abは、内蔵電池25Aaが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
【0085】
図6に示すように、簡易電源25Aの正極側の出力端子は電気接続箱10の端子T23と接続され、簡易電源25Aの負極側の出力端子はグランドと接続されている。したがって、図6の簡易電源25Aは図5の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0086】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Aの電力をDC/DCコンバータ22などの負荷に供給し、DC/DCコンバータ22を起動することができる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0087】
<変形例-5の構成>
図7は、変形例-5の電源制御システム100Eを示す電気回路図である。図7に示した電源制御システム100Eの構成は、図5の電源制御システム100Cの変形例である。
【0088】
図7に示した電源制御システム100Eにおいては、電気接続箱10Aが図5中の簡易電源25の代わりに簡易電源25BおよびDC/DCコンバータ71を備えている。それ以外の電気接続箱10Aの構成および動作は図5の場合と同様である。
【0089】
図7中の簡易電源25Bは、複数の乾電池を組み合わせて一体化した電池パックとして構成されている。この電池パックの出力電圧は、低圧バッテリ23における規定電圧(例えば+12[V])よりも低い。
【0090】
図7に示す電気接続箱10に追加されたDC/DCコンバータ71は、簡易電源25Bが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
図7に示すように、簡易電源25Bの正極側の出力端子はDC/DCコンバータ71の入力と接続され、簡易電源25Bの負極側の出力端子はグランドと接続されている。また、DC/DCコンバータ71の出力が電気接続箱10の端子T23と接続されている。したがって、図4の簡易電源25B及びDC/DCコンバータ71は、図5の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0091】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Bが出力する電力をDC/DCコンバータ71で昇圧し、DC/DCコンバータ22などの負荷に供給できるので、DC/DCコンバータ22を起動できる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0092】
<変形例-6の構成>
図8は、変形例-6の電源制御システム100Fを示す電気回路図である。図8の電源制御システム100Fは、図2の電源制御システム100の変形例である。
【0093】
図8の電源制御システム100Fにおいては、図2に示したモードスイッチ26の代わりのモード切替リレー26Aが電気接続箱10Bに内蔵され、更に判定器16が電気接続箱10B内に追加されている。
【0094】
図8に示すように、判定器16は入力端子がバッテリ電源線41と接続され、出力端子がモード制御線61を経由して経路切替リレー13及びモード切替リレー26Aの電気コイルの一端と接続されている。
【0095】
この判定器16は、バッテリ電源線41の電圧を監視して、バッテリ上がりの有無を表す信号を出力する。この信号が経路切替リレー13及びモード切替リレー26Aの電気コイルに印加され、経路切替リレー13及びモード切替リレー26Aのスイッチの状態を切り替える。
【0096】
モード切替リレー26Aは、接点駆動用の電気コイルと選択的に接続可能な2つの電気接点とを有するスイッチとを備えている。モード切替リレー26Aの電気コイルは、一方の端子がモード制御線61と接続され、他方の端子がグランドと接続されている。
【0097】
モード切替リレー26Aのスイッチは、スイッチ共通線44Aと接続された端子を、バッテリ電源線41、及び負荷側電源線43Bのいずれか一方の接点に選択的に接続し、前述の非常時始動モードと、通常モードとのいずれか一方を選択する。図8に示した状態が非常時始動モードの選択状態である。
上記以外の電源制御システム100Fの構成は、図2の電源制御システム100と同様である。
【0098】
<変形例-6の動作>
図8に示した電源制御システム100Fの動作について以下に説明する。
低圧バッテリ23がバッテリ上がりになると、電気接続箱10B内の判定器16がバッテリ電源線41の電圧低下を検知してモード制御線61に出力する信号によりモード切替リレー26Aおよび経路切替リレー13の選択状態を自動的に制御する。これにより、図8に示すように、モード切替リレー26Aのスイッチがスイッチ共通線44Aと負荷側電源線43Bとの間を接続し、経路切替リレー13が負荷側電源線43BとIG出力電源線45との間を接続する状態になる。これが非常時始動モードである。
【0099】
したがって、簡易電源25が出力する所定の直流電圧がスイッチ共通線44A、モード切替リレー26Aを経由して負荷側電源線43Bに供給される。
そのため、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子、及びDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22cに負荷側電源線43Bから必要な電源電力が供給される。更に、負荷側電源線43Bから経路切替リレー13、IG出力電源線45を経由して、DC/DCコンバータ22のIG線接続端子22dにも必要な電源電力が供給される。
【0100】
なお、図8に示した構成においては逆流防止素子14が存在するため、負荷側電源線43Bからバッテリ電源線41に向かう方向に電流が流れることはない。したがって、バッテリ電源線41の電圧が異常に低下している状態であっても、負荷側電源線43Bからバッテリ電源線41に向かって過大な電流が流れることはなく、簡易電源25の負荷が過大になるのを防止できる。
【0101】
この状態では、必要な電源電力がDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dにそれぞれ供給されているので、パワトレECU33が制御線48の信号を制御すればDC/DCコンバータ22の内部回路の動作を起動することができる。
【0102】
DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21から供給される高電圧の電力が、DC/DCコンバータ22の内部回路で降圧され、低電圧の電源電力として低圧側出力端子22bに現れる。
【0103】
DC/DCコンバータ22の低圧側出力端子22bに出力された低電圧の電源電力は、バッテリ電源線41に供給される。したがって、高圧バッテリ21が蓄積している電力を利用して低圧バッテリ23を充電することができる。また、バッテリ電源線41の電圧が負荷側電源線43Bよりも高くなると、逆流防止素子14を経由してバッテリ電源線41から負荷側電源線43Bに向かって電流が流れる。
【0104】
つまり、DC/DCコンバータ22の内部回路の動作が起動した後は、簡易電源25が消耗してその出力電圧が低下した場合でも、負荷側電源線43Bに現れる電源電圧を十分に高く維持できる。したがって、DC/DCコンバータ22の動作および電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の通常の動作を継続し、車両のエンジン等の始動動作を続けることができる。そのため、簡易電源25が小型で、供給可能な電力量が非常に小さい場合であっても、これを車両を始動するための非常時用の電源として十分に利用できる。
【0105】
また、低圧バッテリ23におけるバッテリ上がりの状態が解消され、バッテリ電源線41の電圧が十分に高くなると、その変化を判定器16が検知してモード制御線61に出力する信号を切り替える。これにより、モード切替リレー26Aのスイッチは、スイッチ共通線44Aとバッテリ電源線41との間を接続する状態に切り替わり、経路切替リレー13はIG入力電源線64とIG出力電源線45との間を接続する状態に切り替わる。
【0106】
<変形例-7の構成>
図9は、変形例-7の電源制御システム100Gを示す電気回路図である。図9の電源制御システム100Gの構成は、図8の電源制御システム100Fの変形例である。
【0107】
図9に示した電源制御システム100Gにおいては、電気接続箱10Bが図8中の簡易電源25の代わりに簡易電源25Aを備えている。それ以外の電気接続箱10Bの構成および動作は図8の場合と同様である。
【0108】
図9中の簡易電源25Aは、内蔵電池25Aa及びDC/DCコンバータ25Abを電源モジュールとして一体化した装置である。DC/DCコンバータ25Abは、内蔵電池25Aaが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
【0109】
図9に示すように、簡易電源25Aの正極側の出力端子は電気接続箱10Bの端子T23と接続され、簡易電源25Aの負極側の出力端子はグランドと接続されている。したがって、図9中の簡易電源25Aは図8中の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0110】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Aの電力をDC/DCコンバータ22などの負荷に供給し、DC/DCコンバータ22を起動することができる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0111】
<変形例-8の構成>
図10は、変形例-8の電源制御システム100Hを示す電気回路図である。図10の電源制御システム100Hは、図8の電源制御システム100Fの変形例である。
【0112】
図10に示した電源制御システム100Hにおいては、電気接続箱10Bが図8中の簡易電源25の代わりに簡易電源25BおよびDC/DCコンバータ71を備えている。それ以外の電気接続箱10Bの構成および動作は図8の場合と同様である。
【0113】
図10の簡易電源25Bは、複数の乾電池を組み合わせて一体化した電池パックとして構成されている。この電池パックの出力電圧は、低圧バッテリ23における規定電圧(例えば+12[V])よりも低い。
【0114】
図10に示す電気接続箱10Bに追加されたDC/DCコンバータ71は、簡易電源25Bが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
図10に示すように、簡易電源25Bの正極側の出力端子はDC/DCコンバータ71の入力と接続され、簡易電源25Bの負極側の出力端子はグランドと接続されている。また、DC/DCコンバータ71の出力が電気接続箱10の端子T23と接続されている。したがって、図10の簡易電源25B及びDC/DCコンバータ71は、図8の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0115】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Bが出力する電力をDC/DCコンバータ71で昇圧し、DC/DCコンバータ22などの負荷に供給できるので、DC/DCコンバータ22を起動できる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0116】
<変形例-9の構成>
図11は、変形例-9の電源制御システム100Iを示す電気回路図である。図11の電源制御システム100Iの構成は、図8の電源制御システム100Fの変形例である。
【0117】
図11に示した電源制御システム100Iの電気接続箱10Cは、図8中に示した逆流防止素子14の代わりに経路切替リレー15を備えている。この経路切替リレー15は、接点駆動用の電気コイルと選択的に接続可能な2つの電気接点とを有するスイッチとを備えている。経路切替リレー15の電気コイルは、一方の端子が負荷側電源線43Bと接続され、他方の端子がグランドと接続されている。
【0118】
経路切替リレー15のスイッチは、負荷側電源線43Aと接続された端子を、バッテリ電源線41、及び負荷側電源線43Bのいずれか一方の接点に選択的に接続できる。経路切替リレー15の電気コイルが負荷側電源線43Bと接続されているので、経路切替リレー15のスイッチの選択状態は、負荷側電源線43Bに対する電圧印加の有無に応じて自動的に切り替わる。
【0119】
また、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22cと、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子がそれぞれ負荷側電源線43Aと接続されている。
【0120】
負荷側電源線43Bに所定の電圧が印加されると、経路切替リレー15のスイッチが負荷側電源線43Bと負荷側電源線43Aとの間を接続する。また、負荷側電源線43Bに所定の電圧が印加されない状態では、経路切替リレー15のスイッチがバッテリ電源線41と負荷側電源線43Aとの間を接続する。
【0121】
つまり、DC/DCコンバータ22、電源制御ECU31、キー認証ECU32、及びパワトレECU33のBAT系の電源電力の供給元の経路を経路切替リレー15が自動的に切り替えることができる。
【0122】
<変形例-9の動作>
図11に示した電源制御システム100Iの動作について以下に説明する。
低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生すると、バッテリ電源線41の電圧低下を判定器16が検知して、モード切替リレー26Aを通常モードから非常時始動モード(図11に示す状態)に切り替える。また、判定器16が出力する信号により経路切替リレー13のスイッチが切り替わる。これにより、以下に説明するようにエンジン等の始動が可能になる。
【0123】
この場合、図11に示すようにモード切替リレー26Aのスイッチはスイッチ共通線44と負荷側電源線43Bとを接続する。したがって、簡易電源25が出力する所定の直流電圧(例えば+12[V])がスイッチ共通線44A、モード切替リレー26Aを経由して負荷側電源線43Bに供給される。
【0124】
これにより、経路切替リレー13の電気コイルが通電状態になり、経路切替リレー13のスイッチが負荷側電源線43BとIG出力電源線45との間を接続する。また、経路切替リレー15の電気コイルが通電状態になり、経路切替リレー15のスイッチが負荷側電源線43Bと負荷側電源線43Aとの間を接続する。
【0125】
したがって、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dと、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子のそれぞれに、簡易電源25の電源電力が供給される。
【0126】
この状態では、必要な電源電力がDC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及びIG線接続端子22dにそれぞれ供給されているので、パワトレECU33が制御線48の信号を制御すればDC/DCコンバータ22の内部回路の動作を起動することができる。
【0127】
DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21から供給される高電圧の電力が、DC/DCコンバータ22の内部回路で降圧され、低電圧の電源電力として低圧側出力端子22bに現れる。
【0128】
DC/DCコンバータ22の低圧側出力端子22bに出力された低電圧の電源電力は、バッテリ電源線41に供給される。したがって、高圧バッテリ21が蓄積している電力を利用して低圧バッテリ23を充電することができる。
【0129】
また、車両のエンジン始動等が成功し、バッテリ電源線41の電圧が通常の状態に回復すると、これを判定器16が検知してモード切替リレー26Aおよび経路切替リレー13の選択状態を自動的に切り替える。すなわち、経路切替リレー13のスイッチはIG入力電源線64とIG出力電源線45との間を接続する状態に切り替わり、経路切替リレー15のスイッチはバッテリ電源線41と負荷側電源線43Aとの間を接続する状態に切り替わる。
【0130】
したがって、DC/DCコンバータ22のIG線接続端子22dに対しては、バッテリ電源線41、IGリレー12、経路切替リレー13、IG出力電源線45を通過する経路で電源電力の供給を継続できる。また、DC/DCコンバータ22のBAT線接続端子22c及び、電源制御ECU31、キー認証ECU32、パワトレECU33の各BAT電源入力端子に対しては、バッテリ電源線41、経路切替リレー15、負荷側電源線43Aを通過する経路で電源電力の供給を継続できる。
【0131】
つまり、低圧バッテリ23のバッテリ上がりにより車両のエンジン始動等ができなくなったときに、DC/DCコンバータ22の内部回路が起動するまでの間だけ、簡易電源25側から十分な電源電力を供給できれば、その後は高圧バッテリ21側に蓄積された電源電力を利用できるので、エンジン始動等を容易に行うことができる。そのため、簡易電源25が小型で、供給可能な電力量が非常に小さい場合であっても、これを車両を始動するための非常時用の電源として十分に利用できる。
【0132】
<変形例-10の構成>
図12は、変形例-10の電源制御システム100Jを示す電気回路図である。図12の電源制御システム100Jの構成は、図11の電源制御システム100Iの変形例である。
【0133】
図12に示した電源制御システム100Jにおいては、電気接続箱10Cが図11の簡易電源25の代わりに簡易電源25Aを備えている。それ以外の電気接続箱10Cの構成および動作は図11の場合と同様である。
【0134】
図12の簡易電源25Aは、内蔵電池25Aa及びDC/DCコンバータ25Abを電源モジュールとして一体化した装置である。DC/DCコンバータ25Abは、内蔵電池25Aaが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
【0135】
図12に示すように、簡易電源25Aの正極側の出力端子は電気接続箱10Bの端子T23と接続され、簡易電源25Aの負極側の出力端子はグランドと接続されている。したがって、図12の簡易電源25Aは図11中の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0136】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Aの電力をDC/DCコンバータ22などの負荷に供給し、DC/DCコンバータ22を起動することができる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0137】
<変形例-11の構成>
図13は、変形例-11の電源制御システム100Kを示す電気回路図である。図13の電源制御システム100Kの構成は、図11の電源制御システム100Iの変形例である。
【0138】
図13に示した電源制御システム100Kにおいては、電気接続箱10Cが図11の簡易電源25の代わりに簡易電源25BおよびDC/DCコンバータ71を備えている。それ以外の電気接続箱10Cの構成および動作は図11の場合と同様である。
【0139】
図13の簡易電源25Bは、複数の乾電池を組み合わせて一体化した電池パックとして構成されている。この電池パックの出力電圧は、低圧バッテリ23における規定電圧(例えば+12[V])よりも低い。
【0140】
図13に示す電気接続箱10Cに追加されたDC/DCコンバータ71は、簡易電源25Bが出力する直流電圧を昇圧して規定の直流電圧(例えば+12[V])を生成する。
図13に示すように、簡易電源25Bの正極側の出力端子はDC/DCコンバータ71の入力と接続され、簡易電源25Bの負極側の出力端子はグランドと接続されている。また、DC/DCコンバータ71の出力が電気接続箱10の端子T23と接続されている。したがって、図13中の簡易電源25B及びDC/DCコンバータ71は、図11の簡易電源25と同様の機能を果たす。
【0141】
つまり、車両の低圧バッテリ23のバッテリ上がりが発生した場合に、簡易電源25Bが出力する電力をDC/DCコンバータ71で昇圧し、DC/DCコンバータ22などの負荷に供給できるので、DC/DCコンバータ22を起動できる。DC/DCコンバータ22が起動すると、高圧バッテリ21に蓄積されている電力を降圧してバッテリ電源線41や低圧バッテリ23に供給できる。したがって、ジャンプスタートの手法を用いなくてもエンジンの始動等に必要な電源電力を確保できる。
【0142】
以上のように、図1図2等に示した電気接続箱10を含む電源制御システム100を搭載した車両においては、低圧バッテリ23がバッテリ上がりになった場合に、電気接続箱10に備わっている簡易電源25の電力を利用して、エンジン始動等に必要な電源電力を確保し、DC/DCコンバータ22の起動等を行うことができる。また、DC/DCコンバータ22の内部回路が起動した後は高圧バッテリ21側に蓄積されている電力を利用できるので、電力容量の小さい小型の簡易電源25を利用できる。したがって、ジャンプスタートのように面倒で時間のかかる作業が不要になる。
【0143】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0144】
例えば、図1に示した例では簡易電源25が筐体70の外側に露出した状態で配置されているが、筐体70の内部空間に簡易電源25を配置して、簡易電源25の外側を開閉可能な蓋で覆うように構成してもよい。また、簡易電源25の電池については、乾電池でも良いし、二次電池でも良い。また、二次電池を簡易電源25に内蔵する場合には、低圧バッテリ23側の電源電力を利用して簡易電源25を充電できるように構成してもよい。
【0145】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車両用電気接続箱の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 接続箱筐体(筐体70)と、
前記接続箱筐体に装備され、車両に搭載された低圧バッテリ(23)の出力電力を受け入れ可能な低圧電源入力端子(端子T11~T13)と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記低圧電源入力端子に供給された電力に基づいて生成した電源電力を前記車両に搭載された車載機器に対して供給可能な1つ以上の低圧負荷出力端子(端子T31~T34)と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に所定の電圧変換器(DC/DCコンバータ22)が作動するために必要な動作電圧を前記電圧変換器に対して供給可能な動作電圧出力端子(端子T35)と、
前記接続箱筐体に装備された補助電源(簡易電源25)と、
前記接続箱筐体に装備され、少なくとも前記車両の始動時に、前記低圧電源入力端子に供給された第1電力と、前記補助電源から出力される第2電力とを選択的に切り替えて前記動作電圧を生成するスイッチ回路(経路切替リレー13)と、
を備える車両用電気接続箱(電気接続箱10)。
【0146】
上記[1]の構成の車両用電気接続箱を搭載した車両においては、低圧バッテリのバッテリ上がりが発生した場合に、補助電源側が出力する電力をスイッチ回路を経由して電圧変換器へ供給できる。したがって、バッテリ上がりの状態でも電圧変換器を起動することができる。電圧変換器が起動した後は、高圧バッテリなど別系統の回路から供給可能な電圧を、電圧変換器で変換して低圧バッテリ側に供給できるので、通常時の動作と同様に車両のエンジン等を始動することが可能になる。そのため、ジャンプスタートのように手間や時間のかかる作業が不要になる。
【0147】
[2] 前記電圧変換器は、前記車両に搭載された高圧バッテリ(21)の出力から前記低圧バッテリの出力と同等の低圧の電源電力を生成する機能を有し、
前記接続箱筐体(筐体70)は、前記補助電源を着脱可能に収容する補助電源収容部(電池ケース25b)を備え、
前記補助電源(簡易電源25)は、前記低圧バッテリの出力と同等の低圧の電源電力を供給する機能を有する、
上記[1]に記載の車両用電気接続箱。
【0148】
上記[2]の構成の車両用電気接続箱によれば、低圧バッテリがバッテリ上がりになった時に、電圧変換器の起動に必要な電源電力を補助電源側から供給できる。また、補助電源は着脱できるので、非常時にいつでも必要な電力を供給できるように例えば定期的に交換などの作業を行って適切な状態を維持することが容易になる。これにより、バッテリ上がりが生じた時に車両のエンジン等を確実に始動可能になる。また、電圧変換器が起動した後で、この電圧変換器を利用することで高圧バッテリ側に蓄積されている高電圧の電力を降圧し、低圧バッテリ側の回路が必要とする低圧の電力を生成できる。その場合は、補助電源の電力容量が小さい場合でも、エンジン等の始動が容易になる。
【0149】
[3] 前記接続箱筐体は、外部スイッチ端子(端子T21~T23)を有し、
前記外部スイッチ端子は、前記補助電源の出力の第1回路(スイッチ共通線44)と、前記低圧バッテリと接続される第2回路(バッテリ電源線41)と、前記電圧変換器およびその他の負荷と接続される第3回路(負荷側電源線43)とを含み、
前記外部スイッチ端子に接続される外部スイッチ(モードスイッチ26)が、前記第1回路を、前記第2回路および前記第3回路のいずれかに選択的に接続する、
上記[1]に記載の車両用電気接続箱。
【0150】
上記[3]の構成の車両用電気接続箱によれば、ユーザが外部スイッチを操作することで必要に応じてモードを切り替えることができる。すなわち、低圧バッテリのバッテリ上がりが生じている車両を始動する際に、ユーザが外部スイッチを操作して補助電源の電力を負荷側に供給し、この電力をエンジン始動等のためだけに利用することができる。
【0151】
[4] 前記スイッチ回路は、
前記低圧バッテリの出力電圧低下を検知する電圧検知回路(判定器16)と、
前記補助電源の出力を、前記低圧バッテリの回路と、前記電圧変換器およびその他の負荷を含む負荷側回路とのいずれかに選択的に接続する第1スイッチ(モード切替リレー26A)と、
前記負荷側回路の電圧を前記動作電圧として前記電圧変換器に供給可能な第2スイッチ(経路切替リレー13)と、
を含み、前記電圧検知回路が前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御する、
上記[1]に記載の車両用電気接続箱(電気接続箱10B)。
【0152】
上記[4]の構成の車両用電気接続箱によれば、低圧バッテリのバッテリ上がりが生じている車両を始動する際に、ユーザのスイッチ操作を必要とする事なく、補助電源の電力を負荷側に供給し、この電力をエンジン始動等のために利用できる。また、第1スイッチと第2スイッチとで独立した2系統の回路を制御できるので、例えば車両上のBAT系とIG系の電源線にそれぞれ適切な電圧を供給できる。
【0153】
[5] 前記スイッチ回路は、前記低圧バッテリの出力回路(バッテリ電源線41)と、前記電圧変換器およびその他の負荷を含む負荷側回路(負荷側電源線43)との間に接続された逆流防止回路(逆流防止素子14)を有する、
上記[1]に記載の車両用電気接続箱(電気接続箱10)。
【0154】
上記[5]の構成の車両用電気接続箱によれば、低圧バッテリのバッテリ上がりが生じている状態で、補助電源から出力される電源電力が低圧バッテリ側の回路に流出するのを防止できる。そのため、補助電源の下流側が過負荷になるのを避け、補助電源の電源電圧を高い状態に維持できる。また、低圧バッテリ側の電源電圧が回復した場合には、低圧バッテリ側の電力を逆流防止回路を介して負荷側に供給できるので、補助電源の電力消費を最小限に抑制できる。
【符号の説明】
【0155】
10,10A,10B,10C 電気接続箱
12 IGリレー
13 経路切替リレー
14 逆流防止素子
15 経路切替リレー
16 判定器
21 高圧バッテリ
22 DC/DCコンバータ
22a 高圧側入力端子
22b 低圧側出力端子
22c BAT線接続端子
22d IG線接続端子
22e 制御入力端子
23 低圧バッテリ
25,25A,25B 簡易電源
25a 乾電池
25b 電池ケース
25Aa 内蔵電池
25Ab DC/DCコンバータ
26 モードスイッチ
26A モード切替リレー
31 電源制御ECU
32 キー認証ECU
33 パワトレECU
41 バッテリ電源線
43,43A,43B 負荷側電源線
44 スイッチ共通線
45 IG出力電源線
47 IG制御線
48 制御線
49,50 信号線
61 モード制御線
64 IG入力電源線
70 筐体
71 DC/DCコンバータ
100,100A,100B,100C,100D,100E 電源制御システム
T11,T12,T13,T21,T22,T23,T31,T32,T33,T34,T35,T41 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13