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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20241008BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20241008BHJP
   B60R 1/29 20220101ALI20241008BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241008BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/00 510Z
G09G5/10 B
B60R1/29
G08G1/16 C
G02B27/01
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022159457
(22)【出願日】2022-10-03
(65)【公開番号】P2024053297
(43)【公開日】2024-04-15
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 征也
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066658(JP,A)
【文献】特開2018-138394(JP,A)
【文献】特開2015-065036(JP,A)
【文献】特開2010-085891(JP,A)
【文献】特開2011-022447(JP,A)
【文献】特開2007-001417(JP,A)
【文献】米国特許第09902318(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
G09F 9/30 - 9/46
G03B 21/00 - 21/64
B60R 1/29
G08G 1/16
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を車両の被投影部材に投影し、前記被投影部材に投影された前記表示画像に対応する虚像を、前記車両の運転者に視認させる画像表示部と、
前記車両周囲の照度を検出する照度検出部と、
前記運転者の年齢を取得する年齢取得部と、
前記照度検出部により検出された照度、及び、前記年齢取得部により取得された年齢に基づいて前記虚像の明るさを調整する調整部と、を備え、
前記調整部は、
前記照度検出部により検出された照度に基づく前記車両周囲の明暗状態の変化に応じて、
前記年齢取得部により取得された前記運転者の年齢が相対的に高いときは、検出された前記照度の変化に対する前記虚像の明るさ調整の応答を相対的に速くし、
前記運転者の年齢が相対的に低いときは、検出された前記照度の変化に対する前記虚像の明るさ調整の応答を相対的に遅くする、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記運転者の顔を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像に基づいて前記運転者の瞳孔を検出し、検出した前記瞳孔の瞳孔径を算出する瞳孔径算出部と、をさらに備え、
前記調整部は、
予め年齢に応じて設定される係数であって年齢が高くなれば相対的に小さく年齢が低くなれば相対的に大きくなる年齢別係数を「y」、基準フレーム数を「X」、前記基準フレーム数Xに対して前記年齢別係数yを乗算した前記年齢調整算出用フレーム数を「Z」とした場合の当該年齢調整算出用フレーム数Z分の前記瞳孔径の平均値を「Φave」[mm]とし、予め想定される前記瞳孔径の最小値を「Φmin」[mm]とし、予め想定される前記瞳孔径の最大値を「Φmax」[mm]とし、前記照度検出部により検出された照度を、当該照度検出部により検出可能な照度の最大値に対して百分率で表した値を「Q」[%]としたとき、下記式(1)により算出される調整値V[%]に基づいて前記虚像の明るさを調整する、
請求項1に記載の車両用表示装置。

【数1】



【請求項3】
前記年齢取得部は、
少なくとも前記撮影部により撮影された画像に基づいて前記運転者の年齢を推定することが含まれる、
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される拡張現実型ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)装置では、車両側に搭載されている照度センサを利用して虚像の明るさを調整しているものがある。この照度センサは、車外の上方向の明るさを検出するものであり、主に前照灯の機能であるオートライトで利用されている。このため、照度センサにより検出された明るさと、前方を見ている運転者が感じる明るさとは、異なる場合がある。
【0003】
一方、運転者の前方に表示される虚像の明るさに対して感じ方に個人差があることから、例えば、照度センサと運転者の瞳孔の瞳孔径を利用し、虚像の明るさを調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、運転者の年齢や性別等の属性情報に応じて、運転者ごとに虚像の表示内容や表示位置を決定するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-43724号公報
【文献】特開2019-59245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、周囲の明るさの感じ方は、加齢により変化する傾向がある(例えば、参考文献「視覚1 視覚系の構造と初期機能」、P192、明るさ感度の加齢による変化を示すグラフ)。また、例えば晴天時の昼間において車両がトンネルを通過する際に、車両周囲が明状態から暗状態、または、暗状態から明状態に変化すると、運転者が車両前方で視認している虚像が一時的に見えづらくなる場合がある。暗順応及び明順応は、一般的に加齢により順応時間が遅くなることから、例えば、車両が明所から暗所へ移動した際に、虚像が明るすぎて前方が見難くなる恐れがあることから改善の余地がある。
【0006】
本発明は、表示する虚像の明るさを精度よく調整することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、表示画像を車両の被投影部材に投影し、前記被投影部材に投影された前記表示画像に対応する虚像を、前記車両の運転者に視認させる画像表示部と、前記車両周囲の照度を検出する照度検出部と、前記運転者の年齢を取得する年齢取得部と、前記照度検出部により検出された照度、及び、前記年齢取得部により取得された年齢に基づいて前記虚像の明るさを調整する調整部と、を備え、前記調整部は、前記照度検出部により検出された照度に基づく前記車両周囲の明暗状態の変化に応じて、前記年齢取得部により取得された前記運転者の年齢が相対的に高いときは、検出された前記照度の変化に対する前記虚像の明るさ調整の応答を相対的に速くし、前記運転者の年齢が相対的に低いときは、検出された前記照度の変化に対する前記虚像の明るさ調整の応答を相対的に遅くする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置によれば、表示する虚像の明るさを精度よく調整することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車両用表示装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る車両用表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る車両用表示装置における虚像の明るさ調整の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態における年齢別係数表の一例を示す図である。
図5図5は、車両のトンネル通過時における虚像の明るさ変化の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る車両用表示装置の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0011】
[実施形態]
本実施形態に係る車両用表示装置1は、図1に示すように、例えば、自動車等の車両100に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)である。車両用表示装置1は、表示デバイス6に表示される表示画像を、反射ミラー5を介して被投影部材であるウインドシールドWに投影することで、車両100の運転者Dに虚像Sとして視認させるものである。表示画像は、例えば、車両100に関する情報や車両外部の情報等を示す数字や文字、記号、図形、アイコン等を含むものである。車両用表示装置1は、例えば、運転者D前方の実風景における車両や歩行者、信号機、標識、車線等に虚像Sを重畳して表示することができる。車両用表示装置1は、例えば、車室内のインストルメントパネル(不図示)の内側に配置される。
【0012】
ウインドシールドWは、入射する光の一部を反射し、他の一部を透過させる半透過性を有することから、車両の前景を透過させながら、車両用表示装置1から投影される表示画像を表示光Lとして運転者DのアイポイントEPに向けて反射する。アイポイントEPは、運転者Dの視点位置として予め想定される。運転者Dは、ウインドシールドWによって反射された表示画像を虚像Sとして認識する。虚像Sは、運転者Dにとって、ウインドシールドWよりも前方に認識される。
【0013】
車両用表示装置1は、照度センサ2と、運転者用カメラ3と、筐体4と、3つの反射ミラー5A~5Cと、表示デバイス6と、処理部7とを備える。
【0014】
照度センサ2は、照度検出部の一例であり、車両100の照度を検出するものである。照度センサ2は、例えば車室内のインストルメントパネルやルームミラー(不図示)の裏側等に取付けられ、車両前方、例えば車両100周囲の照度を検出する。照度センサ2は、車両100のACC(アクセサリ)電源またはIG(イグニッション)電源がONされた場合に起動し、これらの電源がOFFされるまで照度を検出し続ける。照度センサ2は、処理部7に対して、例えば信号線Taにより接続されている。照度センサ2は、当該照度センサ2が検出した照度を照度情報として、信号線Taを介して処理部7に出力する。
【0015】
運転者用カメラ3は、撮影部の一例であり、カメラレンズ(不図示)が運転者Dに向けて配置され、運転者Dの顔Fを含む顔画像を連続して取得するものである。運転者用カメラ3は、例えば車室内のステアリングコラム(不図示)の上部で、かつ運転者Dから見てステアリングホイール(不図示)の背後に配置される。運転者用カメラ3は、例えば運転者Dの顔Fを撮影し、撮影した動画から得られる静止画(フレーム)を顔画像として取得することができる。運転者用カメラ3の撮影環境として、例えば、センササイズを「VGA(640×480)」とし、フレームレートを「30[fps]」としている。運転者用カメラ3は、処理部7に対して信号線Tbにより接続されている。運転者用カメラ3は、取得した顔画像を、信号線Tbを介して処理部7に出力する。
【0016】
運転者用カメラ3は、例えば、不図示の光源を有する。光源は、例えば、運転者Dに向けて近赤外光を出射するLED(Light Emitting Diode)である。光源は、不図示の制御部から入力された点灯信号に応じて点灯(赤外光を発光)し、消灯信号に応じて消灯する。運転者用カメラ3は、光源により運転者Dの顔Fに照射された光による反射光を受光して運転者Dの顔を撮影する。運転者用カメラ3は、車両100のACC電源等がONされたときに起動し、当該電源等がOFFされるまで運転者Dの顔を撮影し続ける。
【0017】
筐体4は、例えば、合成樹脂等で成形され、車体(不図示)に固定される。筐体4は、図1に示すように、反射ミラー5A~5C、表示デバイス6を内部に収容し、これらを支持している。
【0018】
反射ミラー5A~5Cは、表示デバイス6からウインドシールドWまでの表示光Lの光路上に配置され、表示デバイス6から出射された表示光LをウインドシールドWに向けて反射する。反射ミラー5A~5Cは、例えば、平面ミラーや凹面ミラー等で構成される。
【0019】
表示デバイス6は、画像表示部の一例であり、車両100の運転者Dに虚像Sとして視認させる表示画像を表示光Lとして出射するものである。つまり、車両用表示装置1は、表示デバイス6により表示された表示画像を、反射ミラー5A~5Cを利用してウインドシールドWに投影し、ウインドシールドWに投影された表示画像に対応する虚像Sを運転者Dに視認させる。表示デバイス6は、例えば、背面側から前面側へと光が透過する光透過型の表示器である。光透過型の表示器としては、例えばTFT(Thin Film Transistor)液晶表示器が用いられる。表示デバイス6は、車両100のACC電源等がONされたときに起動し、当該電源等がOFFされるまで駆動し続ける。
【0020】
処理部7は、車両用表示装置1における各種処理を実行するものである。処理部7は、例えば、種々のコンピュータによって構成される。本実施形態の処理部7は、図2に示すように、機能概念的に、年齢推定部11と、瞳孔径算出部12と、明るさ調整部13と、画像出力部14とを含んで構成される。年齢推定部11、瞳孔径算出部12、明るさ調整部13、及び画像出力部14は、例えば、処理部7を構成するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)がプログラムを実行することにより、各種機能を発揮するものである。各種機能には、公知の画像処理、瞳孔Eの検出処理等が含まれる。処理部7は、表示デバイス6に対して、信号線Tcにより接続されている。処理部7は、表示デバイス6により表示される表示画像を、信号線Tcを介して当該表示デバイス6に出力する。
【0021】
年齢推定部11は、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの年齢を推定するものである。年齢推定部11は、例えば、公知の画像処理を用いて顔画像を解析して、運転者Dの年齢を推定する。年齢推定部11は、処理部7内に設けられたメモリに対して、推定した年齢を年齢情報として保存するか、メモリに保存されていた年齢情報を新たな年齢情報に更新する。
【0022】
瞳孔径算出部12は、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの瞳孔Eを検出し、当該瞳孔Eの瞳孔径PDを算出するものである。瞳孔径算出部12は、例えば、公知の画像処理を用いて1フレームの顔画像から運転者Dの瞳孔Eの粗探索を行い、その結果に基づいて瞳孔Eを検出する。公知の画像処理には、例えば、Viola-Jones法、眼球3Dモデルを用いるモデルベース手法、テンプレートマッチング手法、パーティクル手法等が含まれる。また、瞳孔径算出部12は、検出した瞳孔Eに基づいて、当該瞳孔Eの瞳孔径PDを算出する。瞳孔径算出部12は、運転者用カメラ3により取得された複数の連続するフレームから順次瞳孔径PDを算出し、処理部7内のメモリに対して、算出した瞳孔径PDをフレームごとに対応させて瞳孔径情報として保存する。運転者Dの瞳孔径PDは、車両周囲の明るさの変化に合わせて略2~8mmの間で変化する(例えば、参考文献「視覚1 視覚系の構造と初期機能」、P19、輝度と瞳孔径の関係を示すグラフ)。本実施形態では、運転者Dの瞳孔径PDの変化に基づいて運転者Dが感じる明るさの変化を検出する。
【0023】
明るさ調整部13は、照度センサ2により検出された照度、年齢推定部11により推定された年齢、及び瞳孔径算出部12により算出された瞳孔径PDに基づいて虚像Sの明るさを調整するものである。具体的には、明るさ調整部13は、予め年齢に応じて設定される係数であって年齢が高くなれば相対的に小さく年齢が低くなれば相対的に大きくなる年齢別係数を「y」、基準フレーム数を「X」、基準フレーム数Xに対して年齢別係数yを乗算した年齢調整算出用フレーム数を「Z」とした場合の当該年齢調整算出用フレーム数Z分の瞳孔径PDの平均値を「Φave」[mm]とし、予め想定される瞳孔径PDの最小値を「Φmin」[mm]とし、予め想定される瞳孔径PDの最大値を「Φmax」[mm]とし、照度センサ2により検出された照度を、当該照度センサ2により検出可能な照度の最大値に対して百分率で表した値を「Q」[%]としたとき、下記式(1)により算出される調整値V[%]に基づいて虚像の明るさを調整する。

【数1】



【0024】
年齢別係数yは、例えば、図4に示すように、「~20代」(29歳以下)で「1.0」、「30代」(30~39歳)で「0.9」、「40代」(40~49歳)で「0.8」、「50代」(50~59歳)で「0.7」、「60代」(60~69歳)で「0.6」、「70代~」(70歳以上)で「0.5」となっている。運転者Dの視覚は、加齢により暗順応時間が遅くなることから(例えば、参考文献「国際交通安全学会:高齢ドライバの人的事故要因に関する調査研究」、https://www.iatss.or.jp/common/pdf/research/h494.pdf、P12、図2.2-2、加齢と暗順応過程を示すグラフ)、図5に示すように、例えば車両100が明所から暗所へ移動した際に、運転者Dが視認する虚像Sの表示が明るすぎて前方が見えづらくなるおそれがある。図5に示す明所は、例えば、晴天時の昼間におけるトンネルT外であり、暗所は、トンネルT内である。そこで、本実施形態では、加齢による暗順応の変化に対応するため、年齢別に異なる値の年齢別係数yを設定している。この年齢別係数yは、予め年齢に応じて設定される係数であって年齢が高くなれば相対的に小さく年齢が低くなれば相対的に大きくなる係数である。例えば、運転者Dの年齢が20歳の場合は、y=1.0となり、運転者Dの年齢が70歳の場合は、y=0.5となる。なお、加齢による順応時間の変化は、暗順応だけでなく明順応についても同様に遅くなることから、図示の年齢別係数yを利用する。
【0025】
基準フレーム数Xは、瞳孔径PDの経時変化をなますために、システム設計者により任意で設定されるなまし度合いである。基準フレーム数Xは、2~数十程度の値が採られる。
【0026】
年齢調整算出用フレーム数Zは、基準フレーム数Xに対して年齢別係数yを乗算したものである。例えば、基準フレーム数X=10の場合、運転者Dの年齢が20歳のときはZ=10、運転者Dの年齢が70歳のときはZ=5となる。
【0027】
年齢調整算出用フレーム数Z分の瞳孔径PDの平均値Φave[mm]は、例えば、年齢調整算出用フレーム数Z分の複数の瞳孔径PDを「PD,PD,・・・,PDz」(Z=1,2,・・・,Z)とすると、Φave[mm]は、PD+PD+・・・+PDz/Zとなる。
【0028】
予め想定される瞳孔径PDの最小値Φmin[mm]は、上述した車両周囲の明るさの変化に合わせて2~8mmの間で変化する運転者Dの瞳孔径PDの最小値であって、例えば、2mmである。
【0029】
予め想定される瞳孔径PDの最大値Φmax[mm]は、上述した車両周囲の明るさの変化に合わせて2~8mmの間で変化する運転者Dの瞳孔径PDの最大値であって、例えば、8mmである。
【0030】
虚像Sの明るさの調整値Vは、上述した年齢調整算出用フレーム数Z分の瞳孔径PDの平均値Φaveを、予め想定される瞳孔径PDの最小値(Φmin)及び最大値(Φmax)に対して百分率で表した値をPとすると、当該Pと、照度センサ2により検出された照度を、当該照度センサ2により検出可能な照度の最大値に対して百分率で表したQとを平均化したものである。虚像Sの明るさの調整値Vは、照度センサ2により検出された照度に基づく車両周囲の明暗状態の変化に応じて、虚像Sの明るさ調整の応答を変化させるものである。例えば、虚像Sの明るさ調整値Vは、運転者Dの年齢が相対的に高いときは、検出された照度の変化に対する虚像Sの明るさ調整の応答が相対的に速くなるような値となる。一方、虚像Sの明るさ調整値Vは、運転者Dの年齢が相対的に低いときは、検出された照度の変化に対する虚像Sの明るさ調整の応答が相対的に遅くなるような値となる。
【0031】
画像出力部14は、例えば、表示デバイス6のTFT液晶表示器を駆動制御して、運転者Dに虚像Sとして視認させる表示画像を表示デバイス6により出力させるものである。画像出力部14は、明るさ調整部13により虚像Sの明るさの調整値Vに基づいて調整された表示画像を表示デバイス6により出力させる。
【0032】
次に、車両用表示装置1における虚像Sの明るさ調整制御の流れについて図3に示すフローチャートを参照して説明する。車両用表示装置1は、車両100のACC電源等がONされたときに起動し、当該電源等がOFFされるまで以下に説明する処理を繰り返す。
【0033】
ステップS1では、年齢推定部11は、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの年齢を推定し、推定した年齢を年齢情報としてメモリに保存する。
【0034】
次に、ステップS2では、明るさ調整部13は、照度センサ2により検出された照度を照度情報としてメモリに保存する。
【0035】
次に、ステップS3では、瞳孔径算出部12は、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの瞳孔Eを検出し、当該瞳孔Eの瞳孔径PDを算出する。瞳孔径算出部12は、算出した瞳孔径PDを瞳孔径情報としてメモリに保存する。
【0036】
次に、ステップS4では、明るさ調整部13は、メモリから年齢情報、照度情報、及び瞳孔径情報を読み出し、これらを上述した式(1)に代入して調整値Vを算出し、算出した調整値Vをメモリに保存する。
【0037】
次に、ステップS5では、明るさ調整部13は、ステップS4でメモリに保存された調整値Vを読み出して、当該調整値Vに基づいて虚像Sの明るさを調整する。画像出力部14は、明るさ調整部13により調整された表示画像を出力させる。
【0038】
ステップS6では、明るさ調整部13は、本処理を終了するか否かを判定する。本処理を終了しない場合は、ステップS2に戻る。例えば、ステップS6では、処理部7は、車両100のACC電源等がOFFされると、当該車両100側から入力されるOFF信号に応じて本処理を終了する。
【0039】
上記処理により、明るさ調整部13は、年齢推定部11により推定された年齢、及び、瞳孔径算出部12により算出された瞳孔径に基づき、照度センサ2により検出された照度に基づく車両周囲の明暗状態の変化に応じて調整値Vを算出し、当該調整値Vを用いて、虚像Sの明るさ調整を行う。これにより、車両用表示装置1は、車両周囲が明状態から暗状態に変化した場合、運転者Dの年齢が相対的に高いときは、年齢が相対的に低い運転者Dに比べて、虚像Sの明るさを相対的に速く暗くすることができる。一方、車両用表示装置1は、車両周囲が暗状態から明状態に変化した場合、運転者Dの年齢が相対的に高いときは、年齢が相対的に低い運転者Dに比べて、虚像Sの明るさを相対的に速く明るくすることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用表示装置1は、明るさ調整部13が、照度センサ2により検出された照度に基づく車両周囲の明暗状態の変化に応じて、年齢推定部11により推定された運転者Dの年齢が相対的に高いときは、検出された照度の変化に対する虚像Sの明るさ調整の応答を相対的に速くし、運転者Dの年齢が相対的に低いときは、検出された照度の変化に対する虚像Sの明るさ調整の応答を相対的に遅くする。
【0041】
従来の虚像Sの明るさ調整は、例えば、晴天時の昼間において車両100がトンネルT(図5参照)を通過する際に、車両周囲が明状態から暗状態に変化したときは、虚像S1の明るさを相対的に暗くし、車両周囲が明状態から暗状態に変化したときは、虚像S2の明るさを相対的に暗くしている。
【0042】
車両用表示装置1は、上記構成により、例えば、晴天時の昼間において車両100がトンネルT(図5参照)を通過する際に、車両周囲が明状態から暗状態に変化した場合、運転者Dの年齢が相対的に高いときは、年齢が相対的に低い運転者Dに比べて虚像Sの明るさが相対的に速く暗くなり、実風景に重畳して映し出された虚像Sが明るすぎて前方が見えづらくなることを軽減することができる。一方、車両用表示装置1は、車両周囲が暗状態から明状態に変化した場合、運転者Dの年齢が相対的に高いときは、年齢が相対的に低い運転者Dに比べて虚像Sの明るさが相対的に速く明るくなり、実風景に重畳して映し出された虚像Sが暗すぎて見づらくなることを軽減することができる。この結果、車両用表示装置1の商品性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車両用表示装置1は、明るさ調整部13が、上記式(1)により算出される調整値V[%]に基づいて虚像Sの明るさを調整する。これにより、車両用表示装置1は、上述したように、例えば運転者Dが車両100を運転してトンネルTを通過する際に、虚像Sが相対的に明るすぎて前方が見づらくなったり、虚像Sが暗すぎて見づらくなることを軽減して、装置の商品性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車両用表示装置1は、年齢推定部11が、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの年齢を推定する。これにより、例えば、運転者Dが装置を操作して自己の年齢を入力する作業を省力することができ、運転者Dの利便性を向上させることができる。また、運転者Dの年齢の誤入力を抑制することで、装置の機能を効果的に発揮させることが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、年齢推定部11は、運転者用カメラ3により撮影された顔画像に基づいて運転者Dの年齢を推定しているが、これに限定されるものではない。例えば、年齢推定部11は、運転者Dに対して直接年齢を入力させる構成であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、車両用表示装置1は、上述したように、車両100のACC電源等がONされたときに起動し、当該電源等がOFFされるまで図3に示す処理が繰り返される。
【0047】
また、上記実施形態では、照度センサ2は、車両用表示装置1専用に設けられたものであるが、これに限定されるものではなく、車両100の前照灯の自動点灯用に設けられたものを流用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、運転者用カメラ3は、ステアリングコラムに設置されているが、これに限定されず、インストルメントパネル、ダッシュボード、ルームミラー等に設置されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、筐体4は、3つの反射ミラー5A~5Cを収容するが、この数に限定されるものではない。
【0050】
また、上記実施形態では、車両用表示装置1は、自動車等の車両100に適用されているが、これに限定されず、例えば車両以外の船舶や航空機等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用表示装置
2 照度センサ(照度検出部)
3 運転者用カメラ(撮影部)
6 表示デバイス(画像表示部)
11 年齢推定部(年齢取得部)
12 瞳孔径算出部
13 明るさ調整部(調整部)
14 画像出力部
100 車両
D 運転者
E 瞳孔
S,S1,S2 虚像
W ウインドシールド(被投影部材)
図1
図2
図3
図4
図5