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特許7568696レーザ旋回装置、レーザ加工装置および加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】レーザ旋回装置、レーザ加工装置および加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20241008BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20241008BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/064 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022168034
(22)【出願日】2022-10-20
(65)【公開番号】P2024060649
(43)【公開日】2024-05-07
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-516648(JP,A)
【文献】特開昭61-242779(JP,A)
【文献】特開2020-190689(JP,A)
【文献】特開2022-065693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G02B 26/10 - 26/12
G02B 6/35、26/00 - 26/08
G02B 9/00 - 17/08、
21/02 - 21/04、
25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されるレーザ光を旋回させるレーザ旋回装置であって、
入射される前記レーザ光を光軸に対して屈折させる前記レーザ光の第1入射面と第1出射面を有する第1ウェッジプリズムと、
前記第1ウェッジプリズムを透過した前記レーザ光を前記光軸の周りに回転させるダブプリズムと、
前記第1ウェッジプリズムを前記光軸の周りに回転させる第1ウェッジプリズム回転機構と、
前記ダブプリズムを前記光軸の周りに回転させるダブプリズム回転機構と、を備え、
前記第1ウェッジプリズムと前記ダブプリズムの間に、入射される前記レーザ光を前記光軸に対して屈折させる、前記レーザ光の第2入射面と第2出射面を有する第2ウェッジプリズムを備え、
前記第2ウェッジプリズムは、前記光軸の周りの回転が不能とされ、
前記第1入射面は前記光軸に対して直交するか1°未満に傾き、前記第1出射面は出射する前記レーザ光を屈折させる傾きを有し、
前記第2入射面は前記第1ウェッジプリズムから出力される前記レーザ光を屈折させる傾きを有し、前記第2出射面は前記光軸に対して直交するか1°未満に傾いている、レーザ旋回装置。
【請求項2】
前記第1ウェッジプリズムよりも前記レーザ光が入射される前側に設けられ、入射される前記レーザ光を前記光軸に対して屈折させる第3ウェッジプリズムと、
前記第3ウェッジプリズムを前記光軸の周りに回転させる第3ウェッジプリズム回転機構と、を備える請求項1に記載のレーザ旋回装置。
【請求項3】
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ光を旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッドと、を備え、
前記照射ヘッドは、
前記レーザ光を前記加工対象物に対して旋回させるレーザ旋回部と、
前記レーザ旋回部で旋回された前記レーザ光を集光させる集光光学系と、を備え、
前記レーザ旋回部は、
入射される前記レーザ光を光軸に対して屈折させる前記レーザ光の第1入射面と第1出射面を有する第1ウェッジプリズムと、
前記第1ウェッジプリズムを透過した前記レーザ光を前記光軸の周りに回転させるダブプリズムと、
前記第1ウェッジプリズムと前記ダブプリズムの間に、前記光軸の周りの回転が不能とされ、入射される前記レーザ光を前記光軸に対して屈折させる、前記レーザ光の第2入射面と第2出射面を有する第2ウェッジプリズムと、
前記第1ウェッジプリズムを前記光軸の周りに回転させる第1ウェッジプリズム回転機構と、
前記ダブプリズムを前記光軸の周りに回転させるダブプリズム回転機構と、を備え
前記第1入射面は前記光軸に対して直交するか1°未満に傾き、前記第1出射面は出射する前記レーザ光を屈折させる傾きを有し、
前記第2入射面は前記第1ウェッジプリズムから出力される前記レーザ光を屈折させる傾きを有し、前記第2出射面は前記光軸に対して直交するか1°未満に傾いている、レーザ加工装置。
【請求項4】
前記レーザ旋回部は、
前記第1ウェッジプリズムよりも前記レーザ光が入射される前側に設けられ、入射される前記レーザ光を前記光軸に対して屈折させる第3ウェッジプリズムと、
前記第3ウェッジプリズムを前記光軸の周りに回転させる第3ウェッジプリズム回転機構と、を備える請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ発振器から出力される前記レーザ光のすそ野の一部を遮断して前記照射ヘッドに向けて出射するアパーチャを備える、
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項から請求項のいずれか一項に記載のレーザ加工装置を用いて、前記加工対象物に前記レーザ光を照射して加工処理を行う加工方法であって、
前記加工対象物を加工する際中に、
前記ダブプリズム回転機構により前記ダブプリズムが連続的に回転される、加工方法。
【請求項7】
前記加工対象物を加工するのに先立って、
前記第1ウェッジプリズム回転機構により前記第1ウェッジプリズムが所定の相対角度に設定され、
前記加工対象物を加工する際中に、前記第1ウェッジプリズムが所定の前記相対角度に維持される、請求項に記載の加工方法。
【請求項8】
前記加工対象物に照射される前記レーザ光は所定の旋回径で旋回し、
前記第1ウェッジプリズムの前記相対角度と前記旋回径とが対応付けられた相関情報に基づいて、所定の前記相対角度が設定される、請求項に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工対象物にレーザ光(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)を照射して加工を行う加工装置に関し、特にレーザ加工装置に好適に用いられる光学系統に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射して加工対象物を加工する加工装置が広く知られている。加工の一形態として、レーザ光で円形の軌跡を描きながら加工対象物を穿孔することが、特許文献1および特許文献2に開示されている。特許文献1および特許文献2は、ダブプリズム(Dove Prism)を用いてレーザ光を回転させることで、円形の軌跡を描く。特許文献1および特許文献2は、ダブプリズムへのレーザ光の入射角度を制御するのにウェッジプリズム(Wedge Prism)を用いている。ウェッジプリズムは、一方面が他方の面に対して小さい角度で傾斜しているプリズムであり、光を微小な角度で偏角することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-543576号公報
【文献】中国実用新案登録213702248(U)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光の円形の軌跡の径は、ダブプリズムへのレーザ光の入射角度で制御される。ダブプリズムは、ダブプリズム自体が一回転する間に、レーザ光が2回転する特徴があり、高速回転に適している。特許文献1および特許文献2は、直径を軸にしてウェッジプリズムを傾転することで入射角度を制御する。ところが、ダブプリズムへのレーザ光の入射角度の変化に対する軌跡の径の変化が大きいため、ウェッジプリズムを傾転させると、傾転の角度のばらつきに対する軌跡の径の変化が大きいために、例えば1度以下の微小な範囲の入射角度を再現性良く制御する必要があるが、従来の構成では再現性良く円形の軌跡の径を制御することが難しい。
【0005】
以上より、本開示は、タブプリズムへのレーザ光の微小な入射角度の制御が容易にでき、レーザ光の円形の軌跡の径を再現性良く制御することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
入射されるレーザ光を旋回させる本開示のレーザ旋回装置は、入射されるレーザ光を光軸に対して屈折させる第1ウェッジプリズムと、第1プリズムを透過したレーザ光を光軸の周りに回転させるダブプリズムと、第1ウェッジプリズムを光軸の周りに回転させる第1ウェッジ回転機構と、ダブプリズムを光軸の周りに回転させるダブ回転機構と、を備える。
【0007】
本開示に係るレーザ加工装置は、レーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ光を旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッドと、を備える。
照射ヘッドは、レーザ光を加工対象物に対して旋回させるレーザ旋回部と、レーザ旋回部で旋回されたレーザ光を集光させる集光光学系と、を備える。
レーザ旋回部は、入射されるレーザ光を光軸に対して屈折させる第1ウェッジプリズムと、第1ウェッジプリズムを透過したレーザ光を光軸の周りに回転させるダブプリズムと、第1ウェッジプリズムを光軸の周りに回転させる第1ウェッジプリズム回転機構と、ダブブプリズムを光軸の周りに回転させるダブプリズム回転機構と、を備える。
【0008】
本開示のレーザ加工装置を用いて加工対象物にレーザ光を照射して加工処理を行う本開示の加工方法は、加工対象物を加工する際中に、ダブプリズム回転機構によりダブプリズムが連続的に回転される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、タブプリズムへのレーザ光の微小な入射角度の制御が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
図2】レーザ光の旋回を説明する図である。
図3】第1ウェッジプリズム41の相対角度θ(度)と旋回径Rとが対応付けられた相関情報の一例を示す図である。
図4】第2実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
図5】第3実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
図6】第4実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
レーザ加工装置1は、図1に示すように、レーザ光を出力するレーザ発振器10と、レーザ発振器10から出力されるレーザ光を旋回させつつ加工対象物Wに向けて照射する照射ヘッド20と、を備える。また、レーザ加工装置1は、レーザ発振器10および照射ヘッド20の動作を制御するコントローラ100を備える。
レーザ発振器10と照射ヘッド20の間には、レーザ発振器10から出力されたレーザを照射ヘッド20へ案内する案内光学系15としての光ファイバが設けられる。この案内光学系15は、一方の端部がレーザ発振器10のレーザ出射口と接続され、他方の端部が照射ヘッド20のレーザ入射端と接続される。
【0012】
[レーザ発振器10:図1を参照]
レーザ発振器10は、レーザ光LBを出力する装置であり、例えば、光ファイバを媒質としてレーザ光LBを出力するファイバレーザ出力装置、または、短パルスのレーザ光LBを出力する短パルスレーザ出力装置などが用いられる。
ファイバレーザ出力装置としては、例えば、ファブリペロー型ファイバレーザ出力装置やリング型ファイバレーザ出力装置を用いることができ、これらの出力装置が励起されることによりレーザ光LBが発振される。ファイバレーザ出力装置のファイバは、例えば、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属元素が添加されたシリカガラスを用いることができる。
短パルスレーザ出力装置としては、レーザ光LBの発振源として例えば、チタンサファイアレーザを用いることができ、パルス幅が100ピコ秒以下のパルスを発振することができる。また、YAGレーザ(Yttrium Aluminum Garnet)やYVOレーザ等のナノ秒オーダーパルス発振をするレーザ光LBも使用可能である。
【0013】
[照射ヘッド20:図1を参照]
照射ヘッド20は、コリメート光学系30と、レーザ旋回部40と、集光光学系50と、撮像カメラ60と、を含む。照射ヘッド20のこれらの要素は、案内光学系15から出力されるレーザ光LBの光路において、上流側から下流側に向かって、コリメート光学系30、レーザ旋回部40、および集光光学系50の順で配置される。照射ヘッド20は、案内光学系15から出力されたレーザ光LBを図1においては図示が省略される加工対象物Wに向けて照射する。
【0014】
[コリメート光学系30:図1を参照]
コリメート光学系30は、案内光学系15のレーザ光LBが出射される端面に対向して配置される。つまり、コリメート光学系30は、案内光学系15とレーザ旋回部40との間に配置される。コリメート光学系30は、図示を省略するが、複数のコリメートレンズを備えており、案内光学系15から出力されたレーザ光LBをコリメート(collimate)光とし、第1反射ミラー35を介してレーザ旋回部40に向けて出射する。コリメート(collimate)光とは、いずれの光線も他の全ての光線と平行になっている光束をいう。第1反射ミラー35は、一例として銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの熱伝導性に優れた金属製ミラーが適用される。金属製ミラーの反射面には、金(Au)、誘電体多層膜による表面被覆を施すことができる。なお、光学系についてはレンズの記載を省略して、矩形の破線で示している。
【0015】
[レーザ旋回部40:図1図2図3を参照]
レーザ旋回部40は、レーザビームLBの中心である光軸OAの周りにレーザ光LBを回転させて、図2に示すように、加工対象物Wに照射レーザ、つまりレーザ光LBの照射位置IPを旋回させる。旋回径Rは、図2に示すように、光軸OAから加工対象物Wに照射されるレーザ光LBの照射位置IPまでの距離であって、加工対象物Wに照射されるレーザ光LBが光軸OAの周りに旋回する半径のことをいう。
レーザ旋回部40は、第1ウェッジプリズム(Wedge Prism)41と、ダブプリズム(Dove Prism)45と、第1ウェッジプリズム回転機構42と、ダブプリズム回転機構47と、を有する。
【0016】
[第1ウェッジプリズム41]
第1ウェッジプリズム41は、レーザ光LBを屈折させて、光軸OAに対して傾ける。旋回径Rは、第1ウェッジプリズム41をその光軸OAを中心にして回転させることにより変えることができる。つまり、ウェッジプリズム41の光軸OAを中心にした回転角度(相対角度)を制御することにより、加工対象物Wの加工に要求される旋回径Rを得ることができる。
【0017】
第1ウェッジプリズム41は、レーザ光LBが入射される入射面41Aと、レーザ光LBが出射される出射面41Bと、を有する。入射面41Aは、光軸OAに対して直交するか僅かに傾く平坦面である。入射面41Aは、傾く場合、光軸OAに対する傾きが例えば1°未満である。つまり、入射面41Aは、案内光学系15から出力されたレーザ光LBが入射する時、入射面41Aで反射するレーザ光LBを光軸OAからずらすことができる。これにより、第1ウェッジプリズム41は、入射面41Aから案内光学系15に向かって反射するレーザの反射量を抑え、レーザ発振器10の出射口に向かって反射するレーザの量を抑制することができる。
【0018】
出射面41Bは、出射するレーザ光LBを屈折させる傾きの平坦面である。これにより、第1ウェッジプリズム41は、案内光学系15から出力されたレーザ光LBを光軸OAに対して傾けることができる。
【0019】
[第1ウェッジプリズム回転機構42]
第1ウェッジプリズム回転機構42は、第1ウェッジプリズム41を保持しかつ光軸OAを中心にして回転させる。第1ウェッジプリズム回転機構42は、一例として、第1ウェッジプリズム41を保持する中空ロータと、中空ロータに対向配置された中空ステータと、を有する中空モータを備え。第1ウェッジプリズム回転機構42は、第1ウェッジプリズム41との間に中空のスピンドルを介在させることもできる。以上は、第2ウェッジプリズム回転機構44においても同様に当てはまる。
【0020】
また、第1ウェッジプリズム回転機構42は、回転部(中空ロータ)と固定部(中空ステータ)との相対的な位置、回転数を検出するエンコーダを備えることができる。エンコーダは、回転部側に固定される識別子と、固定部側に固定され、識別子を検出する検出部と、を有する。エンコーダは、検出部で識別子を検出することで、上記回転部の相対的な位置(角度)を検出することができる。エンコーダは、検出した回転部の回転数および回転位置(位相角)の情報を制御装置に出力する。また、エンコーダとしては、例えば、回転位置(位相角)を数千分の一度(0.001度以下)の分解能で検出する検出機器を用いることが好ましい。ダブプリズム回転機構47についても、同様のエンコーダを設けることができる。
【0021】
[ダブプリズム46]
ダブプリズム46は、四角柱の両端を斜めに切断した形状を有し、その縦断面は等脚台形をしており、両端の傾斜面が入射する光の光軸OAに垂直な面に対して対称となっている。このダブプリズム46を透過するレーザ光LBは反転してから出射されるので、入射する光の光軸OAを中心にある角度だけ回転させると、出射する光はその光軸OAのまわりに回転角度の2倍だけ回転する性質を有している。
ダブプリズム46は、レーザ光LBが入射される入射面46Aと、レーザ光LBが出射される出射面46Bと、を有する。レーザ光LBがダブプリズム46の入射面46Aに特定の角度で入射したとき、レーザ光LBはダブプリズム46が1回転する間に同一直径、つまり旋回径Rの2つの同心円を描くことができる。
【0022】
[ダブプリズム回転機構47]
ダブプリズム回転機構47は、ダブプリズム46を保持しかつ光軸OAを中心にして回転させる。ダブプリズム回転機構47は、第1ウェッジプリズム回転機構42と同様の構成を備えていれば足りる。
【0023】
[集光光学系50:図1
集光光学系50は、図示を省略するが複数のレンズを有しており、この複数のレンズにより、レーザ旋回部40から照射されたレーザ光LBを集光し、所定の焦点距離、焦点深度となるレーザ光LBを形成する。集光光学系50は、加工対象物Wに所定のスポット径のレーザ光LBを照射する。
【0024】
レーザ旋回部40から出力されるレーザ光LBは、第2反射ミラー37と第3反射ミラー39で反射される。第2反射ミラー37はハーフミラーからなる。第2反射ミラー37は、レーザ旋回部40から受けたレーザ光LBを集光光学系50に向けて透過させるのに加えて、第3反射ミラー39に向けて反射させる。第3反射ミラー39で反射されるレーザ光LBにより加工対象物Wの加工部位を撮像カメラ60で撮像可能とする。
【0025】
[撮像カメラ60:図1
撮像カメラ60は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を有するカメラである。撮像カメラ60は、レーザ光LBの照射位置IPや旋回径Rなどを撮像し、この撮像した画像から画像データを生成し、コントローラ100に画像データを出力する。撮像カメラ60は、光軸OAと同軸上に配置される。
【0026】
[コントローラ100:図1図3
コントローラ100は、レーザ発振器10および照射ヘッド20に接続され、各部の動作を制御する。コントローラ100は、例えば、レーザ発振器10から出力されるレーザの各種条件を制御したり、図示を省略する照射ヘッド20の移動機構の動作を制御して照射ヘッド20の加工対象物Wに対する位置を調整したりする。また、コントローラ100は、加工対象物Wの仕様(材質、厚み等)や加工処理の条件から熱影響層の許容厚みを検出して設定したり、照射ヘッド20から加工対象物Wに照射されるレーザ光LBの旋回径Rを制御したりする。
【0027】
コントローラ100は、旋回径Rを制御するために、第1ウェッジプリズム41の相対角度θ(度)と旋回径Rとが対応付けられた相関情報を保持する。図3はその一例であり、この例は相対角度θが0度から90度までの範囲が示されている。図3に示される相関情報からも明らかなように、第1ウェッジプリズム41を回転させることにより、任意の旋回径Rを緻密に設定できる。
【0028】
[加工手順]
レーザ加工装置1を用いて加工対象物Wを加工する手順の一例を説明する。
STEP1:旋回径Rn、相対角度θnの設定
レーザ加工に先立って、例えばコントローラ100に加工対象物Wの加工に要求される特定の旋回径Rnを入力する。コントローラ100は入力された旋回径Rnと図3に示される相関情報を対比することで、旋回径Rnの加工に必要な第1ウェッジプリズム41の相対角度θnを特定する。コントローラ100は、相対角度θnを特定したならば、第1ウェッジプリズム41が相対角度θnとなるように第1ウェッジプリズム回転機構42を回転駆動させる。
【0029】
STEP2:ダブプリズム46の回転
コントローラ100は、第1ウェッジプリズム41を相対角度θnとなるように動作させた後に、ダブプリズム回転機構47を回転駆動させることにより、ダブプリズム46を回転させる。
以上のSTEP1およびSTEP2により、要求される旋回径Rnを有する円形の軌跡の加工を行える前提条件が整う。なお、ここではSTEP1の次にSTEP2を行う例を説明したが、STEP2の次にSTEP1を行うこともできるし、STEP1とSTEP2とを同時並行的に行うこともできる。
【0030】
STEP3:レーザ光LBの出力、加工対象物Wの加工
次に、コントローラ100はレーザ発振器10を動作させることでレーザ光LBをレーザ発振器10から出力させる。レーザ発振器10から出力されるレーザ光LBは、照射ヘッド20を通過し、加工対象物Wに照射される。このレーザ光LBは図2に示すように、光軸OAの周りを旋回径Rnで回転しながら加工対象物Wを円形に加工、例えば切断をする。加工の際には、図示が省略される駆動系により、照射ヘッド20を移動させたり、加工対象物Wを移動させたりすることができる。
【0031】
以上で説明した加工手順においては、旋回径Rnが加工の過程で一定であることを前提としているが、加工の過程で旋回径Rnを例えば旋回径R1,R2,R3というように変更することができる。この場合、予めコントローラ100に旋回径R1,R2,R3を入力する。仮に旋回径R1で加工を始めるとして、旋回径R1から旋回径R2に変更するタイミング、さらに,旋回径R2から旋回径R3に変更するタイミングも合わせてコントローラ100に入力する。
【0032】
[第1実施形態による効果]
レーザ加工装置1のレーザ旋回部40は、ダブプリズム46の前に第1ウェッジプリズム41を配置し、第1ウェッジプリズム41の相対角度、つまり位相を制御してダブプリズム46のレーザ光LBの入射角度φを制御する。したがって、光軸OAに対してウェッジプリズム41を傾転させるのに比べて、レーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φを高い精度で設定できる。
なお、レーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φは例えば1度程度と微少のため、ダブプリズム46に入射角度φのずれ量は以下の式で表される。
ずれ量≒入射角度φ×L1
L1=第1ウェッジプリズム41とダブプリズム46と間の距離
【0033】
〔第2実施形態:図4を参照〕
次に、第2実施形態に係るレーザ加工装置2を説明する。
レーザ加工装置2は、図4に示すように、第1ウェッジプリズム41とダブプリズム46の間に第2ウェッジプリズム43が設けられる。第2ウェッジプリズム43を設けることにより、レーザ加工装置2は、レーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φをレーザ加工装置1よりも高い精度で制御できる。なお、第1ウェッジプリズム41は第1ウェッジプリズム回転機構42により回転が可能とされるのに対して、第2ウェッジプリズム43は回転が不要であり、固定されている。
【0034】
第2ウェッジプリズム43は、レーザ光LBが入射される入射面43Aと、レーザ光LBが出射される出射面43Bと、を有する。
入射面43Aは、第1ウェッジプリズム41から出力されたレーザ光LBを屈折させる傾きを有する平坦面である。これにより、第2ウェッジプリズム43は、第1ウェッジプリズム41で屈折されたレーザ光LBを再度屈折させる。
【0035】
出射面43Bは、入射面43Aで屈折したレーザ光LBの光軸に対して直交するかまたは僅かに傾く平坦面である。出射面43Bは、傾く場合、入射面43Aで屈折したレーザ光LBの光軸に対する傾きが例えば1°未満である。そうすることにより、出射面43Bは、第1ウェッジプリズム41から出力されたレーザ光LBが出射する時、出射面43Bで反射するレーザ光LBを、入射面43Aで屈折したレーザ光LBの光軸からずらすことができる。
【0036】
[レーザ加工装置2が奏する効果]
レーザ加工装置2は、第1ウェッジプリズム41に加えて第2ウェッジプリズム43を備える。ここで、1セットのウェッジプリズムだけで制御するのに比べて、2セットのウェッジプリズムで制御すると、それぞれのウェッジプリズムで制御する角度範囲が半分でよい。したがって、レーザ加工装置2によれば、レーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φを第1実施形態よりも、2倍の精度で制御できる。
【0037】
〔第3実施形態:図5を参照〕
次に、第3実施形態に係るレーザ加工装置3を説明する。
レーザ加工装置3は、図5に示すように、第2実施形態に係るレーザ加工装置2にさらに第3ウェッジプリズム44が第1ウェッジプリズム41に対向して設けられる。
【0038】
第3ウェッジプリズム44は、回転可能とされることを含めて第1ウェッジプリズム41と同じ仕様を有しており、レーザ光LBを屈折させて、光軸OAに対して傾けて第1ウェッジプリズム41に向けて出射する。レーザ加工装置3によるレーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φが、第1ウェッジプリズム41による入射角度φ1と第3ウェッジプリズム44による入射角度φ2とを合計した値となる。
【0039】
[レーザ加工装置3が奏する効果]
レーザ加工装置3は、レーザ加工装置2が奏する効果に加えて、以下の効果を奏する。
レーザ加工装置3によるレーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φが、第1ウェッジプリズム41による入射角度φ1と第3ウェッジプリズム44による入射角度φ2とを合計した値となる。したがって、レーザ加工装置3によれば、加工対象物Wを加工する際のレーザ光LBの旋回径Rを大きくできる。
【0040】
〔第4実施形態:図6を参照〕
次に、第4実施形態に係るレーザ加工装置4を説明する。
レーザ加工装置4は、コリメート光学系30と第1ウェッジプリズム41の間に、アパーチャ(aperture)33を備える。なお、図6に示されるレーザ加工装置4の基本的な構成は、一例としてレーザ加工装置2を踏襲するが、レーザ加工装置1またはレーザ加工装置3にアパーチャ33を設けることもできる。
【0041】
アパーチャ33は、おもて面33Aとうら面33Bとを有し、おもて面33Aとうら面33Bとを貫通する外形が円形の透光路34を備える。透光路34のおもて面33Aの側は入射口34Aが設けられ、うら面33Bの側にレーザ光LBの出射口34Bが設けられる。アパーチャ33の透光路34は入射口34Aから出射口34Bに向けて開口径が連続的に小さく形成されており、透光路34は先細りの円錐形の傾斜面に取り囲まれる。
【0042】
アパーチャ33の入射口34Aに向けてレーザ光LBが照射され、レーザ光LBのビーム径が射口34Aの開口径より大きければ、レーザ光LBの周縁、つまりビームエネルギープロファイルのすそ野の部分はおもて面33Aであって入射口34Aの周縁に照射され、アパーチャ33により遮断される。レーザ光LBのビーム径が射口34Aの開口径と等しいか開口径よりも小さければ、透光路34を透過する。なお、おもて面33Aに照射されたレーザ光LBはアパーチャ33に吸収されることで、アパーチャ33の温度が上昇するので、水冷などの冷却構造を設けることが好ましい。
【0043】
アパーチャ33は、以上のように、コリメート光学系30から出力されるレーザ光LBであるコリメート光のビーム径を制御し、後段のウェッジプリズムやダブプリズムに入光するレーザ光が余計な部分と干渉することを抑制することができる。好ましい制御の具体例として、以下の式(1)で定義されるレーザ光LBの99%相当のエネルギを透過するが、1%に相当するビームの周縁を遮断する。
(1/eビーム径)×1.5…式(1)
【0044】
[レーザ加工装置4が奏する効果]
アパーチャ33を備えるレーザ加工装置4は、ダブプリズム46の温度上昇を防ぐことができる。
ダブプリズム46は、ダブプリズム回転機構47により回転可能とされる。ダブプリズム回転機構47の例えばスピンドルの開口径(内径)が小さければ、レーザ光LBの周縁部分がスピンドルに照射され、スピンドルが発熱する。そうすると、スピンドルおよびダブプリズム46を保持するホルダなどの部材を介してダブプリズム46が加熱されるおそれがある。
ところが、レーザ加工装置4は、レーザ光LBのビーム径をアパーチャ33によりスピンドルの内径よりも小さく制御できるので、ダブプリズム46の加熱を抑えることができる。
【0045】
また、アパーチャ33は、透光路34の周囲が先細りの円錐形の傾斜面を構成する。したがって、この傾斜面で反射するレーザ光LBがレーザ発振器10に戻り、レーザ発振器10を破損することを抑制できる。
【0046】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0047】
本開示における加工対象物Wには、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などの種々の材料が適用される。
金属材料としては、例えば、炭素鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼などのFe基合金、超合金、磁性合金などのNi基合金、チタニウム合金などが掲げられる。
セラミックス材料としては、例えば、ZrOなどのジルコニウム系セラミックス、Siなどの窒化ケイ素系セラミックスなどが掲げられる。
樹脂材料としては、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT:Glass-mat Reinforced Thermoplastics)等の繊維強化プラスチックなどが掲げられる。
【0048】
また、加工処理は、切断加工、穴あけ加工、溶接加工、クラッディング加工、表面改質加工、表面仕上げ加工、レーザ積層造形のいずれかの種類が該当し、これらの加工を組み合わせることもできる。この加工対象物Wの形態は任意であるが、典型的には板材を対象とする。
【0049】
[付記]
<付記1>
入射されるレーザ光(LB)を旋回させるレーザ旋回装置(40)は、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第1ウェッジプリズム(41)と、第1プリズム(41)を透過したレーザ光(LB)を光軸(OA)の周りに回転させるダブプリズム(46)と、第1ウェッジプリズム(41)を光軸(OA)の周りに回転させる第1ウェッジプリズム回転機構(42)と、ダブプリズム(46)を光軸(OA)の周りに回転させるダブプリズム回転機構(47)と。
【0050】
<付記2>
付記1において、好ましくは、第1ウェッジプリズム(41)とダブプリズム(46)の間に、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第2ウェッジプリズム(43)を備え、第2ウェッジプリズム(43)は、光軸(OA)の周りの回転が固定される。
付記2によれば、より高い精度でレーザ光LBのダブプリズム46への入射角度φを設定できる。
【0051】
<付記3>
付記1または付記2において、好ましくは、第1ウェッジプリズム(41)よりもレーザ光(LB)が入射される前側に設けられ、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第3ウェッジプリズム(44)と、第3ウェッジプリズム(44)を光軸(OA)の周りに回転させる第3ウェッジプリズム回転機構(45)と、を備える。
付記3によれば、第3ウェッジプリズム(44)を加えることにより、加工対象物Wを加工する際のレーザ光LBの旋回径Rを大きくできる。
【0052】
<付記4>
レーザ加工装置(1,2,3,4)は、レーザ光(LB)を出力するレーザ発振器(10)と、レーザ光(LB)を旋回させつつ加工対象物(W)に向けて照射する照射ヘッド(20)と、を備える。
照射ヘッド(20)は、レーザ光(LB)を加工対象物(W)に対して旋回させるレーザ旋回部(40)と、レーザ旋回部(40)で旋回されたレーザ光(LB)を集光させる集光光学系(50)と、を備える。
レーザ旋回部(40)は、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第1ウェッジプリズム(41)と、第1プリズム(41)を透過したレーザ光(LB)を光軸(OA)の周りに回転させるダブプリズム(46)と、第1ウェッジプリズム(41)を光軸(OA)の周りに回転させる第1ウェッジプリズム回転機構(42)と、ダブプリズム(46)を光軸(OA)の周りに回転させるダブプリズム回転機構(47)と、を備える。
【0053】
<付記5>
付記4において、好ましくは、レーザ旋回部(40)は、第1ウェッジプリズム(41)とダブプリズム(46)の間に、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第2ウェッジプリズム(43)を備え、第2ウェッジプリズム(43)は、光軸(OA)の周りの回転が不能とされる。
【0054】
<付記6>
付記5において、好ましくは、レーザ旋回部(40)は、第1ウェッジプリズム(41)よりもレーザ光(LB)が入射される前側に設けられ、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させる第3ウェッジプリズム(44)と、第3ウェッジプリズム(44)を光軸(OA)の周りに回転させる第3ウェッジプリズム回転機構(45)と、を備える。
【0055】
<付記7>
付記5または付記6において、好ましくは、レーザ発振器(10)から出力されるレーザ光(LB)の一部を遮断して照射ヘッド(20)に向けて出射するアパーチャ(36)を備える。
レーザ光LBのビーム径をアパーチャ33により、ダブプリズム46の加熱を抑えることができる。
【0056】
<付記8>
付記4から付記7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置を用いて、加工対象物(W)にレーザ光(LB)を照射して加工処理を行う加工方法であって、加工対象物(W)を加工する際中に、ダブプリズム回転機構(47)によりダブプリズム(46)が連続的に回転される。
【0057】
<付記9>
付記8において、好ましくは、加工対象物(W)を加工するのに先立って、第1ウェッジプリズム回転機構(42)により第1ウェッジプリズム(41)が所定の相対角度に設定され、加工対象物(W)を加工する際中に、第1ウェッジプリズム(41)が所定の相対角度に維持される。
【0058】
<付記10>
付記8または付記9において、好ましくは、加工対象物(W)に照射されるレーザ光(LB)は所定の旋回径Rで旋回し、第1ウェッジプリズム(41)の相対角度と旋回径とが対応付けられた相関情報に基づいて、所定の相対角度が設定される。
【符号の説明】
【0059】
1,2,3,4 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
15 案内光学系
20 照射ヘッド
30 コリメート光学系
33 アパーチャ
33A おもて面
33B うら面
34 透光路
34A 入射口
34B 出射口
35 第1反射ミラー
37 第2反射ミラー
39 第3反射ミラー
40 レーザ旋回部
41 第1ウェッジプリズム(回転)
41A 入射面
41B 出射面
42 第1ウェッジプリズム回転機構
43 第2ウェッジプリズム(固定)
43A 入射面
43B 出射面
44 第3ウェッジプリズム(回転)
44A 入射面
44B 出射面
45 第3ウェッジプリズム回転機構
46 ダブプリズム
46A 入射面
46B 出射面
47 ダブプリズム回転機構
50 集光光学系
60 撮像カメラ
100 コントローラ
LB レーザ光
OA 光軸
IP 照射位置
R 旋回径
W 加工対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6